民営化

Saturday, June 22, 2024

イノベーションを阻むもの

不正を生む会社の掟の自動車検査不正ですが、豊田彰男トヨタ会長の記者会見での検査基準の不合理性に言及したことが不評です。三部ホンダ社長が法令違反の不正を率直に謝罪したことに対して、何だか言い訳がましいということです。もちろん現場を庇いたかったということでしょうけど、謝罪会見でのこの差は意味深です。というのは元々2015年に発覚した三菱やスズキの燃費不正の構造と酷似しているからです。

三菱とスズキは共に当時のJC08モードという日本独自の燃費基準に則った試験ではなく三菱はアメリカ基準、スズキは欧州基準の検査方法を採用していて、惰行法と呼ばれるクルマの走行抵抗を実測して試験ローラーを踏ませるという手間のかかる方法でしたが、テストコースの立地条件や天候次第で実測データのばらつきが大きくなる不都合があり、より厳しい海外基準に準拠した形で試験していたものです。そして海外基準に比べると緩い基準だったこともあり、2016年に見直され燃費基準は国際基準に準じたものに改められました。つまり今回の型式指定検査と同じ構図で既に見直されていた訳ですが、燃費以外の日本独自基準は一部に残って放置されていた訳です。

つまり自動車工業会的には日本基準の不合理性はある程度共有されていたのですが、国に改善を求めるでもなく放置されました。そして基準見直しに最も後ろ向きだったのがトヨタです。検査が不合理で余分なコストがかかると生産台数が少ないメーカーほど負担が大きくなるからトップメーカーのトヨタには有利ですし、まして輸入車にも同じ検査を義務付けられている訳ですから、非関税障壁でもある訳です。国内シェアトップのトヨタとしてはやりたくない訳です。つまり謝罪会見での豊田会長の発言は身勝手ですし、一方海外市場に強いホンダの三部社長は日本基準の見直しは求めるけど、それを言うのはここじゃないという自覚があったということですね。国内市場に対する両社のスタンスの違いが出た訳です。

その国内市場も人口減少で縮小は避けられないから、トヨタも海外進出は活発に行ってはいますが、国内の強さが土台になっており、そこを明け渡す気はないってことですね。また完成車メーカーが乱立して競争が激しかったかつての日本と違って今やダイハツ、日野、スバル、スズキ、マツダとも資本関係を持つ巨大企業グループとなり、かつてのライバルの日産は落ち目、世界のホンダも国内で売れるのは軽ばかり、政府も御用聞きに来ると我が世の春を謳歌するトヨタ。現状を変えたくないイノベーションのジレンマを地で行く存在になっているということですね。これかつてのビッグ3時代のGMの立ち位置に酷似します。

そしてそのアメリカでバイデン政権肝いりの反インフレ法(IRA法)でEV普及促進をしているけど、売れるのはテスラばかりで多数のEVスタートアップは現れては消えで定着せず、そのテスラもEVの普及が進んで市場独占が進んだ結果足踏みしています。そこへ中国メーカーが参入を狙ってメキシコに工場を建ててアメリカ輸出を目論みますが、バイデンでもトランプでも関税がかけられること確実と見られています。とはいえテスラの1/3の価格の新型小型EVなら仮に200%関税かけられても競争力はある訳で、EVの世界でも早くもイノベーションのジレンマが起きつつある状況です。

中国の強さはBYDに留まらず多数のメーカーがしのぎを削る過当競争状態で、かつての日本市場を凌ぐ国内競争市場で鍛えられた競争力は、すでに東南アジアでは存在感を増し、例えばいすゞのピックアップトラックが席巻するタイ市場でも異変が起きています。日本でも大型中型小型のラインナップを揃えた中国製EVバスが増えており、乗用車でもBYDが既に国内ディーラーを立ち上げています。中国は今不動産バブル崩壊や習近平体制で民間企業を圧迫するなどして経済は順調とは言えませんが、EVブームでイノベーションを先導しています。欧州で中国製EVの補助金によるダンピング輸出の認定も、それだけ中国製EVが売れている結果の市場防衛であって、右派の台頭もあってEUとしても動かざるを得なかったものですが、イノベーションの波に乗れていない訳です。、

とはいえ中国も既に人口減少が始まっており、日本を含む先進国と同じ成長力の低下に直面している訳ですが、それでも人口規模が大きく、農民工などの廉価な労働力のボリュームがあり、加えて海外企業との合弁による技術移転もあって最新技術+廉価な労働力という強みは健在です。そしてネックの先端半導体分野でも独自技術でキャッチアップに動いており、台湾や韓国にはかなわないかもしれませんが、日本よりは強くなると見られます。もちろん製造装置その他日本の強い分野はありますが、逆に中国デカップリングが進めばその日本の強みも薄まります。

という訳でマクロ経済的には経済減速が見込まれる中国が強いのは、国内市場規模が大きくそこへ多数の事業者が参入して熾烈な競争を展開しているからで、その中で例えばBYDのような企業が勝ち上がって世界を目指すというかつての日本の自動車産業のようなミクロの競争環境があり、それがイノベーションを生んでいる訳です。イノベーションを唱えたシュムぺーーターもイノベーションはあくまでミクロの現象であり既存のリソースの組み合わせによる新結合による価値創造としており、日本でイメージされる技術革新とはニュアンスが異なります。寧ろ国のマクロ経済政策に経済成長の要素はなく、経済成長は企業家のアニマルスピリットと述べたケインズと同じことを言っています。故に補助金でTSMC誘致とかラピダス支援とか、その他スタートアップ支援とかしても意味はない訳です。

その意味ではJR東海の中央リニアへの挑戦はアニマルスピリットと言えなくもないですが、本音は東名阪の三大都市圏の都市間輸送の市場独占に狙いがあります。だから東海道新幹線の二重化による東海地震対応とか東海道新幹線の老朽施設更新のための長期運休の必要性とか、もっともらしい理由を並べますが、既に東海道新神瀬はのぞみ大増発で対航空で優位に立っています。航空便は便数こそ維持してますが、機材の小型化で提供座席数を減らしていますし、さらに国際線のコードシェアで座席を埋めるとかしている訳で既に勝負はついています。加えて二重化ならば東海道新幹線と共通の徹軌道方式の方が合理的ですし、中央リニアのルートも東海地震警戒エリアが被ってます。東海地震対策ならば地震減の異なる北陸新幹線の大阪延伸こそ本命の筈です。

加えて言えば国土の均衡ある開発という全幹法の趣旨から言えば新幹線ネットワークの形成こそ求められる訳で、取ってつけたような小浜京都ルートではなく米原ルートこそ本命です。何故ならば距離が短く少ない事業費で短期間に整備が可能であり、既に関西広域連合で合意されており、費用便益比(B/C比)2.2と優秀です。

それに対して東海道新幹線の過密ダイヤに乗り入れは不可能とか、米原駅周辺の土木工事の困難さや保安装置の違いや脱線防止システムの違いといった重箱の隅つつきがされてますが、全て解決可能です。そもそも米原ルートもとりあえず米原乗換をベースにB/C比を算出しており、それでもこれだけの経済効果が見込めるという意味ですし、乗入れの為の米原駅の構造とかはJR東海を含めた協議を経なければ決定できませんし、その場合B/Cは悪化するでしょうけど。それでも1.8程度には収まるでしょう。東海道新幹線の過密ダイヤといってもこだまの退避で列車間隔が空くところへ滑り込ませれば可能です。この場合事故や悪天候時の運転整理が複雑にはなりますが、不可能ではありません。あと保安装置や脱線防護システムの違いを言い訳にするのは笑っちゃいます。初代ユーロスターはDC660v,1.5kv,3kv,AC16+2/3hz15kv,50hz25kvの5電源で架線集電とサードレール集電両対応、英仏ベルギーで異なる信号装置やホーム寸法に対応した可動ステップなどのギミックてんこ盛りでした。全幹法で規格が決められている新幹線同士の直通運転はそれよりはるかに容易です。技術的課題を回避する姿勢はイノベーションを阻害します。

まあとかく孤立主義のJR東海との協議をJR西日本が嫌った可能性はあります。例えば北へ届かなかったひかりで取り上げた東北新幹線の東京延伸に伴うJR東日本の東海道新幹線直通要請をJR東海は断りました。国鉄時代の計画では東北新幹線開業時に6番ホーム(12,13番線)を在来線から転用するほか、7番ホーム(14,15番線)を東北新幹線と繋げて東京をスルーする運転形態が考えられていた訳ですが、J国鉄分割民営化時に財産区分として7番ホームはJR東日本と東海の共用とすることになっていたものをJR東海が拒んだ形です。こうした前科があるからJR西日本がJR東海との協議を嫌った可能性はあります。それもこれも国鉄分割民営化に合わせて全幹法を見直さず、法を読み替えて対応した結果、国の事業なのにJRにイニシアチブを握られるという不都合が生じた訳です。こうしたことをきちんと見直さないから、後になって揉める訳ですね。ああイノベーションはいずこに?

