鉄道貨物

Saturday, May 11, 2019

セコCOCOM

5月4日、令和を祝うように祝砲が上がった東アジア。ホリエモンロケットと北朝鮮の飛翔体。同じロケットでも政治が絡むと呼称が変わります。敢えてミサイルと呼ばないのは、アメリカも和平プロセスそのものは維持したいからです。対中国、対イランでガチ勝負だから北朝鮮どころじゃない訳です。ホリエモンロケットならぬキムエモンロケット^_^;。

そしてアメリカの突然の対中国制裁発動ショックが連休明けの株式市場を襲います。礼は要らんどころかCOCOMしちゃった訳です。対中強硬策は80年代のジャパンバッシングと酷似は昨年末のエントリーで指摘した通りですし、基本的な枠組みは昨年末と何も変わっておりませんが、年が明けて米FRBが利上げ停止を宣言したのが大きく異なります。昨年中から市場関係者のFRBの利上げ姿勢への批判は絶えず、その声に押されるようにトランプ大統領も圧力発言を繰り返しておりましたが、利下げ停止を好感して市場は持ち直しました。そうなると元々史上最低水準の失業率に加えて緩和的な金融環境でアメリカの国内景気は堅調に推移します。FRBの利上げ警戒感で対中強硬策を採りにくい状況が変わって、強硬策を打っても国内景気への反動は弱いという判断が働いた結果です。

貿易摩擦、痛みは中国に 安定物価が米政権強気支える: 日本経済新聞
いや機を見るに敏というか、基本ビジネスマンのトランプ大統領らしいとは言えます。ここで強硬に出てもコストは許容範囲ってことですね。ビジネスマンのコスト感覚というか、基本セコいんです^_^;。

という訳でかつての冷戦に対して新冷戦という見方もされてますが、アメリカが問題視するのは軍事力よりも技術力の脅威であり、その様相はかなり異なります。故にかつてのCOCOMでは軍事転用可能な輸出品の規制だったのが、通信やハイテク分野での封じ込めが意図されてます。例えばCOCOM未加入で永世中立国を宣言していたスウェーデンのアゼア社(後にスイスのブラウンボベリー社と統合してABBを構成)がCOCOM規制で動けない欧米勢を尻目にユーゴスラビアなど東欧諸国への鉄道車両輸出を重ねます。それでもAMTRAKメトロライナー用電気機関車を輸出するしれっとしたところがありました。永世中立国って便利です。

ところが5G通信を巡る技術では、米クァルコムが気を吐いているものの、中国頼みの本音もあり、通信機器を含むトータル技術では中国HUAWEIとノキアやエリクソンといった北欧勢が中心で、アップルが頼みとしていたインテルさえ蚊帳の外。ましてNECや富士通、韓国サムスンやLGも国内だけのローカルブランドに成り下がっています。それでも韓国は5G一番乗りを宣言し、後にアメリカの前倒しで逆転されますが、日本勢は声も出ません。で、同盟国と呼ぶには微妙な立ち位置の北欧勢を頼みとする訳で、まして韓国勢とも微妙な距離感で、ある意味アメリカの焦りはよくわかります。その分同盟国への圧力は厳しくなる訳です。

しかもイギリスやドイツはHUAWEIを排除しない姿勢で同盟国をまとめ切れていない中で、アメリカの本気を見せる必要に迫られていたということは言えます。てことで、この事態は想定しておくべきだったということが言えます。そして中国の出方次第では膠着状態になることが予想されます。となると成果を出したいトランプ大統領は日本をターゲットにしてくるでしょう。不思議の国ののトランプの兵隊の足音が^_^;。

おまけ。

二俣川―新宿760円 相鉄のJR直通線の運賃が認可  :日本経済新聞
COCOMエントリーで取り上げた相鉄JR直通運転の運賃認可のニュースです。記事では合算額のみの記述ですが、相鉄新線の西谷―羽沢横浜国大間の営業キロ2.1㎞でおそらくJRは鶴見―横浜羽沢間の営業キロ8.8㎞を適用し、相鉄新線に30円の加算運賃という構成ですね。横浜乗換の現行運賃よりやや割高ですが、列車本数が限られる中、乗客の転移が増えすぎても困るという微妙なとk路が垣間見えます。ハイテクを巡る米中のせめぎ合い同様複雑な構図です。

| | Comments (0)

Sunday, February 24, 2019

限界都市川崎

別に川崎に悪意がある訳じゃないんですが^_^;、サイドバーの書籍からお題を頂きました。同じくサイドバーの週刊東洋経済の通勤電車特集から、最強の通勤電車ランキング32路線中32位のワーストに選ばれた横須賀線のE217系の置き換えにE235系投入が発表され、普通車がオールロングシートになることがネット上で話題になりましたが、横須賀線のワーストの理由が混雑率の悪化ってことで、実は武蔵小杉のタワーマンション群に原因があるのでした。

ご存じの通り横須賀線は湘南新宿ラインと線路を共用しており、旧蛇窪信号場の平面交差もあって増発が困難なことが原因なんですが、加えて相鉄都心プロジェクトで今年度下期には相鉄からの乗り入れも始まりますから、その枠も確保しなきゃならない訳です。こちらも埼京線との相互直通ですから、品川東京方面への増発は当面見込めません。となれば当然車両レベルで収容力を高める必要がある訳で、オールロングシートにするしか手がない訳です。

長期的には蛇窪の立体交差化が課題ですが、直ぐには実現できません。とにかく朝ラッシュ時には改札入場待ちの列が伸びて危険ってことで臨時改札を設けたけれど、今度はホームが混雑して危険ということで、ホームの増設を決めましたが、完成は2023年で、未だ建設中のマンソンも多く、当面改善は見込めません。大江戸線勝どき駅の二の舞ですね。加えて若い子育て世代の流入で待機児童は増える一方。タワマンたわわな江東区を再現しています。当然小学校、中学校と順繰りに生徒数の増加に悩まされるわけです。

都市部で依然 待機児童多く  :日本経済新聞
待機児童問題は煎じ詰めると都市部固有の問題で、再開発で同じ世代の人口が急増することで起きる訳ですが、それでも都市再開発の流れは止まらず、寧ろ開発を促すために容積率の緩和が行われる状況です。そして世代の多様性がないから将来はそっくり高齢化して空き家候補になる訳です。将に限界都市まっしぐらです。

川崎というと工業都市のイメージが強いのですが、新興財閥の浅野財閥による川崎鶴見の埋立地開発に遡ります。元々多摩川の砂利輸送を意図した南武鉄道と奥多摩地区の石灰石採掘から派生した青梅鉄道(後に青梅電気鉄道)、五日市鉄道が立川で繋がったことで、京浜運河沿いの埋立地に浅野セメントが工場を作り、奥多摩からセメント工場への一気通貫の輸送体系を形作ります。加えて隣接する鶴見の埋立地が造成され工場が建ち、原材料や製品の輸送を担う鶴見臨港鉄道が開業し、当初貨物専業でしたが、工場が増えて従業員輸送の要請から旅客営業を始めます。何れも戦時買収で国鉄に編入され青梅線、五日市線、南武線、鶴見線になります。東京や横浜の港湾は政府の手によるものですが、埋立から民間資本で形成されたのが京浜工業地帯の特徴です。

蛇足ですが、南武鉄道のバス部門が小田急グループの立川バス、青梅電気鉄道のバス部門は奥多摩振興から京王グループの西東京バスへ併合、鶴見臨港鉄道は川崎鶴見臨港バスとなり京急グループに属します。歴史にIFは禁物ですが、戦時買収が無ければ大東急の一員となって小田急、京王、京急に分割されたか、相模鉄道のように東急に経営委託しながら独立を維持したかなど興味をそそられます。

加えて戦時体制で南武線沿線には通信機器などの軍需工場が立地し発展しました。大師参拝輸送からインターアーバンに進化した京浜電気鉄道や省電時代のスター京浜線は目いっぱい恩恵を受けた訳です。特に省電京浜線は東京本社の幹部による工場視察の便宜を図って二等車(現グリーン車に相当)が連結されていました。モータリゼーション夜明け前の当時、二等車は社用車の役割を担っておりました。

しかしそれ故に環境悪化で住宅地としては不人気でしたが、グローバル化で工場の海外移転や競争激化による撤退もあり、広大な工場跡地が残されます。これが種地となって再開発が進み、特に横須賀線武蔵小杉駅の開業で利便性を高めた武蔵小杉は人気エリアとしてタワマンが多数つくられて人口急増した訳です。

これは川崎市にとってもJR東日本にとっても計算外だったと思われますが、東京の大江戸線沿線やAGTの新堀舎人ライナー沿線など、交通インフラの整備に伴って開発が過熱して需要が想定を上回る事態が続きます。しかも多様な業務都市が画一的な住宅都市へ変貌することで矛盾を抱え込んでしまうことになります。この観点から二荒山神社の隣にタワマンが建って景観を損なうなど物議を醸す宇都宮市ですが、LRTで沿線開発が誘発されると、寧ろ都市のスプロール化か進み限界都市化という懸念があることは指摘しておきます。一方明るい話題もあります。

横浜地下鉄の延伸予定区間を歩く 住宅地に募る期待  :日本経済新聞
同じ川崎市でも多摩丘陵の住宅地に地下鉄ができるって話です。横浜市営地下鉄ブルーラインの新百合ヶ丘延伸ですが、自前の地下鉄に拘り事業認可まで受けながら、財政事情から断念した川崎市が、横浜市と協定を結んで実現したところが新しいところです。

公営地下鉄の越境自体は都営新宿線の本八幡(千葉県市川市)、大阪市営御堂筋線の江坂(吹田市)となかもず(堺市)の例がありますが、政令市同士の協定というのは前例がありません。尚、御堂筋線のなかもず延伸は1987年で堺市の政令指定都市化は2006年ですし、堺市は中百舌鳥堺線の構想はあったものの具体化はされず寧ろ阪堺電軌を軸とした公共交通活性化に取り組むなどしていて、川崎市とは事情が異なります。

川崎市内のルートが未定で、駅設置と絡んで3ルートが提案されてますが、最も新百合ヶ丘から距離があり、周辺バスの本数や乗車率の高い東ルートのヨネッティ王禅寺案が有力です。ヨネッティ王禅寺はゴミ焼却工場に併設された市営スポーツ施設で市民の人気スポットであると共に、近くに田園調布学園のキャンパスがあり通学需要も見込めます。そしておそらく自前の地下鉄構想が尻手黒川道路ルートだったことから、断念された地下鉄計画でも駅設置が考えられていたと考えられます。

