鉄道事故

Saturday, January 07, 2017

タックス・ウォーが始まる

トランプ劇場は年を越えて続いておりますが、就任前からこれほど楽しませて得くれる、もとい^_^;話題の多い米大統領は稀有の存在です。ま、歳も改まりましたし、今年の展墓ぷらしきことを書いとくか。まずはこれ。

初夢トランプ占い(5)税制 法人税下げ競争 再燃 規制緩和は国内優先か :日本経済新聞
天下の日経新聞が良くもこんな恥ずかしい記事を載せるなあ。トランプ税制に関して幾つか断片的な情報は耳に入りますが、それを理解してイメージを構成する力量が日経に記者にはないようです。簡単に言えば予告されている法人税減税の中身が、単なる税率下げではないってことです。いやこれアメリカに限らず、欧州やアジアで法人税減税を競い合うような状況はあるんですが、自国の税収を減らすことが簡単にできないことぐらいわかりそうなもの。税収中立の原則に従って税制そのものを見直しているんですが、日経を含め日本のメディアではその部分がすっぽり抜けていて、税率だけを比べるような表層的な報道ばかりです。

アメリカでも直近の歴代政権はほぼ例外なく法人税減税の論点整理をしており、子ブッシュ政権時代にはスウェーデンなどの法人付加価値税まで俎上に載せられましたが、主に議会のねじれがあり、また保守、リベラルを問わず議員がロビー活動に晒される中、結局実現しませんでした。しかし論点の掘り下げ作業そのものは行われているので、トランプ氏のようなぽっと出の大統領でもまともなプランをまとめられるし、議会を説得できれば実現可能性はそれなりにあります。幸いというか、大統領選と同時に行われた議会選挙で共和党が上下両院で過半数を占めており、加えて中身次第で民主党議員の賛同も得られる可能性のあるプランならば議会を通る公算はあります。

で、トランプ氏のこれまでの主張から敷衍して、トランプ氏が狙うのは国内産業の復活であって、ある意味わかりやすいですし、加えてアップルやスターバックスで問題になったアメリカ企業の租税回避策をやめさせることです。ブッシュ政権時代の対テロ戦争で資金源を断つ目的で規制強化して、例えばマカオのバンコ・デルタ・アジアの北朝鮮関連の預金を封鎖して金正日政権に打撃を与えたりしたわけですが、その流れでマネーロンダリングの拠点としてのタックスヘイブンの金融機関にアメリカ国籍の個人と企業の口座情報開示を迫り、見える化されたことで、アップルやスタバの租税回避まで明るみに出たわけです。あと例のパナマ文書のリークですが、これがいろいろ謎な部分がありまして、中国接近を狙うイギリスへの牽制のほか、プーチンや習近平の身内や知人、アイスランドの現職首相などの個人名が晒されましたが、いずれも当時のオバマ政権と対立したり意に添わなかったりする人物ばかりというところに政治的な意図が見え隠れします。ただしこれが英国民にBrexitを決断させた可能性もありますが。

てなドロドロの状況で、漏れ聞こえるトランプ税制では、法人税率が35%から20%になるとか、キャッシュフロー課税になるとか、輸出分の売り上げを除外できるとか、逆に輸入は海外現地法人が立地国に支払った税金の還付を認めないとか、いずれも断片情報としては聞こえてきます。はっきり申し上げますが、この程度の断片情報からトランプ税制の枠組みを再構成することは、アメリカを含む世界で進む税制に関する議論をフォローできていれば可能です。上記の日経記事が恥ずかしいというのはそういう意味です。

法人税率を下げるために課税ベースの拡大は世界の常識で、日本でも民主党政権時代に、虫食い状に課税ベースを蝕んでいる租税特措法減税の見直しが議論されましたが、当時の経団連とメディアが叩いて阻止されました。租税特措法減税は例えば設備投資減税にしろ研究開発減税にしろ、企業の申告によっていますから、実態が見えにくく、当局も当該企業も国民の批判に晒されることのない聖域だったわけですが、そこを踏んだ民主党政権がバッシングされたわけです。しかし世界の常識とはかけ離れた話です。加えて法人減税は海外からの投資を呼び込む意図もあるわけで、その意味では日本のように租税特措法で当局と阿吽の呼吸が取れる国内企業に有利な仕組みの見直しは避けて通れません。

でトランプ税制で法人税率を20%に下げるのも、課税ベースの拡大によって行われるわけですが、その際にキャッシュフロー課税が導入されるんじゃないかという観測がされてます。これ簡単に言えば減価償却による無税の資金留保は認めない代わりにキャッシュアウトを伴う設備投資は奨励されるから、設備投資が活性化して国内産業の復活を後押しするというわけです。

あと輸出の売上計上除外は事実上輸出分の法人税減免になり、日本の消費税に相当する付加価値課税がなく輸出還付金がないアメリカにとっては、言ってみれば貿易のイコールフッテイング税制となるわけで、高関税を課せばWTOに提訴されて敗ける可能性もあり、現実的には難しいですが、国内税制を弄って同等の効果を狙うのはあり得ます。仮にこれがWTOに提訴されても、そのときは付加価値税の輸出還付を行っている国を逆提訴して対抗するつもりでしょう。当然日本も対象になります。

そして輸入課税ですが、これアップルやスタバなど海外で資金留保している多くの米多国籍企業にとっては、海外生産を見直さざるを得なくなる上、米連邦政府にとっても、莫大な税収増をもたらす可能性があります。これを原資に老朽化が進むインフラ投資を積極化するというシナリオにリアリティが出てくるわけです。そんな背景を日本のパワーエリート達は理解できているのでしょうか。

トランプ氏介入、トヨタにも メキシコ投資に「あり得ない!」  :日本経済新聞
これ日本財界の賀詞交歓会でトランプ景気でイケイケムードの中、豊田章男社長がそれでもメキシコ工場への投資は予定通り行うと述べた直後のツイートだったってこともあり、一転財界人を慌てさせたようですが、上記の背景が見えていれば、フォードがメキシコへの工場移転を撤回した理由と共に、違った反応になったはずです。とりあえずトヨタはトランプ氏にアメリカ経済のメンバーと認められたとも取れ、ある意味メキシコに工場作ると損するぞという忠告と受け取ることも可能です。「メキシコに工場を作っても米国内の雇用は減らない」といった反論をしてますが、トランプ氏はそんなこと聞いてないんで、アメリカ国内に投資を呼び込もうということです。ある意味そのための法人税減税でもあるわけです。はっきり申し上げて、日本以外のグローバルエリートにとって自明のことすら、日本のパワーエリート達は理解していないということがバレちゃったわけです。企業の租税回避は各国とも悩みの種だけど、こうして自国に税収を引っ張ろうとしている状況はあるわけで、これ恥ずかしいを通り越して日本の未来が危ないぞ。

ただ誤解のないように申し上げておきますが、私自身はトランプ支持でも何でもないですし、おそらくトランプ改革は失敗するんじゃないかと踏んでます。特にインフラ投資に関しては、既に完全雇用に近い現在のアメリカで、財政出動で公共工事を積み増しても、震災後の日本と同じように深刻な人手不足に見舞われるだけの可能性があります。ただしアメリカは従来移民受け入れで人手不足をクリアしてきたわけですから、移民排斥を公言するトランプ氏はわざわざそれを難しくしているわけです。公共事業拡大の必要性と難しさを示すこんな報道も。

NYで列車脱線、100人超負傷 大半が軽傷か  :日本経済新聞
NYメトロノース傘下のロングアイランド鉄道は昨年10月にも事故を起こしておりまして、しかも今回と似たようなターミナル駅での暴走事故で、日本のATSに相当する保安装置があれば防げた可能性がありますが、収益に結びつかないということで鉄道会社は投資に及び腰です。連邦政府の補助が必要ではないでしょうか。一方でこんな話題も。
「幻の地下鉄」に学ぶインフラ投資の試練  :日本経済新聞
100年前に構想されたNY地下鉄セカンド・アベニュー線ですが、大恐慌やww2で計画が中断。戦後も市財政の破綻で事業化が遅れに遅れてやっと2007年に着工されたものの、人手不足で工事はべた遅れ。クォモ市長が発破をかけて昼夜突貫工事の末、異例の元旦開業となり、試乗したニューヨーカーたちも驚きとともに喜びを分かち合ったということですが、これだけならいい話で終わりですが、既に人手不足は顕在化していて、今後公共事業の拡大の困難さを示してもいるわけで、喜びも半ばということになります。こんなことも踏まえながら、トランプのアメリカがどうなっていくか、興味は尽きません。

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Sunday, December 25, 2016

死ななきゃ治らないナントカ

クリスマスです。ハロウインのときのエントリーで指摘したように、日ロ首脳会談での領土交渉の進展はありませんでした。これロシア側からのサインが出てましたが、予備交渉の過程で引き渡し後の領土に米軍基地が置かれる可能性を問われて有り得るとした返答で態度を硬化したとされますが、ソビエト時代から言われていたことの確認に過ぎませんし、沖縄の普天間基地の移転先の辺野古の反対運動や北部訓練場変換に関連した高江ヘリパッドの建設強行に対する反対運動に対して、日本政府が強行している姿勢を見て、日本への主権の引き渡しは無理と判断されたというのが実際のところです。日ロ関係は日米関係に規定されるのが現実です。

加えて言えば択捉島へのミサイル配備問題ですが、これ地対艦ミサイルってところがミソです。つまり標的はあくまでもオホーツク海での外国軍用船の軍事行動をけん制するためで、ロシアの核戦略と関連します。ロシアは保有する核弾頭の数を保持しつつSLBMへの転換を発表しております。オホーツク海にはSLBM搭載原潜を潜ませており、その太平洋側の出口ということですね。これがあるからシリアでのロシア軍の軍事行動に対してアメリカも文句を言えないわけで、核抑止力を効かせながら局地戦を睨んだロシア軍の部隊編成の小規模化とも連動します。そして支援を得たシリア政府軍による反政府勢力の制圧は時間の問題というところまで来ています。正邪の判断を横に置けば、ロシア軍改革は大成功といえます。

あと鉄ちゃん的蛇足ですが、津軽海峡を国際海峡とするためにここだけ領海3カイリに設定しているのは津軽海峡を潜航航行するソビエトの核搭載原潜の通過を現実的に阻止できないことから便宜的にそうしているわけで、現在もロシア原潜の日本海から東シナ海への航路として機能させることが、海洋進出を進める中国へのけん制になるので、維持されています。青函トンネルは日本の鉄道で唯一施政権外エリアを通過する存在としての意味があるわけですが、有事の輸送路となるインフラのメンテナンスを経営不振なJR北海道へ丸投げってのも危ういところです。