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Saturday, May 11, 2024

いちご白書をもう一度

バンバンのヒットソングでは、学生運動華やかなりし青春時代を回顧するものですが、歌詞の映画は60年代ニューシネマとして日本で大人気だったもので、元々は米コロンビア大学の学生によるベトナム反戦運動を巡る実話を下敷きにしたフィクションです。故に映画では架空の大学を舞台に、キャンパスにキャンプと称する拠点を設けて籠城するというスタイルで、当時全米の大学で拡がった運動でした。

いちご白書とは当時のコロンビア大学の学部長ハーバード・A・ディーンの「学生の意見なんかいちごが好きだというぐらい無意味」と発言したことに由来するアイロニーですが、映画でも「俺もいちごは好きだけど?」といったやり取りがでてきます。ボート部所属の主人公はもともと政治的にはノンポリだったけど、好奇心からキャンプを覗いて美少女と出会い、お近づきになりたい一心で運動に加わります。動機は不順ですが大学当局の対話を拒む姿勢やベトナム反戦の街頭デモでの警官隊の理不尽な暴力に直面して目覚めていくという流れで、最後は大学の要請で警察がキャンパスに入り強制排除され、ほぼコロンビア大学で起きた出来事をなぞっています。

バンバンの歌でも彼女と見た映画の思い出として歌われていますが、当時は運動に関わっていると女子学生も関心を持って話を聞きに来るということは普通にありました。故にもてたい一心で学生運動やってたやつはたぶんいたでしょう。実際確かに話を聞きに来る女の子は少なからずいましたが、別にもててたわけじゃありません。しかしそれを横目にひがんでた連中が反左翼反リベラルに傾いて、ネットに触発されてネトウヨになっても不思議ではありません。いつの時代にもリテラシーの低いやつはいます。そしてアメリカでは今そんないちご白書をリアルにもう一度再現しています。

アメリカのコロンビア大学に警官隊突入 ガザ反戦学生デモを排除 - 日本経済新聞
映画いちご白書のラストシーンを再現するようなニュースです。学生たちはイスラエルのガザ侵攻に対して大学のイスラエルの軍需企業との関係を問い、見直しを求めているもので、街頭の市民デモとは意味合いが違います。故に大学が対話に応じて学生の言い分を聞けば済むことなのに、警察による排除を行った訳で、いちご白書の舞台の1968年当時を再現してしまいました。

更に言えば1968年は今年と同様に大統領選の年であり、民主党ジョンソン大統領が政権の座にありました。但しベトナム戦争はアメリカが当事者でジョンソン大統領の判断で進められた経緯から強硬策に出たものの、世論の反発を買い大統領選不出馬に追い込まれます。バイデン大統領はイスラエル寄りの姿勢を見せながら、イスラエルの人権無視といえる軍事侵攻で揺れる世論から徐々に態度を変えつつありますが、それでも若者の支持離れを見ながら煮え切らない対応をしています。市民や学生の声が無視できなくなっているのは確かです。

話を日本に戻しますと、衆議院3補選で立憲民主党が全て勝利して与野党の議席数が変わった結果、政治倫理審査会の野党委員が1人増えて裏金議員49人の出席を求めることが決まりました。もちろんこれで解決ではありませんが、政権はぬらりくらりから追い込まれている訳です。些細な変化でも結構大きな意味があるってことです。あきらめちゃいけません。そして取り上げたいのはこのニュースです。

JR東日本、みどりの窓口縮小を凍結 デジタル化進まず - 日本経済新聞
コロナ自粛で業績を悪化させた結果、省力化にまい進するJR各社ですが、みどりの窓口の集約化で窓口の混雑が常態化して乗客から見て明らかに利便性を損なっており、特に多客期にその傾向が強く出ていますが、GWの窓口混乱でJR東日本はとりあえず現状維持を決め、すでに廃止された駅でも多客期には臨時窓口を置いて現場の混乱を防ぐとしたものですが、JR西日本やJR九州と違って余力があるということはあるでしょうけど、乗客や現場の声を反映して方針変更に柔軟な姿勢を見せました。

みどりの窓口の縮小方針自体は撤回した訳ではありませんが、方向性としてSuicaのエリア拡大やモバイルSuicaで新幹線や特急に乗れるとか、えきねっと予約とか指定席券売機とか様々なメニューで利用客を誘導して対応しようとした訳ですが、何れも必ずしもうまくいっていない現実があります。加えて磁気券に代わるQRコード乗車券の試験もしてチケットレス化を進めて窓口縮小をカバーする目論見ですが、正直言ってユーザーインターフェイス(UI)が使いにくいし、通信に時間がかかって操作性を阻害していたりして、そうした問題もあって窓口利用が減りません。

一つ言えるのは元々国鉄時代の複雑な運賃料金制度を前提に開発されたマルスシステムの問題があります。乗車券、回数券、定期券、グリーン券、特急券、指定券と券種が多く、適用条件も複雑ですからそれに適合したシステムで、窓口業務は職人芸とも言える高度なスキルを求められています。その一方で技を極めた名人が退職年齢に達し、補充された若手のスキルが追い付いていないため、窓口自体の処理能力も落ちていると考えられます。声を上げることの重要性も示しています。

加えてモバイルSuicaにしろえきねっとにしろ指定券券売機にしろ、素人である乗客にUIを通じてマルスを叩かせている訳で、UIも複雑だしネット経由のモバイルSuicaやえきねっとでは通信の遅延による誤操作や誤動作も誘発します。そして結果的に窓口フォローを余儀なくされて窓口混雑を助長します。通信の遅延は通信キャリアのコスト削減策で4G基地局をソフトでエミュレートしたなんちゃって5Gで遅延が解決できないなどJRの責任外の問題も絡んでますが、それも含めてとりあえずの現状維持は的確な判断です。

同時にこれは日本でDXがうまくいかない理由も示しています。まあこの問題は根が深いので、改めて別の機会に取り上げたいと思います。

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Friday, May 03, 2024

国家は憲法でできている

本題に入る前にインフレ定着の続きです。

【ドル円相場】円再び下落、介入観測後も157円台後半 強い米物価警戒 - 日本経済新聞
先月29日の乱高下で日本政府の覆面介入があったと見られます。更に今月2日早朝にも同様の介入と見られる動きがあり、29日に5兆円、2日に3兆円規模の介入と見られています。なんでそんなことがわかるかといえば、日銀当座預金の残高が相当額減少したからです。

政府の為替介入の原資は円売りドル買いの場合は日銀が米NY連銀に持つ口座を利用してドル買いする訳で、円の供給量が増えるので事後的に政府短期証券と呼ばれる短期国債を発行して民間から資金を集めて戻して日銀の金融政策への影響を相殺するという手順となりますが、ドル売り円買いの場合は外貨準備のドルを取り崩して円を買いますから、日銀が買い取った円は消滅し、その分当座預金残高が減る訳です。

日本の外貨準備は凡そ1.3兆ドル、円換算で200兆円程度で日銀に預託されていてほとんどはアメリカ国債で運用されています。介入資金は国債以外のドル建て現預金を用い、その規模は円換算で50兆円程度と見られ、今回その一部が使われた形です。故に介入資金はまだあり、今後も介入の可能性はありますが、結局事後的に相場は戻してしまいます。故に無駄なことしてる訳ですが、円安対策としてやったフリはできる訳です。

尚、巷間謂われる円安による外貨準備の含み益は上述のように日銀が円を買えば消滅する訳ですから、含み益は実現せずそれを防衛費などの財源にという議論は成り立ちません。確かに外貨準備でアメリカ国債などで運用された分についての利子分の歳入はあり年度ごとの決算で剰余金として計上されますが、法律により一部は外貨準備に繰り入れられた上で一般財源に拠出されますが、円安による含み益はその時点で発生するもので、その規模も防衛費を賄うレベルには遠く及びません。「含み益を財源にしろ」という経済専門家は無知か噓つきかのどちらかです。

一方で投機筋は安心してくださいで指摘した3重の下駄ばき状態でたっぷり含み益を抱えてますから、一時的な相場の乱高下でも慌てる必要はなくあまり動揺していません。そもそも投機筋の動員する資金は政府の介入資金の2桁上で勝負になりません。勝てない戦を仕掛けて抜けられないってアレ?先の大戦と同じじゃん。

という訳で憲法記念日恒例の護憲改憲論争ですが、議論は全く深まりません。何故かといえば議論がとっ散らかっているからで、例えば9条の見直しで安倍政権時代に自衛隊明記の方針を打ち出した訳ですが、これが議論を複雑にしています。主権国家に備わる自衛権の為の実力組織である自衛隊は軍隊じゃないとして戦力放棄に抵触しないというのがこれまでの標準的な憲法解釈だったのですが、憲法に敢えて自衛隊を明記するとすれば自衛権に関わる条文も足さないと整合性が取れません。そしてその場合自衛権の範囲を自国の領土と国民の防衛に限定する個別的自衛権とするのか、同盟国の防衛も含めた集団的自衛権とするのかという点が問題になります。

そうすると厄介なのは現行憲法の解釈変更で集団的自衛権を限定的に容認した安保法制との整合性も問われることになります。憲法で個別的自衛権に限定されれば安保法制は違憲立法として無効になりますし、憲法で集団的自衛権を認めたとしても、国会が発議して国民投票に問うと安保法制込みの国民投票となる訳で、国民の賛同は得にくくなりますし、万が一否決されれば安保法制の在り方が再度議論になり与党にとっては都合が悪いことになります。つまり安倍元首相の憲法理解が浅すぎて議論を混乱させているのが現状ってことです。改憲議論に地雷が埋まってしまった訳です。

遡ればそもそも明治政府が憲法制定に汗かいたのは、幕末の混乱の中で列強から押し付けられた不平等条約の解消の為だった訳で、故に天皇を頂く立憲君主国として自国を定義する狙いでしたが、所謂皇道派の横やりで天皇親政的な解釈に幅を持たせた妥協の産物でもありました。こんなだから昭和の政治不信と改革官僚や軍部の専横で国を戦争に追い込んでしまった訳です。その流れで敗戦後の新憲法制定も自主的にできずGHQ原案が押し込まれた訳ですが、そのことから押し付け憲法論で改憲が必要という理路となる訳ですが、その結果中身の議論がお粗末になってしまった訳です。この辺をクリアにした改憲議論は長い人生で一度も見たことがありません。

よく言われる条文が少なく具体性がないとか理念ばかりで実効性がないとかも、そもそも国の基本法である憲法は最低限の国の在り方を定義したもので、具体性や実効性は個別具体法で定義するってのが立憲主義憲法なんですから、この手の批判も的外れです。そして具体性や実効性を伴う法律を作るのが立法府であり「国権の最高機関」たる国会です。その国会議員の憲法改正議論がこの体たらくですから日本国憲法は100年経っても変わらないでしょう。憲法改正よりちゃんとした法律作れ!

