民営化

Sunday, March 19, 2017

曲がり角の整備新幹線

森友問題が予想以上に盛り上がっております。どうせメディアが動かないだろうと思っていたら、籠池理事長夫妻のキャラの立ちっぷりや安倍昭恵夫人のノー天気な行動力と随行する官僚の公務か否かとか、総理夫人を私人と閣議決定とか、なんば花月かい!草生えるわ。

てことで数字が取れるとメディアが動いた結果、23日に鍵池理事長の国会証人喚問が決まりましたが、問題の本質は国有地払い下げを巡る値引き問題と教育基本法違反が疑われる私立小学校の認可を巡る大阪府の規制緩和を含む便宜供与問題の2つ。国会に呼ぶべきは当時理財局長だった迫田国税庁長官と松井大阪府知事です。

第一次安倍政権当時の姉歯事件が、永田議員偽メール事件でとん挫して、改ざんを許した大臣認証構造計算ソフト問題、民間検査機関による検査業務とそれに関連して不自然に米国基準を接ぎ木した規制改革などはスルーされ、1建築士の犯罪に矮小化され検査の厳格化だけに終わった轍を踏む可能性があります。籠池氏の証人喚問に何かの仕込みがあるか要警戒です。多分贈収賄事件というよりは、官僚による政権への忖度だろうとは思いますが、だから許されるって話ではありませんね。

この手の忖度は歴史を紐解けば結構あります。古くは東海道新幹線の岐阜羽島駅を巡る問題で、岐阜県選出の大野伴穆代議士の関与が噂されましたが、当時新幹線建設に懐疑的な世論もあり、政治家の関心は高くなかったのですが、反対されると面倒ということで、国鉄側が忖度したものです。

元々東海道新幹線は最高速250km/hで東京―大阪2時間半という目標を掲げて計画がスタートしてます。当時既に民間航空の台頭とモータリゼーションの進捗で挟み撃ちに逢っていた鉄道は、世界的には斜陽産業と見做され、フランス国鉄で331km/hの記録を出しており、枯れた既存技術で200km/h-250km/h程度の営業運転は可能と見られてはいましたが、そのための追加投資に及び腰で、当時の高速列車は最高速160km/h止まりでした。

日本でも民間航空とモータリゼーションは欧米に遅れながら進んでいたのですが、その一方で戦後復興が軌道に乗って旺盛な需要拡大で、特に東海道本線は早晩輸送力増強が必要な状況でしたが、航空とクルマに対して鉄道のシェアを維持するために、世界最高峰の高速鉄道の建設を意思決定します。戦前の弾丸列車計画である程度用地が確保されていたことも背中を押したのでしょう。

そのため可能な限り直線的なルートで計画され、名古屋から米原へは、当初鈴鹿山地をトンネルで抜けて直行するルートで検討されましたが、当時の土木技術水準では長大トンネルは建設費を増大させるということで、計画が具体化する中で、現在の関ヶ原ルートに落ち着きますが、そうなると岐阜県をかすめることになり、駅を造らないで反対されるリスクを回避するため、岐阜羽島駅の設置が決まった経緯があります。余談ですが鈴鹿山地ルートならば関ヶ原の雪に悩まされずに済んだ可能性はあります。

これだけが原因ではありませんが、計画を具体化する過程で妥協を迫られた結果、最高速は巡航速度200km/hプラス10km/hの210km/hとなり、東京―大阪3時間へ。そして京都駅への速達列車停車で3時間10分となります。加えて盛土の安定のために開業時は盛土区間の徐行で4時間となり、1年1か月後に徐行解除という対応が採られました。枯れた技術の集大成とはいえ、世界初の速度域の営業運転ということで、慎重を期したわけです。

結果的に東海道新幹線は沿線の人口と産業の集積を進め、事業としても大成功だったわけですが、一方で会計規則の変更で民間企業並みに減価償却を義務付けられたこともあり、皮肉なことに国鉄は新幹線開業年の1964年から赤字転落し、以後累積赤字を重ねて解体、分割民営化へ進むことになります。東海道新幹線単体で見れば職客後も大幅黒字ですが、電化、ディーゼル化による動力近代化と需要が旺盛な幹線ルートの複線化に、首都圏通勤五方面作戦もあって、償却資産を増やし続けたことで、赤字は拡大の一途をたどります。巷間言われる赤字ローカル線問題はむしろ無償貸与または譲渡で減価償却が発生しませんので、経営への重荷という意味では主たる原因とは言い難いところです。

この頃の国鉄幹部の経営能力はかなり低かったようで、赤字解消のために生産性を上げようとして所謂マル生運動を仕掛けて労組と破局的な対立をしたり、東海道新幹線の好調ぶりに「新幹線なら何とかなるかも」と全国新幹線網を構想して、整備法が国会で成立するのを受けて、とりあえず輸送力が逼迫しつつあった山陽本線の救済名目で山陽新幹線を着工し、岡山開業、博多開業の2段階で事業を進めましたが、この頃には大型機の就航もあって長距離では航空のシェアを切り崩すには至りませんでした。

その一方、整備法の縛りもあって新規着工の新幹線は最高速260km/hで最小曲線半径も東海道の2,500mから4,000mに、軌道中心間隔4.2mから4.3mとグレードアップされましたし、加えて高度経済成長期の年率5%に及ぶインフレもあって、東海道新幹線より減価償却費の負担が重くのしかかる一方、輸送量は東海道の凡そ1/3に留まり、単体で辛うじて黒字も、並行する在来線の赤字転落もあって、国鉄全体の収支改善にはほとんど寄与しませんでした。寧ろ減価償却費の増大はフリーキャッシュフローを生み出しますから、会計上赤字でも現金は潤沢で、身の丈に合わない過剰投資は加速し収支悪化が止まらないわけです。

こうして国鉄解体、分割民営化へと進むわけですが、民営化でJR各社が軒並み収支改善された秘密の1つは、JR各社の国鉄継承資産の圧縮記帳です。旧国鉄勘定で資産の減損処理をして、新会社へは例えば貨物コンテナ1個1円とかで継承し、バランスシートが身軽な状態でスタートしたことによります。ただし本州3社に継承された新幹線だけは例外で、営業権こそJR各社に帰属しますが、資産としては新幹線保有機構という特殊法人に継承させて、JR各社から線路使用料を徴収する形にして、旧国鉄債務の一部として負担させたわけです。しかしこれは見直されます。

対航空で競争力を高めたいJR東海は300系で270㎢/h運転を実現しますが、稼ぎ頭の東海道新幹線でリース料の負担が重い一方、減価償却費が得られず投資の停滞を余儀なくされます。また他社に先駆けて株式上場を目指すJR東日本は、東京証券取引所の助言で、主たる事業資産である新幹線が自己保有ではない状況では、減価償却費による継続投資ができないから、事業継続に疑義があり上場は難しいと指摘されたことを受け、国に新幹線買い取りを提案。東海と西日本も同意して買い取りが決まります。

この時の価格査定で時価法の1種である再取得価格法によります。簡単に言えば同等の資産を現時点で再取得する際にかかる費用ですが、非償却部分の地価部分が膨張しているわけですから、車両更新を進めて対航空の競争力を高めたいJR東海にとっては不満の残る査定となりました。そして後にこれでは東海道新幹線の設備更新が滞ると国に不満をぶつけて、のぞみ料金の上乗せ部分を非課税積み立てして設備更新に備える新幹線版特特法のような仕組みを勝ち取ります。その後工法の見直しで設備更新費用は圧縮され、JR東海は舌出してます。JR東海がリニアに傾斜するのは、それだけ余剰資金が潤沢だということでもありますが、そのリニアでも大阪開業前倒しで利子補給を取り付けるなど、国を騙して利益を得るその手法は、ある意味森友学園よりも悪辣かも。

一方国鉄が事業主体となる前提の新幹線網整備法も有名無実化する可能性があったわけですが、分割民営化時点で既に基本計画から整備計画へ昇格していた5路線の整備スキームが検討され、現在の所謂整備新幹線スキームになるわけです。元々国鉄の存在を前提とした法律を民営化JRに担わせるために、国と地方が2:1の比率で助成し、JRの負担も30年リースで償還するというもので、事業費圧縮のためにフル規格の他にミニ新幹線とスーパー特急という3メニューを用意して、国、地方、JRの3者の合意に基づいて着工という手順が決まりました。その際並行在来線はJRの経営から分離することと、分離に伴う貨物やローカル輸送由来の赤字負担がなくなる部分も加えたJRの受益分がリース料の算定基準とされました。

これJR東日本の上場時の東証の助言から言えば、九州新幹線を抱えるJR九州の上場はやや違和感があるわけですが、JR九州の場合不動産や流通など関連事業の好調で鉄道事業の比率がJR各社中最低の49%ということもありますが、鉄道事業でも経営安定基金を取り崩して新幹線リース料の一括支払いとその他の鉄道資産の減損処理を上場前に済ませて、上場後の負担を軽くしたわけで、JR発足時の圧縮記帳を繰り返したわけで、ルール上はかなりきわどいことをやってます。

一方赤字圧縮のために大幅な路線廃止を打ち出したJR北海道にとっての北海道新幹線は、貨物との共用の制約もあって共用区間の最高速140km/hで並行在来線切り離しは函館本線函館―新函館北斗と江差線五稜郭―木古内で受益が少ない上、函館本線に関しては電化して新車まで入れて三セクに渡すという追加費用も発生してますし、共用区間は並行在来線ではないので、JR貨物の割安な線路使用料はそのままということで、実態として経営改善にはほとんど寄与していないですし、むしろ青函トンネル自体の老朽化もあって保守費用の負担は今後も増えると見込まれます。上場どころか事業継続の危機ともいうべき状況です。

JR北海道は北海道新幹線の札幌延伸に期待を繋いでいるようですが、東京から5時間超では上記の4時間の壁問題で航空からの移転は期待できません。それでも並行在来線切り離しの受益は見込めますが、人口の希薄な北海道では北陸新幹線つるぎのような近距離利用も期待薄です。整備新幹線自体がリース資産で減価償却がありませんから、スピードアップのための追加投資の原資が得られないわけで、この点は一括支払いを済ませた九州新幹線にも当てはまります。こうして見ると整備新幹線は未来のない中途半端な存在ということができます。加えて政治性が機能の低下を後押しします。

北陸新幹線の全ルート確定 敦賀以西31年着工  :日本経済新聞
小浜―京都ルートも驚きですが、京田辺市(学園都市線松井山手付近)経由の南回りルートとこちらもう回路です。京阪間で料金不要の新快速よりも遅いわけで、何のための新幹線なんでしょうか。小浜―京都ルートに関しては、京都と若狭地区の繋がりの深さを指摘する向きもありますが、そういうローカルな需要はバスの若江線(近江今津―上中)の在来線鉄道建設で満たせるはずで、新幹線である必要はありません。事業性を考えたら米原ルート一択だった筈。しかも北海道新幹線札幌延伸後の2031年まで財源なしですし、そもそも並行在来線をどうするのか。まさか湖西線を切り離すじゃ受益のない滋賀県が同意するはずもないですし。政治に忖度して岐阜羽島駅を作った東海道新幹線のツケがこういう形で跳ね返るとは。つくづく日本の統治システムの醜怪さに眩暈がします。

