鉄道貨物

Sunday, April 26, 2020

不要不急の黄金律

Zoomを200mと空目して、ソーシャル・ディスタンシングってそこまで離れないといけないの?と勘違いした人もしなかった人も、お元気でしょうかwwww。私はと言えば、元々引きこもりのボッチですから、あまり変化ありませんが、流石に接触機会が増える乗り鉄は自粛してます。

しかし不要不急が叫ばれるけど、何を以て不要なのか不急なのかは曖昧です。例えばパチンコ規制ですが、開店前の行列に始まり、店内の密集度も高いし、換気が十分かどうかも不明で、しかもプレイ時間もそれなりに長い訳ですから、入場制限や間隔を空けるなどは必要かもしれませんが、補償無しの自粛要請には無理があります。そして自粛に応じなければ店名公表するとして大阪市などでは公表されましたが、これ逆に人を集める効果があるので、あまり意味がありませんし寧ろ逆効果です。欧米のように休業補償を条件に強制力を持たせるべきところです。

現行憲法でも強制力を持たせること自体は可能ですが、補償したくないから曖昧にしている訳です。旧憲法下で国家総動員法などと共に成立した陸上交通事業調整法で、東京の私鉄統合が行われたのは空飛ぶ都営交通でも取り上げましたが、東武野田線の柏以南は京成エリアですし、東上線は西武エリアですが、路線移管は行われず、中央線以南の西南部が東急に統合されたに留まりますが、西武に統合された多磨鉄道はそのままだし、実際は資本の論理による乗っ取り(京浜)や電力国家管理による独立維持の放棄(小田急、京王)の結果ですし、南武、鶴見臨港は国有化だし相鉄は相模線の国有化で東急への経営委託はしたものの旧神中線のみで独立存続してます。

地方でも1県1事業者を模索されましたが、ほぼ実現した富山と福岡は、事業者同士の自主的な統合の結果ですし、富山では県営鉄道や富山市電まで富山地方鉄道へ統合する徹底ぶりでしたが、一方で県内の交通統合の音頭を取った熊本では、熊本電気鉄道と熊延(ゆうえん)鉄道(後の熊本バス)が応じず中途半端になりました。近畿圏でも関西急行鉄道と南海鉄道が統合して近畿日本鉄道が成立した一方、南海傍系の高野山電気鉄道は独立を維持して戦後の南海電気鉄道の分離独立の受け皿となりましたし、力業の統合の阪神急行電鉄と京阪電気鉄道は、やはり旧京阪が分離独立してますが、新京阪線は阪急に残り京都線になるなど混乱しました。コロナ対応がうまくいかないのは憲法は関係ありません。

そして国家総動員体制下で鉄道事業者に求められたのが不要不急線の休廃止と資材の供出でしたが、こちらは国鉄白棚線(白河―磐城棚倉)をはじめ全国の多くの鉄軌道で行われ、軍需品増産や兵員輸送に必要な路線建設に回されたり、金属類は兵器生産に回されたケースもあるようです。という訳で鉄ちゃん的にはこれを連想してしまいますが、基本的に未補償でした。国鉄白棚線は路盤を専用道にして国鉄バス路線として存続しただけマシではありました。戦時BRTですね。

てことでコロナ問題での政府の対応は大いに不満のあるところです。炎上したアベノマスクにしろアベノコラボにしろ、官邸の1人の経産省出身秘書官の発案だそうで、いずれも内閣支持率の低下に焦って提案したものだそうですが、検査を増やすとか衛生用品の増産などの実質的な対策ではなく人気取りに走るところが国民から見透かされている訳です。また1世帯30万円給付も無条件に1人10万円に変更されましたが、これ公明党がが意地を見せた訳じゃなくて支持母体の創価学会からの突き上げで仕方なくって話で、単なる自己保身です。こんな連中が言う不要不急には違和感しかありません。今一番の不要不急は五輪だろ。その一方で感染爆発した欧米は次のフェーズへ進みます。

米欧のコロナ感染、公表値の10倍も 抗体検査で判明  人口6割で「集団免疫」 まだ遠く 精度向上に課題
PCR検査に精度の問題があることは確かですが、とにかく感染の実態を把握するには検査を増やすしかない一方、出口となる集団免疫の獲得進行度を見る意味もあり、遺伝子検査であるPCR検査に留まらず血液を採って抗体の有無を調べる抗体検査へと進み、疫学データを拡充しています。結果はPCR検査の陽性反応で確認された感染者数を大幅に上回る感染率であることが分かった一方、集団免疫獲得と言える60%には全く届かないということで、終息にはまだまだ時間がかかることが明らかになりました。また1度回復して再発症するケースも報告されており、その場合重症化するケースが多いということもあり、免疫の暴走が疑われています。つまり集団免疫獲得が本当に出口になるかどうかもわからないってことですね。

加えて国内感染が終息しつつある中国では帰国者を原因とする感染拡大が見られるなど、今後第2波第3波の感染拡大も警戒する必要があります。しかもそのタイミングが国毎にズレてますから、一旦落ち着いても油断できない状況は続く訳です。1年後に五輪開催できると考えるのはあまりに楽観的です。

最後にちょっと臭い話。鉄道を巡る戦時体制で特筆すべきは戦時下の食糧増産計画でして、人口密集地の東京では住民の糞便が大量に出ることに注目した当局が、郊外の営農地帯への堆肥供給のために鉄道各社に汚わい輸送を要請したものの、乗客の評判を気にして各社尻込みする中で、唯一要請に応じたのが西武鉄道ですが、戦時体制でただでさえ要員が徴用されて人手不足の中、御大堤康次郎の陣頭指揮で大混乱に陥ったという逸話があります。所謂西武鉄道黄金列車伝説です^_^;。

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Saturday, February 08, 2020

風邪は寝て治せ

新型コロナウイルスで世界が大騒ぎしてます。2003年のSARSのときのことが思い出されますが、当時世界のGDPの4%に過ぎなかった中国も今や16%のシェアとなり、しかも経済のグローバル化でグローバルバリューチェーンによる国際分業の深化もあり、将に中国が風邪ひくと世界が震える状況と言えます。例えばイラン情勢の悪化で跳ね上がった原油価格は中国経済の低迷を織り込んで下落し、1バレル50ドルを付けるなどしてます。シェール革命でアメリカが石油の純輸出国となった結果、世界最大の石油輸入国となった訳ですから、無理もない話です。

今回の新型肺炎の特徴は、感染力が強い一方、致死率は1%に満たないと見られていて、健康な若者では未症状や軽症で回復するなどしており、そもそも診断が難しく発見が困難なんです。但し持病持ちの高齢者などで重症化が見られ死者も出ている訳ですから、警戒は必要です。その意味で日本の対応は疑問だらけですが。

新型肺炎告発、中国の医師死去 処分から一転英雄扱い:日本経済新聞
いち早く警鐘を鳴らした中国人医師は「デマを拡散した」として武漢市の公安当局から処分を受けましたが、それでも混乱の中医療査読誌に論文を発表し世界に知らせた結果、北京政府やWTOを動かした訳です。結果的に2003年のSARSのときより的確な情報開示がされました。

驚いたのは中国ではSNSのウィーチャットで遠隔診療が可能になっていて、多くの肺炎患者は遠隔診療で対応されていることです。日本じゃ医師会の反対で実現できていませんが、日本に比べて広い国土と巨大な人口を抱え医療セクターが相対的に弱い中国では、それをハイテクで補うことが普通に行われていて、軽症者は自宅待機を命じられ、病院には来させないようにしているそうです。風邪は寝て治せって訳ですね。勿論重症者は命にかかわりますから対応されますが、日本のように医療へのフリーアクセスが当たり前だと、寧ろ元気な感染者が病院に集まって院内感染を助長する恐れがあります。

この辺の対応を単に強権的な監視社会といったステレオタイプな見方をしてしまうとおぞましく感じますが、極めて合理的な対応がされてます。それでも封じ込めに失敗している訳で、今回の新型肺炎の影響力は相当大きいと見るべきです。その意味で日本政府の対応は完全に後手に回ってます。それを象徴するこんなニュース。

船旅ならではの環境が要因か クルーズ船集団感染:日本経済新聞
横浜港のダイヤモンドプリンセス号ですが、クルーズ船という閉鎖空間で多くの乗客乗員が足止めされてますが、これ院内感染ならぬ船内感染を助長しているんじゃないかと思います。それが証拠に感染者が増え続けている訳で、乗船中の乗客乗員はさぞかし不安なことでしょう。

重症化しやすい高齢者も多数乗船していて、持病のクスリが切れそうだという声に応えて医薬品も搬入されてますが、量が足りないだけでなく、外国人から日本で未承認のクスリのリクエストもあり対応に困っているといいます。こういう人は指定病院の隔離病棟へ移した上で、未発症の人は暫くの自宅待機を条件に下船させ、船を消毒することで、逆に今後の発症者の隔離先にも使える訳ですね。ホテル三日月の洋上版です。しかしクルーズ船の受け入れ拒否が広がり,彷徨えるクルーズ船が行き場を失っております。これで船内感染を拡大させたら、だれが責任を取るのでしょうか?

