民営化

Sunday, October 28, 2018

傾く台鉄

本題に入る前に、シリアで反政府ゲリラに拘束されていたジャーナリストの安田純平氏が解放され無事帰国しましたが、自己責任を言い立てる書き込みが多いことが信じられません。同胞が無事帰ってきたことを何故喜べないのか?政府の制止を聞かずに渡航したことや、政府に批判的な言動があるとしても、それ思想信条の自由、言論の自由の範囲内だろ。思想信条や言論を理由に助ける助けないという議論自体の選別のヤバさを理解できないでしょうか?

加えてカタール政府が支払ったと報じられた3億円の身請け金を理由に「テロリストに資金が渡った」と沸いてますが、事実そうだとしても、それはカタール政府とテロリストの関係だし、日本政府が単純に肩代わりできるものでもありません。ただしサウジアラビアとの対立で経済制裁を受けているカタールとしては、貴重な外交カードを得たことは間違いない訳で、ODAなどの形で着地点を模索するのは政府間の話し合いになるだけの話。国民としては専門家としての外交官に付託すべき問題で、首突っ込むようなことじゃありません。

一方で「政府は何もしてないのに」という批判が反対陣営から出てますが、仮に事実そうであったとしても、同胞の帰還を喜べないのか?という疑問が拭えません。悪いけど自称リベラルな皆さんも火種を撒いているとしか見えません。同胞の無事を喜びましょう。

で、本題。台湾で大事故が起きました。

台湾で特急脱線、18人死亡 負傷者160人超、日本人の被害なし :日本経済新聞
8両編成の特急プユマ号が脱線し、5両が転覆して死傷者多数となりました。一応日本人の被害は確認されておりませんが、日本人に人気の観光地でもあり、日本人が乗っていても不思議ではありません。

その後の当局の発表が二転三転しました。事故の30分前に運転士から車両の異常が指令に伝えられていたということで、製造メーカーの日本車両製造(日車)株が売られます。この日はNY市場の株安を受けて東証でも値を下げたタイミングですから、事故の影響がどこまでかは定かではありませんが。

その後脱線は速度超過が原因とされ、更に運転士が日本のATSに相当する保安装置のATPを切っていたことも台湾鉄路管理局(台鉄)から発表され、運転ミスということで日車は少し値を戻します。しかしその後対話政府の事故調査チームが運転士のATP解除が指令に報告されていたことが発表され、事故調査チームが台鉄の発表に不信感を明らかにします。加えて気になるこのニュース。

台湾脱線事故 2年で7回 赤字続く公営 安全意識足りず :日本経済新聞
公営で赤字体質の台鉄では、脱線事故が繰り返されていたということです。被害が軽微だったとしてきちんとした事故調査も行われ繰り返さてこなかった上に、赤字体質でメンテナンスが手薄だったことが窺われます。


で、事故を起こしたプユマ号用車両TEMU2000型電車ですが、カーブの多い台鉄向けに車体傾斜システムを採用しました。日本のJR四国8600型やJR東日本のE353系に搭載されているシステムです。台鉄ではプユマ号の前にJR九州885系に似た制御付き振り子車タロコ号TEMU1000型を投入していましたが、プユマ号はその後継です。制御付き振り子はJR四国2000型気動車と8000型電車で採用され、それぞれ後継に8600型電車と2600型気動車が登場して同じ運転時間で運用されてます。JR東日本のE353系もやはり制御付き振り子のE351系を置き換えています。

車体傾斜システムは振り子ではなく枕ばねに使われる空気ばねの空気圧を制御するもので、JR北海道キハ201系で採用され、特急車キハ261系が続きますが、201系では早い段階で車体傾斜制御を「やめ、昨今の事故続きで261系でも使用を止めています。元々制御付き振り子よりも安価なシステムとして「導入されたものの、制御の難しさやメンテナンスの問題から使用を諦めたようです。それだけ難しいシステムだってことです。

JR東日本でもE353系量産先行車を製作して暫く走り込みをしてましたが、車体を傾けるタイミングの最適化のみならず、圧搾空気を消費するシステムなので、過度に使用してコンプレッサー回しっぱなしでも追いつかないこともあり得るわけですから、その辺の見極めもあります。実際JR四国では高徳線に投入した2600型をカーブの多い土讃線への投入を断念してます。そういう意味でユーザーの使いこなしのスキルが求められる車両ということになります。

で、台鉄ですが、お世辞にもスキルが高いと言えなさそうですし、運転士と指令のやり取りから類推すると、おそらく何らかの理由で圧搾空気の消費が激しく、ブレーキ梃子を動かす元空気溜め菅の空気圧が低下して、ブレーキが込め位から緩めに戻らないブレーキ不緩解が起きた可能性は指摘できます。車体制御システムに原因があるかどうかはわかりませんが、ブレーキ込め状態で力行すれば所定の性能は出ない訳で、列車の遅れを気にして何とかしようとした結果のATP解除ではないかと考えられます。通常ならば停止してブレーキテストで異常なしを確認するという手順になると思いますし、乗客の証言として停車駅以外のところで停止した李再度走り出したりということですから、あり得ます。

それでも直らないならその場で停止したまま救援を待つのが正しい対応ですが、運行を続けたままでATP解除が運転士と指令で共有されていたってことは、信じられないほどの安全意識の欠如と言えます。台鉄の組織的な問題もありそうです。

思えば過去エントリーでも指摘しましたが、公社時代の国鉄は運輸省の指導下になかったという恐ろしい状況だったんですね。元々政府直営の現業部門で日本では軍部に次いで強い組織だった鉄道省が戦時の商工省や逓信省との統合の後、戦後現業部門を公社化して日本国有鉄道として、行政事務方が運輸省となった経緯から、公営私営の事業者は免許事業として運輸省の指導を受けていた一方、国鉄は公社化後も国の現業機関時代からの慣習を引き継いで自らの意志で事業を展開できる存在でした。その結果世論の反対を押し切って東海道新幹線を実現できたという面はありますが、行政の適切な指導の外にある状況だったわけです。

台鉄は戦前の台湾総督府鉄道がルーツで、所謂植民地鉄道だったわけですが、戦後中華民国政府に摂取されます。以来台北政府の現業部門として継続してますが、公社化を通して民営化する計画もあり、丁度日本の鉄道省時代に近い統治システムです。故に地形が険しく不便な東部幹線の建設や電化、重軌条化を進めるなど、設備投資も活発ですが、それだけ資産規模の拡大で収益がついてこない。加えて台湾高速鉄道や高速バス、国内線航空との競争にもさらされており、収支が厳しいわけです。

しかし投資に積極的な一方、赤字体質でコスト圧縮も求められるわけですから、現場にかなりストレスがある状況と考えられます。この観点から言えば、日本の国鉄民営化は「一応成功と言えるわけです。JR北海道の問題は、地方の容赦ない過疎化の結果でもあり、事業者としてのJR北海道に責任がある訳ではありません。問題は分割民営化の前提がこれだけ変化しているのに、見直しに動かない政府にあります。

あとおまけ。JR東日本のE351系は中央線高速化プロジェクトを睨んで投入されましたが、振り子車運行を想定していない中央東線で振り子を作動させたときのパンタグラフと架線の偏移の問題があり、台車枠から櫓を立ててパンタグラフを乗せるという無理目の仕様とした結果、これがトラブルの元となって所定の性能を発揮できなかった失敗作ではあります。加えて凝ったギミックを詰め込むためにコスト面から車体をスチール製としたために振り子車なのに重心が高いし線路も炒めるし、加えて高速化対応で最高速160km/hとした結果、加速が鈍くなりダイヤがタイトだという乗務員の指摘もあって歯車比の見直しで性能を下げました。技術力がるはずのJRでもこういう失敗はある訳で、使いこなせるかどうか分からない最新システムに飛び付くのは慎重であるべきです。

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Saturday, September 29, 2018

イージー・スノッブ・ガラパゴス

安直(Easy)、俗物(Snob)、ガラパゴス(Galapagos)、略してESG。ホントは環境(Environment)、社会(Social)、統治(Governance)ですね^_^;。低炭素や生態系維持に留意し途上国の資源採掘などで見られる児童労働の産品を用いず公正で透明な企業統治を行う企業には持続可能性('Susutainability)があり長期的にリターンが期待できるってことで、ESG投信が組成され、投資家の信任を得ているというわけですが、勿論日本は周回遅れ、期待を裏切りません。それでも国内メガバンクは既に石炭火力事業への新規融資の凍結を表明するなど、ジワジワ影響が広がります。

電力供給、想定超す喪失 北海道停電の検証始動  :日本経済新聞
北海道のブラックアウトの原因究明はこれからですが、記事にあるように地震直後に道東地区と北見地区で起きた停電は、送電線の故障で系統から切り離され、域内需要13万kwに対して域内水力の43万kwの供給過剰状態で送電停止となったものということで、送電線の故障がなければ需給調整が可能だった可能性があり、北海道電力の送電網の脆弱さを示します。

北電に関しては停止中の泊原発の再稼働が滞ってますが、活断層の存在が疑われる中、再稼働に向けた追加投資が追い付かず、規制委が承認しないからですが、そのために13年から18年3月期までの5年間で発電所に3,738奥苑を投資した内1,887奥苑を泊原発に注ぎ込んでいるわけで、その分老朽火力のリプレースなどが滞っていました。だから苫東厚真の石炭火力3基をフル稼働状態で回していたわけですが、無理を重ねていたことは否定できません。

泊原発の再稼働が見通せない中、燃料費が経営を圧迫して電力料金も高止まりしていて、工場などの事業用電力を中心に新電力に狙い撃ちされて大口契約を失う中、背に腹は代えられず燃料費を抑えられる大型石炭火力に依存してたわけです。それもこれも泊原発再稼働をメインシナリオにした事業を見直せなかった経営判断の問題です。