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Sunday, February 19, 2017

ワールド・アナザー・ヒストリー

21世紀の世界で暗殺事件?いやはや驚きです。実行犯の女性2人と男性1人に加え、北朝鮮籍の男性1人も逮捕され、北朝鮮からは遺体引き渡しが矢の催促で、状況証拠から北朝鮮工作員の犯行は間違いないでしょう。それでも北朝鮮と国交のあるマレーシア政府は慎重姿勢です。通常ならば暗殺のような手段を取った北朝鮮に対して、アメリカを中心とする西側陣営は報復として金正恩の暗殺を仕掛ける可能性が高いですが、どうも足並みが揃ってません。トランプ劇場でアメリカ国内の混乱が続いてます。むしろ中国とロシアがこの問題に強く反応を見せております。

大統領令を乱発するトランプ政権ですが、イスラム圏7カ国の入国制限令は現在司法によって差し止められています。大統領側近のバノン氏の意向で進められました。

トランプ氏側近・バノン氏に発言力 政策を左右、省庁も無視 (写真=ロイター) :日本経済新聞
この7カ国は2015年11月のパリ同時多発テロを受けてビザ免除38カ国の国民を含め渡航歴のある人に特別ビザの取得を求めた法律のテロ懸念国7カ国が対象ですが、司法省に事前審査も発効前の告知期間もなかったために混乱しました。司法省の事前審査があれば7カ国の渡航歴のある人の入国制限との関係が問われるでしょうから、そうなると大統領令に手を入れられてしまうため、それを嫌った可能性があります。

推測ですが、オバマ政権時代に連邦議会が決めたテロ懸念国7カ国からの入国を制限することで、テロ防止の水際作戦を演出したかったんでしょう。結果いきなり現場にペーパーだけ降りてきて、現場毎の解釈の違いもあって混乱に拍車をかけたようです。確かに問題のあるやり方ですが、一方で差別批判がIT企業から吹き上がります。

「テロ懸念国」の入国禁止、米IT業界が懸念強める  :日本経済新聞
米IT企業の多くは、トップを含めて多数の移民が働いていて、入国制限は直接的に業務に支障が出るということですが、暗に差別主義批判といった政治的メッセージが含意されてます。ただしこれを以て「アメリカの民主主義は健在」とは思わない方が良いでしょう。アメリカが移民を受け入れるから一流の人材が集まるとはよく言われますが、これ移民の中のひと握り、せいぜい1%で、残りはサービス業など低賃金労働に就業するワーキングプア層ということで、移民かどうかに拘らず進む格差拡大の結果と変わりません。ってことで、移民受け入れを善とする所謂リベラル派の言説はこうしたゴマカシを内包しているわけで、クリントンが大統領選で負けたのも頷けますし、一方で移民を止めても問題は解決しないってことでもあります。格差拡大は移民やグローバル化よりもIT化による機械化、自動化、省力化の影響と見るべきでしょう。

続いて国家安全保障担当のフリン補佐官の辞任も痛手です。

「ロシア」米政権を揺るがす フリン氏辞任 (写真=ロイター) :日本経済新聞
昨年12月に駐米ロシア大使と電話で接触したということですが、政権移行前で問題ってことなんで、移行後に新政権の意向を受けて接触する分には問題ないわけで、トランプ氏が関与していたかどうかなど不明の点もありますが、むしろ駐米外交官との接触自体はパイプ作りという意味合いもありますし、結局対ロシア経済制裁解除など中身の問題です。それより情報源が米情報機関からメディアへのリークのようで、これ日本では政治家や官僚の観測気球として結構利用されているやり方ですが、アメリカでもと思うと複雑な心境です。むしろトランプ政権と情報機関の間に不信感があると見られることが不気味です。
トランプ氏、情報機関と亀裂広がる 組織のあり方検討へ  :日本経済新聞
アメリカの歴代大統領は4人暗殺されてますし、メディアに不正を暴かれて辞任したニクソン大統領の例もありますし、情報機関とメディアとの敵対はこういった連想を想起します。金正男の次はトランプ?

北朝鮮の情報機関が一般人を巻き込んだと見られるマレーシアの事件ですが、アメリカの情報機関が本気になればこれ以上のアナザー・ヒストリーを演出することは可能でしょう。何しろスノーデン氏が暴露したように、政治犯に限らず個人情報を集めまくっていて、日本でもNSAから日本人の個人情報を集めたいと申し出があり、日本政府が法令違反で無理と断ったら、違反にならない法律を作れと返したということで、それが今国会審議中の共謀罪なんですね。こんなもん通したら一般市民が米情報機関の演出するアナザー・ストーリーに巻き込まれる可能性があります。で情報機関と対立しているトランプ政権でこの法律を通しても、トランプ政権に恩を売ることにはならないことに注目すべきです。ついでに言えばオバマ政権が種まいた南スーダンPKOも今なら撤退してもアメリカの顔を潰すことにはならないんですが。

てなわけで、日米会談を大成功と自画自賛する安倍政権ですが、日米経済対話でFTAを封印したつもりになっていると痛い目を見ます。為替問題という爆弾を抱えていることは日本政府もわかっているでしょうけど、日米会談で言及がなくむしろドイツや中国に矛先が向かうと考えると大間違いです。

(羅針盤)通貨安批判、同意のドイツ  :日本経済新聞
ドイツにしてみれば、金融緩和がECBがやっていることで、ドイツ自身は南欧諸国の財政規律が緩むからと反対し続けているわけで、金融緩和で為替操作と言われても「は?」てな話です。その点日本の過剰反応ぶりはむしろ心配です。
財務相、異例の為替水準言及 円安ラインは120円?  :日本経済新聞
G20為替ルールに抵触する可能性のある財務相発言ですが、それだけ為替問題が敏感な問題ということです。トランプ政権との通商交渉では譲歩を引き出すネタにされること間違いないでしょう。

で、アメリカに日本の資金で新幹線やリニアをという話にあんるんですが、そんな金あればJR北海道を何とかせいと言いたいところです。それに関連してこんなニュース。

トラック人手不足追い風 JR貨物、初の鉄道黒字  :日本経済新聞
JR貨物に関しては、温暖化対策もあって(独法)鉄道建設・運輸施設整備支援機構から融資を受けて経営基盤強化の途上にあり、2018年度の黒字化を公約していたので、2年前倒しの達成となり、株式上場が視野に入ってきます。ただし線路使用料問題がネックになります。

JR貨物の線路使用料は貨物列車運行にかかる追加費用プラス1%のインセンティブを基本ルールとし、具体的な金額は線路を保有する旅客会社との相対交渉で決めることになっておりますが、JR発足当時、赤字基調が確実視されていたこともあり、機関車1両あたりの単価を設定するという便法で大幅値引きされています。それもあって機関車の重連運用を単機運用に置き換える目的でDD51重連→DF200単機、ED79重連→EH500単機、EF64重連→EH200単機といった形で新型機に置換を進めてきたわけですが、特に北海道のDD51重連からDF200単機への置き換えは、軸重が14tから16tに増えたこともあり、JR北海道の線路保守の負担になっていることは間違いありません。黒字化なら当然線路使用料の値上げが打診されるはずですが、そうなるとJR貨物の黒字を維持できるのかという問題になるわけで、うまくいきません。

そこで別の方法として、北海道では線路を痛めない軽軸重の小型機関車での小単位輸送という方法で保守費用の負担を軽減することも考えたいところです。これ震災関連でリージョナルカーゴトレインの可能性について言及したことがありますが、今ならハイブリッド技術を用いて構内入替をバッテリー駆動で行い、本線上を高速走行するときはディーゼル発電でバックアップすることで、例えば臨海鉄道のような三セク貨物鉄道を立ち上げて担わせるといった応用が可能ではないかと思います。JR貨物にとってはリスク分散になり、出資自治体にとっては貨物鉄道を保持することで大規模農業を含む産業立地に助けになり、国の温暖化対策事業の補助金も使えるわけで、旅客鉄道としての存続が難しい北海道の路線の存続策になり得るんじゃないかと愚考します。

これヒントはアメリカが貨物鉄道大国で、アムトラックなどの旅客鉄道が線路を借りて営業しているという日本と逆の形ですが、貨物鉄道のインフラ保持が実現できれば、軽量のローカル旅客列車の存続は容易になります。これ地域の産業政策と抱き合わせで道庁が動くしかないですが、今に至る道庁のスタンスでは実現可能性は限りなく低いと言わざるを得ません。

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Sunday, December 11, 2016

トランプラリーが終わるとき

更新サボってましたが、トランプラリーと呼ばれる謎のリスクオン相場のおかげで安定したPVが続いております。選挙前はトランプショックとさえ言われ、実際一時的に相場は下げましたが、当選後のコメントが意外とまとも^_^;ってことで、むしろ減税や公共事業拡大を好感されてということのようですが、ま、スタート台が低いから普通のこと言えば評価されるってイリュージョンですね。就任後は当然期待が剥がれますから、下げは覚悟しといた方が良いです。

それと不安材料もチラホラ。FRBの今月の利上げはほぼ確実視されてますが、それぐらい今のアメリカの経済は好調ですが、既にピークアウトした疑いがあり、2017年には景気の谷が来る可能性があります。それでもFRBはむしろそうなったときの政策余地を確保する意味でも利上げをすると考えられますが、来年の利上げは微妙になります。というのは、トランプ政権下で成長が鈍化すればFRBの利上げのせいにされてトランプ大統領があからさまな圧力発言をする可能性があり、FRBの独立性が損なわれる可能性があります。丁度第二次安倍政権発足のときに当時の白川日銀総裁を読んであからさまな圧力をかけたことがアメリカで起こるってことです。てことで、基本的にトランプの政策運営はアベノミクスをなぞる形になると思います。格差拡大を批判して大統領になったトランプが格差を助長するってことです。

元々製剤成長率が4%あると言われたアメリカ経済ですが、直近で成長の裏付けとなる生産性向上が停滞し始めており、日本と似た状況になりつつあります。こういう状況で大規模な財政出動をしても、インフレになるだけの話です。加えて移民政策の見直しが行われれば、公共事業を拡大しても人手が集まらず、人件費だけが高騰するという震災後の日本と同じ状況になるだけです。加えて金利差によるドル高がマイナスです。おそらく対米大幅黒字国の日本と中国に為替操作国と非難を浴びせ、外貨準備で積み上げたドルを売るように迫ると思います。その時日本政府はどーする?

