民営化

Sunday, August 18, 2019

困難なインフラのトリアージ

2030年の北海道新幹線札幌延伸に伴う並行在来線問題の検討が前倒しされました。

北海道新幹線の並行在来線、「存廃判断」5年前→前倒し  :日本経済新聞
対象区間は沿線人口が少なく、財政力の弱い町村が連なるだけに、調整は相当手間取りそうです。バス化も含めた検討ですから、廃止も有り得る訳ですが、貨物列車をどうするかが悩ましいところです。

JR貨物の問題は東北新幹線延伸のときに並行在来線を三セクで引き受ける時に、ローカル輸送対応ならば複線電化の東北本線の設備は明らかにオーバースペックとなりますから、JR貨物が貨物列車を維持することが困難と発議されました。その際JR貨物が負担する線路使用料がタダ同然の格安だったことから、並行在来線引き受け三セクにとっては負担ばかりになるということで揉めました。結果的にはJR貨物が支払う線路使用料と三セクが受け取るコスト見合いの線路使用料の差額をJR東日本の負担で補填することで決着しました。加えて北斗星やカシオペアの運行に伴う運賃料金収入もあり、それで経営の屋台骨を支えることで決着しました。貨物幹線だけに貨物廃止は無理だった訳です。

JR東日本にとっては整備区間より手前の根元区間の受益があるので、貨物輸送に伴う負担増は受け入れ可能だった訳ですが、同様の問題に直面した九州新幹線の八代―川内間ではこの手は使えず、並行在来線三セクの肥薩オレンジ鉄道にJR貨物が出資することで、貨物列車向けの電化設備等を維持するという方法が採られました。肥薩オレンジ鉄道のローカル列車は軽量ディーゼル車によるワンマン列車です。

北陸のIRいしかわ鉄道とあいの風富山鐡道では、当初検討されたサンダーバードの富山乗り入れは結局JR貨物とのコスト分担問題で実現しませんでした。IGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道が客単価の高い寝台特急の収入を当てにしたのとは対照的です。という具合に並行在来線貨物問題は統一的なスキームはなく個別対応に終始しました。言い換えれば行き当たりばったりだった訳です。

北海道新幹線に関しては、経営危機にあるJR北海道に追加負担を求めるのはそもそも無理ですし、これまで以上に沿線人口が少なく、財政力の弱い町村に負担を強いることになります。貨物廃止してバス転換もあり得る訳ですが、青函トンネル開通で天候に左右されない輸送手段として特に農産物輸送で優位性を発揮する貨物の廃止は、北海道経済に大きな打撃を与えるだけに、簡単にはいきません。

青函トンネルの新幹線と貨物の供用区間が速度と列車本数の制約条件になっていることから、国交省の本音は貨物廃止に傾いているようで、実際船舶へのシフトが検討されてますが、輸送量から言えば可能でも、天候の影響は避けられず、鉄道による安定輸送が北海道産農産品の競争力となっている現実から無理筋でしょう。

加えて東北新幹線の並行在来線三セクであるIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道にとっては、寝台特急の廃止で旅客収入を減らした上に、JR貨物の線路使用料収入まで減れば、存続が危うくなります。こうなると北海道の都合だけで決めることもできず、着地点が見えなくなります。あとJR貨物自身も国の支援で基盤強化投資を行った結果、黒字転換して株式上場も視野に入る中で、その基盤を国に潰されることになる訳です。この点も将に行き当たりばったりです。

山線区間を除く長万部以南の区間はJR貨物が出資するということも考えられますが、北海道経済に関わる問題だけに、北海道庁が動かなければまとまらない可能性があります。とするとJR北海道に冷たい道庁の対応から見て期待できそうにありませんね。これインフラの積み増しによる維持費拡大問題として指摘しましたが、こうして過剰インフラを抱えると、その廃止も簡単ではないってことで、寧ろ問題を複雑にして解決を困難にします。

一方九州でも問題が起きています。

JR九州「自社株買い」株主総会で否決、青柳社長「今後も対話」  :日本経済新聞
株式上場したばかりに、株主となった投資ファンドからの圧力を受けている訳ですが、同時に豪雨被害で不通の日田彦山線の復旧を巡って関連自治体との間で困難な話し合いが行われています。日田彦山線自体は現状既に都市間輸送も貨物輸送も担っていない純然たるローカル線で、企業経営的には災害復旧するよりバス転換する方が合理的ではあります。

しかし忘れてはいけないのは、JR九州が株式上場に当たって上場基準クリアのために行った経営安定基金を取り崩して新幹線リース料の一括納付と償却資産の減損処理の結果、減価償却費を圧縮して本業の赤字体質を改善した一方、減価償却費の減少は同時にフリーキャッシュフローの減少を意味しますから、災害復旧の資金捻出を困難にしているという側面もあります。言い方は悪いですが、株式上場したために災害復旧もままならなくなったってことです。日経記事では複数のステークホルダーへの対応の困難さと纏めてますが、覚悟がないなら上場なんかするなって言いたいところです。

というわけで公共インフラの民営化は万能薬でも何でもない訳で、例えば大阪メトロや大阪シティバスの民営化の意義は今もって理解に苦しみますが、とりあえずここでは踏み込みません。しかし過剰インフラの淘汰を資本の論理に委ねて良いのかってところはあまり議論されてません。そんな中で北越急行ほくほく線の生き残り策は示唆に富みます。

元々スーパー特急方式を想定していたJR西日本区間の北陸新幹線は、ほくほく線経由で越後湯沢で上越新幹線に乗り継ぐ形が想定されていて、それを前提に北越急行では線路の高速化と共にJR西日本の681/683系を導入し、段階的にスピードアップして160km/hの営業運転を実現した訳ですが、北陸新幹線のフル規格化で梯子を外された形になりました。

そこで利益の一部を基金として内部留保して将来の減収に備える一方、特急廃止でお役御免となる681/683系をJR西日本に売却しローカル輸送に特化します。減収にはなりますが、特急車両の譲渡収入が得られる一方、通過車両キロの減少で保守負担が減少しますから、そこで収支をバランスさせることで存続を図ります。超快速スノーラビットで都市間輸送を維持しつつ、鈍速列車スノータートルという企画列車を走らせるなどして増収に励む一方、2018年12月1日には運賃値上げして収支改善を図ります。万博輸送対応の車両を大阪市に譲渡した北大阪急行と同じ手ですね。

幸いなことに高速化で高規格な線路故にメンテナンスフリーなのと、積雪対策により運休が少ないということで、ローカルな利用者の信頼を得ていることで、安定した収支を実現しています。てことでJR北海道もJR九州の前例を梃子に電化や線路強化や積雪対策などで将来のメンテナンスコストを圧縮することと、運賃改定を併せて収支改善を図るのが、道庁が当てにならない以上必要ではないかと。利子補給されているとはいえ低金利で運用益が期待できない経営安定基金ですが、現物投資は優先順位を間違わなければ本業でのハイリターンが可能です。

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Saturday, July 27, 2019

減耗する固定資本に沈む夕陽

参院選が終わり、投票率は5割を切って「盛り上がらなかった」「投票しない奴が悪い」類の話がありますが、選挙期間中に法定の政見放送以外に特段の選挙特番を打たなかったんだから、関心が薄いのはある意味当然です。おそらく固定票を持つ自民公明両党の支持者も大勢に影響なしと投票所に行かなかった可能性があります。

一方で諸派の泡沫候補としてマスメディアがガン無視したれいわ新選組が2議席を確保したばかりか、NHKから国民を守る党も1議席、存亡の危機にあった社民党も1議席確保して、共に選挙区の得票率で政党要件を満たすという椿事も起きています。れいわとN党はYoutubeとSNSを駆使したネット発信で票を獲得し、資金はクラウドファンディングで集めるという形で、既存メディアに依存しない選挙戦を展開しました。

6年前に東京選挙区でトップ当選したれいわの山本太郎氏を泡沫とは言えないでしょうけど、合区で選挙区を失った与党議員の救済策として押し込まれた比例区の特別枠を利用して重度障碍者2名を擁立したれいわの戦略は、結果的に票の掘り起こしに寄与して2議席確保して政党要件を満たしました。代表の山本氏は議席を失っても、党代表として足場が出来た訳で、作戦は成功しました。尤もこれは感性に訴えるポピュリストの手法という批判はありますが、この点に関する論評は避けます。ただ確実に言えるのは、電波メディアを中心とするマスメディアの衰退は確実に進んでいるってことです。

