都市交通

Saturday, May 02, 2026

債務の壁

日銀の4月利上げは確実視されてましたが、結局見送られました*1。行間を読ませる良記事です。本当は利上げしたかったけど大人の事情で見送りを決めたと読めます。政権の牽制発言もですが、国債の買い手不在という現実が重くのしかかります*2。債券市場はインフレ警戒モードなのにお構いなしに財政拡大で国債発行を増やすから、日銀が動けない状況です。つまり米FRBや欧州ECBのように量的引締め(QT)でベースマネーを減らしてから利上げという手順を踏めないから、未だに減らしてはいるものの日銀の国債買い入れを続けざるを得ない状況があります。ベースマネーは民間銀行が口座を持つ日銀当座預金に積み上がっており、政策金利の指標となる銀行間の短期市場が機能せず、超過準備に付利することでしか金利操作ができず、日銀の収支悪化で債務超過さえ起こしかねない状況です。

しかも政府は財政拡大基調意を変える気さらさらなし。例えばこのニュースです*3。防衛費増強も消費減税もガソリン補助金も問い欲張っている訳ですが、既にガソリン補助金が巨額になって予備費を食い尽くす勢いです*4。ホルムズ海峡封鎖は長引きそうですし、仮に解除されても石油施設やLNG施設の破壊もあり、歳出量は減りますし、現状足止めされている船舶が目的地で荷降ろししてまた戻るという行程は相応の時間を要します。その間に備蓄が尽きたりすれば打つ手を失います。その時には補正予算となってますます財政拡大となり、国債消化が厳しくなって長期金利上昇となります。よりタイトな化成品は中国からの輸入が増えております*5。コロナの時のマスクを彷彿させますが、安価な中国製品の輸入は国産メーカーの市場を奪う可能性があり、レアアースのようなチョークポイントにもなり得ます。尚、中国はこの状況でも備蓄放出を行わず寧ろ増やしています。

そして伝家の宝刀の為替介入が行われました*6。160円70銭まで進んだ円安が一気に155円台まで戻し、投機筋にダメージを与えた模様ですが、これで留飲を下げてるのは問題です。日本国債の消化で海外投資家へのセールスが行われていて徐々に増えているのですが、彼らにとっては弱い日本円の投資は為替ヘッジとセットであり、実は投機筋の正体は彼らだったりする訳ですが、為替介入で噂させたら彼らも国債買わなくなりますよね。愚かです。国内勢は日銀をはじめ銀行は過去の大量買いが災いして特に地方銀行で金利上昇による評価損を抱えている状況で、買い増しは厳しいですし、生保なども同じような状況でとても買い増しは無理です。買い手の居ない公債を発行し続ければ長期金利はさらに上がります。そうすると国債の利払い費が上昇して更に財政を圧迫します。八方ふさがりになる訳です。

これ思い当たるニュースがありまして、東葉高速鉄道の債務危機問題です*7。営業収支は黒字ながら2000億円の債務を抱えており、金利上昇で利払い費が増えれば資金が枯渇して所謂黒字倒産状態になります。回避策は東京地下鉄、京成電鉄と沿線自治体による資本増強と運賃値上げですが、後者は元々高運賃で寧ろ値下げを求められており*8、これ以上上げれば今でさえ見有られる利用忌避が進んで逆効果ですから、結局資金支援となりますが、自治体出資の三セク鉄道故に協議がまとまるかどうかは微妙です。それでいて船橋市に請願駅が建設中*9。請願駅ですから船橋市が負担する100億円は別枠ですが、支援を求められる各自治体の協議を複雑にする可能性はあります。

以下蛇足。東葉高速鉄道の莫大な債務は工事時期がバブル期に当たり、用地買収難で事業費が膨らんだことが響いています。鉄道建設公団のP線工事という枠組みで、工事主体は鉄建公団ですが、実際には低利の資金提供で利子補給受けられるものの、実費である元本への支援はなく事業費の膨張がこの結果を生んだ訳です。債務の壁が立ちはだかる状況はわーくにの縮図です。

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Sunday, April 26, 2026

EVの壁

製造業の壁*1冒頭の日経平均4万円の壁から1年4か月弱、最高値をつけたものの6万円の壁が立ちはだかります*2。しかも半導体関連が上昇した一方その他株は低調です。ホルムズ海峡封鎖が続く中で先行するNYダウは下げてます*3。週明けの東京市場も下げると見られます。イラン戦争の影響が長引くことを市場が織り込んでいるということです。株価の上昇自体は円安とインフレの結果ですから手放しで喜べませんが。

しかし危機感の薄いわ―くにの政府。日本船籍の船がペルシャ湾に40隻以上足止めされていて、その分輸送力が減っている上に、米国産原油その他の輸送を喜望峰ルートやパナマ運河ルートで迂回輸送することで長い船旅となり輸送効率を下げますから、運航頻度が下がって結果的に輸送力不足になります。実際タンカーや輸送船の争奪戦で運賃が高騰し、パナマ運河通航料も高騰してます。故にアメリカ・カナダ・メキシコ産の原油を代替調達しても輸送コストが上昇してますから、石油関連品の値上がりは避けられません。これインバウンドで混雑が常態化した江ノ電で、12分ヘッドのネットダイヤを維持できずに14分ヘッドに伸びた結果、所要時間が片道4分増えて運行頻度を下げて結果的に輸送力14%減で混雑を助長し、繁忙期には乗車待ちの長い列ができる状況に似ています。輸送路の目詰まりはサプライチェーンの機能を低下させます。

早速こんなニュースも*4。幸いというかバス事業者はドライバー不足で減便が相次いでいてバス自体は余っている状況で、塗装面積の広いバスの生産調整はやり易いとはいえ、現状が続けば自動車生産にも重大な影響が出るということになります。バス・トラックのディーぜルエンジンの排ガス浄化装置尿素SCRに使うアドブルーも不足してますが、これもドライバー不足が救いでも、肥料原料との取り合いは起こります。こうなると追浜と湘南の2工場閉鎖を決めた日産がEVの開発生産を中国に移しますが*5、これが正解になる可能性は指摘しておきます。

製造業の壁でも指摘したようにテスラと中国のEVメーカー以外の自動車メーカーはガラケーメーカー化していますが、それを最も実感しているのがリーフで量産EVの先陣を切った日産ということですね。特に中国のモーターやインバーターやバッテリーの進化は、中国政府の産業政策もあって爆発的なイノベーションを引き起こし、テスラも中国製造拠点でその恩恵に預かった結果、伝統的自動車社メーカーを後塵に追いやった訳です。そのキモは早すぎる技術革新に尽きます。最先端の技術を取り込むには新車開発を短期間に行う必要がある一方、市場投入後により新しい技術を纏って後追いするライバルが出る訳ですから、必然的に陳腐化が早まり中古車のリセールバリューを低下させます。それを防ぐ為にはソフトウエアでアップグレードできるようにする必要があり、CASEと言われた自動車産業の変化がSDV(Software Defind Vehicle)へと必然的に進化せざるを得なくなったということです。わかりやすく言えばパソコンやスマホのように進化が早い一方でソフトウエアの更新で性能アップすることで、ハードとしてのEV販売後の収益機会をメーカーにもたらすことになります。クルマ作りのアーキテクチャーの根本的な変化です。対応するには新車開発を短期間で行うと同時に統合車載ソフトの拡張性を持たせることが必要ということです。

