鉄道事故

Sunday, August 13, 2017

1億総社畜化社会

米朝間で子供の喧嘩みたいな罵り合いが展開されており、市場はリスクオフに振れて株価を下げたりしてますが、こういう時は落ち着きましょう。そもそもホワイトハウスの行政官ポストを埋め切れず身動きが取れていないトランプ政権に戦争準備ができているわけないですし、北朝鮮にしても核実験由来の放射性物質は1回目以外検出されていませんし、ICBM実験も高高度で発射して飛距離のポテンシャルを示してはいるものの、難しい大気圏再突入性能は検証されておりません。もちろんだからと言って核やミサイルの開発が進んでいないとまでは言えませんが、騒ぎ過ぎです。

てなことは置いといて、1年前のエントリーで取り上げた社畜ネタです。今年は例年にも増して高速道路の渋滞が酷いですが、お盆に一斉に実家へ帰るからこうなるんで、時期をずらすとか考えないと、3年後は丁度オリンピック期間とバッティングしますからどうなることやら。猛暑による熱中症問題がやっと認識され始めましたが、新国立競技場をはじめとする関連工事も人手不足出遅れが心配されてますし、その新国立競技場の工事作業員の過労自殺が報じられるなど、本当に大丈夫かいと心配になります。

ロングバケーション当たり前の欧州では、企業が従業員に有給休暇取得時期を割り振って分散しながら長い休暇を楽しむのに、短い盆休みを一斉に取って大移動する日本のビジネスマンの働き方の異常さが世界へ発信されるおぞましい2020年になりそうです。その働き方改革を巡って混乱もあります。

連合、「脱時間給」容認を撤回 政労使合意は見送り  :日本経済新聞
日経の記事は問題だらけなんですが、連合の逢見事務局長が独断で政権とやり取りして進めていた話で、神津会長は長時間労働の歯止めが認められるならば、政労使協議に応じても良いとしたものの、あくまでも年収1,075万円以上の特定職種を対象とした高度プロフェッショナル制度の話であって、脱時間給は関係ありません。

そもそも裁量労働制も成果主義賃金も現行法で違法ではないんですが、要件として募集や採用の時点で説明がされ雇用契約書にも明記されている必要がありますし、そもそもこのような雇用形態は労使間で合意が必要なんですが、御用組合をでっち上げて協定書の書面を作っても、未払い残業代請求訴訟では実体のない名ばかり組合では労働者の代表と認められず会社側が敗訴する事例が重なり、経済界から要件緩和の要求が出ていたもので、労働側から見れば当然認められません。

あと限定職種の高度プロフェッショナルにしても、高給取りで直接雇用が難しいんですから、むしろアウトソースして相対取引で条件を決めれば良いんで、労基法に盛り込む積極的な意味はありません。当然の如く連合の傘下組合から反対の声が上がって連合は撤回に追い込まれ、次期会長含みだった逢見事務局長を副会長に棚上げして神津氏の会長留任を決めて収めたって話です。早い話企業は残業代を払いたくないってのが本音です。

2020年のオリンピックと盆帰省のバッティング問題でも指摘しましたが、欧州企業では仕事の繁閑を有給休暇の分散取得消化で対応しており、そのため使用者側に有給休暇の完全消化の義務と共に取得時期調整の権利が与えられています。国によっては年度初めに従業員の有給休暇取得計画書を当局に提出する義務まで負わせているわけで、残業で繁閑調整をしている日本とは根本の考え方が違います。結局残業が日常化して長時間労働が当たり前になり、過労自殺も後を絶たないし、長時間労働で作業効率も落ちるから労働生産性が高まらず、利益率が低くなるという悪循環です。解決策は簡単で、最繁忙期に合わせて増員して有給休暇を分散取得させることです。

あと人手不足でAIへの期待が高まっておりますが、AIに限らず機械による労働の代替自体は昔から繰り返されてきたこととはいえ、単純な代替を考えているならお門違いです。AIは人間になれませんし、むしろAIが能力を発揮するための仕事の手順や環境を人が整えてやらなければならないですから、AIで人手不足解消は不可能です。これオフィスオートメーションが言われ始めた時代やコンビニのPOSシステム導入のときも言われたんですが、システムの導入に伴って業務の見直しがちゃんとできて初めて、少ない人数で多くの産出高を稼ぐことで労働生産性が向上するんで、その分を賃金に反映させて家計の購買力を底上げして初めて、経済成長につながるんですが、現実はどうも違う方向へ進みそうです。

実はこれを端的に説明するツールはマルクスが提供しておりまして、G--W--G'で表しております。Gは資本、Wは商品を意味します。ここで言う資本はぶっちゃけお金のことで、生産手段としての工場や機械に投資して、従業員を集め原材料を仕入れて生産した商品を市場へ投入して代金G'を得ることになります。このときにG<G'となるように仕組みを整えるわけです。工業化で工業製品が大量に生産され市場投入される産業資本主義過程はこれが繰り返されるわけです。

しかし大量の工業製品が市場へ投入され続けた結果、工業製品の価格は低下しますし、またスマートフォンのような汎用多機能デバイスの登場でむしろ集約が進む結果、G<G'の関係の維持が難しくなります。一方PCやスマホのような汎用デバイスはソフトウエアのバージョンアップで機能強化が進み、思いがけない用途が開発されていきますから、開発に携わるプログラマーやSEなどのIT人材が重要な生産手段となり、その調達囲い込みのために高額報酬が約束されるようになります。結果的にITデジタル技術を軸とした生産手段の組み換えが起きてデジタルブルジョワジーとデジタルプロレタリアートに分離する現実が出現したわけです。伝統的工業の衰退とIT産業の台頭で米トランプ政権誕生の背景でもあります。

困ったことにあらゆる労働がデジタル技術で代替可能なわけではなく、元々低賃金の単純労働はいつまでも機械化されずに残るどころか、かつてはノウハウの塊だった事務職や販売職も作業内容が単純化されていきますから、低賃金の単純労働はむしろ増えるわけです。つまりマルクスがプロレタリアートと命名した時間の切り売りでしか生活の糧を得る手段を持たない階層が新たに出現したと見れば、世界的にみられる格差拡大が容易ならざる事態であることがわかります。この観点からすれば労基法改正で政府が盛り込もうとする高度プロフェッショナルは保護すべき対象ではないわけです。

さらにもっと困ったことに、高給で優遇される高プロ人材の育成は困難だってこともあります。何となれば人に教える暇があるなら自ら働いて稼いだ方が良いし、人に教えてライバルを増やせば自らの市場価値を下げることになります。加えて技術革新のスピードが速くなってますから、市場価値が落ちたところで教える側に回る頃には次の新技術が出現して手持ちのスキルが陳腐化しているわけですから、教えるニーズもなくなるわけで、ある意味旬の内に稼いでセミリタイアというキャリアプランを取らざるを得なくなります。かくして技術の分断が今以上に深刻になるわけです。

また高額報酬の職業ほど資本代替のニーズが強く、高額の研究開発投資に見合うリターンが期待できますから、いずれ稼げる職業は減っていくというディストピアになりかねません。自分で自分の首を絞めることになるわけです。高プロじゃないですが、例えばかつて高給取りだったバスドライバーやトラックドライバーの賃金低下も、運送業の参入規制撤廃で進んだわけですし、タクシーに対するウーバーなどのライドシェアの挑戦も同様の文脈で理解できます。規制緩和は善として拙速に認めるのは問題です。

その先の自動運転も、当面は地域限定の交通システムとしての実現を目指すのが妥当です。トラックドライバー不足を自動運転で凌ぐのも問題です。荷物の積み降ろしや検収、場合によっては代金決済もあるわけで、その部分は自動化できないので、結局ドライバーに運転させる方が労働生産性を高めることになります。寧ろ鉄道や船舶との連携による複合一貫輸送のシステムを構築することが大事です。この辺の誤解はかなり根深いですね。

その鉄道も自動運転車の実用化で変化を迫られます。ただし道路輸送では実現不可能な大量輸送の能力が結局鉄道のレゾンデートルになるという意味で、地方のローカル線の維持はますます困難になります。また線路保守など労働集約産業の側面は残り、JRでさえ外注化で凌いでいる状況ですが、その結果日常の列車運行に支障が出るほど保守レベルが荒廃したJR北海道の問題など、解決すべき問題があります。そんな中で取り上げたいのがこれ。

JR東など、英鉄道運営を落札 12月から運行  :日本経済新聞
英国鉄道のオープンアクセス制にフランチャイズ(運行会社)として参入するというもので、遅延の多いミッドランド鉄道の定時運行率の向上をアピールして落札したということで、結構ハードルは高いと思いますが、例えばJR北海道の問題の解決策として、線路保有の国策会社を設立してフランチャイズを募集するといった事態も考えられますから、国内の鉄道事業へのフィードバックも期待できます。この辺新幹線システムの一括受注しか念頭にないJR東海の連戦連敗に対して、確実に経験値を高めるJR東日本の行き方は賢明です。

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Sunday, April 09, 2017

トランプ・クリティーク

柄谷行人氏の著書に似せたわけぢゃないんですが^_^;。トランス・クリティークは名著です。

シリア情勢が大きく動きました。4日にシリア政府軍の空爆後に、サリンに似た中毒症状が見られたことで、化学兵器の使用が疑われたことを受けての懲罰ってことのようですが、疑惑段階での軍事行動は問題です。子ブッシュ大統領がイラクが大量破壊兵器を開発中という嘘の情報で開戦したことを思い起こさせます。当時は独仏両国が反対に回ったのに対し、今回西側諸国はこれを歓迎したわけですが、いち早く支持を表明した日本の立場は微妙です。

米中首脳会談が行われている中でのミサイル攻撃ということで、北朝鮮問題に対する警告の意味を指摘されてますが、その割にロシアなどへ行われた事前通告が日本には為されなかったわけで、日本政府の希望的観測の域を出ません。むしろ国連安保理でロシアと連携することが多い中国が口出ししにくい米中首脳会談のタイミングを利用したってのが実際でしょう。実はここにトランプ政権の性格を示す鍵があります。

レーガン大統領に比較されることが多いトランプ大統領ですが、就任後の政権運営を見ると、むしろニクソン大統領に近いと言えます。今回のシリアへのミサイル攻撃で言えば、ジョンソン大統領時代に泥沼化したベトナム戦争を終結させる過程で北爆を強行したりカンボジアへ戦線を拡大したりした迷走あたりと似た対応です。

実際は欧州諸国が主張するアサド政権排除とは一線を画し、深入りを避けています。どうもアサド政権の化学兵器使用に関する官僚のプレゼンに義憤を感じたということのようです。そしてホワイトハウスの政治任用ポストのなり手が見つからず、議会承認も遅れていて空席が多いことが影響してるようです。だから逆にトランプ大統領の脊髄反応的な対応が表へ出たってことのようです。

日本としてはむしろシリア情勢を他山の石として、朝鮮半島有事で米軍の北朝鮮攻撃が起きた時の混乱をシミュレーションする機会でもあります。おそらく韓国国内の反応で賛否が分かれ、日米韓一枚岩の対応は無理でしょう。当然在日米軍基地への北朝鮮からの報復攻撃も起こりますから、日本国内も混乱して収拾がつかなくなることになります。軍事オプションは慎重であるべきですし、対北朝鮮でアメリカが強硬策に出ることは止めないといけません。

思い起こせば大統領選勝利宣言の場でTPP永久離脱を表明したのも、オバマ大統領の任期中に批准できなかったことで、NAFTA再交渉よりもハードルが低いですし、大統領就任後の大統領令連発も、大統領令は問題があれば議会が無効法案を成立させて無効化したり司法が差し止めたりできるので、実効性よりも有権者へのアピールの性格が強いと見ることができます。それが証拠にオバマケア修正法案に関しては議会との調整の果てに撤回しておりますが、これも単純にオバマケアを葬り去りたいのであれば、廃止法案ならば議会多数派の共和党の賛成ですんなり通っただろうに、、修正法案としたために、共和党保守派の賛同が得られず撤回に追い込まれたんですが、その結果、オバマケア継続が決まり、歳出が確定したことで、予算審議はむしろやりやすくなってます。トランプ大統領ってホントは隠れリベラル?

