都市交通

Saturday, November 01, 2025

株価以外全部沈没

ほとんど前エントリー*1の続編ですが、事態が動いているのでフォローアップせざるを得ない状況です。

まずガソリン減税ですが、今年12月31日からの暫定税率廃止で与野党が合意しました*2。与野党6党合意ですから国会通過もすんなりいくでしょう。軽油も来年4月1日からということですが、インフレ対策なら物流費に影響する軽油を後回しというのは軽油引取税が地方税で地方から反対の声が上がっていますが、同時にガソリンが安くなることの方が国民へのアピールになるということもあるでしょう。AIが壊す社畜エスカレーター*3でも触れましたが、価格が下がって需要を喚起すると原油の輸入が増えて貿易収支が悪化して円安インフレを招くことになります。

また財源は曖昧なままで、当面税収上振れによる剰余金や法人税の特措法減税の見直しなどとされてますが、特に剰余金は繰り越して次年度の国債発行抑制に用いることが法定されてますから、年度をまたいだ単なるトバシでしかありません。具体的に道路予算削るとか自動車関連税例えば重量税の増税とか、揮発油税の負担がないEVを考慮した走行距離税とか燃料税の炭素税への1本化とかには踏み込まずに済まそうとしている訳です。この調子ですから財政規律の緩みを質そうとはしていない訳で三つ子の赤字*4はますます進みます。

そして自動車半導体を巡るオランダと中国の対立がエスカレートしています*5。ネクスペリアは元々オランダの電機大手フィリップスの半導体部門を独立させた企業ですが、中国資本に買収された結果、オランダ政府から製造技術流出の恐れということで冷戦時代に作られた忘れられた法律で規制をかけたものですが、どうも裏でアメリカが動いているようで、怒った中国政府がネクスペリアの中国にある最終製品工場からの海外出荷を制限した結果、ドイツVWや日本のホンダその他の自動車メーカーが巻き添えになっております。自動車用半導体の世界シェア4割を占める同社の製品の8割は中国工場で最終製品に加工されることから、世界中の自動車メーカーがトバッチリを食っている訳です。これ結局日欧などアメリカの同盟国が傷つくだけの不毛な争いですが、今度はオランダ政府がネクスペリアのシリコンウエハーの中国工場への供給を止めて泥仕合になっています。中国資本のオランダ企業というネクスペリアがまた裂き状態になっている訳で、トランプと習近平がにこやかに握手しても事態は解決しません。中国を除く世界の自動車産業のピンチです。

そのせいか最高値を更新する日本株でも自動車関連はパッとしません。主にAI関連半導体関連の値上がりが支えているようで、相場全体が上げ相場という訳ではありません、円安で割安感があっても海外勢は万遍なく買っている訳ではないということです。高市トレードと言われる株高も一皮むけばという感じですが、特に欧州勢の買いが優勢なのは変わりません。インバウンドやタワマン完売などに見られる安いニッポン現象です。

ほぼ500兆円で動かなかった日本の円建てGDP名目値ですが、ドル建てでは5兆~6兆ドルだったものが、インフレで600兆円を超えた円建て名目値がドル建てでは4兆ドルになっているのが現状な訳で、その分日本の購買力が低下している訳で、一番のインフレ対策は日銀の利上げしかない状況ですが*6、またも日銀は動きませんでした*7。ベッセント国務長官は別に親切心で言っているのではなく、日本政府のドル売り介入を牽制する意図でしょう。実際米ドルは円を除く主要通貨に対して下げており、ユーロ・ポンド・スイスフランなどに対して安値となっていて通貨防衛の意図ですが、欧州の主要通貨は既に米FRBに先駆けて利下げに動いていて、スイスフランに至っては日本よりも低金利なのに上昇してます。そしてFRBも今回は動いたものの*8為替は寧ろ円安に動いてドル円153円台が定着しつつあります。その意味では日銀が利上げしても大勢に影響はないのかもしれませんが、金融正常化の姿勢を示す意味はありますし、利上げを遅らせた分だけ正常化が先送りされます。

てことでインフレ下で株式の高値更新はある程度持続すると思いますが、銘柄ごとに動きはバラバラで、下げている銘柄もあります。例えばリニア事業費倍増で嫌気されたJR東海です*9。財務の健全性は複雑系エントリー*10で指摘した通りですし、財投の3兆円も30年据え置きという破格条件で現状無利子ですから利払いの負担はなく、現状のインフレが続くなら負担にならないかもしれませんが、それ故に居心地の良い現状を抜けられなくなっているとも言えます。東海道新幹線のぞみ増強とインバウンド需要で既にライバルの国内航空便に対しても優位な状況ですから、仮に似リニアが開業しても航空からの移転はほぼ見込めないとも言えます。逆に東海道新幹線の好調でキャッシュを稼ぎ過ぎると自社株買いや配当などの株主還元を求められるから現状煩いアクティビストに狙われることもないということも言えます。この辺は伝統的日本企業的なスタンスで、既に赤字ローカル線の名松線に至るまで線路も車両も更新されこれ以上の投資先が見当たらない贅沢な悩みでもあります。何ならJR西日本が渋っている北陸新幹線米原ルートを整備スキーム無視で自前整備するとか。まあやらないでしょうけど。

一方でインバウンド対応は京阪が始めたプレミアムカーが阪急やJR西日本でも取り入れられ、老舗の近鉄特急も差別化された豪華特急のラインナップを整備してます。そんな中で京阪は更にプレミアムカー2両体制と攻めてます*11。上限運賃が決められていて航空鵜のようなダイナミックプライシングが難しい中でJR東日本の中央線グリーン車や私鉄各社の着席サービスが次々に登場してますが、京阪の場合沿線開発が終わって沿線の高齢化や松下・サンヨーといった大手電機産業の撤退やJR西日本との競争激化もあって乗客が減少する中での増収策ですが、当然一般車の乗車定員を削っている訳で、それに対する批判もありますが、背に腹は代えられないということですね。

同様の動きは関東でもありまして、1つは京成電鉄の空港連絡有料特急の増強計画です*12。成田空港第三滑走路供用と3つのターミナルビル統合を成田空港会社が打ち出し、末端が単線のJRと京成の成田空港線の増強を視野に入れてスカイライナーに加えて押上発着の有料特急を2027にも導入ということで、押上が観光名所でもある東京スカイツリー最寄りで浅草にも近いからインバウンド需要の取り込みが見込めるということですね。アクティビストから将来への追加投資を迫られていた京成が動きを見せた訳ですが、同時に都営浅草線への直通も視野に入っていると考えられます。そしてそれを裏付けるような動きが出ました*13。具体策はこれからですが、JR東日本のN'EXの牙城に切り込む可能性もあります。

両社ともにアクティビストの標的にされており、投資をせがまれてしないなら株主還元を求められているという点で共通しています。加えて都営浅草線を通じて関係も深く保安装置も同じ1号線型ATSの上位互換のC-ATS*14でハードは共通で運用が異なるだけなので擦り合わせは容易です。具体的にダイヤに落とし込むときに現状のインフラの貧弱さがネックになる可能性はありますが、インバウンド対応というところは引っ掛かるものの、とりあえず投資に向かうことは評価できます。殆どシナジーのない新京成電鉄の子会社化と統合とか、系列バス会社の再編とかで守りを固める一方だった京成と、やはり沿線の高齢化と立地企業の撤退で京阪と似た苦境にある京急がアクティビストに促されて動いたということですね。日本の現状は明らかに国内の民間投資が不十分だった結果と言えますから。

その意味で日本政府が合意文書を交わした5500億ドルの対米直接投資はヤバいです*15。というのも同様に対米投資を迫られた韓国のこのニュースです*16。長くなりましたのでさわりだけですが、韓国は外貨準備の80%超に及ぶ3500億ドルの直接投資でウォン安によるインフレ昂進を懸念して抵抗していたもので、それ故自動車関税交渉が遅れたのですが、日本のように自動車関税緩和を優先してやはり確実に円安を招く巨大投資を受け入れたことは、国民生活を犠牲にして大企業を救ったということでもあります。とりあえず今回はここまでにしておきますが追って深掘りします。

