鉄道事故

Sunday, May 05, 2024

こどもの疲弊

本題の前に為替の話題です。

NY円相場、続伸 1ドル=152円90銭〜153円00銭 予想下回る米雇用統計受け - 日本経済新聞
インフレ定着が意味するところの時点で158円だったドル円相場が152~3円と下がりましたが、これを介入の効果と見るのは早計です。元々日銀政策決定会合で金融政策維持が決まったことで円安に動き、米雇用統計が予想を下回ったことで円高に動いただけで、何れも金融関連のイベントに反応しただけの結果です。29日や2日の乱高下は日本の祝日や早朝という薄商いで相場が動きやすい状況だったタイミングでの介入でブレが大きくなっただけです。故に円安インフレの終息が見通せる状況とは程遠いってことです。

一部に円安を阻止した神田財務官は植田日銀総裁より優秀じゃないかと言われたり、FXトレーダーだったら大儲けじゃないかといった声がありますが、いずれのタイミングによるたまたまですし、第一神田財務官はFXトレーダーじゃないし、国家は憲法でできている で指摘したように為替差益は実現しません。これもう少し説明すると、外貨準備として政府が保有するドルは日銀の預託されている訳ですから、その一部を引き出した形になり口座残高が減るだけです。それがドル売り円買い介入の実態です。当然政府はFXトレーダーなら手にする為替差益を得ることはできない訳です。信用創造の逆が起きる訳です。

そんな中で防衛費と共に財源確保が難題の子育て支援の財源問題ですが、これもデタラメです。「異次元の少子化対策」を謳ってますが、少子化自体は先進国共通の問題ですし、最近は新興国でも工業化の進展と共に少子化が進んでますから、少子化自体を政策的に止めることはできないと見るべきでしょう。但し子育て環境によって少子化のスピードを遅らせることは可能ですから、子育て支援が無意味とは言いませんが、どう転んでも子育て中の現役世代の負担増になるということは踏まえて制度設計しないと、結局負担感は増す一方で効果は見えないということになります。

それに対して高齢者ばかり優遇されるという議論がありますが、これも高齢化と共に避けられない負担な訳で、簡単には減らせません。ということは高齢化による負担増と子育て支援の負担がダブルで現役世代にのしかかることを意味します。これを回避し現役世代の過重負担を抑制するとすれば消費税を財源にすることで、避けられない負担を社会全体でシェアする形しか広範な合意を得ることは困難です。

それに対して政府は不人気な消費税増税を封印して社会保険改革で財源を生み出すということを言っている訳です。具体的には国保、協会健保、組合健保、後期高齢者健保といった健保勘定の保険料に子育て支援金を上乗せする形ですが、現役世代中心で年齢層が低く資金も潤沢な組合健保の負担が多くなることは避けられませんから、結局現役世代の負担を増やすことにしかなりません。加えて後期高齢者の自己負担増などで給付を減らすというのが「社会保険改革」ってことで、目先のゴマカシです。これじゃ寧ろ少子化を加速します。

そして現金給付で対応しようとしていることも問題です。少子化の原因が経済要因なのはそのとおりなんですが、現金配れば解決するかといえばそうではなく、主に教育費負担がネックになっています。にも拘らず政府は文教予算を削ってばかりで、国公立大学の独立行政法人化や「選択と集中」と称する科研費の減額などでG7はおろかOECD加盟国中で見ても教育の公的負担は最低レベルで,その分家計が負担している訳です。そして教育内容も複雑化しており、今や小学生から塾通いが当たり前という状況です。これじゃ子どもを持ちたくても持てません。

逆に言えばこの部分の公的負担を増やせば効果は期待できます。例えば給食費や教材費の無償化や高等教育の無償化といったことですが、これらは消費税にして2%程度の負担で実現可能ですし、少子化による労働人口の減少を補う意味での生産性向上を目指すならば、結果的に将来のリターンが見込めますから負担が軽くなるということですね。現金給付だけならそれが教育資金に回るとは限りませんし、共同親権問題とも絡みますが、給付欲しさに離婚カップルの親権争いという醜い現実をもたらすことは避けられないでしょう。子どもの為には教育という現物給付が望ましいということです。

あと負担の公平性を考えるなら金融所得課税も必要ですし、その意味で新NISAは負担の公平性に逆行します。特に若い人に申し上げたいのですが、資産形成をまじめに考えるならば、無理のない範囲でのコツコツ形の積立投資で福利効果を狙って時間を味方につけることをお勧めします。その意味で積立NISAならば検討の余地はありますが、元々分離課税で税負担の軽い金融所得課税をケチるよりもiDeCoを先に考えた方が良いです。被雇用者でも加入が可能になってますから、月々の余剰資金をiDeCoで運用して、拠出限度額を超える資金があるならその超えた分を積立NISAに回すという形にしましょう。

iDeCoの良いところは積立金が公的年金に準じた税法上の扱いになり所得控除が可能になりますから所得税減税になります。所得税は超過累進課税ですから、所得額の税区分が下方に移行すればより大きな減税効果がありNISAにはできない芸当です。また勤め先の企業年金が確定拠出型年金](DC)の場合、転職や退職時に手続きすれば積み立て分をiDeCoに移行できますし、フリーランスでも続けられますから無駄になりません。

但し払い戻しは満60歳まで出来ず、死亡や中途解約の場合は払い戻し放棄となりますので老後資金には向きますが、子供の教育資金やマイホーム資金などには不向きです。それでも払い戻し時には一時金あるいは年金として受け取り方法を選べ、年金方式の場合公的年金との合算で税優遇が受けられます。政府は盛んに新NISAを勧めますが、自分に適したプランは冷静に考えましょう。

しかし子供たちの置かれた状況の過酷さは本当に頭の痛い問題で、中学生時代に学習塾の塾長を怒らせてクビになった^_^;私なんぞ、今に生まれてれば落ちこぼれ間違いなしですね。また離婚が増えている現状でひとり親世帯が増えている現状では、家庭の事情で進学を諦めるるといったリアルがある訳で、こうした家庭で育つと自衛隊に入るかブラックバイトで凶悪犯罪の実行犯になるかといった未来が待っているということになりかねません。加えて気候変動で自然災害が増えたり農産物の収量が不安定になったりしているのに大人の事情で脱炭素は進まないし。当然紛争が増えることになります。子どもたちにこんな未来しか約束できない大人たちの不作為が原因です。

その一方で公金バラまいて原発再稼働やリプレースに前のめりだったり日の丸半導体復権に補助金出したりはしている訳で、財源がないってのは嘘だってことです。特に半導体の復権は台湾TSMCの熊本工場にしろIBMライセンスの先端半導体メーカーに名乗りを上げたラピダスにしろ、外資の下請けに甘んじて半導体の復権もないもんです。しかもラピダスにはこんな障害も。

ラピダスの物流に落とし穴 ガスが青函トンネル通れない - 日本経済新聞
半導体生産に欠かせないエッチング剤や洗浄剤には確かに危険物がありますし、青函トンネルのような長大トンネル通過は問題です。2024年問題によるドライバー不足で鉄道輸送に頼りたいところです。さてどうすべきか。

もしトラよりもしドラでも取り上げましたが、物流問題は明らかに日本のアキレス腱になりつつあります。本当は新幹線やリニアより緊急性が高く優先順位を上げるべきですが、そうした議論は見られません。しかも北海道新幹線は工事が遅れて30年度末開業の延期が決まりました。これも元々33年度開業を与党議員が強引に前倒しさせたものの、トンネル残土からヒ素やカドミウムといった有害物質が検出されて残土処理が滞っているということで足踏みしているのですから、今後の展開は見通せません。

その一方で北海道新幹線の函館駅乗り入れが新市長の選挙公約として実現を探ってますが、JJR北海道は取り合いません。現実的には新函館北斗からスイッチバックして函館駅に至るという計画は実現可能性は低いと言えます。唯一可能性があるとすればは在来線特急で4時間以上かかる函館―札幌間のミニ新幹線というところですが、安心してくださいのつばさオーバーラン問題を考えると解決策といえるのか微妙です。かくして自己保身と思いつきの果てにグチャグチャな現在と未来を子どもたちに残すとするとため息しか出ません。