こういうことが頭に入っていれば、今回の日ロ交渉で領土問題が1ミリも動かないのは自明というわけです。期待をにじませるメディア報道はおそらく官邸からのリークでしょうけど、逆に領土問題の解決困難を国民に印象付けたわけで、結果的に領土抜きの経済連携となりました。クリミア編入を巡る対ロ経済制裁を一部緩和した形ですが、全面解除ではないからロシアから見ても不満の残る結果であり、大盤振る舞いした割には成果の少ないものになりました。

誤解のないように申し上げますが、私自身はそれでも極東やシベリアの開発を巡る日ロの連携はやるべきだという立場です。できれば日ロ間のガスパイプラインや電力連携線の整備は、日本のエネルギー政策に革新をもたらします。是非やるべきです。むしろ今回のことで領土領土とうるさいめんどくさいウヨどもを黙らせることができれば成果あったと言えます。あれ、安倍政権褒めてるwwwwwww。

一方混迷を深める南スーダンを巡って異変が。

南スーダンへの武器禁輸決議案、安保理で否決  :日本経済新聞
南スーダン情勢の緊迫化で大量虐殺の可能性ありとする武器禁輸の安保理決議で中ロと共に日本が棄権に回り、8ヶ国の棄権で必要な得票数に届かず秘訣されました。アメリカからは棄権しないよう働きかけがあったにも関わらずですから、アメリカからは非難されてます。日本政府の言い分は武器禁輸で南スーダン政府を刺激する方が危険というロジックですが、自衛隊をPKO派遣しているからということですね。

しかしそもそもPKO法では戦闘地域への派遣は禁止事項ですし、現地情勢次第で撤退を決断しなければならない局面なのに、国連が派遣する文民を警護するという変な理屈で所謂駆け付け警護(意味不明な用語ですが)を新たな任務とするという逆の対応を取っています。同じくPKO部隊を派遣する中国に対するライバル心からか、既成事実の積み上げか意図は不明ですが、現地で起きているのは石油利権のイスラム勢力との分離を狙ってアメリカが後押しした謂わば傀儡政権の南スーダン政府の暴走の結果であり、アメリカの尻拭いを中国と共同で日本の自衛隊が担うって構図はどう考えてもおかしいわけで、頭壊れてないか?

この構図は欧米が関与した紛争の多くで見られるもので、ジョージア(グルジア)紛争といいウクライナ紛争といい、親欧米派の裏に米保守派議員やCIAの関与が指摘されてます。またアラブの春に乗じたリビアの反政府勢力への英仏の支援で結果的にカダフィ政権を排除し、シリアでも反政府勢力へのCIAによる支援はもはや公然の秘密で、資金や兵器がダーイシュ(イスラム国)に流れて混乱しているわけです。大量破壊兵器のウソが暴かれたイラク戦争もですが、こういうろくでもないことを繰り返してきた欧米流リベラリズムへの懐疑が、Brexitやトランプ大統領を生んだわけで、大手メディアによる反Brexitや反トランプキャンペーンもこの文脈で見ると読み解けます。加えて欧米諸国のこの手の工作は昨今必ずしもうまくいっていないことも。時代は確実に変わりつつあります。

あと原発関連でいくつかありますが、これを取り上げます。

三菱重工と原燃、アレバに出資で最終調整  :日本経済新聞
福一事故を受けて安全対策の強化が求められて原発事業の採算性が悪化した結果、こういう妙なことが起きます。儲からないからといってやめられない。確かに廃炉や廃棄物処分などでやめられちゃ困るんだけど、コスト面で原発が事業として成り立たなくなってきています。もんじゅの廃炉も決まりましたが、高速炉は廃棄物を減らせる可能性があるということで開発は続けるというのですが、日本が大量のプルトニウムを保有する理由がなくなるという方が大きいのでしょう。もう一つこれ。
東電の原子力事業、再編相手公募へ 経産省有識者会議が提言  :日本経済新聞
f福島の賠償と廃炉で青息吐息の東電と組むメリットはほぼ皆無です。天然ガスなどの燃料調達のために東電と合弁でJERAを設立した中部電力からして東電と組んだことを死ぬほど後悔してるってのに、公募で再編相手が見つかると考える有識者とやらの眠たい議論を続けるのは、東電を破綻処理しなかった結果です。あーうましか。

一方でこんなニュースも。

鉄道が送電会社になる日 電線そのまま活用  :日本経済新聞
実は以前、このエントリーでJRの直流送電網を利用した電力託送事業の可能性を指摘したことがあります。記事はえちぜん鉄道の事例で、沿線の過疎化で収益確保が困難なTローカル私鉄の新たな収益源としての取り組みですが、うまくいけば大手私鉄やJRへ波及することも期待できます。

背景として元々鉄道は負荷変動が大きいがゆえに、電力会社から嫌われ不利な契約条件を余儀なくされているのですが、加えて技術革新で回生ブレーキが常用されるようになり、古い饋電システムではむしろ負荷変動を助長することもあり、固定買い取り制度(FIT)でも鉄道の回生電力は除外されました。そんな中で大手私鉄は変電所にNAS電池やキャパシタなどの蓄電装置を置いて負荷の平準化をしたりしてますが、ローカル私鉄ではそういった設備投資も単独では難しい中で、送電事業で託送料徴収して収益源とすることでクリアしようということです。ささやかなチャレンジですが、直流送電の特徴を生かして直流発電となる太陽光の電力を受け入れるなどして量の確保ができれば、結構使えるビジネスモデルになります。

九電ショックで売り先を失った太陽光発電の受け皿となれば、萎んだ太陽光発電の再活性化の可能性もあります。そして大手やJRにまで波及すればですが、原発の廃炉費用を託送料へ上乗せしようという経産省と電力会社のゴマカシを阻止できる可能性もあります。加えて隠れたメリットも。

電力回生ブレーキでせっかく省エネを実現しても、それを活かせない現在の直流饋電システムですが、例えば3,000Vの高圧直流で饋電してDC-DCコンバータで降圧して架線に供給する直流版AT饋電のようなシステムが可能ならば、変電所の集約と複数の機電区分への電力供給によって、負荷変動自体を平準化するシステムの可能性です。設備の合理化メリットと共に、大電力故に制御が難しくエアーセクション事故のような饋電系トラブルが増えている首都圏のJRにおいて、防止策になるということが期待できるんじゃないかということです。饋電系トラブルの多いJR東日本がチャレンジしてくれないかな。

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Sunday, May 22, 2016

五輪霧中

2020年の東京オリンピックの雲行きが怪しくなってきております。特に2億円超の「コンサルタント料」問題は、下手すれば東京開催返上の可能性すらありますが、国内報道ではその辺の言及がなく、危機感が足りないかも。

そもそも発覚の仕方が異常で、元々ロシア陸連のドーピング疑惑を捜査中に、渦中のIOC幹部の息子の会社に2億2,000万円が振り込まれていて「これは何だ?」というのですから、笑えない。東京開催決定の前後2回に分けての振り込みは賄賂性を疑わせるということで、フランス捜査当局が本気になったものです。

パナマ文書で話題のタックスヘイブン問題が、それ自体では違法性を問えない一方、コンサル料を受け取った会社は、アジアのタックスヘイブンとして知られるシンガポールが所在地で、しかもすでに解散しているとか。裏金ではない証明はほぼ不可能でしょう。JOCが潔白を主張するなら、騙されたとして詐欺で訴えるならわかるけど、守秘義務を盾に解散した会社に操を立ててるっておかしいです。この辺説明付かないなら捜査の進展で返上を迫られる前に、東京開催を自ら取り下げる方が良いかも。オリンピック自体は代理開催でロンドンが有力らしいけど、開催されるなら、出場選手には場所が変わるだけの話です。

以前から気になっていたのですが、オリンピック関連で様々な利権がうごめいている印象はありましたが、生易しいものではないようです。例えば新国立競技場問題では、神宮の森の再開発問題とリンクしていて、ザハ案の迷走がそれをあぶりだしています。

新国立競技場、隈案に決定の裏に利権の闇|Close Up|ダイヤモンド・オンライン
ちょっと複雑なんですが、元々宗教法人明治神宮をはじめ三井不動産など民間地権者の所有地ながら、国内風致地区第1号に指定されて15mの高さ制限が課されていた神宮の森に3棟の高層ビル計画が持ち上がり、それを可能としたのがザハ案の新国立競技場で、それを露払いとして高さ制限が大幅に緩和された新たな都市計画が東京都によって策定され、新高層ビルの日陰となる都営霞ヶ丘アパートは公園化されることになり、住民の追い出しで揉めて裁判になっています。

公園化は再開発で必要になる公園スペースの確保の意味もあります。ところが露払い役のザハ案がコストがかかりすぎると批判を浴びて白紙撤回され、再コンペとなったわけですが、この先がややこしい。隈研吾氏と伊東豊雄氏の2案に絞り込まれ隈案で決着したのですが、隈案はザハ案でサポートした日建設計がサポートしており、データ流用を巡ってザハ氏から知的財産権侵害を指摘されるなど火種は残っております。問題になった聖火台はサブトラックと共にザハ案では別に作る計画だったので、隈案では反映されていなかったって、そうなるとパクり疑惑は深まるのか?-_-;

で、問題なのが伊東案の落選理由。伊東案ではコスト削減の別メニューとして人工地盤上の公園計画を省略した案を提示した結果、東京都側の委員が反発したとか。曰く「今更都市計画を変更できない」だそうな。これ神宮の森のトリプルタワー計画と読み合わせると腑に落ちます。高層ビル建設のためには所定の公園面積を確保しなければならないんですから。伊東氏にしてみればコスト削減のための別メニューの提示で撥ねられた格好で、良心を示したのにとかなりお怒りだとか。

もちろんこれらは状況証拠だけですが、そもそもザハ案自体が神宮の森の高さ制限緩和のダシに使われた可能性もあるわけで、オリンピックという夢の祭典はここまで食い物にされているのかと愕然とします。本来公共施設のデザインコンペでは、建設の目的や予算、立地場所の法規制などの建築与件を明示して行われるはずですが、新国立競技場ではそれがなかったようです。結果として径間500mを超える巨大キールアーチという物理法則に挑戦するようなザハ案が採用されたわけで、意図を感じざるを得ません。ザハ案に批判が集まって白紙撤回された一方で、旧国立競技場の解体を拙速に進めたのも、既成事実を作って後戻りできないようにしたと見えます。

