鉄道貨物

Sunday, July 14, 2024

ポリティカル・マーケティング

鉄路的連結列車の都知事選が終わりました。意外な結果と言われますが、結局組織票を固めた小池氏が当選して無党派票イーターの石丸氏が2位ということで、連合の離反で組合票が分散し蓮舫氏は惨敗となりました。その結果、選挙の裏の動きが可視化された面もあります。

そもそも都知事選は昔から所謂泡沫候補の立候補が多く、美濃部時代に美濃ナンチャラというおっさんが出馬して、政見放送で何故か美濃部氏の政見放送の前にそのおっさんが美濃部知事と都政に罵詈雑言なんてことが普通にありました。投票時の書き間違いと悪評発散を狙った今風に言えば刺客候補という訳ですが、成功した試しはありません。それに対して石丸氏は公示前からいち早く都知事選出馬を公言し、公示2日前の都庁記者クラブ主催の候補者討論会に出席しており、他の多数の泡沫候補と扱いが違いました。

加えて選挙期間中も1分程度のショートムービーで断定口調の発言を繰り返し、新しい選挙スタイルとしてテレビで露出されるなど、かなり特別扱いされていました。案の定裏に自民党系の選挙参謀と統一教会系のスタッフがつき、電通が支えていました。美濃ナンチャラのおっさんの嫌がらせレベルの刺客候補とは比べものにならない程システマティックに票を奪う刺客選挙だった訳です。あんな中二病のコミュ障に票が集まる巧妙さ。特に若い人が騙されたようですが、次回は注意しましょう。

一方世界は動いてますが、いろいろあります。

英国14年ぶり労働党政権 総選挙、スターマー氏勝利宣言 - 日本経済新聞
14年間の保守党政権で英国は大きく揺さぶられました。キャメロン首相時代にEU離脱を主張する保守派のガス抜きを狙った国民投票でまさかの離脱が多数派となり、その後短期間に首相交代を繰り返しながら迷走し、Brexxitの影響で経済も変調で大混乱したあげくの政権交代です。

スターマー新首相は親EUと言われておりますが、流石にEU復帰は無理としても、新協定で関係修復と安定を目指すとしております。EUから見れば通貨ユーロにも参加せず労働力移動の自由を定めたシェンゲン協定も批准せず、特別扱いが多い英国ですが、逆に市場拡大を狙ったEUの東方拡大は英国が主張し、その結果東欧の労働者が西欧に大量流入して、一部は英国にも来た訳ですが、それを理由に保守派がEU離脱を言いBrexitになった訳で、英国の身勝手故にEUから見れば再加入はあり得ないとはいえ、英EUの安定した関係構築は望むところではあります。そしてBrexitの失敗は加盟国の右派の離脱論を牽制する意味もあり、イタリアのように政権に就いて離脱論を封印したりしています。

フランス下院選、左派が逆転勝利 与党の年金改革に国民反発 - 日本経済新聞
やはり右派台頭に悩むフランスでは、マクロン大統領の国民議会解散による総選挙が行われ、マクロン派は左派連合と出馬調整して右派封じ込めを狙った結果、左派の逆転勝利となりました。年金給付開始年齢を2年繰り下げる年金改革で国民に嫌われた結果でもありますが、右派の台頭を止めることはできました。Brexitの失敗もあって右派国民戦線(RN)もEU離脱は謂わなくなっておりますし、伝統的右派と違って社会保障の充実を主張して中間層取り込みに励みましたが、右派の唱える社会保障は排外主義的社会保障で、移民や外国人は排除されるなど問題があり、国民はそこは冷静に判断したと言えます。英仏共に有権者は健全ということです。日本の有権者はどこ行き?

ということで、中間層を取り込まないと選挙では勝てないということは洋の東西を問わないようですが、そのために政治家がマーケティング手法で票を集める傾向が見えてきました。これアメリカのトランプ現象も同じです。合理的エゴイストで排外主義を隠しもしないトランプ氏が支持されるのは、中間層に拡がる反移民感情を掘り起こしている訳で、マーケティングで票集めという訳です。加えて企業経営者などの富裕層は自らの事業にプラスかマイナスかで支持を決め多額の選挙資金を寄付する訳です。もはや選挙制度は民主主義の証といえるのかどうか?

プーチンのロシアもメディア介入でウクライナの戦況の劣勢を隠し、少なくともモスクワやサンクトペテルブルグなどの都市中間層に負担が及ばないようにされており、言ってみれば戦争継続のための戦争マーケテイングをやっている訳です。大統領選でも野党系候補は出馬すらできず、知名度の劣る泡沫候補と競って選出されている訳ですから、何だか都知事選の構図とそっくりです。故にウクライナ戦争を民主主義対権威主義の構図で見ることはできません。言ってみれば古典的な領土戦争と変わりません。最高位ではないとはいえ改革派の大統領を選んだイランの方が国民意識は健全といえます。

てことで、実は日本の自民党の裏金問題もマーケティングとして見れば巧妙な訳ですね。企業に寄り添い企業献金やパーティ券で資金提供を受けて裏金化して、それを選挙で配ってまた裏金で回収するという形でシステム化されている訳ですから、簡単に放棄できない訳です。加えて多額の献金をくれる大企業の言いなりになる訳ですね。その結果円安で企業は潤いインフレで国民は困窮している訳で、流れを変えないと国民はただただ貧乏まっしぐらです。でこのニュース。

賃上げ効果の消失に危機感 政府・日銀に再び為替介入観測 - 日本経済新聞
春闘の大幅賃上げと定額減税効果で実質賃金マイナス解消という政府の期待を裏切って実質賃金マイナスが続いた結果、円安を止めないとまずいという判断が働いたようです。アメリカの同意を得られていないのであくまでも覆面介入観測ですが、どうであれ円売りポジションを採る投資家に一時的にでも損失を与えることで市場を牽制しようということですが、繰り返しますが無意味です。

円安で外貨準備には含み益が生じてますから、その範囲内での介入はほぼ負担ゼロですが、今回も3兆円とか言われる介入規模では100倍以上の為替相場に影響を与えることは不可能です。円安を止めるには金融政策を見直すしかないし、その結果低金利依存の財政政策も変更を余儀なくされる訳ですが、積極財政派の雑音でそこを曖昧にしているから円安が止まらないですし、寧ろ助長することになります。例えばこれ。

航空燃料不足、官民の対策 タンカー確保・韓国から輸入 - 日本経済新聞
これ昨今の石油元売りの製油所統廃合の結果、タンクローリーの輸送距離が増えた一方、2024年問題によるドライバー不足が助長して輸送力を落とした結果です。特にインバウンドに期待する地方空港ほど深刻です。製油所統廃合は人口減に備えたリストラ策ですが、一気に進んだのは物価対策としてのガソリン補助金を世紀湯元売りに支出した結果、それをリストラ費用に充てて遅々として進まなかった製油所統廃合を加速した結果です。津杏里大企業を支援してツケを地方に回す工事です。タンカー手配もいいけど、東日本大震災の時のようにJR貨物を活用してタンクローリーの輸送距離を短くするという知恵が出ないのが不思議です。繰り返しになりますが、こういうことの積み重ねで生産性を高めるイノベーションの可能性を政府が潰していて生産性が停滞し実質賃金がプラスにならない訳です。政権交代しないと現状は変えられないでしょう。

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Sunday, July 07, 2024

イノベーションの可能性

イノベーションを阻むものばかりが目に付くのですが、こんなニュースも。

金融庁が三菱UFJ銀行など処分、銀証連携の規制緩和に影 - 日本経済新聞
型式指定検査の不合理の見直しに消極的だったトヨタとは逆に、銀証分離のファイアーウォール規制見直しを政府に求めてきたメガバンクトップの不正です。利益相反が起きやすい銀行と証券の顧客情報共有は原則禁止されてますが、三菱UFJは傘下証券2社の顧客企業情報を同意なしに銀行と共有していたもので、例えば顧客企業が社債を発行する場合の幹事社選任で銀行が圧力をかけるなどしていた訳で、銀行の優越的地位の乱用が問題視されました。つまりファイアーウォール規制緩和で何がやりたいのかをばらしちゃった訳です。身勝手にも程があります。他方こんなニュースも。
ASEANの再生可能エネルギー広域送電網を支援 首相、中国関与にらみ - 日本経済新聞
供給地と需要地が地理的に離れる再エネ電力の活用には送電網の強化が欠かせません。特に限界費用ほぼゼロの太陽光の活用に道を開く訳で、意義ある投資ですが、わかってるなら国内先にやれよって話です。国内でやれば電気料金が下がるしグリーン電力比率が上がって国内投資の呼び水になります。つまり国内でやればイノベーションになることなのに、地域分割体制で再エネ電力の増加が自社発電所の稼働率低下につながり独占利益を損なうからやらない訳です。そしてこうなります。
1〜3月期GDP、実質2.9%減に修正 建設統計の改定反映 - 日本経済新聞
下方修正の原因は建設総合統計が実態より高く計上されていたのを遡って修正した結果、公共投資の減額や住宅リフォームの減額が反映されたものですが、従来景気対策とされた公共投資と住宅政策が景気対策として効かなくなっていることを意味します。積極財政が無意味なことを示した訳です。そしてそこには構造要因があります。

