鉄道

Saturday, November 14, 2009

メトロポリタン・アンダーグラウンド

タイトルで地下鉄問題と直感した方、正解です。東京地下鉄株式会社(通称東京メトロ)の中間決算発表会見のニュースで、メディアによってこんなに違います。

東京メトロ、都営地下鉄と統合協議 メトロ社長が言及
東京メトロ社長「09年度中の上場は困難」
東京メトロと都営地下鉄、経営統合で協議
同じ日の同じ会見で、メディアのよってこんなに着眼点が違うことに注目してください。ニュースソースは同じはずなのに全く異なった印象を受けます。

事実関係としては、11日に中間決算発表の会見を開き、その席で09年度中の株式上場が難しいこと、都営地下鉄との経営統合問題を課題として都と協議はしていることを明らかにしたというだけの話です。東京の地下鉄一元化の協議は、営団時代から行われていたことで、特に目新しいことでもありませんし、当時から営団と都の職員の待遇の違いや、都営地下鉄の巨額の累積債務問題が障害となり、協議は前進しませんでした。

そして営団は政府の民営化方針に従って政府と東京都が株式を保有する形態の特殊会社へと改組され、政府は保有株を売却して完全民営化に舵を切ろうとしているのですが、東京都が邪魔しているのは既に述べましたし、メトロ株を狙う法人企業の話もしました。付け加えるならば、三菱地所、三井不動産他の不動産大手や、銀行など、メトロ株に色気を出している法人企業は多数あると考えた方がよいでしょう。

というわけで、上場が難しい理由として、リーマンショック後の株式市場の低迷と主幹事証券の選定遅れを挙げておりますが、公式見解でしかありません。リーマン前の株価水準がグローバルバブルで下駄を履いていただけですから、内需関連で実力勝負できるはずのメトロ株の売却が困難とは考えられません。あと主幹事問題ですが、記憶違いでなければ、営団時代に発行していた地下鉄債券では日興証券が主幹事だったと思いますが、法人部門の日興コーディアル証券の三井住友FGによる買収もあり、主幹事の座をめぐる大手証券の争奪戦があったのかもしれません。この部分はとばっちりといえるかもしれませんが。

いずれにしても、メトロと都営地下鉄の統合は五里霧中と考えるのが正しい見方でしょう。メトロの社長会見では本音は言えないでしょうけど、東京都の株式保有継続の意向が、株式上場の最大の障害であることは明らかです。実際こんなニュースもあります。

石原知事、東京メトロ株「都は売らない」
政権交代でどうなるかと思いきや、前原国交相は株式売却を都に働きかけているということで、予算編成で財源探しに苦労している民主党政権としては、株式売却益は喉から手が出るほど欲しいところでしょう。とはいえ都が株式を持ち続け、経営に影響力を行使する姿勢を見せている限り、話は進みません。

完全民営化されたはずのJALでさえ、政府、与党議員、自治体の圧力に屈して現在の惨状になっているのですから、メトロに都の影響力を残す選択肢はあり得ません。それよりも東京都自身が株式売却益で都営地下鉄の累積債務を繰り上げ償還することを考える方が正解です。そうすれば地下鉄統合の障害の一つが消えますし、運賃をメトロと同水準に下げることも可能でしょう。その上で都が職員の新規採用を停止し、段階的にメトロに業務委託していく形が、おそらく考えられる地下鉄統合の唯一現実的な解です。都営バスでは既に一部民間委託は行われていて、都も出資するはとバスの派遣乗務員が一部路線で乗務しています。これがホントの派都バスなんちゃって<^o^;>。

あと地下鉄統合がなぜ必要かも考えてみましょう。よく言われるのが、乗り継ぎの場合の初乗り運賃二重払い問題で、旧運輸省時代から国の指導もあって、乗り継ぎ割引が制度化されていて、現在は打ち切り合算した運賃から70円引きが乗り継ぎ1回限り適用されるようになっておりますが、特に1駅同士の乗り継ぎなど短距離で割高となります。

実は運賃制度の問題は、経営統合しなくても解決可能なんです。そもそも初乗り運賃が距離比例でない割高水準になっている理由ですが、駅で乗車券を発行し、改札、集札でチェックするために、駅には人を配置し、設備を整えないといけないので、その部分の固定費という考え方です。現在はさらに自動改札やICカード乗車券など営業設備面で初期投資額が大きくなっているので、この傾向は増しています。一方で閑散路線の無人駅はどうなるというご指摘もあるでしょうけど、これは合理化の結果ですし、そもそも運賃取りっぱぐれのリスクがありますから、そのための上乗せとも解釈できますが、後付け感は否めません。

ですが、例えばJRの会社間またがり利用の場合は、運賃が通算されるのはご存じの通りです。三島会社のように賃率の異なる場合には、擬制キロまたは上乗せ運賃で対応し、運賃通算自体は維持されてます。乗車距離の違いや利用者数の違いなどはもちろんありますが、JR同士で可能なことが、首都圏など大都市圏の事業者同士でできない道理はないわけで、その意味で運賃通算のための地下鉄統合という理由付けは、必ずしも妥当とはいえません。

例えばPASMO導入時に改札分離したJR/メトロ西船橋駅の事例など、事業者の都合が優先されましたが、その結果固定費を増やしているとすれば、何のための打ち切り合算、初乗り二重払いなのか疑問です。適切な事業者間の運賃分配が可能ならば、これでもかとばかりの物々しい自動改札ゲートを減らせるわけで、その分コストダウンできますから、運賃を下げて乗客に還元することも考えて欲しいところです。

特に地下鉄統合で見落とされがちな議論ですが、経営統合と運賃共通化を切り離せば、JRや私鉄との運賃共通化のような、世界の大都市では当たり前になりつつある方向へ向かうことも考えられます。具体的には運賃収入を都や事業者が出資する精算機関に集め、SuicaやPASMOの乗車履歴の集合から推定される乗車実績比率で事業者へ分配するなどの方法が考えられますが、事業者の自主性に任せても実現は難しいだけに、行政機関である東京都がイニシアチブをとって行動する必要があります。

というわけで、東京都は完全に立場というか役割を間違っています。ひょっとしたら事業仕訳けが必要なのは東京都かもしれません。とはいえ銀行税問題で二審まで敗訴し、銀行に多額の和解金を支払ったり、公金を投入しながら乱脈融資でどぶに捨てたり、意義が不明確なままオリンピック招致に失敗したりしている石頭都知事じゃ無理か-_-;。

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Sunday, November 08, 2009

意外に可能な温暖化ガス25%削減

三島由紀夫の「美しい星」という作品がありまして、テーマはズバリ「宇宙人」。両親と2人兄妹でそれぞれ水星人、金星人、火星人、木製人を名乗る不思議な一家の話です。まるで鳩山由紀夫、幸夫妻の出現を予想していたかのような内容は笑えます。三島作品で笑えること自体稀有なことですが^_^;、市谷での割腹自殺で狂気の作家と見られがちな三島由紀夫が、実は村上春樹に通底するポストモダンな感性の持ち主であることもわかります。早く生まれすぎて周囲に理解されなかったのかもしれません。

んで鳩山首相の「宇宙人」ぶりは、13日に予定されるオバマ大統領来日時の首脳会談で扱いが注目された普天間移設問題でも如何なく発揮されてます。既に10年以上店ざらしされている問題に、拙速に答を出すよりも、文字通り対等な日米関係を構築する意味で、日本の占領民意識とアメリカの日米安保タダ乗り論を乗り越えるテコにしようとしているようです。つまり同盟強化が狙いであって、優男の風貌でなかなか肝が据わってます。

実は日本の政権交代で一番慌てたのが中国でして、元々78年に鄧小平が改革開放路線へ転換したときに、手本としたのは、自民党長期政権下で高度経済成長を実現した日本です。つまり共産党1党独裁体制を維持しつつの経済成長委は可能という考え方でした。その意味で昨年の北京五輪や2010年の上海万博は、正しく日本の60年代をトレースする意味があるわけですし、欧米からの民主化圧力も、「欧米とアジアは違う、日本を見よ」という理屈になるわけです。

その日本で政権交代が起こり、民主政治の現実が示されたわけですから、予想外だったわけです。中国流解釈では、日米同盟は「ビンの蓋」、戦前の軍国主義へ回帰しないための安全弁として安心感をもたらすものと見られております。温暖化防止でも、中国が経済発展と共に排出量を増大させて国際的な風圧を受ける流れに対して、日本の前政権の消極姿勢は良い風除けでした。それが鳩山首相の温暖化ガス排出25%削減国連演説で覆されたわけですから、中国にとっては痛し痒しです。

それでいて靖国参拝否定や中国といの一番の首脳会談をセットするなど、親中的な対応を取られているので、公に非難することもままならずです。日本の意欲的な目標の表明は、米オバマ政権でも反対派の説得材料に使われているようですから、アメリカの対応如何では中国のCOP15の枠組み参加もあり得ます。ま、実際はそこまで楽観はできないようですが。

で、現時点で公式の数値が見当たらないのですが、2008年の日本のCO2排出量は、かなり減少したらしいのです。なぜならば、リーマンショックで生産が減少したからで、実際には10-12月期の減少によるわけですが、産業部門で年率換算では90年比20%超という水準に達するようです。つまり財界が主張する「乾いた雑巾」論とは違って、元々海外バブルで高止まりしていた生産水準が元に戻っただけで、25%削減の実現可能性は実は高いということを意味します。

ここで重要なのは、世界規模の経済変動でして、円安と低金利でジャパン老いるマネーを海外投資に誘導し、海外バブルに乗じてモノを売ることは持続可能ではないということです。つまり産業部門はリーマン後の生産水準で利益が出るように、過剰設備の償却と人員整理を行う必要があるわけです。その意味で生産を底上げするエコカー減税や補助金、家電のエコポイントなどの政策は、過剰の解消を遅らせるという意味で不適切な政策です。

温暖化防止に逆行するという意味で、高速道路無料化が遡上に上ることが多いですが、渋滞対策と捉えれば、実は全く異なった意味があります。道路は典型的な公共財で、車が1台増えても、他の車の利用を排除しない性質があります。つまり台数が増えて渋滞するレベルまでは、道路の社会的コストは発生しないわけです(保守費などの軽微な負担は除く)。つまり道路の通行料を課金する場合、渋滞が発生するレベルまでは負担を下げられるということです。加えて渋滞対策としての道路整備費用は、渋滞区間の課金で得られる範囲内に留めることで、社会的コストの最小化が図られることになり、民主党政権が掲げる高速道路無料化は、無駄な道路整備を制限する効果が期待できるわけです。

さらに加えて、特に首都圏などの大都市圏での道路整備は、費用の多くが用地買収費に費やされ、加えて環境アセスメント対策として防音壁や環境側道の整備を求められることで更に負担が増えることになり、必要な道路の整備が進まないという現実もあるわけですが、それで破綻しないのは、鉄道による輸送需要の集約が起きている結果と見ることができます。とすると渋滞対策としての鉄道整備という政策スタンスの可能性も考えられるわけです。

とはいえ大都市部での鉄道整備も用地買収と環境アセスメントの壁は存在するわけで、実際首都圏の通勤ラッシュの解消が進まないことに現れております。加えて国鉄民営化によって鉄道が民間事業者に委ねられている点が、問題を難しくします。

JR東日本ではインフラ整備は最小限として車両の更新と湘南新宿ラインに代表される新サービスの開発で、コストをかけずに需要を喚起しつつ、東北縦貫線のようにインフラはボトルネック部分への集中投資で対応してますが、同時に運賃の将来に亘る据え置きを宣言しており、現行の運賃水準で可能な範囲での混雑緩和しか期待できないわけです。この点は私鉄各社でも同様ですが、特に首都圏のように稠密なネットワークが形成されていると、ある部分に集中投資してボトルネックを解消しても、そのことが需要のシフトとなり結果的に混雑を助長してしまうという悩ましい結果となります。

複々線化に後れを取った小田急線が忌避され、輸送改善著しい田園都市線が首都圏最混雑路線というありがたくないタイトルを得たり、横浜市営地下鉄グリーンラインの開業と実質複々線となる目黒線の整備で、東横線の混雑が助長されたりしております。東急では本業重視で積極的なインフラ整備を行った結果、改善どころか悪化してしまったわけですから、混雑解消が如何に難しいかということですね。ちなみに東急は本業だけ見れば増収増益ですが、度重なる設備投資と関連会社のリストラで疲弊し、自己資本比率を悪化させてます。JALとJASの統合も東急の関連会社リストラ策の中での出来事で、今でも東急はJALの筆頭株主ですから、JAL問題の後ろには東急の支援も隠れているわけです。

話がわき道にそれましたが、設備投資して輸送改善しても、混雑解消に至らないのは、全体として鉄道の過去の投資不足に起因するもので、高度経済成長期のインフレ経済で、鉄道運賃が公共料金としてスケープゴートとされた歴史に由来します。それでも人口が増加している間は、ある程度の輸送力増強投資が行われたものの、人口が減少に転じた現在、事業者の自発的な投資上積みは見込めず、公共部門の関与が必要となります。ただし財政が逼迫する中、それも十分な水準に達する保証はありません。

あとはタブー視されている運賃引き上げぐらいしか手段がないのですが、これとて乗客がマイカーへ流れては元も子もないわけですから、単純な値上げは難しいわけで、あとはJR中電区間のグリーン車や通勤ライナー、私鉄の一部にもある通勤特急などで着席サービスを売りに増収をはかり、それを原資にサービスの底上げを図るぐらいしか方法がありません。それ以前に首都圏をはじめとする大都市圏が今後高齢化が進むことを勘案すると、、通勤需要そのものが減少する可能性もあり、政策的な意思決定の難しさがあります。

もう一方で過疎地の問題も考える必要があります。特に沿線に大都市圏を持たないJR四国では、高速道路無料化の影響を強く受けることになりますので、北海道や九州共々何らかの対策が必要でしょう。とはいえサイドバーのAMAZON鉄道書欄でご紹介した時刻表に見るスイスの鉄道―こんなに違う日本とスイス (交通新聞社新書) (新書) に見るスイスの鉄道事情を見れば、それでもまだまだ打つ手はあると映ります。なにしろ最大の都市チューリッヒの人口規模は36万人程度で、四国の各県庁所在都市と同程度で、比べ物にならないほどのサービスの充実ぶりですから。ただし運賃水準は日本と比べてかなり高いですが。

一つの方法論として、噂されるJR九州の株式上場でネックとなりそうな経営安定基金を本体から切り離し、自治体の資金拠出を仰ぎながら地方版鉄道建設公団に改組して上下分離でインフラ整備を行うことは考えられます。三島会社のうちJR九州以外の2社は、青函トンネルと瀬戸大橋開通でブームとなった88年をピークに輸送量を減らしており、その間に整備された高速道路の影響は明らかです。インフラ投資を促進して競争力を高めることが必要です。

あと貨物に関しては、温暖化対策として国の関与を高めることが考えられます。民営化時の基本ルールであるアボイダブルコスト(機会費用)負担方式の線路使用料をも下回る線路使用料の支払い能力しかなく、並行在来線分離三セクへは国の差額支援を得て高額な使用料を支払っているわけですが、JR旅客会社に対しても、少なくとも列車運行で発生する費用+1%のインセンティブ相当の線路使用料を支払わないと、例えばJR東海による貨物への嫌がらせのようなことを防ぐことはできません。逆に国が関与する以上、あからさまな運行妨害には罰則を設けることも考えられます。

ここまでのパッケージを示せれば、高速道路無料化は温暖化防止に反するという批判は成り立たなくなります。加えて鉄道の競争力強化のためのインフラ整備とメンテで、持続的に雇用を生み出すならば、従来のように輸出産業に雇用を依存しない内需型経済への移行とも整合的です。新政権の交通政策がどうなるか、見ていきたいと思います。鉄道回帰は世界の趨勢でもありますし。

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Sunday, November 01, 2009

JAL問題が影を落とすユニバーサルサービスの新作法

この1週間いろいろあって、記事にまとめようとしてもまとまらない^_^;。特にJAL問題で大きな動きがありましたが、やはり政権の命運を左右する大問題という直感は当たったようです。とはいえ問題はより深刻になったんですが-_-;。

そのJAL問題からメディアチェックです。

国交相、日航再生に支援機構の活用表明 再建案公表せず
日航、支援機構にグループの再生支援を依頼
何かよく意味のわからない報道と感じられますが、要は旧産業再生機構OB等の作業部会(タスクフォース)の再建案が断念され、発足したばかりの企業再生支援機構を活用することになったということです。作業部会案はいわゆる事業再生ADRと呼ばれる私的整理の手法で、銀行に条件付で債権放棄を求めるもので、見返りに人員整理や資産売却などのリストラを迫り、企業自身の手で自主再建するもので、法的整理の1歩手前の私的整理と言われます。

とはいえ当初から銀行団は再建案に否定的で、交渉は難航しました。債権放棄して支援しても、収益モデルが不透明で、今までも再三裏切られただけに、すんなりと呑めないということですが、さりとて会社更生手続きなど法的整理に進めば、既に多額の貸し込みをしている銀行団も返り血を浴びるということで、銀行サイドからは早い段階で政府が関与して公的資金による救済を求めていたもようです。

しからばこの1月の作業部会の活動は無意味だったのかといえば、さにあらず、このやり取りの過程でJALが少なくとも2,500億円の債務超過に陥っていたことが明らかになっております。つまり対策を怠れば、97年11月の北海道拓殖銀行のように突然死していた可能性もあります。その意味では作業部会はギリギリのところでJALを救ったことになります。

とはいうものの、支援機構案件となったことで、作業部会が1月かけて実施した資産査定は支援機構の手で再度実施されるわけで、スピード感が問われる中での足踏みはじれったいところですね。加えて元々地方版産業再生機構として設立された企業再生支援機構は、元々地方の埋もれた優良企業の支援を通じ、融資銀行の資産の健全化を目的とするもので、わざわざ第三セクターを対象から外すことで当時野党だった民主党も賛成したものだけに、JALの救済に支援機構を用いることには、正直違和感を禁じ得ません。