山本氏に関しては明仁天皇に手紙を手渡ししたことが天皇の政治利用だとして批判された過去もありますが、ふけいざいエントリーで指摘したように、憲法第16条の請願権の行使と見れば問題ありません。ただし政治に関わらない象徴天皇ですから、天皇は規定に従って手紙を内閣に回送しましたが、内閣は請願に対して誠意を以て回答することが義務付けられているのに、回答があったという話は聞こえてきません。

対する安倍首相の選挙遊説は動員がかけられて周りを固める一方、一般人は近づけないようにしていました。そんな中で札幌のヤジ排除事件が起きました。道警とSPの連携だそうですが、当初公職選挙法違反を発表したら弁護士会などから拡声器も使わない1人の肉声は選挙妨害に当たらないという最高裁判例を引いて批判が出たため、混乱を避けるためという風に改めました。しかし憲法第16条の請願権の行使と見れば、これもれっきとした憲法違反です。

それはともかく、選挙戦に関するマスメディアの露出が少なかった一方、頻繁に流れる自民党のCMスポット。選挙特番で声高に放送法第4条の二の公平性を言い立てるのは専ら政権党の自民党ってこともあり、選挙期間中の特番はメンドクサイものと放送事業者が忌避した結果、自民党CMが目立つ結果になってます。この辺を考慮すると、改選議席を減らして憲法改正発議に必要な2/3を割り込んだのは、結構ショックだったかもしれません。という具合に非対称が目立った参院選でした。

ただ政権選択ではない参院選ですから、長期的視点から問題提起して論戦に結び付ける議論があまりなかったのは残念です。少なくとも野党はアベノミクスの出口戦略できちんと議論して欲しかった。例えば3年前の参院選後のアベノミクスの出口に関する論考をアップしましたが、野党の関心は1人区を中心とした選挙協力に終始していた感じで、各党の思惑には残念ながらズレが見られます。この辺を深めておかないと、結局参院選ではまとまっても衆院選では不発の可能性があります。

例えばふけいざいエントリーでも取り上げましたが、GDP500兆円の日本で固定資本減耗が107兆円あり、しかも増え続けている現実があります。これ企業会計で言えば減価償却費に当たる資本の維持費なんですが、経済規模に対して大き過ぎないかってことを申し上げたい訳です。これ民間資本なら当該企業の減価償却費て手当てできますが、公共投資で作られるインフラに関しては、維持管理のための予算措置が必要になりますから、過剰な公共投資は皮肉にも公共投資の原資となる予算を長期間にわたって圧迫することになります。例えば五輪のレガシーと称する競技施設の数々ですが、維持管理して未来へつなぐ戦略は見られません。

こういうところをもっと突くべきだし、その方が有権者への訴求力も増したんじゃないかと思います。思い返せば2009年総選挙の前には、この手の議論がそれなりにありましたし、そうした中から「コンクリートから人へ」といったキャッチ―なフレーズで闘えたんですね。ま、政権交代後に露呈した未熟さで台無しにはなりましたが。

例えば、佐賀の乱で孤立線になる長崎新幹線ですが、事業仕分けで軌間可変車両の実現可能性を厳しく査定できなかった結果、拗れてしまいました。佐賀県区間のフル規格化を与党議員が画策してますが、財源の壁が立ちはだかります。とにかく今使える財源は30年の北海道新幹線札幌開業まで決まっており、尚且つ人件費増など事業費の拡大で危うい綱渡りをしています。

てことで、気になるのがJR北海道なんです。帳簿上JR北海道に属する6,822億円の経営安定基金ですが、実際は鉄道・運輸機構に預託されておりますが、アベノミクスの低金利のお陰で損失補填は果たせず、とはいえ旅客会社法で定義された特殊会社たるJR北海道は一存で処分もできません。

以下は仮定の話ですが、JR北海道の経営がいよいよ成り立たなくなって、何らかの対応を迫られたときに政府がどうするかですが、未上場企業で一般株主が居ませんから、政府の一存で潰すことも選択肢になります。経営再建のための再国有化という名目で、JR北海道が策定したリストラ策を維持しながら、経営安定基金を切り離して旧鉄道整備基金の勘定に入れれば、あら不思議財源が出来た-_-;。後は佐賀県の同意が得られれば着工となります。

気になるのが高橋前北海道知事が「国の問題」としてJR北海道の再建に後ろ向きだったことも、政権との阿吽の呼吸があった可能性を示唆します。鈴木新知事に代わって変化があるかどうかですが、夕張市長時代に夕張支線の廃止に道筋をつけたとはいえ、夕張市だけの都合で動けた条件闘争に過ぎず、広域自治体として関連自治体を調整しまとめ上げる立場で何ができるかは不明です。寧ろ政権との近さを考えると、高橋道政の継承となる可能性があります。

つまり北海道からお金取って九州へ回すってことですが、北のスットコドッコイで指摘した総連系労組が力を持つJR北海道は潰しても惜しくないでしょう。何しろJR東労組を挑発して窮地に追い込んだぐらいですから。JR北海道がこれを回避するには、鉄道ジャーナルの枝久保氏のコラムにあるように、JR北海道自身が経営安定基金を経営強化策に使う策を明らかにすることでしょう。

本題に戻しますが、公共投資の拡大は、固定資本減耗の拡大で国民生活を圧迫します。これも仮定の話ですが、財政出動を拡大して公共投資を増やして仮にGDPを600兆円に増やせたとしても、固定資本減耗が200兆円とかになれば、結局国民生活へのメリットはほぼありません。寧ろ公共投資の拡大は民間投資を圧迫しますし、折角の公共インフラも乗数効果が無ければただ生産性を下げるだけの存在になります。

一応直近の民間投資はGDP比16%ありますが、減価償却費を引いた純投資は1%です。結局バブル期の過剰投資で稼働率低下を招いたトラウマで思い切った投資ができない一方、余った投資資金は銀行にブタ積みされ国債投資を通じて公共投資で無駄に経済を圧迫することになります。野党の議論もこの辺まで踏み込んで欲しいところです。この悪循環を抜け出せなければ、ボロボロの公共インフラに夕陽が沈む光景を力なく見る未来が待っています。

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Saturday, May 25, 2019

佐賀と滋賀で「詐欺だ!」

Brexitが迷走しております。

メイ英首相、辞任を表明 EU離脱混迷で引責 (写真=ロイター) :日本経済新聞
EUと合意した離脱案が議会で承認されず、残留派が求める国民投票の再実施を、盛り込んだ離脱案を議会に提出したことで、与党からそっぽ向かれた結果です。残留派の多い自民党や労働党との譲歩を狙ったけど、寧ろ与党陣営から不信感を持たれたってことですね。

とはいえ与党の離脱派に戦略があるという訳ではなく、強制離脱しても大丈夫という楽観論以上のアイデアはないようです。強硬姿勢のEUから譲歩を引き出せなかったことで弱腰外交と言われ、強硬論に勢いを与えてしまいました。よく見ればEUでも強硬論を唱えるのは専らマクロン仏大統領で、他国は寧ろ強硬離脱のダメージを心配しているのが実際です。フランスはWW1の戦後処理でドイツに法外な戦後賠償を課してナチスの台頭をもたらした歴史がありますが、同じ愚を繰り返すのか?ここまでボタンの掛け違いが起きると、解決は困難になります。

てな世界の動きと比べっるとずっと小さなスケールでのボタンの掛け違いが起きているのが我が日本です。フリーゲージトレイン(FGT)という和製英語で呼ばれる軌間可変車(GCT)の開発を当てにして当初狭軌のスーパー特急方式で整備を予定していた長崎新幹線がGCTの開発断念で、全線フル規格化を求めるJR九州と長崎県に対して、佐賀県がNoを突きつけた結果佐賀県バッシングが起きているという小さな話です。国家主権に関わるスケールのBrexitに比べると、ローカルな綱引きで揉めてるってのはある意味日本らしいですが。

整備新幹線としての九州新幹線は当初スーパー特急方式を前提に鹿児島ルートの八代市―鹿児島市間が先行整備されましたが、整備途上で度々見直され、八代以南の工事途上で船小屋温泉―八代間の工事着手が決まり、更に博多―船小屋温泉間も着手し、しかもフル規格に変更されました。その際、当初駅設置予定の無かった佐賀県にも建設キロ案分で負担を求められ、佐賀県は抵抗したものの押し切られ、せめて駅を作ってくれということで、当初予定されていなかった新鳥栖駅の設置が決まった経緯があります。

一方の長崎ルートは武雄温泉―諫早間のスーパー特急方式のまま着工順位待ち状態だったところ、鹿児島ルートの全線フル規格化で長崎県が熊本に後れを取りたくないとフル規格化と早期着手を求めるようになりましたが、有明海の堆積土で軟弱地盤の佐賀県が、事業費膨張による負担を嫌って反対します。