この辺はビジネスマンらしく難易度を意識したリアリズムなんでしょう。同時に従来の保守とリベラルの対立構図の中で経路依存的な議論しかできない政治家たちを戸惑わせているとも見ることができます。ニクソン大統領が米ドルの金交換停止や頭越しの電撃訪中で、オイルショックに始まる産油国カルテルをオイルダラー還流の枠組みで実効支配し、中ソ対立に乗じて一つの中国政策でソビエトとの分断を進め、現在に通じる地政学のフレームを作ったわけですね。日本にとっても沖縄返還交渉関連の密約で深く関わりますし、アメリカ側が沖縄返還のバーターと考えていた日米繊維交渉の約束を破った日本への不信感が、その後80年代以降のジャパンバッシングへとつながったとすれば、当時の佐藤政権の不始末でもあり、その意味で従来の対米追従路線を離れられない日本の安倍政権のしょーもなさにはため息しか出ません。

改革の本丸と目される税制改革ですが、これイギリスのシンクタンクが提案する法人税の仕向け地課税制度が踏襲されると見られますが、これに関してあまり正しく認識されていないようです。法人税の課税方法には大きく分けて居住地課税と源泉地価税の2つがあり、前者は企業の本社所在地での一括課税でアメリカはこれですが、多くの国は付加価値を生み出した地域で課税する後者となります。問題は違う制度が併存する中で企業の多国籍化が進んでいることで、居住地課税国の企業が源泉地価税国に生産拠点を置いて本国へ逆輸入するケースでは二重課税になりますし、逆のケースでは課税逃れにもなり得ます。そこで国境調整として、前者であれば源泉地価税分を控除した差額が居住地で課税されるという形になります。後者に関して源泉地国企業が居住地国に現地法人を置くことで課税逃れを防ぐ必要があります。

更に問題をややこしくしているのが各国の課税ベースの違いと税率の違いで、これらを組み合わせることで、パナマ文書で問題となったタックスヘイブン問題が生じるわけです。タックスヘイブンの場合は付加価値を生み出さない金融取引を利用して低税率国や地域へ富を退避させるわけで、一方で新興国やEUの周縁国などで外資誘致のために法人税減税が競争的に起きていることもあって、各国の税収の空洞化が進んでいます。その結果米企業に生産拠点の海外移転のインセンティブを与える結果となりますし、残る企業も課税特例による政策減税をロビーイングして税の軽減を画策するという複数ルートで税の空洞化が進み、税の所得再配分機能が失われていく現実があります。

それを変え得る課税方法として、仕向け地課税が提案されていて、米共和党で実現の模索がされているものです。WTOルールでEUの付加価値税や日本の消費税など間接税に例外的に認められている税の国境調整の仕組みを法人税に盛り込み、グローバル化に対応して輸出に対しては税の還付を、輸入に対しては公助抜きの課税とすることで国境調整を図る税制で、少なくとも国内で製造可能な製品の海外移転不利にします。加えてキャッシュフロー課税とすることで、形式上直接税となりWTOルール違反の可能性があるという提訴に対して利益課税でなく間接税だと主張できるという目論見です。

キャッシュフロー課税はそれに留まらず、複数年に分けて焼却される減価償却の一括償却と同じ意味になりますし、有形資産に留まらず知財やのれんなどの無形資産も同様ですから、投資全般を阻害しないという意味もあります。加えて人件費も控除対象で、この点が付加価値税と大きく違う点で、つまり低賃金国への生産移転は不利になるという意味で、国内雇用も守るという大統領選の公約と整合性があります。

また国境調整の結果仮にWTO提訴や報復課税がされたとしても、結局有効な報復手段は同じ仕向け地課税を導入するぐらいしかないわけで、それはむしろ望むところ。移転税制で税収確保に苦しむ多くの主権国家にとって問題解決の道になるというわけですね。EUにしろNAFTAにしろ主権国家の上位組織を置くという意味では主権制限の要素があるわけですし、各国の税の空洞化問題も含めて、ある意味クリティカル共同体としての主権国家の復権ということになりますから、反グローバル化という批判も当たりません。

加えてアップルやスターバックスで問題になった税逃れに関しても、未来分は新法人税で捕捉される一方、過去分を10%の軽減税率でみなし課税するリバトリエーション税を課す法案を用意しており、新法人税の前座として議会に諮って成立を目指してます。こちらはオバマケア修正法案で反対に回った共和党保守派も賛成に回ると見られており、トランプ税制改革の成否を占うことになりそうです。

問題はこうして相当額の税収増が見込めるわけですが、それを原資に減税やインフラ投資の財源とする目論見ですが、大統領選で訴えた法人税15%までは届きそうにないということ。共和党案の20%も苦しく、25%程度がせいぜいではないかと言われております。加えてリバトリエーション税で利益の海外留保が無意味化しますから、米企業が一斉に留保資金を本国送金すると、為替がドル高に振れてしまうという点ですが、むしろ新税制で輸入物価にかかる上昇圧力を緩和するとすれば、国民生活的には問題ないということになりそうです。

それと3月に利上げし、年内3回の利上げを示唆して緩和の出口を探るFRBの動き如何では、ドル高が進む可能背もありますが、その根拠となる米景気の回復基調にやや異変が。

米市場の変調、自動車業績に重荷 販売減速・膨らむ奨励金  :日本経済新聞
以前から指摘されていた問題ですが、サブプライム自動車ローンと販売奨励金で新車販売に下駄を履かせた状態が続いた結果、中古市場に車が溢れて値崩れして、元々リセールバリュー頼みのローン利用者にとっては、転売、買い替えのサイクルが停滞するわけですから、それが新車販売に跳ね返っている状態で、丁度不動産サブプライムローンと同じ構図です。ただ規模は小さく、金融危機には至らないと見られていますが、新車販売の停滞は生産の縮小を通じて米景気後退のトリガーにはなり得るわけです。ただしそうなればFRBの利上げスタンスは見直されるでしょうし、むしろ低すぎる失業率でインフラ投資が滞ると言われる中、景気後退は悪い面ばかりではありません。

そうなるとテキサス新幹線や北東回廊リニアの建設を目指すJR東海にチャンス到来?とはいかないのが現実です。トランプ税制では結局建設でも車両製造や保守でも現地調達を基本にしなければなりませんが、高速鉄道の建設や運営をこなせるサプライチェーンを立ち上げるのは困難を伴います。実質貨物鉄道で欧州以上に衝突安全の基準が厳しいアメリカですが、逆に言えば日本式の繊細な構造の高速鉄道の建設は未体験ゾーンとなるわけで、日本のリソースを使うと課税される新税制では不利になるわけです。インフラ輸出に前のめりな日本ですが、そうそううまい話は転がってはいないわけです。東芝が買収したWHの誤算もスリーマイル事故で原発建設が停止した結果、サプライチェーンが崩壊してコストを膨らませたことにあります。無理しても同じ運命が待っているだけでしょう。

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Saturday, January 07, 2017

タックス・ウォーが始まる

トランプ劇場は年を越えて続いておりますが、就任前からこれほど楽しませてくれる、もとい^_^;話題の多い米大統領は稀有の存在です。ま、歳も改まりましたし、今年の展墓ぷらしきことを書いとくか。まずはこれ。

初夢トランプ占い(5)税制 法人税下げ競争 再燃 規制緩和は国内優先か :日本経済新聞
天下の日経新聞が良くもこんな恥ずかしい記事を載せるなあ。トランプ税制に関して幾つか断片的な情報は耳に入りますが、それを理解してイメージを構成する力量が日経に記者にはないようです。簡単に言えば予告されている法人税減税の中身が、単なる税率下げではないってことです。いやこれアメリカに限らず、欧州やアジアで法人税減税を競い合うような状況はあるんですが、自国の税収を減らすことが簡単にできないことぐらいわかりそうなもの。税収中立の原則に従って税制そのものを見直しているんですが、日経を含め日本のメディアではその部分がすっぽり抜けていて、税率だけを比べるような表層的な報道ばかりです。

アメリカでも直近の歴代政権はほぼ例外なく法人税減税の論点整理をしており、子ブッシュ政権時代にはスウェーデンなどの法人付加価値税まで俎上に載せられましたが、主に議会のねじれがあり、また保守、リベラルを問わず議員がロビー活動に晒される中、結局実現しませんでした。しかし論点の掘り下げ作業そのものは行われているので、トランプ氏のようなぽっと出の大統領でもまともなプランをまとめられるし、議会を説得できれば実現可能性はそれなりにあります。幸いというか、大統領選と同時に行われた議会選挙で共和党が上下両院で過半数を占めており、加えて中身次第で民主党議員の賛同も得られる可能性のあるプランならば議会を通る公算はあります。

で、トランプ氏のこれまでの主張から敷衍して、トランプ氏が狙うのは国内産業の復活であって、ある意味わかりやすいですし、加えてアップルやスターバックスで問題になったアメリカ企業の租税回避策をやめさせることです。ブッシュ政権時代の対テロ戦争で資金源を断つ目的で規制強化して、例えばマカオのバンコ・デルタ・アジアの北朝鮮関連の預金を封鎖して金正日政権に打撃を与えたりしたわけですが、その流れでマネーロンダリングの拠点としてのタックスヘイブンの金融機関にアメリカ国籍の個人と企業の口座情報開示を迫り、見える化されたことで、アップルやスタバの租税回避まで明るみに出たわけです。あと例のパナマ文書のリークですが、これがいろいろ謎な部分がありまして、中国接近を狙うイギリスへの牽制のほか、プーチンや習近平の身内や知人、アイスランドの現職首相などの個人名が晒されましたが、いずれも当時のオバマ政権と対立したり意に添わなかったりする人物ばかりというところに政治的な意図が見え隠れします。ただしこれが英国民にBrexitを決断させた可能性もありますが。

