鉄道貨物

Sunday, May 17, 2026

AIの物語が終わるとき

近頃対立が目立ち共同声明がまとまらないG7サミットですが、18~19日の財務相・中央銀行総裁会議では久々にまとまりそうです。主要議題は「ミュトス問題」です*1。ミュトスとは米アンソロピックが開発したAIで、システムの脆弱性を素早く発見する能力が優れていることから、悪用されればシステムへの侵入やウイルス攻撃などに使われる可能性があり、特に金融システムが狙われる危険からアンソロピック自身がリリース先を絞った上で当局に申し出たものです。英語表記で Cloud Mythos でギリシャ語の神話、物語などの口述伝承を意味する名前です*2。

1民間企業が開発した製品で異例の対応ですが、金融システムの安全性が損なわれれば大混乱は確実な訳で、元々AI規制に前向きだった欧州に対して、自国に最先端企業を複数抱え世界をリードするアメリカはそんな欧州を批判していましたし、政府向けリリースに消極的なアンソロピックを政府調達から外したりしてましたが、そんなことを言ってられない事態と認識した訳です。尤も欧州もDeepSeekショック*3を契機に後発国にもチャンスがあると認識して規制を緩める動きを見せていますが。変わらないのがそういう認識すら持たない規制ユルユルの日本です*4。AI悪用のサイバー攻撃はGoogleも報告種を発表しています*5。ロシア、北朝鮮に渡ればシャレにならない事態です。

しかし一方で北京の米中首脳会談ではこんな動きも*6。NVIDEAのファンCEOが突如トランプ大統領に同行しました。目的は当然商談ですが、AI分野でアメリカを猛追する中国にNVIDEAのGPUを売るのは敵に塩か?一説によれば半導体製造でも猛追する中国に対して、最先端品開発で陳腐化した型落ち品を売ることで、中国の対米依存を敢えて誘導するという思惑があるとか。海軍能力がほぼ無かった中国に対して敢えて米軍が合同演習して力の差を見せつけると同時に軍事支出を誘導して経済負担を狙うアメリカの高等戦術ですが、結果裏目になっている現状ではあります。

米中がAI派遣で譲らないのは当然ながら軍事目的がある訳で、アメリカは分厚い金融市場で潤沢な資金を手当てできる環境と共に、政府や金融機関という金離れの良いユーザーがいることが優位性をもたらしている一方、中国式計画経済はそんなアメリカへのキャッチアップに政府が資金を提供するに留まらず、ユーザーに利用を促していて勢いを保つと共に、競争で勝ち残った企業に集約することで標準化を図ることでユーザーにもメリットが生まれるという高度な産業政策を進めています。こんなことできるのは中国の経済規模と人口と更新が進まない先進国より新しい生産設備があればこそですが。

逆にアメリカは技術革新の早さが天井感をもたらしてもいます。実際今のところ確実に利益を出しているのはNVIDEAぐらいで、オープンAIやアンソロピックなどの新興AI企業はNVIDEAの出資を得てAIデータセンターに投資してNVIDEAののGPUを買っている訳で、循環取引が疑われます。加えてGoogleやAmazonなどテック企業がAI企業に出資していて、増益の7割が保有株の評価益という実態もあります。日本のバブル期と似た構図です*7。そしてS&P500などの株式も、AIと金融以外の株式はあまり上げておらず、AIへの警戒感から上がれば利益確定売りが出て下がるということを繰り返してます。

株の上値が重い理由は債券市場にあります。米30年債が売られて利回り5.1%と市場では天井をつけたと認識されて株が売られた流れです*8。債券の評価損を株の益出しでカバーする動きですが、同様の動きは東証市場にも見られます。債券売りは関税裁判で米政府が再度敗訴して財政悪化が止まらないことと*9、ホルムズ海峡封鎖に伴うインフレでFRBが利下げどころか利上げすら視野に入る状況になったことで、金利が押し上げられている状況です。FRBウォーシュ新議長いきなりの受難です*10。とはいえ生産設備の老朽化は如何ともし難く、金融とITの癒着マネーゲームをマクロ調整だけで乗り切ろうとする矛盾が付きまといます。

というわけで、AIを巡って紡ぎ出される物語(Mythos)は国家が絡むから簡単には弾けないだけで、人々を幸福に導く道筋も見えないものです。インフレ防止法(IRA)でバイデン政権が目指した高速鉄道などのインフラ整備の方がマシだった可能性はあります。てことで日本も他人事じゃないんですが、大人の事情で財務省からダメ出しされた北海道新幹線*11にも絡む話ですが、整備新幹線の貸付料を巡る国交省とJRの対立が起きています*12。30年とされた貸付期間終了後国交省は30年延長案を提示したものですが、JR東日本は特に猛反対しています。

30年経過すれば経年劣化で設備の更新もしなきゃならない。自社保有ならば減価償却資金を充てれば良いが国(鉄道・運輸機構)保有で減価償却はないし、特に東北新幹線延伸部のように貨物調整金まで負担してほぼ儲け無しでは鼻血も出ない訳で、実際に減額を示唆する文書もあるということで揉めてます*13。整備新幹線も人手不足とインフレで工事費用が嵩み、事業が進まない中で国交省は財源確保を狙ったんでしょうけど、そうするとJR東日本が予定している盛岡以北の高速化の費用が出ない。そしてJR貨物の経営改善を待って行われる筈の線路使用料の見直しも未だ実現していない中で、貨物調整金も存続せざるを得ないということになります。

勿論運賃や料金の値上げで対応することは考えられますが、動力費その他の値上がりもあって劇的な増収に繋がる訳でもないということで、JR東日本は引けないということですね。尤も北海道新幹線ですらB/C比の悪化で黄信号なのに、今後も新規着工できる区間があるかといえば難しいです。整備新幹線は票になるという政治家の我田引鉄がありますが、燃油代上昇で苦しい国内航空のコードシェアを認めるなどの新たな制度的枠組みを考えるべきでしょう。整備新幹線の物語も終わりに近づいています。長くなりましたのでここまでにします。