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Sunday, October 26, 2025

100年殺しのアベノミクスvoL.2

100年殺しのアベノミクス*1の続編です。予想されたことですが、高市政権はインフレに関わらず積極財政に舵を切ります。個別にツッコミ入れるよりも、日本が置かれている現状の構造問題を明らかにして問題点をあぶり出したいと思います。

まず原油価格*2。トランプ政権のロシア産原油を輸入する中国やインドへの牽制として追加制裁を課した結果、原油価格は急騰しましたが、ウクライナ戦争で急騰した原油価格も落ち着いてきて1バレル50ドル台まで下がった局面での急騰で60ドル台になったというニュースですが、原油価格の相場がここまで下がっていたのにガソリン価格は下がっていません。元売りへの補助金減額の影響と円安の結果ですが、欧米では軒並みガソリン価格が下がっている訳で、日本だけ高止まりしている状況で、円安がガソリン価格を押し上げている訳です。その意味では暫定税率廃止はインフレ対策になり得るのですが、ガソリンが安くなって消費が増えれば原油の輸入が増えて貿易収支を悪化させるから結局円安で調整されてしまう恨みがあります。但し公共交通の脆弱な地方は恩恵がありますし、物価高の原因となる物流費の上昇を抑制する効果はありますので、まったく意味がないとまでは言いませんが、効果は限定的です。

あと輸出の稼ぎ頭の自動車にも異変が出ていて輸出が減っています*3。台数は維持しながら関税分の値引きで金額が減った形で、それだけ自動車メーカーの収支を圧迫します。日産の窮状はこうした背景があります。加えて別の火種もあります。中国の半導体メーカーのオランダ工場を巡る中国とオランダの対立で中国メーカーの中国国内工場の出荷制限をして独VWや日本のホンダ等の自動車メーカーがトバッチリを食うというものです*4。所謂経済安全保障をオランダ政府が重視した結果ですが、日本政府も経済安全保障重視の立場から同様の問題が発生する可能性もあります。あと財源を定めない防衛費増額前倒しも輸入装備品増による貿易収支悪化と財政出動によるインフレで国民生活を圧迫する要因となります。

そして新興国の追い上げもあり、日本は来年にもインドに抜かれます。その後ろにはイギリスも*5。2010年に中国に抜かれ、2023年にドイツに抜かれ*6、ゆくゆくイギリスにも抜かれる現状です。国じゃないけどカリフォルニアにも抜かれてます*7。中国やインドのような人口大国に抜かれるのはある意味必然で、中国に至っては今や日本の4.5倍の経済規模ですが、人口2/3のドイツや半分のイギリスに抜かれるのは話が別です。しかも独英共に一時10%を超えるインフレに見舞われて経済は絶不調なのに日本を越えていくというのは、円安による日本の購買力の低下がもたらしたものということができます。

その結果が株高になっているというと違和感を覚えるかもしれませんが、高市トレードの正体は円安です*8。円安は外貨建ての日本の株価を安く見せますから、海外勢の日本買いで租プ場が上昇したもので、特に欧州系の投資家が目立ちます。ドル円でも1週間で5円以上の円安が進み153円をつけてますが、それ以上に対ユーロで170円とか対スイスフランで190円とかで大バーゲン状態になっている訳です。だから株価は上がるけどその結果株式を保有する富裕層の資産効果で消費が増えてインフレを助長する一方、株式を持たない一般国民はインフレのマイナス面を引き受けることになる訳です。

特に食費の上昇が深刻ですが、食料自給率の低さが作用して円安は食料品価格を押し上げます。しかも食料品は値上げりしたから量を減らすという訳にはいきませんから買うしかないし、逆に値下がりしても胃袋の大きさで消費量が制約されるから、価格弾力性が低く、その意味で野党が求める良品の消費税率ゼロはインフレ政策として一定の効果は期待できます。但しガソリン減税以上に実務面の制約が大きく、例えば包材や物流費などの課税仕入れの負担がある一方、課税売上で税率ゼロということはその分食品の製造加工や流通の負担が増えてしまいますし、減税を反映した値下げが起こらなければ実質的な効果を減殺してしまうことになります。という訳でやはり筋が悪い。それ以前に食料自給率を高めることこそ経済安全保障の一丁目一番地です。

にも拘らず新しい農相はコメ減産をぶち上げています*9。石破政権で打ち出されたコメ増産方針は撤回された訳です。当然コメ不足は続き価格は高止まりし、米国産米のミニマムアクセス米増枠で価格逆転でトランプ大喜びでも輸入米需要が伸びて、下手すればミニマムアクセス枠を超えた分の関税負担後の価格も逆転の可能性もあり、貿易収支を悪化させて円安となり、ほぼ自給率100%だったコメまで輸入依存ということになりかねません。

あとインバウンドや土地所有問題で揺れる外国人問題ですが、インバウンドの拡大がもたらす弊害は観光公害だけじゃなく、ホテルや飲食のインバウンド価格によってつり上がり国内旅行を圧迫しています*10。同様の問題は国内航空輸送でも起きていて、JALやANAにとっては悩みの種の国内線の不振をカバーするのに国際線コードシェアという裏技で凌いでいます。鉄道と違ってダイナミックプライシングが認められている航空運賃を押し上げる要因になっている訳です。逆に上限運賃制で割安な鉄道へのインバウンド客の負荷も増えていて国内旅行の抑制要因になってもいます。事実上のクラウディングアウトが起きている訳です。

てことで東名阪の三大都市圏を繋ぐ東海道新幹線の営業成績は絶好調ですが、その稼ぎをリニアで溶かしているために*11、業績好調にも拘らずJR東海の配当性向は低いという現実があります。ちなみに鉄道株では東京メトロの配当性向の高さは特質もので、1,600円台という買いやすい価格でお勧めです。次いでJR東日本です。やや苦しい鉄ネタ締めです^_^;。

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Sunday, October 19, 2025

日出ずる国のたそがれの副首都

日本維新が自民党との連立協議で12項目の要求の中で、連立離脱した公明党が要求していた企業献金規制より厳しい企業献金廃止を打ち出しましたが*1、結果的に高市首班に乗ることになりました*2。そして12項目には含まれるものの緊急性の乏しい議員定数削減が前面に出てきました*3。企業献金廃止はどこへやら、厳しい要求を示して見せて有権者にアピールしつつシレっと論点をずらしてしまう維新流のゴマカシ。元々自民党大阪府連の内ゲバでできた大阪維新の会としては本気で自民党を追い詰める気はサラサラなかった訳で、大阪で対立していた公明党の政権離脱は逆にチャンスでもあった訳です。維新変身は以心伝心-_-;。

実はこれ大阪府や大阪市では議員定数削減が行われていて、1人区が増えて維新議員ばかりが増えて地方の二元代表制が事実上停止した結果、議会の行政監視機能が低下して維新の首長のやりたい放題になっています。味をしめた維新は他府県でも同様のことをやって兵庫県のようにパワハラ知事が職員や県議を自死に追い込む事態となりました*4。国政に移植すれば比例票頼みの小政党が議席を減らす一方、大阪の小選挙区を独占している維新は無傷で身を切らないし、人口減少で合区が続く地方の代表が減るし、国会議員になるハードルが高くなって議員が特権化するし何もいいことありません。本気で身を切るなら議員歳費を削れよ!