例えば全国新幹線整備法という法律がありまして、新幹線は万能ではないでも取り上げましたが、元々新幹線鉄道は国の事業とされていて、制定当時は公社化された国鉄という実体があり、しかも独立採算制故に国の財政資金を使わないで国土開発に資する目的が定義されていました。その前提が崩れたのが国鉄分割民営化です。

本来ならばこの時点で見直して法改正すればよかったのですが、そうせずに法解釈で対応しました。それが一定の条件の下で条文の「国」を分割後の各旅客会社に読み替えるというもので、民営化された旅客会社に過重な負担をさせないために並行在来線を旅客会社から切り離すことと、それを踏まえた地元の合意が得られることと、国の事業としての広域国土開発に資することという形でJR、地方、国の3者が合意することが求められました。加えて資金の手当てで92年のJR本州3社による買い取り代金の査定額に上乗せして拠出した鉄道整備基金で整備し、JRが受益の範囲で30年リースで負担した残りについて国と地方が2:1の割合で分担するという整備新幹線スキームが作られました。国の事業と言いながら財政資金が投入されない事業故に整備資金スキームを苦労してひねり出した訳です。

この辺も法改正して財政資金投入ではなく事業ごとに毎年度の必要額を査定して予算請求するスタイルなので潤沢な資金がある訳ではなく、結局JRと地方の合意を待って予算化されるということになります。そんな予算のやり繰りがあるので費用便益(B/C)比を重視して高い経済効果のある事業への優先傾斜配分という運用がされていて、第1号事業は長野五輪対応もあってJR東日本を事業者とする北陸新幹線高崎―長野間とされた訳です。

但しB/Cの算出は簡単ではなく幾つもの仮定を置きますから正確無比とも言えず、ある種恣意性が入り込む余地はあります。その結果例えば当初フーパ―特急方式で整備が予定されていた九州新幹線鹿児島ルートでは、実績のない狭軌200km/h営業運転での経済効果を謳って優先順位を上げてましたし、当初沼宮内―八戸間フル規格で間をミニ新幹線でつなぐ計画だった東北新幹線延伸部も全区間フル規格でスピードアップ効果を評価してB/C比を高く見せ、更に当時事業化されていなかった北海道新幹線が事業化された場合の培養効果とか、鉛筆ナメナメ数字を作ってなし崩しでフル規格化が進んだりとデタラメな運用がされてきました。

その結果何が起きたかと言えば佐賀と滋賀で「詐欺だ!」でありやもめのジョナサン でありということですね。そして北陸新幹線敦賀開業での新在乗継レース^_^;という乗客無視に等しい失敗が起きている訳です。にも拘らず敦賀から新大阪までのルートは五里霧中です。上記整備新幹線スキームに従えばB/C比2倍で事業費も少なくて済む米原ルートが選択される筈なんですが、与党PTの横やりで小浜京都ルートという実現可能性の低いルートが地元合意を経ずに調査費が計上されるという脱法的な手続きが行われております。法改正どころか運用ルールも守れない与党議員とは醜悪です。

更に整備新幹線スキームに属さない中央リニア事業も全幹法に基づく国の事業ですが、JR東海の自己資金事業ということで地元合意もなく進められ、3兆円の財投資金投入で政府が支援というのは法的には説明のつかないところです。憲法以前に法律を守れない裏金議員の好き勝手は許すべきではありません。憲法改正以前に立憲主義憲法が空洞化していることこそ問題であって憲法改正があっても無くても問題は何も解決できないということです。

という具合に個別具体法の適時改正もできない与党に改憲発議ができるとは思えません。一説によれば岸田政権は改憲発議を急いでそれを争点に会期末解散を狙っていると言われます。壺や裏金で支持率ガタガタの起死回生の憲法改正だとすると動機が不純すぎますね。

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Saturday, April 13, 2024

採らぬ狸の戦争の配当

インボイス始めましたで取り上げたMLB大谷選手の通訳水原氏の供述で大谷選手の賭博関与疑惑は晴れました。疑惑の大谷選手の口座取引も水原氏のなりすましというシンプルなもので、アメリカでは銀行口座開設も面倒ですから水原氏が代理で手続きして銀行からの問い合わせにもなりすまして答えていたという訳です。水原氏はギャンブル依存症を拗らせていて、大選手の専属通訳となってある意味金づるを掴んだ結果深みにはまったと見られます。故にギャンブル依存症治療のカウンセリングを受ける条件で保釈されましたが、欧米ではこれが普通のこと。インフレは続くよどこまでもの大川原化工機冤罪事件のような人質司法がまかり通る日本の常識とは違います。てことでこのニュースにツッコミます。

岸田文雄首相とバイデン米大統領の日米首脳会談・共同記者会見の要旨 - 日本経済新聞
日米同盟強化で在日米軍と自衛隊の指揮・統制の枠組み見直しということですが、アメリカの本音はは明らかです。ウクライナでロシアの攻勢にさらされイスラエルの暴走で中東も問題を抱えて動けない米軍に代わって台湾有事よろしくってことですね。朝鮮半島有事で朝鮮国連軍の名目を持つ在韓米軍に韓国軍が指揮・統制される枠組みに準じて台湾有事には自衛隊が対処する枠組みです。

とはいえ朝鮮半島と台湾では国際法上の枠組みが異なります。朝鮮戦争は現在休戦中ですが、元々国連憲章に基づく国連軍による紛争解決という枠組みで北朝鮮の侵攻を食い止め押し返したものですが、当時常任理事国のソビエトが票決を棄権した結果拒否権発動無しに西側諸国が参戦したものですが、休戦と共に各国は群を引き揚げて米軍だけが残ったものです。

故に韓国軍は安保理決議に基づく指揮・統制権の制限を受け続けており、韓国では主に革新派がこの点を問題視していた訳で、文在寅政権で南北融和が模索され朝鮮半島終結に向かったのはこうした背景があります。尚、国連憲章で敗戦国の日本は敵国条項を盾に国連軍への協力を義務付けられており、朝鮮戦争当時は存在しなかった海上自衛隊代わりに海上保安庁が機雷掃海に駆り出されて誤爆による死者も出ています。戦争放棄の戦後日本でも戦死者が出た訳です。

一方の台湾ですが、元々国民党政府と共産党の内戦の結果敗走した国民党が台湾に敗走して臨時政府を台北に置いたことが始まりで、国連決議によって台湾問題は中国の国内問題とする所謂1つの中国論が国際的な合意事項になり安保理常任理事国も北京政府に譲ることになったものです。よく「台湾は親日的」と言われますが、国共内戦で敗走した外省人の国民党政府が独裁体制を敷いて台湾の内省人を抑圧したことから、清朝、日本政府、国民党政府と圧制を受けたことから、近代化が進んだ日本統治時代が相対的にマシに見えるというのが本当のところです。

ちなみに南シナ海の領有権問題のそもそもの発端は、WW1後の戦後処理で日本が島嶼部を国際連盟委任統治領としてリン鉱石採掘などの経済活動も行われていました。当時の日本政府は便宜上台湾統監府の所属としたことから、上述の1つの中国の原則に則って中国が領有権を主張しているもので、日本の台湾統治時代の落とし物です。という訳でやり方には問題がありますが、中国の主張も一応法の支配に則った国際法の枠組みに適います。

つまり国際法上は内戦扱いとなる中台紛争にどう対応するかという法的枠組みは未定ですから、アメリカとしては可能な限り台湾の防衛力強化の協力はするけれど、いざというときの対処法は決まっていない訳です。加えて実際に米軍を動かすには議会の承認が要りますが、ウクライナへの腰の引けた対応に見るように議会が賛成するとは限りません。それでも小競り合いから紛争に巻き込まれる可能性はありますが、その時には日本の自衛隊のせいにしてバックレることも可能です。アメリカだって核保有国の中国と事を構えたいわけではありませんから。

実際ウクライナでは体勢を立て直しつつあるロシアに対してウクライナは劣勢です。というのも米議会共和党のウクライナ支援への消極姿勢もありますが、それ以上に冷戦終結に伴う平和の配当でアメリカが国防費を削減した結果、軍産複合体と言われたアメリカの兵器産業も生産縮小を余儀なくされていたところでのウクライナ戦争ですから、アメリカも兵器の在庫が枯渇しつつあり、これ以上の支援は難しくなっています。そこでじゃあ日本で兵器作りましょうってのが武器輸出三原則の見直しであり日英伊の兵器共同開発でありということで、それに関連してライセンス生産の急所となるセキュリティ対策としてのセキュリティクリアランス法ですね。自民裏金問題の裏ですんなり通っちゃいました。

ロシア側から見ても兵器産業が集積するウクライナの独立はロシアにとっては痛手で、その意味で取り返したかったけど、当初の目論見と違って予想以上のウクライナの反撃で後退を余儀なくされました。故にロシアも国内の兵器製造能力を落としている訳ですが、それを補っているのが北朝鮮でありイランでありという訳です。一方で西側諸国で唯一平和の配当と無縁だったのがイスラエルで、ウクライナ戦争で潤っている西側でほぼ唯一の国です。