建設業界の構造変化が進み、ゼネコンと呼ばれる総合建設業からサブコンと呼ばれる型枠工や鉄筋工その他の専門領域を持つ会社に下請けに出す業界慣行が崩れてきています。サブコンを支える職人の不足からゼネコンから下請けされる仕事をサブコンが選んでいるというのがザックリとしたところで、サブコンに断られた案件は公共工事であっても期日までに執行できずに遅れるということが起きている訳です。そこへ2024年問題の働き方改革が重なって専門職人の人手不足を助長している訳です。怪運国債市場の蓋で万博工事の遅れの原因の1つとしてTSMC熊本工場建設を上げましたが、政府の補助金もあって潤沢な資金で金払いの良いTSMC関連に人手を取られた結果、万博工事は進まないという構図ですね。

この構図は事業費がJR東海の資金繰りに依存するリニア工事にも当てはまります。またトンネル工事が多いから残土搬出や最終処分などの問題も未解決のまま見切り発車しているため、今後も遅れが見込まれます。人手不足によるサブコン優位が続けば工期の管理は事実上不可能ですから、いつまで経っても終わらない工事で資金を溶かし続けることになります。東海道新幹線の儲けをつぎ込んで終わらない工事を続けるなら、財投資金3兆円の借金のカタにリニアを放棄するというのも選択肢になります。国にとってはドライバー不足対策としてリニアトンネルを活用した物流施設整備に活用することが可能です。例えば梶ヶ谷貨物ターミナルと名古屋貨物ターミナルを結ぶ貨物専用鉄道整備へ転用とかです。40/1,000の勾配がネックですが、1軸1,000kwのH級機で8,000kwとすればEF210重連相当の出力で1,000t列車牽引なら可能性はあります。そして貨物幹線の東海道本線の貨物列車は1.300t列車を残して新貨物線に回せばJR東海が不満を持つ静岡地区のダイヤ編成の自由度が増しますから、地域密着サービスで静岡工区着工のバーターになり得ます。

あと鈴木知事が設置を希望する静岡空港新駅ですが、掛川駅と近すぎる問題はこだまは通過扱いで一部のぞみを停車させるという解決策はあり得ます。元々首都圏第三空港狙いですから、それで不都合はありませんし、静岡県内のぞみ停車の要望にも応えたことになります。まあこの辺は話し合い次第でしょうけど、不可能ではないということは言えます。こうした積み重ねが実はイノベーションの実践なんです。この点は強調しておきたいと思います。

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Sunday, May 05, 2024

こどもの疲弊

本題の前に為替の話題です。

NY円相場、続伸 1ドル=152円90銭〜153円00銭 予想下回る米雇用統計受け - 日本経済新聞
インフレ定着が意味するところの時点で158円だったドル円相場が152~3円と下がりましたが、これを介入の効果と見るのは早計です。元々日銀政策決定会合で金融政策維持が決まったことで円安に動き、米雇用統計が予想を下回ったことで円高に動いただけで、何れも金融関連のイベントに反応しただけの結果です。29日や2日の乱高下は日本の祝日や早朝という薄商いで相場が動きやすい状況だったタイミングでの介入でブレが大きくなっただけです。故に円安インフレの終息が見通せる状況とは程遠いってことです。

一部に円安を阻止した神田財務官は植田日銀総裁より優秀じゃないかと言われたり、FXトレーダーだったら大儲けじゃないかといった声がありますが、いずれのタイミングによるたまたまですし、第一神田財務官はFXトレーダーじゃないし、国家は憲法でできている で指摘したように為替差益は実現しません。これもう少し説明すると、外貨準備として政府が保有するドルは日銀の預託されている訳ですから、その一部を引き出した形になり口座残高が減るだけです。それがドル売り円買い介入の実態です。当然政府はFXトレーダーなら手にする為替差益を得ることはできない訳です。信用創造の逆が起きる訳です。

そんな中で防衛費と共に財源確保が難題の子育て支援の財源問題ですが、これもデタラメです。「異次元の少子化対策」を謳ってますが、少子化自体は先進国共通の問題ですし、最近は新興国でも工業化の進展と共に少子化が進んでますから、少子化自体を政策的に止めることはできないと見るべきでしょう。但し子育て環境によって少子化のスピードを遅らせることは可能ですから、子育て支援が無意味とは言いませんが、どう転んでも子育て中の現役世代の負担増になるということは踏まえて制度設計しないと、結局負担感は増す一方で効果は見えないということになります。

それに対して高齢者ばかり優遇されるという議論がありますが、これも高齢化と共に避けられない負担な訳で、簡単には減らせません。ということは高齢化による負担増と子育て支援の負担がダブルで現役世代にのしかかることを意味します。これを回避し現役世代の過重負担を抑制するとすれば消費税を財源にすることで、避けられない負担を社会全体でシェアする形しか広範な合意を得ることは困難です。

それに対して政府は不人気な消費税増税を封印して社会保険改革で財源を生み出すということを言っている訳です。具体的には国保、協会健保、組合健保、後期高齢者健保といった健保勘定の保険料に子育て支援金を上乗せする形ですが、現役世代中心で年齢層が低く資金も潤沢な組合健保の負担が多くなることは避けられませんから、結局現役世代の負担を増やすことにしかなりません。加えて後期高齢者の自己負担増などで給付を減らすというのが「社会保険改革」ってことで、目先のゴマカシです。これじゃ寧ろ少子化を加速します。

そして現金給付で対応しようとしていることも問題です。少子化の原因が経済要因なのはそのとおりなんですが、現金配れば解決するかといえばそうではなく、主に教育費負担がネックになっています。にも拘らず政府は文教予算を削ってばかりで、国公立大学の独立行政法人化や「選択と集中」と称する科研費の減額などでG7はおろかOECD加盟国中で見ても教育の公的負担は最低レベルで,その分家計が負担している訳です。そして教育内容も複雑化しており、今や小学生から塾通いが当たり前という状況です。これじゃ子どもを持ちたくても持てません。

逆に言えばこの部分の公的負担を増やせば効果は期待できます。例えば給食費や教材費の無償化や高等教育の無償化といったことですが、これらは消費税にして2%程度の負担で実現可能ですし、少子化による労働人口の減少を補う意味での生産性向上を目指すならば、結果的に将来のリターンが見込めますから負担が軽くなるということですね。現金給付だけならそれが教育資金に回るとは限りませんし、共同親権問題とも絡みますが、給付欲しさに離婚カップルの親権争いという醜い現実をもたらすことは避けられないでしょう。子どもの為には教育という現物給付が望ましいということです。

あと負担の公平性を考えるなら金融所得課税も必要ですし、その意味で新NISAは負担の公平性に逆行します。特に若い人に申し上げたいのですが、資産形成をまじめに考えるならば、無理のない範囲でのコツコツ形の積立投資で福利効果を狙って時間を味方につけることをお勧めします。その意味で積立NISAならば検討の余地はありますが、元々分離課税で税負担の軽い金融所得課税をケチるよりもiDeCoを先に考えた方が良いです。被雇用者でも加入が可能になってますから、月々の余剰資金をiDeCoで運用して、拠出限度額を超える資金があるならその超えた分を積立NISAに回すという形にしましょう。

iDeCoの良いところは積立金が公的年金に準じた税法上の扱いになり所得控除が可能になりますから所得税減税になります。所得税は超過累進課税ですから、所得額の税区分が下方に移行すればより大きな減税効果がありNISAにはできない芸当です。また勤め先の企業年金が確定拠出型年金](DC)の場合、転職や退職時に手続きすれば積み立て分をiDeCoに移行できますし、フリーランスでも続けられますから無駄になりません。

但し払い戻しは満60歳まで出来ず、死亡や中途解約の場合は払い戻し放棄となりますので老後資金には向きますが、子供の教育資金やマイホーム資金などには不向きです。それでも払い戻し時には一時金あるいは年金として受け取り方法を選べ、年金方式の場合公的年金との合算で税優遇が受けられます。政府は盛んに新NISAを勧めますが、自分に適したプランは冷静に考えましょう。

しかし子供たちの置かれた状況の過酷さは本当に頭の痛い問題で、中学生時代に学習塾の塾長を怒らせてクビになった^_^;私なんぞ、今に生まれてれば落ちこぼれ間違いなしですね。また離婚が増えている現状でひとり親世帯が増えている現状では、家庭の事情で進学を諦めるるといったリアルがある訳で、こうした家庭で育つと自衛隊に入るかブラックバイトで凶悪犯罪の実行犯になるかといった未来が待っているということになりかねません。加えて気候変動で自然災害が増えたり農産物の収量が不安定になったりしているのに大人の事情で脱炭素は進まないし。当然紛争が増えることになります。子どもたちにこんな未来しか約束できない大人たちの不作為が原因です。

その一方で公金バラまいて原発再稼働やリプレースに前のめりだったり日の丸半導体復権に補助金出したりはしている訳で、財源がないってのは嘘だってことです。特に半導体の復権は台湾TSMCの熊本工場にしろIBMライセンスの先端半導体メーカーに名乗りを上げたラピダスにしろ、外資の下請けに甘んじて半導体の復権もないもんです。しかもラピダスにはこんな障害も。