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Saturday, March 16, 2024

安心してください、ゲタ履いてますよ

パンツは知らんけど^_^;。漂流する世界と日本で展望した日銀の3月マイナス金利解除が現実になりそうです。

日銀、マイナス金利解除へ 賃上げ拡大で17年ぶり利上げ - 日本経済新聞
決定会合前のリーク記事の是非は横に置きますが、既に日銀自身のオペレーションで市場に織り込まれています。政策金利の指標とされる1日ものの銀行間市場金利はマイナス圏ながらほぼゼロ近傍に誘導されていて、実際は日銀当座預金の一部に課されたマイナス金利をなくすだけですから、市場に大きなショックは起きない訳です。加えて今週の東京株式市場の4日続落でもETF購入に動かず、異次元緩和からの正常化を進める姿勢を見せております。加えて春闘集中回答日の満額回答目白押しですから、既に既定路線といえます。その日銀保有ETFにも動きがあります。
日銀ETFの含み益34兆円 株高で過去最大、活用策を議論 - 日本経済新聞
簿価で36兆円が株高で70兆円の評価額となり34兆円の含み益となっていますがここからが難問です。市場で売れば株価を下げることになるため、とりあえず配当収入を金利上昇による保有国債の含み損対策の引当金にすることを財務省と折衝中ですが、色良いい返事はないようです。日銀は当面の緩和的な政策を維持するとしていますが、国債評価損の引当金を積めば逆に国債売却に踏み込む可能性もありますから財務省は警戒しているのでしょう。日銀としては更に踏み込んで初期に購入した低簿価のETFを少数売って益出ししたい筈ですが、そうなると株式市場への影響もある訳で認めにくい訳です。逆に言えば償還期限のない株式ETFの処分の難しさは課題として残ることになりますが。異次元緩和の暗愚な破壊力は尾を引きます。

為替がやや円高に動いて、これを日銀の政策変更と結びつける議論がありますが、150円台から147円程度になっただけで輸出企業の想定為替レートが130円台が主流ですから企業業績への影響は軽微ですし、米FRBの利下げ観測が後退して日米金利差もあまり動かずで海外勢の買い越し姿勢もあまり変化はないし、寧ろ米商業用不動産ローンの不良債権化で米地銀の経営への影響が心配されてNY株も調整されて寧ろ日本株の割安感が注目される地合いですし、何より日銀がETFを簡単に処分できないことが、日本株の下支え要因として歓迎されてさえいます。為替や金利差と共に海外勢から見れば三重に下駄を履いたおいしい状況です。これはまた人件費を削って配当や自社株買いで株主に報いる姿勢の日本企業から富が海外へ流出することをも意味します。国民が貧しくなる訳です。鉄道業界でも気になる動きがあります。

東北新幹線が一時運転見合わせ オーバーラン影響で - 日本経済新聞
昨今不祥事が目立つ日本企業ですが、ビッグモーターのような新興企業はいざ知らず、日野自動車、ダイハツ工業、豊田自動織機などのトヨタ系列各社や、遡れば東芝や三菱電機などの老舗企業の名が目白押しです。疑問なのは老舗企業で組合が一定の役割を持つはずなのに、何をやっていたのか?ってことです。

結果から言えばバブル後の日本企業は過剰投資で債務を抱えて銀行の不良債権処理で融資を絞られたことから、新規の設備投資を抑制した訳です。それがはっきり表れているのがゼロ年代で、GDPの名目値もほとんど変化しなかった時代ですが、この期間の固定資本減耗が凡そ107兆円でほぼ変化しなかった一方、給与や社会保険料で構成される雇用者報酬は減ってその分株主と経営者の取り分となる営業余剰が増えています。日本企業は投資を抑制しつつ株主の取り分を増やし続けたってことです。

民間企業の減価償却費に当たる資本の維持費の固定資本減耗は成長経済では徐々に増えて資本装備を増やして生産性を高めて経済成長に繋がる訳ですが、それを怠って人件費に相当する雇用者報酬を削って株主に帰属する営業余剰を増やすということを続けた訳です。失われた30年は謂わば必然です。それに対して組合は既存の組合員の雇用維持を重視して組織率の低い若手を派遣労働者など非正規雇用で受け入れることを認めました。その結果現場の規律が維持できなくなった可能性があります。

そして過剰な内部留保を抱えてそれを海外に投資した訳ですが、裏を返せば国内に投資するよりリターンが見込めるからそうした訳で、その結果国内生産は細り貿易赤字が常態化する一方、それを埋めて余りある第1次所得収支を得ているというのが日本の現状ですが、鉄道事業者など内需関連企業はその流れには乗れない訳です。

その中でJR東日本は少子化による人手不足を先取りした省力化投資や安全投資に積極的でした。その背後にはJR総連系のJR東労組の存在があったことは以前にも指摘しましたが、気になるのはストでスベってスットコドッコイ疑惑の感電事故で指摘した組合潰しとトップ交代の影響ではないかと心配しています。昨今トラブルが多いことは確かです。

記事では単独運転のつばさ号の郡山駅での500mのオーバーラン事故後の点検が長引いて東北新幹線東京―盛岡間が運転見合わせされたものですが、現存のE3系は1000番台以降の山形新幹線向け編成ですが、同様に事故は過去にもあってやはりつばさ単独運転列車の事故だったということで、JR東日本は急遽E2系やまびこ編成を回送扱いで併結して対応しています。以下は推論を含みますがおつきあいください。

E3系つばさ編成は1999年~2007年にかけて製造されていてザックリ20年選手ですが、新幹線車両はおおむね20年程度で取り換えと言われますから、晩年期ではあります。しかしE2系やまびこ編成とほぼ同じ経年でE3系単独運行列車でトラブルが重なったのはおそらくE3系特有の事情があると考えられます。特にATCのブレーキ指令で所定位置の範囲内に停止できる筈ができなかった点から、何らかの制動力不足が生じたということになります。

考えられるのは1両あたり400系より2t軽量化されており、軽量化によってレールと車輪の粘着性脳に微妙な低下があったとすれば、当時積雪の影響もあって滑りやすい状況下でのATCによる常用最大ブレーキが空走をもたらして、停まりきれずにオーバーランというのはあり得ます。あるいは在来線走行向けにE2系より小ぶりなE3系の台車構造が車輪とブレーキシューの間の雪詰まりを起こしやすいとか、あるいはモーターの架装空間や駆動装置の雪詰まりとかですが、故にE2系との併結運転では生じなかったという説明は可能でしょう。

気になるのがこのトラブルに関するJR東日本の情報開示の姿勢が不十分に感じられることもあり、組合員保護の立場から注文が多かった組合を潰した結果だとすれば、残念ながら今後もトラブルは続く可能性があります。そうでないことを祈りつつ「安心してください」と言ってほしいですね。

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Saturday, January 27, 2024

疑惑の感電事故

正月早々の躓き が続いているようなショックなニュースです。

東北・上越・北陸新幹線、24日始発から再開計画 - 日本経済新聞
1/23AM10時ごろ、大宮を出発した上りかがやきが並行する埼京線北戸田駅付近で垂れ下がった架線にパンタグラフを引っ掛けて破損した事故で終日運休となりました。翌日には始発から復旧したものの、車両運用の都合で一部運休が出ています。

原因は架線に張力を与える端部の錘を吊る棒の断裂によって架線が150mに渡って垂れ下がったものですが、同種の事故は例えば2005年の山手線でも起きており、饋電系トラブルはつきものとはいえ当該の吊り装置は通常30年程度で交換されるものが38年間交換されていなかったことが報じられております。架線検測はEASTI-iのような検測車を走らせてデータを取って摩耗や位置のずれなどを見ながら適宜交換されるところですが、錘の吊り装置までは守備範囲には入らないですから、結局巡回目視で異常を調べる形で補修されることになります。