他方ロシアは近年石油や天然ガスなどの資源輸出で経済を回してきた訳ですが、それ故にウクライナ侵攻でも石油や天然ガスを止めれば欧米は困るだろうという読みがありましたが、実はガザ沖の有望な海底ガス田があることが英企業の調査で判明し、これを利用すれば現在ライフラインをイスラエルに依存するパレスチナ自治政府にとっては自前のエネルギー源を持って経済自立して独立というシナリオが可能になる訳ですが、イスラエルはこれを徹底的に邪魔し続けてますし、それどころか海底ガス田の利権を我が物にすらしようと狙っている訳で、そうなるとガザへの容赦のない攻撃の意図が別にあることが疑われます。ハマスのせん滅のみならずガザの住民を追い出してイスラエルの実効支配を確立したい訳です。資源国イスラエルとなれば国際的な発言力は増します。またアメリカのみならずロシアの資源禁輸で苦しんだ欧州でもあてにする国が出てきている訳です。

一方で欧米の国民はイスラエルの暴走に怒っていて反イスラエルデモが起こり、特に大統領選を控えるアメリカにとっては支持者離れを防ぐ意味からイスラエルに自制を求めるようになりますが、そうするとアメリカの支援が離れないようにイスラエルはシリアのイラン公館を空爆してイランを巻き込み、アメリカが関与せざるを得ないようにしようとしています。親イランと言われるイエメンフーシ派による船舶攻撃でスエズ運河の利用が困難になり米海軍が艦船を排煙して抑え込もうとしているように、イランが絡めば米軍が動くことを狙ったものです。

世界の紛争地帯の多くがこうして線で繋がる訳で、兵器産業にとってはまたとないビジネスチャンスですが、一般国民の経済厚生の向上に寄与するものではありません。ある意味冷戦終結によるグローバル化の進捗は平和の配当の具現化という側面は確実にあった訳で、例えば米国防総省ARPAnetが一般公開されてインターネットが始まり、それがネットコンピューティングと連携してIT革命が起きたし、先進国に追いつけなかった途上国が新興工業国として台頭することを助けました。その典型が中国です。という訳で中国の台湾進攻は現時点ではほぼ無いと見て間違いないでしょう。

アメリカも自国の兵器産業を増強することなく兵器を手に入れてライセンス料は取り、連邦予算はインフラ投資法やIRA法で民生部門の国内投資を促進して「大砲よりバター」路線なのに日本は真逆を行っている訳です。アメリカは大喜びですが、こうしたバイデン政権の政策が成果を上げているとは言い難く、例えばボルティモア港の橋落下事故のようにインフラの老朽化、脆弱化は止まりません。そして平和の配当としてのネットにも暗雲が漂います。

規制の緩さで巨大化した大手IT企業への規制が議論されてますが、既にアップルやグーグルはやり玉に挙げられています。一方ネット企業には中国の影が忍び寄ります。TikTokは議会が問題視して規制法が作られてますが、一方で格安ECサイトのTEMUが凄い勢いでユーザーを増やしてアマゾンを凌駕する勢いです。実は中国企業なんですが、巧みにそれを隠し、インフレによる割高感も手伝って安さで攻めています。人種差別にナイーブなアメリカでは経営者が中国人というだけでは規制できず、中国企業としての実態が問われる訳ですが、その中国では国営企業優先で民間企業が苦しんでいる中で、アメリカ市場への参入意欲は高い状況です。加えて中国資金による米企業への投資までは規制のしようがありません。気が付けばオーナーは中国人という事態は進むでしょう。

まあこの点は日本ではもっと愚かな政策が進んでいます。NTT法改正で外国人株主の制限が解除されます。つまり中国人も買える訳ですが、通信インフラを売り渡してそのお金で兵器を買って中国抑止ってどこまで愚かなのか-_-;。震災復興予算に使うことが法律で定められた東京メトロの株式上場も、国の保有分が復興に使われるかどうかは要注意です。何故ならば予算の余剰分や税収の上振れ分を防衛費に充てる防衛予算確保法が成立しており、わざと余らせて防衛費に回すことが可能になります。株高で懸案だった東京メトロの株式上場が進むのは良いのですが、能登半島地震の対応でも見られるように、災害復興予算をケチって防衛費に回すって典型的な「バターより大砲」の愚策です。そんな愚かの日本の捕らぬ狸の皮算用は如何に?

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Sunday, February 04, 2024

漂流する世界と日本とひょっとして東京都

根拠なき楽観論が色々なところで綻びつつあります。

円安呼ぶ新NISA 個人の海外投資「月3250億円外貨需要」 - 日本経済新聞
同エントリーで指摘した新NISAによる海外への資金流出が毎月3,250億円の試算です。そうなれば年間4兆銭弱の資金が海外へ向かい、その多くが米株ETFへ向かうと言われております。その結果ドル円が円安に振れる圧力がかかる訳ですが、投資経験の乏しい素人が新NISAへの関心を高めていて、積立NISAに資金拠出した結果、円安インフレで生活を圧迫するという笑えない状況が実現しそうです。

米株式市場は上げ相場が続いてますが、明らかに高すぎる株価の実現可能性にも疑問符がつきます。一方で日本株もバブル後最高値更新が続いてますが、おそらく今が天井でこれ以上は難しいと思います。円安メリットは確かにありますし、実際大手企業を中心に増益が続いております。TSMC熊本工場など国内製造拠点への投資も見られますし、また中国の不動産バブル問題やスパイ防止法で現地勤務社員の突然の拘束もあり、中国リスクが高まって、中国からの資金シフトも言われており、日本株を押し上げる要因にもなっております。

但し注意が必要なのは、日本株の場合円安によるドル建て価格の割安感も海外勢の動きに繋がってます。そしてそれらの資金の流入は円高要因ですが、多くの場合為替先物予約で円売りポジションをとっており、円買いが円高要因になりにくい上に日米金利差がさや取り出来るので、それだけで投資利回りに下駄を履かせてもいます。そして米FRBの利下げ転換は当分なく、逆に日銀の金融政策の引き締め転換にまだ先という見通しがあるからこその動きです。その一方で日銀のマイナス金利解除は確実視されています。

日銀1月の主な意見、金融正常化「要件満たされつつある」 - 日本経済新聞
日銀がマイナス金利解除をはじめとする金融政策の変更に慎重なのは、主に2つの理由があります。1つは日銀自身のバランスシートの調整問題です。大量の国債を保有し、しかもYCCを止めてはいないので、金利動向如何で購入も有り得る状況で、保有国債の償還期限も伸びている状況なので、所謂テーパリングと呼ばれる償還に伴う保有国債の減少が簡単ではないし、逆に売れば価格低下で損失を被りますから、当面動けない状況です。一方大量保有している日本株ETFが株価上昇で評価益を得ており、株式市場が好調な中で一部償還を進めていて、それによる益出しでほぼゼロ金利の国債に代わって業務純益を稼ぐ状況が続いており、当面この形を維持せざるを得ないということです。

もう1つは政府との関係です。アベノミクスの起点となった政府と日銀の政策アコードで2%の物価上昇を安定させるという責任を負っている中で、既にインフレは2%以上となっておりますが、安定的なインフレではないとする批判が政府から飛んでくるのを警戒しているものです。特に所謂リフレ派が多い安倍派議員からの批判を警戒している一方、岸田官邸からも賃上げと物価上昇の好循環を望む声が強く、動きにくい状況があります。故に春闘統一回答後の4月の政策変更が言われている訳ですが、安倍派解散で時期が早まった可能性があり、3月説が言われるようになっていて、上記記事の「要件満たされつつある」に繋がっていると見られます。逆にそれまでは海外勢の日本株投資は安泰でもある訳ですが、日銀の政策変更に伴うポジション調整は当然あります。

そしてアベノミクス継承を謳う岸田政権ですが、インフレ進行で税収の自然増が見込まれる状況にあり、一方日銀が国債償還に動きにくい状況で金利上昇の影響は当面抑制的ですから、所謂増税メガネを言い立てるリフレ派の見立てとは異なり、当面増税には動かないでしょう。一方で防衛費増額や子育て支援の財源問題もあり、国会審議を経ないで見直せる社会保険料値上げなどの姑息な手段で凌ぐというスタンスです。繰り返し述べたますが、インフレは最大の債務者である政府にとっては望ましいことである一方、国民の不満解消は民間の賃上げに依存するというスタンスとなる訳です。そして継続的な賃上げは継続的なインフレの素となりますからデフレへ逆戻りはあり得ず、増税を急ぐ必要はない訳です。これがインフレ税というやつで、ザイム真理教論者が見落としている視点です。

中国を巡る動きも不透明感を増してますが、確実なのはそれでも中国の世界経済に対するウエートの大きさは変わらないということです。上述の中国からの資金シフトによる投資先として日本が選ばれているという要素はあるものの、完全なデカップリングは不可能ですし、バイデン弾頭量が言うスモールヤード・ハイフェンス(狭い範囲の高障壁)も、世論に押されてスモールヤードは徐々に広がりハイフェンスは機能せず、結局混乱をもたらすだけに留まりそうです。それを示すニュースです。