一方火種は欧州にもあります。

イタリア首相が辞意 国民投票で改憲否決  :日本経済新聞
これ反EUとか反グローバリズムや保護主義といった問題と見るべきではないんで、イタリアはレンツィ首相の下経済改革を進めてきていたのですが、議会の上院と下院が同党の権限を持つために反対派の抵抗が大きかったということで、上院の権限を縮小する憲法改正案を発議し国民投票にかけたところ、これを否決されレンツィ首相が辞意表明ということですが、今のところ与党出身のマッタレッラ大統領が待った^_^;ってことで足踏み状態ですが、最大の懸案はイタリアの銀行第3位のモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナの公的資金による救済問題ですが、政治の空白で金箔した状況です。そこに立ちはだかるECB。
欧州中銀、イタリア3位銀行の増資延期認めず ロイター報道  :日本経済新聞
モンテパスキの増資引受先が見つからず自主再建が難しくなったのですが、公的資金注入にはペイルインというハードルがあります。仮にも税金で民間銀行を救済するなら、株主や銀行劣後債購入者などの投資家に一部損失負担をさせるというルールですが、この銀行債が問題で、イタリアでは国民に広く保有されており、ペイルインを適用すれば多くの国民が損失を被るということで、政治的には困難な課題です。憲法改正否決もこれが影響したのでしょう。銀行の不良債権問題は元々リーマンショックの後始末の積み残しでもあり、モンテパスキだけの問題ともイタリアだけの問題とも言えないところがあり、仮に破たんすれば欧州全域に連鎖破たんが広がる可能性があります。とはいえ合議の上決めた銀行同盟の中心的なルールだけに、例外を認めにくいということもあり、多分来年には何か目に見えた危機が顕在化すると見るべきでしょう。

というわけで、問題だらけの世界ですが、なぜか日本は好調ですが、陰りも見えます。

GDP1.3%増に下方修正 7~9月、設備投資減で  :日本経済新聞
一応3四半期連続のプラスですが、下方修正の要因が先行指標出る設備投資の下方修正ですから、ピークアウトの兆しです。一方で住宅着工と公共工事は好調ですが、中身は相続対応の賃貸アパートが中心で、大都市圏でも今後人口減少が見込まれる中、空き家を増やすことになります。また公共工事もオリンピック関連など事業費の膨張が問題になっているように、増えたことを素直に評価できるものではありません。加えてこんなニュースも。
都市農地、覆う2022年問題
宅地転用で空き家増加?: NIKKEI STYLE
1992年にスタートした生産緑地制度ですが、主に大都市圏で地価対策として農地の宅地並み課税が施行された一方、営農を希望する農家に営農継続を条件に30年間の特例で低税率とした制度ですが、30年後に自治体に農地の買い取りを申請できるとしたものの、自治体も財政難でこれを渋っており、多くの生産緑地が農地指定を外れて宅地などに転用されると見られております。そうなれば宅地の地価は下がりますから、低金利が続くとして住宅着工ブームが訪れ価格破壊デスマーチになると見られます。大都市圏にも農地を残し地産地消でというきれいごとも吹っ飛び、単なる価格破壊に留まらず、マイナス成長の真正デフレに陥るんじゃないかと。日銀の金融政策じゃ回避できないどころか助長します。

そもそも競争力のある大規模圃場を物理的に確保可能な平地はほぼ大都市圏に限られる日本では、農地より宅地等に転用した方が地価が上がりますから、関東平野などで見られる水田地帯に散在する住宅や工場が建ち、小規模農家も土地の転用を夢見て手放さないから大規模化が進まずで、競争力のある農業の可能性は東北の一部と北海道に限られます。TPP対策費で補助金ばら撒いても大規模化は進みません。そもそもトランプ氏のTPP離脱宣言で発行の可能性のないTPPの関連法を強引に成立させるって、意味ねー。その北海道の農業にも暗雲が。

JR北海道、全路線の半分「維持困難」  :日本経済新聞
農業の競争力で大規模化はよく言われますが、それと共に市場アクセスの優位性も重要で、北海道の場合青函トンネルの開通で鉄路で首都圏に直送できるようになったことの影響が大きく、それゆえ北海道新幹線の青函トンネル貨物共用問題でも貨物の撤退は議論から外され経緯があります。農業へのダメージが大きすぎるというわけです。でこれ。
JR貨物、「上場準備へ」 経常益100億円達成見通しで  :日本経済新聞
JR北海道の経営危機を尻目にJR貨物が上場準備ってわかりにくいニュースですが、JR北海道の線路保守の劣化はJR北海道自身による高速化のほか、JR貨物が軸重14tのDD51重連を軸重16tのDF200に置き換えたことの影響もあります。JR貨物は線路を旅客会社から借りて列車運行していて、所謂アボイダブルコスト方式といって、貨物列車運行によって発生する限界費用のみの負担で良いという仕組みで、一応限界費用+1%のインセンティブを原則とし、実際は旅客会社との相対で金額を決めるということになっており、元々縮小均衡前提だったこともあり、実際は機関車の両数を代理変数とするタダ同然の格安水準でスタートしたわけですから、重連を単機に置き換えればむしろ線路使用料は下がるわけです。それでも設立以来赤字続きで旅客会社も値上げを言える状況ではなかったわけで、特に貨物輸送比率の高いJR北海道にとっては重荷だったわけです。そんな事情でEF64重連置換用のEH200はJR東海が入線を拒否しています。

それが鉄道・運輸機構の融資もあり、競争力強化投資とCO2削減やドライバー不足で企業荷主の鉄道回帰もあって、輸送量が下げ止まり、鉄道・運輸機構の融資条件である2018年黒字転換が見通せるようになったということで、上場という話になるわけですが、今まで赤字だったkら値引きされていた線路使用料が現在の水準のままとなれば旅客会社から文句も出るわけで、とりわけJR北海道には死活問題でしょう。鉄道の廃止を巡っては自治体の反発や道庁の不作為もありますが、国として農業インフラとしての鉄道という視点での援助は必要ではないかと思います。ま、安倍政権じゃどうせやらないだろうけど。

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Sunday, September 04, 2016

ガラクタ経済列島

略してガラケー列島-_-;。やっとメディアも注目し始めた築地市場の豊洲移転問題ですが、数箇月の延期では済まない事情があるようです。

豊洲新市場、移転延期でも解決できない根本的欠陥|Close Up|ダイヤモンド・オンライン
土壌汚染の問題や店舗が狭隘といった問題点に留まらず、既に姿を現している建物躯体そのものの問題があるという指摘です。

1つは動線計画が滅茶苦茶。生鮮品の荷卸しはスピードが勝負なのに側面荷降ろしではなく後面荷降ろし前提のトラックバースとか、5層に分かれるフロア間の移動用リフトの不足とか、フォークリフトやターレットの通路の不備など。もう1つは床面荷重が700㎏/m^2で4tのフォークや2tのターレを支えられるかという問題。フォークを使う場合1.5tの耐荷重が普通なのにその半分にも満たず、使えるのか?という問題。他の問題がクリアになっても、工事が進んでいる現状で今更手直しもできないと。

原因は現場のニーズを無視して日建設計にプロポーサル契約で丸投げした結果だというのですから、お粗末すぎます。日建設計といえば新国立競技場デザインコンペでザハ事務所の下請けで協力し、再コンペで隈研吾氏の下請けに横滑りした会社です。お粗末な顛末も含めて新国立競技場問題と似ています。横浜の傾斜マンション問題も含め、この辺設計事務所も含めて業界の劣化が疑われるところです。

元々移転問題も二転三転の歴史がありまして、築地た手狭であることと、アスベスト問題もあって改築工事が困難ということもありますが、移転すれば移転先の工事と跡地の再開発で工事が発生するわけですから、公共事業の削減で干上がっていたゼネコンがメディアの監視が緩い東京都に都議を通じてアプローチしたとしても不思議ではありません。

それ以前にチェーンストアや通販などで産地直送販売が増えてきて、築地のような公設市場のシェアは低下してきた流れがあり、ネット通販の拡大もあり、公設市場の位置づけそのものが問われている現状もあります。もちろんだから簡単に廃止はできないわけですが、民営化やIT活用など市場そのものの改革も問われる中で、ハードの議論ばかりが先行した結果、使えない新市場ができたんだとすれば、笑えない話です。公共事業の増加や都市再開発の増加で有卦に入ってバブル越えのゼネコン業界ですが、中身の劣化は如何ともし難く、このままでは全国にガラクタの山を築くんじゃないかと危惧します。

東京都の悪口ばかりでは何ですから、神奈川関連も取り上げます。

都と川崎市、羽田跡地と殿町を「特定再生地域」に指定申請  :日本経済新聞
10年前に「神奈川口構想」の名で計画が浮上した羽田連絡道路が、紆余曲折を経て実現というと、喜ばしいところですが、神奈川県や川崎市の上滑りで対岸の大田区側の同意を得られずお蔵入りしたものですが、丁度羽田空港国際線ターミナルの対岸に位置する殿町地区の再開発を諦められない中で国家戦略特区の指定を受けたことで流れが変わってきたということですが、R357の整備より優先度が高いのかという疑問は大田区側にはあるようです。
羽田連絡道路の行方は 神奈川口構想から10年/川崎|カナロ …
にしても事業費の半分を国の補助金でってのがどうなのか。川崎市は市営地下鉄構想やそれに関連した京急大師線の地下化や、南武支線の川崎駅連絡線構想や浮島の再開発計画など空振りが多いのですが、企業のリストラで空洞化が進む中、税収確保に四苦八苦しているのが見て取れます。浮島再開発では手塚治虫ワールド誘致を掲げて実現せず「手つかずワールド」と揶揄されたりと散々です。大師線地下化も産業道路大踏切除去を優先して産業道路―小島新田間の末端の地下化が先行する形で進んでますが、あとは未定というていたらくです。というか、現状ここに橋がかかっても使いにくいのが正直なところ。殿町地区限定では空港アクセスの利便性は勝るけど川崎市中心部からは利用しにくいというヘンテコな計画です。それ以前に日本の空の空洞化が心配なところ。
デルタが東京~NY線撤退、成田空港離れが加速中|Close-Up Enterprise|ダイヤモンド・オンライン
日米航空協定はデルタ航空の成田空洞化の懸念から遅れていましたが、今年になって、利用しにくい深夜早朝枠の昼間への移行プラス日米1便ずつの増枠で決着し、日本はANAへ、アメリカはユナイテッドへの配分となったわけですが、その結果デルタ2便に対してJAL+アメリカンが3便ANA+ユナイテッドが4便と劣勢になり、且つANAが羽田―ニューヨーク線を開設する一方、デルタが競争力低下を嫌って東京(成田)-ニューヨーク線から撤退というもの。以遠権のある成田はデルタにとってアジアのハブだったはずなのに、日本を飛び越してアジア各地へ直行便を飛ばす形で戦略転嫁してきたわけです。長距離を飛べる中型機の登場でハブ空港の見直しが始まったわけですが、同時にそれは太平洋路線における日本のプレゼンスの低下でもあるわけです。思えばスカイマークがデルタ陣営に入っていれば、違ってたかも。

この辺JAL憎し外資憎しの偏狭な日本の航空行政の結果とも言えるわけで、つくづく政治家も官僚も先を見る目が無いんだなと思い知らされます。それでいて公共事業をドッカンドッカンの大盤振る舞いであとはお構いなしというわけで、首都圏に限らず日本全国ガラクタの山を築いて国力を低下させるディストピア。ホントしょーもなー。

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Sunday, August 14, 2016

戦争を知らない大人たち

本題に入る前に天皇の生前退位問題。

象徴 その心(3) 天皇に「私」はないのか 人権巡り国会で議論 :日本経済新聞
いろいろ言われますが、論点はこれです。すでに戦後の帝国議会で新皇室典範の審議で三笠宮殿下が意見を述べてます。つまり天皇の人権問題が本質なんですが、伝統ガーな人たちの反対で積み残したまま現在に至るわけです。これ女帝問題や女系宮家問題も同様なんですが、戦前の帝国憲法を前提とする旧皇室典範に対して新憲法とのすり合わせげ十分に行われてこなかったってことですね。

そして先日の天皇のビデオレターでの意見表明ですが、憲法が求める象徴天皇として初の皇位継承者となった明仁天皇が指摘したのは、終身制を前提とする限り、服喪と即位の同時進行というある種のカオスをもたらすという点。これ皇位継承の経験者故の視点と言えます。だから特例法での対応は望んでいないわけです。同時に憲法第2条〔皇位の継承}で「皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」とある通り、皇室典範の改正以外でこの問題を対処できないと憲法で規定されています。女帝や女系宮家に議論が及ぶと、小泉政権時代から反対し続けてきた安倍晋三にとっては面白くないってことで、この問題を安倍政権はどう扱うか、注目されます。おまけ。