その為にはモジュール単位の電子制御ユニット(EPU)を統合して最終的には高性能EPUで全体を制御するという形まで視野に入れる必要があり、単独でそこまで出来るのは日本ではトヨタがギリギリというところでしょう。その意味では結構重要かもしれないニュースはこれです*6。デンソーは既にEPUやインバーター向けパワー半導体を生産してますが、EV化を睨んでのM&A提案をロームに断られました。尚、ロームとのパワー半導体統合を目指す東芝は阪急電鉄、三菱電機は大阪市交という鉄道のローンチカスタマーに育てられたパワー半導体大手です。これがトヨタの電動化に影響する可能性はあります。一方一時は日産救済の期待を背負ったホンダは大変なことになってます*7、ソニーとの合弁解消で自動運転も遅れを取ることになります。こうなったのは実は2輪車の不振が影響しています。元々4輪車は赤字体質だったけど2輪車の世界王者故の趙あk利潤で穴埋めされていたから競争力を維持できていたのが、アジアの新興勢が電動化で躍進して市場を奪われて狂いが生じました。50㏄原付規制に護られて対応が遅れたことも影響していると言えます。

中国の産業政策を補助金漬けと見るのは間違いで、実は計画経済の流れで政府が産業の方向性にコミットして民間企業を動員するというソビエト型から進化した市場型功利主義的計画経済と言えるもので、実はお手本は高度経済成長時代の日本です。当時ブレトンウッズ体制で1ドル360円の固定相場に護られ、安価な原材料資源を輸入して国内で加工して付加価値をつけて輸出するという加工貿易立国の前提で、主要輸出先はアメリカだから太平洋ベルト地帯に生産拠点を集め港湾を整備するという方向性は明らかでした。故に国鉄が東海道新幹線の建設を決断できました。そして実は産業政策の担い手は日銀でした。当時の金融政策は固定相場維持の必要から国内景気が過熱したら直ちに公定歩合を上げて民間融資による信用創造を抑制し、景気が冷えれば下げて融資を促進するというシンプルなものでした。その日銀が窓口規制という銀行の融資指導も行っていて、当時の通産省の助言に沿って優先融資先を産業単位で示すということをやっていました。それに沿って民間銀行が個別企業に競って融資する形で、鉄鋼、機械、自動車、石油精製、化学などの製造業を後押ししていて、丁度中国の功利主義的計画経済とそっくりでした。

政府が後押すする産業分野に優先的に融資された結果、銀行預金主体の家計貯蓄をリスクマネーに変換するという金融の基本が機能していた訳です。だから「貯蓄から投資へ」なんて誰も言わないし銀行融資による現物投資のリターンは利息の形で預金者にも還元されていました。故に中国は米ドルの通貨覇権に対抗すべく人民元の国際化を模索してますが、IMF-SDR的な通貨バスケット連動には踏み込んだけど変動相場制への移行は足踏みしている訳です。その突破口として中央銀行仮想通貨(CBDC)のデジタル人民元による貿易拡大を狙い、ウクライナ戦争で窮地のロシアやイラン戦争関連もイラン産石油取引やホルムズ海峡通行料もデジタル人民元を推していると言われています。

こういう状況ですから地獄への道のEVMJ*8が生産委託した新興企業には怪しげなものがあっても不思議ではありません。EVMJに見る目がなかっただけです。幸い地元の江ノ電バスは実績のあるBYDの大型と小型を導入しており、その完成度の高さは実車で実感しております。たかがEVされどEV。目利き力って大事です。

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Saturday, April 18, 2026

地獄への道は善意で敷き詰められている

サプライチェーンが出鱈目だった*1EVMJが民事再生手続きを申し立てました*2。果たしてホワイトナイトは現れるか?

情報が少ないんですが Busrama誌211 に掲載されたEVMJ社長インタビューで、元々インバータやバッテリーのメーカーのスタートアップ企業で自社技術を盛り込んだEVバスやトラックの製造販売を目論み、製造は中国メーカーに託すファブレス企業としてスタートし、ゆくゆくは北九州市の本社工場で最終組み立てまで行うということで、現時点で製造はすべて中国の協力会社に委ねている状況です。つまり技術系スタートアップながら自動車生産の経験はなく、中国の協力企業もBYDや吉利のような大手ではなく必ずしも実績があったわけではないようです。

EVの開発はスマホなどで見られるアジャイル開発の要素はあるし、技術革新のスピードが早く、とにかく意思決定の速さが求められることも確かですが、実車の販売となれば越えなければならないハードルは高い訳で、国内12社の自動車メーカーでもてこずっていて、特に大型商用車ではFCVバスのトヨタSORAはあるものの、耐久財の乗用車と違って産業財となりますから頑丈で長期間の使用に耐えてトラブルも少ないなどさらに高いハードルとなります。その意味でファブレスでアジャイル開発という着眼点は良いのですが、中国の複数ある協力企業の実力が伴っていなかったようで、インパネのデザインやスイッチ類の不統一とか性能のバラツキで国内向けのチューニングに苦労したようです。つまりNVIDEAのようなファブレス企業はTSMEのような高度な技術の協力工場がなければ画に描いた餅になりかねない危うさはあったと言えます。

つまり協力工場選びで躓いて実績のない中国企業に製造委託したばかりか、中国当局の保安検査でも不合格だったのに国内向けではないからと認可され、また経緯はわからないけどBYDに決まりかけた万博バスを「国産」の謳い文句で逆転して採用が決まり、実力不相応の大量受注してしまったが故に、国交省の型式認証も甘くなって以下略という流れです。大阪では府と市の危機管理が甘かったと議会で突き上げられてますが、はっきりした悪党が見当たらないという意味で、タイトルの欧州の古い諺(英語表記では The road to hell is paved with good intentions)ですが、良かれと思って悪い結果をもたらすということです。尚 Busrama も折に触れてEVMJを取り上げて所謂提灯記事かという記事を掲載してますが、メディアの性格上広告主であり業界を統べる日本バス協会が推すEVMJを悪く書けないという忖度はあったと考えられます。情報の受け手としてそれを推察できるリテラシーは大事だと気づかされます。

これオルツの循環取引事件で見られた上場スタートアップ故の数字で結果を示せという市場の圧に負けたことに似ていて、EVで劣後する日本のバス業界の期待の星という圧がこうさせたと見ることもできます。そして日本ではスタートアップが育たないという残念な現実もあります*3。おそらく政府肝いりの半導体メーカーのラピダスもこうなるかも。失われた30年は必然の結果です。

そして70年代の2度のオイルショックを上回ると見られるイラン戦争を巡る政府の危機感のなさも大概です。こんなニュースに眩暈がします*4。これ制服自衛官が国歌歌っただけなら問題ないんですが、自民党大会という政治イベントの場で、しかも制服着用でとなると自衛隊法違反を問われる問題です。「法的に問題ない」と強弁するも世論に叩かれ自民党内からも「軽率」の批判が出て高市首相も小泉防衛相も「事前に知らされていなかった」と言い逃れ。事実だとすれば文民統制に疑義が生じるし「私人としてノーギャラで」となると休暇中の自衛官歌手が呼ばれてボランティアとして制服徴用して歌ったということになってますますヤバい話になるのだが。こちらの善意はどす黒い。

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Sunday, March 29, 2026

戦争で沈む日本経済

総選挙直前のエントリーで選挙戦で語られない戦争と社会保障を取り上げましたが*1、まさかのアメリカとイスラエルのイラン攻撃で現実が追いつくとは思いもよりませんでした。そして高市政権の危険性も明らかになってきました。例えば自衛官の不祥事です*2。相前後して婦女暴行や全裸俳諧などもありましたが、国際法で治外法権を持つ外交官に対する現役制服自衛官のテロ未遂事件という超ド級の不祥事です。しかし政府もメディアも反応が弱いのが気になります。閣僚の遺憾発言で済ましてますが、本来公式に謝罪すべき事案を「残念]で済ませている訳です*3。大事に至らなかったとはいえ大使に危害が加えられればただ事では済まなかった筈です。サラエボ事件が第一次大戦の契機となったことを学ばなかったのか?中国も今の日本政府がまともな謝罪をしないことも計算済みでしょう。実際には情報戦を仕掛けています*4。国内向けの渡航自粛勧告ですが、これがニュースとして世界へ流れれば、日本への国際社会の見方に影響します。所謂戦狼外交*5ですが、台湾有事発言と同様に日本が何らかの譲歩を示せば終わる話でもあります。