ラピダスの物流に落とし穴 ガスが青函トンネル通れない - 日本経済新聞
半導体生産に欠かせないエッチング剤や洗浄剤には確かに危険物がありますし、青函トンネルのような長大トンネル通過は問題です。2024年問題によるドライバー不足で鉄道輸送に頼りたいところです。さてどうすべきか。

もしトラよりもしドラでも取り上げましたが、物流問題は明らかに日本のアキレス腱になりつつあります。本当は新幹線やリニアより緊急性が高く優先順位を上げるべきですが、そうした議論は見られません。しかも北海道新幹線は工事が遅れて30年度末開業の延期が決まりました。これも元々33年度開業を与党議員が強引に前倒しさせたものの、トンネル残土からヒ素やカドミウムといった有害物質が検出されて残土処理が滞っているということで足踏みしているのですから、今後の展開は見通せません。

その一方で北海道新幹線の函館駅乗り入れが新市長の選挙公約として実現を探ってますが、JJR北海道は取り合いません。現実的には新函館北斗からスイッチバックして函館駅に至るという計画は実現可能性は低いと言えます。唯一可能性があるとすればは在来線特急で4時間以上かかる函館―札幌間のミニ新幹線というところですが、安心してくださいのつばさオーバーラン問題を考えると解決策といえるのか微妙です。かくして自己保身と思いつきの果てにグチャグチャな現在と未来を子どもたちに残すとするとため息しか出ません。

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Saturday, April 20, 2024

戦争は経営でできている

サイドバーの世界は経営でできている (講談社現代新書)はお勧めです。というか、中東で起きている戦争が、将に有限な価値の奪い合いという意味で「経営の失敗」を体現していると見ることができます。というわけで採らぬ狸の続編です。

中東情勢で対話路線の日本、米欧はイラン追加制裁探る G7外相 - 日本経済新聞
そもそもシリアのダマスカスのイラン大使館を攻撃したのはイスラエルであり、今回のイランのイスラエル攻撃はその報復として事前通告して自衛権の範囲を主張し軍事施設限定の攻撃で、しかもミサイルや自爆ドローンを多数使ったもののイスラエルの鉄壁な防空システムで99%迎撃されて実害無しなのにG7各国はイランへの追加制裁を協議するっておかしな流れです。日本が簡単に乗れない話です。

結果的にイスラエルもささやかな報復攻撃をして体面を保ち、これで形として手打ちになりそうです。イランもイスラエルも交戦を望まない形の落としどころを探ったってことです。この出来事からいろいろなことが見えてきますが、欧米はイスラエル寄りに偏っています。ウクライナの戦況が悪化する中でもイスラエルへの兵器支援は継続するアメリカと、その結果天然ガス供給不安からガザ沖ガス田を横目にイスラエルに強く出られない欧州という構図が見えます。

蛇足ですが、イランの報復攻撃はイスラエルの防空システムを可視化したという意味でイラン側にも成果はあったし、寧ろそれだけの情報収集能力があることを見せつけたという側面もあります。主権国家間の戦争という意味では、現代の戦争は情報戦であり心理戦なのだというリアルが明らかになった訳で、まともな情報収集能力も持たずトマホーク配備でドヤ顔の日本の安全保障議論の底の浅さにため息が出ます。

加えて軍事力のある大国同士は戦わないけど、国家ではなく自衛権の無いガザには容赦なくジェノサイドレベルの攻撃さえしてしまうという非対称な現実がある訳です。これ台湾有事に多くの示唆を与えます。国家承認されていない台湾に対しては集団的自衛権は行使できないから国際法上は台湾はガザと同じ立場ってことです。もちろん台北政府の実効支配下でアメリカの支援もあって軍備を整えていますから直ちにガザのようになることはないとしても、1つの中国の原則から内戦扱いとなる中台の紛争への介入は国際法違反となります。

安保理、パレスチナの国連正式加盟を否決 米国が拒否権 - 日本経済新聞
日本やフランスを含む圧倒的多数が賛成しながらアメリカが時期尚早として拒否権を発動するというお約束の展開ですが、パレスチナが国連加盟して名実共に独立国となった場合、ハマスの軍事部門はパレスチナ国軍の地位を得る訳で、テロ組織として制圧できない存在になる訳ですし、今回のイランとイスラエルのせめぎ会いのように腹の探り合いしなきゃならないイスラエル側から見れば厄介な存在になるということです。

てことで中東情勢がきな臭くなると当然ながら原油価格の上昇で日欧は苦しくなりますが、今や原油生産大国となったアメリカは寧ろ追い風で、ドル高も手伝って大儲けのアメリカに対して、輸入依存に加えて通貨安で二重苦の日欧はインフレに苦しみます。当然株価も下がります。にも拘らず防衛費調達のためにNTT法を改正して外国人の株式保有を認めるというトチ狂ったことに留まらず、こんな法律まで強引に賭してしまいました。

農業基本法改正案が衆院通過 与党・維新など賛成 - 日本経済新聞
食料安保を謳いながら平時の食糧自給率を高めるのではなく、有事に農家に作付けの変更を国が命令できるって戦時中に花き農家にイモの作付けを命令した愚を繰り返すってのは呆れてものが言えません。個別所得補償で農家にインセンティブを与えて自給率を高めるのではなく、非常事態を口実に国の統制を強めるというのは的外れもいいとこです。まして地域地域で土壌の性質も異なりますから、国が統制しても増産効果が得られる保証はありません。

民主主義対権威主義で指摘したように岸田政権は戦前の近衛文麿政権とそっくりのことをやって日本を戦争にいざなっています。それもこれも首相の指導力の欠如と政治の混乱で官僚がやりたい放題ってところがそっくりです。だからNTT法も農業基本法も官僚好みの統制的な内容になる訳で、政治における経営の失敗と見ることもできます。加えてこんなことも報じられております。

<独自>リニア新幹線全線開業「最速令和19年」と骨太の方針に明記へ 政府、目標時期を堅持
多分官僚のリーク記事でしょうけど、川勝静岡県知事の辞任でリニア工事が進むことを期待して、骨太方針で敢えて2037年の開業目標を明記するということなのでしょう。但し元々2037年は努力目標であって義務ではない訳で、狙いがわかりにくいんですが、JR東海へのプレッシャーを期待しているんでしょうか。今のところ他紙の後追い報道は見られませんし、名古屋開業も見通せない中で大阪延伸着工を早められる訳でもなく、ニュースバリューに疑問が湧きます。

但し奇しくもリニアが戦前の弾丸列車計画をなぞる相似相が見えてきています。国が弾丸列車計画へ傾斜したのは満州事変後に満州国が独立を宣言し日本国内との移動や輸送が増えたことで、東海道山陽線の輸送逼迫があり、輸送力増強の必要から南満州鉄道規格の新線を作って関釜連絡船を介して朝鮮統監府鉄道から満州の首都とされた新京まで直通させて輸送改善を図ることが意図されたのですが、盧溝橋事件を発端とする日華事変勃発で軍の補給も都なり、政府も前のめりとなります。それに留まらず大東亜共栄圏構想に沿って中国からインド中東を経て欧州に至る大陸横断超特急構想なんて妄想を膨らまし、シベリア鉄道に代わる輸送路確保まで考えられていましたが、敗戦でパアです。

とはいえ前線への補給のために軍が積極的に動き、用地の強制接取が行われ、その多くの部分が東海道新幹線の建設用地として転用され、また一部は名神高速道や第二神明、加古川バイパスなどの用地に転用されています。静岡県の日本坂トンネルは弾丸列車規格で作られて一時的に在来線が使用した後、東海道新幹線に再転用されてますし、新丹奈トンネルも工事は進んでいました。ある意味戦後の新幹線計画は弾丸列車計画のお陰で実現したとも言えます。

リニアに関しては民間事業なのに全幹法により国の関与がありますが、自己資金整備を打ち出したJR東海に安倍政権時代に3兆円の財投資金投入が決まったものの、開業時期はあくまでも最速の場合の努力目標で、それも名古屋開業後の着工という前提ですから、その名古屋開業が最速2034年ですから、どう逆立ちしても2037年大阪開業は無理なんですが、岸田政権お得意のやってるふりにはなるということなんでしょう。それよりももっと手前に問題山積ですが目立った動きはありません。

物流の弱点、人手不足以外にも 鉄道も海運も老い鮮明 物流クライシス㊦ - 日本経済新聞
ドライバー不足が言われますが、例えば高速道路の老朽化に伴う工事の増加で輸送時間が読みにくく、それに伴う人件費増加は運賃に転嫁しにくいということもあります。そしてインフラ維持の作業員確保も困難になっており、輸送インフラを単純い増やすだけでは解決しません。そして鉄道や海運へのモーダルシフトも、既に鉄道船舶共に輸送力が逼迫しており、新たな需要の受け入れは困難ですし、鉄道に関しては夜間保守間合いの増加による減便すらあり得るとなると、新たな対応を考えないといずれ破綻します。