そして横浜市内の剣山は戸建て中心の住宅地に付随する商業集積があり、すすきのはすすきの団地最寄りで隣接する川崎市域の虹ヶ丘団地も駅勢圏で、既に成熟した街で開発余地はあまりありませんが、その方が武蔵小杉のような想定外の事態を招くこともなさそうです。

川崎市の地下鉄構想は元々武蔵野南線の旅客化とセットで構想され、川崎―武蔵小杉間と梶ケ谷貨物ターミナル―新百合ヶ丘間を建設するというものだったのですが、武蔵野南線の旅客化は具体化せず、尻手黒川道路ルートで自前建設を目指し、横須賀線武蔵小杉駅開業で武蔵小杉経由に変更して事業認可を受けて断念という経過を辿るんですが、川崎市でもう一つ具体化した京急大師線の地下化による連続立体化事業が大いに振り回されました。川崎駅で地下鉄と大師線は繋がる形の構想が描かれてましたが、この辺が曖昧で、一方新百合ヶ丘で小田急線との乗り入れも検討されという具合に軸が定まっていなかったので、結局実現は無理だったでしょう。

京急大師線の地下化は市役所通り地下を東へ進み(仮)宮前を経て川崎競馬場地下でS字カーブしてR409に合流する地点に港町駅を設置して川崎大師駅で現在線ルートに合流し産業道路東側で地上へ出て地上駅の小島新田に至るというルートですが、地下鉄との関係が詰められないから工事が度々延期される一方、アクアラインの開通で浮島へ向かうルートを支障する産業道路の踏切は解消されず、また旧いすゞ自動車工場跡地を中心に羽田空港へ渡る橋とセットで先端企業誘致の再開発となる殿町プロジェクトの具体化もあって仕方なく東門前―小島新田間を先行着手することになりました。尚、京急川崎―川崎大師間の地上線は回送線として残りますが、地下鉄計画がなくなった結果、地下化に伴うルート変更の意味も問われます。

川崎市は例えば神奈川臨海鉄道浮島線の旅客化や南武支線の川崎駅連絡線や東海道貨物線を利用した羽田空港アクセスなどいろいろ構想を思い付きのように発信しておりますが、実現に向かって具体化はしておりません。産業構造の変化に翻弄される苦しさはありますが、もう少ししっかりしたビジョンを持つべきでしょう。自前の地下鉄を断念したんですから、次はJR東日本と協定を結んで区画整理事業と連動した南武線の立体化や長編成化など、現実的な都市開発を模索する方が良いように思います。以上非住民の外野のたわごとかもしれませんが。

 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, February 17, 2019

鈍器法定

統計不正問題がいよいよ森加計問題と酷似してきました。これ統計法違反という明らかな違法行為なんですが、捜査当局は動く気配なし。そして関与した上級官吏は口をそろえてゴマカシや答弁拒否。一方実行部隊の下級官吏からはリーク続々。アベノミクスの成果を良く見せる改編が行われたと考えてほぼ間違いありませんが、ウソノミクス統計135°でさわりは明らかにしてますので、ここでは踏み込まず別の話題。

大林組、増収増益  :日本経済新聞
「受注企業JR東海が差配」 大成と鹿島、無罪を主張 リニア談合初公判 他2社と認否真っ二つ :日本経済新聞
元々大林組が公取委に申告して発覚したものですが、談合を認め処分を軽減した大林組、清水建設に対して、争う姿勢を見せる大成建設、鹿島建設という構図で公判も分離されてますが、主張は真っ向対立してます。

既に分離公判で有罪が確定している大林組ですが、120日間の民間土木工事中止の処分も受けてますが、実は増収増益。つまりリニアは儲からないから逃げ出したってことですね。加えて2025年の大阪万博開催が決まり、関西地盤の大林組は竹中工務店と共に受注が増えることが見込まれます。つまり大手ゼネコンが仕事を選ぶようになったってことです。

これJR東海にとっては痛い話です。というのは、そもそもリニア建設着手は国鉄民営化時に新幹線保有機構からリースする形で、リース料に旧国鉄債務の一部を乗っけたスキームから、JR東日本の上場審査の過程で主たる収益資産が自己保有でないことのリスクを指摘され、同じ立場のJR東海、JR西日本と共に国に譲渡を申し入れたことで、譲渡代金のローンが始まり、それが2017年にほぼ完済されたことから生じる資金余剰があってこその自前整備ですから、逆に言えば予算上限は厳しく管理する必要があります。

それでも当初名古屋まで5.1兆円と言っていた事業費が膨らみ5.4兆円となっているように、ジワジワと膨張しているわけです。当然利益を削られるゼネコンにとっては旨味が少ないのですが、それでも五輪後を睨めば無下にできない訳で、特に五輪関連や豊洲市場など東京都が絡む事業に深く食い込んでいる大成建設や鉄道会社との関係を気にする鹿島建設は断れない。そしてこうなるってことですね。これだけなら民間同士の話ですから、談合事件で公取委が動くことにはならないのですが。

しかし大阪への早期延伸を望む声が与党議員から出てきて財投債で9兆円の融資を決めたことで、公共性ありと判断されて事件化されるんですから、何がどう転ぶかわかりません。それでも談合事件の立件は難しいところ。大林組の申告が渡りに船だったのでしょう。政府が関与するといろいろ不都合が生じるのは森加計問題や統計不正問題ばかりではありません。

JR東日本の整備新幹線区間への追加投資に絡んで、整備新幹線の法定速度って話題がネットに出てきて「法定速度を超えると線路使用料が上がる」などの妄言も見られますが、これ根拠法の全国新幹線鉄道整備法で定義されている設計最高速度が法定速度と誤って理解されているのが実際です。そもそも東海道新幹線の設計最高速度は210km/hですが285km/hで営業運転されてます。東海道新幹線の建設時には整備法は無かったので超法規的に独自規格で作られたもの。その結果を踏まえて全国新幹線網整備に当たって将来の技術革新によるスピードアップを先取りする形で定められた基準がそのまま見直されずに来たというのが実際です。

そもそも新幹線の事業主体は国であり、国の鉄道事業を体現する国鉄がその任に当たるという前提で作られた法律ですから、国の事業である以上恣意的な解釈で骨抜きにすることは許されないということから、設計最高速度やそれに付帯する最急勾配や最小回転半径などの基準が定められたのが実際。それが国鉄分割民営化で事業主体が消滅すると当時の与党議員が騒いで事業主体となる国のところを各旅客会社に読み替えることで延命させた結果です。

しかも財源がないからあの手この手で財源をひねり出すために、並行在来線の切り離しなどでJRに負担をかけないことや、受益者となる地方の負担も定めるなどされたものです。結局整備計画の延命のために恣意的解釈をした訳ですが。尚、最急勾配は九州新幹線や北陸新幹線では事業費圧縮の要請から一部基準を超える急勾配があり、将来のスピードアップの可能性を狭めています。

JR東海も当初は中央リニアを整備新幹線の枠組みで考えていたようですが、現実に存在しないリニア新幹線は基準に適合しないってことで当時の運輸省はほぼ門前払いに近い扱いをしていたようです。当時は所謂整備5線(東北新幹線延伸部、北海道新幹線、北陸新幹線、九州新幹線鹿児島ルート、同長崎ルート)の扱いすら決まっていない状態で、そちらを優先しないと地元選出議員からクレームがつく状態でしたから、中央リニアの整備新幹線化は実現可能性が無かったと言えます。

それが新幹線譲渡に絡んで譲渡代金の産出に時価法の一種である再取得価格法が適用されました。これは現在時点で同等の資産を新たに取得する場合に想定される価格ってことで、地価や建設費などの相場を反映したものですが、仮定の置き方で数値は変わり得るものでもあります。当時の運輸省はこれを利用して資産の非償却部分となる土地やトンネルなどのインフラ部分の数値を嵩上げし、嵩上げ分を新設の鉄道整備基金に持たせて整備新幹線の財源に利用することで財源論に道筋をつけました。数値を操作して財源をねん出した訳で、こういったことがあるから統計不正にリアリティが出てきます。

その結果JR本州3社はローン負担を負う訳ですが、同時に整備新幹線事業の推進力を得ることとなりました。加えて新幹線が自社保有となり、膨大な減価償却費が発生し無税で利益控除できますから、これで得たキャッシュフローで設備投資に弾みを付けます。その結果JR東海は品川新駅開業によるのぞみ中心のダイヤ編成で増収を図り、自己資本による東名間先行の整備計画をぶち上げることになる訳です。

で、JR東海をリニア建設に向かわせた新幹線譲渡代金ローンの終了はJR東日本やJR西日本も同様で、規模の違いはありますが、それぞれ異なった動きを見せています。ウソノミクスでも触れたように一つは東北新幹線盛岡以北の高速化に向けた設備増強ですが、もう一つ大きなプロジェクトも動き出しました。

JR東 都心と羽田空港結ぶ新線、29年度にも開業  :日本経済新聞
羽田空港の国際化と発着枠拡大で今後とも利用Y差は増えると見込んでいる訳ですが、同時に成田スカイアクセスとローコストリムジンバスに食われて劣勢の成田空港輸送の挽回の意図もありそうです。

整備区間の北半分は休止中で遊休化している東海道貨物線の浜松町―東京貨物ターミナル間の線路を活用し、東海道線に合流させて上野東京ラインで埼玉や北関東のアクセスを図るというもの。加えてりんかい線経由で山手西ルートから中央線や埼京線方面、と京葉線や武蔵野線方面の3方向の列車設定を想定しています。千葉県や千葉市が要求する京葉線から総武線への連絡線が実現すれば、羽田空港と成田空港を直結することもあのうになりますから、将来的には成田空港輸送のてこ入れにもなるという訳です。

既存施設を活用するプロジェクトですから、資金手当てが見通せれば実現可能性は高いですが、一つネックとなるのがりんかい線の扱いでしょうか。東京都はJR東日本に東京臨海高速鉄道の引き受けを以前から打診してますが、これが動く可能性はあります。都市興津に関わる新線計画ですから、国と地方に応分の負担を求めることになると思いますが、東京都の負担分を東京臨海高速鉄道の株式で行い、事実上のりんかい線引き受けにつなげる可能性はあります。ただしJR東日本の営業規則上、東京近郊区間に組み込まれることになれば、現在の認可運賃から大幅減額となりますから、それによる減収の評価をどうするか。株式評価を下げて都が実質補償するか、あるいは東京近郊区間から外して現行認可運賃を存続させる形にするか、交渉次第でしょうけど注目されます。