こうした政局が有権者の目が届かないところで動くのは今に始まった話ではありませんが、国民を愚弄するものでもあります。そして維新と国民民主党に政権交代の為の連立協議を模索した立憲民主党は、結果的に失敗しましたが連立協議を通じて表に出にくい各党の本音を可視化した点で評価できます。メディアの取り上げ方はは政権交代を目的化した数合わせというものが多かったのですが、政治家のウソを暴くのはメディアの役割なのに時として敢えてナイーブになる政治報道にウンザリです*5。しかも議員定数削減を自民執行部は吞んだ一方、所属議員には慎重派がいます*6。また維新が席巻する大阪の小選挙区で自民党候補に反維新の意思表示で投票した有権者も裏切っていることも指摘しておきます。

同じく12項目にある副首都構想も自民執行部は理解を示したようで、大阪銘柄が思惑買いで株価を上げてます*7。阪急阪神HD、京阪HD、近鉄グループHDといった私鉄株の他、建設株の淺沼組や金融株の池田泉州HDなど幅広い銘柄が買われてます。短期的には大阪関西万博終了に伴うパビリオン解体工事や跡地再開発と、既に着手されているIR誘致などとりあえず再開発案件が多数あり、鉄道関連では工事中のなにわ筋線*8の他JR西日本桜島線の夢洲延伸、京阪中之島線延伸、阪急なにわ筋新大阪連絡線、近鉄特急の地下鉄中央線乗入れを狙った架線・第三軌条のハイブリッド集電車両開発などがあり、近鉄以外はなにわ筋線関連ですが、事業者によってスタンスに濃淡はあります。

副首都構想の欺瞞は首都機能移転が既に国会で決議され法令も整備されていますが、中央省庁の移転というよりも東京の首都機能のミラーリングによる災害等のバックアップ体制整備であり、大阪とは限らないと言いながら同時被災の可能性が低い人口集積地という意味で大阪が有力候補にある訳で、この点にゴマカシがありますし、ミラーリングですから基本的に二重化によるレジリエンス確保なので行政の効率性は低下しますがそれには言及せずにいる訳です。そのくせ議員定数削減でもそうですが、公的部門の非効率をあげつらって批判している訳で矛盾します。どこでもいいんだったら本土決戦を想定して大本営の移転地とされた長野県松代でもいい筈です。突貫工事で整備された巨大地下壕を活用することが可能ですし、万が一の核戦争でシェルターになる可能性もあります。

この手の施設は今でも結構残ってたりしますが、例えば旧国鉄大船工場跡地も元を質せばやはり本土決戦を睨んだ横須賀海軍工廠の移転先として接収された土地を戦後国鉄工場に転用されたもので、JR東日本に継承され鎌倉総合車両センター深沢事業所となった後工場集約で「廃止され、跡地を巡って藤沢市域の東海道線村岡新駅計画と連動して鎌倉市役所移転その他の開発計画が市議会で2度の否決でとん挫してます*9。長くなりましたけど真に必要なのは地方分権による地方の自立であって中央省庁の二重化ではないということです。レジリエンスは自律分散型の身の丈に合った自立した地方の自治の深化と役割分担こそ重要です。例えば原発のような大規模電源よりも地産地消型の小規模分散電源の方がレジリエンスが優れているということですね*10。

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Saturday, October 11, 2025

鹿を指して馬と為す

自民党総裁選で高市総裁選出されました。

高市氏「馬車馬のように働いて働いて・・・・・・」
いやあんた馬車馬じゃなくて御者でしょ。臆病な馬車馬は視界に入る情報に過剰反応して立ち止まったり暴れたりするから、前しか見えないように遮眼角つけて御者の手綱の合図で進んだり止まったり向きを変えたりするもの。鹿虐待で掴んだ地位で*1馬になるって始皇帝没後の宦官超高の故事じゃあるまいし。あそうか御者は別にいるんだwwwwwwwwww*2。
高市「ワークライフバランス捨てる」*3
自民議員「いいぞいいぞ、働き方改革何するものぞ」
政府官僚「やめてくれ、議員のハッパで仕事増えてまうやないか」
自治体職員「コロナ給付金やマイナカードみたいに政府の無茶振り増えるやないか」
企業経営者「新リーダーえーこと言うなー」
社員「やめてくれ、ブラック企業に逆戻りじゃん」
無能なリーダーの頑張りはただただ迷惑です。

翌日夜、東急田園都市線梶が谷駅構内で衝突脱線事故が起こりました*4。

回送列車の見習い運転士「ありゃ、急に止まっちゃいました」
添乗の指導運転士「過走防止装置で停止したんだ、慌てず解除してゆっくり再力行しなさい」
上り渋谷駅各停運転士「ATC現示に従って運行していたら回送列車の進路支障を目視して非常制動かけたけど間に合わず衝突し防護無線を発報」
衝突
見習い運転士「防護無線受信して停止」
東京メトロ「ヤバい、復旧に時間がかかるぞ。鷺沼出庫できないと明日電車足らなくなるぞ」
鉄ちゃんたち「渋谷行きATCで何でとまれなかったん?」
恥ずかしながら当初下り副本線(2番線)から留置線に進入した回送列車が脱線して上り副本線(3番線)に進入する各停がぶつかったのかと思い、回送列車の急制動による荷重移動で輪重抜けしたのかと勘違いしてよほどの速度で留置線に侵入したのかと考えていました。実際は3番線から留置線への進入で速度超過があって装置解除して再力行していた時の衝突ということで、各停渋谷行きの防護無線が発砲してから回送列車が停止した結果、衝突のショックは緩和されていたかもしれません。死傷者が出なかったのは幸いです。またATCが作動しなかったことも勘違いを補強しました^_^;。
東急電鉄公式「10年前の連動装置改修の時に設定ミスがありました。全線の連動装置を緊急点検いたします」*5
東急電鉄公式「大井町線二子玉川駅構内1カ所、新横浜線新横浜駅行内2カ所で設定ミスが見つかりました。防護措置を講じた上で設定を改修します」*6
新横浜もヤバいけど区間運休で二子玉川折り返ししてた大井町線もヤバかった?おそらく軌道回路で制御する継電連動システムの応答速度改善で高密度運転のために電子連動へ改修して設定ミスしてしまったってことでしょう。

翌6日には高市政権発足を先取りして市場が動きました。高市トレードの始まりです。

外国人投資家「過去発言から積極財政派だから円安が進むぞ。割安な日本株は買い時だ。タカ派発言から防衛その他も買いだ」*7
国内投資家「値上がりは嬉しいけど続くかどうかわからんから適当に利益確定売りで益出ししとこう」
為替ディーラー「政治空白で為替介入も見込めず円安は当面続くぞ」*8
結局爆上がりした後の一進一退で株価は頭打ち感も米市場のAI相場を受けてソフトバンクグループの値上がりで終値最高値を更新しました*9。
日本国民「インフレで株価が上がってるだけでこっちには恩恵ないよな。寧ろ株の資産効果で消費が強まってインフレが酷くなるかも」
財務省「政治空白で政治の圧力は弱いけど、長期国債の売り先が見つからない」
実際長期金利は上がっています。ということは日銀その他の保有国債の含み損が増えていることでもあり、日銀の金融政策の選択肢を狭めます。インフレ基調は当面続く訳です。

そして輪をかけた政治空白が広がっています。

公明党「あんたらの裏金問題のトバッチリでうちの候補者も落選してもうたやないか。せめて企業団体献金を規制せいや!」*10
自民党「煩いこと言うなら国民民主取り込んで切っちまえ!」
国民民主党「さっさと国会開いて年収の壁引き上げとガソリン減税済ませたら連立入りしてもいいよ」*11
自民党「めんどくせえなあ。公明との連立協議済ませよう」
他方立憲民主党が野党共闘で新機軸。
立憲安住幹事長「野党でまとまれるな玉木首班でもいいよ」*12
そして自公の連立協議。
公明党「企業献金規制吞めや」
自民党「呑めるかい!」
公明党「グッドラック」*13
立憲民主党「公明党の連立離脱で政権交代の環境は整った。野党共闘の機は熟した」
国民民主党「やめてくれ、政権交代してまうやないか。首班指名されたら責任生じるやないか」*14
日本維新の会「玉木氏でまとまるなら立憲案に乗ってもいいよ」
国民民主党の正体がバレました。年収の壁のウソ*15の段階でわかっていましたが。

一方政治空白のお陰で邪魔されることなく戦後80年の所感*16を発表した石破首相。大きな論点は3つ。事前にまけることが分かっていた戦争を止められなかったことの問題意識から、政府も議会も軍部の暴走を止められず文民統制が機能しなかったこと。帝国憲法の統帥権の拡大解釈が横行して戦争遂行に向かったこと。メディアも戦争を煽ることで売上を伸ばして権力の監視役としての社会の木鐸の八鍬ろりを放棄したこと。安保環境が悪化する中、その反省を踏まえることなく平和を維持できないと結んでおり、強権外交でも謝罪外交でもなく評価できる内容です。そんなこんなで政局の流動化で臨時国会も開けず、外交日程は詰まっていて、自民党内や政府の一部から当面石破首相首相で良くね?の声も。トランプに会うのは誰かな?*17結局石破降ろしは何だったんだ?