加えてルートから外れる鹿島市など3市町で反対の声が上がり、反対派首長が選出される事態となりました。並行在来線として肥前山口ー諫早間が切り離されることになりますから当然の声ですね。その中で国が開発中だったGCTの採用で佐賀県に配慮することになり、また並行在来線も県が線路保有してJRが第2種事業者として当面営業し、博多―肥前鹿島間の特急を走らせるなどの譲歩の結果、整備区間のフル規格化と諫早―長崎間の追加整備も決まり、工事着手されて2022年開業予定となっております。見果てぬ夢
が曲りなりに動き出した訳です。

しかしGCTの開発は無理と踏んで車輪の下で論じましたが、案の定GCTの開発はました。GCTは車軸に沿って車輪をスライドさせストッパーで所定の位置に固定する仕組みですが、その分余分な部品が必要で重量増となりますし、しかも高速走行で振動に晒されるバネ下重量の増加ですから、その分線路を痛めます。加えて相当な強度を求められますから、それも重量増の要因となり、実用レベルのものにするのは困難な訳です。バネ下重量が大きいためにモーター筐体や歯車装置がゴツくなる吊り掛け駆動が淘汰されたのと同じ問題です。

加えて山陽新幹線に乗り入れて新大阪まで走る前提ということで、当時のぞみで主力の300系に合わせて270km/hで安定走行の開発目標だったのですが、その後500系が300km/h、700系が285km/hとスピードアップされたため、270km/hの目標をクリアしても山陽新幹線を走れないということになります。とはいえ元々バランスの難しいGCTでは簡単にスピードアップはできません。加えてGCTならではの欠点も明らかになります。

1つは新幹線での高速走行を前提とするが故に、在来線に比べてホームが高く、それに合わせて床を高くしなければならないことになります。これは高速走行のための大出力モーターの架装の必要性もある訳ですが、そうすると車輪径を大きくするとかもバネ下重量増の要因になりますし、同時に台車軸距を伸ばさないと狭軌の車輪間に納める大出力モーターの架装が難しくなります。

この点は標準軌のミニ新幹線とは異なる訳で、JR東日本の400系、E3系、E6系ではヨーダンパを二重化して短軸距で高速安定性を担保しながらカーブの多い在来線区間の滑らかな走行を両立させてますが、GCTでは軸距を伸ばさざるを得ず、台車枠が大柄になってこれも重量増の要因になりますし、在来線区間での滑らかな走行を望むべくもなく、それどころかフランジとレールにかかる横圧が大きくなり線路を痛めます。故にGCT走行区間の在来線は軌道強化を余儀なくされますし、曲線通過速度も10km/hから30km/h程度の減速を余儀なくされます。余談ですが解決策として炭素繊維車輪なんてもんが開発され、熊本電気鉄道で採用されてますが、軌道が弱いローカル私鉄にとっては光明でも、購買力を考えると開発費の回収は難しいでしょう。

そして軌間可変部分の部品の劣化で頻繁な交換が必要ということが明らかになり、メンテナンスコストを押し上げます。結局これが決め手となり、JR九州が採用見送りを決め、全線フル規格化を要求することになります。GCT開発に入れ込む国(鉄道・運輸機構)に対しては民主党政権時代の事業仕分けにかけられ、あわや開発中止の可能性もありましたが押し切られました。ここで引導を渡していれば、少なくとも拗れることはなかったかもしれません。国の問題もありますが、鉄道のプロとしてのJR九州の不見識も問題です。

そもそも佐賀県は地方創生の成功例と言われる福岡都市圏に木菟する訳で、新幹線の直接的な恩恵はあまりありません。この辺東海道新幹線の南びわこ駅問題でJR東海にNoを突きつけた滋賀県と似ています。滋賀県は元々近畿圏アーバンネットワークの勝ち組で、転入人口増で潤っている訳で、財政負担してまで新幹線駅を作る必要はない訳です。北陸新幹線の延伸問題で滋賀県を避けたルートが取り沙汰される一方で、並行在来線として湖西線の切り離しなんて話が出てきて滋賀県は態度を硬化させてます。佐賀共々こう叫びたいでしょう。「詐欺だ!」関連してこんな記事を紹介しましょう。

隣の大都市と補完 山形・大津・佐賀市の活性化策  :日本経済新聞
奇しくも大津と佐賀の事例が出てますが、隣接大都市との補完関係を築くことで活性化が図れるってことです。地域活性化のための新幹線って、結局並行在来線の引き受けまで視野に入れると、地域に負担がのしかかることも忘れてはいけません。そしてこれ。
九州・北陸新幹線、建設中の区間で「投資効果<費用」  :日本経済新聞
人件費の上昇で費用対効果比が悪化しているって話です。長崎ルートに関してはGCT開発失敗の影響もありますが、現状ではJR九州が引き受けを渋っています。勿論全線フル規格着工に誘導するための条件闘争でしょうけど、GCTも代共々JR九州の見識を疑います。

元々投資収益逓減の法則で、後発案件ほど費用対効果比は悪化するんですが、整備新幹線もご多分に漏れずってことです。元々需要の旺盛なところから事業着手される一方、完成後の経済活性化で需要の弱いところの経済効果が厳しくなります。元々新幹線売却代金に上乗せされて発足した鉄道整備基金ですが、鉄道・運輸機構に引き継がれてますが、別に新幹線財源に限定したものではなく、つくばエクスプレスの建設でも使われています。基金ですから基本は低利融資なんで、完成引き渡し後30年で償還される前提ですが、それじゃ足りないと与党サイドの声を反映して財務省が償還期間を50年に延ばそうとしてますが、整備新幹線の受益の範囲の負担というルールを無視してます。

寧ろ例えばJR北海道の体質改善投資など、より必要性の高い投資にシフトすることが望ましいところですが、肝心の道知事が鉄道廃止上等のスタンスなのが残念です。

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Thursday, May 02, 2019

平静装い礼は要らん

10連休をいかがお過ごしでしょうか。元号フィーバーで浮かれるメディアのお陰で世界で起きていることの扱いが軽くなっていると感じられるところですが、元号が変わっても時代は1ミリも動かない一方、世界を揺るがすニュースはあります。

ベネズエラ、「クーデター」不発か 野党、大規模デモ再び呼びかけ (写真=AP) :日本経済新聞
米、イラン原油禁輸で適用除外を撤廃 中国は反発、輸入継続も (写真=ロイター) :日本経済新聞
内政が不安定化しているベネズエラでクーデター未遂ですが、ロシアがマドゥロ政権の支援を打ち出していて、丁度シリアと同じ構図になっています。違うのはアメリカがかなりあからさまに手を突っ込んでいる点です。

チャペス政権時代に油田を強引に国有化したことで外資が引き揚げた結果、油田の設備更新が滞り生産量が減っているのは確かですが、それに留まらず米銀との取引を制限する経済制裁により国内経済が壊滅的な打撃を受けたものです。原油取引が米ドル建てである故に、米銀との取引制限は事実上の輸出規制と同じです。石油輸出しか外貨獲得手段のないベネズエラにとっては致命的です。で、アメリカのメディア報道をなぞるだけの日本のメディア報道は最初から偏ってますから、それを踏まえて見ていく必要があります。その観点から、反政府勢力は軍隊を掌握できなかったってことですね。この辺も欧米が支援する自由シリア軍が劣勢なシリアと似ています。

そしてイラン制裁で日本を含む8ヶ国で猶予していたイラン原油輸入規制の猶予が2日で終了しました。日本はサウジやUAEからの輸入を増やしてイラン原油から切り替えましたが、中国は継続を表明し、インドやトルコも対応は不明です。加えてロシアもイランを後押ししてます。その結果ベネズエラ問題と相まって原油相場を押し上げると見られており、日本国内でもガソリン価格がジリジリ値上がりしています。ガソリン価格上昇は米トランプ政権にとってもマイナスなので、サウジなどOPEC諸国に増産を求めてますが、原油価格を上げたいOPEC諸国はイラン輸出分の肩代わりを超える増産はしたくない一方、非OPECのロシアなども減産方向で協調しているという石油を巡るねじれが起きています。

で、日本ですが、原油価格上昇は輸入物価上昇でただでさえさえない国内消費を確実に冷やします。しかも上がるのはガソリンだけじゃないってことですね。電気ガスなどのエネルギー価格はもちろん、工業製品全般にとってコストアップ要因ですし、農業もハウス栽培物のコストを上げますし、漁業も燃油価格上昇で確実にコストアップになります。これで10月の消費税増税が待ち受けるんですから、どう転んでも経済は停滞に向かいます。