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Saturday, May 09, 2026

部活バスの闇

ゴールデンウィーク最終日の6日、磐越道でマイクロバスが事故を起こしました*1。ガードレールにぶつかってバス前部から後部へ貫通しているさまは2012年の関越道ツアーバス事故を思い出させます*2。当時のエントリーではツアーバスによる乗合類似行為問題として取り上げました。当時からレンタカーによるドラーバー付バスレンタルが貸切類似行為ながら、借り手の廉価志向から黙認状態だったこともあり、そうしたレンタカー会社に貸切バス免許を交付して正規の貸切バス事業者にすることで競争条件を整える規制改革が実施されました。その結果貸切バス事業者が増えて競争激化の結果、旅行会社がツアー募集の形で安値で仕入れた貸切バスを用いて催行するツアーバスが都市間運行で乗合バスである高速バスと競合することになり、両者の競争条件の違いから廉価なツアーバスへの批判もあって、高速乗合バスへ寄せる形の規制改革が進められていた時期でもあります。そして関越道でツアーバスが事故を起こしたことから議論が進み、所謂新免事業者による高速バス参入へと繋がりました。

今回の事故は新潟県のバス事業者である蒲原鉄道がレンタカーを手配したもので、学校側から予算を抑えたいとの要望があり、同社名義でレンタカーを手配したものです*3。レンタカーによる貸切類似行為という所謂白バス行為が疑われる案件ですが、幾つか疑問もあります。蒲原鉄道はオールド鉄ちゃんにはおなじみの五泉~村松~加茂を結ぶローカル私鉄が鉄道廃止後バス専業となった会社ですが、ご多分に漏れずのドラーバー不足もあり、自社貸切バスを値引きすることも難しい中で、レンタカー手配を選んだのでしょう。但しレンタカー会社には当該の営業担当者の免許証しか提示しておらず、手配したドライバーは知り合いの紹介で面識はなかったなど杜撰です。しかしレンタカー会社からすればバス事業者の手配だから、本来厳しくチェックされる筈のドライバーの免許証確認をスルーしたかもしれません。

実は部活関連のバス事故は結構起きています。21年悪神奈川県山北町でトレーラーに追突とか、鹿児島県では23年に横転事故を起こしたりということもあります。そして学校の部活では顧問教諭が部活のために大型免許を取得してハンドルを握ることもままあり、その場合はレンタカー利用は出費を抑えられるものの顧問教諭の責任は重くなります。また文科相の部活ガイドラインでも輸送中の安全に関しては記載がなく、この面からもグレーゾーンになっています。背景には文教予算の縮減による学校経営の困難があるかもしれません。

今回は北越高校軟式テニス部の遠征ということですが、名門ということで大会出場や対外試合の機会も多いでしょうから、果たして今回だけの特殊事情なのかもわかりません。少なくとも正規のバス事業者の貸切運賃を負担することは難しかったんじゃないかと思います。そうすると安価なレンタカーで済ませることが常態化していた可能性もあります。そしてバス事業者と学校との間で説明が食い違っていることも、双方の責任回避の姿勢が垣間見えます*4。書面も交わさず事業者は手数料も取らず、学校側も引率教員を添乗させていなかったなど双方に落ち度がありますし、ドライバーは二種免許保持者ではなく事故歴もあったなどいろいろ問題だらけですが、事故が起きて発覚しただけで学校の部活では常態化している可能性はあります。

似たような話として辺野古の転覆事故で修学旅行生に犠牲者が出た事故がありました。こちらはさらにややこしく、部活ではなく修学旅行中の平和教育の一環という学校側の説明があり、また事故船のは元々辺野古の抗議活動船ですが、NPO所有で有償運行ではないということで、その面でも法的にはグレーゾーンです。2022年悪知床半島沖観光船沈没事故を受けて制度化された船舶事業登録は既存事業者の3割止まり。有償運航を前提とした制度なのでそのまま適用は難しいところです。とはいえ死者が出ている以上このままとはいきません。そしてこちらは乗船は教員とNPOの個人的関係から出ているもので謝礼として5,000円支払ったという報道もありますが、儀礼的意味合いはあっても繰り返し集客して謝礼を取っていた訳でもありません。勿論だから安全をないがしろにして良い訳ではありませんし、今回の事故で同様の平和学習は禁止事項になってもやむを得ませんが、政治性からか修学旅行を手配した東武トラベルは無関係なのに一部で叩かれたりしてます。

てことで当事者の蒲原鉄道ですが、明治期の私設鉄道の北越鉄道(→信越本線)と岩越鉄道(→磐越西線)の双方から外れた蒲原地区の中心地村松に鉄道をということで難産の末1922年に免許取得し翌23年に建設着手され同年に磐越西線五泉~村松間を新潟県初の電気鉄道として開業したものの、昭和恐慌真っただ中で第二期線は足踏みの末村松~加茂間が1930年に開業したものの、元々の需要が少なく経営は苦しい状態が続きました。テコ入れ策として直営の冬鳥越スキー場を開設して誘客に努めたもののモータリゼーションで誘客には繋がらず、また貨物輸送も秋のコメ収穫期に偏った需要で経営の支えにならず、1984年には国鉄加茂駅の貨物取扱廃止で貨物営業終了。1985年には村松~加茂間を廃止し一時的には営業的には改善したものの、僅か4.2㎞の営業区間では自家用車やミニバイクへの転移が止まらず、1999年に廃止されバス専業となりました。しかし営業エリアは狭く集客の核も乏しく、昨今のドライバー不足も重荷です。しかしまあ地域密着を地で行くような会社ではあります。故にレンタカー手配も法令違反を承知の上でクライアントの要求に応えたという意味では、善意の対応だった可能性はありそうです。勿論だからといって法令違反が許される訳ではありませんが。

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Sunday, April 12, 2026

前門の虎mp後門のsen狼獅子身中のmushi

ゾンビの性*1のナフサ不足の影響は既にサプライチェーンに表れてます。まず答え合わせ*2。87年に67%まで低下した中東依存度はその後増えますが、官民の協力で中国やインドネシアからの輸入を増やしたものの、両国の経済成長で国内需要にシフトして輸出が減り、価格上昇し相対的に安価な中東産への依存度が上がります。加えて自動車の燃費改善でガソリン需要の低下があって輸入自体は減りますが、その結果石油元売りの合従連衡と製油所の統廃合でナフサの国内調達は4割に留まり、不足するナフサなどは中東やアジアからの輸入で補完して今に至ります。輸入ナフサも大半は中東由来なのでホルムズ海峡封鎖の影響を受けます。