おまけ。リニアで散財するJR東海と対照的に経営基盤強化に資するプロジェクトに選択的に投資するJR東日本ですが、JR西日本はといえば、尼崎事故以後の安全投資優先の影響もあって遅れている老朽車両の更新に回るものと見られます。だから広島に錆びない電車が登場し、大阪環状線もリニューアルされると。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, December 02, 2018

大後悔時代そしてインド

日産ゴーン逮捕その後。

報酬先送り文書、効力巡り攻防 ゴーン元会長と特捜部  :日本経済新聞
逮捕容疑の有価証券報告書虚偽記載が退任後に受け取る株価連動報酬で、それを記載した報酬文書が日産の秘書櫃の秘密の金庫に保管されてたそうで、その記載内容によっては報酬を約した契約文書と見做され、未記載は違法性があるということらしい。つまりまだ受け取っていない報酬の約束が未記載ってことで、概算年10億円でその内5年分が逮捕容疑の50億円とか。

これやっぱ無理筋です。もちろんゴーン氏が隠そうとしたことは間違いないとしても、報酬文書の解釈問題という微妙な問題でいきなり逮捕ですから、やはりバランスが悪い。おそらく特別背任罪を視野に入れてるんでしょうけど、2兆円企業の日産にとっての50億円です。会社ぐるみで数千億円規模の粉飾をした東芝とは2桁違うし、会社の利益を棄損する意思が証明されなければ特別背任罪に問えません。やはり森友問題で籠池夫妻を長期拘留した時と同じような不透明感が漂います。

一方韓国では、三菱重工業の徴用工訴訟の判決が確定しました。先日の新日鉄住金の訴訟と同様、2012年に原告敗訴とした下級審の判断の見直しを迫り大審院が差し戻した差し戻し審の上告審ですから、よほどのことがない限り、覆る可能性は無かった訳で,和解すれば終わった話です。2012年は大統領選で李明博大統領から朴朴槿恵大統領に保守同士で政権交代した年で、文在寅現大統領は大統領候補として戦って敗れた訳で、韓国司法の判断は一貫しており、一部報道で見られる進歩派政権に忖度した判決ではありません。

加えて言えば昨今の国際公法と国際私法の関係に関する考え方の変化も見逃せません。例えばナチス占領下のアウシュビッツ輸送に協力したとしてオランダ国鉄が賠償に応じるなど、政府間の条約や協定と私人同士の債務債券関係は別とする考え方が広がっています。政府間の協定である1968年の日韓請求権協定は私人同士の請求権を含まないという韓国司法の判断は妥当です。

あとおまけ。「韓国と戦争だ!」と叫ぶ威勢の良いこと言う人いますが、日韓共にアメリカと軍事同盟を結んでますが、仮に日韓で紛争が勃発したとしたらアメリカはどう動くか?答えは国連憲章第53条第1項後段の「敵国条項」により、アメリカは国連安保理に通告することなく日本を攻撃します。北朝鮮問題で連携が必要なのに何やってんだか。そんな日本の首相に米中の仲裁の期待が語られるって何の冗談?

そのG30もトランプ旋風が話題ですが、皮相的な対立は本質ではありません。このニュース。

トランプ関税、米製造業に跳ね返る GMが北米5工場停止 (写真=共同) :日本経済新聞
トランプ大統領の意図に反してアメリカの製造メーカーが国内工場のリストラを発表したもの。特にGMは中国市場のウエートが高く、またEVやコネクテッドか―などへの投資のために売れないセダン工場を閉じるというもの。輸入原料や部品の関税による値上げで利幅が圧迫される中、EVやコネクテッドカーなど100年に1度と言われるイノベーションに鎬を削る自動車メーカーとしては、儲からない製造拠点を維持する理由はありません。これ日産ルノー問題にも通底しますが、企業が国を選ぶ時代が顕在化したってことです。

この構造が何かに似てると薄ス感じてましたが、これ英東インド会社のビジネスモデルですね。大英帝国のベルエポックを画した会社ですが、世界各国の貿易に関与して利益を上げていた点は日本の商社のようでもありますが、決定的に異なるのが武装の特権を得ていて、場合によっては略奪行為も辞さない存在でした。昂じてインドの植民地経営を仕切る存在となりましたが、インド各地を統治するマハラジャを賄賂で篭絡して有利な条件で交易をした、所謂分割統治の主体でした。

つまり、昨今謂われるグローバリゼーションの正体は、巨大化した多国籍企業が主権国家をインドのマハラジャよろしく選別し有利な条件を引き出すことと見れば解けます。これが例えば諸国間の法人税減税競争だったりFTAやEPAなど自由貿易を促進すると言われる国際協定だったりします。当然TPPや日欧EPAも含みますし、アジアのRCEPも同様です。いずれも主権国家の主権を制限する協定という点で、企業に有利に働きます。

日本ではあまり報道されませんが、通商を巡る国際協定ではほとんど最恵国条項が盛り込まれています。これ締約国、加盟国の1国が示した通商交易条件の最も低い水準が他国にも波及するってことでして、例えばTPP加盟国でもあり個別FTAも結ぶチリのワイン関税はTPP加盟各国に留まらず日欧EPAで欧州産にも波及するし、逆に欧州に譲歩した乳製品に関してはTPP加盟国にも波及するという関係になります。こうしてFTAやEPAのネットワークを通じて関税や障壁がどんどん押し下げられていくって話です。このコンテクストで種子法廃止や水道民営化法、農業や漁業への企業参入の自由化など、今将に国会で揉めている数々の法案の成立を政府が急ぐ理由でもあります。いずれもTPPや日欧EPAの関連法ってことですね。

この観点から言えば、例えばBrexitはイギリスの主権回復の主張から出てきた話ではありますが、イギリス自身がスコットランドの独立問題やBrexitの障害になっている北アイルランドの扱いなどで言ってみればバラバラでして、それに留まらず例えば女王陛下がロンドンシティに足を入れる場合には市長の事前承認が必要だったり、一方オートレースで有名なマン島は王族領(王族の私有財産)とされ治外法権扱いとなっていますし、加えて英連邦に所属するインド、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど一応独立した主権国家ながら女王陛下を元首とするコモンウェルス(共和国)があり、その他に未だに存在する植民地や自治領が世界にあり、ある意味本国も含めて分割統治されていたようなものです。この複雑怪奇さがBrexitをもたらしたとも見えます。

更にトランプ現象ですが、アメリカも東海岸と中西部、南部と西海岸とそれぞれ別の国のように住民意識が異なります。前2者は共和党、後2社は民主党の地盤ということで、かなりはっきりとした分断が見られる中で、トランプ大統領が誕生しました。元々州政府の権限が強いアメリカでは、連邦政府のみならず州政府へのロビーイングが盛んです。その結果州政府にロビーして通した政策が企業を利すると、他州も倣ったり連邦政府も結果的に動いたりしますから、ある意味企業にとっては天国のような国です。だからトランプの強面は企業にとってはちっとも怖くない訳で、ここに注目すると裏で起きている企業による主権国家の無力化に目が行かなくなります。

で、日本にいると気が付きにくいんですが、分割統治はイギリスやアメリカだけの問題じゃないんで、Brexitの一方の当事者であるEUも、加盟する主権国家の上部組織として定義されており、やはり主権を制限するという意味でイギリスやアメリカの分割統治システムと似たフラクタル構造にあります。ユーロの番人であるECBは米FRBを手本にしてますし、関税同盟、通貨同盟に加えて移動の自由を保障するシェンゲン協定で労働力の国境を越えた移動を可能としてます。

結果的にEUと加盟国の関係がアメリカの連邦政府と州政府の関係と酷似することになります。ギリシャやイタリアの南欧問題とか、近ごろ民族主義の台頭著しい東欧問題とか、統合によって分断が顕在化しており、アメリカとの相似相が見られます。幸いなのはEUはまだ米連邦政府ほどの力を持たないからトランプが出現しませんが、汎西欧主義を謳うフランスのマクロン大統領が打ち出したEUによる安全保障構想はEUの統治機能強化とセットですから、ある意味隠れたトランプかも。日産ルノー問題で対峙する日本政府は頼りない。あと内緒ですが、地方政府に北京政府=共産党が君臨する中国も相似相ですね。

国鉄分割民営化で鉄道改革で世界をリードしたと言われますが、欧州の鉄道改革で手本とされたのは、むしろアメリカです。1970年のペン・セントラル鉄道の破綻後、紆余曲折を経て国有化され、鉄道資産保有公社のコンレールとなり、経営悪化の鉄道会社の多くもコンレールに合流し、上下分離して鉄道会社は線路使用料を払って鉄道運営する存在になり、州をまたぐ長距離列車は連邦運輸公社(AMTRAK)へ移管されました。

アメリカでは民間での再建に失敗し国有化して、再度民間に売却したり、規制緩和で路線の改廃再編が行われたりと紆余曲折はありましたが、欧州では元々国ごとに地域分割されていて国境をまたぐ国際列車も多数運行されていたこともあり、アメリカの上下分離を取り入れてオープンアクセスで新規参入を促す形になりました。貨物を除いて上下一体の日本の国鉄改革は参考にならなかった訳ですが、寧ろJR北海道問題に見るように、日本が上下分離をせざるを得ない現状では寧ろ日本が欧州を手本にせざるを得ません。

長くなりましたが、今後MaaSの時代には鉄道と自動車産業の境界も曖昧になり、ハイブリッドな産業進化が見込まれます。一方で人手不足で都営バスにまで減便の波が押し寄せる現状でもあります。3万点の部品を集成するアセンブリ―産業ですそ野が広く雇用創出力の高い自動車産業の変化は片方で雇用不安を呼び起こす一方、生産性向上に制約のある運輸などのサービス産業は人手不足に悩まされ、産業間の労働力移転も困難です。結局この問題を解決しない限り、社会の分断は無くならない訳です。規制緩和すれば良しとはいきません。グローバル時代の後の大後悔時代は暫く続きそうです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Monday, July 16, 2018