てなドロドロの状況で、漏れ聞こえるトランプ税制では、法人税率が35%から20%になるとか、キャッシュフロー課税になるとか、輸出分の売り上げを除外できるとか、逆に輸入は海外現地法人が立地国に支払った税金の還付を認めないとか、いずれも断片情報としては聞こえてきます。はっきり申し上げますが、この程度の断片情報からトランプ税制の枠組みを再構成することは、アメリカを含む世界で進む税制に関する議論をフォローできていれば可能です。上記の日経記事が恥ずかしいというのはそういう意味です。

法人税率を下げるために課税ベースの拡大は世界の常識で、日本でも民主党政権時代に、虫食い状に課税ベースを蝕んでいる租税特措法減税の見直しが議論されましたが、当時の経団連とメディアが叩いて阻止されました。租税特措法減税は例えば設備投資減税にしろ研究開発減税にしろ、企業の申告によっていますから、実態が見えにくく、当局も当該企業も国民の批判に晒されることのない聖域だったわけですが、そこを踏んだ民主党政権がバッシングされたわけです。しかし世界の常識とはかけ離れた話です。加えて法人減税は海外からの投資を呼び込む意図もあるわけで、その意味では日本のように租税特措法で当局と阿吽の呼吸が取れる国内企業に有利な仕組みの見直しは避けて通れません。

でトランプ税制で法人税率を20%に下げるのも、課税ベースの拡大によって行われるわけですが、その際にキャッシュフロー課税が導入されるんじゃないかという観測がされてます。これ簡単に言えば減価償却による無税の資金留保は認めない代わりにキャッシュアウトを伴う設備投資は奨励されるから、設備投資が活性化して国内産業の復活を後押しするというわけです。

あと輸出の売上計上除外は事実上輸出分の法人税減免になり、日本の消費税に相当する付加価値課税がなく輸出還付金がないアメリカにとっては、言ってみれば貿易のイコールフッテイング税制となるわけで、高関税を課せばWTOに提訴されて敗ける可能性もあり、現実的には難しいですが、国内税制を弄って同等の効果を狙うのはあり得ます。仮にこれがWTOに提訴されても、そのときは付加価値税の輸出還付を行っている国を逆提訴して対抗するつもりでしょう。当然日本も対象になります。

そして輸入課税ですが、これアップルやスタバなど海外で資金留保している多くの米多国籍企業にとっては、海外生産を見直さざるを得なくなる上、米連邦政府にとっても、莫大な税収増をもたらす可能性があります。これを原資に老朽化が進むインフラ投資を積極化するというシナリオにリアリティが出てくるわけです。そんな背景を日本のパワーエリート達は理解できているのでしょうか。

トランプ氏介入、トヨタにも メキシコ投資に「あり得ない!」  :日本経済新聞
これ日本財界の賀詞交歓会でトランプ景気でイケイケムードの中、豊田章男社長がそれでもメキシコ工場への投資は予定通り行うと述べた直後のツイートだったってこともあり、一転財界人を慌てさせたようですが、上記の背景が見えていれば、フォードがメキシコへの工場移転を撤回した理由と共に、違った反応になったはずです。とりあえずトヨタはトランプ氏にアメリカ経済のメンバーと認められたとも取れ、ある意味メキシコに工場作ると損するぞという忠告と受け取ることも可能です。「メキシコに工場を作っても米国内の雇用は減らない」といった反論をしてますが、トランプ氏はそんなこと聞いてないんで、アメリカ国内に投資を呼び込もうということです。ある意味そのための法人税減税でもあるわけです。はっきり申し上げて、日本以外のグローバルエリートにとって自明のことすら、日本のパワーエリート達は理解していないということがバレちゃったわけです。企業の租税回避は各国とも悩みの種だけど、こうして自国に税収を引っ張ろうとしている状況はあるわけで、これ恥ずかしいを通り越して日本の未来が危ないぞ。

ただ誤解のないように申し上げておきますが、私自身はトランプ支持でも何でもないですし、おそらくトランプ改革は失敗するんじゃないかと踏んでます。特にインフラ投資に関しては、既に完全雇用に近い現在のアメリカで、財政出動で公共工事を積み増しても、震災後の日本と同じように深刻な人手不足に見舞われるだけの可能性があります。ただしアメリカは従来移民受け入れで人手不足をクリアしてきたわけですから、移民排斥を公言するトランプ氏はわざわざそれを難しくしているわけです。公共事業拡大の必要性と難しさを示すこんな報道も。

NYで列車脱線、100人超負傷 大半が軽傷か  :日本経済新聞
NYメトロノース傘下のロングアイランド鉄道は昨年10月にも事故を起こしておりまして、しかも今回と似たようなターミナル駅での暴走事故で、日本のATSに相当する保安装置があれば防げた可能性がありますが、収益に結びつかないということで鉄道会社は投資に及び腰です。連邦政府の補助が必要ではないでしょうか。一方でこんな話題も。
「幻の地下鉄」に学ぶインフラ投資の試練  :日本経済新聞
100年前に構想されたNY地下鉄セカンド・アベニュー線ですが、大恐慌やww2で計画が中断。戦後も市財政の破綻で事業化が遅れに遅れてやっと2007年に着工されたものの、人手不足で工事はべた遅れ。クォモ市長が発破をかけて昼夜突貫工事の末、異例の元旦開業となり、試乗したニューヨーカーたちも驚きとともに喜びを分かち合ったということですが、これだけならいい話で終わりですが、既に人手不足は顕在化していて、今後公共事業の拡大の困難さを示してもいるわけで、喜びも半ばということになります。こんなことも踏まえながら、トランプのアメリカがどうなっていくか、興味は尽きません。

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Sunday, December 25, 2016

死ななきゃ治らないナントカ

クリスマスです。ハロウインのときのエントリーで指摘したように、日ロ首脳会談での領土交渉の進展はありませんでした。これロシア側からのサインが出てましたが、予備交渉の過程で引き渡し後の領土に米軍基地が置かれる可能性を問われて有り得るとした返答で態度を硬化したとされますが、ソビエト時代から言われていたことの確認に過ぎませんし、沖縄の普天間基地の移転先の辺野古の反対運動や北部訓練場変換に関連した高江ヘリパッドの建設強行に対する反対運動に対して、日本政府が強行している姿勢を見て、日本への主権の引き渡しは無理と判断されたというのが実際のところです。日ロ関係は日米関係に規定されるのが現実です。

加えて言えば択捉島へのミサイル配備問題ですが、これ地対艦ミサイルってところがミソです。つまり標的はあくまでもオホーツク海での外国軍用船の軍事行動をけん制するためで、ロシアの核戦略と関連します。ロシアは保有する核弾頭の数を保持しつつSLBMへの転換を発表しております。オホーツク海にはSLBM搭載原潜を潜ませており、その太平洋側の出口ということですね。これがあるからシリアでのロシア軍の軍事行動に対してアメリカも文句を言えないわけで、核抑止力を効かせながら局地戦を睨んだロシア軍の部隊編成の小規模化とも連動します。そして支援を得たシリア政府軍による反政府勢力の制圧は時間の問題というところまで来ています。正邪の判断を横に置けば、ロシア軍改革は大成功といえます。

あと鉄ちゃん的蛇足ですが、津軽海峡を国際海峡とするためにここだけ領海3カイリに設定しているのは津軽海峡を潜航航行するソビエトの核搭載原潜の通過を現実的に阻止できないことから便宜的にそうしているわけで、現在もロシア原潜の日本海から東シナ海への航路として機能させることが、海洋進出を進める中国へのけん制になるので、維持されています。青函トンネルは日本の鉄道で唯一施政権外エリアを通過する存在としての意味があるわけですが、有事の輸送路となるインフラのメンテナンスを経営不振なJR北海道へ丸投げってのも危ういところです。

こういうことが頭に入っていれば、今回の日ロ交渉で領土問題が1ミリも動かないのは自明というわけです。期待をにじませるメディア報道はおそらく官邸からのリークでしょうけど、逆に領土問題の解決困難を国民に印象付けたわけで、結果的に領土抜きの経済連携となりました。クリミア編入を巡る対ロ経済制裁を一部緩和した形ですが、全面解除ではないからロシアから見ても不満の残る結果であり、大盤振る舞いした割には成果の少ないものになりました。

誤解のないように申し上げますが、私自身はそれでも極東やシベリアの開発を巡る日ロの連携はやるべきだという立場です。できれば日ロ間のガスパイプラインや電力連携線の整備は、日本のエネルギー政策に革新をもたらします。是非やるべきです。むしろ今回のことで領土領土とうるさいめんどくさいウヨどもを黙らせることができれば成果あったと言えます。あれ、安倍政権褒めてるwwwwwww。

一方混迷を深める南スーダンを巡って異変が。

南スーダンへの武器禁輸決議案、安保理で否決  :日本経済新聞
南スーダン情勢の緊迫化で大量虐殺の可能性ありとする武器禁輸の安保理決議で中ロと共に日本が棄権に回り、8ヶ国の棄権で必要な得票数に届かず否決されました。アメリカからは棄権しないよう働きかけがあったにも関わらずですから、アメリカからは非難されてます。日本政府の言い分は武器禁輸で南スーダン政府を刺激する方が危険というロジックですが、自衛隊をPKO派遣しているからということですね。

しかしそもそもPKO法では戦闘地域への派遣は禁止事項ですし、現地情勢次第で撤退を決断しなければならない局面なのに、国連が派遣する文民を警護するという変な理屈で所謂駆け付け警護(意味不明な用語ですが)を新たな任務とするという逆の対応を取っています。同じくPKO部隊を派遣する中国に対するライバル心からか、既成事実の積み上げか意図は不明ですが、現地で起きているのは石油利権のイスラム勢力との分離を狙ってアメリカが後押しした謂わば傀儡政権の南スーダン政府の暴走の結果であり、アメリカの尻拭いを中国と共同で日本の自衛隊が担うって構図はどう考えてもおかしいわけで、頭壊れてないか?