石油由来の溶剤などが既に出荷制限がかかり始めています。影響は多岐に亘り、塗装、包装、洗剤その他に影響が出始めています。ホルムズ海峡封鎖が続く限り供給難は避けられず、そうなると取り合いで高く売れる分野、つまり価格転嫁が容易なものに流れて、逆に価格転嫁が難しいものほど不足して限界費用が高くなるということになります。既に建材の値上がりがあり*3、住宅メーカーが悲鳴を上げてますが、出荷側は先行き不透明だから値上げして出荷調整で需要抑制を図っている訳で、今後洗剤などの日用品の生産が止まる可能性があります。また医療関連は保健医療で事実上の公定価格故に市場で干される可能性が高いと言えます。それに留まらず塗料系の供給難から自動車生産が止まる可能性すらあります。なのに政府の危機感は希薄です*4。

てことでトランプにおべっか遣って自衛隊派遣などの無理難題を回避しても*5、台湾有事発言以来の中国との関係悪化は続き*6、前門の虎後門の狼ばりの泣きっ面に蜂。しかも週刊誌ネタですが自衛隊派遣に乗り気だった高市首相を今井内閣参与が止めたとか*7。与党議員や官僚から「人の話を聞かない」「答弁書も書き換える」「一人で決めたがる」という声が聞こえることのリアルです。こんな獅子身中の虫(無視?)がいたらまともな対応は期待できません。しかしJR貨物による石油輸送という民間対応は油売りに翻弄される汗っかきの在り方でもあります。

所謂2024年問題による物流ドライバー不足問題ですが、予想ほどの混乱は起きなかったという分析があります*8。要因は大きく2つ。1つはコロナ明けの需要減。外出自粛でオンライン取引が増えたものの自粛解除で鎮静化したこと。2つ目は出荷企業を中心に共同配送や待機時間短縮などの最適化が模索されたことですが、一方で荷受け企業側の対応は不十分で未だに待機時間を減らせていません。逆に言えばこの部分の最適化が進めば改善の可能性はあるものの、ドライバーの年齢構成が50代中心で若年層の参入が少ないことから、先行きは最大25%の輸送力不足が見込まれています。そして物流企業の対応として長時間勤務になりやすい長距離便からの撤退が進んでいることも寄与しています。これ長距離ほどコスト面で有利になるモーダルシフトによる鉄道貨物や内航海運へのシフトを政策誘導する余地があるということでもあります。

にも拘らずこういったニュースが流れます*9。南海電気鉄道伝統の四国連絡輸送を担う南海フェリーの撤退です。特急四国号→サザンとの継送と自動車航送で長らく続いたルートですが、本四連絡橋開通もあり、コロナ禍で利用低迷の結果欠損を出すようになり債務超過状態に加えて船舶の老朽化で新造船への置換えもコスト面で無理ということで撤退が決まったものです。これ国内造船業の高コスト故の問題でもあり、造船業からの大手の撤退で中国や韓国に敵わない現実もあります。アメリカではすでに造船業は枯れてしまいましたが、日本も同じ轍を踏んでいる訳です。造船は軍民デュアルユースの重要なピースの筈ですが、現実は厳しいものがあります。

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Sunday, March 22, 2026

ネオ油売りに媚びる汗っかき

ゾンビ*1の次は汗っかきと油売り*2のニューバージョンです。まずは答え合わせ*3。ガソリンの店頭価格を下げるために元売りへ19日から30円の補助金を復活させました。結果は店頭価格で20円程度下げてますが、またしてもさや抜きされてます。つまりゾンビを生かすだけ。しかしゾンビの弊害はそれに留まりません。日米首脳会談で日本政府が打診したアラスカ原油増産による輸入拡大を巡る問題です*4。アラスカ産石油の増産はアメリカの歴代政権で検討が続けられてきましたが、積出港へ至るパイプライン整備がコスト面でネックとなっており、特にパイプライン建設には根強い反対論があって簡単ではありません。また大型タンカーが接岸できる港湾もなくタンカー輸送の非効率を克服するには港湾整備も必要で、コスト面の課題が山積しています。加えて国内製油所の統廃合で中東産重質油に特化している中で、アラスカ産中質油に対応させるチューニングにもコストがかかります。それ以前にアメリカ政府が戦略物資としている原油の輸出拡大に応じるかどうかもわかりません。

一つ可能性がある突破口としては、ウクライナ問題でロシア上空を飛べない日欧間の航空便で、今回のイラン紛争で中継ハブとして機能していたドバイ国際空港が使えない状況で、かつての北回りルートのハブだったアラスカのアンカレッジのハブ復活が可能ならば、航空燃料の給油需要を賄うには使える可能性はあります。つまり航空燃料の給油拠点をドバイからアンカレッジに移すということですが、これも大掛かりな設備投資を伴います。その費用を日本が負担するかどうかという話にでもならないと前に進まないんじゃないかと。中国系エアラインは現状でもロシア上空を飛んでますから、ANAやJALへの支援という形になりますが、経産省と国交省という日本の縦割り官僚機構の下ではよほど政治家がリードしないと実現はできないでしょう。その意味で無能な働き者と言える高市首相*4には荷が重いか。台湾有事発言*5でアメリカからも懸念された*6もののとりあえず無難に首脳会談をこなしました*7。実は首脳会談の2時間前に日欧でホルムズ海峡を巡る合意が成立していたので、日本への圧が下がった可能性はあります*8。官僚の事前根回しに助けられたとは言えます。シェール革命で産油国となったアメリカには逆らわず媚を売る悪い汗っかき路線です。

台湾有事関連ではアメリカのシンクタンクが面白いレポートを出しています*9。アメリカが求める台湾の防衛費増が足踏みしているのは親中的な国民党の反対のせいという俗説を否定するもので、財源の壁が原因としています。そもそも財政規模が対GDP比14%程度の台湾政府にとって防衛費5%は財政資金の4割を突っ込む話ですから無理があります。財政拡大には増税か行政サービスの縮小かということになり実現可能性はほぼゼロですし、未承認国家故にIMF非加盟で財政赤字拡大は重大なリスクとなります。仮に財政破綻となれば北京政府が支援に乗り出して以下略、ということになる訳です。ホルムズ海峡封鎖でも中国はこんなこと言ってます*10。中国船は海峡封鎖の影響を受けていないことと共に、台湾の窮地は中国に非軍事的な介入の口実を与えることになり、その場合は有事ではないからアメリカは手を出せないことになります。かつて大戦後の国共内戦でもソビエトの支援を受けていた共産党に対して、日中戦争の戦費調達で財政を悪化させていた国民党政府は為す術なく敗北した歴史もレポートでは触れており、健全財政はマストであるということです。これ財政悪化が止まらない日本にとっても耳が痛い話ですが。