あと感染が疑われる外国人の入国拒否とか、水際作戦は無意味です。上述のように無症状や軽症で回復する人が多く、そもそも発見が困難である以上、ある程度の感染拡大は防ぎようがありません。しかし軽症者が多いってことは、通常の風邪やインフルエンザ程度の対応で、短期間の自宅待機などで感染拡大自体はある程度防げる訳で、死に至る可能性のある重症者へのケアを重点的に行うべきでしょう。軽症の感染者が病院に殺到して院内感染が拡大するようじゃ寧ろ事態は悪化します。

SARSのときは有効な治療法も確定しないまま8か月ほどで終息しましたが、今回の感染拡大の様子を見ると、それ以上の影響を覚悟する必要あります。場合によってはオリンピック、パラリンピックも中止を余儀なくされることも考えられます。逆に適切な対応で早めに終息する可能性もあります。中国のハイテク医療の実態はSARS当時と大違いです。

発生が確認されたのが武漢市というのも感染拡大を後押ししています。武漢市は長江中流域唯一のメガシティで人口1,000万人を超える大都市で、位置的には大陸中国のへそと呼べるところで、長江の水運があり、また北京―広州間と上海ー重慶間を結ぶ高速鉄道の交点に位置する交通の要衝です。つまり主要都市との移動が便利な場所ってことで客貨の往来が多く、自動車や電子部品など製造業の集積地となっています。喩えればアメリカのシカゴや日本の名古屋のような位置づけですが、人口は巨大です。肺炎封じ込めに失敗したと批判される武漢市当局ですが、1千万都市を封鎖するような決断はそりゃ国家主席クラスじゃなきゃ無理ってもんです。

そして製造業の操業停止が相次いでおり、再開のめどは立っておりません。長引けば中国経済の低迷を通じて世界経済の足を引っ張ります。既に中国人民銀行は利下げを決めており、軟着陸を模索しますが、気になるのは武漢市で死者が多いこと。これ致死率が同じとすれば、結局分母の感染者総数が把握しきれないほど多いことを示唆します。短期間の終息は期待薄でしょう。

中国の高速鉄道はある意味日本の新幹線のコンセプトに忠実で、高速鉄道を整備して旅客列車を移し、空いた在来線の貨物輸送を強化するというもので、かつて田中角栄氏が日本列島改造論で示した構想が実現している訳です。長江の水運と共に活発な貨物輸送を鉄道が支えている訳ですが、武漢市の製造業集積が止まれば貨物輸送も減る訳で、中国の実体経済の指標として李国境首相が唱えた所謂李国境指数でも貨物輸送量が取り上げられたほど、鉄道貨物の位置づけは大きなものです。翻って日本の整備新幹線は鉄道貨物にストレスばかり与えてますが^_^:。

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Saturday, November 30, 2019

ガラパゴス・スモールブラザーズ

ただでさえ忙しい月末の新線開業ですが、結構な人が出てました。そして羽沢横浜国大駅に難民多数wwwww。人が住んでる羽沢団地からも横浜国大からも遠く、JR羽沢貨物駅と横浜環状2号線に挟まれていて、民家も疎らな新駅に大勢の人がいたのには笑いました。直近コンビニ1km、既存路線の最寄り駅は相鉄上星川と市営地下鉄三ツ沢上町ですが、どちらもろくな道がない。そして毎時2本の列車本数ですから、試しに降りたはいいけれど、やることなくてホームで電車待ちを余儀なくされた人多数ってことですね。

新たな都心ルートを得て沿線活性化につなげたい相鉄はこれからが正念場ですが、JR東日本との相互直通は貨物幹線の東海道貨物線の線路容量の制約から本数増は見込めず、22年に予定される新横浜経由の東急東横線・目黒線との直通が始まれば列車本数は増えますが、都心側が3ルートに分かれますから、個々のルートの本数の少なさは大きな制約条件になりそうです。面白いのは親会社の相鉄HDの筆頭株主の小田急電鉄とは競合することですね。日本の鉄道会社って必ずしも資本の論理で動いていません。

そんな日本でこんな経営統合が発表されました。

ヤフーとLINE統合 「米中に次ぐ第三極に」:日本経済新聞
いや第三極は無理。時価総額100億円超のGAFAやBATを向こうに回してせいぜい時価総額3兆円の企業連合で何ができるのか?まともな勝負にはなりません。唯一可能性があるのは国内のガリバーになることです。何しろ最強の非関税障壁(笑)、日本語がありますから^_^;。つまり楽天やメルカリからは頭1つ抜け出せるとしてもそこまでです。これビッグブラザーならぬスモールブラザーにはなれるかもしれないってことです。但し英語が公用語にならないことが前提ですが。

この辺古代の曽我氏と物部氏の争いに始まり、天皇の地位を争った壬申の乱や平安末期の源平合戦、鎌倉幕府に対する朝廷の巻き返しを図った承久の乱、室町初期の南北朝、天下分け目の関ヶ原の戦いなど、世界とは無関係に国内で争った歴史を繰り返しているようで興味深いところです。いにしえの東夷の小帝国と現代の極東の先進国。世界の端っこだからという地政学的な特徴なんでしょう。

ただしそんな日本も世界の影響は受けてるし、逆に世界に影響を与えてもいるのですが、その点に無自覚なのも昔から変わらないようです。そんなニュースを幾つか。

外資規制強化、株1%以上に届け出義務 外為法改正へ:日本経済新聞

欧米ではやっていると説明されてますが、外資の出資事前規制はほぼ例がありません。加えて出資比率1%は有価証券報告書提出義務のラインなので、欧米の投資ファンドが締め出されるか?と反応してます。株式市場の7割は外国勢という東京市場ですから、当然の反応ですね。外資が引き揚げたら株価下がるぞ。
キャッシュレス、少額・コンビニ中心 政策目的とずれ  ポイント還元制度1万人調査 :日本経済新聞
消費税増税に絡めてポイント還元を政府が支援することでキャッシュレス決済を中小零細事業者に普及させようとしたところ、実際の利用はコンビニ中心という結果です。これ予想してたんですが、日本でキャッシュレス決済が普及しない最大の理由は店が負担する手数料の高さなんですが、これアメリカなどではクレジット会社が直接展開している決済ネットワークを日本ではほぼNTTデータが独占的に供給していて、高い手数料を利用企業に課していることが根底にあります。

上記のヤフーとラインの経営統合でQRコード決済サービスの統合も噂されますが、結局根元の部分の利権に切り込まなきゃ解決しません。アリババのアリペイの場合、元々中国国内の中小零細企業向けのECサービスを展開していたアリババが、参加企業の利便性向上のために開発したものが、使い勝手の良さで爆発的に普及したもので、政府の関与がほとんどないからできたこと。逆に国策会社の利権が温存されてる日本ではそうならない訳です。この場合NTTデータもスモールブラザーと言えるかもしれません。そしてこれ。

再生エネ、送電網使えず 東日本で5割「空きなし」:日本経済新聞
関電問題のエントリーで指摘しましたが、原発のような大規模電源を保有する電力会社に送電網を管理させれば、大規模電源はダウンした時のバックアップ電源を必要としますから、それを大出力火力で充てている体制では、結局双方の電力の合計が先発枠として抑えられてますから、利用率50%といった非効率な事が起きる訳です。分散電源ならば一部が停止しても全体でバックアップ可能なんで、送電線の容量に無駄が無くなる訳ですね。世界の趨勢は完全にこれです。いやーガラパゴスなスモールブラザー達です-_-;。おまけ。
手数料ゼロが招く歪み 証券会社と高速取引業者の蜜月:日本経済新聞
個人投資家の注文情報が株式の高速取引業者(HFT)に漏れてたって問題です。何が問題かと言えば、個人の指値注文を見て先回りができるから、個人投資家にとっては利益を横取りされることになる訳です。ネット証券の普及で手数料の値引き合戦で証券会社は収入が取れないから、HFTに情報を売っていたってことです。個人投資家がおかしいと声をあげて発覚しました。何ともセコいディストピア。スモールブラザーズの末席に置いときます。

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Sunday, August 18, 2019

困難なインフラのトリアージ

2030年の北海道新幹線札幌延伸に伴う並行在来線問題の検討が前倒しされました。

北海道新幹線の並行在来線、「存廃判断」5年前→前倒し  :日本経済新聞
対象区間は沿線人口が少なく、財政力の弱い町村が連なるだけに、調整は相当手間取りそうです。バス化も含めた検討ですから、廃止も有り得る訳ですが、貨物列車をどうするかが悩ましいところです。

JR貨物の問題は東北新幹線延伸のときに並行在来線を三セクで引き受ける時に、ローカル輸送対応ならば複線電化の東北本線の設備は明らかにオーバースペックとなりますから、JR貨物が貨物列車を維持することが困難と発議されました。その際JR貨物が負担する線路使用料がタダ同然の格安だったことから、並行在来線引き受け三セクにとっては負担ばかりになるということで揉めました。結果的にはJR貨物が支払う線路使用料と三セクが受け取るコスト見合いの線路使用料の差額をJR東日本の負担で補填することで決着しました。加えて北斗星やカシオペアの運行に伴う運賃料金収入もあり、それで経営の屋台骨を支えることで決着しました。貨物幹線だけに貨物廃止は無理だった訳です。