しかも日銀の異次元緩和が続いている現状では追加緩和の余地は殆どありません。つまり経済が停滞しても打つ手がない訳ですね。この辺次の経済停滞を睨んで資産圧縮と利上げを粛々と進めてきた米FRBとは大違いです。そのFRBもトランプ大統領からのあからさまな圧力がかかってきてます。しかしパウエル議長は毅然としてます。

パウエルFRB議長、政治の意向「考慮せず」 (写真=ロイター) :日本経済新聞
この問題は市場関係者もトランプ大統領と同調していて、会見後に株式は失望売りを浴びせられましたが、パウエル議長は意に介してません。あくまでも中央銀行の独立性を維持する姿勢です。実はFRBの利上げで日米金利差から円安を期待していた日銀が一番困ってるとか。円安誘導という隠れミッションのために金融政策の自由度を失った訳で、金融のトリレンマから当然こうなるんですが。

それに留まらず日銀は株価指数連動投信(ETF)と不動産投信(REIT)の購入も大規模に行っており、遂にGPIFの保有高をも上回る水準が見えてきました。

日銀、日本株の最大株主に 来年末にも  :日本経済新聞
ETFは指数連動となるので値がさ株ほど多く組み入れられますから、個別企業で見れば既に日銀が筆頭株主になっていたりします。これつまり元々個人が買いにくい値がさ株が更に個人が買いにくくなるということで、寧ろ個人の株式投資を遠ざけます。加えて上場ETFの7-8割が日銀とGPIFの保有ですから、手数料が安く個人向けと言われるETFが却って個人の買い難さをもたらすという矛盾もあります。

ここで若い人にヒントですが、iDeCoや積立NISAで金融機関からETFを勧められたら、日銀やGPIFが保有してるかどうか尋ねて、回避しましょう。そしてETFに組み込まれていないバリュー株を見つけて投資しましょう。日銀やGPIFが保有するETFは将来売りに出されて必ず値下がりします。みすみす損するとわかっているものには手を出さないことが大事です。逆にETFに組み込まれていない銘柄はかなり高い確率で安値で放置されてますから、事業内容を見極めて投資する妙味があります。但し自分の知識としてその業界に関する詳細な情報が得られていることが大事です。分からないものには手を出さない慎重さは投資家として必須の資質です。鉄ちゃんならば鉄道株はありでしょう。

とはいえ昨今のインバウンド景気で既に値上がりしていると見られますので、鉄道株に関しては今が買い時かと言えばやや疑問です。加えてMaaSで将来も見通しにくいところがあります。MaaSに関しては欧州で既に始まってますが、欧州の場合都市交通分野で運輸連合方式による共通運賃制が実現していることで、運輸連合がそのままMaaSのプラットフォームに使える状況があることが指摘できます。この点は日本は全くと言っていいほど遅れています。せめて東京の2つの地下鉄の共通運賃化ぐらいはすぐにでも検討を始めるべきでしょう。

てなわけで平成の枠組みから1歩も抜け出せない令和にいきなりイラン原油輸入が止まり原油価格上昇で国内消費を冷やす訳です。タイトルはダジャレでわない(汗)。

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Sunday, April 28, 2019

人間だもの

10連休が始まりました。個人的には仕入れ先も取引先も休むんで、一緒に休みますが、どこ行っても混んでるんで、家に籠って粛々と休みを消化する予定です。てことで取り上げるのはこれ。

接触事故後に急加速、気が動転か 池袋暴走 (写真=共同) :日本経済新聞
赤信号で進入か 運転操作を捜査、神戸バス死傷事故 (写真=共同) :日本経済新聞
何れもオートマ車の暴走事故で2日連続の惨事となりました。前者は87歳の元通産官僚、後者は64歳のバスドライバーですが、共に現行犯逮捕案件なのに対応が分かれました。それ故に忖度が働いたんじゃないかとネットで話題になりました。前者は加害者自身も負傷入院中だから逃亡の恐れがないという指摘もありましたが、日本の警察の過去の対応を見る限り、負傷入院中でも容赦なく逮捕している訳で、違う対応になっていること自体は確かです。

それと高齢ドライバーの問題として取り上げられてますが、オートマ車の操作ミスによる暴走事故自体は年齢に関係なく起きている訳で、寧ろマンマシンインターフェースのヒューマンファクター系のトラブルじゃないかと考えております。端的に言えばマニュアル車ならばアクセルとブレーキを間違える操作系ミスはエンストで止まりますし、そもそもクラッチやシフトレバーを含む一連の動作でミス自体起こりにくいってことがあります。

加えて昔のオートマ車は非力なエンジンに前進2段とか3段とかのシンプルなもので、アクセル踏み込んでもスムーズに変速して加速するような代物じゃありませんでした。これ元々アメリカで普及したトルコンATシステムを移植した結果ですが、5-7リッターのトルクフルなエンジンでトルクコンバーターを介してトルク変動を吸収してメカ部分をシンプルにする設計思想から来てますから、昔の日本車の非力なエンジンじゃうまく機能せず、タイムラグを伴うレスポンスの悪さとなります。加えてトルク変動による駆動輪の回転モーメントによるリアの沈み込みもありますから、暴走する前にミスに気付きますし、暴走するほどの力もなかったと^_^;。

それに比べてHVのプリウスも含めてオートマ車のアクセルのレスポンスは著しく進化していて、殆どストレスなく加速するようになっていることが影響しているんじゃないかってことを言いたい訳です。つまりミスに気付きにくくなり、結果的にダメージを大きくしているんじゃないかってことです。高齢者の免許証取り上げれば解決する問題じゃないってことです。

加えて最近の車は総じて乗員の安全確保が進化しており、よほどの事故じゃなければ乗員のダメージは少ないってこともあります。だからカジュアルに煽り運転ができてしまうってことも指摘しておきます。実際車間を詰めて煽ってくる車の多さは日常的に実感しておりますし、事件化して報道される事例もある訳ですね。車の性能や安全性が向上したことが、皮肉にもこの手の事故を誘発してるんじゃないかってことです。

ヒューマンファクターといえば14年前の25日に起きたJR西日本福知山線尼崎脱線転覆事故でも指摘されました。余裕時分を削り込んだタイトなダイヤでオーバーランと停止位置修正で後れが生じたことを気にした運転士が引き起こした事故ということで、JR西日本は批判にさらされました。加えて当該の運転士が過去にもオーバーランによる遅延で日勤教育と称する懲罰的処分を受けていて、ミスを重ねると乗務から外されることを気にしていたことも指摘されました。

日勤教育自体は国鉄時代から行われていて、JR西日本以外のJR各社でもほぼ同じように行われておりました。その中でJR東日本だけは日勤教育の名称は残しながら、実際は変更や確認事項の現場への連絡手段に変化していました。安全面では明らかに一歩リードしていた訳です。それもこれも1988年12月5日の東中野駅列車追突事故で運転士が死亡するということがあって、安全問題が見直されたものです。

事故は余裕時分の見直しによるダイヤ改正が行われた翌日というタイミングで起きたもので、当時の中央総武緩行線は201系と103系が混在していた中で起きており、201系では余裕のある新ダイヤも103系ではいっぱいいっぱいで、実際遅れていた停車中の103系の先行列車に201系の後続列車が追突した事故でした。遅れにより司令との交信に気を取られた後続列車の運転士のミスと判定されました。

その結果JR東労組がヒューマンファクターの見直しを本社に申し入れ、ATS-Pの設置スケジュールが前倒しされ、安全教育のための研修センターが福島県白河市に設置されるなど、目に見える改善がされました。また老朽車両の取り換えも積極化され92年の901系(後の209系試作車)投入につながったと見ることもできます。強面の労組が機能した事例です。同じ労組でも中核系の千葉動労は103系の取り換えに最後まで反対してますから、同じ労組でも違うもんです。尤もJR東日本は愚かにもJR東労組を潰しにかかりました。将来が心配です。

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Sunday, April 14, 2019

ガラクタ>ポンコツ

鏡の国の未来の話です。まずこれ。

総人口1億2644万3000人、減少率0.21% 18年10月時点  :日本経済新聞
2008年から日本の総人口は減少に転じてますが、度々指摘してますが、より重要なのは1997年から始まった生産年齢人口の減少の方です。生産年齢人口の減少はつまり雇用者の減少ですから、その分世帯の所得の減少となります。実際GDPの分配面を見れば、雇用者報酬は一貫して減少してます。当然消費が減少しますから、価格抑制の力学が働いて、巷間言われるデフレが生じる訳です。貨幣現象じゃないから金融緩和しても解決しない訳です。

