鉄道事故

Sunday, November 04, 2018

社畜の国の移民政策

韓国徴用工の新日鉄住金に対する賠償問題ですが、これ日韓条約で政府間の賠償問題は解決積みとされた訳ですが、この訴訟は個人としての韓国人徴用工の日本企業に対する賠償請求というところがミソでして、私人同士の賠償請求権が政府間の条約によって無効にできるのかが問われていたのですが、下級審で認められ、今回は上告審ですから、余程の訴訟手続き上の瑕疵がない限りこうなるのは当然です。

新日鉄住金は韓国ビジネスへの影響を考慮して和解を模索していたようですが、日本政府が和解に応じないよう圧力をかけたそうで、結果確定判決に至った訳で、和解しとけばそれで終わった話。これで戦時徴用に関連した70社超の日本企業が訴訟リスクにさらされるわけで、私人同士の問題に政治介入した結果のオウンゴールです。賠償を韓国政府に肩代わりさせると息巻いてますが、これ逆に元々関心が薄かった韓国の国内世論に火をつける可能性があり、困ってるのは寧ろ韓国政府です。

台湾プユマ号に関してメーカーの日車がATP解除した場合に自動的に指令に連絡する回線が接続されていなかったと発表しました。事故との関連は不明ですが、一定時間指令がATP解除を把握していなかった可能性はあります。当局の発表が二転三転したのはそのせいかも。いずれにしても日車のミスが明らかになった訳で、ややこしくなってきました。

このところ日産やスバルの無視覚検査や神鋼のデータ改ざんに始まり、川重の新幹線台車枠亀裂やKYBの免震、制震ダンパーのデータ改ざんに至る様々な不祥事が明るみに出ている日本企業ですが、いずれも経営陣が把握していなかったらしいという共通点があります。経営陣が現場を把握できていないガバナンスの問題と捉えるべきでしょう。日産やKYBのケースは政府規制の妥当性に疑義があるという見方もできますが。

てな具合に官民共にガバナンスがボロボロの日本ですが、政府の無能ぶりは言い疲れたwwwwわけぢゃないけど置いといて、生産年齢人口の減少が日本企業の現場を追い込んでるんじゃないかという問題意識で考えてみます。で、このニュース。

単純労働 外国人受け入れ 入国管理政策を転換 法案閣議決定、国会論戦へ :日本経済新聞
この臨時故国会で通して来年4月から施行というスケジュールも無茶ですが、事実上の移民受け入れとなるのに、国の在り方を変える議論には程遠いと言えます。

問題はいろいろあるんですが、基本在留期間5年ですから、あまり込み入った複雑な仕事は任せられませんから、単純労働を担うことになります。特定業種1級と2級に分けて一応生産性向上や高齢者や女性の労働力率上昇でも尚足りない業種に限定し、具体的な業種は3年毎に見直し充足されれば指定を外すとしてますが、生産年齢人口の減少は男女問わず進みますし、働ける高齢者の増加も減ってきますから、結局いつまで経っても充足されず、寧ろ他の業種でも足りないとなって業界の陳情合戦になって政治介入の余地を与えます。

冷静に考えて、生産年齢人口の減少が毎年50万人として、減少分を外国人労働者受け入れで埋めたとしても、5年で帰国するんですから、以後は足りなくなる訳で、帰国者分の受け入れを増やし続けない限り実効性は無い訳です。しかもスキルを磨いて高度な技能を習得するインセンティブもない訳で、果たして現場のモラルが維持できるのか?疑問です。現状日本人で構成された職場でさえ不祥事ボロボロなのに、外国人労働者を受け入れてまともなマネジメントができると考えているとすれば認識が甘すぎます。戦時徴用工の二の舞の悪寒。

結局社畜の代わりはAIでも外国人でもできないんです。人手不足を前提とした事業の見直しができなければ沈みゆくばかりです。そんな現実を踏まえてこのニュースをご紹介します。

東急、鉄道分社がもたらした27年ぶり高値  :日本経済新聞
東急の鉄道分社ですが、沿線再開発やビル賃貸などの事業は本体へ残すそうで、ある意味鉄道の専門性故の分社ということですが、このところの停電トラブルなど鉄道事業でのトラブル多発が背景にあります。その原因として電気技術者などの求人案があることは上記日産の無視覚検査と共にグローバルプリズンのエントリーで取り上げました。

東急にとってはルーツとなる田園都市株式会社が荏原電気鉄道や武蔵電気鉄道の免許線を利用して目黒鎌田電鉄を立ち上げた過去への先祖返りの形ですが、今や主力は渋谷など都内愛開発が中心で、かつて注力した多摩田園都市は高齢化で曲がり角を迎えています。いずれ多摩田園都市でも駅を中心とした再開発が必要ですが、そのためには鉄道がきちんと機能し信頼回復を図るための分社ということで、腐っても東急というか^_^;、現場問題をマネジメントの問題と捉える意識が見えます。勿論吉と出るか凶と出るかはわかりませんが。

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Sunday, October 28, 2018

傾く台鉄

本題に入る前に、シリアで反政府ゲリラに拘束されていたジャーナリストの安田純平氏が解放され無事帰国しましたが、自己責任を言い立てる書き込みが多いことが信じられません。同胞が無事帰ってきたことを何故喜べないのか?政府の制止を聞かずに渡航したことや、政府に批判的な言動があるとしても、それ思想信条の自由、言論の自由の範囲内だろ。思想信条や言論を理由に助ける助けないという議論自体の選別のヤバさを理解できないでしょうか?

加えてカタール政府が支払ったと報じられた3億円の身請け金を理由に「テロリストに資金が渡った」と沸いてますが、事実そうだとしても、それはカタール政府とテロリストの関係だし、日本政府が単純に肩代わりできるものでもありません。ただしサウジアラビアとの対立で経済制裁を受けているカタールとしては、貴重な外交カードを得たことは間違いない訳で、ODAなどの形で着地点を模索するのは政府間の話し合いになるだけの話。国民としては専門家としての外交官に付託すべき問題で、首突っ込むようなことじゃありません。

一方で「政府は何もしてないのに」という批判が反対陣営から出てますが、仮に事実そうであったとしても、同胞の帰還を喜べないのか?という疑問が拭えません。悪いけど自称リベラルな皆さんも火種を撒いているとしか見えません。同胞の無事を喜びましょう。

で、本題。台湾で大事故が起きました。

台湾で特急脱線、18人死亡 負傷者160人超、日本人の被害なし :日本経済新聞
8両編成の特急プユマ号が脱線し、5両が転覆して死傷者多数となりました。一応日本人の被害は確認されておりませんが、日本人に人気の観光地でもあり、日本人が乗っていても不思議ではありません。

その後の当局の発表が二転三転しました。事故の30分前に運転士から車両の異常が指令に伝えられていたということで、製造メーカーの日本車両製造(日車)株が売られます。この日はNY市場の株安を受けて東証でも値を下げたタイミングですから、事故の影響がどこまでかは定かではありませんが。

その後脱線は速度超過が原因とされ、更に運転士が日本のATSに相当する保安装置のATPを切っていたことも台湾鉄路管理局(台鉄)から発表され、運転ミスということで日車は少し値を戻します。しかしその後対話政府の事故調査チームが運転士のATP解除が指令に報告されていたことが発表され、事故調査チームが台鉄の発表に不信感を明らかにします。加えて気になるこのニュース。

台湾脱線事故 2年で7回 赤字続く公営 安全意識足りず :日本経済新聞
公営で赤字体質の台鉄では、脱線事故が繰り返されていたということです。被害が軽微だったとしてきちんとした事故調査も行われ繰り返さてこなかった上に、赤字体質でメンテナンスが手薄だったことが窺われます。


で、事故を起こしたプユマ号用車両TEMU2000型電車ですが、カーブの多い台鉄向けに車体傾斜システムを採用しました。日本のJR四国8600型やJR東日本のE353系に搭載されているシステムです。台鉄ではプユマ号の前にJR九州885系に似た制御付き振り子車タロコ号TEMU1000型を投入していましたが、プユマ号はその後継です。制御付き振り子はJR四国2000型気動車と8000型電車で採用され、それぞれ後継に8600型電車と2600型気動車が登場して同じ運転時間で運用されてます。JR東日本のE353系もやはり制御付き振り子のE351系を置き換えています。