それでもコスト面での世論の批判もあり、舛添都知事によって競技施設計画の一部が中止されるなどしたのですが、その舛添都知事が今批判を浴びています。

高額出張や公用車利用… 舛添都知事に「公私混同」批判  :日本経済新聞
批判の許が専ら与党の自民公明陣営からというのが匂います。何だか猪瀬前都知事のときのように、辞めるまでバッシングが続く感じです。しかも猪瀬氏は都知事選を控えて徳洲会から5,000万円を受け取ったわけで都知事としての責任を問われる構図だったのですが、舛添氏の政治資金絡みの問題は都知事になる前の話ですし、都の公金や公用車の使用に関しては、一応都の基準の範囲内です。ま、これも石原都知事時代の蕩尽で基準が緩くなっていたのかもしれませんが、当時一部で批判されたものの、今回のようなバッシングにはなっていません。早い話舛添氏は虎の尾を踏んじゃったのね。だから都議会も100条委員会を開きたくても公式には理由がないわけで、あとはひたすら叩いて辞めるのを待つってことじゃないでしょうか。てなわけで五輪霧中^_^;。

これらは公共事業では普通に行われてきた手法ではあります。だから時々揉めるわけで、最たるものは成田闘争ですが、辺野古の新基地でも同様のことが起きています。ほとんど報道されませんが。そんなときにこんなニュース。

沖縄女性遺棄 日米首脳会談で再発防止要請へ  :日本経済新聞
政府も抗議の姿勢は見せているものの、沖縄での世論の沸騰に広島訪問を決めたオバマ大統領や日米同盟の先行きを心配って変だろこれ。

えーと、正確には公共事業ではないんですが、先日市川市で住民の反対で保育園の建設断念のニュースがありましたが、報道が明らかなミスリードで、近隣住民が子供の声にうるさいと苦情といったニュアンスで報道されましたが、住民の言い分は、事業主体の社会福祉法人の説明が不十分で市川市も対応が悪いこと、特に前の道路が狭く、保育園ができて児童の送迎のマイカーが増えれば通行が困難になることが一番の問題ということで、そうなると道路の拡張など都市計画から見直さないと保育園一つ作れないというわけで、児童の歓声の苦情が事業者や行政の見直しの口実に使われたということのようです。神宮の森の再開発や辺野古の新基地とは逆の構図ですが、利権絡みでやらなければならないことは何が何でもやるけど、そうでもない案件は人のせいにしてやめる。自分たちは傷つかないというわけですね。

昨今、東芝の粉飾問題や三菱自工の燃費不正など、日本企業の劣化を示すニュースが続きますが、その流れの中で共通する問題は、リーダーの不作為や現場軽視に、優秀なはずの現場が疲弊しているのではないかという疑問です。オリンピックも元々既存施設の活用でローコストでエコな大会を目指していたはずが、予定になかった国立競技場の建て替えを皮切りに神宮の森の再開発とどんどん話が大きく膨らむ一方、人手不足で人件費はつりあがる一方、ゼロ年代のリストラで職人をリストラで社外へ出した結果、横浜の傾きマンション問題などが起きるわけですが、その時に指摘した技術者の高齢化と若者の減少による技術の伝承問題もあり、現場の能力低下も疑われます。

技術の伝承問題はそもそも国鉄改革で誕生したJRで指摘された問題で、国鉄末期の新規採用手控えとJR化後も余剰人員対策もあって採用手控えが続いた結果、40代の中堅社員が極端に少ない歪な年齢構成となっており、例えばJR福知山線事故のときの若過ぎる運転士が日勤教育などの懲罰的処分を恐れて指令への虚偽報告をしたりしたことが、事故の遠因となっていると指摘されてます。昨今特に気になるのが饋電系のトラブルで、3月にも高崎線籠原駅での碍子の経年劣化によりDC1,500v電流の地絡事故で連動装置などが焼損した事故では、復旧に2日半を要し影響甚大でした。碍子の経年劣化そのものは阻止できないので、劣化を早く見つけて交換するしか対策がないのですが、海岸沿いなど環境的に劣化の早い場所は現場で経験的に把握されていて、重点的に点検、交換が行われていました。籠原の現場がどうだったかは不明ですが、技術伝承がどうだったかなど、不明な問題は残ります。

き電系統の事故は復旧に時間を要するのは2015年8月の京浜東北根岸線桜木町事故でもありましたが、このときはエアセクション停止による前後き電区間の短絡による大電流で架線が溶断したものでした。京浜東北根岸線は保安装置がATCで、停止禁止のエアセクションには止まらない仕様だったのに、花火大会で駅の混雑対策でホームの混雑が引けてから次の電車を入線させるという確認運転をしていたことが仇となり、手動運転で停止禁止エアーセクションに留まってしまったものです。運転士はエアーセクションの停止禁止は把握しておらず、典型的なマン―マシン系トラブルとなりました。お金かけて高度な保安装置を入れればよいわけではないわけです。むしろシステムの構成が複雑化すると、事故対応も複雑化して想定外の結果を生むこともあるわけです。国鉄改革から間もなく30年を迎える中、JR各社は難しい段階にあるようです。

おまけですが、鉄道ジャーナル6月号の曽根悟教授の高崎線事故の解説が面白かったのですが、首都圏のJRでき電事故が目立つのは、日常的に大電流を扱っていることと関係がありそうです。供給電力が15連3列車が重なると10,000Aにもなるのでは、正常電流と異常電流の区別がつきにくく、自動遮断の精度を上げられないということですね。結果的に地絡事故が起きても回路の自動遮断ができずに大事故になるということで、難しい課題です。

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Sunday, December 06, 2015

傾く日

テロ事件やCOP21など、さまざまニュースがありますが、今回は経済です。まずはこれ。

7~9月期実質GDP、年率0.8%減 2期連続マイナス  :日本経済新聞
元々2期連続マイナスは予想通りですが、これを景気後退とせずに景気回復途上の踊り場とするメディア報道は全く意味不明です。戦時中の大本営発表で大惨敗のミッドウエー海戦報道と見まごうばかりです。内需はマイナスですが、消費はそこそこ健闘したものの、設備投資が想定を下回ったもので、企業の先行き慎重姿勢は明白です。2015年度の内閣府試算(+1.5%程度)を実現するためには10-12月期、16年1-3月期ぞれそれで+4.7%程度が必要というわけで、2期連続のV字回復が必要というほとんど不可能な状況です。それどころか2014年度に続く2年連続マイナス成長の可能性もあり、明らかにアベノミクスは破たんしてます。

にもかかわらずその検証もなしに新三本の矢とかでGDP名目600兆円を目標に掲げる胡散臭さに呆れます。しかも16年度から推計方式の見直しで企業の研究開発費をコストから付加価値に変更するということで、これだけで20兆円下駄を履かせるインチキぶりです。加えて3%の名目成長率はザックリ23年で2倍になります。上記の下駄を履かせた状態では2020年頃には達成可能な数字ではありますが、異次元緩和でも現実の名目値は2%にも届かない状況です。ま、単に目先を変えて誤魔化しているというのが実際でしょう。

流石に近頃リフレ派は静かですが、どうしたんでしょうか。その中でアベノミクスを評価したアメリカのクルーグマン教授は、異次元緩和でも賃金が上がらない日本の現状を見込み違いとして事実上間違いを認めました。クルーグマン教授は元々ケインズ派で、財政出動や金融緩和で完全雇用が実現すれば賃金が上がるというケインズの理論から導き出した見解だったのでしょうが、日本で起きている派遣やパートなどの非正規雇用の拡大と正規雇用の縮小という歪んだ労働市場の現状を知らなかったのでしょう。この点はアメリカでも最近はIT業界の高給と他業種の賃金低迷という二極化が進行していてイエレンFRB議長を悩ませているなど、世界的に進行している現象ではありますが。

ことほど左様に安倍政権の経済政策は出鱈目ばかりなんですが、法人減税を強引に進めていて、賃上げのためという説明がされてますが出鱈目です。アベノミクスの円安効果で最高益を謳歌する経団連加盟の大手企業こそ賃上げが実現しているものの、円安で原材料費の値上がりに苦しむ中小企業はむしろ賃金が下がっているのが現状ですが、法人減税の財源に赤字企業への外形標準課税というのは、最高益を謳歌する大企業の法人税を減らすために赤字の中小企業から税を取るという話で明らかにおかしいですし賃金上昇にもつながりません。携帯料金の値下げ問題にしても、家計の通信費シェアが上昇していることを問題視しているようですが、これもスマホの普及で2台持ちが増えた結果であり、それだけ携帯の利用が深度化したものということで、高市総務相と有識者会議は梯子を外された格好です。アホクサ。

てなこといろいろありますが、きりがないので本題です。

中古マンション価格頭打ちか 不動産市場の変調 :日本経済新聞
これ割と重要なニュースなんですが、マンション販売が好調で、既に数字上はバブル越えの高値成約が続いていたんですが、種明かしすれば中国人による投資用の購入が相場を押し上げてきたものが、7月の上海株ショックを受けて資産の整理にシフトしたと見られます。その結果マンションが売られ、中古マンション市場の在庫が積み増す状況となっているわけですね。

投資用というのは賃貸などで運用することを意図したもので、Airbnbなどの民泊と呼ばれるシェアルームも含みます。政府の音頭取りで大阪市や大田区で民泊解禁の条例が成立しましたが、現実はすでにその先へ進んでいるわけです。で、比較的新しい物件が中古市場に在庫として積みあがれば、当然新築マンションの売れ行きに影響が出ます。というわけで、好調なマンション市況の終焉というわけで、2007年のミニバブル崩壊に近い状況になりつつあるというわけですね。

似てるのはそれだけじゃなくて姉歯事件で揺れた建設業界をまたしても傾きマンション事件で大揺れです。しかも予想通りというか、データ改ざん自体は業界全体に蔓延していたことが明るみに出てにっちもさっちも状態。やはり姉歯事件を受けて検査の厳格化で工事が滞って完成不況と言われた2007年とそっくりの展開です。しかも実際の工事は姉歯事件とほぼ同時進行で、発覚が今になっただけですが、奇しくも当時第1次安倍政権の時代。これ偶然ではありません。しかも横浜の傾きマンション事件でも三井住友建設と旭化成建材の対立が出てきて事態は混とんとしてます。

杭打ちミス、設計か施工か 三井住友建設と旭化成建材が対立  :日本経済新聞
元々1年以上前に発覚したマンションの傾きですが、売り主の三井不動産レジデンシャルは消極的な対応でぬらりくらりしていたのですが、今年に入って横浜市の検査があって杭が支持層に届いていないことが報告されると、一転全棟建て替えを言い出しましたが、ブランド防衛に動いたと見られます。費用は通常建設会社の負担となりますが、元請けのグループ企業である三井住友建設にかぶせることを回避するためか、通常は表へ出ることはない2次下請けの旭化成建材を住民説明会に引っ張り出すなど謎の行動に出ます。どうも旭化成は嵌められたようです。