生産年齢人口の減少はかように経済を縮小させるインパクトがある訳ですが、これも度々指摘してますが、高齢化に伴うリタイア人口の増加が原因であって、このタイミングで少子化対策しても、生産年齢人口は増えない訳で、保育の無償化などの少子化対策はやるだけ無駄どころか財政再建に回す筈の消費税の増税分を充てるってことは、事実上国債発行と同じ負担の先送りにしかならず、却って将来の負担を増やします。

結果的に高齢者と女性の労働力率が高まって雇用者人口は増えてますが、少なくとも推計方法変更前の2015年までのGDPは増えてないので、労働力の投入量が増えたにも拘らず付加価値は増えてない訳ですから、その分労働生産性が低下した訳です。詳細に見ると高齢者の嘱託や主婦のパートなど非正規雇用が増えた訳で、雇用の劣化を伴っている訳ですから、毎月勤労統計で誤魔化しても隠しようのない現実です。少子化対策したくても、保育士も不足しますし、保育士を増やせばその分他のセクターの雇用が圧迫されますから、どのみち社会は回らない訳です。これ働き方改革も無駄ってことでもあります。

そうは言っても労働力不足は賃金を押し上げますから、低賃金セクターほど人が集まらず人手不足倒産も有り得るってことで、ヤマト運輸の労使協議で料金値上げと荷受け縮小を決めて、それを原資にして賃上げと労働時間圧縮を図った結果、寧ろ人が集まって荷受けも増やすことが出来てと好循環になりました。働き方改革のためにはホント労組大事。労組潰ししたJR東日本のスットコドッコイの将来が不安です。

で、賃金を上げられない不人気業種では、人手不足倒産が現実問題となる訳で、後は外国人に頼るって流れです。これも外食やコンビニでは既に留学生アルバイト抜きには回らない状況ですが、実はバブル期から兆候はあったものの、バブル崩壊による経済減速に助けられて、不良債権処理の借り手側の過剰債務対策で人件費カットを余儀なくされて新卒採用の手控えが起きて、所謂ロスジェネ問題で一息ついたのが実態でしたが、若年人口の減少で逆に新卒の有効求人倍率が高まった結果、頼みの若いフリーターの補充が効かなくなり、その穴を留学生が埋める流れです。

しかしそれも限界でいよいよ賃金上昇が現実に起きると、外食では営業時間の短縮が始まりますが、24時間営業のコンビニではそうはいかず、遂に見直しを迫られることになりました。ただしコンビニでは既に弁当の3便配送をはじめ、24時間営業を前提とした店舗オペレーションでシステム化されてますので、人が集まらないから営業時間を短縮するという訳にはいかず、とりあえず実験で検証する段階です。高度に効率化されたが故に、無人レジなどのストアオートメーションによる省力化の余地も少なく、寧ろ自社競合によるオーバーストアの地域もあることから、単なる営業時間短縮よりも店舗閉鎖が進む可能性があります。

そしてやはり不人気業種の建設業ですが、元々現場仕事は10年程度の見習い期間が必要で育成に時間がかかるにも拘らず、若手の補充が滞ってますから、平均年齢の上昇著しく、いずれ回らなくなります。ここでは技能実習生が頼みでしたが、仕事教えても3年や5年で帰国されると結局戦力にならないということで、入管法改正による新在留資格を要望することになり、この4月から実現しましたが、狙いは実際に現場にいる実習生を帰国させないためでしかありません。

それなら本人の希望に合わせて永住権や国籍の取得ができる移民制度にすればいいのですが、国内の反対論に配慮して移民じゃないと言い張ってますが問題です。外国人を労働力として受け入れることの落とし穴は、労働者が消費者でもあることを見落としてるんですね。労働力の補充よりも消費者として国内消費市場を支え、税や社会保障の担い手として迎え入れるという視点が必要です。これつまり移民そのものです。そして技能実習生制度の烈悪なバージョンアップでは労組への加入なども考慮されてませんので、長時間労働や賃金ピンハネなどの不正の温床にもなります。差別による治安悪化と隣り合わせですね。

内緒ですけど^_^;、新在留資格でも5-10年の在留期間が終われば帰国する訳ですから、結局建設業の人手不足は解消されません。それ以前に今でも年間50万人規模で生産年齢人口が減っているときに5年で35万人とか算数できないのか?wwwwwそういう中で鏡の国で指摘したように古い利権構造で地元への利益誘導で公共事業引っ張って来るってのは、それだけ建設業にストレスを与えますから、様々な矛盾をもたらします。そんなニュースがこれ。

豊洲市場、くすぶる「民営化」  :日本経済新聞
産地直送やBtoCのEコマースの拡大などで元々築地時代から年々取扱額は減っていましたが、豊洲移転でますますその傾向が強まっております。築地市場の豊洲移転はそもそも築地の施設の老朽化と手狭さが理由とされてましたが、大枚はたいて巨大ハコモノ作ったらそっぽ向かれた形です。そして軟弱地盤や土壌汚染問題でコストもハネ上がっていて赤字確実と言われてた中での低迷ですから、それだけ東京都の財政を圧迫します。

そうなると公設市場法の改正もあって民営化の議論が出かねません。これ東急世田谷線レベルの輸送規模でキロ100億円の地下鉄を作るぐらい頭おかしい話です。老朽インフラと新設インフラの関係で見れば下関北九州道路代とも通底しますが、後先考えず巨大インフラ投資を決めて責任は取らずあとは野となれってことですね。

そしてタイトルの意味ですが、ガラクタもポンコツも役に立たないものという共通の意味がある一方、ポンコツは語源である拳でコツンと殴るが転じてハンマーで叩いて解体するものである一方、ガラクタは見方を変えれば価値が見いだせるものという意味で希望があります。故に不等式でつないだんですが、つまりコンバージョンってことですね。新しいもの作って古いもの壊す繰り返しは結局健在を疲弊させますから、知恵を絞ってガラクタを活かすことこそが、人口減の日本にとっては有益です。

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Sunday, March 17, 2019

思い出されるbrexit

Brexitが迷走しているように見えますが、私はほぼ想定内のプロセスを踏んでいると見ます。そして追い込まれているかに見えるイギリスのメイ政権ですが、強硬離脱反対の下院議決を得たことで、寧ろEU側が追い込まれたと見ています。理由は簡単で、強硬離脱を避けたいのはEUも同じ、対立が解けない英国内世論の中で、強硬離脱だけは避けたいという意思が示された訳ですから、メイ首相はこれを対EUの交渉のカードに利用すると考えられます。

あと国内経済が好調なのも追い風です。これBrexitのゴタゴタでEU圏からの移住者が減って失業率が歴史的低水準にあり、消費が堅調なことによります。EUに加盟しながら移動の自由を保障するシェンゲン協定未加入というイギリスですが、市場統合が進み、特に東欧圏へ拡大した結果、相対的に貧しい東欧圏の住民が流入して労働市場を圧迫してきたことがBrexitの議論の背景にあります。元々移民受け入れに寛容なイギリスで単純な反移民という訳ではありません。その流入が減って経済が上向いたんですからこれゴタゴタのお陰?

一方EU側はイギリスに厳しい態度を取り続けてきましたが、その狙いはイギリスを離脱撤回に追い込むことです。何しろBrexitのゴタゴタでイギリスを忌避した東欧諸国の労働者がその分大陸諸国に押し寄せてますし、加えてシリア難民の受け入れ問題も重なって大混乱し、移民排斥の機運が高まっている訳です。その結果反EU勢力が支持め加盟国で議席を確保し、無視できない存在になっております。EUとしてはこの面でもイギリスに甘い顔ができない訳で、着地点としてイギリスの離脱撤回がベストシナリオになる訳です。

それがイギリス下院の強制離脱反対決議と翌日の離脱延期決議によって、EUも延期承認の決断が求められることになります。延期については全加盟国の承認が必要ですが、承認されずに強制離脱に追い込まれることは避けたい訳ですから、EU側としては延期承認でまとめるしか選択肢はありません。しかもここへきてユーロ圏の経済が足踏み状態となり、ECBによる緩和縮小も当面見送られる状況ですから、強制離脱でより深傷を負うのはEU側ということになります。

このイギリスの政治的混乱は理解しにくいことも確かです。しかしイギリスがコモンセンスの慣習法の国であり、主要国で唯一成文憲法を持たない国という点から見れば、不思議でも何でもありません。そんな国の議会に付与された立法権というのは、つまるところ時代の変化で不具合が出てきた慣習法の修正に力点が置かれます。故に現実にどんな不具合があるかが出発点になります。

