民営化

Saturday, April 13, 2024

採らぬ狸の戦争の配当

インボイス始めましたで取り上げたMLB大谷選手の通訳水原氏の供述で大谷選手の賭博関与疑惑は晴れました。疑惑の大谷選手の口座取引も水原氏のなりすましというシンプルなもので、アメリカでは銀行口座開設も面倒ですから水原氏が代理で手続きして銀行からの問い合わせにもなりすまして答えていたという訳です。水原氏はギャンブル依存症を拗らせていて、大選手の専属通訳となってある意味金づるを掴んだ結果深みにはまったと見られます。故にギャンブル依存症治療のカウンセリングを受ける条件で保釈されましたが、欧米ではこれが普通のこと。インフレは続くよどこまでもの大川原化工機冤罪事件のような人質司法がまかり通る日本の常識とは違います。てことでこのニュースにツッコミます。

岸田文雄首相とバイデン米大統領の日米首脳会談・共同記者会見の要旨 - 日本経済新聞
日米同盟強化で在日米軍と自衛隊の指揮・統制の枠組み見直しということですが、アメリカの本音はは明らかです。ウクライナでロシアの攻勢にさらされイスラエルの暴走で中東も問題を抱えて動けない米軍に代わって台湾有事よろしくってことですね。朝鮮半島有事で朝鮮国連軍の名目を持つ在韓米軍に韓国軍が指揮・統制される枠組みに準じて台湾有事には自衛隊が対処する枠組みです。

とはいえ朝鮮半島と台湾では国際法上の枠組みが異なります。朝鮮戦争は現在休戦中ですが、元々国連憲章に基づく国連軍による紛争解決という枠組みで北朝鮮の侵攻を食い止め押し返したものですが、当時常任理事国のソビエトが票決を棄権した結果拒否権発動無しに西側諸国が参戦したものですが、休戦と共に各国は群を引き揚げて米軍だけが残ったものです。

故に韓国軍は安保理決議に基づく指揮・統制権の制限を受け続けており、韓国では主に革新派がこの点を問題視していた訳で、文在寅政権で南北融和が模索され朝鮮半島終結に向かったのはこうした背景があります。尚、国連憲章で敗戦国の日本は敵国条項を盾に国連軍への協力を義務付けられており、朝鮮戦争当時は存在しなかった海上自衛隊代わりに海上保安庁が機雷掃海に駆り出されて誤爆による死者も出ています。戦争放棄の戦後日本でも戦死者が出た訳です。

一方の台湾ですが、元々国民党政府と共産党の内戦の結果敗走した国民党が台湾に敗走して臨時政府を台北に置いたことが始まりで、国連決議によって台湾問題は中国の国内問題とする所謂1つの中国論が国際的な合意事項になり安保理常任理事国も北京政府に譲ることになったものです。よく「台湾は親日的」と言われますが、国共内戦で敗走した外省人の国民党政府が独裁体制を敷いて台湾の内省人を抑圧したことから、清朝、日本政府、国民党政府と圧制を受けたことから、近代化が進んだ日本統治時代が相対的にマシに見えるというのが本当のところです。

ちなみに南シナ海の領有権問題のそもそもの発端は、WW1後の戦後処理で日本が島嶼部を国際連盟委任統治領としてリン鉱石採掘などの経済活動も行われていました。当時の日本政府は便宜上台湾統監府の所属としたことから、上述の1つの中国の原則に則って中国が領有権を主張しているもので、日本の台湾統治時代の落とし物です。という訳でやり方には問題がありますが、中国の主張も一応法の支配に則った国際法の枠組みに適います。

つまり国際法上は内戦扱いとなる中台紛争にどう対応するかという法的枠組みは未定ですから、アメリカとしては可能な限り台湾の防衛力強化の協力はするけれど、いざというときの対処法は決まっていない訳です。加えて実際に米軍を動かすには議会の承認が要りますが、ウクライナへの腰の引けた対応に見るように議会が賛成するとは限りません。それでも小競り合いから紛争に巻き込まれる可能性はありますが、その時には日本の自衛隊のせいにしてバックレることも可能です。アメリカだって核保有国の中国と事を構えたいわけではありませんから。

実際ウクライナでは体勢を立て直しつつあるロシアに対してウクライナは劣勢です。というのも米議会共和党のウクライナ支援への消極姿勢もありますが、それ以上に冷戦終結に伴う平和の配当でアメリカが国防費を削減した結果、軍産複合体と言われたアメリカの兵器産業も生産縮小を余儀なくされていたところでのウクライナ戦争ですから、アメリカも兵器の在庫が枯渇しつつあり、これ以上の支援は難しくなっています。そこでじゃあ日本で兵器作りましょうってのが武器輸出三原則の見直しであり日英伊の兵器共同開発でありということで、それに関連してライセンス生産の急所となるセキュリティ対策としてのセキュリティクリアランス法ですね。自民裏金問題の裏ですんなり通っちゃいました。

ロシア側から見ても兵器産業が集積するウクライナの独立はロシアにとっては痛手で、その意味で取り返したかったけど、当初の目論見と違って予想以上のウクライナの反撃で後退を余儀なくされました。故にロシアも国内の兵器製造能力を落としている訳ですが、それを補っているのが北朝鮮でありイランでありという訳です。一方で西側諸国で唯一平和の配当と無縁だったのがイスラエルで、ウクライナ戦争で潤っている西側でほぼ唯一の国です。

他方ロシアは近年石油や天然ガスなどの資源輸出で経済を回してきた訳ですが、それ故にウクライナ侵攻でも石油や天然ガスを止めれば欧米は困るだろうという読みがありましたが、実はガザ沖の有望な海底ガス田があることが英企業の調査で判明し、これを利用すれば現在ライフラインをイスラエルに依存するパレスチナ自治政府にとっては自前のエネルギー源を持って経済自立して独立というシナリオが可能になる訳ですが、イスラエルはこれを徹底的に邪魔し続けてますし、それどころか海底ガス田の利権を我が物にすらしようと狙っている訳で、そうなるとガザへの容赦のない攻撃の意図が別にあることが疑われます。ハマスのせん滅のみならずガザの住民を追い出してイスラエルの実効支配を確立したい訳です。資源国イスラエルとなれば国際的な発言力は増します。またアメリカのみならずロシアの資源禁輸で苦しんだ欧州でもあてにする国が出てきている訳です。

一方で欧米の国民はイスラエルの暴走に怒っていて反イスラエルデモが起こり、特に大統領選を控えるアメリカにとっては支持者離れを防ぐ意味からイスラエルに自制を求めるようになりますが、そうするとアメリカの支援が離れないようにイスラエルはシリアのイラン公館を空爆してイランを巻き込み、アメリカが関与せざるを得ないようにしようとしています。親イランと言われるイエメンフーシ派による船舶攻撃でスエズ運河の利用が困難になり米海軍が艦船を排煙して抑え込もうとしているように、イランが絡めば米軍が動くことを狙ったものです。

世界の紛争地帯の多くがこうして線で繋がる訳で、兵器産業にとってはまたとないビジネスチャンスですが、一般国民の経済厚生の向上に寄与するものではありません。ある意味冷戦終結によるグローバル化の進捗は平和の配当の具現化という側面は確実にあった訳で、例えば米国防総省ARPAnetが一般公開されてインターネットが始まり、それがネットコンピューティングと連携してIT革命が起きたし、先進国に追いつけなかった途上国が新興工業国として台頭することを助けました。その典型が中国です。という訳で中国の台湾進攻は現時点ではほぼ無いと見て間違いないでしょう。

アメリカも自国の兵器産業を増強することなく兵器を手に入れてライセンス料は取り、連邦予算はインフラ投資法やIRA法で民生部門の国内投資を促進して「大砲よりバター」路線なのに日本は真逆を行っている訳です。アメリカは大喜びですが、こうしたバイデン政権の政策が成果を上げているとは言い難く、例えばボルティモア港の橋落下事故のようにインフラの老朽化、脆弱化は止まりません。そして平和の配当としてのネットにも暗雲が漂います。

規制の緩さで巨大化した大手IT企業への規制が議論されてますが、既にアップルやグーグルはやり玉に挙げられています。一方ネット企業には中国の影が忍び寄ります。TikTokは議会が問題視して規制法が作られてますが、一方で格安ECサイトのTEMUが凄い勢いでユーザーを増やしてアマゾンを凌駕する勢いです。実は中国企業なんですが、巧みにそれを隠し、インフレによる割高感も手伝って安さで攻めています。人種差別にナイーブなアメリカでは経営者が中国人というだけでは規制できず、中国企業としての実態が問われる訳ですが、その中国では国営企業優先で民間企業が苦しんでいる中で、アメリカ市場への参入意欲は高い状況です。加えて中国資金による米企業への投資までは規制のしようがありません。気が付けばオーナーは中国人という事態は進むでしょう。

まあこの点は日本ではもっと愚かな政策が進んでいます。NTT法改正で外国人株主の制限が解除されます。つまり中国人も買える訳ですが、通信インフラを売り渡してそのお金で兵器を買って中国抑止ってどこまで愚かなのか-_-;。震災復興予算に使うことが法律で定められた東京メトロの株式上場も、国の保有分が復興に使われるかどうかは要注意です。何故ならば予算の余剰分や税収の上振れ分を防衛費に充てる防衛予算確保法が成立しており、わざと余らせて防衛費に回すことが可能になります。株高で懸案だった東京メトロの株式上場が進むのは良いのですが、能登半島地震の対応でも見られるように、災害復興予算をケチって防衛費に回すって典型的な「バターより大砲」の愚策です。そんな愚かの日本の捕らぬ狸の皮算用は如何に?

