都市交通

Sunday, August 18, 2019

困難なインフラのトリアージ

2030年の北海道新幹線札幌延伸に伴う並行在来線問題の検討が前倒しされました。

北海道新幹線の並行在来線、「存廃判断」5年前→前倒し  :日本経済新聞
対象区間は沿線人口が少なく、財政力の弱い町村が連なるだけに、調整は相当手間取りそうです。バス化も含めた検討ですから、廃止も有り得る訳ですが、貨物列車をどうするかが悩ましいところです。

JR貨物の問題は東北新幹線延伸のときに並行在来線を三セクで引き受ける時に、ローカル輸送対応ならば複線電化の東北本線の設備は明らかにオーバースペックとなりますから、JR貨物が貨物列車を維持することが困難と発議されました。その際JR貨物が負担する線路使用料がタダ同然の格安だったことから、並行在来線引き受け三セクにとっては負担ばかりになるということで揉めました。結果的にはJR貨物が支払う線路使用料と三セクが受け取るコスト見合いの線路使用料の差額をJR東日本の負担で補填することで決着しました。加えて北斗星やカシオペアの運行に伴う運賃料金収入もあり、それで経営の屋台骨を支えることで決着しました。貨物幹線だけに貨物廃止は無理だった訳です。

JR東日本にとっては整備区間より手前の根元区間の受益があるので、貨物輸送に伴う負担増は受け入れ可能だった訳ですが、同様の問題に直面した九州新幹線の八代―川内間ではこの手は使えず、並行在来線三セクの肥薩オレンジ鉄道にJR貨物が出資することで、貨物列車向けの電化設備等を維持するという方法が採られました。肥薩オレンジ鉄道のローカル列車は軽量ディーゼル車によるワンマン列車です。

北陸のIRいしかわ鉄道とあいの風富山鐡道では、当初検討されたサンダーバードの富山乗り入れは結局JR貨物とのコスト分担問題で実現しませんでした。IGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道が客単価の高い寝台特急の収入を当てにしたのとは対照的です。という具合に並行在来線貨物問題は統一的なスキームはなく個別対応に終始しました。言い換えれば行き当たりばったりだった訳です。

北海道新幹線に関しては、経営危機にあるJR北海道に追加負担を求めるのはそもそも無理ですし、これまで以上に沿線人口が少なく、財政力の弱い町村に負担を強いることになります。貨物廃止してバス転換もあり得る訳ですが、青函トンネル開通で天候に左右されない輸送手段として特に農産物輸送で優位性を発揮する貨物の廃止は、北海道経済に大きな打撃を与えるだけに、簡単にはいきません。

青函トンネルの新幹線と貨物の供用区間が速度と列車本数の制約条件になっていることから、国交省の本音は貨物廃止に傾いているようで、実際船舶へのシフトが検討されてますが、輸送量から言えば可能でも、天候の影響は避けられず、鉄道による安定輸送が北海道産農産品の競争力となっている現実から無理筋でしょう。

加えて東北新幹線の並行在来線三セクであるIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道にとっては、寝台特急の廃止で旅客収入を減らした上に、JR貨物の線路使用料収入まで減れば、存続が危うくなります。こうなると北海道の都合だけで決めることもできず、着地点が見えなくなります。あとJR貨物自身も国の支援で基盤強化投資を行った結果、黒字転換して株式上場も視野に入る中で、その基盤を国に潰されることになる訳です。この点も将に行き当たりばったりです。

山線区間を除く長万部以南の区間はJR貨物が出資するということも考えられますが、北海道経済に関わる問題だけに、北海道庁が動かなければまとまらない可能性があります。とするとJR北海道に冷たい道庁の対応から見て期待できそうにありませんね。これインフラの積み増しによる維持費拡大問題として指摘しましたが、こうして過剰インフラを抱えると、その廃止も簡単ではないってことで、寧ろ問題を複雑にして解決を困難にします。

一方九州でも問題が起きています。

JR九州「自社株買い」株主総会で否決、青柳社長「今後も対話」  :日本経済新聞
株式上場したばかりに、株主となった投資ファンドからの圧力を受けている訳ですが、同時に豪雨被害で不通の日田彦山線の復旧を巡って関連自治体との間で困難な話し合いが行われています。日田彦山線自体は現状既に都市間輸送も貨物輸送も担っていない純然たるローカル線で、企業経営的には災害復旧するよりバス転換する方が合理的ではあります。

しかし忘れてはいけないのは、JR九州が株式上場に当たって上場基準クリアのために行った経営安定基金を取り崩して新幹線リース料の一括納付と償却資産の減損処理の結果、減価償却費を圧縮して本業の赤字体質を改善した一方、減価償却費の減少は同時にフリーキャッシュフローの減少を意味しますから、災害復旧の資金捻出を困難にしているという側面もあります。言い方は悪いですが、株式上場したために災害復旧もままならなくなったってことです。日経記事では複数のステークホルダーへの対応の困難さと纏めてますが、覚悟がないなら上場なんかするなって言いたいところです。

というわけで公共インフラの民営化は万能薬でも何でもない訳で、例えば大阪メトロや大阪シティバスの民営化の意義は今もって理解に苦しみますが、とりあえずここでは踏み込みません。しかし過剰インフラの淘汰を資本の論理に委ねて良いのかってところはあまり議論されてません。そんな中で北越急行ほくほく線の生き残り策は示唆に富みます。

元々スーパー特急方式を想定していたJR西日本区間の北陸新幹線は、ほくほく線経由で越後湯沢で上越新幹線に乗り継ぐ形が想定されていて、それを前提に北越急行では線路の高速化と共にJR西日本の681/683系を導入し、段階的にスピードアップして160km/hの営業運転を実現した訳ですが、北陸新幹線のフル規格化で梯子を外された形になりました。

そこで利益の一部を基金として内部留保して将来の減収に備える一方、特急廃止でお役御免となる681/683系をJR西日本に売却しローカル輸送に特化します。減収にはなりますが、特急車両の譲渡収入が得られる一方、通過車両キロの減少で保守負担が減少しますから、そこで収支をバランスさせることで存続を図ります。超快速スノーラビットで都市間輸送を維持しつつ、鈍速列車スノータートルという企画列車を走らせるなどして増収に励む一方、2018年12月1日には運賃値上げして収支改善を図ります。万博輸送対応の車両を大阪市に譲渡した北大阪急行と同じ手ですね。

幸いなことに高速化で高規格な線路故にメンテナンスフリーなのと、積雪対策により運休が少ないということで、ローカルな利用者の信頼を得ていることで、安定した収支を実現しています。てことでJR北海道もJR九州の前例を梃子に電化や線路強化や積雪対策などで将来のメンテナンスコストを圧縮することと、運賃改定を併せて収支改善を図るのが、道庁が当てにならない以上必要ではないかと。利子補給されているとはいえ低金利で運用益が期待できない経営安定基金ですが、現物投資は優先順位を間違わなければ本業でのハイリターンが可能です。

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Sunday, August 04, 2019

リアル自爆炎上の恐怖

京都アニメ―ション放火事件という死者35名もの大事件がありました。40Lものガソリンを撒いて火をつけりゃこうなるってのは、ひょっとしたら容疑者自身が巻き添えになる可能性の認識が無かったのでしょう。

2003年の韓国大邱市の地下鉄放火事件では、ペットボトル1本分のガソリンで当局の対応のまずさもあって192名の死者を出してますし、2015年の東海道新幹線ののぞみ225号焼身自殺事件では、巻き添えの女性1名の死亡の他乗客乗員28名が重軽傷になるなど、身近な危険物としてのガソリンの危険性の認識が甘いんじゃないかと思います。学園や街頭で火炎瓶飛び交う時代を経験した私ら世代から見ると、昔はホントガバガバだったし、実際ガソリン放火事件は多数ありました。例えば1980年の新宿西口バス放火事件が思い出されます。