それと気になるのが銀行団の頑なな態度ですが、実はリーマンショック以後の銀行の不良債権比率がジワジワ上昇していて、竹中プラン実行直前の2001年ごろの状況に近づいてきているのです。JAL再建案に厳しい態度を示した銀行に、実は余裕がなくなってきている状況が透けて見えます。となれば自主再建に厳しい態度の一方、法的整理には慎重姿勢だった銀行の態度にも説明が付きます。JALに貸し込んだ債権の行内格付けが下がれば、銀行自身が引当金を積み増さなければならないわけで、それだけ銀行の融資余力が下がり、貸し渋り、貸し剥がしが横行しかねないわけで、JAL再建に政府が強く関与せざるを得ないということになったと読み解くことができます。実はJAL問題の裏に金融危機の芽が隠れていたということです。

この問題はそもそも邦銀の資本政策のまずさが根底にありまして、邦銀が世界へ業容を拡大した80年代、欧米銀に比べて預金量は突出しながら自己資本が薄く、不健全なハイレバレッジ融資と見なされたことが、バーゼル委員会による国際決済銀行(BIS)規制につながったのですが、日本の銀行関係者は欧米による日本封じ込めと認識し、勝手なルールを押し付けられて融資を減らさざるを得なくなった「マネー敗戦」論を振りかざして居直っております。

そもそも銀行にとって預金は負債に当たるわけですから、資本に対して過大な預金を保有していたことが、バブル期の不動産融資などへの貸し出し競争を誘発し、海外へも資金が漏出して米ロックフェラーセンタービル買収や英仏ユーロトンネルプロジェクトへの融資とその焦げ付きなど、痛い目に遭っているはずなのに、銀行本来の融資業務は、主に日銀の窓口規制に頼って融資審査などの本来の情報創造を通じた信用創造能力を持たないままに肥大化した邦銀では、高収益のビジネスモデルを開発して、それが資本市場で評価されて株主資本を強化するということを怠ってきました。それによって預金の一部が株式市場を通じて銀行の自己資本強化につながれば、無理な貸し出し競争でバブルを膨らませることもなかったでしょう。つまり「貯蓄から投資へ」の金融改革に失敗したわけで、後付けで郵貯マネーを政治的に弄るのはまやかしです。

JAL自身の経営問題も複雑ですが、国の航空政策の犠牲となった側面も見逃せません。前述の空港特会による過剰な空港整備に留まらず、整備費用捻出のために着陸料も割高だし、路線数が多ければ需要が分散しますから、個別路線の採算性も下がるなど、何一つ良いことはないのですが、地方のおねだりを止められなかった国の対応に問題がありました。

加えて96年の需給調整規制撤廃で、航空事業への新規参入が可能になったものの、結局採算性の高い一部路線での競争激化にしかならず、JAL,ANA,JASの当時の大手3社による過剰防衛と国の羽田発着枠の硬直的な配分で新規参入社は育たず、90年代に欧米で産声を上げ、アジアにも起業熱をもたらしたローコストキャリア(LCC)と呼ばれる格安航空会社も日本には事実上存在しません。元々大都市の大空港が大手エアラインに押さえられ、着陸料の割安な近郊のサブ空港同士を point to point で結ぶことで低価格を実現していたLCCですが、9.11で大空港がセキュリティチェック強化で機能を落とし、テロの恐怖で航空利用が敬遠されたことで hub and spork 型の大量輸送に特化された大手エアラインが軒並み業績を落とした中で、運行を堅持したLCCが存在感を増し、今や業界地図を塗り替える勢いです。羽田のハブ化なんぞで大騒ぎしている日本の航空行政の周回遅れぶりはお笑いの域です。

またJALを破綻させた場合に、それに代わって役割を引き継ぐ存在がないということでもあります。例えばJALを破綻させてANAに路線網を引き継がせるのは不可能です。というのもANA自身がリーマンショックと新型インフルの影響で苦しんでいますから。あとJR東日本による救済案も一部で言われますが、絶対に有り得ません。というのもJR東日本自身、主に北海道地区の余剰人員受け入れで不当労働行為の汚名を着ながら、小売などの関連事業を育てて軌道に乗せて余剰人員を吸収した経緯があり、JALの複雑な労使関係が修復不能なことを見抜いております。余談ですがJRグループ内で本業以外の関連事業育成で実績を上げているのは東日本と九州の2社で、東海や西日本は本業依存度が高く、リーマンショックや新型インフルの影響も受けやすいわけです。とはいえ九州は経営安定基金でどうにか最終黒字を計上するレベルで、一部で言われる九州新幹線博多開業後に株式上場はほぼ不可能です。旧国鉄債務の一部として国が負担する経営安定基金が株主のものとなるというのは、誰がどう見ても具合が悪いですしね。

思えば2002年のJASとの経営統合は早まったのかもしれません。というよりも、その後のJALは、社内融和を優先し統合効果を出すためのリストラを先送りした結果、赤字路線を多数抱え、旧い非効率な機体を多数保有し、関連事業も含めて多数の重複分野を抱え込み、労組も分立して労使協議が成り立たない機能不全に至ります。このあたりはJALの経営の失敗であると共に、公正取引委員会の審査の甘さも指摘できます。結局形ばかりの規制緩和で、実質的な競争政策は採られず、JALの虚弱体質が温存されたわけです。そしてそんな内情は承知していたはずの銀行団が資金を貸し込んだわけですから、銀行による経営のモニタリングが機能せず、上場企業でもありますから、株式市場での健全な相場形成と株主の圧力による経営の監視も機能しなかったわけで、実は資本主義国としての日本の質が問われている問題でもあります。

前原国交相は地方路線について、何らかの形で支援を表明しました。

日航再建、地方路線の支援検討 国交相「飛ばない空港作らず」
国の直接関与は旧国鉄赤字ローカル線と同じ問題を抱えることになりますので、期限を設け、おそらく自治体の関与を引き出す方向でしょう。ただし空港特会の見直しに言及し、少なくとも整備費用は切り離すということですから、着陸料の値下げは期待して良いかもしれません。

赤字ローカル線といえば、JR東海が名松線の家城―伊勢奥津間の廃止を発表しました。

名松線、一部廃止の意向 JR東海、バスに切り替え
台風18号の被害で土砂流入や盛土流出など39ヵ所あった被害箇所のうち38ヵ所が家城―伊勢奥津間に集中したことから、今回あえて復旧工事を行わず、バス輸送に切り替えようということです。台風被害で廃止といえば高千穂鉄道を連想しますが、JR引継ぎ路線ではJR西日本の越美北線が長期運休を乗り越えて復旧した例はあるものの、被災以前から地元自治体による定期券購入補助が行われていたことが復旧の判断につながったのでしょうから、自治体の対応は重要です。

その意味では名松線の場合、そもそも存続区間は近傍を近鉄線が並行し、通学定期の割引率による逆転現象がなければおそらく利用者は皆無という路線立地ですから、近鉄線の駅に接着するバス網を整備していっそ全線廃止の選択も有り得ましたが、地元との軋轢を回避したいのでしょう。無人車両走行の芽は残ります(苦笑)。

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Sunday, October 04, 2009

尼崎事故調漏洩事件に見る国鉄一家の堕落

ニュースとしては先週の話ですが、メディアとは違った視点で取り上げるという当ブログのコンセプトに従って取り上げます。まずはこの記事から。

尼崎脱線事故調査委、元委員が報告書漏洩 JR西前社長が依頼
JR西日本の歴代トップの責任に言及し、企業体質に問題があったことを認めた山崎前社長ですが、一気に男を下げました。

鉄道事業本部長時代に安全対策を進言し、疎まれて関連会社へ出向させられていた山崎前社長には同情する声もあり、被害者からも評価の声が聞こえただけに、信頼を裏切ったことは重大です。加えて「新型ATSが設置されていれば事故は防げた」とする記述を調査報告書から削除することを求め、それを受けて山口元委員は事故調で発議して否決されたという一連は、事故調の第三者機関としての意味を無力化させるものでもあり、大問題です。

と同時にこの新型ATS問題は神戸地裁に起訴された山崎前社長の公訴事由にもなっているわけですから、それを意識した行動だとすると、更に問題が膨らみます。少なくとも審理以前に心証真っ黒となり、結果墓穴を掘ったことになるかもしれません。

そこまでのことではないとしても、山崎前社は経営者として事故を契機にATS設置基準制定などの規制強化で資金負担が増えることを心配したのかもしれません。鉄道事業の特殊性を考えると無理もないところがあります。というのも、今回の漏洩事件でも当事者は国鉄OBで先輩後輩関係という事情があり、おそらく山崎前社長も山口元委員も当事者意識が希薄だった可能性があります。

以前の記事で国交省の前身の1つである運輸省の問題を取り上げましたが、現業機関としての国鉄が公社として分離され、鉄道事業の国家独占の権限が現業機関である国鉄に帰属した結果、監督官庁であるはずの運輸省は国鉄に対して無力でした。そもそも国鉄による新線建設や改良事業は国鉄自身の意思決定で為され、民間事業者のような免許事業ではなかったんですが、例えばそのことが東海道新幹線が構想段階から反対の大合唱を受けながら実現したこととか、国より格下の東京都による都市計画に定義されない総武快速線の建設や、ローカル線建設に不熱心な国鉄に代わって建設を請負う鉄道建設公団の設立などは、この辺のねじれ現象の結果です。

で、技術面でも鉄道はブラックボックスに喩えられることが多いのですが、日本の場合技術面での国鉄の情報独占といいますか、位置づけはきわめて重かったのです。そのために日本の鉄道車両メーカーは国鉄の下請けを脱し切れず、大手私鉄も部分的ないいとこ取りで「うちのは国鉄より高性能」と言っていたような状況です。気候変動問題で世界で鉄道が見直されるトレンドに乗り切れない原因でもあります。この辺はガラパゴス化と言った方がわかりやすいかも。

その結果鉄道技術は旧国鉄と後身のJR各社が握り、監督官庁である旧運輸省には技術に関する目利きが存在しません。ゆえに福知山線事故のような重大事故が起きると、パニクって規制強化に走るのです。福知山線事故の場合も同様で、当時の北側国交相のコワモテぶりが思い起こされます。そういう意味で山崎前社長が、国交省の規制に影響を及ぼすこと確実な事故調報告の内容を早く知り、できれば規制強化を緩和する方向へ記述を変えて欲しいと考えても無理もないところです。

加えて事故調委員メンバーとして、結局国鉄OBを起用するしかない現状もまた避けられなかったでしょうし、OB同士の気安さが漏洩事件を生んだとすれば、つくづく旧国鉄という存在は罪作りです。明治以来のアンシャンレジュームは一朝一夕には解消しないんですね。

それとそもそも事故調(航空・鉄道事故調査委員会→現運輸安全委員会)の鉄道部会設置が、91年の信楽高原鉄道事故の遺族などでつくる鉄道安全推進会議(TASK)が93年に国に働きかけて発足したもので、信楽の事故でも不起訴ではあったものの、信楽高原鉄道を被告とする公判の審理過程で、滋賀県警が突き止めた亀山CTCセンターの方向優先テコの無届設置と事故後の撤去及び関連マニュアル破棄という重大事実が発覚したことが、専門の第三者機関設置の必要性を認識させたわけで、やはりJR西日本は本来当事者であったわけです。今回の漏洩事件は将にJR西日本の救い難い企業体質をを浮き彫りにしますね。

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Friday, September 25, 2009

高速道1,000円渋滞で鉄道回帰

政権交代が実現し、鳩山首相の外交デビューも順調です。気候変動、核廃絶など、民主党の主張に近い関心が国際社会で広がっていて、丁度国連首脳外交やピッツバーグのG20サミットなどの外交日程が政権交代をアピールするチャンスとなったなど、ラッキーな面はありますが、期待の持てる十分な成果が見られます。

民主党が掲げる内需拡大策の目玉は、何といっても子ども手当と高速道路無料化ですが、まだまだその意義に対する国民的理解は不十分です。とはいえマニフェストに明記され、それを国民が信認して政権を与えた以上、民主党政権はこれを実現する責任があります。実現にあたっては当然生煮えな部分を国会で野党に追及されるわけですから、実現可能性を高めるための修正協議もする必要がありますが、一方で安易な妥協は308議席の与党議員の追求にさらされるわけです。今さらながらマニフェストの重みを思い知らされます。

というわけで興味深いニュースです。

秋の連休、鉄道好調 東海道新幹線、GWより8%増
秋の5連休で渋滞予想から利用者が鉄道へ回帰しているというのです。1,000円高速の影響で減少した利用が戻っただけといえばそれまでですし、JR各社が対抗策で割引キップを出した効果と考えると、ひょっとしたら売上は戻っていない可能性はありますが。

あと航空も同様に利用者が戻っております。春のGWではあの新型インフルエンザ騒動が公共交通利用忌避を招いた部分もありますが、むしろ今、流行が本格化している中で利用が戻っているのですから、この影響は軽微なのかもしれませんが、断定は避けておきます。

一方でオンライン版の記事では省略されてますが、各道路会社によれば高速道路利用はGW時より4%減ということで、明らかに渋滞が忌避されたことが読み取れます。しかし納得がいかない部分もあります。というのは渋滞の発生はむしろ増えた点です。しかも50km超の渋滞が複数個所で発生するなど、見かけ上渋滞はひどくなっているのですが、これは結局利用時間が集中したことの影響のようで、ちょっと時間をずらせば渋滞を回避できたケースも多いようです。ということで、高速道のETC割引による内需喚起という前政権の置き土産で、貴重な社会実験がなされたということになります。

渋滞は利用の集中で起きるわけですから、週末限定のETC割引は、そもそも渋滞を誘発する要因を内包しているわけです。ですから、GWや夏休みの高速道の渋滞を理由に、民主党の言う高速道無料化でもっとひどいことになるということも言われたのですが、その論拠は怪しいわけです。むしろ曜日限定がなくなれば、利用の分散で渋滞は減るという議論も可能です。

あと高速道路無料化は自動車利用を助長しCO2排出を増やすという議論があり、国交省でも他の交通機関からの利用の移転でCO23割増との試算を明らかにしてますが、一方で同じ国交省で並行道路の渋滞緩和でCO2削減効果は4割弱になるという試算もあります。これは計算の前提が違うために起きたミステリーですが、前者は交通機関の選択のみに絞った試算で、後者は渋滞緩和に絞った試算で、他の条件は考慮しておりませんから、実際は両方の効果が相殺されて中立に近い結果となる可能性が高いといえます。

というわけで、マニフェストに明記されていないJAL問題と違って、マニフェストに謳い政権を得た以上、高速道路無料化はやらなければならないことであり、JRや高速バス事業者などから否定的コメントが相次ぐ中、あえて申しあげますが、この程度の競争条件の変化は、経営の責任で対応すべきです。また変化はチャンスでもあるわけで、変化にいち早く対応した者が、多くの果実を得るのがビジネスの世界の鉄則です。各社の奮起を期待します。

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Tuesday, September 22, 2009

グッドJALバッドJAL

やー、前の記事で指摘したように、ホントにJAL問題は新政権の命運を左右する問題になりそうです。

日航の新旧分離要請へ、政投銀など主力行 実質債務超過の恐れ
ソースは明かされておりませんが、おそらく日経の独自取材によるスクープでしょう。元々9月末期限の再建策を見て対応を決めるとしていた日本政策投資銀行他の金融機関ですが、とても追加出資は無理ということで動いたのでしょう。加えて政権交代で、与党族議員などの圧力を受けることなく抜本改革が可能になったという見方もあるのでしょう。前原国交相が24日にJALや金融機関などからヒアリングを予定しているタイミングですから、なんかいきなり生臭い話に発展した感があります。

処理のスキームは米GM支援に似たグッドカンパニーとバッドカンパニーに分離し、前者へ国が支援し、後者は時間をかけて清算処理するというものですが、日本国内の事例としては、国鉄改革で旧国鉄債務を一部を除いて清算事業団によって処理することで、新生JRを身軽な状態で再スタートさせたことに近いといえます。あるいは98年の金融国会で、破綻が心配されていた日本長期信用銀行、日本債権信用銀行の救済策として民主党案を自民政権に丸呑みさせた金融再生法も同様の処理となります。

当時から民主党の政策立案能力に注目していた私としては、時を経て民主党政権が誕生したタイミングでJAL問題に遭遇することの歴史の皮肉を思わざるを得ません。いわゆる民主党の流儀に整合的な処理案であり、金融機関にそれなりの知恵者がいたのかもしれません。とはいえ簡単に進む話でもありません。

というのは、このために特別法を制定する必要があること、当然予算措置も伴いますから、現在政権で進められている補正予算の執行停止を含む見直しで捻出した財源の一部を回さざるを得ないこともあり、政権内でも揉める可能性があります。加えて地方路線の整理を伴いますから、与党議員の造反も予想され、来月の臨時国会は早速大荒れとなりそうです。

結局JAL問題は鳩山首相の帰国を待って判断を仰ぐ話となり、タイムリミットも迫っているだけに、いきなりリーダーシップを試される展開となります。処理を誤れば本当に鳩山新政権が空中分解しかねない話ですし、また外国エアとの出資交渉も事実上ストップせざるを得ません。

2年前のおJALの記事で指摘したとおり、87年に株式公開し、政府全額出資の特殊会社から一般の民間企業になったJALは、同年実施された国鉄改革によるJR発足と関連し、特殊会社でスタートしたJR各社の先行事例としての意味合いもあったわけで、その後小泉構造改革で実施された道路公団民営化、郵政民営化、政府系金融機関改革など一連の民営化策の着地点となるはずだったのですが、その民営化会社が破綻の危機に瀕した場合の先行事例となってしまったわけで、皮肉な話です。同時に郵政見直しを掲げる新政権だけに、おかしな処理をすれば郵政見直しの議論も歪めてしまう可能性があり、本当に取扱い注意の案件になってしまいました。どうなるでしょうか。

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Monday, September 21, 2009

ジャパニーズGM問題、JAL問題を考える

このところJALを巡る報道が数多く露出しております。正直なところ前途不透明、五里霧中といえるこの問題ですが、鳩山新政権の命運を握るほどのインパクトがある問題として考える必要があります。