この構図は欧米が関与した紛争の多くで見られるもので、ジョージア(グルジア)紛争といいウクライナ紛争といい、親欧米派の裏に米保守派議員やCIAの関与が指摘されてます。またアラブの春に乗じたリビアの反政府勢力への英仏の支援で結果的にカダフィ政権を排除し、シリアでも反政府勢力へのCIAによる支援はもはや公然の秘密で、資金や兵器がダーイシュ(イスラム国)に流れて混乱しているわけです。大量破壊兵器のウソが暴かれたイラク戦争もですが、こういうろくでもないことを繰り返してきた欧米流リベラリズムへの懐疑が、Brexitやトランプ大統領を生んだわけで、大手メディアによる反Brexitや反トランプキャンペーンもこの文脈で見ると読み解けます。加えて欧米諸国のこの手の工作は昨今必ずしもうまくいっていないことも。時代は確実に変わりつつあります。

あと原発関連でいくつかありますが、これを取り上げます。

三菱重工と原燃、アレバに出資で最終調整  :日本経済新聞
福一事故を受けて安全対策の強化が求められて原発事業の採算性が悪化した結果、こういう妙なことが起きます。儲からないからといってやめられない。確かに廃炉や廃棄物処分などでやめられちゃ困るんだけど、コスト面で原発が事業として成り立たなくなってきています。もんじゅの廃炉も決まりましたが、高速炉は廃棄物を減らせる可能性があるということで開発は続けるというのですが、日本が大量のプルトニウムを保有する理由がなくなるという方が大きいのでしょう。もう一つこれ。
東電の原子力事業、再編相手公募へ 経産省有識者会議が提言  :日本経済新聞
f福島の賠償と廃炉で青息吐息の東電と組むメリットはほぼ皆無です。天然ガスなどの燃料調達のために東電と合弁でJERAを設立した中部電力からして東電と組んだことを死ぬほど後悔してるってのに、公募で再編相手が見つかると考える有識者とやらの眠たい議論を続けるのは、東電を破綻処理しなかった結果です。あーうましか。

一方でこんなニュースも。

鉄道が送電会社になる日 電線そのまま活用  :日本経済新聞
実は以前、このエントリーでJRの直流送電網を利用した電力託送事業の可能性を指摘したことがあります。記事はえちぜん鉄道の事例で、沿線の過疎化で収益確保が困難なTローカル私鉄の新たな収益源としての取り組みですが、うまくいけば大手私鉄やJRへ波及することも期待できます。

背景として元々鉄道は負荷変動が大きいがゆえに、電力会社から嫌われ不利な契約条件を余儀なくされているのですが、加えて技術革新で回生ブレーキが常用されるようになり、古い饋電システムではむしろ負荷変動を助長することもあり、固定買い取り制度(FIT)でも鉄道の回生電力は除外されました。そんな中で大手私鉄は変電所にNAS電池やキャパシタなどの蓄電装置を置いて負荷の平準化をしたりしてますが、ローカル私鉄ではそういった設備投資も単独では難しい中で、送電事業で託送料徴収して収益源とすることでクリアしようということです。ささやかなチャレンジですが、直流送電の特徴を生かして直流発電となる太陽光の電力を受け入れるなどして量の確保ができれば、結構使えるビジネスモデルになります。

九電ショックで売り先を失った太陽光発電の受け皿となれば、萎んだ太陽光発電の再活性化の可能性もあります。そして大手やJRにまで波及すればですが、原発の廃炉費用を託送料へ上乗せしようという経産省と電力会社のゴマカシを阻止できる可能性もあります。加えて隠れたメリットも。

電力回生ブレーキでせっかく省エネを実現しても、それを活かせない現在の直流饋電システムですが、例えば3,000Vの高圧直流で饋電してDC-DCコンバータで降圧して架線に供給する直流版AT饋電のようなシステムが可能ならば、変電所の集約と複数の機電区分への電力供給によって、負荷変動自体を平準化するシステムの可能性です。設備の合理化メリットと共に、大電力故に制御が難しくエアーセクション事故のような饋電系トラブルが増えている首都圏のJRにおいて、防止策になるということが期待できるんじゃないかということです。饋電系トラブルの多いJR東日本がチャレンジしてくれないかな。

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Sunday, May 22, 2016

五輪霧中

2020年の東京オリンピックの雲行きが怪しくなってきております。特に2億円超の「コンサルタント料」問題は、下手すれば東京開催返上の可能性すらありますが、国内報道ではその辺の言及がなく、危機感が足りないかも。

そもそも発覚の仕方が異常で、元々ロシア陸連のドーピング疑惑を捜査中に、渦中のIOC幹部の息子の会社に2億2,000万円が振り込まれていて「これは何だ?」というのですから、笑えない。東京開催決定の前後2回に分けての振り込みは賄賂性を疑わせるということで、フランス捜査当局が本気になったものです。

パナマ文書で話題のタックスヘイブン問題が、それ自体では違法性を問えない一方、コンサル料を受け取った会社は、アジアのタックスヘイブンとして知られるシンガポールが所在地で、しかもすでに解散しているとか。裏金ではない証明はほぼ不可能でしょう。JOCが潔白を主張するなら、騙されたとして詐欺で訴えるならわかるけど、守秘義務を盾に解散した会社に操を立ててるっておかしいです。この辺説明付かないなら捜査の進展で返上を迫られる前に、東京開催を自ら取り下げる方が良いかも。オリンピック自体は代理開催でロンドンが有力らしいけど、開催されるなら、出場選手には場所が変わるだけの話です。

以前から気になっていたのですが、オリンピック関連で様々な利権がうごめいている印象はありましたが、生易しいものではないようです。例えば新国立競技場問題では、神宮の森の再開発問題とリンクしていて、ザハ案の迷走がそれをあぶりだしています。

新国立競技場、隈案に決定の裏に利権の闇|Close Up|ダイヤモンド・オンライン
ちょっと複雑なんですが、元々宗教法人明治神宮をはじめ三井不動産など民間地権者の所有地ながら、国内風致地区第1号に指定されて15mの高さ制限が課されていた神宮の森に3棟の高層ビル計画が持ち上がり、それを可能としたのがザハ案の新国立競技場で、それを露払いとして高さ制限が大幅に緩和された新たな都市計画が東京都によって策定され、新高層ビルの日陰となる都営霞ヶ丘アパートは公園化されることになり、住民の追い出しで揉めて裁判になっています。

公園化は再開発で必要になる公園スペースの確保の意味もあります。ところが露払い役のザハ案がコストがかかりすぎると批判を浴びて白紙撤回され、再コンペとなったわけですが、この先がややこしい。隈研吾氏と伊東豊雄氏の2案に絞り込まれ隈案で決着したのですが、隈案はザハ案でサポートした日建設計がサポートしており、データ流用を巡ってザハ氏から知的財産権侵害を指摘されるなど火種は残っております。問題になった聖火台はサブトラックと共にザハ案では別に作る計画だったので、隈案では反映されていなかったって、そうなるとパクり疑惑は深まるのか?-_-;

で、問題なのが伊東案の落選理由。伊東案ではコスト削減の別メニューとして人工地盤上の公園計画を省略した案を提示した結果、東京都側の委員が反発したとか。曰く「今更都市計画を変更できない」だそうな。これ神宮の森のトリプルタワー計画と読み合わせると腑に落ちます。高層ビル建設のためには所定の公園面積を確保しなければならないんですから。伊東氏にしてみればコスト削減のための別メニューの提示で撥ねられた格好で、良心を示したのにとかなりお怒りだとか。

もちろんこれらは状況証拠だけですが、そもそもザハ案自体が神宮の森の高さ制限緩和のダシに使われた可能性もあるわけで、オリンピックという夢の祭典はここまで食い物にされているのかと愕然とします。本来公共施設のデザインコンペでは、建設の目的や予算、立地場所の法規制などの建築与件を明示して行われるはずですが、新国立競技場ではそれがなかったようです。結果として径間500mを超える巨大キールアーチという物理法則に挑戦するようなザハ案が採用されたわけで、意図を感じざるを得ません。ザハ案に批判が集まって白紙撤回された一方で、旧国立競技場の解体を拙速に進めたのも、既成事実を作って後戻りできないようにしたと見えます。

それでもコスト面での世論の批判もあり、舛添都知事によって競技施設計画の一部が中止されるなどしたのですが、その舛添都知事が今批判を浴びています。

高額出張や公用車利用… 舛添都知事に「公私混同」批判  :日本経済新聞
批判の許が専ら与党の自民公明陣営からというのが匂います。何だか猪瀬前都知事のときのように、辞めるまでバッシングが続く感じです。しかも猪瀬氏は都知事選を控えて徳洲会から5,000万円を受け取ったわけで都知事としての責任を問われる構図だったのですが、舛添氏の政治資金絡みの問題は都知事になる前の話ですし、都の公金や公用車の使用に関しては、一応都の基準の範囲内です。ま、これも石原都知事時代の蕩尽で基準が緩くなっていたのかもしれませんが、当時一部で批判されたものの、今回のようなバッシングにはなっていません。早い話舛添氏は虎の尾を踏んじゃったのね。だから都議会も100条委員会を開きたくても公式には理由がないわけで、あとはひたすら叩いて辞めるのを待つってことじゃないでしょうか。てなわけで五輪霧中^_^;。

これらは公共事業では普通に行われてきた手法ではあります。だから時々揉めるわけで、最たるものは成田闘争ですが、辺野古の新基地でも同様のことが起きています。ほとんど報道されませんが。そんなときにこんなニュース。

沖縄女性遺棄 日米首脳会談で再発防止要請へ  :日本経済新聞
政府も抗議の姿勢は見せているものの、沖縄での世論の沸騰に広島訪問を決めたオバマ大統領や日米同盟の先行きを心配って変だろこれ。

えーと、正確には公共事業ではないんですが、先日市川市で住民の反対で保育園の建設断念のニュースがありましたが、報道が明らかなミスリードで、近隣住民が子供の声にうるさいと苦情といったニュアンスで報道されましたが、住民の言い分は、事業主体の社会福祉法人の説明が不十分で市川市も対応が悪いこと、特に前の道路が狭く、保育園ができて児童の送迎のマイカーが増えれば通行が困難になることが一番の問題ということで、そうなると道路の拡張など都市計画から見直さないと保育園一つ作れないというわけで、児童の歓声の苦情が事業者や行政の見直しの口実に使われたということのようです。神宮の森の再開発や辺野古の新基地とは逆の構図ですが、利権絡みでやらなければならないことは何が何でもやるけど、そうでもない案件は人のせいにしてやめる。自分たちは傷つかないというわけですね。

昨今、東芝の粉飾問題や三菱自工の燃費不正など、日本企業の劣化を示すニュースが続きますが、その流れの中で共通する問題は、リーダーの不作為や現場軽視に、優秀なはずの現場が疲弊しているのではないかという疑問です。オリンピックも元々既存施設の活用でローコストでエコな大会を目指していたはずが、予定になかった国立競技場の建て替えを皮切りに神宮の森の再開発とどんどん話が大きく膨らむ一方、人手不足で人件費はつりあがる一方、ゼロ年代のリストラで職人をリストラで社外へ出した結果、横浜の傾きマンション問題などが起きるわけですが、その時に指摘した技術者の高齢化と若者の減少による技術の伝承問題もあり、現場の能力低下も疑われます。