北のスットコドッコイ

前エントリーの続きです。本題に入る前にこのニュース。

人口、最大の37万人減 生産年齢人口は6割切る  :日本経済新聞
死亡数と出生数の差の自然減が39万人で海外との転出入を加えて37万人の減少ってことです。当然ながら15-64歳の生産年齢人口の減少はもっと多いわけです。都道府県別では東京、埼玉、千葉、神奈川、の首都圏4都県と愛知県と沖縄県のみ増加ですが、そのうち自然増は沖縄県だけで、他の5都県は転入超過による社会増ですから、その分地方の人口減の勾配もきついわけです。

あと外国人の増加が16万人ってことですが、いろいろ問題が指摘される外国人技能実習生だけでも25万人を受け入れていて、その他留学生や高度スキルの就労ビザ対象者もいるわけですから、純増が16万人ってことは相当数の帰国外国人がいるってことです。移民や永住権取得が難しいからこうなるわけで、人手が足りないから外国人就労を拡大といっても、現実の生産年齢人口の減少には追い付かないわけです。人口減という現実を受け入れるしかないわけです。

この状況を踏まえて以下をお読みいただきたいんですが、事故や不祥事が重なって先行きが危ぶまれているJR北海道に未来はあるか?っていう話です。JR北海道もJR総連系のJR北海道労組が組織率8割を超える中で、JR東日本と明らかに異なる労使関係があるわけです。

元々赤字基調だからってことで経営安定基金が与えられ、その運用益で赤字を補填するスキームだったわけですが、90年代半ば以降の低金利によって赤字補填が果たせなくなり、基金の積み増しをした上で現状(独)鉄道建設運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)への預託で高金利運用という事実上の利子補給による補助金でどうにか最終赤字を回避している状況です。

加えて事故の原因となった老朽設備の更新も国の支援を得ながら進めている状況なのですが、事故や不祥事の背景として、JR北海道は益出しのために努力してきたんですが、その結果必要な人手確保がままならなくなり、それが事故の遠因となったり、データの錯誤に見られる不祥事につながったわけですね。その意味で強面の労組は役割を果たせなかった訳です。

JR北海道で起きていたのはおそらく労使の癒着だったと思われます。それ故現場の人手不足もゴマカシがまかり通る状況だったと考えられます。そんな状況を変えようとしたのが自殺した中島社長って話がここへきて出てきています。

そのために島田現社長を総務部長に据えて労組との交渉窓口の一本化を狙ったものの、JR北海道労組は反発して険悪になった状況で、事故や不祥事が重なって国交省の立ち入り検査を受けることになり、JR北海道労組も協力を約束していたものの、直後に札幌労基署による本社社員の36協定違反の摘発があり、労組側が態度を硬化して島田総務部長の関連会社出向を余儀なくされたという経緯がありました。それで追い詰められての自殺ではないかという見立てです。

本社社員もJR北海道労組に所属していたのだから、労組側が知らなかった筈はないと言われてますが、おそらくこれ本社社員だけの問題じゃなかったんじゃないでしょうか。各現場で人手不足が起きていて、36協定順守ところじゃなかったとすれば、そりゃ事故や不祥事も起きるし、労組側からの改善要求もあったはずです。しかし増収とコストカットに励む経営陣を動かせなかったという意味で、労組側からすればスルー出来ない問題ではあります。労使の癒着自体は日本の大企業で結構見られますが。

というわけで、国主導で島田氏の社長指名と設備更新補助金の交付が決まったものの、覆水盆に返らず、労使関係は険悪なまま、後ろ盾のない島田社長は指導力発揮もままならない中で、自力での維持が困難な線区を発表し、自治体にボールを投げたのが現状です。ただ現実的には冒頭の人口減のニュースに見られるように、北海道で言えば札幌都市圏以外の地域の人口減少は今後も続くと見るべきですから、その中でJR北海道が必要な人手を確保して現在の規模を維持できると考えるのは現実的ではありません。人口動態に合わせて身を縮めるのはほぼ唯一の現実解でしょう。

自治体にとっては青天の霹靂でしょう。元々人口減少が止まらず、財政再建団体に指定された夕張市はいち早く廃止を受け入れ、JR社員の出向など条件闘争で実を取った形ですが、夕張支線のように単一自治体だからという面もあります。廃止若しくは公的支援を求めるエリアは広大で、広域自治体としての北海道の対応が待たれますが、高橋知事は経済や人口の状況が分割民営化時と著しく変化していることを理由に国に対応を求めています。財政負担を警戒してという側面はあるものの、経営安定基金による赤字補填もままならず、沿線人口の減少も収まらない中で、交通政策基本法を盾に対応を迫られても受け入れられないってのは正論です。

加えて国絡みの問題も多数あります。例えば北海道新幹線の札幌延伸問題も、JR北海道は自治体との合意を得て国に要望してきたものの、時期の問題が見通せないまま、札幌駅の新幹線駅スペースと見込まれていた駅南の用地に駅ビル(JRタワー)を建てたことで、道庁などから非難されましたが、商業スペースとして価値の高い遊休地の有効活用は当然の話ですし、建設時点で札幌延伸は決まっていませんでした。

その結果新幹線札幌駅の位置問題が二転三転して大東案に決まったのは最近のことです。北海道新幹線の札幌延伸が前進して2030年開業が決まったものの、駅をどうするかで迷走したわけです。当初北口側に新ホームを作って順繰りに振って1,2番線を新幹線用に転用する案が提案されたものの、既に北口の開発が進んで支障する建物が多数あると断念され、西案、東案、地下駅案が検討されたものの何れも却下され、修正東案として1番線南にギリギリ設置可能な1線分のスペースを新幹線上りに充て、1番線を新幹線下りに転用した上で東へ延伸して在来線とずらして設置する修正東案に落ち着いたものの、これも東日本大震災を受けて耐震補強が必要となり、結局在来線駅から離れた元の東案を大東案として決まったものです。位置的には札幌市営パーキングがあるということで、新幹線ターミナル駅設置のスペースも十分な上、駅前に新たな再開発ビル建設の可能性もあり、JR北海道の経営にもプラスと評価されますが、地権者の札幌市の意向は現時点で不明です。

あとJR貨物問題もあります。北海道の農産物を消費地の首都圏や近畿圏に輸送する上でJR貨物の役割は大きいのですが、それが結果的に線路を痛める原因にもなっております。加えてJR貨物は国の支援を得て設備強化投資をした結果、ドライバー不足によるトラック輸送からの移転もあって黒字転換が見込まれる状況ですから、格安な線路使用料を強いられてきたJR北海道には見逃せない問題です。まして株式上場まで取り沙汰されてますから尚更です。

温暖化の影響もあって北海道が稲作適地になりつつある現状もあり、競争力のある農業が叫ばれる中、その競争力を維持する意味で市場アクセスに欠かせないインフラとしての貨物鉄道という視点から、国の関与を強める余地はあります。貨物輸送のためにJR北海道の路線の一部を国の所有としてJR貨物やJR北海道に留まらず、自治体出資の三セクが第二種事業者としてローカル輸送に参入する余地を持たせるあたりに着地点があると思いますが、国が動く気配はありませんね。

加えて訪日外国人が増えている中、北海道観光人気で新千歳空港の利用が増えており、千歳線支線(南千歳―新千歳空港)が単線で空港駅も1面2線のため、対応しきれていない状況にあります。そこで新千歳空港駅を移転して3面4線とし、外側2線を千歳線につなげ、途中で単線を分岐して石勝線につなげる改良案が提案され、2022年の完成を目指すとされてますが、事業費は1,000億円規模になるということで、費用負担を巡ってひと悶着ありそうです。

実現すれば複線のまま空港新駅へ入れるだけでなく、苫小牧方面や帯広方面からも直接アクセスできるようになり、輸送力面に留まらず利便性も改善されますが、よく考えたら自衛隊と共用時代の千歳空港ターミナルビルとこ線橋で直結だった千歳空港駅(現南千歳駅)の機能を取り戻すだけであり、民間空港分離で誕生した新千歳空港のターミナルビルが離れた位置に作られたから仕方なく単線の空港支線を作った訳で、ここでも国の政策に翻弄された現実があります。しかも費用負担の問題でおそらく国の支援制度活用となるでしょうけど、JR北海道の事業縮小構想もあり自治体との調整は微妙です。また滑走路下のトンネル工事など難工事も予想されます。

あとこの問題は思わぬところへ飛び火しております。コメントを頂いたはまださんにご指摘いただいた日本ハムファイターズの北広島ボールパーク構想です。ダルビッシュや大谷をメジャーリーグへ送り出しながら若手の育成で実力を維持し、人気球団となったファイターズですが、不自由な札幌ドームに不満を抱いていたわけですが、ポスティングの補償金を得てそれを活かしたボールパーク構想を発表し、自治体向けに誘致コンペを行うというスキームを打ち出したところ、応札して勝ち抜いたのが北広島市です。

元々市民運動公園整備を構想し広い用地を確保していたところへ、ファイタースのコンペでボールパークをコア施設としてアクセスも千歳線に新駅を作って直結というもので、JR北海道にとっては増収策になるから大歓迎かといえば、空港輸送で線路容量に余裕のない状況では、寧ろ負担になりかねないということでご議論を呼んでいます。竣工予定は2023年3月ですが、空港新駅がそれまでに完成している確率はかなり低いと言えます。

さて、一番のスットコドッコイは誰?