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Sunday, August 24, 2025

AIが壊す社畜エスカレーター

民営化ドミノ*1の続きです。予想通りではあるんですが、ガソリン税減税の与野党協議会が足踏みしています*2。1兆円程度の財源を示せない野党の本気度が疑われます。特に立憲民主党の「税収上振れと税外収入」は論外です。インフレで前週の上振れは当然ありますが、同時に国債金利も上昇しており、使ってしまえば次年度以降の国債利払い費の膨張で財政を痛め、インフレを助長することになる無責任な議論です。決算剰余金として繰り越して次年度国債発行額を圧縮するのがインフレ時の正しい財政の在り方です。

野党各党でも国民民主党は論外として、維新の法人税租特法減税の見直しとか、共産はそれに加えて金融課税強化を打ち出しています。本気で政権取りにいくならせめてこれぐらいのことは言うべきですし、暫定税率の原点がオイルショックによる道路特財源の税収減を補う2年間の時限立法だった訳ですから、民営化エントリーで示した潤沢故に無駄が多い道路予算の削減を何故言えないのか?高速道路無料化を打ち出した民主党の後継政党らしからぬところです。そしてこれは腹括った少数与党の石破政権を利するものでもあります。立憲執行部にはどうせ少数与党だから向こうから頭下げてくるだろうという甘い考えがあるんじゃないか?だとすればとんでもないことです。

知恵熱の夏*3で示したように自民公明の与党の敗北は必然だったのですが、立憲民主党の伸び悩みも必然と言えるという厳しい総括ができていないってことです。そんな中で立憲・国民両党で組織内候補を擁立した連合から参院選の総括案が発表されました*4。連合自身の組織の弱体化を示す集票力の低下を認めつつ、それでも地方区で立憲と国民が選挙協力したところでは当選していることを指摘し、両党の協力を示唆するとともに、国民民主党の政策が財政支出を増やして寧ろインフレを助長し労働者を苦しめると言及しています。元を質せばアベノミクスの異次元金融緩和と財政出動の結果の円安インフレなんで、何故正面からアベノミクス批判ができなかったのか。結局自公の少数与党を助ける結果になっている訳です。

その石破政権もツッコミどころ満載で、例えばコメ増産を打ち出し、大規模化やスマート農業でやる気のある農家の支援や企業参入の解禁を打ち出してます。これ政権交代前の民主党も似たようなことを言っていたんですが、政権交代後には減反を前提とした10アール当たりの補助金交付に後退しました。但し国内出荷しない輸出米や加工品や飼料用など減反の枠外で自前で販路を見出す限り自由に作付けできる形とし、減反廃止の激変緩和を図ったことと、コメの先物市場を開設して市場価格を見ながら作付けの参考にする体制を整えました。但し農協の反対で先物市場は機能せず、また第二次安倍政権では逆に食用米の補助金を無くして加工米、資料米、輸出米に補助金を出して事実上の減反を継続させました。令和のコメ騒動でそれが裏目に出て逆にコメ先物市場には注目が集まるようになりました。

で、石破政権の大規模化とスマート農業が何故ダメかというと、戦後の農地改革で水田の圃場が細分化されていて。特に三大都市圏を擁する平野部では相続その他の事情で離農者が農地を手放し、小規模開発の宅地になったりしていますから、物理的に圃場の大規模化が困難になっており、また離農者が増えて一部の専業農家に生産委託されるケースは増えてますが、離れ離れの小規模な圃場で耕作を続けるしかない現状があります。

スマート農業で特に注目されている乾田直播農法ですが、種籾の前処理や播種後の雑草取りの手間が大変で、田植えが省略できるメリットを相殺してしまいます。雑草取りの手間を減らすには除草剤散布が欠かせず、近くに宅地があったりすると使えないし、そんな農薬まみれのコメが高値で売れるか?とか、水田耕法の利点の連作障害がない点もやってみなければわからないし、また水田耕法を前提とした農機類も使えず現時点では監視カメラやドローンなどの価格も高く、参入障壁が存在します。まして人口減少に苦しむ地方の中山間地では尚更で地方創生にも逆行します。一点突破的なイノベーションは無理があります。

食料米、輸出米、加工米、資料米の壁を取っ払って耕地面積で補助金を付けた上、先物市場の市況を参考に作付け量を決めることと、収穫後も市場価格を参照して出荷するといった形にして、離れた圃場の作付けなど農業者の工夫を引き出すことで儲かる農業を実現しつつ適正価格でコメが買えるようにして消費者にもメリットがあるといった形にすることは可能です。

やっと本題ですが、技術革新が必ずしも問題解決に繋がらないのはありふれた問題でもあります。そんな中でChatGPT5が「冷たくなった」というユーザーからの抗議が起こりました*5。前バージョンの4oと比べてフレンドリーさが失われたということですが、そもそも人間ではないAIに共感を求めること自体が間違いで、元々ハルシネーションと呼ばれるいい加減な回答を返すことは指摘されてきましたから、ユーザーが検証しないと使えないのですが、フレンドリーな受け答えに癒されて下手すると宗教とアヘン*6のような依存症にもなりかねませんし、それを誘導に使われる罠にはまる可能性もあります。基本的には個人のスキルアップのツールとして壁打ちの相手に使うのは有効でしょう。逆に言えばそれ以上でも以下でもないツールです。

但し生身の人間ではありませんから当然制約はあります。特に熟練を要する高スキルの獲得は、結局若いうちにそうした人と接する中で試行錯誤するしかない訳で、それはまた高スキルの人の補助的な立場で学ぶということでもありますが、高スキルの人がAIとの壁打ちで多くの問題を解決できてしまうと煩わしい若手の弟子を取りたがらないということも起こり得ます。そうするとその人の高スキルは次世代に継承されず引退して失われることになります。つまりAI依存で若手の育成が滞ることを意味します。典型的なのはプログラマーですが、業務フローを見ながらソースコードを書いてはテストの試行錯誤を経てスキルを上げていく部分をAIが肩代わりしてしまうと若手が育たないというジレンマに陥ります。既に米テック大手では業績好調でも大量解雇に動いており、AIに代替されるのは高給取りの技術職という予想が当たった訳です*7。

日本の場合は雇用慣行の違いから異なった展開が予想されますが、所謂新卒市場に異変が起きる可能性は指摘しておきます。労働力人口減少の結果、新卒市場は売り手市場となり初任給が高くなってますが、どこかの時点でこれが反転する可能性があるということです。事務職と技術職が該当することになりますが、新人が下働きで覚える業務フローをAIが代替してしまえば若手を大量採用する必要が無くなる訳です。しかも即戦力として迎えられるから、付いていけずに離職する可能性も高まります。つまり有名大学を出て大企業に勤めて一生安泰というキャリアプランが成り立たなくなるということです。

これ企業側から見ると新卒市場の取り合いから好待遇を訴求しなければ人が集まらないという事態が解消されますから、即戦力にならない新人の初任給を下げられることを意味します。そしてゼロ年代以来の賃金抑制の結果勤続年数による定期昇給率が下がって賃金カーブがフラットになってますから、勤め続けても賃金はあまり上がらないということで、これが手取りが増えない原因なんですが、結局副業で補填するしかないということになります。ますますスキルは身につかず稼ぐには長時間労働しかなくなるということで、正社員でも実態は非正規と変わらないということになりかねません。てことで第二氷河期に向かうということですね。