技術の伝承問題はそもそも国鉄改革で誕生したJRで指摘された問題で、国鉄末期の新規採用手控えとJR化後も余剰人員対策もあって採用手控えが続いた結果、40代の中堅社員が極端に少ない歪な年齢構成となっており、例えばJR福知山線事故のときの若過ぎる運転士が日勤教育などの懲罰的処分を恐れて指令への虚偽報告をしたりしたことが、事故の遠因となっていると指摘されてます。昨今特に気になるのが饋電系のトラブルで、3月にも高崎線籠原駅での碍子の経年劣化によりDC1,500v電流の地絡事故で連動装置などが焼損した事故では、復旧に2日半を要し影響甚大でした。碍子の経年劣化そのものは阻止できないので、劣化を早く見つけて交換するしか対策がないのですが、海岸沿いなど環境的に劣化の早い場所は現場で経験的に把握されていて、重点的に点検、交換が行われていました。籠原の現場がどうだったかは不明ですが、技術伝承がどうだったかなど、不明な問題は残ります。

き電系統の事故は復旧に時間を要するのは2015年8月の京浜東北根岸線桜木町事故でもありましたが、このときはエアセクション停止による前後き電区間の短絡による大電流で架線が溶断したものでした。京浜東北根岸線は保安装置がATCで、停止禁止のエアセクションには止まらない仕様だったのに、花火大会で駅の混雑対策でホームの混雑が引けてから次の電車を入線させるという確認運転をしていたことが仇となり、手動運転で停止禁止エアーセクションに留まってしまったものです。運転士はエアーセクションの停止禁止は把握しておらず、典型的なマン―マシン系トラブルとなりました。お金かけて高度な保安装置を入れればよいわけではないわけです。むしろシステムの構成が複雑化すると、事故対応も複雑化して想定外の結果を生むこともあるわけです。国鉄改革から間もなく30年を迎える中、JR各社は難しい段階にあるようです。

おまけですが、鉄道ジャーナル6月号の曽根悟教授の高崎線事故の解説が面白かったのですが、首都圏のJRでき電事故が目立つのは、日常的に大電流を扱っていることと関係がありそうです。供給電力が15連3列車が重なると10,000Aにもなるのでは、正常電流と異常電流の区別がつきにくく、自動遮断の精度を上げられないということですね。結果的に地絡事故が起きても回路の自動遮断ができずに大事故になるということで、難しい課題です。

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Sunday, December 06, 2015

傾く日

テロ事件やCOP21など、さまざまニュースがありますが、今回は経済です。まずはこれ。

7~9月期実質GDP、年率0.8%減 2期連続マイナス  :日本経済新聞
元々2期連続マイナスは予想通りですが、これを景気後退とせずに景気回復途上の踊り場とするメディア報道は全く意味不明です。戦時中の大本営発表で大惨敗のミッドウエー海戦報道と見まごうばかりです。内需はマイナスですが、消費はそこそこ健闘したものの、設備投資が想定を下回ったもので、企業の先行き慎重姿勢は明白です。2015年度の内閣府試算(+1.5%程度)を実現するためには10-12月期、16年1-3月期ぞれそれで+4.7%程度が必要というわけで、2期連続のV字回復が必要というほとんど不可能な状況です。それどころか2014年度に続く2年連続マイナス成長の可能性もあり、明らかにアベノミクスは破たんしてます。

にもかかわらずその検証もなしに新三本の矢とかでGDP名目600兆円を目標に掲げる胡散臭さに呆れます。しかも16年度から推計方式の見直しで企業の研究開発費をコストから付加価値に変更するということで、これだけで20兆円下駄を履かせるインチキぶりです。加えて3%の名目成長率はザックリ23年で2倍になります。上記の下駄を履かせた状態では2020年頃には達成可能な数字ではありますが、異次元緩和でも現実の名目値は2%にも届かない状況です。ま、単に目先を変えて誤魔化しているというのが実際でしょう。

流石に近頃リフレ派は静かですが、どうしたんでしょうか。その中でアベノミクスを評価したアメリカのクルーグマン教授は、異次元緩和でも賃金が上がらない日本の現状を見込み違いとして事実上間違いを認めました。クルーグマン教授は元々ケインズ派で、財政出動や金融緩和で完全雇用が実現すれば賃金が上がるというケインズの理論から導き出した見解だったのでしょうが、日本で起きている派遣やパートなどの非正規雇用の拡大と正規雇用の縮小という歪んだ労働市場の現状を知らなかったのでしょう。この点はアメリカでも最近はIT業界の高給と他業種の賃金低迷という二極化が進行していてイエレンFRB議長を悩ませているなど、世界的に進行している現象ではありますが。

ことほど左様に安倍政権の経済政策は出鱈目ばかりなんですが、法人減税を強引に進めていて、賃上げのためという説明がされてますが出鱈目です。アベノミクスの円安効果で最高益を謳歌する経団連加盟の大手企業こそ賃上げが実現しているものの、円安で原材料費の値上がりに苦しむ中小企業はむしろ賃金が下がっているのが現状ですが、法人減税の財源に赤字企業への外形標準課税というのは、最高益を謳歌する大企業の法人税を減らすために赤字の中小企業から税を取るという話で明らかにおかしいですし賃金上昇にもつながりません。携帯料金の値下げ問題にしても、家計の通信費シェアが上昇していることを問題視しているようですが、これもスマホの普及で2台持ちが増えた結果であり、それだけ携帯の利用が深度化したものということで、高市総務相と有識者会議は梯子を外された格好です。アホクサ。

てなこといろいろありますが、きりがないので本題です。

中古マンション価格頭打ちか 不動産市場の変調 :日本経済新聞
これ割と重要なニュースなんですが、マンション販売が好調で、既に数字上はバブル越えの高値成約が続いていたんですが、種明かしすれば中国人による投資用の購入が相場を押し上げてきたものが、7月の上海株ショックを受けて資産の整理にシフトしたと見られます。その結果マンションが売られ、中古マンション市場の在庫が積み増す状況となっているわけですね。

投資用というのは賃貸などで運用することを意図したもので、Airbnbなどの民泊と呼ばれるシェアルームも含みます。政府の音頭取りで大阪市や大田区で民泊解禁の条例が成立しましたが、現実はすでにその先へ進んでいるわけです。で、比較的新しい物件が中古市場に在庫として積みあがれば、当然新築マンションの売れ行きに影響が出ます。というわけで、好調なマンション市況の終焉というわけで、2007年のミニバブル崩壊に近い状況になりつつあるというわけですね。

似てるのはそれだけじゃなくて姉歯事件で揺れた建設業界をまたしても傾きマンション事件で大揺れです。しかも予想通りというか、データ改ざん自体は業界全体に蔓延していたことが明るみに出てにっちもさっちも状態。やはり姉歯事件を受けて検査の厳格化で工事が滞って完成不況と言われた2007年とそっくりの展開です。しかも実際の工事は姉歯事件とほぼ同時進行で、発覚が今になっただけですが、奇しくも当時第1次安倍政権の時代。これ偶然ではありません。しかも横浜の傾きマンション事件でも三井住友建設と旭化成建材の対立が出てきて事態は混とんとしてます。

杭打ちミス、設計か施工か 三井住友建設と旭化成建材が対立  :日本経済新聞
元々1年以上前に発覚したマンションの傾きですが、売り主の三井不動産レジデンシャルは消極的な対応でぬらりくらりしていたのですが、今年に入って横浜市の検査があって杭が支持層に届いていないことが報告されると、一転全棟建て替えを言い出しましたが、ブランド防衛に動いたと見られます。費用は通常建設会社の負担となりますが、元請けのグループ企業である三井住友建設にかぶせることを回避するためか、通常は表へ出ることはない2次下請けの旭化成建材を住民説明会に引っ張り出すなど謎の行動に出ます。どうも旭化成は嵌められたようです。

旭化成建材がデータ改ざんしたのは事実ですが、現場責任者は杭は支持層に届いていると主張し、旭化成は三井住友建設に再調査を申し入れてますが三井住友はそれを認めないという態度で膠着しています。全棟建て替えも管理組合全体で4/5、各棟で2/3以上の賛成という高いハードルを越えられずに補修だけで終わってあいまいな決着となる可能性もあります。そうなると真相は藪の中。問題は未解決のままとなります。

件の現場責任者も元々は3次下請けの社員で工事期間中旭化成建材に出向していた身分ということで、現在も全国の現場を渡り歩いている状況ですが、これはゼロ年代のミニバブル期の建設業界の状況からこうなったということは言えます。当時公共工事は圧縮傾向の一方、容積率緩和などで民間工事は盛んでしたが、工事費には大きな開きがあり、民間は公共の半分という極端なケースすらありました。その中で建設会社はリストラに勤しみます。高給取りだけど工事期間以外は仕事がない技術者を社外へ出し、社内に技術者がいない状況で、現場の監督業務まで下請けへ丸投げし、社員は現場から上がってくるデータを取り込んでパソコンとにらめっこという状況になります。いつしか現場では期日までにデータを元請けへ上げることが仕事というずれた状況になったわけです。

しかも若年人口の減少もあって技術者自身の高齢化は進み、若手の補充がないから技術は伝承されず尻すぼみどころか、今回のように現場の技術者に責任転嫁するような建設会社には協力する技術者がいなくなる可能性もあります。ある意味三井住友建設は虎の尾を踏んだわけです。さて、こうしてじり貧状態で、震災復興も半ば、五輪特需や国土強靭化などでリソースの枯渇は目に見えております。その意味ではマンションブームの終焉は微妙な時期の出来事という皮肉な結果ですが。

これかつて国鉄末期に赤字を理由に採用手控えの結果、今になって40代の中堅社員が不足し技術の伝承に支障するJR各社と同じ過ちとも言えます。逆にJRも今が正念場ということですが、残念なニュースあれこれが。

電柱折れ一時運転見合わせ JR横浜線、工事中に  :日本経済新聞
4月にも山手線・京浜東北線の神田駅付近で架線柱が傾いて止まりましたが、今回は横浜線の鴨井駅付近で工事中の架線柱が折れたということで、架線周りのトラブルは復旧に時間がかかるだけに繰り返してほしくなかったのですが、保守作業員の確保も含めt下請けに依存する傾向が強まっており、対策は難しいところですが、解決策というべき未来にも問題が。
JR東、最新技術に誤算 山手線新型車両トラブル  :日本経済新聞
INTEROS(インテロス)という新システムで各種センサーで荷重や線路や架線の状態を監視し、制御に反映させるシステムを搭載したものの、物見高い鉄ちゃん達の集中乗車でシステムが破たんしほろ苦い営業デビューとなりました。試運転中に死重搭載を定員の40%相当でしか行わなかったなどが指摘されてますが、おそらくコンピュータでのシミュレーションでは問題なかったから省略したのでしょう。最近では自動車メーカーの新車開発でも同様のことは行われておりますが、いくらなんでも場合によっては定員の3倍超の荷重すらかかる通勤電車でなめてかかったと言われても仕方ないところ。その辺を突っ込むベテランが開発チームにいなかった可能性はあります。

最後のおまけ。

東芝、情報開示後ろ向き 米原発子会社1156億円減損発表  :日本経済新聞
以前から指摘されてきたWHののれん代減損問題ですが、やっと減損処理は認めたものの、本体の連結決算には反映させず、情報開示が不十分と批判を浴びています。安倍政権肝いりのコーポレートガバナンスコードもどこ吹く風。そういえば東芝も知る人ぞ知る三井グループ。似ちゃうのかなぁ。

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Sunday, November 22, 2015

放置国家の呆の支配

先週はパリの同時多発テロで大変でしたが、たちまち世界は9.11後の雰囲気に。当時イラク戦争に反対したフランスのオランド大統領の前のめりぶり概要です。一方議会野党の保守派と急進左派はそろってシリア空爆に反対しているという日本ではわかりにくい構図ですが、それ以上に気になるこのニュースです。

対米協力一歩前へ 首相「南シナ海に自衛隊検討」  :日本経済新聞
米中のパワーゲームに日本も混ぜろとでも言いたいのか。南シナ海へ進出したいのか?