車体傾斜システムは振り子ではなく枕ばねに使われる空気ばねの空気圧を制御するもので、JR北海道キハ201系で採用され、特急車キハ261系が続きますが、201系では早い段階で車体傾斜制御を「やめ、昨今の事故続きで261系でも使用を止めています。元々制御付き振り子よりも安価なシステムとして「導入されたものの、制御の難しさやメンテナンスの問題から使用を諦めたようです。それだけ難しいシステムだってことです。

JR東日本でもE353系量産先行車を製作して暫く走り込みをしてましたが、車体を傾けるタイミングの最適化のみならず、圧搾空気を消費するシステムなので、過度に使用してコンプレッサー回しっぱなしでも追いつかないこともあり得るわけですから、その辺の見極めもあります。実際JR四国では高徳線に投入した2600型をカーブの多い土讃線への投入を断念してます。そういう意味でユーザーの使いこなしのスキルが求められる車両ということになります。

で、台鉄ですが、お世辞にもスキルが高いと言えなさそうですし、運転士と指令のやり取りから類推すると、おそらく何らかの理由で圧搾空気の消費が激しく、ブレーキ梃子を動かす元空気溜め菅の空気圧が低下して、ブレーキが込め位から緩めに戻らないブレーキ不緩解が起きた可能性は指摘できます。車体制御システムに原因があるかどうかはわかりませんが、ブレーキ込め状態で力行すれば所定の性能は出ない訳で、列車の遅れを気にして何とかしようとした結果のATP解除ではないかと考えられます。通常ならば停止してブレーキテストで異常なしを確認するという手順になると思いますし、乗客の証言として停車駅以外のところで停止した李再度走り出したりということですから、あり得ます。

それでも直らないならその場で停止したまま救援を待つのが正しい対応ですが、運行を続けたままでATP解除が運転士と指令で共有されていたってことは、信じられないほどの安全意識の欠如と言えます。台鉄の組織的な問題もありそうです。

思えば過去エントリーでも指摘しましたが、公社時代の国鉄は運輸省の指導下になかったという恐ろしい状況だったんですね。元々政府直営の現業部門で日本では軍部に次いで強い組織だった鉄道省が戦時の商工省や逓信省との統合の後、戦後現業部門を公社化して日本国有鉄道として、行政事務方が運輸省となった経緯から、公営私営の事業者は免許事業として運輸省の指導を受けていた一方、国鉄は公社化後も国の現業機関時代からの慣習を引き継いで自らの意志で事業を展開できる存在でした。その結果世論の反対を押し切って東海道新幹線を実現できたという面はありますが、行政の適切な指導の外にある状況だったわけです。

台鉄は戦前の台湾総督府鉄道がルーツで、所謂植民地鉄道だったわけですが、戦後中華民国政府に摂取されます。以来台北政府の現業部門として継続してますが、公社化を通して民営化する計画もあり、丁度日本の鉄道省時代に近い統治システムです。故に地形が険しく不便な東部幹線の建設や電化、重軌条化を進めるなど、設備投資も活発ですが、それだけ資産規模の拡大で収益がついてこない。加えて台湾高速鉄道や高速バス、国内線航空との競争にもさらされており、収支が厳しいわけです。

しかし投資に積極的な一方、赤字体質でコスト圧縮も求められるわけですから、現場にかなりストレスがある状況と考えられます。この観点から言えば、日本の国鉄民営化は「一応成功と言えるわけです。JR北海道の問題は、地方の容赦ない過疎化の結果でもあり、事業者としてのJR北海道に責任がある訳ではありません。問題は分割民営化の前提がこれだけ変化しているのに、見直しに動かない政府にあります。

あとおまけ。JR東日本のE351系は中央線高速化プロジェクトを睨んで投入されましたが、振り子車運行を想定していない中央東線で振り子を作動させたときのパンタグラフと架線の偏移の問題があり、台車枠から櫓を立ててパンタグラフを乗せるという無理目の仕様とした結果、これがトラブルの元となって所定の性能を発揮できなかった失敗作ではあります。加えて凝ったギミックを詰め込むためにコスト面から車体をスチール製としたために振り子車なのに重心が高いし線路も炒めるし、加えて高速化対応で最高速160km/hとした結果、加速が鈍くなりダイヤがタイトだという乗務員の指摘もあって歯車比の見直しで性能を下げました。技術力がるはずのJRでもこういう失敗はある訳で、使いこなせるかどうか分からない最新システムに飛び付くのは慎重であるべきです。

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Monday, July 16, 2018

北のスットコドッコイ

前エントリーの続きです。本題に入る前にこのニュース。

人口、最大の37万人減 生産年齢人口は6割切る  :日本経済新聞
死亡数と出生数の差の自然減が39万人で海外との転出入を加えて37万人の減少ってことです。当然ながら15-64歳の生産年齢人口の減少はもっと多いわけです。都道府県別では東京、埼玉、千葉、神奈川、の首都圏4都県と愛知県と沖縄県のみ増加ですが、そのうち自然増は沖縄県だけで、他の5都県は転入超過による社会増ですから、その分地方の人口減の勾配もきついわけです。

あと外国人の増加が16万人ってことですが、いろいろ問題が指摘される外国人技能実習生だけでも25万人を受け入れていて、その他留学生や高度スキルの就労ビザ対象者もいるわけですから、純増が16万人ってことは相当数の帰国外国人がいるってことです。移民や永住権取得が難しいからこうなるわけで、人手が足りないから外国人就労を拡大といっても、現実の生産年齢人口の減少には追い付かないわけです。人口減という現実を受け入れるしかないわけです。

この状況を踏まえて以下をお読みいただきたいんですが、事故や不祥事が重なって先行きが危ぶまれているJR北海道に未来はあるか?っていう話です。JR北海道もJR総連系のJR北海道労組が組織率8割を超える中で、JR東日本と明らかに異なる労使関係があるわけです。

元々赤字基調だからってことで経営安定基金が与えられ、その運用益で赤字を補填するスキームだったわけですが、90年代半ば以降の低金利によって赤字補填が果たせなくなり、基金の積み増しをした上で現状(独)鉄道建設運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)への預託で高金利運用という事実上の利子補給による補助金でどうにか最終赤字を回避している状況です。

加えて事故の原因となった老朽設備の更新も国の支援を得ながら進めている状況なのですが、事故や不祥事の背景として、JR北海道は益出しのために努力してきたんですが、その結果必要な人手確保がままならなくなり、それが事故の遠因となったり、データの錯誤に見られる不祥事につながったわけですね。その意味で強面の労組は役割を果たせなかった訳です。

JR北海道で起きていたのはおそらく労使の癒着だったと思われます。それ故現場の人手不足もゴマカシがまかり通る状況だったと考えられます。そんな状況を変えようとしたのが自殺した中島社長って話がここへきて出てきています。

そのために島田現社長を総務部長に据えて労組との交渉窓口の一本化を狙ったものの、JR北海道労組は反発して険悪になった状況で、事故や不祥事が重なって国交省の立ち入り検査を受けることになり、JR北海道労組も協力を約束していたものの、直後に札幌労基署による本社社員の36協定違反の摘発があり、労組側が態度を硬化して島田総務部長の関連会社出向を余儀なくされたという経緯がありました。それで追い詰められての自殺ではないかという見立てです。

本社社員もJR北海道労組に所属していたのだから、労組側が知らなかった筈はないと言われてますが、おそらくこれ本社社員だけの問題じゃなかったんじゃないでしょうか。各現場で人手不足が起きていて、36協定順守ところじゃなかったとすれば、そりゃ事故や不祥事も起きるし、労組側からの改善要求もあったはずです。しかし増収とコストカットに励む経営陣を動かせなかったという意味で、労組側からすればスルー出来ない問題ではあります。労使の癒着自体は日本の大企業で結構見られますが。

というわけで、国主導で島田氏の社長指名と設備更新補助金の交付が決まったものの、覆水盆に返らず、労使関係は険悪なまま、後ろ盾のない島田社長は指導力発揮もままならない中で、自力での維持が困難な線区を発表し、自治体にボールを投げたのが現状です。ただ現実的には冒頭の人口減のニュースに見られるように、北海道で言えば札幌都市圏以外の地域の人口減少は今後も続くと見るべきですから、その中でJR北海道が必要な人手を確保して現在の規模を維持できると考えるのは現実的ではありません。人口動態に合わせて身を縮めるのはほぼ唯一の現実解でしょう。