SMAP、年末に解散 事務所が発表  :日本経済新聞
SMAPは1月にも解散騒動があって、その後テレビでLIVE謝罪というセレモニーを経て沈静化されたものの、水面下ではやり取りがあったようです。ただしプロダクションの移動は無しということで、本人の意思が通しにくい芸能人の人権問題に天皇の人権問題が道しるべになるとすれば、結構重要な意味があります。

ついでに言えば伝統ガーな人たちはそもそも人権がお嫌いなようで、天賦人権説をキリスト教的な価値観をベースとしていて日本の伝統的な価値観に合わないと批判しているようですが、一夫一婦制もキリスト教的価値観に依拠していて、しかもお金持ちは公然と妾を囲っていて、西武鉄道二代目の堤義明が妾腹なのはつとに有名なように、明らかに日本の伝統的価値観に合わないですがね。冗談はさておいて、天賦人権説が王権神授説の対抗言論ということを知っていれば、キリスト教的価値観を捨象して国家主権の対抗概念としての人権という風に普遍化できます。つまり主権国家が主権国家たるためには人権を前提にするから国民の負託を得られるわけです。

で、改憲論者の小池都知事がいろいろぶち上げてくれてますが、まずはこれ。

小池新知事は新国立のサブトラック問題を解決できるか|inside|ダイヤモンド・オンライン
元々陸上競技場であるはずの国立競技場ですから、国際大会開催基準としてサブトラックの設置は当然だったところ、サッカー協会やラグビー協会からワールドカップ級の国際大会の開催基準を満たす8万人収容スタンドが要請され、サブトラックは外に作るとしてザハ案に見られる巨大スタンドとして結実し、その後コスト問題で白紙撤回されて再コンペで隈研吾案で決着したのは五輪霧中で指摘したように、風致地区第1号で15mの高さ制限が課せられてた神宮の森の高さ制限撤廃の露払いとしてザハ案の新国立競技場という点で、地権者とサッカー協会、ラグビー協会の共犯関係がある一方、サブトラック問題が生じたわけで、陸連にとっては寝耳に水というわけで、軟式野球場へ仮説する方向ですが、数億円かかるので常設にできないかという意見がある一方、地権者は稼働率の高い軟式野球場がなくなるのは困るというわけです。そこで秩父宮ラグビー場への併設案があるものの、ラグビー協会が反対とはいえ、元々大スタンドをごり押しした手前もありと、エゴのぶつかり合いが解決を困難にしています。環状2号線の湾岸延伸着工とスケジュールが絡む築地市場の豊洲移転問題もあり、難題山積。憲法改正どころじゃない現実です。あとこれ。
都知事公約「満員電車ゼロ」は、こう実現する | 通勤電車 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
岐阜にも関わったトンデモ鉄道コンサル氏でツッコミどころ満載ですが、余裕時分を削った結果、ダイヤ改正翌日に東中野事故を起こしたJR東日本や尼崎で脱線転覆事故を起こしたJR西日本が、その後保安装置の強化などの安全投資を深化させたプロセスを無視してます。別に都が財政支援するわけでもなさそうですから、事業者の自助努力を促すってだけ。小池知事の政策スタンスをよく示してます。

前置きが長くなりましたが、サイドバーの「戦争の社会学」ですが、改めて戦争とは?平和とは?ということを考える上で戦争の歴史や意味をを体系的に説明した格好の入門書です。紹介コメントでも書きましたが、奇妙な日本軍に関して章1つを当てて考察してますが、そのトンデモぶりに驚きます。例えばクラウゼヴィッツの戦争論では兵力と兵站の重要性を説いている一方、精神面の重要性を指摘してますが、これを兵力で劣っても精神力で跳ね返すと曲解したり、真珠湾攻撃のような奇襲は短期決戦で迅速に敵国と和平交渉に入るのがセオリーながら和平交渉が準備されておらず、長期戦になって力尽きたわけです。日本は戦争の仕方を知らなかったと。そんな歴史を彷彿とさせる出来事が現在進行中です。

マイナス金利、効果道半ば 導入半年  :日本経済新聞
思い出していただきたいんですが、13年4月の黒田バズーカは、2年で21&のインフレ目標達成のための短期決戦だったはず。ところが一向に物価は上がらず、ズルズルと目標年次の先延ばしと追加策という戦力の逐次投入を繰り返すばかり。そもそも出口論も議論せずというスタンスで、日米開戦時の日本軍と何と似ていることか。それどころか今年に入ってマイナス金利政策を導入し長期金利の低下は目論見通りとしても、円高を防げず、それどころか銀行の離反を招くなど散々です。
マイナス金利で減益3000億円 日銀に懸念伝達  :日本経済新聞
遂には金融庁のツッコミも。足並みも乱れさしずめミッドウエー海戦の様相でしょうか。一応9月の日銀政策決定会合でマイナス金利政策の検証を約束したものの、言い訳を重ねるだけなのは目に見えてます。

マイナス金利の成果として住宅着工の増加が指摘されてますが、これ中身は賃貸アパートの建設ラッシュなんで、マイナス金利の恩恵はあるかもしれませんが、むしろ実家の相続対策としてのアパート建設と見るべきです。所謂空き家対策法の施行で空き家になった実家を放置できなくなったことと、アパートの課税特例で固定資産税1/6、都市計画税1/3でトータルで1/5ほどに負担減となることから、親が生きていても実家をアパートに建て替えて負担減を目羅うというものですが、その結果民間賃貸空宅の空室率が高くなっています。結果家賃が下落し、持ち家の帰属家賃を含めれば消費者物価指数の2割ほどのウエート付けがされているわけですから、そら物価は上がりませんわ。不都合な真実ですが日銀は認めるでしょうか。

戦争と金融政策は違うと言われるかもしれませんが、短期の作戦として始めた政策が未達で長期戦にずれ込んだ時点で戦略の練り直しが必要なのは同じです。勝てない戦争はしない。戦況が劣勢ならば速やかに退却するってのが戦争のセオリーですが、日銀は未だ出口論を封印しています。思えば東芝もシャープもこうして傷口を広げて立ち行かなくなったわけですし、日本の様々な組織にこうした撤退下手とでも言うべき病弊が蔓延しているようです。関連でこのニュース。

夕張市、JR北に地域振興の協力要請 路線廃止容認の条件に  :日本経済新聞
財政再建団体となった夕張市としては、」実際これしか選択肢はないと思います。加えて夕張支線の場合夕張市単独で意思決定できる稀有な条件もあったということです。他の路線は複数自治体に跨っていて自治体間の意思のすり合わせだけでひと仕事になります。実質道庁が動かなければ動かないでしょうけど、道庁は動く気配はありません。

あと青森方式というか、道が線路保有して自治体出資三セクに貸し付ける方式も、あくまでも整備新幹線の並行在来線だから、新幹線というインフラの見返りとして県単位で同意を得やすかったってこともありますから、路線の維持だけがテーマの北海道では無理な話です。おまけで言えば青森方式よりも、事業者のIGRいわて銀河鉄道による線路取得費を事後的に県が肩代わりし、沿線自治体に固定資産税を納めさせる一方、自治体側でその税収分を積み立てて保守費用に充てる基金とするというクレバーなやり方をしてます。実質公的な減価償却をやってるわけです。

というわけで、実際に協議が始まれば新たなアイデアが出てくる可能性はあります。ただ気になるのが夕張市長が自身のブログで示したコンパクトシティ構想です。正直言って県庁所在地の青森でさえ明らかに失敗したものが夕張で可能なのか、疑問を禁じ得ません。一応清水沢付近に都市機能を集約しようということのようですが、新たな玄関口となる新夕張駅からは離れてます。炭鉱の廃坑でどんづまりの旧市街をたたむのかどうかはわかりませんが、地理的にもほぼ発展の可能性は皆無ですから、基本的には撤退戦だということを肝に命ずるべきでしょう。

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Sunday, July 31, 2016

リオでじゃねえだろ!

都知事選当日で投票率が今までよりも高いらしい。関心が高まっているのは結構なんだけど、それだけ無党派層の票が結果あを左右するわけで、そうなると組織票頼みの増田、鳥越両氏の苦戦で小池知事の可能性が高いということになります。その場合ダメージが大きいのは鳥越氏の方ですね。ホント日本の左翼わぁ-_-;。

元々知名度で不利だった増田氏は落選しても都知事選に乗っかって名前を売った分だけ講演料アップでハッピー。弁護士の宇都宮氏を辞退させてまで野党統一候補に拘った結果、宇都宮氏の支持層まで離反というのは、米大統領選の民主党サンダース候補の辞退でやはり若い有権者が離反していることとパラレルですが、違いはサンダース氏が予備選を戦った結果、クリントン氏が主張をかなり修正せざるを得なかったこと。選挙戦は言論を闘わせることで有権者に判断の材料を提供するから意味があるんで、知名度で勝負がつく都知事選の不毛さはどうしようもないところです。

ま、誰が都知事になってもちゃんと都民のために働いてくれれば良いんですが、そもそも五輪霧中の中、競技施設整備の見直しに踏み込んだ舛添前知事が謎のバッシングを受けて辞任したのが今回の選挙なわけで、本来自公は選挙やりたくなかったんだけど、民進、共産両党が世論を煽って追い込んだ結果、掟破りの首相指示で辞任に追い込まれたものでした。その意味で都民のためにリスクを取って働いた舛添知事を辞めさせた以上、民進、共産両党は息のかかった都知事を当選させなければ二重の意味で都民を裏切ったことになります。民進が宇都宮氏に乗っかれば話が早かったんですが、共産が先に支持表明したことを嫌ったんですね。党派性まる出し。ホントしょーもなー。

あとは都知事として働いてもらうことですが、選挙戦で小池氏が対立を煽った都議会自民党は、法人税国税化で反対したにもかかわらず増田氏に乗っかったように変わり身が身上。小池氏も「てへぺろ」で和解となると、都議会野党が頑張らないと都民のために働いてくれいないでしょう。本来改憲派の小池氏が都政に関わることで改憲にタッチできなくなるなら護憲派としては歓迎すべきことですが、都知事選の勢いに乗じて小池新党という声も。中身はおおさか維新のカーボンコピーで、関西に比べて支持率の低い首都圏で改憲勢力を掘り起こしててなことをさせないためにも、都議の働きが重要ですが、舛添前知事のリオ行きを批判しながら都議団でリオ五輪視察がリークされて叩かれて中止じゃ、期待できんわな。リオでじゃねえだろ!