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, June 10, 2018

ポピュリズムで仕方ネーション

G7サミットを前に制裁関税を打ち出した米トランプ台帳料ですが、制裁対象となったカナダやEUが猛反発。報復合戦の様相を見せてますが、冷静に見ればこれアメリカに有利な喧嘩なんですよね。報復対象国は何れも対米貿易黒字国ばかりで、制裁関税に報復関税を課しても、より経済的に打撃を受けるのは経済規模が相対的に小さい黒字国側なんで、ある意味アメリカは負けない喧嘩を仕掛けているわけです。

しかも米経済はとりあえず好調です。それもトランプが仕掛けた税制改革の結果が効いているわけで、自信の裏付けにもなってるわけです。そのトランプ税制ですが、従来居住地課税だったアメリカの法人税を源泉地課税にシフトした大改革なんですが、仕向け地課税をぶち上げて引っ込めたこともあり、その一方で盛り込まれたレバトリエーション税制(レバトリ税)と共に、日本の報道では扱いが小さいものの、現在のアメリカの経済好調に寄与していることは間違いありません。住宅バブルに沸いていたリーマン前と似た構図で、実際オートローンなどでバブルの気配はあるものの、単体ではより小粒で、それ自体で経済ショックに至る可能性は低いとは言えます。

リーマン前と大きく異なるのが石油価格でして、リーマン後の中国の財政出動をはじめ先進国の落ち込みを新興国が支える構図から、原油先物が買われて原油高が実現したわけですが、それがアメリカのシェール革命につながって、従来コスト面で採掘が難しいとされたアメリカの国内油田開発に火が付き、生産量でサウジアラビアやロシアと肩を並べるレベルまで生産量を増やしました。その結果OPECとロシア・メキシコなど非OPEC諸国の協調減産により安値で増えた消費国の備蓄を減らし、今は奇妙な均衡を保っています。加えて気候変動対策としてのCO2排出削減の動きで再生エネルギーの技術革新による価格破壊が起きて、原油価格の上昇は末端の消費を冷え込ませるまでに石油依存を減らしたことも寄与します。

その結果ドル高と原油高の共存という「今までにないパターンが出現しています。一番割を食うのは原発事故の影響もあってCO2排出を増やしている日本だったりします。ドル円はあまり動きが見られませんが、これはドル高と連動して円が上昇しているからで、ドル以外の通貨に対しては円高が進んでおり、一方原油をはじめ輸入に頼る資源の輸入決済はドル建てですから、日本企業は原料高と円高に苦しむということですね。唯一対米輸出だけは例外ですが、すでに鉄鋼アルミで制裁関税を課され、いずれ自動車も対象になりそうですが、アメリカに物言えぬ日本政府です。例えばこれ。

トランプ氏、拉致問題の提起を明言 米朝首脳会談で (写真=AP) :日本経済新聞
北朝鮮に拘束されていた3人の米国人の救出にCIAが秘密交渉に動いて取り戻した一方、圧力一辺倒で直接交渉してこなかった日本はアメリカに「お願い」するしか手はないんですが、当然ディールのバーターで二国間協議を迫られております。加えて米朝協議で朝鮮戦争終結となれば、北朝鮮の復興資金として日本の戦後補償が求められるのは必然ですから、トランプ政権との距離の取り方を間違えると、負担ばかり押し付けられる結果となります。この辺意図的に進めているとすれば、トランプ大統領はかなりの曲者です。

そもそもトランプ大統領は選挙で自分を勝たせてくれた有権者に対しては約束を守ろうとしております。移民排斥もTPP離脱もパリ協定離脱も公約通りですし、イラン核合意離脱やイスラエルの米大使館エルサレム移転もそうですが、ある意味愚直に取り組んでおります。米朝会談もオバマ大統領の戦略的無視政策を転換した結果と喧伝できる状況にあり、トランプ大統領自身が前のめりになっている状況です。ことほど左様に従来のエスタブリッシュメント層に支持された政治エリートの逆張りという意味では一貫しているわけで、こういう大統領を選んだアメリカ国民の声を反映しているわけです。だから旧来の政治エリートが好んで使うポピュリズム批判は寧ろ国民の喝采の対象になるわけですね。ポピュリズムの裏に約束を果たさない政治エリートへの失望があるわけで、これ先進国の多くで見られる現象です。その1つがBrexitだったりするわけですが、ある意味欧州はポピュリズム先進国でもあります。

イタリア、一転コンテ内閣発足へ 3カ月の政治空白に幕  :日本経済新聞
総選挙から3か月の空白を経てやっと新政権が成立したイタリアですが、単独過半数を獲得した党はなく、比較第一党の五つ星運動の連立協議に同盟が乗って新政権発足となったのですが、主に南部の低所得層を支持基盤とする五つ星運動と元々北部同盟と称して工業地帯で富裕な北部の分離独立を主張してきた同盟とは主張がかなり異なります。喩えて言えば日本の立憲民主党と維新の会が連立組むようなあり得ない組み合わせですが、反EUの一点で共闘しようというものです。

EUは元々アルザス地方の資源争奪戦で紛争が絶えなかったドイツとフランスの紛争解決のために独仏とベネルクス3国で締結された欧州石炭鉄鋼同盟(ECSC)が前進で、その後加盟国を増やしながら市場統合を目指し関税同盟から通貨同盟へと進化してきたもので、欧州共同の家といった理念を掲げ、加盟国の主権の一部を肩代わりしつつ機能を拡大してきたんですが、結果的に欧州の政治エリートによる官僚組織としての性格が強まってきました。これ穿った見方ですが、27省4独立市2特別行政区の上位に君臨する官僚組織たる中国共産党との相似形になっているわけです。

特にユーロ導入の矛盾が噴出したのがギリシャショックだったわけですが、今回のイタリア新政権にはその時の負のイメージが付きまといます。元々ユーロ圏全体の経常収支はほぼ均衡ラインにありましたが、ギリシャショック後黒字基調に転換しております。これつまりユーロの為替レートが割安な結果と見ることができますが、その安いユーロのメリットを享受するのがドイツなど一部の国に偏っており、フランスですら赤字基調から抜け出せない状況にあります。

南欧諸国は元々地政学上のリスクを抱えておりまして、例えばギリシャは冷戦期に東欧圏に属していたバルカン諸国やイスラム諸国との境界の位置にあり、NATOのメンバーとして過大な軍事費負担を強いられてきました。つまり元々財政が窮屈だったのに、EUに加盟して厳しい財政運営を迫られた結果ですから、ある意味ギリシャショックは必然だったと言えます。

その意味で冷戦終結もありNATOメンバーでありEUへの加盟を希望してきたトルコがEU加盟を果たせば状況は改善するかもしれませんが、キプロス問題がネックで足踏みする結果になっております。キプロスはギリシャ系住民主体のキプロス共和国(南キプロス)とトルコ系住民主体のキプロス連邦(北キプロス)で対立が続く分断国家ですが、EUは南キプロスの加盟を認めております。分断国家の片方だけの加盟ということ自体が状況を複雑にしておりますし、スコットランドやカタルーニャの独立を認めないEUの姿勢からしても違和感のある対応です。その南キプロス国民の多数がギリシャ国債を保有していたことで、ギリシャショックでパニックに陥り、ビットコインへの資本逃避が起きたことも知られております。南欧地域のEUに対する不信感は根深いのです。

その意味でイタリアの新政権がどんな政策を打ち出してくるかは注目されますが、EU離脱を模索するときに避けて通れないユーロ離脱に道筋をつける可能性のあるミニBOTと呼ばれる政府保証債券発行が検討されているところに注目しております。政府保障債券とは財政資金の資金繰りのために政府が発行する短期の無利子国債のことですが、それを小口化して流通させることを考えているようです。つまり政府紙幣の発行ということですね。

実際には流通のためのインフラがなければ機能しないわけですが、フィンテックを活用して電子決済システムを構築するなどすれば、リアリティが出てきます。実際新政権がどこまで本気かわかりませんが、二重通貨状態を意図的に作り出してユーロ離脱のショックに備える意味もあります。加えて一定量が決済手段として流通すれば、その分の信用創造によって財政運営が楽になるわけですね。五つ星運動が目指す所得移転政策がやりやすくなるわけです。

ただしリスクもあります。元々放漫財政と見做される政府が発行する債券ですから、信用度を維持できるのか?ってことですね。当面ユーロベックで発行量を慎重に管理するとしても、財政需要を満たすレベルまで発行量を増やせるのか?財政の都合で過剰発行されないか?といった疑念が付きまといます。日本のQQEが財政規律を失わせたようなことがあり得るわけです。


イタリアはシリア難民が押し寄せる位置にあることも大きく、元々英仏両国の石油権益保護のために泥沼化したシリアから押し寄せる難民の受け皿という損な役回りをいつまでも引き受けたくないわけです。難民の定住は非熟練労働市場に供給過剰をもたらしますから、貧困層ほど影響を受けます。こういった現実に国民国家(ネイション)をリードしてきた政治エリートが解決策を提示できないことが、有権者の反乱を招いたわけです。ポピュリズムを安易な大衆迎合主義と見ることでは解決につながらない訳です。

この辺のことがEUの鉄道政策にも影響している可能性があります。TGVに始まる高速鉄道の整備ですが、一時EU統合の象徴的な事業として熱狂的に進められましたが、事故が起きたり寧ろ地域間格差を拡大した疑いが持たれたりして見直されております。結果的に鉄道ビッグ3の一角に数えられたシーメンスが鉄道部門をライバルのアルストムに売却した訳です。中国が国策で中国北車と中国南車を統合して中国中車として世界一の規模を実現したことへの対抗策という見方も可能ですが、シーメンスにしてみれば、IoTなど元々強みがあり、ドイツ政府のインダストリー4.0政策とも整合的なところへの選択と集中をを狙ったと見るべきでしょう。ある意味欧州の鉄道事業は最先端ではないという見切りと見ることができます。

翻って日本では相変わらず中途半端な整備新幹線に入れ込んでますが、北海道新幹線の不振を直視すべきですね。仮に札幌延伸が実現しても青函トンネル区間の貨物との共用がネックで本数も増やせないしスピードアップもできないわけで、いい加減目を覚ませと言いたいところです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, January 14, 2018

マル生運動の悪夢

アベノミクスも5年目を迎え、輸出大企業を中心に企業業績は上向き、株価も高値更新を続けます。失業率や有効求人倍率などの数値も景気が上向きと取れる動きですが、生活実感が伴わない状況が続きます。当ブログでは世間が言い出す前からアベノミクスの問題点を指摘してきたわけですが、実際その通りの結果で、未だにデフレ脱却できずに成果の乏しい状況が続きます。

そもそもこれだけ労働需給が締まってきたら金融緩和も財政出動も効かないわけで、金融緩和は出口へ向かわざる鵜を得ないし、財政政策はそもそも求人難で事業が滞り予算通り執行できていない状況ですから、むしろ財政再建の好機なんですが、そんな気はサラサラないようです。むしろ成長戦略として規制緩和をぶち上げたり、TPPを口実に農業を補助金漬けにしたり、モリカケスパコンで怪しげな便宜供与をしたりしてますが、今年は働き方改革だそうで、生産性革命をやるとか。まるでマル生運動で労使関係を疲弊させ、解体へ向かった旧国鉄の失敗をなぞるようなこと言い出してます。こりゃ救われんわ。

日本企業の生産性の低さは以前から指摘されてきましたが、長時間労働の解消という美名のもと,働き方改革と称して労基法が改悪されようとしていることは社畜ネタのエントリー希望のエントリーでも取り上げました。わかりやすくまとめると以下の通りです。