IPEF貿易交渉、漂流の足音 米政治の内向き潮流深まる - 日本経済新聞
元々安倍政権が打ち出したインド太平洋構想の経済版の中国包囲網を意図したものの、米国内の労組票を巡る争いから、所謂もしトラならばアメリカは確実に離脱だろうし、バイデン政権も労組の反対を押し切ってまでは踏み込めないということで、TPPの二の舞が確実視されています。しかも米国内世論への配慮から関税問題は元々外されており、アメリカが抜ければ参加国に具体的なメリットは殆どない訳で、日本が音頭を取っても進まないでしょう。その一方でもしトラ以外にもアメリカに火種があります。
米地銀、続く引き締め余波 利ざや縮小や不動産融資劣化 - 日本経済新聞
これ日銀の政策変更が間近な日本も対岸の火事とは言い難い状況で、債券投資と企業融資や住宅ローンで利ザヤを稼ぐビジネスモデルは中小銀行では日米共通なものが多く、中央銀行の政策変更に影響を受けやすいところです。加えて利上げは不動産市況を悪化させますから、米商業用不動産の不調の原因にもなります。日本と違ってテーパリングが進むアメリカでは尚更です。
スーパープライムショックの予兆
が現実味を帯びます。バブル崩壊は中国だけに留まらない可能性があります。アメリカの馬ブロウ崩壊となればリーマンショック以上の経済ショックになる可能性があり、日本も無事では済まないでしょう。それを踏まえるとこんなニュースにも微妙な感想を持ちます。
新路線「臨海地下鉄」、東京臨海高速鉄道が運行へ - 日本経済新聞
結構意外な展開ですが、元々JR東日本が引き受けると言われているりんかい線を運営する三セク東京臨海高速鉄道に臨海地下鉄を建設させるとともに、JR東日本が進める羽田空港アクセス線の臨海ルートを介した羽田空港乗り入れまで視野に入れているということです。但しJR東日本が出資を断ったつくばエクスプレスとの直通の構想があることから、JR東日本との調整は難航するんじゃないかと思います。

あくまでも東京都の発表ですから、JR東日本との調整はこれからの話でしょうけど、おそらく東京都が描いたシナリオは東京メトロの株式上場と絡んだ話だと思います。国と都の意見の不一致で遅れていた東京メトロの株式上場が、小池都政で豊住線や南北線品川延伸に消極的な東京メトロへの影響力保持から、完全民営化ではなく国と都の持ち分比率を維持した形での株式公開で国と意見集約されており、上述のように表面上好調な日本の株式市場で元々6,000億円相当と見積もられていた時価総額が今なら1兆円程度と見込めて、その半分の公開で5,000億円で都の持ち分46%から2,300億円の税外収入が見込めます。それを東京臨海高速鉄道の増資に充てて都の支配力を強めた上で臨海地下鉄の事業主体とするということですね。但しアメリカのバブルが弾ければ成り立ちませんがね。

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Saturday, January 27, 2024

疑惑の感電事故

正月早々の躓き が続いているようなショックなニュースです。

東北・上越・北陸新幹線、24日始発から再開計画 - 日本経済新聞
1/23AM10時ごろ、大宮を出発した上りかがやきが並行する埼京線北戸田駅付近で垂れ下がった架線にパンタグラフを引っ掛けて破損した事故で終日運休となりました。翌日には始発から復旧したものの、車両運用の都合で一部運休が出ています。

原因は架線に張力を与える端部の錘を吊る棒の断裂によって架線が150mに渡って垂れ下がったものですが、同種の事故は例えば2005年の山手線でも起きており、饋電系トラブルはつきものとはいえ当該の吊り装置は通常30年程度で交換されるものが38年間交換されていなかったことが報じられております。架線検測はEASTI-iのような検測車を走らせてデータを取って摩耗や位置のずれなどを見ながら適宜交換されるところですが、錘の吊り装置までは守備範囲には入らないですから、結局巡回目視で異常を調べる形で補修されることになります。

この点は後述しますが、それ以上に問題なのは、復旧作業員の感電事故です。1人は全身やけどの重傷で助けようとしたもう1人は軽傷ながら2人が巻き込まれた事故です。AC25kvに直接触れた可能性があります。保守作業や事故復旧作業は作業員や機械を線路に入れる必要があるので、指令に通知して線路閉鎖と通電停止の措置が取られ、作業終了後点検の上指令に通知して解除されるというのがざっくりした流れです。加えてJR東日本では新幹線のCOSMOSや首都圏在来線のATOSという運行管理システムに現場責任者が端末で直接アクセスして措置する形で高度に自動化されています。故にシステム上は起こり得ない感電事故が起きたという意味で深刻な事態です。

システム自体はよくできていて、よほどのことがない限りヒューマンエラーの発生も考にくいという意味では羽田空港の衝突炎上事故と異なり当事者の注意力に依存する部分は少ない筈なんですが、現実に事故が起きている以上、何らかの手順ミスや勘違いがもたらした事態である可能性はあります。この点は明らかにされるべきです。

一方事故の直接の原因である架線の錘の吊り装置の断裂は、自動化の盲点のような場所で起きたという意味で、別の問題を想起させます。目視確認で劣化状況を確認して交換を手配するという属人的なシステムで、おそらく目視で異常を発見できるスキルが若手に継承されずに、あるいはそもそもなり手がいなくてベテランの雇用延長で対応しているかといった別の問題が存在すると考えられます。そうだとすれば今後もこのような事故が起きる確率は一定程度あると考えざるを得ません。

事故地点は大宮以南の130km/h区間で起きたもので、大宮以北の高速運転区間で起きればもっと大きなダメージになっていた可能性があります。省力化を前提にすれば何らかの監視システムの導入も考える必要があります。この辺が省力化投資の難しいところです。勤労感謝にAIは勝つ?でAIが高スキル労働者を失わせる可能性を指摘しましたが、人口減少に伴う省力化投資自体は避けられないとしても、やり方は慎重であるべきです。その観点から言えば、気になるのがこのニュースです。

JR東日本社長に喜勢陽一氏 JR後入社、JR東海に続き2人目 - 日本経済新聞
ストでスベってスットコドッコイで記述してますが、JRグループの最大労組のJR東労組を挑発してスト決行を宣言させて労働協約違反を言い立ててスト経験のない若手組合員の引き剝がしまでした当事者です。国鉄OBで占められていた経営トップにJRプロパー社員が就任するのはJR東海に次いで2例目ですが、組合潰しでのし上がったってのはJR東海の葛西氏に似ています。

国鉄改革派3課長と言われた井出氏、松田氏、葛西氏のうち、松田氏は国鉄時代から労組重視の労使協調路線を標榜していました。その松田氏がJR東日本所属となったことは、ひょっとしたら動労の松嵜委員長の所謂分割民営化賛成シフトに影響した可能性はあるかもしれません。分割民営化を受け入れた上でJR総連を企業横断型の欧州型産業別組合にして国鉄時代に果たせなかったスト権確立を狙ったと言われます。結果的には実現しませんでしたが、JR東日本とJR東労組の関係は良好で、36協定を含む労使協議を3か月毎に開いて様々な協議を行う体制を確立します。

その結果1988年12月の中央総武緩行線東中野駅の列車追突事故で車内警報レベルの国鉄型ATSから高度なATS-P設置が加速しました。JR東労組はヒューマンファクター重視で事故を未然に防ぐ対策強化を会社に求め、実現してきました。JR西日本は尼崎事故といった重大事故を起こしましたが、背景に総連系労組と連合系労組との対立が指摘されてます。

JR総連は松嵜氏が意図した会社横断労組の姿勢を重視していましたが、動労と共に分割民営化に協力した鉄労系組合員はついて行けず、そこにくさびを打ち込んで労組の分派を促したのがJR東海の葛西氏で、JR西日本他、東日本と北海道を除く各社が追随します。日本では以前から煩い組合を潰す目的で会社側が第二組合を作らせて、組合幹部経験者を管理職に登用するなどの組合潰しは結構見られましたが、分割民営化後のJRでも同様の動きがあった訳です。確かに松嵜氏の会社横断労組というエキセントリックな構想が分裂の直接的な要素ですが、JR東日本と北海道は総連系労組が主流に留まり、東日本に関しては機能していたと言えます。

しかし2020年の東京五輪を控えて政権からの組合対策の圧もあったと言われますが、組織改編で待遇の異なる運転士と車掌の所属を同じにして動労を出自とするJR東労組を挑発しスト通告に追い込むというのはエグい組合潰しではあります。且つ結果的に労組脱退で瓦解した東労組に代わって社友会という非労組の組織を立ち上げて労使協議も年1回に減らすという形で、労使協議を重視する姿勢をあからさまに反故にしました。こうした背景が今回の新幹線事故に影響している可能性はありますが、広告主であるJRにそこまで突っ込んだ報道はメディアには期待できないでしょうね。

運転士と車掌の配置統合はおそらく将来の自動運転を睨んだ動きでもあると思いますが、車掌に相当する保安要員を乗務させた形のドライバレスを目標と公言するJR東日本だけに、気になるのが乗務員の処遇です。ATOによる自動運転ならば運転操作は自動化されていても、非常時のマニュアル運転対応も含めた動力車運転免許という国家資格を持つ専門職で高待遇となる訳ですが、車掌級の保安要員が免許非保持者とすると、結果的に賃下げの口実になります。それでいて事故時には運転士並み刑事責任が生じるとすれば、そんな仕事を敢えてやりたい人がいるかどうか、上述のようにAIが高スキルの熟練労働者を淘汰するように免許保持者を淘汰するだけならば、大きな問題です。現実的には現行法上の制約もあり簡単には進まないでしょうけど、最大手のJR東日本が規制緩和を求めた時に国がその方向へ動く可能性は大いにあります。

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Saturday, December 16, 2023

もうすぐ笑わなくなる鬼

鬼が笑う2024年から間もなく半年。いよいよ鬼が笑わなくなります^_^;。しかし笑う鬼退治は進まず、人手不足倒産が現実味を帯びます。後手後手の後出しジャンケンで窮地の政権には問題解決能力を期待できません。加えて海外にも波乱要因はあります。

FRB、3会合連続利上げ見送り 2024年は利下げ3回分を予想 - 日本経済新聞
FRBが利上げ打ち止めと共にパウエル議長が利下げを示唆したということで為替が動いてドル円が140円近辺に上がりました。但しこれは同時に日銀のマイナス金利解除など金融正常化との見合いということで、日米金利差が縮小するというシナリオに基づきますが、注意が必要です。というのは利上げ打ち止め後も量的引締め(QT)は継続しており、国債市場に上昇圧力がかかっている状況には変わりはなく、引締め的な状況が続く中で、状況に応じた微調整程度の話です。米政府の財政支出拡大傾向は続いていて国債を消化しきれずに市場金利が高騰するリスクがあり、その調整が迫られることを織り込んだということです。