てな前置きとは無関係の北海道の話題です。まずはこれ。

「持続可能な交通体系のあり方」について
「持続可能な交通体系のあり方」について(PPT版)
JR北海道が自助では限界と地元自治体へ協議を訴えるプレスリリースですが、メディアも含めて地元の反応は冷ややか。そもそもJR北海道にお一連の不祥事がコストダウンの行き過ぎによるものなのに、一段のコストダウンを要求されても、死ねと言われてるようなもの。加えて重大な勘違いの可能性も。熊本地震で運休を余儀なくされた南阿蘇鉄道運転再開のニュースです。
南阿蘇鉄道が一部再開 地震で被災、3カ月半ぶり  :日本経済新聞
わずか7㎞ほどで本数も1/3というささやかなものですが、こうして自助の姿勢を示した上で出資者でもある自治体も支援して初めて、国による支援が検討されるという形で、自助、共助、公助の段階を踏むのが交通政策基本法の考え方です。北海道のように自治体がそっぽを向く限り、国の支援は出てこないわけです。この辺移動権という憲法の基本的人権と紐づけされた権利を定義した民主党案の交通基本法の内容を後退させた結果じゃないかと思います。考え方としての自助、共助、公助という部分は条文中に盛り込まれてはいるものの、元々理念法の性格が強いと言われる日本国憲法の規範性の強化という観点からは、憲法と紐づけされた立法というのは重要な視点です。

実は改憲を目指すとされる現政権ですが、例えば理念性の強い9条よりも、国会、内閣、裁判所などの権能を規定した規範法の部分で「原則として」の5文字を入れるだけで骨抜きにされます。そもそも憲法が原則を定めているのは当然だからあえて明記されていないだけで、例外事項は個別法で定義するのが立憲主義憲法のあり方なんで、それを骨抜きにするってことは、国権の最高機関であり立法府である国会の権能を否定することになります。事実上憲法破棄に等しいわけで、絶対乗ってはいけない議論です。

話を戻しますが、JR北海道では一応乗車密度2,000人以上が持続可能なラインと考えていて、札幌都市圏の例えば札沼線のように複線電化で乗客が増えている路線や区間もあるわけで、私企業である以上、こうした増収が見込める分野への選択的投資は欠かせないところですが、一連の安全対策投資の結果、投資の原資をひねり出す余裕もなくなってしまうわけです。みすみす収益機会を逃せば企業としての持続可能性は低下することになります。

あと貨物輸送との関係もJR北海道にとっては重要でして、青函トンネル区間の新幹線と貨物の線路共用で新幹線が140km/hの速度制限を受けているい上に、落下した金属片が三線軌条の信号回路を短絡させるトラブルもあり、メンテナンス上も負担となっていますが、そんな中で貨物撤退論が囁かれていました。

青函トンネル「貨物撤退」はなぜ封印されたか | ローカル線・公共交通 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
記事によると青函トンネルの貨物撤退の議論は国交省によって封じられたと。元々線路を痛める貨物列車の走行に対して旅客会社に支払う線路使用料が割安に設定されている一方、鉄道貨物のシェアそのものは高くないということで、フェリーの新造船投入で代替可能という議論ですが、貨物幹線であるJR貨物の経営の息の根を止める判断はできなかったのでしょう。そもそもJR北海道のトラブルの原因はJR北海道自身による列車の高速化と共に、軸重も重いDF200型ディーゼル機の投入による部分もあります。元々線路規格が低いまま民営化を迎えた北海道の鉄路にとっては負担ですが、今回のJR北海道のプレスリリースでは触れられておりません。

結局JR北海道の問題ははJR貨物をどうするかという問題ともリンクしていて、簡単に解決策を見いだせない状況に陥っております。ただ鉄道貨物の放棄はCO2削減策としてのモーダルシフト政策に反しますし、ドライバー不足のトラック業界の現状からも鉄道貨物の活用の可能性は大きいわけで、簡単には決められません。来られも含めて国が大方針を示す必要がありますが、リニアや整備新幹線と違って票にならないから政権の関心は低いまま。その一方でおそらくJR北海道より経営環境が厳しいと見られるロシアのサハリン州の鉄道がロシアンゲージの1,529㎜に改軌して本土と車両の共通化を図るという大改良をすると言います。領土としての北海道という観点からいえば、現状はあまりに冷たいというか。これじゃ北方四島の領土交渉でロシアが日本の本気度を疑うというものです。

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Sunday, July 24, 2016

アセット・バブル・イグジット

欧州がえらいことになってますが、単発的なテロが重なって体感治安の悪化は避けられないところも、対応が国にによって異なることが注目されます。シャルリ事件の影響もあるとはいえ、パリ同時多発テロでフランス政府が間髪入れず非常事態宣言をして大統領権限を強化し、以後期間延長を繰り返しながら現在に至ります。その一方でミュンヘン銃撃事件で犯人は単独犯でテロ組織との関係を否定したドイツ政府の冷静な対応が目立ちます。もちろん被害の程度の違いはあるんですが、戦前のナチスの台頭を許したドイツでは、慎重さが身についているのでしょう。

そんな観点からトルコのクーデター未遂事件を見ると、ちょっと待てと言いたくなります。トルコでもクーデターの1週間前にイスタンブールの空港のテロ事件などテロが頻発しています。紛争地のシリアやイラクと国境を接している関係でやむを得ないところはありますが、現政権の対応にも問題はあります。

欧米のダーイシュ(イスラム国、以下ISと記す)掃討作戦で、アメリカの空爆に空軍基地を提供するなど協調路線を取る一方、シリア・イラクで欧米が頼みとする勇猛なクルド人に対しては独立志向が強いということでトルコ国内に対立があり、クルド労働者党(PKK)をテロ組織と見做して弾圧しているわけで、ねじれがみられます。クルド人問題はEU加盟を希望するトルコに対するEUの人権問題批判もあり、複雑です。今回のクーデター未遂も、世俗主義の民主国家という現在のトルコの建国の精神に対して、エルドアン大統領がイスラム色を強めていることと共に、クルド人への弾圧も軍が問題視したと言われます。トルコでは政権の独走に軍がクーデターでストップをかけるということが度々起きており、軍自体は民主主義の守護者として国民の信任を得ている存在ではあります。

しかし不可解なことだらけです。

トルコの邦人「爆音、怖い」 軍反乱、抗議の市民が広場に大挙  :日本経済新聞
「エルドアン大統領は現政権への支持を示すため街頭に繰り出すよう国民に呼び掛けており」とあるように、丸腰の国民を武装した軍隊と対峙させて人間の盾にしたわけです。結果的に犠牲者とされる247人のうち160人以上が民間人という結果です。しかも民間人犠牲者を国民の反クーデター感情に訴えて非常事態宣言を正当化しているわけで、無茶苦茶です。こんな報道もあります。
トルコ大統領、軍反乱時に難逃れる 現地報道  :日本経済新聞
「当日の経緯を知る軍OBは「なぜクーデター勢力の戦闘機が(ミサイルを)発射しなかったのかはミステリーだ」とロイター通信に語った。」そうで、クーデター自体が狂言の可能性もあることを示唆します。一方それ以前に軍幹部の世俗派の更迭が相次ぎ、軍内部に不満がたまっていたという事情もあり、軍の組織統率力が低下していたとする見方もあります。クーデターの失敗はその結果だと。しかしそうするとトルコ軍の弱さを世界に晒したことになるわけで、加えて軍に留まらず司法や行政の政権に批判的な勢力を一掃して結果6万人超の拘束・解任で、むしろテロ対策は手薄になると見られています。シリアやイラクで劣勢のISのテロリストの越境でむしろテロを呼び込むとすれば皮肉です。

重要なのはトルコの大統領は選挙で選ばれる公職ではあるものの、トルコ憲法では名誉職で政治的な権能を持たないとされているにも拘らず、イエスマンで固めた現政権はエルドアン大統領の意のままに動いている点です。エルドアン大統領は大統領権限拡大を狙った憲法改正を目指しているそうですが、憲法改正するまでもなくこんなことができてしまうわけです。はて、東アジアの某国に似てないか?安倍政権が目指す憲法への非常事態条項の追加は危険だということと共に、トルコの場合現政権を支える与党は2015年6月の総選挙で過半数に達せず、必ずしも盤石ではありません。衆参双方で与党に2/3を与えた日本大丈夫か?安倍首相の支持層には神道系宗教の成長の家からスピンアウトした日本会議が。うーむ-_-;;。

思えばBREXITの背景に反移民感情があったとされますが、シリア難民の大量流入で離脱に傾いた英国有権者は少なからずいたでしょう。ただし不可解なのが元々EUに加盟してもシェンゲン協定には参加ぜず国境管理を続けていたイギリスがどの程度影響を受けていたかは明らかではありません。むしろ旧植民地を中心としたイギリス連邦の結びつきで多数の移民を迎え、しかも独自文化を尊重し多様性を強みに変えてきたイギリスで反移民というのはどうも残留派の印象操作のプロパガンダだったんじゃないかと疑われます。むしろEUの拡大で主権国家に屋上屋をかけるようなEU委員会の官僚主義に対する反発の方が大きかったんじゃないかと。とするとBREXITは必然だった?

EU自体が今直面している問題として、リーマンショックを受けた金融を巡る問題があります。バブル崩壊後の金融危機で銀行の整理統合が進んだ日本やリーマン後に公的資金で支えられながら再生したアメリカの銀行に対して、欧州では中小銀行が乱立し整理統合が進まない現状があります。EUによる預金保険制度の統一やECBによる銀行監督など金融統合が話し合われてますが、同時にバーゼル委員会の銀行規制強化で資本増強が求められ、破綻処理で民間に負担を分担させるペイルインを盾に公的資金注入ができにくい中で、金融危機時代の日本同様貸し渋り現象が起きているわけで、マイナス金利にまで踏み込んだECBの緩和策はそれを後押しする意図もあるわけです。

ただし実際は相対的に弱いイタリアなど南欧の銀行が緩和環境で淘汰を免れ延命する一方、好調なドイツでは金余りで設備投資が進むからますます格差は拡大するわけです。とはいえドイツ自身の貿易相手国としてのイギリスのプレゼンスの大きさから、メルケル首相はイギリスの立場も理解してEUのユンケル委員長のような強硬意見は言わないわけです。それでも先が見通せない中で投資を抑制する傾向は欧州全体で強まりますから、当分欧州の低迷は避けられないところです。

アジアでは中国の減速が結果的に日台韓やASEAN諸国にも影を落としますから、アジアも足踏みという中で、独りアメリカが気を吐く状況ということになります。実際FRBは量的緩和を終わらせ、利上げにまで踏み込んでいます。アセットバブルから出口へ進んだわけです。それでも利上げは遅々として進まず、むしろ利上げ延期が好感されて株価を押し上げるというヘンテコな状況で一進一退です。このアメリカの好調をどう見るかですが、シェール革命の影響の大きさを見るべきでしょう。

共和党大会で透ける「エネルギー孤立主義」 米州総局 稲井創一 :日本経済新聞
シェール革命でエネルギー自給が可能になれば、アメリカの経常収支が改善する可能性があります。そうするとエネルギー自給体制の中で国内産業を再生して雇用を生み出すというのは結構リアルなシナリオになります。トランプドクトリンも必然か?てなわけで、世界は今までとかなり違った方向へ踏み出しつつあるようです。気候変動バリ協定が空洞化される心配はありますが。

で、日本ですが、これだけ世界が変わっているのに、日本はなぜ変われないのか。一言で言えば変わりたくないんだろうということですかね。アベノミクスの弊害がこれだけ明らかなのに、当面食うに困らない程度の安定はあるから、それを崩したくないってことでしょう。これは同時に大胆な規制緩和にもマイナスに働きますし、例えば憲法改正も難しくしますから、それだけ現状維持圧力というか慣性が強いってことなんでしょう。