昔は成人男性の多くが喫煙者でマッチやライターを普通に携行していて、ガソリン販売の規制も緩い状況でしたが、その後規制強化されてはいますが、未登録の農機やフォークリフト、小型発電機の給油というニッチな需要がある以上、販売時に店員が用途を尋ねても抑止効果は限られます。今回の事件では500mほど離れたセルフスタンドで購入したと報じられており、セルフスタンドでの携行缶販売は法令違反ですが、店員の質問をクリアして購入できている訳です。こうなると身分証提示など一段の規制強化は必要ではないでしょうか。そうしないと、この事件で明らかになったガソリンの威力が悪用される事態もあります。その結果がこれ。

慰安婦少女像の展示中止 愛知の国際芸術祭 (写真=共同) :日本経済新聞
大村愛知県知事は河村名古屋市長のクレームに対しては「行政が展示物に干渉すべきでない」として見識を示した一方、脅迫まがいの抗議電話やガソリン放火を予告するFAXまで送付され、職員の安全を図るため中止を決断せざるを得ない無念を示しています。

愛知県警に相談しても、FAXはネットで匿名化されているから遡及は無理という意味不明の理屈で断っている訳で、これ明らかに愛知県警のサボタージュです。令状取ればプロバーダーに通信ログ開示を指示できますし、匿名化までしての脅迫ですから、寧ろそのことが犯行の意志を示します。ま、時間がかかるしそれ以前に犯行阻止のために警備強化はしなければならず、面倒ってことですね。G20大阪サミットで見せたガチガチの過剰警備に見られるように政権肝いりでなければ面倒は受けたくないってことですね。逆に2020東京五輪は戒厳令並みの警備体制確定でしょう。典型的な恣意的な公権力の行使です。ヤレヤレ。公権力の行使は公平公正でなければならないってのは、国民国家の基本中の基本ですね。

そんな状況で開催されるオリパラですが、選手村や競技施設が集中する湾岸エリアでは東京港の処理能力を超えた貨物の集中で道路がパンク寸前なのに、オリパラ関係者の移動のための大規模な交通規制が敷かれます。物流が滞ることは間違いありません。あ、だから日韓関係拗らせて貿易減らす?まさかね。

一方現状でも朝の通勤ラッシュで混雑している通勤鉄道に世界から観戦客が押し寄せる訳ですから、相当な混乱は避けられません。上述ののぞみ225号の事件のときにも新幹線のセキュリティチェックが言われJR東海が無理と即座に否定しましたが、混雑する通勤鉄道はテロLリストから見れば格好のソフトターゲットになります。繰り返しますがペットボトル1本のガソリンで大惨事の大邱市の事件など、新幹線でも不可能な通勤鉄道のセキュリティチェックの困難性は言うまでもありません。

加えて各スタジアムで入場時に行われると考えられるセキュリティチェックの長い列が鉄道駅に伸びた時に何が起きるか?駅外の混雑で予想外の事故を誘発した2015年の事故のリンク貼っときます。

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Saturday, July 20, 2019

オウンゴールの国自BANG!―――黄金の国の誤変換

日韓関係が拗れまくってます。徴用工裁判問題と半導体材料の輸出審査美那雄祖問題が同時並行で進んでいて、日本政府の公式見解も別らしいですが、寒みー場外乱闘で指摘した通り、世耕経産相が徴用工裁判問題に言及してます。故に世界のメディアは徴用工裁判問題の報復として「日本もトランプ流」と報じました。実はそれがまずいことなんですね。

昨日も河野外相が駐日韓国大使を呼んで「無礼者」呼ばわりしましたが、徴用工裁判はあくまでも民事の紛争ですから、そもそも政府同士の約束である条約で無効にはできませんし、あくまでも訴えた国の裁判所がその国の法律に基づいて判断するものです。例えばトヨタの米現地法人の役員がセクハラで訴えられた裁判では、米国法で被告の経済力に応じた懲罰的賠償金が認められていますから、億単位の賠償命令を受けてますが、「それは不当だから撤回しろ」と日本政府が言えばおかしいですよね。そのおかしなことを日本政府は韓国政府に要求している訳です。日本政府は国際紛争処理機関への提訴を準備中らしいですが、相手国の韓国が無視すれば事態は動きません。

対して輸出手続きの見直し問題を日本政府の関係者は判で押したように「制裁ではない」と言ってますが、これ韓国がWTOに提訴すれば日本の意向に関わらず紛争解決パネルで判断が下されます。その際に世界のメディアが「日本もトランプ流」と報じて制裁扱いしていることが、日本の心象を悪くするってことで、徴用工裁判との関連を否定し、あくまでも手続きの見直しだと異口同音に発言している訳です。とはいえ世耕経産相の発言は記録として残ってますから、否定しようが何しようが事実は消えません。

加えて日本政府の言い分に様々な矛盾が見られる点も気になります。複数の政府高官が言う「不適切な事案があった」なら、韓国当局にその情報を伝えて摘発を促すならわかりますが、事件化できるほどの証拠はなく、単に疑わしいってだけなら物は言いようで後付けの理屈にも見えます。「安全保障上の問題」と言うならWTOではなく国連安保理に諮るべきじゃないのか?ってこともあります。少なくとも日韓で揉めて一番喜んでるのは間違いなく北朝鮮の金正恩氏でしょう。

問題の純度が高いとされる日本製フッ化水素ですが、既にサムスンなど韓国企業は代替品を探しており中国やロシアが調達先に浮上しているようですが、同等の純度のものが手に入るかどうかは微妙なようです。エッチング剤ですから、微小な回路を刻むのに純度は大事で、結果として半導体製造の歩留まりが改善して高品質と低コストが両立する訳です。純度が下がればそこがどうなるかは分からない訳で、確かに韓国企業は困るでしょう。だけど困るのはそれだけじゃないんですよね。

韓国の半導体メーカーが日本製化学製品で実現した高品質と低コストを何故日本企業が実現できなかったかというと、ムーアの法則に鍵があります。インテルの創業者の1人のゴードン・ムーア氏が提唱したICチップの搭載トランジスタ数が凡そ2年で2倍になるという経験則です。つまり技術革新が指数関数的に進むってことですが、これが意味するのは技術の陳腐化が早くて絶えざる技術革新の連続でしか競争力を維持できないってことでして、言い出しっぺのインテルはそれを根拠に日本製の高品質低コストの汎用メモリのDRAMへの台頭で撤退し、プロセッサに特化してIBM、マイクロソフトと組んで所謂ウィンテル連合でPC市場を席巻し、且つ研究開発を強化して市場をリードしてきた訳です。所謂選択と集中ですね。

その過程で汎用品しか作れない日本の半導体メーカーは価格のたたき合いで多くが自滅します。加えてバブル期の強気の設備投資が設備過剰となり、その後の技術革新に合わせたタイムリーな設備投資を阻害します。かくして台湾や韓国の半導体メーカーが入れ替わるように台頭し現在に至る訳ですが、日本製半導体の高品質低コストを支えた日本製化成品が支えになった訳で、逆に言えばこの入れ替わりがあったから、日本の化成品メーカーは顧客を失わずに済んだ訳です。早い話日本の半導体メーカーの戦略不在の結果ですね。

結果的には日韓企業の強みの組み合わせで世界に高品質で低コストの半導体が供給され、多くの危機に実装されて革新的な成否が多数市場に送り出されてきた訳ですが、その構造に余分なストレスを与えることに何の意味があるのか、日本政府は答えていません。何しろ徴用工裁判問題に対する制裁じゃないそうですから、韓国に何を求めているのかがわかりません。結果誰得だよってことですね。

喜んでるのは専ら日本国内のウヨ的な人たちばかりで、問題の着地点も見えません。ま、そもそも制裁じゃないし、だから交渉するつもりはないし、場合によっては品目を増やすことも有り得るそうですから、韓国国内では経済への影響を心配する声はあるものの打つ手はないし、日本と妥協的な保守派も含めて文在寅政権支持の世論が形成されてます。長期的には日本依存のリスクが意識され、調達先の多様化や国産化、あるいは韓国企業の製造拠点の海外移転などで、寧ろ日本の方が損失を被ることになりかねません。こうなるとメンヘラ自傷行為にしかなりませんね。バカなのか?