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Sunday, February 04, 2024

漂流する世界と日本とひょっとして東京都

根拠なき楽観論が色々なところで綻びつつあります。

円安呼ぶ新NISA 個人の海外投資「月3250億円外貨需要」 - 日本経済新聞
同エントリーで指摘した新NISAによる海外への資金流出が毎月3,250億円の試算です。そうなれば年間4兆銭弱の資金が海外へ向かい、その多くが米株ETFへ向かうと言われております。その結果ドル円が円安に振れる圧力がかかる訳ですが、投資経験の乏しい素人が新NISAへの関心を高めていて、積立NISAに資金拠出した結果、円安インフレで生活を圧迫するという笑えない状況が実現しそうです。

米株式市場は上げ相場が続いてますが、明らかに高すぎる株価の実現可能性にも疑問符がつきます。一方で日本株もバブル後最高値更新が続いてますが、おそらく今が天井でこれ以上は難しいと思います。円安メリットは確かにありますし、実際大手企業を中心に増益が続いております。TSMC熊本工場など国内製造拠点への投資も見られますし、また中国の不動産バブル問題やスパイ防止法で現地勤務社員の突然の拘束もあり、中国リスクが高まって、中国からの資金シフトも言われており、日本株を押し上げる要因にもなっております。

但し注意が必要なのは、日本株の場合円安によるドル建て価格の割安感も海外勢の動きに繋がってます。そしてそれらの資金の流入は円高要因ですが、多くの場合為替先物予約で円売りポジションをとっており、円買いが円高要因になりにくい上に日米金利差がさや取り出来るので、それだけで投資利回りに下駄を履かせてもいます。そして米FRBの利下げ転換は当分なく、逆に日銀の金融政策の引き締め転換にまだ先という見通しがあるからこその動きです。その一方で日銀のマイナス金利解除は確実視されています。

日銀1月の主な意見、金融正常化「要件満たされつつある」 - 日本経済新聞
日銀がマイナス金利解除をはじめとする金融政策の変更に慎重なのは、主に2つの理由があります。1つは日銀自身のバランスシートの調整問題です。大量の国債を保有し、しかもYCCを止めてはいないので、金利動向如何で購入も有り得る状況で、保有国債の償還期限も伸びている状況なので、所謂テーパリングと呼ばれる償還に伴う保有国債の減少が簡単ではないし、逆に売れば価格低下で損失を被りますから、当面動けない状況です。一方大量保有している日本株ETFが株価上昇で評価益を得ており、株式市場が好調な中で一部償還を進めていて、それによる益出しでほぼゼロ金利の国債に代わって業務純益を稼ぐ状況が続いており、当面この形を維持せざるを得ないということです。

もう1つは政府との関係です。アベノミクスの起点となった政府と日銀の政策アコードで2%の物価上昇を安定させるという責任を負っている中で、既にインフレは2%以上となっておりますが、安定的なインフレではないとする批判が政府から飛んでくるのを警戒しているものです。特に所謂リフレ派が多い安倍派議員からの批判を警戒している一方、岸田官邸からも賃上げと物価上昇の好循環を望む声が強く、動きにくい状況があります。故に春闘統一回答後の4月の政策変更が言われている訳ですが、安倍派解散で時期が早まった可能性があり、3月説が言われるようになっていて、上記記事の「要件満たされつつある」に繋がっていると見られます。逆にそれまでは海外勢の日本株投資は安泰でもある訳ですが、日銀の政策変更に伴うポジション調整は当然あります。

そしてアベノミクス継承を謳う岸田政権ですが、インフレ進行で税収の自然増が見込まれる状況にあり、一方日銀が国債償還に動きにくい状況で金利上昇の影響は当面抑制的ですから、所謂増税メガネを言い立てるリフレ派の見立てとは異なり、当面増税には動かないでしょう。一方で防衛費増額や子育て支援の財源問題もあり、国会審議を経ないで見直せる社会保険料値上げなどの姑息な手段で凌ぐというスタンスです。繰り返し述べたますが、インフレは最大の債務者である政府にとっては望ましいことである一方、国民の不満解消は民間の賃上げに依存するというスタンスとなる訳です。そして継続的な賃上げは継続的なインフレの素となりますからデフレへ逆戻りはあり得ず、増税を急ぐ必要はない訳です。これがインフレ税というやつで、ザイム真理教論者が見落としている視点です。

中国を巡る動きも不透明感を増してますが、確実なのはそれでも中国の世界経済に対するウエートの大きさは変わらないということです。上述の中国からの資金シフトによる投資先として日本が選ばれているという要素はあるものの、完全なデカップリングは不可能ですし、バイデン弾頭量が言うスモールヤード・ハイフェンス(狭い範囲の高障壁)も、世論に押されてスモールヤードは徐々に広がりハイフェンスは機能せず、結局混乱をもたらすだけに留まりそうです。それを示すニュースです。

IPEF貿易交渉、漂流の足音 米政治の内向き潮流深まる - 日本経済新聞
元々安倍政権が打ち出したインド太平洋構想の経済版の中国包囲網を意図したものの、米国内の労組票を巡る争いから、所謂もしトラならばアメリカは確実に離脱だろうし、バイデン政権も労組の反対を押し切ってまでは踏み込めないということで、TPPの二の舞が確実視されています。しかも米国内世論への配慮から関税問題は元々外されており、アメリカが抜ければ参加国に具体的なメリットは殆どない訳で、日本が音頭を取っても進まないでしょう。その一方でもしトラ以外にもアメリカに火種があります。
米地銀、続く引き締め余波 利ざや縮小や不動産融資劣化 - 日本経済新聞
これ日銀の政策変更が間近な日本も対岸の火事とは言い難い状況で、債券投資と企業融資や住宅ローンで利ザヤを稼ぐビジネスモデルは中小銀行では日米共通なものが多く、中央銀行の政策変更に影響を受けやすいところです。加えて利上げは不動産市況を悪化させますから、米商業用不動産の不調の原因にもなります。日本と違ってテーパリングが進むアメリカでは尚更です。
スーパープライムショックの予兆
が現実味を帯びます。バブル崩壊は中国だけに留まらない可能性があります。アメリカの馬ブロウ崩壊となればリーマンショック以上の経済ショックになる可能性があり、日本も無事では済まないでしょう。それを踏まえるとこんなニュースにも微妙な感想を持ちます。
新路線「臨海地下鉄」、東京臨海高速鉄道が運行へ - 日本経済新聞
結構意外な展開ですが、元々JR東日本が引き受けると言われているりんかい線を運営する三セク東京臨海高速鉄道に臨海地下鉄を建設させるとともに、JR東日本が進める羽田空港アクセス線の臨海ルートを介した羽田空港乗り入れまで視野に入れているということです。但しJR東日本が出資を断ったつくばエクスプレスとの直通の構想があることから、JR東日本との調整は難航するんじゃないかと思います。

あくまでも東京都の発表ですから、JR東日本との調整はこれからの話でしょうけど、おそらく東京都が描いたシナリオは東京メトロの株式上場と絡んだ話だと思います。国と都の意見の不一致で遅れていた東京メトロの株式上場が、小池都政で豊住線や南北線品川延伸に消極的な東京メトロへの影響力保持から、完全民営化ではなく国と都の持ち分比率を維持した形での株式公開で国と意見集約されており、上述のように表面上好調な日本の株式市場で元々6,000億円相当と見積もられていた時価総額が今なら1兆円程度と見込めて、その半分の公開で5,000億円で都の持ち分46%から2,300億円の税外収入が見込めます。それを東京臨海高速鉄道の増資に充てて都の支配力を強めた上で臨海地下鉄の事業主体とするということですね。但しアメリカのバブルが弾ければ成り立ちませんがね。

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Saturday, January 27, 2024

疑惑の感電事故

正月早々の躓き が続いているようなショックなニュースです。

東北・上越・北陸新幹線、24日始発から再開計画 - 日本経済新聞
1/23AM10時ごろ、大宮を出発した上りかがやきが並行する埼京線北戸田駅付近で垂れ下がった架線にパンタグラフを引っ掛けて破損した事故で終日運休となりました。翌日には始発から復旧したものの、車両運用の都合で一部運休が出ています。