中国の岩礁埋め立てと軍事基地化は確かに問題ですが、似たようなことはほかの国もやっていて、中国だけを責めるわけにはいかないのですが、埋め立て地を起点とする領海の主張は明らかな国際法違反なので、アメリカはそこを指摘し、実際にイージス艦を派遣し航行させたわけですが、事前に米中首脳会談前日の9/24に軍事対話の実施を調印し、イージス艦派遣に際して中国と協議を行っていますし、フィリピンやベトナムの領海エリアも事前通告の上航行しており、中国名指しにならないよう配慮しています。言ってみれば大国同士のさや当てのようなもので、大国同士のパワーゲームに過ぎないのですが、日本の政治家でそれを指摘したのは与野党含めて野田聖子だけっておい、他の奴らキンタマついとんのかい?

あともし仮に南シナ海への自衛隊派遣が実現すると、尖閣諸島の守りが手薄になるのは言うまでもありません。リソースは有限なので、むしろ中国にとってはおいしいところ。それ以前に日米防衛ガイドラインで米軍のプレゼンスが後退していることはほとんどメディアも報じませんが、中国公船の挑発は、アメリカと事を構えたくない中国が、アメリカが出てこないと見ているからなんですが、逆に軍の艦船を派遣しないのは、アメリカの顔色を窺ってはいるわけで、アメリカでも日米安保による巻き込まれ論が保守派内でも言われております。日本の独り相撲です。

近代戦争は国の工業力を背景とした総力戦という性格があり、ww1やww2が典型的です。その結果敵国の工業力を破壊することが戦略上求められるわけで、ww1でドイツ飛行船によるロンドン空爆から始まり、ww2の広島と長崎への原爆投下も同様です。かくして近代戦争は戦勝国も含めて参加国のダメージが大きすぎるということで、戦後東西冷戦もあって大国同士は直接戦争しないという暗黙の了解が成立します。その代り周辺国の代理戦争は収まらず、兵器性能が向上し殺傷能力を高めているだけに、紛争当事国の疲弊は尋常ではない状況になります。

という国際社会のコンテクストを踏まえれば、ロシアがウクライナイに干渉しクリミアを併合したのも、そうした軍事大国同士のある種の相場観から導き出されたもの言えます。そしてロシアのシリア空爆は二正面作戦に割けるリソースを持たないロシアのウクライナへの干渉は低下するし、またダーイシュ(イスラム国)という共通の敵を設定することで、ロシアと西側種国の対立も軟化するという連鎖になります。ロシア機撃墜とパリ同時多発テロで関係はさらに補強されます。おそらくクリミア問題は沙汰止みになるでしょう。そんなロシアに「北方領土返せ」と言って取り合ってもらえないのも無理もないところ。善悪を超越した外交の機微に疎い日本の出番はここにもありません。

で、シリア空爆ですが、ダーイシュ支配地域の石油精製施設への攻撃は、敵の工業力の破壊という戦略になりますが、ダーイシュは石油だけではなく、営利誘拐その他の資金源もあり、また「ユーフラテスの三日月」と言われる穀倉地帯を抑えていて、広大な農地への空爆はほとんど意味がありませんし、地上戦で奪回するにしても、戦線が間延びして対応が難しいということもあります。加えて古代イスラム帝国で異教徒に課した人頭税を徴収していると伝えられています。おそらくこの部分はイラクのバース党残党が担っているのでしょうけど、問題は異教徒の範囲でして、イスラム教シーア派や、スンニ派でもイスラム帝国再興という自分たちの大義に協力しない「堕落した」者たちも含まれてるかもしれません。人頭税を払わなければ容赦なく粛清されるという形で、恐怖の統治が行われているとすれば、難を逃れるシリア難民が大量に出ても不思議ではありません。加えて空爆もありますし。

そのシリア難民をドイツを中心にEUが積極的に植え入れる姿勢を見せていることは、人頭税の減少につながりますからダーイシュにとって面白くないわけで、また空爆への報復の意味も含めて、ロシア民間機やパリの劇場など、攻めやすいところを攻めているという意味で、ダーイシュのテロは戦略的です。殺害された実行犯の1人にシリアの偽造パスポートを持たせたのも、欧州の難民排斥の世論の刺激を狙ったものでしょう。

元々主権国家ならざるダーイシュとの闘いは非対称戦なわけで、ダーイシュは堕落したエジプトの官吏を篭絡したり、若年失業率が高止まりしている欧州で不満を抱く若者をリクルートするなど、ダーイシュ側のリソースをあまり消費せずに犯行に至ったわけです。それを支えるのがSNSなどのネットインフラですが、PS4やⅩboxなどのゲーム機のオンラインゲームのチャット機能を使った情報交換が行われていたという報道もあります。仮に通信を傍受してもネットゲームを楽しんでいるようにしか見えないわけで、犯行を事前に察知することは困難です。

というわけで、パリのテロは背景に先進国の所得格差の拡大があるわけで、結局ここを何とかしないとテロリストに付け込まれるわけです。空爆で解決できる可能性は皆無です。それでもロシアを含む大国同士で共通の敵を作ることで、格差問題のような厄介な国内問題を逸らすことはできるわけで、リベラルなはずのオランド大統領の過剰反応を見ると、暗澹たる気分になります。資本主義社会では所得格差の拡大は不可避で、対策の必要性を指摘したピケティの母国でもあるんですが。国内の格差問題という意味では、日本にとっても対岸の火事とは言えません。

その後の報道で実行犯の若者の実態も明らかになっておりますが、移民でフランス語が不自由でファストフード店ぐらいしか勤務先がなく職業的スキルを身につけるチャンスすらないといった中で、簡単にリクルートされているわけです。元々敬虔なムスリムでも何でもない若者が、イスラムの大義を教条的に吹き込まれればどうなるかということですね。このことの深刻さは、日本で言えば根拠不明の「日本の伝統」にコロッと騙され不満のはけ口を在日韓国人などへのヘイトスピーチで紛らすネトウヨやウソ八百の大阪都構想再びとやりたい放題の橋下シンパみたいなものとでもいえば腑に落ちるところでしょうか。99%役に立たなくても一般教養が重要なのは、簡単に騙されないことと言えます。大阪の人、民度が問われますぞ。

フランスと言えばこんなニュースも。

フランス北東部の高速列車脱線、10人死亡  :日本経済新聞
テロの翌日ということで、テロも疑われたようですが、単なるオーバースピードということでした。不可解なのは高速新線と在来線の連絡船部分で元々速度制限されていたはずですし、保安装置は働かなかったのかなどの疑問はありますが、続報がないので判断がつきません.。報道の通りならかなりお粗末ですが。

ただ日本でも気になるニュースがありました。

「自家用車タクシー」特区で解禁 交通網弱い地域中心、高齢者・訪日客の足に :日本経済新聞
所謂白タク解禁ですが、過疎地の交通に利用って、そもそも過疎地ではマイカーのトラフィック自体が少ないわけですから、ライドシェアが解決策になるわけがありません。むしろ現行の道路運送法78条、79条で自家用自動車の有償運送が定義されており、実際過疎地の乗合バス廃止代替などで活用されています。日本でライドシェアが解禁されていないのは、鉄道やバスなどの公共交通の役割が大きいことと、とマイカーのトラフィックが輻輳する都市部ではタクシーとの利害調整が必要なことに加え、安全輸送が担保できないとか白タクその他の雲助行為の懸念があることなどなどの理由が大きいでしょう。また多くの都市圏でタクシーの台数制限撤廃で過当競争となり安全輸送が脅かされる事態となって、逆に台数制限が課されているのが現状です。おそらくuberを意識した特区構想でしょうけど、現行法がどういう状況なのかを無視して何でもかんでも特区で規制緩和とは法治国家があきれます。

法の支配を価値観として中国に対抗心を燃やす安倍首相ですが、放置国家の呆の支配が実態です。

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Sunday, August 09, 2015

混雑は飛んで来る

「桜木町で架線切断」と聞くと、戦後五大事故の桜木町事故を連想してしまうんですが、何の因果でしょうか。

京浜東北線、架線切れ運転見合わせ 駅間で停車も  :日本経済新聞
工事作業を誤って垂れた架線に電車が接触してショートして出火し全焼したものですが、戦時設計の元祖走ルンです^_^;モハ63の構造上の問題で、満員で乗客は逃げられず被害を大きくしました。事故を受けてパンタグラフ付近だけだった屋根の絶縁キャンパスを全面張りに改めたり、二段目がj固定で開口面積が狭い三段窓を全上昇式に改造したり、内開きだったために混雑が災いして開けられなかった貫通扉を引き戸に改造したり、乗客が操作できる非常用ドアコックが設置されるなどして、対策されました。

今回はみなとみらいの花火大会で混雑した結果、先行列車の遅れから停止した列車が、停止禁止のエアセクションで停止し、再力行時の大電流でショートして架線が切断し電車に接触したものですが、現代の電車は絶縁も難燃化も強固なものの、停電で長時間の運転見合わせとなりました。また乗務員の制止を聞かずにドアコックを開けて線路に降りた乗客が多数いて、線路が並行する東海道線や横須賀線もトバッチリを受けてしまいました。桜木町事故の因果は巡ります。

エアセクション停止による架線切断は2007年、さいたま市の高崎線でも同様の事故がありましたが、今回防げなかったのはATC設置区間だったからという謎な話。

京浜東北、停止禁止区間から発進 架線ショートし溶ける  :日本経済新聞
つまりATCでエアセクション停止を回避するようシステム化されていたのですが、花火大会の混雑で遅れが生じ、列車間隔を目視で低速運転する確認運転のために、ATCならば停止しない筈のエアセクションに停まってしまったわけです。他の区間は高崎線の事故で停止禁止の音声を流す装置が設置されたのですが、京浜東北線はATC区間ということで省略され、運転士もエアセクションを認識していなかったということです。マンマシン系インターフェースには思わぬ盲点が潜んでいます。