元々広い土地に低い人口密度で風力や太陽光など再生可能エネルギー発電の適地にも拘らず、出力が不安定という理由で北電は送電線接続を渋ってきました。電力系統の出力調整は主に火力発電と揚水発電で対応しますが、火力といっても出力調整が容易な小型ガス火力が必要なわけで、元々原発のバックアップ用で稼働率が低いから出力調整機能の弱い老朽石炭火力を温存してきた結果、再生エネ増加に対応できない状況だったわけですが、泊原発に投じた1,800億円あまりをこちらに振り向けていれば対応可能だった訳で、やはり経営判断に問題があります。

勿論高値買い取りを義務付けた再生エネ買い取り制度(FIT)の下では判断が難しいのは確かですが、だからといって老朽火力をフル稼働で綱渡りの運営が正しかったとは言えません。FITに関しては過去エントリーで明確に否定しましたが、案の定太陽光バブルでワヤクチャ。加えて太陽光の国内メイーカーはコスト競争力中国やドイツの後発組に勝てないまま衰退。欧州では脱原発宣言したドイツに留まらず今年の猛暑で発電量が増えた太陽光を活かすために原発止めた国もあります。腹の座った再生エネ活用が実践されてる一方、つくづく日本は政治後進国だなあ。


あと問題なのが北電が情報開示に消極的な点。上記の道東北見地区の停電の一方、同時間帯に泊原発に近い岩内地区では停電していなかったことなど、非常用自家発電設備を持つ病院への新聞取材で明らかになったもので、北電自身の発表によるものではないという点があります。泊原発の電源確保を優先した結果ではないかと邪推されるのはこういうところにある訳です。要はガバナンスに問題ありという訳です。まとめると環境よりも目先の利益に反応し(安直)、動かせる見込みのない原発に大金注ぎ込んで(俗物)、世界の趨勢に後れを取る(ガラパゴス)ESG企業ってことです。


頭痛いのはこれ北電だけの問題じゃないことでして、多くのの日本企業が似たり寄ったりのことをしている点です。リニアに前のめりなJR東海に関しては日経ビジネスで特殊が組まれて、その中で葛西敬之名誉会長のインタビューがあります。

談合は関係なし! 神様が見たってリニアはいける:日経ビジネスオンライン
論点はいろいろあるんですが、私が特に注目したのが「財投債ですけど銀行から借りるのとまったく同じですから」の部分。1企業に3兆円も貸し込む銀行がどこにあるのか?そんな銀行があればシャープの身売りも東芝の稼ぎ頭の半導体部門売却も回避できました。銀行団による協調融資にしても先行きに懸念が起きれば参加銀行が抜けてメイン寄せが起きますから、とても引き受けられません。仮にプロジェクトとして有望ならば社債発行や増資で直接市場から資金を集められる筈.です。

しかもこの3兆円ですが、無担保30年据え置きですから、民間資金では不可能です。法令で定められた鉄道・運輸機構の融資枠で例えばJR貨物の設備強化投資やJR北海道の老朽資産更新投資などは行われてますが、リニアに関してはこうした法定の融資枠もなく、政治判断で融資が決まった訳です。モリカケ問題と何と似たことか?融資を受けたJR北海道は2016年に1,200億円の支援を得ましたが、内1/2は無利子融資で同年から返済が始まっています。経営が苦しい中でキャッシュフローを削っているわけで、とても足りないと2019年、20年限定の400億円の支援が決まったものの予定していた老朽ディーゼル車の置き換えは断念しました。既に車両故障による輸送障害が起きているにも拘らずです。リニアの財投債資金投入がいかに優遇されているかがわかります。

電力消費は新幹線の3倍、南アルプスルートの長大トンネルや都内など大都市部の大深度地下区間など難工事テンコ盛りで大手ゼネコンも後ずさり、談合事件の本質はこれですが、駅の無い静岡県では水源の遮断の可能性を指摘して工事施行許可をしない方針に対してJR東海は工事強行を示唆してます。それもこれもJR東海の情報開示が不十分だからなんですが、スピードこそ正義と言わんばかりにカエルの面にしょん便。国鉄時代の東海道新幹線の成功体験から来る楽観論など、環境無視、社会的合意無視、ガバナンス無視の安直、俗物、ガラパゴスの日本版ESG企業ですね。

資金調達面ではリニアのライバル?のハイパーループにはイーロン・マスク氏の提唱に対して民間資金が集まっています。しかも米ベンチャーキャピタルや巨大ファンドよりも、年金基金や欧州鉄道資本などの出資もあり、ESG投資が意識されています。マスク氏はテスラモータースのMBOによる非上場化をツイッターして後で取り消して市場を混乱させたとしてSECから提訴されました。市場からの資金調達で事業を拡大してきたマスク氏すらキレさせるほど市場資金の要求は過酷なんで、政府保証資金でヌクヌクしているJR東海とは比べるべくもありません。

余談ですが企業経営者の不用意なSNS発言で市場を混乱させたことに対しては制裁発動の仕組みが働きますが、主権国家の元首となるとその仕組みがないか、ハードルが高い状況です。米大統領に関しては議会が弾劾手続きの権限を持ちますが、下院の過半数と上院の2/3超の議員の同意が必要で、中間選挙で民主優勢が言われますが、上院の2/3は無理でしょう。ましてそんな仕組みの無いあの国この国は?元首でもない某日本国のプライムミニスターの言いたい放題やりたい放題は?

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Monday, September 17, 2018

冗長性を高めて強靭化どころか脆弱化まっしぐら

今年は災害の当たり年なのでしょうか。近畿地震、西日本豪雨、猛暑、逆行台風、超大型台風に北海道の地震と息つく暇もありません。トピックはいろいろありますが、直近の2つに絞り込んで、関空の冠水と連絡橋損壊問題と、北海道電力の全系統停電(ブラックアウト)問題に絞ります。というわけでまずは関空から。

猛烈な南風 高潮を増幅 台風21号で関空が冠水 :日本経済新聞
強力な台風で中心気圧が低く海面を持ち上げている上、強い南西の風の影響で海面が寄せ上げられるために、記録的な高潮となった訳ですが、大阪湾は丁度南西に開いた地形ですから、南西風の影響を受けやすく、関空の位置はもろに高波を被る位置にある訳です。台風21号に関して言えば大阪市で3m29㎝、神戸市で2m33㎝を記録してますが、それだけ高波の影響を受けやすい位置に関空が立地していたことは指摘できます。

加えて埋立造成工事のときにも問題となった軟弱地盤問題による地盤沈下ですが、A滑走路で3m40㎝程度の沈下があり、一番低いところで海面から1m40㎝程度しかなく、高潮対策で堰堤の嵩上げはしているものの、航空法の制約もありいずれ限界に達します。不等沈下対策としてターミナルビル他の建屋の基礎にオイルジャッキが組み込まれていて地盤沈下に合わせて高さ調整されていることも知られています。

関空の構想段階で神戸沖案が有力だったことが思い出されます。実際に神戸市に打診されたものの、神戸市は大型船舶の航行に支障するという理由で断っております。その結果、都心から離れていてアクセスに課題がある上、漁業権の買収が必要な泉州沖に決まった経緯があります。加えて埋立工事中から軟弱地盤による地盤沈下に悩まされた訳です。南海トラフ地震の津波に対しても脆弱性があることは明らかです。

あくまでも結果論ですが、当時国際港湾として鳴らしていた神戸港も、釜山港などアジアのライバルの台頭で空洞化し、阪神大震災後、復興に必要として神戸空港建設を強引に進めた訳ですから、最初から関空を神戸沖に作っていればと思いたくなりますが、阪神大震災でポートアイランドなど神戸の埋立地で液状化現象がみられたように、震災で液状化して使えなかった可能性もあった訳で、良し悪しは簡単には決まりません。

寧ろ神戸空港ができたおかげで、連絡橋損傷の影響もあって全面復旧に時間がかかる関空の機能の一部代替が可能になります。関西3空港はコンセッション方式で運営会社が同じなのも幸いです。問題は国際線と貨物ですが、連絡橋の復旧までは貨物の扱い量は制限せざるを得ません。

連絡橋の損傷に関しては、8,000人もの人が取り残され孤立状態になったことが報じられました。神戸港の海上ルートと連絡橋の非損傷側の対面通行で対応したものの時間がかかりました。問題は足止めされた人たちの中に少なからず外国人がいたことです。彼らが帰国後にこの体験を周囲に語る訳で、中身次第で関空が忌避される可能性があります。LCCによってインバウンド需要を大阪にもたらした状況に変化をもたらす可能性はあります。

で、言いたいのは、この機に乗じてインフラの冗長性を言い立てる声があることです。無駄だとしてインフラ投資を抑制すれば、災害に対して脆弱になる、重複を厭わず新幹線も高速道路も空港も作って冗長性を高めるべきだって言うんですが、関空の現実を見ればそもそも大枚ははいて作った海上空港が脆弱だったってことの問題ウィスルーしてます。それと全国に張り巡らされた高速道路がJR在来線に与えたインパクトはかなり大きく、北海道や四国では会社存亡の危機にすら追い込まれてますが、それに留まらず東関東道の、アクアライン、館山道などの影響で房総地区の特急が淘汰された現実を見ると、首都圏と言えども影響大です。

これ他の要因として既存市街地に立地する特急停車駅周辺がシャッター通りになる一方、バイパスやインター周辺の商業集積が出現していて、高速バスはそうした郊外型のSCや道の駅に立ち寄って需要を拾っているという側面もあります。無秩序化インフラ投資の結果、地域の構造変化が起きて鉄道が取り残されてるわけです。やはりインフラ投資は過剰と評価せざるを得ません。

同時にインフラ投資は取捨選択が重要なんで、選択的投資によって相互補完を図ることは重要です。無駄な重複投資の抑制という観点から言えば、民主党政権が打ち出した高速道路無料化は評価されるべきです。北海道のブラックアウト問題でそれが見えてきます。