JR東日本にとっては整備区間より手前の根元区間の受益があるので、貨物輸送に伴う負担増は受け入れ可能だった訳ですが、同様の問題に直面した九州新幹線の八代―川内間ではこの手は使えず、並行在来線三セクの肥薩オレンジ鉄道にJR貨物が出資することで、貨物列車向けの電化設備等を維持するという方法が採られました。肥薩オレンジ鉄道のローカル列車は軽量ディーゼル車によるワンマン列車です。

北陸のIRいしかわ鉄道とあいの風富山鐡道では、当初検討されたサンダーバードの富山乗り入れは結局JR貨物とのコスト分担問題で実現しませんでした。IGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道が客単価の高い寝台特急の収入を当てにしたのとは対照的です。という具合に並行在来線貨物問題は統一的なスキームはなく個別対応に終始しました。言い換えれば行き当たりばったりだった訳です。

北海道新幹線に関しては、経営危機にあるJR北海道に追加負担を求めるのはそもそも無理ですし、これまで以上に沿線人口が少なく、財政力の弱い町村に負担を強いることになります。貨物廃止してバス転換もあり得る訳ですが、青函トンネル開通で天候に左右されない輸送手段として特に農産物輸送で優位性を発揮する貨物の廃止は、北海道経済に大きな打撃を与えるだけに、簡単にはいきません。

青函トンネルの新幹線と貨物の供用区間が速度と列車本数の制約条件になっていることから、国交省の本音は貨物廃止に傾いているようで、実際船舶へのシフトが検討されてますが、輸送量から言えば可能でも、天候の影響は避けられず、鉄道による安定輸送が北海道産農産品の競争力となっている現実から無理筋でしょう。

加えて東北新幹線の並行在来線三セクであるIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道にとっては、寝台特急の廃止で旅客収入を減らした上に、JR貨物の線路使用料収入まで減れば、存続が危うくなります。こうなると北海道の都合だけで決めることもできず、着地点が見えなくなります。あとJR貨物自身も国の支援で基盤強化投資を行った結果、黒字転換して株式上場も視野に入る中で、その基盤を国に潰されることになる訳です。この点も将に行き当たりばったりです。

山線区間を除く長万部以南の区間はJR貨物が出資するということも考えられますが、北海道経済に関わる問題だけに、北海道庁が動かなければまとまらない可能性があります。とするとJR北海道に冷たい道庁の対応から見て期待できそうにありませんね。これインフラの積み増しによる維持費拡大問題として指摘しましたが、こうして過剰インフラを抱えると、その廃止も簡単ではないってことで、寧ろ問題を複雑にして解決を困難にします。

一方九州でも問題が起きています。

JR九州「自社株買い」株主総会で否決、青柳社長「今後も対話」  :日本経済新聞
株式上場したばかりに、株主となった投資ファンドからの圧力を受けている訳ですが、同時に豪雨被害で不通の日田彦山線の復旧を巡って関連自治体との間で困難な話し合いが行われています。日田彦山線自体は現状既に都市間輸送も貨物輸送も担っていない純然たるローカル線で、企業経営的には災害復旧するよりバス転換する方が合理的ではあります。

しかし忘れてはいけないのは、JR九州が株式上場に当たって上場基準クリアのために行った経営安定基金を取り崩して新幹線リース料の一括納付と償却資産の減損処理の結果、減価償却費を圧縮して本業の赤字体質を改善した一方、減価償却費の減少は同時にフリーキャッシュフローの減少を意味しますから、災害復旧の資金捻出を困難にしているという側面もあります。言い方は悪いですが、株式上場したために災害復旧もままならなくなったってことです。日経記事では複数のステークホルダーへの対応の困難さと纏めてますが、覚悟がないなら上場なんかするなって言いたいところです。

というわけで公共インフラの民営化は万能薬でも何でもない訳で、例えば大阪メトロや大阪シティバスの民営化の意義は今もって理解に苦しみますが、とりあえずここでは踏み込みません。しかし過剰インフラの淘汰を資本の論理に委ねて良いのかってところはあまり議論されてません。そんな中で北越急行ほくほく線の生き残り策は示唆に富みます。

元々スーパー特急方式を想定していたJR西日本区間の北陸新幹線は、ほくほく線経由で越後湯沢で上越新幹線に乗り継ぐ形が想定されていて、それを前提に北越急行では線路の高速化と共にJR西日本の681/683系を導入し、段階的にスピードアップして160km/hの営業運転を実現した訳ですが、北陸新幹線のフル規格化で梯子を外された形になりました。

そこで利益の一部を基金として内部留保して将来の減収に備える一方、特急廃止でお役御免となる681/683系をJR西日本に売却しローカル輸送に特化します。減収にはなりますが、特急車両の譲渡収入が得られる一方、通過車両キロの減少で保守負担が減少しますから、そこで収支をバランスさせることで存続を図ります。超快速スノーラビットで都市間輸送を維持しつつ、鈍速列車スノータートルという企画列車を走らせるなどして増収に励む一方、2018年12月1日には運賃値上げして収支改善を図ります。万博輸送対応の車両を大阪市に譲渡した北大阪急行と同じ手ですね。

幸いなことに高速化で高規格な線路故にメンテナンスフリーなのと、積雪対策により運休が少ないということで、ローカルな利用者の信頼を得ていることで、安定した収支を実現しています。てことでJR北海道もJR九州の前例を梃子に電化や線路強化や積雪対策などで将来のメンテナンスコストを圧縮することと、運賃改定を併せて収支改善を図るのが、道庁が当てにならない以上必要ではないかと。利子補給されているとはいえ低金利で運用益が期待できない経営安定基金ですが、現物投資は優先順位を間違わなければ本業でのハイリターンが可能です。

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Sunday, August 11, 2019

マグロ化するマクロ経済

毎年お盆シーズンには仕入れ先と取引先の休みを確認してスケジュール組んでましたが、今年はアッサリ10日から9連休ということで、働き方改革が進んでるんだろうか?単に今までが惰性だった?てことで社畜大移動は相変わらずですが、後半には台風直撃の予想もあり、実家から戻れない大惨事も^_^;。まあなるようにしかなりませんが。

4~6月GDP、消費が押し上げ 増税前に心理は陰り  :日本経済新聞
令和改元の10連休を含みますので、その分の上振れはあるとしても、予想を超える消費の強さには違和感があります。気になるのが消費の物差しとして家計調査から商業統計にシフトしたことがあります。家計調査はサンプル数の制約から誤差が大きいという理屈で、より誤差の少ない商業統計を用いたというのが公式見解ですが、商業統計にはインバウンド消費の数値が入っている訳で、適切なデータ補正を行うのでなければ、データの連続性は損なわれますが特に言及されてません。10月の消費税増税を前に消費を強く見せる必要がある訳で、邪推したくなります。

その一方で消費動向調査や景気ウォッチャー調査など消費者心理の物差しは悪化傾向が見られます。これだけが原因ではないとしても、設備投資や在庫投資は概して低調で輸出減の影響で経常収支の黒字幅も減少しています。米中摩擦や日韓摩擦で先行きに暗雲が垂れ込めてますから、ある意味企業のこうした動きは合理的でもある訳です。加えて14年の消費税増税時には凡そ3か月前から見られた前倒し消費の気配が見られず、プレミアム商品券やポイントバックなどの一連の消費落ち込み回避策も不発の可能性すらあります。控えめに言ってもお先真っ暗です。

てことでアベノミクスの神通力も尽きた現状ですが、世界を見渡せばアベノミクスの失敗を追随する動きがみられる点が気になります。例えば米FRBの10年ぶりの利下げですが、0.25%の利下げで且つ追加利下げを否定するパウエル議長の発言もあって市場は落胆し、NY株は連日下げ続けることになります。そしてトランプ政権高官の怒りの発言です。

米大統領補佐官、FRBに利下げ要求 「0.75%か1%」  :日本経済新聞
これゼロ年代の小泉政権時代に財務省の溝口財務官による非不胎化為替介入に、速水日銀総裁の後継総裁として福井総裁が協力して量的緩和を行ったことが思い出されます。福井氏は平成の鬼平と言われた三重野総裁や速水総裁に近いタカ派と見られていただけに、驚きと共に政府や市場から歓迎されました。

しかし福井氏の狙いは、速水氏のゼロ金利解除時に受けたバッシングで後に量的緩和に追い込まれた経緯を見て、量的緩和の出口と再利上げをスムーズに進めるため、量的緩和が無意味な政策であることを実証するためという倒錯したスタンスのものでした。そして後に景気を見ながら量的緩和の解除と利上げを粛々と進めてバッシングを受けます。それでも僅か0.5%とはいえ利上げに踏み込んだ結果、リーマンショックに直面した後任の白川総裁に利下げ余地をもたらしました。

しかし緩和バンザイのリフレ派は納得せず、後の安倍政権誕生による白川総裁へのあからさまな政治圧力となり、セントラルバンカーとして受け入れられない白川総裁は辞任します。そして後任の黒田総裁による異次元緩和に繋がる訳ですから、今振り返れば福井総裁の思惑が時を重ねて逆に作用したと言えます。その意味で景気悪化が見られない中で政治圧力をかわすための予備的利下げに踏み込んだFRBパウエル議長の対応は、まるで福井総裁のそれとよく似ています。何しろ「為替操作国」中国に対抗するために利下げしろ!って話ですから。しかしタイミング良くIMFが反論します。