この点は後述しますが、それ以上に問題なのは、復旧作業員の感電事故です。1人は全身やけどの重傷で助けようとしたもう1人は軽傷ながら2人が巻き込まれた事故です。AC25kvに直接触れた可能性があります。保守作業や事故復旧作業は作業員や機械を線路に入れる必要があるので、指令に通知して線路閉鎖と通電停止の措置が取られ、作業終了後点検の上指令に通知して解除されるというのがざっくりした流れです。加えてJR東日本では新幹線のCOSMOSや首都圏在来線のATOSという運行管理システムに現場責任者が端末で直接アクセスして措置する形で高度に自動化されています。故にシステム上は起こり得ない感電事故が起きたという意味で深刻な事態です。

システム自体はよくできていて、よほどのことがない限りヒューマンエラーの発生も考にくいという意味では羽田空港の衝突炎上事故と異なり当事者の注意力に依存する部分は少ない筈なんですが、現実に事故が起きている以上、何らかの手順ミスや勘違いがもたらした事態である可能性はあります。この点は明らかにされるべきです。

一方事故の直接の原因である架線の錘の吊り装置の断裂は、自動化の盲点のような場所で起きたという意味で、別の問題を想起させます。目視確認で劣化状況を確認して交換を手配するという属人的なシステムで、おそらく目視で異常を発見できるスキルが若手に継承されずに、あるいはそもそもなり手がいなくてベテランの雇用延長で対応しているかといった別の問題が存在すると考えられます。そうだとすれば今後もこのような事故が起きる確率は一定程度あると考えざるを得ません。

事故地点は大宮以南の130km/h区間で起きたもので、大宮以北の高速運転区間で起きればもっと大きなダメージになっていた可能性があります。省力化を前提にすれば何らかの監視システムの導入も考える必要があります。この辺が省力化投資の難しいところです。勤労感謝にAIは勝つ?でAIが高スキル労働者を失わせる可能性を指摘しましたが、人口減少に伴う省力化投資自体は避けられないとしても、やり方は慎重であるべきです。その観点から言えば、気になるのがこのニュースです。

JR東日本社長に喜勢陽一氏 JR後入社、JR東海に続き2人目 - 日本経済新聞
ストでスベってスットコドッコイで記述してますが、JRグループの最大労組のJR東労組を挑発してスト決行を宣言させて労働協約違反を言い立ててスト経験のない若手組合員の引き剝がしまでした当事者です。国鉄OBで占められていた経営トップにJRプロパー社員が就任するのはJR東海に次いで2例目ですが、組合潰しでのし上がったってのはJR東海の葛西氏に似ています。

国鉄改革派3課長と言われた井出氏、松田氏、葛西氏のうち、松田氏は国鉄時代から労組重視の労使協調路線を標榜していました。その松田氏がJR東日本所属となったことは、ひょっとしたら動労の松嵜委員長の所謂分割民営化賛成シフトに影響した可能性はあるかもしれません。分割民営化を受け入れた上でJR総連を企業横断型の欧州型産業別組合にして国鉄時代に果たせなかったスト権確立を狙ったと言われます。結果的には実現しませんでしたが、JR東日本とJR東労組の関係は良好で、36協定を含む労使協議を3か月毎に開いて様々な協議を行う体制を確立します。

その結果1988年12月の中央総武緩行線東中野駅の列車追突事故で車内警報レベルの国鉄型ATSから高度なATS-P設置が加速しました。JR東労組はヒューマンファクター重視で事故を未然に防ぐ対策強化を会社に求め、実現してきました。JR西日本は尼崎事故といった重大事故を起こしましたが、背景に総連系労組と連合系労組との対立が指摘されてます。

JR総連は松嵜氏が意図した会社横断労組の姿勢を重視していましたが、動労と共に分割民営化に協力した鉄労系組合員はついて行けず、そこにくさびを打ち込んで労組の分派を促したのがJR東海の葛西氏で、JR西日本他、東日本と北海道を除く各社が追随します。日本では以前から煩い組合を潰す目的で会社側が第二組合を作らせて、組合幹部経験者を管理職に登用するなどの組合潰しは結構見られましたが、分割民営化後のJRでも同様の動きがあった訳です。確かに松嵜氏の会社横断労組というエキセントリックな構想が分裂の直接的な要素ですが、JR東日本と北海道は総連系労組が主流に留まり、東日本に関しては機能していたと言えます。

しかし2020年の東京五輪を控えて政権からの組合対策の圧もあったと言われますが、組織改編で待遇の異なる運転士と車掌の所属を同じにして動労を出自とするJR東労組を挑発しスト通告に追い込むというのはエグい組合潰しではあります。且つ結果的に労組脱退で瓦解した東労組に代わって社友会という非労組の組織を立ち上げて労使協議も年1回に減らすという形で、労使協議を重視する姿勢をあからさまに反故にしました。こうした背景が今回の新幹線事故に影響している可能性はありますが、広告主であるJRにそこまで突っ込んだ報道はメディアには期待できないでしょうね。

運転士と車掌の配置統合はおそらく将来の自動運転を睨んだ動きでもあると思いますが、車掌に相当する保安要員を乗務させた形のドライバレスを目標と公言するJR東日本だけに、気になるのが乗務員の処遇です。ATOによる自動運転ならば運転操作は自動化されていても、非常時のマニュアル運転対応も含めた動力車運転免許という国家資格を持つ専門職で高待遇となる訳ですが、車掌級の保安要員が免許非保持者とすると、結果的に賃下げの口実になります。それでいて事故時には運転士並み刑事責任が生じるとすれば、そんな仕事を敢えてやりたい人がいるかどうか、上述のようにAIが高スキルの熟練労働者を淘汰するように免許保持者を淘汰するだけならば、大きな問題です。現実的には現行法上の制約もあり簡単には進まないでしょうけど、最大手のJR東日本が規制緩和を求めた時に国がその方向へ動く可能性は大いにあります。

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Saturday, January 06, 2024

正月早々の躓き

根拠なき楽観論の時点では予想できなかった波乱の正月になりました。同エントリーで取り上げた辺野古の新基地建設で公費を蕩尽する一方、能登半島地震の被災地の惨状に心が痛みます。当然ながら安全保障とは国民の生命財産を守ることなんですが、群発地震が続いていた能登半島を守ることが出来なかった事実は重いと言えます。

辺野古の新基地にしろトマホークにしろ直接国民を守る訳ではないですし、あまつさえ米国のライセンス生産のパトリオットミサイルのウクライナへの供与もそうですが、軍事装備の増強よりも災害時に迅速に被災地支援が可能な災害救助隊のようなものが、自衛隊、警察、消防のどこに属するかは別として存在しない中で、自らも被災者の被災自治体の職員が対応し、救援を求めるという建付けでは初動が遅くなるのですが、阪神でも東日本でも熊本でも繰り返されております。軍隊が災害救援するのは世界的には普通のことですが、それはロジスティクスの専門家で道なき道を拓き前線に物資を補給する機能を応用したものです。当然ミサイルは役に立ちません。

正月期間中で自治体職員の動員も簡単ではなかったと思いますが、逆に大都市からの帰省者が少なからずいたことは、当事者にとっては過酷ですが、ある意味高齢者しかいない過疎地の災害としては動ける人がいるという意味でプラス面もあります。雇い主の企業が有給休暇扱いで復旧支援すればなお良いですが。逆に道路、通信、ライフラインの遮断で窮地にある訳で、道路が寸断され隆起で港が使えず、能登空港も被災して使えずと陸海空全ての補給路が遮断されていて水さえ届けられない命の危機にもさらされている訳です。

加えて北厘電力の火力発電所の被災で停電が発生しており、電力事情も悪化しております。電気がなければ無事な水道や光回線や携帯基地局も使えなくなる訳です。休止中の志賀原発が動いていればシビアアクシデントの可能性もあった今回の地震で、いち早く「異常なし」と報じられましたが、休止中で使用済み燃料プールの水温が低かったことが幸いしてます。しかしそのプールから汚染水がこぼれてますし、外部電源用の変圧器のオイル漏れで火が出てます。今のところ非常用電源は生きているということで、大事には至らないでしょうけど、地震でモニタリングポストも埋まったか電源喪失で放射線測定が出来ない状況で「異常なし」なのでしょうか。寧ろ被害を過小に見せる情報開示に後ろ向きな姿勢こそ問題です。