ブラックアウト3つの謎、問われる北電の説明責任  :日本経済新聞
3つの謎とは①苫東厚真2,4号機の停止後、一部地域王電を遮断して需給を調整する負荷遮断を行う筈。事実厚真町その他いくつかの地域で停電が報告されてますが、適切に行えばブラックアウトは防げた筈.。②2,4号機停止後、北本連携線を通じて本州から送電が開始されたにも拘らずブラックアウトを防げなかった。③苫東厚真2,4号機停止後17分間1号機の運転は続いたがブラックアウトと同時に停止。故に 1号機停止がブラックアウトの原因なのか結果なのかが不明。ということです。つまりブラックアウトの原因そのものは不明ってことです。

これもネットで泊原発が動いていれば防げたとか、安定供給のために再稼働すべきだという声がネットで吹き上がりましたが、そもそもブラックアウトの原因は不明ですし、ブラックアウト自体は電力需給のバラン頭が崩れて発電機に負荷がかかって50hzの安定したを辞できなくなり、それどころか発電機の損傷もあるので、安全装置が働いて停止したものですから、発電量の不足が原因じゃないってことが理解されてません。

加えて泊原発は活断層の存在が疑われて規制委の審査が滞っていて再稼働できない状況にあり、再稼働させるとすれば超法規的な政治判断が必要ですが、現政権にはリスクとなる判断です。寧ろ負荷遮断が中途半端だった原因として泊原発の外部電源喪失を過度に意識して中途半端な対応をした可能性すら疑われます。結果的に外部電源喪失で非常電源に切り替えられたわけで、余計な忖度でトラブルを拡大したのかもしれません。この辺は事実関係に基づく原因究明を徹底するしかありません。

仮に泊原発が動いていて、苫東厚真も1号機を休止していたとすれば、泊の2000万kwと苫東厚真2,4号機の130万kwで合計330万kwで、地震のあった夜間の需要が300万kw程度として、苫東厚真が自身で停止した状況を想定すると、過剰な30万kwは揚水発電所の揚水ポンプを動かして消化していたと思われますから、不足が100万kwで北本連携線からの給電が60万kwですから、苫東厚真1号機の35万kwと揚水発電所の発電開始でぎりぎりブラックアウトが回避された可能性はありますが、繰り返しますがブラックアウトの原因が不明である以上、断定はできません。泊原発稼働中のブラックアウトだとシビアアクシデントの危険すらあるわけです。

寧ろ昔から言われていたのが集中電源方式の送電システムの脆弱性でして、原発であれ大規模火力であれ、基幹電源としてフル稼働で効率性を追求し、出力調整は小規模火力や揚水発電で補うという考え方故に、その基幹電源が停止した時のリカバリーが困難になるわけです。これ電力会社にとっては利益の最大化になるわけですが、ライフラインを担う公益事業としてはあまりにリスキーです。欧州で自然エネルギーがブームになっている理由の1つは小規模発電を集成した分散電源方式の方が脆弱性が低いという考え方が浸透してきたこともあります。

加えて日本では日本では日本では欧州では国境を超えた広域連携が確立しており、電力の輸出入は日常的に行われています。日本では電力会社間の連携もあまりなく、北本連携線の容量も60万kwですから、泊にしろ苫東厚真にしろ基幹電源が停止した時のバックアップとしては心許ない限りです。これも直s津収益を生まないから後回しにされてきたからですが、この辺民営化後合理化で益出しに励んだJR北海道と共通の背景がありますね。

結局やみくもにインフラ投資をしても脆弱なインフラを増やすだけならば、寧ろ災害に弱い国土になるってことです。レジリエンスどころかフラジャイルになるわけです。インフラも分散投資と相互連携が問われます。

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Monday, July 16, 2018

北のスットコドッコイ

前エントリーの続きです。本題に入る前にこのニュース。

人口、最大の37万人減 生産年齢人口は6割切る  :日本経済新聞
死亡数と出生数の差の自然減が39万人で海外との転出入を加えて37万人の減少ってことです。当然ながら15-64歳の生産年齢人口の減少はもっと多いわけです。都道府県別では東京、埼玉、千葉、神奈川、の首都圏4都県と愛知県と沖縄県のみ増加ですが、そのうち自然増は沖縄県だけで、他の5都県は転入超過による社会増ですから、その分地方の人口減の勾配もきついわけです。

あと外国人の増加が16万人ってことですが、いろいろ問題が指摘される外国人技能実習生だけでも25万人を受け入れていて、その他留学生や高度スキルの就労ビザ対象者もいるわけですから、純増が16万人ってことは相当数の帰国外国人がいるってことです。移民や永住権取得が難しいからこうなるわけで、人手が足りないから外国人就労を拡大といっても、現実の生産年齢人口の減少には追い付かないわけです。人口減という現実を受け入れるしかないわけです。

この状況を踏まえて以下をお読みいただきたいんですが、事故や不祥事が重なって先行きが危ぶまれているJR北海道に未来はあるか?っていう話です。JR北海道もJR総連系のJR北海道労組が組織率8割を超える中で、JR東日本と明らかに異なる労使関係があるわけです。

元々赤字基調だからってことで経営安定基金が与えられ、その運用益で赤字を補填するスキームだったわけですが、90年代半ば以降の低金利によって赤字補填が果たせなくなり、基金の積み増しをした上で現状(独)鉄道建設運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)への預託で高金利運用という事実上の利子補給による補助金でどうにか最終赤字を回避している状況です。

加えて事故の原因となった老朽設備の更新も国の支援を得ながら進めている状況なのですが、事故や不祥事の背景として、JR北海道は益出しのために努力してきたんですが、その結果必要な人手確保がままならなくなり、それが事故の遠因となったり、データの錯誤に見られる不祥事につながったわけですね。その意味で強面の労組は役割を果たせなかった訳です。

JR北海道で起きていたのはおそらく労使の癒着だったと思われます。それ故現場の人手不足もゴマカシがまかり通る状況だったと考えられます。そんな状況を変えようとしたのが自殺した中島社長って話がここへきて出てきています。

そのために島田現社長を総務部長に据えて労組との交渉窓口の一本化を狙ったものの、JR北海道労組は反発して険悪になった状況で、事故や不祥事が重なって国交省の立ち入り検査を受けることになり、JR北海道労組も協力を約束していたものの、直後に札幌労基署による本社社員の36協定違反の摘発があり、労組側が態度を硬化して島田総務部長の関連会社出向を余儀なくされたという経緯がありました。それで追い詰められての自殺ではないかという見立てです。

本社社員もJR北海道労組に所属していたのだから、労組側が知らなかった筈はないと言われてますが、おそらくこれ本社社員だけの問題じゃなかったんじゃないでしょうか。各現場で人手不足が起きていて、36協定順守ところじゃなかったとすれば、そりゃ事故や不祥事も起きるし、労組側からの改善要求もあったはずです。しかし増収とコストカットに励む経営陣を動かせなかったという意味で、労組側からすればスルー出来ない問題ではあります。労使の癒着自体は日本の大企業で結構見られますが。

というわけで、国主導で島田氏の社長指名と設備更新補助金の交付が決まったものの、覆水盆に返らず、労使関係は険悪なまま、後ろ盾のない島田社長は指導力発揮もままならない中で、自力での維持が困難な線区を発表し、自治体にボールを投げたのが現状です。ただ現実的には冒頭の人口減のニュースに見られるように、北海道で言えば札幌都市圏以外の地域の人口減少は今後も続くと見るべきですから、その中でJR北海道が必要な人手を確保して現在の規模を維持できると考えるのは現実的ではありません。人口動態に合わせて身を縮めるのはほぼ唯一の現実解でしょう。

自治体にとっては青天の霹靂でしょう。元々人口減少が止まらず、財政再建団体に指定された夕張市はいち早く廃止を受け入れ、JR社員の出向など条件闘争で実を取った形ですが、夕張支線のように単一自治体だからという面もあります。廃止若しくは公的支援を求めるエリアは広大で、広域自治体としての北海道の対応が待たれますが、高橋知事は経済や人口の状況が分割民営化時と著しく変化していることを理由に国に対応を求めています。財政負担を警戒してという側面はあるものの、経営安定基金による赤字補填もままならず、沿線人口の減少も収まらない中で、交通政策基本法を盾に対応を迫られても受け入れられないってのは正論です。

加えて国絡みの問題も多数あります。例えば北海道新幹線の札幌延伸問題も、JR北海道は自治体との合意を得て国に要望してきたものの、時期の問題が見通せないまま、札幌駅の新幹線駅スペースと見込まれていた駅南の用地に駅ビル(JRタワー)を建てたことで、道庁などから非難されましたが、商業スペースとして価値の高い遊休地の有効活用は当然の話ですし、建設時点で札幌延伸は決まっていませんでした。

その結果新幹線札幌駅の位置問題が二転三転して大東案に決まったのは最近のことです。北海道新幹線の札幌延伸が前進して2030年開業が決まったものの、駅をどうするかで迷走したわけです。当初北口側に新ホームを作って順繰りに振って1,2番線を新幹線用に転用する案が提案されたものの、既に北口の開発が進んで支障する建物が多数あると断念され、西案、東案、地下駅案が検討されたものの何れも却下され、修正東案として1番線南にギリギリ設置可能な1線分のスペースを新幹線上りに充て、1番線を新幹線下りに転用した上で東へ延伸して在来線とずらして設置する修正東案に落ち着いたものの、これも東日本大震災を受けて耐震補強が必要となり、結局在来線駅から離れた元の東案を大東案として決まったものです。位置的には札幌市営パーキングがあるということで、新幹線ターミナル駅設置のスペースも十分な上、駅前に新たな再開発ビル建設の可能性もあり、JR北海道の経営にもプラスと評価されますが、地権者の札幌市の意向は現時点で不明です。

あとJR貨物問題もあります。北海道の農産物を消費地の首都圏や近畿圏に輸送する上でJR貨物の役割は大きいのですが、それが結果的に線路を痛める原因にもなっております。加えてJR貨物は国の支援を得て設備強化投資をした結果、ドライバー不足によるトラック輸送からの移転もあって黒字転換が見込まれる状況ですから、格安な線路使用料を強いられてきたJR北海道には見逃せない問題です。まして株式上場まで取り沙汰されてますから尚更です。