加えて労働市場の軟化でインフレ鈍化が言われてますが、昨年の7%超のインフレ水準を分母とする今年の3%程度のインフレは、それ自体家計への負担となっていて、実質賃金はマイナスのままです。つまりインフレの鈍化イコール終結ではないということで、FRBは油断できない状況にあります。楽観論者が言うようなソフトランディングシナリオにはなりません。故に外需頼みのの今の日本も影響を受けます。同じ3%程度のインフレでアメリカは実質金利でプラス、一方日本はYCC見直しで1%の市場金利ですから実質マイナス金利で為替は140円台に戻ったものの円安の地合いは変わりません。

加えて大統領選次第でアメリカ自身が迷走するリスクがあり、ウクライナとパレスチナへのアメリカの関与の姿勢も変わります。ザックリ言えばウクライナを見捨ててパレスチナ問題ではイスラエルへのコミットを深めることになります。そうなると原油や天然ガスを中東に依存する日本の立場が微妙になります。日本に留まらずEUもアメリカを当てにできない状況を睨んでウクライナとモルドバのEU加盟交渉開始を決めました。これはEUのロシアとの決別を意味します。日本もサハリン2見直しを迫られるでしょう。

てことで嵐の予感の2024年が間もなく始まりますが、経済的混乱や停滞は必至なのに有効な対策を打てないのが今の日本政府です。それでいて2025年の万博がパビリオン建設もままならず開催に間に合わないことは確実ですが、未だに中止も延期も打ち出せずに、一方で追加負担は続き事業費は倍増しております。ま、万博は年が明けても鬼が笑う範疇に留まりますがwww。見通しが立たないのはこちらも同じです。

静岡・川勝知事、リニアで「全工区の工事計画明示を」 - 日本経済新聞
大井川の水問題に解決の可能性が見えてきたとはいえ、南アルプストンネルの作業ヤードや作業用道路の整備を巡るJR東海の静岡県アセスメント条例違反は解消された訳ではなく、直ちに着工とはいかない静岡工区です。

JR東海は開業年度の2027年予定を取り下げたものの、何時まで延期とは発表せず、静岡工区の未着工で遅れていることを際立たせようとしていますが、実際は大手ゼネコンの談合事件や工事現場のコロナクラスター感染による停止や調布市の外環道トンネル工事の陥没事故で大深度地下トンネル区間も未着手だし、岐阜県のトンネル落盤事故もあり、実際にはあちこちで工事が遅れているのですが、そうした情報提供はせずに静岡県を悪者に仕立てようと意図していると川勝知事は訴えている訳です。ちょっと遡りますが、国交省が示した懐柔策がこちらです。

静岡県にリニア新幹線効果1679億円 観光消費増で、国交省試算 - 日本経済新聞
川勝知事は東海道線の静岡空港新駅設置を希望していると言われますが、掛川駅と近過ぎてこだまの連続停車でダイヤ編成上ネックとなることから無理ということで実現可能性はありません。それ故静岡県にメリットのないリニア工事で負担ばかりということに対して国交省の官僚が示した答案がこれです。

加えて静岡県が以前から求めていたのぞみの静岡県内停車ではなくのぞみの一部の需要がリニアに移るからひかりやこだまが便利になるというロジックです。リニアは毎時10本程度で座席定員が1,000人程度とのぞみ16両編成の3/4ですし、当面名古屋止まりということもあってのぞみのリニアへの全面移行は無理ですから、のぞみの静岡素通りは続くと考えられますし、ダイヤ編成権はJR東海にありますから、国交省が何を言おうがJR東海がそれを忖度して実行するとは限りません。

というかそもそもJR東海のリニア中央新幹線計画は、新幹線保有機構からのリース料に国鉄長期債務の一部を乗せて償還させるスキームをJR東日本の株式上場時に主たる事業用資産が自己保有ではないことの弱点を東京証券取引所に指摘されて国に買い取りを求めた結果、再取得価格という時価評価に整備新幹線などに充てる鉄道整備基金の原資を乗せて25年ローンで返済というスキームに変更し、2017年にローンが終了し、その分キャッシュフローの余剰が生じることから、それを活用してローン総額の5.1兆円をベースに資金繰りして整備するという自己資金スキームを打ち出して国庫負担が無いということで政府が承認したものです。

そのために事業費に事実上キャップがかけられており、それが各工区に割り振られた予算の厳格な管理から受注するゼネコンに談合を呼び込んだんだし、予算制約から無理な工事も散見されており、決して工事は順調ではありません。しかも大阪延伸の前倒しという名目では3兆円の財投資金融資を政府が決めましたが、この融資条件がユルユルで30年据え置きその後10年で返済という超破格のスキームですが、加えて大阪延伸前倒しを示唆しながら融資条件にはなっていないということです。

つまり財投の3兆円は破格につなぎ資金となっており、リニアちゃん気をつけてで指摘したように財投資金を資本制資金として計上した結果、JR上場4社の中で株価が高いJR東海のみがPBR1倍割れとなったと見られます。勿論リニア事業が順調に進んで開業し事業用資産として利益を生むようになれば問題はないんですが、現時点でその見通しは立たない訳で、故に資本効率の改善にはつながらない訳です。ちなみに当初5.1兆円とした事業費はその後膨張し、現時点で7兆円となっております。つまり既に財投資金3兆円の半分以上は投入されている訳で、何時になるかわからない開業までは資本効率の改善は無理という訳です。

これ上記笑う鬼退治エントリーで指摘した京成電鉄のオリエンタルランド依存の結果の実質PBR1倍割れ問題とも似ています。OLCや東海道新幹線のような金の生る木をなまじ持っているがために苦労している訳ですね。

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Saturday, October 28, 2023

ドイツの後塵

まず減税くそメガネlで取り上げた無人タクシーの残念なニュースです。

米加州、GM傘下の無人タクシー運行停止 人身事故巡り:日本経済新聞
隣を走っていた別のクルマが撥ねて倒れた歩行者の女性を巻き込んで6m走って停止したという事故で、クルーズの無人タクシーの有責事故ではないんですが、問題は自動運転車が事故を認識して路肩へ寄せた結果、被害者のダメージを高めてしまったことです。しかもそのことを当局に対して隠ぺいしたということで運行停止となったものです。

グーグル関連会社ウェイモに始まる無人タクシーの実験運行ですが、結果的に複数企業が米国内各地で実験運行を始めた結果、事故の報告が増えています。搭載AIが学習途上ってことでしょうけど、主に画像解析に依存していて、変化の激しい道路の交通状況に対応しきれていないということのようですが、それならば尚更情報隠蔽は問題解決から遠ざかる訳で問題です。恐らくショッキングな映像で世論の反発を恐れた結果かもしれませんが、企業姿勢としては問題です。加えて画像以外の事故回避システムの必要性も示唆します。

こうした社会実験を認める米州当局の在り方ですが、合意形成が難しい連邦政府ではなく州政府への企業のロビー活動が盛んな結果がこうした事態を招いている面もあります。インフレは続くよどこまでもで取り上げた全米自動車労連(UAW)のストでも南部の共和党ステートの労働者保護の不備を問題視しており、それにバイデン大統領が連帯を示したことでややこしくなっております。その中でフォードが大幅賃上げを含むUAWの要求を呑んで和解した一方、GMやストランティスではストが続いており、労働者の権利拡大という面で言えば日本の国鉄で起きたスト権ストに近い性格で、GMは無人タクシー事故も重なって苦境にあります。という訳でウクライナやガザの紛争を抱え内憂外患に苦しむアメリカです。

とはいえ現状経済的には先進国で独り勝ち状態にあるのですが、こうしたことが重なり、且つコロナ給付金で生じた過剰貯蓄が枯渇しつつある米経済の先行きは明るくはありません。それでも相対評価でドル独歩高が続く為替市場ですが、円が主要通貨に対してほぼ値下がりしている結果、こんなことが起こる訳です。

日本のGDP、ドイツに抜かれ世界4位に IMF予測:日本経済新聞
日本が中国に抜かれて3位転落したのが2010年で、いずれインドにも抜かれるとは言われておりました。どちらも新興国で経済成長が目覚ましく、中国は既に日本の3倍近くと経済成長を続けております。それに引き替え先進国で低成長のドイツは、エネルギーのロシア依存が仇となって高インフレに苦しみ、中国依存が対中デリスキングで見直しを余儀なくされていて苦しんでいる訳ですが、あくまでもドル建て名目値での逆転であり、日独のインフレ率の差と為替変動の結果であり問題なしと解説する人もいますが、大間違いです。

ドイツが日本以上にインフレ率が高く苦しんでいるのはその通りですが、ECBの利上げでユーロの対ドルでの下落率が日本円と差がある訳ですが、日銀が利上げに動けないのは金利高による日本国債の暴落リスクがある為で、財政の健全性が仇となっていて動くに動けない結果です。異次元緩和を10年も続けた結果こうなった訳で、過去の政策が仇となっていて予想外の逆転をもたらしたという意味で深刻です。加えて人口8,300万人と日本の2/3ですから1人当たりGDPは1.5倍で、それだけ日本国民の購買力が低下した訳です。つまり新興国の成長の結果の逆転ではなく日本の衰退の結果の逆転ということで、深刻に受け止めるべきニュースです。