その意味ではリニアの物流インフラとしての活用は選択肢になり得ます。40/1,000勾配がネックで貨物鉄道への転用は難しいかもしれませんが、リニモのような低速リニアでコンテナを運ぶぐらいはできそうです。貨物専用なら長大トンネルでの安全対策も軽減できますし、着工済みの工事が無駄になることもないです。例えば開業の見込みが立たないリニアを財投3兆円の借金のかたに国が接取する形でJR東海から切り離せば東海道新幹線のもうけを溶かさなくて済むから、JR東海にとってもメリットがあります。そのJR東海にでこんな動きがあります。

東海道新幹線「N700S」に完全個室席 2026年度に導入、1編成2室 - 日本経済新聞
これまでビジネス利用最優先でひたすら輸送力増強を続け、食堂車や個室も廃止したJR東海ですが、コロナ禍でビジネス客が戻りきらず、寧ろ週末や連休盆暮れの行楽や帰省利用のウエートが高まる一方、普通車の一部で3列シートのB列を潰してパーテーションで仕切ったビジネス席のようなことも始めており、これらのサービスはスペースに余裕のある鉄道ならではのサービスとして対航空との競争優位になり得るという気づきがあったのでしょう。当面は車内販売廃止で空いた業務用スペースの転用で需要を見極めるということでしょうが、いずれJR東日本のグランクラスのような3等級制移行も視野に入れて増収を図る方向性が見えてくるかもしれません。

もう一つオマケで北陸新幹線米原ルートを受け入れて東京対北陸の輸送に参入してJR東日本と競い合うという選択肢もあり得ます。その場合公費が投入され線路使用料で償還される、つまり儲からない整備新幹線区間はJR西日本が担当しますが、東名阪の3大都市圏アクセスを握っている訳ですから、整備区間から発生する需要の受け皿となる根元受益による増収効果もあります。リニアに拘らなければいろいろなビジネス展開が拓けます。JR東海も経営を取り戻せ。

能登半島地震から4か月以上経過して、未だに水道も復旧できないし。倒壊家屋やがれきの撤去も進まず、最近は報道すらされなくなっています。そしてボランティアが足りないと嘆く一方でボランティアを受け入れる宿泊施設は観光優先でそもそもボランティアの受け入れ態勢ができていないし、またボランティア加藤堂に対するバッシングもあって大っぴらにボランティア活動がやりにくく、地元の被災者もボランティアの援助を公言できないし、そもそもボランティアを集めるのは行政の仕事の筈なのに動きが鈍いしという状況です。

そして豊後水道のM6.6地震まで起きてやはり道路やインフラの弱さで支援が滞っております。そして四国電力伊方原発3号機で、地震後異常なしが素早く報じられた一方で細かなトラブルが後から明らかになるなどの原子力ムラ作法-_-;。最近の地震の多さから言えば、台湾有事より驚異の筈ですが、伊方3号機で深刻なのは稼働中でしかも地震による緊急停止が働かず、事後的に冷却電源が非常用に切り替わっていたことが明らかになるというなかなか深刻な状況です。大事に至らなかったとはいえ重大インシデントでは?経営の失敗は至る所で見られます。

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Sunday, March 31, 2024

もしトラよりもしドラ、鬼さんこちら

米大統領選でトランプが勝ったら?という要らぬ心配から、もしトラだのほぼトラだのと言われてますが、詳細は省きますが、2016年当時よりもトランプの勝つ確率は低いと見られます。もちろん当選の可能性はゼロとまでは言えませんが。それより日本が直面するもしもドライバーがいなくなったら?を心配した方が良いでしょう。

鬼が笑う2024年笑う鬼退治もうすぐ笑わなくなる鬼その他のエントリーで取り上げた2024年問題がいよいよ明日から本番です。さまざまな変化が既に出てきていますが、一番身近な変化はバスの減便でしょう。サイドバーで紹介した週刊東洋経済 2024年3/2号(ドライバーが消える日)[雑誌] 雑誌 – 2024/2/26の特集に詳しいのですが、トラック、バス、タクシー何れもドライバー不足は変わらないのですが、それぞれ事情は異なります。

トラックは荷主に対しての立場の弱さから運賃値上げがままならないことに留まらず、荷主側の都合で発地着地双方で待機時間が求められたり荷役時間に制限があったり、それでいて機械荷役のできない手積みを求められたりとか、とかく注文が多く無理難題オンパレードだったりします。その結果公道上での待機が発生して交通の障害になったりもします。それでも勤務時間に占める荷役時間は少なく、最大は運転時間ですが、待機時間が多数を占め、生産性を低下させています。

それ故残業時間が長くなるのですが、逆に残業手当があるから低賃金でもそこそこ稼げたりする訳です。この点はバスドライバーと共通ですが、結局残業代が生活給に組み込まれている訳で、そこへ働き方改革で残業時間に上限が設けられると手取りが減って生活できなくなるということになり、それが離職を促すという悪循環が予想されます。故に諸人こぞりて苦しむイブで取り上げた高速道のトラック速度規制を80km/hから90km/hに緩和しても待機時間が減らなければ焼け石に水ですし、事故の多発に繋がりかねません。ドライバーの賃上げを含む待遇改善が必要です。当然運賃値上げが必要になりますし、拘束時間の長くなる長距離輸送が困難になります。

そして運賃値上げはトラック輸送の優位性を損なうことになります。実はここに大きなヒントがあるんですが、海運や鉄道によるモーダルシフトの余地があるということでもあります。特に鉄道貨物は高速道の整備に伴うトラックによる長距離輸送の拡大の影響を受けてきて700㎞以上でないと競争力を発揮できないと言われてきましたが、これが500㎞程度まで下がれば鉄道貨物のシェア拡大が可能になります。つまり需要規模の大きい首都圏と近畿圏の輸送需要を取り込める可能性がある訳です。

震災でわかったJR貨物の実力で取り上げた被災地へのガソリン輸送で磐越西線に臨時貨物列車を走らせて対応したのがこれに当たりますが、非電化区間がある磐越西線でDD51重連で500t列車で効果があった訳ですから1,300t列車が設定できる東海道線の輸送力を活用すれば有効なドライバー不足対策は可能です。但しそのためにはJR貨物にひときわ厳しい態度のJR東海の壁を何とかする必要がありますが。

バスの場合は需給調整規制の緩和で新規参入が増えた結果、底辺への競争でドライバーの賃金が削られて、公務員の身分故にその流れに乗れなかった公営バスが次々に撤退を余儀なくされ、特に収益性の高い高速バスや貸切バスへの新規参入増で大手事業者ほど収支が厳しくなる一方、ドライバーの拘束時間の長くなる長距離の高速バスほど維持が困難になって一般路線維持のために収益部門を縮小するという悪循環に陥っています。故に賃上げも困難でトラックと比べても低賃金レベルにあります。大都市圏でも大阪府富田林市に本社のある金剛自動車の事業撤退など維持困難になっております。

加えてトラックとも共通ですが、待機時間の縮小で実働時間に対して長めの拘束時間を設定して営業所で待機させて、状況に応じた臨時便運行や事故や病欠の代理乗務なども制約されることから、通勤通学時間帯のラッシュ輸送にフォーカスして人を配置する都合から、早朝深夜の運行を見直さざるを得なくなり特に終車の繰り上げが繰り返されていて、都区内でも22時台、近郊では21時台だったり土休日は20時台とどんどん使いにくくなっております。

実はこうしたバスの苦境はタクシーにとってはビジネスチャンスでもあります。タクシードライバーは基本フルコミッションの給与体系ですから、需給調整規制の緩和で都市部の増車が認められた結果手取りが減っていた訳ですが、コロナ禍で外出規制が課されるといよいよ稼げなくなって離職者が増えた結果、クルマはあるのにドライバーがいないという状況に陥っていました。それがコロナ5類化で利用が戻った結果、タクシーが捕まらないという状況を生み出した訳ですが、バスの減便や運行時間帯の短縮で寧ろ稼げる職業となりつつあり、離れたドライバーが都市部では徐々に戻りつつあるのが現状です。そうした中でのライドシェア解禁はタクシー業界にとっては寝耳に水だった訳です。ですからライドシェア推進派が言う既得権益の主張というのとはちょっと違います。

元々規制だらけのタクシー業界では、例えば首都圏では白タクは普通に存在していて規制の抜け穴は元からあった訳ですが、捕まるのは大抵通報によるもので特段の取り締まりは行われていませんでした。特にバブル期の終電後の駅ではあからさまな客引きまでしていました。当時は企業も官庁も残業で終電後の帰宅揉めず粗しくなかったし、その場合の帰りのタクシー代も気前よく経費精算されました。故に稼ぎたいタクシードライバーは深夜を狙って営業してましたし、運よく長距離客を乗せればその日の稼ぎが一発でということもあり、この時代の企業タクシードライバーは厚生年金の標準報酬月額の膨張で手厚い老後資金を得て悠々自適してます。白タクはそのおこぼれを得ていた訳で、ある意味共存していたとも言えます。コロナ禍で痛めつけられた今のタクシー業過にとっては当面は損を取り返すのが精一杯の現状です。

特に二種免許の問題は寧ろタクシー業界から要件緩和の要求が以前からあって、故にライドシェア解禁の見返りとして認められたということになります。加えて当面は地域と時間帯を限定してタクシー事業者がドライバーの指導とクルマのメンテナンスと保険に責任を負う形での解禁となりました。但しこれらは都市部での話で、地方の過疎地では以前から自家用自動車の有償運行で最後の足を確保することは行われておりました。それを日本版ライドシェアと呼ぶかどうかは別として、地方ごとの特殊事情から現行制度下での工夫の積み重ねは既に行われております。という具合にタクシーを巡る事情は地域ごとに特殊で、ライドシェアの完全解禁に問題があることは明らかです。

地方ではバスの減便や廃止は以前から進み、オンデマンドバスや乗合タクシーなどの形でバスとタクシーの境界が曖昧になっている現状があります。但しこうしたささやかな取り組みも自治体の補助金で維持されているのが実態ですが、都市部のバス減便はタクシーの出番を増やすことになり、地方で起きているバスとタクシーの境界の曖昧化が波及する可能性はあります。そうするとタクシー主導のライドシェア解禁はバス事業の圧迫という別の問題を引き起こす可能性も含んでいることは指摘しておきます。こうしたことをちゃんと議論せずに拙速に導入して本当に大丈夫なのか?