温暖化の影響もあって北海道が稲作適地になりつつある現状もあり、競争力のある農業が叫ばれる中、その競争力を維持する意味で市場アクセスに欠かせないインフラとしての貨物鉄道という視点から、国の関与を強める余地はあります。貨物輸送のためにJR北海道の路線の一部を国の所有としてJR貨物やJR北海道に留まらず、自治体出資の三セクが第二種事業者としてローカル輸送に参入する余地を持たせるあたりに着地点があると思いますが、国が動く気配はありませんね。

加えて訪日外国人が増えている中、北海道観光人気で新千歳空港の利用が増えており、千歳線支線(南千歳―新千歳空港)が単線で空港駅も1面2線のため、対応しきれていない状況にあります。そこで新千歳空港駅を移転して3面4線とし、外側2線を千歳線につなげ、途中で単線を分岐して石勝線につなげる改良案が提案され、2022年の完成を目指すとされてますが、事業費は1,000億円規模になるということで、費用負担を巡ってひと悶着ありそうです。

実現すれば複線のまま空港新駅へ入れるだけでなく、苫小牧方面や帯広方面からも直接アクセスできるようになり、輸送力面に留まらず利便性も改善されますが、よく考えたら自衛隊と共用時代の千歳空港ターミナルビルとこ線橋で直結だった千歳空港駅(現南千歳駅)の機能を取り戻すだけであり、民間空港分離で誕生した新千歳空港のターミナルビルが離れた位置に作られたから仕方なく単線の空港支線を作った訳で、ここでも国の政策に翻弄された現実があります。しかも費用負担の問題でおそらく国の支援制度活用となるでしょうけど、JR北海道の事業縮小構想もあり自治体との調整は微妙です。また滑走路下のトンネル工事など難工事も予想されます。

あとこの問題は思わぬところへ飛び火しております。コメントを頂いたはまださんにご指摘いただいた日本ハムファイターズの北広島ボールパーク構想です。ダルビッシュや大谷をメジャーリーグへ送り出しながら若手の育成で実力を維持し、人気球団となったファイターズですが、不自由な札幌ドームに不満を抱いていたわけですが、ポスティングの補償金を得てそれを活かしたボールパーク構想を発表し、自治体向けに誘致コンペを行うというスキームを打ち出したところ、応札して勝ち抜いたのが北広島市です。

元々市民運動公園整備を構想し広い用地を確保していたところへ、ファイタースのコンペでボールパークをコア施設としてアクセスも千歳線に新駅を作って直結というもので、JR北海道にとっては増収策になるから大歓迎かといえば、空港輸送で線路容量に余裕のない状況では、寧ろ負担になりかねないということでご議論を呼んでいます。竣工予定は2023年3月ですが、空港新駅がそれまでに完成している確率はかなり低いと言えます。

さて、一番のスットコドッコイは誰?

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Sunday, July 01, 2018

ストでスベってスットコドッコイ

FIFAワールドカップで日本がGL突破しましたが、ポーランド戦の戦い方で賛否が分かれてます。

賭けた「負け残り」 西野監督の戦略と野心: 日本経済新聞
この「勝ち残り」作戦ですが、余力を残して決勝トーナメントへ望める訳ですから正解です。選手の能力を活かしてパフォーマンスを最大化するのが監督の役割ですから、非難される謂われはありません。

これが所謂マネジメントって奴でして、結果的に選手の能力を最大限引き出せるわけですね。GL突破で全力を尽くせば決勝トーナメントを戦う力は残らない訳ですね。これ企業のマネジメントも同じで、とにかく全力を求める所謂ブラック企業が駄目な理由でもあります。そんな中で高度プロフェッショナル制度が国会を通過しました。どう言い繕おうが日本企業が90分をうまく戦った西野ジャパンのようなマネジメントをやる気はサラサラないってことですね。

その裏で気になる動きがありました。JRグループ最大労組のJR東労組で大量脱退が起きているのですが、これどうもJR東日本の経営側が仕掛けたみたいなんです。詳しくは週刊東洋経済の集中連載に詳しいんですが、わかりやすく言えば経営側が労組を追い込んだってことのようです。JR東労組は所謂JR総連系の労組で、左翼セクトの革マル派が浸透していると言われていて公安からもマークされていて、2020年の東京五輪を控えて政権からも対応を迫られたようです。

2年前に死去した松嵜委員長は元革マルNo.2で、国鉄の動力車労働組合(動労)の指導者になり、国鉄民営化に関して反対から賛成へと態度を変えて国労と袂を別ったことで、国鉄民営化を後押ししたことも知られております。国労が主導したスト権ストで国民の支持が離反したこともあり、寧ろ民営化で公労法で違法とされていたスト権を取り戻せると考えたようです。

しかし実際には90年代にJR総連でスト権確立の動きを見せたもののうまくいかず、結果的に傘下労組の多くが総連を脱退してJR連合を結成し、以後総連との対立が続きます。そうはいってもJR東労組はJRグループでは最大規模であり、組織率8割に達する巨大組織ですし、革マル派の浸透に経営側も及び腰だったこともあって最強の労組でもありました。

スト権確立には失敗したものの、事業所単位で締結される労使間の36協定を3か月単位で締結する体制を敷いて、その分労使の話し合いの機会が多かったので、ストを打つ理由もなかったわけです。スト権はあくまでも経営側を協議の場に引き出すためのものですから、頻繁に協議が行われる体制ではストを打つ理由は無いわけです。

革マル派自体は反帝国主義反スターリン主義を標榜してますし、暴力革命を否定してもいませんが、故松嵜委員長の対応から察せられるように、中核派などと違って柔軟な対応ができる分マシな存在ですが、経営陣にとっては緊張を強いられる存在ではあったでしょう。ある意味JR東日本の経営がJR他社と比べて幾らかマシなのはこの緊張感のなせる業でしょうし、特に東中野事故後の対応など安全対策でJR他社より踏み込んだ対応を取ってきたのも、頻繁な労使協議のお陰と見ることができます。

一応誤解の無いよう断っておきますが、反スターリニズムを標榜しながら、その源流のボルシェビキ流の前衛主義から抜け出せないという意味で中核派共々ダメな存在ではあります。彼らが頼みとする大衆の蜂起は前衛である自分たちが指導して実現するってフィクションから抜け出せないんですから、革命なんて出来っこありません。この辺日本共産党も同じなんですけどね。それでもJR東日本経営陣に緊張感を与え、安全対策の強化に寄与したという部分では評価いたします。

今回の騒動は経営側がまず運転区と車掌区を統合して運輸区とする組織改編で運転士と車掌を同一組織に纏めたことから始まります。動労母体のJR東労組ですが、旧動労系組合員の多い運転士とそれ以外の穏健派が多い車掌との温度差で現場の足並みを乱れさせるところからスタートし、ベースアップの配分を巡って若手に手厚い経営側の提案に一律ベアで対抗し、これが引き金になってスト通告に至ったのですが、その後組合員の大量脱退が起きており、この過程で経営側による若手を中心とする組合員の引き剥がしに動いたようです。これ下手すると国鉄時代のマル生運動にかこつけた労組選別の不当労働行為になりかねないという意味で、経営側もリスクを負ってますが、大きく異なるのが若手の組合への不満が大量脱退を後押ししたってことですね。

ストを打つと言っても、経営側を協議に引き出すのが目的ですから、事前通告に始まって一連の手続きを踏む必要がありますし、経営側が協議に応じればストを解除しなければなりませんから、組合員にはあらかじめ決まった場所に待機させる必要もあります。加えてスト期間中は賃金の支払いが止められますから、組合員の生活補助のための日当を支払う必要もあります。これら一連の作業を行うには大変なノウハウが必要なんで、既にストをしなくなって久しいJR労組にとっては、急に「ストやります」といっても組合員は戸惑うばかりです。執行部の命令一つで事態が動く状況はとっくに失われていたわけです。

と、ここまでだとJR東労組のスットコドッコイぶりが目立ちますが、今後は経営側が立ち上げた社友会と称する親睦組織との間で36協定の話し合いが行われ、しかも年1回ということですが、労組ならざる組織で安全に関わる様々な意思決定がされることになれば、今までよりもヌルい労使関係で緊張感が失われることが心配です。それは場合によっては安全上の問題を引き起こす可能性も否定できません。JR東日本のように事業所が多数分散している大組織で、組合をスルーして上手く回せるのかは疑問です。西野ジャパンで後半終了間際に長谷部を投入してメッセージを伝えたアレの重要性に類似した問題です。

実際国鉄時代から続いていて福知山線尼崎事故の遠因と指摘された日勤教育の見直しはJR東日本が先行し、他社の見直しは尼崎事故後ですし、山陽新幹線の台車枠亀裂問題や車内犯罪やトンネル内人身事故などを見ると、JR東日本が同じレバルに堕する危険性は排除できません。となると経営側もスットコドッコイかも。やれやれ。

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Sunday, May 13, 2018

国敗れて鉄路なし?