自治体にとっては青天の霹靂でしょう。元々人口減少が止まらず、財政再建団体に指定された夕張市はいち早く廃止を受け入れ、JR社員の出向など条件闘争で実を取った形ですが、夕張支線のように単一自治体だからという面もあります。廃止若しくは公的支援を求めるエリアは広大で、広域自治体としての北海道の対応が待たれますが、高橋知事は経済や人口の状況が分割民営化時と著しく変化していることを理由に国に対応を求めています。財政負担を警戒してという側面はあるものの、経営安定基金による赤字補填もままならず、沿線人口の減少も収まらない中で、交通政策基本法を盾に対応を迫られても受け入れられないってのは正論です。

加えて国絡みの問題も多数あります。例えば北海道新幹線の札幌延伸問題も、JR北海道は自治体との合意を得て国に要望してきたものの、時期の問題が見通せないまま、札幌駅の新幹線駅スペースと見込まれていた駅南の用地に駅ビル(JRタワー)を建てたことで、道庁などから非難されましたが、商業スペースとして価値の高い遊休地の有効活用は当然の話ですし、建設時点で札幌延伸は決まっていませんでした。

その結果新幹線札幌駅の位置問題が二転三転して大東案に決まったのは最近のことです。北海道新幹線の札幌延伸が前進して2030年開業が決まったものの、駅をどうするかで迷走したわけです。当初北口側に新ホームを作って順繰りに振って1,2番線を新幹線用に転用する案が提案されたものの、既に北口の開発が進んで支障する建物が多数あると断念され、西案、東案、地下駅案が検討されたものの何れも却下され、修正東案として1番線南にギリギリ設置可能な1線分のスペースを新幹線上りに充て、1番線を新幹線下りに転用した上で東へ延伸して在来線とずらして設置する修正東案に落ち着いたものの、これも東日本大震災を受けて耐震補強が必要となり、結局在来線駅から離れた元の東案を大東案として決まったものです。位置的には札幌市営パーキングがあるということで、新幹線ターミナル駅設置のスペースも十分な上、駅前に新たな再開発ビル建設の可能性もあり、JR北海道の経営にもプラスと評価されますが、地権者の札幌市の意向は現時点で不明です。

あとJR貨物問題もあります。北海道の農産物を消費地の首都圏や近畿圏に輸送する上でJR貨物の役割は大きいのですが、それが結果的に線路を痛める原因にもなっております。加えてJR貨物は国の支援を得て設備強化投資をした結果、ドライバー不足によるトラック輸送からの移転もあって黒字転換が見込まれる状況ですから、格安な線路使用料を強いられてきたJR北海道には見逃せない問題です。まして株式上場まで取り沙汰されてますから尚更です。

温暖化の影響もあって北海道が稲作適地になりつつある現状もあり、競争力のある農業が叫ばれる中、その競争力を維持する意味で市場アクセスに欠かせないインフラとしての貨物鉄道という視点から、国の関与を強める余地はあります。貨物輸送のためにJR北海道の路線の一部を国の所有としてJR貨物やJR北海道に留まらず、自治体出資の三セクが第二種事業者としてローカル輸送に参入する余地を持たせるあたりに着地点があると思いますが、国が動く気配はありませんね。

加えて訪日外国人が増えている中、北海道観光人気で新千歳空港の利用が増えており、千歳線支線(南千歳―新千歳空港)が単線で空港駅も1面2線のため、対応しきれていない状況にあります。そこで新千歳空港駅を移転して3面4線とし、外側2線を千歳線につなげ、途中で単線を分岐して石勝線につなげる改良案が提案され、2022年の完成を目指すとされてますが、事業費は1,000億円規模になるということで、費用負担を巡ってひと悶着ありそうです。

実現すれば複線のまま空港新駅へ入れるだけでなく、苫小牧方面や帯広方面からも直接アクセスできるようになり、輸送力面に留まらず利便性も改善されますが、よく考えたら自衛隊と共用時代の千歳空港ターミナルビルとこ線橋で直結だった千歳空港駅(現南千歳駅)の機能を取り戻すだけであり、民間空港分離で誕生した新千歳空港のターミナルビルが離れた位置に作られたから仕方なく単線の空港支線を作った訳で、ここでも国の政策に翻弄された現実があります。しかも費用負担の問題でおそらく国の支援制度活用となるでしょうけど、JR北海道の事業縮小構想もあり自治体との調整は微妙です。また滑走路下のトンネル工事など難工事も予想されます。

あとこの問題は思わぬところへ飛び火しております。コメントを頂いたはまださんにご指摘いただいた日本ハムファイターズの北広島ボールパーク構想です。ダルビッシュや大谷をメジャーリーグへ送り出しながら若手の育成で実力を維持し、人気球団となったファイターズですが、不自由な札幌ドームに不満を抱いていたわけですが、ポスティングの補償金を得てそれを活かしたボールパーク構想を発表し、自治体向けに誘致コンペを行うというスキームを打ち出したところ、応札して勝ち抜いたのが北広島市です。

元々市民運動公園整備を構想し広い用地を確保していたところへ、ファイタースのコンペでボールパークをコア施設としてアクセスも千歳線に新駅を作って直結というもので、JR北海道にとっては増収策になるから大歓迎かといえば、空港輸送で線路容量に余裕のない状況では、寧ろ負担になりかねないということでご議論を呼んでいます。竣工予定は2023年3月ですが、空港新駅がそれまでに完成している確率はかなり低いと言えます。

さて、一番のスットコドッコイは誰?

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Sunday, July 01, 2018

ストでスベってスットコドッコイ

FIFAワールドカップで日本がGL突破しましたが、ポーランド戦の戦い方で賛否が分かれてます。

賭けた「負け残り」 西野監督の戦略と野心: 日本経済新聞
この「勝ち残り」作戦ですが、余力を残して決勝トーナメントへ望める訳ですから正解です。選手の能力を活かしてパフォーマンスを最大化するのが監督の役割ですから、非難される謂われはありません。

これが所謂マネジメントって奴でして、結果的に選手の能力を最大限引き出せるわけですね。GL突破で全力を尽くせば決勝トーナメントを戦う力は残らない訳ですね。これ企業のマネジメントも同じで、とにかく全力を求める所謂ブラック企業が駄目な理由でもあります。そんな中で高度プロフェッショナル制度が国会を通過しました。どう言い繕おうが日本企業が90分をうまく戦った西野ジャパンのようなマネジメントをやる気はサラサラないってことですね。

その裏で気になる動きがありました。JRグループ最大労組のJR東労組で大量脱退が起きているのですが、これどうもJR東日本の経営側が仕掛けたみたいなんです。詳しくは週刊東洋経済の集中連載に詳しいんですが、わかりやすく言えば経営側が労組を追い込んだってことのようです。JR東労組は所謂JR総連系の労組で、左翼セクトの革マル派が浸透していると言われていて公安からもマークされていて、2020年の東京五輪を控えて政権からも対応を迫られたようです。

2年前に死去した松嵜委員長は元革マルNo.2で、国鉄の動力車労働組合(動労)の指導者になり、国鉄民営化に関して反対から賛成へと態度を変えて国労と袂を別ったことで、国鉄民営化を後押ししたことも知られております。国労が主導したスト権ストで国民の支持が離反したこともあり、寧ろ民営化で公労法で違法とされていたスト権を取り戻せると考えたようです。

しかし実際には90年代にJR総連でスト権確立の動きを見せたもののうまくいかず、結果的に傘下労組の多くが総連を脱退してJR連合を結成し、以後総連との対立が続きます。そうはいってもJR東労組はJRグループでは最大規模であり、組織率8割に達する巨大組織ですし、革マル派の浸透に経営側も及び腰だったこともあって最強の労組でもありました。

スト権確立には失敗したものの、事業所単位で締結される労使間の36協定を3か月単位で締結する体制を敷いて、その分労使の話し合いの機会が多かったので、ストを打つ理由もなかったわけです。スト権はあくまでも経営側を協議の場に引き出すためのものですから、頻繁に協議が行われる体制ではストを打つ理由は無いわけです。

革マル派自体は反帝国主義反スターリン主義を標榜してますし、暴力革命を否定してもいませんが、故松嵜委員長の対応から察せられるように、中核派などと違って柔軟な対応ができる分マシな存在ですが、経営陣にとっては緊張を強いられる存在ではあったでしょう。ある意味JR東日本の経営がJR他社と比べて幾らかマシなのはこの緊張感のなせる業でしょうし、特に東中野事故後の対応など安全対策でJR他社より踏み込んだ対応を取ってきたのも、頻繁な労使協議のお陰と見ることができます。