この辺の構図ですが、かつて指摘したICカードのソニーの失敗にも通じます。元々秘密保持を必要とする工場や事業所のセキュリティ対策として、センサーにタッチしてゲート開放や開錠する社員証やゲストカードとして開発されたFeliCaシステムに注目して交通系ICカード兼電子マネーに応用したのが香港の八達通'OctopusCard)で、その利便性と高機能を知ってソニー開発を要請したのがJR東日本のSuicaです。

そして開発過程でソニーが独自に開発したEdyのSuicaへの搭載をJR東日本は提案しますが、ソニーは断ってしまいます。JR東日本の狙いは決済システムは1つで良いし、センサー設置などを短期間で普及させるための機能統合としう戦略判断だったんですが、ソニーはそれを理解できず、Edyを独自に育てる選択をします。しかし所謂おサイフ携帯販売のために通信キャリアのNTTドコモに売り渡してしまいます。そのNTTドコモも持て余して楽天に転売してしまいます。かくして普及できないまま交通系カードにに電子マネー機能が追加され、nanacoなど流通系カードの参入もあってEdyは忘れられた存在になります。かくしてただでさえ高コストなFelicaシステムの各種カードが乱立してしまい、7payの蹉跌を生むことになる訳ですから、根深い問題です。

その7payの蹉跌も日本政府の消費税増税に伴うキャッシュバックなんてアホなことするから起きたことだし、そもそもバーコード決済も所謂二次元バーコード(QRコード)を開発して無償公開したのはデンソーですが、それを利用して決済システムを構築したのは中国のアリババや微博(Weibo)ってFeliCaと構図が似てます。そして電子決済を一気に普及させようとして混乱を招いている日本政府って-_-;。かくして黄金の国は誤変換の果てにオウンゴールの国になる?

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Sunday, July 14, 2019

間違いだらけの消費税

3度目の正直な消費税で予想した通り、今年10月の消費税増税は動きませんでした。野党は増税撤回を掲げて争う姿勢ですが、大勢は与党有利と言われています。選挙が終われば「国民の信任を得た」として消費税増税は確実に実施されるでしょう。上記のエントリーでも指摘しましたが、消費税を巡る議論が生煮えで、単純に消費税増税、是か非か、といった議論は今更感があります。寧ろ準備が粛々と進んでいます。そんなこのニュース。

鉄道運賃、消費増税で2%上げ 山手線初乗り136円に  :日本経済新聞
国交省の指針で値上げ幅を消費税増税分の範囲内に納めることを求めており、JR東日本で平均1.852%で、他社もほぼ同水準とされております。一応便乗値上げはありませんが、民営化後30年以上、消費税転嫁分の転嫁を除く運賃値上げは実施されておりませんので、低インフレもありそれなりに超過利潤は増えていると見られますが、その見直しまでは無いってことですね。

加えて鉄道運賃は事業者をまたぐ連絡運輸もあり、IC乗車券のようなストアードフェアシステムが普及していることもあり、バックオフィスのシステム改修にはかなりのコストがかかると思われますから、合理化による増益分は多分大した足しにはならないのでしょう。その一方でJRのライナー列車や複数私鉄の有料着席サービスなど付加サービスのの料金は届出制で自由度がありますから、今後も拡大するんじゃないかと思います。逆に存亡の危機にあるJR北海道は収支改善のための値上げを消費税増税部込みで申請済みで、カツカツの厳しい状況は続きます。

他方運賃制度の自由度が高い航空やバスに関しては、予約時期や路線や便毎に柔軟な運賃設定が可能なので、こうして見ると鉄道運賃にも一定の柔軟性が認められても良い気がします。例えばJR北海道のケースでは札幌都市圏とそれ以外で別運賃にするとかですね。あるいはJRは都市間列車に特化して特急料金込みとし、ローカル輸送はイギリスのフランチャイズ制に倣って地元自治体やバス事業者の参入を促し運賃を別建てにするとかでしょうか。

消費税本体の話からややそれましたが、消費税転嫁の値上げは価格カルテルから除外するという独禁法の例外になっていることを述べたかったんですが、鉄道運賃のように元々が規制価格でネットワークの外部性が強く働く分野はともかく、それ以外の商品一般に関して、この例外扱いが妥当なんだろうか?ってことです。

だから鉄道のような規制業種に限らず一斉値上げになりやすく、駆け込み需要が発生しますし、規制業種以外では便乗値上げも見られますし、食品などで見られる内容量を減らしたステルス値上げも常態化している訳ですね。逆に言えば消費税増税に伴う価格の段差を無くすには、一斉値上げを防ぐシステムを考えれば良い訳で、プレミアム商品券やキャッシュレス決済でポイントバックみたいなことは、寧ろ混乱を助長することになります。

付加価値税率15%以上とされるEUではどうかと言えば、一斉値上げはほとんど見られず、事業者は税率アップを見越して事前値上げしたり、透明値上げを見送って値上げ先送りしたり、コスト削減で吸収したりと、様々な対応を取って税率改定前後の期間平均で収支を調整しています。ある意味価格据え置きはシェア拡大のチャンスでもある訳で、より戦略的な価格政策が定着している訳です。

またインボイスの導入によって税率が変わる前の仕入れ分の低税率は控除額も少ない訳で、中間事業者の節税策が無力化される効果もある訳で、増税による駆け込み需要対策ならインボイス導入こそやるべきことですし、中小零細事業者の対応のためのシステム補助なら1回こっきりのシンプルな補助制度になり、ポイント還元のような大掛かりな仕組みも不要です。しかも2022年をメドにインボイス導入の方針もある訳ですから、それを前倒しするならともかく、今回増税の影響w軽減するという名目で大規模なバラマキをすれば、これが悪しき前例となって今後機動的な税率改定が難しくなるという副作用もあります。全くいいとこ無しです。

前エントリーで取り上げた7pay不正アクセス問題も、コンビニなど大手チェーンの加盟店は2%還元となる一方、地方スーパーを中心に資本金を5,000万円以下に減資して5%還元の対象事業者になってシステム投資の補助金まで取ろうとする動きが目立っており、7-11は対抗上3%分を本部負担で加盟店支援をしようとした訳ですが、セキュリティの強固なFelicaベースのnanacoの高コストがネックで、一方オムニセブンから派生した7iDのシステムが宙に浮いていて、それを利用したセブンアプリというポイントシステムに衣替えして、更にそれを土台に決済システムを構築した結果、元の7iDのガバガバなセキュリティが災いしたということのようですね。ベンダーの尻叩いて安上がりに済まそうとした結果でもありますが、同日にスタートしたファミpayでは問題が起きたという報告はありませんから、手抜きが高くついたってことですね。お粗末。