原因は架線に張力を与える端部の錘を吊る棒の断裂によって架線が150mに渡って垂れ下がったものですが、同種の事故は例えば2005年の山手線でも起きており、饋電系トラブルはつきものとはいえ当該の吊り装置は通常30年程度で交換されるものが38年間交換されていなかったことが報じられております。架線検測はEASTI-iのような検測車を走らせてデータを取って摩耗や位置のずれなどを見ながら適宜交換されるところですが、錘の吊り装置までは守備範囲には入らないですから、結局巡回目視で異常を調べる形で補修されることになります。

この点は後述しますが、それ以上に問題なのは、復旧作業員の感電事故です。1人は全身やけどの重傷で助けようとしたもう1人は軽傷ながら2人が巻き込まれた事故です。AC25kvに直接触れた可能性があります。保守作業や事故復旧作業は作業員や機械を線路に入れる必要があるので、指令に通知して線路閉鎖と通電停止の措置が取られ、作業終了後点検の上指令に通知して解除されるというのがざっくりした流れです。加えてJR東日本では新幹線のCOSMOSや首都圏在来線のATOSという運行管理システムに現場責任者が端末で直接アクセスして措置する形で高度に自動化されています。故にシステム上は起こり得ない感電事故が起きたという意味で深刻な事態です。

システム自体はよくできていて、よほどのことがない限りヒューマンエラーの発生も考にくいという意味では羽田空港の衝突炎上事故と異なり当事者の注意力に依存する部分は少ない筈なんですが、現実に事故が起きている以上、何らかの手順ミスや勘違いがもたらした事態である可能性はあります。この点は明らかにされるべきです。

一方事故の直接の原因である架線の錘の吊り装置の断裂は、自動化の盲点のような場所で起きたという意味で、別の問題を想起させます。目視確認で劣化状況を確認して交換を手配するという属人的なシステムで、おそらく目視で異常を発見できるスキルが若手に継承されずに、あるいはそもそもなり手がいなくてベテランの雇用延長で対応しているかといった別の問題が存在すると考えられます。そうだとすれば今後もこのような事故が起きる確率は一定程度あると考えざるを得ません。

事故地点は大宮以南の130km/h区間で起きたもので、大宮以北の高速運転区間で起きればもっと大きなダメージになっていた可能性があります。省力化を前提にすれば何らかの監視システムの導入も考える必要があります。この辺が省力化投資の難しいところです。勤労感謝にAIは勝つ?でAIが高スキル労働者を失わせる可能性を指摘しましたが、人口減少に伴う省力化投資自体は避けられないとしても、やり方は慎重であるべきです。その観点から言えば、気になるのがこのニュースです。

JR東日本社長に喜勢陽一氏 JR後入社、JR東海に続き2人目 - 日本経済新聞
ストでスベってスットコドッコイで記述してますが、JRグループの最大労組のJR東労組を挑発してスト決行を宣言させて労働協約違反を言い立ててスト経験のない若手組合員の引き剝がしまでした当事者です。国鉄OBで占められていた経営トップにJRプロパー社員が就任するのはJR東海に次いで2例目ですが、組合潰しでのし上がったってのはJR東海の葛西氏に似ています。

国鉄改革派3課長と言われた井出氏、松田氏、葛西氏のうち、松田氏は国鉄時代から労組重視の労使協調路線を標榜していました。その松田氏がJR東日本所属となったことは、ひょっとしたら動労の松嵜委員長の所謂分割民営化賛成シフトに影響した可能性はあるかもしれません。分割民営化を受け入れた上でJR総連を企業横断型の欧州型産業別組合にして国鉄時代に果たせなかったスト権確立を狙ったと言われます。結果的には実現しませんでしたが、JR東日本とJR東労組の関係は良好で、36協定を含む労使協議を3か月毎に開いて様々な協議を行う体制を確立します。

その結果1988年12月の中央総武緩行線東中野駅の列車追突事故で車内警報レベルの国鉄型ATCから高度なATS-P設置が加速しました。JR東労組はヒューマンファクター重視で事故を未然に防ぐ対策強化を会社に求め、実現してきました。JR西日本は尼崎事故といった重大事故を起こしましたが、背景に総連系労組と連合系労組との対立が指摘されてます。

JR総連は松嵜氏が意図した会社横断労組の姿勢を重視していましたが、動労と共に分割民営化に協力した鉄労系組合員はついて行けず、そこにくさびを打ち込んで労組の分派を促したのがJR東海の葛西氏で、JR西日本他、東日本と北海道を除く各社が追随します。日本では以前から煩い組合を潰す目的で会社側が第二組合を作らせて、組合幹部経験者を管理職に登用するなどの組合潰しは結構見られましたが、分割民営化後のJRでも同様の動きがあった訳です。確かに松嵜氏の会社横断労組というエキセントリックな構想が分裂の直接的な要素ですが、JR東日本と北海道は総連系労組が主流に留まり、東日本に関しては機能していたと言えます。

しかし2020年の東京五輪を控えて政権からの組合対策の圧もあったと言われますが、組織改編で待遇の異なる運転士と車掌の所属を同じにして動労を出自とするJR東労組を挑発しスト通告に追い込むというのはエグい組合潰しではあります。且つ結果的に労組脱退で瓦解した東労組に代わって社友会という非労組の組織を立ち上げて労使協議も年1回に減らすという形で、労使協議を重視する姿勢をあからさまに反故にしました。こうした背景が今回の新幹線事故に影響している可能性はありますが、広告主であるJRにそこまで突っ込んだ報道はメディアには期待できないでしょうね。

運転士と車掌の配置統合はおそらく将来の自動運転を睨んだ動きでもあると思いますが、車掌に相当する保安要員を乗務させた形のドライバレスを目標と公言するJR東日本だけに、気になるのが乗務員の処遇です。ATOによる自動運転ならば運転操作は自動化されていても、非常時のマニュアル運転対応も含めた動力車運転免許という国家資格を持つ専門職で高待遇となる訳ですが、車掌級の保安要員が免許非保持者とすると、結果的に賃下げの口実になります。それでいて事故時には運転士並み刑事責任が生じるとすれば、そんな仕事を敢えてやりたい人がいるかどうか、上述のようにAIが高スキルの熟練労働者を淘汰するように免許保持者を淘汰するだけならば、大きな問題です。現実的には現行法上の制約もあり簡単には進まないでしょうけど、最大手のJR東日本が規制緩和を求めた時に国がその方向へ動く可能性は大いにあります。

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Saturday, December 16, 2023

もうすぐ笑わなくなる鬼

鬼が笑う2024年から間もなく半年。いよいよ鬼が笑わなくなります^_^;。しかし笑う鬼退治は進まず、人手不足倒産が現実味を帯びます。後手後手の後出しジャンケンで窮地の政権には問題解決能力を期待できません。加えて海外にも波乱要因はあります。

FRB、3会合連続利上げ見送り 2024年は利下げ3回分を予想 - 日本経済新聞
FRBが利上げ打ち止めと共にパウエル議長が利下げを示唆したということで為替が動いてドル円が140円近辺に上がりました。但しこれは同時に日銀のマイナス金利解除など金融正常化との見合いということで、日米金利差が縮小するというシナリオに基づきますが、注意が必要です。というのは利上げ打ち止め後も量的引締め(QT)は継続しており、国債市場に上昇圧力がかかっている状況には変わりはなく、引締め的な状況が続く中で、状況に応じた微調整程度の話です。米政府の財政支出拡大傾向は続いていて国債を消化しきれずに市場金利が高騰するリスクがあり、その調整が迫られることを織り込んだということです。

加えて労働市場の軟化でインフレ鈍化が言われてますが、昨年の7%超のインフレ水準を分母とする今年の3%程度のインフレは、それ自体家計への負担となっていて、実質賃金はマイナスのままです。つまりインフレの鈍化イコール終結ではないということで、FRBは油断できない状況にあります。楽観論者が言うようなソフトランディングシナリオにはなりません。故に外需頼みのの今の日本も影響を受けます。同じ3%程度のインフレでアメリカは実質金利でプラス、一方日本はYCC見直しで1%の市場金利ですから実質マイナス金利で為替は140円台に戻ったものの円安の地合いは変わりません。

加えて大統領選次第でアメリカ自身が迷走するリスクがあり、ウクライナとパレスチナへのアメリカの関与の姿勢も変わります。ザックリ言えばウクライナを見捨ててパレスチナ問題ではイスラエルへのコミットを深めることになります。そうなると原油や天然ガスを中東に依存する日本の立場が微妙になります。日本に留まらずEUもアメリカを当てにできない状況を睨んでウクライナとモルドバのEU加盟交渉開始を決めました。これはEUのロシアとの決別を意味します。日本もサハリン2見直しを迫られるでしょう。

てことで嵐の予感の2024年が間もなく始まりますが、経済的混乱や停滞は必至なのに有効な対策を打てないのが今の日本政府です。それでいて2025年の万博がパビリオン建設もままならず開催に間に合わないことは確実ですが、未だに中止も延期も打ち出せずに、一方で追加負担は続き事業費は倍増しております。ま、万博は年が明けても鬼が笑う範疇に留まりますがwww。見通しが立たないのはこちらも同じです。

