甘くないサプライチェーン攪乱
前エントリーの続きですが*1、イラン侵攻でアメリカに対抗するホルムズ海峡封鎖ですが、ボチボチ通過船舶が見られます*2。船毎に個別にイラン政府と交渉している模様です。狭い場所で33㎞のホルムズ海峡ですが、一応国連の国際海峡に指定されているものの、沿岸国のイラン、UAE、オマーンの各国は認めておらず、各国の領海に跨る航路が設定されております。喫水線下が深いタンカーが通れる航路は限られており、中央が深いスエズ運河に似ています*3。故にイランによる航行船舶の管理も容易で、機雷を撒かなくても封鎖が可能で原油高に苦しむアメリカのチョークポイントになる一方、中国船などは通すという風に選択的に対応できる訳です。攻撃用ドローンという兵器の進化も関わりますが。
とはいえ通過船舶は少なくペルシャ湾で足止めの船舶もまだ多数ある上、イランの反撃で石油施設やLNG施設も破壊されていますから、中東産原油やLNGその他の資源の搬出量は減少します。その影響は多岐に亘り、アジアを中心にサプライチェーンを攪乱させます。既にベトナムやフィリピンなどではガソリンの品切れや停電などの影響が出ていますが、ガソリン高を補助金で抑え込むわーくにの危機感のなさ。しかしさすがに遅ればせながら動きが見られます*4。とりあえず石油関連に偏ってますが、LNG不足は電力危機に繋がるし、尿素やアンモニアは化学肥料の供給難で農業も影響します。またヘリウムショックも*5。医療機器のMRIで使われAI半導体製造にも欠かせないヘリウムですが、天然ガス精製過程の副産物でアメリカ、ロシア、カタールが生産国ですが、そのうちの1つが戦火で供給停止となれば世界で取り合いになります。リニアの実現可能性も低下します。
てことで今までも災害その他でサプライチェーン攪乱はありましたが、今回は異次元と言えるものがあります。例えば中越沖地震でエンジンのピストンリングのトップメーカーのリケンの被災で川下の自動車メーカーは直ちに生産停止して各社からリケンの復旧の応援に人員を派遣して1週間で復旧させました。見事な危機管理ですが、生産停止期間には売り上げは立たない訳ですが、その損失を考慮してもサプライチェーンの回復に集中した方が被害が少ないという判断です。ホルムズ海峡封鎖でさまざまな産業に支障が出る中で、政府の対応は適切かは問われます。なのにこんなことばっかり*6。ペルシャ湾で足止めされている船舶の安全通航をイラン政府と交渉することや需要抑制のための省エネ自粛ではなく公務員を予備自衛官にする法案作りって、どこまでチグハグなのか?戦争したいの?他国は現実的な対応に動いてます*7。加えて日本の自動車メーカーには悲報です*8。トランプ政権のEV補助金停止で関税のマイナスを打ち消したのも束の間、ガソリン高でEVシフトを求められています。遅れている日本メーカーには負担です。
そしてEVつながりでこれも取り上げます*9。大阪関西万博輸送で万博協会が購入し万博輸送に供して終了後大阪メトロ傘下の大阪バスが引き取る予定の150台がリコールで動かせずにいるというもの。元々国産EVバスをということでエルガEVを開発中だったいすゞに打診しましたが、試作段階で量産は無理ということで、大量受注可能で国内でも採用実績のある中国BYDのEVバスに決まりかかったところで当時の西村経産相からEVモータースジャパン(EVMJ)が推されたという経緯があるようです。EVMJは北九州市に本社のある国内企業ですが、生産は中国の新興企業に外注して販売とアフターサービスを国内で行うということで起業し、一部で納入されたもののサプライチェーンは確立しておらず、150台の大量受注ができるだけの実態は備わっていませんでした。外注先の中国新興企業も生産実績のない企業で中国の型式認証も得られず、輸出向けだからと中国当局の規制をすり抜け、日本の国交省も万博に間に合わせる為に手抜きしてという日中当局の不作為もありました。お陰でブレーキホースが露出していて小石を撥ねた程度で傷がついてエアが抜けるレベルの雑な作りでした。それでいてBYDのバスより割高で大阪府などが40億円の補助金を支出しており返還交渉中です。EVMJはおそらく潰れるでしょう。EV後進国という現実を無視した愚かな顛末です。
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