そもそも消費税は高齢化に伴う社会保障費の膨張に対して、安定した財源であり、社会全体で広く薄く負担するってのが本来の意義だった筈ですが、その一方で年金も健保も保険料が値上げされている訳で、保険料の値上げは現役世代に負担が集中するので、負担と給付の見直しの中で利的な選択だった筈ですが、実際は97年の3%→5%の増税と同時に保険料も値上げされ、年金の100寝南進プランでも年金保険料の値上げとマクロ経済スライドによる実質給付の圧縮が図られ、健保も後期高齢者保健創設による国保、協会健保、組合健保などとも財政調整の結果H権料は毎年値上がりしている訳で、本来は消費税増税の代わりに保険料は固定するといった議論があってしかるべきですが、全くありません。

この辺の不誠実さが日本政治の現状です。その意味では税と社会保障の一体改革を打ち出して3党合意を纏めた野田政権はまだしも誠実だったとは言えます。その後解散総選挙d絵民意を問うて政権を失い戦犯扱いされてますが、とりあえず議論の俎上に載せたことは間違いありません。ただしここにもゴマカシがありまして、一つは地方消費税が5%時代はその内1%で税収額比20%だったものが、8%中1.7%で税収額比21.5%となりました。10%時には2.2%で税収額比22%になり、軽減税率8%に対しても1.76%(税収額比22%)と地方への配分が増えてます。

勿論社会保障負担が増えるのは地方も同じでよりシビアなので、これはこれで良しとすることは可能ですが、残る国税収入でも社会保障費に直接充当されるのは2割相当で残りは財政再建と政府消費による政府負担分の消費税負担増で消えるという笑えない話なんです。結局年金100年安心プランで約束しながら財源が見つからずに先送りされていた給付の国の負担割合を1/3→1/2の財源に充当されて終わりで、社会保障改革とは程遠い内容です。特に財政再建は過去の公共事業や減税などの財政出動の結果の財政悪化なんですから、素直に歳出削減と赤字国債圧縮を行うべきで、消費税で賄おうというのは筋悪です。

更に自公政権で導入が決まった軽減税率が問題でして、運用の混乱もさることながら、インボイス導入までは区分経理による帳簿管理とされており、錯誤や不正の温床になりますし、事務負担も増えます。インボイスが導入されれば複数税率への対応は容易ですが、それに留まらず、非課税とされる医療や一部の公共サービスを0%税率として申告に基づいて還付することも可能になりますから、制度としてはかなりスッキリします。また税率の変更も容易にになるのは上述の通りです。これを制度インフラとして適正な税率を国民目線で決めていくことが重要です。財政再建のためという増税議論なら国民の判断で止められる訳です。

あと消費税に合わせた所得税や法人税の見直しも必要です。制度の整合性を図るなら両税も付加価値型Hにすればスッキリします。所得税ならば1人当たりの給付付き税額控除額を決めて本人と扶養家族の人数分を税額控除し、税額が下回る場合は差額を給付することにすれば、仮に所得ゼロでも控除税額分の給付が受けられますから、社会保障費の圧縮が可能になります。法人税は人件費を含む付加価値を課税対象として、人件費に含まれる個人所得税と社会保険料を控除するという仕組みが考えられます。課税ベースが拡大しますから、税率は下げられます。低消費税率国との底辺への競争となる現在の法人減税の議論は必然的に財源を誤魔化すことになり、結果的に消費税収が充当されてましたってことも防げます。

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Saturday, July 06, 2019

G20サミット後の寒みー場外乱闘

寒みータイトルで恐縮ですが^_^;、サミットネタ連発です。サミット自体は成果が乏しいですが、サミット後の場外乱闘が興味深い。特にトランプ氏の行動は見事です。とはいえ「ツイッターで会談を呼びかけたら金正恩氏が応じた」という表向きのシナリオは信じない方が良い。事前に親書をやり取りし、米韓も事前に首脳会談やってるわけですし、陰のシナリオライターがいると見るべきでしょう。

誰が何のため?よりもこうして和平交渉が継続することに意味があるというのは度々指摘してますが、和平プロセスそのものの継続が意味がある訳で、今回に関しては、トランプ氏は自身の再選に向けて時刻有権者にアピールできましたし、金氏も制裁解除が滞って国内に不満がたまると寝首を掻かれかねないから、双方にメリットのあるバーターです。北朝鮮に関しては食糧危機が言われますが、裏で外貨稼いでいることもまた確実です。7PaYの不正アクセス被害の一部も恐らく流れている悪寒。セキュリティの重要性を理解できていない謝罪会見で露呈したように、アホな企業幹部が健在な限り、北調整にかもられると。

米中の通商摩擦も、結局制裁関税第4弾の発動は回避されました。撤回した訳じゃありませんから、今後もアメリカは制裁をちらつかせながらの交渉となるでしょうけど、第4弾を発動すると、アップルやクァルコムなど米企業にブーメランが返ってくるから、実際は脅しにしか使えないってことです。5G通信に関しては中国が押さえている特許も多数あり、完全排除すればアメリカも困る訳です。

そして中国ですが、事前に心配していた香港デモに関する他国の言及は殆どなく、通商問題でも一定の成果が得られてホクホクです。首脳会議ではほぼ習近平氏の「自由貿易を守れ」の発言で独演会状態だったようですが、香港デモで牽制する発煙をした国の首脳は居なかったのか、それともホスト国の意向なのか?何しろホスト国は国連人権理事会の問題児ですし、天安門事件もスルーした国ですし。早速中国はデモ隊に強硬策で応じました。天安門どころか19世紀のパリコミューンの血の1週間になりかねません。

で、ホスト国の日本はと言えば、日韓関係を拗らせてます。

韓国への輸出規制を強化、政府発表 韓国は対抗措置も  :日本経済新聞

世耕経産相はアレコレ理由を述べてますが、徴用工問題に言及したことで台無しです。これ社畜の国の意味政策のエントリーの冒頭でも述べましたが、元々李明博政権時代から続く訴訟で、控訴審での否決を受けた上告審で政府同士の債務免除の規定は民間同士の債務を無効にしないという判断を示して差し戻されたもので、新日鉄住金の敗訴は確実だった訳で、通常は和解して手打ちするところを、突っぱねて確定判決を引き出したという完全なオウンゴールです。

明らかに貿易手続きを政治圧力に利用sた構図ですね。参院選に向けて国内向けにアピールするつもりでしょうけど、墓穴を掘りました。確かに韓国企業は困るでしょうけど、手続きの簡素化措置の停止ですから、手続きで停滞するだけですから、一時的に韓国企業の在庫が薄くなり、程度によっては韓国企業の生産活動が一時的に停滞することはあり得ますが、これをきっかけに日本以外の調達先にシフトする動きも当然出てきますから、韓国へ輸出する日本企業にとっては顧客を失う訳ですね。トランプ氏さえ踏み留まったブーメランを日本が投げちゃったと。ひたすら愚かです。

香港に関してはG20が無事終わったために災難な状況ですが、せめて注目していきましょう。中国政府をけん制するには国際世論の圧力が欠かせません。香港はソニーのFelicaシステムによるオクトパスカードをいち早く実用化し、Suicaなど日本の交通系ICカードやEDY、nanaco、waon、IDやQuickpayなどの決済カードのお手本になったことも忘れてはいけませんね。

そもそもnanacoでキャッシュレス決済を実現している7&iが何故バーコード決済を導入したのか疑問ですが、恐らく消費税増税に絡めてキャッシュレス決済を拡大したい政府のポイント還元策で、大手FC店が対象から外されたことで、対抗上独自ポイント付与のために、コストが嵩むFelica決済よりも低コストなバーコード決済の導入で対応しようとしたってことじゃないかと思いますが、そうだとすると愚かな政府が一番問題です。この論点は別の機会で深めたいと思います。

