本題の前に為替の話題です。
NY円相場、続伸 1ドル=152円90銭〜153円00銭 予想下回る米雇用統計受け - 日本経済新聞
インフレ定着が意味するところの時点で158円だったドル円相場が152~3円と下がりましたが、これを介入の効果と見るのは早計です。元々日銀政策決定会合で金融政策維持が決まったことで円安に動き、米雇用統計が予想を下回ったことで円高に動いただけで、何れも金融関連のイベントに反応しただけの結果です。29日や2日の乱高下は日本の祝日や早朝という薄商いで相場が動きやすい状況だったタイミングでの介入でブレが大きくなっただけです。故に円安インフレの終息が見通せる状況とは程遠いってことです。
一部に円安を阻止した神田財務官は植田日銀総裁より優秀じゃないかと言われたり、FXトレーダーだったら大儲けじゃないかといった声がありますが、いずれのタイミングによるたまたまですし、第一神田財務官はFXトレーダーじゃないし、国家は憲法でできている で指摘したように為替差益は実現しません。これもう少し説明すると、外貨準備として政府が保有するドルは日銀の預託されている訳ですから、その一部を引き出した形になり口座残高が減るだけです。それがドル売り円買い介入の実態です。当然政府はFXトレーダーなら手にする為替差益を得ることはできない訳です。信用創造の逆が起きる訳です。
そんな中で防衛費と共に財源確保が難題の子育て支援の財源問題ですが、これもデタラメです。「異次元の少子化対策」を謳ってますが、少子化自体は先進国共通の問題ですし、最近は新興国でも工業化の進展と共に少子化が進んでますから、少子化自体を政策的に止めることはできないと見るべきでしょう。但し子育て環境によって少子化のスピードを遅らせることは可能ですから、子育て支援が無意味とは言いませんが、どう転んでも子育て中の現役世代の負担増になるということは踏まえて制度設計しないと、結局負担感は増す一方で効果は見えないということになります。
それに対して高齢者ばかり優遇されるという議論がありますが、これも高齢化と共に避けられない負担な訳で、簡単には減らせません。ということは高齢化による負担増と子育て支援の負担がダブルで現役世代にのしかかることを意味します。これを回避し現役世代の過重負担を抑制するとすれば消費税を財源にすることで、避けられない負担を社会全体でシェアする形しか広範な合意を得ることは困難です。
それに対して政府は不人気な消費税増税を封印して社会保険改革で財源を生み出すということを言っている訳です。具体的には国保、協会健保、組合健保、後期高齢者健保といった健保勘定の保険料に子育て支援金を上乗せする形ですが、現役世代中心で年齢層が低く資金も潤沢な組合健保の負担が多くなることは避けられませんから、結局現役世代の負担を増やすことにしかなりません。加えて後期高齢者の自己負担増などで給付を減らすというのが「社会保険改革」ってことで、目先のゴマカシです。これじゃ寧ろ少子化を加速します。
そして現金給付で対応しようとしていることも問題です。少子化の原因が経済要因なのはそのとおりなんですが、現金配れば解決するかといえばそうではなく、主に教育費負担がネックになっています。にも拘らず政府は文教予算を削ってばかりで、国公立大学の独立行政法人化や「選択と集中」と称する科研費の減額などでG7はおろかOECD加盟国中で見ても教育の公的負担は最低レベルで,その分家計が負担している訳です。そして教育内容も複雑化しており、今や小学生から塾通いが当たり前という状況です。これじゃ子どもを持ちたくても持てません。
逆に言えばこの部分の公的負担を増やせば効果は期待できます。例えば給食費や教材費の無償化や高等教育の無償化といったことですが、これらは消費税にして2%程度の負担で実現可能ですし、少子化による労働人口の減少を補う意味での生産性向上を目指すならば、結果的に将来のリターンが見込めますから負担が軽くなるということですね。現金給付だけならそれが教育資金に回るとは限りませんし、共同親権問題とも絡みますが、給付欲しさに離婚カップルの親権争いという醜い現実をもたらすことは避けられないでしょう。子どもの為には教育という現物給付が望ましいということです。