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Sunday, February 11, 2024

滑って転んで壺ッター大草原

元狼グループの爆弾犯として指名手配中だった桐島聡容疑者が末期がんで鎌倉市内の病院に入院中に告白して話題になりました。直ぐに連想したのがオウム逃亡犯の3人との比較ですが、オウム逃亡犯が17年間の逃亡の末、1人は自首2人は通報で逮捕された一方、桐島容疑者は50年間の逃亡生活ですからオウム犯の3倍近い逃亡生活をしていた訳で、神奈川県内の工務店で住み込みで働いて、アシがつかないように銀行口座も作らず給料も現金という徹底ぶりで、他人の住民票を利用してなりすましていたオウム犯との違いというか、逃亡生活の徹底ぶりに驚きます。

ネットでは他人の保険証で治療を受けていたに違いない、マイナ保険証はテロ犯をも逃さないために必要といった言説が溢れてましたが、社会保険未加入で保険証も作らずにいて自由診療で医療サービスを受けるハードルが高かったから、末期がんで救急搬送されるまで放置していたということですね。逆に言えばそこまでの覚悟があれば逃亡犯の生存空間のスキマはあるということです。

公安にとっては桐島容疑者の確保で支援者がいればそこから組織犯として芋づるを想定していたようですが、当てが外れたという声が聞こえます。オウム逃亡犯のこともありますし、インフレは続くよの大川原化工機事件もそうですが、捜査当局が想定するストーリーが間違っているからチョンボするってことが透けて見えます。

先週の雪で高速道路が軒並み閉鎖されたせいか、クルマ利用が減ったようで道路交通に関しては大きな混乱はなかったようですが、一方で歩行者が足を滑らせての救急搬送は多かったように、雪に不慣れな首都圏のリアルは相変わらずです。クルマでも雪道経験の乏しい首都圏のドライバーは雪道走行のイロハがわかってないから、それなりに事故は起きていたようです。

雪道ではタイヤのトラクションが低下しますから、とにかく滑らないようにする必要があります。故に急加速、急停止、急ハンドルは絶対にしないようにする必要があります。故にゆっくり発進、ゆっくり加速、エンジンブレーキを活用しつつフェザータッチのブレーキ操作、ステアリング時は十分な減速が必要な訳で、故にスピードも控える必要があります。しかしそんなことお構いなしにグイグイ加速して車間を詰めてくるアホがいるので、事故起こすよりはマシなのでハザード点滅させて減速して脇へ寄せて停止して先に行かせます。だから雪の首都圏ではクルマ使いたくなくなります。

故に雪道走行では駆動輪に過剰なトルクをかけないようJにセカンドやサードで発進するとか、減速、停止もシフトダウンしてエンジンブレーキを利かせる一方、急なトルク変動もスピンの原因になりますから、ダブルクラッチで回転数を合せて繋ぎ、フットブレーキはあくまでも補助的にポンピングでチョンチョンといった感じです。オートマ車の場合はひたすらフェザータッチのアクセルワークとポンピングブレーキでユルユル走ることになります。

それで気づいたんですが、雪道の自動運転車の振舞いはどうなんだろうか?って疑問が湧きます。AIで学習させるにしても、雪道の学習の機会は多くなありませんから、レベル2のハンズオフの運転支援レベルでも、強すぎる急制動や急ハンドルをかける可能性がありますし、レベル3のアイズオフ、レベル4のブレーンオフ、レベル5の完全自動運転にも同様の問題が付きまといます。レベル4対応を考えると、積雪時の高速道路閉鎖はデフォルトで考えるべきかもしれません。

そうなるとトラックに依存する物流も、たとえ自動運転でドライバレスが実現しても雪で機能しなくなるということも睨んでおく必要があります。となると自動運転は物流改革の解決策としては心許ない訳です。そうなると海運や鉄道貨物へのモーダルシフトこそがドライバー不足対策の解決策ということになります。但し海運のRORO荷役や貨物駅のコンテナ積み替えの自動化などは可能でしょうから、自動運転システムの開発が無駄になることはないですが。

あと雪でマイカー利用を諦めてタクシー呼んだら1時間待ちとかでここでもドライバー不足が顕在化してますが、だからといってライドシェア解禁して一般ドライバーに命を預けますか?って話にもなります。結局有効な雪対策は積雪時にはクルマに乗らない、可能ならば出かけないってことになります。出かける必要があるなら可能な限り公共交通利用で且つ十分な余裕時間を見込むってことですかね。

雪は航空便の欠航などの影響もありますが、それ以上にコロナ禍からの回復が鉄道に比べて遅く、特に単価の高い国際線の需要回復が足踏みしてます。1つは中国経済の不振で中国人観光客が減っていることですが、国慶節で中国国内旅行は活況のようですから、日本が選ばれなくなっただけかもしれません。加えて別のボトルネックも顕在化してきています。

観光立国、空港が足かせ 地上勤務のグランドハンドリング人材戻らず - 日本経済新聞
人手不足はドライバーだけじゃない現実です。特に地方空港では海外エアラインの受け入れが困難になりつつありますし、新滑走路建設で発着枠拡大が見込まれる成田空港でさえ、その能力を活かせない状況です。コロナ禍での減便に合わせて人員削減した結果、コロナ後に人が戻らず窮地に陥っているという現状です。

グラハンと言われる地上職員は航空会社や空港に直接雇用ではなく中小業者に委託されているので、雇用維持ができなかったってことで、タクシードライバーと似た構図ですが、よほどの好待遇を打ち出さない限り今後事態が好転する可能性は無い訳で、部分的な自動化の可能性はあるにしても、インバウンド受け入れにブレーキとなる可能性があります。まあ円安でインバウンドに頼った経済ってのは国民にとっては不幸ですが。

尤も国民を不幸にしているのは裏金問題で右往左往する与党政治家を許してしまっていることですが、二階幹事長のように3,500万円の書籍購入を明らかにして、公共図書館4館分の年間予算相当とナイスなツッコミで噓バレバレです。一般書籍なら物理的に過大な収納スペースが必要ですし、高価な専門書でも事情は大差ないです。あと考えられるのは法外な価格付けがされた本を購入した形での著者への贈与か特定の主張の書籍を大量購入して支援者に配りまくったか?いずれにしてもまともな使い方じゃないことだけは確かです。

という具合にこの裏金問題ですが、辻褄合わせで追加記載すれば使途が問われ、使途が不適切ならば突っ込まれ、使途不明にすれば事実上の雑収入だから、確定申告シーズンってことも手伝って申告納税せよと言われ、尻拭いに動けば動くほど国民から叩かれるって構図です。まして裏金を有権者や地方議員に配っていれば公職選挙法違反にも問われ河合克行元法相のように訴追される可能性もある訳で、何も語れない動けない状況に追い込まれております。

加えて壺問題。盛山文科相が旧統一教会との関係を暴露されて迷走してますが、これ宗教法人の解散命令請求の権限を握る文科相に対する旧統一教会のリークで発覚したようです。ならば更迭して別の文科相を任命すれば良さそうなものですが、岸田首相が任命責任を問われることを嫌っているとか。こうしてドツボに嵌ってしまいました。壺だけにwwwww^_^;。

ネギ背負ったカモで指摘したように無免許ノーヘルの電動キックボード解禁も壺議員の悪行の1つですが、雪の日の電動キックボードの利用状況や事故状況がどうだったのかは知りたいところです。あるいは事業者が貸出しを制限するなどの対応をしていたかどうかなども興味があります。まあ彼らからすれば壺議員さまさまでしょうけど、こうした利益誘導の問題はもっと注目されてよいところです。

これだけ裏金問題が吹き荒れて体制派と目される日経新聞すら苦言を呈する状況で、お金の出し手の財界は沈黙を守っています。企業献金にしろパーティ券購入にしろ、営利を目的とする企業が見返り無しに資金を出すことは考えにくい訳で、相応の見返りが期待されるから出している訳です。逆にそうでなければ株主利益の毀損となる訳ですから、株主代表訴訟モノの問題です。今年の株主総会は荒れるかも。