一応誤解の無いよう断っておきますが、反スターリニズムを標榜しながら、その源流のボルシェビキ流の前衛主義から抜け出せないという意味で中核派共々ダメな存在ではあります。彼らが頼みとする大衆の蜂起は前衛である自分たちが指導して実現するってフィクションから抜け出せないんですから、革命なんて出来っこありません。この辺日本共産党も同じなんですけどね。それでもJR東日本経営陣に緊張感を与え、安全対策の強化に寄与したという部分では評価いたします。

今回の騒動は経営側がまず運転区と車掌区を統合して運輸区とする組織改編で運転士と車掌を同一組織に纏めたことから始まります。動労母体のJR東労組ですが、旧動労系組合員の多い運転士とそれ以外の穏健派が多い車掌との温度差で現場の足並みを乱れさせるところからスタートし、ベースアップの配分を巡って若手に手厚い経営側の提案に一律ベアで対抗し、これが引き金になってスト通告に至ったのですが、その後組合員の大量脱退が起きており、この過程で経営側による若手を中心とする組合員の引き剥がしに動いたようです。これ下手すると国鉄時代のマル生運動にかこつけた労組選別の不当労働行為になりかねないという意味で、経営側もリスクを負ってますが、大きく異なるのが若手の組合への不満が大量脱退を後押ししたってことですね。

ストを打つと言っても、経営側を協議に引き出すのが目的ですから、事前通告に始まって一連の手続きを踏む必要がありますし、経営側が協議に応じればストを解除しなければなりませんから、組合員にはあらかじめ決まった場所に待機させる必要もあります。加えてスト期間中は賃金の支払いが止められますから、組合員の生活補助のための日当を支払う必要もあります。これら一連の作業を行うには大変なノウハウが必要なんで、既にストをしなくなって久しいJR労組にとっては、急に「ストやります」といっても組合員は戸惑うばかりです。執行部の命令一つで事態が動く状況はとっくに失われていたわけです。

と、ここまでだとJR東労組のスットコドッコイぶりが目立ちますが、今後は経営側が立ち上げた社友会と称する親睦組織との間で36協定の話し合いが行われ、しかも年1回ということですが、労組ならざる組織で安全に関わる様々な意思決定がされることになれば、今までよりもヌルい労使関係で緊張感が失われることが心配です。それは場合によっては安全上の問題を引き起こす可能性も否定できません。JR東日本のように事業所が多数分散している大組織で、組合をスルーして上手く回せるのかは疑問です。西野ジャパンで後半終了間際に長谷部を投入してメッセージを伝えたアレの重要性に類似した問題です。

実際国鉄時代から続いていて福知山線尼崎事故の遠因と指摘された日勤教育の見直しはJR東日本が先行し、他社の見直しは尼崎事故後ですし、山陽新幹線の台車枠亀裂問題や車内犯罪やトンネル内人身事故などを見ると、JR東日本が同じレバルに堕する危険性は排除できません。となると経営側もスットコドッコイかも。やれやれ。

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Sunday, April 01, 2018

Noと言えるお役人の働き方改革

通信トラブルで更新が滞っております。このエントリーもスマホの小さな画面でフリップ入力ってことでメンドクサ。

しかしアベノミグルシイが続いたお陰でPVは下がらすに草生えます。てなわけで続きですwww。

佐川前理財局長の国会証人喚問が茶番で終わりましたが、これで解決ではないですね。森友問題を離れても、公文書改ざんは悪質な犯罪です。偽札事件に喩えられますが、小切手の金額書換えや手形の裏書き消去なども近いかも。何れも重大犯罪です。

実際佐川氏は訴追の恐れを理由に証言拒否してる訳で、法令違反の自覚があったという意味で犯罪の構成要件を満たします。謂わば白状したも同然です。

判っていてそこまでやる?って話なんですが、理財局の独自判断があり得ないのは自明です。政治家の関与無しにはあり得ません。

具体的な指示の有無は問題ではないんで、そうしなければ前川前文科次官のように退官させられたりするとすれば、意に沿った対応をせざるを得ない訳です。どこぞのブラック企業ではありふれた話ですね。

しかしその結果犯罪者にされてしまう悲しいお役人のあり方こそが問題ですね。頭痛いのは公務員は労働三権が制限されていることで、実質的に逆らえないことです。

これ公僕だからって理由のようですが、公僕なのは国会議員や裁判官などの特別公務員も同じどころか、より大きな責任を負うべきなのに、知人への利益誘導を平気でやる訳です。その結果の尻拭いまでやらされるお役人は本当に気の毒です。

なるほど、そんな政府の考える働き方改革がろくなもんじゃないのはある意味自明です。てなわけで、法令違反の恐れのある仕事はたとえ冷遇されても断るのが正解です。

思えば『チャレンジ」と称して粉飾させたり「歩留まり上げろ」と現場に指示してデータ改ざんさせた企業あれこれも同様の構図です。

台車枠の亀裂問題でも台車の設計が軸バネ座などの部材取付にあたって平面を出す為に削らなきゃならない仕様だったり検査で見落とされたり異音を確認しながらが指令が止めなかったりもありました。不祥事は官民問わず似ています。

岡山の両備Gのバス廃止問題も、前中国運輸局長時代には八晃運輸の申請を認可しない方針だったものが、人事異動で赴任した新任局長が聴取もせずに認可した訳で、地域住民にとっては預り知らぬ中央官庁人事で事態が動いた訳で、地域公共交通活性化再生法以前の問題です。裏でどんな政治力学が働いたのやら。

てなわけでアベノミグルシイはまだまだ続くか?

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Sunday, March 04, 2018

トランプ円上昇法^h^h炎上商法とアベノミグルシイ

見苦しいタイトルで失礼いたします^_^;。その前に前エントリーで取り上げた岡山の後日談。

バス、収益路線参入に抗議 両備「赤字路線維持できぬ」  :日本経済新聞
八晃運輸、「健全な競争」強調 バス路線参入で説明文  :日本経済新聞
八晃運輸の認可前に両備Gが呼び掛けて実現しなかった地域公共交通協議会が開催されることになりましたが、あくまでも両備Gの路線廃止だけが課題で八晃運輸は呼ばれておりません。つまりぶっちゃけ認可しちゃった八晃運輸抜きで両備Gの路線廃止対策つまり自治体が路線維持に幾ら出すかってフレームです。行政の不作為の結果、望ましくない形になった訳です。

これ前エントリーでも触れましたが、需給調整規制の撤廃は良いんですが、許認可権限を国が握ったまま故の矛盾ですね。確かに事業者同士不仲が言われ、行政が及び腰なのでしょうけど、許認可権限が県若しくは複数県の広域連合に移譲されていれば、許認可権限を梃子に事前調整できた可能性はあります。もちろんダークサイドに流れれば国会議員より口利きが容易な地方議員の不適切な関与を呼び込む可能性は否定できませんが、逆に地域の問題で地方議員がどう動いたかは見えやすいわけで、住民チェックは働きやすくなります。地方創生よりも地方分権ってこういうことなんですね。

国レベルでは裁量労働制が厚労省データの捏造がバレて頓挫。しかしマル生エントリーで指摘したように真の狙いは残業代カットであり3段階の仕掛けがされているわけです。これ第一次安倍内閣で打ち出して引っ込めたホワイトカラーエグゼンプションの焼き直しで、その分巧妙に仕掛けられたレトリックになっているわけです。

つまり長時間労働規制の導入に見せかけて、それを骨抜きにする仕組みて、高度プロフェッショナル制度は見せ球で撥ねられても、裁量労働制の拡大が実現すれば良しという見通しだったんじゃないかと。ところが落し処と見ていた裁量労働制が否定されて財界からは「残念」の声が上がりながら高プロは引っ込めないってますます無理筋になってます。高プロ制度も業種が限定されていて年収1,075万円以上で本人の承諾が必要とされてますが、業種も年収要件も省令で定めることになってますから、通してしまえばいくらでも書き換えられますし、本人承諾も就業規則の片隅にこっそり書き込んで入社時に就業規則遵守の誓約書に署名させれば承諾したことになるとかって逃げ道があります。働き方改革関連法丸ごとの撤回しかあり得ません。

新幹線初の重大インシデントとされた台車枠の亀裂問題でも進展がありました。

のぞみ台車製造に川重の不備 140台超、薄く削る  :日本経済新聞
川崎重工業の製造現場のミスが明らかになった訳ですが、削り過ぎた140台超の台車の中には溶接段階で生じた亀裂が成長したと見られるものもあり、JR西日本の検査で発見できなかった訳で、検査体制にも問題がありそうです。