1.脱時間給として労働時間でなく成果で評価する高度プロフェッショナル制度(残業なし)
2.裁量労働制の業種の拡大とテレワークによる勤務時間の曖昧化(残業請求は可能だけどやりにくい)
3.労基法条文に残業時間上限を明記しつつ業種や繁忙期の例外扱いも可能に(事実上残業し放題+未払い残業訴訟時の賠償額の上限になる)
これ残業代を圧縮するためで、それが3%賃上げの原資と財界は胸算用してます。政府は必ず通常国会でこれを通すでしょう。野党がまとまらないのが心配ですが、これも以前のエントリーで心配したことが実現するということですね。

これだと長時間労働はステルス化して事実上長時間労働は温存ざれ生産性も上がらないってことになります。そもそも生産性を現場の努力で持ち上げようってのが間違いなんで、本来は設備投資によって資本で労働を代替することや、M&Aなどで事業の見直しをして規模の経済とシナジー効果で生産性を高めるのが王道です。例えばドイツの名門企業シーメンスが鉄道部門を仏アルストムに売却して重電部門に特化したのが典型ですが、中国北車と中国南車を国策で合併させて中国中車としたことで、かつて加ボンバルディアと並ぶ鉄道ビッグ3の地位が脅かされる中での大胆な経営判断です。生産性向上ってこうやるってことです。

日本の場合労働需給が締まってきたことは上記のとおりですが、中身が問題で、就労者数は確かに増えているんですが、総労働時間は横ばいで、つまり非正規の短時間労働者が増えただけってのが実態です。深刻なのはその間GDPもほぼ横ばいですから、労働力の投入量と生産量が変化していない、つまり生産性も横ばいってことです。GDPが横ばいでも総労働時間が減っていれば生産性は上がっていることになるわけで、これなら無理なく労働者の報酬である賃金を上げられますし、労働時間の減少はつまり余暇時間の増加となりますから、その分消費者余剰が拡大して有効需要を生み出します。また人口減少の中で求人難も緩和するわけですから、現在の人口動態に整合的です。てことでこれ貼っときます。

生産性向上 経営者こそ主役   :日本経済新聞
これ企業だけの問題でもないんで、水道事業の民営化を打ち出した東京都の事例が面白いんですが、東京都水道局は23区の水道事業を担う地方公営企業で、基本独立採算制なんですが、多摩地区では各市町が直営事業で手掛けているケースが多く、独自水源として井戸を持っていたりしますが、地域開発で水需要が増えると対応できなくなり、都水道局に水源を依存するケースがあり、加えて小規模な直営事業では合理化も難しいってことで事業委託しているところもあるわけですが、そのために都水道局は増員したくても公務員定員の壁でできないってことで、民営化してそのくびきを外そうってことです。水道のようなインフラ事業は希望の経済が働くわけで、多摩地区に留まらず埼玉県の自治体の受託の需要も取り込めるわけで、伸びしろがあるわけです。

これ営団→メトロに事業領域を侵食されてきた都交通局と大きく異なる事業環境だからこそです。都営交通の民営化はメトロの株式上場絡みで都の保有株式の扱いが問題になるので実現可能性はほぼありません。

こういう観点から国鉄民営化を見直すと、国鉄末期から営業路線の廃止、切り離しが相次いで事業規模を縮小したJR北海道と、元々の規模が小さいJR四国が苦しむのはある意味必然です。むしろ全国1社体制でギリギリ規模を確保したJR貨物が黒字化で上場が検討されるってのも、不思議ではありません。JR貨物の場合旅客会社へ支払う線路使用料問題という爆弾を抱えてはいますが、これ旅客6社と同様地域分割していたらこうはいかなかったでしょう。

てことで30年も経つと変化は避けられないところです。見直しは必要でしょう。おまけ。

除雪車出動に遅れ JR信越線大雪で立ち往生  :日本経済新聞
そもそも異常な積雪でダイヤが乱れに乱れ、運転士が雪かきしながら進路を確保しつつ運行していたものの力尽きたわけで、4両編成に乗客430人という状態で、不安を抱える乗客に乗務員が丁寧に対峙したからパニックにもならずに済んだわけです。もちろん早い段階でも運転抑止の判断もあり得ましたが、時は夕刻ラッシュ時間帯で、帰宅の足にとJRを当てにして駅に乗客が集まっている状況で必死に運行を確保した結果です。首都圏ならば振り替え輸送で他社線へ誘導で済みますが、大雪でバスも動かない中での出来事です。本当に頭が下がります。新幹線の好調にブイブイ言わせながら殿様商売の某JRと大違いですね。

も一つおまけ。そもそもこの冬の寒冷化と大雪は温暖化の影響と見られています。理由は北極の海氷の減少で氷ならば反射される太陽輻射熱を海水が吸収して海水温が上昇し、水蒸気が発生視野sくなっている一方、海水温の変化に伴い偏西風が蛇行し、大陸の寒気が南下したこと。その結果高めの海水温と寒気の温度差で雪雲が発達し以下略。偏西風の蛇行は北米、欧州、東アジアで特に顕著で、いずれも化石燃料の消費が多い地域です。とりわけ日本は低コストを理由に石炭火力への依存が強く孤立気味。電力会社の経営の都合で電車が足止めって考えると怒りが沸いてきます。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, August 13, 2017

1億総社畜化社会

米朝間で子供の喧嘩みたいな罵り合いが展開されており、市場はリスクオフに振れて株価を下げたりしてますが、こういう時は落ち着きましょう。そもそもホワイトハウスの行政官ポストを埋め切れず身動きが取れていないトランプ政権に戦争準備ができているわけないですし、北朝鮮にしても核実験由来の放射性物質は1回目以外検出されていませんし、ICBM実験も高高度で発射して飛距離のポテンシャルを示してはいるものの、難しい大気圏再突入性能は検証されておりません。もちろんだからと言って核やミサイルの開発が進んでいないとまでは言えませんが、騒ぎ過ぎです。

てなことは置いといて、1年前のエントリーで取り上げた社畜ネタです。今年は例年にも増して高速道路の渋滞が酷いですが、お盆に一斉に実家へ帰るからこうなるんで、時期をずらすとか考えないと、3年後は丁度オリンピック期間とバッティングしますからどうなることやら。猛暑による熱中症問題がやっと認識され始めましたが、新国立競技場をはじめとする関連工事も人手不足出遅れが心配されてますし、その新国立競技場の工事作業員の過労自殺が報じられるなど、本当に大丈夫かいと心配になります。

ロングバケーション当たり前の欧州では、企業が従業員に有給休暇取得時期を割り振って分散しながら長い休暇を楽しむのに、短い盆休みを一斉に取って大移動する日本のビジネスマンの働き方の異常さが世界へ発信されるおぞましい2020年になりそうです。その働き方改革を巡って混乱もあります。

連合、「脱時間給」容認を撤回 政労使合意は見送り  :日本経済新聞
日経の記事は問題だらけなんですが、連合の逢見事務局長が独断で政権とやり取りして進めていた話で、神津会長は長時間労働の歯止めが認められるならば、政労使協議に応じても良いとしたものの、あくまでも年収1,075万円以上の特定職種を対象とした高度プロフェッショナル制度の話であって、脱時間給は関係ありません。

そもそも裁量労働制も成果主義賃金も現行法で違法ではないんですが、要件として募集や採用の時点で説明がされ雇用契約書にも明記されている必要がありますし、そもそもこのような雇用形態は労使間で合意が必要なんですが、御用組合をでっち上げて協定書の書面を作っても、未払い残業代請求訴訟では実体のない名ばかり組合では労働者の代表と認められず会社側が敗訴する事例が重なり、経済界から要件緩和の要求が出ていたもので、労働側から見れば当然認められません。

あと限定職種の高度プロフェッショナルにしても、高給取りで直接雇用が難しいんですから、むしろアウトソースして相対取引で条件を決めれば良いんで、労基法に盛り込む積極的な意味はありません。当然の如く連合の傘下組合から反対の声が上がって連合は撤回に追い込まれ、次期会長含みだった逢見事務局長を副会長に棚上げして神津氏の会長留任を決めて収めたって話です。早い話企業は残業代を払いたくないってのが本音です。

2020年のオリンピックと盆帰省のバッティング問題でも指摘しましたが、欧州企業では仕事の繁閑を有給休暇の分散取得消化で対応しており、そのため使用者側に有給休暇の完全消化の義務と共に取得時期調整の権利が与えられています。国によっては年度初めに従業員の有給休暇取得計画書を当局に提出する義務まで負わせているわけで、残業で繁閑調整をしている日本とは根本の考え方が違います。結局残業が日常化して長時間労働が当たり前になり、過労自殺も後を絶たないし、長時間労働で作業効率も落ちるから労働生産性が高まらず、利益率が低くなるという悪循環です。解決策は簡単で、最繁忙期に合わせて増員して有給休暇を分散取得させることです。

あと人手不足でAIへの期待が高まっておりますが、AIに限らず機械による労働の代替自体は昔から繰り返されてきたこととはいえ、単純な代替を考えているならお門違いです。AIは人間になれませんし、むしろAIが能力を発揮するための仕事の手順や環境を人が整えてやらなければならないですから、AIで人手不足解消は不可能です。これオフィスオートメーションが言われ始めた時代やコンビニのPOSシステム導入のときも言われたんですが、システムの導入に伴って業務の見直しがちゃんとできて初めて、少ない人数で多くの産出高を稼ぐことで労働生産性が向上するんで、その分を賃金に反映させて家計の購買力を底上げして初めて、経済成長につながるんですが、現実はどうも違う方向へ進みそうです。

実はこれを端的に説明するツールはマルクスが提供しておりまして、G--W--G'で表しております。Gは資本、Wは商品を意味します。ここで言う資本はぶっちゃけお金のことで、生産手段としての工場や機械に投資して、従業員を集め原材料を仕入れて生産した商品を市場へ投入して代金G'を得ることになります。このときにG<G'となるように仕組みを整えるわけです。工業化で工業製品が大量に生産され市場投入される産業資本主義過程はこれが繰り返されるわけです。