その意味では羽田空港の衝突炎上事故は、不幸な出来事ながら乗客乗員を全員無事に避難させたJALクルーの練度の高さや乗客もパニックを起こさずに冷静に指示に従って避難したことなどが報じられてホッとします。加えて事故後の情報開示にも見るべきものがあります。

【羽田空港事故】海保機、滑走路で40秒停止か、JAL機側視認できず - 日本経済新聞
今回異例なのは管制の交信記録が開示されていることで、事故の状況がかなり明らかになりました。管制官は海保機に滑走路手前のランプウエー待機を命じJAL機に着陸を命じたものの、海保機の勘違いなのかはわかりませんが、C滑走路に進入していて、管制官もJAL機も海保機の進入を認識できていなかったということです。典型的なヒューマンエラーですが、大事なのは再発防止であって犯人探しではないということです。

無線による交信で当事者間の情報共有を図るという意味で人の注意力に依存するシステムですが、航空便の増加で地上の事故やインシデントは世界的に増えている傾向にあります。日本でも2015年に那覇空港で自衛隊ヘリが滑走路を横切り離陸準備中のANA機が離陸中止に追い込まれたという重大インシデントが起きています。ヒューマンエラー対策として誤進入防止システムが開発され羽田のC滑走路にも設置されていましたが、マニュアルにより異常な視界不良時に限った運用とされていました。

このこと自体は国際ルールと整合的ですが、日暮れ時で必ずしも視界が良好とは言えない事故時は、日常であって非常時ではないという解釈で使われていませんでした。また管制官に対しては滑走路の誤進入をモニターに表示するシステムがありましたが、管制官は見落としていました。音による警告が必要かもしれません。但し誤進入に対する管制官の責任は問われない法律の建付けになっており、警視庁が進める業務上過失致死傷の立件は行為者と見做される海保機の機長になりそうです。

海保機も能登半島地震の救援物資輸送という臨時の任務を遂行中だった訳で、地震がもたらした事故とも言える側面はあります。元々海難救助を目的とする海保機にとってはイレギュラーな任務ですし、管制官にとっては扱いの難しい航空便です。とはいえボンバルディアDHC8という小型機体で短い滑走距離で離陸が可能なこともあって、滑走路の占有時間は短いですから、大型機の離着陸の隙間にうまくはめ込むことで支障を少なくするという管制官の心理もあったと思います。

故に管制官は滑走路手前のランプウエー待機を命じたと考えられますが、一方海保機は馴れない救援物資輸送で管制官の意図が読み取れずに勘違いした可能性はあります。そうしたすれ違いを回避するには機械的に止める手段をシステムに持たせるのが有効です。鉄道で言うATSやATCのような保安装置の必要性が認識されシステムの運用を含めた見直しは欠かせません。JR西日本の尼崎脱線事故もそうしたヒューマンエラーの積み重ねで起きており、ミスを糾弾し処罰することは却って情報の隠ぺいに繋がります。原発を巡る電力会社の対応にその匂いが感じられます。故にシビアアクシデントが繰り返される危険性はあるということです。

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Sunday, October 01, 2023

インフレは続くよどこまでも

有り難くないタイトルですが、中国バブル崩壊の次はアメリカの話題です。米国債金利の上昇で円安が進む昨今、米連邦政府閉鎖の危機が今度ばかりは避けられない情勢でしたが、ギリギリのタイミングで回避されることになりました。

米下院、超党派のつなぎ予算案可決 政府閉鎖回避へ前進:日本経済新聞
10/1から始まる新年度の予算執行のためのつなぎ予算が下院で否決されたことに端を発する騒動ですが、下院多数派の共和党の強硬姿勢で民主党案が否決された後、マッカーシー下院議長の修正案が提案されたものの、民主党のみならず共和党からも反対が出て否決となり、絶望的な状況ということで、バイデン大統領も政府閉鎖準備を指示せざるを得ない状況となりました。結果的にはマッカーシー議長案の修正で下院を通過したものです。

ここまで揉めたのは米国内の分断の深刻さを示すものです。元々新年度予算は民主、共和両党で合意済みですが、下院多数派の共和党が執行段階でブレーキをかけた格好です。共和党が嫌うリベラル的政策の予算を削り、不法移民対策としてのメキシコ国境のフェンス建設に予算を回せというのがザックリした主張ですが、既に合意済みの予算を削れというのは無理筋です。但し今回のつなぎ予算も45日間ですから、同じような騒動は繰り返されると見ておくべきでしょう。

これにはいろいろな背景があるんですが、共和党地盤の南部諸州にとって不法移民問題が重荷になっていることは確かな一方、東部エスタブリッシュメントや西海岸のハイテク地帯に強い民主党の移民に甘い姿勢は許せないという感情が前に出る訳です。その一方でヒスパニック系移民の増加で人口が増えており、移民の出生率の高さから人口の低年齢化も進んでいて、それが南部の生産年齢人口の厚みとなって工業化が進んだ面もあります。加えて共和党ステートの労働規制のユルユルさもあり、組合運動を認めないテスラの工場などが立地しております。それが別の問題を引き起こしていることも見ておきます。

米自動車スト拡大 新たに7000人、GMとフォード工場で:日本経済新聞
全米自動車労連(UAW)のストでGM、フォード、ストランティス(クライスラー)のビッグ3の工場がスト突入で生産が滞っております。UAWの主張はエンジン車からEVへのシフトは避けられず、自動車関連の労働者の数が減ることを睨んで、EV用バッテリーなどの製造工場の労働者もUAWに加盟させて保護を受けられるようにすべきだという主張です。産業構造の転換を理由に労働者が不利益を被ることは避けるべきということです。

ややこしいのはバイデン大統領が集会に参加して連帯を表明したことで、組合側が勢いづいていることで、結果的に火に油を注いだ形になってしまったことです。2016年大統領選で組合票がトランプ氏に流れたこともあり、組合票の囲い込みに動いた形です。不法移民が雇用を圧迫して産業が停滞したというトランプ流ナラティブの否定と共に、暗に南部諸州の労働規制の緩さを批判している訳です。同時に政権のEV政策も関わります。

トランプ時代のバイアメリカン法に触らずにインフレ抑制法(IRA法)を成立させた結果、米国内で販売されるEVは基本北米地域で生産されることを条件とされてしまいます。その結果EVシフトを進める欧州メーカーからWTO違反ではないかと言われごたついています。狙いとしてはバッテリー製造で世界をリードする中国への牽制なんですが、欧州やアジアのメーカーも引っかかる訳で、故に韓国現代なども米国内にEV製造拠点を設置を表明し、SKハイニックスなどバッテリーメーカーも追随しております。

当然欧州メーカーにも同様の動きがある訳ですが、製造拠点が置かれるのは労働規制の緩い南部諸州だったりメキシコだったりすると、結果的にビッグ3中心のUAWにとっては放置できない問題でもあり、出来れば連邦法で規制して欲しいというのが本音です。IRA法の狙いは気候変動対策と共に経済安全保障という面もあり、気候変動を重視するなら地産地消で可能な限り国内で生産して販売するのが正しいし、化石燃料依存の低減は経済安全保障の側面も持ちますが、同時に中国リスクも意識されており、中国産バッテリーの排除の狙いもあります。WTO提訴は現状上級委員の指名をアメリカが拒否していて機能していないですが、トランプ時代のそれを引き継いでいるのは、やはり提訴されたくないのでしょう。

という訳で政府閉鎖とストというリスクを抱えたアメリカで国債金利が上昇するのは当然となる訳です。分断による政治リスクが解消される見通しは立たず、また労組の強化は賃金を押し上げることにもなりますから、今後もインフレは収まらずFRBの追加利上げも現実味を増す訳です。となると低金利政策から抜け出せずにいる日本円の減価は避けられず、円安は進みますから、輸入物価上昇に伴う消費者物価上昇は今後も続くってことです。日銀の政策見直しが無ければ更にこの傾向は続きます。