そして日本は首脳会談のお土産として対米直接投資第2段を打ち出しました*11。第1弾と合わせて17兆円超と他国に対して突出したもので、新型原発の小型モジュール炉(SMR)やデータセンター併設のガス火力発電などで、エネルギー関連です。SMRに関してはロシア北極圏で商業発電が始まっていますが、日米共に未知の技術で、ネックは燃料ウランは軽水炉の低濃縮ウランではなく高濃縮ウランが必要で、現状商業生産できているのはロシアだけで、安全面も加味した技術開発に難問が残ります。データセンター併設のガス火力発電はAIで上振れする電力需要を緩和する目的で系統電力に依存しない電源とすることで、老朽化したアメリカの系統電力網の負荷を下げて電力料金の値上げを抑える目的です。何れも受益者はアメリカ国民で、投資資金を出す日本のメリットは限られますし、採算性にも疑問があります。これは第1弾でも同様ですが。そして投資資金が国内に落ちないことで「強い経済」が実現できると考えているのでしょうか?

そもそも成長17分野が総花的で絞り込みが足りないとは言われてますが、安保や国土強靭化に偏っていて、AIその他新産業創出に繋がり中長期で供給力を高めるものが弱い点も指摘されてます*12。悪い汗っかき路線です。そして対米投資を断れない理由としてはホンダの赤字決算に象徴される日本の製造業の最後の砦と言える自動車産業の窮状です*13。ホンダと日産の経営統合*14は結果不調に終わりましたが、日本の自動車メーカーの再編に進めなかったのは残念なところ。ホンダのEV戦略撤回はトランプ政権による補助金停止のトバッチリとは言えますが、単独で闘えると過信していた経営判断のミスでもあります。今や生き残れるのはトヨタ1社とさえ言われる状況です。4社あった商用車メーカーは2陣営に整理されて既に全て外資の傘下にあり、乗用車メーカーも中国を含むアジアと欧州で中国メーカーの攻勢に晒されて市場を失い、国内は軽しか売れないしで、今や北米市場が生命線という状況でアメリカの無茶振りを断れないということです。これ電機メーカーが陥ったガラパゴス化の構図と同じです。

中国のBYDは既に世界を席巻する勢いですし、乗用車のみならず大型トラックやバスまでラインナップしていて、特にEVバスは日本でも多数採用されています。国内メーカーではいすゞがエルガEVとして市販を開始しましたが、大量生産には至らないし定員が少なく使いにくく、とてもライバルと言える水準にはありません。三菱ふそうが鴻海と合弁でバス製造に乗り出すとしてますが、市場投入はまだ先です。そしてなんちゃって国産バスとして大阪万博で売り込んだEVモーターズジャパン(EVMJ)のトンデモ顛末もあります*15。公費を食い物にした問題ですがここでは踏み込みません。

とまあネガティブな話が続きましたが、最後に鉄ネタ。JR貨物が石油輸送に臨時列車を走らせました*16。東日本大震災でも輸送路を寸断された被災地への石油輸送で貨物列車の設定のない磐越西線に臨時貨物列車を走らせたことがありますが*17、その時より難易度は低いもののこうした利用法があることこそ国土強靭化の実践でもあります。新しいインフラを作るのではなく、既存インフラを柔軟に運用することで機能を高めていく。人口減少が続く日本だからこそ、こうしたところにこそ成長戦略の重点が見出せるのではないかということは言えます。

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Tuesday, December 30, 2025

雪道と自動運転

今年はいろいろあって取りこぼした話題が多数ありますが、全てではありませんが年内に片づけたいものを取り上げます。まずは自BANGのオウンゴール*1の後日談*2。記事ではアメリカの台湾への武器売却も一因としてますが、明らかに高市失言に端を発する戦狼外交*3の一環です。一番迷惑しているのは台湾ですが。今回は自衛隊はスクランブルをかけませんでした。しかしそうなると前回のスクランブルはどういうプロセスで行われたかに疑問が残ります。軍事演習の情報収集ならば非武装の偵察機で行うのが国際的な慣例ですし。

で、本題ですが、先週関越道で重大事故が起こりました*4。続報で単独事故で中央分離帯に乗り上げたトラックに別のトラックが追突して炎上し、後続車がそれを避けようとして多重衝突に至り、完全に車線を塞いだという流れのようです。復旧を急ぐために細かな現場検証はスキップされたようで詳細は尚不明ですが、当時積雪による路面凍結と吹雪で50km/h規制がかかっていたようですが、SNSで停止したトラックに猛スピードで突っ込むトラックの動画が流れたりしていて、おそらく単独事故のトラックを後続のトラックが避けきれずに追突したと見られます。規制が守られていなかった疑いがある訳です。

自重の重いトラックは乗用車に比べて滑りにくく雪道でもあまりスローダウンせずに走ることは可能ですが、滑った時のダメージが大きいだけに、本来はスローダウンした流れに合わせて走るべきところを無理をしたと推察されます。ドライバー不足と年末の繁忙期で焦りがあった可能性があります。加えて後続車のうちにはレベル2以上の自動運転車も含まれていたと思いますが、事故時の振舞いがどうだったかが気になります。

滑って転んで壺ッター大草原*5でも取り上げましたが、雪道や凍結路ではタイヤのトラクションが極端に低下しますので、それに合わせて急加速急ハンドル急ブレーキはご法度。フェザータッチのアクセルワークとシフトダウンとダブルクラッチによるエンジンブレーキ活用とソフトなポンピングブレーキを前提にスローダウンして走らせることが求められますが、現時点での自動運転車に雪道モードは実装されているとは考えられませんから、後続車が自動運転オンで走らせていれば事故回避はほぼ不可能。そうでなくても雪に不慣れなドライバーも多数いるでしょうから、たった1台のトラックの単独事故が後続車多数を巻き込む今回のような事故は再現性があることを意味します。雪が降ったら乗らないのが一番の回避策です。