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Sunday, October 08, 2023

戦争とインフレ

前エントリーのインフレは続くよどこまでもの続編を書かざるを得ない現実に直面しています。アゼルバイジャンによるナゴルノカラバフ侵攻のほか、コソボ国境へのセルビア軍集結はまるでロシアのウクライナ侵攻前夜を思わせます。加えてパレスチナのハマスによるイスラエル攻撃とイスラエルによる報復と紛争があちこちで噴出しています。多分元を辿ればこのニュースに行き着くのでしょう。

米下院、マッカーシー議長の解任動議を可決 米国史上初:日本経済新聞
10/1からのつなぎ予算をまとめたマッカーシー議長の解任動議が共和党から提出されて可決成立して下院議長が空位となりました。その結果後任を選ばなければなりませんが、多数派の共和党から選出される限り、保守強硬派の発言力が増すことが予想されます。その結果今回のつなぎ予算で削られたウクライナ支援予算が復活する見通しが立たなくなり、支援継続が難しくなっています。その分アメリカの軍事プレゼンスが低下した訳ですから、鬼の居ぬ間の洗濯とばかりに軍事行動を起こす国や地域が出てくる訳です。

但しそれぞれ抱えている事情は異なります。アゼルバイジャンのアルメニア侵攻は元々仲の悪かった両国の紛争がロシアの軍事的弱体化でバランスが崩れた結果ですが、石油成金のアゼルバイジャンはソビエト時代にも国内の山岳ユダヤ人迫害を抑えられないソビエト政府がイスラエル亡命を認めた結果、人口増のイスラエルがパレスチナ暫定政府(ファタハ)と交わした和平合意を反故にして越境入植したことでパレスチナ情勢を悪化させました。それに対して為す術のないファタハのぬるい対応に対する不満の受け皿としてハマスが台頭し、ガザ地区を実効支配するに至ります。つまりファタハの暫定政府の統治が及ばない訳です。

コソボはそもそもセルビアの自治州だったところをアルバニア系住民が多くセルビア人による虐待を口実にNATOが介入して独立させた経緯があります。故にロシアのクリミア侵攻の時に「コソボはどうだった?」とロシアの立場を正当化する口実に使われ、巡り巡ってウクライナ侵攻に繋がります。ロシアがウクライナを自国の一部と主張するように、セルビアがコソボを自国の一部とと主張することに繋がります。加えてウクライナ問題でNATOの対応が手薄になるという読みもあるでしょう。

同時にロシアにもアルメニアを支援する余力がないことでアゼルバイジャンが攻勢に出たという形でウクライナとの連動は見られます。但しパレスチナのハマスの攻勢は今のところ唐突感が強く、故にイスラエルも虚を突かれた形となっておりますが、やられた分はキッチリ倍返しするイスラエルの流儀からすれば結局パレスチナ側の被害の方が大きくなるのは避けられないでしょう。

という風に連鎖的に起きている紛争は、結局アメリカの軍事プレゼンスの低下で抑えが効かなくなっているってことですね。加えてウクライナ支援予算が減ればその傾向は更に増します。またロシアも北朝鮮に頼らざるを得ないほど弱体化している訳で、アメリカの支援が減ったからといってロシアが有利になるとも言えません。その一方でアフリカのサブサハラ地域でのワグネルの存在感が拡大してロシアの間接的プレゼンスを支えているなど、世界は複雑化しています。

これだけきな臭くなった世界ですが、台湾や朝鮮半島では大きな動きはありません。中国はゼロコロナの失敗や不動産バブル崩壊でそれどころじゃないし、北朝鮮もコロナ禍で国内経済が疲弊しており、特に海外へ出た出稼ぎ労働者が国内に帰れずにいた訳ですから、ウクライナ紛争でロシアへの武器輸出でやっと一息ついたのが現実ですし、国内装備の強化はその分後回しですから、直ちに有事となる可能性は低いといえます。

台湾に関しても騒いでいるのはほぼ日本だけですが、アメリカは本音ではウクライナで手を取られて米軍のアジアシフトが遅れていることを気にしていますが、岸田政権の防衛強化策でミサイル買ってくれるし米軍の指揮下で動くこともあり、寧ろ中国も北朝鮮も相手にしていなかった日本を攻撃する口実を与えることになります。アメリカにとっては日本が弾除けになってくれる一方、日米安保5条による防衛義務はあくまでも議会の承認が必要ですから、ウクライナへの支援すら打ち切ろうとしているアメリカの保守派が支配する議会で本当に防衛してくれるのかは疑っておく方が良いでしょう。

あと朝鮮半島と台湾の国際法上の違いも、日本でゃあまり話題になりませんが、朝鮮国連軍の名目で駐留在韓米軍は紛争当事国であり、朝鮮半島有事には動かざるを得ない立場ですが、台湾に関しては未承認ですから、集団的自衛権行使の対象にはなりません。装備強化などの支援はしてもイザというときには動けない、少なくとも議会の承認は必要です。となると米軍が動けない分初動を日本の自衛隊に頼る可能性はあります。つまり米中代理戦争を負わされる可能性はあります。

そしてミサイルを買うお金も予算化されずに放置されてます。これも度々指摘してますが、真水の財源を確保できなければ、例えば決算剰余金を充てるにしても、その分国債償還費を減らす訳ですから実質国債発行で対応することになります。つまり財政に負荷をかける訳で、生産力を持たない兵器の購入は様々な経路で国民の財布に戻る政府支出を圧迫し国民の経済厚生を悪化させます。しかしそうまでして必要とする議論は行われておりません。

加えて円安によるインフレ進行で国民生活が苦しい時だけに、本当に必要なのかをきちんと議論して国民の同意を得ることは必要です。加えて言えば有事への備えとはいえ一応平時の現状で真水の予算で対応すればこそ、有事の財政出動の余地が出来る訳で、太平洋戦争後のハイパーインフレが示すように、財政の悪化は事後的にインフレで調整されます。ということで紛争で財政支出を余儀なくされる状況では、財政インフレが起きる訳で、国民生活を圧迫します。

その前に定員割れ状態にある自衛隊を戦闘に駆り出すことは現実的に難しい訳で、そもそも人口減少が進む国での軍備増強は国民に負担を強いるだけで実際に戦える体制を構築することすら困難です。この点は自衛隊に限らず2024年問題に直面する建設業や運送業の人手不足と同根ですから、解決は容易ではありません。何しろ大阪万博すら開催が危ぶまれる現状です。遅まきながら政府も動いてはいます。

鉄道・船舶の輸送量10年で倍増 政府の2024年問題対策:日本経済新聞
今ごろこんなこと打ち出しても来年3月の働き方改革には間に合わない訳で、分かり切っていても動かない政府の無策ぶりに眩暈がします。当然ながら北海道新幹線並行在来線の函館本線長万部以南に対する対応は行われることが期待されますが、現状維持ではなく倍増となると、日本の鉄道貨物で致命的な投資不足に対する支援がしっかりできなければ画餅に帰すことになります。まもなく発表される政府の経済対策を注視しましょう。

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Sunday, October 01, 2023

インフレは続くよどこまでも

有り難くないタイトルですが、中国バブル崩壊の次はアメリカの話題です。米国債金利の上昇で円安が進む昨今、米連邦政府閉鎖の危機が今度ばかりは避けられない情勢でしたが、ギリギリのタイミングで回避されることになりました。

米下院、超党派のつなぎ予算案可決 政府閉鎖回避へ前進:日本経済新聞
10/1から始まる新年度の予算執行のためのつなぎ予算が下院で否決されたことに端を発する騒動ですが、下院多数派の共和党の強硬姿勢で民主党案が否決された後、マッカーシー下院議長の修正案が提案されたものの、民主党のみならず共和党からも反対が出て否決となり、絶望的な状況ということで、バイデン大統領も政府閉鎖準備を指示せざるを得ない状況となりました。結果的にはマッカーシー議長案の修正で下院を通過したものです。

ここまで揉めたのは米国内の分断の深刻さを示すものです。元々新年度予算は民主、共和両党で合意済みですが、下院多数派の共和党が執行段階でブレーキをかけた格好です。共和党が嫌うリベラル的政策の予算を削り、不法移民対策としてのメキシコ国境のフェンス建設に予算を回せというのがザックリした主張ですが、既に合意済みの予算を削れというのは無理筋です。但し今回のつなぎ予算も45日間ですから、同じような騒動は繰り返されると見ておくべきでしょう。

これにはいろいろな背景があるんですが、共和党地盤の南部諸州にとって不法移民問題が重荷になっていることは確かな一方、東部エスタブリッシュメントや西海岸のハイテク地帯に強い民主党の移民に甘い姿勢は許せないという感情が前に出る訳です。その一方でヒスパニック系移民の増加で人口が増えており、移民の出生率の高さから人口の低年齢化も進んでいて、それが南部の生産年齢人口の厚みとなって工業化が進んだ面もあります。加えて共和党ステートの労働規制のユルユルさもあり、組合運動を認めないテスラの工場などが立地しております。それが別の問題を引き起こしていることも見ておきます。