経済安保は日本も取り組んでいる訳ですが、2020年の外為法改正の結果、妙なことが起きています。NHKスペシャルで取り上げられた大川原化工機の起訴取消事件の顛末のお粗末さが示す寒い現実です。

起訴取り消し事件「捏造」 訴訟出廷の警部補が発言:日本経済新聞
捜査官が捏造を認めたことも驚きですが、大川原化工機が輸出したのは液体噴霧乾燥機で、液体を噴霧して乾燥させることで粉末化する機械で、インスタントコーヒーや粉ミルクの製造装置になる訳ですが、警視庁公安部は生物兵器転用可能として無許可輸出を違法として刑事訴追した訳ですが、根拠となる証拠を捏造して会社幹部3名を長期間収監して1人はガンが進行して死亡するというとんでもない事件です。

警視庁公安部が動いた理由は推測ですが、法改正で実刑が定義されたことを受けて、捜査の指針となる判例を確定させたかったのでしょう。その為には抵抗力のある大企業よりも中小企業を追い込んで立件すれば手っ取り早いってことですね。狙い撃ちされた大川原化工機にとってはただただ迷惑な話ですが、特に経済安全保障絡みの政治性の強い法律故に、判例を確立させて捜査に睨みを利かせる所謂一罰百戒を狙ったと考えられます。それが今回のような人質司法の冤罪事件を生む訳です。現れ方の違いはありますが、政治が絡むとろくなことにならないのは日本も同様です。

JR北海道の札幌圏赤字急減、「黄線区」は拡大 4〜6月:日本経済新聞
コロナ禍前の水準に戻ってきたというニュースですが、記事中営業損益を見ると、北海道新幹線並行在来線区間の函館―長万部間の赤字額が長万部―小樽間の赤字額の3倍以上あり、営業キロの違いがありますが、貨物列車運行の重荷を感じさせます。ま、それ言えば絶対額では北海道新幹線が断トツで、青函トンネル区間という特殊区間ではありますが、札幌延伸後の収支改善も厳しさを匂わせます。

札幌都市圏以外は収支均衡は絶望的と言えます。その中で並行在来線協議を進める訳ですから厳しい現実ですが、加えて余市―小樽間で並行路線を持つ北海道中央バスがドライバー不足からバス転換を渋っていますし、それどころか事前に何の相談もなくバス転換を打ち出した北海道に対する不信感もあるようです。

鈴木知事が夕張市長だった時代に夕張支線の廃止に道筋をつけたことが成功体験となっているのでしょうけど、地元事業者の夕張鉄道が引受に動いたことでまとまったものの、ドライバー不足からバス便の維持は困難を極めており、鉄道時代を受け継ぐ伝統の長距離路線の新札幌夕張線の運行停止など満身創痍です。バス転換が選択肢にならない時代に直面しているってことです。

アメリカでペンセントラル鉄道が破綻したときの連邦政府の素早い対応と比べると、本当に危機感がないですね。ペンセントラル鉄道の場合は、結局連邦政府が線路保有機構としてコンレールを立ち上げて上下分離で運行継続を図りました。東方回廊とシカゴをエリアに持つペンセントラル鉄道が運行停止されると大量の貨物の滞留が起きるということでの緊急避難だったんですが、結果的に経営の苦しい他の民間鉄道も合流して鉄道ネットワーク維持に寄与しました。

コンレールはその後民間入札でサザンパシフィック鉄道に売却されて所謂北米5大ネットワークの一角を占めますが、それぐらい鉄道貨物の重要性が高いってことですね。結果的に旅客部門は都市圏毎の交通営団が引き受け、長距離列車はアムトラックが引き受ける形で現状となります。線路保有が貨物会社で旅客会社が線路を借りるという日本と逆の形になりました。この形態が基本ですから、なるほど日本の新幹線のような高速鉄道の整備のハードルは高い訳で、鉄道好きと言われるバイデン大統領がIインフラ整備法で約束したものの、財政支出を巡る共和党との綱引きで進んでおりません。政治はリスクの時代と自覚するしかないのかな。

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Sunday, September 10, 2023

どうする縦割り

ジャニーズ問題ですがBSJストラクチャーで取り上げたビックモーター問題と似ています。非公開のオーナー企業でオーナー社長が役職を退いてイエスマンの雇われ社長を立てたところはそのまんまですね。ソーセージ問題の応酬などの話題性は流石芸能事務所、エンタメを忘れていない^_^:。同時に性加害問題の根の深さも露になりました。

芸能界は人々に娯楽を与えるという意味で公娼制度の延長線上にあり、その意味で性的虐待や性的搾取が起こりやすいのは洋の東西を問いません。某NHK元会長が「慰安婦も当時合法だった公娼だ」と言い、欧州で現存する公娼制度を引き合いに出したことがありました。但し彼が見落としていたのは、現存する欧州の公娼制度は感染症防止のための健康診断の義務付けや、反社会勢力が入り込みやすい斡旋人などの性的搾取の防止に力点が置かれていて娼婦の人権擁護法としてアップデートされていることをご存じなかったようです。つまり慰安婦もジャニーズも人権問題という認識が希薄なメディアの報じ方や政府の対応なども問題です。

早速JALなど一部企業でジャニーズタレント起用の見直しの動きが出ています。海外事業にコミットする企業にとっては途上国の劣悪な労働環境や児童労働などで投資家から圧力を受けており、人権問題は経営課題と認識されている訳ですが、問題はドメスティックなメディア企業です。元々噂はあったし、90年代の所属タレントの実名告発を一部メディアは報じたものの特に放送メディアは沈黙しました。

報道部門は後追い取材はしたのでしょうけど採用されず没となれば記者もモチベーションを失います。大手芸能事務所の機嫌を損ねれば番組やイベントのタレントのブッキングや情報提供で割を食うということですね。放送事業者が利害を持つ利益相反がある訳で、ビッグモーター問題で明らかになった自動車販売店が自賠責保険の斡旋で損保会社に優位な立場だったこととも似ています。報道機関としてよりも視聴率競争で優位に立ちたい企業論理が前に出ました。そして日本的な横並び主義も災いしました。また報道機関としての編集権の独立も日本には存在しないことも。そういやNHK大河ドラマの主役誰だっけ?どうするNHK。

台風直撃のお盆が示した課題で懲りたJR東海は台風13号の進路次第では東海道新幹線の運休ありと示唆しました。幸い進路は東へ逸れて事なきを得ましたが多客期のダイヤ混乱は懲りたようで国交省への報告書でも取り上げました。

JR東海、国交省に検証結果報告 台風ダイヤ混乱で:日本経済新聞
16日の豪雨で山陽新幹線との直通運転を止めた結果、新大阪駅に多数の編成が滞留し、車両基地に収容できなかった結果、17日始発の出発準備が遅れて混乱となったもので、再発防止策として運行や混乱の状況全体を把握する担当者を置いたり車両基地の在線状況に応じて京都駅や米原駅に退避させるなどを示しています。

よく考えると国鉄時代は一体だった東海道山陽新幹線が分割民営化で新大阪で分割された結果、新大阪で滞留した編成を山陽側に送り込むことが出来ずに起きた混乱とも言えます。分割民営化の検討段階では新幹線の一体性を重視した本州2社+三島会社+貨物の6社体制案もありましたが、西日本会社の規模が過大になり地域分割の意義が薄れるということで現行案に落ち着いた経緯があります。

歴史にifは禁物ですが、同案が実現していればかなり異なった展開となり、東海道新幹線の一本足打法というJR東海の特異性もなく、今回のような混乱もおきなかったでしょうし、実現が見通せない北陸新幹線の関西延伸もすんなり米原ルートで実現に動いていたでしょうし、敢えてリニアを作ることもなかったでしょう。また東北新幹線東京延伸時にJR東日本が要請した東海道新幹線との直通運転も実現していた可能性もあります。地域分割がもたらした縦割りの弊害が如実です。