IMF「中国の為替介入みられず」 年次報告書で指摘 (写真=ロイター) :日本経済新聞
中国人民元の国際化に助言してきたIMFから見れば当然の指摘です。主要通貨バスケット連動の実効為替レートに基づく基準値に一定の変動幅を認める現在の為替政策もIMFの助言に基づきます。そのため変動幅を抑える目的の為替介入はありますが、基本的には変動相場制に近いものになっており、アメリカの「為替操作国」指定は言いがかりと言って良いでしょう。

視点を変えて日米中のドル建て名目GDPの推移を見ると、アメリカの焦りもわかります。日米のGDPが最も接近したのが1995年でアメリカ7.6兆ドルに対して日本5.5兆ドルと7割水準でしたが、当時円高で国内景気は不透明な一方、ITとネットで新ビジネスが勢いを増していたアメリカとは差が開く傾向にありました。ちなみに当時中国は0.7兆ドルでアメリカの1割にも満たない存在でした。

それが2018年にはアメリカ20.5兆ドル、日本5兆ドルに対して、中国は13.4兆ドルにまで肉薄しています。しかもITとネットが息切れ気味のアメリカに対して、まだ伸びしろのある中国ですから、アメリカの焦りは大きい訳です。一方日本は停滞著しく、アメリカの1/4、中国の1/3弱と差をつけられています。加えてドル建てではなく実効為替レートで見たGDPは2014年に既に米中逆転が起きています。つまり物価水準が低いから名目値は追いつかないけど、少なくとも1億人は居ると言われる先進国レベルの高収入層の購買力は既に逆転しているってことです。

実はこれが中国の高成長をけん引していると見られます。現状沿岸の都市部限定でしょうけど、バブル期の日本に匹敵するようなボリュームのコンシューマーが国内市場を活性化させていて、残る13億の民がそれを支えている構図ですが、よくよく考えれば日本の高成長も後背地としての台湾、韓国、ASEANの成長に支えられてきた訳で、そうして日本が築き上げたアジア型バリューチェーンを中国は国内に抱えてるってことです。

実はこれ、欧州と中東アフリカの関係やアメリカと中南米の関係も似ていますが、経済成長に伴って国民意識が芽生えてくると、いつまでも開発独裁的な先進国にとって都合の良い途上国に留まることが難しくなり、民主化される訳です。そうして新興国としてグローバル市場に出てくると、取引相手を自分たちで選びますから、アジアの国が成長著しい中国になびくのも自然ですし、同様に中南米やアフリカも、民主化や人権問題でとかく内政に口出ししたがる欧米より寛容な中国を選ぶ傾向も出て來る訳です。逆に香港の民主化やウイグルの自立は中国政府として認め難い問題ってことですね。アメリカのベネズエラへの圧力も同じ文脈で見ることが出来ます。

あとEUの東方拡大も中国と同じ成長の構図を作るためという見方が可能です。面白いのは東方拡大に積極的だったイギリスがBrexitで揺れている一方、東西統一で旧東ドイツを国内に取り込んだドイツはそうでもなかったけど、結局東欧からの移民取り込みにはうまく対応した一方、誇り高いフランスは波に乗れなかったので、EUの統合強化に活路を求めている訳です。この構図で見ると、朝鮮半島の南北融和は少子化が進む韓国にとっては成長戦略なんですね。確実に言えるのは、某日本国は取り残されつつあるってことです。

ただ誇ることじゃないんだけど、日本の低成長は欧米にも同様に起きており、その意味では日本は世界をリードしてたことは間違いありません。その意味でFRBパウエル議長の利下げを巡る動きが福井日銀総裁の轍を踏んでいるように見える問題は示唆に富みます。低成長化するアメリカが中国の追い上げに危機感を抱き、金融政策への政治介入まで日本を見倣うのか?

これトランプ政権だけの問題じゃなくて、対中強硬策は寧ろ民主党議員の方が熱心だったりします。しかも日本の異次元緩和に倣って現代貨幣理論(MMT)を唱えて社会保障充実を主張する大統領候補者まで現れてます。幸いアメリカの主流派経済学者たちはこぞってMMTを批判してますが、逆に日本では歓迎する人たちがいて、かつて日銀を叩いた所謂リフレ派と被っています。結局金融緩和と財政出動を重ねて効果が逓減している日本と同じ轍を踏むだけですね。尤も米中摩擦で輸出に頼れず財政出動で強引に経済を下支えしようとする中国もいずれ同じ轍を踏みます。マクロ経済政策が効かなくなって経済がマグロ化する訳です。

中国に関しては日本に先んじている部分もありまして、短期間で急速にインフラ整備を行った結果、鉄鋼やセメントの供給過剰でダンピングまがいの低価格輸出に向かったのも確かですし、過剰な生産力を国内で消化しきれないから一帯一路で周辺国へのインフラ輸出攻勢をかけている訳ですが、それでも過剰生産力を抱えた国有企業のゾンビ化は避けられず、その裏には過剰債務があり銀行から見れば不良債権なんですが、ハードランディングは暴動を誘発しかねないので、時間をかけて処理する結果、いつまでも処理が進まないってことになります。蛇足ですが、中国の高速鉄道は日本列島改造論で描かれた旅客列車を高速新線に移して在来線の貨物輸送を強化するというコンセプトに忠実です。

地方の隅々まで立派な道路が出来て、世界一の高速鉄道網を完成させたものの、内実は大赤字だったりします。この面では北海道新幹線を除いて辛うじて黒字の日本の整備新幹線の先を行ってます。投資主導型の経済成長の限界から来る帰結ですが、票になるからとにかく新幹線という日本が危ういのは固定資本減耗に沈む未来に繋がるからですね。いい加減目を覚ませ!

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Saturday, May 11, 2019

セコCOCOM

5月4日、令和を祝うように祝砲が上がった東アジア。ホリエモンロケットと北朝鮮の飛翔体。同じロケットでも政治が絡むと呼称が変わります。敢えてミサイルと呼ばないのは、アメリカも和平プロセスそのものは維持したいからです。対中国、対イランでガチ勝負だから北朝鮮どころじゃない訳です。ホリエモンロケットならぬキムエモンロケット^_^;。

そしてアメリカの突然の対中国制裁発動ショックが連休明けの株式市場を襲います。礼は要らんどころかCOCOMしちゃった訳です。対中強硬策は80年代のジャパンバッシングと酷似は昨年末のエントリーで指摘した通りですし、基本的な枠組みは昨年末と何も変わっておりませんが、年が明けて米FRBが利上げ停止を宣言したのが大きく異なります。昨年中から市場関係者のFRBの利上げ姿勢への批判は絶えず、その声に押されるようにトランプ大統領も圧力発言を繰り返しておりましたが、利下げ停止を好感して市場は持ち直しました。そうなると元々史上最低水準の失業率に加えて緩和的な金融環境でアメリカの国内景気は堅調に推移します。FRBの利上げ警戒感で対中強硬策を採りにくい状況が変わって、強硬策を打っても国内景気への反動は弱いという判断が働いた結果です。

貿易摩擦、痛みは中国に 安定物価が米政権強気支える: 日本経済新聞
いや機を見るに敏というか、基本ビジネスマンのトランプ大統領らしいとは言えます。ここで強硬に出てもコストは許容範囲ってことですね。ビジネスマンのコスト感覚というか、基本セコいんです^_^;。

という訳でかつての冷戦に対して新冷戦という見方もされてますが、アメリカが問題視するのは軍事力よりも技術力の脅威であり、その様相はかなり異なります。故にかつてのCOCOMでは軍事転用可能な輸出品の規制だったのが、通信やハイテク分野での封じ込めが意図されてます。例えばCOCOM未加入で永世中立国を宣言していたスウェーデンのアゼア社(後にスイスのブラウンボベリー社と統合してABBを構成)がCOCOM規制で動けない欧米勢を尻目にユーゴスラビアなど東欧諸国への鉄道車両輸出を重ねます。それでもAMTRAKメトロライナー用電気機関車を輸出するしれっとしたところがありました。永世中立国って便利です。

ところが5G通信を巡る技術では、米クァルコムが気を吐いているものの、中国頼みの本音もあり、通信機器を含むトータル技術では中国HUAWEIとノキアやエリクソンといった北欧勢が中心で、アップルが頼みとしていたインテルさえ蚊帳の外。ましてNECや富士通、韓国サムスンやLGも国内だけのローカルブランドに成り下がっています。それでも韓国は5G一番乗りを宣言し、後にアメリカの前倒しで逆転されますが、日本勢は声も出ません。で、同盟国と呼ぶには微妙な立ち位置の北欧勢を頼みとする訳で、まして韓国勢とも微妙な距離感で、ある意味アメリカの焦りはよくわかります。その分同盟国への圧力は厳しくなる訳です。

しかもイギリスやドイツはHUAWEIを排除しない姿勢で同盟国をまとめ切れていない中で、アメリカの本気を見せる必要に迫られていたということは言えます。てことで、この事態は想定しておくべきだったということが言えます。そして中国の出方次第では膠着状態になることが予想されます。となると成果を出したいトランプ大統領は日本をターゲットにしてくるでしょう。不思議の国ののトランプの兵隊の足音が^_^;。