世界史的に似た状況は19世紀末の1873年から1996年までのイギリスに見られます。当時のイギリスは産業革命のアドバンスを使い果たし、米独仏の新興工業国の追い上げで窮地にあったのですが、同時に都市中間層の台頭もあり、紆余曲折はあったものの、中間層のヘゲモニーとしての民主政治が確立した時代でもあります。そして世界の労働法規のひな型となったイギリス労働法で労働時間に上限が設けられ、労働者の立場が確立した時代です。イギリスは結局覇権国の地位を失いますが、その一方でゆりかごから墓場までの手厚い社会保障を実現していくわけですが、これ丁度アベノミクスの逆ってことです。むしろこの大不況期にイギリスは経常赤字を拡大したのですが、日本は経常黒字を継続しており、打つ手もあるわけです。てなわけで Asset Bubble EXIT 略してABEXITがテーマになるわけです。

とはいえアベノミクスの本質はダメノミクスであり、出口でのリバウンドのショックは考慮する必要はあります。例えば今の日本でいきなり利上げができるかと言えば答えはNoです。まずは伸びきった日銀のバランスシートを徐々に縮小するしかありません。具体的には物価目標を取り下げた上で、保有国債は満期まで保有して償還させるわけですが、保有国債の期限も伸びて平均7年になってますから、保有水準を下げるだけで少なくとも7年以上かかるわけです。しかも高値で買い取っていてマイナス金利債もありますから、発券銀行の特権である通貨発行益の多くが失われ、経常経費を差し引いた剰余金の政府上納も減るわけで、その分財政に負担を与えます。結局金融政策は時間軸での資金の移転に過ぎないわけで、将来世代の負担増になるという意味では赤字国債による財政出動と大差ないわけです。

ただし国債償還による自然減もさらに時間をかけないと財政を通じた経済下押しJは避けられないわけで、実際には国債買い入れ額を徐々に減らしながら、日銀の保有国債全体でマイナス金利にならない範囲で対応するぐらいしかできません。急に買い入れをなくせばそのことによる国債暴落が起きかねませんので。てことは現状維持を言いながら徐々に買い入れ額を減らすぐらいしか方法がないわけで、その分出口に要する期間は伸びることになります。

また注意すべきは日銀当座預金の銀行勘定ですが、すべてマイナス金利が適用されているわけではなく、当座預金の名が示す通り、法定準備金相当額は金利なし、法定分を超えた超過準備のうちマイナス金利実施日の今年2月16日時点の当座預金残高の超過分に限定的にマイナス金利が適用されます。ですから銀行は以後の当座預金増加分にマイナス金利がかかるわけですから、預金を増やさないようにする一方、新発国債までマイナスの現状ではプラス0.1%の部分の預金準備を死守しようとします。事実上の不胎化というわけですね。この状況で国債が暴落して年利0.1%以上の利回りが見込まれると取り崩しが始まるわけで、ベースマネーの減少が早く進んで市場が収拾がつかなくなる事態もあり得ます。準備預金マネーが地雷になるわけで国債買い入れを減らすだけでも慎重にしなければなりません。現実的には10年20年と長い時間をかけざるを得ない。わけです。

ヘリコプターマネー導入の議論で期待が膨らんだのか、BREXIT後の円高が反転してドル円は一時107円まで戻しましたが、60年償還ルールのある日本では導入は不可能です。というよりも、赤字国債の借換債発行が制度化されていて、それが財政赤字の歯止めを失わせた現実があり、実質ヘリマネと変わらないということで、追加策としては不可能という意味ですが、それだけ後始末は困難を極めます。ある意味上記の経常黒字の継続が財政赤字の許容度を高めている可能性があり、困った問題です。

てことで参院選でアベノミクス継続を訴えて勝利した与党陣営ですが、早速秋の臨時国会で大規模な財政出動を打ち出すとしております。課題は財源で、10兆円20兆円といった数字が飛び交っているものの、既に税収の上振れ分やマイナス金利で浮いた国債金利見込み額も使い切り、真水となる剰余金は1兆円がいいとこ。残りは建設国債や財投で水増しとなりそうです。しかし建設国債は使途がインフラ建設に限られる一方、人手不足で執行が滞っている現状ではあまり増やせません。見方を変えれば建設コストの見直しで人件費を高く設定することで、間接的に賃上げにつなげるという経路は考えられますが、不足している建設職人は養成に10年はかかり実際建設現場では高齢の職人ばかりという状況では賃上げは彼らの懐を潤すだけで若年層の雇用増にはつながりません。

加えて先進国で公共インフラがかなり整っている日本のような国では、追加的なインフラ整備は収益逓減の法則で経済効果が低下する一方、固定資本の増加は維持費に相当する固定資本減耗の増加でそれ自体が財政を圧迫しますから、国全体で見た生産性を下げるだけです。あと財投活用は結局民間資金を吸い上げるだけですから、民間の設備投資の代替で低収益の投資が行われるわけで、これも成長の足を引っ張るだけで無意味です。

インフラ投資を是とする議論は、結局ストックの増加に意味があるのですが、そのストックの収益性が低下することを防ぐ手立てはないわけです。逆に社会保障に関しては高齢化による財政の圧迫から給付を見直せのような議論はフローしか見ていないのですが、例えば年金制度は制度ストックとしての意味合いがあるわけで、収支のデコボコはあっても持続可能であれば機能するわけで、そのためには保険料の原資となる雇用者所得が安定していることが大事なわけです。その意味でGPIFのリスク投資は避けるべきですが、いくら得した損したという議論は相手の議論の土俵に乗るだけです。制度の安定性を図って未納をなくすことが重要。将来の保険料の原資を増やす意味で最低賃金の上昇などで後押しすることが重要です。最低賃金問題は目先の景気への直接的な効果をうたうならばフローの議論の範疇を抜けられず、ちょっと違うというべきです。

また気になるのがこれだけ若者の貧困が言われているのに、廉価な公営住宅が不足している点。一方で人口減少の結果としての空き家の増加という現象があるわけですが、民間住宅ストックを活用した公営住宅の充実という形で、低稼働の民間ストックを活用して低所得層の生活支援を行うというようなストック面で国民生活を支える仕組みがあって良いのですが、一方で住宅ローン減税など持ち家を後押しして住宅ストックを増やして空き家問題を深刻化させるというバカなことを止めるべきです。結果的に住宅ストックの稼働率が上がって生産性を改善できます。

そんなこんなでまとまりつかないけど最後にこれ。

ナリタ・ハネダを経由しない訪日客が急増する?:日経ビジネスオンライン
あまり知られていませんが、富士ドリームエアラインズ(FDA)が好調です。発着枠の制限が厳しい成田・羽田に対してがら空きで着陸料も格安どころか補助金もらえるところすらある地方空港を活用し、エンブラエルの80人乗りクラスのリージョナルジェット機を用い、パイロット養成も自前。お陰で同型機を使うJALのパイロット養成まで受託収益の柱の1つにし、小型で燃費が良く80人乗りで搭乗率を高く維持できる一方LCCのように安売りはしないから利益率が高いというわけです。加えて国際チャーター便への参入を目指しているとか。バス2台分程度の定員ならばツアーの募集のハードルも下がり、外国人観光客を直接地方空港へ送り込むことも計画中ということです。

日本全国に立派な地方空港があり、それを小型のリージョナルジェット機で結べば、新幹線よりもはるかに小さな需要でも成り立つわけで、しかも国際チャーター便で直接外国人を地方へ送り込むといった新幹線にはできない芸当もできるわけです。並行在来線切り離しを含めて地方財政の重荷になる整備新幹線よりもこれだろって話です。立派だけど赤字を垂れ流す地方空港の収支改善にもなり、活性化にもつながるわけです。FDAに限らず例えば北海道庁は新幹線に期待するより北海道エアライン(HAC)を支援する方が良いのではないかと。その上でJR北海道の路線維持は市町村を巻き込んで模索するということですね。これ交通政策基本法の趣旨にも合致します。

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Sunday, July 10, 2016

託す幣分

カミングアウトしますが、租税回避もマネーロンダリングもやったことがあります。

租税回避といっても、単に確定申告して税の還付を受けただけですが^_^;。これ納税者の合法的な権利です。

最近はふるさと納税で還付を受ける人が増えているようですが、これも合法です。ただし問題のある制度ですが。任意の自治体に寄付をして確定申告すると、2,000円の自己負担を除いて税の還付を受けられる制度ですが、ふるさと納税の返礼品を巡って競争が過熱している状況で、流石に総務省も注意をしてます。主に大都市の自治体が税源を奪われ、対抗して返礼品を出すなどして泥沼状態ですが、限られた税源のパイの奪い合いを制度化したのは第1次安倍政権でした。ホントろくでもない。

で、当時総務相だった増田氏の都知事選出馬だそうですが、これに関与したんだよね。

都知事、法人住民税の一部国税化「とんでもない話」  :日本経済新聞
所謂地方創生予算の財源として都道府県税の法人事業税と市町村税の法人住民税の一部国税化したわけですが、都道府県では東京都が唯一の地方交付税不交付団体ですし、特別区住民税は都が徴税してますから、東京都が狙い撃ちされた形です。猪瀬知事バッシングはこれが原因とも言われてますが、都税の一部国税化を推進した都民から見れば裏切者です。まさか選ばないよね>都民の皆さん。

返礼品に関しては自治体の地場産業振興の狙いがあると言われますが、真に付加価値のある商品ならば実質2,000円でディスカウント販売する必要はないわけで、むしろ地方の零細な供給力を浪費することになりますから、中長期には地域の衰退を助長します。今すぐやめるべきです。加えて高額納税者にとっては事実上の租税回避行動となるわけで、なるほどパナマ文書で日本人の名前Tが少ないのは、海外の租税回避地を使う必要がないからとも言えます。課税当局から見れば、確定申告による合法的な租税回避は当局の税源の捕捉を助けるので問題はないわけですが。

てことで、パナマ文書の流出で大騒ぎしていますが、海外のオフショア利用も外形的には合法的な租税回避ではありますが、問題は情報の秘密性、匿名性にある点が報道ではあいまいです。例えばスイスのように銀行の守秘義務を法律で規定し、海外の富裕層の資金を集めるとか、ケイマンやバージンなど英国自治領や王族領や中南米諸国に見られる非居住者による匿名ペーパーカンパニー設立やシンガポールなど極端に法人税が低い地域など、いろいろな類型がありますが、これらを多重に組み合わせることで、海外流出資金の真の所有者がわからなくなる結果、本来の居住地や源泉地の課税当局から税源が流出すること、そして麻薬組織やテロ組織などのマネーロンダリングに利用されていることなど、様々な問題を抱えるわけです。

またヘッジファンドの一部などの私募ファンドには本人確認が緩いものもあり、場合によっては個人では買えないなどでオフショアのペーパーカンパニーが利用されるケースもあり、パナマ文書にも載っているようで、運用益を課税当局に申告し納税する限りにおいては合法ですが、申告漏れもありそうなので、日本の国税庁がどこまで迫れるかは見物です。元々投資信託(ファンド)は富裕層向けに資金を預って運用するサービスということで、匿名投資組合のような形態から始まりました。資金を託して貨幣を増やすという意味でタイトルのような当て字を考えましたが、タックスヘイブンを租税回避地とするよりも実態を表していると思います。

ちなみに日本でもかつて長期信用銀行発行のワリコーなどの割引債は無記名だったこともあり、企業幹部や政治家が活用してましたが、リクルート事件関連で当時の金鞠自民党幹事長が利用していたことが問題視され、見直されました。また銀行預金や郵便貯金の口座開設も本人確認がされておらず、架空名義口座が少なからずあると言われます。これらも法改正で新規口座に関しては本人確認が義務付けられましたが、過去分までは遡及されませんから、振り込め詐欺などの温床になっていると言われます。