静岡・川勝知事、リニアで「全工区の工事計画明示を」 - 日本経済新聞
大井川の水問題に解決の可能性が見えてきたとはいえ、南アルプストンネルの作業ヤードや作業用道路の整備を巡るJR東海の静岡県アセスメント条例違反は解消された訳ではなく、直ちに着工とはいかない静岡工区です。

JR東海は開業年度の2027年予定を取り下げたものの、何時まで延期とは発表せず、静岡工区の未着工で遅れていることを際立たせようとしていますが、実際は大手ゼネコンの談合事件や工事現場のコロナクラスター感染による停止や調布市の外環道トンネル工事の陥没事故で大深度地下トンネル区間も未着手だし、岐阜県のトンネル落盤事故もあり、実際にはあちこちで工事が遅れているのですが、そうした情報提供はせずに静岡県を悪者に仕立てようと意図していると川勝知事は訴えている訳です。ちょっと遡りますが、国交省が示した懐柔策がこちらです。

静岡県にリニア新幹線効果1679億円 観光消費増で、国交省試算 - 日本経済新聞
川勝知事は東海道線の静岡空港新駅設置を希望していると言われますが、掛川駅と近過ぎてこだまの連続停車でダイヤ編成上ネックとなることから無理ということで実現可能性はありません。それ故静岡県にメリットのないリニア工事で負担ばかりということに対して国交省の官僚が示した答案がこれです。

加えて静岡県が以前から求めていたのぞみの静岡県内停車ではなくのぞみの一部の需要がリニアに移るからひかりやこだまが便利になるというロジックです。リニアは毎時10本程度で座席定員が1,000人程度とのぞみ16両編成の3/4ですし、当面名古屋止まりということもあってのぞみのリニアへの全面移行は無理ですから、のぞみの静岡素通りは続くと考えられますし、ダイヤ編成権はJR東海にありますから、国交省が何を言おうがJR東海がそれを忖度して実行するとは限りません。

というかそもそもJR東海のリニア中央新幹線計画は、新幹線保有機構からのリース料に国鉄長期債務の一部を乗せて償還させるスキームをJR東日本の株式上場時に主たる事業用資産が自己保有ではないことの弱点を東京証券取引所に指摘されて国に買い取りを求めた結果、再取得価格という時価評価に整備新幹線などに充てる鉄道整備基金の原資を乗せて25年ローンで返済というスキームに変更し、2017年にローンが終了し、その分キャッシュフローの余剰が生じることから、それを活用してローン総額の5.1兆円をベースに資金繰りして整備するという自己資金スキームを打ち出して国庫負担が無いということで政府が承認したものです。

そのために事業費に事実上キャップがかけられており、それが各工区に割り振られた予算の厳格な管理から受注するゼネコンに談合を呼び込んだんだし、予算制約から無理な工事も散見されており、決して工事は順調ではありません。しかも大阪延伸の前倒しという名目では3兆円の財投資金融資を政府が決めましたが、この融資条件がユルユルで30年据え置きその後10年で返済という超破格のスキームですが、加えて大阪延伸前倒しを示唆しながら融資条件にはなっていないということです。

つまり財投の3兆円は破格につなぎ資金となっており、リニアちゃん気をつけてで指摘したように財投資金を資本制資金として計上した結果、JR上場4社の中で株価が高いJR東海のみがPBR1倍割れとなったと見られます。勿論リニア事業が順調に進んで開業し事業用資産として利益を生むようになれば問題はないんですが、現時点でその見通しは立たない訳で、故に資本効率の改善にはつながらない訳です。ちなみに当初5.1兆円とした事業費はその後膨張し、現時点で7兆円となっております。つまり既に財投資金3兆円の半分以上は投入されている訳で、何時になるかわからない開業までは資本効率の改善は無理という訳です。

これ上記笑う鬼退治エントリーで指摘した京成電鉄のオリエンタルランド依存の結果の実質PBR1倍割れ問題とも似ています。OLCや東海道新幹線のような金の生る木をなまじ持っているがために苦労している訳ですね。

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Saturday, October 28, 2023

ドイツの後塵

まず減税くそメガネlで取り上げた無人タクシーの残念なニュースです。

米加州、GM傘下の無人タクシー運行停止 人身事故巡り:日本経済新聞
隣を走っていた別のクルマが撥ねて倒れた歩行者の女性を巻き込んで6m走って停止したという事故で、クルーズの無人タクシーの有責事故ではないんですが、問題は自動運転車が事故を認識して路肩へ寄せた結果、被害者のダメージを高めてしまったことです。しかもそのことを当局に対して隠ぺいしたということで運行停止となったものです。

グーグル関連会社ウェイモに始まる無人タクシーの実験運行ですが、結果的に複数企業が米国内各地で実験運行を始めた結果、事故の報告が増えています。搭載AIが学習途上ってことでしょうけど、主に画像解析に依存していて、変化の激しい道路の交通状況に対応しきれていないということのようですが、それならば尚更情報隠蔽は問題解決から遠ざかる訳で問題です。恐らくショッキングな映像で世論の反発を恐れた結果かもしれませんが、企業姿勢としては問題です。加えて画像以外の事故回避システムの必要性も示唆します。

こうした社会実験を認める米州当局の在り方ですが、合意形成が難しい連邦政府ではなく州政府への企業のロビー活動が盛んな結果がこうした事態を招いている面もあります。インフレは続くよどこまでもで取り上げた全米自動車労連(UAW)のストでも南部の共和党ステートの労働者保護の不備を問題視しており、それにバイデン大統領が連帯を示したことでややこしくなっております。その中でフォードが大幅賃上げを含むUAWの要求を呑んで和解した一方、GMやストランティスではストが続いており、労働者の権利拡大という面で言えば日本の国鉄で起きたスト権ストに近い性格で、GMは無人タクシー事故も重なって苦境にあります。という訳でウクライナやガザの紛争を抱え内憂外患に苦しむアメリカです。

とはいえ現状経済的には先進国で独り勝ち状態にあるのですが、こうしたことが重なり、且つコロナ給付金で生じた過剰貯蓄が枯渇しつつある米経済の先行きは明るくはありません。それでも相対評価でドル独歩高が続く為替市場ですが、円が主要通貨に対してほぼ値下がりしている結果、こんなことが起こる訳です。

日本のGDP、ドイツに抜かれ世界4位に IMF予測:日本経済新聞
日本が中国に抜かれて3位転落したのが2010年で、いずれインドにも抜かれるとは言われておりました。どちらも新興国で経済成長が目覚ましく、中国は既に日本の3倍近くと経済成長を続けております。それに引き替え先進国で低成長のドイツは、エネルギーのロシア依存が仇となって高インフレに苦しみ、中国依存が対中デリスキングで見直しを余儀なくされていて苦しんでいる訳ですが、あくまでもドル建て名目値での逆転であり、日独のインフレ率の差と為替変動の結果であり問題なしと解説する人もいますが、大間違いです。

ドイツが日本以上にインフレ率が高く苦しんでいるのはその通りですが、ECBの利上げでユーロの対ドルでの下落率が日本円と差がある訳ですが、日銀が利上げに動けないのは金利高による日本国債の暴落リスクがある為で、財政の健全性が仇となっていて動くに動けない結果です。異次元緩和を10年も続けた結果こうなった訳で、過去の政策が仇となっていて予想外の逆転をもたらしたという意味で深刻です。加えて人口8,300万人と日本の2/3ですから1人当たりGDPは1.5倍で、それだけ日本国民の購買力が低下した訳です。つまり新興国の成長の結果の逆転ではなく日本の衰退の結果の逆転ということで、深刻に受け止めるべきニュースです。

それなのに日本の国会では無意味な減税の議論ばかりしていて、更に財政を悪化させようとしているのですから救われません。加えて政府の打ち出す政策が悉く的外れという救いようのない状況です。所得税減税では納税者の6割が最低税率の5#課税で定額減税の恩恵が得られません。この中には年金受給者の嘱託雇用や主婦パートなどを含みますが貧困ひとり親世帯が多数含まれており、少子化対策と矛盾します。また賃上げを狙った法人税減税も問題があります。