加えて設計の瑕疵の指摘もあります。問題の台車枠は鋼板をプレスで曲げてコの字型にして最中状に溶接して箱型にしたもので、荷重を支える軸バネ座を二番溶接する底面に丁度側構の最中溶接の合わせ目があるわけで、平面を取るために削る必要がある設計仕様です。尤もこれは現在標準的な工法であって、これ自体が危険と言えるかは微妙ですが、事実としてJR東日本の新幹線車両では用いられていませんし、JR東海/西日本のN700Aでも平面の底面板にコの字型プレス鋼板を被せる形のものに変更されてます。設計段階で瑕疵が認識されていた可能性は否定できません。

リニア談合でも大きな動きがありました。

リニア談合、鹿島幹部と大成元幹部逮捕 東京地検  :日本経済新聞
これまでの捜査でJR東海の提示価格が厳しすぎるので、仕事を分け合うために談合したというストーリーですが、大成と鹿島は談合を認めておらず、結果キーマンの身柄拘束という荒業となりました。

しかし談合の挙証は難しく、実際大成、鹿島両社は難工事の技術的な意見交換として談合の意識はなかったと思います。逆に大林組は「品川を譲るから名古屋から手を引いてほしい」と自覚的に動いたから談合の意識があったのでしょう。この辺が談合事件の難しさなんですが、かつての官製談合と違うのは、発注者のJR東海はコストを切り詰める方向で動いており、談合の問題点とされる高値受注なのか?ってところが微妙です。例えば東京都による豊洲新市場の受注率90%超とか、談合が疑われる事例は他にもありますし、リニアでjは寧ろJR東海の優越的地位利用の方が独禁法に抵触する可能性があります。東京地検特捜部は功を焦ったかも。

そしてグローバルプリズンから抜け出せない日本にとっては災難なニュースがこれ。

鉄鋼・アルミ関税、すべての国対象と示唆 米商務長官 (写真=ロイター) :日本経済新聞
まさかここまでやるとは、というのが正直なところですが、これがトランプ流なんでしょう。狙いはあくまでも過剰生産が言われる中国の鉄鋼とアルミなんですが、第三国経由の輸入にも網をかけようってことですね。こうなると日本の鉄鋼メーカーに留まらず米国内の製造拠点を拡充している日本の自動車メーカーもとばっちりを受けます。実際この発表で世界の株価は下げました。

二国間貿易交渉を重視するトランプ政権で貿易が二国間で完結しないと認めた矛盾は置いとくとしても、これまでレーガン政権をtレースするようなトランプ政権がこれだけはある意味レーガン政権を超えた対応をしています。適温経済と言われてトランプ大統領自身が勝ち誇ったように言及していた株高が否定されたわけですから、その迷走ぶりは間違いなく大ニュースです。

以下新聞などではあまり触れられない視点からの解説になりますが、そもそも適温経済とは何だったのか?ですが、これFRBの3次に亘る量的緩和(QE)という環境下でのレーガン流双子の赤字政策として見れば腑に落ちます。つまり大規模減税と財政出動の組み合わせを経常赤字国のアメリカが採用した結果、財政赤字が拡大する一方、その穴埋めを輸入に頼らざるを得ないから経常赤字が拡大して両者がリンクする訳ですが、その結果輸入が増えて物価上昇を抑えるから低金利でも利ザヤが取れるから適温ですし、低金利且つ緩和による資金過剰で配当利回りが債券よりはマシな水準まで株価を押し上げた結果の安定だった訳です。

しかし流石に失業率が歴史的低水準にある中での財政出動は労働需給を逼迫させますから、インフレ圧力を生みます。それに加えての今回の鋼材アルミの関税による輸入制限ですから、結果的にこれも物価押し上げ要因になり、既に緩和縮小から利上げに動いているFRBも利上げ加速をせざるを得ません。つまり投資家目線からFRBのタカ派的利上げが心配されていたんですが、今回トランプ政権自ら適温経済を破壊してタカ派に与したって話です。

話はそれだけでは終わらない。アメリカがインフレ傾向を強める中、QQEでも2%のインフレ目標を達成できない日本は取り残され円高になります。既に手段が出尽くした日銀は打つ手なし。財務省による為替介入はトランプ政権に献花売るようなもので無理。見守るしかないわけです。貯蓄投資バランスが崩れて余剰資金が海外へ向かい、所得収支の黒字で経常黒字基調にある日本に打つ手があるとすれば、賃上げや社会保障の充実による個人消費拡大を通じた輸入増ぐらいですが、安倍政権がここに踏み込む気配なし。寧ろ働き方改革と称して官製ベアと引き換えに残業代カットを画策するように、名目賃金が増えても手取りは増えず、増税で可処分所得を減らそうと画策してるのが現実。

加えて適温相場の調整でボラティリティが高まっており、今後も調整が続きますから、投資家心理は悪化しリスクオフになります。これも円高要因です。最悪の財政赤字を垂れ流す日本がなぜリスクオフで円高になるかと言えば、財政赤字を経常黒字の裏にある過剰貯蓄でファイナンスしているからなんですが、加えて外国人投資家も低金利の円資金を調達して投資してますから、投資の縮小は円資金の還流となるわけで、円高へということですね。

おまけで言えば出国税や森林税などの新税導入の目的は消費税10%へアップするときの軽減税率の財源って話です。インボイス導入無しの複数税率は混乱と不正の温床になること確実ですが、見直しはなさそうです。

てなわけで結論。アベノミクス完敗。

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Sunday, January 14, 2018

マル生運動の悪夢

アベノミクスも5年目を迎え、輸出大企業を中心に企業業績は上向き、株価も高値更新を続けます。失業率や有効求人倍率などの数値も景気が上向きと取れる動きですが、生活実感が伴わない状況が続きます。当ブログでは世間が言い出す前からアベノミクスの問題点を指摘してきたわけですが、実際その通りの結果で、未だにデフレ脱却できずに成果の乏しい状況が続きます。

そもそもこれだけ労働需給が締まってきたら金融緩和も財政出動も効かないわけで、金融緩和は出口へ向かわざる鵜を得ないし、財政政策はそもそも求人難で事業が滞り予算通り執行できていない状況ですから、むしろ財政再建の好機なんですが、そんな気はサラサラないようです。むしろ成長戦略として規制緩和をぶち上げたり、TPPを口実に農業を補助金漬けにしたり、モリカケスパコンで怪しげな便宜供与をしたりしてますが、今年は働き方改革だそうで、生産性革命をやるとか。まるでマル生運動で労使関係を疲弊させ、解体へ向かった旧国鉄の失敗をなぞるようなこと言い出してます。こりゃ救われんわ。

日本企業の生産性の低さは以前から指摘されてきましたが、長時間労働の解消という美名のもと,働き方改革と称して労基法が改悪されようとしていることは社畜ネタのエントリー希望のエントリーでも取り上げました。わかりやすくまとめると以下の通りです。

1.脱時間給として労働時間でなく成果で評価する高度プロフェッショナル制度(残業なし)
2.裁量労働制の業種の拡大とテレワークによる勤務時間の曖昧化(残業請求は可能だけどやりにくい)
3.労基法条文に残業時間上限を明記しつつ業種や繁忙期の例外扱いも可能に(事実上残業し放題+未払い残業訴訟時の賠償額の上限になる)
これ残業代を圧縮するためで、それが3%賃上げの原資と財界は胸算用してます。政府は必ず通常国会でこれを通すでしょう。野党がまとまらないのが心配ですが、これも以前のエントリーで心配したことが実現するということですね。

これだと長時間労働はステルス化して事実上長時間労働は温存ざれ生産性も上がらないってことになります。そもそも生産性を現場の努力で持ち上げようってのが間違いなんで、本来は設備投資によって資本で労働を代替することや、M&Aなどで事業の見直しをして規模の経済とシナジー効果で生産性を高めるのが王道です。例えばドイツの名門企業シーメンスが鉄道部門を仏アルストムに売却して重電部門に特化したのが典型ですが、中国北車と中国南車を国策で合併させて中国中車としたことで、かつて加ボンバルディアと並ぶ鉄道ビッグ3の地位が脅かされる中での大胆な経営判断です。生産性向上ってこうやるってことです。