所謂立法事実が問われ、議会で成案を得ればそれがそのまま法律として発効する訳で、成文憲法に照らした違憲立法という概念すらないが故に、文字通り熟議を経て必要な修正を加えて可決成立に至る訳で、某日本国みたいにろくな議論も無しに数の優位で押し切られるのとは違います。Brexit関連では、そもそもキャメロン政権が行った国民投票も、日本ならば憲法改正の要件として国民投票が憲法に明記されてますし(第96条)、辺野古埋立問題で実施された県民投票も法的拘束力はないと説明されてますが、憲法第95条で国会での不利益立法の禁止が定められています。

イギリスの国民投票が取扱注意なのは、例えば結果を無視して政府が離脱撤回したり、あるいは違う結果を得るために国民投票のやり直しをして異なる結果を得た場合などはそれが慣例となってしまうということになります。故に政府としては不都合であれ何であれ、国民投票で示された民意を尊重しつつ議論を重ねるしかない訳です。その辺を踏まえずに直接民主制の弊害やポピュリズムを指摘する議論はインチキってことがわかります。

ある意味イギリスはこういった混乱を重ねながら歴史を刻んでまして、例えばメージャー政権で手掛けた鉄道改革を巡る混乱は政治に翻弄された英国鉄道改革鉄道書評、民営化で誰が得をするのかで取り上げましたが、一方ブレア政権での見直しで高速新線(STRL)High-Speed1が建設されユーロスターのスピードアップとドーバーまでの近郊輸送が劇的に改善しロンドンオリンピック輸送にも貢献したことは近郊型消滅? suburban首都圏品質で取り上げました。当初の混乱が見直しで改善されたことは、Step by Stepで議論を重ねるイギリス流ってことですね。

尚、このHigh-Speed1ですが、ユーロスター単独では採算性に疑問符が付くところ、ロンドンの近郊輸送の改善と抱き合わせたところがミソ。日立製のClass395"Javellin"がMax225km/hで走りドーバーがロンドンの衛星都市になるという変化も生まれてます。これ国鉄の通勤新幹線構想そのままです。この構想は実現しませんでしたが、新幹線網を全国展開する上でネックとなる首都圏のアプローチ区間を通勤新幹線として先行整備して短期的には首都圏の通勤輸送改善を狙った意欲的なものでした。公社時代の国鉄ではこうした柔軟な発想は実現できなかったんですね。

ふと思うのは整備新幹線を巡る我田引鉄ぶりやJR北海道の経営を巡る混乱を見ると、結果的に上下分離とフランチャイズ制による参入障壁の撤廃で活性化された英国鉄道の方が今となっては優れていると言えるかも知れません。逆に成文憲法を持つ日本の場合は、民主党政権で閣議決定されながら震災の影響で断念された交通基本法が、自公政権で交通政策基本法として成立したものの、移動権を憲法の基本的人権に紐付けて国、自治体、事業者の役割を規定した部分が省かれた結果が、国の責任ばかりを言い立てて具体策を出さない北海道庁や関連自治体の態度になっているのではないかと思います。

Brexitに話を戻しますが、北アイルランド問題がネックになっている訳ですが、現実的な落としどころとしては北アイルランドをEU圏に残して1国2制度にするぐらいしかないでしょうけど、それだと英国内に実質的な国境ができることになります。故にメイ首相がEUと取り交わした離脱案では北アイルランドの国境問題の恒久的な解決策が見つかるまでEU圏に残留させるという表現になっておりますが、これが実質EU残留の恒久化につながるとして強硬離脱派からも残留派からも反対されている訳です。

その対立は解けないままですから、離脱延期しても同じことを繰り返すだけで、結局延期を繰り返してゴタゴタが続くことになりますが、ある意味根競べというか、いずれ諦めから政府案に収斂されるってところでしょうか。とはいえ時間をかけることは民間企業に判断の余地を与えるので、それを織り込んだ動きで強制離脱のショックもマイルドになるという面もあります。そんな中でのこのニュース。

ホンダ社長、英での生産終了21年中に トルコでも休止  :日本経済新聞
Brexitは無関係と明言された社長会見ですが、勿論無関係ではありませんが、背景としてホンダの欧州での販売不振があり、スウィンドン工場出荷分の大半は北米向け輸出に回っていて、欧州に生産拠点を置く意味が薄れたので、モデルチェンジのタイミングで生産拠点を見直すのが主眼です。北米では売れているホンダですが、欧州で認められて一流という意識から古くからF1参戦してきたものの、果たせず撤退ってことです。欧州で認められたという意味で日系企業では日産が先行しており、ホンダは及ばなかったってことです。これある意味不振企業の撤退を促している訳で、ゾンビ企業を温存して低迷する日本ンとは大違いです。

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Sunday, February 17, 2019

鈍器法定

統計不正問題がいよいよ森加計問題と酷似してきました。これ統計法違反という明らかな違法行為なんですが、捜査当局は動く気配なし。そして関与した上級官吏は口をそろえてゴマカシや答弁拒否。一方実行部隊の下級官吏からはリーク続々。アベノミクスの成果を良く見せる改編が行われたと考えてほぼ間違いありませんが、ウソノミクス統計135°でさわりは明らかにしてますので、ここでは踏み込まず別の話題。

大林組、増収増益  :日本経済新聞
「受注企業JR東海が差配」 大成と鹿島、無罪を主張 リニア談合初公判 他2社と認否真っ二つ :日本経済新聞
元々大林組が公取委に申告して発覚したものですが、談合を認め処分を軽減した大林組、清水建設に対して、争う姿勢を見せる大成建設、鹿島建設という構図で公判も分離されてますが、主張は真っ向対立してます。

既に分離公判で有罪が確定している大林組ですが、120日間の民間土木工事中止の処分も受けてますが、実は増収増益。つまりリニアは儲からないから逃げ出したってことですね。加えて2025年の大阪万博開催が決まり、関西地盤の大林組は竹中工務店と共に受注が増えることが見込まれます。つまり大手ゼネコンが仕事を選ぶようになったってことです。

これJR東海にとっては痛い話です。というのは、そもそもリニア建設着手は国鉄民営化時に新幹線保有機構からリースする形で、リース料に旧国鉄債務の一部を乗っけたスキームから、JR東日本の上場審査の過程で主たる収益資産が自己保有でないことのリスクを指摘され、同じ立場のJR東海、JR西日本と共に国に譲渡を申し入れたことで、譲渡代金のローンが始まり、それが2017年にほぼ完済されたことから生じる資金余剰があってこその自前整備ですから、逆に言えば予算上限は厳しく管理する必要があります。

それでも当初名古屋まで5.1兆円と言っていた事業費が膨らみ5.4兆円となっているように、ジワジワと膨張しているわけです。当然利益を削られるゼネコンにとっては旨味が少ないのですが、それでも五輪後を睨めば無下にできない訳で、特に五輪関連や豊洲市場など東京都が絡む事業に深く食い込んでいる大成建設や鉄道会社との関係を気にする鹿島建設は断れない。そしてこうなるってことですね。これだけなら民間同士の話ですから、談合事件で公取委が動くことにはならないのですが。

しかし大阪への早期延伸を望む声が与党議員から出てきて財投債で9兆円の融資を決めたことで、公共性ありと判断されて事件化されるんですから、何がどう転ぶかわかりません。それでも談合事件の立件は難しいところ。大林組の申告が渡りに船だったのでしょう。政府が関与するといろいろ不都合が生じるのは森加計問題や統計不正問題ばかりではありません。

JR東日本の整備新幹線区間への追加投資に絡んで、整備新幹線の法定速度って話題がネットに出てきて「法定速度を超えると線路使用料が上がる」などの妄言も見られますが、これ根拠法の全国新幹線鉄道整備法で定義されている設計最高速度が法定速度と誤って理解されているのが実際です。そもそも東海道新幹線の設計最高速度は210km/hですが285km/hで営業運転されてます。東海道新幹線の建設時には整備法は無かったので超法規的に独自規格で作られたもの。その結果を踏まえて全国新幹線網整備に当たって将来の技術革新によるスピードアップを先取りする形で定められた基準がそのまま見直されずに来たというのが実際です。

そもそも新幹線の事業主体は国であり、国の鉄道事業を体現する国鉄がその任に当たるという前提で作られた法律ですから、国の事業である以上恣意的な解釈で骨抜きにすることは許されないということから、設計最高速度やそれに付帯する最急勾配や最小回転半径などの基準が定められたのが実際。それが国鉄分割民営化で事業主体が消滅すると当時の与党議員が騒いで事業主体となる国のところを各旅客会社に読み替えることで延命させた結果です。