大量輸送に特化していて、とかくそれを揶揄されることが多い首都圏の通勤電車ですが、架線接触で燃えなかったという意味で、安全性は確実に進化しています。その一方で混雑率の数字上は改善されていても、定員超過が日常化している混雑の方は相変わらずというのが何とも複雑な心境にさせられます。世界的にも東京名物満員電車は有名で、昨今増えた訪日外国人観光客の体験乗車という話も。毎日混雑に揉まれる通勤客にとってはありがたくないインバウンド需要です。オリンピック大丈夫かい。スーパーシティの暑い夏です。期間中は積極的に休暇を取りましょう。

今回の事故もみなとみらい花火大会というローカルイベントが引き金を引いたわけです。花火見物は単独よりグループ利用が多いから、グループが固まって奥へ詰めないとか、浴衣に団扇で乗降にも時間がかかるとか、様々な要素が重なった結果かもしれませんが、オリンピックで不慣れな外国人客がグループで移動とか、混乱は覚悟した方が良いです。マジで。慣れた通勤客はらば混雑してもカオスにならないで済みますが、一見客にそれを期待することはできません。

あと忘れてならないのが、今回のように元々輸送量の多いJRが止まった時に振替輸送先となる私鉄が受けきれない問題で、今回は横浜戦も止まったこともあり、いつもの京急に留まらず、横浜市営地下鉄ブルーラインにも振替輸送で乗客が殺到し、やはり混雑により遅延が生じます。当然状況によっては振替輸送先での人身事故などの二次災害も考えられます。日本の鉄道の弱点は混雑ということもできます。定時運行率が高いのも、遅延が発生すると実質的に輸送力が低下して混乱が長引くからということもあります。

加えて「ワタシニホンゴワカリマシェーン」な外国人観光客が巻き込まれるわけですから、ただでさえ省力化でぎりぎりのマンパワーで回している鉄道事業者にとっては災難です。結局自動改札の一部開放などで混乱を回避するしかないというスマートでない対応を迫られます。しかもSuicaなどのIC乗車券は振替輸送対象ではないわけですが、そもそも欧州で見られる運輸連合方式の共通運賃制度ならば、振替輸送そのものが不要なんで、五輪を契機に検討してほしいところです。

にも拘らず、交通政策基本法に基づく国の交通基本計画でも、抽象的な文言が並び、地域公共交通ネットワークの強化などのお題目は並ぶものの、運賃共通化には踏み込んでいません。その一方でLRTやBRTなどの表層的な定義(LRTは低床の次世代路面電車とかBRTはバス専用道や連接バスなど)をしたり、過疎地のデマンド交通を含めて裏付けが不明な数値目標が並んだりで、これでは単なるメニューの羅列に過ぎないわけで、具体的な改善につながるとはとても思えない代物です。

運輸連合方式による共通運賃の阻害要因は主に2つで、1つは鉄道事業法などの事業法で厳格な独立採算原則が与えられており、例えば同一事業者で鉄道とバスを兼業していても、両者それぞれで独立採算を求められます。その一方で同じ鉄道同志での内部補助は自明の前提とされているという縦割り構造があり、まして異なった事業者間の調整を困難にしていることがあります。実際に乗客から収受した運賃の分配が難しいわけですね。

もう1つは独占禁止法との関係です。運輸連合方式は独禁法上は価格カルテルと見做されますから、違反行為となります。それを公共交通の利便性向上でひいては利用率を高めることで公共性があるということを個別具体法で定義してやる必要があるわけです。ところが交通政策基本法にも地域公共交通活性化法にもそのような条文はありませんから、仮に事業者間の調整ができたとしても、独禁法の例外として公正取引委員会に認めてもらう必要があります。しかし現時点では法的根拠はないわけです。

東京のような大都市で、しかも複数の交通事業者が関わっていて、且つ鉄道事業者同士でも賃率に開きがある状況では五里霧中ではありますが、特定都市鉄道整備促進特別措置法(特特法)で定義する手もあります。共通運賃エリアでは鉄道各社の上限運賃を超える水準の共通運賃を設定し、各社の賃率に応じて分配することで、超過利潤分の残額が出るようにして、その一部をフィーダー輸送を担うバス事業者へ配分し更に残りを特特法の本来の目的である輸送力増強投資の原資として非課税積立し、混雑緩和に必要な投資を後押しするという仕組みにすることが考えられます。高めの運賃設定は、中心部への過度の集中を抑制する意味もあります。

人口減少で通勤通学客が長期的に減少が見込まれる中で、鉄道事業者に大規模投資を控える傾向は否めず、混雑率は長期的に低下しても、混雑の解消は見通せない現状を変えるには、これぐらい思い切ったことをしないと無理でしょう。まして東京名物満員電車の体験乗車を目指す観光客が世界から集まるって、経済を支える現役世代の悲鳴が聞こえます。コンドルは飛んでゆくけど、混雑は飛んで来る(涙)。こんなインバウンドは嫌だと声を上げましょう。

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Sunday, June 07, 2015

あーせい、こーせい、そーせい

てなわけで、前エントリーのジングウ・ファミリアが迷走してます。結局デザインコンペで選ばれたザハ・ハディドとの契約を解除して、どうやら屋根なしスタジアムに仮設スタンドで当座をしのぐようです。問題の根源にあるザハデザインから離れたのは半歩前進ですが、そもそもデザインコンペ当時から指摘されていた問題に目をつぶったまま突っ走った文科省や体協の責任は重大です。

ザハデザインの実現可能性の低さは、あの屋根が径間500mの橋と考えればわかりやすいのですが、川や海なら別の場所で組み立てた橋桁を船で運んでクレーン船で設置という方法が使えますが、神宮の森では使えない手法ですから、現地に巨大鉄工所を期間限定で設置するしかないですし、大量に鋼材などを搬入するためには、広範な周辺道路の整備も必要です。そのために費やされる費用は3,000億円から1,600億円に減額見直しされた本体建設費を上回るものになる上、神宮の森の保全にも悪影響確実というわけで、実際に着手するまで気付かなかった無能ぶりにうんざりします。負担を断った東京都の対応は正しいと言えます。

てなニュースの一方、今週も起きた重大インシデント。

京浜東北線電車が線路内の看板に衝突、けが人なし 点検作業員、誤って置く? - 産経ニュース
空自ヘリ・ANA機・JTA機、あわやのトラブル 那覇空港 | 沖縄タイムス+プラス
名鉄運行続行に疑問 中部運輸局、停電「本来は故障扱い」:社会:中日新聞
京浜東北線で保線作業員の勘違いで並行する東海道線に設置する筈の作業看板を京浜東北線に置いて電車がと今田もの。2つ目は全国版のニュースで大々的に取り上げられましたが、管制官の離陸指示を自機に対してと勘違いした自衛隊ヘリの過失ですが、異常事態を咄嗟の判断で回避したANAとJTAのパイロットはお見事です。3つ目は電気連結器カバーが外れて雨水侵入によるショートが原因んで電源ダウンした列車がブレーキが作動せずオーバーランしたものですが、名鉄の対応にいろいろ問題が指摘できますが、詳述は避けます。

こういうニュースに接して思うのは、日本の人口減少ン0インパクトが、マンパワー不足による労働力の劣化につながっているのではないかという危惧です。人口減少といっても、生産年齢人口の減少ですから、少子化対策は解決策になりません。むしろ高齢者の増加と共に扶養人口の増加をもたらし、少数の現役世代への負担を加重させる悪手です。以前から指摘していますが、労働力の減少は資本装備の増強である程度カバーできるんですから、その方向で対策を打つ必要があります。新国立競技場のようなリソースの浪費は許されないという自覚が必要です。

同様のリソースの浪費は昨今の地方創生ブームにも感じます。そんな中でこんなニュースを取り上げます。

45年ぶりにSL疾走、ファンら見守る 鳥取の若桜鉄道:朝日新聞デジタル
鳥取県の三セク若狭鉄道の活性化策として、JR西日本から無償譲渡されたC12型SLを活用した沿線活性化策の社会実験ですが、車席がなく従来若狭駅構内の体験運転などに試用されていたものを、本線運転しようというわけで、車籍のないC12を走らせるために本線を線路閉鎖して走らせるという手続き上はトリッキーなやり方です。車籍を取得するには保守検査体制を整えて鉄道事業運転規則に合致した体制を組む必要がありますが、自治体主導の三セク鉄道には高いハードルです。

面白いのは撮影地の所謂お立ち台を有料化したことで、単発のイベント運行ではありますが、定期運行を睨んでキャッシュフローを生み出す努力は評価できます。ただしSL運行自体は大井川鐡道のほかJR山口線、真岡鉄道。秩父鉄道などで定期運行され、それほど新鮮味があるわけではありません。競合がある中で、若桜へ足を運んでもらえるにはどうするか、そこまで考えなければうまくいかないわけで、今回の社会実験が一過性のイベントで終わるか、指定日だけでも定期運行にこぎつけられるかは予断を許しません。そしてSL運行の老舗の大井川鐡道にも容赦のない現実が降りかかります。

大井川鉄道、再生支援申請へ 沿線の地域づくりに影響  :日本経済新聞
70年代に名鉄が資本参加し、SL運行で観光鉄道として集客力を発揮し、ローカル私鉄の勝ち組とも目されていましたが、沿線人口の減少には抗えず、また関越道事故を契機とするツアーバス規制強化で、新金谷から大井川鐡道へ乗り継ぐツアーバスが激減し、経営の屋台骨が揺らぎ、利用の少ない一般列車の減便に至ったのですが、島田市をはじめとする地元自治体への支援要請も不発で、政府系ファンドへの支援要請となりました。スポンサーとして北海道のホテル事業者のエクリプス日高が出資する一方、名鉄は撤退します。

地元自治体との関係でいえば、観光鉄道としての成功体験故に自治体が動かなかった可能性があります。つくづく交通政策基本法の元となった交通基本法の民主党案にあった移動権が盛り込まれなかったことが残念です。観光鉄道としての成功は決して鉄道の未来を保障するわけではなく、地域との関係を定義できなければ、生きた鉄道としての命運は開けないということですね。移動権に関しては憲法に定める基本的人権の拡張概念として定義することで、憲法に紐付されれば、憲法そのものの改正をよりやりにくくする意味もあり、現在安保法制絡みで国会が迷走してますが、所謂護憲派も「憲法を守れ」だけではなく、憲法を生かした立法を心掛けてこなかった結果が今の混迷ということですね。ちなみに安保法制に関しては、9条だけが問題ではなく、内閣の権能を定義した73条に軍事に対する指揮権が明記されていないことも問題になります。