しかし大量の工業製品が市場へ投入され続けた結果、工業製品の価格は低下しますし、またスマートフォンのような汎用多機能デバイスの登場でむしろ集約が進む結果、G<G'の関係の維持が難しくなります。一方PCやスマホのような汎用デバイスはソフトウエアのバージョンアップで機能強化が進み、思いがけない用途が開発されていきますから、開発に携わるプログラマーやSEなどのIT人材が重要な生産手段となり、その調達囲い込みのために高額報酬が約束されるようになります。結果的にITデジタル技術を軸とした生産手段の組み換えが起きてデジタルブルジョワジーとデジタルプロレタリアートに分離する現実が出現したわけです。伝統的工業の衰退とIT産業の台頭で米トランプ政権誕生の背景でもあります。

困ったことにあらゆる労働がデジタル技術で代替可能なわけではなく、元々低賃金の単純労働はいつまでも機械化されずに残るどころか、かつてはノウハウの塊だった事務職や販売職も作業内容が単純化されていきますから、低賃金の単純労働はむしろ増えるわけです。つまりマルクスがプロレタリアートと命名した時間の切り売りでしか生活の糧を得る手段を持たない階層が新たに出現したと見れば、世界的にみられる格差拡大が容易ならざる事態であることがわかります。この観点からすれば労基法改正で政府が盛り込もうとする高度プロフェッショナルは保護すべき対象ではないわけです。

さらにもっと困ったことに、高給で優遇される高プロ人材の育成は困難だってこともあります。何となれば人に教える暇があるなら自ら働いて稼いだ方が良いし、人に教えてライバルを増やせば自らの市場価値を下げることになります。加えて技術革新のスピードが速くなってますから、市場価値が落ちたところで教える側に回る頃には次の新技術が出現して手持ちのスキルが陳腐化しているわけですから、教えるニーズもなくなるわけで、ある意味旬の内に稼いでセミリタイアというキャリアプランを取らざるを得なくなります。かくして技術の分断が今以上に深刻になるわけです。

また高額報酬の職業ほど資本代替のニーズが強く、高額の研究開発投資に見合うリターンが期待できますから、いずれ稼げる職業は減っていくというディストピアになりかねません。自分で自分の首を絞めることになるわけです。高プロじゃないですが、例えばかつて高給取りだったバスドライバーやトラックドライバーの賃金低下も、運送業の参入規制撤廃で進んだわけですし、タクシーに対するウーバーなどのライドシェアの挑戦も同様の文脈で理解できます。規制緩和は善として拙速に認めるのは問題です。

その先の自動運転も、当面は地域限定の交通システムとしての実現を目指すのが妥当です。トラックドライバー不足を自動運転で凌ぐのも問題です。荷物の積み降ろしや検収、場合によっては代金決済もあるわけで、その部分は自動化できないので、結局ドライバーに運転させる方が労働生産性を高めることになります。寧ろ鉄道や船舶との連携による複合一貫輸送のシステムを構築することが大事です。この辺の誤解はかなり根深いですね。

その鉄道も自動運転車の実用化で変化を迫られます。ただし道路輸送では実現不可能な大量輸送の能力が結局鉄道のレゾンデートルになるという意味で、地方のローカル線の維持はますます困難になります。また線路保守など労働集約産業の側面は残り、JRでさえ外注化で凌いでいる状況ですが、その結果日常の列車運行に支障が出るほど保守レベルが荒廃したJR北海道の問題など、解決すべき問題があります。そんな中で取り上げたいのがこれ。

JR東など、英鉄道運営を落札 12月から運行  :日本経済新聞
英国鉄道のオープンアクセス制にフランチャイズ(運行会社)として参入するというもので、遅延の多いミッドランド鉄道の定時運行率の向上をアピールして落札したということで、結構ハードルは高いと思いますが、例えばJR北海道の問題の解決策として、線路保有の国策会社を設立してフランチャイズを募集するといった事態も考えられますから、国内の鉄道事業へのフィードバックも期待できます。この辺新幹線システムの一括受注しか念頭にないJR東海の連戦連敗に対して、確実に経験値を高めるJR東日本の行き方は賢明です。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, June 18, 2017

空飛ぶクルマ

共謀罪が成立しました。国会論戦で一般人には適用されないとされてますが、問題なのは乱用の歯止めがないこと。前エントリーでも指摘したように、前文科省次官の前川氏に対する個人攻撃のように、政権に不都合な人物を狙い撃ちすることができてしまうわけです。この点は戦前の治安維持法と変わりません。ちなみに治安維持法の逮捕者第1号は仲間内でヨタ飛ばし合ってた大学生達で、冤罪だったけど取り調べ中に拷問死だそうで、これリベラル陣営から見れば逮捕上等、逮捕は名誉と考えるべきでしょう。歴史に名を遺すチャンスです^_^;。てことで共謀したいんだけど、1人じゃできない。仲間がいない。

******急募!一緒に共謀する仲間!******
価値観を逆転させれば怖くはありません。ヤクザかい!てことでヨタ飛ばし続けます^_^;。

先週末愛知県の東名高速で事故がありました。

バスに車衝突、45人けが 運転の男性死亡 愛知の東名高速  :日本経済新聞
北朝鮮の脅威が言われ、各地でミサイル防空訓練が行われたというニュースと並べると、現実的には空飛ぶクルマの方が怖いよなと。そもそもミサイル飛んできたは数分のうちに着弾してしまうから意味ねー。続報では反対車線を走っていた乗用車が左側ガードレールに接触してコントロールを失い、右へ寄って中央分離帯の法面に乗り上げてジャンプしたそうですが、時速100㎞程度ということで、道路構造の欠陥も指摘されてます。

一方ぶつけられた観光バスの方は、バスドライバーが咄嗟に左に避けてエンジンブレーキで減速しながら左側のガードレールや側壁に接触させて安全に停止させ、その冷静な対応に賞賛が寄せられています。また観光バス事業者の東神観光バスは安全性の高い新車を導入しており、軽井沢のツアーバス事故では車体強度に問題のある中古バスだったこともあって、この面でも賞賛されてますが、いや待て、そもそも空飛ぶクルマのガードレール接触が事故原因だったわけで、同じガードレール接触で車の挙動がここまで違うってことは指摘しておきます。

種明かしすれば車両重量の問題でして、乗員1名の乗用車の重量は1t前後に対して、フル装備の大型観光バスで定員乗車なら20t近くになります。これだけ重量が違えば運動エネルギーの量も大違い、大型観光バスを安全に停止できる側方ガードレールも乗用車には強すぎて弾みでコントロールを失うことはあり得るということですね。もちろん入射角の問題や乗用車のドライバーの心身喪失の可能性など、報道ではわからない問題もありますが、道路構造に注目すれば、問題点は見えてきます。1t未満の軽から40tの大型トレーラーまで同じ道路を通行するわけですから、安全対策に根源的な不可能性があるわけです。

中央分離帯や側方ガードレールの設計は大型車の重量を受け止めて衝撃を分散しなが安全に停止させることを狙っているわけで、乗用車にとっての最適設計ではないことは確かです。中央分離帯も大型車が突破できないようにタイトな法面を採用すれば、軽量な乗用車にとってはジャンプ台になりかねないわけです。道路の混合交通故の矛盾ですが、そもそも高速道路は大型車を想定した作りであって、乗用車で利用するときにはドライバーがリスクを意識して自衛するぐらいしか対策はなさそうです。余談ですが、都内の高速道路整備で東名より先に中央道が着手され、しかも分岐線である富士五湖線が優先されたのは、治安対策で山梨の陸自基地から戦車を速やかに都内へ向かわせるためとか。時あたかも新左翼運動が盛んな60年代後半でした。

大型車と小型車をゾーニングで棲み分けられない限りついて回る問題ですが、首都高で湾岸線の大型車ETC割引で利用を誘導しているぐらいです。外環道や圏央道が整備されたときに、大型車の環状ルートへの誘導策は考えられますが、厳格な分離は困難です。

てなタイミングで日経ビジネスが「「空飛ぶクルマ」の衝撃」という特集組んだのが何というか^_^;、道路を走る限り渋滞を避けられない中で、「空を飛ぶ」という発想そのものは突飛とは言い切れないにしても、クルマの未来に見えるある種のカオスを感じます。中身は玉石混交で、さまざまなアプローチがありますが、プレイヤーがアマゾンやウーバーのようなIT企業にトヨタ自動車、航空機のエアバスまであり、ドローンの大型版や1-2人乗りのパーソナルプレーンなど、方向性も定まっていません。

空は飛ばないまでも自動運転は実用化を射程に入れており、未来の自動車産業の激変を示唆するのですが、上記のような現実の事故を目の当たりにして、ここに自動運転車が加わることに関してどう考えるべきか、今のうちに考えておくべき問題があります。既に自動運転車としてレベル2と定義される高速道路で車線キープと車間距離を保った自動追尾は市販車レベルで実用化されてますし、これに車間通信を組み合わせて衝突を回避しながら車間を保って運行する技術なども実用化目前ながら、いずれもドライバーが乗って緊急時の危険回避を行う仕様で、今回のような事故を防げるのかというと、むしろヒューマンエラーを誘発する可能性もあり問題を複雑にします。

その先の完全自動運転は事故時の責任分担の問題が絡み、現状では不可能となります。実際大型車に偏った日本の高速道路の安全対策を前提とすれば、事実上完全自動運転は無理です。本気で実用化を考えるならば、エリアを限定して速度を抑制した形で交通システムとして導入するというアプローチになると考えられます。実際グーグル改めアルファベットの自動運転車開発会社ウェイモが2座の小型自動運転車を米アリゾナ州フェニックスで実証実験してますが、日本でもウーバーのシステムで自家用車有償運行を行う京丹後市など、まずは公共交通が維持困難な地方の特定エリアで試験導入が現実的でしょう。

京丹後市では道路運送法78条の自家用自動車の有償運行の特例で認可されたんですが、そのために営業車に準じた事故補償を求められてボランティアのドライバーに高額の保険加入が義務付けられており、元が取れる状況にないこともあり、ドライバーのなり手の確保が難しい現実があります。未来志向で特区制度を活用するというならば、ウェイモのシステムを導入した方が良かったんじゃないでしょうか。加えて鉄道貨物の強化で高速道路の大型車を減らしすということも考えて、貨物鉄道と競合するルートを小型車向けにゾーニングというアプローチも考えられます。

第2次安倍政権の成長戦略の目玉とされる国家戦略特区ですが、今治の加計学園獣医学科問題にとどまらず、どこに未来志向があるのか疑問です。仮に獣医師が足りないとしても、既存の獣医学科の定員増で対応できれば初期投資分の負担が軽減されるわけで、敢えて新設の大学で行う理由は明らかではありません。しかも獣医学科新設に意欲を見せた京都産業大学は却下したうえで、空白地帯に限るという事実上再申請を封じる決定までされているわけですから、加計学園への便宜供与が疑われても仕方ありません。