賃上げ減税、中小6割が対象外 赤字体質の脱却重要に チャートは語る:日本経済新聞
法人税は欠損の最大10年の損失繰越という税法の仕組みで、資金繰りを図りながら敢えて欠損を出して繰越繰越で課税を逃れることは可能です。そうした企業は賃上げしても減税の恩恵は受けられませんから意味のない減税です。寧ろ基準を見直して課税強化した方が賃上げを促します。あと年金に関する2つのニュースです。企業の年金負担22年度6兆円減 金利上昇で業績押し上げ【イブニングスクープ】:日本経済新聞JAL再建会社更生法適用が決まるで解説した確定給付型企業年金(DB)が高度経済成長期には企業にとっても従業員にとってもメリットがあり、公的年金の貧弱さをカバーしてきた訳ですが、バブル崩壊後の低成長期にも見直されずに企業による拠出金でDOBに給付してきた訳で、所謂レガシーコストと呼ばれ、これが90年代の事業縮小や新卒採用手控えで所謂ロスジェネ世代を生み出しました。その後日本版401kと呼ばれる企業型確定拠出年金(DC)の制度かで乗り換える企業が出た一方、OBの顔色を窺って企業業績に躓いたJALのような企業も出た訳です。利回りを見直すなどして制度を維持した企業も昨今の金利上昇で利回りが改善してメデタシなんですが、その結果生じる剰余金を賃上げの原資にするならともかく、内部留保される可能性もあります。こうした資金を賃上げに回せるように背中を押すことが出来れば持続可能な賃上げも不可能ではないでしょうけど、同時に保有資産の減価による損失との見合いとなりますが、例えば内部留保課税のような形で賃上げに回るような制度的工夫はあり得ます。
国民年金、給付水準の低下抑制 保険料納付5年延長案も:日本経済新聞
年金制度の持続可能性を高める検討は必要ですし、労働市場の実態や長寿命化の実態から見ても納付期間延長や給付年齢繰上げはいずれ避けられないでしょうけど、第3号被保険者制度を廃止して専業主婦から保険料を納付することが抜けてます。保険料負担が無いから主婦パートの年収の壁問題が生じる訳で、厚生年金に加入すれば保険料負担が無くなる上に老齢年金の増額や妊婦給付など保証範囲も広がる訳で、受け入れやすくなります。但し雇用主の負担は変わらず雇用側の都合でシフト減らしの可能性は排除できませんが、そうした雇用主は従業員を確保できずに淘汰されるとすれば、被雇用者側にとってはメリットです。

年金と国鉄の意外な関係で解説したように元々国家総動員体制の一環として会社員が転職で不利になる上、保険料を徴収して戦費に充てる狙いもあってスタートした厚生年金保険制度ですが、時代が変わればアップデートが必要な訳で、そうした議論が進まない中で年金財源が枯渇することで、結局被害を受けるのは今の現役世代と姿なき将来世代なんです。世代間の対立を煽って議論をやりにくくする昨今の風潮は問題があります。

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Sunday, October 01, 2023

インフレは続くよどこまでも

有り難くないタイトルですが、中国バブル崩壊の次はアメリカの話題です。米国債金利の上昇で円安が進む昨今、米連邦政府閉鎖の危機が今度ばかりは避けられない情勢でしたが、ギリギリのタイミングで回避されることになりました。

米下院、超党派のつなぎ予算案可決 政府閉鎖回避へ前進:日本経済新聞
10/1から始まる新年度の予算執行のためのつなぎ予算が下院で否決されたことに端を発する騒動ですが、下院多数派の共和党の強硬姿勢で民主党案が否決された後、マッカーシー下院議長の修正案が提案されたものの、民主党のみならず共和党からも反対が出て否決となり、絶望的な状況ということで、バイデン台帳量も政府閉鎖準備を指示せざるを得ない状況となりました。結果的にはマッカーシー議長案の修正で下院を通過したものです。

ここまで揉めたのは米国内の分断の深刻さを示すものです。元々新年度予算は民主、共和両党で合意済みですが、下院多数派の共和党が執行段階でブレーキをかけた格好です。共和党が嫌うリベラル的政策の予算を削り、不法移民対策としてのメキシコ国境のフェンス建設に予算を回せというのがザックリした主張ですが、既に合意済みの予算を削れというのは無理筋です。但し今回のつなぎ予算も45日間ですから、同じような騒動は繰り返されると見ておくべきでしょう。

これにはいろいろな背景があるんですが、共和党地盤の南部諸州にとって不法移民問題が重荷になっていることは確かな一方、東部エスタブリッシュメントや西海岸のハイテク地帯に強い民主党の移民に甘い姿勢は許せないという感情が前に出る訳です。その一方でヒスパニック系移民の増加で人口が増えており、移民の出生率の高さから人口の低年齢化も進んでいて、それが南部の生産年齢人口の厚みとなって工業化が進んだ面もあります。加えて共和党ステートの労働規制のユルユルさもあり、組合運動を認めないテスラの工場などが立地しております。それが別の問題を引き起こしていることも見ておきます。

米自動車スト拡大 新たに7000人、GMとフォード工場で:日本経済新聞
全米自動車労連(UAW)のストでGM、フォード、ストランティス(クライスラー)のビッグ3の工場がスト突入で生産が滞っております。UAWの主張はエンジン車からEVへのシフトは避けられず、自動車関連の労働者の数が減ることを睨んで、EV用バッテリーなどの製造工場の労働者もUAWに加盟させて保護を受けられるようにすべきだという主張です。産業構造の転換を理由に労働者が不利益を被ることは避けるべきということです。

ややこしいのはバイデン大統領が集会に参加して連帯を表明したことで、組合側が勢いづいていることで、結果的に火に油を注いだ形になってしまったことです。2016年大統領選で組合票がトランプ氏に流れたこともあり、組合票の囲い込みに動いた形です。不法移民が雇用を圧迫して産業が停滞したというトランプ流ナラティブの否定と共に、暗に南部諸州の労働規制の緩さを批判している訳です。同時に政権のEV政策も関わります。

トランプ時代のバイアメリカン法に触らずにインフレ抑制法(IRA法)を成立させた結果、米国内で販売されるEVは基本北米地域で生産されることを条件とされてしまいます。その結果EVシフトを進める欧州メーカーからWTO違反ではないかと言われごたついています。狙いとしてはバッテリー製造で世界をリードする中国への牽制なんですが、欧州やアジアのメーカーも引っかかる訳で、故に韓国現代なども米国内にEV製造拠点を設置を表明し、SKハイニックスなどバッテリーメーカーも追随しております。

当然欧州メーカーにも同様の動きがある訳ですが、製造拠点が置かれるのは労働規制の緩い南部諸州だったりメキシコだったりすると、結果的にビッグ3中心のUAWにとっては放置できない問題でもあり、出来れば連邦法で規制して欲しいというのが本音です。IRA法の狙いは気候変動対策と共に経済安全保障という面もあり、気候変動を重視するなら地産地消で可能な限り国内で生産して販売するのが正しいし、化石燃料依存の低減は経済安全保障の側面も持ちますが、同時に中国リスクも意識されており、中国産バッテリーの排除の狙いもあります。WTO提訴は現状上級委員の指名をアメリカが拒否していて機能していないですが、トランプ時代のそれを引き継いでいるのは、やはり提訴されたくないのでしょう。

という訳で政府閉鎖とストというリスクを抱えたアメリカで国債金利が上昇するのは当然となる訳です。分断による政治リスクが解消される見通しは立たず、また労組の強化は賃金を押し上げることにもなりますから、今後もインフレは収まらずFRBの追加利上げも現実味を増す訳です。となると低金利政策から抜け出せずにいる日本円の減価は避けられず、円安は進みますから、輸入物価上昇に伴う消費者物価上昇は今後も続くってことです。日銀の政策見直しが無ければ更にこの傾向は続きます。

経済安保は日本も取り組んでいる訳ですが、2020年の外為法改正の結果、妙なことが起きています。NHKスペシャルで取り上げられた大川原化工機の起訴取消事件の顛末のお粗末さが示す寒い現実です。

起訴取り消し事件「捏造」 訴訟出廷の警部補が発言:日本経済新聞
捜査官が捏造を認めたことも驚きですが、大川原化工機が輸出したのは液体噴霧乾燥機で、液体を噴霧して乾燥させることで粉末化する機械で、インスタントコーヒーや粉ミルクの製造装置になる訳ですが、警視庁公安部は生物兵器転用可能として無許可輸出を違法として刑事訴追した訳ですが、根拠となる証拠を捏造して会社幹部3名を長期間収監して1人はガンが進行して死亡するというとんでもない事件です。

警視庁公安部が動いた理由は推測ですが、法改正で実刑が定義されたことを受けて、捜査の指針となる判例を確定させたかったのでしょう。その為には抵抗力のある大企業よりも中小企業を追い込んで立件すれば手っ取り早いってことですね。狙い撃ちされた大川原化工機にとってはただただ迷惑な話ですが、特に経済安全保障絡みの政治性の強い法律故に、判例を確立させて捜査に睨みを利かせる所謂一罰百戒を狙ったと考えられます。それが今回のような人質司法の冤罪事件を生む訳です。現れ方の違いはありますが、政治が絡むとろくなことにならないのは日本も同様です。

JR北海道の札幌圏赤字急減、「黄線区」は拡大 4〜6月:日本経済新聞
コロナ禍前の水準に戻ってきたというニュースですが、記事中営業損益を見ると、北海道新幹線並行在来線区間の函館―長万部間の赤字額が長万部―小樽間の赤字額の3倍以上あり、営業キロの違いがありますが、貨物列車運行の重荷を感じさせます。ま、それ言えば絶対額では北海道新幹線が断トツで、青函トンネル区間という特殊区間ではありますが、札幌延伸後の収支改善も厳しさを匂わせます。