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Sunday, June 30, 2019

G20サミットで見えた2020東京の混乱

G20サミットでメディアジャック状態でしたが、さしたる成果が見えない中で、大阪での大規模規制の混乱ぶりが注目を集めました。

レガシーを次に生かせるか 厳戒のG20大阪サミット閉幕  :日本経済新聞
高速道の通行規制や高速バスの運休に渋滞による路線バスの遅れやニュートラムの中埠頭駅通過扱いなど、市民生活に大きなストレスをもたらしました。

成果が見えない一方で経済活動にストレスを与えてまでやる意味があるのかってのは、尤もな疑問ですが、首脳外交なんてそんなもんです。1814年のウィーン会議が典型ですが、参加国が多ければ利害がぶつかり合い会議\は踊ります。それでもナポレオン戦争の戦後処理を決めウィーン体制が始まったことに意味があります。

普仏戦争の敗北とプロイセンのビスマルクによるドイツ統一で事実上の降伏を余儀なくされたフランスは、紆余曲折を経て1871年のパリコミューン攻防戦で大量流血となりました。それを当時ライン新聞主筆だったカール・マルクスはパリ市民への連帯の意を表す一方、ウィーン体制下で統一し帝国を形成したドイツを「神聖同盟の下で眠りこけている」と酷評します。産業革命の進捗で新たに登場した近代的労働者階級を古代ローマの無産市民になぞらえてプロレタリアートと名付け、その解放は反動的な神聖同盟(ウィーン体制のこと)の元では不可能と見抜いたわけです。

現代に置き換えれば「神聖同盟」はヤルタ・ポツダム体制が該当ですが、曲がりなりにも正規の外交交渉で決められたウィーン体制と違ってヤルタ会議という秘密会議で決められたことが大きく異なります。その結果国連憲章で日本とドイツは敵国条項で封じ込められ、ドイツは東西分割統治によtって、日本は日本国憲法による交戦権放棄によって、それぞれ無力化された訳です。ナポレオン戦争後のウィーン体制同様、戦勝国による敗戦国封じ込めは容赦がありません。

この体制も長く続けばいろいろ変化に晒される訳で、東西冷戦終結とドイツ統一でNATO軍としてドイツに駐留する米軍の地位協定が見直されますが、日本に関しては変化が無いばかりか、集団的自衛権行使容認や憲法改正で軍事同盟強化の方向性が示されてますが、大元のヤルタ・ポツダム体制の見直しはスルーされ、地位協定も変化無しです。その言い訳として朝鮮半島有事や台湾有事が取り沙汰されますが、台湾は経済面で中国と一体化が進み、米朝和平プロセスが始まった現状では、日本ばかりが「眠りこけている」状態です。

それでもこのような外交ショーがつつがなくできることが、秩序の健在を示す訳ですから、批判されようが経済を圧迫しようが、強権を以て「眠りこけている」ことは、政権にとっては重要な訳です。ただこれ来年のオリンピックではより長期間、広範な場所で再現されるわけですから、憂鬱な話です。休める人は休んで東京を脱出する方が良いでしょう。休めないまでも仕事の前倒しや先送りや時差出勤やテレワークで影響を回避する知恵は必要ですね。ヤレヤレ-o-💭。

通勤時間帯の鉄道の混雑もさることながら、物流の混乱は深刻です。

東京港、物流パンク寸前 トラック渋滞が慢性化  :日本経済新聞
現状が既にパンク寸前なのに、オリパラ期間中の交通規制で東京港は使えないということで、他港へシフトする動きが出ています。湾岸地域ではR356の東京港トンネル区間が供用開始したばかりですが、首都高に規制がかかればう回路として車が殺到するでしょうから、前後区間を含めて大渋滞が予想されます。

そんな状況で「混雑対策で船を活用」とか言ってる小池知事の牧歌的な認識はホントしょーもない。あと鉄道に関しても、地理不案内な外国人が多数殺到することも視野に入れる必要があります。混雑状況によっては改札規制がかかることもあるでしょうし、不慣れな人が増えて乗降に時間がかかったり、事故やトラブルも見込んでおく必要があります。企業も災難だと思ってBCP対策考えないとね。いやホント、地獄の五輪を覚悟せよって話ですね。

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Saturday, June 22, 2019

地方の地雷

物騒なタイトルですが、最早地雷を抱えたと言っても過言ではない日本の地方について考えます。その前に前エントリーの香港の逃亡犯引き渡し条例改正ですが、100万人デモでG20前の揉め事を回避したい当局が折れました。勿論お手本の日本で第一次安倍政権で批判を浴びて撤回されたホワイトカラーエグゼンプション制度が高度プロフェッショナル制度に名前を変えて復活し成立したことを忘れちゃいけませんね。

そもそも香港の行政制度はイギリス統治時代を踏襲していて、宗主国がイギリスから中国に変わった形ですが、逃亡犯引き渡し条例でイギリスなどへの引き渡しは既に制度化されている訳で、本国で犯罪を犯して植民地へ逃亡するってのは昔からあって問題だった訳ですから、中国国内で犯罪を犯しても香港へ逃げればセーフってのは、中国サイドから見れば問題ではあります。

とかく独裁体制を批判され、法治ではなく人治だと言われてきた中国ですが、習近平政権の反腐敗運動もあって、法整備が進み、法の支配が確立しつつあるのも確かなので、香港の存在は犯罪者を助けるセキュリティホールになるという意味で、穴をふさぐ必要はありますが、香港市民は言論の自由がなくなることへの危機感があります。確かに政治犯弾圧に使えるツールですが。

そういう意味で落としどころが非常に難しいのですが、元々イギリス統治時代からの植民地型統治を見直して、大幅な自治権を認めることとのバーターは考えられます。そうするとウイグル、内モンゴル、チワワン、チベットの4自治区との釣り合いが取れなくなるから、4自治区の自治権の拡大も課題になるなど、困難が伴います。

個人的には自治区に留まらず、省や独立都市も含めて地方政府の自治権拡大を通じて、中国自体をEUのような連邦共同体に変化させるぐらいしか出口は無いと考えます。そうなればそこへ台湾が参加する流れも可能になります。人口大国で世界最大の民主国家と言われるインドの混乱と停滞が示すように、通常の国民国家型の民主主義体制は人口大国ではそもそも無理じゃないかと考えております。中国は日本よりEUを見倣うべし。

その意味でBrexitやイタリアの財政問題や右傾化など、EUも問題を抱えて苦しんでますが、例えばデンマークはEUに加盟しながら独自通貨を発行し、自治領のグリーンランドとフェロー諸島はEU非加盟ですし、EU非加盟で独自通貨発行しながらシェンゲン協定には加盟しているスイスやノルウェーとか、EUにもシェンゲン協定にも非加盟なのに通貨はユーロというモナコ公国など、欧州の多様性は複雑怪奇ですが、それでもまとまっているところを見せることで、中国に好影響を与えることが期待できます。その意味でBrexitやイタリアの財政問題でもう少し柔軟な対応をしても良いと思いますが。そもそもリスボン条約で定義された補完性原理に反する気がします。

そんなEUの補完性原理を見倣って欲しいのは、中央集権の強い日本です。できれば憲法の地方自治条項へ追加して欲しいです。地方の時代が言われながら、逆に地方自治が停滞若しくは後退している現実はひとえに溜息です。そうれを象徴するこのニュース。