米自動車スト拡大 新たに7000人、GMとフォード工場で:日本経済新聞
全米自動車労連(UAW)のストでGM、フォード、ストランティス(クライスラー)のビッグ3の工場がスト突入で生産が滞っております。UAWの主張はエンジン車からEVへのシフトは避けられず、自動車関連の労働者の数が減ることを睨んで、EV用バッテリーなどの製造工場の労働者もUAWに加盟させて保護を受けられるようにすべきだという主張です。産業構造の転換を理由に労働者が不利益を被ることは避けるべきということです。

ややこしいのはバイデン大統領が集会に参加して連帯を表明したことで、組合側が勢いづいていることで、結果的に火に油を注いだ形になってしまったことです。2016年大統領選で組合票がトランプ氏に流れたこともあり、組合票の囲い込みに動いた形です。不法移民が雇用を圧迫して産業が停滞したというトランプ流ナラティブの否定と共に、暗に南部諸州の労働規制の緩さを批判している訳です。同時に政権のEV政策も関わります。

トランプ時代のバイアメリカン法に触らずにインフレ抑制法(IRA法)を成立させた結果、米国内で販売されるEVは基本北米地域で生産されることを条件とされてしまいます。その結果EVシフトを進める欧州メーカーからWTO違反ではないかと言われごたついています。狙いとしてはバッテリー製造で世界をリードする中国への牽制なんですが、欧州やアジアのメーカーも引っかかる訳で、故に韓国現代なども米国内にEV製造拠点を設置を表明し、SKハイニックスなどバッテリーメーカーも追随しております。

当然欧州メーカーにも同様の動きがある訳ですが、製造拠点が置かれるのは労働規制の緩い南部諸州だったりメキシコだったりすると、結果的にビッグ3中心のUAWにとっては放置できない問題でもあり、出来れば連邦法で規制して欲しいというのが本音です。IRA法の狙いは気候変動対策と共に経済安全保障という面もあり、気候変動を重視するなら地産地消で可能な限り国内で生産して販売するのが正しいし、化石燃料依存の低減は経済安全保障の側面も持ちますが、同時に中国リスクも意識されており、中国産バッテリーの排除の狙いもあります。WTO提訴は現状上級委員の指名をアメリカが拒否していて機能していないですが、トランプ時代のそれを引き継いでいるのは、やはり提訴されたくないのでしょう。

という訳で政府閉鎖とストというリスクを抱えたアメリカで国債金利が上昇するのは当然となる訳です。分断による政治リスクが解消される見通しは立たず、また労組の強化は賃金を押し上げることにもなりますから、今後もインフレは収まらずFRBの追加利上げも現実味を増す訳です。となると低金利政策から抜け出せずにいる日本円の減価は避けられず、円安は進みますから、輸入物価上昇に伴う消費者物価上昇は今後も続くってことです。日銀の政策見直しが無ければ更にこの傾向は続きます。

経済安保は日本も取り組んでいる訳ですが、2020年の外為法改正の結果、妙なことが起きています。NHKスペシャルで取り上げられた大川原化工機の起訴取消事件の顛末のお粗末さが示す寒い現実です。

起訴取り消し事件「捏造」 訴訟出廷の警部補が発言:日本経済新聞
捜査官が捏造を認めたことも驚きですが、大川原化工機が輸出したのは液体噴霧乾燥機で、液体を噴霧して乾燥させることで粉末化する機械で、インスタントコーヒーや粉ミルクの製造装置になる訳ですが、警視庁公安部は生物兵器転用可能として無許可輸出を違法として刑事訴追した訳ですが、根拠となる証拠を捏造して会社幹部3名を長期間収監して1人はガンが進行して死亡するというとんでもない事件です。

警視庁公安部が動いた理由は推測ですが、法改正で実刑が定義されたことを受けて、捜査の指針となる判例を確定させたかったのでしょう。その為には抵抗力のある大企業よりも中小企業を追い込んで立件すれば手っ取り早いってことですね。狙い撃ちされた大川原化工機にとってはただただ迷惑な話ですが、特に経済安全保障絡みの政治性の強い法律故に、判例を確立させて捜査に睨みを利かせる所謂一罰百戒を狙ったと考えられます。それが今回のような人質司法の冤罪事件を生む訳です。現れ方の違いはありますが、政治が絡むとろくなことにならないのは日本も同様です。

JR北海道の札幌圏赤字急減、「黄線区」は拡大 4〜6月:日本経済新聞
コロナ禍前の水準に戻ってきたというニュースですが、記事中営業損益を見ると、北海道新幹線並行在来線区間の函館―長万部間の赤字額が長万部―小樽間の赤字額の3倍以上あり、営業キロの違いがありますが、貨物列車運行の重荷を感じさせます。ま、それ言えば絶対額では北海道新幹線が断トツで、青函トンネル区間という特殊区間ではありますが、札幌延伸後の収支改善も厳しさを匂わせます。

札幌都市圏以外は収支均衡は絶望的と言えます。その中で並行在来線協議を進める訳ですから厳しい現実ですが、加えて余市―小樽間で並行路線を持つ北海道中央バスがドライバー不足からバス転換を渋っていますし、それどころか事前に何の相談もなくバス転換を打ち出した北海道に対する不信感もあるようです。

鈴木知事が夕張市長だった時代に夕張支線の廃止に道筋をつけたことが成功体験となっているのでしょうけど、地元事業者の夕張鉄道が引受に動いたことでまとまったものの、ドライバー不足からバス便の維持は困難を極めており、鉄道時代を受け継ぐ伝統の長距離路線の新札幌夕張線の運行停止など満身創痍です。バス転換が選択肢にならない時代に直面しているってことです。

アメリカでペンセントラル鉄道が破綻したときの連邦政府の素早い対応と比べると、本当に危機感がないですね。ペンセントラル鉄道の場合は、結局連邦政府が線路保有機構としてコンレールを立ち上げて上下分離で運行継続を図りました。東方回廊とシカゴをエリアに持つペンセントラル鉄道が運行停止されると大量の貨物の滞留が起きるということでの緊急避難だったんですが、結果的に経営の苦しい他の民間鉄道も合流して鉄道ネットワーク維持に寄与しました。

コンレールはその後民間入札でサザンパシフィック鉄道に売却されて所謂北米5大ネットワークの一角を占めますが、それぐらい鉄道貨物の重要性が高いってことですね。結果的に旅客部門は都市圏毎の交通営団が引き受け、長距離列車はアムトラックが引き受ける形で現状となります。線路保有が貨物会社で旅客会社が線路を借りるという日本と逆の形になりました。この形態が基本ですから、なるほど日本の新幹線のような高速鉄道の整備のハードルは高い訳で、鉄道好きと言われるバイデン大統領がIインフラ整備法で約束したものの、財政支出を巡る共和党との綱引きで進んでおりません。政治はリスクの時代と自覚するしかないのかな。

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Sunday, September 24, 2023

中国バブル崩壊を喜ぶ大人たち

戦争を知らない大人たちで敢えて踏み込まなかった話題です。中国不動産大手の中国恒大集団の米破産法15条申請や碧桂園のデフォルト危機などの報道でいよいよ中国不動産バブル崩壊が言われますが、何れも外貨債務の整理であって、資本流出を防ぐ為です。国内の人民元建て債務にはメスが入れられておりません。

故にバブルの後始末が進まず日本のように長期停滞に陥るんじゃないかと言われており、実際デフレ的な物価下落が見られたり、若年層の失業率が高止まりしたりしてますし、同じタイミングで生産年齢人口の減少も起きており、まるで90年代の日本を早送りしているように見えます。実際中国経済は成長鈍化が見られます。但し日本と違って不動産デベロッパーはマンション建設前に全室完売して建設費に充てるということをしてきたため、契約して代金決済を済ませながら引き渡しを受けられない人が多く、それに対する政府の限定的な救済はあり得ます。

それでも4%台の成長率を実現している訳で、中国がゼロコロナ政策を続けて経済活動を抑制してきたことと、にも拘らず財政的な補償措置が取られていないことを考えると、驚異的な成長率です。人口規模の大きさが生むダイナミズムでしょう。不動産バブルが弾けてなおこの水準ということは日本とはかなり異なります。絶好調の米経済を追いかけるスピードは落ちるでしょうけど、ほぼ横ばいの日本より高い成長率は維持されて日本は置いて行かれるということですね。

ただ課題は様々あります。そもそもの不動債バブル拡大はリーマンショックで世界各国が軒並み停滞した中で、当時の胡錦涛政権による5兆元(当時レートで57兆円)の財政出動を発表し実行したことによります。これ80年代の米経済停滞の救済策として行われたプラザ合意によるドル買い協調介入と、その後の貿易収支改善策としての内需拡大要請で、日銀の低金利政策と政府の財政出動が行われました。プラザ合意による円高で購買力が増した日本は好況に沸きますが、それでいて円高による輸入物価の低下でインフレにはならず、故に低金利政策は長期化します。その結果カネ余りで不動産投資が活発化し、本業がさえない企業の含み資産拡大で株が買われ、所謂バブル経済となります。