てことで戦争を選んじゃった日本の有権者にとってはイランを巡る紛争の長期化で危機的状況なのですが、政府に危機感は乏しく、原油の戦略備蓄放出や補助金支給による目先の価格圧縮ばかりで、70年代の石油危機時のような省エネ自粛や総需要抑制策には踏み込みません。その結果円安が進み原油高と相まって国民生活を苦しめます*6。それなのにアメリカにホルムズ海峡の機雷掃海を約束したりしてますが、停戦が先だろ!今や安全保障上の最大のリスクはアメリカであり、ミドルパワー国の団結が叫ばれ、また力をつけてきたグローバルサウスとの連携を考えればアメリカべったりはリスクです。

今回の円安は有事のドル買いの反映でもあり、動きは小刻みでもかなりしぶとく続くと考えられます。その理由は複数ありますが、1つは原油高によるアメリカのインフレ再燃でFRBの利下げ観測が終わり、寧ろ金利上昇局面になっていること、株式でAI相場が堅調ながら実際に利益を出しているのがエヌビディアだけで先行きに疑問が持たれており、一方SaaSの死と言われるソフトウエア企業の淘汰の可能性とか、逆にキャタピラーや電力会社などがAIデータセンター関連で買われたりと、様々なトピックスに反応していて落ち着きません。加えて債券が売られ有事なのに高止まりした金が利益確定で売られて買い戻されたりとか、プライベートクレジットと呼ばれる低格付け債券ファンドから主に個人の資金が流出したりで金融市場が落ち着かずボラティリティが高い状態が続いています。投資家には動きやすさから手元資金を厚くする動きが見られ、日本株に流入していた海外勢が資金を引き揚げた結果日本株が売られ、リスクヘッジの為替予約のポジションを手仕舞いして円が売られということですね。

てことですでに手遅れかもしれませんが、国民生活を強く豊かにするどころか窮乏化が止まらない状況が加速しそうです。そんな中で社会保障国民会議で税と社会保障の改革の議論が始まりましたが、議論の流れとしては消費税減税よりも給付付き税額控除にウエイトが移っています。議論の前提となる国民所得の動きで看過できない傾向が見られます*7。給与所得で見ると過去30年に亘って中央値も90%点も99%点もほぼ変化がなく、このデータからだけでは巷間謂われる格差拡大はなく、ジニ係数も変わらないということになります。給与所得だけの結果ですから全数とは言えませんが、より範囲の広い税務申告個票データで見ても同様の傾向が見られます*8。つまり傾向から言えば日本は全所得層が円安を通じて購買力を低下させているということになります。但し税務個票データでも農業、不動産、金融所得などの分離課税があり、例えば富裕層が多く保有していると見られる金融資産所得は源泉分離課税で個票データに反映されていない点は注意が必要です。結論から言えば国全体が貧しくなったということです。市場の失敗を克服できず、企業のアニマルスピリットを引き出せなかった政治の失敗です*9。社会保障の充実のためには富裕層課税はほぼ無意味で社会保障財源としての消費税の減税は消費額の多い富裕層ほど利得があり問題で、給付付き税額控除が望ましいということになります。加えて企業経営者の競争による価値創造や教育や就労の機会の平等の確保が求められます。

経営者の競争という観点からJR東日本とJR東海を取り上げてみます。目先の業績で見ればコロナ明けの回復が早かったJR東海に対して稼ぎ頭の首都圏輸送で需要が戻らず民営化後初の運賃値上げに踏み込んだJR東日本*10では差は歴然ですが、実は東京~熱海間で在来線運賃が新幹線運賃より高くなるという珍事が起きています。故に従来どちらにも乗れた普通乗車券が分離された訳です。しかも100km超の東京山手線内発着や200㎞超の東京都区内、横浜市内発着の特例はそのままですから、新幹線特急料金はかかるものの新幹線利用がお得という逆転が起きています。

ならばJR東海も同じ幅で値上げすればといってもゾンビエントリーで説明したように、JR東日本は向こう3年平均の欠損の可能性を示して認可を得ました。鉄道運賃の基本はコスト積み上げ方式に2%の標準報酬率を乗せた総括原価の認可を受けるのに凡そ2年を擁しているように直ちに追随はできない仕組みです。逆にヤードスティック規制で同等と見做されるJR旅客会社同士で他社と比べて合理化努力が不十分と見做されれば値上げ幅を圧縮されるのですが、その点は逆に無線式クルージングイン保安装置のATACS導入*11やドライバレス自動運転への挑戦などで人口減少による省力化と共に需要減少に対する間引きなど輸送品質の劣化を防ぐという攻めの姿勢が認められ、その為の投資で借入金が増える一方でインフレによる金利の復活で利払いが増えるという合理化努力の枠外の不可抗力もあります。加えて国鉄時代から続く通勤定期運賃や通学定期運賃の割引率の適正化が認められるなどしていて、ピーク時間帯の定期客比率が高い一方でそれに合わせた輸送力増強投資が迫られる一方で閑散時間帯の過剰設備遊休化という構造的な問題に対する主張が認められました。つまり需要抑制のための運賃改定に道筋をつけた訳です。

ところが新幹線のぞみ増強で絶好調なJR東海は欠損可能性を証明できないから運賃値上げ申請自体が困難で経営陣から「努力した者が報われない」の恨み節ですが、困難な行政手続きで自社の主張を認めさせてリスクを取って借入金で投資を重ねるJR東日本に対して、リニア工事の遅れをいいことにリニア向けの低利の財投資金3兆円を流用してマッチョなのぞみ増強で増収を達成したJR東海*12のどちらがリスクを取ったと言えるのかというのは微妙です。そしてその観点から言えば微妙なニュースとしてリニア静岡工区も話題があります*13。あくまでも県の容認方針というだけで、各自治体の承認を得ている訳ではありませんが、大井川の水問題が典型ですが*14、大井川の渇水など工事の影響を心配する自治体の指摘に対して全量戻しを約束しながら後に工事が終わったらとテヘペロして自治体を怒らせた強引で不誠実な対応が原因の未着工だった訳で、自治体との協議が進んで目途が立ったという県の方針ですが、協議自体が決着した訳ではありません。加えて他の工区でもトラブル多数な上人件費や資材費の高騰で事業費の膨張も止まらないし、ホルムズ海峡封鎖でカタール産ヘリウムの供給不安もありと前途多難。寧ろ勇気ある撤退も考える必要があります。まあ無理でしょうけど。

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Sunday, March 15, 2026

ゾンビの性(SAGA)

アメリカとイスラエルのイラン攻撃から2週間。どんどん悪い方へ動いています。ベネズエラもそうですが*1、中間選挙を控えて止まらないインフレや雇用統計の悪化*2もあり、トランプ大統領には明らかに焦りがあります。イラン攻撃もハメネイ師を殺害したもののイランの体制崩壊どころか寧ろ革命防衛隊の発言力が強まり、また急遽選ばれたハメネイ師の次男モジタバ氏は寧ろ革命防衛隊に近い強硬派で徹底抗戦を宣言するなど泥沼化しています。加えて頭の痛い戦闘のコスト*3。推定5500万円のイラン製ドローンを6億円のミサイルで迎撃する非対称戦でアメリカはミサイルを消費して在韓米軍のTHAADの一部を中東に移転させた模様です*4。国内の矛盾を外部へ向けて力を誇示する帝国主義戦争*5でです。