宇都宮LRT、市街地へ20分の利便性を生かせぬジレンマ 30年越しの悲願 宇都宮LRT④:日本経済新聞
鬼怒川両岸の広大な土地は農地を中心とした市街化調整区域で都市計画変更しないと開発できないジレンマがあります。元々駅東側から芳賀町に至る道路の渋滞対策として計画されたLRTで都市計画とは別建てだったこともあり、また地権者の同意も必要ということで、現時点で具体的な開発計画はありません。また水害が頻発する昨今、開発してよいものかどうかの判断も難しいところです。30年に亘る計画故にコンパクトシティのコンセプトより前だったこともあります。故に開発はベルモールのある宇都宮大学陽東キャンパスまでの区間に集中しており、マンションラッシュとなっております、ある意味結果オーライのコンパクトシティと言えなくもないですが、他にゆいの杜中央最寄りの新興住宅地が新幹線とLRTの組み合わせで移住者に人気ということです。

あと処理水海洋放出で見えた「新しい戦前」で取り上げた軌道法縛り問題ですが、宇都宮ライトレールでは上上下分離を実現するために全区間宇都宮市道、芳賀町道として整備されており、見かけ上新設軌道の鬼怒川橋梁前後区間や車両基地も道路予算で整備された併用軌道という法的位置づけで、開業後の事業収支を支えています。これ国交省予算の柔軟化で可能になったもので、例えばバスタ新宿がR20甲州街道の環境整備事業として道路予算が使われたり、肥薩線復旧事業への道路予算や河川予算支出が提案されていることともつながり、部分的に縦割りが解消されてはいますが、別問題もあります。

つまり鬼怒川橋梁前後を含む全区間が法令上併用軌道区間となり40km/h規制を受けることになります。一方いいとこ取りで道慮予算を多用した結果B/C比を悪化させた訳ですし、公金の支出として説明責任を果たす必要も大きいのですが、反対派を説得できていない以上果たしたと言えないところは残念です。鉄ちゃんの間では昭和レトロの反対派というレッテル貼りが横行しておりますが、行政側の対応に課題があることは指摘しておきます。

おそらく特認を受けて併用軌道区間50km/h、鬼怒川橋梁前後区間70km/hのスピードアップ実現時を前提にB/C比を計算したのでしょうけど、用地買収や土地改良で事業費の上振れがあったとはいえ、かなりメンドクサイ手続きを経てやっと実現した宇都宮ライトレールがLRT新設の先行事例となることは現状では期待薄でしょう。根拠法規の軌道法をアップデートして鉄道事業法の参入規制を緩和した軽快鉄道事業法のような形にすることで、もろもろのメンドクサイ手続きを簡素化することは考えられます。そうすることでLRT新設に留まらずローカル線の地元引受などにも活用できる汎用性が得られます。例えばローカル線の末端区間で40km/h規制を受け入れる代わりに無閉そく目視運転容認とか第四種踏切容認とか道路予算による上下分離に応用できます。

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Saturday, August 12, 2023

電気が足りない筈では

と言われながら熱中症対策でエアコン使用が言われてます。特に東電エリアでは予備率3%割れの可能性まで言われていたのに、今のところ節電要請はありません。種明かしすれば日射量の多い夏に晴天続きで太陽光発電の出力が多く、余力のある状況ってことです。電気が足りない訳じゃないで取り上げた冬の電力不足とは違って、日射量の多い夏の電力不足はあまり心配いらないってことです。勿論天候次第ですから不安定ではありますが、雨が降って気温が下がればエアコンの稼働も下がりますから電力不足は起こりにくくなります。寧ろ熱波に襲われている欧州では水温上昇で原子力と火力の出力抑制を余儀なくされており、今年の夏の暑さから日本もそうなる可能性はあります。

結局原発再稼働の口実として言われただけですね。また電気料金の値上げの影響で自主的に節電されているとも考えられます。60hzエリアでは九電、関電、中部電で太陽光の出力制御が行われているように、既に太陽光の比重は高まっている現状があります。逆に言えば地域間の連系線を強化すれば電力不足は過去の話にできる状況ということですね。それを阻んでいるのは地域独占体としての地位を失いたくない大手電力の利権というのが現実です。

電力関連では福島第一原発のALPS処理水の海洋放出問題も話題になりましたが、地元漁協の反対姿勢は変わりません。これもメディアではあまり伝えられておりませんが、ALPSの処理能力で取り切れないトリチウムだけが問題ではないということは指摘しておきます。問題点をまとめた記事があります。

東京電力「トリチウム水海洋放出問題」は何がまずいのか? その論点を整理する:ハーバービジネスオンライン
トリチウム自体は自然界にもあり危険性は少ないのですが、問題なのはヨウ素129他の放射性核種が処理水から検出されており、これらは有害性も高く生体濃縮される可能性も高い厄介なものです。それを大量のデータに紛れ込ませて公開はしているけど説明はしていない訳で、トリチウムの安全性ばかり言う国と東電の不誠実さが如実に表れております。

これらの事実は河北新報のスクープで地元漁協や全漁連の知るところとなり、公聴会は大荒れになりました。この構図は水俣病でチッソ水俣工場の排水の有機水銀濃度を低く示して責任逃れした当時の国やチッソの対応と似ています。記事にもある通り、トリチウム水の海洋放出問題は公害問題として捉えるべき問題なのですが、IAEAのお墨付きで科学的に正しいと強弁して実施されようとしております。こんな姿勢では当然漁協の同意は得られるはずはありません。

てことで夏の電力不足自体は今後もそれほど心配はいらないですが、日射量が少ない冬の電力不足問題は残ります。また渇水期ですから安定の再エネ電源と言われる水力も当てにはできません。しかし同時に強い季節風が吹く時期でもあり、それを利用した風力発電の活用で夏の太陽光に相当する予備電力の底上げが出来れば心配は減るのですが、別の心配な事件が起きました。

秋本議員、現金1000万円受領は審査基準の変更翌日か:日本経済新聞
秋本真利議員は自民党所属では珍しい脱原発派で風力発電事業に注力している議員です。記事にある入札審査基準見直しはインフレなんだよ愚か者で取り上げましたが、秋田県の洋上風力発電事の事業者公募で三菱商事グループが安値入札で独占したことで、審査の見直しの必要性が認識されたものですが、これメガソーラーのFITと同じ構図で。安値入札で権利確保したものの。発電事業を立ち上げずに権利譲渡が横行して見直されたように、発電開始時期を明示するなど当然の見直しが行われた訳で、しかも秋本議員が主宰する馬主組合への資金拠出が賄賂性があるというロジックなんですが、馬主組合のような趣味性の高いものの賄賂性認定は無理筋っぽいですし、風力会社社長が証言を翻したあたり、厚労省村木事件や日産ゴーン事件のような強引な取り調べの結果と見れば、本当に事件性があるのかどうかは慎重に見るべきです。大手電力の既得権に切り込んでいるし、木原官房副長官スキャンダルの当て馬説も。馬主組合だけに^_^;。
JR東海道線が電柱と接触か 運転中止、乗客は避難:日本経済新聞
やっと鉄ネタしかも事故ネタご容赦。先週末の茅ヶ崎花火大会の終了を受けての帰宅需要から設定された臨時の横浜行き上り電車が大船駅南方で架線柱と衝突した事故ですが、現場検証に当たった県警の見立てでは垂れ下がった架線をひっかけて架線柱が倒れての事故ということです。ただ不思議なのは先行列車は無事に通過している訳で、おそらく長く見積もっても10分程度の時隔しかない中で何が起きたのかが不明です。事故調が動いてますし、続報を待ちましょう。ネットではJR東日本を叩く発言が多数見られましたが、メディアリテラシーが問われるところです。