日本の場合労働需給が締まってきたことは上記のとおりですが、中身が問題で、就労者数は確かに増えているんですが、総労働時間は横ばいで、つまり非正規の短時間労働者が増えただけってのが実態です。深刻なのはその間GDPもほぼ横ばいですから、労働力の投入量と生産量が変化していない、つまり生産性も横ばいってことです。GDPが横ばいでも総労働時間が減っていれば生産性は上がっていることになるわけで、これなら無理なく労働者の報酬である賃金を上げられますし、労働時間の減少はつまり余暇時間の増加となりますから、その分消費者余剰が拡大して有効需要を生み出します。また人口減少の中で求人難も緩和するわけですから、現在の人口動態に整合的です。てことでこれ貼っときます。

生産性向上 経営者こそ主役   :日本経済新聞
これ企業だけの問題でもないんで、水道事業の民営化を打ち出した東京都の事例が面白いんですが、東京都水道局は23区の水道事業を担う地方公営企業で、基本独立採算制なんですが、多摩地区では各市町が直営事業で手掛けているケースが多く、独自水源として井戸を持っていたりしますが、地域開発で水需要が増えると対応できなくなり、都水道局に水源を依存するケースがあり、加えて小規模な直営事業では合理化も難しいってことで事業委託しているところもあるわけですが、そのために都水道局は増員したくても公務員定員の壁でできないってことで、民営化してそのくびきを外そうってことです。水道のようなインフラ事業は希望の経済が働くわけで、多摩地区に留まらず埼玉県の自治体の受託の需要も取り込めるわけで、伸びしろがあるわけです。

これ営団→メトロに事業領域を侵食されてきた都交通局と大きく異なる事業環境だからこそです。都営交通の民営化はメトロの株式上場絡みで都の保有株式の扱いが問題になるので実現可能性はほぼありません。

こういう観点から国鉄民営化を見直すと、国鉄末期から営業路線の廃止、切り離しが相次いで事業規模を縮小したJR北海道と、元々の規模が小さいJR四国が苦しむのはある意味必然です。むしろ全国1社体制でギリギリ規模を確保したJR貨物が黒字化で上場が検討されるってのも、不思議ではありません。JR貨物の場合旅客会社へ支払う線路使用料問題という爆弾を抱えてはいますが、これ旅客6社と同様地域分割していたらこうはいかなかったでしょう。

てことで30年も経つと変化は避けられないところです。見直しは必要でしょう。おまけ。

除雪車出動に遅れ JR信越線大雪で立ち往生  :日本経済新聞
そもそも異常な積雪でダイヤが乱れに乱れ、運転士が雪かきしながら進路を確保しつつ運行していたものの力尽きたわけで、4両編成に乗客430人という状態で、不安を抱える乗客に乗務員が丁寧に対峙したからパニックにもならずに済んだわけです。もちろん早い段階でも運転抑止の判断もあり得ましたが、時は夕刻ラッシュ時間帯で、帰宅の足にとJRを当てにして駅に乗客が集まっている状況で必死に運行を確保した結果です。首都圏ならば振り替え輸送で他社線へ誘導で済みますが、大雪でバスも動かない中での出来事です。本当に頭が下がります。新幹線の好調にブイブイ言わせながら殿様商売の某JRと大違いですね。

も一つおまけ。そもそもこの冬の寒冷化と大雪は温暖化の影響と見られています。理由は北極の海氷の減少で氷ならば反射される太陽輻射熱を海水が吸収して海水温が上昇し、水蒸気が発生視野sくなっている一方、海水温の変化に伴い偏西風が蛇行し、大陸の寒気が南下したこと。その結果高めの海水温と寒気の温度差で雪雲が発達し以下略。偏西風の蛇行は北米、欧州、東アジアで特に顕著で、いずれも化石燃料の消費が多い地域です。とりわけ日本は低コストを理由に石炭火力への依存が強く孤立気味。電力会社の経営の都合で電車が足止めって考えると怒りが沸いてきます。

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Sunday, December 31, 2017

台車枠の亀裂

今年もあとわずかですが、このニュースはやはり取り上げるべきだろうと思いまして、こんなタイミングでのアップとなります。

亀裂、あと3センチで破断 新幹線のぞみ台車  :日本経済新聞
「あと3センチで断裂」というきわどい重大インシデントとなりました。最初に疑問に思ったのが、異音を確認しながら3時間も運行を続けたことで、実際JR西日本は非難を浴びましたが、その後岡山から添乗したJR西日本社員が東京指令所の司令員に新大阪駅での床下点検を提案したものの、司令員が上司の指示を受けたていたために聞き逃し、運行を継続した経緯が明らかになります。結構ありふれたヒューマンエラーがあったわけです。

とはいえ司令員の責任を問うのは難しいところで、そもそも頑丈に作られていて入念な点検を受けている台車に亀裂が見つからなかったから出庫して運用されたわけで、目視が困難な程度の亀裂で直ちにに断裂することがないように安全マージンを大きくとっています。点検時点で見つからなかった瑕が台車枠の断裂に至るようなことは想像すらできなかったはずです。現時点で原因は不明ですが、専門家の見方はこれです。

新幹線の「亀裂」はなぜ発見できなかったのか | 新幹線 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
記事の著者の見立てでは、側バリの軸箱近傍の溶接部付近で起きた典型的な疲労破壊ということで、突然発生したものではなく、長時間に亀裂が伸長したものということです。ということで、現時点でも入念に行われている検査体制で発見できなかったわけですから、検査体制の見直しは避けられません。

既にJR東海は従来台車枠では行っていなかった超音波探傷(非破壊検査)を検討すると発表しました。わずかの傷でも重大事故につながる車軸では行われていたものの、台車枠ではそこまでは必要ないということで、通常は目視検査で済ませていたようです。それでこれまで特段のトラブルはなかったわけで、このこと自体は問題ではないんですが、逆にめったに見られない台車枠の亀裂を見る機会そのものが少ないと、特に若い検査員は育たないというジレンマもあります。

この辺日産の完成検査問題で若手の見習い工にわざと不具合を仕込んだ個体を検査させて発見できれば一人統制前といった現場ルールを思い起こさせますが、上記記事で「航空機は故障率が高いので、ダイヤ統制部門は整備士の意見を最重視する」そうですが、元々過大な安全マージンを取っている鉄道の場合、指令員の判断も運行継続に傾きやすいということもあるでしょう。加えて岡山で添乗したJR西日本社員と東京指令所のJR東海の指令員という会社跨りの問題もあるわけで、実際新大阪で引継ぎを受けて添乗したJR東海社員の判断で名古屋で運行を打ち切ったわけで、流れでJR西日本の不始末のように見えてしまったということも指摘すべきでしょう。

似たような問題は東急田園都市線で東武鉄道の車両トラブルで架線事故が発生したってのもありました。こちらは新幹線のように車両の仕様が統一されているわけではありませんから、より問題が複雑です。

加えてもっと気になるのが上記記事でも指摘されている溶接後の熱処理が適切に行われているのかという問題と、記事ではあえて触れられておりませんが、神戸製鋼の品質データ改ざん問題で明るみに出た鋼材の品質問題の可能性も視野に入れておく必要があります。特に両者の合わせ技で、あるはずの過大な安全マージンがほとんどなかったってこともあり得ます。実際台車枠に亀裂が絡むこんな事故がありました。

東武東上線「脱線事故」は、なぜ起きたのか | 通勤電車 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
東武東上線中板橋付近での脱線事故で、30年選手の10000系初期車の事故ですが、台車の亀裂が確認されてます。尤もこの事故では亀裂が事故原因なのか脱線の結果台車に亀裂が生じたのかは不明ですが、鉄道特有の過大な安全マージンが、検査の形骸化を生んでいた可能性もあるわけで、今回の新幹線事故との比較は必要でしょう。

また神戸製鋼の品質データ改ざん問題に代表される素材メーカーの不祥事も、商慣習として定着しJIS法でも認められている特採が言い訳に使われたように、要求品質自体が安全マージンを過大に見積もっていた可能性もあります。ってことで、台車枠の鋼材で勝手特採やられて且つ溶接後の熱処理が不適切だと、結果的に要求性能は大幅に低下します。何が言いたいかというと、川下の素材メーカーから中間の加工メーカーを経て組み立てメーカーへ納入される一連の中で、各社が独自にコスト削減には減むと会社単位での部分最適が追及されて全体最適を失う合成の誤謬が発生する可能性を否定できないってことです。