とはいえ物流を担うトラックを減らすのは簡単ではありませんから、政府も新東名や新名神でのトラックの自動運転実装を目指してますが、雪道に対応できなければ大事故のリスクがあるし、それを防ぐにはドライバー手配か運休ということになります。安定輸送を考えれば政策的なモーダルシフトでトラック自体を減らすことを考えるべきでしょう。その意味で鉄道貨物の役割は重大なんですが、熊くまクマ*6のJR貨物のクマ被害という伏兵もあって難しいところですが、クマを含む野生動物の線路進入を防ぐ対策が求められます。しかし雪道の事故を考えれば道路予算で費用負担しても良いのではないでしょうか。

例えば物流を止めるな*7で取り上げた北海道新幹線の並行在来線問題で、国交省は青函トンネルの貨物ルート存続を前提に長万部以南の並行在来線の維持を模索してますが、並行在来線三セクの営業赤字が30億円規模で沿線自治体がしり込みする中で、北海道庁はダンマリを決め込んでいます。ならば国が線路を保有して上下分離する提案があっても良いと思いますが、あくまでも地域の問題としてそこまでは踏み込まずにいます。道庁の姿勢に問題はありますが、鉄道貨物の分担率の高い北海道対本州の輸送インフラとして国が面倒を見る余地はあります。おそらく他の並行在来線三セクとの扱いの違いを言われたくないのでしょうけど、逆に敦賀から先のルートで揉めている北陸新幹線でも湖西線の並行在来線切り離しはルートに関わらず不可避でしょうから、重要な物流インフラとして国が関与する判断はあり得ます。そしてこれらは民生インフラとして国民生活を支えるものでもあります。

まあ高市政権では新安保3文書で装備品輸出拡大を成長戦略というたわごとを言ってますが*8、ぶっちゃけ民生よりも軍事、バターより大砲と言っている訳ですが、工場の海外移転と人口減少で国内の供給能力が低下してインフレになっている中で、防衛装備品を輸出して稼ごうって話です。円安で装備品価格が上がっていることから輸入代替の産業政策で量産効果による価格競争力向上も狙っている訳ですが、既に枯れて縮小している国内工業生産力を軍事に割り当てれば民生需要を満たす輸入が増えて輸入インフレで国民生活を困窮化させます。ナチスの軍事ケインズ主義が失敗した歴史の教訓を見ていませんね。身近なところでは北朝鮮の先軍政治で国民が窮乏しています。対して中国は経済成長に比例して装備強化されていて、日本の高度経済成長期の防衛費と同じ展開です。決定的な差がある訳ですね。

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Sunday, December 21, 2025

熊くまクマ

鹿*1じゃなかった今年の漢字*2。クマ被害とパンダ返還が理由という何とも評価しずらい理由の並びですが、鹿のその後を先に*3。オフレコ報道に対する批判もありますが、内容次第で報道すべきとしたメディアの判断に問題はなく、寧ろNPT体制を理解できていない官邸スタッフがいることが問題でアメリカからもクギを刺されてます*4。

で本題ですが、クマ関連の過去エントリーは2件あります。1つは奈良県上北山村の東の川簡易郵便局*5。故人のレールウエイライター氏が広めた旅行貯金というのがありまして、郵便貯金通帳に旅行先で入金して局名の入ったスタンプを捺してもらうというもので、ダム建設関連で移転後残った8世帯の為の簡易郵便局が、当該世帯も移転して無人集落となった後も存続し、クマやイノシシの出没するところで平日5日間の交番勤務でイノチガケで維持されていたというもの。流石に2005年4月1日に廃止されました。

上北山村はかつて林業が支えでしたが、林業の衰退で観光業が主要産業となっていて、無人地帯の簡易局も簡単に廃止できなかった事情はあるにせよ、過疎地の過酷さを示します。そんな上北山村のアクセスはほぼ国道169号線に限られ、かつては奈良交通熊野線が担っていた公共交通は、今は大淀町・吉野町・川上村・上北山村・下北山村の5町村を結ぶ南部地域連携コミュニティバス(R169ゆうゆうバス)が奈良交通が受託して福神駅(近鉄吉野線:大淀町)~下桑原(下北山村)間を1日1往復でほぼ日帰り不可能と観光立地も劣悪です。大都市圏でも廃止減便が続くバスの過疎地の過酷な現実です。

そんな紀伊半島は面積9,900㎞^2でほとんどが森林ですが、林業が盛んだったことからスギやヒノキなど針葉樹の人工林が多く、クマの生息に適したコナラなどの広葉樹林は僅かです。故にツキノワグマは絶滅危惧種として保護されていて400頭を下回らないことが基準とされていますが、推定個体数が増えて管理にシフトすることが決まりました*5。紀伊半島全域で推定個体数467頭ということで和歌山県と奈良県で保護政策を見直します。上北山村は面積276.22km^2に2025年11月1日現在推定人口376人という過疎地ですが、クマの個体数密度はさらに低い訳で、そもそも遭遇機会は低いものの、被害の酷さは尋常ではありません。童謡の森のくまさんは「お嬢さんお逃げなさい」と促して生息域の外へ誘導する優しさがありますが、現実の猛獣とはエリア分けが必要です。

クマから見れば人間が勝手に山に入って食料の乏しい針葉樹の人工林で林業を営んだ結果、生息域が狭められたということでもありますが、紀伊半島以外でも主に近世の新田開発で平地の少ない日本では森林との境界域の棚田などが開墾され、生産性の低さを補うために山に入り、燃料の薪や肥料の落ち葉、キノコや山菜の採取などが行われて所謂里山を形成することで、クマの生息域は圧迫される一方、ヒトとクマの遭遇もあり、自衛の意味もあって狩猟も行われるようになります。クマの狩猟は鉄砲伝来以降の話ですが、それがクマのヒトへの警戒心をもたらして緩衝地帯を形成する訳です。それが過疎化で耕作放棄地が増えた結果、棚田は樹木が生えて森になり、ヒトも入らないから結果的に生息域を拡大している訳です。故に個体数密度が低く繁殖力の弱いクマでさえ個体数が増える訳です。ヒトとクマの共進化の歴史です。しかも気候変動による気温上昇で冬眠しないクマが現れ、食料が手に入る都市部へ下りる機会も増えます*6。