しかも財源がないからあの手この手で財源をひねり出すために、並行在来線の切り離しなどでJRに負担をかけないことや、受益者となる地方の負担も定めるなどされたものです。結局整備計画の延命のために恣意的解釈をした訳ですが。尚、最急勾配は九州新幹線や北陸新幹線では事業費圧縮の要請から一部基準を超える急勾配があり、将来のスピードアップの可能性を狭めています。

JR東海も当初は中央リニアを整備新幹線の枠組みで考えていたようですが、現実に存在しないリニア新幹線は基準に適合しないってことで当時の運輸省はほぼ門前払いに近い扱いをしていたようです。当時は所謂整備5線(東北新幹線延伸部、北海道新幹線、北陸新幹線、九州新幹線鹿児島ルート、同長崎ルート)の扱いすら決まっていない状態で、そちらを優先しないと地元選出議員からクレームがつく状態でしたから、中央リニアの整備新幹線化は実現可能性が無かったと言えます。

それが新幹線譲渡に絡んで譲渡代金の産出に時価法の一種である再取得価格法が適用されました。これは現在時点で同等の資産を新たに取得する場合に想定される価格ってことで、地価や建設費などの相場を反映したものですが、仮定の置き方で数値は変わり得るものでもあります。当時の運輸省はこれを利用して資産の非償却部分となる土地やトンネルなどのインフラ部分の数値を嵩上げし、嵩上げ分を新設の鉄道整備基金に持たせて整備新幹線の財源に利用することで財源論に道筋をつけました。数値を操作して財源をねん出した訳で、こういったことがあるから統計不正にリアリティが出てきます。

その結果JR本州3社はローン負担を負う訳ですが、同時に整備新幹線事業の推進力を得ることとなりました。加えて新幹線が自社保有となり、膨大な減価償却費が発生し無税で利益控除できますから、これで得たキャッシュフローで設備投資に弾みを付けます。その結果JR東海は品川新駅開業によるのぞみ中心のダイヤ編成で増収を図り、自己資本による東名間先行の整備計画をぶち上げることになる訳です。

で、JR東海をリニア建設に向かわせた新幹線譲渡代金ローンの終了はJR東日本やJR西日本も同様で、規模の違いはありますが、それぞれ異なった動きを見せています。ウソノミクスでも触れたように一つは東北新幹線盛岡以北の高速化に向けた設備増強ですが、もう一つ大きなプロジェクトも動き出しました。

JR東 都心と羽田空港結ぶ新線、29年度にも開業  :日本経済新聞
羽田空港の国際化と発着枠拡大で今後とも利用Y差は増えると見込んでいる訳ですが、同時に成田スカイアクセスとローコストリムジンバスに食われて劣勢の成田空港輸送の挽回の意図もありそうです。

整備区間の北半分は休止中で遊休化している東海道貨物線の浜松町―東京貨物ターミナル間の線路を活用し、東海道線に合流させて上野東京ラインで埼玉や北関東のアクセスを図るというもの。加えてりんかい線経由で山手西ルートから中央線や埼京線方面、と京葉線や武蔵野線方面の3方向の列車設定を想定しています。千葉県や千葉市が要求する京葉線から総武線への連絡線が実現すれば、羽田空港と成田空港を直結することもあのうになりますから、将来的には成田空港輸送のてこ入れにもなるという訳です。

既存施設を活用するプロジェクトですから、資金手当てが見通せれば実現可能性は高いですが、一つネックとなるのがりんかい線の扱いでしょうか。東京都はJR東日本に東京臨海高速鉄道の引き受けを以前から打診してますが、これが動く可能性はあります。都市興津に関わる新線計画ですから、国と地方に応分の負担を求めることになると思いますが、東京都の負担分を東京臨海高速鉄道の株式で行い、事実上のりんかい線引き受けにつなげる可能性はあります。ただしJR東日本の営業規則上、東京近郊区間に組み込まれることになれば、現在の認可運賃から大幅減額となりますから、それによる減収の評価をどうするか。株式評価を下げて都が実質補償するか、あるいは東京近郊区間から外して現行認可運賃を存続させる形にするか、交渉次第でしょうけど注目されます。

おまけ。リニアで散財するJR東海と対照的に経営基盤強化に資するプロジェクトに選択的に投資するJR東日本ですが、JR西日本はといえば、尼崎事故以後の安全投資優先の影響もあって遅れている老朽車両の更新に回るものと見られます。だから広島に錆びない電車が登場し、大阪環状線もリニューアルされると。

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Sunday, January 27, 2019

統計135°の歪み

ゴーン被告の保釈請求が退けられ、長期拘留が続いてますが、未だに罪状が理解できません。金商法違反に問われた報酬偽装も会社法違反の特別背任罪とされた為替デリバティブの会社立て替え問題にしろ、東芝の数千億円規模の粉飾決算で誰も逮捕起訴されていないことと比べると些事です。寧ろトップの長期拘留で生産計画の下請けへの通知などの実務が滞っている現状の方が、遥かに投資家の不利益ですし会社に損失を与えてます。どう見ても裏があるとしか思えません。日経のこのコラムが興味深いところ。

ゴーン元会長が落ちたわな 編集委員 滝田 洋一 :日本経済新聞
特別背任とされた16億円ですが、日産の内規で報酬を日本円でしか受け取れないことから、銀行が提供する為替デリバティブを購入してリスクヘッジしていたところをリーマンショックによる円高が襲い、担保不足で追証を求められたのですが、ゴーン氏の証言から元々日産株式を証拠金代わりに差し出していたのが、日産株自体の減価で金額が膨らんだのが16億円ということです。約定日の日産株式1,400円が一時400円まで減価していた訳ですから、成る程追証の金額が跳ね上がり、ゴーン氏の個人マネーでは対応できなかった訳で、これ会社に損失を与える目的とは違います。実際立て替え分は返して日産には損失を与えていない訳ですし。同様のデリバティブ購入は当時銀行各行が企業経営者に猛烈に営業かけて売りまくったものでもあります。ゴーン氏は被害者の側面もある訳です。

一方日ロ平和条約締結交渉の膠着が報道されてますが、不思議なのは領土問題に煩い保守派から「2島引き渡しは現実的な落としどころ」という声が上がる一方、リベラル派から「領土ガー」の大合唱という捻れが起きています。個人的には誰得の領土問題で述べた通り、2島周辺のコンブやウニの漁業権が確立できれば大成功。加えて国境線確定後の経済交流に道筋をつけ、例えばロシア極東地域と日本の北海道を相互にピザ無し渡航できるようにすれば、当面は大成功と言えます。そもそもヤルタ・ポツダム体制の下でロシアが領土を渡す訳が無いんで。

他方で日韓関係が微妙になっております。こちらは軍事機密に触れるので、日韓双方共に全ての情報を公開しているわけではありません。こちらもヤルタ・ポツダム体制で日本は朝鮮国連軍(他国の撤退で事実上米軍とイコール)への後方支援が求められ、休戦中とはいえ戦時下にある韓国軍は朝鮮国連軍の指揮下にあります。つまり日本の自衛隊は朝鮮半島有事には韓国軍を助ける立場なんですが、外交問題化したことで場外乱闘の風情となっております。あくまでもテクニカルな問題なんですから、双方の現場同士で話し合って手打ちすれば終わってた話。外交問題化したのは日本の方なんで、徴用工裁判問題同様、日本政府が余計なことして拗らせた話ですね。

更に南北融和で有事が遠のいたことも、韓国側から日本との関係を取り繕う動機が無いってことですね。面白いのは日ロ関係と真逆の保守派とリベラル派の反応というのも何ともはや。結局保守派は日米同盟堅持、リベラル派は9条を守れで平行線の戦後レジームだけは健在という変われない国日本の思考停止状態は続きます。

そんな中で内政は政府統計の不正問題で揺れています。その酷さは前エントリーでも取り上げましたが、厚労省だけの問題じゃない点は重ねて指摘しておきます。背景には予算削減の煽りで人員の補充やシステムの構築ができなかったということはあるようですが、それだけじゃない複雑な事情もあります。これ毎月勤労統計に留まらず、政府統計全般に言えるんですが、かつて高度成長期は統計の不備やミスはさほど大事にならなかったのですが、7-9%とか年度によっては2桁とかって成長率だと、統計に多少の不具合があっても表には出にくいですが、成長率が1%を割っている現状ではちょっとした誤差で結果が様変わりするようになりますから、それが発覚につながったということで、2004年以前は正常だったことを意味しない訳です。つまり昔からこんなもんだった可能性がある訳です。