あ、マネーロンダリングですが、近所の宇賀福神社ってとこで、お金を洗うと3倍になって返ってくるってことで、全国から人が集まってきます。通称銭洗弁天と呼ばれてます。ご利益はむにゃむにゃ^_^;。ちなみに北条執権時代の鎌倉ではそもそも銅銭の流通量自体が多くはなかったので、マネーロンダリングができる人は限られていたとか。今と同じだわwwwww。

パナマ文書の流出を契機にOECDを中心に国際的な監視体制ができつつありますが、これで問題が解決すると考えるのは早計です。アメリカは自国民の資金の海外流出に対しては厳しい対応をしていますが、国内のデラウエア州などは手つかずで、外国資本の流入は制限なしですから、新たな不平等条約になりそうです。スイスやルクセンブルグなどはアメリカの圧力に屈し、パナマ文書流出で英領バージンなどのタックスヘイブンとしての地位は低下するかもしれませんが、元々法人税率の低いアイルランドなどが取って代わるだけと見られています。BREXITでロンドンの肩代わりも狙える立ち位置の優位もあります。

尤もロンドンの機能の代替は簡単ではありません。EU離脱が金融にはマイナスの見方が強いですが、EUで検討が始まった金融取引税、所謂トービン税が導入されれば、国境を超える金融取引に課税されますが、EU域内との金融取引は課税されるとしても、域外資金のとりあえずのプール先、例えばオイルマネーやアジアマネーにとっては使い勝手が良くなる可能性があり、新たなタックスヘイブンになる可能性があります。現状のように租税条約は2国間条約に留まる限り、制度の差分を利用した租税回避はなくならず、結局国連やWTOのような国際機関で強制力のある一般ルールを定めるしかないですが、まずアメリカが従うかどうか。WTOもインドの緊急セーフガード発動でアメリカが見捨てて、TPPのような多国間FTAに重点をシフトしました。結局公平公正よりも国益重視という大国のエゴです。そのアメリカもアップル、アマゾン、グーグル、スターバックスなどの課税逃れを許しているのですが。

EUの立場の弱さは、域内に富裕層を多数抱えていて、タックスヘイブンを利用して税源が国外へ漏れ出てしまう現実を止められないことです。欧州版付加価値税や炭素税や上記の金融取引税など新たな税源を模索しているわけですが、それをあざ笑うように海外へ漏出してしまうことを止められません。ある意味欧州が気候変動を含む環境問題に熱心なのは、税源の模索の結果でもあるんですが、結局他国が追随しなければ資金流出を助長してしまうというジレンマを抱えています。イギリスの離脱問題で結局優位に立てない理由もその辺にあります。

日本の消費税の手本となった欧州の付加価値税も、アメリカからは輸出戻し税が事実上の輸出補助金であり隠れ関税ではないかという批判がされていたわけですが、EU域内では既に電子書籍など有料デジタルコンテンツへの課税で、サーバー立地国の課税当局がユーザーの居住国の税率で課税してデータ交換を行うシステムがスタートしており、いずれ輸出戻し税の廃止まで踏み込むことも視野に入れてます。加えて日本では10%増税時に導入とされた軽減税率の廃止も検討されているということで、日本はここでも周回遅れですが、EUが先行して世界を変えるという意欲的な姿勢はむしろアメリカやイギリスを利することになっています。例えば日本がEUに寄り添えば、状況は変わる可能性はありますが、日本は自国の国益ではなくアメリカ追随路線一辺倒です。

消費税を前提に考えれば、スウェーデンのように所得税や法人税も付加価値税型にするという方法があります。法人税ならば人件費を含む付加価値(企業会計上粗利益相当)を税源とするわけで、二重課税は税額控除で対応し、課税ベースが拡大されますから税率は下げられます。よく言われる「スウェーデンは高福祉国だけど法人税を下げた」というのはこういう仕組みなんで、同じことを日本でやろうとすれば経済界から反対の大合唱間違いありません。実際民主党政権時代に法人減税の財源に市税特別措置の見直しを打ち出したら大反対されました。大企業は租税特別措置を最大限利用していたので、最大税率で納税しているところはないわけです。個人の所得税も給付付き税額控除と組み合わせて、低所得なら還付が受けられるという形で社会保障と一体化することが考えられます。こういった議論を深めることが本来の税と社会保障の一体改革です。

てなことで、税の徴収に苦しむ主権国家ですが、タックスヘイブン以上にタックスイーター問題が頭痛いところ。上記の地方創生予算もそうですが、いろいろありますが、ここではこれを取り上げます。

JR九州、10月上場へ 鉄道の黒字化へ執念  :日本経済新聞
上場基準を満たすために旧国鉄債務に上乗せされて国民負担が決まっている経営安定基金を上場時に国庫返納すべきところ、取り崩して資産の減損処理に使い、以後の減価償却費の圧縮を狙ったもの。本業の赤字体質を黒字化のために減価償却の前倒しをして益出ししているわけです。もちろn数字上のテクニックに過ぎず、以後の黒字転換を保証するものではありませんが、目先の上場基準クリアのために国民負担ってのは許すべきではありません。経営トップが安倍人脈ということで、政治銘柄ですね。郵政の二の舞がいいとこでしょう。

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Sunday, June 12, 2016

ポンド飛び出し円の切れ目

サミットも終わり「新しい判断」とやらで世界経済リスクを理由に消費税増税延期が決まった日本ですが、世界から見ればヤバいのは日本だったりします。こんなニュースが案外重要です。

三菱UFJ銀、国債離れ 入札の特別資格返上へ  :日本経済新聞
プライマリー・ディーラーを降りることを検討中ということですが、新発国債を引き受ける義務と引き換えに当局に意見が言える権利で、大手銀行以外にも証券・生保などがメンバーで、市場環境を睨みながら国債の安定消化を支えてきた仕組みですが、メガバンクの一角の三菱東京UFJ銀行が離脱するということですから、穏やかではありません。

今のところ他のメガバンクや証券・生保などは様子見で追随の動きはありませんが、最大手の三菱東京UFJ銀が動いたわけですし、そうなるのも無理もない現実があります。言うまでもなく日銀が導入したマイナス金利政策の影響です。日銀の説明ではあくまでも新規受け入れ分だけに限定したマイナス金利適用で影響は軽微としてきたわけですが、実際は家計消費の低迷と企業の内部留保拡大で預金が増えている状況で、日銀の大量買い付けで利回りがマイナスになった国債を買うか、日銀に預けてマイナス金利を甘受するかという究極の選択となっているわけで、こんなことやってられないわけです。

加えて消費税増税延期で格付けを下げられた日本国債の大量保有は、国際銀行規制でリスク負担を求められ、資本の積み増しを求められることになります。また当然日本国債の担保価値も低下しますから、海外展開で必要な外貨調達でジャパンプレミアムとでも呼ぶべき上乗せ金利を要求されることになり、海外事業の利ザヤまで圧迫されるわけですから、遅かれ早かれこう動かざるを得ない状況にあったといえます。さてそうなると銀行が引き受けた新発国債を日銀が高値で買い取ることでベースマネーを増やす政策が入口のところで経路が切れるわけですから、日銀の異次元緩和(QQE)への影響は避けられません。実際日銀審議委員の中曾副総裁からこんな発言が。

BOJ点描 中曽副総裁「国債市場の機能維持が重要」 国債離れに危機感も  :日本経済新聞
銀行の反乱がどう決着するかはわかりませんが、日銀の強面は続かないということは言えそうです。そんな日銀が期待していた米FRBの利上げは、米雇用統計の発表で予想外の弱さが明らかになり、イエレン議長のこんな発言につながります。
FRB議長、米利上げ時期特定せず 雇用悪化に「失望」  :日本経済新聞
景気は上向いているはずなのに雇用は増えない。正確には予想を下回る増え方しかしないということですが、これが結果的にドル高回避につながり、あえて動かなくても米利上げで緩和効果を期待していた日銀の読みが外れたわけです。それでも追加緩和に動けないのは、メガバンクの反乱だけでなく、イギリスのEU離脱問題という頭の痛い問題が立ちはだかっており、今は動きにくい局面です。所謂BREXIT問題ですが、当のイギリスでは国内対立が大きくなっています。
疲弊する英国の地方都市、EU離脱論が噴出  :日本経済新聞
まるでTPPを巡る中央と地方の対立に酷似します。グローバル化と称する経済連携のメリットは中央の大企業や金融機関が受ける一方、EU由来の規制は地方が負担していて、何も良いことがないという状況です。TPP交渉で大幅譲歩した日本の農林水産業の未来図が垣間見えます。BREXITは対岸の火事ではありません。巷間言われる経済停滞も、影響を被るのはシティの金融機関だけだとすると、イギリス全体ではマイナスかどうかは微妙です。むしろEU離脱を心配するのは独仏など直接利害のある国に留まらず、EU域内の拠点としてイギリスに現地法人を置くアメリカや日本の企業にとっては悩ましいところ。実際はスイスやノルウェーのようにEUとの個別協定が結ばれるはずですから、その内容次第では影響は限られますし、移行期間の特例もあるはずですが、結局中身が決まるまでイギリスへの新規投資は手控えられることにはなります。これがリーマン級の経済ショックをもたらすかといえば、出口があるだけに一時的停滞はあっても答えはNoでしょう。

むしろEUが恐れているのは、厳しい加盟条件を突きつけられている東欧諸国の不満が噴出することでしょう。ギリシャ問題で南欧諸国への対応の甘さを見せているだけに、イギリスの残留のためにEUがさらに譲歩するようなことはできにくいわけです。加えてイギリス同様に各国内に離脱を訴える愛国右派を抱えていますから尚更です。結局EUは動けずどちらに転んでも混乱は避けられない。とすると案外震源地のイギリスが一番安定するという変なことも起こりそうです。ただ日銀にとっては金融の混乱はリスクオフ要因で円高となりますから、祈るような思いで見ていることでしょう(苦笑)。

てなわけで日本に戻りますが、消費税増税延期と経済対策としても財政出動を打ち出した安倍政権ですが、日銀が追加緩和に動きにくい状況での財政出動ですから、財政健全化は後退を余儀なくされるわけで、これリカードの等価性定理そのままに、財政悪化は将来の増税を連想させて消費を冷やしますから、結局消費は回復せずむしろ家計は貯蓄に励みますが、三菱東京UFJ銀の反乱で、預金の増加分を国債で吸収する回路が細くなるわけで、いよいよアベノミクスが構造的に動かなくなる局面ということですね。それでも財政出動で経済を争点に選挙で勝つシナリオを描いているんですからおめでたい。例えばリニア。