おまけ。

二俣川―新宿760円 相鉄のJR直通線の運賃が認可  :日本経済新聞
COCOMエントリーで取り上げた相鉄JR直通運転の運賃認可のニュースです。記事では合算額のみの記述ですが、相鉄新線の西谷―羽沢横浜国大間の営業キロ2.1㎞でおそらくJRは鶴見―横浜羽沢間の営業キロ8.8㎞を適用し、相鉄新線に30円の加算運賃という構成ですね。横浜乗換の現行運賃よりやや割高ですが、列車本数が限られる中、乗客の転移が増えすぎても困るという微妙なところが垣間見えます。ハイテクを巡る米中のせめぎ合い同様複雑な構図です。

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Sunday, February 24, 2019

限界都市川崎

別に川崎に悪意がある訳じゃないんですが^_^;、サイドバーの書籍からお題を頂きました。同じくサイドバーの週刊東洋経済の通勤電車特集から、最強の通勤電車ランキング32路線中32位のワーストに選ばれた横須賀線のE217系の置き換えにE235系投入が発表され、普通車がオールロングシートになることがネット上で話題になりましたが、横須賀線のワーストの理由が混雑率の悪化ってことで、実は武蔵小杉のタワーマンション群に原因があるのでした。

ご存じの通り横須賀線は湘南新宿ラインと線路を共用しており、旧蛇窪信号場の平面交差もあって増発が困難なことが原因なんですが、加えて相鉄都心プロジェクトで今年度下期には相鉄からの乗り入れも始まりますから、その枠も確保しなきゃならない訳です。こちらも埼京線との相互直通ですから、品川東京方面への増発は当面見込めません。となれば当然車両レベルで収容力を高める必要がある訳で、オールロングシートにするしか手がない訳です。

長期的には蛇窪の立体交差化が課題ですが、直ぐには実現できません。とにかく朝ラッシュ時には改札入場待ちの列が伸びて危険ってことで臨時改札を設けたけれど、今度はホームが混雑して危険ということで、ホームの増設を決めましたが、完成は2023年で、未だ建設中のマンソンも多く、当面改善は見込めません。大江戸線勝どき駅の二の舞ですね。加えて若い子育て世代の流入で待機児童は増える一方。タワマンたわわな江東区を再現しています。当然小学校、中学校と順繰りに生徒数の増加に悩まされるわけです。

都市部で依然 待機児童多く  :日本経済新聞
待機児童問題は煎じ詰めると都市部固有の問題で、再開発で同じ世代の人口が急増することで起きる訳ですが、それでも都市再開発の流れは止まらず、寧ろ開発を促すために容積率の緩和が行われる状況です。そして世代の多様性がないから将来はそっくり高齢化して空き家候補になる訳です。将に限界都市まっしぐらです。

川崎というと工業都市のイメージが強いのですが、新興財閥の浅野財閥による川崎鶴見の埋立地開発に遡ります。元々多摩川の砂利輸送を意図した南武鉄道と奥多摩地区の石灰石採掘から派生した青梅鉄道(後に青梅電気鉄道)、五日市鉄道が立川で繋がったことで、京浜運河沿いの埋立地に浅野セメントが工場を作り、奥多摩からセメント工場への一気通貫の輸送体系を形作ります。加えて隣接する鶴見の埋立地が造成され工場が建ち、原材料や製品の輸送を担う鶴見臨港鉄道が開業し、当初貨物専業でしたが、工場が増えて従業員輸送の要請から旅客営業を始めます。何れも戦時買収で国鉄に編入され青梅線、五日市線、南武線、鶴見線になります。東京や横浜の港湾は政府の手によるものですが、埋立から民間資本で形成されたのが京浜工業地帯の特徴です。

蛇足ですが、南武鉄道のバス部門が小田急グループの立川バス、青梅電気鉄道のバス部門は奥多摩振興から京王グループの西東京バスへ併合、鶴見臨港鉄道は川崎鶴見臨港バスとなり京急グループに属します。歴史にIFは禁物ですが、戦時買収が無ければ大東急の一員となって小田急、京王、京急に分割されたか、相模鉄道のように東急に経営委託しながら独立を維持したかなど興味をそそられます。

加えて戦時体制で南武線沿線には通信機器などの軍需工場が立地し発展しました。大師参拝輸送からインターアーバンに進化した京浜電気鉄道や省電時代のスター京浜線は目いっぱい恩恵を受けた訳です。特に省電京浜線は東京本社の幹部による工場視察の便宜を図って二等車(現グリーン車に相当)が連結されていました。モータリゼーション夜明け前の当時、二等車は社用車の役割を担っておりました。

しかしそれ故に環境悪化で住宅地としては不人気でしたが、グローバル化で工場の海外移転や競争激化による撤退もあり、広大な工場跡地が残されます。これが種地となって再開発が進み、特に横須賀線武蔵小杉駅の開業で利便性を高めた武蔵小杉は人気エリアとしてタワマンが多数つくられて人口急増した訳です。

これは川崎市にとってもJR東日本にとっても計算外だったと思われますが、東京の大江戸線沿線やAGTの新堀舎人ライナー沿線など、交通インフラの整備に伴って開発が過熱して需要が想定を上回る事態が続きます。しかも多様な業務都市が画一的な住宅都市へ変貌することで矛盾を抱え込んでしまうことになります。この観点から二荒山神社の隣にタワマンが建って景観を損なうなど物議を醸す宇都宮市ですが、LRTで沿線開発が誘発されると、寧ろ都市のスプロール化か進み限界都市化という懸念があることは指摘しておきます。一方明るい話題もあります。

横浜地下鉄の延伸予定区間を歩く 住宅地に募る期待  :日本経済新聞
同じ川崎市でも多摩丘陵の住宅地に地下鉄ができるって話です。横浜市営地下鉄ブルーラインの新百合ヶ丘延伸ですが、自前の地下鉄に拘り事業認可まで受けながら、財政事情から断念した川崎市が、横浜市と協定を結んで実現したところが新しいところです。

公営地下鉄の越境自体は都営新宿線の本八幡(千葉県市川市)、大阪市営御堂筋線の江坂(吹田市)となかもず(堺市)の例がありますが、政令市同士の協定というのは前例がありません。尚、御堂筋線のなかもず延伸は1987年で堺市の政令指定都市化は2006年ですし、堺市は中百舌鳥堺線の構想はあったものの具体化はされず寧ろ阪堺電軌を軸とした公共交通活性化に取り組むなどしていて、川崎市とは事情が異なります。

川崎市内のルートが未定で、駅設置と絡んで3ルートが提案されてますが、最も新百合ヶ丘から距離があり、周辺バスの本数や乗車率の高い東ルートのヨネッティ王禅寺案が有力です。ヨネッティ王禅寺はゴミ焼却工場に併設された市営スポーツ施設で市民の人気スポットであると共に、近くに田園調布学園のキャンパスがあり通学需要も見込めます。そしておそらく自前の地下鉄構想が尻手黒川道路ルートだったことから、断念された地下鉄計画でも駅設置が考えられていたと考えられます。

そして横浜市内の剣山は戸建て中心の住宅地に付随する商業集積があり、すすきのはすすきの団地最寄りで隣接する川崎市域の虹ヶ丘団地も駅勢圏で、既に成熟した街で開発余地はあまりありませんが、その方が武蔵小杉のような想定外の事態を招くこともなさそうです。

川崎市の地下鉄構想は元々武蔵野南線の旅客化とセットで構想され、川崎―武蔵小杉間と梶ケ谷貨物ターミナル―新百合ヶ丘間を建設するというものだったのですが、武蔵野南線の旅客化は具体化せず、尻手黒川道路ルートで自前建設を目指し、横須賀線武蔵小杉駅開業で武蔵小杉経由に変更して事業認可を受けて断念という経過を辿るんですが、川崎市でもう一つ具体化した京急大師線の地下化による連続立体化事業が大いに振り回されました。川崎駅で地下鉄と大師線は繋がる形の構想が描かれてましたが、この辺が曖昧で、一方新百合ヶ丘で小田急線との乗り入れも検討されという具合に軸が定まっていなかったので、結局実現は無理だったでしょう。

京急大師線の地下化は市役所通り地下を東へ進み(仮)宮前を経て川崎競馬場地下でS字カーブしてR409に合流する地点に港町駅を設置して川崎大師駅で現在線ルートに合流し産業道路東側で地上へ出て地上駅の小島新田に至るというルートですが、地下鉄との関係が詰められないから工事が度々延期される一方、アクアラインの開通で浮島へ向かうルートを支障する産業道路の踏切は解消されず、また旧いすゞ自動車工場跡地を中心に羽田空港へ渡る橋とセットで先端企業誘致の再開発となる殿町プロジェクトの具体化もあって仕方なく東門前―小島新田間を先行着手することになりました。尚、京急川崎―川崎大師間の地上線は回送線として残りますが、地下鉄計画がなくなった結果、地下化に伴うルート変更の意味も問われます。