当ブログでは2年前に既にJAL問題を取り上げておりますが、正直当時からの迷走が未だに続いていることに驚きを禁じえません。今まで一体何をしてきたのでしょうか。

一応さまざまな努力の跡は見られるものの、航空を巡るグローバルな変化に追いつけず、取り残されてしまったさまは、米GMの問題と通底するものがあります。時代はオープンスカイ政策による自由競争の進捗があり、その尖兵だったアメリカでは、既にナショナル・フラッグ・キャリアのパン・アメリカン航空が破綻、時を経て元々国策キャリアの性格が強かったノースウエスト航空も、業界大手のデルタ航空に吸収されて現存しません。欧州でもアリタリアやサベナ・ベルギーなど国策キャリアの経営不振で国境を越えた再編が進む状況で、国策で政府出資の特殊会社としてスタートした日本航空がいかに難しい局面を迎えているかがわかります。

加えて大量輸送を前提に拠点となるハブ空港へ路線を集めて大型機でハブ同士を結ぶ大量輸送前提のビジネスモデルが、米サウスウエストや英バージン、アイルランドのライアン航空など、燃費の良い小型機で着陸料の安い大都市外縁部の空港同士を直行便で結ぶいわゆるローコストキャリアの台頭が、世界中で競争激化をもたらし、かつて二国間協定として航空協定を締結し、運行航空会社を指名する究極の独占市場が消滅したわけですから、今までのやり方を踏襲する限り、危機からの脱却はできない状況です。

その中で世界のエアラインは様変わりしました。歴史を刻んだ大手キャリアは、アライアンスに活路を見い出す方向性を打ち出しました。いわゆるコードシェアや共同運航便の活用で機材と人員の運用を合理化しながら路線網を維持するビジネスモデルへと転換し、特に国内のライバルである全日空では、パンナム破綻後に路線の多くを引き継いだ当時の米最大手ユナイテッドや独ルフトハンザなどをメンバーとするスターアライアンスへの参加をいち早く実行し、自らはその東アジア支部として主に日本対アジアの近距離国際線を充実させることで、国際線航空として後発の不利を逆手に取り、選択と集中を実現しています。その過程で全日空ホテルチェーンの売却など、非中核事業からの撤退も行っており、また羽田第四滑走路完成による24時間化を睨んで整備部門を羽田に集中させ、成田を拠点とするJALを出し抜こうという戦略です。リスクはありますが先を見た経営ができているということです。

それに比べるとJALの対応の周回遅れぶりは目立ちます。ANAのスターアライアンス参加時点から取り沙汰されていたワンワールド(アメリカン、BAなどが参加)への参加を逡巡し、自前運行にこだわり続けて高コスト体質を温存し、経営が怪しくなってから参加して、むしろ顰蹙を買ってしまいました。実は今回のJAL報道の増加のきっかけとなったデルタ航空のアライアンスを超えた出資打診も、ワンワールド内のそんな不協和音に遠因があるかもしれません。

というわけで今回の報道合戦による露出増加の始まりとして、米デルタ航空の出資打診があったわけです。

米デルタ、日航に出資打診 300億~500億円、交渉は流動的
デルタはスカイチームに所属しており、当然出資となればJALのワンワールドからの移行が前提となるわけです。仮に実現すれば、ネットワークの規模で最大のスターアライアンスとスカイチームは肩を並べる存在になり、JALが抜けたワンワールドは弱者連合になりかねないですし、アジア路線が手薄なアメリカン航空にとっては、JALを逃がすわけにはいきません。元々アメリカンとBAが中核で大西洋路線に強みを持つワンワールドですが、世界の成長センターたるアジアへのアクセスで後れを取ることにもなりかねず、かくしてアメリカン航空も出資交渉へと向かいます。
日航出資混沌、アメリカンも交渉へ デルタと綱引き
さらに国内線、国際線の不採算路線からの撤退発表など、JAL自身もリストラ加速を表明し、事態は混沌としております。

とはいえ外国エアラインからの出資打診は300-500億円規模で、年度内に2,000億円規模の資金調達を迫られる状況では焼け石に水の状態です。資金調達のうち1,000億円程度を株式の増資で賄うと考えられますから、その半分相当が外国エアの出資分となれば、他の一般株主への安心感を醸成する効果は期待できますし、銀行サイドの出資態度も軟化することが期待されます。

一方で国交省はデルタとの提携を後押ししている模様です。というのは、元々ノースウエストを併合したデルタの太平洋路線の充実ぶりは凄まじく、JALの路線再編によるリストラ効果がそれだけ高いということがあります。加えてそれによって成田の発着枠が返上されれば、乗り入れ希望が多い成田の発着枠再配分を差配できるという意図も透けて見えます。

そしてこの間に起きた総選挙で実現した政権交代で民主党鳩山政権が誕生したことが、少なからず影響を及ぼしそうです。マニフェストで言及された子ども手当や高速道路無料化は、選挙に勝って政権を得た以上、実現しなければなりませんし、多少の修正の余地はあるにせよ、時間と共に実現に向かうことは間違いありません。ところがJAL問題には直接の言及がなく、今のところ政権としての方針は未定のようです。

マニフェストには航空行政の見直しは盛り込まれており、オープンスカイ政策に舵を切ることが示唆されているものの、羽田、成田の役割分担や発着枠再配分などの具体策には言及がありません。とはいえ羽田、成田共に発着枠の拡大と見直しは確実に行われ、増加分の日米大手への配分はなく、むしろ一部返上さえありうるわけで、その際に最も影響を受けるのが、成田をアジアの拠点空港と位置づけるデルタ航空ということになります。ということで、穿った見方ですが、政権交代がデルタの背中を押した可能性はあります。

一方のJALですが、もう一つの難問として8つの労組が分立し、安全を盾に報酬見直しに後ろ向きな組合問題と、OBの高額年金問題が横たわります。このあたりば米GM問題との相似象といいますか、JALが立ち直るための最大の問題です。

元々国策キャリアとして歴史を刻み、日本人のおもてなし精神を活かした充実した機内サービスで業界標準を確立したJALですが、その代償として高コスト体質が染み付いてしまったのです。かつて究極の独占市場だった国際線航空を主力としていたから可能だったサービスが、むしろ過剰サービスとして忌避される昨今、元々エリートの乗り物だった航空がそれだけ大衆化した証左でもありますが、同時にコスト削減を厳しく求められるようになった時代の変化に対応できないその姿は、省エネどこ吹く風で利幅の大きい大型車ばかり作り続けたGMなど米ビッグ3とそっくりの構図です。

加えて充実した企業年金でOBへの手厚い年金給付を続けた結果、業績を悪化させたいわゆるレガシーコスト問題もあります。ゆえに民主党内では通常の資金支援での立ち直りは難しいとして法的整理をという過激な意見もありますが、米オバマ政権のGM救済策に見るように、公的な支援に踏み込むならば、債権者も痛みを分かち合うべきというのは筋が通ります。債権者には従業員や企業年金受給者も含まれます。実際6月に日本政策投資銀行と銀行団による80%政府保証つきの1,000億円融資が実行された一方、4-6月期決算で990億円の赤字となりチャラになる体たらくです。果たして新政権は的確な問題解決ができるか、見守りましょう。

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Sunday, August 23, 2009

尼崎脱線事故で企業体質を認めた山崎社長

福知山線尼崎事故で、大きな動きがありました。

尼崎脱線事故、歴代社長の責任明言 JR西、被害者説明会で
事故から既に4年。この時期にJR西日本が被害者説明会を行うというのも異例ですが、歴代トップの責任にまで言及し、企業体質に問題があったことを認めたことは、大きな1歩かと思います。

この問題は前の記事でも指摘したとおり、司法が山崎社長1人の責任しか問わないことが問題なんですが、訴追を受けた山崎氏本人も、さすがにこれではまずいと考えたのでしょう。何しろ起訴の理由が、JR東西線との直通運転のために福知山線上り線の線路付け替え時に鉄道事業本部長だった山崎氏には、事故を予見できたのに新型ATSの設置など必要な措置を怠ったことが、業務上過失致死傷に当たるというのですが、無理スジの話です。

というのは、当時JR西日本幹部間で、どのようなやり取りがあったかはわかりませんが、本業の設備投資計画を経営トップではない1事業本部長の権限で決められるわけはないんで、その点で井出、南谷、垣内の歴代3社長を不起訴として、逆に安全対策をうるさく進言して事故当時系列会社に出向させられていた山崎社長の起訴というのは不満の残る神戸地検の対応でした。

当然山崎氏としては1人で責任を被るつもりはないでしょうし、遺族にとっても不満ということで、検察審議会に歴代社長の起訴を申し立てております。

尼崎脱線事故「歴代3社長起訴を」 遺族、検察審に申し立て
今回の山崎氏の対応は、被害者からの評価されているようです。
尼崎脱線事故、JR西社長の謝罪に評価も 被害者ら
山崎氏のこの決断が、JR西日本を企業として事故に向き合わせることを期待したいと思います。何度も繰り返しますが、起きてしまった事故は取り返せませんが、それと向き合うことで、未来に生かすことはできます。JR西日本がやっとその入り口に立ったものと評価しておきます。

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Friday, August 14, 2009

地震で盛土崩落の東名高速、意外と脆かった物流インフラ

道路ネタ連発で"道路的部落"と化している当ブログですが^_^;ご容赦ください。まずはメディアチェックです。

静岡で震度6弱、6人の負傷者確認
地震が早朝だったこともあり、地震そのものによる直接被害は少なかったようですが、交通への影響が次第に明らかになります。
東海道新幹線が運転見合わせ 東名高速も一部通行止め
新幹線は営業時間前でもあり、ユレダスが作動してき電停止されてますから、マニュアルどおり目視安全点検後再開となり、始発から2時間後の午前8時に運転再開したわけですが、東名高速の方は実は深刻な事態でした。
東名高速「きょう、明日の復旧は難しい」 国交相
お盆の帰省シーズンであり、週末限定のETC割引を特例で13,14両日にも実施することが決まっていたことから、当然それに復旧を間に合わせようということになりました。
東名高速、13日にも通行止め解除 駿河湾震源の地震
しかし被害は予想以上に大きく、復旧はずれ込みました。
東名復旧、13日午後以降にずれ込み 被害予想より大きく
しかし更にずれ込み、復旧を上下線で分離することで当座を凌ぎました。
東名高速下り線、全面開通 上り線も一部通行止め解除
とりあえず下り線は開通し、それを知らずに中央道へ迂回した車も多数あったことから、スムーズな再開とはなりましたが、上り線の復旧はずれ込み、「行きは良い良い帰りは怖い」状態は続きます。
東名全面開通「15日中」
驚いたのは高速道路の盛土の脆弱さです。特に整備時期が古い東名、名神などでは、耐震強度などはほとんど意識されず、事後的な補強もほとんど行われていなかったし、今回の崩落地点も、復旧工事で搬入した重機の足場が崩れるという形で、予想外の結果となったわけです。それと比べると東名高速より古い東海道新幹線では盛土の崩落はなく、マニュアルどおりに復旧できたことが際立ちます。この差はどこから来たのでしょうか。

結論から言えば、減価償却がされていたか、いなかったかの差ということができます。鉄道事業は営利事業である前提で、事業用固定資産の保全による事業の継続性が求められ、東海道新幹線が開業した1964年から国鉄でも、民間並みに資産の減価償却が行われるようになりました。減価償却はちょっとわかりにくいのですが、企業が事業用資産を取得して操業を続けることで、機械などの現物資産ならば経年で劣化して資産価値を減じることになるのを、会計上一定のルールの下に取得価格の一部を費用化して利益から控除する仕組みです。言い換えれば利益の一部を無税で積み立てて内部留保資金とすることになるわけで、現物資産を部分的に現金資産に交換するという表現がわかりやすいかもしれません。

ルールに従って現金化された資産は、基本的に使途自由ですが、通常は事業の継続性を保証するために、老朽設備の大修繕や交換などに充てます。鉄道のように投資規模の大きい場合は、投資資金の多くが借入金で調達されますから、割賦払いの原資として使うこともできます。また災害復旧の費用に充てることもできます。これらの場合その分会社全体では資産は目減りするわけですから、減価償却で得たキャッシュフローをどのように配分するかは、経営上重要な意思決定といえます。

その辺を踏まえれば、地震の被害が経営に重大な影響を及ぼすことが容易に理解される新幹線では、路盤の補強やP波を検知して本震前にき電を停止するユレダスの設置などの対策が取られたことは当然のことといえます。そのように仕向ける仕組みができていたわけです。

一方の高速道路ですが、道路公団の事業として民間の会計基準によらない特殊な基準で対応されておりました。特に通行料は諸経費を控除後に整備費用の債務償還に回さなければならないわけですから、見かけ上の利益を圧迫する減価償却の仕組みを取り入れることは強い抵抗があったわけです。加えて1996年に東京都日野市が、市域を通過する中央自動車道への固定資産税課税を打ち出したように、高速道路自体が法的にあいまいな位置づけにあることが影響しております。この問題に関しては面白いレポートがネット上で公開されておりますのでご参照ください。

日野市の高速道路課税について
~なぜ政策イノベーションは失敗したか~(pdf)
地方分権も重要なテーマですが、ここではこれ以上立ち入りません。それよりも高速道路が料金プール製の下で永久有料化が決まった1995年の決定を受けて、地方自治体からこのような提案がされたことが重要です。

実は高速道路の料金制を維持することの制度上のリスクが明らかになったわけで、だからこそ道路公団民営化が検討されたときにも、道路会社の直接保有ではなく、JR発足時の新幹線保有機構に倣って(独法)高速道路保有・債務返済機構が保有し、道路会社にリースする仕組みとされたのです。道路公団民営化が、いかに矛盾を糊塗するものであったかということです。

ちなみに新幹線鉄道保有機構は1987年にJR各社と共に発足し、国鉄長期債務の一部を引き継いでJR東・海・西各社のリース料で償還する仕組みだったのですが、JR東日本の上場準備の過程で東京証券取引所の事前審査で「収益の柱となる主要な事業用資産を自己保有していないことはリスク要因」とする見解が示され、特に日本の税法ではリース資産の減価償却は行われないので、資産の保全による事業の継続性に疑義が生じることが指摘されたわけです。そこでJR東日本が東海と西日本に呼びかけ、新幹線資産の買取りを国に求め、1991年に実現して新幹線保有機構は解散されました。この伝でいえば、民営化された道路会社の株式上場は同様に難しいということになります。

ところで、ここまで来ると、じゃあ現在行われている東名高速の盛土崩落の復旧工事の費用は誰が負担するのかという素朴な疑問が出てまいります。おそらくは通常の道路保守費用の範囲内で道路会社が負担することになると思われますが、そうすると今度は、今回の崩落現場以外にも危険箇所は存在するでしょうから、その計画的補修、補強はどうなるかという疑問が出てまいります。おそらく財政資金を投入する以外にないと考えられます。

とすると民主党がマニフェストに盛り込んだ高速道路無料化は難しいのかという疑問も沸きます。これに関しては私個人は楽観しております。その前に、詳細が明らかでなかった民主党の高速道路無料化案の細部が一部明らかとなりました。

高速無料化「首都高・阪神除く」 民主幹事長が明言
今まで具体論には踏み込んでいなかったのですが、2012年時点で首都高、阪神高速を除く全国の高速道路が無料化されるということで、私が考えていたよりも範囲が広いですね。実は東名は無料化から除外される可能性が高いと考えていたもので。

というのも、太平洋ベルト地帯を貫き、物流インフラとして存在感の高い東名の無料化は、首都高などと同様渋滞がひどくなると考えていたのですが、東名だけ有料で残せば、おそらく無料化される中央道へシフトしてしまうだけでしょうから、確かにこの方がすっきりします。

更にオンライン上の記事では割愛されておりますが、紙面上では、高速道路関連の債務35兆円は国が引き取り、国債発行でファイナンスし、60年かけて償還するということで、無理のない返済計画であり、道路の保守費用は首都高と阪神高速の料金収入で賄うことも明らかにしております。つまり債務が消えれば料金収入から保守費用を捻出するのは容易ですので、現実的な解といえます。

そして高速道路保有機構が発行する機関債がなくなるわけです。料金収入が消えてリース料がなくなるわけですから、それを担保に発行される機関債は繰り上げ償還されますが、サブプライムショックで破綻の危機に瀕し、政府が救済した米ファニーメイ、フレディマック両社のように、暗黙の政府保証は、経済情勢次第で隠れ借金として財政にのしかかるリスクがありますので、国債で借り替えるのは、隠れ借金の見える化でもあるわけです。加えて残高800兆円を超える財政状況の中で、35兆円の積み増しは大勢に影響なし、むしろ政府試算で7兆円を超えると言われる無料化の経済効果で税収が増えることも忘れてはなりません。

加えて道路会社の判断に委ねられている高速道路の新規着工が止まる効果が重要です。料金収入があるから借金を積み増して、破綻したら暗黙の政府保証で国に助けてもらうということができなくなるわけですから、中長期の財政再建にも寄与します。

ただ、懸念されるのは東名のように元々物流インフラとして重要度の高い路線の場合、当然無料化は交通量の増大を通じてさまざまな影響があるわけですから、もう少し慎重に考えても良いかもしれません。特に温暖化防止との整合性が問われる部分です。

元々利用度の低い地方の高速道路の無料化は、CO2排出増も知れてますが、東名の交通量が増え、かつ渋滞が増えるとなれば無視できません。むしろ「だから第二東名は必要」という声を増強しかねないし、その可能性の芽を摘む無料化は「間違い」と糾弾されるリスクを民主党は自覚しているでしょうか。そのあたりに一抹の不安があります。

私はこう考えます。第二東名、第二名神の完全整備で物流インフラは確かに増強されますが、そのための費用が10兆円ほどと、何とリニアを大阪まで整備した場合と同等の見積もりとなります。その一方で温暖化対策としてトラック輸送の鉄道貨物へのモーダルシフトを前提とすれば、名古屋の南方貨物線や城北線の整備や変電所増強、着発線有効長延長による列車単位の増強と所要電力を賄う変電所増強など一切合切の合計で1,000億円程度と見積もられており、何と1/100で済むのです。この程度ならば国の財政支援で可能ですから、東名を無料化するなら、ここまでセットでぜひ考えてもらいたいところです。