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Sunday, July 30, 2023

本気の気候変動対策

豪雨の梅雨が明けて猛暑の夏となりましたが、豪雨の影響は多岐に亘ります。

大雨、排水能力超え 秋田大雨1週間「どこの都市でも」:日本経済新聞
秋田市の水害は典型的な内水叛乱です。かがやきを失った北陸新幹線 で取り上げた川崎市のタワーマンション被害のように、豪雨で雨水が下水道の処理能力を超えて流入した場合、逆流して住宅等に被害をもたらすもので、内水氾濫と呼びます。タワマンの場合電気設備を地下に置くケースが多く、水没して停電という被害が起きた訳ですが、停電するとエレベーターが使えず揚水ピンプで水道水をくみ上げて落とす給水設備も使えなくなりますから地獄です。戸建てでも床上浸水もありますし、都市部ならどこでも起こり得るものです。河川の越提氾濫と違って見た目で危険がわかりにくいし、自治体のハザードマップに記載されているとは限りません。

とはいえ地下の下水道の能力増強は簡単ではありませんし、当然多額の費用が掛かります。例えば東京都で大規模な地下調整池を設けたりしてますが、東京都の財政力だから可能ということもありますし、それすら想定外の豪雨が続けば氾濫は起こり得ます。つまり完全な備えは難しい訳です。また確率の低い豪雨への備えにどれだけ公費を使うかについての合意形成も困難です。また人口減少下では公費負担を簡単には増やせません。

そもそも都市化で人口が集積するから下水道を整備しなければならなくなる訳ですが、例えば開発に適さない低湿地を公費で購入して調整池にするとかして、過剰開発を抑制する方向で考えて下水道への雨水流入を抑える方が安上がりで現実的になるんじゃないかと思います。上記かがやきエントリーで北陸新幹線の車両基地が低湿地に立地していたこともありますが、作っちゃいけないところに車両基地を作っちゃったということも言えます。財源制約が強い整備新幹線故に安い底地買いで被害を受けたとも言えます。

てことで苦い経験をしたJR東日本ですが、国鉄時代に建設された東海道新幹線の大阪運転所のように近くに天井川があって、当初から水害対策が考慮され、民営化後も車両を盛土上の本線に避難させる訓練を積み重ねてきた訳で、その経験はJR東日本に引き継がれなかった訳です。とはいえJR東海は水害対策が万全かと言えばそんなことはなく、名古屋の天白川の氾濫で当時の葛西敬之社長の運行継続の指示で多数の列車が立往生して車内泊を強いられましたし、今年の6月豪雨では早めに規制をかけたものの混乱しました。

東海道新幹線、大雨混雑防げ ダイヤや情報伝達改善へ:日本経済新聞
東海道新幹線の約半分の区間が盛土で、パイプを埋め込んで水抜きしたり土留めの擁壁で法面崩落を防いだりといった対策はされてますが、雨量が植えれば盛土が緩んで路盤や法面の崩落は起こり得ます。列車の通過に伴う振動がきっかけになることもあり、沿線の雨量計を見ながら徐行や運休などの規制を決める訳ですが、問題は情報伝達の拙さで駅に乗客が滞留し混乱したことです。JR西日本のように予報段階から計画運休するぐらいしないと結局混乱は避けられないんじゃないでしょうか。

山陽以降の全幹法規格の新幹線では高架橋主体で盛土は取付部などに限られますが、それでも豪雨による混乱は完全には避けられない訳ですから、盛土の多い東海道新幹線ではより慎重な対応が求められます。しかしのぞみ増発で輸送能力を高めてしまったが故に運休の判断が難しくなっているということも言えます。JR東海はそれ故に中央リニアを作るんだとしていますが、輸送力は東海道新幹線には及びませんし、第一難工事で開業の見通しが立たない状況です。

一方の北陸新幹線も敦賀で当面足踏みの状況が続きそうです。やはり難工事が予想される小浜京都ルートに拘らず、早期開業が見通せて事業費も少ない米原ルートで実現することで代替ルートは確保できます。但しJR東海の孤立主義が問題を難しくしている面があります。また豪雨にしろ猛暑にしろ気候変動の影響と見るのが妥当ですし、欧米やオーストラリアなどでも熱波や山火事を気候変動に絡めて報道されることが増えてますが、日本では見られません。正直言って人口減少に対応した開発抑制はCO2排出削減にもなりますし、実際電力需要は縮小しており、再エネ転換がやり易い状況になってきています。政府が言うGXの本気度が疑われます。

水害じゃありませんが首都圏ではこんな輸送障害がありました。

山手線全線で運転再開、11万人に影響 信号装置が故障:日本経済新聞
月曜朝の輸送障害で混乱しましたが、原因は信号トラブル。しかも大崎の東京総合車両センターの本線出口部分の機器トラブルで主要車両を本線に出せずに運休という致命的なもんです。思い出されるのは2015年の籠原駅の地落事故で電留線から車両を出せなくなった輸送障害ですが、今回は信号システムが原因です。

首都圏ではATOSと呼ばれる運行管理システムで列車の進路選定や遅延時の指令業務から駅の案内表示に至る一連の自動化がされている訳ですが、車両基地の出口のトラブルで車両を本線上に出せなければどうにもなりません。勿論システムを解除してマニュアル操作することは可能ですが、その場合車両基地に収容された車両を1編成ずつ手作業で進路を選定し、手旗などで合図しながら動かすことになりますから、大量の要員を確保して慎重に行う必要があります。当然処理能力は落ちますから、早めの復旧はしたものの平常の6割程度の運行に留まった訳です。JR東日本はそれなりに努力した結果です。

但し乗客への告知や案内は徹底しており、大きな混乱は見られませんでした。山手線は京浜東北線との並走区間の代替輸送と共に地下鉄網による代替輸送が可能という立地もありますから、元々冗長性が確保されているとも言えますし、加えてコロナ禍によるリモートワークでピーク輸送量が減っていたことも幸いしました。金融危機は核より怖いで取り上げた通勤定期運賃値上げの影響もあるかもしれません。つまり需要抑制のための値上げを実施ている訳で、こうした冗長性の確保はトラブル対応にも有効ということですね。効率重視一辺倒は見直す時代と言えます。

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Saturday, June 17, 2023

デジ足らん国のデジタルジャック(DX)

栗鼠殺し?帰省緩和のゴールデンウィークで取り上げたマイナンバーカードが絶賛炎上中です。問題点は明らかで、システムがポンコツ過ぎることに尽きます。マイナンバーそのものは個人情報といっても直接紐づけられている個人データは氏名、住所、性別、生年月日のみで、法律で税務申告、社会保障、災害対策に使われることが規定されているのみです。しかしマイナンバーカードはそれとは別物でICチップで様々な機能を紐づけられる仕様で、しかもマイナポータルへのアクセスデータは企業にも開放されるという代物です。今回の法改正で省令改正で可能になっており、国会審議が不要になります。

はっきり言いますがCOCOAやHERSYS同様システム開発手前の要件定義がいい加減で個人情報ダダ洩れです。しかも既に他人に成り済ましてマイナンバーカードを作って悪用したケースも報じられております。カードを作らず番号を他人に見せずにするしか自衛手段はありません。マイナンバー自体は本人確認のツールの1つに過ぎず、提示も任意ですから、従来通り免許証や健康保険証、母子手帳、パスポートなどでも構いません。

それで国民の不安から内閣支持率が下がって、報道では今国会での解散がなくなった訳ですが、それでも見直しは行わないどころか保険証の廃止や免許証や母子手帳との紐付けまで打ち出している訳です。つまり他の本人確認手段もマイナンバーカードに紐付けすることを謳っている訳で、マイナンバーカードを軸にあらゆる公的個人データが芋づる式にハックされる可能性もあります。分散管理がセキュリティの常識ですが、完全にそれに逆行しています。明らかに別の意図があるとしか思えません。

例えば公金受取口座の紐付けは、個人金融資産の把握が狙いでしょう。本当は全ての個人口座の紐付けがしたいのでしょうけど、そこまでしなくても課税情報などは国が握っている訳です。払い損国家ニッポンで取り上げたように、インフレが債権者から債務者への富の移転を意味する訳で、防衛費増や少子化対策のバラマキで財政拡大が見込まれる中で、最大の債務者である政府が債権者である国民の個人金融資産を把握する事態が如何に危ういかは指摘しておきます。国は非常事態を宣言して個人口座を凍結することがたやすくできる状況ってことです。