岩手県盛岡市のホームセンターDCM盛南店ではクマ対策マニュアルがあって、店舗スタッフがそれに従った結果ヒトの被害はありませんでした。そして過去エントリーの2件目でそんなマニュアルがある新幹線駅を取り上げました*7。長野新幹線として開業した安中榛名駅は当時人里離れた山の中でクマ出没に悩まされ、駅員と乗客の安全を図るためのマニュアルが用意され、駅員は指令に通知して列車通過扱いにして駅を閉鎖し、構内のヒトを守るというものでした。クマの生息域に新幹線駅作っちゃったってことですが、そんな立地でも新幹線通勤を想定した宅地造成をして売り出したものの売れず、2区画合筆して農園付き別荘としてやっと売れたという黒歴史があり、結果的にクマの生息域を侵食しました。

紀伊半島など西日本では針葉樹の人工林が多く、元々個体数が少ない上に紀伊半島のように絶滅危惧種として個体数の把握が行われていた一方、東日本はコナラなどの広葉樹林が多く生態系の多様性が維持されていたこともあり、クマの個体数把握は行われていません。故に生息域の拡大で都市部にも出現するようになった訳です。ヒトとクマの共進化も東日本では異なった展開です。故にハンターは趣味で猟銃免許を取得した一般人でクマ相手だと反撃のリスクもあり、猟友会頼みの対策では追い付かなくなっているという風に事情が異なります。秋田や岩手のクマ被害はこうして起きている訳で、地域に応じた対策が必要です。失われた過疎地の里山の復活は難しいですが、例えば境界域の樹木を伐採してソーラーパネルを設置するのも一法です。さらにその電源で地場ビジネスを起こせればヒトが住む緩衝地帯になり得ます*8。ちなみに秋田新幹線こまちもクマ原因の輸送障害が複数回起きています*9。

ということ北海道に話を移すと、こちらにはより大型のヒグマが生息していて生態系も異なりますし、また被害も多岐に亘ります。そんな中で鉄道被害も深刻です*10。シカとの接触と異なり、クマの場合外へ出て排除するのは危険なので、指令を通じて救援が来るまで待機せざるを得ないということで、長時間の運休を余儀なくされます。鉄道貨物の依存度が高い北海道故に深刻です。地域によってクマ対策も一律にはいかない複雑な問題ってことです。政府も外交で揉めてる場合じゃないぞ!

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Saturday, March 22, 2025

答え合わせあれこれ part2

答え合わせあれこれの続編です。

関税がアメリカの農家直撃、綿花4年ぶり安値 トランプ氏「我慢を」 - 日本経済新聞
カナダ次期首相カーニー氏 トランプ氏に挑む「危機の男」 - 日本経済新聞
トランプ関税を巡る対決姿勢を中国とカナダが見せていることですが、トランプ大統領が単純に対米黒字の多い国を標的にした結果、敵対国のみならず同盟国も敵に回しました。そしてともに対決姿勢です。元々制裁関税が課されている中国の場合は追加関税なのでより負担が大きいし、問答無用で適用されるのに対して、同盟国のカナダには猶予期間を与えて交渉余地を残してはいますが、相応の見返りを求めてきます。それに対するカナダ政府の対応は英イングランド銀行総裁を務めた実務家のカーニー氏を首相に指名して報復関税も辞さずの姿勢を見せています。

EUと日本はそこまでの姿勢は見せていませんが、EUの場合はウクライナ問題が絡みますし、中国の輸出攻勢で域内産業が窮地にある点はアメリカと同じということもあり曖昧な対応ですが、バイデン時代の非課税枠を持ち出して例外扱いを狙う日本の姿勢は大甘です。とはいえ中国の米農最物報復関税では米農家が損失を受けると反発し、自動車や鉄鋼アルミの一律関税はテスラを含む米自動車メーカーも損失を被りますが、トランプ大統領は意に介さずです。

堅調米景気、関税で暗雲 トランプ氏「過渡期」発言波紋 - 日本経済新聞
トランプ関税で不利益を被るのは過度期の一時的な現象で我慢しろということですが、これで株価が下がったことも確かです。しかも従来米株価と連動していた欧州や日本の株価が逆に上がったりしています。明らかに黒字国から還流していたドル資金の動きが変化しています。またDeepSeekショックの後、低コストの蒸留方式の生成AIも先端半導体との組み合わせでパフォーマンスを高められるなら米国優位は揺るがないというロジックで買い戻されたエヌビディアなどの米テック株もここへきて変調、更にDOGEトップでやりたい放題のマスク氏への反発からテスラ車のボイコットによる販売不振や販売店への放火事件でテスラ株ダダ下がり。その結果がこのニュース。
テスラのマスク氏、放火や不買運動は「理不尽で異常」 - 日本経済新聞
放火などのテロ行為は問題ですが、それだけ恨みを買っていた結果です。しかし発言の趣旨は株を持っている従業員や投資家に向けた「株を売るな」という謂わば口先介入。part1 の「トランププット」が図らずも実現した形です。同時に米経済を痛めて何がやりたいのかという疑問も湧きます。まるでアリババの金融部門のアントの上場停止を命じ、ゼロコロナ政策で国内経済を困窮させた中国習近平政権と同じです。違いがあるとすれば中国は国有企業優先で民間企業を圧迫する一方、今のアメリカは民間の巨大企業が政府を乗っ取った形ですが、その結果民間経済を強権で圧迫しているのは同じです。世界を荒野に変えてそれでも俺らがチャンピオンと威張るつもりでしょうか。
北海道新幹線延伸遅れ JR北海道へ膨らむ政府支援、自立遠く - 日本経済新聞
最後に国内鉄ネタですが、JR北海道が掲げていた2031年度の単年度黒字転換の再建計画が北海道新幹線の工事遅れで狂いが生じています。在来線の存続困難路線と新幹線の並行在来線切り離しで身軽になって出直す筈が、並行在来線の切り離しが遅れる訳で、それを前提とした車両置き換え計画が見直しを余儀なくされますから、事実上仕切り直しを迫られますし、それを前提とした国の支援策も狂います。金利上昇で政府財政も厳しくなる一方、経営安定基金の運用益は増えることが期待できますが、それでどうにかなる問題でもありません。課題の並行在来線貨物問題も解決先送りは可能になりますが、人口減少が続く中で現状維持すら困難な中での再建計画見直しです。、民間任せでは解決困難な問題をどうするか。トランプ騒動を対岸の火事と見ずに他山の石として政府の役割を見直す機会です。