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Saturday, July 18, 2009

高速千円で貨物繁盛ありがとう嗚呼夏休み

気がつけば夏休みシーズン突入ということで、早速1,000円乗り放題の高速道路は大渋滞です。

3連休の高速道路、初日は57キロ渋滞も 行楽地・ふるさとへ車の列
選挙目当ての票欲しさの人気取りがこの事態を招いているのですが、そこまでして必勝を期した総選挙は投票日8/30で今月21日に解散されるということですが、有権者は盆休みで選挙区を離れますから、人のいない選挙区での議員センセイ方の選挙運動は大変です。加えて渋滞でくたくたで帰ってきたらいきなり投票を迫るとなれば、怒りが与党に向くというもの、夏休みで浮動票が選挙区を離れるところで投票の方が、組織票頼みの与党に有利だったろうに。ま、ここまで事態が悪化すれば関係ないか(苦笑)。

忘れられているかもしれませんが、去年の7月は原油価格が1バレル140ドル台のピークをつけたあと下落、ガソリンの店頭価格はほぼ1月遅れでリッター185円をつけて需要が急減速し、夏の行楽シーズンを直撃しました。その反動もあり石油業界や地方の一部の行楽地はウハウハですが、当然CO2排出は拡大、コペンハーゲンのCOP15が思いやられます。

そして1,000円乗り放題は軽、小型、普通自動車限定で、物流を担う大型トラックは対象外な上に渋滞の影響を受けるということで、トラック業界から悲鳴が上がっておりますが、同時に物流を直撃するわけですから、影響は家計にも企業にも及びます。

というわけでJR貨物では、8月の旧盆期間中の平日4日もETC割引が実施されることを受け、この夏は貨物列車を大増発、荷主企業に営業攻勢をかけております。

JR貨物、お盆期間の貨物列車増発 高速道の渋滞予想踏まえ
記事中にもあるように、天候で出荷量が変動するビールや清涼飲料水も、企業に営業社員を貼り付けて大量出荷にも対応するなど、本気モードバリバリです。ある意味トラック業界の窮地を利用する形ですが、従来取り込めていなかった企業を顧客として取り込むチャンスです。

元々貨物列車はアボイダブルコスト(機会費用)方式で列車の実運行に応じた線路使用料を清算する方式ですから、ダイヤ上は不定期列車として設定し、需要に応じて運行することでコストを抑えているわけですから、新たに列車設定するわけではありません。あくまでも余力を利用する形ですから、JR貨物としてはお盆の増発分はそのまま増収となる構図です。

加えて従来取り込めなかった企業へのお試し期間という意味もあります。従来は輸送の弾力性や運賃面で折り合わなかった企業を定常利用に取り込むことができれば、千円高速様々ということになります。アホな思いつきでも役に立つことはありますね(笑)。

逆にGWの実績では惨敗だったJR旅客各社ですから、臨時列車設定を理由に増発を断る理由もなしで、人口減少で需要低下が予想される近未来の鉄道シーンを先取りするような動きです。今は儲かっていなくても、貨物がレゾンデートルとなった東北新幹線の並行在来線のIGRいわて銀河鉄道や青い森鉄道が結局補助金で下駄を履かせた形ながら、貨物の線路使用料収入で辛うじて収支均衡させているように、温暖化防止を睨めば旅客会社にとっての将来の保険となるわけです。貨物イジメに励む某社も括目すべし。

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Wednesday, July 08, 2009

JR福知山線事故で山崎社長を起訴したものの

問題山積の起訴と申し上げておきます。まずは報道チェック。

JR西の山崎社長を在宅起訴 福知山線脱線事故
現職社長の起訴は異例ですが、当の山崎社長は辞任を表明、事故の予見可能性を否定して争う姿勢です。
JR西日本の山崎社長、辞任を表明
検察の起訴事由がATS未設置ということで、事故の予見可能性とそれを踏まえた不作為となるわけですが、事故を矮小化していると言わざるを得ません。より重要なのは、企業の過失責任をどう問うかという視点です。

この辺はあれから2年の福知山線事故で明らかにしたことですが、その視点からすると、事故後に社長に就任し、安全対策に走り回っていた山崎社長だけの訴追はバランスを欠くものと言わざるを得ません。問われているのは法人格を持つ企業の不法行為に対する経営トップの代理処罰ができるかどうかです。この辺は経済活性化のための規制緩和を行う上で、セットで考えるべき部分ですが、事前規制で企業活動を萎縮させるよりも、事後的に強固な処罰をするいわゆる法化社会の議論として考えるべき事がらです。日本の司法は世界標準からは程遠いですね。

あとATS設置は、事故時点では設置義務は法定されていたものの、設置基準は定めがなく、あくまでも事業者の自主的判断によっていたわけで、事故の予見可能性を争うという検察の姿勢ゆえに、山崎氏も争う余地があるんです。皮肉な話ですが、現場のヒヤリハット、事故に至らないインシデントの現場報告が十分に行われていなかったJR西日本においては、経営幹部が危険性の認識を持たないのはある意味当然なんで、組織が機能していなかった場合の経営責任の判断をこそ司法には求めたいところです。

というわけで、参考記事として事故調最終報告書を巡る記事2件を挙げておきます。

速報! JR福知山線事故調最終報告
JR福知山線事故最終報告書続報

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Wednesday, July 01, 2009

となりのメトロ

メトロと都営地下鉄の一元化というニュースがTBSで流れましたが、他メディアは追随せず、ガセ確定のようですね。そもそも東京都の言い分を裏も取らずに流すとは、報道のTBSも地に落ちました。

当ブログの読者の皆様は、既にメトロ上場の最大の障害が東京都だということも、大人の事情で遅れていることもお分かりでしょう。実はTBS自身が続報しているように、上場後も国・都が出資維持と報じておりますが、この報道に今回のTBSの迷走の鍵があります。

元々東京メトロの上場を巡っては、丁度英ファンドTCIによるJパワー株買い増し問題があり、公益企業の株式大量保有が問題視されておりました。ですから大量保有規制は外資対策とも見えますが、WTOメンバーで資本移動の自由化を受け入れている日本としては、公式に外資規制はできないんで、政府サイドが外資規制と取られかねない発言をするはずありませんから、都からのヒアリングで記事を起こしていることは明らかです。

で、20%という保有比率は、大量保有規制の上限値として考えられている値で、外資に限らず東京都やJRその他内外ファンドも含めての規制であって、少なくとも公式には外資をターゲットにはできません。いわゆる公平性原則というやつでして、政府のしかるべき立場の人がうっかり喋っちゃえば、海外から叩かれます。

で、都がそんな風だから、今は国が少し保有株が多いから、都の頭を抑えて勝手なことさせないようにしているわけで、その国が株式放出するためには、同程度の都の株式放出を同時にやらなければならないわけですから、その形で株式を放出して都が20%保有となった段階で、国が23%程度の保有となるわけで、都としては20%でも保有を続けてメトロへの影響力を保持したいとすれば、国もそれ以上株式放出できなくなる水準です。当然国の着地点は完全民営化で、保有株式完全放出ですから、この段階で都が足踏みすれば、それ以上は株式を放出できなくなるわけです。おそらく国と都の協議の過程でこういった話は出ているはずですから、それを都の希望を下敷きに解釈すれば報道のようになるという話に過ぎないわけですね。

一方、隠れ鉄雑誌(笑)の週刊東洋経済2009年7月4日号で、東京メトロ上場の想定株価の記事が出ております。

東京メトロ―最強”私鉄”が上場したら、株価はいくら?《鉄道進化論》
というわけで、株価資産倍率(PBR)2倍として1,050円、株式数を掛けて時価総額6,112億円、株価収益率(PER)15.0倍といったところになります。ただし都営地下鉄との統合は考慮せず、都営地下鉄の4,500億円の有利子負債を引き受けない前提での数値です。ということは、都が取るべき態度は明確です。全株売却で都も3,000億円程度の株式売却益が得られますから、これで都営地下鉄の累積債務の繰上げ返済をして、高いと言われる運賃水準をメトロ並みに下げることだろうということです。そこまでやってやっと統合の交渉の余地ができるというものです。

追記ですが、都が議決権を握った状態のメトロとは、新銀行東京になるリスクと背中合わせでもあります。そんな株を買おうという奇特な投資家は少ないでしょう。

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Saturday, June 27, 2009

相鉄ラプソディ

26日、相模鉄道が始発からスト突入、約2時間後に解除されましたが、なかなかわかりにくいニュースです。本題に入る前に、枕話をひとくさり。

カフカの"変身"という小説がありますが、グレゴール・ザムザがある朝、自分が巨大な甲虫に変身していることに気づくという話です。親しい家族に助けを求めようと行動しますが、言葉を発することができませんから、家族からはただ気味悪がられ、遠ざけられます。終いには不都合な現実のある彼の部屋に近づきたくないから、家政婦を雇って部屋の掃除などをやらせるようにさえなります。そして彼は干からびて死に、件の家政婦によって掃き棄てられます。

先日衆議院で可決された臓器移植法改正案で、大した議論もないままに、脳死を人の死とするA案が可決成立したわけですが、心停止と違って脳死は医師による判定でしかわからないし、脳死でも自発呼吸を司る脳幹のみの損傷(脳幹死)と、大脳を含む脳全体が損傷した全脳死とがあり、改正案では全脳死を以て死亡とすることになっておりますが、判定はあくまでも医師が行うわけです。医師はおそらく移植医療推進のバイアスを持っているので、脳死状態の人がグレゴール・ザムザ、その家族を説得してドナーとして臓器提供を勧める医師が家政婦とすれば、カフカが描いたおぞましい世界は、めちゃくちゃリアリティのある話となります。家族は脳死を判定できず、医師の判定を信じて勧めに従うしかないわけです。

結局一般人である家族と医師との間には、埋め難い情報格差があるわけで、こういうのを経済学では「情報の非対称性」と呼び、市場の失敗を条件付けるものとされます。売り手と買い手の間に情報格差が存在する場合、市場は効率的に機能しないわけで、この観点からすれば、改正臓器移植法は大きな問題を孕んでいるということになります。枕が長くなりましたが、今回は「情報の非対称性」がキーワードです。

相模鉄道のストに関しては、メディアの露出度にバラつきがあり、取り上げ方にも疑問がある中で、東京新聞の記事が比較的バランスが良いようです。

ラッシュ直撃は回避 相鉄スト2時間で解除 来月4、5日の第2波も
要は会社側が鉄道事業子会社の分社をしようとして、そのやり方を巡って労組と対立したものです。正直なところ会社側の意図がよくわかりません。持株会社に事業会社をぶら下げる形態の会社は昨今増えており、鉄道会社でも阪急阪神HDなどの例がありますが、「経営の意思決定の迅速化」と説明される場合が多いですし、今回の相鉄でも、会社側の説明はそうなっております。

そして組合の対応ですが、基本的には分社化そのものに反対しているわけではなく、去年12月のバス分社を巡るストも回避されたわけですし、不動産などの事業分社化も結果的に同意しております。今回の鉄道事業分社化でも、分社化そのものには理解を示す一方、組合との協議を経ずに突然発表され、社員の転籍や株主総会の議案とするなどしたことが、労使協定違反というのが組合側の言い分です。

対して会社側は、組合の主張では組合に経営の意思決定権限があることになるということで却下、結局スト突入に至ったんですが、結局分社化を巡る労使協議を十分行い、スケジュールを十分考慮するという和解案を示して組合が受け入れ、スト解除に至ったわけです。それなら最初からそうしておけば、乗客に無用な混乱をしなくて済むものを。

正直に申しまして、今回のスト騒動、会社側に問題がありそうです。そもそも鉄道事業の分社化ですが、従来鉄道事業を核として進めてきたグループ事業に対して、バス、流通、不動産などはいずれも派生事業だったのに対し、鉄道事業を同列に置くという意味ですから、ある意味組合側の反発は当然です。鉄道会社としてのアイデンティティを棄てるということですから。そしてその結果得られる経営判断の迅速化は、つまるところ鉄道事業からの撤退も迅速に行えるということでもあります。

バス事業の分社化を巡っても、組合との対立から高速バス事業への参入時にタクシー会社の相鉄自動車にバス事業免許を取得させて参入する一方、相鉄バスの分社化に際して事業を移管するなど、組合との協議を避けているようにしか見えないのですが、これが会社側の言うところの「経営判断の迅速化」であれば、組合側が不審に思うのは無理もないところです。そこに見え隠れするのは、経営陣の保身ではないかということです。

正直なところ相模鉄道は今逆風下にあるといえます。主体的に開発してきた横浜西口の商業地としての地盤沈下は著しく、人口減少に転じて沿線開発も滞りがちな中、JRや東急との直通で東京都心へのルートを確保して沿線開発の梃子にしようとしているものの、JRとの直通を決めた後で横浜市からの横槍で、東急との直通も事業化されることになりました。

東横線/目黒線との直通では、車両限界が小さい路線への直通となり、折角11000系投入でJRと同じ2,950mmの最大幅が実現したものの、別規格の専用車を準備しなければなりません。また特にホーム可動柵のある目黒線との直通では、ドア中心間4,820mmの私鉄標準寸法によらなければならず、JR規格の均等割り付けとした11000系とはドア位置がずれます。加えて目黒線では6連ですから、8-10連の相鉄線に6連の目黒線直通電車の乗り入れは、かなり迷惑な話です。また当然西谷―横浜羽沢間だけの建設よりも追加負担も増えるわけです。加えて渋谷の再開発に未来を託す東急とは、横浜西口の商業利用を深化させたい相鉄とはライバル関係ですらあります。とはいえ横浜市の同意なしには事業が進まない相鉄にとっては、呑まざるを得ない話でもあります。

この辺の事情を考えると、相鉄経営陣が鉄道事業経営に意欲を失った可能性を指摘することはできるかもしれませんが、断定は避けておきます。あるいは都心直通構想が実現した後に、鉄道事業の切り売りを考えているかもしれませんね。JR、東急、小田急など、自社の鉄道事業を高く買ってくれそうなところに声をかけるのに、鉄道事業の分社と本体の持株会社化は好都合なわけです。だとすれば会社側は本心は明かしたくないでしょう

これ構図として何かに似てませんか。鳩山前総務省の更迭に発展したかんぽの宿問題とそっくりです。郵政民営化で持株会社の日本郵政に、郵便、窓口、郵貯銀行、かんぽ生命の各事業会社が子会社としてぶら下がっている形ですが、かんぽの宿売却は、かんぽ生命の赤字非中核事業であり、民営化後5年以内の2012年までに売却することが法令で定められております。

年間50億円もの赤字を出すかんぽの宿の早期売却は当然大きな課題ですが、より高値で売却する必要があり、また個別売却であれば採算性の低いものほど後に残って経営を圧迫しますから、一括で高値売却しようとすれば、あの方法しかなかっただろうと思います。そして結果的にオリックス不動産が落札し、西川社長には結果報告されていたはずです。

問題は持株会社方式の場合の、事業会社の経営のモニタリングに関してですが、かんぽの宿売却は、かんぽ生命にいる担当役員の責任で実行されたのに、政府の議決権は100%保有の特殊会社である日本郵政にしか及ばないわけですから、政府としてかんぽの宿売却に疑問を抱いたとしても、直接業務を管掌しない西川社長を攻めるしかないわけで、それが総務相更迭に至るドタバタとなったわけです。実は日本の会社法制では持株会社方式に関するコーポレートガバナンスには不透明な問題があるわけです。持株会社とすることで、社外に対して情報開示が阻害される要因があるわけで、言葉を変えれば経営陣は外野の声を気にせず事業の切り売りや組み換えができるわけで、制度の不備に起因する内外の情報の非対称性が拡大しますから、なるほど「経営判断の迅速化」が図れるわけです。

というわけで、枕話に沿って言えば、救急患者(事業)が脳死(赤字で中核事業といえなくなった)から、家族(株主)の同意を得て臓器移植(事業譲渡)しますという話になるわけです。法人格を備える会社の事業を切り刻むことは、法律上は問題ないですが、労働集約産業である鉄道などの運輸業において、労組との良好な関係は、事業経営にとってかなり重要なファクターです。思えば国鉄分割民営化も、磯崎総裁時代のマル生運動で労使関係が決定的に悪くなったことが起点ですから、今回の騒動が相鉄解体に至ることがないか心配です。

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Sunday, June 21, 2009

東へ向かうおけいはんの心変わり

皇女和宮といえば孝明天皇の異母妹で、公武合体派の策略で有栖川宮との婚約を破棄されて14代将軍家茂に嫁がされた政略結婚の悲劇のヒロインとして語り継がれておりますが、それゆえ江戸へ向かうお輿入れの旅では反対派の奪還を恐れて中山道を辿りました。そして山道を辿り夕暮れにある宿場へ到着し、投宿しようとして宿場の名を尋ねれば「沓掛」ということで「畏れ多くも宮様を足蹴になさるか」と言ったかどうかはわかりませんが、急遽1つ先の宿場を目指したそうです。その1つ先の宿場とは、後に高級リゾート地となる軽井沢です。このエピソードがどれぐらい軽井沢ブランドの成立に寄与したかは定かではありませんが、おそらく意識的にあるいは無意識に利用されたことは間違いないでしょう。

一方で「宮様を足蹴になさった」沓掛に注目し、汚名を濯いだのが後に西武王国を築く堤康次郎です。山林を造成し「中軽井沢」の名を与えて売り出し、ただ同然の土地を金のなる木に変えたわけです。言ってみれば隣接地ブランドのパクリですが^_^;、軽井沢にとってもブランド力の強化となり共に栄えたのですから、土地ブランドとは不可思議です。

戸越銀座を皮切りに、全国の「銀座商店街」が増殖した結果、商業地の中の商業地の地位を得た銀座と似ています。尤も銀座の場合、戦後占領下に日比谷のGHQ本部から夜な夜な繰り出す米軍の将兵に命懸けで堂々と銀座価格の請求をしたことが、「世界のGINZA」というステータスを与えたものでしょうから、パクリだけで成り立つほどブランドはやわではないということでしょう。美術品は贋作が出て真作の評価が上がるにしても、真作に相応のクオリティがなければ話にならないわけです。