札幌都市圏以外は収支均衡は絶望的と言えます。その中で並行在来線協議を進める訳ですから厳しい現実ですが、加えて余市―小樽間で並行路線を持つ北海道中央バスがドライバー不足からバス転換を渋っていますし、それどころか事前に何の相談もなくバス転換を打ち出した北海道に対する不信感もあるようです。

鈴木知事が夕張市長だった時代に夕張支線の廃止に道筋をつけたことが成功体験となっているのでしょうけど、地元事業者の夕張鉄道が引受に動いたことでまとまったものの、ドライバー不足からバス便の維持は困難を極めており、鉄道時代を受け継ぐ伝統の長距離路線の新札幌夕張線の運行停止など満身創痍です。バス転換が選択肢にならない時代に直面しているってことです。

アメリカでペンセントラル鉄道が破綻したときの連邦政府の素早い対応と比べると、本当に危機感がないですね。ペンセントラル鉄道の場合は、結局連邦政府が線路保有機構としてコンレールを立ち上げて上下分離で運行継続を図りました。東方回廊とシカゴをエリアに持つペンセントラル鉄道が運行停止されると大量の貨物の滞留が起きるということでの緊急避難だったんですが、結果的に経営の苦しい他の民間鉄道も合流して鉄道ネットワーク維持に寄与しました。

コンレールはその後民間入札でサザンパシフィック鉄道に売却されて所謂北米5大ネットワークの一角を占めますが、それぐらい鉄道貨物の重要性が高いってことでっすね。結果的に旅客部門は都市圏毎の交通営団が引き受け、長距離列車はアムトラックが引き受ける形で現状となります。線路保有が貨物会社で旅客会社が線路を借りるという日本と逆の形になりました。この形態が基本ですから、なるほど日本の新幹線のような高速鉄道の整備のハードルは高い訳で、鉄道好きと言われるバイデン大統領がIインフラ整備法で約束したものの、財政支出を巡る共和党との綱引きで進んでおりません。政治はリスクの時代と自覚するしかないのかな。

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Sunday, September 24, 2023

中国バブル崩壊を喜ぶ大人たち

戦争を知らない大人たちで敢えて踏み込まなかった話題です。中国不動産大手の中国恒大集団の米破産法15条申請や碧桂園のデフォルト危機などの報道でいよいよ中国不動産バブル崩壊が言われますが、何れも外貨債務の整理であって、資本流出を防ぐ為です。国内の人民元建て債務にはメスが入れられておりません。

故にバブルの後始末が進まず日本のように長期停滞に陥るんじゃないかと言われており、実際デフレ的な物価下落が見られたり、若年層の失業率が高止まりしたりしてますし、同じタイミングで生産年齢人口の減少も起きており、まるで90年代の日本を早送りしているように見えます。実際中国経済は成長鈍化が見られます。但し日本と違って不動産デベロッパーはマンション建設前に全室完売して建設費に充てるということをしてきたため、契約して代金決済を済ませながら引き渡しを受けられない人が多く、それに対する政府の限定的な救済はあり得ます。

それでも4%台の成長率を実現している訳で、中国がゼロコロナ政策を続けて経済活動を抑制してきたことと、にも拘らず財政的な補償措置が取られていないことを考えると、驚異的な成長率です。人口規模の大きさが生むダイナミズムでしょう。不動産バブルが弾けてなおこの水準ということは日本とはかなり異なります。絶好調の米経済を追いかけるスピードは落ちるでしょうけど、ほぼ横ばいの日本より高い成長率は維持されて日本は置いて行かれるということですね。

ただ課題は様々あります。そもそもの不動債バブル拡大はリーマンショックで世界各国が軒並み停滞した中で、当時の胡錦涛政権による5兆元(当時レートで57兆円)の財政出動を発表し実行したことによります。これ80年代の米経済停滞の救済策として行われたプラザ合意によるドル買い協調介入と、その後の貿易収支改善策としての内需拡大要請で、日銀の低金利政策と政府の財政出動が行われました。プラザ合意による円高で購買力が増した日本は好況に沸きますが、それでいて円高による輸入物価の低下でインフレにはならず、故に低金利政策は長期化します。その結果カネ余りで不動産投資が活発化し、本業がさえない企業の含み資産拡大で株が買われ、所謂バブル経済となります。

中国でも財政出動で主にインフラ投資が活発化し、高速鉄道や高速道路が張り巡らされ、その結果鉄鋼やセメントの政策が活発になり、それを受けた地方政府の開発熱が進みます。社会主義国の中国は土地は交友が前提ですが、地方政府の開発資金として土地使用権が売りに出され、民間デベロッパーが買って開発し完成前に完売という形で資金循環が起こりましたが、多くの副作用もありました。

一つは腐敗の蔓延で、地方政府にとっては土地使用料の売り出しは無から財政資金を生み出す錬金術として多用され、農地から農民を追い出して売り出すようなことも起こります。そして地方官吏と民間デベロッパーの癒着が起きるのはお約束で、胡錦涛政権末期にはかなりひどい状況だったようです。習近平政権の反腐敗運動はその尻拭いだったってことですね。

また鉄鋼やセメントの過剰生産問題もあり、その対策として海外インフラ事業への進出を狙ったのが一帯一路であり、資金面を支えるAIIBです。この辺は中国の軍事的拡張と結び付ける議論もありますが、実態は国内の過剰生産能力対策の意味合いが強く、故に往々にして相手国の事情を無視した強引なこともあったのは確かです。しかしスリランカで言われた債務のワナは寧ろ先進国が投資を渋ったから中国が出てきたもので、AIIBの融資判断がガバガバだったことは間違いいありませんが、それ以上でも以下でもありません。

あと社会保障の不備の問題もあります。生産年齢人口の減少で社会保障政策の維持が難しいのは先進国も共通ですが、中国はその人口規模の大きさもあって社会保障の充実が難しいし、そもそも中国の国民は政府を信用してません。故にある意味自助の精神が根付いており、住宅の取得はある意味その対策でもある訳です。政治や経済がどうなろうが住むところが確保されていることの安心感もあります。加えて不動産価格の上昇で転売して差益を得た人も出てきて投資目的の住宅取得も増えた訳です。習近平政権で共同富裕を謳い不動産投資を規制したことは理由がある訳です。

その意味でアメリカの対中経済制裁や制裁関税を撤廃して欲しいのは本音ですが、トランプからバイデンに政権が動いても制裁は解除されず、寧ろ強化されてますが、実は抜け道があります。ラオスやカンボジアなど東南アジア諸国で謎の企業が立ち上がっており、中国から輸入した商品をパッケージを変えてアメリカに輸出することで偽装しているもので、アメリカも中国との全面禁輸は無理なのでスルーされているということで、寧ろ米中の経済的な繋がりは強くなっております。

特に資本財と呼ばれる機械製品は中国が近年輸出を増やしてきた分野で、アメリカも中国依存から抜けられない訳です。これは日本も同様で、というか日本の貿易統計で機械製品がほとんどの国に対して黒字なのに対中国だけ赤字です。つまり中国依存から抜けられない訳で、デカップリングは掛け声だけです。ロシアの石油輸入で下支えしてるし、今や中国無くして世界は成り立たない現実があります。但し武器供与はせず、故にロシアは北朝鮮を頼らざるを得ないし、同盟国のアルメニアがアゼルバイジャンの侵攻に遭っても助けられない現実があります。カザフスタンの内乱で中国を出し抜いたロシアの姿はありません。

てことで膠着しているウクライナ情勢ですが、アメリカが武器支援を小出しにしているのは、ロシアが核保有国という事情もさることながら、オバマ政権で方向づけられた対中国の米軍のアジアシフトが進まないこともあり、生産能力の制約もあって気前よく最新兵器を出せない事情もあります。これは中国にとっては心地よい状況ですから、国内経済の不振を理由に台湾進攻するというナラティブは現実的にあり得ません。それを理解できない大人たちの放言は聞き流しましょう。

胡錦涛政権で建設が進んだ高速鉄道も収支は赤字でお荷物になっておりますが、国有企業だから問題視されません。そもそも高速鉄道は江沢民時代の朱鎔基首相の肝いりで、日本の新幹線を参考に旅客輸送を高速鉄道に集約して空いた在来線を貨物輸送インフラにするという、田中角栄の日本列島改造論を参考にしたもので、在来線も4ft8in1/2(1,435㎜)の国際標準軌で新在直通も可能だったことから、短期間で高速鉄道網を整備することが計画されて胡錦涛時代に実現したものです。徹軌道式高速鉄道よりリニアを推進すべしという意見もあり独トランスラピートのライセンスで上海空港リニアを建設したものの後が続かず朱鎔基首相の実務家としての見識を示します。