川崎市は例えば神奈川臨海鉄道浮島線の旅客化や南武支線の川崎駅連絡線や東海道貨物線を利用した羽田空港アクセスなどいろいろ構想を思い付きのように発信しておりますが、実現に向かって具体化はしておりません。産業構造の変化に翻弄される苦しさはありますが、もう少ししっかりしたビジョンを持つべきでしょう。自前の地下鉄を断念したんですから、次はJR東日本と協定を結んで区画整理事業と連動した南武線の立体化や長編成化など、現実的な都市開発を模索する方が良いように思います。以上非住民の外野のたわごとかもしれませんが。

 

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Sunday, February 17, 2019

鈍器法定

統計不正問題がいよいよ森加計問題と酷似してきました。これ統計法違反という明らかな違法行為なんですが、捜査当局は動く気配なし。そして関与した上級官吏は口をそろえてゴマカシや答弁拒否。一方実行部隊の下級官吏からはリーク続々。アベノミクスの成果を良く見せる改編が行われたと考えてほぼ間違いありませんが、ウソノミクス統計135°でさわりは明らかにしてますので、ここでは踏み込まず別の話題。

大林組、増収増益  :日本経済新聞
「受注企業JR東海が差配」 大成と鹿島、無罪を主張 リニア談合初公判 他2社と認否真っ二つ :日本経済新聞
元々大林組が公取委に申告して発覚したものですが、談合を認め処分を軽減した大林組、清水建設に対して、争う姿勢を見せる大成建設、鹿島建設という構図で公判も分離されてますが、主張は真っ向対立してます。

既に分離公判で有罪が確定している大林組ですが、120日間の民間土木工事中止の処分も受けてますが、実は増収増益。つまりリニアは儲からないから逃げ出したってことですね。加えて2025年の大阪万博開催が決まり、関西地盤の大林組は竹中工務店と共に受注が増えることが見込まれます。つまり大手ゼネコンが仕事を選ぶようになったってことです。

これJR東海にとっては痛い話です。というのは、そもそもリニア建設着手は国鉄民営化時に新幹線保有機構からリースする形で、リース料に旧国鉄債務の一部を乗っけたスキームから、JR東日本の上場審査の過程で主たる収益資産が自己保有でないことのリスクを指摘され、同じ立場のJR東海、JR西日本と共に国に譲渡を申し入れたことで、譲渡代金のローンが始まり、それが2017年にほぼ完済されたことから生じる資金余剰があってこその自前整備ですから、逆に言えば予算上限は厳しく管理する必要があります。

それでも当初名古屋まで5.1兆円と言っていた事業費が膨らみ5.4兆円となっているように、ジワジワと膨張しているわけです。当然利益を削られるゼネコンにとっては旨味が少ないのですが、それでも五輪後を睨めば無下にできない訳で、特に五輪関連や豊洲市場など東京都が絡む事業に深く食い込んでいる大成建設や鉄道会社との関係を気にする鹿島建設は断れない。そしてこうなるってことですね。これだけなら民間同士の話ですから、談合事件で公取委が動くことにはならないのですが。

しかし大阪への早期延伸を望む声が与党議員から出てきて財投債で9兆円の融資を決めたことで、公共性ありと判断されて事件化されるんですから、何がどう転ぶかわかりません。それでも談合事件の立件は難しいところ。大林組の申告が渡りに船だったのでしょう。政府が関与するといろいろ不都合が生じるのは森加計問題や統計不正問題ばかりではありません。

JR東日本の整備新幹線区間への追加投資に絡んで、整備新幹線の法定速度って話題がネットに出てきて「法定速度を超えると線路使用料が上がる」などの妄言も見られますが、これ根拠法の全国新幹線鉄道整備法で定義されている設計最高速度が法定速度と誤って理解されているのが実際です。そもそも東海道新幹線の設計最高速度は210km/hですが285km/hで営業運転されてます。東海道新幹線の建設時には整備法は無かったので超法規的に独自規格で作られたもの。その結果を踏まえて全国新幹線網整備に当たって将来の技術革新によるスピードアップを先取りする形で定められた基準がそのまま見直されずに来たというのが実際です。

そもそも新幹線の事業主体は国であり、国の鉄道事業を体現する国鉄がその任に当たるという前提で作られた法律ですから、国の事業である以上恣意的な解釈で骨抜きにすることは許されないということから、設計最高速度やそれに付帯する最急勾配や最小回転半径などの基準が定められたのが実際。それが国鉄分割民営化で事業主体が消滅すると当時の与党議員が騒いで事業主体となる国のところを各旅客会社に読み替えることで延命させた結果です。

しかも財源がないからあの手この手で財源をひねり出すために、並行在来線の切り離しなどでJRに負担をかけないことや、受益者となる地方の負担も定めるなどされたものです。結局整備計画の延命のために恣意的解釈をした訳ですが。尚、最急勾配は九州新幹線や北陸新幹線では事業費圧縮の要請から一部基準を超える急勾配があり、将来のスピードアップの可能性を狭めています。

JR東海も当初は中央リニアを整備新幹線の枠組みで考えていたようですが、現実に存在しないリニア新幹線は基準に適合しないってことで当時の運輸省はほぼ門前払いに近い扱いをしていたようです。当時は所謂整備5線(東北新幹線延伸部、北海道新幹線、北陸新幹線、九州新幹線鹿児島ルート、同長崎ルート)の扱いすら決まっていない状態で、そちらを優先しないと地元選出議員からクレームがつく状態でしたから、中央リニアの整備新幹線化は実現可能性が無かったと言えます。

それが新幹線譲渡に絡んで譲渡代金の産出に時価法の一種である再取得価格法が適用されました。これは現在時点で同等の資産を新たに取得する場合に想定される価格ってことで、地価や建設費などの相場を反映したものですが、仮定の置き方で数値は変わり得るものでもあります。当時の運輸省はこれを利用して資産の非償却部分となる土地やトンネルなどのインフラ部分の数値を嵩上げし、嵩上げ分を新設の鉄道整備基金に持たせて整備新幹線の財源に利用することで財源論に道筋をつけました。数値を操作して財源をねん出した訳で、こういったことがあるから統計不正にリアリティが出てきます。

その結果JR本州3社はローン負担を負う訳ですが、同時に整備新幹線事業の推進力を得ることとなりました。加えて新幹線が自社保有となり、膨大な減価償却費が発生し無税で利益控除できますから、これで得たキャッシュフローで設備投資に弾みを付けます。その結果JR東海は品川新駅開業によるのぞみ中心のダイヤ編成で増収を図り、自己資本によるリニア東名間先行の整備計画をぶち上げることになる訳です。

で、JR東海をリニア建設に向かわせた新幹線譲渡代金ローンの終了はJR東日本やJR西日本も同様で、規模の違いはありますが、それぞれ異なった動きを見せています。ウソノミクスでも触れたように一つは東北新幹線盛岡以北の高速化に向けた設備増強ですが、もう一つ大きなプロジェクトも動き出しました。

JR東 都心と羽田空港結ぶ新線、29年度にも開業  :日本経済新聞
羽田空港の国際化と発着枠拡大で今後とも利用Y差は増えると見込んでいる訳ですが、同時に成田スカイアクセスとローコストリムジンバスに食われて劣勢の成田空港輸送の挽回の意図もありそうです。

整備区間の北半分は休止中で遊休化している東海道貨物線の浜松町―東京貨物ターミナル間の線路を活用し、東海道線に合流させて上野東京ラインで埼玉や北関東のアクセスを図るというもの。加えてりんかい線経由で山手西ルートから中央線や埼京線方面、と京葉線や武蔵野線方面の3方向の列車設定を想定しています。千葉県や千葉市が要求する京葉線から総武線への連絡線が実現すれば、羽田空港と成田空港を直結することも可能になりますから、将来的には成田空港輸送のてこ入れにもなるという訳です。

既存施設を活用するプロジェクトですから、資金手当てが見通せれば実現可能性は高いですが、一つネックとなるのがりんかい線の扱いでしょうか。東京都はJR東日本に東京臨海高速鉄道の引き受けを以前から打診してますが、これが動く可能性はあります。都市交通に関わる新線計画ですから、国と地方に応分の負担を求めることになると思いますが、東京都の負担分を東京臨海高速鉄道の株式で行い、事実上のりんかい線引き受けにつなげる可能性はあります。ただしJR東日本の営業規則上、東京近郊区間に組み込まれることになれば、現在の認可運賃から大幅減額となりますから、それによる減収の評価をどうするか。株式評価を下げて都が実質補償するか、あるいは東京近郊区間から外して現行認可運賃を存続させる形にするか、交渉次第でしょうけど注目されます。

おまけ。リニアで散財するJR東海と対照的に経営基盤強化に資するプロジェクトに選択的に投資するJR東日本ですが、JR西日本はといえば、尼崎事故以後の安全投資優先の影響もあって遅れている老朽車両の更新に回るものと見られます。だから広島に錆びない電車が登場し、大阪環状線もリニューアルされると。

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Sunday, December 02, 2018

大後悔時代そしてインド

日産ゴーン逮捕その後。

報酬先送り文書、効力巡り攻防 ゴーン元会長と特捜部  :日本経済新聞
逮捕容疑の有価証券報告書虚偽記載が退任後に受け取る株価連動報酬で、それを記載した報酬文書が日産の秘書課の秘密の金庫に保管されてたそうで、その記載内容によっては報酬を約した契約文書と見做され、未記載は違法性があるということらしい。つまりまだ受け取っていない報酬の約束が未記載ってことで、概算年10億円でその内5年分が逮捕容疑の50億円とか。