そして原油価格上昇で市場は混乱してますが、それでもアメリカは強気を維持していてイランに海兵隊覇権を決めた模様です*6。イギリスが国内米軍基地からのイラン出撃停止をアメリカに通告しましたが、日本政府にはできない相談のようです。アメリカの狙いはイランのドローン基地の打撃と石油施設の掌握ということで、イランのホルムズ海峡封鎖を無力化する狙いのようですが、うまくいくかどうか?イランの海峡封鎖も間歇的なドローン攻撃によるもので、タンカーやコンテナ船にに被害は出ていますが、中国船は対象外。完全封鎖しなくても攻撃される可能性があれば航行を躊躇しますし保険料爆上がりあるいは引受拒否となればリスクとコストの見合いで船を動かせないってことで、イランはリーズナブルな戦い方をしています。中国船も誤爆の可能性はありますが、チャイナランドブリッジと呼ばれる中央アジア経由の鉄路で繋がっており*7、迂回路も確保されています。

てことで海峡封鎖の影響を最も受けるのは中国を除くアジア各国であり、特に中東原油依存度9割超の日本にとっては大惨事です。また有事のドル買いで円安が進んでいて原油高とダブルパンチになっております。暫定税率廃止で20円ほど安くなったガソリン価格は一気に30円ほど値上げりしていて減税効果を相殺どころか突破しています。これ変でしょ?減税効果は僅かな一方、先物価格の原油値上がりにはあっという間に織り込まれてます。現物は安く仕入れた物なのに。実はこれ減税以前に元売りに支給された補助金が廃止されたことによります*8。

70年代の石油ショックの時にはドル円の調整でショックが緩和されていましたが、それでも狂乱物価で10%超のインフレに見舞われ、スーパーの棚からトイレットペーパーが消えるパニックは今でも言及されていますが、当時の原油価格は1バレル数ドルから30ドル程度に上昇したものですが、今回もWTI60ドル台から90ドル台に爆上がりで石油ショック再来と言って良いインパクトです。第一次石油ショック時点での日本の中東依存度は8割弱で調達先分散の結果6割程度まで一旦下がったのですが、冷戦終結後のグローバル化の時代に寧ろ安価な中東原油依存は拡大します。さらにトヨタプリウスに始まるHEVの登場やエンジン車も燃焼効率の改善で自動車の燃費が改善した結果、ガソリンの需要は減る一方で国内石油元売りの経営を圧迫し価格競争でガソリン価格も抑えられていました。それがリーマンショックによる原油価格上昇で元売りの経営を直撃し、その結果元売りの合従連衡で3社に絞られて製油所の統廃合も進みやっと需給が締まったところでロシアのウクライナ侵攻があり、供給不安から原油価格は上昇しガソリン価格も上昇しました。しかしこの時点で日本の産業構造は激変していて、国内製造業の空洞化で貿易赤字が常態化して実需の円安が定着します*9。故に原油高のダメージをより強く受けるようになっていた訳です。

この間の石油元売りは市場に翻弄されながら、それでも為替の円高に助けられて薄利を得ていたものの、アベノミクスの円安誘導で厳しい事業環境は続いていた訳で、しかも自動車の燃費改善もあってガソリン需要は減る一方で合従連衡と製油所統廃合で凌いでいたところのウクライナ侵攻で青息吐息だった訳です。こんな調子だし脱炭素のトレンドから製油所の設備更新もリスクが大きく、古い設備を使い回して凌いでいたのが現実です。故にウクライナ侵攻を契機とする原油価格の上昇にも対応できず、原材料を輸入に頼るが故に円安も逆風となっていた訳で、政府補助金で食いつないできたのが現実でした。だから暫定税率廃止でも価格をあまり下げられないし、また古い製油所設備は中東原油対応なので、アメリカやロシア産の軽質油に対応できず、ズルズルと中東依存が続いた訳です。だから暫定税率廃止による値下げは補助金廃止とセットなので店頭価格は下げないとクレームになる一方、降って湧いた原油高を好機とばかりに値上げに走った訳です。老朽化したポンコツ設備を維持する費用に補助金が充てられていた訳です。

他方意外な影響が顕在化してます。エチレンの生産調整です*10。出光興産がエチレン生産停止の可能性を納入先に通知したことから始まって石油化学各社が一斉に生産停止や減産を通知するということが起きています。エチレンはナフサが原料でプラスチックや合成繊維の原材料となりますが、国内製油所が中東産から離れられなかったのは、不純物の多い中東産の重質油だから精製過程で多くの副産物を生み、国内石油化学産業を支えていた訳ですが、ガソリンの需要減でナフサの国内調達が困難になる一方、中国や東南アジア産のエチレンプラントが立ち上がったこともあり、競争力を失ってやはり系列を超えた合従連衡が進んだ業界で、既に国内調達は4割まで下がり、残りは輸入に頼る状況でした。つまり石油元売りと同様に縮小均衡を迫られたゾンビ業界だった訳です。そして国内のナフサ備蓄量はせいぜい2か月分程度であり、ガソリンより早く枯渇すると言われています。政府は原油高対策で元売り補助金の復活を打ち出してますが*11、これゾンビ化した石油元売りを助けることにはなりますが、ガソリン価格が下がるかどうかは微妙です。

G7を中心に原油の戦略備蓄放出が話し合われてますが、ちょっと頭痛いのは国際協調を待たずに日本が単独に動いている点です*12。G7で協調放出を話し合われている中、時間がかかるから日本単独で放出しようってことですが、為替のレートチェック*13を思い出していただきたいんですが、ベッセント国務長官がレートチェックを仕掛けてすわ協調介入か?と市場が反応したように、単独では市場インパクトは弱く、協調することで市場にメッセージを送ることで反応させるという経路がある訳です。ホントなんも考えてないわ。

結局近視眼的な補助金でポンコツサプライチェーンを維持して今に至る訳で、ポンコツゾンビには雇用がぶら下がり成長分野への労働力移転を阻害することになります。裏・壺・族は国を亡ぼす*15。同様のことは例えば原発でも起きていて、柏崎刈羽6号機でまたも警報が鳴って発電を止めました*14。14年間停止していた間にも老朽化は進んでいた訳で、今回は漏電の警報ということで、20%稼働で炉は止めずに発電を停止して原因究明ということです。ポンコツ無理に動かそうとするからトラブルが絶えない現実があります。とはいえ廃炉して新型炉にリプレースする資金も無いから無理して動かそうとしている訳です。原発も補助金漬けでどうにかしようとしてますが、安全対策のコストを賄えない中で元を取ろうとしている訳です。東電は福島の廃炉費用の負担もありますし、電力自由化で小売部門の東電離れで経営は苦しい中、送電網の維持に総括原価方式が保持された結果、新電力に高額の託送料を負担させて維持している現実があります。尚電力の総括原価で認められた報酬率は3%で鉄道の2%より優遇されてます。加えてエネルギー価格の変動に対応したサーチャージ制度も組み込まれています。

てことで昨日(3/14)JR東日本、西武鉄道、首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス)の運賃値上げが実施されました*16。鉄道運賃には電力や航空で認められているサーチャージ制度はなく、JRや大手私鉄、大都市地下鉄など大規模事業者には3年間の収支レートベースが値上げの根拠として求められられますから、今回の値上げで3年間は検証期間として値上げできないし、3年後に次の値上げを準備しても認可までの時間を考えるとおおむね5年間は運賃を弄れないことになります。その間にもエネルギー価格の上昇は見込まれますから、収支改善への寄与がどの程度になるかは見通せません。

一方JR普通運賃は私鉄や高速バスなどの運賃水準を決めるベンチマークの役割もあり、例えば京王電鉄では運賃差による安さの訴求をしてますし、今回の値上げで品川~横浜間でJRと京急の運賃逆転が起きたりしてます。また他社も値上げに追随しやすくなるという意味で、今後の値上げドミノが起きる可能性は指摘しておきます。