リニアに3兆円支援 鉄道網整備へ政府マネー拡大  :日本経済新聞
これ2027年予定の名古屋開業後8年のインターバルを置いて大阪延伸を着工するところを8年前倒しだけですから、最速2037年の大阪延伸という話であって、目先の経済に直接プラスになる話じゃないです。むしろ財投債という政府保証債を用い、これ事実上の国債で民間資金より低利で調達できるってだけの話です。むしろこれを突破口として整備新幹線の財源に同じ手法を用い、前倒し着工することが狙いでしょう。現状既に整備区間の開業で発生するリース料まで財源に充ててまだ足りず、着工区間の開業後のリース料を担保に民間から借り入れて手当てしている状況を政府保証債に切り替えて安定財源にしようということです。例えばJR北海道の経営不振で札幌延伸が間に合わない可能性があるわけで、これで首の皮1枚ということでしょうけど、その前にJR北海道助けてやれよ。そもそも青森県の惨状を見れば、新幹線は開業しても観光地へアクセスする二次交通が枯渇していては無意味です。地方を救うのはむしろこちらかも。
ウーバー、京都で始動 地方創生をネット企業が支援  :日本経済新聞
ウーバーに代表されるライドシェア問題は、過去に放置国家の呆の支配ギグ老いるショックなどのエントリーで指摘してきましたが、記事は京都府京丹後市久美浜町でNPO法人がウーバーの相乗り配車アプリを活用して地域の足を確保するということで特区構想に名乗りを上げたものですが、結果的には道路運送法第78条、第79条で定義される自家用自動車の有償運行として認可を受ける形で実現しました。京丹後市といえば北近畿タンゴ鉄道の経営不振から入札によりウィラーの支援で京丹後鉄道として再出発したところですが、鉄道は残ってもタクシー会社すら撤退して二次交通壊滅状態だったわけで、78条運行は一応理に適ってます。

ウーバーとしてはこれを突破口に都市部への進出を狙っているようですが、むしろ世界中のユーザーが直接配車アプリを使うことで、どれだけ域外の観光客を呼び込めるかが注目点でしょう。それ次第で公共交通の衰退で観光客すら呼べない地方の起爆剤になる要素はあります。ただし日本では結局地方のタクシー会社との提携などの形に落ち着くんじゃないかと思います。というのは、京丹後市でも問題になりましたが、自家用車が任意保険に入っているかなどの問題で規制をせざるを得ない状況がありますので、それならば地方の法人タクシーがリスクテイクする形の方が法的にもすっきりします。世界的なネット企業といえども日本の法の支配は尊重すべきことは言うまでもありません。

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Sunday, May 22, 2016

五輪霧中

2020年の東京オリンピックの雲行きが怪しくなってきております。特に2億円超の「コンサルタント料」問題は、下手すれば東京開催返上の可能性すらありますが、国内報道ではその辺の言及がなく、危機感が足りないかも。

そもそも発覚の仕方が異常で、元々ロシア陸連のドーピング疑惑を捜査中に、渦中のIOC幹部の息子の会社に2億2,000万円が振り込まれていて「これは何だ?」というのですから、笑えない。東京開催決定の前後2回に分けての振り込みは賄賂性を疑わせるということで、フランス捜査当局が本気になったものです。

パナマ文書で話題のタックスヘイブン問題が、それ自体では違法性を問えない一方、コンサル料を受け取った会社は、アジアのタックスヘイブンとして知られるシンガポールが所在地で、しかもすでに解散しているとか。裏金ではない証明はほぼ不可能でしょう。JOCが潔白を主張するなら、騙されたとして詐欺で訴えるならわかるけど、守秘義務を盾に解散した会社に操を立ててるっておかしいです。この辺説明付かないなら捜査の進展で返上を迫られる前に、東京開催を自ら取り下げる方が良いかも。オリンピック自体は代理開催でロンドンが有力らしいけど、開催されるなら、出場選手には場所が変わるだけの話です。

以前から気になっていたのですが、オリンピック関連で様々な利権がうごめいている印象はありましたが、生易しいものではないようです。例えば新国立競技場問題では、神宮の森の再開発問題とリンクしていて、ザハ案の迷走がそれをあぶりだしています。

新国立競技場、隈案に決定の裏に利権の闇|Close Up|ダイヤモンド・オンライン
ちょっと複雑なんですが、元々宗教法人明治神宮をはじめ三井不動産など民間地権者の所有地ながら、国内風致地区第1号に指定されて15mの高さ制限が課されていた神宮の森に3棟の高層ビル計画が持ち上がり、それを可能としたのがザハ案の新国立競技場で、それを露払いとして高さ制限が大幅に緩和された新たな都市計画が東京都によって策定され、新高層ビルの日陰となる都営霞ヶ丘アパートは公園化されることになり、住民の追い出しで揉めて裁判になっています。

公園化は再開発で必要になる公園スペースの確保の意味もあります。ところが露払い役のザハ案がコストがかかりすぎると批判を浴びて白紙撤回され、再コンペとなったわけですが、この先がややこしい。隈研吾氏と伊東豊雄氏の2案に絞り込まれ隈案で決着したのですが、隈案はザハ案でサポートした日建設計がサポートしており、データ流用を巡ってザハ氏から知的財産権侵害を指摘されるなど火種は残っております。問題になった聖火台はサブトラックと共にザハ案では別に作る計画だったので、隈案では反映されていなかったって、そうなるとパクり疑惑は深まるのか?-_-;

で、問題なのが伊東案の落選理由。伊東案ではコスト削減の別メニューとして人工地盤上の公園計画を省略した案を提示した結果、東京都側の委員が反発したとか。曰く「今更都市計画を変更できない」だそうな。これ神宮の森のトリプルタワー計画と読み合わせると腑に落ちます。高層ビル建設のためには所定の公園面積を確保しなければならないんですから。伊東氏にしてみればコスト削減のための別メニューの提示で撥ねられた格好で、良心を示したのにとかなりお怒りだとか。

もちろんこれらは状況証拠だけですが、そもそもザハ案自体が神宮の森の高さ制限緩和のダシに使われた可能性もあるわけで、オリンピックという夢の祭典はここまで食い物にされているのかと愕然とします。本来公共施設のデザインコンペでは、建設の目的や予算、立地場所の法規制などの建築与件を明示して行われるはずですが、新国立競技場ではそれがなかったようです。結果として径間500mを超える巨大キールアーチという物理法則に挑戦するようなザハ案が採用されたわけで、意図を感じざるを得ません。ザハ案に批判が集まって白紙撤回された一方で、旧国立競技場の解体を拙速に進めたのも、既成事実を作って後戻りできないようにしたと見えます。

それでもコスト面での世論の批判もあり、舛添都知事によって競技施設計画の一部が中止されるなどしたのですが、その舛添都知事が今批判を浴びています。

高額出張や公用車利用… 舛添都知事に「公私混同」批判  :日本経済新聞
批判の許が専ら与党の自民公明陣営からというのが匂います。何だか猪瀬前都知事のときのように、辞めるまでバッシングが続く感じです。しかも猪瀬氏は都知事選を控えて徳洲会から5,000万円を受け取ったわけで都知事としての責任を問われる構図だったのですが、舛添氏の政治資金絡みの問題は都知事になる前の話ですし、都の公金や公用車の使用に関しては、一応都の基準の範囲内です。ま、これも石原都知事時代の蕩尽で基準が緩くなっていたのかもしれませんが、当時一部で批判されたものの、今回のようなバッシングにはなっていません。早い話舛添氏は虎の尾を踏んじゃったのね。だから都議会も100条委員会を開きたくても公式には理由がないわけで、あとはひたすら叩いて辞めるのを待つってことじゃないでしょうか。てなわけで五輪霧中^_^;。

これらは公共事業では普通に行われてきた手法ではあります。だから時々揉めるわけで、最たるものは成田闘争ですが、辺野古の新基地でも同様のことが起きています。ほとんど報道されませんが。そんなときにこんなニュース。

沖縄女性遺棄 日米首脳会談で再発防止要請へ  :日本経済新聞
政府も抗議の姿勢は見せているものの、沖縄での世論の沸騰に広島訪問を決めたオバマ大統領や日米同盟の先行きを心配って変だろこれ。

えーと、正確には公共事業ではないんですが、先日市川市で住民の反対で保育園の建設断念のニュースがありましたが、報道が明らかなミスリードで、近隣住民が子供の声にうるさいと苦情といったニュアンスで報道されましたが、住民の言い分は、事業主体の社会福祉法人の説明が不十分で市川市も対応が悪いこと、特に前の道路が狭く、保育園ができて児童の送迎のマイカーが増えれば通行が困難になることが一番の問題ということで、そうなると道路の拡張など都市計画から見直さないと保育園一つ作れないというわけで、児童の歓声の苦情が事業者や行政の見直しの口実に使われたということのようです。神宮の森の再開発や辺野古の新基地とは逆の構図ですが、利権絡みでやらなければならないことは何が何でもやるけど、そうでもない案件は人のせいにしてやめる。自分たちは傷つかないというわけですね。

昨今、東芝の粉飾問題や三菱自工の燃費不正など、日本企業の劣化を示すニュースが続きますが、その流れの中で共通する問題は、リーダーの不作為や現場軽視に、優秀なはずの現場が疲弊しているのではないかという疑問です。オリンピックも元々既存施設の活用でローコストでエコな大会を目指していたはずが、予定になかった国立競技場の建て替えを皮切りに神宮の森の再開発とどんどん話が大きく膨らむ一方、人手不足で人件費はつりあがる一方、ゼロ年代のリストラで職人をリストラで社外へ出した結果、横浜の傾きマンション問題などが起きるわけですが、その時に指摘した技術者の高齢化と若者の減少による技術の伝承問題もあり、現場の能力低下も疑われます。

技術の伝承問題はそもそも国鉄改革で誕生したJRで指摘された問題で、国鉄末期の新規採用手控えとJR化後も余剰人員対策もあって採用手控えが続いた結果、40代の中堅社員が極端に少ない歪な年齢構成となっており、例えばJR福知山線事故のときの若過ぎる運転士が日勤教育などの懲罰的処分を恐れて指令への虚偽報告をしたりしたことが、事故の遠因となっていると指摘されてます。昨今特に気になるのが饋電系のトラブルで、3月にも高崎線籠原駅での碍子の経年劣化によりDC1,500v電流の地絡事故で連動装置などが焼損した事故では、復旧に2日半を要し影響甚大でした。碍子の経年劣化そのものは阻止できないので、劣化を早く見つけて交換するしか対策がないのですが、海岸沿いなど環境的に劣化の早い場所は現場で経験的に把握されていて、重点的に点検、交換が行われていました。籠原の現場がどうだったかは不明ですが、技術伝承がどうだったかなど、不明な問題は残ります。

き電系統の事故は復旧に時間を要するのは2015年8月の京浜東北根岸線桜木町事故でもありましたが、このときはエアセクション停止による前後き電区間の短絡による大電流で架線が溶断したものでした。京浜東北根岸線は保安装置がATCで、停止禁止のエアセクションには止まらない仕様だったのに、花火大会で駅の混雑対策でホームの混雑が引けてから次の電車を入線させるという確認運転をしていたことが仇となり、手動運転で停止禁止エアーセクションに留まってしまったものです。運転士はエアーセクションの停止禁止は把握しておらず、典型的なマン―マシン系トラブルとなりました。お金かけて高度な保安装置を入れればよいわけではないわけです。むしろシステムの構成が複雑化すると、事故対応も複雑化して想定外の結果を生むこともあるわけです。国鉄改革から間もなく30年を迎える中、JR各社は難しい段階にあるようです。

おまけですが、鉄道ジャーナル6月号の曽根悟教授の高崎線事故の解説が面白かったのですが、首都圏のJRでき電事故が目立つのは、日常的に大電流を扱っていることと関係がありそうです。供給電力が15連3列車が重なると10,000Aにもなるのでは、正常電流と異常電流の区別がつきにくく、自動遮断の精度を上げられないということですね。結果的に地絡事故が起きても回路の自動遮断ができずに大事故になるということで、難しい課題です。

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