枕はこの辺にして本題に入ります。まずはこの報道からです。

京阪電鉄、首都圏で賃貸ビル取得 最大1000億円投資
記事中にもあるとおり、既に大手町のオフィスビル1棟を取得していて、今後3年間で最大1,000億円規模の投資を行う予定です。不動産不況で空室率が上昇傾向にあるオフィスビルを安値で買えるチャンスとみているようです。しかも投資対象は千代田、中央、港の中央3区に限定するということで、相対的な空室率低下=賃料下落が少ないことに注目したものです。

加えて都内でビジネスホテルの開業も予定するなど、従来首都圏での事業展開のなかった京阪電気鉄道にとっては、大きな決断といえます。なぜかといえば、理由は至ってシンプル、既に人口減少が始まり、鉄道事業に行き詰まり感がある中で、中核事業の鉄道事業以外の収益事業を見つけなければならない中で、不動産事業はやはり柱となります。特にオフィスビルを中心とした賃貸事業は、収益の安定性という観点から、鉄道事業との親和性も高いのですが、地元の近畿圏では有力なオフィス立地は限られ、売り物も少ないのが現状ですから、オフィス需要の底堅い首都圏の中央3区への進出となったわけです。

というわけで関西私鉄にとってはなかなか悩ましい決断だったと思われます。ゆえにこんな解説記事もあります。

ほろ苦い関西企業の首都圏買い
言ってみれば自社のフランチャイズエリアの空洞化を半ば受け入れたということでもあります。とはいえ営業エリアを選択できない鉄道会社にとっては、それだけ生き残り条件がシビアであるということです。京阪にとっては沿線有力企業2社(パナソニックとサンヨー)の経営統合でリストラ必至ですから、将来的に輸送需要が下降線を辿ることは避けられないでしょう。産業構造の変革が待ったなしの現状で、かつて炭鉱地帯に多数あった運炭鉄道がことごとく廃止されたような逆風が、私鉄王国の関西にも吹き荒れる可能性があるわけですね。

また京阪単独の事情としては、中之島線の苦戦も影響しているものと思われます。ただし中之島地区の再開発は着手されたばかりで、成果が現れるのは暫く先になりそうです。更に現在の不動産不況は逆に神風になる可能性もあります。

というのは、近接して梅田北ヤード跡地という超大型再開発案件が控えているものの、バブル崩壊で先行き不透明になっている点を指摘しておきます。丁度バブル崩壊で開発が10年凍結された東京汐留の再開発とあまりにもタイミングが似ています。それでも人口増基調の首都圏だから、10年寝かせて何とか形になりましたが、空洞化、人口減少が現実化している関西では、100年ぐらい寝かせないと厳しいかもしれません。加えて再開発の目玉とも言うべき三越伊勢丹の進出は、当の三越伊勢丹の業績悪化もありますし、あべの近鉄や梅田阪急の改装などで大阪地区の百貨店は明らかなオーバーストア状態で、実際心斎橋そごうは撤退を決めておりますが、大丸が店舗買取りを決めており、床面積ベースでは縮小されるわけではないことから、三越伊勢丹の大阪進出は厳しい状況が続きます。

となると相対的に再開発規模の小さい中之島には有利に働く可能性があるわけです。梅田北ヤード地区は順調にいっても5年10年の開発期間がかかりますが、その前に中之島地区の再開発が実現することで、逆に梅田北ヤード地区の再開発にはブレーキがかかる可能性があるわけです。また枕話の地域ブランドという観点からも、大阪のまちづくりの基点となった中之島地区のブランド力は相対的に高いと考えてよいでしょう。日銀大阪支店や大阪市役所を始め、移転の可能性はほぼ皆無で、空洞化を心配する必要はないので、再開発による上乗せ分は純増となるわけですね。というわけで、京阪の執念は実るのでしょうか。

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Tuesday, June 16, 2009

郵政眠永化?

郵政会社が揺れています。かんぽの宿問題、東京中央郵便局舎建替え問題、社長人事問題などなど、いろいろありますが、郵便料金不正割引事件で、厚労省の現役局長が逮捕されるという異例の展開になっております。

厚労省局長を逮捕 郵便不正で証明書偽造の疑い、関与を否認
既に政治家の名前が取り沙汰されている一方、当時の厚労省が障害者自立支援法という重要法案を抱えて野党政治家に貸しを作りたかった背景もあるようですが、今後の捜査の進展を待ちましょう。

それより不可思議なのは、民営化されたはずの郵政会社が、障害者福祉目的で郵便料金の大幅値引きを行っていることへの違和感です。ま、JRや私鉄の通学定期券、特にJRは国鉄時代から私鉄より高い割引率を適用し、民営化後も維持しているわけですが、90年代の旧国鉄年金債務の追加負担問題などで割引率の見直しに言及し抵抗の意を示すなど駆け引きに使われます。

一方の郵便の障害者団体割引制度ですが、実態として企業のDMに利用されていたわけですが、一方で赤字体質の郵便事業の中では、DMは珍しい収益部門でもあります。一般の郵便物が多数のポストを設置し、毎日定時に集荷し局で仕分けするなど。コストのかかる部分を、送り主の持ち込みで一括で受け付けるのでコスト負担が軽いわけですね。しかも一般郵便物は、人口減少と電子メールの利用拡大で構造的に縮小が見込まれる中、B2Cなどのダイレクトマーケティングでむしろ扱い量の増加が見込まれる分野でもあります。だからこそ逆に身障者団体向けに大幅値引きが可能ではあるんですが、民営化で収益力強化が問われるがゆえに、今回の不正が発覚したわけでもありますから、その意味で数少ない民営化の功の部分かもしれません。

元々官業の郵便事業では、コンプライアンス精神は希薄で、DM発送企業のコスト削減要求に対して、代理店があの手この手の裏技を駆使して郵便料金を安くすることは、かなり普通に行われておりました。元々内容物が第三種郵便物の認可条件を満たしているか随時確認できるように開封が条件付けられていたのですが、一旦認可されてしまえば、まず中身の抜き打ち検査のようなことは行われず、制度が形骸化していたことは否めません。ゆえに認可の通りやすい局への持ち込みが行われる傾向があり、今回の事件でも、複数の局へ持ち込んで断られ、注意喚起の回状まで回されたのに、現場レベルの意識にズレがあったことが露呈しました。民営化による意識改革は不十分ですね。

このDMというのが、いわゆる信書便の国家独占を前提とする郵便事業にとっては難物で、内容物によって変わってくるのですが、封書では中身の確認ができないので、ヤマトなどの民間事業者は、郵便では定形外となるカタログなどの発送を定形郵便並みの料金で引き受けるビジネスモデルで攻め込んでおります。結果的に身障者団体向け値引きをする余地が狭まったと言えるわけです。競争市場が問題の発覚を助けたわけです。

ただ同時に民営化された郵政会社の先行きも不透明にしているとも言えるわけです。ゆうパックによる宅配便事業の拡大では郵政が攻める側でヤマトが受けて立つ立場ですが、現状を見ると心許ない限りです。

同様にメガインテグレーターとして国際物流分野への進出を画策しながら頓挫しております。これも競合他社が眠ってくれてでもいない限り、追いつくのは無理ですから、こうして見ると民営化郵政会社のビジネスモデルはことごとく破綻の危機に瀕しているわけです。この辺のことは2005年段階から指摘してまいりましたが、見直しは必至です。

加えてかんぽの宿問題ですが、これはいちゃもんつけた鳩山前総務相の方が無理スジだったのです。確かに不透明な入札が行われた印象はありますが、取得価格が2千億円以上かかったとはいえ、毎年50億円もの赤字を出す資産を100億円以上で買い手が現れたことの方が驚きです。当然買い手はリストラ費用を負担して黒字事業にしなければならないわけですが、この騒動で民間の買い手が現れる可能性は潰れたといえます。

国有財産の民間売却で安値売却は明治時代から繰り返されたことで、その中には信濃川河川敷の国有地払い下げに端を発する田中金脈問題のようなものも含まれますが、多くは官業の失敗に由来します。例えば官営釜石製鉄所のように、ドイツ直輸入の大型高炉3基に原料搬入製品搬出用の専用鉄道まで準備して操業開始したものの、技術の未熟で事故を繰り返し、結局3年で廃業し民間に払い下げられたような事例まであります。ちなみに専用鉄道向けの資材、車両は2ft9in(838mm)ゲージの特殊規格ながら、重量物輸送を前提とした本格的なもので、いわゆる軽便規格ではありませんでした。そこに目をつけて格安で払い下げを受けて営業用鉄道に転用したのが阪堺鉄道、後の南海鉄道です。当時高価だった輸入鉄道資材を格安で譲り受けたわけで、まさに歴史は繰り返します。

というわけで、かんぽの宿問題も鳩山総務相の辞任で幕引きとなりましたが、鳩山氏は最後まで世論は自分の味方と勘違いしていたようですね。起死回生で議員会館近くの清水谷公園辺りで飲んで脱いで騒いで「裸で悪いか」とでもやれば大うけかも^_^;。

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Thursday, June 11, 2009

エコだまし100年に2度の仏の顔

政府は2020年までの温暖化ガス排出削減目標を発表しました。

温暖化ガス15%削減、20年目標 首相表明「国際交渉を主導」
京都議定書が1990年比6%削減なのに対し、2005年比15%としました。分母を変えた理由は、削減率を大きく見せるためでしょうけど、2012年までの京都議定書の削減目標との連続性を否定するのは問題です。05年比-15%は90年比-7%程度にしかなりません。排出権売買を含まない国内の真水の削減だということで、7月のラクイラ・サミットや12月コペンハーゲンで開かれるCOP15での国際交渉の余地を持たせたという意味のようですが、早速国際的に叩かれております。
日本の温暖化ガス削減目標、途上国など「数値は不十分」
日本政府の外交ベタはどうしようもありません。

以前敗け続けるニッポンという記事で、国際決済銀行(BIS)規制で日本代表が押し込んだ銀行保有資産のリスク評価の問題を取り上げまして、主に欧州銀でサブプライム関連の資産の焦げ付きに飛び火したことを取り上げましたが、この手の話は日本が絡む外交交渉では度々出てまいります。温暖化防止関連でも、森林のCO2吸収を認めさせながら、国内排出権売買市場が整備されていないので、生かせないというアホな話になってたりします。この辺は以前にも指摘いたしました。

国際交渉ではWTOの農産物関税問題でも、自由化を迫る米に抵抗する日欧という構図が、欧州が関税を補助金に切り替えて米と妥協したために、日対米欧の対立に変わったりしてますし、国際捕鯨委(IWC)で叩かれているのも、今や船団を組んで遠洋で操業するのは日本の南氷洋調査捕鯨のみで、捕鯨大国のノルウエーやアイスランドも今は自国の近海での操業しかしていません。日本も和田浦や太地の伝統捕鯨保護にシフトすれば国際世論の理解を得られるのに、かたくなに南氷洋の調査捕鯨を続けていることで孤立しているのです。日本が絡む国際交渉は日本政府のKYぶりが目立ちます。

温暖化問題は以前にも地球温暖化と日本の勘違いという記事で取り上げまして、日本の省エネ大国という自己評価は、実は通勤電車のラッシュとウサギ小屋(小さな家)のおかげという話をいたしました。今回の政府目標の基準年を90年→05年としたことで何が変わるのかといえば、バブル真っ盛りの90年よりも輸出好調ながら所得が伸びず内需が冴えなかった05年の方が排出量が増えているわけですが、主に運輸と家庭部門での排出が増えたと言われます。つまりマイカーが増えてウサギ小屋いっぱいに家電が普及したということです。何のことはない、自動車と家電メーカーが商品を売り込んだ結果として排出量が増えたということです。

あとIT革命でコンピュータや通信機器その他の電子機器類が爆発的に増えたことも忘れてなりません。それらの問題をハイブリッド車の普及と原子力や太陽光発電で解決できると考えるのは無理です。車自体を減らすことと、太陽光以外の自然エネルギー利用や家庭用燃料電池など小規模発電の活用などを組み合わせる必要があります。米オバマ政権が掲げるスマートグリッド(賢い送電網)のような仕組みが必要ですが、電力会社の発言力が強く、発電送電一体で大規模発電と遠距離送電が効率的→だから原子力利用が必要という論法から脱却できないのです。例えば風力利用ですが、発電機はモーターと同じ仕組みであることを思い起こして欲しいのですが、大規模発電所に連なる送電網に出力の小さい風力発電機を直接繋ぐと、巨大扇風機になってしまいます(爆笑)。ですから、電力を一時貯蔵するNAS電池や、電力の逆流を防ぐ仕組みが必要で、そのための投資をしたくないのが電力会社の本音です。

別の視点として、そもそも洞爺湖サミットで2050年までに世界で50%削減を謳ったわけですが、これを人口1人当りの排出量で見ると2t/人となります。現在日欧で10t/人、アメリカ20t/人で、中印など新興国も含め、全ての国で削減が必要な水準で、排出を増やせるのはアフリカ諸国ぐらいです。日欧で80%削減、アメリカで90%削減が必要な水準です。こういった長期目標を決めておきながら、中期目標がそれへの橋渡しにならないというのは、論理的におかしいわけですね。

こういった点を踏まえると、いわゆるカイゼンで到達できる目標水準ではないわけですが、気になるのは、50%削減の長期目標決定に関与した人のうち何人2050年時点で生きているかということですね。どうせ自分は生きていないから、思い切った目標を掲げられるんだということならば、単なる先送りの口実にしかなりません。基本的に産業革命に匹敵する産業構造の変革が不可欠ということになります。その意味ではより厳しい目標を設定し、従来とは異なったアプローチを取らざるを得ない状況を作り出すことこそが重要です。

一方で100年に1度といわれる経済危機の中にあって、野心的な目標を掲げる欧州でも、企業サイドから経済危機を理由に規制を緩めて欲しいという声が出ておりますが、各国政府は無視しております。場合によっては温暖化防止が原因で経済が停滞しても良いとさえ考えているフシがあります。それぐらいしないと目先の利益に追われる営利企業が本気にならないという風に考えられているわけです。産業界に甘い日本政府とは大違いですね。

それどころか欧州委では2100年時点での世界の平均気温上昇を2度に抑えるという超長期目標さえ掲げております。将にホトケの顔もここまでよということです^_^;。

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Sunday, May 31, 2009

伝染ルンです乗客減

1月以上のご無沙汰となる久々の更新です。その間、JR東日本E259系E233系2000番台E5系京成新型スカイライナーなどの新車が登場し、過去記事が参照されることで、アクセス数は落ち込まなかったのですが、あえて付け足すことも思いつかず、省エネ運営^_^;を続けてまいりました。

その間に世間ではいろいろな出来事がありましたが、特に新型インフルエンザ騒動に明け暮れた感じがあります。個人的には先週末のさる集まりに参加したのですが、新型インフル警戒で自治体からの中止命令が出る可能性もあっただけに、他人事ではありませんでした。

その集まりで、アメリカから来られた日本人のご婦人のお話しを聞く機会がありまして、オバマ大統領の選挙戦の話が興味深いものでした。アメリカでは既にネット上の選挙活動が解禁され、候補者がさまざまな形で活用しているのですが、オバマ陣営は有権者からさまざまな意見を集め選挙戦を戦ったというのです。具体的にはどこかで演説会をやると告知し、演説内容について有権者の意見を募り、決めていたということで、ネット上で勝手連選挙を展開したものです。それゆえに有権者の参加意識が強く、言ってみれば有権者がオバマをリーダーに押し上げたというところでしょうか。

だからこそ泡沫候補の事前予想を裏切ってのオバマ大統領誕生となったのですが、これはオバマ自身が対話を通じて有権者の意欲を引き出したという見方も可能なんで、既成概念に当てはまらない新しいリーダー像を具現化したものといえます。

この辺はメディアもなかなか把握できていないようで、選挙戦のライバルのヒラリーを国務長官に指名したり、経済危機対応で金融機関やビッグ3への政府支援を迅速に決める一方、金融機関幹部の高額ボーナスを返済させたり、破産法適用を否定し自主再建を促したGMとクライスラーを結局破産法適用で法的整理するなど、一見対応に一貫性が見えないようでいて、関係者の対話の中で結果的に納得性の高い結論を得ているように、ある種対話力のようなものが、オバマの持ち味なんでしょう。

ゆえに一部メディアで「調整型リーダー」の見方もされてますが、日本的な事前根回しによって落としどころへ誘導するタイプとは全く異質ですし、結論を先に打ち出すトップダウン型とも違う新しいリーダーといえます。そしてブッシュ時代にイデオロギーや価値観で国論が二分され国民の連帯感が薄れていたからこそ、このようなリーダーが望まれ、米国民自身が新リーダーを生み出したと見ることが出来ます。

日本でも新自由主義的リーダーとしてトップダウンに近いリーダーシップを発揮した小泉首相の後、3人の首相が登場しては消え、小泉改革の揺り戻しが随所に見えます。かんぽの宿問題で郵政会社が叩かれてますが、そもそもは郵政会社のトップが西川氏を筆頭に旧SMBC人脈と金融庁人脈による進駐軍支配に対する旧郵政官僚の巻き返しを鳩山総務相を通じて行っているもので、郵政改革の愚劣さが表面化しただけのことです。この辺は過去にも繰り返し指摘いたしました。

というわけで、本題は新型インフル騒ぎの影響が鉄道事業にも及んでいるということです。まずはこの記事です。

東海道新幹線、乗客落ち込み震災時上回る 新型インフル響く
更にこんなニュースもあります。
阪急利用全線で25%減、阪神も15%減 新型インフルの影響で
東海道新幹線の落ち込みは景気悪化の影響あるいはETC1,000円割引の影響とも言えますが、阪急阪神の落ち込みは、新型インフル騒動以外に説明がつきません。最近は落ち着いてますが、メディアで連日報道された結果、過剰反応となったのは明らかです。尤もそれ以前に「水際作戦」と称して感染地から到着する航空便の機内検疫を実施した政府の初動に問題があったことは否めません。しかも検疫官の防護服姿も異常でしたが、外側がウイルス汚染されている可能性もある中で、機内検疫の都度消毒されている気配はなく、むしろ感染拡大を助長した可能性もあります。