あと負担の公平性を考えるなら金融所得課税も必要ですし、その意味で新NISAは負担の公平性に逆行します。特に若い人に申し上げたいのですが、資産形成をまじめに考えるならば、無理のない範囲でのコツコツ形の積立投資で福利効果を狙って時間を味方につけることをお勧めします。その意味で積立NISAならば検討の余地はありますが、元々分離課税で税負担の軽い金融所得課税をケチるよりもiDeCoを先に考えた方が良いです。被雇用者でも加入が可能になってますから、月々の余剰資金をiDeCoで運用して、拠出限度額を超える資金があるならその超えた分を積立NISAに回すという形にしましょう。
iDeCoの良いところは積立金が公的年金に準じた税法上の扱いになり所得控除が可能になりますから所得税減税になります。所得税は超過累進課税ですから、所得額の税区分が下方に移行すればより大きな減税効果がありNISAにはできない芸当です。また勤め先の企業年金が確定拠出型年金](DC)の場合、転職や退職時に手続きすれば積み立て分をiDeCoに移行できますし、フリーランスでも続けられますから無駄になりません。
但し払い戻しは満60歳まで出来ず、死亡や中途解約の場合は払い戻し放棄となりますので老後資金には向きますが、子供の教育資金やマイホーム資金などには不向きです。それでも払い戻し時には一時金あるいは年金として受け取り方法を選べ、年金方式の場合公的年金との合算で税優遇が受けられます。政府は盛んに新NISAを勧めますが、自分に適したプランは冷静に考えましょう。
しかし子供たちの置かれた状況の過酷さは本当に頭の痛い問題で、中学生時代に学習塾の塾長を怒らせてクビになった^_^;私なんぞ、今に生まれてれば落ちこぼれ間違いなしですね。また離婚が増えている現状でひとり親世帯が増えている現状では、家庭の事情で進学を諦めるるといったリアルがある訳で、こうした家庭で育つと自衛隊に入るかブラックバイトで凶悪犯罪の実行犯になるかといった未来が待っているということになりかねません。加えて気候変動で自然災害が増えたり農産物の収量が不安定になったりしているのに大人の事情で脱炭素は進まないし。当然紛争が増えることになります。子どもたちにこんな未来しか約束できない大人たちの不作為が原因です。
その一方で公金バラまいて原発再稼働やリプレースに前のめりだったり日の丸半導体復権に補助金出したりはしている訳で、財源がないってのは嘘だってことです。特に半導体の復権は台湾TSMCの熊本工場にしろIBMライセンスの先端半導体メーカーに名乗りを上げたラピダスにしろ、外資の下請けに甘んじて半導体の復権もないもんです。しかもラピダスにはこんな障害も。
ラピダスの物流に落とし穴 ガスが青函トンネル通れない - 日本経済新聞
半導体生産に欠かせないエッチング剤や洗浄剤には確かに危険物がありますし、青函トンネルのような長大トンネル通過は問題です。2024年問題によるドライバー不足で鉄道輸送に頼りたいところです。さてどうすべきか。
もしトラよりもしドラでも取り上げましたが、物流問題は明らかに日本のアキレス腱になりつつあります。本当は新幹線やリニアより緊急性が高く優先順位を上げるべきですが、そうした議論は見られません。しかも北海道新幹線は工事が遅れて30年度末開業の延期が決まりました。これも元々33年度開業を与党議員が強引に前倒しさせたものの、トンネル残土からヒ素やカドミウムといった有害物質が検出されて残土処理が滞っているということで足踏みしているのですから、今後の展開は見通せません。
その一方で北海道新幹線の函館駅乗り入れが新市長の選挙公約として実現を探ってますが、JJR北海道は取り合いません。現実的には新函館北斗からスイッチバックして函館駅に至るという計画は実現可能性は低いと言えます。唯一可能性があるとすればは在来線特急で4時間以上かかる函館―札幌間のミニ新幹線というところですが、安心してくださいのつばさオーバーラン問題を考えると解決策といえるのか微妙です。かくして自己保身と思いつきの果てにグチャグチャな現在と未来を子どもたちに残すとするとため息しか出ません。
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