これやっぱ無理筋です。もちろんゴーン氏が隠そうとしたことは間違いないとしても、報酬文書の解釈問題という微妙な問題でいきなり逮捕ですから、やはりバランスが悪い。おそらく特別背任罪を視野に入れてるんでしょうけど、2兆円企業の日産にとっての50億円です。会社ぐるみで数千億円規模の粉飾をした東芝とは2桁違うし、会社の利益を棄損する意思が証明されなければ特別背任罪に問えません。やはり森友問題で籠池夫妻を長期拘留した時と同じような不透明感が漂います。

一方韓国では、三菱重工業の徴用工訴訟の判決が確定しました。先日の新日鉄住金の訴訟と同様、2012年に原告敗訴とした下級審の判断の見直しを迫り大審院が差し戻した差し戻し審の上告審ですから、よほどのことがない限り、覆る可能性は無かった訳で,和解すれば終わった話です。2012年は大統領選で李明博大統領から朴朴槿恵大統領に保守同士で政権交代した年で、文在寅現大統領は大統領候補として戦って敗れた訳で、韓国司法の判断は一貫しており、一部報道で見られる進歩派政権に忖度した判決ではありません。

加えて言えば昨今の国際公法と国際私法の関係に関する考え方の変化も見逃せません。例えばナチス占領下のアウシュビッツ輸送に協力したとしてオランダ国鉄が賠償に応じるなど、政府間の条約や協定と私人同士の債務債券関係は別とする考え方が広がっています。政府間の協定である1968年の日韓請求権協定は私人同士の請求権を含まないという韓国司法の判断は妥当です。

あとおまけ。「韓国と戦争だ!」と叫ぶ威勢の良いこと言う人いますが、日韓共にアメリカと軍事同盟を結んでますが、仮に日韓で紛争が勃発したとしたらアメリカはどう動くか?答えは国連憲章第53条第1項後段の「敵国条項」により、アメリカは国連安保理に通告することなく日本を攻撃します。北朝鮮問題で連携が必要なのに何やってんだか。そんな日本の首相に米中の仲裁の期待が語られるって何の冗談?

そのG20もトランプ旋風が話題ですが、皮相的な対立は本質ではありません。このニュース。

トランプ関税、米製造業に跳ね返る GMが北米5工場停止 (写真=共同) :日本経済新聞
トランプ大統領の意図に反してアメリカの製造メーカーが国内工場のリストラを発表したもの。特にGMは中国市場のウエートが高く、またEVやコネクテッドか―などへの投資のために売れないセダン工場を閉じるというもの。輸入原料や部品の関税による値上げで利幅が圧迫される中、EVやコネクテッドカーなど100年に1度と言われるイノベーションに鎬を削る自動車メーカーとしては、儲からない製造拠点を維持する理由はありません。これ日産ルノー問題にも通底しますが、企業が国を選ぶ時代が顕在化したってことです。

この構造が何かに似てると薄々感じてましたが、これ英東インド会社のビジネスモデルですね。大英帝国のベルエポックを画した会社ですが、世界各国の貿易に関与して利益を上げていた点は日本の商社のようでもありますが、決定的に異なるのが武装の特権を得ていて、場合によっては略奪行為も辞さない存在でした。昂じてインドの植民地経営を仕切る存在となりましたが、インド各地を統治するマハラジャを賄賂で篭絡して有利な条件で交易をした、所謂分割統治の主体でした。

つまり、昨今謂われるグローバリゼーションの正体は、巨大化した多国籍企業が主権国家をインドのマハラジャよろしく選別し有利な条件を引き出すことと見れば解けます。これが例えば諸国間の法人税減税競争だったりFTAやEPAなど自由貿易を促進すると言われる国際協定だったりします。当然TPPや日欧EPAも含みますし、アジアのRCEPも同様です。いずれも主権国家の主権を制限する協定という点で、企業に有利に働きます。

日本ではあまり報道されませんが、通商を巡る国際協定ではほとんど最恵国条項が盛り込まれています。これ締約国、加盟国の1国が示した通商交易条件の最も低い水準が他国にも波及するってことでして、例えばTPP加盟国でもあり個別FTAも結ぶチリのワイン関税はTPP加盟各国に留まらず日欧EPAで欧州産にも波及するし、逆に欧州に譲歩した乳製品に関してはTPP加盟国にも波及するという関係になります。こうしてFTAやEPAのネットワークを通じて関税や障壁がどんどん押し下げられていくって話です。このコンテクストで種子法廃止や水道民営化法、農業や漁業への企業参入の自由化など、今将に国会で揉めている数々の法案の成立を政府が急ぐ理由でもあります。いずれもTPPや日欧EPAの関連法ってことですね。

この観点から言えば、例えばBrexitはイギリスの主権回復の主張から出てきた話ではありますが、イギリス自身がスコットランドの独立問題やBrexitの障害になっている北アイルランドの扱いなどで言ってみればバラバラでして、それに留まらず例えば女王陛下がロンドンシティに足を入れる場合には市長の事前承認が必要だったり、一方オートレースで有名なマン島は王族領(王族の私有財産)とされ治外法権扱いとなっていますし、加えて英連邦に所属するインド、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど一応独立した主権国家ながら女王陛下を元首とするコモンウェルス(共和国)があり、その他に未だに存在する植民地や自治領が世界にあり、ある意味本国も含めて分割統治されていたようなものです。この複雑怪奇さがBrexitをもたらしたとも見えます。

更にトランプ現象ですが、アメリカも東海岸と中西部、南部と西海岸とそれぞれ別の国のように住民意識が異なります。前2者は共和党、後2者は民主党の地盤ということで、かなりはっきりとした分断が見られる中で、トランプ大統領が誕生しました。元々州政府の権限が強いアメリカでは、連邦政府のみならず州政府へのロビーイングが盛んです。その結果州政府にロビーして通した政策が企業を利すると、他州も倣ったり連邦政府も結果的に動いたりしますから、ある意味企業にとっては天国のような国です。だからトランプの強面は企業にとってはちっとも怖くない訳で、ここに注目すると裏で起きている企業による主権国家の無力化に目が行かなくなります。

で、日本にいると気が付きにくいんですが、分割統治はイギリスやアメリカだけの問題じゃないんで、Brexitの一方の当事者であるEUも、加盟する主権国家の上部組織として定義されており、やはり主権を制限するという意味でイギリスやアメリカの分割統治システムと似たフラクタル構造にあります。ユーロの番人であるECBは米FRBを手本にしてますし、関税同盟、通貨同盟に加えて移動の自由を保障するシェンゲン協定で労働力の国境を越えた移動を可能としてます。

結果的にEUと加盟国の関係がアメリカの連邦政府と州政府の関係と酷似することになります。ギリシャやイタリアの南欧問題とか、近ごろ民族主義の台頭著しい東欧問題とか、統合によって分断が顕在化しており、アメリカとの相似相が見られます。幸いなのはEUはまだ米連邦政府ほどの力を持たないからトランプが出現しませんが、汎西欧主義を謳うフランスのマクロン大統領が打ち出したEUによる安全保障構想はEUの統治機能強化とセットですから、ある意味隠れたトランプかも。日産ルノー問題で対峙する日本政府は頼りない。あと内緒ですが、地方政府に北京政府=共産党が君臨する中国も相似相ですね。

国鉄分割民営化で鉄道改革で世界をリードしたと言われますが、欧州の鉄道改革で手本とされたのは、むしろアメリカです。1970年のペン・セントラル鉄道の破綻後、紆余曲折を経て国有化され、鉄道資産保有公社のコンレールとなり、経営悪化の鉄道会社の多くもコンレールに合流し、上下分離して鉄道会社は線路使用料を払って鉄道運営する存在になり、州をまたぐ長距離列車は連邦運輸公社(AMTRAK)へ移管されました。

アメリカでは民間での再建に失敗し国有化して、再度民間に売却したり、規制緩和で路線の改廃再編が行われたりと紆余曲折はありましたが、欧州では元々国ごとに地域分割されていて国境をまたぐ国際列車も多数運行されていたこともあり、アメリカの上下分離を取り入れてオープンアクセスで新規参入を促す形になりました。貨物を除いて上下一体の日本の国鉄改革は参考にならなかった訳ですが、寧ろJR北海道問題に見るように、日本が上下分離をせざるを得ない現状では日本が欧州を手本にせざるを得ません。

長くなりましたが、今後MaaSの時代には鉄道と自動車産業の境界も曖昧になり、ハイブリッドな産業進化が見込まれます。一方で人手不足で都営バスにまで減便の波が押し寄せる現状でもあります。3万点の部品を集成するアセンブリ―産業ですそ野が広く雇用創出力の高い自動車産業の変化は片方で雇用不安を呼び起こす一方、生産性向上に制約のある運輸などのサービス産業は人手不足に悩まされ、産業間の労働力移転も困難です。結局この問題を解決しない限り、社会の分断は無くならない訳です。規制緩和すれば良しとはいきません。グローバル時代の後の大後悔時代は暫く続きそうです。