実際戦後のハイパーインフレ期の預金封鎖と新円切替で国民の資産が強奪されたようにこの国には前科があります。しかもデジタルでそれが可能となればなるほどDXに熱心になる訳ですが、本当はデジタルトランスフォーメーションじゃなくてタイトルのようなデジタルジャックが狙いなんでしょう。そうすると日銀の緩和継続の下で財政拡大しても財政インフレで痛みはなく、いよいよになれば預金封鎖で政府債務をチャラにすることすら可能になります。また別の視点ですが、こんなニュースもあります。

ロシア、電子招集令状導入へ 徴兵逃れ対策を強化:日本経済新聞
かねて劣勢が伝えられる対ウクライナの特別軍事作戦ですが、招集逃れもあって兵士が集まらないということで電子招集という奥の手を繰り出しました。少子化で隊員が集まらない自衛隊の勧誘にマイナンバーカードが使われることは当然考えられます。

特に学校の成績が残念な児童が狙い撃ちされ、除隊後の就職に有利とかの甘言を並べて勧誘するぐらいのことはやるでしょう。学校成績の紐付けも言われており、今でも狙い撃ち勧誘はされてます。岐阜の射撃場の事件のようなことも起こる訳です。マイナンバーカード作っちゃった人は返納届提出で返納できるそうですから、自治体窓口で手続きすることをお勧めします。

横浜新交通逆走で3人書類送検 設計不備、業過致傷容疑:日本経済新聞
自動運転にブレーキ? シーサイドラインの逆走事故で、設計を担当した東急車両の当時の社員3人が設計ミスを理由に書類送検されました。起訴されて公判になれば詳細情報が明らかになりますが、デジタルを前提とした自動運転で非常事態をどこまで想定しシステムを作り込むかは難しい問題です。システム開発の手前の要件定義から見ていかないと本当の原因は掴めません。引き続き注目すべきニュースです。

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Saturday, March 18, 2023

田代の水は山をも越すが水に流せぬ大井川

箱根馬子唄ならぬリニア迷子唄^_^;。リニア60年のウヨ曲折の続編です。

リニア工事中の水量減解消、JR東海が静岡自治体に説明へ:日本経済新聞
上記エントリーでも取り上げた大井川の水問題での東電田代ダムの取水量調整でJR東海が東電と協議することを前提とした説明をするということですが、すんなり進むとは思えません。田代ダムは大井川最上流の田代にダムを作って導水管で山梨県の冨士川系の早川へ落として水力発電を行うという目論見で建設され1928年に完成した大井川水系では初の本格的ダムです。つまり元々田代ダムの水は古くから山梨県に送水されていた訳ですが、これが後年大井川で水利権争いの種になります。

早川電力は後に東京電灯に吸収され、更に電力国家管理で日本発送電に摂取され、戦後GHQ の日本発送電の解散命令で後に東京電力となる関東配電に引き継がれ今に至ります。こうした歴史過程もあって大井川水系では田代ダムのみが東電で他は中部電力という形になり、水力の一河川一社の原則から外れております。大井川水系は多数のダムが作られました。余談ですが大井川鉄道は元々電源開発のための鉄道として電力資本で作られたから、ローカル私鉄としては重厚な設備で整備されており、SL列車の運行が可能なのもそのお陰です。

そんな事情からダムの取水で大井川の渇水が問題視され、特に1955年に田代ダムの取水量が当初の毎秒2.92トンから4.99トンに増やすよう東電が静岡県に申請し、静岡県は流域自治体の同意を得ずに認可したために流域住民が反発し、東電や中部電力に河川維持放流を求める運動に発展し、住民の座り込みなど実力行使にまで発展する騒ぎになりました。特に山梨県で発電事業を営む東電の態度は頑なだったようです。1997年の河川法改正で河川環境の維持が義務化されたのを受けて2006年委解決しましたが、水利権問題の解決は半世紀を越えました。

といった係争の歴史を踏まえると、JR東海は将に地雷を踏んだ訳ですが、同時に東電も過去の係争の経緯から流域関係者の了承を前提に協議するとしており、静岡県は東電の協力の確約を求めているということで、JR東海が話をまとめるハードルは高いと言えます。そもそも東電が今償却前収支の赤字、つまりキャッシュフローの欠損という深刻な事態に直面しており、取水制限にすんなり応じられる状況にはありません。という訳ですから、まだまだもめます。

という訳で視界不良な中央リニア事業ですが、河川法改正が大井川の水利権問題の解決を後押ししたように、法律的に打開する可能性は考える余地があります。但しその前にそもそも中央リニア事業の法的位置づけがどうなっているのかについて、あまり取り上げられることはありませんが、問題を多数含みます。

事業の根拠法機は全国新幹線鉄道整備法(全幹法)ですが、元々国鉄が事業主体となる前提で作られた法律で、基本計画線の公示や整備計画策定のための調査指示、分割民営化後に見直され、所謂整備新幹線スキームと呼ばれ、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が建設主体となって建設費を国と地方が負担し、事業者は受益の範囲リース料を30年間支払うこと公的負担を軽減する形ですが、中央新幹線に限ってはJR東海が建設主体となっており、公費の投入はない形ですが、そのことがJR東海に地元軽視姿勢をもたらした可能性はあります。

元々1970年に成立した全幹法は高速道路整備と並ぶ国土総合開発計画と連動した国土軸形成のための法律であり、地域開発に資することを目標としている訳で、その観点から見ればリニアのメリットを受けず大井川の水問題に留まらず環境破壊や事故災害時の乗客救援の責任まで負わされる静岡県が反対するもの無理もない話なんですが、死去した葛西名誉会長を筆頭に幹部の国鉄OBが国鉄時代のノリで事業を進めようとして静岡県で躓いたという見方は可能です。とはいえ現実的に静岡県内にリニアの中間駅を設置するのは無理ですし、国鉄流バーター主義では対応できない訳ですね。

加えて言えばそもそも中央新幹線は2011年にJR東海の発議で整備計画線に昇格したように、元々基本計画線の中でも優先順位の低い路線だった訳です。JR東海としては稼ぎ頭の東海道新幹線と競合する路線をJR東日本や西日本といった他社に参入されたくなかったという動機付けが強かったと思いますし、それ以上に一定のシェアを維持する東阪間の航空のシェアを奪って独占したかったということがあります。つまり全幹法を利用した輸送シェア独占を目論んだってことですね。

よく言われる国土強靭化策としての二重化の機能は北陸新幹線に託されており、また東海地震対策という意味ではリニアのルートはほぼ想定震災域に被っており、敢えて中央新幹線を急いで作る必要性は乏しい中で、リニアという技術革新を売りに国に認めされたという意味で、全幹法の趣旨をかなり逸脱した存在であるということになります。

東海道新幹線の輸送逼迫もJR東海ののぞみ増強や品川新駅開業などJR東海自身の追加投資によるもので、実際90年代には輸送量の伸びが止まって一度シェアを落としています。余談ですが日本の上場企業のPBR1倍以下、つまり解散価値以下企業の中にJR東海がリストアップされています。意外ですがPERの水準は高いので東海道新幹線へのてこ入れで資産価値が高まった結果、時価総額を上回ったってことでしょうけど皮肉な結果です。

二重化の観点から言えば来年敦賀まで開通する北陸新幹線の関西アクセスルートで揉めてますが、二重化の観点からは米原ルート一択です。特に難工事が予想される小浜京都ルートは事業費もかかるし整備期間も長くなるし、公費負担分の費用便益比(B/C比)が1を割ると予想される一方、距離が短く建設費も低廉でB/C比も2近く、また並行在来線の湖西線問題でも地元滋賀県との協議の可能性が高まります。三日月知事が唱える交通税も、近江鉄道支援に留まらず湖西線問題に備える意味があるとすれば、納税者に負担を求める滋賀県にメリットのない小浜京都ルートでは論外ですね。JR西日本はJR東海のリニアの躓きを学んでいませんね。

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