ふるさと納税の矛盾 「人気自治体」二重取りに賛否  :日本経済新聞
ふるさと納税は制度としては寄付税制なので、ふるさと納税は税収にカウントされず、地方交付税は減額されません。一方、税収を失う自治体は東京23区をはじめ税収の多い不交付団体が主であり、取られ損ですし、高額納税者ほど控除を受けられますから、税収減の影響は大きい訳です。加えて交付団体の税収減は地方交付税でカバーされますから、トータルでは公費が増えることになります。

だから高額返礼品が可能になり、それが過熱して寄付額の3割までという規制の導入に至りました。そもそも同じ税源を奪い合う仕組みですから、問題のある制度です。寄付文化の乏しい日本に寄付文化を定着させる意図もあるようですが、寄付先進国と言われるアメリカでは、富裕層子女入学とバーターで大学に寄付というような、半ば公認賄賂制度となっている現実もあります。

税収制約から自治体が対応できない問題を解決するにしても、意義をアピールしてクラウドファンディングで資金集めすることなら、法律変えなくても可能です。自治体の本気度という意味からもその方が望ましいところです。法律変えるなら国の権限と税源を移譲することこそが地方分権の王道です。

例えば国の出先機関の地方局を都道府県への移譲を行うことが以前から指摘され、名鉄岐阜地区の廃止問題の論考の過去エントリーでも指摘しましたが、実現してませんし、交通政策基本法で公共部門の責任が定義されたものの、あくまでも地方と事業者の話し合いで問題解決することが求められ、それを前提に国の予算が投入されるって立て付けでして、税源も財源も国が握っています。岐阜市は名鉄線の存続を望み競合する市営バスを廃止したりしている訳ですが、権限も財源もない中で成す術がなかった訳です。

例えばJR北海道の問題で「国が悪い、JRが悪い」と言って協議に応じない北海道庁ですが、使える税源があって許認可の権限が国から渡されていれば、もっと主体的に動けるんじゃないかと思いますし、自家用車によるライドシェアを導入した京丹後市のケースでも、当初特区申請がされましたが、道路運送事業法の特例を使って自家用自動車の有償運行事業として認可されました。これも地域の実情に詳しい京都府に許認可権限があれば、特区申請のようなメンドクサイことしなくても済んだ訳で、加計学園問題で噴出した国家戦略特区の諸問題を考えると、国家戦略特区なんて制度も直ちにやめて、地方への権限移譲こそ取り組むべきです。

京丹後市のケースのように、人口減少でタクシー配車ゼロという地域が現実に起きています。それに留まらずそもそも地方に就職先がないから若者の流出が止まらないし、銀行の不良債権処理を通じて再編されたメガバンクを尻目に温存された地方銀行が日銀の異次元緩和とマイナス金利政策の影響で収益悪化が止まらず、地元の融資先が衰退する中、越境営業で低利融資競争の地獄となっていて、最早地元の有料就職先とは言えない状況です。

地方銀行の優等生スルガ銀行も、元々米ウエルスファーゴを手本に個人向けリテールバンクとして業態転換を図り、企業融資で低利に泣く他行を尻目に高金利融資を実現した結果、他行の低利借り換え営業のターゲットになり、新たな収益事業としてアパートローンに進出したものの、やはり低利借り換え営業の餌食になり、追い込まれて融資書類捏造へ走った訳で、地方銀行の整理を先送りしたツケが来ています。フィンテックも未だ形にならず、袋小路の金融事情は地方の疲弊を助長します。スルガ銀行問題の真の原因はオーバーバンキングにある訳です。とはいえ地銀の統合は独禁法に抵触する押しレがあり、判断が難しいところですが、都道府県レベルで地域の実情を踏まえて判断できれば望ましいですね。

加えて最低賃金問題も地雷です。

最低賃金引き上げ、世界で論争(真相深層)  :日本経済新聞
元々英ブレア政権のマニフェストで採用され経済界の反対を押し切って実行されましたが、雇用が減るという批判は当たらず、寧ろ賃金上昇を好感して労働市場への参入が増えた結果、経済の活性化に寄与したことで、アメリカでもオバマ政権で目指され、州レベルでは実施されているところもチラホラあります。一方、韓国では文在寅政権で大幅アップされたものの、人件費増加で企業倒産や廃業が相次ぎ失敗と評価されています。

実証研究で分かれ目は賃金中央値の60%らしいということが分かってきました。イギリスは下回り韓国は上回った結果という訳です。日本はというと、現状が40%程度であり、最低賃金上昇の効果は間違いなく見込めます。ザック立憲民主党が提唱する1,300円あたりの水準と考えられます。但し問題もありまして、元々地方の賃金相場は概して低く、全国一律に上げると地域によっては60%の水準を超える可能性があります。別途賃金の地域差を縮小する策を講じないと、最低賃金上昇が地方の地雷になる恐れがあります。

この問題は結局地域が生み出す付加価値の増加しか解決策はありませんから、大胆な権限移譲で地方に自主的判断を促すことでしか出口は見えません。例えばインバウンドでも北海道ニセコ町のように雪質の良さでスキーリゾートとして世界に知られる存在になったように、一見マイナス要因でも、見方を変えればプラスに転じます。そんな地方の自主的な取り組みを促すことこそが本来の意味での地方の時代です。地雷は御免ですよね。

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Saturday, June 15, 2019

高齢者の資産取り崩しの意味するところ

何だかよくわからないニュースが多い今日この頃です。1つはイランを巡る緊迫ですが、安倍首相がイランを訪問し最高指導者ハメネイ氏にトランプ大統領の「会談しようぜ」のメッセージを伝えて断られてます。ガキの使いか!同じ日にホルムズ海峡で民間商船2隻が砲撃を受けるという事件が起きて、アメリカはイランの責任を言い、イランはそれを否定という構図ですが、謎の多い事件です。

安倍首相のイラン訪問を意識した可能性はあるとしても、意図が分からない。単純に混乱を演出するということか。アメリカはイラン革命防衛隊所属線による機雷回収の映像を公開してますが、被害船の1隻を保有する国華産業という日本の海運会社は、飛来物目撃の船員の証言を明らかにしていて矛盾します。結果的にトランプ大統領も「会談は時期尚早」と態度を変えたわけで、謎の攻撃主体が混乱拡大を意図したとすれば、それは成功したということになります。真相はどうあれ原油価格の上昇は避けられないところです。

香港では逃亡犯条例制定に反対する市民の大規模デモが起きて欧米諸国から人権配慮の意見が寄せられております。今のところ日本政府は態度を明らかにしておりませんが、多分スルーでしょう。天安門事件の時と同じ構図です。実は日本のこういうところを中国政府はよく見ています。というよりも、もっと有体に言えば参考にしているとさえ言えます。

天安門事件は中国政府にとっては未だにトラウマになっていてます。鄧小平の改革開放路線に舵を切って経済成長を目指したのは、勿論清吾日本の奇跡の復興を参考にしてますが、同時に経済成長は民主化をもたらすという欧米中心に見られる見方への対応も日本を参考にしているのです。経済成長と民主化の関係で言えば、韓国やインドネシアなど開発独裁で経済成長した後に民主化で独裁者を倒す事例が多数見られますが、当然中国もそれを分かっていて、実際天安門事件では胡耀邦総書記のように天安門に集った若者に共感を示して更迭された幹部もいます。

にも拘らず軍隊に当たる人民解放軍を投入して鎮圧したのは、経済成長しても長期政権が続く日本の自民党を見倣えば良いという判断ですね。60年安保闘争のデモ隊鎮圧を見倣った訳です。ただし1つ誤算があって、軍隊を動かしたことでハンガリー動乱やプラハの春でソ連軍が動いたことの連想で欧米が拒否感を示したことです。だから今回はそれを踏まえて人民解放軍の投入はしない。訳です。警察権力による鎮圧ならばセーフって感覚ですね。