この点は日本のアイデアで中国が先へ進んだ訳ですが、日本は国鉄分割民営化で列島改造は葬り去られました。整備新幹線スキームで事業は継続されましたが、仮に国鉄分割民営化されずに国鉄が新幹線整備を進めていたとすると、結局赤字を拡大する結果になったであろうことは中国の高速鉄道網が教えてくれます。そしてこのニュース。

JRが外国人パスを大幅値上げ 訪日客価格、手本は途上国 編集委員 石鍋仁美:日本経済新聞
民営化されたJRではなりふり構わずの増収策。手本は途上国ということで、訪日外国人の増加は円安によるディスカウントの影響ですからその分日本の停滞の象徴でもあります。

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Sunday, September 17, 2023

国際問題になった東京五輪の落とし物

東京五輪の落とし物の続きですが、ユネスコの諮問機関のNGOイコモスから神宮外苑の再開発撤回が要求されました。

神宮外苑再開発、イコモスが撤回要求 事業者や東京都に:日本経済新聞
富士山をはじめ世界遺産登録でお世話になったイコモスからの撤回要求ですから、スルーはできないでしょう。

おさらいですが、神宮外苑は明治天皇の崩御を悼む日本国民の寄進によって実現したもので、国民にとっては倒幕で維新、開化を実現させた偉い人程度の認識でしょうけど、広く国民から敬われていた存在でした。そんな国民の声を踏まえて当時の政府は開発制限で地権者の権利を制限する風致地区を制度化してその指定第1号としました。その結果緑地の保全や建設物の高さ制限が課されており、神宮球場や秩父宮ラグビー場、国立競技場などのスポーツ施設もその規制の範囲内で作られたものでした。

Undoしたい大草原wwwの小さな森のザハ案撤回騒動を覚えている人は多いと思いますが、あまり報じられておりませんが、当初旧国立競技場を改修して使うとしていた五輪招致がいつの間にか新国立競技場建設となり、旧国立競技場はあれよあれよと解体されて、工事の難易度が高いザハ案が撤回されたものの、同じ規模の隈研吾案に落ち着いたというアレですね。

実は事前に神宮外苑エリアの高さ制限緩和の都市計画変更が行われていて、謂わば新国立競技場はその露払いで、故にあの規模の新競技場が必要だったってことです。お陰でキャパが大きすぎてレンタル料も高く稼働率スカスカのお荷物になった訳ですが、高さ制限緩和で高層ビル建設が可能になれば。商業施設を誘致して高額のテナント料が稼げますから、少数の民間地権者を利する訳です。

実際三井不動産が高層ビル建設を表明してますし、一方で高層化を快く思わない明治神宮に対しては高さ制限緩和で生み出された容積率の過剰分を隣接する伊藤忠商事に譲渡して譲渡益を得ることで黙らせるという具合に実に悪知恵の詰まった再開発計画です。立案したのは萩生田光一議員で五輪招致委員長の森喜朗が後押ししたものです。ちなみに五輪汚職で招致委員などの刑事訴追がされてますが、萩生田光一も森喜朗もお咎めなしで単なるガス抜きですね。

こういう事情があるので、コロナ禍で1年延期してしかも無観客でも、五輪をやらないわけにはいかなかったし、その裏でこうした悪事が進行していたけど、スポーツを餌にメディアも沈黙していたしで、結局国民の知らないところで進んだ再開発計画というところもイコモスも問題視しています。五輪をダシにした再開発が問われます。

イコモスに関しては世界胃酸でとろける文化散財万歳で取り上げた軍艦島の世界遺産登録で英文の説明に韓国がクレームをつけたことで揉めたこともありましたが、一応日本の主張に沿った決着を見ております。その意味でイコモスからのクレームへの対応は難しいところがあります。

国際ルールを盾に政府の姿勢を正当化する姿勢はALPS処理水海洋放出でIAEAを利用したりしてますが、IOCも利用されただけってことで、国際ルールの都合の良いチェリーピッキングということが言えます。国も都も対応を誤れば国際世論を敵に回すことになりかねません。どうなるでしょうか。

一方五輪汚職で電通の指名停止もあって工程管理がグダグダになっている大阪万博ですが、怪運国債市場の蓋で述べたように工事が進まずいよいよ開催が危ぶまれてます。しかも夢洲の地盤沈下で土壌改良が追い付かないってはて、これ辺野古と同じような状況で土壌改良しないとパビリオン建設も困難ですし、建設資材の搬入路は橋とトンネルが1ずつですし電気もガスも水道も無いからトイレも浄化槽が必要と何だかウンコ臭い現状です。地下鉄中央線の公示も滞っております。

こうして見ると維新のザル頭ぶりが目につきます。所詮底の浅い小悪党で関西財界も腰が引けてます。政府が乗り出してゼネコンへの協力要請をしたりしてますが、図面すら開示されない工事を請負うことはできません。結局政府と大阪府/大阪市の責任のなすり合いになりそうですね。なにわ無くとも江戸村先五輪ですよで示唆したように、どこか間抜けな維新です。まあ阪神のアレで浮かれとりゃええわい。フランチャイズを失うヤクルトの優勝は遠のくでしょうから、留飲を下げられます。

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Sunday, September 10, 2023

どうする縦割り

ジャニーズ問題ですがBSJストラクチャーで取り上げたビックモーター問題と似ています。非公開のオーナー企業でオーナー社長が役職を退いてイエスマンの雇われ社長を立てたところはそのまんまですね。ソーセージ問題の応酬などの話題性は流石芸能事務所、エンタメを忘れていない^_^:。同時に性加害問題の根の深さも露になりました。

芸能界は人々に娯楽を与えるという意味で公娼制度の延長線上にあり、その意味で性的虐待や性的搾取が起こりやすいのは洋の東西を問いません。某NHK元会長が「慰安婦も当時合法だった公娼だ」と言い、欧州で現存する公娼制度を引き合いに出したことがありました。但し彼が見落としていたのは、現存する欧州の公娼制度は感染症防止のための健康診断の義務付けや、反社会勢力が入り込みやすい斡旋人などの性的搾取の防止に力点が置かれていて娼婦の人権擁護法としてアップデートされていることをご存じなかったようです。つまり慰安婦もジャニーズも人権問題という認識が希薄なメディアの報じ方や政府の対応なども問題です。

早速JALなど一部企業でジャニーズタレント起用の見直しの動きが出ています。海外事業にコミットする企業にとっては途上国の劣悪な労働環境や児童労働などで投資家から圧力を受けており、人権問題は経営課題と認識されている訳ですが、問題はドメスティックなメディア企業です。元々噂はあったし、90年代の所属タレントの実名告発を一部メディアは報じたものの特に放送メディアは沈黙しました。

報道部門は後追い取材はしたのでしょうけど採用されず没となれば記者もモチベーションを失います。大手芸能事務所の機嫌を損ねれば番組やイベントのタレントのブッキングや情報提供で割を食うということですね。放送事業者が利害を持つ利益相反がある訳で、ビッグモーター問題で明らかになった自動車販売店が自賠責保険の斡旋で損保会社に優位な立場だったこととも似ています。報道機関としてよりも視聴率競争で優位に立ちたい企業論理が前に出ました。そして日本的な横並び主義も災いしました。また報道機関としての編集権の独立も日本には存在しないことも。そういやNHK大河ドラマの主役誰だっけ?どうするNHK。

台風直撃のお盆が示した課題で懲りたJR東海は台風13号の進路次第では東海道新幹線の運休ありと示唆しました。幸い進路は東へ逸れて事なきを得ましたが多客期のダイヤ混乱は懲りたようで国交省への報告書でも取り上げました。

JR東海、国交省に検証結果報告 台風ダイヤ混乱で:日本経済新聞
16日の豪雨で山陽新幹線との直通運転を止めた結果、新大阪駅に多数の編成が滞留し、車両基地に収容できなかった結果、17日始発の出発準備が遅れて混乱となったもので、再発防止策として運行や混乱の状況全体を把握する担当者を置いたり車両基地の在線状況に応じて京都駅や米原駅に退避させるなどを示しています。

よく考えると国鉄時代は一体だった東海道山陽新幹線が分割民営化で新大阪で分割された結果、新大阪で滞留した編成を山陽側に送り込むことが出来ずに起きた混乱とも言えます。分割民営化の検討段階では新幹線の一体性を重視した本州2社+三島会社+貨物の6社体制案もありましたが、西日本会社の規模が過大になり地域分割の意義が薄れるということで現行案に落ち着いた経緯があります。

歴史にifは禁物ですが、同案が実現していればかなり異なった展開となり、東海道新幹線の一本足打法というJR東海の特異性もなく、今回のような混乱もおきなかったでしょうし、実現が見通せない北陸新幹線の関西延伸もすんなり米原ルートで実現に動いていたでしょうし、敢えてリニアを作ることもなかったでしょう。また東北新幹線東京延伸時にJR東日本が要請した東海道新幹線との直通運転も実現していた可能性もあります。地域分割がもたらした縦割りの弊害が如実です。