中国でも財政出動で主にインフラ投資が活発化し、高速鉄道や高速道路が張り巡らされ、その結果鉄鋼やセメントの政策が活発になり、それを受けた地方政府の開発熱が進みます。社会主義国の中国は土地は交友が前提ですが、地方政府の開発資金として土地使用権が売りに出され、民間デベロッパーが買って開発し完成前に完売という形で資金循環が起こりましたが、多くの副作用もありました。

一つは腐敗の蔓延で、地方政府にとっては土地使用料の売り出しは無から財政資金を生み出す錬金術として多用され、農地から農民を追い出して売り出すようなことも起こります。そして地方官吏と民間デベロッパーの癒着が起きるのはお約束で、胡錦涛政権末期にはかなりひどい状況だったようです。習近平政権の反腐敗運動はその尻拭いだったってことですね。

また鉄鋼やセメントの過剰生産問題もあり、その対策として海外インフラ事業への進出を狙ったのが一帯一路であり、資金面を支えるAIIBです。この辺は中国の軍事的拡張と結び付ける議論もありますが、実態は国内の過剰生産能力対策の意味合いが強く、故に往々にして相手国の事情を無視した強引なこともあったのは確かです。しかしスリランカで言われた債務のワナは寧ろ先進国が投資を渋ったから中国が出てきたもので、AIIBの融資判断がガバガバだったことは間違いいありませんが、それ以上でも以下でもありません。

あと社会保障の不備の問題もあります。生産年齢人口の減少で社会保障政策の維持が難しいのは先進国も共通ですが、中国はその人口規模の大きさもあって社会保障の充実が難しいし、そもそも中国の国民は政府を信用してません。故にある意味自助の精神が根付いており、住宅の取得はある意味その対策でもある訳です。政治や経済がどうなろうが住むところが確保されていることの安心感もあります。加えて不動産価格の上昇で転売して差益を得た人も出てきて投資目的の住宅取得も増えた訳です。習近平政権で共同富裕を謳い不動産投資を規制したことは理由がある訳です。

その意味でアメリカの対中経済制裁や制裁関税を撤廃して欲しいのは本音ですが、トランプからバイデンに政権が動いても制裁は解除されず、寧ろ強化されてますが、実は抜け道があります。ラオスやカンボジアなど東南アジア諸国で謎の企業が立ち上がっており、中国から輸入した商品をパッケージを変えてアメリカに輸出することで偽装しているもので、アメリカも中国との全面禁輸は無理なのでスルーされているということで、寧ろ米中の経済的な繋がりは強くなっております。

特に資本財と呼ばれる機械製品は中国が近年輸出を増やしてきた分野で、アメリカも中国依存から抜けられない訳です。これは日本も同様で、というか日本の貿易統計で機械製品がほとんどの国に対して黒字なのに対中国だけ赤字です。つまり中国依存から抜けられない訳で、デカップリングは掛け声だけです。ロシアの石油輸入で下支えしてるし、今や中国無くして世界は成り立たない現実があります。但し武器供与はせず、故にロシアは北朝鮮を頼らざるを得ないし、同盟国のアルメニアがアゼルバイジャンの侵攻に遭っても助けられない現実があります。カザフスタンの内乱で中国を出し抜いたロシアの姿はありません。

てことで膠着しているウクライナ情勢ですが、アメリカが武器支援を小出しにしているのは、ロシアが核保有国という事情もさることながら、オバマ政権で方向づけられた対中国の米軍のアジアシフトが進まないこともあり、生産能力の制約もあって気前よく最新兵器を出せない事情もあります。これは中国にとっては心地よい状況ですから、国内経済の不振を理由に台湾進攻するというナラティブは現実的にあり得ません。それを理解できない大人たちの放言は聞き流しましょう。

胡錦涛政権で建設が進んだ高速鉄道も収支は赤字でお荷物になっておりますが、国有企業だから問題視されません。そもそも高速鉄道は江沢民時代の朱鎔基首相の肝いりで、日本の新幹線を参考に旅客輸送を高速鉄道に集約して空いた在来線を貨物輸送インフラにするという、田中角栄の日本列島改造論を参考にしたもので、在来線も4ft8in1/2(1,435㎜)の国際標準軌で新在直通も可能だったことから、短期間で高速鉄道網を整備することが計画されて胡錦涛時代に実現したものです。徹軌道式高速鉄道よりリニアを推進すべしという意見もあり独トランスラピートのライセンスで上海空港リニアを建設したものの後が続かず朱鎔基首相の実務家としての見識を示します。

この点は日本のアイデアで中国が先へ進んだ訳ですが、日本は国鉄分割民営化で列島改造は葬り去られました。整備新幹線スキームで事業は継続されましたが、仮に国鉄分割民営化されずに国鉄が新幹線整備を進めていたとすると、結局赤字を拡大する結果になったであろうことは中国の高速鉄道網が教えてくれます。そしてこのニュース。

JRが外国人パスを大幅値上げ 訪日客価格、手本は途上国 編集委員 石鍋仁美:日本経済新聞
民営化されたJRではなりふり構わずの増収策。手本は途上国ということで、訪日外国人の増加は円安によるディスカウントの影響ですからその分日本の停滞の象徴でもあります。

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Saturday, July 22, 2023

エッセンシャルワーカーが足りない

ブルシットジョブ型雇用の国で進行しているのはタイトルのようにエッセンシャルワーカーの不足です。つまり社会的に有用な価値を生み出す働き手が不足している訳で、忖度ばかりのブルシットジョブが増えてエッセンシャルワーカーの本来の報酬を横取りしている結果、低賃金で人が集まらないし、過労死レベルの超過勤務を前提にしないと仕事は回らないし、働き手も満足な報酬を得られない訳です。故に異次元とやらの少子化対策を焦ってますが、見当違いも甚だしいです。

雇用保険「流用」、給付対象の拡大どこまで?:日本経済新聞
7/21朝刊1面の解説ですが、コロナ対応の雇用調整助成金や前エントリーの年収の壁対策や子育て支援の各種手当など、本来失業給付に使うべき雇用保険が流用されあるいは検討されています。その結果積立金が不足するからと保険料値上げも検討されている訳ですが、こうした財源の流用で結果的に国民負担は増える訳で、それなら必要な政策の為の増税を打ち出せば良いのですが、その場合政策の必要性を含めてより強いツッコミを受けるから回避している訳です。

そもそも少子化対策が必要な理由は何かと言えば労働力不足で経済が停滞することを恐れてでしょうけど、労働力は資本によって一部代替可能であり、資本装備によって労働生産性を高めることは可能です。但し全ての労働が資本によって代替可能な訳ではなく、社会的有用労働としてのエッセンシャルワークは無くなりません。故にエッセンシャルワークを支えるワーカーへの報酬は手厚くする必要がありますが、現実にはそうなっていない訳です。

様々な要因がありますが、例えばトラックドライバーやバスドライバーはかつて高給取りだったのですが、団塊ジュニアの後半に就職難で社会人デビューで躓いた所謂ロスジェネ世代が、国の参入規制緩和と業務委託解禁で流入した結果、ドライバーの報酬がほぼ半減して現在に至る訳で、制度がもたらした問題です。逆に言えば制度の見直しと共に労働生産性を高める資本装備への投資によって解決可能な問題でもある訳で、無理して少子化対策を打つ必要もないし、子供が増えれば寧ろ依存人口が増えて国民負担は増すことになります。

つまり少子化対策は経済成長に寄与するものではなく、故に与党内の積極財政派が言うように成長で税収増は無理な訳です。ましてやドライバー不足確実な2024年問題は確実に成長を押し下げます。鬼が笑う2024年で取り上げた北海道新幹線並行在来線問題で揺れる新函館北斗―長万部間の存廃問題で動きがありました。

北海道・函館―長万部、鉄道貨物維持の方向 有識者で詰め:日本経済新聞
記事によると年間100億円程度の赤字の補填の負担をどうするという議論に矮小化されているようで、トラック輸送改善のための資本装備という視点での議論がないのが残念です。

東北新幹線や北陸新幹線の整備区間では、線路を保有する三セク等にフルコスト基準の線路使用料を支払う一方、JR貨物に対してはアボイダブルコスト負担の線路使用料との差額を支給して調整するもので、財源はJR旅客会社が鉄道・運輸機構に支払うリース料に上乗せして徴収し、結果的に三セク鉄道の収支を支えています。しかし収支が厳しい北海道新幹線ではこの手が使えず、財源をどうするかで国と北海道が角突き合わせている現状を追認した議論で果たして結論を得られるのか?という疑問は拭えません。経済運営上必要なインフラとして例えば道路予算を使うことも考えるべきです。

あとドライバーだけじゃない2024年問題として怪運国債市場の蓋で指摘した大阪万博をピンチに追いやる建設労働者不足問題もあります。大阪万博に関してはそれに留まらずパビリオンの入札不調や会場の夢洲の地盤沈下問題とか、五輪汚職で電通が指名停止されてプロセス管理が機能していないとか、大阪メトロ中央線も難工事で、ほぼ予定通りの開催は不可能な状況です。いっそ五輪に倣って無観客開催したら?知らんけど^_^;。

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