旭化成建材がデータ改ざんしたのは事実ですが、現場責任者は杭は支持層に届いていると主張し、旭化成は三井住友建設に再調査を申し入れてますが三井住友はそれを認めないという態度で膠着しています。全棟建て替えも管理組合全体で4/5、各棟で2/3以上の賛成という高いハードルを越えられずに補修だけで終わってあいまいな決着となる可能性もあります。そうなると真相は藪の中。問題は未解決のままとなります。

件の現場責任者も元々は3次下請けの社員で工事期間中旭化成建材に出向していた身分ということで、現在も全国の現場を渡り歩いている状況ですが、これはゼロ年代のミニバブル期の建設業界の状況からこうなったということは言えます。当時公共工事は圧縮傾向の一方、容積率緩和などで民間工事は盛んでしたが、工事費には大きな開きがあり、民間は公共の半分という極端なケースすらありました。その中で建設会社はリストラに勤しみます。高給取りだけど工事期間以外は仕事がない技術者を社外へ出し、社内に技術者がいない状況で、現場の監督業務まで下請けへ丸投げし、社員は現場から上がってくるデータを取り込んでパソコンとにらめっこという状況になります。いつしか現場では期日までにデータを元請けへ上げることが仕事というずれた状況になったわけです。

しかも若年人口の減少もあって技術者自身の高齢化は進み、若手の補充がないから技術は伝承されず尻すぼみどころか、今回のように現場の技術者に責任転嫁するような建設会社には協力する技術者がいなくなる可能性もあります。ある意味三井住友建設は虎の尾を踏んだわけです。さて、こうしてじり貧状態で、震災復興も半ば、五輪特需や国土強靭化などでリソースの枯渇は目に見えております。その意味ではマンションブームの終焉は微妙な時期の出来事という皮肉な結果ですが。

これかつて国鉄末期に赤字を理由に採用手控えの結果、今になって40代の中堅社員が不足し技術の伝承に支障するJR各社と同じ過ちとも言えます。逆にJRも今が正念場ということですが、残念なニュースあれこれが。

電柱折れ一時運転見合わせ JR横浜線、工事中に  :日本経済新聞
4月にも山手線・京浜東北線の神田駅付近で架線柱が傾いて止まりましたが、今回は横浜線の鴨井駅付近で工事中の架線柱が折れたということで、架線周りのトラブルは復旧に時間がかかるだけに繰り返してほしくなかったのですが、保守作業員の確保も含めt下請けに依存する傾向が強まっており、対策は難しいところですが、解決策というべき未来にも問題が。
JR東、最新技術に誤算 山手線新型車両トラブル  :日本経済新聞
INTEROS(インテロス)という新システムで各種センサーで荷重や線路や架線の状態を監視し、制御に反映させるシステムを搭載したものの、物見高い鉄ちゃん達の集中乗車でシステムが破たんしほろ苦い営業デビューとなりました。試運転中に死重搭載を定員の40%相当でしか行わなかったなどが指摘されてますが、おそらくコンピュータでのシミュレーションでは問題なかったから省略したのでしょう。最近では自動車メーカーの新車開発でも同様のことは行われておりますが、いくらなんでも場合によっては定員の3倍超の荷重すらかかる通勤電車でなめてかかったと言われても仕方ないところ。その辺を突っ込むベテランが開発チームにいなかった可能性はあります。

最後のおまけ。

東芝、情報開示後ろ向き 米原発子会社1156億円減損発表  :日本経済新聞
以前から指摘されてきたWHののれん代減損問題ですが、やっと減損処理は認めたものの、本体の連結決算には反映させず、情報開示が不十分と批判を浴びています。安倍政権肝いりのコーポレートガバナンスコードもどこ吹く風。そういえば東芝も知る人ぞ知る三井グループ。似ちゃうのかなぁ。

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Sunday, November 22, 2015

放置国家の呆の支配

先週はパリの同時多発テロで大変でしたが、たちまち世界は9.11後の雰囲気に。当時イラク戦争に反対したフランスのオランド大統領の前のめりぶり概要です。一方議会野党の保守派と急進左派はそろってシリア空爆に反対しているという日本ではわかりにくい構図ですが、それ以上に気になるこのニュースです。

対米協力一歩前へ 首相「南シナ海に自衛隊検討」  :日本経済新聞
米中のパワーゲームに日本も混ぜろとでも言いたいのか。南シナ海へ進出したいのか?

中国の岩礁埋め立てと軍事基地化は確かに問題ですが、似たようなことはほかの国もやっていて、中国だけを責めるわけにはいかないのですが、埋め立て地を起点とする領海の主張は明らかな国際法違反なので、アメリカはそこを指摘し、実際にイージス艦を派遣し航行させたわけですが、事前に米中首脳会談前日の9/24に軍事対話の実施を調印し、イージス艦派遣に際して中国と協議を行っていますし、フィリピンやベトナムの領海エリアも事前通告の上航行しており、中国名指しにならないよう配慮しています。言ってみれば大国同士のさや当てのようなもので、大国同士のパワーゲームに過ぎないのですが、日本の政治家でそれを指摘したのは与野党含めて野田聖子だけっておい、他の奴らキンタマついとんのかい?

あともし仮に南シナ海への自衛隊派遣が実現すると、尖閣諸島の守りが手薄になるのは言うまでもありません。リソースは有限なので、むしろ中国にとってはおいしいところ。それ以前に日米防衛ガイドラインで米軍のプレゼンスが後退していることはほとんどメディアも報じませんが、中国公船の挑発は、アメリカと事を構えたくない中国が、アメリカが出てこないと見ているからなんですが、逆に軍の艦船を派遣しないのは、アメリカの顔色を窺ってはいるわけで、アメリカでも日米安保による巻き込まれ論が保守派内でも言われております。日本の独り相撲です。

近代戦争は国の工業力を背景とした総力戦という性格があり、ww1やww2が典型的です。その結果敵国の工業力を破壊することが戦略上求められるわけで、ww1でドイツ飛行船によるロンドン空爆から始まり、ww2の広島と長崎への原爆投下も同様です。かくして近代戦争は戦勝国も含めて参加国のダメージが大きすぎるということで、戦後東西冷戦もあって大国同士は直接戦争しないという暗黙の了解が成立します。その代り周辺国の代理戦争は収まらず、兵器性能が向上し殺傷能力を高めているだけに、紛争当事国の疲弊は尋常ではない状況になります。

という国際社会のコンテクストを踏まえれば、ロシアがウクライナイに干渉しクリミアを併合したのも、そうした軍事大国同士のある種の相場観から導き出されたもの言えます。そしてロシアのシリア空爆は二正面作戦に割けるリソースを持たないロシアのウクライナへの干渉は低下するし、またダーイシュ(イスラム国)という共通の敵を設定することで、ロシアと西側種国の対立も軟化するという連鎖になります。ロシア機撃墜とパリ同時多発テロで関係はさらに補強されます。おそらくクリミア問題は沙汰止みになるでしょう。そんなロシアに「北方領土返せ」と言って取り合ってもらえないのも無理もないところ。善悪を超越した外交の機微に疎い日本の出番はここにもありません。

で、シリア空爆ですが、ダーイシュ支配地域の石油精製施設への攻撃は、敵の工業力の破壊という戦略になりますが、ダーイシュは石油だけではなく、営利誘拐その他の資金源もあり、また「ユーフラテスの三日月」と言われる穀倉地帯を抑えていて、広大な農地への空爆はほとんど意味がありませんし、地上戦で奪回するにしても、戦線が間延びして対応が難しいということもあります。加えて古代イスラム帝国で異教徒に課した人頭税を徴収していると伝えられています。おそらくこの部分はイラクのバース党残党が担っているのでしょうけど、問題は異教徒の範囲でして、イスラム教シーア派や、スンニ派でもイスラム帝国再興という自分たちの大義に協力しない「堕落した」者たちも含まれてるかもしれません。人頭税を払わなければ容赦なく粛清されるという形で、恐怖の統治が行われているとすれば、難を逃れるシリア難民が大量に出ても不思議ではありません。加えて空爆もありますし。

そのシリア難民をドイツを中心にEUが積極的に植え入れる姿勢を見せていることは、人頭税の減少につながりますからダーイシュにとって面白くないわけで、また空爆への報復の意味も含めて、ロシア民間機やパリの劇場など、攻めやすいところを攻めているという意味で、ダーイシュのテロは戦略的です。殺害された実行犯の1人にシリアの偽造パスポートを持たせたのも、欧州の難民排斥の世論の刺激を狙ったものでしょう。

元々主権国家ならざるダーイシュとの闘いは非対称戦なわけで、ダーイシュは堕落したエジプトの官吏を篭絡したり、若年失業率が高止まりしている欧州で不満を抱く若者をリクルートするなど、ダーイシュ側のリソースをあまり消費せずに犯行に至ったわけです。それを支えるのがSNSなどのネットインフラですが、PS4やⅩboxなどのゲーム機のオンラインゲームのチャット機能を使った情報交換が行われていたという報道もあります。仮に通信を傍受してもネットゲームを楽しんでいるようにしか見えないわけで、犯行を事前に察知することは困難です。

というわけで、パリのテロは背景に先進国の所得格差の拡大があるわけで、結局ここを何とかしないとテロリストに付け込まれるわけです。空爆で解決できる可能性は皆無です。それでもロシアを含む大国同士で共通の敵を作ることで、格差問題のような厄介な国内問題を逸らすことはできるわけで、リベラルなはずのオランド大統領の過剰反応を見ると、暗澹たる気分になります。資本主義社会では所得格差の拡大は不可避で、対策の必要性を指摘したピケティの母国でもあるんですが。国内の格差問題という意味では、日本にとっても対岸の火事とは言えません。

その後の報道で実行犯の若者の実態も明らかになっておりますが、移民でフランス語が不自由でファストフード店ぐらいしか勤務先がなく職業的スキルを身につけるチャンスすらないといった中で、簡単にリクルートされているわけです。元々敬虔なムスリムでも何でもない若者が、イスラムの大義を教条的に吹き込まれればどうなるかということですね。このことの深刻さは、日本で言えば根拠不明の「日本の伝統」にコロッと騙され不満のはけ口を在日韓国人などへのヘイトスピーチで紛らすネトウヨやウソ八百の大阪都構想再びとやりたい放題の橋下シンパみたいなものとでもいえば腑に落ちるところでしょうか。99%役に立たなくても一般教養が重要なのは、簡単に騙されないことと言えます。大阪の人、民度が問われますぞ。