加入権維持で今どき意地でADSLでやせ我慢してたら通信障害ですが、NTTも最早メタル回線のメンテナンスをまともにやる気がないらしく、渋々ひかり電話へ切り替えましたが、新年度で引っ越しシーズンってことで工事スケジュールが混み合ってて1箇月を超える空白期間を余儀なくされました。そんな中でスマホのフリック入力でアップした前エントリーの見通し通り、北朝鮮を巡る情勢が急展開しております。南北首脳の本気とノーベル平和賞期待のトランプ大統領の色気が妙にかみ合ってきております。

慌てたのは日本政府。何しろ日米安保体制の前提となる朝鮮戦争の終結につながる話なんで困ってます。朝鮮戦争は現在休戦中ですが、韓国は休戦協定に参加しておらず、頭越しに米朝で休戦というねじれた状況です。元々は北朝鮮の南進に対して安保理決議で朝鮮国連軍が組成され、在日米軍に総司令部を置く形だったのですが、現在の休戦ラインに押し返すのがやっとで、国連軍参加国の撤退が相次いで今の形になった訳ですが、当時の韓国政府が休戦を認めず協定に参加しなかったわけです。

にも拘らず総司令部を米軍が抑えているから韓国軍が独自の軍事行動はできないわけで、事実上韓国軍は米軍の下請け機関のような扱いになっておりました。故にベトナム戦争への参戦も強要されましたし、韓国の世論の不満も大きく、停戦となれば韓国軍はその呪縛から解放されることになります。文在寅大統領への世論の支持はこういう背景があるわけですね。

シンガポールで行われる米朝首脳会談でどこまで踏み込むかはわかりませんが、共同宣言が出されて停戦協定と平和条約の締結のための実務者協議が始まるというあたりが落としどころでしょう。実務者協議がすんなり進むかどうかはともかく、枠組みとして不可逆な形になるということで、停滞はあっても逆戻りは無いという見立ては成り立ちます。

そうなると在韓米軍と在日米軍のの扱いが問題になるのですが、韓国として在韓米軍の全面撤退までは望んでないでしょうけど、朝鮮半島の非核化というのは、核保有国であるアメリカの核持ち込みも無くすってことも含みますから、どういう妥協点を見いだせるかはこれからの話です。

厄介なのが在日米軍でして、朝鮮国連軍総司令部がある三沢基地のほか、在日米軍の相当部分が朝鮮国連軍としての駐留なんで、縮小することになるんでしょうけど、在日米軍の任務は非公開で、どこまでが朝鮮国連軍としての任務なのかはわからないわけです。日本政府がきちんとアメリカと交渉する必要がありますが、黙っていれば事実上アメリカのフリーハンドになりますし、場合によっては北朝鮮のミサイルの標的になるリスクもあります。

一方でアメリカはイラン核合意からの離脱を決めました。今のところ他の5カ国が踏み止まっていて、アメリカの追加制裁も発動までの猶予期間があるということで、市場は安ど感に包まれておりますが、火種であることに変わりはありません。というわけで、市場は膠着し、円高予想はやや肩透かしですが、これドル高が相殺してるだけですね。FRBの利上げとレバトリ税制(米企業の海外留保益金の税制優遇)で資金還流が起きている状況を反映したものですが、マイナス金利にまで踏み込んだ日銀に追加策がないことに変わりはありません。為替水準の予想はあまり意味はありませんけど。

北朝鮮の問題では日本政府の出遅れは明らかですが、ロシアはどうかと言えば、まあ様子見でしょう。中国の出方次第ですが、朝鮮戦争停戦はロシアが以前から狙っていた北朝鮮を介した韓国との鉄道連絡のチャンスでして、中国が中央アジア経由のチャイナランドブリッジを売り込んでますが、バム鉄道とシベリア鉄道を介した欧州連絡ルートができれば強力なライバルになります。そうなるとロシアがオファーしてきたサハリン経由の日ロの鉄道連携は可能性が絶たれます。ここでも日本は後れを取るわけですね。安倍政権の外交政策は悉く裏食ってます。

かように地政学の変化に鉄道も無縁じゃないわけですが、サイドバーの直近の2冊の本を読んで気づいたことがありまして、JR7社の経営トップが国鉄OBで占められていることです。歴代でもJR東日本の初代社長の住田正二氏が運輸省OBで、大臣と対立して退官していた結果スカウトされたのが唯一の例外です。JR九州初代社長の石井幸幸孝氏の本では人口密度と鉄道の収支の関連をグラフで示していて興味深いのですが、人口減少で収支の悪化が避けられない中で、関連事業の強化で鉄道事業のウエートを下げたJR九州の自慢話こそ具体的な一方、新幹線物流などの提言は国鉄OBの思考の枠組みから出られていないと感じます。

一方川辺謙一氏の本は、日本の鉄道の特徴として利用客の多さを国際比較の中で明らかにし、要因として人口密度の高さと共に鉄道万能主義の存在を指摘してより客観的に日本の鉄道を見ています。例えばニューヨーク地下鉄の24時間運行について、港湾労働者の通勤の足として始まったことを指摘しています。よくニューヨークでできてなぜ東京でできないか?ということが言われますが、これ謂わば港湾都市としてのニューヨークのレガシーでありそのまま東京に持ち込むことはできません。

他にもいろいろありますが、超電導リニアとハイパーループの比較を取り上げます。旧国鉄時代から半世紀に亘って開発が続けられ、着工にこぎつけたリニアですが、人手不足や談合事件の影響で事業の遅れや事業費の拡大は避けられないところ。一方アイデアとしては古くからあるハイパーループが世界的に注目されてます。

きっかけは2013年にテスラやスペースXのCEOのイーロン・マスク氏の提唱で開発が始まり、2017年には実物大モックアップによる試験運行が始まるという風に急ピッチで開発が進んでいます。元々はサンフランシスコ―ロスアンジェルス間のカリフォルニア高速鉄道プロジェクトの対案として提案されたもので、同区間での事業化が目論まれております。

原理は中を真空近くに減圧した鋼管チューブの中を28人乗り程度のカプセルを搬送させるもので、当初空気浮上の計画を永久磁石による磁気浮上に改め、時速760マイル(1,220km/h)を目指すってことで、音速域でジェット旅客機の1.5倍の速さです。若干の勾配への対応は考えられておりますが、曲線走行は不得手ってことで、日本のように平地が狭く山がちな地形では導入が難しいのですが、広い平野部にまばらな人口密度の大陸国にとっては、これぐらいのスピードで航空客すら取り込むようなものでなければ事業化が難しいという側面はあります。

カリフォルニア高速鉄道の事業費は800億ドルに達すると言われますが、需要面を考慮すれば公的支援抜きの事業化は不可能で、州民の理解も得にくい訳ですが、ハイパーループは高速道路に併設することで100億ドル程度の事業費で実現可能としており、開発費も含めてクラウドファンディングで資金集めをしており、投資家の関心も集めているということで、いかにもアメリカらしい話ですが、欧州の鉄道事業者やサウジアラビアなどの産油国も興味を示していて大化けの気配があります。鉄軌道の高速鉄道よりもコストのかかる超電導リニアのマッチョな時代錯誤ぶりに疑問を感じない石井氏もやはり国鉄OBなんだなあと。

そうそうイランと言えば共和制だったのにアメリカの秘密工作でパーレビ国王という傀儡を立てて親米政策に舵を切った結果、イスラム革命を呼び込んだんですが、そのパーレビ時代にイランに新幹線を作りたいとオファーがあって当時の国鉄は大乗り気だったようですが、イスラム革命でご破算になりました。他方アメリカ製兵器の購入で代金を支払った後でイスラム革命が起きて引き渡しが行われなかった結果、イランによる代金返却が求められ、核合意に関連して返却されたようですが、その一部が北朝鮮に流れたという観測があります。核実験やミサイル実験を繰り返してた資金はイランから?ま、国鉄は実害がなくて結果的には良かったんですが。

あと例えば自動運転車の登場に危機感を口にするJR首脳はいますが、欧州では鉄道事業者が自動運転バスの実証実験に取り組んでたりしてて、やはり周回遅れ感が否めません。自動運転車に関しては法制度の問題の方が大きく、現状でも適切なゾーニングができれば導入できるところはそれなりにあると思いますが、そういった議論は進みませんね。

てなわけで、JR経営陣が国鉄OBで占められている現状に危うさを感じます。いずれJRプロパーのトップが登場するかもしれませんが、幹部社員の学歴面で見ると旧帝大卒中心だった国鉄時代とは様変わりしており、JRのような大組織を動かせる人材が出てくるかどうか。というか国鉄OBの覚え目出度い社員が出世して次世代リーダーになるとすると、申し訳ないけどJRの将来は暗いと感じます。

議論を拡張して今や失敗確実のMRJの何が問題だったのかにも触れておきます。ボーイングとエアバスの2大メーカーのラインナップから外れる100人乗り以下の小型機でボンバルディアとエンブラエルが争う中に割り込もうとしたわけですが、新興国の経済成長と共に低燃費の小型機の需要は確実に拡大すると見込まれますから、狙いはわかりますが、安直じゃないかと。

小型機メーカー2社は母国のカナダもブラジルも国土が広く国内に小型機の巨大市場がある訳で、鉄道のシェアが高く国内市場が当てにできない日本で開発する意味を問うたのか?って疑問が湧きます。開発直後にジェット時代になって時代遅れになったYS11ですら、当時国内ローカル空港のジェット化は夢物語だった時代で、ある程度国内で消化できる見込みがあった訳ですが、それすら怪しいプロジェクトがうまくいくと考えていたとすれば大甘ですね。

一方エアバスではバッテリー駆動のモータープレーンを開発中で、フィンランドその他で導入の検討がされてます。現状バッテリー性能の制約から航続距離は数百km程度ですが、国内線で使うには十分だし再生可能エネルギーの活用で石油輸入を減らせるしCO2排出量も減らせるということでのチャレンジです。MRJもこれぐらいのチャレンジがあっても良かったのでは?