元々日本的雇用慣行のメンバーシップ型雇用がバブル崩壊後に崩れて団塊世代の退職者補充を非正規で済ませたことが氷河期世代を生んだ元凶ですが、彼らはスキルアップに努めて正社員を勝ち取っても勤続年数の壁で定期昇給の恩恵も不十分で新卒プロパーと待遇差がありますし、賃金カーブのフラット化で若手より先に昇給が止まり賃金格差が固定化するし、役職者になれるチャンスも少なく、なれても役職定年で平に降格したりと散々な目に遭ってきた訳ですが、その二の舞がこれから就職する若手にのしかかる訳です。インフレを受けて賃上げが進んでいるとはいえ定期昇給込みですから、実質賃金に影響するベースアップ分は3%程度でインフレ率に追いつかない状況です。

そんな中で気になる動きがJR東日本で起きています。最大労組のJR東労組をぶっ潰して、代わりに社員親睦組織兼労使協議帯として経営陣と現場を繋ぐ社友会を組織して協議機会を1ヵ月から3か月に減らしたりした結果トラブルが増えています*8。その一方で会社に賃上げ要求をしたりして労組のような7動きを見せていますが、労組ならざる社友会のこの動きに社員から違和感の声が上がっているということです。会社のカバン持ちが賃上げポーズで社員に阿る姿勢の中で、経営サイドからの合理化要求が加速しているというものです。

例えば南武線の遅延問題*9ですが、ワンマン化実施後に朝夕を中心に遅延が日常化しているということで、ドア開までの時間短縮などを打ち出してますが、元々沿線に工場が多く、最近はマンションも林立し、他線との乗換駅が多く乗降が頻繁という路線特性から経営陣が現場をどの程度把握できていたかが問われます。何だか京葉線の快速廃止の混乱*10を思い出させます。いずれも恐らく経営からのトップダウンで実施した結果の不具合という点で共通しています。京葉線は乗客や自治体のクレームを受けて千葉支社長が見直しに動きましたが、南武線ではメカ的な解決策しか示していません。段々JR東日本が嫌いになりつつある昨今です。社員の人も違和感があるならナショナルセンターの連合に相談して労組再結成しても良いと思います。今なら世論も理解するでしょうし、弱体化したナショナルセンターの連合も組織立て直しに繋がります。

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Sunday, August 03, 2025

温暖化の加速

辞めない石破首相の続投の理由の一つが南海トラフ地震などの天然災害の発生の可能誌で政治空白を作るべきでないと。そしたらカムチャツカ半島東岸の海溝型地震と広範囲の津波警報/注意報が起きました*1。石破さん、あんた預言者かい?旧約聖書のノアの箱舟やモーゼの出エジプト記など天然災害のメタファーと見られる記述があり、神の試練と預言者の救済という共通したモチーフがあります。

新約聖書の福音書でマタイ伝だったと思いますが、ゴルゴタの丘に連行されたイエス・キリストと同時に処刑される筈の大盗賊の2人の内1人を赦免するとしたらどちらか?とローマ市民に対して役人が問い、市民は盗賊の罷免を求めました。何人も殺した物獲りの盗賊の所業は市民の日常感覚を拡張して理解可能なのに対して、訳の分からん戯言を述べる預言者は理解不能だったということです。裏金議員の方が理解しやすいのか?そんな盗賊の視点でキリストの復活劇を描いたのがスウェーデンのノーベル賞作家ラーゲルクビストの小説「バラバ」で岩波書店から邦訳が出ていましたが、今手に入るかどうかはわかりません。刑を逃れたものの何か空疎な感覚に支配された主人公の心象風景が描かれています。

それはさておき津波警報で東海道線など鉄道やバスの運休や海水浴場の閉鎖などで行き場を失った人が多数出て、鎌倉市では市役所や市会議場を避難者に開放するなどの対応を取りました*2。鎌倉市では市役所の深沢地区(旧国鉄大船工場跡地)への移転計画が市議会の反対でとん挫しましたが、移転して解体し再開発工事してたら対応できなかった訳で、多くの人を助けました。

警報発出時に外出していましたが、一山越えた安全な場所にいたこともあり、スーパーで買い物して自宅へ戻ろうとしたら待てど暮らせどバスは来ない。そのうちバス停に人が集まり収集がつかない中で、ウェブのバスナビで確認したら東海道線以南の路線は全面運休ということで、仕方なく炎天下徒歩で帰宅しましたが、途中のバス停でバスを待つ人がいたのでバスが動いていないことを話し、また鎌倉駅方面は現状がわからないから急いで戻らない方が良いといった話をしながら、暑さを凌ぐ木陰を辿りながら歩きました。緑の多い自宅周辺の環境に助けられました。警報が出ていてもパニックにならなかったのは東日本大震災などの経験が活きたとも言えます。逆に忘れた頃の天災は恐ろしいという裏腹な関係は意識すべきです。

炎天下の避難で熱中症で倒れた人も出ていて、避難の難しさも同時に意識せざるを得ないなど課題もあります。そして今年の夏の暑さは異常というレベルでもあります。体温を越えた気温と共に、特に日本近海の海水温の上昇で湿度が高い状況が続いています*3。つまり大気中の水蒸気量が増えている訳ですが、水蒸気はCO2以上の温室効果ガスです。但し上昇気流に乗って断熱膨張で放射冷却すれば結露して雲になり太陽の輻射熱を遮りますし、雨になれば地面も冷やすから通常ならば温室効果は限定的ですが、太平洋高気圧とチベット高気圧の2つの高気圧の影響で上昇気流は起きにくく、ただ暑く湿った状態が維持される訳です。そして湿度が高いと発汗による体温調整も働きにくくなりますから、原発や半導体やバッテリーと同様*4人間の能力も低下します。つまり生産性が低下する訳です。社会人も夏休みが必要ですね。暑さは農業などにもマイナスです*5。

そしてもう一つ不都合なのは、脱炭素の切り札とされる水素発電やFCVは水蒸気を発生させますから、湿度を高めて温室効果を助長します。グリーン水素の調達コストも高く、水素社会は当てにしない方が良いでしょう。同様につなぎとしてのアンモニア発電もコスト面で壁にぶち当たってますし、炭素固定(CCS)というやはりコストに課題のある技術とセットで推進されてます。当面はコストのこなれてきた太陽光を中心に再エネ活用を探る方が良さそうです。霞が関の官僚たちも考え改めてほしいですが、地下鉄霞ヶ関駅がサウナ状態という悲報です*6。日本の未来は絶望か?

その一方で神宮外苑その他の再開発で樹木の伐採が進んでいて*7、涼をとれる木陰が減っています。加えて東京都は路面温度を下げる遮熱舗装事業を行ってますが、これが逆に照り返しで気温を上げていることが報告されてます*8。翌年にズレた2020東京五輪の暑さ対策でマラソン協議を札幌で開催することになったものの、サッポロも猛暑の予報があり、マラソンコースを遮熱舗装したのですが、その時のデータを解析したら、確かに路面温度は下がったものの、照り返しによる気温の上昇が認められ、熱中症対策としてはむしろ逆効果というエビデンスです。当然子供やペットの犬への影響は大きいし、最近男性も使う日傘も無意味というものなんですが、何故か東京都は遮熱舗装を推進しています。本当は都市緑地や街路樹の整備による木陰の創出こそが求められるのですが、都民を殺しにかかってる?