米オバマ大統領がメキシコ国境の封鎖の可能性を問われて「鳥が飛び出してから納屋の戸を閉めるようなもの」と一蹴したように、検疫で防ごうという発想を退け、感染者の早期発見と感染の封じ込めにマンパワーを割いたのですが、特に欧州ではスペインとイギリスで100人超の感染者が確認された以外は1桁の国ばかりです。一方の日本では既に300人超の感染者が確認され今でも増えているのに、むしろメディアへの露出は減っております。秋以降と言われる二次感染拡大がむしろ不安です。

政府が当てにならない以上、食事睡眠に気をつけてしっかり体調管理して、感染しても重症化しないよう自己防衛するしかなさそうです。つくづくアホな政府は高くつきます。

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Tuesday, April 21, 2009

第三セクターは救うな

えーと、未来を感じる明るいニュースがある一方で残念なニュースから。

無人車両、下り坂を8キロ走行 JR名松線、運転士離れ
突然アクセスが増えて、しかも3年前の同様の事故を起こした記事が閲覧されるという椿事が起きまして、そのとき現場社員のモチベーションの低下を心配したのですが、今回もケアレスミスですから、職場にミスを誘発するファクターがあると考える方が自然です。こんなんじゃリニアどころじゃないだろうに。

で、本題に入る前にもうひとつ。政府は15兆円超の追加経済対策を打ち出しましたが、驚くことにそのほとんどが予算シーリングで削られた案件が並びます。つまり予算枠が増えたから一度は否定された優先度の低いものを復活させたわけです。これで景気回復は絶対無理ですが、バカ殿宰相は自信満々なようですね。何も考えない暗愚なリーダーは恐ろしい。

そもそも今回の経済危機ですが、サブプライムショックに始まりリーマンショックで一気に底が抜けた展開ゆえに、日本ではどこか他人事のところがありますが、その海外バブルに乗っかって、低金利の支えもあって、設備投資を拡大した自動車や電機などの製造業各社が、危機に直面して短期間に生産調整に走ったことで、危機を増幅しています。そして調整は進み、漸く出口が見えてきたというのが現状ですが、問題は海外バブルに乗っかって設備も人員も膨らませてしまったわけですから、少なくとも元の水準(2002年水準が目安)まで設備の廃棄と人員の整理をする必要があるわけで、今から失われた90年代を再現すると考える必要があります。つまり正規雇用者の早期退職や新卒採用の手控えは当分続き、第二就職氷河期となるわけです。

ゆえに欧米と比較しても日本が飛び抜けて経済のマイナス幅が大きいわけで、GDPはザックリ10%縮む計算です。というわけで、たかがGDP比2%の財政出動に効果があるわけがありません。また健全といわれた日本の金融ですが、株式持合いが災いして銀行の自己資本が毀損する事態となっておりますし、事業会社でも急速な業績悪化で税効果会計による繰り延べ税金資産の資本計上分が取り崩しとなる可能性が高まっており、これから発表される上場企業の決算はかなり悲惨なものになりそうです。それはまた株価を押し下げ、銀行の資本を毀損します。

加えて大手銀行こそ資本増強もあって何とか持ちこたえるかもしれませんが、いわゆる竹中プランでも手付かずだった地方銀行には、存続が難しい所も出てきそうです。そもそもリーマンショック以前には、金融庁では多すぎる地方銀行を整理するために、ペイオフまで検討されていたようですが、今回の危機で吹っ飛び、むしろBIS規制の及ばない国内行の自己資本比率4%を守らせるために保有株式の時価評価を緩めてしまいました。こうなると情報の適切な開示が遠のくわけで、再び金融が経済の足かせになる可能性も出てきます。

というわけで、元々オーバーバンキングと言われた日本の銀行で、郵政民営化でゆうちょ銀行という巨大な新規参入者を受け入れ、且つ銀行業免許こそないものの、日本政策投資銀行や日本政策金融公庫などのいわゆる政府系金融の民営化で、企業融資はますます供給過剰となりますから、銀行は儲からないから政策金利を下げて支えるしかなく、預金者の受取利息は削られます。たかが2兆円の定額給付金で仕事した気になるな(怒)。

元々竹中プランでも、大手行と地方銀行を同じ基準で律するのは無理ということで猶予された地方銀行の整理ですが、地方銀行には融資先の地場企業がぶら下がっていて、簡単に整理できないということで、地方版産業再生機構を創設する構想は安倍政権時代からあったわけですが、その後の政権の迷走で棚上げされ続け、そうこうするうちに今回の経済危機で、地方企業の窮状は待ったなしの状況となりました。

また2007年3月の夕張市の財政破綻により自治体財政の早期是正措置が決まり、自治体の出資する第三セクターまで連結対象とされる一方、自治体と微妙な関係にある地方銀行にとっては、三セクへの出資や融資はお荷物だった上に、破綻となれば損失を被るということで、産業再生機構の地方版として(仮)地域力再生機構の創設はこの面がらも期待されておりました。

というわけで、政局の迷走で棚上げされていた問題が動き出したようですが、三セクは対象外となりそうです。

地域力再生機構、地方中堅企業支援に軸足 三セクは対象外に
考えてみれば甘い見通しで事業着手した三セクの後始末を預金保険機構半額出資の機関が面倒見るのも変な話で、自治体の不始末を預金者の負担で救うことには問題があります。三セク処理は地方政治のガバナンスで対応する、つまり地方の納税者の判断に委ねる方が理に適っております。

とすると困った問題として、整備新幹線の並行在来線問題が絡んできます。地方ローカル線に比べて事業規模は大きいけれど、新幹線に都市間需要が移行した後のローカルな需要を満たすのに本線規格の立派な線路を維持しなきゃならないわけで、負担ばかりで将来展望はなし、加えて多数の自治体が関与しますから、足の引っ張り合いも起こりえます。例えばIGRいわて銀河鉄道では、旅客輸送は赤字で、国の補填でJR貨物が支払う線路使用料で辛うじて黒字という状況にある上に、高額の料金収入が得られる夜行列車が、北海道新幹線青函トンネル区間の工事間合い確保のために北斗星1往復が運休となって収入減という皮肉な結果となっております。なまじ新青森までフル規格化したために、新函館延伸の影響を受けてしまったわけですから、出資自治体にとっては辛い話です。

こういった現実が見えてくると、整備新幹線に地域がNOをつきつけるということも考えられます。元々整備新幹線は地方にとっては負担ばかりの話ですが、直轄国道などと同様、元々地方の請願、陳情によって事業化された経緯もありますので、事業をやるために地方負担を一時棚上げが考えられているようですが、一時しのぎで問題を先送りするだけです。基本的には税源委譲で地方に判断を委ねるべきでしょう。

というわけで、メディアの政局報道では見えてきませんが、各論では与野党の歩み寄りも見られる状況です。ただ懸念されるのは、小沢民主党代表の西松献金問題で風向きが変わったことで、折角の歩み寄りがまた棚上げされる可能性もあります。この献金問題にしても、小沢代表は「適法に処理している。(違法と言うなら)公判で決着をつけよう」と言っているわけで、これ以上公明正大な説明はないんですが、「説明責任を果たせ」というメディアの論調は何を意味するのでしょうか。代表を辞任して見えないところで検察と手打ちしなさいというわけでもあるまいに。あるいは政治ショーとして「腹切って見せろ」ということなのか。現実的に公判となればマンパワーの面で小沢氏が代表に留まるのは難しいと思いますが、検察とガチンコの姿勢をとる事で、今まで曖昧に処理されていた迂回献金による実質企業献金に拘束力のある判例が出るわけで、国民としてはそれこそが望ましいことではないでしょうか。最後はやや脱線でした^_^;。

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Sunday, April 12, 2009

KANSAIスルッと箱根越え

先月25日ですから、ニュースとしてはやや旧聞に属しますが、ニュースバリューありと判断し、遅まきながら記事を起こします。

西武と小田急、関西の私鉄と資材共同購入 4月から
西武鉄道、小田急電鉄、箱根登山鉄道の3社がスルッとKANSAI協議会と鉄道事業関係の資材調達の共同化を決め、4月から実施されます。しかも関東3社の取引先も共同購入の斡旋がされるということで、相互性のある提携関係というところがポイントです。スルッとKANSAI協議会のリリース(PDF)(西武、小田急、箱根登山鉄道と連名)もご参照ください。

というわけで、かなり評価の難しいニュースです。というのも、JR東日本のSuicaが提携先を順調に増やしているのに対し、ローカルカード化が心配されるPASMOという構図が隠れているからです。PASMOは元々寄り合い所帯で加盟社局間の連携が不十分という点に関し、当ブログでも度々指摘してまいりました。一例はPASMO品切れバスで取りすぎなどの記事で述べているとおりなんですが、そもそも何のためのICカード乗車券だったのかがはっきりしない中で、サーバをSuicaに依存し、提携ハウスカードで乗客を囲い込むことには熱心でも、システムとしての全体最適は置き去りにされている状況で、加盟予定社局の足並みが揃わない中でのこのニュースですから、つい深読みしたくなるというものです。

元々乗車券カードの共通化に関しては、JR西日本の攻勢にさらされていた関西私鉄各社の取組みが早かったのですが、カードの共通化に留まらず、今回関東3社が加わる資材の共同購入などにも守備範囲を広げ、調達コストを約2割削減するなど成果をあげております。おそらく今回参加した関東3社も、PASMOで同様の取組みが行われていれば、違った対応をしていた可能性がありますが、元々寄せ集め感の強いPASMO参加社局間で足並みが揃うのを待てなかったということなんだろうと思います。特に名義株問題で堤前会長が刑事訴追を受け、東証の内規により上場廃止されて経営再建中の西武鉄道には切実でしょうし、また複々線化の進捗に伴ない減価償却負担が重い小田急電鉄、箱根観光の空洞化に苦しむ箱根登山鉄道ではなおさらでしょう。

ただしPASMOに関しても、Suicaの提携範囲を拡大するJR東日本の前に、PASMOが関東限定のローカルカードになるという危機感はあるようですが、一方で過大な初期投資を要求される中小事業者にとっては、加盟のハードルが高まるエリア拡大には慎重姿勢が強く、加盟社局間の意思統一には至っていない状況です。そんな状況でとてもじゃないけど守備範囲拡大となる資材の共同購入なんて話が割り込む余地はないということですね。

一方で加盟社局間の絆が強いスルッとKANSAIですが、ICカード乗車券のPiTaPaに関してはポストペイというクセ球を投げてきております。いわば少額決済用の簡易クレジットカードとなるわけで、いちいちチャージが必要ない上に、記名式でポイントサービスを充実させやすいなどの特長があります。ゆえに発行に手間がかかる分発行枚数は少ないものの、サービスの充実ぶりは大したもので、回数券や定期券制度まで取り込んでおり、関西エリアのみならず、静岡地区(静岡鉄道)や岡山地区(岡山電気軌道)でも使える上、さらにエリア拡大を狙っているということで、加盟社局間の足並みも揃っており、いずれ首都圏にも攻めてきそうです^_^;。となるとPASMO陣営で個別にPiTaPa導入なんてことも視野に入っているかもしれません。

というわけで、これゲームの理論でよく用いられる囚人のジレンマを連想させます。共犯関係にある犯人同士を隔離して別々に取り調べ、証言すれば刑を免除すると持ちかけると、結局囚人同士全てを証言して揃って刑に服することになるわけですが、最適解は共に完全黙秘して証拠不十分で放免されるシナリオです。いわゆる協力ゲームとすることで利益が最大化するという昨今の行動経済学の基本的なスタンスですが、100年に1度の経済危機に、漢字が読めない首相と秘書逮捕で選挙の票が読めなくなった野党党首の足の引っ張り合いを見るにつけ、ちょっと考えさせるニュースです。

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Thursday, April 09, 2009

JR東日本仙石線でATACS導入決定

経済危機と高速道路1,000円乗り放題の影響で業績見通しを下げているJR各社ですが、明るいニュースです。

JR東日本、無線による列車制御システム(ATACS)の実用化計画を発表
ATACSに関しましては以前にも記事にしましたが、仙石線あおば通~東塩釜間で2011年春に実用化されます。一応同線同区間では以前から試験は行われていたのですが、一歩を踏み出すこととなりました。JR東日本からの公式発表はこちらです。
無線による列車制御システム(ATACS)の実用化について
重複しますが、ザックリ解説しますと、従来左右のレールを車輪で短絡することで列車の在線を検知し、信号を切り替えたりポイントなどの進路選定の連動関係を取るいわゆる閉そくと呼ばれるシステムを、GPSを利用したデジタル無線通信により、列車間隔や進路選定などをソフト的に制御するもので、従来のATS,ATC,CTC,ATOSなどの運行管理システムを一元的に制御するシステムです。

鉄道の保安装置の基礎となる閉そくですが、前の記事でも指摘したように、メンテナンスが厄介な上に、応答性にも弱点があり、列車間隔を詰めようとすれば先行列車の影響を受けるので、必然的に渋滞が起こり、ラッシュ時の速度低下は日常的に見られるとおりです。また列車間隔を詰めるために固定閉そく長を短くしようとすれば、動力用電力の帰線に使われるレールに脈流である信号電流の絶縁セクションを設けるため、インピーダンスポンドと呼ばれる特殊なコンデンサを用いますが、鉄道信号でしか使われない専用品で高価な上、風雨にさらされ経年劣化もありますので、コスト面で不利なものでもあります。

また高密度輸送を支える保安装置自体も高度化、複雑化の一途を辿り、その分トラブルが起きやすい環境になっているとも言えます。つい先日こんなニュースもありました。

朝の千代田線立ち往生 信号故障で一時7万8000人に影響
原因は、通常は自動制御されるATCを訓練のため手動に切り替えていたときに、係員の誤操作をシステムが異常と認識して停止信号を出したものだったわけで、典型的なヒューマンエラーで、誤操作で停止はシステムが正常な証しですから、安全性に疑義はないのですが、複雑さ故に不具合の発見も簡単ではないわけです。それに比べるとATACSのシステム構成はシンプルです。

あと今の時期にJR東日本がATACSの実用化に舵を切った理由ですが、こんなニュースを見ると見えてきます。

国際鉄道連合に初の日本人会長 JR東の石田氏が就任
JR東日本が鉄道関連の国際機関トップを出したタイミングですので、ひょっとするとJR東日本はATACSで世界標準を取りに行くつもりかもしれません。これ結構重要です。例えば台湾高速鉄道でのドタバタやICカード乗車券でFERICAシステムがISO認証を受けていないことに対する欧州からのクレームなど、日本が誇る鉄道システムも標準化の面で立ち遅れていたことは否めないところですが、まぁつい最近まで日本を代表する産業と目されていた自動車や電機でもそうだったんで、JR東日本がそのことに気づいて標準化に動いたとすれば、日本発の脱ガラパゴス戦略として注目されるところです。

とはいえATACSのようないわゆる移動閉そく(クロージング・イン)システムは、旧国鉄でも混雑激しい中央線への導入を計画していたぐらいで、アイデアは古くからあるにも係わらず、実現できていないように、かなり難易度の高い技術開発ではあります。旧国鉄時代の電気通信技術では、おそらく電算車1両増結して専用の信号線と常時接触などが必要だったかもしれません。当時中央快速線の最混雑時間帯の混雑率は300%超と言われ、東中野東方の神田川橋梁上で混雑でドアが破損し乗客が落下するという事故まで起きており、高加速のモハ90系(後の101系)とクロージング・インで1分間隔運転を実現することが大真面目に検討されておりました。実際は変電所要量不足で計画が頓挫したのは、以前の記事でも指摘いたしました。その意味ではデジタルIT技術の進化が、やっと積年の夢の実現を可能にしたということはできそうですが、課題もまたさまざまあります。安全に係わるだけに、システムとして破綻しないことが求められます。その難易度はおそらくリニアやテポドンにも引けを取らないでしょう。利用価値ははるかに高いですが(笑)。

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Wednesday, March 25, 2009

阪神なんば線開業で流動化する関西サバイバルマッチ

阪神なんば線が開業し、近鉄奈良線との相互直通運転が始まりました。車両サイズも編成両数も異なる両者の相互直通は、異例づくめです。

また京阪中之島線に続く大阪都心を東西方向に貫通する新線という意味でも、期待が寄せられている存在ですが、京阪中之島線が苦戦を強いられる中、先行きが注目されます。

本題に入る前に、関連ニュースです。

公示地価3年ぶり下落 3.5%、大都市中心で顕著
<表>下落率が大きかった地点
<表>上昇率が大きかった地点
2009年の公示地価が発表されました。国土交通省により1/1時点の全国の調査地点の地価を毎年発表し、主に公共事業の用地買収などで参照されるものです。

特に下落率上位と上昇率上位を注目していただきたいんですが、下落率上位の商業地では名古屋が、住宅地では東京都心がリストアップされてます。いずれも再開発ブームで地価上昇が急だった地域が並びます。つまり局地的バブルが弾けたわけで、今回の地価下落の大きな要因で、当ブログで再三指摘してきたところです。加えて上昇率上位では地方都市の再開発地域が並び、遅れてきたバブルの波といえますので、早晩下落に転じるでしょう。しかし住宅地の方はちょっと面白いんですが、北海道伊達市が上位に並びます。比較的温暖な気候で「北の湘南」をキャッチフレーズに高齢者の移住を促進した結果ですが、公共事業でインフラ整備して企業誘致するだけが地域活性化の解ではないですね。

といったあたりを踏まえて関西の未来を考えると、あまり明るい展望が開けない現状です。既に国レベルで人口減少が始まっていますが、都市集中とパラレルですから、地方の過疎化、空洞化が進行する中、三大都市圏で唯一人口減少に転じた関西圏の活性化は一筋縄ではいきません。

阪神なんば線ですが、軌道法による特許取得が1948年ですので、実現に61年もかかっております。しかも前史があります。1946年に阪神野田~近鉄鶴橋間の高速鉄道計画を合弁で実施しようとして、大阪市の反対を受けます。いわゆる市営モンロー主義というやつで、市は同区間に軌道法による地下鉄建設の特許を取得、千日前線として実現しています。そこで作戦変更となり、第二阪神線の落とし児の伝法線を千鳥橋から西九条を経て難波まで延長、近鉄も上本町~難波間を建設して相互直通を行うように変更したものです。ですから梅田~福島~千鳥橋~尼崎~岩屋と結ぶ戦前の第二阪神線という前史もあるわけです。ちなみに阪神梅田駅進入部の4線構造の地下トンネルや大物~尼崎間の本支線並走や御影付近の高架電留線などは、この第二阪神線構想を見込んだものと言われております。