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Saturday, January 25, 2025

石橋を叩いて渡る石破氏と植田氏

波乱の8月で触れたように、株価下落を「植田ショック」とまで言われた結果、年内と見られていた追加利上げを年を越してから決定いたしました。

[社説]日銀はより精緻な利上げの戦略と対話を - 日本経済新聞
日経の社説とは裏腹に、利上げを遅らせて米政権移行に伴う市場の反応を見極め、しかも副総裁と総裁が揃って事前に利上げを示唆する発言をして市場に織り込ませた対応は慎重そのものです。決定会合後の記者会見で中立金利までの長い道のりに言及して、追加利上げは今後も続くことを市場に問いかけています。利上げ観測の為替の円高もわずかで、寧ろ未だインフレ補正の実質金利はマイナス圏ですから当然といえば当然なんですが、円安修正はまだ先ということです。
石破茂首相「令和の列島改造」実現へ5本柱 施政方針演説 - 日本経済新聞
こちらもいろいろ言われてますが、とりあえずは安全運転の姿勢です。いやツッコミどころは満載で早速楽しい日本とか曖昧という批判もあります。そして令和の列島改造と称して五本柱を示しています。①若者や女性にも選ばれる地方②産官学の地方移転と創生③地方イノベーション創生構想④新時代のインフラ整備⑤都道府県を越えた広域連携の枠組みの推進の5つです。

田中角栄内閣で打ち出した日本列島改造論は新幹線や高速道路の整備を通じて国土の均衡ある発展を狙うというものでしたが、是非はともかく具体的だったのに対して、確かに抽象的で曖昧ですが、反主流派だったから具体化するスタッフがいなかっただろうし、また具体策を示せば身内の与党から背中に矢が飛んでくるということもあるでしょう。つまり石破首相としては最大限の安全策ということです。

田中角栄版列島改造当時は鉄道貨物のシェアは今より高く、地方の港湾や工業団地も鉄道アクセスが当然視されていた時代ですから、新幹線に都市間旅客輸送が移行した後の在来線は貨物インフラとして活用することが含意されていました。当時貨物は大赤字でしたが、そもそも田中角栄氏は国鉄の赤字は国民福祉の観点から意に介していなかったし、組合のスト権付与にも理解があったようです。翻ってJR化後の地方ローカル線の窮状を見ると、こうした考え方も一理あるとも言えます。短期間に高速鉄道網を整備したものの大赤字にあえぐ中国は実は列島改造を実践しているかも。鉄ちゃん宰相の石破氏にそこまで踏み込むことの困難な現実はあります。

外交でもトランプ政権発足前の会談を敢えて行わず様子見する一方、対米カードとしての対中融和などの仕込みもしてますし、安倍政権以降の歴代政権よりバランス感覚がありそうです。但し全体的には曖昧にせざるを得ない現状もあり、具体化の過程で野党に攻められるのみならず、身内のからの矢もかわさなきゃならない一方、さりとて与党内にポスト石破候補がいない中で、逆に野党に助けられる場面もありそうです。これ石破氏を褒めてるんじゃなくて、いずれ明らかになる具体策へのツッコミはしっかりやろうと思います。

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Saturday, November 23, 2024

オールドメディアの不作為

兵庫県知事選の結果が世間を騒がせてます。地方首長の選挙であり、現地の事情を知る立場にありませんが、ポリティカル・マーケティングに繋がる選挙の裏が可視化された出来事です。

SNSの功罪映した兵庫県知事選挙 斎藤元彦氏が「主戦場」制す - 日本経済新聞
斎藤元彦知事のパワハラ内部告発に始まった一連の報道で県議会の全員一致で辞職勧告による失職を受けての県知事選という流れは全国でニュースになっていた訳で、内部告発者保護法に反して第三者委による事実確認もせずに告発者を特定し個人情報を晒そうとして内部告発者を自死に至らしめたということは知られていただけに、意外なニュースと受け止められましたが、県議会が立ち上げた100条委員会も継続中で第三者委員会設置の話もあったけれど、ローカルニュースや政見放送に触れることにできない他の地方の人にとっては、何が起きていたかわからない状況で、何故か選挙戦終盤で斎藤前知事の支持が盛り返して当選し、立花N国党党首のアシストがあったことなどは選挙後に知ることになりました。

その間斎藤氏や立花氏はSNSの動画投稿でパワハラは捏造という根拠のない情報を垂れ流し、それに多くの有権者が反応した結果らしいということすが、斎藤氏のネット戦略を担当した民間企業トップが自慢げにブログ投降して公職選挙法で禁止されている買収に当たると指摘されて炎上中ということで、都知事選の時よりも裏方が表へ出たという意味でも注目の選挙となりました。

斎藤知事支持者と見られる人たちはウソばかりのオールドメディアに真実を突き付けたネットメディアの勝利と湧いてますが、寧ろ公職選挙法や放送法で謳われる公正中立を狭く解釈して自主規制したオールドメディアの不作為による不戦敗と言えます。少なくとも裏付けのないネットメディアの情報拡散をファクトチェックで検証するとか、刑事事件の可能性があるパワハラ疑惑を事件報道として取り上げるなど、やれることは多数あったし、ネット上ではそうした投稿も見られたけれど、ネット社会とはいえ社会的な影響力はマスメディアが勝る訳で、今後の検証報道をきちんとやってほしいところです。

米大統領選のトランプ現象とパラレルに語られる部分もありますが、元々マスメディアが旗幟鮮明にしているアメリカと、事なかれ主義で踏み込んだ報道ができない日本とではメディア事情はかなり異なります。アメリカでも民主党系メディアほど大接戦と報じてましたから、トランプ支持者の実態に対する見落としはあったと思われますが、メディアの独立性はずっと強いので同一視できません。トランプ支持でも同床異夢の部分はあり、今後それが米国内政局を動かすことになるでしょう。そもそも他所の国の民主主義の危機を心配するよりも足元の日本の選挙のお寒い事情を心配すべきだろ!