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Saturday, January 31, 2026

日米TACOのプロデューサー

疑惑の停電事故*1がまたしても起きました*2。何故か金曜日に起きるのは偶然か?半年前のエントリーでも山手線の架線事故を取り上げて*3、電気系統のトラブルが多いことを指摘しましたが、今回の断線の直接の原因は現時点で未発表です。しかし作業上の所謂ケアレスミスが続いている点は重大です。しかも首都圏JRは元々大電流の弱点を抱えていて10連から15連の複数列車に給電するから1変電所で6,000A~10,000Aという大電流故に、地絡などの異常電流の検知がしにくいという問題を抱えています。そんな中での作業ミス連発は大問題です。

という訳で本題はTACOの方なんですが^_^;、TACO踊りが週中から週末に起こります*4。かつて英ポンドの空売りを仕掛けてイングランド銀行を屈服させた伝説の為替トレーダーの過去を持つベッセント財務長官が何故か日銀を救った形ですが、裏には日本の財政悪化懸念でアメリカ国債が売られて長期金利が上昇する地合いにブチ切れて、どうやらダボス会議で片山財務相に怒りをぶつけた模様です。盛んに円安けん制の口先介入をしていたものの市場は止まらず、一方で与野党で減税を競い合うクレージーな総選挙やってて危機感まるでなし。ということで日本ではなくアメリカの通貨当局がレートチェックに動いて協調介入を演出することで、市場の動きを止めたものです。為替ディーラーの裏をかくベッセント氏の作戦です*5。それを裏付ける為替報告書が出されています*6。日銀に利上げを求めても政府財政がガバガバでは日銀は動けないことを認識した訳です。

てことでその後の動きも興味深いんですが、一時的にドルが安値をつけますが*6、これが後述のFRB人事の伏線だった可能性があります。日本の財務省も結果的に介入はなかったことを発表します*7。日米当局の動きはベッセント氏のシナリオ通りに動いた訳です。そして片山財務相は選挙を睨んで国内向けに負け惜しみの弁明をします*8。釈尊の掌に上で踊る孫悟空もかくや。更にFRB新議長人事がトランプ大統領から発表されて線が繋がりました*9。結果的には4人の候補の中では一番のタカ派で過去に量的緩和御批判したことのあるウォーシュ氏を指名してドルの信認は守られたと好感した市場は反応します*10。金融の世界では週末に何かが起きるのは定番ですが、レートチェックによる一時的なドル安はトランプ氏にこの人事を呑ませるには好都合だったでしょう。計算づくだとすればトランプ政権はベッセント氏がプロデュースしていると見ることも可能です。思い起こせば理不尽な相互関税を止めたのもベッセント氏でした*11。デタラメに見えてしぶといトランプ政権下のアメリカ経済恐るべし。

それにひきかえアメリカから離れられずに貧乏くじ引きまくりのわーくには;_;*12。レートチェック相場に翻弄された今週の出来事を無かったことのように勇ましい発言。台湾有事発言*13と変わりません。さらに無知丸出しの問題発言が続きます*14。外為特会の元金は政府短期証券を発行して民間から借り入れたもので、毎年度決算して返済されます。上振れ分の剰余金の国庫編入は認められてますが、基本ドル建てでアメリカ国債を中心に運用されていて、利回り分を売ると為替介入と見做される可能性があるから売らずに再投資されているのが現実です。つまり売るに売れないものが増えたからって国民の腹は満たせません。こうした基本的な事を分かっていないのは結局官僚のレクチャーを聞かずに勝手に解釈するからで、文字通り日本版TACO(Takaichi alwayus Challenjes Oofficials=高市はいつも官僚に挑戦する(但しすぐ日和る))ということですね。

一方でこんなニュースもあります*15。秋の臨時国会で13兆円もの大型補正予算を成立させて税収の上振れ分の「へそくり」をほとんど大放出した結果、新年度予算の想定金利2%を越える長期金利の上昇で利払い費が足りなくなる異常事態が現実味を帯びてきています。はっきり言いますが、与党が勝利しても問題は解決せず、予算の年度内成立が遅れれば状況は悪化して、修正を余儀なくされることになります。そうなれば各党が減税を競い合っても実現可能性は無いってことです。

以下余談。消費減税で競う各党ですが、財源は自民党が企業向け租特法減税の見直しなど、中道が仮称ジャパンファンドのソブリンウェルスファンド(SWF)で政府基金余剰金運用益で5兆円、他党は法人税や富裕層所得税増税や社会保障給付見直しなどで、具体的に金額まで示しているのは中道改革連合のみですが、一方で食品消費税ゼロに関しては経済効果を疑うレポートもあります*16。つまり食品消費税ゼロで2.1%のインフレ抑制効果は認められるけど効果は1年のみということ。可処分所得が増えれば食品以外の需要を喚起してインフレになるということですね。中道のジャパンファンドの5兆円を恒久減税財源にするより社会保障給付の維持に使うなど議論の余地があります。加えてSWFはグリーランド問題でデンマークのSWFがトランプの暴走を止めたように外交のカードにもなります。さて誰に投票したもんか?

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Sunday, January 25, 2026

日米共演の市場TACO踊り

新年から続くウヨ曲折*1が欧州へ飛び火しました。グリーンランドを巡るトランプ発言が発端です*2。早速デンマーク政府は拒否します*3。EUも呼応して交渉拒否を表明し、軍隊派遣も示唆します*4。世論調査でも住民は反対姿勢です*5。そしてグリーランド自治政府で議会選挙が行われ*6、ニセ情報に翻弄されながら*7、デンマーク重視の民主派と段階的独立派の連立の形で新政権が発足します*8。そしてニールセン首相はアメリカの領有を拒否します*9。グリーンランド自治政府は以前から経済的自立を前提としたデンマーク王国からの独立を模索してますが、NATOの最大拠点で漁業主体という産業構成から難しく、デンマークの寛容な統治姿勢でEUの漁業規制が及ばないように同じく自治領のフェロー諸島と共にEU加盟エリアから敢えて外されています。BrexitのイギリスでスコットランドがEU加盟を希望したリアルな逆バージョンと喩えられます。

別の観点から言えば同じく基地の島の沖縄とも共通しており、住民は基地とデンマーク政府という二重の統治の下にあるわけで、こうして引き寄せて見れば複雑な立地の理解が可能です。まあ沖縄住民に比べれば自治権が強く寛容で包摂的なデンマーク政府の方が遥かにマシですが。トランプ氏の意図はいろいろ言われますが、温暖化による北極海航路の戦略性の高まりで、このままでは中国とロシアに恩恵が偏ることや、豊富なグリーランドの地下資源開発の思惑もあるでしょう。それ以上にウクライナ問題で厄介な局面にあるNATO解体も視野に入っている可能性があります*10。

てことでロシアは歓迎してます*11。クリミアを引き合いにアメリカに「理解」を示した訳で、NATO弱体化でウクライナ停戦協議も優位に立てます。当然ながら欧州は反発しますがアメリカは制裁関税で脅しをかけますが、これが思わぬ市場の反応を呼び込みます*12。AI関連中心に好調な株式市場が暴落してトリプル安となり、TACO発動*13で市場がストップをかけた形です。流石にアメリカも軌道修正を迫られ、軍事介入を否定して*14制裁関税も取り下げ*15、EUも報復関税を取り下げました*16。早速市場は反応し、まず長期債が反発し*17、株式市場も反発して*18TACOトレードが完成します。市場がTACO踊りした訳です^_^;。

転機はダボス会議でのデンマーク年金基金の米国債売却発言に端を発する米国債売りでした*19。ドルの信認低下はドル覇権の棄損に繋がるので脅しに屈した訳です。その一方でアメリカのベッセント財務長官は日本に注文をつけます*20。実はほぼアメリカ市場と連動した形で日本市場もトリプル安に見舞われました*21。債券安による保有債券評価損から銀行や生保が売られた結果で、単純にグリーンランドを巡る地政学リスクというより日本の国内事情によります。それがアメリカにも波及したという発言は言いがかりにも聞こえますが、金融マン出身のベッセント氏から見れば日本の財政破綻が世界経済に波及するリスクに神経質になっているという本音を見せました。