てなわけで、魚と大組織は頭から腐るって同じ結論です^_^;。

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Sunday, January 14, 2018

マル生運動の悪夢

アベノミクスも5年目を迎え、輸出大企業を中心に企業業績は上向き、株価も高値更新を続けます。失業率や有効求人倍率などの数値も景気が上向きと取れる動きですが、生活実感が伴わない状況が続きます。当ブログでは世間が言い出す前からアベノミクスの問題点を指摘してきたわけですが、実際その通りの結果で、未だにデフレ脱却できずに成果の乏しい状況が続きます。

そもそもこれだけ労働需給が締まってきたら金融緩和も財政出動も効かないわけで、金融緩和は出口へ向かわざる鵜を得ないし、財政政策はそもそも求人難で事業が滞り予算通り執行できていない状況ですから、むしろ財政再建の好機なんですが、そんな気はサラサラないようです。むしろ成長戦略として規制緩和をぶち上げたり、TPPを口実に農業を補助金漬けにしたり、モリカケスパコンで怪しげな便宜供与をしたりしてますが、今年は働き方改革だそうで、生産性革命をやるとか。まるでマル生運動で労使関係を疲弊させ、解体へ向かった旧国鉄の失敗をなぞるようなこと言い出してます。こりゃ救われんわ。

日本企業の生産性の低さは以前から指摘されてきましたが、長時間労働の解消という美名のもと,働き方改革と称して労基法が改悪されようとしていることは社畜ネタのエントリー希望のエントリーでも取り上げました。わかりやすくまとめると以下の通りです。

1.脱時間給として労働時間でなく成果で評価する高度プロフェッショナル制度(残業なし)
2.裁量労働制の業種の拡大とテレワークによる勤務時間の曖昧化(残業請求は可能だけどやりにくい)
3.労基法条文に残業時間上限を明記しつつ業種や繁忙期の例外扱いも可能に(事実上残業し放題+未払い残業訴訟時の賠償額の上限になる)
これ残業代を圧縮するためで、それが3%賃上げの原資と財界は胸算用してます。政府は必ず通常国会でこれを通すでしょう。野党がまとまらないのが心配ですが、これも以前のエントリーで心配したことが実現するということですね。

これだと長時間労働はステルス化して事実上長時間労働は温存ざれ生産性も上がらないってことになります。そもそも生産性を現場の努力で持ち上げようってのが間違いなんで、本来は設備投資によって資本で労働を代替することや、M&Aなどで事業の見直しをして規模の経済とシナジー効果で生産性を高めるのが王道です。例えばドイツの名門企業シーメンスが鉄道部門を仏アルストムに売却して重電部門に特化したのが典型ですが、中国北車と中国南車を国策で合併させて中国中車としたことで、かつて加ボンバルディアと並ぶ鉄道ビッグ3の地位が脅かされる中での大胆な経営判断です。生産性向上ってこうやるってことです。

日本の場合労働需給が締まってきたことは上記のとおりですが、中身が問題で、就労者数は確かに増えているんですが、総労働時間は横ばいで、つまり非正規の短時間労働者が増えただけってのが実態です。深刻なのはその間GDPもほぼ横ばいですから、労働力の投入量と生産量が変化していない、つまり生産性も横ばいってことです。GDPが横ばいでも総労働時間が減っていれば生産性は上がっていることになるわけで、これなら無理なく労働者の報酬である賃金を上げられますし、労働時間の減少はつまり余暇時間の増加となりますから、その分消費者余剰が拡大して有効需要を生み出します。また人口減少の中で求人難も緩和するわけですから、現在の人口動態に整合的です。てことでこれ貼っときます。

生産性向上 経営者こそ主役   :日本経済新聞
これ企業だけの問題でもないんで、水道事業の民営化を打ち出した東京都の事例が面白いんですが、東京都水道局は23区の水道事業を担う地方公営企業で、基本独立採算制なんですが、多摩地区では各市町が直営事業で手掛けているケースが多く、独自水源として井戸を持っていたりしますが、地域開発で水需要が増えると対応できなくなり、都水道局に水源を依存するケースがあり、加えて小規模な直営事業では合理化も難しいってことで事業委託しているところもあるわけですが、そのために都水道局は増員したくても公務員定員の壁でできないってことで、民営化してそのくびきを外そうってことです。水道のようなインフラ事業は希望の経済が働くわけで、多摩地区に留まらず埼玉県の自治体の受託の需要も取り込めるわけで、伸びしろがあるわけです。

これ営団→メトロに事業領域を侵食されてきた都交通局と大きく異なる事業環境だからこそです。都営交通の民営化はメトロの株式上場絡みで都の保有株式の扱いが問題になるので実現可能性はほぼありません。

こういう観点から国鉄民営化を見直すと、国鉄末期から営業路線の廃止、切り離しが相次いで事業規模を縮小したJR北海道と、元々の規模が小さいJR四国が苦しむのはある意味必然です。むしろ全国1社体制でギリギリ規模を確保したJR貨物が黒字化で上場が検討されるってのも、不思議ではありません。JR貨物の場合旅客会社へ支払う線路使用料問題という爆弾を抱えてはいますが、これ旅客6社と同様地域分割していたらこうはいかなかったでしょう。

てことで30年も経つと変化は避けられないところです。見直しは必要でしょう。おまけ。

除雪車出動に遅れ JR信越線大雪で立ち往生  :日本経済新聞
そもそも異常な積雪でダイヤが乱れに乱れ、運転士が雪かきしながら進路を確保しつつ運行していたものの力尽きたわけで、4両編成に乗客430人という状態で、不安を抱える乗客に乗務員が丁寧に対峙したからパニックにもならずに済んだわけです。もちろん早い段階でも運転抑止の判断もあり得ましたが、時は夕刻ラッシュ時間帯で、帰宅の足にとJRを当てにして駅に乗客が集まっている状況で必死に運行を確保した結果です。首都圏ならば振り替え輸送で他社線へ誘導で済みますが、大雪でバスも動かない中での出来事です。本当に頭が下がります。新幹線の好調にブイブイ言わせながら殿様商売の某JRと大違いですね。

も一つおまけ。そもそもこの冬の寒冷化と大雪は温暖化の影響と見られています。理由は北極の海氷の減少で氷ならば反射される太陽輻射熱を海水が吸収して海水温が上昇し、水蒸気が発生視野sくなっている一方、海水温の変化に伴い偏西風が蛇行し、大陸の寒気が南下したこと。その結果高めの海水温と寒気の温度差で雪雲が発達し以下略。偏西風の蛇行は北米、欧州、東アジアで特に顕著で、いずれも化石燃料の消費が多い地域です。とりわけ日本は低コストを理由に石炭火力への依存が強く孤立気味。電力会社の経営の都合で電車が足止めって考えると怒りが沸いてきます。

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Sunday, December 24, 2017

名古屋リニヤ談合だがや

リニア回りが騒がしくなっております。

名古屋市内の工事で不正か リニア建設入札で大林組  :日本経済新聞
この時点では偽計業務妨害容疑でしたが、東京地検特捜部が動いてるんですから、それで終わるはずは無いです。案の定これ。
独禁法違反容疑で大手ゼネコン4社捜索へ リニア工事  :日本経済新聞
てことで本丸は独禁法違反ですが、リニアがJR東海の民間事業だから、入り口として技研業務妨害を利用したわけです。JR東海社員による予定価格漏洩もあるので、構図としてはかつての官製談合と同じです。

若干のおさらいですが、リニア建設は当面名古屋までで、当初5.1兆円の事業費を見込んでいました。これ新幹線買い取り代金のJR東海負担分の5.1兆円と同額で、しかも元利均等半年賦の支払いで2017年に終了します。つまりその分以後の会計年度でキャッシュフローの余剰が出るので、それを建設資金に充てるって構図が見えてきます。実際は駅設置費用を自治体負担から自己負担に付け替えたりして事業費を5.3兆円に膨らませてます。

メディアやネットでは3兆円、9兆円や、中には30兆円なんて数字まで踊って混乱が見られますが、事実に基づいて見ると、まず9兆円は2047年に予定される大阪延伸を含む事業費9.1兆円を指すものです。そして近畿選出の国会議員からの要望があって、大阪延伸を前倒しする目的で、財政投融資資金から3兆円を融資してJR東海の資金繰りを支援するという話になり、JR東海は既に融資申請を済ませておりますが、大阪延伸部分の着工前倒しが実現したわけではありません。当面は名古屋までの建設工事を本格化させることに集中する予定です。

これが実は今回JR東海の躓きの石になった可能性があります。財投資金の投入自体は融資ですが、政府保証付きの財投債を起債して投資家から集めた資金を融資に回す形で、政府保証がついてますから、万が一のデフォルトの際には政府財政負担で投資家へ弁済される形で、間接的ながら財政負担の可能性があり、公的資金と言えるものです。故に民間企業としてのJR東海が事業主体なんですから、随意契約で建設業者を決めても良かったところを、競争入札で形式を整える必要があったと考えられます。

一方で建設業界は空前の人手不足で、震災復興も道半ばなのに五輪特需で人手を取られ、そればかりかセメントや鋼材の値上がりもあり、ゼネコンの収益を圧迫しています。鋼材に関しては中国の過剰生産対策で生産が減ったことに加え、異次元緩和に伴う円安で円建て資源価格の上昇もあり、それらが重くのしかかります。そうすると、上述のような新幹線買い取りローンの終了に伴うキャッシュフローの余剰の範囲でのリニア建設が難しくなるわけで、財投資金融資はその意味で渡りに船だったんでしょうけど、同時にタイトな資金計画を変更することは難しく、JR東海自身が事業費圧縮の音頭を取らざるを得ない中での今回の談合と見ると、よりクリアな構図が見えてきます。

あと言われているのがJR東海名誉会長の葛西敬之氏と安倍首相との親密さでして、モリカケスパコンに続くアベ友大疑獄事件の本命という見方もされていて、東京地検特捜部の標的は政治家とも見られております。そして仮にリニア建設費が膨張しても政府が面倒見るはずだから、最大30兆円の国民負担って憶測も出てくるわけです。事実に基づけばそこまでの構図を現時点で論じるのは無理があります。

寧ろ良かれと思って財投資金融資の助け舟を出したことが災いしたとすると、何とも皮肉ですが、実はこれアベノミクス全般に見られる不整合なんですよね。そもそも各種経済指標は景気拡大を示唆しており、金融緩和も財政出動も必要なのか?という疑問のあるところ。ただでさえ震災復興需要と五輪特需がある中で、人手不足は起きるべくして起きたものです。実際失業率は過去最低、有効求人倍率は上昇の一途です。財政出動による景気刺激はあくまでも失業対策として余剰労働力を吸収するから意味があるわけで、現在の雇用情勢での財政出動は単に人手不足を深刻化させる意味しかないわけです。有体に言えばアベノミクスは逆効果なんです。

そして中央リニア建設計画はまんまとその罠に嵌まったわけです。というわけで、アホとしか言いようがない。おまけですが、名古屋、大林組、談合の三題噺として地下鉄談合の過去エントリーを置いときます。