フランスと言えばこんなニュースも。

フランス北東部の高速列車脱線、10人死亡  :日本経済新聞
テロの翌日ということで、テロも疑われたようですが、単なるオーバースピードということでした。不可解なのは高速新線と在来線の連絡船部分で元々速度制限されていたはずですし、保安装置は働かなかったのかなどの疑問はありますが、続報がないので判断がつきません.。報道の通りならかなりお粗末ですが。

ただ日本でも気になるニュースがありました。

「自家用車タクシー」特区で解禁 交通網弱い地域中心、高齢者・訪日客の足に :日本経済新聞
所謂白タク解禁ですが、過疎地の交通に利用って、そもそも過疎地ではマイカーのトラフィック自体が少ないわけですから、ライドシェアが解決策になるわけがありません。むしろ現行の道路運送法78条、79条で自家用自動車の有償運送が定義されており、実際過疎地の乗合バス廃止代替などで活用されています。日本でライドシェアが解禁されていないのは、鉄道やバスなどの公共交通の役割が大きいことと、とマイカーのトラフィックが輻輳する都市部ではタクシーとの利害調整が必要なことに加え、安全輸送が担保できないとか白タクその他の雲助行為の懸念があることなどなどの理由が大きいでしょう。また多くの都市圏でタクシーの台数制限撤廃で過当競争となり安全輸送が脅かされる事態となって、逆に台数制限が課されているのが現状です。おそらくuberを意識した特区構想でしょうけど、現行法がどういう状況なのかを無視して何でもかんでも特区で規制緩和とは法治国家があきれます。

法の支配を価値観として中国に対抗心を燃やす安倍首相ですが、放置国家の呆の支配が実態です。

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Sunday, August 09, 2015

混雑は飛んで来る

「桜木町で架線切断」と聞くと、戦後五大事故の桜木町事故を連想してしまうんですが、何の因果でしょうか。

京浜東北線、架線切れ運転見合わせ 駅間で停車も  :日本経済新聞
工事作業を誤って垂れた架線に電車が接触してショートして出火し全焼したものですが、戦時設計の元祖走ルンです^_^;モハ63の構造上の問題で、満員で乗客は逃げられず被害を大きくしました。事故を受けてパンタグラフ付近だけだった屋根の絶縁キャンパスを全面張りに改めたり、二段目がj固定で開口面積が狭い三段窓を全上昇式に改造したり、内開きだったために混雑が災いして開けられなかった貫通扉を引き戸に改造したり、乗客が操作できる非常用ドアコックが設置されるなどして、対策されました。

今回はみなとみらいの花火大会で混雑した結果、先行列車の遅れから停止した列車が、停止禁止のエアセクションで停止し、再力行時の大電流でショートして架線が切断し電車に接触したものですが、現代の電車は絶縁も難燃化も強固なものの、停電で長時間の運転見合わせとなりました。また乗務員の制止を聞かずにドアコックを開けて線路に降りた乗客が多数いて、線路が並行する東海道線や横須賀線もトバッチリを受けてしまいました。桜木町事故の因果は巡ります。

エアセクション停止による架線切断は2007年、さいたま市の高崎線でも同様の事故がありましたが、今回防げなかったのはATC設置区間だったからという謎な話。

京浜東北、停止禁止区間から発進 架線ショートし溶ける  :日本経済新聞
つまりATCでエアセクション停止を回避するようシステム化されていたのですが、花火大会の混雑で遅れが生じ、列車間隔を目視で低速運転する確認運転のために、ATCならば停止しない筈のエアセクションに停まってしまったわけです。他の区間は高崎線の事故で停止禁止の音声を流す装置が設置されたのですが、京浜東北線はATC区間ということで省略され、運転士もエアセクションを認識していなかったということです。マンマシン系インターフェースには思わぬ盲点が潜んでいます。

大量輸送に特化していて、とかくそれを揶揄されることが多い首都圏の通勤電車ですが、架線接触で燃えなかったという意味で、安全性は確実に進化しています。その一方で混雑率の数字上は改善されていても、定員超過が日常化している混雑の方は相変わらずというのが何とも複雑な心境にさせられます。世界的にも東京名物満員電車は有名で、昨今増えた訪日外国人観光客の体験乗車という話も。毎日混雑に揉まれる通勤客にとってはありがたくないインバウンド需要です。オリンピック大丈夫かい。スーパーシティの暑い夏です。期間中は積極的に休暇を取りましょう。

今回の事故もみなとみらい花火大会というローカルイベントが引き金を引いたわけです。花火見物は単独よりグループ利用が多いから、グループが固まって奥へ詰めないとか、浴衣に団扇で乗降にも時間がかかるとか、様々な要素が重なった結果かもしれませんが、オリンピックで不慣れな外国人客がグループで移動とか、混乱は覚悟した方が良いです。マジで。慣れた通勤客はらば混雑してもカオスにならないで済みますが、一見客にそれを期待することはできません。

あと忘れてならないのが、今回のように元々輸送量の多いJRが止まった時に振替輸送先となる私鉄が受けきれない問題で、今回は横浜戦も止まったこともあり、いつもの京急に留まらず、横浜市営地下鉄ブルーラインにも振替輸送で乗客が殺到し、やはり混雑により遅延が生じます。当然状況によっては振替輸送先での人身事故などの二次災害も考えられます。日本の鉄道の弱点は混雑ということもできます。定時運行率が高いのも、遅延が発生すると実質的に輸送力が低下して混乱が長引くからということもあります。

加えて「ワタシニホンゴワカリマシェーン」な外国人観光客が巻き込まれるわけですから、ただでさえ省力化でぎりぎりのマンパワーで回している鉄道事業者にとっては災難です。結局自動改札の一部開放などで混乱を回避するしかないというスマートでない対応を迫られます。しかもSuicaなどのIC乗車券は振替輸送対象ではないわけですが、そもそも欧州で見られる運輸連合方式の共通運賃制度ならば、振替輸送そのものが不要なんで、五輪を契機に検討してほしいところです。

にも拘らず、交通政策基本法に基づく国の交通基本計画でも、抽象的な文言が並び、地域公共交通ネットワークの強化などのお題目は並ぶものの、運賃共通化には踏み込んでいません。その一方でLRTやBRTなどの表層的な定義(LRTは低床の次世代路面電車とかBRTはバス専用道や連接バスなど)をしたり、過疎地のデマンド交通を含めて裏付けが不明な数値目標が並んだりで、これでは単なるメニューの羅列に過ぎないわけで、具体的な改善につながるとはとても思えない代物です。

運輸連合方式による共通運賃の阻害要因は主に2つで、1つは鉄道事業法などの事業法で厳格な独立採算原則が与えられており、例えば同一事業者で鉄道とバスを兼業していても、両者それぞれで独立採算を求められます。その一方で同じ鉄道同志での内部補助は自明の前提とされているという縦割り構造があり、まして異なった事業者間の調整を困難にしていることがあります。実際に乗客から収受した運賃の分配が難しいわけですね。

もう1つは独占禁止法との関係です。運輸連合方式は独禁法上は価格カルテルと見做されますから、違反行為となります。それを公共交通の利便性向上でひいては利用率を高めることで公共性があるということを個別具体法で定義してやる必要があるわけです。ところが交通政策基本法にも地域公共交通活性化法にもそのような条文はありませんから、仮に事業者間の調整ができたとしても、独禁法の例外として公正取引委員会に認めてもらう必要があります。しかし現時点では法的根拠はないわけです。

東洋のような大都市で、しかも複数の交通事業者が関わっていて、且つ鉄道事業者同士でも賃率に開きがある状況では五里霧中ではありますが、特定都市鉄道整備促進特別措置法(特特法)で定義する手もあります。共通運賃エリアでは鉄道各社の上限運賃を超える水準の共通運賃を設定し、各社の賃率に応じて分配することで、超過利潤分の残額が出るようにして、その一部をフィーダー輸送を担うバス事業者へ配分し更に残りを特特法の本来の目的である輸送力増強投資の原資として非課税積立し、混雑緩和に必要な投資を後押しするという仕組みにすることが考えられます。高めの運賃設定は、中心部への過度の集中を抑制する意味もあります。

人口減少で通勤通学客が長期的に減少が見込まれる中で、鉄道事業者に大規模投資を控える傾向は否めず、混雑率は長期的に低下しても、混雑の解消は見通せない現状を変えるには、これぐらい思い切ったことをしないと無理でしょう。まして東京名物満員電車の体験乗車を目指す観光客が世界から集まるって、経済を支える現役世代の悲鳴が聞こえます。コンドルは飛んでゆくけど、混雑は飛んで来る(涙)。こんなインバウンドは嫌だと声を上げましょう。

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Sunday, June 07, 2015

あーせい、こーせい、そーせい

てなわけで、前エントリーのジングウ・ファミリアが迷走してます。結局デザインコンペで選ばれたザハ・ハディドとの契約を解除して、どうやら屋根なしスタジアムに仮設スタンドで当座をしのぐようです。問題の根源にあるザハデザインから離れたのは半歩前進ですが、そもそもデザインコンペ当時から指摘されていた問題に目をつぶったまま突っ走った文科省や体協の責任は重大です。

ザハデザインの実現可能性の低さは、あの屋根が径間500mの橋と考えればわかりやすいのですが、川や海なら別の場所で組み立てた橋桁を船で運んでクレーン船で設置という方法が使えますが、神宮の森では使えない手法ですから、現地に巨大鉄工所を期間限定で設置するしかないですし、大量に鋼材などを搬入するためには、広範な周辺道路の整備も必要です。そのために費やされる費用は3,000億円から1,600億円に減額見直しされた本体建設費を上回るものになる上、神宮の森の保全にも悪影響確実というわけで、実際に着手するまで気付かなかった無能ぶりにうんざりします。負担を断った東京都の対応は正しいと言えます。

てなニュースの一方、今週も起きた重大インシデント。

京浜東北線電車が線路内の看板に衝突、けが人なし 点検作業員、誤って置く? - 産経ニュース
空自ヘリ・ANA機・JTA機、あわやのトラブル 那覇空港 | 沖縄タイムス+プラス
名鉄運行続行に疑問 中部運輸局、停電「本来は故障扱い」:社会:中日新聞
京浜東北線で保線作業員の勘違いで並行する東海道線に設置する筈の作業看板を京浜東北線に置いて電車がと今田もの。2つ目は全国版のニュースで大々的に取り上げられましたが、管制官の離陸指示を自機に対してと勘違いした自衛隊ヘリの過失ですが、異常事態を咄嗟の判断で回避したANAとJTAのパイロットはお見事です。3つ目は電気連結器カバーが外れて雨水侵入によるショートが原因んで電源ダウンした列車がブレーキが作動せずオーバーランしたものですが、名鉄の対応にいろいろ問題が指摘できますが、詳述は避けます。