近鉄という会社は、東の東急と並んで、自社の勢力圏拡大に執念を燃やした会社です。発展段階で多くの同業者を併合し、営業エリアを拡大してきたのですが、国家権力を背景とした戦時統合に乗じた東急が、戦後多くの利権を失った一方、民間ベースで巨大コンツェルンを構築した近鉄は、戦後も巨大さを維持したばかりか、拡大路線を踏襲します。

近鉄が戦後併合した他社線ですが、大和鉄道、信貴生駒電気鉄道、奈良電気鉄道、三重電気鉄道の4社をかぞえます。このうち既に近鉄が資本の大半を握っていて車両も融通していた大和鉄道(現田原本線)の併合は、むしろ戦前のやり残しの感があり、例えば戦時統合で近鉄に併合された南海鉄道が戦後処理で、別会社だった高野山電気鉄道(高野下~高野山)に事業譲渡されたように、少数株主の抵抗で経営統合できなかった事例は関西には結構あります。また三重電気鉄道も、元々地元資本だった三重交通の鉄道線を、三重交通自身への出資の上、近鉄、三交合弁の三重電気鉄道を設立して鉄道事業を譲渡させた上で併合するなど、被併合企業側の抵抗を抑え込みながら拡大していきました。

残る2社はいずれも戦前に京阪との合弁事業として出資したものですが、前者は枚方市~私市間の北部線と生駒~王寺間の南部線につながりが無く、戦前既に北部線は京阪傘下の交野電気鉄道へ譲渡の上京阪に併合された残りで、やはり事実上近鉄の支線だったので、大和鉄道と似てますが、それでも株主の抵抗に遭っていたのでしょうか。近鉄の巨大さは畏怖の対象だったようです。

端的なのは奈良電気鉄道の事例ですが、1960年代に京都進出を目論んで近鉄が株式買収を仕掛け、京阪が応戦したものの、上場企業ゆえに買収合戦で株価が上昇、淀屋橋延伸などで資金に余裕の乏しかった京阪が後れを取り、結局近鉄が買収を成功させ、1963年に併合、近鉄京都線となります。

この辺は村上ファンドに買収を仕掛けられた阪神に重ね合わせると面白いのですが、当時近鉄を非難する声はありませんでしたし、日本でもかつて企業買収は普通のこととして行われていたのです。それが村上ファンドやスティール・パートナーズの買収があれほど世間を騒がせたのですから、いつの間にか日本は社会主義国に変質していたのかもしれません。いや怪しげな投資ファンドが仕掛けたのだからという声もありましょうが、ならば王子製紙による北越製紙の買収劇は何だったんでしょうか。買収は失敗したものの、「アメリカ的なむき出しの資本主義は日本には馴染まない」など、メディアの悲鳴に近い反応は異常でした。

ま、それはそれとして、結局阪急との経営統合へと進んだ阪神ですが、戦後の近鉄との合弁事業が陽の目を見ていたら、おそらく後日近鉄との争奪戦を演じることになったでしょうから、沿線の成熟化で利用が伸び悩んだ阪神は、その過程で近鉄に併合されていた可能性すら否定できません。その意味では大阪市の横槍は阪神を助けたかもしれません^_^;。

加えてどう見ても株の高値掴みとしか思えない阪急による阪神の経営権取得も、近鉄の進出を快く思わない阪急による防衛戦と考えれば、腑に落ちる部分があります。また相互直通にあたって車両規格の統一が行われなかったのも、ある意味阪神側の防衛意識が働いた可能性があります。というのも、阪神は既に近鉄の20m級車の乗り入れを早い時点で想定していた節がありまして、尼崎の電留線を20m級車10連対応としたり、三宮までの快特停車駅の20m級車6連対応や、公式には認めておりませんが、近鉄直通用の20m級車の新造まで考えていたりと、阪神自身は乗り気だった割には、近鉄側が譲歩したように見えます。

というわけで、ひところは血気盛んだった近鉄も、新幹線開業で名阪間の都市間輸送の主力の座を降り、伊勢志摩地区の観光開発と三重県伊賀地区の宅地開発に注力してきた中で、バブル崩壊と大阪の地盤沈下のあおりで体力をすり減らしてすっかりマイルドになりました。阪急阪神の経営統合も傍観せざるを得なかったのですから、近鉄の地位低下は否めません。逆にだからこそ阪神との相互直通など、他社との連携に将来を託す姿勢となったのでしょう。

ただ冒頭で述べたように大都市圏の地価下落は、高齢化と人口減少が背景にありますので、今後とも関西の各社は苦戦が続くと考えられます。折角の新線に水をさすつもりはありませんが、大阪の繁華街が北へ移動しているのが昨今の傾向で、難波地区も一本裏に入れば都心とは思えないうら寂しいところです。加えて心斎橋のそごう撤退などもあり、阪神なんば線の効用はあくまでも直通による需要掘り起こしにあるわけで、案外甲子園と京セラドームの野球観戦客が一番の上得意になる可能性もあります。となればカーネル・サンダースの呪いが解けたタイガースと、強力打線の破壊力で戦力を増したバッファローズで日本シリーズを戦うのが、最大の活性化策かもしれませんね(笑)。

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Saturday, March 14, 2009

京王アイボリー時代

京王のイメージカラーはアイボリーということになるんでしょうけど、実は間もなく終焉を迎えます。2010年度までに鋼製車の6000系が淘汰されますので、京王からアイボリーカラーが消える(?)ということになります。実際は7000~9000系の前面に残りますし、そもそも井の頭線では7色のレインボーカラーですから、アイボリーがコーポレートカラーと言えるのかどうかは微妙ですが、「あいぼりー」という広報誌を配布したりしてます。とまぁ曖昧な書き出しですが^_^;、間もなく終焉を迎える6000系に焦点を当てます。

6000系を語る上で、名車の誉れ高い5000系を取り上げないわけにはまいりません。5000系の登場が1963年ですから、6000系の終焉をもって消えるアイボリー時代は優に半世紀に迫ります。それ以前の緑色の旧型車(カルダン駆動車もいたのですが^_^;)とは一線を画す5000系のデビューは鮮烈でした。

1963年は京王線が大変化を遂げた年でした。4月に新宿地下駅が開業、それまでの甲州街道上の併用軌道区間といかにも仮設のバラック駅舎の新宿駅が地上から消え、暗渠化された玉川上水の下へトンネルを通してルートも変わり、新宿駅へ進入するR60の急カーブはR110に緩和され、後の車両大型化を支えることになります。新宿地下駅は階段部分でX型にクロスした柱で、後に建設される京王百貨店の基礎工事が準備されておりました。見慣れた風景には理由があるわけですね。

8月には架線電圧を600Vから1500Vへ昇圧、それまで主力だった京王電軌由来の14m級中型車はサハ化され、おしどりユニットで昇圧対応した2000系や2010系のユニット間に挟み込まれたサンドイッチ編成が幅を利かせる中で、昇圧後に登場した1500V専用車として5000系が登場しました。

ここで5000系のザックリおさらいですが、4連の基本編成と2-3連の付属編成(+100番)があり、それぞれ最終的に4タイプに分類されます。以下にまとめます。

タイプA:5701F~5706F,5101F~5106F=最大幅2,744mm付属2連非冷房
タイプB:5707F~5710F,5107F~5112F=最大幅2,844mm付属2連非冷房
タイプC:5711F~5717F,5113F~5118F=最大幅2,844mm付属3連改造冷房車
タイプD:5718F~5723F,5119F~5125F=最大幅2,844mm付属3連新製冷房車
57xxが4連基本編成、51xxが2-3連付属編成で、4連のタイプA,Bが主電動機出力130kw*4、タイプC,Dが150kw*4、付属2連のタイプA,Bは上記サンドイッチ編成の中型車サハの置換えをデハ2700の改造で充当した結果発生したツリカケ駆動の足回り流用(110kw*4)、3連タイプCは主電動機出力130kw*4、3連タイプDは主電動機出力150kw*4という風に分類されます。タイプAの最大幅2,744mmは、地方鉄道法準拠の山岳トンネル規格で作られた新宿地下駅アクセス区間に合わせ、それまで京王電軌中型車由来の最大幅2,644mmより100mm拡幅されたため、すそ絞りスタイルとなりました。タイプB以降では側窓開口制限を条件に特認で100mm拡幅が認められ、混雑緩和に寄与します。車体幅は2,800mmで手すりの張出し部分が最大幅となるのですが、このことが6000系で重要な意味を持ちます。

6000系は1972年に一次車が登場しますが、既に都市計画10号線相互直通運転が決定していたことを受けて、10号線規格を先取りして、京王初の20m級4扉車として登場します。ただしなぜか10号線規格では最大幅2,800mmとなるため、せっかく5000系で特認を得た2,844mmは使えないということで、手すり取り付け部分に窪みをつけて最大幅2,800mmに収めます。また新宿駅進入部分のR110で20m級車体では偏倚による干渉もあって、車体幅は20mm縮めて2,780mmとしました。それでも室内有効幅を5000系広幅車と同じにするために、側構え厚を100mmから90mmに圧縮したために、後に剛性不足に悩まされることになります。そのために車体がゆるく、走る度に窓がバタつくことになり、常磐緩行線203系と並び称される騒音電車となります。一説によれば、元々ステンレス車として計画されていたのが、相模原線や京王新線の建設で多額の建設費を負担したため、予算不足で鋼製車となったとも言われますが、真偽のほどは定かではありません。そういえば203系も国鉄時代の予算不足が仇となったので似ています。

あと1次車に関しては、5000系最終増備車の足回りを基本的に踏襲し、ブレーキを電気指令式としたもので、発電ブレーキでした。しかも18m級7連を20m級6連で置換え、デハ4両をデハ3両としたわけですから、元々エコノミー設計だったとはいえます。しかしさすがにこのままでは地下鉄直通車としては不適格ということで、2次車以降は界磁チョッパ制御となり、マスコンキーで減流値を切り替えて高加速モードの運転を可能とするように改良されました。ゆえに1次車を組み替えて5+3連の分割編成とするときには、抵抗制御車と界磁チョッパ制御車の混結となることから、1,2次車混成の特別編成を組んで試運転を行い、特性を合わせたなんてこともありました。なお、マスコンキーで加速モードを変換すると同時に、京王ATSと都営ATC、列車無線チャンネルの変換も同時に行う仕様とし、9000系に至るまで踏襲されます。ただし都営車は加速モード変換がないので、都営車の京王線内運用はぬるい走りです(笑)。

6000系の淘汰によって、京王線の在籍車両はVVVF車で統一され、待望のATC化も実現するわけですが、その前に、高機能と言われる現在の京王ATSについて解説します。基本的に信号機直下の地上子による多変周信号式で、絶対停止okm/h、警戒25km/h、注意45km/h、減速75km/hで作動し、絶対停止では確認ボタンを押して15km/hで確認運転可能、その他の速度段ではATCのように速度計に制限速度が現示される仕組みで、それゆえ「ATC並み」と言われるのですが、一旦ATS信号で速度制限を受けると、前方進路が開通しても次のATS信号を受けるまで解除できない仕組みで、あくまでも運転士による信号機目視確認による先回り制御であって、絶対停止機能で運転士の目視ミスをバックアップするものですから、ATCと同等の機能があってもATSの範疇に留まります。ただし京王の10連2分ヘッドという究極の高密度運転を支えるために、閉そく割りを細かく設定していて、中には重要踏切の開時間確保のために敢えて踏切検知点外方に信号機を設置して列車を抑止するようなことまでやってますので、乗務員支援の目的で高機能化したと考えられます。

というわけで、ATSとしてはハイスペックで、京王では5000系から車上子が設置されました。高機能なので、動作の確実性がある電磁直通ブレーキ車が選ばれたわけですが、グリーンの在来車も電磁直通ブレーキに改造され、初期には改造車を5000系に合わせてアイボリー塗装され、主に急行系列車で運用されましたが、改造が進むにつれてグリーンに戻されました。番外で中型車に井の頭線の発生品で電装して昇圧後の支線運用に就いた220系もアイボリー塗装されましたが、こちらは単に動物園線で特急接続とする運用からイメージを合わせただけですね。

2010年には在籍車のVVVF化完了でATC化されます。最新のデジタルATCですので、停止または速度制限地点までの一段減速が可能になり、保安装置としてはさらに高機能化されるわけですが、同時にVVVF化でマスコンキーによる加速度切替の機能も意味を失うわけですから、京王線内での高加速運転が実現するものと考えられます。おそらく2012年の調布市内連続立体化事業の完成を待ってスピードアップが図られるでしょう。京王のチャレンジは続きます。

あとおまけですが、京王電鉄の新たな沿線活性化策で取り上げた高齢者の住みかえ支援による沿線活性化の仕組みですが、残念ながら現時点では大きな成果につながっていないようです。持ち家を賃貸して一般社団法人 移住・住みかえ支援機構(JTI)が所得保障することで、都心のマンションや地方の別荘などを購入または賃借して移住することで、子育て世代を支援する仕組みですが、高齢者から見ても、持ち家を最後は担保に差し出すリバースモーゲージなどより使い勝手も良く、新たな住宅購入の場合でも、通常高齢者では不可能なローンが組めるわけですから、内需拡大策の目玉になりうるインパクトを秘めているのに、政府も銀行もサッパリ不熱心です。今後暫くはローンで購入することが前提となる高額品として、マイホーム、自動車、高級家電は売れなくなることは間違いないですから、高齢者の住宅ストックからフローを生み出すこの仕組みを有効活用することが望まれます。将にジャパン老いるマネー活用法です。

加えて多摩ニュータウンの初期の開発エリアである諏訪団地や永山団地で、5階建ての集合住宅の上層階を撤去して自重を減らし、それで得た耐震強度を利用して構造壁の一部撤去を行うことで、3階建てに改築する「減築」が取り組まれております。元々経年の集合住宅は、老朽化で不人気となり、居住者が減る傾向がありますが、これを逆手に取って総戸数を減らすことで低予算で住宅としての品質を高める取組みです。これなどは耐震強度に不安のある老朽マンションの建て替えの代案として、安全圏内まで自重を減らすという観点から魅力的です。高齢化、人口減少という現実の中で、総戸数が減ることは障害になりません。むしろ高価格な200年住宅などよりも、ずっと現実的な住宅政策といえます。

ニュースでは与謝野財務相がG20財務相会合で財政出動GDP比2%を約束しちゃったようですが、いよいよ小渕政権時代の総合経済対策の愚を繰り返す気でしょうか。対外公約を口実に無駄な公共事業が強行される方便には辟易します。

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Monday, February 23, 2009

本業以外がブレーキ、私鉄大手2009年3月決算






私鉄シテツ大手オオテ13シャ2009ネン3ガツ連結レンケツ決算ケッサン見通ミトオ
  売上ウリアゲダカ 純利益ジュンリエキ 運輸ウンユ事業ジギョウ売上ウリアゲ比率ヒリツ
東急トウキュウ 13,188(-4) 230(-50) 15.5
近鉄キンテツ 9,750(+5) 180(-23) 23.5
阪急ハンキュウ阪神ハンシン 6,880(-9) 210(*33) 29.0
名鉄メイテツ 6,700(-6) 110(-11) 52.1
東武トウブ 6,060(-3) 155(-13) 36.5
小田急オダキュウ 5,610(-10) 100(-47) 31.4
京王ケイオウ 4,220(-2) 158(-13) 31.5
西鉄ニシテツ 3,495(-3) 20(-69) 28.6
京急ケイキュウ 3,260(+4) 115(-14) 37.9
相鉄ソウテツ 2,756(-2) 54(-30) 15.9
京阪ケイハン 2,579(-2) 71(-15) 33.8
京成ケイセイ 2,360(-1) 98(-19) 50.7
南海ナンカイ 1,910(+1) 125(+10) 47.3


久々の決算ネタです。今回はリーマンショック以来の景気後退の影響が出ておりますが、運輸業自体の業績は安定しているものの、百貨店など流通と、マンション販売や賃貸など不動産のブレーキがきついようです。とはいえ各社各様、置かれている状況の違いは大きそうです。本業比率が高くても、名鉄、京急、京成、南海の空港連絡輸送組の不振は止むを得ませんし、名鉄や西鉄のように、自動車産業依存度の高いエリアの会社では、派遣切りや期間工雇い止めで人口減もあるわけですから、業績に影響はあるでしょう。

加えて、今後は高齢化が大都市圏に波及する局面となりますので、流通や不動産の業績回復も望み薄となりますので、大手私鉄にとっては、長いトンネルになる可能性があります。年寄りは家もモノも買わないですからね。

一方のJRも、元々景気変動と連動性の高い新幹線で影響が出ており、特に自動車不況の影響を受ける東海道山陽新幹線で顕著です。リニアどころじゃないかも。

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Tuesday, February 17, 2009

ジャパン老いるマネー

中川大臣が辞任しました。政界では以前から飲兵衛で酒乱で知られていた人ですが、醜態が世界に配信されちゃ辞めるしかありません。にしても日本の恥ですね(怒)。中央リニア5.1兆円の記事の冒頭でも振れましたが、昨年8月以来の貿易収支赤字化で、日本がいよいよ高齢化社会本番を迎え、産業構造を見直さなければならないときに、緊張感まるでなし、他人事のように「米国の景気対策をオバマにお願い」したり、以前にも日本の金融危機の不始末を自慢した財務金融相のズレた感覚はどうしようもありません。

おさらいですが、高齢者が増えるとなぜ輸出が減るかというと、高齢化して現役をリタイアする人が増えるわけですから、この人たちは生産に従事せずに消費のみを行うことになりますので、国全体では貯蓄が減って消費が増えることになります。で、貯蓄は投資に回ってさまざまな生産活動を支えるわけですので、貯蓄が減り、また現役世代の減少で労働力の投入量も減りますから、国全体の貯蓄の減少は生産の減少を通じて国際収支の黒字縮小となるわけです。これはどう逆立ちしても避けられないことです。