おまけのおまけ。リニアの工事に関してはJR東海の秘密主義がいろいろ摩擦を生んでます。大きなところでは南アルプストンネル工事に伴う水脈断裂を静岡県が心配しているのに、駅ができない静岡県は自治体協議に加われないとか、大深度地下や長大トンネルから発生する大量の残土の処理が不透明とか、東農地区あるウラン鉱脈との近接工事で万が一放射性残土が出れば工事自体が止まるに留まらず周辺の土地封鎖まであり得ますが、JR東海の秘密主義は問題の発覚を遅らせて被害を生じる可能性があるとかですが、こういう憶測を生むのはJR東海の秘密主義匂うところが大きいわけで、そんな片りんを見せたニュースがこれ。

斜面崩壊はリニア関連工事が原因、発破で地山緩む  :日本経済新聞
無理を重ねていることが窺われます。

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Sunday, October 15, 2017

タダより高いベーシックインカム

希望の党が失速気味です。小池代表の排除発言に世論の反発がある一方、反発する民進党候補者の受け皿として枝野氏による立憲民主党の立ち上げに合流したり無所属で立候補したりという動きが出てきて、それに対する世論の反応はおおむね好意的ということで、野党補票が割れて自公有利の見方がある一方、態度を決めていない無党派層が54%ということで、ますます結果が見通しにくくなりました。

世論の追い風を受けていた希望の党ですが、右派の本音からか踏み絵みたいなことをしたのはわからないところ。自前で候補者を揃えられていなかった希望の党にとって前原氏の提案は渡りに船だった筈。本心は伏せて協力する判断もあったはずですが、そうしなかったのは何故か、正直分かりません。しかしまぁ急ごしらえの新党で若狭氏や細野氏などスタートアップメンバーの実務能力の欠如ぶりを見るにつけ、元々そんな程度の存在だったってことでしょうし、だからこそ逝去後の混乱も含めて選挙向けの乗り物として前原氏にも好都合だったんじゃないでしょうか。前エントリー末尾の希望を捨てないではこの辺を睨んだダブルミーニングではありますが^_^;。

てなわけで、急な選挙で各党急ごしらえの選挙公約を出してきてますが、民主党の09年マニフェストのような練度は望むべくもないですし、特に与党である自民党や公明党が何を打ち出すかと思えば19年の消費税増税分の使途変更で全世代向け社会保障と教育の無償化を打ち出してきました。つまりアジェンダの変更ですが、それなら何故国会を開いてそこで提起しなかったのか?国会論戦で論点を明らかにした上で国民に信を問うとするならば、解散の意義も認められてモリカケ隠しとか敵前逃亡とか言われることはなかったんじゃないでしょうか。

とはいえ所謂三党合意で税収増となる5兆円の使途として4兆円を財政再建に1兆円を社会保障にとした点も、それとは別にアベノミクス第2の矢とやらで財政出動を決めているわけで、このこと自体が財政再建を反故にしているわけですし、もう少し言えば財源の当てもなく法人減税をしているわけです。政府は盛んに「税収は増えている」としていますが、14年の消費税の5%から8%へのアップがあったんですから当然のこと。寧ろ上げ潮路線と称して経済成長で税収増を謳いながら、法人税収は減っています。この辺のゴマカシは言い出すときりがないですが。

それでも希望の党の公約集の発表は、急ごしらえでも有権者の判断材料にはなりますから、それなりに注目する意味はあります。その中でやはりというか、消費税増税凍結を打ち出しています。延期ですからいずれは上げるということですが、その前に消費税制度の矛盾をどうにかすべきです。例えばこれ。

金密輸、狙われる日本 消費増税で「うまみ」  :日本経済新聞
これインボイスを用いない日本の消費税制度の欠陥をあらわにしてます。そもそも金を商品と捉えて消費税をかけてるのは主要国では日本ぐらい。加えてインボイスがなくても消費税を受け取れますから、密輸して日本国内で売れば8%分丸儲けになるわけですね。これこのエントリーで取り上げてますが、欧州の付加価値税では課税事業者を選択しなければ発行できない税額票(インボイス)がなければそもそも取引に応じてもらえないから、この手の不正が防げるわけです。加えて0%を含む複数税率への対応も容易で、金は金融商品として0%扱いすれば、こんなおかしなことは起きないわけです。二重に消費税制度の矛盾が出ているわけで、税率が上がれば矛盾は拡大するわけですから、まずはインボイス導入してから税率の議論が真っ当です。

希望の党が打ち出した政策ではそのほか企業の内部留保課税とタイトルにあるベーシックインカム(BI)があります。内部留保課税については、二重課税の疑いがあり問題ですが、仮に課税すれば配当と役員報酬に配分されるだけで、狙いとされる賃金や設備投資への配分は起こりません。そこを狙うなら法人税増税が効果的です。そんなことすると日本企業の国際競争力ガーという声が聞こえてきそうですが、法人税減税の目的は新興国や中小国で国内の資本蓄積が不十分な国が外国企業を誘致するための政策であって、莫大な累積経常黒字を抱え込む日本ではあまり意味がありません。

加えて海外事業会社の利益配当の国内送金で立地国の税率が日本より低いと連結納税で差額納税を迫られるというのがあり、そのため企業が海外に資金を滞留させることになるというのがありますが、既に麻生政権当時に益金の国内送金分の課税免除が行われております。後は外国企業の日本進出を本当に望むならば、進出外国企業限定の軽減税率を導入すれば良いんで、国内企業向けの法人減税は必要ありません。実際上述の通り法人税収は減っているのが現実であり、これ以上の法人減税は有害無益です。

で、本丸のBIですが、これ実は一部エコノミストの間では以前から出ていた議論で、年金や失業保険や児童手当や生活保護などの社会保障制度を統合して全員に現金給付をすれば、行政コストが最小となるという議論です。1人月5万円年60万円として80兆円弱でっすが、医療分野を除く社会保障給付の合計が大体この水準ということです。

これ税金の負担分は凡そ半分で、残りは年金や雇用保険の保険料や積立金から拠出されているわけで、見方を変えれば年金保険料として納めたはずのお金がBIの給付に回ることで給付が5万円に減額されるって話ですから、加入者の立場からは簡単に賛成できない話です。加えて被用者保険は労使案分で企業負担分もありますから、使途の変更は企業の同意も必要で、ただでさえ医療を含む社会保険料の値上がりで実質増税と言われる中での使途変更で、これほぼ不可能です。

加えて支給対象に国籍条項が入る可能性も指摘できます。現行制度では国籍に関係なく制度に加入すれば支支給を受けられますが、所謂在日を含む外国人を排除するとすれば問題です。差別問題であると同時に現実は既に外国人就労がなければ必要な人が集められない業種も多数存在しますから、GDPを押し下げる要因になります。

似て非なるのが給付付き税額控除でして、日本の税法では所得控除が中心ですが、これを税額控除に振り替えて、納税額が控除額に満たない場合はその差額を現金で給付するという制度です。例えば現状の基礎控除38万円に給与所得控除や個人事業主の青色申告控除で加算される65万円をプラスして103万円となりますが、計算の都合で1000万円として、標準税率プラス社会保険料負担を3割と見込んで年額30万円を申告納税者に対して税額控除するというもの。要件は申告納税だけですから仕組みがシンプルですし、年金などの社会保険制度との調整が要らないので導入しやすいということになります。加えて基礎控除の無い消費税制度との相性も良いということになります。制度の持続可能性の観点から改革不可避ながら利害調整が難しく時間のかかる年金改革を待たずに実施できるという意味でも現実的です。

おまけで年金改革の議論ですが、少子高齢化で年金の給付制限は不可避とされ、支給開始年齢の引き上げが議論されてますが、これ現役世代の制度参加の意欲を失わせます。守るべきは基礎年金部分なのであって、報酬比例年金はおまけと割り切って、支給上限を定めれば、基礎年金部分の給付水準を維持しながら、同時に世代間扶助の仕組みが入ることで現役世代の負担も軽減できますが、何故かこういう議論は出てきません。

年金に関しては旧国鉄債務追加負担問題でも触れましたしみなし積み立て年金についても取り上げました。制度としての持続可能性は十分ににあります。高額年金の受給制限は富裕層には不満もあるかもしれませんが、個人向け確定拠出年金(iDeCo)も制度化されており、これ拠出金は所得控除となる上、運用益非課税プラス年金型の受け取りの場合公的年金と同じ税優遇が受けられますから、そちらへどうぞで問題ないでしょう。

鉄分薄いですが^_^;希望の党の選挙公約を起点にこうした実質的な政策論争が起こるならばそれはそれで悪くはないですが、それを伝えるメディアが理解できていないところがネックです。しょーもねーなー。

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Sunday, July 09, 2017

見えざる手の穢れ

いやはや、秋葉原の安倍辞めろ、安倍帰れコールは大変な騒ぎでした。これがなくても都議選での自民党の敗北は自明でしたが、都民ファーストの勝利ってのはちょっと違います。公明党が小池知事側についたことと、築地市場の豊洲移転問題を選挙前に方針を示して争点から外したことで勝負ありです。小池知事には特にシンパシーはありませんが、こんがらがった現状を起点に考える限りはこれしかない落としどころです。

気になるのが投票率の低さで、これだけ注目された選挙なのに、前回は上回ったもののやっと5割の水準です。こうなると組織票頼みの公明党や共産党が有利になる一方、浮動票を都民ファーストの会がさらって、国政レベルの2大政党の自民党と民進党は激減。寧ろ民進の方がダメージが大きく、敢えて言えばフランスの総選挙と似た構図です。既存政治勢力に対する不信感が表面化したわけで、深刻な問題です。

やはり森加計問題がボディブローのように効いている。安倍首相自身は外遊に逃げて意味のない閉会中審査が招集されましたが、ミエミエのアリバイ作り。政権側は成長戦略としての規制緩和で正当な手続きを邪魔する文科省を抵抗勢力に仕立てようとするでしょうけど、森友、加計を導いた見えざる手が穢れていたんじゃないかという疑惑ですから、国家統治の根幹にかかわる問題です。