こういうニュースに接して思うのは、日本の人口減少ン0インパクトが、マンパワー不足による労働力の劣化につながっているのではないかという危惧です。人口減少といっても、生産年齢人口の減少ですから、少子化対策は解決策になりません。むしろ高齢者の増加と共に扶養人口の増加をもたらし、少数の現役世代への負担を加重させる悪手です。以前から指摘していますが、労働力の減少は資本装備の増強である程度カバーできるんですから、その方向で対策を打つ必要があります。新国立競技場のようなリソースの浪費は許されないという自覚が必要です。

同様のリソースの浪費は昨今の地方創生ブームにも感じます。そんな中でこんなニュースを取り上げます。

45年ぶりにSL疾走、ファンら見守る 鳥取の若桜鉄道:朝日新聞デジタル
鳥取県の三セク若狭鉄道の活性化策として、JR西日本から無償譲渡されたC12型SLを活用した沿線活性化策の社会実験ですが、車席がなく従来若狭駅構内の体験運転などに試用されていたものを、本線運転しようというわけで、車籍のないC12を走らせるために本線を線路閉鎖して走らせるという手続き上はトリッキーなやり方です。車籍を取得するには保守検査体制を整えて鉄道事業運転規則に合致した体制を組む必要がありますが、自治体主導の三セク鉄道には高いハードルです。

面白いのは撮影地の所謂お立ち台を有料化したことで、単発のイベント運行ではありますが、定期運行を睨んでキャッシュフローを生み出す努力は評価できます。ただしSL運行自体は大井川鐡道のほかJR山口線、真岡鉄道。秩父鉄道などで定期運行され、それほど新鮮味があるわけではありません。競合がある中で、若桜へ足を運んでもらえるにはどうするか、そこまで考えなければうまくいかないわけで、今回の社会実験が一過性のイベントで終わるか、指定日だけでも定期運行にこぎつけられるかは予断を許しません。そしてSL運行の老舗の大井川鐡道にも容赦のない現実が降りかかります。

大井川鉄道、再生支援申請へ 沿線の地域づくりに影響  :日本経済新聞
70年代に名鉄が資本参加し、SL運行で観光鉄道として集客力を発揮し、ローカル私鉄の勝ち組とも目されていましたが、沿線人口の減少には抗えず、また関越道事故を契機とするツアーバス規制強化で、新金谷から大井川鐡道へ乗り継ぐツアーバスが激減し、経営の屋台骨が揺らぎ、利用の少ない一般列車の減便に至ったのですが、島田市をはじめとする地元自治体への支援要請も不発で、政府系ファンドへの支援要請となりました。スポンサーとして北海道のホテル事業者のエクリプス日高が出資する一方、名鉄は撤退します。

地元自治体との関係でいえば、観光鉄道としての成功体験故に自治体が動かなかった可能性があります。つくづく交通政策基本法の元となった交通基本法の民主党案にあった移動権が盛り込まれなかったことが残念です。観光鉄道としての成功は決して鉄道の未来を保障するわけではなく、地域との関係を定義できなければ、生きた鉄道としての命運は開けないということですね。移動権に関しては憲法に定める基本的人権の拡張概念として定義することで、憲法に紐付されれば、憲法そのものの改正をよりやりにくくする意味もあり、現在安保法制絡みで国会が迷走してますが、所謂護憲派も「憲法を守れ」だけではなく、憲法を生かした立法を心掛けてこなかった結果が今の混迷ということですね。ちなみに安保法制に関しては、9条だけが問題ではなく、内閣の権能を定義した73条に軍事に対する指揮権が明記されていないことも問題になります。

ま、こんな状況ですから、某大都市の名物市長ご執心の都市鉄道三セクでのSL列車運行の協力要請を大井川鉄道が断ったのは当然ですね。それどころじゃないわけですから。

というわけで、大都市と地方との関係でいえば無視できないニュースがあります。

25年の東京圏、介護施設13万人分不足 創成会議、41地域へ移住提言 政府、交付金で後押し :日本経済新聞
首都圏の高齢者集中で施設が不足するから、施設に余裕のある地方へ高齢者の移住を促すというのですが、高齢者ほど住み慣れた地域を離れたくないものですし、ましてインフラが整備された大都市部ほど生活しやすいということもあります。むしろ問題は地価が高いがゆえに施設の整備が思い通りに進まないし、介護職の賃金が低すぎて、地価が高い東京では生活できないなどといったことが問題なんで、これは例えば今後建設されるマンションを高齢者対応の医療や介護施設のテナント誘致を義務付けるとか、介護保険からの介護報酬以外に、都などが上乗せするとかやりようがあります。要は実際のニーズに合った社会保障サービスを実現させることであって、数合わせの移住計画などうまく行くわけないです。ま、こんなところに地方創生を打ち出す現政権の統制的な性格がにじみ出ています。あーせい、こーせい、そーせいじゃうまく行かんわ。


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Sunday, May 24, 2015

ジングウ・ファミリア

またしても重大インシデントです。

JR長崎線:わずか93メートルまで…特急同士が衝突寸前 - 毎日新聞
そもそもは下りかもめ19号と上り20号が肥前鹿島駅で列車交換予定だったところ、19号が肥前竜王駅手前で運転士が異音に気付いて緊急停止。異常なしを確認する間に肥前鹿島で交換予定の20号が1駅進んで肥前竜王駅待避線に停止。それを確認した司令員が19号に対して運転再開を指示したものの、19号の停止位置が信号機の真横でしかも停止位置の指令への報告が160mずれていたため、19号の一旦停止を確認してから本線側へポイント転換して通過させる予定が狂い、このような事態になったものです。軌道回路の信号システムの盲点を突くような重大インシデントです。

いろいろな論点がありますが、幹線である重要な長崎本線が肥前山口以西が単線区間になっており、平地の少ない地形もあって複線化も困難ですが、国鉄時代の投資順位の関係もあって、電化はされても複線化は見送られ続け、87年の国鉄分割民営化を迎えます。地方線区でありがちなことですが、民営化後の大規模改良は、本四架橋プロジェクトと坂出、丸亀両市の都市計画の絡みで民営化をまたいで実現したJR四国の高松―多度津間ぐらいのものです。

単線でも使い方如何で生かすことはできますが、そのために所謂1線スルー化という手法が多用されました。元々貨物列車対応で線路用地や有効長に余裕のなる駅構内の土地を利用して、駅本屋側を待避線にして反対側の本線を直線化して通過列車の駅進入時の速度制限をなくそうとしたわけですが、その結果上り列車と下り列車がどちらにも入れる進路構成になっています。必然的に信号とポイントの連動関係は複雑化します。それでも所定ダイヤならば信号現示とポイント転換をパターン化して自動化することもできますが、今回のように緊急停止などで運転整理が必要なケースで、情報の行き違いもあってこうなったわけです。有効長が長かったから衝突には至らなかったものの、きわどいところです。

また肥前鹿島のように元々の特急停車駅では1線スルー化は省かれてますから、19号の緊急停止のない所定ダイヤならば、列車の運行の変更に合わせて手動で進路を構成するようなこともなかったわけです。ヒューマンファクターの入り込む余地が大きくなったわけです。三島会社だけではないんですが、都市間輸送を担う幹線系統で単線区間故に生じる運転取扱い上の面倒な対応は、それだけコストにも跳ね返るわけですから、地方線区でも可能ならば複線化は望ましいところです。再発防止のためには列車選別装置あるいは列車選別機能を内応するATS-Pのような高度な保安装置と首都圏のATOSのような遅延に伴うダイヤ変更で連動関係の変更まで自動化したシステムが欲しいところですが、コスト面でシビアな三島会社では苦しいところ。まして株式上場で全社的にコストダウンの号令がかけられている状況ではなおさらです。何か間違ってますね。

今後は高齢化の影響も視野に入れなければなりませんから、JR九州が必要な人材を継続的に確保し育成できるかどうかも重要です。本来は装置化できるところは装置化していく方が望ましいところですが、逆に地場企業としての求心力を考えたら、本当に苦しいのはJR東日本かもしれません。既に車両や保安装置や饋電システムでメンテナンスフリー化を進めていますが、辛いのは就職先の多い首都圏で求人難の影響を受けやすい上に、現役世代の減少で通勤輸送の比重は下がるかもしれませんが、リタイアした高齢者の移動需要は増えこそすれ減ることは考えにくいところ。運転免許返上なども進むと思われますから、輸送機関としてのニーズの旺盛さは当分続くわけですから、省力化投資にまい進せざるを得ないわけです。そうして生まれた{”走ルンです”^_^;も世代を重ねています。

山手線の次期主力車として量産先行車が登場したE235系ですが、どこがどう新しいのかわかりにくいですね。大きな特徴は従来のシリコン系に代わる次期パワー半導体素子のシリコンカーバイト(炭化ケイ素SiC)素子の採用が挙げられます。シリコン系素子に比べて高耐圧特性に優れていて、高電圧が使える分、抵抗損失が少なく省エネとなる上に発熱が少なくメンテナンスフリーになるわけです。ムーアの法則ではないですが、パワー半導体の分野でもほぼ10年程度で技術革新が行われ世代を重ねる傾向がありますので、それに合わせて新形式を起こすのは合理的といえます。

とはいえ首都圏各線ではE233系が3,000両を超す大所帯となり、置き換える旧国鉄形もほとんど見られなくなりました。一方で特定線区への集中投入が進んだ結果、同一線区所属車の老朽化も同時に進むわけですから、置き換えるときにはまた大量発注が発生するわけです。そしてどうせなら利用客が多い最重要線区の山手線に新車投入すれば、玉突きでE231系500番台をねん出して他線区の輸送改善にもつなげられるわけです。既に1編成が移管された中央総武緩行線への転出が有力でしょう。さらにそこから発生する209系500番台やE231系0番台も、武蔵野線その他への転出と玉突きを繰り返し、北陸新幹線関連で並行在来線切り離し後も残る115系が最終的に淘汰されることになりそうです。

で、電装品の変更はそれに留まらず従来の電動車2両ユニットごとに制御装置という8M1Cの構成を4M1Cで電動車単独ユニットとなったことです。山手線向けはE231系500番台に合わせた6M5Tの編成構成で10号車だけサハE231-4620をサハE235-4620に改称して組み込んでいます。そのため総合車両製作所で開発した軽量化と強度向上を深度化した雨どい位置の高い新構体と外観が異なります。この新構体採用もありますし、系列の総合車両製作所への発注確保の意味もありますので、川崎重工への発注があるかどうかも見物です。川重はJR九州への売り込みをかけているようですが。