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Sunday, July 20, 2025

折れたつばさ

参院選投票日当日ですが、ひどいTIXY選挙*1でした。政策よりも目先のアテンションで有権者アピールしてまともな政策論争もないまま過ぎました。それでも選挙報道姿勢を問われたオールドメディアは不十分ながらファクトチェックで姿勢を変えております。従来選挙運動を隠れ蓑に酷いヘイト発言し放題だったことに比べればマシにはなってますが、ヘイト発言に喝采する有権者はそもそもオールドメディアはウソだらけと信じ込んでますから響かない。故に従来投票したことがないような無関心層を動員して議席を得れば解散のない参院で6年の任期を得て少数与党に恩を売りながらうまい汁吸うことができちゃう訳です。

とはいえ政権選択選挙ではない参院選後には原則首班指名選挙は行われませんから、仮に与党が参院で少数転落しても、石破氏が自ら辞めない限り政局にはならないです。そして日米関税交渉の膠着が、アメリカ政府から見れば協議を重ねてきた石破政権が交代すると一からやり直しになるから、選挙が終わるまでは石破政権にマイナスにならないよう配慮してます。そして選挙後の赤沢経財相の8度目の訪米がアナウンスされています*2。つまり石破さん辞める気さらさらなしです。関税協議が政権延命の鍵という倒錯^_^;。とはいえ既に連邦歳入で法人税に次ぐ規模となった関税で税収が調達されている状況*3では交渉の余地は殆どありません。

それに背中を押されたのか日産が追浜、湘南の2工場の閉鎖を決めました*4。ブランド力の弱い日産としては関税の価格転嫁もままならず*5米国内工場を温存して他社製品の受託生産で量を確保する一方、国内工場は縮小せざるを得ない状況に追い込まれた訳です。財務状況が悪い日産としては関税分の値引きの原資がもたない訳です。立地から高く売れる可能性のある工場の閉鎖はそれだけ追い込まれているということです。そしておそらく高く売りたいから、工場ごと居ぬきで買える相手となると鴻海が有力候補になりそうです*6。鴻海はEV事業への本格参入を狙っており、乗用車に留まらずEVバスへの参入もアナウンスしております。国産EVバスはいすゞエルガEVのみで、BYDやヒュンデなど中国や韓国の輸入車頼み故に勝算ありと見たのでしょう。

そして前エントリー*7でも指摘しましたが、通貨当局が動けない中で日米両国のインフレ率の差が為替を動かすことを指摘しました。その結果為替はこう動きました*8。与野党のバラマキ合戦の影響もありますが、自動車を始め関税分を価格転嫁できていないことがアメリカのインフレ率を抑えている可能性も指摘できます。いずれ関税分の価格転嫁が進んで日米のインフレ率が逆転する可能性もあります。実際日本のインフレ率はコメの備蓄米放出やガソリン補助金で抑えられておりますが、それでも日本のインフレ率が高い結果です。今後も微妙な展開が予想されますが、政策的な価格抑制は財政の拡大で結局インフレを呼び込みます。この点はアメリカも似たり寄ったりなので、予想を難しくしています。まあ製造業での経済成長の可能性は日米共に殆どありませんが。

そんな折れたつばさを共有する両国ですが、それでも金融とITで稼げるアメリカに対して、自動車も袋小路でどうするということで半導体に注目が集まりますが、TSMC熊本工場で生産された半導体は殆どエヌビディアやアップルが買い手という現実が影を落とします。2ナノの試作品製造に成功した北海道千歳市のラピダスも同様の問題を抱えており、仮に先端品の営業出荷が可能になっても国内に買い手がいないという現実が待ち受けます*9。SuicaなどのIC乗車券や電子マネーに欠かせないFelicaシステムも今やソニーも見捨てたレガシー技術というぐらいイノベーションの周期が早い半導体のエコシステム構築は技術を磨くだけでは果たせず、寧ろアメリカのバイデン政権のスモールヤードハイフェンス政策で先端半導体が手に入らない現実を受け入れてレガシー技術を磨いて先端品と同等の性能を実現した中国の手堅さが、国内需要に押された結果という点は示唆に富みます。歩留まりが悪く採算が難しい先端品に拘る日本の在り方は、結局熊本の渋滞激化や豊肥本線混雑率ワースト*10という負のインパクトを地域にもたらしています。

そして半導体関連で山形新幹線つばさE8系のトラブルは原因究明が進まず、東京直通を止めて福島乗換で対応が続きます*11。報道では補助ん電源装置の半導体の不具合ということですが、思い出されるのが国鉄時代の中央快速線201系のサイリスタ日照り*12です。おさらいすると国鉄が中央快速線向けに開発した201系が、走行中に度々主回路がブラックアウトするトラブルに見舞われ、原因はサイリスタ素子の過熱と突き止められました。地下鉄では制御器の抵抗熱対策でサイリスタチョッパ制御が導入された一方、回生ブレーキ対策が必要な地上の鉄道では導入が進まない中で、国鉄一の高密度輸送輸送線区の中央快速線で回生電力の有効利用と量産効果によるサイリスタ素子の価格低減を狙ったものの、制御器は海側という抵抗制御時代の慣例で配置を決めた結果、東西に延びる中央線では日中直射日光を浴びて輻射熱の影響でサイリスタ素子が機能を失うことと、中野以西のベタ停車で加減速が頻繁で走行風による冷却効果も限られた結果でした。対策として制御器箱を白く塗って輻射熱を反射させるなどして安定させたものの、他線区への導入のブレーキになりました。例外は京阪神緩行線で駅間が長く高速走行で冷却効果があって同様のトラブルはありませんでした。

それでも国鉄がユーザーとしてメーカーを育てようとした結果の失敗ですから、その後のパワーエレクトロニクスの成長には貢献できたとは言えます。同様に常磐緩行線の207系900番台*13のセコい失敗もありますが^_^;、最強ユーザーとしての国鉄の存在感は大きなものでした。民営化後のJR各社は半導体も汎用品でコストダウンに励む方向へシフトしてメーカーとの結びつきが弱まったきらいがあります。例えば209系のVVVF制御器がトラブル続きで継続使用を断念して「寿命半分」が実現してしまうといったことですが、その流れでE8系のトラブルを見ると、トラブル発生日の気温が高かったことから、半導体が熱にやられた可能性はあると思います。厄介なのはかつてのパワー半導体と比べても回路構成が複雑化しており、チップ上に電流安定のためのセラミックコンデンサが組み込まれたりしていて、どこに不具合があるかが見えにくくなっていることはあります。また半導体製造のサプライチェーンは長く、その各段階に不具合が混入する機会は増えているということもあります。巨大化した米IT大手のようにサプライチェーンへの影響力を行使する力は弱まっていると考えられます。てことで原因究明は困難を極め、折れたつばさは当分続くと覚悟する必要があります。

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Saturday, July 05, 2025

TIXY選挙の後始末

ティックトック、インスタグラム、エックス、ユーチューブを略してTIXYと呼ぶそうですが、SNSのショートムービー拡散機能を選挙活動に利用して、一方的な断定調の主張を有権者に届けるTIXY選挙が物議を醸しているのは都知事選の石丸現象*1や兵庫県の斎藤知事再選*2に留まらず、高齢者バッシング*3や年収の壁問題*4や氷河期世代煽ったり*5外国人の社会保険タダ乗りのフェイク*6などで支持を伸ばす国民民主党*7の躍進はSNSの拡散力によるものです。AIで見た目を整えることも容易になり、N党、れいわ、参政党などもSNS拡散を取り入れており、街頭演説中心の既存政党と異なった選挙戦術で自らを目立たせようとしてます。

その結果見た目のウケ狙いが目立つようになり、例えば野党各党が揃って消費税減税に言及し、与党の自公も給付金で対抗するという*8眩暈のする状況です。いずれもインフレ対策として打ち出してますが、総需要を賄える供給力が衰えた中での財政出動はインフレ要因になるだけで無意味です*9。税収の上振れが喧伝されますが、インフレの影響である以上、時差を伴って国債金利の上昇による国債の利払い費増が迫る中で、上振れ分は国庫に戻して国債発行の圧縮に使うべきものです。特に長期債の金利上昇は顕著で*10、低金利時代に増えた長期債をこれ以上増やせず、短期債で凌ぐしかない状況です。その結果国債に借換えが増えて借換え時の入札で決まる金利の上昇の影響を長期間受けることになります。つまり現役世代や将来世代へのツケ回しが膨張することになります。こうした財政の仕組みを知れば高齢者バッシングは無意味だし消費税減税や給付金も問題だと理解できるでしょう。