てことで心配なニュース2件。

東京・町田の民家で水と気泡、リニア工事中断 JR東海 - 日本経済新聞
大井川の水問題だけじゃないリニアの不都合な真実。岐阜県瑞浪市の地下水枯渇に続いて東京都町田市小野路地区で水と気泡が地上へ出てリニア工事の影響が疑われて工事中断中ということで、掘れば出てくるトラブル多数。また残土処理もめどが立っていないなど、見切り発車で問題抱えてます。
JR北海道、約220踏切でレール再検証 貨物列車脱線受け - 日本経済新聞
今月16日に起きた函館本線森~石倉間の貨物列車打線事故で、レール腹部の腐食による破断が原因らしいということで、緊急点検となりました。超音波探傷で強度を弱める表面のキズは確認できますが、腹部の腐食は盲点ということで、鉄道総研の協力を得て対応するということです。考えられるののは梅雨がないと謂われる北海道でも夏の雨量が増えていることで、踏切部の履工で湿潤状態のまま冬の土壌凍結で水分が保持されて春に溶けてもまた雨といった気候変動の影響があるかもしれません。加えて重量のある貨物列車の運行で傷んだ線路の目視や打音点検や補修が人手不足で追いついていないといった事情も考えられます。ともあれ貨物幹線の維持が困難となれば北海道経済には打撃です。

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Saturday, September 21, 2024

赤字3Kの掟?

JRの掟?の続きのニュース。

東北新幹線、走行中に連結外れる 国交省が原因究明指示 - 日本経済新聞
300km/h超で総胸中の列車分離という重大事故です。連結器には損傷がなく、システムj上5km/h以下でしか作動しない筈の連結器開放テコが動いたとしか考えられない事故です。新幹線でも通常の電連付き密着連結器が使用されていて、開放テコは運転席からの遠隔操作で自動化されてますが、走行中はロックされている訳で誤操作の可能性もほぼ無い訳ですが、1974年9月12日の新幹線品川事故で当時の品川運転所部機器部でATC建屋内に車両洗浄機用のトランスが置かれていて、電磁誘導で信号電流類似の異常電流が流れて信号が乱れたもので、言ってみれば偶然発生したノイズ電流がキャンセルされずにシステムが信号電流と認識した事故が思い出されます。

列車分離後は非常ブレーキで停止してけが人は出なかったのですが、JR東日本によると分離した編成の非常ブレーキの方が強く作動するようになっていて、300m離れて停止したということで、フェイルセーフが働いたとは言えます。災害の備えと憂いの東海道新幹線の保守車両事故のところで説明した自動ブレーキというのは、圧搾空気を封入した加圧管を編成全体に引き通し、列車分離すると圧力が下がってブレーキシリンダ―が動いて停止するという仕組みですが、電気指令式になっても同様の仕組みは組み込まれております。しかし高速走行中であり、誤作動の可能性があることが分かった訳ですから、原因究明が大事なのは言うまでもありません。そして輪軸組立でも新展開です。

京王電鉄系「京王重機整備」、車軸1786本の数値改ざん 京王・都営で使用 - 日本経済新聞
JR貨物で発覚した輪軸組立工程のデータ改ざん問題が私鉄にも飛び火してます。東京メトロで傘下企業の不正が発表され、東京都からも都営地下鉄で発表がありましたが、都営地下鉄の輪軸組立は京王電鉄系列の京王重機整備に委託していて、更に関東を中心に多くの中小私鉄からも委託されていて大ごとになってきています。そして京王重機は特装車の製造や戦車を含む自衛隊車両のメンテナンスなども請け負っており、東京特殊車体名義のオーダーメードバスではとバスなどの事業者に納入されております。

鉄道のメンテナンス部門は言うまでもなくコストセンターで、固定費の重い鉄道事業にとってはコスト削減が重要なのですが、規模の小さい中小私鉄にとっては重荷ですが、大手私鉄でも中規模の京王電鉄でもやはり重荷です。そこで他社のメンテナンスや車両改造、更新修理などを請負って規模を確保した上で委託事業者から受け取る委託料も入るという訳で、京王グループにとっては欠かせない事業ですが、それ故にコスト削減圧力も強かった可能性があります。加えて言えば輪軸組立の圧力データの関するルールも曖昧なところがあって、基準値を超えても超音波探傷などの非破壊検査で不具合は確認できるということでスルーされやすいというか、結果オーライで済ます傾向はあるかもしれません。民間事業では赤字は悪という意識は強いですし。

一方で公共部門でかつて赤字3Kと呼ばれた事業があります。国鉄、健保、国民年金の頭文字Kをとって呼ばれたものですが、国鉄はそれを理由に分割民営化されてJRになり、健保、正確には中小零細企業対象の政府管掌健保ですが、47都道府県の広域連合としての健康保険協会を立ち上げて保険者が政府から協会へシフトして、謂わば体よく地方に押し付け、国民年金は今も制度としては存続してますが、1985年の年金改革で基礎年金が制度化され、財政規模が大きく余裕のある厚生年金からの会計間扶助で悪名高い第3号被保険者制度が作られ、今に至るもそのままです。以後5年ごとの財政検証が行われ、2004年には100年安心プランが打ち出され、現在に至ります。今年も財政検証が行われましたが、詳細は別の機会に取り上げます。

国鉄の赤字は赤字ローカル線のせいだということで、国鉄時代に赤字83線区廃止が打ち出され実行されたものの国鉄の赤字は解消するどころか累積し、次いで特定地方交通線切り離しでバス転換、私鉄、三セク鉄道引き受けなどが進められ、民営化後も続きました。そしてJR北海道と四国の慢性的赤字やJR東海を除くJR旅客会社の線区別営業係数公表などで地方ローカル線の存続問題が出てきていますが、厄介なのは特に上場3社の場合は全行黒字故に公的支援を受けられないことです。地方中小私鉄や地法交通線転換三セクは公的補助を受けやすいし、JR北海道や四国も鉄道・運輸機構への預託による利子補給や基盤整備補助などで事実上の公的補助を受けています。それでも出口の見えない厳しい状況は続きます。

JR北海道の4〜6月、札幌圏が黒字転換 新幹線は赤字縮小 - 日本経済新聞
唯一黒字転換の可能性のある札幌圏の黒字転換と北海道新幹線を含む赤字縮小で全体的には収支が改善したものの、札幌圏の内部補助で全体を支えることは不可能です。北海道新幹線の札幌延伸も遅れているし収支完全効果もどの程度か?並行在来線の切り離しで改善はするでしょうけど、鉄道ネットワークを維持するには至らないでしょう。加えて老朽車両取り換えで新車を多数投入してますが、その減価償却費が重荷となります。公共部門の赤字を理由とした民営化の限界は確実に見えています。

一方でかつての食糧管理制度の赤字は問題視されることなく、減反に伴う転作補助金や資料米その他の食用米との差額補助はされてコメ不足でも備蓄米は出さずと、国民生活をないがしろにしながら国民生活を支える公的な赤字は許さない、そんな政府は変えたいですね。

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