それなのに日本の国会では無意味な減税の議論ばかりしていて、更に財政を悪化させようとしているのですから救われません。加えて政府の打ち出す政策が悉く的外れという救いようのない状況です。所得税減税では納税者の6割が最低税率の5#課税で定額減税の恩恵が得られません。この中には年金受給者の嘱託雇用や主婦パートなどを含みますが貧困ひとり親世帯が多数含まれており、少子化対策と矛盾します。また賃上げを狙った法人税減税も問題があります。

賃上げ減税、中小6割が対象外 赤字体質の脱却重要に チャートは語る:日本経済新聞
法人税は欠損の最大10年の損失繰越という税法の仕組みで、資金繰りを図りながら敢えて欠損を出して繰越繰越で課税を逃れることは可能です。そうした企業は賃上げしても減税の恩恵は受けられませんから意味のない減税です。寧ろ基準を見直して課税強化した方が賃上げを促します。あと年金に関する2つのニュースです。企業の年金負担22年度6兆円減 金利上昇で業績押し上げ【イブニングスクープ】:日本経済新聞JAL再建会社更生法適用が決まるで解説した確定給付型企業年金(DB)が高度経済成長期には企業にとっても従業員にとってもメリットがあり、公的年金の貧弱さをカバーしてきた訳ですが、バブル崩壊後の低成長期にも見直されずに企業による拠出金でDOBに給付してきた訳で、所謂レガシーコストと呼ばれ、これが90年代の事業縮小や新卒採用手控えで所謂ロスジェネ世代を生み出しました。その後日本版401kと呼ばれる企業型確定拠出年金(DC)の制度かで乗り換える企業が出た一方、OBの顔色を窺って企業業績に躓いたJALのような企業も出た訳です。利回りを見直すなどして制度を維持した企業も昨今の金利上昇で利回りが改善してメデタシなんですが、その結果生じる剰余金を賃上げの原資にするならともかく、内部留保される可能性もあります。こうした資金を賃上げに回せるように背中を押すことが出来れば持続可能な賃上げも不可能ではないでしょうけど、同時に保有資産の減価による損失との見合いとなりますが、例えば内部留保課税のような形で賃上げに回るような制度的工夫はあり得ます。
国民年金、給付水準の低下抑制 保険料納付5年延長案も:日本経済新聞
年金制度の持続可能性を高める検討は必要ですし、労働市場の実態や長寿命化の実態から見ても納付期間延長や給付年齢繰上げはいずれ避けられないでしょうけど、第3号被保険者制度を廃止して専業主婦から保険料を納付することが抜けてます。保険料負担が無いから主婦パートの年収の壁問題が生じる訳で、厚生年金に加入すれば保険料負担が無くなる上に老齢年金の増額や妊婦給付など保証範囲も広がる訳で、受け入れやすくなります。但し雇用主の負担は変わらず雇用側の都合でシフト減らしの可能性は排除できませんが、そうした雇用主は従業員を確保できずに淘汰されるとすれば、被雇用者側にとってはメリットです。

年金と国鉄の意外な関係で解説したように元々国家総動員体制の一環として会社員が転職で不利になる上、保険料を徴収して戦費に充てる狙いもあってスタートした厚生年金保険制度ですが、時代が変わればアップデートが必要な訳で、そうした議論が進まない中で年金財源が枯渇することで、結局被害を受けるのは今の現役世代と姿なき将来世代なんです。世代間の対立を煽って議論をやりにくくする昨今の風潮は問題があります。

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Sunday, October 01, 2023

インフレは続くよどこまでも

有り難くないタイトルですが、中国バブル崩壊の次はアメリカの話題です。米国債金利の上昇で円安が進む昨今、米連邦政府閉鎖の危機が今度ばかりは避けられない情勢でしたが、ギリギリのタイミングで回避されることになりました。

米下院、超党派のつなぎ予算案可決 政府閉鎖回避へ前進:日本経済新聞
10/1から始まる新年度の予算執行のためのつなぎ予算が下院で否決されたことに端を発する騒動ですが、下院多数派の共和党の強硬姿勢で民主党案が否決された後、マッカーシー下院議長の修正案が提案されたものの、民主党のみならず共和党からも反対が出て否決となり、絶望的な状況ということで、バイデン大統領も政府閉鎖準備を指示せざるを得ない状況となりました。結果的にはマッカーシー議長案の修正で下院を通過したものです。

ここまで揉めたのは米国内の分断の深刻さを示すものです。元々新年度予算は民主、共和両党で合意済みですが、下院多数派の共和党が執行段階でブレーキをかけた格好です。共和党が嫌うリベラル的政策の予算を削り、不法移民対策としてのメキシコ国境のフェンス建設に予算を回せというのがザックリした主張ですが、既に合意済みの予算を削れというのは無理筋です。但し今回のつなぎ予算も45日間ですから、同じような騒動は繰り返されると見ておくべきでしょう。

これにはいろいろな背景があるんですが、共和党地盤の南部諸州にとって不法移民問題が重荷になっていることは確かな一方、東部エスタブリッシュメントや西海岸のハイテク地帯に強い民主党の移民に甘い姿勢は許せないという感情が前に出る訳です。その一方でヒスパニック系移民の増加で人口が増えており、移民の出生率の高さから人口の低年齢化も進んでいて、それが南部の生産年齢人口の厚みとなって工業化が進んだ面もあります。加えて共和党ステートの労働規制のユルユルさもあり、組合運動を認めないテスラの工場などが立地しております。それが別の問題を引き起こしていることも見ておきます。

米自動車スト拡大 新たに7000人、GMとフォード工場で:日本経済新聞
全米自動車労連(UAW)のストでGM、フォード、ストランティス(クライスラー)のビッグ3の工場がスト突入で生産が滞っております。UAWの主張はエンジン車からEVへのシフトは避けられず、自動車関連の労働者の数が減ることを睨んで、EV用バッテリーなどの製造工場の労働者もUAWに加盟させて保護を受けられるようにすべきだという主張です。産業構造の転換を理由に労働者が不利益を被ることは避けるべきということです。

ややこしいのはバイデン大統領が集会に参加して連帯を表明したことで、組合側が勢いづいていることで、結果的に火に油を注いだ形になってしまったことです。2016年大統領選で組合票がトランプ氏に流れたこともあり、組合票の囲い込みに動いた形です。不法移民が雇用を圧迫して産業が停滞したというトランプ流ナラティブの否定と共に、暗に南部諸州の労働規制の緩さを批判している訳です。同時に政権のEV政策も関わります。

トランプ時代のバイアメリカン法に触らずにインフレ抑制法(IRA法)を成立させた結果、米国内で販売されるEVは基本北米地域で生産されることを条件とされてしまいます。その結果EVシフトを進める欧州メーカーからWTO違反ではないかと言われごたついています。狙いとしてはバッテリー製造で世界をリードする中国への牽制なんですが、欧州やアジアのメーカーも引っかかる訳で、故に韓国現代なども米国内にEV製造拠点を設置を表明し、SKハイニックスなどバッテリーメーカーも追随しております。

当然欧州メーカーにも同様の動きがある訳ですが、製造拠点が置かれるのは労働規制の緩い南部諸州だったりメキシコだったりすると、結果的にビッグ3中心のUAWにとっては放置できない問題でもあり、出来れば連邦法で規制して欲しいというのが本音です。IRA法の狙いは気候変動対策と共に経済安全保障という面もあり、気候変動を重視するなら地産地消で可能な限り国内で生産して販売するのが正しいし、化石燃料依存の低減は経済安全保障の側面も持ちますが、同時に中国リスクも意識されており、中国産バッテリーの排除の狙いもあります。WTO提訴は現状上級委員の指名をアメリカが拒否していて機能していないですが、トランプ時代のそれを引き継いでいるのは、やはり提訴されたくないのでしょう。

という訳で政府閉鎖とストというリスクを抱えたアメリカで国債金利が上昇するのは当然となる訳です。分断による政治リスクが解消される見通しは立たず、また労組の強化は賃金を押し上げることにもなりますから、今後もインフレは収まらずFRBの追加利上げも現実味を増す訳です。となると低金利政策から抜け出せずにいる日本円の減価は避けられず、円安は進みますから、輸入物価上昇に伴う消費者物価上昇は今後も続くってことです。日銀の政策見直しが無ければ更にこの傾向は続きます。

経済安保は日本も取り組んでいる訳ですが、2020年の外為法改正の結果、妙なことが起きています。NHKスペシャルで取り上げられた大川原化工機の起訴取消事件の顛末のお粗末さが示す寒い現実です。

起訴取り消し事件「捏造」 訴訟出廷の警部補が発言:日本経済新聞
捜査官が捏造を認めたことも驚きですが、大川原化工機が輸出したのは液体噴霧乾燥機で、液体を噴霧して乾燥させることで粉末化する機械で、インスタントコーヒーや粉ミルクの製造装置になる訳ですが、警視庁公安部は生物兵器転用可能として無許可輸出を違法として刑事訴追した訳ですが、根拠となる証拠を捏造して会社幹部3名を長期間収監して1人はガンが進行して死亡するというとんでもない事件です。

警視庁公安部が動いた理由は推測ですが、法改正で実刑が定義されたことを受けて、捜査の指針となる判例を確定させたかったのでしょう。その為には抵抗力のある大企業よりも中小企業を追い込んで立件すれば手っ取り早いってことですね。狙い撃ちされた大川原化工機にとってはただただ迷惑な話ですが、特に経済安全保障絡みの政治性の強い法律故に、判例を確立させて捜査に睨みを利かせる所謂一罰百戒を狙ったと考えられます。それが今回のような人質司法の冤罪事件を生む訳です。現れ方の違いはありますが、政治が絡むとろくなことにならないのは日本も同様です。