TIXY選挙で報道姿勢が批判された所謂オールドメディアがインフレ対策を「最大の争点」と報じるのですが、経済学上の常識としてインフレはマクロ経済現象であり、対策は日銀の利上げと財政出動の縮小による総需要抑制策しかないことぐらいきちんと指摘して欲しいです。逆にこの点を曖昧にしたままの選挙戦ではまともな結果が出るとも思えません。実際都議選では自民公明の議席は減ったものの都民ファーストが伸びて小池知事与党は盤石という結果になりました。自民党は都連の裏金問題で票を減らした模様ですが、都ファに票が流れたんじゃ意味がないです。寧ろ都の開発行政の不透明さは温存されて地価は上がる一方で家賃も上昇してもはや地方の若者を受け入れる余地は減ってます。

週刊東洋経済2025年6/21号の第二特集で東京の湾岸副都心を取り上げております*12。既に公募も取りやめ東京ドーム4個分の都有地が宙に浮いています。臨海副都心の開発は主に三菱地所が手掛けてきたのですが、1996年予定の都市博の中止*13で狂いが生じたものです。ご存じ青島幸雄氏が都市博中止を掲げて都知事選に立候補して当選し、逡巡はあったようですが民意を尊重して都市博中止を実行しました。規模としては開催中の大阪関西万博を上回る大規模博覧会を起爆剤に開発に弾みをつけようとしたようです。これ古くは1940年の幻の東京五輪と東京万博を想定して晴海展示場が整備されたものの戦争で中止した流れと同じですが、どのみちバブル崩壊で博覧会どころじゃなかったでしょう。とはいえ都有地の造成費用は支払われている訳で、税金で負担されていることは指摘しておきます。

しかし東京都は諦めず石原知事時代の東京五輪招致で競技施設を湾岸に集め、1964年の国立競技場その他の既存施設と連携したコンパクト五輪を構想するも選に漏れ、その後紆余曲折の果てに2020年東京五輪として招致されたものの、再利用される筈の国立競技場が建て替えられ*14、震災復興もそっちのけで容積率変更の既成事実づくりで強行され*15、コロナ禍で無観客になったり、事後的に五輪を巡る不正が明らかになったりしながら、新国立競技場を露払いにして神宮外苑の再開発が進んでいるのは周知のとおりです*16。つまり未利用の都有地を放置して風致地区指定の民有地の再開発を進める都の異常な開発行政です。そして神宮外苑の地権者には三井不動産や神社本庁が名を連ね、隣接地の伊藤忠本社ビル建て替えに伴う空中権売買まで行われております。都が造成費用を負担した臨海副都心は放置され、民間の大口地権者の利益誘導を図った訳です。しかも神宮外苑は都心の貴重な森で、都市部のヒートアイランド現象による気温上昇を抑える役割もあるのにお構いなし。熱中症で倒れる人が増えても知らん顔ってことです*17。こうした開発行政に信任を与えたことになる訳で、森喜朗元総理と萩生田光一議員が差配したことも明らかですが*18、元々流動人口が多く選挙への関心が低い東京都議選ではこうなってしまう訳です。ある意味TIXY選挙がやり易いと言えますが、参院選ではどうなるでしょうか。

それでも流石に臨海副都心の都有地は何とかしたいから8号北上線(豊住線)*19や臨海地下鉄*20でアクセスに弱点のある臨海副都心のアクセス改善を狙っているんでしょうけど、神宮外苑に留まらずそこここで再開発ガシガシ進めている中で意味あんのかってのが正直なところです。加えて再開発を阻むもろもろの要素も顕在化しております。この点は別項にて取り上げたいと思います。

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Sunday, June 15, 2025

火照るカリフォルニアの迷宮

氷河期世代が社会保障弱者*1という現実と共に、在日外国人も同様の問題がありますが、政府が見直しに動きます。

外国人の国民健康保険滞納防止 在留審査に納付状況反映、27年度にも - 日本経済新聞
在留審査強化に繋がるだけに制度設計に注意が必要ですが、自治体のシステム改修を国が助けて漏れを防ぐことと共に、記事の末尾に重要情報が記されてます。
国保の総医療費や高額医療費支給額に占める外国人比率はいずれも1%台で被保険者に占める割合より低い。
オンライン記事は有料会員向けで全文を読むにはハードルがありますが、近くの図書館で紙面の記事で確認できます。「外国人が日本の健康医療保険にただ乗りしている」という外国人排斥の言説が間違っていることを示す事実です。冷静に考えれば高齢化が進む日本人よりも国内で働く外国人の方が平均年齢は低く、医療アクセスの必要性は低いから当然なんですが、外国人に保険料負担をしてもらうことで、現役世代の負担を軽減できる余地があるなら、外国人を排斥するのではなく共に社会を支える仲間として包摂することは結局国民を利することになります。

この点は移民問題で揺れる欧米が移民排斥に揺れている現状を見れば尚更、社会的摩擦の軽減を真剣に考えることは重要です。そしてそんな移民問題で揺れる米カリフォルニア州は、全米50州でも移民に寛容な州として知られています。元々農業が盛んな土地柄で広い耕作地を耕すのに必要な労働力需要が強かったってこともありますが、スペインの植民地から独立した第一メキシコ帝国が共和国となり、一方アメリカ入植者によるカリフォルニア共和国独立宣言がきっかけで米墨戦争となり、メキシコがアメリカに割譲する形で31番目の州となるという歴史過程もあり、元々ヒスパニック系住民が多かった土地柄です。そしてその結果全米50州のうち人口1位(約4000万人)で且つ国のGDPに相当する域内総生産規模も最大で、国に喩えればドイツ*2に次ぐ世界第4位*3に位置します。人口2/3のドイツに続き人口1/3のカリフォルニアにも抜かれる日本。

カリフォルニアはシリコンバレーに代表されるハイテク企業の集積地でもあり、米国産スマホや米国内クラウドサービスその他で生じるデジタル赤字の相手側でもあり、日本のお陰です^_^;。同時に世界から優秀な人材が集まる移民に寛容で、大学を中心に東海岸とは異なるカウンターカルチャ—がインターネット時代にフィットしたこともあります。意外な一面としては鉄道王国だった過去でしょう。特に Pacific Electric Railways という大手事業者が州内に路線網を巡らいせていました。同社はトラムから発展したインターアーバンで電気鉄道だったこともアメリカでは特異な存在でした。

インターアーバン自体は一種のブームで他州にも波及しましたし、日本も影響を受けてます。京成、京王、京急、名鉄、近鉄、京阪、阪急、阪神の大手各社は軌道で開業したインターアーバンの歴史を踏んでますし、地方でも九州電軌(西鉄北九州線)、豊州電気鉄道(大分交通別大線)、兵庫電気軌道(山陽電気鉄道)、越中鉄道(富山地鉄井水線、万葉線)、複武電気鉄道(福井鉄道)など多数の追随者が現れました。

その存在故にクルマが売れないと一計を案じたGMが同社を買収し、減便また減便のダイヤ改悪で客離れが起きて廃止に追い込まれ、その代替輸送を担うバスを売り、農家向けのピックアップトラックを売り、日常の足としての乗用車を売り、全米屈指に自動車社会となりました。その結果ロスアンジェルス都市圏の交通渋滞は深刻で、それが通勤時の相乗りで自動車税を割り引く制度が早くから導入され、また排ガスによる大気汚染対策で厳しい排ガス規制を全米に先駆けて導入し、後の連邦マスキー法へと繋がります。同法を最初にクリアしたのがCVCCという排ガス浄化システムを実装したホンダ1300で四輪車シフトを成功させ、米ビッグ3の没落に繋がったのですから皮肉です。