ま、こんな状況ですから、某大都市の名物市長ご執心の都市鉄道三セクでのSL列車運行の協力要請を大井川鉄道が断ったのは当然ですね。それどころじゃないわけですから。

というわけで、大都市と地方との関係でいえば無視できないニュースがあります。

25年の東京圏、介護施設13万人分不足 創成会議、41地域へ移住提言 政府、交付金で後押し :日本経済新聞
首都圏の高齢者集中で施設が不足するから、施設に余裕のある地方へ高齢者の移住を促すというのですが、高齢者ほど住み慣れた地域を離れたくないものですし、ましてインフラが整備された大都市部ほど生活しやすいということもあります。むしろ問題は地価が高いがゆえに施設の整備が思い通りに進まないし、介護職の賃金が低すぎて、地価が高い東京では生活できないなどといったことが問題なんで、これは例えば今後建設されるマンションを高齢者対応の医療や介護施設のテナント誘致を義務付けるとか、介護保険からの介護報酬以外に、都などが上乗せするとかやりようがあります。要は実際のニーズに合った社会保障サービスを実現させることであって、数合わせの移住計画などうまく行くわけないです。ま、こんなところに地方創生を打ち出す現政権の統制的な性格がにじみ出ています。あーせい、こーせい、そーせいじゃうまく行かんわ。


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Sunday, May 24, 2015

ジングウ・ファミリア

またしても重大インシデントです。

JR長崎線:わずか93メートルまで…特急同士が衝突寸前 - 毎日新聞
そもそもは下りかもめ19号と上り20号が肥前鹿島駅で列車交換予定だったところ、19号が肥前竜王駅手前で運転士が異音に気付いて緊急停止。異常なしを確認する間に肥前鹿島で交換予定の20号が1駅進んで肥前竜王駅待避線に停止。それを確認した司令員が19号に対して運転再開を指示したものの、19号の停止位置が信号機の真横でしかも停止位置の指令への報告が160mずれていたため、19号の一旦停止を確認してから本線側へポイント転換して通過させる予定が狂い、このような事態になったものです。軌道回路の信号システムの盲点を突くような重大インシデントです。

いろいろな論点がありますが、幹線である重要な長崎本線が肥前山口以西が単線区間になっており、平地の少ない地形もあって複線化も困難ですが、国鉄時代の投資順位の関係もあって、電化はされても複線化は見送られ続け、87年の国鉄分割民営化を迎えます。地方線区でありがちなことですが、民営化後の大規模改良は、本四架橋プロジェクトと坂出、丸亀両市の都市計画の絡みで民営化をまたいで実現したJR四国の高松―多度津間ぐらいのものです。

単線でも使い方如何で生かすことはできますが、そのために所謂1線スルー化という手法が多用されました。元々貨物列車対応で線路用地や有効長に余裕のなる駅構内の土地を利用して、駅本屋側を待避線にして反対側の本線を直線化して通過列車の駅進入時の速度制限をなくそうとしたわけですが、その結果上り列車と下り列車がどちらにも入れる進路構成になっています。必然的に信号とポイントの連動関係は複雑化します。それでも所定ダイヤならば信号現示とポイント転換をパターン化して自動化することもできますが、今回のように緊急停止などで運転整理が必要なケースで、情報の行き違いもあってこうなったわけです。有効長が長かったから衝突には至らなかったものの、きわどいところです。

また肥前鹿島のように元々の特急停車駅では1線スルー化は省かれてますから、19号の緊急停止のない所定ダイヤならば、列車の運行の変更に合わせて手動で進路を構成するようなこともなかったわけです。ヒューマンファクターの入り込む余地が大きくなったわけです。三島会社だけではないんですが、都市間輸送を担う幹線系統で単線区間故に生じる運転取扱い上の面倒な対応は、それだけコストにも跳ね返るわけですから、地方線区でも可能ならば複線化は望ましいところです。再発防止のためには列車選別装置あるいは列車選別機能を内応するATS-Pのような高度な保安装置と首都圏のATOSのような遅延に伴うダイヤ変更で連動関係の変更まで自動化したシステムが欲しいところですが、コスト面でシビアな三島会社では苦しいところ。まして株式上場で全社的にコストダウンの号令がかけられている状況ではなおさらです。何か間違ってますね。

今後は高齢化の影響も視野に入れなければなりませんから、JR九州が必要な人材を継続的に確保し育成できるかどうかも重要です。本来は装置化できるところは装置化していく方が望ましいところですが、逆に地場企業としての求心力を考えたら、本当に苦しいのはJR東日本かもしれません。既に車両や保安装置や饋電システムでメンテナンスフリー化を進めていますが、辛いのは就職先の多い首都圏で求人難の影響を受けやすい上に、現役世代の減少で通勤輸送の比重は下がるかもしれませんが、リタイアした高齢者の移動需要は増えこそすれ減ることは考えにくいところ。運転免許返上なども進むと思われますから、輸送機関としてのニーズの旺盛さは当分続くわけですから、省力化投資にまい進せざるを得ないわけです。そうして生まれた{”走ルンです”^_^;も世代を重ねています。

山手線の次期主力車として量産先行車が登場したE235系ですが、どこがどう新しいのかわかりにくいですね。大きな特徴は従来のシリコン系に代わる次期パワー半導体素子のシリコンカーバイト(炭化ケイ素SiC)素子の採用が挙げられます。シリコン系素子に比べて高耐圧特性に優れていて、高電圧が使える分、抵抗損失が少なく省エネとなる上に発熱が少なくメンテナンスフリーになるわけです。ムーアの法則ではないですが、パワー半導体の分野でもほぼ10年程度で技術革新が行われ世代を重ねる傾向がありますので、それに合わせて新形式を起こすのは合理的といえます。

とはいえ首都圏各線ではE233系が3,000両を超す大所帯となり、置き換える旧国鉄形もほとんど見られなくなりました。一方で特定線区への集中投入が進んだ結果、同一線区所属車の老朽化も同時に進むわけですから、置き換えるときにはまた大量発注が発生するわけです。そしてどうせなら利用客が多い最重要線区の山手線に新車投入すれば、玉突きでE231系500番台をねん出して他線区の輸送改善にもつなげられるわけです。既に1編成が移管された中央総武緩行線への転出が有力でしょう。さらにそこから発生する209系500番台やE231系0番台も、武蔵野線その他への転出と玉突きを繰り返し、北陸新幹線関連で並行在来線切り離し後も残る115系が最終的に淘汰されることになりそうです。

で、電装品の変更はそれに留まらず従来の電動車2両ユニットごとに制御装置という8M1Cの構成を4M1Cで電動車単独ユニットとなったことです。山手線向けはE231系500番台に合わせた6M5Tの編成構成で10号車だけサハE231-4620をサハE235-4620に改称して組み込んでいます。そのため総合車両製作所で開発した軽量化と強度向上を深度化した雨どい位置の高い新構体と外観が異なります。この新構体採用もありますし、系列の総合車両製作所への発注確保の意味もありますので、川崎重工への発注があるかどうかも見物です。川重はJR九州への売り込みをかけているようですが。

電動車単独ユニットなのにパンタグラフは2両に1基プラス編成1基の予備という構成はE233系に準じています。高等戦術でスベった207系900番台を思い出させます。山手線向けは加速度3.0km/h/sが要求されることもあり、E231系500番台と電動車位置や編成構成を踏襲したわけですが、他線区向けでは単独ユニットを生かした奇数電動車編成もあり得ます。またE233系の狙いの一つだったシステムの冗長性も、電動車1両単位でユニットカットできればより深化することになります。当面山手線向け以外が登場する可能性は低いですが、事故廃車が出た時の代替で新造の可能性はあります。多分それより相鉄都心直通線向けの仮称12000系が先でしょう。さて6M4Tか5M5Tか。

それとM単独ユニット化には、置き換えが遅れている地方線区向け新造車と足回りの共通化という副次効果もあります。更にディーゼル車の置き換え目的のハイブリッド車や烏山線のような非電化支線向けバッテリー車などもSiC素子の新システムへ移行できれば、省エネ効果を高められます。現状リゾートトレイン中心で、やっと仙台の仙石東北ライン向けにまとまった投入というレベルで、メンテナンスが困難で、JR北海道などで推進軸折損事故が多発する液体式ディーゼル車の置き換えが進まない状況に風穴が空く可能性はあります。構造規則で電車よりも検査周期が短いディーゼル車の検査周期延長にめどがつけば、一気に普及もあり得ます。大量の車両を抱えるJR東日本にとっては、車両の置き換えに伴うメンテナンスフリー化は効果絶大です。

あとE235系で密閉式モーターの採用が目新しいところですが、技術的には小田急4000系で採用されたもので、次世代モータ―としてメトロで全面採用されている永久磁石同期モーター(PMSM)は採用されませんでした。誘導モーター(IM)の経済性と鉄道車両向きの特性であるすべり周波数特性の活用が狙いでしょう。

PMSMは元々京葉線向けE331系で直接駆動(DDM)用に試用されましたが、トラブルが多かったようです。IMは固定子コイルの回転磁界による誘導電流が回転子に発生するため、熱が出るため、ブロワ―で強制冷却が必要ですが、そのために粉塵対策でフィルターが必要だったり、騒音源だったりという問題があったのですが、密閉状態で熱交換することでブロワ―を省略し静かなモーター音を実現するものです。この辺千代田線・常磐緩行線でE233-2000とメトロ16000の音を比べれば明らかです。これも新形式を起こしたことを契機に採用されたわけです。

というわけで、今後も10年程度をめどに新形式が登場すると思われますが、その時の車両需給や社会的要請を盛り込んだ新車が登場するわけで、趣味的には目が離せないところです。現状悩ましいのは交直両用車必須の常磐線水戸線系統に残る415系1500番台でしょうか。JR西日本がやったように205系あたりに交直機器を移植して改造するオプションはあり得ます。

それでも急速な高齢化に見舞われる環境変化に対して万全と断言できるわけではありません。何故ならば今後の高齢化は首都圏で集中的に起きることが予想されるからです。その意味で気になる首都圏のニュースです。

都に500億円の負担要請 文科相、新国立競技場整備巡り  :日本経済新聞
迷走が続く新国立劇場ですが、遂に2020年のオリンピックに間に合わないということで、スタンドを仮説に屋根を省略してオリンピック後に屋根とスタンドを作るということですが、それに加えて予算の膨張で都に500応援の負担を求めるとなりふり構わずの状況です。だーかーらー、無理だよってあれほど言ったのに。やーねーwwwwww。

ここまで泥縄の対応をしても、首都圏の高齢化は2020年以降に急速に進みます。工事の作業員の確保は簡単ではありません。かくして延々と工事が終わらない最悪の未来となり、タイトルのジングウ・ファミリアという新たな観光資源が(笑)。ま、深刻さはフクシマ・ファミリアには及ばないけど。あれ、誰か来たようだ。


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