余談ですが、97年総選挙での政権交代による民主党政権誕生は、中国政府にとっても誤算だったわけで、実際尖閣問題などで却って関係がぎくしゃくしました。野党時代には双方で交流があったから、寧ろ中国政府にとっては尖閣問題での民主党政権の筋論はショックを大きくしたとも言えます。逆に民主党政権が安定していれば、中国の民主化は進んだかも。同時に今のままなら中国はいずれ日本が躓いた問題に躓き行き詰ることになります。米中摩擦は将にそれです。

で、やっと本題。日本の行き詰まりを示すこんなニュース。

「老後資産2000万円」問題、私的年金の議論に冷や水  :日本経済新聞

金融審議会ワーキンググループによる報告書を巡って炎上してます。56pの報告書は人口減少と高齢化で金融事業の環境変化を論じていますが、まあツッコミどころ満載で、炎上すべくして炎上していると言えます。ワーキンググループに名を連ねる多数の識者たちにしても意に沿わない纏め方じゃないかと思いますが、結局事務局が描いたシナリオが先にあるのがこの手の審議会の常ですし、委員も名が売れて謝礼が出るから意に介さないかもしれませんが、これは恥だぞ。

問題になっているのは厚労省提供の年金生活の高齢者世帯の実態調査で、年金受給額プラス5万円の生活費というところから、65歳時点で95歳まで生きると仮定した場合に、資産取り崩しで充当される5万円を賄うためには2,000万円の資産形成が必要と結論付けて、iDeCoやNISAなどで若いうちから資産形成すべきと結論付けております。これまんま出来の悪い証券マンのセールストークそのものです。事務局の官僚の劣化甚だしいところです。

そもそも厚労省が示したデータは夫婦2人世帯のものですから、厚生年金や共済年金といった被用者年金加入世帯が対象で、高齢者全世帯ではないですし、既に資産形成に成功した世帯とそうでない世帯を含みますから、少数の資産残高の高い世帯ほど取り崩し額が大きく、平均値を押し上げている訳です。平均値で見るべきでないデータを平均値で丸めて単純計算したら2,000万円って話です。統計学の基礎の基礎ができてない。せいぜい言えるのは、資産残高の高い世帯ほど資産を取り崩すってことぐらいです。つまり老後も贅沢したきゃ金貯めろってことですね。これを承認した審議会メンバーも恥ずかしいけど、1度は公表を認めた麻生大臣も恥ずかしい。ま、恥を自覚する知性がないだけかもしれませんがwww。

ですから論旨としては公的年金の問題を取り上げた訳ではないんですが、公的年金の支給減額の見通しを随所で記述しており、減額があたかも既成事実のように扱われているというのはありますが、野党の追及も含めて寧ろそちらに力点が移っているようですが、主たる論点ではありません。

年金に関してはあくまでも保険ですから、損得を言えば長生きすればたくさん支給されるし、支給年齢前に不慮の死を遂げれば貰えないってことで、保険の原理で動いているので、本質的な問題は4.1%という割引率の高さです。割引率が高ければ少ない保険料で大きな給付が受けられますから、お得感を演出できますが、実現するために株式などのリスク資産への投資を余儀なくされる訳で、本来は元本保証のある国債投資に限定すべきです。この誤魔化しを是正するところからが、本来の年金改革です。

付け加えれば、公的年金制度の安定性は現役世代の実質所得に依存しますから、実質賃金が上昇していれば問題ないんですが、国がデータを公表できないほど悪化している
訳ですから、見通しが暗いのは間違いありませんが-_-;。

金融審議会の報告書ですから、そこへ触れないのは仕方ないとしても、悪質なのは公的年金の不安を煽ってiDeCoなどの私的年金へ誘導しようとする意図見え見えな点です。この辺が上記の「出来の悪い証券マンのセールストーク」たるゆえんです。つまり議論を取りまとめた事務局の官僚たちによる金融業界への利益誘導ってことですね。これこそが問題なんですが、またそのレベルが低すぎるというか、こんな証券マンに騙される人はそもそも投資には向きません。やめた方が良い。これがかつて優秀とされた日本の官僚なのか?

もう1つ言えば、マクロ経済的にはライフサイクル仮説ってのがありまして、若年時には将来に備えて貯蓄する一方、リタイア後はその貯蓄を取り崩すってのがありまして、日本の高度経済成長は若年人口の厚み故に国内貯蓄で企業が容易に投資資金を調達できたことで説明できますが、高齢化に伴う金融環境の変化を言うなら、高齢世帯の資産取り崩しは当然のことであると共に、若年世代の貯蓄性向を緩和するような方向性、つまり公的年金制度の安定性こそが重要なんで、その意味からもトンチンカンな報告書ってことですね。

つまりこのニュースが示すのは日本の政府統治の劣化ぶりを何重にも露わにしたってことです。付言しますがこのレポートを真に受けて消費を売政商とすれば、所謂合成の誤謬で経済はさらに冷え込みます。こんな日本をお手本にする中国を脅威論で警戒することの無意味さも指摘しておきます。本来は課題先進国として中国も見倣うような将来を見せることの方が大事です。

てな訳の分かんないニュースが溢れる中で、わかりやすいニュースを1つ。

横浜市営地下鉄で脱線 撤去忘れの装置に乗り上げか (写真=共同) :日本経済新聞
シーサイドラインに続いて横浜市の出来事ですが、保線車両を収納庫から出して本線レールに乗せる横取り装置と呼ばれるアダプターの撤去忘れってことで、他社でも同様の事故はそれなりに起きてますし、その結果撤去忘れ防止のための警報装置が装備されたりもしてますが、横浜市営地下鉄では装備されていなかったし、手順書への記載もなかったってことで、交通局は見直しを宣言してます。

鉄道の世界では起きた事故や重大インシデントに対しては時に過剰な対応を取る一方、起きていないけど可能性のある問題はスルーされやすいう傾向があります。今回が将にそれです。加えて事故現場に脱線車両を復線させる十分なスペースが不足していて復旧に手間取ったってこともあります。この辺も見直しが必要ですが、時間とコストがかかります。

おまけですが、復旧作業にはJR東日本と東急の支援があったそうで、こうした鉄道事業者同士の横の繋がりはそれなりにある訳ですが、事故の予防にも活かして欲しいところです。

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Saturday, June 08, 2019

自動運転にブレーキ? シーサイドラインの逆相事故

仙台日帰りで戻って地元スーパーで仙台みそ買った謎行動の先週末^_^;、謎な事故が起きました。

無人運行の横浜「シーサイドライン」逆走、14人けが (写真=共同) :日本経済新聞
終端駅の新杉田で折り返しの事故編成は、地上側からのATO信号で方向転換の指令を受け、方向転換を地上側に通知し、実際ヘッドライトやテールライトは正常に切り替わっていたのですが、発車してみれば逆走して25m走って車止めに激突して14人負傷という事故となりました。損傷度合いから20km/h程度で衝突したと見られており、非常ブレーキは作動しなかったと見られます。

代行バスの積み残しもあって3日後には社員の動力車運転免許所持者を動員して有人手動運転で運転再開したものの、平常の65%の本数に留まります。その後事故編成の動力系の制御回路に断線が見つかり、動力系だけ方向転換が出来ていなかった可能性があることがわかりました。難航が予想された原因究明ですが、とりあえずこれでかなり絞り込めますが、問題は非常ブレーキが作動しなかったことです。AGTではなく地下鉄ですが、こんな事例があります。