電動車単独ユニットなのにパンタグラフは2両に1基プラス編成1基の予備という構成はE233系に準じています。高等戦術でスベった207系900番台を思い出させます。山手線向けは加速度3.0km/h/sが要求されることもあり、E231系500番台と電動車位置や編成構成を踏襲したわけですが、他線区向けでは単独ユニットを生かした奇数電動車編成もあり得ます。またE233系の狙いの一つだったシステムの冗長性も、電動車1両単位でユニットカットできればより深化することになります。当面山手線向け以外が登場する可能性は低いですが、事故廃車が出た時の代替で新造の可能性はあります。多分それより相鉄都心直通線向けの仮称12000系が先でしょう。さて6M4Tか5M5Tか。

それとM単独ユニット化には、置き換えが遅れている地方線区向け新造車と足回りの共通化という副次効果もあります。更にディーゼル車の置き換え目的のハイブリッド車や烏山線のような非電化支線向けバッテリー車などもSiC素子の新システムへ移行できれば、省エネ効果を高められます。現状リゾートトレイン中心で、やっと仙台の仙石東北ライン向けにまとまった投入というレベルで、メンテナンスが困難で、JR北海道などで推進軸折損事故が多発する液体式ディーゼル車の置き換えが進まない状況に風穴が空く可能性はあります。構造規則で電車よりも検査周期が短いディーゼル車の検査周期延長にめどがつけば、一気に普及もあり得ます。大量の車両を抱えるJR東日本にとっては、車両の置き換えに伴うメンテナンスフリー化は効果絶大です。

あとE235系で密閉式モーターの採用が目新しいところですが、技術的には小田急4000系で採用されたもので、次世代モータ―としてメトロで全面採用されている永久磁石同期モーター(PMSM)は採用されませんでした。誘導モーター(IM)の経済性と鉄道車両向きの特性であるすべり周波数特性の活用が狙いでしょう。

PMSMは元々京葉線向けE331系で直接駆動(DDM)用に試用されましたが、トラブルが多かったようです。IMは固定子コイルの回転磁界による誘導電流が回転子に発生するため、熱が出るため、ブロワ―で強制冷却が必要ですが、そのために粉塵対策でフィルターが必要だったり、騒音源だったりという問題があったのですが、密閉状態で熱交換することでブロワ―を省略し静かなモーター音を実現するものです。この辺千代田線・常磐緩行線でE233-2000とメト16000の音を比べれば明らかです。これも新形式を起こしたことを契機に採用されたわけです。

というわけで、今後も10年程度をめどに新形式が登場すると思われますが、その時の車両需給や社会的要請を盛り込んだ新車が登場するわけで、趣味的には目が離せないところです。現状悩ましいのは交直両用車必須の常磐線水戸線系統に残る415系1500番台でしょうか。JR西日本がやったように205系あたりに交直機器を移植して改造するオプションはあり得ます。

それでも急速な高齢化に見舞われる環境変化に対して万全と断言できるわけではありません。何故ならば今後の高齢化は首都圏で集中的に起きることが予想されるからです。その意味で気になる首都圏のニュースです。

都に500億円の負担要請 文科相、新国立競技場整備巡り  :日本経済新聞
迷走が続く新国立劇場ですが、遂に2020年のオリンピックに間に合わないということで、スタンドを仮説に屋根を省略してオリンピック後に屋根とスタンドを作るということですが、それに加えて予算の膨張で都に500応援の負担を求めるとなりふり構わずの状況です。だーかーらー、無理だよってあれほど言ったのに。やーねーwwwwww。

ここまで泥縄の対応をしても、首都圏の高齢化は2020年以降に急速に進みます。工事の作業員の確保は簡単ではありません。かくして延々と工事が終わらない最悪の未来となり、タイトルのジングウ・ファミリアという新たな観光資源が(笑)。ま、深刻さはフクシマ・ファミリアには及ばないけど。あれ、誰か来たようだ。


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Sunday, April 19, 2015

インシデント週間

山手線で重大インシデントがありました。12日に神田駅近くの山手線と京浜東北線の併走区間で更新により撤去予定の架線柱が倒れ、線路を死傷したものでs、数分前に営業列車が通過していたことから、重大事故につながりかねないインシデントとなりました。朝6時に発生し休日で工事スタッフが集まらないこともあり、復旧は15時と9時間に及ぶ運休となりました。

とはいえ休日だったから混乱はそこそこで済んだ面もあります。山手線は田町―田端―池袋間で運休。京浜東北線は蒲田―東十条間で運休とし、後に蒲田―品川間で運転再開するも、折り返し設備の制約もあり、運転間隔は開きました。それでも並行する中央線と東海道線、上野東京ラインは生きており、地下鉄への振替輸送も行われました。平日だったらもっと混乱したかもしれません。

その後の報道でJR東日本は10日時点でポールの傾きを認識していて13日終電後に撤去工事を予定していたのですが、週末を挟んだから対応が遅れた面もあるわけですが、同時に異常を発見しても直ぐに工事に取り掛かれない現実もあり、この辺の時系列の微妙さは頭に入れておく必要があります。

そもそもは2本のポールに横梁(ビーム)を渡した状態で、架線にも張力が掛かっているわけですから、微妙な構造計算が必要なのではと思っていたら、案の定同様の工事では構造計算して上司の承認を得ることがマニュアルに定められていたということで、何故マニュアル違反が生じたかが根本の問題です。加えて異常を認識し工事を手配するバックアップがどこまで可能なのか、特に昨今保守部門は外注化されていて、指示命令系統に齟齬が生じやすい背景はあったわけです。リカバリーにも課題があるわけです。マニュアル違反という意味ではJR北海道の青函トンネル列車発煙事故と共通ですが、こちらは正社員で運転保安要員である車掌の判断の問題があり、しかも記者会見で社長がそれを適切とするなど、事後の対応にも疑問があり、より深刻です。

14日には今度は広島空港でアシアナ航空機の着陸失敗という事故が起こりました。広島空港は天候の急変で霧による視界不良があるということで、カテゴリー3の無線誘導装置(ILS)が設置されていたものの、西側だけで、当日は風向きの都合でで管制官に東側からの着陸となり、着陸に失敗したものですが、パイロットのミスとする見方と悪天候によるダウンバーストの影響とする見方があります。

事故機はエンジンを接地してバウンドして滑走路を外れており、まかり間違えば火災による爆発炎上の可能性もあったほか、フェンスの外は崖になっていて、運が悪ければ機体ごと滑落もあり得たなど、大惨事の可能性がありました。また照明が落ちて搭乗客の避難が混乱したり、客室乗務員がパニックになってシューターによる搭乗客の避難を補助しなかったとか、いろいろ問題点も出てきております。パイロットのミス、管制官の判断の正否、数十億円と言われるILSの完全設置、客室乗務員の対応など論点はいろいろあり、経営の苦しい地方空港故に、ILS設置も簡単ではないですし、そもそも世界規模のパイロット不足に加えて客室乗務員の適正な訓練など、航空業界が抱える様々な問題が横たわります。頼みの西側ILSも損傷しており、17日に仮復旧したものの、悪天候時には欠航となる暫定運用で混乱は続きます。

というような一連を見ていると、人材の枯渇、労働力の劣化が通底する問題として浮上します。人口減少が続く日本ですが、韓国を始めアジア諸国も同様の傾向が見られます。このことに意味するところは、人口減少による労働力不足を移民で補充することの困難を示します。政府が進める介護労働を外国人実習生で補充というのもまず無理といえます。そもそもトラブルの多い日本の実習生制度は低賃金や長時間労働などで国際機関からも改善勧告されていますし、正規雇用であっても円安で日本への出稼ぎに妙味がなくなっていることを自覚すべきでしょう。政府のやっていることは何の解決にもならないわけです。

ただ気になるのは、人口減少による労働力の希少化が、素直に賃金の上昇につながるのかに疑問があります。というのは、潜在成長率0.6%と先進国中最低の日本ですが、生産年齢人口1人当たりで見ると1.6%程度の成長率になるわけで、実は欧米を凌駕する水準にあります。それだけ労働生産性が高いのかといえば、時間当たりの労働生産性は欧米に大きく後れを取っており、実態は長時間労働の深刻さを伺わせます。実は日本人雇用者も実態は外国人実習生に引けを取らない劣悪な状況に置かれているわけです。実は日本の労働市場は新興国並みというお寒い状況です。

生産年齢人口が減少するんですから、本来は労働生産性を高めなければならないわけです。労働生産性は単位時間当たりの付加価値創出力で測られますから、高付加価値労働へのシフトが重要なのに、現実的には逆の現象が起きているわけです。付加価値が低いから長時間労働で埋め合わせなければ国際競争に勝てないという悲しい現実です。

高付加価値というと必要性の薄い高機能多機能を詰め込んだ結果、世界から忘れられたガラパゴス携帯が典型的ですが、必要性を超えた高性能高機能高品質を付加価値と勘違いしているのが日本のリーダーたちです。付加価値というのはユーザー目線での評価の総体ですから、ユーザーである消費者の購買力に依存し、その消費者の大多数は労働者であるという当たり前の現実が見えていないのでしょう。無駄な高性能高品質よりも、ブランドやサービスで差別化することこそ重要です。言い換えればサービスの高価格化ということです。

新興国の工業化の進捗で供給過剰な工業製品で勝負すれば低価格に泣くわけで、そこを認識できない日本の無能なリーダーたちは、値下げしないと物が売れないと「デフレだ、日銀何とかしろ!」てなことで、責任転嫁するわけですが、それで問題が解決するわけがありません。必要なのは産業構造の転換を伴う本来の構造改革ですが、既得権層の反対で進まないばかりか、政府が既得権層におもねっているのですから、日本経済は沈みっぱなしにならざるを得ないわけですね。これ以上続けると落ち込みますからこの辺にしときます。

てな中で、交通分野でも人手不足は確実に事業環境を侵食するわけですが、ちょっと面白い傾向が先日開業した北陸新幹線で見られます。

乗客2.7倍、乗車率は50%割る 北陸新幹線1カ月  :日本経済新聞
これぶっちゃけ航空の便数維持の結果、平日のビジネス客の移転が進まず、北陸新幹線の乗車率を低めているわけです。つまり観光がメインの新幹線ということで、航空は機材の小型化もあって搭乗率100%近い、つまり相当数の利用を断っている状況ですが、運賃を安く設定しても燃費の良い小型機材で席を埋めている状況は採算性も高いと言えます。逆に言えば東京対北陸のビジネス利用は航空でカバーできるオーダーしかないというわけです。北陸新幹線は料金を高めに設定してますし、グランクラスを設定し3等級制として客単価を上げてますから、乗車率の低さはカバーできるでしょう。逆に需要の季節波動の多きい観光輸送では乗車率の低さは機会損失の低減につながるわけですから、おそらくこのまま役割分担が定着すると考えられます。