これアメリカでも一部の経済学者が問題視してますが、所謂レントシーキングと呼ばれるもので、大企業や富裕層や政府高官の縁故者等による利益誘導全般ですが、近頃は例えば法人減税のように各国が競い合って減税するような状況が見られるようになり、主権国家の根幹を侵食する問題と捉えられております。規制緩和や減税など、所謂新自由主義的な政策の帰結として、格差拡大が各国で問題になっておりますが、少数の富裕層や大企業が自分たちに有利な政策を金で買う結果、ますます格差拡大が進むということで、ピケティが示した累進課税の強化ぐらいしか打つ手がない状況です。一部で成長がないから格差が拡大したという風に誤読されてますが、成長が処方箋にはなり得ないのが現実です。

それを端的に示すのが、米FRBの利上げに拘らず物価上昇が鈍い問題ですが、欧州も似たり寄ったりで、いよいよ日本のように成長率がゼロ近くになり、ピケティが謎としてきた日本の低金利が米欧双方で見られるようになっています。正確には欧州では国によりけりですが、ドイツのように長期金利がマイナス圏に沈んでいる国と信用不安が抜けないギリシャやイタリアのように厳しい状況の国が同居してますが、イタリアの大手銀行モンテパスキの国有化で株式や劣後債を保有する個人の保護を欧州委が認めるなど、銀行同盟の進捗を足踏みさせる状況にあります。こんなじゃドイツが慎重姿勢を崩さない財政統合は夢のまた夢。Brexitで結束を呼び掛けてもEUの統合は進まないと見るべきでしょう。

そんな中でイギリスとフランスで行われた総選挙の結果が興味深いところです。イギリスのメイ首相にとっては手痛い敗けですが、経済より移民制限を優先するハードブレグジット路線は修正を迫られます。ただし伸びたのは2大政党の片方の労働党であり、Brexitに反対の中道の自由民主党や地域政党のスコットランド国民党は議席を減らしており、Brexit自体は信任されたと見て良いでしょう。ただし下院の安定多数を握って対EUで交渉力を高める戦略は否定されました。ま、ある意味時間切れ強制離脱ならば究極のハードブレグジットではありますが、だれも望まないですね。

とはいえ投票率が66%と大幅に高くなり、特に若者の投票率が高まってその票が労働党へ流れた結果というのが面白いですね。Brexitを問う去年の国民投票のときには経済が好調だったことで、ある意味国民の大胆な判断ができたんでしょうけど、その後のポンド安による輸入物価上昇が国民生活を圧迫し、特に失業率の高い若年層が、鉄道の再国有化や大学授業料無償化などを訴える労働党コービン党首を支持した結果です。ある意味アメリカのサンダース現象が再現した形ですが、同じ2大政党制でも、エスタブリッシュメントと見做されたクリントンとそれを攻撃するトランプというねじれた構図と異なって、ある意味イギリスの民主主義はバランス感覚を保つ健全さがあるのだなと感心します。

それにひきかえフランスの総選挙は投票率44%と国政選挙では信じられないような低投票率で、マクロン大統領率いるアン・マルシェ(共和国前進)の大勝という都議選に似た結果で、社会党、共和党という2大政党は議席を減らしています。つまり政治不信の結果であり、浮動票が消えた結果新しい政治運動である共和国前進や共産党など組織票を動員した勢力が浮上した構図です。ちなみにマクロン氏と大統領選を争った国民戦線ルペン党首が初めて議席を得ているのもその表れです。

マクロン氏のスタンスはEU統合強化で、そのために規制緩和や労働市場改革をしてドイツに寄り添おうということですが、これサルコジ政権で大失敗した路線なんですよね。で、反動で社会党オランド政権が誕生したわけですが、絶好調のドイツに経済で後れを取り成す術なく停滞し、またリビアやシリアへの軍事介入で成果を得られずむしろテロの標的になるなどしており、このままではフランスがEUのお荷物になりかねない状況でマクロン政権が誕生したわけですが、国民の不信感の払しょくは難しいでしょう。ドイツにしても、EU統合強化を謳うマクロン政権を手放しで歓迎はしないでしょう。

そうなるとBrexitに対して強面で対応してEUの結束を図るということになりますが、これ第1次大戦後のヴェルサイユ条約での対ドイツ強硬姿勢を再現する危険性があります。イギリスに対して強硬姿勢を示すことで、世論の支持を保とうとするんじゃないかと思います。ある意味国民戦線ルペン党首とEUに対するスタンスの違いはあっても、大衆迎合的になる可能性は高いでしょう。となるとBrexitは波高し?

一応お断りしておきますが、私はBrexitショックの株安で、欲しかったけど高くて買えなかった株を拾うことができたんで、イギリスに対して見方が甘くなっている可能性は否定しませんが^_^;、基本的にBrexitはまあうまくいくんじゃないかと思っております。総選挙で示された国民の意思も明確ですし、変えるべきを変え守るべきを守る本来の保守主義が機能していると見ているんで、元々EU内で特権的な地位にあったイギリスにとっては、EUの統合強化にどこまで付き合うかは、いずれ問題になるところです。

加えてEUの強面に対してはいくつかの強力なカードがあります。その1つが英領ジブラルタルの帰属問題でして、仮にスペインへの返還を持ち出せば、EUの態度を変えさせることは可能でしょう。それどころか紛争を抱えるキプロス問題も解決できず、旧ユーゴの和平交渉の失敗でNATO軍の軍事介入に頼らざるを得なかったなど、EUの紛争解決能力の低さから言って、イギリスとの決定的な対立は結局プラスにならないということで軟化する可能性は一定に存在します。ましてトランプ政権でアメリカが当てにできないしウクライナを巡るロシアとの対立もあるしということで、どっかの時点でイギリスとEUは和解するしかないでしょう。

てなこと言ってる間に北朝鮮のICBM発射実験成功の発表があり、レッドラインを超えたとするアメリカの軍事オプションに関心が集まりましたが、トランプ大統領の他人事ツイートで軍事オプションは早々に消えました。冷静に考えて、アメリカが軍事オプションを行使できる状況は、中国が中朝国境で軍事行動を起こし、それに呼応してアメリカが動くというシナリオでしょう。ただしそれをやるには韓国の同意は当然として、ロシアの黙認も取り付ける必要があります。北に融和的な文ジェイン政権誕生の韓国の同意もロシアゲート問題を抱える中でのロシアの同意もハードルが高いでしょう。せめてということで、北朝鮮と取引のある中国企業を制裁対象にして揺さぶりますが、習近平主席は動じない。そもそも中国の制裁が甘いというのは、勝手な思い込みでもあります。

実は北朝鮮は経済成長しているんじゃないかという見方がアメリカなどで出ており、ニューヨークタイムズによれば1-5%程度の経済成長の可能性を報じています。一応2008年時点でのGDPが米ドルベースで262億ドルで人口が2,500万人ですから、1人当りGDPは1,000ドル程度でベトナムbなどと同じぐらいですが、北朝鮮は石炭やレアアースなどの鉱物資源の豊富な資源国でもあります。そして2008年といえばリーマンショックの年で先進国がこぞって打撃を受けた一方、中国が大胆な財政出動で経済を浮揚させて所謂デカップリングで世界経済の失速を踏みとどまらせたのですが、その結果原油など資源価格が高騰した時期でもあります。中国の電力需要拡大や鉄鋼生産の拡大で石炭需要が増したわけですから、北朝鮮がその恩恵を得ても不思議ではありません。仮に5%成長が続いたとすれば、凡そ1.5倍強の400億ドル程度になっていても不思議ではありません。つまり昨今のミサイル実験の繰り返しは、金回りが良くなった結果であり、その原因を作ったのは他でもないアメリカだってことです。

てなわけで北朝鮮問題は決め手がないまま推移すると思いますが、その中国経済が明らかに成長鈍化しており、皮肉ですがそれが北朝鮮にとっては一番のとばっちりになるでしょう。尤も中国の経済減速は世界も返り血を浴びることになりますが。

てな状況で例えば東芝メモリーの売却先を巡って技術流出を心配する政府のバカさ加減に呆れます。毎年3,000億円から4,000億円を投資して技術の陳腐化を防がなきゃならない半導体で技術流出を心配するってほとんど冗談みたいな話です。そんな風だから日本や欧州の技術を導入して世界最大の高速鉄道網を構築した中国を「パクリだ!」とかdisってる暇があったら、整備新幹線の中途半端なハードの見直しを真剣に考えるべきです。そんな中でこのニュース。

時速360キロの新型新幹線 JR東日本、30年度投入へ  :日本経済新聞
FASTECH360(E954系)で目指した速度を再度新しい試験車で目指すわけですが、E954系の成果として320㎢/hのE5系とE6系が登場したわけですが、320km/h運転区間は宇都宮―盛岡間に留まり、宇都宮以南240km/h、大宮以南110km/h、盛岡以北260kom/h、青函トンネル内140km/hの速度制限を受けています。2030年の札幌k開業を睨んでと言っても、ほぼ全区間で360km/h運転ができなければ、東京―札幌間で4時間の壁は切れないわけで、対航空で優位に立つことはできません。それもこれも財源ねん出を優先して中途半端なハードを作ったツケでして、相当な追加投資が必要ですが、JR東日本単独では難しいし、パートナーのJR北海道には頼れないしということで、試験車で速度制限区間のスピードアップがどこまで可能なのかは未知数です。特に大宮以南と青函トンネル内の制限解除は殆ど不可能と言ってよいでしょう。経営面の不透明さも指摘される中国高速鉄道ですが、今更ながら差をつけられてしまいました。一方こんなニュースも。
JR東、英国の鉄道営業権を応札へ 事前審査通過  :日本経済新聞
イギリスのフランチャイズ制に基づく鉄道営業権を取得しようということで、これが記事にあるように成長エンジンになるかどうかは微妙ですが、いつまでも内弁慶のドメスティック企業ではだめだということで世界へ出ることは良いことです。この経験を活かして国内にフィードバックして、新しい公設民営鉄道の在り方を提案できれば面白いかなと思っております。

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