大阪地下鉄逆走 指導役、運転室に同乗 車掌の乗り違え気づかず  :日本経済新聞
大坂地下鉄谷町線大日駅で始発電車に運転士と車掌が乗り込み、普通にドア閉め安全確認合図の一連の後発車してみれば車止め側に走り出し、ATC信号で非常ブレーキがかかって停止したという不可解なミスです。しかも本来の進行方向を運転士と車掌が双方勘違いして逆側に乗務し、普通に発車させたというコントみたいな話です\_\;。加えて運転士の抜き打ち検査のために助役が本来の進行方向の乗務員室に添乗してたんですが、車掌を運転士と勘違いしつつ、ドア閉め合図するさまを漫然と見送り、走り始めて気付いたというおまけつき。間抜けすぎるwwwww。

無人自動であれ有人手動であれ、想定外の事態に対して非常ブレーキを作動させて停止させるという機械的バックアップがあればこそ安全が担保されるのであって、その部分に疑義があるシーサイドラインの有人手動での運転再開は、確率は低いものの、乗務員の勘違いで生じる異常事態のバックアップが働かない可能性があるわけで、当面慎重に対応するとしても、システムの大幅改修がない限り無人自動運転の再開はと言わざるを得ません。

思い当たるトラブルの原因としては、3月に一方の終端駅である金沢八景が仮駅から京急金沢八景駅隣接の新駅へ延伸したことでしょうか。金沢八景駅周辺の区画整理事業が遅々として進まず、16号線手前の複線の高架橋の1線を潰して仮設ホームを設置していたものが、区画整理の進捗と京急金沢八景駅の橋上駅舎化に伴い、当面単線で新駅へ延伸したものですが、この時に進路構成の連動関係を変更したときに何らかの瑕疵が生じた可能性はあります。

これやはり普通鉄道ですが、あの信楽高原鉄道事故では、信楽駅の場内信号機を停止(R)定位として、下り列車が接近して手前の地上子を通過することで列車を検知し注意(Y)信号に切り替わるという連動を、届け出なく変更して(Y)定位にした一方。信楽を信用していなかったJR西日本がやはり届け出も信楽側への通告も無しに亀山CTCセンターに信楽線内の方向優先テコを設置した結果、信号システムが誤作動したケースが思い出されます。加えて誤出発検知装置を過大評価して出発を強行した信楽側のヒューマンエラーが重なったものですが、システム改修時の僅かなバグが他の因子と偶然に重なって事故につながるケースはままあります。その辺も含めてクリアな事故原因究明が望まれます。

実は焦っているのがJR東日本なんですが、シーサイドラインに関しては車両メーカーのJTRECが東急車輛時代から関わっていて、事故車の2000系は開業2代目でステンレスボディや内装もE233系など新系列車によく似ています。信号システムはかかわりが薄いとはいえ、動力系制御回路の断線は車両側の欠陥が疑われます。加えて山手線の自動運転にも暗雲が漂います。

勿論山手線でシーサイドラインのような無人自動運転までは考えていないでしょうけど、添乗員付きは考えているフシがあります。というのも、運転士と車掌の職制の区分の廃止を打ち出しているからですが、動力車運転免許という国家資格取得が必要で運転士の養成はコストがかかりますし、専門職として高給優遇が必要になります。それを車掌レベルの保安要員で済ませられれば、労務コストを下げられるわけです。うがった見方ですがスットコドッコイな組合潰しはこの狙いもあるかも。

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Saturday, May 11, 2019

セコCOCOM

5月4日、令和を祝うように祝砲が上がった東アジア。ホリエモンロケットと北朝鮮の飛翔体。同じロケットでも政治が絡むと呼称が変わります。敢えてミサイルと呼ばないのは、アメリカも和平プロセスそのものは維持したいからです。対中国、対イランでガチ勝負だから北朝鮮どころじゃない訳です。ホリエモンロケットならぬキムエモンロケット^_^;。

そしてアメリカの突然の対中国制裁発動ショックが連休明けの株式市場を襲います。礼は要らんどころかCOCOMしちゃった訳です。対中強硬策は80年代のジャパンバッシングと酷似は昨年末のエントリーで指摘した通りですし、基本的な枠組みは昨年末と何も変わっておりませんが、年が明けて米FRBが利上げ停止を宣言したのが大きく異なります。昨年中から市場関係者のFRBの利上げ姿勢への批判は絶えず、その声に押されるようにトランプ大統領も圧力発言を繰り返しておりましたが、利下げ停止を好感して市場は持ち直しました。そうなると元々史上最低水準の失業率に加えて緩和的な金融環境でアメリカの国内景気は堅調に推移します。FRBの利上げ警戒感で対中強硬策を採りにくい状況が変わって、強硬策を打っても国内景気への反動は弱いという判断が働いた結果です。

貿易摩擦、痛みは中国に 安定物価が米政権強気支える: 日本経済新聞
いや機を見るに敏というか、基本ビジネスマンのトランプ大統領らしいとは言えます。ここで強硬に出てもコストは許容範囲ってことですね。ビジネスマンのコスト感覚というか、基本セコいんです^_^;。

という訳でかつての冷戦に対して新冷戦という見方もされてますが、アメリカが問題視するのは軍事力よりも技術力の脅威であり、その様相はかなり異なります。故にかつてのCOCOMでは軍事転用可能な輸出品の規制だったのが、通信やハイテク分野での封じ込めが意図されてます。例えばCOCOM未加入で永世中立国を宣言していたスウェーデンのアゼア社(後にスイスのブラウンボベリー社と統合してABBを構成)がCOCOM規制で動けない欧米勢を尻目にユーゴスラビアなど東欧諸国への鉄道車両輸出を重ねます。それでもAMTRAKメトロライナー用電気機関車を輸出するしれっとしたところがありました。永世中立国って便利です。

ところが5G通信を巡る技術では、米クァルコムが気を吐いているものの、中国頼みの本音もあり、通信機器を含むトータル技術では中国HUAWEIとノキアやエリクソンといった北欧勢が中心で、アップルが頼みとしていたインテルさえ蚊帳の外。ましてNECや富士通、韓国サムスンやLGも国内だけのローカルブランドに成り下がっています。それでも韓国は5G一番乗りを宣言し、後にアメリカの前倒しで逆転されますが、日本勢は声も出ません。で、同盟国と呼ぶには微妙な立ち位置の北欧勢を頼みとする訳で、まして韓国勢とも微妙な距離感で、ある意味アメリカの焦りはよくわかります。その分同盟国への圧力は厳しくなる訳です。

しかもイギリスやドイツはHUAWEIを排除しない姿勢で同盟国をまとめ切れていない中で、アメリカの本気を見せる必要に迫られていたということは言えます。てことで、この事態は想定しておくべきだったということが言えます。そして中国の出方次第では膠着状態になることが予想されます。となると成果を出したいトランプ大統領は日本をターゲットにしてくるでしょう。不思議の国ののトランプの兵隊の足音が^_^;。

おまけ。

二俣川―新宿760円 相鉄のJR直通線の運賃が認可  :日本経済新聞
COCOMエントリーで取り上げた相鉄JR直通運転の運賃認可のニュースです。記事では合算額のみの記述ですが、相鉄新線の西谷―羽沢横浜国大間の営業キロ2.1㎞でおそらくJRは鶴見―横浜羽沢間の営業キロ8.8㎞を適用し、相鉄新線に30円の加算運賃という構成ですね。横浜乗換の現行運賃よりやや割高ですが、列車本数が限られる中、乗客の転移が増えすぎても困るという微妙なところが垣間見えます。ハイテクを巡る米中のせめぎ合い同様複雑な構図です。

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