JR北海道の札幌圏赤字急減、「黄線区」は拡大 4〜6月:日本経済新聞
コロナ禍前の水準に戻ってきたというニュースですが、記事中営業損益を見ると、北海道新幹線並行在来線区間の函館―長万部間の赤字額が長万部―小樽間の赤字額の3倍以上あり、営業キロの違いがありますが、貨物列車運行の重荷を感じさせます。ま、それ言えば絶対額では北海道新幹線が断トツで、青函トンネル区間という特殊区間ではありますが、札幌延伸後の収支改善も厳しさを匂わせます。

札幌都市圏以外は収支均衡は絶望的と言えます。その中で並行在来線協議を進める訳ですから厳しい現実ですが、加えて余市―小樽間で並行路線を持つ北海道中央バスがドライバー不足からバス転換を渋っていますし、それどころか事前に何の相談もなくバス転換を打ち出した北海道に対する不信感もあるようです。

鈴木知事が夕張市長だった時代に夕張支線の廃止に道筋をつけたことが成功体験となっているのでしょうけど、地元事業者の夕張鉄道が引受に動いたことでまとまったものの、ドライバー不足からバス便の維持は困難を極めており、鉄道時代を受け継ぐ伝統の長距離路線の新札幌夕張線の運行停止など満身創痍です。バス転換が選択肢にならない時代に直面しているってことです。

アメリカでペンセントラル鉄道が破綻したときの連邦政府の素早い対応と比べると、本当に危機感がないですね。ペンセントラル鉄道の場合は、結局連邦政府が線路保有機構としてコンレールを立ち上げて上下分離で運行継続を図りました。東方回廊とシカゴをエリアに持つペンセントラル鉄道が運行停止されると大量の貨物の滞留が起きるということでの緊急避難だったんですが、結果的に経営の苦しい他の民間鉄道も合流して鉄道ネットワーク維持に寄与しました。

コンレールはその後民間入札でサザンパシフィック鉄道に売却されて所謂北米5大ネットワークの一角を占めますが、それぐらい鉄道貨物の重要性が高いってことですね。結果的に旅客部門は都市圏毎の交通営団が引き受け、長距離列車はアムトラックが引き受ける形で現状となります。線路保有が貨物会社で旅客会社が線路を借りるという日本と逆の形になりました。この形態が基本ですから、なるほど日本の新幹線のような高速鉄道の整備のハードルは高い訳で、鉄道好きと言われるバイデン大統領がIインフラ整備法で約束したものの、財政支出を巡る共和党との綱引きで進んでおりません。政治はリスクの時代と自覚するしかないのかな。

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Sunday, September 24, 2023

中国バブル崩壊を喜ぶ大人たち

戦争を知らない大人たちで敢えて踏み込まなかった話題です。中国不動産大手の中国恒大集団の米破産法15条申請や碧桂園のデフォルト危機などの報道でいよいよ中国不動産バブル崩壊が言われますが、何れも外貨債務の整理であって、資本流出を防ぐ為です。国内の人民元建て債務にはメスが入れられておりません。

故にバブルの後始末が進まず日本のように長期停滞に陥るんじゃないかと言われており、実際デフレ的な物価下落が見られたり、若年層の失業率が高止まりしたりしてますし、同じタイミングで生産年齢人口の減少も起きており、まるで90年代の日本を早送りしているように見えます。実際中国経済は成長鈍化が見られます。但し日本と違って不動産デベロッパーはマンション建設前に全室完売して建設費に充てるということをしてきたため、契約して代金決済を済ませながら引き渡しを受けられない人が多く、それに対する政府の限定的な救済はあり得ます。

それでも4%台の成長率を実現している訳で、中国がゼロコロナ政策を続けて経済活動を抑制してきたことと、にも拘らず財政的な補償措置が取られていないことを考えると、驚異的な成長率です。人口規模の大きさが生むダイナミズムでしょう。不動産バブルが弾けてなおこの水準ということは日本とはかなり異なります。絶好調の米経済を追いかけるスピードは落ちるでしょうけど、ほぼ横ばいの日本より高い成長率は維持されて日本は置いて行かれるということですね。

ただ課題は様々あります。そもそもの不動債バブル拡大はリーマンショックで世界各国が軒並み停滞した中で、当時の胡錦涛政権による5兆元(当時レートで57兆円)の財政出動を発表し実行したことによります。これ80年代の米経済停滞の救済策として行われたプラザ合意によるドル買い協調介入と、その後の貿易収支改善策としての内需拡大要請で、日銀の低金利政策と政府の財政出動が行われました。プラザ合意による円高で購買力が増した日本は好況に沸きますが、それでいて円高による輸入物価の低下でインフレにはならず、故に低金利政策は長期化します。その結果カネ余りで不動産投資が活発化し、本業がさえない企業の含み資産拡大で株が買われ、所謂バブル経済となります。

中国でも財政出動で主にインフラ投資が活発化し、高速鉄道や高速道路が張り巡らされ、その結果鉄鋼やセメントの政策が活発になり、それを受けた地方政府の開発熱が進みます。社会主義国の中国は土地は交友が前提ですが、地方政府の開発資金として土地使用権が売りに出され、民間デベロッパーが買って開発し完成前に完売という形で資金循環が起こりましたが、多くの副作用もありました。

一つは腐敗の蔓延で、地方政府にとっては土地使用料の売り出しは無から財政資金を生み出す錬金術として多用され、農地から農民を追い出して売り出すようなことも起こります。そして地方官吏と民間デベロッパーの癒着が起きるのはお約束で、胡錦涛政権末期にはかなりひどい状況だったようです。習近平政権の反腐敗運動はその尻拭いだったってことですね。

また鉄鋼やセメントの過剰生産問題もあり、その対策として海外インフラ事業への進出を狙ったのが一帯一路であり、資金面を支えるAIIBです。この辺は中国の軍事的拡張と結び付ける議論もありますが、実態は国内の過剰生産能力対策の意味合いが強く、故に往々にして相手国の事情を無視した強引なこともあったのは確かです。しかしスリランカで言われた債務のワナは寧ろ先進国が投資を渋ったから中国が出てきたもので、AIIBの融資判断がガバガバだったことは間違いいありませんが、それ以上でも以下でもありません。

あと社会保障の不備の問題もあります。生産年齢人口の減少で社会保障政策の維持が難しいのは先進国も共通ですが、中国はその人口規模の大きさもあって社会保障の充実が難しいし、そもそも中国の国民は政府を信用してません。故にある意味自助の精神が根付いており、住宅の取得はある意味その対策でもある訳です。政治や経済がどうなろうが住むところが確保されていることの安心感もあります。加えて不動産価格の上昇で転売して差益を得た人も出てきて投資目的の住宅取得も増えた訳です。習近平政権で共同富裕を謳い不動産投資を規制したことは理由がある訳です。

その意味でアメリカの対中経済制裁や制裁関税を撤廃して欲しいのは本音ですが、トランプからバイデンに政権が動いても制裁は解除されず、寧ろ強化されてますが、実は抜け道があります。ラオスやカンボジアなど東南アジア諸国で謎の企業が立ち上がっており、中国から輸入した商品をパッケージを変えてアメリカに輸出することで偽装しているもので、アメリカも中国との全面禁輸は無理なのでスルーされているということで、寧ろ米中の経済的な繋がりは強くなっております。

特に資本財と呼ばれる機械製品は中国が近年輸出を増やしてきた分野で、アメリカも中国依存から抜けられない訳です。これは日本も同様で、というか日本の貿易統計で機械製品がほとんどの国に対して黒字なのに対中国だけ赤字です。つまり中国依存から抜けられない訳で、デカップリングは掛け声だけです。ロシアの石油輸入で下支えしてるし、今や中国無くして世界は成り立たない現実があります。但し武器供与はせず、故にロシアは北朝鮮を頼らざるを得ないし、同盟国のアルメニアがアゼルバイジャンの侵攻に遭っても助けられない現実があります。カザフスタンの内乱で中国を出し抜いたロシアの姿はありません。

てことで膠着しているウクライナ情勢ですが、アメリカが武器支援を小出しにしているのは、ロシアが核保有国という事情もさることながら、オバマ政権で方向づけられた対中国の米軍のアジアシフトが進まないこともあり、生産能力の制約もあって気前よく最新兵器を出せない事情もあります。これは中国にとっては心地よい状況ですから、国内経済の不振を理由に台湾進攻するというナラティブは現実的にあり得ません。それを理解できない大人たちの放言は聞き流しましょう。

胡錦涛政権で建設が進んだ高速鉄道も収支は赤字でお荷物になっておりますが、国有企業だから問題視されません。そもそも高速鉄道は江沢民時代の朱鎔基首相の肝いりで、日本の新幹線を参考に旅客輸送を高速鉄道に集約して空いた在来線を貨物輸送インフラにするという、田中角栄の日本列島改造論を参考にしたもので、在来線も4ft8in1/2(1,435㎜)の国際標準軌で新在直通も可能だったことから、短期間で高速鉄道網を整備することが計画されて胡錦涛時代に実現したものです。徹軌道式高速鉄道よりリニアを推進すべしという意見もあり独トランスラピートのライセンスで上海空港リニアを建設したものの後が続かず朱鎔基首相の実務家としての見識を示します。

この点は日本のアイデアで中国が先へ進んだ訳ですが、日本は国鉄分割民営化で列島改造は葬り去られました。整備新幹線スキームで事業は継続されましたが、仮に国鉄分割民営化されずに国鉄が新幹線整備を進めていたとすると、結局赤字を拡大する結果になったであろうことは中国の高速鉄道網が教えてくれます。そしてこのニュース。

JRが外国人パスを大幅値上げ 訪日客価格、手本は途上国 編集委員 石鍋仁美:日本経済新聞
民営化されたJRではなりふり構わずの増収策。手本は途上国ということで、訪日外国人の増加は円安によるディスカウントの影響ですからその分日本の停滞の象徴でもあります。

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