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Monday, July 16, 2018

北のスットコドッコイ

前エントリーの続きです。本題に入る前にこのニュース。

人口、最大の37万人減 生産年齢人口は6割切る  :日本経済新聞
死亡数と出生数の差の自然減が39万人で海外との転出入を加えて37万人の減少ってことです。当然ながら15-64歳の生産年齢人口の減少はもっと多いわけです。都道府県別では東京、埼玉、千葉、神奈川、の首都圏4都県と愛知県と沖縄県のみ増加ですが、そのうち自然増は沖縄県だけで、他の5都県は転入超過による社会増ですから、その分地方の人口減の勾配もきついわけです。

あと外国人の増加が16万人ってことですが、いろいろ問題が指摘される外国人技能実習生だけでも25万人を受け入れていて、その他留学生や高度スキルの就労ビザ対象者もいるわけですから、純増が16万人ってことは相当数の帰国外国人がいるってことです。移民や永住権取得が難しいからこうなるわけで、人手が足りないから外国人就労を拡大といっても、現実の生産年齢人口の減少には追い付かないわけです。人口減という現実を受け入れるしかないわけです。

この状況を踏まえて以下をお読みいただきたいんですが、事故や不祥事が重なって先行きが危ぶまれているJR北海道に未来はあるか?っていう話です。JR北海道もJR総連系のJR北海道労組が組織率8割を超える中で、JR東日本と明らかに異なる労使関係があるわけです。

元々赤字基調だからってことで経営安定基金が与えられ、その運用益で赤字を補填するスキームだったわけですが、90年代半ば以降の低金利によって赤字補填が果たせなくなり、基金の積み増しをした上で現状(独)鉄道建設運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)への預託で高金利運用という事実上の利子補給による補助金でどうにか最終赤字を回避している状況です。

加えて事故の原因となった老朽設備の更新も国の支援を得ながら進めている状況なのですが、事故や不祥事の背景として、JR北海道は益出しのために努力してきたんですが、その結果必要な人手確保がままならなくなり、それが事故の遠因となったり、データの錯誤に見られる不祥事につながったわけですね。その意味で強面の労組は役割を果たせなかった訳です。

JR北海道で起きていたのはおそらく労使の癒着だったと思われます。それ故現場の人手不足もゴマカシがまかり通る状況だったと考えられます。そんな状況を変えようとしたのが自殺した中島社長って話がここへきて出てきています。

そのために島田現社長を総務部長に据えて労組との交渉窓口の一本化を狙ったものの、JR北海道労組は反発して険悪になった状況で、事故や不祥事が重なって国交省の立ち入り検査を受けることになり、JR北海道労組も協力を約束していたものの、直後に札幌労基署による本社社員の36協定違反の摘発があり、労組側が態度を硬化して島田総務部長の関連会社出向を余儀なくされたという経緯がありました。それで追い詰められての自殺ではないかという見立てです。

本社社員もJR北海道労組に所属していたのだから、労組側が知らなかった筈はないと言われてますが、おそらくこれ本社社員だけの問題じゃなかったんじゃないでしょうか。各現場で人手不足が起きていて、36協定順守ところじゃなかったとすれば、そりゃ事故や不祥事も起きるし、労組側からの改善要求もあったはずです。しかし増収とコストカットに励む経営陣を動かせなかったという意味で、労組側からすればスルー出来ない問題ではあります。労使の癒着自体は日本の大企業で結構見られますが。

というわけで、国主導で島田氏の社長指名と設備更新補助金の交付が決まったものの、覆水盆に返らず、労使関係は険悪なまま、後ろ盾のない島田社長は指導力発揮もままならない中で、自力での維持が困難な線区を発表し、自治体にボールを投げたのが現状です。ただ現実的には冒頭の人口減のニュースに見られるように、北海道で言えば札幌都市圏以外の地域の人口減少は今後も続くと見るべきですから、その中でJR北海道が必要な人手を確保して現在の規模を維持できると考えるのは現実的ではありません。人口動態に合わせて身を縮めるのはほぼ唯一の現実解でしょう。

自治体にとっては青天の霹靂でしょう。元々人口減少が止まらず、財政再建団体に指定された夕張市はいち早く廃止を受け入れ、JR社員の出向など条件闘争で実を取った形ですが、夕張支線のように単一自治体だからという面もあります。廃止若しくは公的支援を求めるエリアは広大で、広域自治体としての北海道の対応が待たれますが、高橋知事は経済や人口の状況が分割民営化時と著しく変化していることを理由に国に対応を求めています。財政負担を警戒してという側面はあるものの、経営安定基金による赤字補填もままならず、沿線人口の減少も収まらない中で、交通政策基本法を盾に対応を迫られても受け入れられないってのは正論です。

加えて国絡みの問題も多数あります。例えば北海道新幹線の札幌延伸問題も、JR北海道は自治体との合意を得て国に要望してきたものの、時期の問題が見通せないまま、札幌駅の新幹線駅スペースと見込まれていた駅南の用地に駅ビル(JRタワー)を建てたことで、道庁などから非難されましたが、商業スペースとして価値の高い遊休地の有効活用は当然の話ですし、建設時点で札幌延伸は決まっていませんでした。

その結果新幹線札幌駅の位置問題が二転三転して大東案に決まったのは最近のことです。北海道新幹線の札幌延伸が前進して2030年開業が決まったものの、駅をどうするかで迷走したわけです。当初北口側に新ホームを作って順繰りに振って1,2番線を新幹線用に転用する案が提案されたものの、既に北口の開発が進んで支障する建物が多数あると断念され、西案、東案、地下駅案が検討されたものの何れも却下され、修正東案として1番線南にギリギリ設置可能な1線分のスペースを新幹線上りに充て、1番線を新幹線下りに転用した上で東へ延伸して在来線とずらして設置する修正東案に落ち着いたものの、これも東日本大震災を受けて耐震補強が必要となり、結局在来線駅から離れた元の東案を大東案として決まったものです。位置的には札幌市営パーキングがあるということで、新幹線ターミナル駅設置のスペースも十分な上、駅前に新たな再開発ビル建設の可能性もあり、JR北海道の経営にもプラスと評価されますが、地権者の札幌市の意向は現時点で不明です。

あとJR貨物問題もあります。北海道の農産物を消費地の首都圏や近畿圏に輸送する上でJR貨物の役割は大きいのですが、それが結果的に線路を痛める原因にもなっております。加えてJR貨物は国の支援を得て設備強化投資をした結果、ドライバー不足によるトラック輸送からの移転もあって黒字転換が見込まれる状況ですから、格安な線路使用料を強いられてきたJR北海道には見逃せない問題です。まして株式上場まで取り沙汰されてますから尚更です。

温暖化の影響もあって北海道が稲作適地になりつつある現状もあり、競争力のある農業が叫ばれる中、その競争力を維持する意味で市場アクセスに欠かせないインフラとしての貨物鉄道という視点から、国の関与を強める余地はあります。貨物輸送のためにJR北海道の路線の一部を国の所有としてJR貨物やJR北海道に留まらず、自治体出資の三セクが第二種事業者としてローカル輸送に参入する余地を持たせるあたりに着地点があると思いますが、国が動く気配はありませんね。

加えて訪日外国人が増えている中、北海道観光人気で新千歳空港の利用が増えており、千歳線支線(南千歳―新千歳空港)が単線で空港駅も1面2線のため、対応しきれていない状況にあります。そこで新千歳空港駅を移転して3面4線とし、外側2線を千歳線につなげ、途中で単線を分岐して石勝線につなげる改良案が提案され、2022年の完成を目指すとされてますが、事業費は1,000億円規模になるということで、費用負担を巡ってひと悶着ありそうです。

実現すれば複線のまま空港新駅へ入れるだけでなく、苫小牧方面や帯広方面からも直接アクセスできるようになり、輸送力面に留まらず利便性も改善されますが、よく考えたら自衛隊と共用時代の千歳空港ターミナルビルとこ線橋で直結だった千歳空港駅(現南千歳駅)の機能を取り戻すだけであり、民間空港分離で誕生した新千歳空港のターミナルビルが離れた位置に作られたから仕方なく単線の空港支線を作った訳で、ここでも国の政策に翻弄された現実があります。しかも費用負担の問題でおそらく国の支援制度活用となるでしょうけど、JR北海道の事業縮小構想もあり自治体との調整は微妙です。また滑走路下のトンネル工事など難工事も予想されます。

あとこの問題は思わぬところへ飛び火しております。コメントを頂いたはまださんにご指摘いただいた日本ハムファイターズの北広島ボールパーク構想です。ダルビッシュや大谷をメジャーリーグへ送り出しながら若手の育成で実力を維持し、人気球団となったファイターズですが、不自由な札幌ドームに不満を抱いていたわけですが、ポスティングの補償金を得てそれを活かしたボールパーク構想を発表し、自治体向けに誘致コンペを行うというスキームを打ち出したところ、応札して勝ち抜いたのが北広島市です。

元々市民運動公園整備を構想し広い用地を確保していたところへ、ファイタースのコンペでボールパークをコア施設としてアクセスも千歳線に新駅を作って直結というもので、JR北海道にとっては増収策になるから大歓迎かといえば、空港輸送で線路容量に余裕のない状況では、寧ろ負担になりかねないということでご議論を呼んでいます。竣工予定は2023年3月ですが、空港新駅がそれまでに完成している確率はかなり低いと言えます。

さて、一番のスットコドッコイは誰?

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