てなわけで、共謀しようぜwwwwwwww。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, April 09, 2017

トランプ・クリティーク

柄谷行人氏の著書に似せたわけぢゃないんですが^_^;。トランス・クリティークは名著です。

シリア情勢が大きく動きました。4日にシリア政府軍の空爆後に、サリンに似た中毒症状が見られたことで、化学兵器の使用が疑われたことを受けての懲罰ってことのようですが、疑惑段階での軍事行動は問題です。子ブッシュ大統領がイラクが大量破壊兵器を開発中という嘘の情報で開戦したことを思い起こさせます。当時は独仏両国が反対に回ったのに対し、今回西側諸国はこれを歓迎したわけですが、いち早く支持を表明した日本の立場は微妙です。

米中首脳会談が行われている中でのミサイル攻撃ということで、北朝鮮問題に対する警告の意味を指摘されてますが、その割にロシアなどへ行われた事前通告が日本には為されなかったわけで、日本政府の希望的観測の域を出ません。むしろ国連安保理でロシアと連携することが多い中国が口出ししにくい米中首脳会談のタイミングを利用したってのが実際でしょう。実はここにトランプ政権の性格を示す鍵があります。

レーガン大統領に比較されることが多いトランプ大統領ですが、就任後の政権運営を見ると、むしろニクソン大統領に近いと言えます。今回のシリアへのミサイル攻撃で言えば、ジョンソン大統領時代に泥沼化したベトナム戦争を終結させる過程で北爆を強行したりカンボジアへ戦線を拡大したりした迷走あたりと似た対応です。

実際は欧州諸国が主張するアサド政権排除とは一線を画し、深入りを避けています。どうもアサド政権の化学兵器使用に関する官僚のプレゼンに義憤を感じたということのようです。そしてホワイトハウスの政治任用ポストのなり手が見つからず、議会承認も遅れていて空席が多いことが影響してるようです。だから逆にトランプ大統領の脊髄反応的な対応が表へ出たってことのようです。

日本としてはむしろシリア情勢を他山の石として、朝鮮半島有事で米軍の北朝鮮攻撃が起きた時の混乱をシミュレーションする機会でもあります。おそらく韓国国内の反応で賛否が分かれ、日米韓一枚岩の対応は無理でしょう。当然在日米軍基地への北朝鮮からの報復攻撃も起こりますから、日本国内も混乱して収拾がつかなくなることになります。軍事オプションは慎重であるべきですし、対北朝鮮でアメリカが強硬策に出ることは止めないといけません。

思い起こせば大統領選勝利宣言の場でTPP永久離脱を表明したのも、オバマ大統領の任期中に批准できなかったことで、NAFTA再交渉よりもハードルが低いですし、大統領就任後の大統領令連発も、大統領令は問題があれば議会が無効法案を成立させて無効化したり司法が差し止めたりできるので、実効性よりも有権者へのアピールの性格が強いと見ることができます。それが証拠にオバマケア修正法案に関しては議会との調整の果てに撤回しておりますが、これも単純にオバマケアを葬り去りたいのであれば、廃止法案ならば議会多数派の共和党の賛成ですんなり通っただろうに、、修正法案としたために、共和党保守派の賛同が得られず撤回に追い込まれたんですが、その結果、オバマケア継続が決まり、歳出が確定したことで、予算審議はむしろやりやすくなってます。トランプ大統領ってホントは隠れリベラル?

この辺はビジネスマンらしく難易度を意識したリアリズムなんでしょう。同時に従来の保守とリベラルの対立構図の中で経路依存的な議論しかできない政治家たちを戸惑わせているとも見ることができます。ニクソン大統領が米ドルの金交換停止や頭越しの電撃訪中で、オイルショックに始まる産油国カルテルをオイルダラー還流の枠組みで実効支配し、中ソ対立に乗じて一つの中国政策でソビエトとの分断を進め、現在に通じる地政学のフレームを作ったわけですね。日本にとっても沖縄返還交渉関連の密約で深く関わりますし、アメリカ側が沖縄返還のバーターと考えていた日米繊維交渉の約束を破った日本への不信感が、その後80年代以降のジャパンバッシングへとつながったとすれば、当時の佐藤政権の不始末でもあり、その意味で従来の対米追従路線を離れられない日本の安倍政権のしょーもなさにはため息しか出ません。

改革の本丸と目される税制改革ですが、これイギリスのシンクタンクが提案する法人税の仕向け地課税制度が踏襲されると見られますが、これに関してあまり正しく認識されていないようです。法人税の課税方法には大きく分けて居住地課税と源泉地価税の2つがあり、前者は企業の本社所在地での一括課税でアメリカはこれですが、多くの国は付加価値を生み出した地域で課税する後者となります。問題は違う制度が併存する中で企業の多国籍化が進んでいることで、居住地課税国の企業が源泉地価税国に生産拠点を置いて本国へ逆輸入するケースでは二重課税になりますし、逆のケースでは課税逃れにもなり得ます。そこで国境調整として、前者であれば源泉地価税分を控除した差額が居住地で課税されるという形になります。後者に関して源泉地国企業が居住地国に現地法人を置くことで課税逃れを防ぐ必要があります。

更に問題をややこしくしているのが各国の課税ベースの違いと税率の違いで、これらを組み合わせることで、パナマ文書で問題となったタックスヘイブン問題が生じるわけです。タックスヘイブンの場合は付加価値を生み出さない金融取引を利用して低税率国や地域へ富を退避させるわけで、一方で新興国やEUの周縁国などで外資誘致のために法人税減税が競争的に起きていることもあって、各国の税収の空洞化が進んでいます。その結果米企業に生産拠点の海外移転のインセンティブを与える結果となりますし、残る企業も課税特例による政策減税をロビーイングして税の軽減を画策するという複数ルートで税の空洞化が進み、税の所得再配分機能が失われていく現実があります。

それを変え得る課税方法として、仕向け地課税が提案されていて、米共和党で実現の模索がされているものです。WTOルールでEUの付加価値税や日本の消費税など間接税に例外的に認められている税の国境調整の仕組みを法人税に盛り込み、グローバル化に対応して輸出に対しては税の還付を、輸入に対しては公助抜きの課税とすることで国境調整を図る税制で、少なくとも国内で製造可能な製品の海外移転不利にします。加えてキャッシュフロー課税とすることで、形式上直接税となりWTOルール違反の可能性があるという提訴に対して利益課税でなく間接税だと主張できるという目論見です。

キャッシュフロー課税はそれに留まらず、複数年に分けて焼却される減価償却の一括償却と同じ意味になりますし、有形資産に留まらず知財やのれんなどの無形資産も同様ですから、投資全般を阻害しないという意味もあります。加えて人件費も控除対象で、この点が付加価値税と大きく違う点で、つまり低賃金国への生産移転は不利になるという意味で、国内雇用も守るという大統領選の公約と整合性があります。

また国境調整の結果仮にWTO提訴や報復課税がされたとしても、結局有効な報復手段は同じ仕向け地課税を導入するぐらいしかないわけで、それはむしろ望むところ。移転税制で税収確保に苦しむ多くの主権国家にとって問題解決の道になるというわけですね。EUにしろNAFTAにしろ主権国家の上位組織を置くという意味では主権制限の要素があるわけですし、各国の税の空洞化問題も含めて、ある意味クリティカル共同体としての主権国家の復権ということになりますから、反グローバル化という批判も当たりません。

加えてアップルやスターバックスで問題になった税逃れに関しても、未来分は新法人税で捕捉される一方、過去分を10%の軽減税率でみなし課税するリバトリエーション税を課す法案を用意しており、新法人税の前座として議会に諮って成立を目指してます。こちらはオバマケア修正法案で反対に回った共和党保守派も賛成に回ると見られており、トランプ税制改革の成否を占うことになりそうです。

問題はこうして相当額の税収増が見込めるわけですが、それを原資に減税やインフラ投資の財源とする目論見ですが、大統領選で訴えた法人税15%までは届きそうにないということ。共和党案の20%も苦しく、25%程度がせいぜいではないかと言われております。加えてリバトリエーション税で利益の海外留保が無意味化しますから、米企業が一斉に留保資金を本国送金すると、為替がドル高に振れてしまうという点ですが、むしろ新税制で輸入物価にかかる上昇圧力を緩和するとすれば、国民生活的には問題ないということになりそうです。

それと3月に利上げし、年内3回の利上げを示唆して緩和の出口を探るFRBの動き如何では、ドル高が進む可能背もありますが、その根拠となる米景気の回復基調にやや異変が。

米市場の変調、自動車業績に重荷 販売減速・膨らむ奨励金  :日本経済新聞
以前から指摘されていた問題ですが、サブプライム自動車ローンと販売奨励金で新車販売に下駄を履かせた状態が続いた結果、中古市場に車が溢れて値崩れして、元々リセールバリュー頼みのローン利用者にとっては、転売、買い替えのサイクルが停滞するわけですから、それが新車販売に跳ね返っている状態で、丁度不動産サブプライムローンと同じ構図です。ただ規模は小さく、金融危機には至らないと見られていますが、新車販売の停滞は生産の縮小を通じて米景気後退のトリガーにはなり得るわけです。ただしそうなればFRBの利上げスタンスは見直されるでしょうし、むしろ低すぎる失業率でインフラ投資が滞ると言われる中、景気後退は悪い面ばかりではありません。

そうなるとテキサス新幹線や北東回廊リニアの建設を目指すJR東海にチャンス到来?とはいかないのが現実です。トランプ税制では結局建設でも車両製造や保守でも現地調達を基本にしなければなりませんが、高速鉄道の建設や運営をこなせるサプライチェーンを立ち上げるのは困難を伴います。実質貨物鉄道で欧州以上に衝突安全の基準が厳しいアメリカですが、逆に言えば日本式の繊細な構造の高速鉄道の建設は未体験ゾーンとなるわけで、日本のリソースを使うと課税される新税制では不利になるわけです。インフラ輸出に前のめりな日本ですが、そうそううまい話は転がってはいないわけです。東芝が買収したWHの誤算もスリーマイル事故で原発建設が停止した結果、サプライチェーンが崩壊してコストを膨らませたことにあります。無理しても同じ運命が待っているだけでしょう。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

より以前の記事一覧