また所謂ゼロエミっションビークル(ZEV)規制もカリフォルニアで始まり、今でも専任のボードメンバーが時代とともに規制内容を見直し、新車販売時のZEV比率を徐々に上げ、上回った分の権利の売買でEV専業のテスラが大金を手にして他社を突き放す原資を得ました。一方ビッグ3は権利を買えばとりあえず目先はクリアできるからEV開発に本腰が入らず取り残された訳です。

加えてロスアンジェルスの相乗り減税制度は結果的に通勤ラッシュの緩和策として機能し、多くのオーナードライバーが家族でもない他人を乗せて走ることが定着したことで、ウーバーなどのライドシェアが受け入れられる土壌があったと言えます。それがない日本にライドシェアを移植することは簡単ではない訳です。一方でタクシーの配車サービスは定着しており、利用増と迎車料金上乗せで流しのタクシーが捕まえにくくなり、所謂タクシー不足から補完ずる形での導入となっています。

そんなカリフォルニアで大変なことが起きています。6月5日にロスで移民・捜査局(ICE)が不法移民摘発を始め、市民の抗議デモと対立しICEと衝突し7日にトランプ大統領が州兵派遣を表明*4します。ICEの捜査や摘発が強引で、街中で移民と思しき市民を捕まえるという強引さに市民が反発したもので,、その強引さ故にデモ参加者の一部が暴徒化したもので、当局の挑発が疑われます。そして事態はエスカレートしトランプ大統領は海兵隊覇権まで踏み込みます*5。

当局の強引な移民摘発に対する市民の抗議デモにロス市警の対応が甘いと見たのでしょうけど、州兵派遣は日本で言えばいきなり自衛隊の治安出動に相当するものですし、第一州兵は州所属で連邦政府に指揮権がある訳じゃありません。連邦軍の下請けを担う場合でも連邦議会の承認などの手続きが必要で健保以上の疑義があります。更に海外で敵を攻撃する海兵隊の派遣は反乱の事実がなければできないことで、当然カリフォルニアのニューサム知事は連邦地裁に差し止めの提訴をしてロス連邦地裁は12日それを認めます。連邦政府は即日控訴して控訴審は差し止めの効力を停止した上で審理を続けることになり、対立は続きます*6。

既視感のある展開ですが、これ韓国の尹大統領のクーデター未遂事件に似ています*7。韓国では市民と議員が迅速に動いて未遂で阻止した上に紆余曲折ああったものの大統領弾劾手続きが完了し、大統領選で李在明新大統領が選出されましたが、元々議会は野党が多数派だったけど、米連邦議会で大統領弾劾が実現する可能性はほぼ無いし、関税外交がTACO常態の中で移民摘発で有権者にアピールして支持を繋ぎ止めるから、結局この状態は続くしかない訳です。まるでイーグルスの楽曲のように*8。そして14日に予定されるワシントンの軍事パレードの反対運動とも連動し、全米各地で抗議デモが続きます。アメリカはここまで壊れました。元には戻らないでしょう。

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Sunday, June 08, 2025

TACOの知性とDeepSeek

まずジャパニーズラストベルト*1の話題です。コメが店頭に届かないのは精米能力の制約があり、1日6.000トン程度の精米能力の9割以上の稼働率でほぼ余裕なし*2。それを超える量の備蓄米放出で精米がボトルネックになっている状況です。減反によるコメ価格維持で価格が上がれば消費が減って結果的に値崩れする流れが精米機の投資を滞らせてきた結果ですね。一部メディアで卸の利益率500%増という小泉農相の発言が報じられてますが、1年前のコメの端境期に健在化したコメ不足で精米機の稼働率が落ち込んだ時期を分母にすればこれぐらいの数字が出ても不思議ではない訳で、原因はコメ不足であって、その結果卸や小売りや消費者の購買行動を引き起こしたもので、転売ヤーの暗躍といった俗説を否定する材料は揃っています。そもそも裏付け取材もせずにこうした発言を切り取るメディアはネットフェイクを批判できないです。

さて本題。市場の動きに翻弄されるTACOぶりは外交にも影を落とします。145%対115%の関税合戦に猶予期間を設けたのはアメリカの方が悲鳴を上げた形で、関税協議の本命の中国に翻弄されている訳です*3。結局米トランプ大統領が折れてどうにか閣僚級協議を経て習近平氏とのトップ会談の段取りがついた形ですが、ウクライナ停戦交渉で見せた強い相手に滅法弱いトランプ流のTACO外交では成果は期待薄です。そして来年5月まで任期のあるFRBパウエル議長の後任指名の前倒しを公言しています*4。これ第二次安倍政権で日銀白河総裁に利下げを迫り、更に黒田元財務官の後任指名を示唆して圧をかけたことを模倣したもののようですが、仮にそれでパウエル議長に圧をかけても市場のトリプル安で無力化されるTACO相場になるだけじゃないでしょうか。学習能力にバグがあります。

そもそも蛸は軟体動物一の知性の持ち主で、極めて学習能力が高いのですが*5、TACOの学習能力はかなり残念なもののようです。それでも執着は強いから第一次政権でスタッフに足を引っ張られた記憶からイエスマンで固めて強引に事を成し遂げようとしております。しかしうまくいかずあれほどの蜜月ぶりだったテスラのマスク氏とも仲違いして罵り合うことに。とはいえ並外れたエゴイスト同士ですから驚きはありませんが。そしてマスク氏はEVやAI規制でいいとこ取りを狙っていたようですが、世界で拡がる不買運動でそれどころじゃなくなったってことでしょう*6。そしてバイデン政権でも踏み込まなかったAI規制をトランプ政権で行う可能性はDeepSeekショック*7で高まっています。

DeepSeekに関しては8964とかのセンシティブな問いに答えられなかったのが、答えられるようになったと言われております。DeepSeekがオープンソースで開発されたことで、中国国内のクラウドでは検閲で規制されていたけれど、国外クラウド上で使えば規制されないから学習できたということのようです。つまりDeepSeekはオープンソース故に結構自由な使い方ができて、仮に規制をかけるにしても難しいところがあります。TACOの知性で対策できるかどうか。しかしあの手この手を繰り出す諦めの悪さは相当なものです*8。議会で審議中の内国歳入法899条で米国が不公正と見做す税制の国の企業や個人に課税するというもので、日本の消費税に当たる付加価値税型間接税が対象と考えられます。所謂国境調整としての輸出還付金を不正な補助金と見做すということですね。関税で成果をげられないから次の手ということでTACOなりの学習を重ねてはいます(褒めてませんが^_^;)。

一方の日本もTACOを笑えません。例えばこんなニュース。

縮む建設業、工事さばけず 未完了が15兆円超え過去最大 - 日本経済新聞
これ今までも散々話題にしてきましたが*9、こうなることはわかっていたことです。このことを示唆するニュースとして先月22日の山手線の架線事故*10です。山手線ではE235系の一部編成に架線監視用のカメラを搭載して営業運転中にデータ収集して保守工事のスケジュールを決めたりしている訳ですが、新橋駅付近の外回り線での断線ということで、京浜党y北専との並走区間で特徴的なダブルカテナリー式架線の区間で、しかも補助張架線の断線ということで、カメラの監視対象ではなかったことで発見が遅れ、夜になって不自然な火花を車掌が確認して異常が見つかったものです。

結果的に山手線の50編成のうち21編成でパンタグラフの曲がりが確認され、補修が間に合わず翌23日の始発から半日ほど運休の憂き目となりました。現任は補修時の施工不良で、委託業者が指定した器具を使わずに施工した結果、電気抵抗熱で断線したことが判明しました*11。JR東日本の監理監督責任は免れませんが、ダブルカテナリー式という特殊な架線構造で補助吊架線で大電流を扱う構造が仇となった訳ですが、委託業者側がこうした特殊性を認識していたのかどうか。人手不足で技術継承がうまくいっていない可能性はあります。また首都圏JRの弱点と言えるDC1.5kv饋電の大電流問題も再三取り上げてきました*12。こうしたトラブルを防がないとATACS*13のような自動運転技術も使えません。知性を発揮して解決してほしいところです。

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