これは従来新幹線の開業が航空の撤退につながる傾向とは異なり、結果的にJRも航空も付加価値を高めたわけです。もちろん新幹線に関しては引き換えに並行在来線切り離しで三セクに負担をかけていることには注意が必要ですが。新在通算で付加価値が高まるかどうかは現時点では何とも言えません。

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Sunday, April 05, 2015

日本劣等強権化計画

古賀古館バトルの後日譚がまたアレなんですが、古賀氏のカミングアウトで報道ライブ番組にもシナリオがあることがバラされてしまいました。言うこと決まってんなら収録でやれば編集が利くわけで、最新ニュースを反映させる意味があるならコメンテーターなんか置かずにひたすらにユース原稿読んでれば良いです。合いの手が欲しいなら音声再生ボタンで自動化すりゃあいい。その方が出演料省けてコストダウンになるし。

そもそもこの手のハプニングは報道番組には付き物。ゲストで呼ばれてうっかり口滑らせたり横柄な態度を見せたりして政治生命を縮めた政治家も数知れずです。その緊張感があるからテレビ報道のライブ番組には意味がある。そういやTBSの選挙特番でイヤホン外した安倍首相の映像も流れました。これらが国民にとっては貴重な政治家の本音を探る材料になるんですね。

で今回名指しされた菅官房長官が記者会見で圧力を事実無根としながら、同じ席で放送法に言及しテレビ局の対応を見守りたいと発言しましたが、典型的なポジショントークですね。ポジショントークというのは、地位や立場を利用したパワートーク、圧力発言の類いで、会社の会議でお偉いさんの一言で議論が低調になるなんざ勤め人なら何度も見ている風景です。こういうとき会議を進行するファシリテーターはそのお偉いさんの発言を止めなきゃいけないわけで、プロセスはともかく発言自粛や退席を促すもんです。この辺例えば日産自動車など一部の民間企業では決定権者の会議中座ルールとして取り決められていたりします。そうして会議メンバーに発言を促すわけです。菅氏の対応は見事その逆というわけで、自ら圧力の存在を証明してしまったわけです。

まぁこんな風だからイランの核放棄という歴史的合意には経済制裁中のロシアを含む国連安保理常任理事国プラスドイツの6か国が参集した一方、日本には声すらかからないわけです。これで常任理事国入りを目指すって、寝言は夜だけにしろ。逆にドイツはウクライナ問題でもメルケル首相の獅子奮迅の努力が高く評価されてます。外交力というのはどうやらあるらしい。

アジアインフラ投資銀行(AIIB)を巡る混乱も日本の立ち位置の微妙さを示します。既に日米主導のアジア開発銀行((ADB)が融資実績を重ねていて、歴代総裁を日本から排出している状況ですから、AIIBに関しては慌てる必要はないものの、留意点はあります。ADBは審査が厳しいこともあり、投資家から低利の資金を集められる状況で、またそれ故にADB融資は優良プロジェクトの証として評価されるわけですが、融資を受ける側にとっては審査が厳しすぎる不満もあり、人事を日本に握られていることの不満もあります。それ故にADBの審査に漏れた案件をAIIBが拾う形で棲み分ける可能性はありますが、それはとりもなおさず金利にプレミアムが付くことを意味します。これが逆に利回りを求める投資家に評価される可能性もあり、ADBとは競合関係になるわけです。それでも両者の競争でアジアのインフラ投資が活性化されるなら基本ウェルカムではあります。

別の観点から見れば、AIIBを明代の鄭和の朝貢外交の現代版とする見方があります。明の永楽帝の時代の武人で宦官出身の変わり種ですが、永楽帝の命によりアジアからインド、中東、アフリカ東岸に至る各国に大船団を従えて6度にわたる航海で朝貢を要請した人物です。ただし朝貢した相手には所謂数倍のお返しがjあるわけで、統治者が儒教的な徳を見せるためのものと言われます。つまり華夷ヒエラルキーの中華思想の具現化でもあるわけで、このような動きは中国の歴史上は安定期に向かう時期の特徴です。南シナ海など周辺国との摩擦も見られますが、基本的に今の中国に軍事的野心はないと見て良いでしょう。歴代王朝で軍事的膨張が見られるのは元や清など異民族の征服王朝時代の特徴でもあり、この時代はむしろ中華思想は否定されます。

というわけで、中華思想そのものは国際法の基本となっている西欧主権国家による相互主義と普遍主義とは相容れず、AIIBが中国主導で動き始めれば、それに伴うトラブルも見込まれ、国際社会との調整コストはそれなりに覚悟が要りますが、逆に言えば、それを引き受けさえすれば、中国が軍事的に膨張する懸念は後退するわけです。G7メンバーでいの一番に参加表明したイギリスの目敏さは健在です。「尖閣ガー、ホルムズ海峡ガー」と騒ぐどっかの国とは大違い、相手の軍事的膨張の妄想に囚われていては本質を見失います。ま、イギリスを含む欧州勢はIMF改革に後ろ向きなアメリカに不満があるという側面もありますが。

しかし一方で気候変動問題では米中両国に歩み寄りが見られます。思えば2009年のCOP15コペンハーゲン会議で1990年比マイナス25%という意欲的な目標を掲げた日本ですが、同会議では中国の強硬姿勢でぶちこわされたものの、その後中国自身の姿勢に変化が見られます。これはEUが東欧圏の旧式石炭火力を高効率ガス火力などにリプレースすることで削減量を稼いだことを中国で再現できるという意味で日本にとってもチャンスなんですが、原発事故で目標を取り下げ、さらに京都議定書の延長の際に離脱してしまいました。結果京都メカニズムと呼ばれるクリーン開発メカニズム(CDM)の利用が難しくなってしまいました。排出権クレジットの取得はコストがかかりますが、中国から見れば排出削減プラントの値引きと同じですから、日本企業にとってはおいしい話のはずが、原発再稼働を優先する愚かな選択です。

別に原発再稼働そのものには反対しませんが、前エントリーで指摘したように、福島、新潟と首都圏、福井と近畿圏を結ぶ送電線を連系線に転用することで再生エネ活用が可能で原発再稼働とトレードオフ関係にあることを指摘したように、原発再稼働ありきでは道を誤る可能性があります。現状では再稼働は10基前後がせいぜいでしょうけど、これが決まらないから温暖化ガス削減目標が決まらない体たらくです。年末のパリ会議の前に、6月のG7ベルリンサミットの主要議題になると見られ、それまでに腹を決めなければなりません。

しかし今のところ決まっているのが川内原発3,4号機の2基だけです。地元が再稼働に積極的な姿勢ではありますが、九電関係者は新幹線で鹿児島から通勤とかで、地元にお金が落ちずシャッター通りになっています。逆に言えば万が一の事故や災害の時に、住民避難に新幹線が使えるということでもあり、この点はアドバンスと考えて良いでしょう。逆に同じ炉型でも玄海原発は人口密集地の福岡に被害をもたらす可能性があり、再稼働は簡単ではなさそうです。

逆にこういった諸条件を加味して10基程度の原発を再稼働指名して技術者を結集させるとかしないと、マンパワーも含めて再稼働そのものが進まない可能性もあります。よほどリーダーの肝が据わってないと難しいですが、安全審査を規制委に丸投げしている現状では望むべくもありません。

あと沖縄の民意を踏みにじる辺野古問題ですが、反対派を暴力的に排除する姿勢は成田闘争の再現を思い出させます。下総御料牧場と小岩井農場を中心に用地買収が軽微で済むことと、隣接地が開拓農家で土地への執着が弱いという見立てで強引に事業化された結果、激しい抵抗にあいました。そもそも開拓農家の営農思考が弱いという見立てが現実に合わないもので、作物が良く育つ地力の強い土地に農民の愛着は強く、暴力的な対応でボタンの掛け違いを繰り返し、不信感を拡大させた教訓を忘れたのでしょうか。しかも犠牲を払って完成した空港は予定より小規模で内陸で時間制限もあり、何より都心から遠い不便さもあって中途半端なものになりました。羽田の国際化で空洞化しないように深夜早朝枠を除く羽田の国際線を運航するエアラインに成田縛りの規制を課し、羽田進出を狙っていた英ヴァージンが両空港への就航は無理として撤退してしまいました。農民の土地を取り上げてこんな中途半端な空港しか作れない愚策です。

政府は基地がなくなれば沖縄経済は保たないと高をくくっているようですが、以前にも取り上げた通り、47都道府県で出生率ダントツ首位で東京など移転による人口増を除けば唯一人口が自然増過程にある沖縄は、少子化にあえぐ本土より成長力があって、むしろ基地の存在が成長を抑えているという認識が県民に広がっていることを見ていません。政府の目論見が間違っているという点で成田闘争とよく似ています。

ってなわけで、鉄道ネタに戻しますが、JR北海道がまたしてもトラブルです。

青函トンネルで特急発煙 乗客120人歩いて避難、2人搬送  :日本経済新聞
最新の789系で、しかもモーター配線という主回路のトラブルです。設計上の瑕疵かメンテナンスの問題かはわかりませんが、それ以上に絶望的なのは、トラブルを発見した車掌の対応です。床下からの発煙を確認した車掌が、非常ブレーキを引いて停止させたのですが、北陸トンネル列車火災以来、車両火災時のトンネル内での停止は運転規則で禁止され、トンネル出口まで走り抜けることになっています。つまり車掌は規則違反してしまったわけです。

そのために乗客を線路伝いに避難誘導させる結果となり、時間もかかるし体調不良を訴える人も出てきます。それより怖いのが石勝線事故のときのように爆発的に延焼した場合です。石勝線でも列車を止めてしまったんですが、煙の中で避難は困難を極めました。トンネル出口に近かったので、犠牲者は出ませんでしたが、今回の事故で同様の延焼があればガス中毒を免れず大惨事になっていたはずです。

しかもトンネル内の線路を当該列車が塞いでいて、救護用のディーゼル機関車(DE10)で救援するまで運転再開できず影響を拡大したわけです。本来運転士と指令に通報し、救護手配の上津軽今別駅まで運転継続し、該当号車の乗客を他号車へ誘導しなければならなかったはずです。運転保安要員としての車掌業務がちゃんとできないというのは、石勝線の前科もあり、会社に問題アリと評価せざるを得ません。これでは来年開業の北海道新幹線が心配です。結局政権肝いりでトップ交代したものの、改善が見られないわけです。

で、結論、バカ安倍早く辞めろ[怒]。

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