実際債券市場の見方は厳しいものがあります*22。要約すると人口減少による労働力投入量の減少でGDPの延びが抑えられる中での債務拡大は信用リスクを増す結果、円安債券安ということです。こうした日本の危うい状況をアメリカのみならず世界が意識し始めたってことです。高市政権の財政運営のまずさが意識されているということです。しかも解散総選挙に打って出た現状で、消費税減税で野党と足並みを揃えていることもネガティブな評価になっています。

既に一部では高市首相を日本版TACOとさえ言われています*23。総裁選当時は高市トレードを期待する意味があったのですが、そのココロは「Takaichi Always Charenges Officials = 高市はいつも官僚に挑戦する」ということで、規制緩和が進んで日本経済が復活する希望が語られていましたが、実際は官僚の言うことを聞かず午前3時の答弁書作成の甲斐もなく失言かまして*24撤回はしないものの渋々従来の政府見解踏襲に至ります*25。つまり挑戦に期待してもすぐ日和るという意味でアメリカのTACOと共振している訳です^_^;。

てことで長くなりましたので、取ってつけた鉄ネタです^_^;。疑惑の停電事故*26の続報です。JR東日本は16日未明の停電事故の原因を感電防止の安全装置である検電接地装置を切り忘れた状態で通電を開始したことによるトラブルということですが、気になるのが昨年12月に東北線白岡駅の夜間工事で同じミスで停電事故を起こしている点です。同じミスyが繰り返されるというのは単純な現場ミスで済ませて良い話ではなく、ヒューマンファクターの視点からミスの発生を防ぐことや万が一ミスしても大事に至らないといったシステム的な見直しが必要です。今後労働力減少による人手不足が見込まれる中、ミスを防ぐシステム的な対応は避けられません。

JR東労組が健在だった時代にはヒューマンファクター重視でATS-P設置前倒しなどを労使協議を通じて進めてきました。労働組合は賃上げ要求だけではなく、鉄道など運輸業では死傷事故を起こした場合の当該組合員の業務上過失致死傷による刑事訴追に対する裁判支援や家族保護などの役割もあります。故に事故が起こらないようにする動機がある訳ですね。これが会社の安全管理にもプラスになる訳ですが、そうした労使間の良い意味での緊張関係が失われていることを危惧します。本当に大丈夫か?

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Saturday, January 17, 2026

疑惑の停電事故

前エントリー*1で取り上げた読売が報じた通常国会冒頭解散がリアルに動き始めました*2。予算審議を棚上げしての解散総選挙に大義はあるのか?はメディアで取り上げられてますが、敢えて言えば公明党の連立離脱と日本維新の会の連立合流という重大な変化があったんですから、その信を問うことは大義になり得ます。但しそれなら昨年の臨時国会で何故解散しなかったか?遅くとも補正予算成立後に信を問わなきゃおかしい訳です。

そして高校無償化や基礎控除見直しも予算化されていないだけではなく裏付け法がない状況で宙に浮いてます*3。つまり仮に大急ぎで予算を通せたとしても根拠法が通らなければ予算そのものが宙に浮く訳で、これじゃ省庁も自治体も執行に動けない。加えて5年ごとの特例国際法の改定*4もあり、日本版フィスカルクリフ(財政の崖)問題でアメリカのような政府終了もあり得ます。敢えて政治空白を作るのは高市氏が党内基盤が弱いからですから、過半数を取って勝利すれば与党内を抑えられるってことですね。だから誰にも相談せずに決めて与党内からも違和感が出ています。

しかも意表を突いたつもりの解散総選挙ですが、立憲民主党と公明党が合流して新党を作るということで、ぶっちゃけ自民党を助けていた公明票が野党に流れる訳で、過半数獲得は困難です*5。しかも国民民主党は与党入りを連合に止められていて当てにできないですし。また高市政権発足の動きに連動して水面下で協議はされていて、ぶっちゃけ高市じゃダメだってことです*6。そして両党の党内手続きを経て新党結成が決まりました*7。「党名が微妙だ」という声もあるようですが、限られた時間の中で目の前の総選挙を睨んで立ち位置を明確にしたという意味で悪くない命名です。

中道というのは右でも左でもないという意味ですが、国民の中では圧倒的なボリュームゾーンであり、所謂無党派層と呼ばれる人々が該当し、従来自民公明の与党も票を得ていたから与党でいられた訳ですが、自民党の裏金問題と旧統一教会問題で信用を失ったから石破政権下の選挙でも負けたし、高市政権で右派色タカ派色を強く打ち出した結果、公明党が離脱した訳で、実は有権者の中の最大のボリュームゾーンの変化で、そこへリーチをかけたということです。結果がどう出るかはわかりませんが、対立を煽って他党との違いを訴求する流れで多党化したと言われる中で、最大多数の最大幸福を模索するという民主主義の原点を示したという意味で興味深い動きです。同様の動きはドイツのキリスト教民主同盟と社会民主党の連立などでも見られますが、極端に左右に振れないで目の前の課題に取り組むなら歓迎すべき動きです。

例えば食品消費税ゼロの基本政策ですが、私は以前から消費減税に懐疑的な立場ですが、100年殺しのアベノミクスvoL.2*8で指摘したように、価格弾力性が低いために一般物価以上に値上がりしていて国民生活を圧迫する食品消費税のゼロ減税は8%まるッと下がらないまでも国民生活の支援になる要素はあるので、期間限定で財源を示して行うのであれば反対しません。逆に新NISAで非課税枠を作った金融所得課税は強化しても良いですし、所得税の累進性を高めて高額所得者の課税強化の手もあります。無党派層が望むのもこうしたことです。

そしてあとは賃上げですが、人手不足で賃金は今後も上がるでしょうけど、問題はそもそも生産年齢人口の減少で働き手が減っている以上、求人難から賃上げは今後も続くでしょうけど、それ以上にインフレが進めば本当の年収の壁*9は越えられません。そして一方では企業による省力化投資も進むと思いますが、懸念されるのが賃金抑制による労働力の劣化です。そしてそれを疑わせる事故がありました*10。

JR東日本が進める羽田空港アクセス線の東山手ルートで、休止中の東海道貨物線田町~東京貨物ターミナル間を復活の上東海道線に合流させる工事で、合流場所の既存線乗り越しのスペースを空けるために田町駅の折返し線を撤去して線路移設する夜間工事で、DC1,500vの架線の送電を停止して作業員の安全確保する訳ですが、間違って送電しても感電事故をしないために検電接地装置という安全装置が使われます。これは架線にフックで吊り下げて下端をレールに接触させて、万が一誤送電しても地絡してブレーカーが落ちるから安全ということですが、工事終了後この検電接地装置を切らずに指令に通知して送電開始した結果、地絡でいきJなり大電流が流れて変電所の機器などが損傷したものということで、マニュアルに反したミスがあったものです。所謂ヒューマンエラーですが、工事自体は外注されていて必ずしも熟練した作業員とは限らず、当然施工管理の責任はJR東日本にある訳です。

似たような事故は2年前に東北新幹線の埼京線並走区間でも起きていますが*11、このときもやはりマニュアルに反したミスがあって、作業員を感電させるという深刻な事故でした。同エントリーでも指摘しましたが、あからさまな組合潰しをしたJR東日本で昨今トラブルが絶えないのも確かです。そして外注工事は今後も作業員の確保が難しく、JR東日本も手掛ける都市再開発も滞っている中で*12、今後も作業員確保がネックとなることは確実です。これ整備新幹線や中央リニアの工事の遅れにも当然影響します。背景に人手不足で作業員集めが困難になった結果、下請けの所謂サブコンが引き受けてくれないから元請けのゼネコンと力関係が逆転してしまい、同様に元請けとなるJRも作業員確保が困難になる訳です。