これユーザーである鉄道事業者自身も技術革新と品質の向上で検査周期の延長を当局に求めているわけですが、川下側の劣化を見過ごして延長が認可されれば、日本の鉄道が自慢とする安全が砂上の楼閣になる危険性があるわけです。この辺自動車の完成検査問題もそうですけど、規制当局である国土交通省がそこまで目利きできるのかということでもあります。規制改革の難しさは実に奥深いところです。

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Sunday, November 26, 2017

グローバルプリズン

久々の更新。単にサボってただけなんだけど^_^;。

かつて新車を買うと「暫くは慣らし運転を」と販売店で言われたもんです。工作精度と品質管理の兼ね合いで、新車は摺動部がなじんでなくて、摩耗で鉄粉が出るから、早めにエンジンオイルを交換しなきゃならなかったし、下手に吹かし込むと瑕になるとかありました。今は工作精度も高まり、品質管理も高度化してるんで、買ったばかりの新車だからって、敢えて慣らし運転は必要なくなりました。そんな時代の古臭い制度が自動車メーカーの地雷になったのはニュースになりました。

日産の不正検査、「コスト優先」で拡大 報告書で監督責任を指摘  :日本経済新聞
これ法令違反には違いありませんが、国家資格でない社内資格の有資格者による完成検査ってことで、会社によって資格付与条件が異なっており、実態は各社とも完成検査は見習工の仕事というのが実態ですが、日産とスバルの資格付与条件が厳しすぎたってことです。

検査の実態は道路運送法で定められた車検の初回分に相当します。1950年に始まった制度で、完成車を都度車検場に持ち込むのは煩雑で、国産メーカーが量産体制を整える中車検場側の業務負担も大きいということで、国産車の量産体制を助ける趣旨ですが、当時は確かに公道上に出す前の水際検査の面もありましたが、上記のように製造工程の工作精度の向上と品質管理の厳格化で比重が低下しており、むしろ検査マニュアルの習熟と瑕疵を発見する目利きのテストの意味もあり、見習工の仕事へと変化しました。こうなると有資格者の位置づけが曖昧になります。

本来は見直されるべき制度ですが、輸入車にも適用されるため、外国メーカーが日本国内で車を売る場合、国内に検査体制を組む必要があり、コストアップ要因になります。つまり非関税障壁になっている訳です。故に見直しが進まず形骸化した制度が残ったわけです。実際日産もスバルも出荷停止は国内向けのみで、輸出は通常通り出荷が続いています。形骸化を放置した結果、寧ろ国内メーカーにとってもコスト要因となり、コスト削減圧力で現場のカイゼンの結果、地雷を踏んじゃった訳です。アホ―!

やれ構造改革特区だ岩盤規制にドリルで穴だのと宣うより、こうした時代に適合しない制度や規制の見直しこそが構造改革の本丸の筈ですが、安倍政権が打ち出す改革では全く取り上げられません。構造改革特区は結果的に加計学園問題に見られるように、単なる権力の私物化の方便でしたありませんし、TPPもアメリカが抜けてアメリカ絡みの譲歩項目を凍結したTPP11の協議が進みますが、アメリカを呼び戻したい日本と、NAFTAでアメリカと対峙するカナダとメキシコでは温度差があり「大筋合意」の見出しが躍るけれど、実態は合意しきれないまま手続きを進めただけです。

これ日欧EPAでも「大枠合意」とされますが、こちらはBrexitのおかげで交渉は進捗したものの、紛争解決でTPPに準じてISDS条項を押し込もうとする日本に対して、専門機関設置を主張するEUの溝は埋まる気配はありません。ドイツの政局流動化もあり、まとまらない可能性大ですね。

そもそもメガFTAは問題ありで。以前にも取り上げた通り、狙いは外圧を国内改革の梃子にしようということでして、本当に改革したいなら、日本では農業部門に高関税品目が集中しているわけですから、メガFTAに頼るまでもなく国内の農業改革の進捗に合わせて関税率を下げていけば良いだけの話ですが、コメのように関税率を維持するために輸入義務となるミニマムアクセスを増やすということをしていて、まるで改革の意思なしです。むしろメガFTAを口実に新たな農業補助金をバラ撒く始末で改革やる気なしが鮮明です。

結局アベノミクスの実態は日銀の異次元緩和(QQE)が全てであり、第二の矢とされる公共事業による財政出動も、災害復興とオリンピック関連と大都市圏の再開発のバッティングで人手不足が深刻化しており、予算執行自体が滞っている現状です。人手不足を前提にすれば、災害復興を優先すべきなのは言うまでもありません。で関連してこのニュース。

東急田園都市線停電、送電線がショート 点検見直しも  :日本経済新聞
東急に限らないんですが、最近首都圏の鉄道で電気系統のトラブルが多発しております。これ電気技術者の人材難の影響と見られております。元々1列車3,000Aもの大電流を扱う電気設備のメンテナンスは大変ですが、電気技師資格者にとっては、公共工事その他鉄道より割りの良い仕事が多数ある現状で、下請けの電設会社が人集めに苦労していて、不慣れな技術者も使わざるを得ないわけです。

そんな現状を日銀は「人手不足で賃上げが現実味を帯びてきた。インフレ目標達成まであと一息」とかノー天気。電気技術者は育成に10年はかかるんで、労働市場の実態を無視した脳内フローラにやれやれです。そもそもは賃金上昇の結果としてのインフレはありますが、インフレが賃金上昇をもたらすってのは因果が逆です。高度成長期を含めて賃金上昇を起点にインフレで名目賃金上昇率の一部が相殺されて、結果的に労働分配率が低下するってのが景気循環上の好景気の連鎖なんですが、デフレ状況で労働分配率が低下しているわけですから、このこと自体が異常事態です。もう少し言うと、大企業に限って労働分配率は顕著な低下傾向を見せておりますが、人手不足の現場である中小零細企業では労働分配率が高止まりしていて、これ以上打つ手無しが実態です。鉄道の現場トラブルもそのあおりかも。

ですが日銀は緩和の出口に関して口を閉ざしたままです。米FRBは既に利上げに動き、欧州ECBも緩和の出口を模索し始めた中で、日銀だけが取り残されている構図です。この状態でリーマン級の経済ショックがあれば、最も深刻なダメージを受けるのが、追加緩和の余地がない日本です。日本だけが「囚人のジレンマ」に囚われてる?

この辺微妙な問題も含んでまして、FRBやECBが緩和解除に動くのは金融政策の正常化で次のリセッションの備える意味の外に、日本のQQEのお陰で、緩和縮小に動いても流動性は維持されて市場が動揺しないという読みもあります。特に新興国からの資金流出に日本がアンカーとなって歯止めが効くという読みがあります。つまり新興国からの批判も回避できるということです。

で、日本ですが、大都市圏の地価上昇、特に近畿圏の一部で首都圏を上回る上昇が見られるなど、明らかにおかしな動きはありますが、大阪や京都などインバウンドの恩恵を得ている現状からすると、最早日本は製造業よりも観光業などサービス業へのシフトが後戻りできないところまできたってことでしょう。そうなると製造設備増強で労働生産性を高められる製造業から、構造的に労働生産性の低いサービス業へのシフトでますます成長力が低下した結果とも言えます。バブルを起こすにも成長力が必要なんで、実は低金利は日銀の政策だけの問題にとどまらず、日本の稼ぐ力の低下を反映しているだけとも言えます。それを象徴するようなこんなニュース。

中国人専用 白タク横行 訪日客送迎 ネットで集客・支払い 摘発難しく :日本経済新聞
中国人による中国人向けのライドシェアサービスってことですが、中国の企業が提供するサービスに日本在住の中国人ドライバーが登録していて、取引はweb上で完結するため、摘発どころか実態もつかめていないわけです。これ民泊も同様ですが、中国人オーナーのマンションで中国人が民泊サービスを受けるのも普通のことのようで、ライドシェアや民泊を認める認めないの議論をよそに実態が先行しているわけです。もちろんだから早く認めろって議論は乱暴ですが、政権がまともな改革に取り組まない限り、日本はただ取り残されるだけです。

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Sunday, August 13, 2017

1億総社畜化社会

米朝間で子供の喧嘩みたいな罵り合いが展開されており、市場はリスクオフに振れて株価を下げたりしてますが、こういう時は落ち着きましょう。そもそもホワイトハウスの行政官ポストを埋め切れず身動きが取れていないトランプ政権に戦争準備ができているわけないですし、北朝鮮にしても核実験由来の放射性物質は1回目以外検出されていませんし、ICBM実験も高高度で発射して飛距離のポテンシャルを示してはいるものの、難しい大気圏再突入性能は検証されておりません。もちろんだからと言って核やミサイルの開発が進んでいないとまでは言えませんが、騒ぎ過ぎです。