実際総務省が設置した統計委員会の西村委員長は、元々日銀マンで白川総裁時代の副総裁を務めた人ですが、それ故に政府統計の正確性に疑問を呈し現職にある訳ですが、元々の問題意識は金融緩和でデフレ脱却ができないことに対して、統計が実態を反映していない可能性を探求することでして、特にデジタル経済では音楽配信やシェアリングエコノミーなど、政府統計で捉えにくくなっていることから、正確な統計を求める立場だったんですが、調査の網に引っかかったのが厚労省の毎勤統計の不正だったという笑えない結果になったものです。

不正に手を染めた上、誤魔化すために数値を3倍にして2018年に賃金が跳ね上がったのみならず事業所のサンプルの入れ替えまで行われていました。理由は統計数値の段差を解消するために本来は遡って過去の年度も併せて数値を改定すべきところ、それをやると年度によって賃金が下がる年が出現してしまうという不都合な状況が発生するためとか。つまり低成長下で数値のゴマカシやったために矛盾が生じた訳です。ま、ここまやっといて意図的ではないとか組織的関与はないは通用しません。

真実に少しウソを混ぜるだけで意味が様変わりする典型です。他の統計数値とあまりに違う振舞いがあるため、ウソが発覚した訳で、実は毎勤統計以外の統計数値でも同様の疑惑はいろいろ指摘されてます。いっそ全てウソで固めれば矛盾はないでしょうし、全てウソなら逆を取れば真実が見えます。180°ならぬ135°のズレでアサッテの方向へずれる時空の歪みを生んじゃうんですね、笑えないけど。

ウソとは言えないけどいい加減な計画でとん挫しそうなのがこちら。

人工島アクセス、視界不良 25年に大阪万博 鉄道・道路とも未整備 :日本経済新聞
夢洲というのは大阪湾の一番沖合の埋立地で、アクセスが弱点ですが、道路も地下鉄もこれから作ろうっていう泥縄ぶり。実は来場者が上振れした場合のシミュレーションもできてないとか、ツッコミどころ満載の計画です。加えて軟弱地盤で建設工事の難航も予想されてます。これ関空と同様高潮や津波のリスクも大きい立地ですし、万が一会期中に被災して人が取り残されるなんて事態も予想されます。防災計画とか大丈夫か?民営化された地下鉄を伸ばして新駅と高層ビル作るって言ってるけど、地下鉄会社の経営も心配です。

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Saturday, January 19, 2019

ウソノミクス発覚

ひでーなー。政府統計のウソが発覚しました。

勤労統計調査ミス、長期放置か 復元加工は昨年分のみ  :日本経済新聞
厚労省の毎月勤労統計で、5~499人の事業所は無作為抽出によるサンプル調査ですが、500人以上の事業所では全数調査するところを、2004年以降東京都分の500人以上の1,400余りの事業所の内500事業所しか調査していなかったことが発覚したものです。

一般論として大規模事業所の方が賃金水準が高く、特に東京都は他地域より賃金水準が高い訳ですから、結果的に高賃金事業所が調査対象から外れて統計数値が過少に計上されていた訳です。同統計は雇用保険の失業給付の基準となるので、2004年以降の給付対象者延べ約2,000万人で530億円の過少給付となっていて、その修正のために閣議決定済みの19年度予算案を組み直す異例の事態となりました。

閑話休題。499人以下の事業所が無作為抽出によるサンプル調査なのは、数が多いことと数値のバラツキが多く異常値が混入する可能性があることと、統計調査への回答を行う事務処理能力が欠けるケースもあり、全数調査よりサンプル調査が適当です。逆に大規模事業所は事務処理能力の余裕もあり、毎月定例の調査ですから、ルーティン化できるし回答スキルも上がって正確な数値が期待できます。全数調査をしない理由は見当たらない訳です。

加えて同統計は政府のGDP算出や景気判断にも使われていた訳ですし、日銀の金融政策や民間企業も参照する重要な基幹統計だったからさあ大変。加えてOECDやILOへの報告にも使われますから、日本政府の国際的信用にも関わるものと、その影響範囲は甚大です。もう中国のこととやかく言えませんね。

しかも発覚の経緯が酷くて、数値を実態に近づけるために東京都分を3倍にする復元加工をした結果、18年度の賃金が不自然にハネ上がっておかしいと突っ込まれてバレたっていうんですからもう滅茶苦茶。厚労省といえば労基法改正でも裁量労働制の方が労働時間が短いとするウソのデータを国会に提出して大炎上したことが思い出されます。加えてこのエントリーで取り上げたこの記事も見てみましょう。

(真相深層)政府統計、信頼に揺らぎ GDPなど、日銀が精度に不信感 :日本経済新聞
ここでも毎日勤労統計への疑義が指摘されてますが、他にも指摘された統計データのおかしさがあります。厚労省叩いて済む問題じゃなく、他の統計も見直す必要があり、まだまだ影響は拡大すると予想されます。

2004年と言えば小泉政権で社会保障改革と称して年金保険料の毎年度のアップと給付制限の為のマクロ経済スライドの導入及び積立金の一部取り崩しを決めた年です。小泉政権では膨張する社会保障支出をプラス2,200億円以内に抑える歳出キャップをかけていて、失業給付に連動する毎月勤労統計を過少算出する動機は存在します。加えて派遣労働解禁に舵を切り、失業が増え非正規労働者が増えた時期とも符合しますから、失業給付の減額はその面からも求められます。そしてアベノミクスの成果を示したいと賃金の伸びが弱いことを突かれて復元加工とすれば、始まりも終わりも政治圧力の結果と見ることができます。将にアベノミクスならぬウソノミクスです。今月始まる通常国会はいきなり政局です。

かように日本の官僚機構は政治圧力に弱い存在で、よく「日本の官僚は優秀だ」と言われますが、どうもメッキが剥がれてきたようです。それが見えなかったのは単に公文書を残さないで情報を秘匿していたからというのが実際のようです。そして公文書管理の杜撰さ故にどうもろくな引継ぎが行われず、チグハグな対応になってしまうということですね。そしてそこへ付け込んで与党が政治圧力をかけて、ツケは国民へっていい加減にして欲しい(怒)。例えば整備新幹線。この仕組みも国鉄民営化で宙に浮く新幹線整備法を与党の圧力で延命させたものですが、それ故の矛盾も。例えばこのニュース。

東北新幹線、盛岡以北の高速化検討 JR東が騒音対策  :日本経済新聞
最高速320km/hのE5系が盛岡以北の整備新幹線区間で260km/hで運行していることに対して、国の線路使用料増額がネックなどといった議論がある訳ですが、変節黒田節で取り上げたように、整備新幹線が自社保有ではないことがネックであることは間違いありませんが、今回JR東日本が自前で投資するって話です。これの資金手当てですが、一つ心当たりがありまして、株式上場に備えてJR東日本が発議した新幹線譲渡代金のローンが17年3月に終わるってことです。

これJR東海が5.1兆円の負担を終えて余剰資金をリニアに注ぎ込むのと同じスキームですね。JR東日本の所謂1号債務は凡そ2,1兆円で、91年10月以来年1,000億円規模の債務償還が続いてきたんですが、18年3月でなくなる訳で、この部分のキャッシュフローが充当できるってことですね。これ大宮以南の最高速130km/h化や秋田新幹線の大規模改良などで投資を充実させていることとも符合します。

そして背景としてE5系の走行データが蓄積されてきたってこともあります。最高速260km/hとされる整備新幹線区間でも騒音対策を強化すればとりあえず320km/hまでは何とかなりそうという判断なんでしょう。減価償却されないインフラ部分は触らず、追加設備は自前で減価償却すれば、資金を回転させて継続的な設備改良に道が開けます。但し法的な所有者である国(鉄道・運輸機構)の同意は必要ですが、新幹線の財源探しに鵜の目鷹の目の与党政治家たちが横槍入れて線路使用料増額をねじ込む危険性はあります。北陸新幹線の大阪延伸や長崎新幹線のフル規格化などで財源探しに躍起となってますから。

そしてこのキャッシュフローの余剰を利益計上せずに設備投資に振り向けたJR東日本の判断は評価できます。利益を増やして法人税が増えるなら、投資へ回そうってのは民間企業として真っ当な判断です。やや蛇足ですが距離が長くスピ度アップ効果が見込める東北新幹線へは追加投資を厭わない一方、上越新幹線は最高速240km/hのままと選択と集中もされてます。この観点から言えば法人税減税が設備投資を促すって大ウソだってわかりますよね。ここにもウソノミクスです。ホント腹立つ!

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