てことで建設現場の省力化が必要ですが、ノウハウのあるサブコンに省力化投資の余力は乏しく、ゼネコンはサブコンの面倒を見る余裕を失い、悪循環になっている訳です。その一方で地価上昇と低金利で都市再開発は活発だし、五輪や万博などのイベント対応で人手が取られ、毎年のように起きる災害の復旧工事や老朽インフラの補修もあるとなると、そりゃ工事は進みません。加えて万博パビリオン工事を巡る代金未払い問題のようなトラブルが起きて、生命線のサブコンを痛めつけるようなことをしている訳です。大阪関西万博を大成功という維新の不誠実さに腹が立ちます。

一方でJR東日本が進める首都圏路線のワンマン化は進んでいて、既に常磐緩行線、南武線、相模線などで実施されてますが、3月改正で横浜線及び京浜東北・根岸線の東神奈川~大船間の横浜線車両でのワンマン運転を開始します。更に京浜東北線、山手線、中央総武緩行線へと拡大する予定です。しかしAIが壊す社畜エスカレーター*13で取り上げた南武線ワンマン化後の混雑時の遅延問題ですが、ホームドアの連動システムを見直して秒単位で時間を切り詰めて遅延防止を図っています。乗客の多い混雑路線でのワンマン化は未知の問題があります。

その時に懸念されるのが16日のトラブルによる長時間運休で、京浜東北線の2列車が駅間で停止して線路上を乗客誘導したような事例で、ワンマン運転の場合の乗務員の負担が大きくなりますし、乗客の疲弊も心配されます。更にJR東日本はドライバレス自動運転まで視野に入れており、その場合動力車運転免許非保持の保安要員が運転士並みの責任を負うということにもなりかねません。国家資格の専門職が要らないから人件費を削れるというのは短絡的です。現場社員を守るまともな組合がない状況で、果たして今後も安全を維持できるのかどうか?

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Saturday, November 01, 2025

株価以外全部沈没

ほとんど前エントリー*1の続編ですが、事態が動いているのでフォローアップせざるを得ない状況です。

まずガソリン減税ですが、今年12月31日からの暫定税率廃止で与野党が合意しました*2。与野党6党合意ですから国会通過もすんなりいくでしょう。軽油も来年4月1日からということですが、インフレ対策なら物流費に影響する軽油を後回しというのは軽油引取税が地方税で地方から反対の声が上がっていますが、同時にガソリンが安くなることの方が国民へのアピールになるということもあるでしょう。AIが壊す社畜エスカレーター*3でも触れましたが、価格が下がって需要を喚起すると原油の輸入が増えて貿易収支が悪化して円安インフレを招くことになります。

また財源は曖昧なままで、当面税収上振れによる剰余金や法人税の特措法減税の見直しなどとされてますが、特に剰余金は繰り越して次年度の国債発行抑制に用いることが法定されてますから、年度をまたいだ単なるトバシでしかありません。具体的に道路予算削るとか自動車関連税例えば重量税の増税とか、揮発油税の負担がないEVを考慮した走行距離税とか燃料税の炭素税への1本化とかには踏み込まずに済まそうとしている訳です。この調子ですから財政規律の緩みを質そうとはしていない訳で三つ子の赤字*4はますます進みます。

そして自動車半導体を巡るオランダと中国の対立がエスカレートしています*5。ネクスペリアは元々オランダの電機大手フィリップスの半導体部門を独立させた企業ですが、中国資本に買収された結果、オランダ政府から製造技術流出の恐れということで冷戦時代に作られた忘れられた法律で規制をかけたものですが、どうも裏でアメリカが動いているようで、怒った中国政府がネクスペリアの中国にある最終製品工場からの海外出荷を制限した結果、ドイツVWや日本のホンダその他の自動車メーカーが巻き添えになっております。自動車用半導体の世界シェア4割を占める同社の製品の8割は中国工場で最終製品に加工されることから、世界中の自動車メーカーがトバッチリを食っている訳です。これ結局日欧などアメリカの同盟国が傷つくだけの不毛な争いですが、今度はオランダ政府がネクスペリアのシリコンウエハーの中国工場への供給を止めて泥仕合になっています。中国資本のオランダ企業というネクスペリアがまた裂き状態になっている訳で、トランプと習近平がにこやかに握手しても事態は解決しません。中国を除く世界の自動車産業のピンチです。

そのせいか最高値を更新する日本株でも自動車関連はパッとしません。主にAI関連半導体関連の値上がりが支えているようで、相場全体が上げ相場という訳ではありません、円安で割安感があっても海外勢は万遍なく買っている訳ではないということです。高市トレードと言われる株高も一皮むけばという感じですが、特に欧州勢の買いが優勢なのは変わりません。インバウンドやタワマン完売などに見られる安いニッポン現象です。

ほぼ500兆円で動かなかった日本の円建てGDP名目値ですが、ドル建てでは5兆~6兆ドルだったものが、インフレで600兆円を超えた円建て名目値がドル建てでは4兆ドルになっているのが現状な訳で、その分日本の購買力が低下している訳で、一番のインフレ対策は日銀の利上げしかない状況ですが*6、またも日銀は動きませんでした*7。ベッセント国務長官は別に親切心で言っているのではなく、日本政府のドル売り介入を牽制する意図でしょう。実際米ドルは円を除く主要通貨に対して下げており、ユーロ・ポンド・スイスフランなどに対して安値となっていて通貨防衛の意図ですが、欧州の主要通貨は既に米FRBに先駆けて利下げに動いていて、スイスフランに至っては日本よりも低金利なのに上昇してます。そしてFRBも今回は動いたものの*8為替は寧ろ円安に動いてドル円153円台が定着しつつあります。その意味では日銀が利上げしても大勢に影響はないのかもしれませんが、金融正常化の姿勢を示す意味はありますし、利上げを遅らせた分だけ正常化が先送りされます。

てことでインフレ下で株式の高値更新はある程度持続すると思いますが、銘柄ごとに動きはバラバラで、下げている銘柄もあります。例えばリニア事業費倍増で嫌気されたJR東海です*9。財務の健全性は複雑系エントリー*10で指摘した通りですし、財投の3兆円も30年据え置きという破格条件で現状ほぼ無利子ですから利払いの負担はなく、現状のインフレが続くなら負担にならないかもしれませんが、それ故に居心地の良い現状を抜けられなくなっているとも言えます。東海道新幹線のぞみ増強とインバウンド需要で既にライバルの国内航空便に対しても優位な状況ですから、仮にリニアが開業しても航空からの移転はほぼ見込めないとも言えます。逆に東海道新幹線の好調でキャッシュを稼ぎ過ぎると自社株買いや配当などの株主還元を求められるから現状煩いアクティビストに狙われることもないということも言えます。この辺は伝統的日本企業的なスタンスで、既に赤字ローカル線の名松線に至るまで線路も車両も更新されこれ以上の投資先が見当たらない贅沢な悩みでもあります。何ならJR西日本が渋っている北陸新幹線米原ルートを整備スキーム無視で自前整備するとか。まあやらないでしょうけど。

一方でインバウンド対応は京阪が始めたプレミアムカーが阪急やJR西日本でも取り入れられ、老舗の近鉄特急も差別化された豪華特急のラインナップを整備してます。そんな中で京阪は更にプレミアムカー2両体制と攻めてます*11。上限運賃が決められていて航空鵜のようなダイナミックプライシングが難しい中でJR東日本の中央線グリーン車や私鉄各社の着席サービスが次々に登場してますが、京阪の場合沿線開発が終わって沿線の高齢化や松下・サンヨーといった大手電機産業の撤退やJR西日本との競争激化もあって乗客が減少する中での増収策ですが、当然一般車の乗車定員を削っている訳で、それに対する批判もありますが、背に腹は代えられないということですね。