てなことは置いといて、1年前のエントリーで取り上げた社畜ネタです。今年は例年にも増して高速道路の渋滞が酷いですが、お盆に一斉に実家へ帰るからこうなるんで、時期をずらすとか考えないと、3年後は丁度オリンピック期間とバッティングしますからどうなることやら。猛暑による熱中症問題がやっと認識され始めましたが、新国立競技場をはじめとする関連工事も人手不足出遅れが心配されてますし、その新国立競技場の工事作業員の過労自殺が報じられるなど、本当に大丈夫かいと心配になります。

ロングバケーション当たり前の欧州では、企業が従業員に有給休暇取得時期を割り振って分散しながら長い休暇を楽しむのに、短い盆休みを一斉に取って大移動する日本のビジネスマンの働き方の異常さが世界へ発信されるおぞましい2020年になりそうです。その働き方改革を巡って混乱もあります。

連合、「脱時間給」容認を撤回 政労使合意は見送り  :日本経済新聞
日経の記事は問題だらけなんですが、連合の逢見事務局長が独断で政権とやり取りして進めていた話で、神津会長は長時間労働の歯止めが認められるならば、政労使協議に応じても良いとしたものの、あくまでも年収1,075万円以上の特定職種を対象とした高度プロフェッショナル制度の話であって、脱時間給は関係ありません。

そもそも裁量労働制も成果主義賃金も現行法で違法ではないんですが、要件として募集や採用の時点で説明がされ雇用契約書にも明記されている必要がありますし、そもそもこのような雇用形態は労使間で合意が必要なんですが、御用組合をでっち上げて協定書の書面を作っても、未払い残業代請求訴訟では実体のない名ばかり組合では労働者の代表と認められず会社側が敗訴する事例が重なり、経済界から要件緩和の要求が出ていたもので、労働側から見れば当然認められません。

あと限定職種の高度プロフェッショナルにしても、高給取りで直接雇用が難しいんですから、むしろアウトソースして相対取引で条件を決めれば良いんで、労基法に盛り込む積極的な意味はありません。当然の如く連合の傘下組合から反対の声が上がって連合は撤回に追い込まれ、次期会長含みだった逢見事務局長を副会長に棚上げして神津氏の会長留任を決めて収めたって話です。早い話企業は残業代を払いたくないってのが本音です。

2020年のオリンピックと盆帰省のバッティング問題でも指摘しましたが、欧州企業では仕事の繁閑を有給休暇の分散取得消化で対応しており、そのため使用者側に有給休暇の完全消化の義務と共に取得時期調整の権利が与えられています。国によっては年度初めに従業員の有給休暇取得計画書を当局に提出する義務まで負わせているわけで、残業で繁閑調整をしている日本とは根本の考え方が違います。結局残業が日常化して長時間労働が当たり前になり、過労自殺も後を絶たないし、長時間労働で作業効率も落ちるから労働生産性が高まらず、利益率が低くなるという悪循環です。解決策は簡単で、最繁忙期に合わせて増員して有給休暇を分散取得させることです。

あと人手不足でAIへの期待が高まっておりますが、AIに限らず機械による労働の代替自体は昔から繰り返されてきたこととはいえ、単純な代替を考えているならお門違いです。AIは人間になれませんし、むしろAIが能力を発揮するための仕事の手順や環境を人が整えてやらなければならないですから、AIで人手不足解消は不可能です。これオフィスオートメーションが言われ始めた時代やコンビニのPOSシステム導入のときも言われたんですが、システムの導入に伴って業務の見直しがちゃんとできて初めて、少ない人数で多くの産出高を稼ぐことで労働生産性が向上するんで、その分を賃金に反映させて家計の購買力を底上げして初めて、経済成長につながるんですが、現実はどうも違う方向へ進みそうです。

実はこれを端的に説明するツールはマルクスが提供しておりまして、G--W--G'で表しております。Gは資本、Wは商品を意味します。ここで言う資本はぶっちゃけお金のことで、生産手段としての工場や機械に投資して、従業員を集め原材料を仕入れて生産した商品を市場へ投入して代金G'を得ることになります。このときにG<G'となるように仕組みを整えるわけです。工業化で工業製品が大量に生産され市場投入される産業資本主義過程はこれが繰り返されるわけです。

しかし大量の工業製品が市場へ投入され続けた結果、工業製品の価格は低下しますし、またスマートフォンのような汎用多機能デバイスの登場でむしろ集約が進む結果、G<G'の関係の維持が難しくなります。一方PCやスマホのような汎用デバイスはソフトウエアのバージョンアップで機能強化が進み、思いがけない用途が開発されていきますから、開発に携わるプログラマーやSEなどのIT人材が重要な生産手段となり、その調達囲い込みのために高額報酬が約束されるようになります。結果的にITデジタル技術を軸とした生産手段の組み換えが起きてデジタルブルジョワジーとデジタルプロレタリアートに分離する現実が出現したわけです。伝統的工業の衰退とIT産業の台頭で米トランプ政権誕生の背景でもあります。

困ったことにあらゆる労働がデジタル技術で代替可能なわけではなく、元々低賃金の単純労働はいつまでも機械化されずに残るどころか、かつてはノウハウの塊だった事務職や販売職も作業内容が単純化されていきますから、低賃金の単純労働はむしろ増えるわけです。つまりマルクスがプロレタリアートと命名した時間の切り売りでしか生活の糧を得る手段を持たない階層が新たに出現したと見れば、世界的にみられる格差拡大が容易ならざる事態であることがわかります。この観点からすれば労基法改正で政府が盛り込もうとする高度プロフェッショナルは保護すべき対象ではないわけです。

さらにもっと困ったことに、高給で優遇される高プロ人材の育成は困難だってこともあります。何となれば人に教える暇があるなら自ら働いて稼いだ方が良いし、人に教えてライバルを増やせば自らの市場価値を下げることになります。加えて技術革新のスピードが速くなってますから、市場価値が落ちたところで教える側に回る頃には次の新技術が出現して手持ちのスキルが陳腐化しているわけですから、教えるニーズもなくなるわけで、ある意味旬の内に稼いでセミリタイアというキャリアプランを取らざるを得なくなります。かくして技術の分断が今以上に深刻になるわけです。

また高額報酬の職業ほど資本代替のニーズが強く、高額の研究開発投資に見合うリターンが期待できますから、いずれ稼げる職業は減っていくというディストピアになりかねません。自分で自分の首を絞めることになるわけです。高プロじゃないですが、例えばかつて高給取りだったバスドライバーやトラックドライバーの賃金低下も、運送業の参入規制撤廃で進んだわけですし、タクシーに対するウーバーなどのライドシェアの挑戦も同様の文脈で理解できます。規制緩和は善として拙速に認めるのは問題です。

その先の自動運転も、当面は地域限定の交通システムとしての実現を目指すのが妥当です。トラックドライバー不足を自動運転で凌ぐのも問題です。荷物の積み降ろしや検収、場合によっては代金決済もあるわけで、その部分は自動化できないので、結局ドライバーに運転させる方が労働生産性を高めることになります。寧ろ鉄道や船舶との連携による複合一貫輸送のシステムを構築することが大事です。この辺の誤解はかなり根深いですね。

その鉄道も自動運転車の実用化で変化を迫られます。ただし道路輸送では実現不可能な大量輸送の能力が結局鉄道のレゾンデートルになるという意味で、地方のローカル線の維持はますます困難になります。また線路保守など労働集約産業の側面は残り、JRでさえ外注化で凌いでいる状況ですが、その結果日常の列車運行に支障が出るほど保守レベルが荒廃したJR北海道の問題など、解決すべき問題があります。そんな中で取り上げたいのがこれ。

JR東など、英鉄道運営を落札 12月から運行  :日本経済新聞
英国鉄道のオープンアクセス制にフランチャイズ(運行会社)として参入するというもので、遅延の多いミッドランド鉄道の定時運行率の向上をアピールして落札したということで、結構ハードルは高いと思いますが、例えばJR北海道の問題の解決策として、線路保有の国策会社を設立してフランチャイズを募集するといった事態も考えられますから、国内の鉄道事業へのフィードバックも期待できます。この辺新幹線システムの一括受注しか念頭にないJR東海の連戦連敗に対して、確実に経験値を高めるJR東日本の行き方は賢明です。

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