宇都宮LRT、市街地へ20分の利便性を生かせぬジレンマ 30年越しの悲願 宇都宮LRT④:日本経済新聞
鬼怒川両岸の広大な土地は農地を中心とした市街化調整区域で都市計画変更しないと開発できないジレンマがあります。元々駅東側から芳賀町に至る道路の渋滞対策として計画されたLRTで都市計画とは別建てだったこともあり、また地権者の同意も必要ということで、現時点で具体的な開発計画はありません。また水害が頻発する昨今、開発してよいものかどうかの判断も難しいところです。30年に亘る計画故にコンパクトシティのコンセプトより前だったこともあります。故に開発はベルモールのある宇都宮大学陽東キャンパスまでの区間に集中しており、マンションラッシュとなっております、ある意味結果オーライのコンパクトシティと言えなくもないですが、他にゆいの杜中央最寄りの新興住宅地が新幹線とLRTの組み合わせで移住者に人気ということです。

あと処理水海洋放出で見えた「新しい戦前」で取り上げた軌道法縛り問題ですが、宇都宮ライトレールでは上上下分離を実現するために全区間宇都宮市道、芳賀町道として整備されており、見かけ上新設軌道の鬼怒川橋梁前後区間や車両基地も道路予算で整備された併用軌道という法的位置づけで、開業後の事業収支を支えています。これ国交省予算の柔軟化で可能になったもので、例えばバスタ新宿がR20甲州街道の環境整備事業として道路予算が使われたり、肥薩線復旧事業への道路予算や河川予算支出が提案されていることともつながり、部分的に縦割りが解消されてはいますが、別問題もあります。

つまり鬼怒川橋梁前後を含む全区間が法令上併用軌道区間となり40km/h規制を受けることになります。一方いいとこ取りで道慮予算を多用した結果B/C比を悪化させた訳ですし、公金の支出として説明責任を果たす必要も大きいのですが、反対派を説得できていない以上果たしたと言えないところは残念です。鉄ちゃんの間では昭和レトロの反対派というレッテル貼りが横行しておりますが、行政側の対応に課題があることは指摘しておきます。

おそらく特認を受けて併用軌道区間50km/h、鬼怒川橋梁前後区間70km/hのスピードアップ実現時を前提にB/C比を計算したのでしょうけど、用地買収や土地改良で事業費の上振れがあったとはいえ、かなりメンドクサイ手続きを経てやっと実現した宇都宮ライトレールがLRT新設の先行事例となることは現状では期待薄でしょう。根拠法規の軌道法をアップデートして鉄道事業法の参入規制を緩和した軽快鉄道事業法のような形にすることで、もろもろのメンドクサイ手続きを簡素化することは考えられます。そうすることでLRT新設に留まらずローカル線の地元引受などにも活用できる汎用性が得られます。例えばローカル線の末端区間で40km/h規制を受け入れる代わりに無閉そく目視運転容認とか第四種踏切容認とか道路予算による上下分離に応用できます。

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Sunday, July 30, 2023

本気の気候変動対策

豪雨の梅雨が明けて猛暑の夏となりましたが、豪雨の影響は多岐に亘ります。

大雨、排水能力超え 秋田大雨1週間「どこの都市でも」:日本経済新聞
秋田市の水害は典型的な内水叛乱です。かがやきを失った北陸新幹線 で取り上げた川崎市のタワーマンション被害のように、豪雨で雨水が下水道の処理能力を超えて流入した場合、逆流して住宅等に被害をもたらすもので、内水氾濫と呼びます。タワマンの場合電気設備を地下に置くケースが多く、水没して停電という被害が起きた訳ですが、停電するとエレベーターが使えず揚水ピンプで水道水をくみ上げて落とす給水設備も使えなくなりますから地獄です。戸建てでも床上浸水もありますし、都市部ならどこでも起こり得るものです。河川の越提氾濫と違って見た目で危険がわかりにくいし、自治体のハザードマップに記載されているとは限りません。

とはいえ地下の下水道の能力増強は簡単ではありませんし、当然多額の費用が掛かります。例えば東京都で大規模な地下調整池を設けたりしてますが、東京都の財政力だから可能ということもありますし、それすら想定外の豪雨が続けば氾濫は起こり得ます。つまり完全な備えは難しい訳です。また確率の低い豪雨への備えにどれだけ公費を使うかについての合意形成も困難です。また人口減少下では公費負担を簡単には増やせません。

そもそも都市化で人口が集積するから下水道を整備しなければならなくなる訳ですが、例えば開発に適さない低湿地を公費で購入して調整池にするとかして、過剰開発を抑制する方向で考えて下水道への雨水流入を抑える方が安上がりで現実的になるんじゃないかと思います。上記かがやきエントリーで北陸新幹線の車両基地が低湿地に立地していたこともありますが、作っちゃいけないところに車両基地を作っちゃったということも言えます。財源制約が強い整備新幹線故に安い底地買いで被害を受けたとも言えます。

てことで苦い経験をしたJR東日本ですが、国鉄時代に建設された東海道新幹線の大阪運転所のように近くに天井川があって、当初から水害対策が考慮され、民営化後も車両を盛土上の本線に避難させる訓練を積み重ねてきた訳で、その経験はJR東日本に引き継がれなかった訳です。とはいえJR東海は水害対策が万全かと言えばそんなことはなく、名古屋の天白川の氾濫で当時の葛西敬之社長の運行継続の指示で多数の列車が立往生して車内泊を強いられましたし、今年の6月豪雨では早めに規制をかけたものの混乱しました。

東海道新幹線、大雨混雑防げ ダイヤや情報伝達改善へ:日本経済新聞
東海道新幹線の約半分の区間が盛土で、パイプを埋め込んで水抜きしたり土留めの擁壁で法面崩落を防いだりといった対策はされてますが、雨量が植えれば盛土が緩んで路盤や法面の崩落は起こり得ます。列車の通過に伴う振動がきっかけになることもあり、沿線の雨量計を見ながら徐行や運休などの規制を決める訳ですが、問題は情報伝達の拙さで駅に乗客が滞留し混乱したことです。JR西日本のように予報段階から計画運休するぐらいしないと結局混乱は避けられないんじゃないでしょうか。

山陽以降の全幹法規格の新幹線では高架橋主体で盛土は取付部などに限られますが、それでも豪雨による混乱は完全には避けられない訳ですから、盛土の多い東海道新幹線ではより慎重な対応が求められます。しかしのぞみ増発で輸送能力を高めてしまったが故に運休の判断が難しくなっているということも言えます。JR東海はそれ故に中央リニアを作るんだとしていますが、輸送力は東海道新幹線には及びませんし、第一難工事で開業の見通しが立たない状況です。

一方の北陸新幹線も敦賀で当面足踏みの状況が続きそうです。やはり難工事が予想される小浜京都ルートに拘らず、早期開業が見通せて事業費も少ない米原ルートで実現することで代替ルートは確保できます。但しJR東海の孤立主義が問題を難しくしている面があります。また豪雨にしろ猛暑にしろ気候変動の影響と見るのが妥当ですし、欧米やオーストラリアなどでも熱波や山火事を気候変動に絡めて報道されることが増えてますが、日本では見られません。正直言って人口減少に対応した開発抑制はCO2排出削減にもなりますし、実際電力需要は縮小しており、再エネ転換がやり易い状況になってきています。政府が言うGXの本気度が疑われます。

水害じゃありませんが首都圏ではこんな輸送障害がありました。

山手線全線で運転再開、11万人に影響 信号装置が故障:日本経済新聞
月曜朝の輸送障害で混乱しましたが、原因は信号トラブル。しかも大崎の東京総合車両センターの本線出口部分の機器トラブルで主要車両を本線に出せずに運休という致命的なもんです。思い出されるのは2015年の籠原駅の地落事故で電留線から車両を出せなくなった輸送障害ですが、今回は信号システムが原因です。

首都圏ではATOSと呼ばれる運行管理システムで列車の進路選定や遅延時の指令業務から駅の案内表示に至る一連の自動化がされている訳ですが、車両基地の出口のトラブルで車両を本線上に出せなければどうにもなりません。勿論システムを解除してマニュアル操作することは可能ですが、その場合車両基地に収容された車両を1編成ずつ手作業で進路を選定し、手旗などで合図しながら動かすことになりますから、大量の要員を確保して慎重に行う必要があります。当然処理能力は落ちますから、早めの復旧はしたものの平常の6割程度の運行に留まった訳です。JR東日本はそれなりに努力した結果です。

但し乗客への告知や案内は徹底しており、大きな混乱は見られませんでした。山手線は京浜東北線との並走区間の代替輸送と共に地下鉄網による代替輸送が可能という立地もありますから、元々冗長性が確保されているとも言えますし、加えてコロナ禍によるリモートワークでピーク輸送量が減っていたことも幸いしました。金融危機は核より怖いで取り上げた通勤定期運賃値上げの影響もあるかもしれません。つまり需要抑制のための値上げを実施ている訳で、こうした冗長性の確保はトラブル対応にも有効ということですね。効率重視一辺倒は見直す時代と言えます。

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