同様の動きは関東でもありまして、1つは京成電鉄の空港連絡有料特急の増強計画です*12。成田空港第三滑走路供用と3つのターミナルビル統合を成田空港会社が打ち出し、末端が単線のJRと京成の成田空港線の増強を視野に入れてスカイライナーに加えて押上発着の有料特急を2027にも導入ということで、押上が観光名所でもある東京スカイツリー最寄りで浅草にも近いからインバウンド需要の取り込みが見込めるということですね。アクティビストから将来への追加投資を迫られていた京成が動きを見せた訳ですが、同時に都営浅草線への直通も視野に入っていると考えられます。そしてそれを裏付けるような動きが出ました*13。具体策はこれからですが、JR東日本のN'EXの牙城に切り込む可能性もあります。

両社ともにアクティビストの標的にされており、投資をせがまれてしないなら株主還元を求められているという点で共通しています。加えて都営浅草線を通じて関係も深く保安装置も同じ1号線型ATSの上位互換のC-ATS*14でハードは共通で運用が異なるだけなので擦り合わせは容易です。具体的にダイヤに落とし込むときに現状のインフラの貧弱さがネックになる可能性はありますが、インバウンド対応というところは引っ掛かるものの、とりあえず投資に向かうことは評価できます。殆どシナジーのない新京成電鉄の子会社化と統合とか、系列バス会社の再編とかで守りを固める一方だった京成と、やはり沿線の高齢化と立地企業の撤退で京阪と似た苦境にある京急がアクティビストに促されて動いたということですね。日本の現状は明らかに国内の民間投資が不十分だった結果と言えますから。

その意味で日本政府が合意文書を交わした5500億ドルの対米直接投資はヤバいです*15。というのも同様に対米投資を迫られた韓国のこのニュースです*16。長くなりましたのでさわりだけですが、韓国は外貨準備の80%超に及ぶ3500億ドルの直接投資でウォン安によるインフレ昂進を懸念して抵抗していたもので、それ故自動車関税交渉が遅れたのですが、日本のように自動車関税緩和を優先してやはり確実に円安を招く巨大投資を受け入れたことは、国民生活を犠牲にして大企業を救ったということでもあります。とりあえず今回はここまでにしておきますが追って深掘りします。

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Sunday, October 26, 2025

100年殺しのアベノミクスvoL.2

100年殺しのアベノミクス*1の続編です。予想されたことですが、高市政権はインフレに関わらず積極財政に舵を切ります。個別にツッコミ入れるよりも、日本が置かれている現状の構造問題を明らかにして問題点をあぶり出したいと思います。

まず原油価格*2。トランプ政権のロシア産原油を輸入する中国やインドへの牽制として追加制裁を課した結果、原油価格は急騰しましたが、ウクライナ戦争で急騰した原油価格も落ち着いてきて1バレル50ドル台まで下がった局面での急騰で60ドル台になったというニュースですが、原油価格の相場がここまで下がっていたのにガソリン価格は下がっていません。元売りへの補助金減額の影響と円安の結果ですが、欧米では軒並みガソリン価格が下がっている訳で、日本だけ高止まりしている状況で、円安がガソリン価格を押し上げている訳です。その意味では暫定税率廃止はインフレ対策になり得るのですが、ガソリンが安くなって消費が増えれば原油の輸入が増えて貿易収支を悪化させるから結局円安で調整されてしまう恨みがあります。但し公共交通の脆弱な地方は恩恵がありますし、物価高の原因となる物流費の上昇を抑制する効果はありますので、まったく意味がないとまでは言いませんが、効果は限定的です。

あと輸出の稼ぎ頭の自動車にも異変が出ていて輸出が減っています*3。台数は維持しながら関税分の値引きで金額が減った形で、それだけ自動車メーカーの収支を圧迫します。日産の窮状はこうした背景があります。加えて別の火種もあります。中国の半導体メーカーのオランダ工場を巡る中国とオランダの対立で中国メーカーの中国国内工場の出荷制限をして独VWや日本のホンダ等の自動車メーカーがトバッチリを食うというものです*4。所謂経済安全保障をオランダ政府が重視した結果ですが、日本政府も経済安全保障重視の立場から同様の問題が発生する可能性もあります。あと財源を定めない防衛費増額前倒しも輸入装備品増による貿易収支悪化と財政出動によるインフレで国民生活を圧迫する要因となります。

そして新興国の追い上げもあり、日本は来年にもインドに抜かれます。その後ろにはイギリスも*5。2010年に中国に抜かれ、2023年にドイツに抜かれ*6、ゆくゆくイギリスにも抜かれる現状です。国じゃないけどカリフォルニアにも抜かれてます*7。中国やインドのような人口大国に抜かれるのはある意味必然で、中国に至っては今や日本の4.5倍の経済規模ですが、人口2/3のドイツや半分のイギリスに抜かれるのは話が別です。しかも独英共に一時10%を超えるインフレに見舞われて経済は絶不調なのに日本を越えていくというのは、円安による日本の購買力の低下がもたらしたものということができます。

その結果が株高になっているというと違和感を覚えるかもしれませんが、高市トレードの正体は円安です*8。円安は外貨建ての日本の株価を安く見せますから、海外勢の日本買いで相場が上昇したもので、特に欧州系の投資家が目立ちます。ドル円でも1週間で5円以上の円安が進み153円をつけてますが、それ以上に対ユーロで170円とか対スイスフランで190円とかで大バーゲン状態になっている訳です。だから株価は上がるけどその結果株式を保有する富裕層の資産効果で消費が増えてインフレを助長する一方、株式を持たない一般国民はインフレのマイナス面を引き受けることになる訳です。

特に食費の上昇が深刻ですが、食料自給率の低さが作用して円安は食料品価格を押し上げます。しかも食料品は値上げりしたから量を減らすという訳にはいきませんから買うしかないし、逆に値下がりしても胃袋の大きさで消費量が制約されるから、価格弾力性が低く、その意味で野党が求める食品の消費税率ゼロはインフレ政策として一定の効果は期待できます。但しガソリン減税以上に実務面の制約が大きく、例えば包材や物流費などの課税仕入れの負担がある一方、課税売上で税率ゼロということはその分食品の製造加工や流通の負担が増えてしまいますし、減税を反映した値下げが起こらなければ実質的な効果を減殺してしまうことになります。という訳でやはり筋が悪い。それ以前に食料自給率を高めることこそ経済安全保障の一丁目一番地です。

にも拘らず新しい農相はコメ減産をぶち上げています*9。石破政権で打ち出されたコメ増産方針は撤回された訳です。当然コメ不足は続き価格は高止まりし、米国産米のミニマムアクセス米増枠で価格逆転でトランプ大喜びでも輸入米需要が伸びて、下手すればミニマムアクセス枠を超えた分の関税負担後の価格も逆転の可能性もあり、貿易収支を悪化させて円安となり、ほぼ自給率100%だったコメまで輸入依存ということになりかねません。

あとインバウンドや土地所有問題で揺れる外国人問題ですが、インバウンドの拡大がもたらす弊害は観光公害だけじゃなく、ホテルや飲食のインバウンド価格によってつり上がり国内旅行を圧迫しています*10。同様の問題は国内航空輸送でも起きていて、JALやANAにとっては悩みの種の国内線の不振をカバーするのに国際線コードシェアという裏技で凌いでいます。鉄道と違ってダイナミックプライシングが認められている航空運賃を押し上げる要因になっている訳です。逆に上限運賃制で割安な鉄道へのインバウンド客の負荷も増えていて国内旅行の抑制要因になってもいます。事実上のクラウディングアウトが起きている訳です。

てことで東名阪の三大都市圏を繋ぐ東海道新幹線の営業成績は絶好調ですが、その稼ぎをリニアで溶かしているために*11、業績好調にも拘らずJR東海の配当性向は低いという現実があります。ちなみに鉄道株では東京メトロの配当性向の高さは特質もので、1,600円台という買いやすい価格でお勧めです。次いでJR東日本です。やや苦しい鉄ネタ締めです^_^;。

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