政治の失敗を帝国主義と呼ぶ
前エントリー*1の続きですが、末尾の「民主主義か独裁主義かという二項対立はクソの役にも立たない論点です。」の部分の表現にモヤってました。寧ろ「自由主義か権威主義か」ではなかったか。自由主義の盟主である筈のアメリカの暴走が止まらずトランプ政権の権威主義的な在り方にドライブがかかっている現実があります。そしてついにやっちまいました*2。新年早々のベネズエラ侵攻*3を思い起こさせますが、イランに関しては事前準備もあったし脅し発言も続いていた訳ですが、イラン国内の政情不安から「イラン政府の独裁から国民を解放する」と言っていたらイラン政府が鎮圧してしまったので、核開発断念を迫ってイラン政府も交渉に応じる姿勢を見せていたにも拘らずの軍事攻撃です。ハメネイ師の死亡も報じられており、イランも引けない状況故に戦闘が長引くことが危惧されます。既にホルムズ海峡の封鎖も起きており、石油の中東依存率が高い日本にも打撃があります。ガソリン代上がるぞ!
結果的にはイランと対立するイスラエルのネタニヤフ首相がアメリカを巻き込んでイランを叩く思惑通りの展開です。イスラエルも一応自由主義陣営ですが、ネタニヤフ首相の統治は権威主義的ですしトランプ大統領とも仲が良いしで共振しちゃった訳です。アメリカから見ればベネズエラ侵攻で狙っていた石油利権が、油井や製油所の設備老朽化で生産能力が劣化していて、補修だけで1000億ドル以上の資金と10年以上の時間がかかるということで計算違いだったこともあり、イランを叩けば原油相場の値上がりを通じてアメリカ国内の石油生産を後押しできると見た可能性があります。結局ベネズエラの見込み違いがこうした軍事行動をもたらした訳です。こうしたことは戦前の所謂帝国主義の復活として捉えることができます。重商主義の行き着く先であり資本主義の市場の失敗の矛盾が昂じて帝国主義に至る構図で、これをもたらしたのはアメリカのトランプ政権です。古くは大英帝国の重商主義を経済学の祖とされるアダム・スミスが国富論で批判してアメリカ独立戦争を支持し、リカードが精緻化した古典派経済学のロジックを用いて資本主義の究極に帝国主義があるとマルクスが見抜いたことが再現されています。
トランプ政権の失敗は事欠かないですが、相互関税を巡る最高裁違憲判決で確実に窮地に追い込まれています。最高裁は関税の還付までは踏み込みませんでしたが、既に民間企業による還付請求訴訟が始まっています*4。同時に結審後の還付では資金繰りが厳しい中小企業では還付金権利の転売が始まっています*5。割引率6割でも取引成立ということですから窮状が偲ばれます。そして24日に発効した150日間の10%の代替関税も最高裁判決が違憲と認めた大統領権限の逸脱に違いはなく、同様に訴訟が起こされるのは確実ですし、議会の延長承認もほぼ可能性はありません。秋の中間選挙前に失点を重ねており世論の関心を外へ向けさせることで支持を取り戻そうとしている訳です。
以下は答え合わせ。まずはTACOのプロデューサー*6。やはりレートチェックはベッセント財務長官が仕掛けたものでした*7。突然の解散総選挙で日本の政治空白が為替変動を誘発することを危惧した結果で、高市首相が余計なことをしたから最悪日米協調介入までオプションしていたとか。流石にダボスで片山財務相が怒られたから日本も要求できなかったようですが、そこまで危機感を抱いたのは世界的に主要国の財政状況が悪化していることがあります*7。アメリカは関税を当てにした無理な減税で、ロシアは戦時経済で、その脅威を受ける欧州は軍事支出増で、中国は国内不況で、それぞれ財政拡大中なのに、過去の財政拡大で突出する日本の野放図な積極財政は看過できなかった訳です。財政面で言えばロシアと欧州は既に戦時財政の体を示してます。
それなのに高市政権は危機感まるでなし。日銀理事人事でよりによってリフレ派の人選です*8。植田日銀の利上げ継続路線に水を注すものということで、流石に日経新聞も疑問を呈しています。上述のとおりロシアと欧州は戦時経済の様相ですが、中国はあくまでも短期的な景気対策の範疇で政策的な失敗の度合いは低く、故に台湾への軍事侵攻はとりあえずなさそうです。逆に言えばいざとなれば軍事支出を増やせる潜在力がある訳で、逆に財政が突出して悪い日本で高市首相の不用意な台湾有事発言は本当に国益を害します。既に決定とされる防衛費増も財源が明示されておらず増税不可避ながら、それを明言せずに積極財政に舵を切ることは、それだけ有事の財政出動の余地を狭めますから、高市首相の言う継戦能力を低下させます。それとも国民に玉砕を求めるのか?逆に言えばここで財政規律を取り戻し日銀の利上げをサポートすれば財政拡大基調の主要国に対するアドバンスとなり、円安反転でインフレ抑制と国民の購買力拡大ができるチャンスでもあります。どっちが良い?
最後に前エントリーの中で触れたE5系E6系の走行中列車分離問題の続報です*9。電磁弁を動かす制御基板の耐用年数10年を越えて使いまわしていた結果の経年劣化の可能性が出てきました。メーカーは2回目の分離事故直後にJR東日本に指摘したものの事故調への報告はなかったみたいです。やはり根本的な組織統治に問題ありです。電子部品は経年劣化しても見た目では確認できず、トラブルが起きれば交換するしかない訳ですが、JR東日本に限らず耐用年数を超えても不具合が出なければ継続使用される傾向はあります。また交換部品を過剰に抱える訳にもいかない中で、メーカーで生産終了となって交換部品が手に入らなくなることもあります。例えば京浜東北線で晩年トラブル続きだった209系0番台がそうですが*10、中央快速線に始まる新標準車E233系の常磐緩行線向け2000番台を後回しにして*11京浜東北線に1000番台を、更にE217系の電装品換装の予備車として東海道線に3000番台を投入などが優先されました。そんな経験をしながらここまで原因究明が迷走しているのはやはり問題ですね。
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