それを無理に輸出を増やそうとすれば、資本装備を高めた上で労働力の投入量を減らすしかないわけです。これを技術革新によって、例えばIT化で生産性を高めることで実現できるならば良いのですが、実際にはIT化で実現できる生産性向上は、主に管理部門など生産現場以外の場所では効果が期待できるものの、人手が必要な生産現場では、人件費の抑制でしか実現できません。その結果正社員はベアゼロでサービス残業という事実上の労働強化と、非正規雇用者を増やして雇用を流動化し、人件費を固定費から流動費にすることなど、主に労働分配率を下げる形でしか実現不可能なんです。結果的に若年層の購買力を奪い、車が売れなくなったんですから世話ありません。

加えて2003-2004年の大規模為替介入による円安政策にも助けられていたわけですが、加えて輸出で稼いだドルを海外投資に回し、それでも足りずに「貯蓄から投資」の掛け声の下、金融自由化の流れに乗って内外の株式や債券やそれらを組み合わせた投資信託を銀行や郵便局の窓口で販売し、家計貯蓄をリスク資産に移転させる政策もとられました。その結果海外へ流出したジャパンマネーがドルやユーロ建ての金融商品に投資され、欧米諸国の中央銀行に代わって流動性供給をした結果、海外で生じたバブルに乗って輸出を加速させたわけです。つまり高齢者世代の貯蓄を海外流出させて米欧のバブルを後押ししたわけで、米政府やFRB関係者の中には、アメリカのバブルはアジアの過剰貯蓄が原因と、暗に日本や中国に責任転嫁する論調も見られます。

もちろん日本人としては違和感のある見方ですが、自動車や電機をはじめ、輸出企業の対応も「売れりゃいいじゃん」というもので、実際自動車は海外市場重視でモデルチェンジの度にサイズアップして国内では使いにくくなってますし、電機業界では高付加価値を狙って不必要な高機能を与え、結果として消費者の離反を招き、また自動車とは逆に世界の趨勢に乗れずにいわゆるガラパゴス化してしまう体たらくです。薄型TVやデジカメなどのデジタル家電も、北京五輪特需が空振りだったという不幸はあるものの、結局在庫を積み増して価格競争の消耗戦を繰り返しているんですから世話ないです。ジャパン老いるマネーで売上を作っていたわけですね。

元々高齢者は若者ほど消費しないと言われます。理由はいろいろあるんですが、一番は若いころからいろいろなものを購入し、既に多くのものを持っているので、新たに買い増すものは少ないということと、若いころから老後を睨んで貯蓄を重ね富裕層に移行することで、消費性向を減らすという説明もあります。ただしこれは社会福祉の充実した欧州では必ずしもあてはまらないようです。日本では老後資金として3,000万円程度は必要と言われますが、欧州では100万円もあれば十分といわれます。

とすると、実は高齢者福祉というのは、消費性向の低い高齢者の消費を呼び起こすことで内需を活性化させる政策ということができます。加えて老後資金の貯蓄の必要性も減るわけです。医療や介護など高齢者向けサービスを充実させれば、そこに雇用が生まれ、富裕な高齢者から福祉で雇用される若年層へのサービスを媒介した所得移転となるわけです。とすると財政支出は増えても、医療や介護へもっと多くを配分することこそが、閉塞感漂う現状を打開することになるわけですね。

あと加えて、高齢化は必然的にマイカーを手放す人も増えるわけで、公共交通の必要性が高まるわけですが、実際は規制緩和で競争激化の結果、参入退出の自由度が増し、事業採算性だけで路線の改廃が起きて、多くのローカル鉄道やバスが廃止される流れにもなっています。野放図に補助すべきだとは思いませんが、高齢者に消費を促すならば、モビリティの向上は重要といえます。無意味に道路を作り続けるのではなく、地域の生活圏の利便性を高めることに焦点を当てるべきですね。

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Sunday, February 15, 2009

鉄道投資を加速する世界停滞する日本

世界が鉄道投資へと舵を切っております。

鉄道投資、世界で加速 日本企業に商機 18兆円市場
細かい話はいろいろあるんですが、元々鉄道投資に積極的だった欧州では、例えば仏TGV計画の前倒しは、重電メーカー+車両メーカーとしてのアルストム支援の意味がありますし、日立が優先交渉権を得た英高速鉄道計画にしても、英国内への車両工場設置や車両リース会社立ち上げなど、国内の雇用対策の色彩が強く、内需主導で経済を立て直そうとしていることが読み取れます。中国も内需振興のための経済政策で、鉄道投資を重視する姿勢を見せております。
中国鉄道省、インフラ投資を倍増 09年
アメリカでもカリフォルニアの高速鉄道計画着手に必要な90億ドルの起債住民投票で認められました
カリフォルニア州、住民投票で高速鉄道建設にゴーサイン
いずれもキーワードは内需と環境ということで、米オバマ政権が打ち出したグリーンニューディール政策に沿った考え方が共通しております。

しかるに日本はという話になるわけですが、まずはこんなニュースからです。

新幹線建設の負担増を新潟県知事が拒否 他自治体に波及も
さらに並行在来線問題で禁じ手を用いた佐賀県でも同様の対応となりました。昨年の資源高騰による原材料費の上昇分を転嫁しようとして反発されたものですが、国の直轄事業として推進される整備新幹線事業の矛盾が露呈した形です。整備新幹線の問題点は再三指摘しておりますので繰り返しませんが、整備新幹線を含む国の直轄事業としての公共事業が、地方財政の逼迫でブレーキがかかったわけで、野放図な公共事業の積み増しの成れの果てです。

一方で2009年度予算では、またも整備新幹線の新規着工が盛り込まれようとしております。

整備新幹線の未着工区間、9億円を追加要求 国交省
特に問題なのは北海道新幹線の札幌―長万部間です。なぜならば、新青森―新函館間で着工された区間とつながらない区間の先行着工となるわけで、ただでさえ予算がないなかで、直ちに収益を生まない区間の事業着手を先行させたわけですから、正気の沙汰ではありませんね。

既に特別会計である鉄道整備基金の元金(新幹線の本州会社による買取り価格への上乗せにより捻出)が枯渇し、一方で開業に伴なうリース料収入で長期間にわたって償還されるわけですから、特会に資金が戻るのを待ってから事業着手すれば問題は少ないのですが、なし崩しで新規着工を積み増した結果、資金の償還が先へずれることになりますので、償還を待てなくなったわけですから、ある意味自業自得なんです。またリース料を担保に債券発行や銀行借り入れで資金調達する手はありますが、これはリース料を利払いで配当することになりますので、その分資金の償還が遅れ、トータルの利払いは増えるわけで、その負担は国民に付け回しされるだけです。もういい加減こんなことはやめるべきです。

ただでさえJR北海道の事業環境は厳しいわけで、整備新幹線のスキームでは、JRの受益の中身として、並行在来線の切り離しによる部分と、既開業区間の利用積み増しとなる培養効果の部分があるわけです。並行在来線問題では、東北でも噴出しましたが、旅客輸送だけでは赤字必至で、東北のいわて銀河鉄道と青い森鉄道では、JR貨物からの線路使用料収入で黒字化している状況です。しかもコスト負担力のないJR貨物へはJR東日本が支払う新幹線リース料に上乗せして得た財源で、JR貨物に負担増分を補填することで成り立っており、事実上JR東日本の財務余力を頼みとしているわけです。JR北海道に同じことを要求するのは困難です。加えて新青森が会社境界となる北海道新幹線の場合、いわゆる培養効果による根元受益はJR北海道には落ちないわけですから、結局並行在来線のうち、特に長万部―札幌間の山線区間のうち非電化の小樽までは、切捨てられること必至でしょう。この区間は仮に廃止されても、室蘭千歳回りで貨物ルートが形成されますから、結果的に倶知安やニセコなどの地域は見捨てられることになると考えられえます。それでいいのかどうかですね。

世界を見渡せば内需そして環境がキーワードとなって、各国が経済対策を積み上げているときに、日本だけが旧態依然のバラマキ政策しか取れないとすれば、世界で最後まで経済停滞に悩まされる国になるということです。定額給付金なんぞで政治が機能不全になっている場合か(怒)。

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Tuesday, February 10, 2009

東京娶ろう、地下鉄争奪戦

地下鉄争奪戦といえば、戦前の五島慶太と早川徳次の争いを連想させますが、今回は近未来の東京の話です。とはいえ首都東京の地下鉄というのは、2000年代の再開発バブルでも、結局地方や郊外への波及は限定的で、東京都心だけが需要される状況を作り出したように、人口減少下ではバブルの影響も偏り、東京の地下鉄は巨大利権であることもまた間違いありません。

東京メトロは2008年に副都心線が開業し、トラブルに見舞われながらも、順調に利用者を集めております。現状では運行頻度の関係で、利便性は今一つですし、バブル崩壊で沿線のデパートの改装計画が見直されるなど、必ずしも順風満帆ではないことは副都心線現象の記事でも指摘いたしました。しかしそれでも、同じく2008年に開業した京阪中之島線の苦戦に比べればマシです。

もちろん中之島線は路線立地が商業エリアではありませんし、単純比較は禁物ですが、同じ都心部の新線で、東京と大阪にこれほどの差が出ていることもまた事実です。ただ、先日撤退を発表したそごう心斎橋本店の店舗をJフロントリテーリング(大丸&松坂屋)が買取りを検討するなど、デパート戦争はむしろ盛んで、大阪駅北口のJR三越伊勢丹出店と阪急梅田店の改装で大丸が埋没を避けたいということなんでしょう。デパートにとっては、ブランド店が路面店を次々に出す東京は冬、商業地とビジネス街がはっきり分かれている大阪は夏とでも表現しておきましょう。

以前にも東京メトロ全株売却でどうなる?で取り上げたように、特殊会社である東京地下鉄株式会社(通称東京メトロ)の株式上場問題にキナ臭いにおいがします。持分47%の東京都の動向が気になるところですが、メトロに注目しているのは、東京都ばかりではなく、JR東日本と東海の争奪戦が水面下で行われているフシがあります。JR東日本にとっては、メトロを手中に収めれば、ネットワーク機能が強化されますし、現状でも東西線や千代田線との相互直通で一体感もあるだけに、興味があるはずです。実際東京モノレールを傘下に収め、羽田空港連絡輸送への参入を果たしており、本業でのシナジー効果は絶大でしょう。

JR東海にとっては、ドル箱の東海道新幹線の東京発着の乗車券で、山手線内と都区内の特定都市内発着特例を根拠とした負担金を嫌っていて、新幹線用ICカードのEXICで特定都市内発着特例を適用しないなどのことをしております。羽田空港連絡でも京浜急行との連携を探るなどもしておりますし、仮に東京メトロを傘下に収めれば、首都圏でJR東日本に頼らない集客体制を組める可能性が出てきます。逆に言えばJR東日本はそれを阻止したいでしょうから、株式上場のあかつきには、M&A合戦に発展する可能性もあります。

というわけで、政府方針でもあり、東京メトロ自身も中期経営計画(eBook)で明らかにしているように2009年度中の株式上場を明言しているだけに、予断を許さない状況といえます。おそらく会社法で認められた黄金株のような仕組みを導入すると思われますが、問題は黄金株を誰が保有するかでしょう。常識的には国か東京都となりますが、それだと完全民営化の趣旨に反することになりますし、制度設計如何では、証券市場の上場基準に抵触する可能性もあります。加えて一般投資家にとって保有のメリットを感じられないものになれば意味がないわけですから、慎重な制度設計が必要でしょう。それに70%のインフラ補助も受けているわけですから、事業用資産とはいえ公共の用に供する前提が企業間の抗争で歪められてはならないでしょう。

私案ですが、株主を個人に限定し、法人の保有を制限するなどの形が望ましいところです。JR2社と東京都の主導権争いで、多数の小口株主が振り回されるとすれば、株式保有の魅力も薄れますし。ま、それ以前に現状の株式市場の状況では、新規上場は難しいところですが。年度末にかけて一段安間違いなしですからね。

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Monday, January 12, 2009

100年に1度の成人式

ハッピーマンデー制度により、成人の日が1月第2月曜日に移動したのが2000年からですが、一方で正月休みでないと新成人が集まりにくい地方の事情もあって、三が日中に行う自治体や、結果的に生じる3連休の頭(今年は10日(土))にやったりということで、ややぼやけた感のある成人の日ですが、今年は新成人に祝いの言葉をかけるのも気が引けます。経済グチャグチャで明るい話題なし、新年早々から年越し派遣村のニュースが流れる現状に、新成人の門出を祝う気分がそがれます。

事態の深刻さからワークシェアリングが議論の俎上にのぼったものの、今までも労使共に乗り気でなかったものが具体化する可能性はほぼゼロに等しいでしょう。この国は「大人の事情」で若者に冷たい国なのです。そもそも派遣切り問題でも、派遣労働者が増えている状況を知りながら、組合員として取り込むわけでもなく放置した連合と傘下組合に、問題解決能力があろう筈はありません。派遣切りの本質は労労対立です。若年労働者を解雇しやすくする初期雇用契約法をゼネスト打って撤回させたフランスの労組とは大違いです。

加えて経営者側も、会社への忠誠心を梃子に個別業務の責任範囲を曖昧にしてきたから、仕事を分割する術を知らず、また労働基準法36条の労使協定、いわゆる36協定でサービス残業を追認してきた日本の労働慣行では、責任範囲が曖昧な方が会社にとって好都合だったのです。結果的にグローバル競争の激化とともにサービス財業は増加の一途を辿り、正社員も楽じゃないのが現実です。今後は正社員の雇用調整も確実です。サービス残業するぐらいなら、その分人を増やせっての(怒)。

しかし企業の内部留保は増え続け、2000年代だけでも大手企業で20兆円にものぼり、株主配当も増やしています。ゆえに「そんな金があるなら派遣切りなどするな!」の声もありますが、株価下落で株主も責任を取らされた形でして、株式持合いの弊害と断言します。それもこれも経営者の自己防衛的買収防衛策の結果ですから、株主重視が問題というよりは、投資マインドの弱い日本の企業経営者に問題があります。

元を辿れば2001年のベアゼロ春闘をトヨタがリードしたことに端を発します。バブル期をピークに労働分配率(企業が付加価値を人件費に充てる比率)は70%程度あったのですが、現在は60%です。しかも若年層ほど非正規雇用の比率が高く、正社員は年功賃金で高給取りとなった人たちですから、若者の手取りはより少ないわけです。その中で、トヨタ首脳が「最近の若者はクルマを欲しがらない」と言い、若者へのアピールとしてF1参戦したりしたんですが、そもそも若者の所得を奪っておいて「買ってくれない」はおかしいです。結果としてトヨタの売上の79%は海外売上といことになるわけです。その結果例えばカローラもヴィッツも海外需要に対応してサイズアップして行き、ますます国内ユーザーのニーズから離れます。こういったチグハグをやっていて、GMの不振で世界一が見えてきたというのは皮肉です。トヨタは堕ちるべくして堕ちたのです。

米ビッグ3の不振も、元々は他社よりも高給かつ企業年金や企業医療保険などの充実した福利厚生で人を集めてきたわけですし、雇用調整は有給のレイオフによっているわけで、どう見ても持続可能なやり方ではありません。労組寄りと目されるオバマ新政権ですが、公的資金で救済する以上、雇用へ切り込むことは間違いないでしょう。ビッグ3不振は日本の派遣切りと同じように、労組の既得権問題なんです。

現在へ通じる近代自動車工業の嚆矢となったT型フォードの発売が1907年ですから、実は自動車産業はたかだか100年の歴史しかないわけですが、燎原の火の如く広がったモータリゼーションの波は、新興国へ波及する段階で、エネルギー資源の制約と地球環境問題に直面し、持続可能性に疑問符がつけられているということはできます。大波乱のうちに明けた2009年ですが、次の100年に思いをはせるチャンスかもしれません。その意味で道路特定財源の一般財源化をうたいながら道路予算を増やす政府の対応も問題あります。一方で定額給付金バラマキを生活支援とうたうのですからめちゃくちゃです。こんなことなら暫定税率を失効させておけばよかったんです。

というわけで、自動車に追い込まれ続けた鉄道の復権にとって重要な年となるかもしれませんが、2008年には京都市営地下鉄東西線延伸に始まり、横浜市営地下鉄グリーンライン、東京都営新交通日暮里舎人ライナー、東京メトロ副都心線、京阪中之島線と新線開業の当たり年だったことと比べると、2009年は阪神なんば線、平成筑豊鉄道和布刈公園線、富山地方鉄道富山市内環状線といったところで、小粒感は否めません。来年には成田空港新アクセスや東北新幹線新青森開業などの大物が控えてますが。

いずれも公的支援を得ての整備であるのはご他聞に漏れずですが、気になるのが計画段階での輸送目標をことごとく下回っていることです。もちろんだから無駄だと言うつもりはありませんが、公的支援を得る以上、事業としての客観的な評価は大きな課題です。例えば北海道新幹線札幌~長万部間の新規着工のような事業をどう捉えるかですが、東京とつながってナンボの新幹線の部分着工は投資効率を下げる愚策です。

というわけで、正直なかなか新年を祝う気分になれなかったのですが、本年もよろしくお願いいたします。

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Wednesday, December 31, 2008

2008年さてはナンピン弾腐れ

東京証券取引所大納会の30日、波乱の1年が終わりました。

08年日経平均、戦後最大の42%下落 終値8859円
1年の締めくくりとしては残念なニュースですが、これが現実ですから致し方ありません。42%下落でほぼ全銘柄が値下がりしてますので、ご他聞に漏れず私も損こいてます^_^;。年初にこんな記事を書いてますが、結果的に株で損したことを白状いたします。

しかし損失の程度は4割ほどですから、丁度日経平均の下落率と同等ということで、あくまでも現時点での評価としてですが、銘柄選択は大きく間違えてはいなかったということはできます。決算のない個人投資家の強み、あくまでも10年後に笑おうというコンセプトです。

しかし実際には値下がりで押し目買い(ナンピン買いとも言います)して損失を膨らませた人も多数いるようです。また逆に早めに売り抜けて損切りを成功させた人もいるようです。いずれも投資家間の損得勘定はゼロサムゲームの範囲内ですから、それ自身は自己責任の範囲です。それよりも相場全体が下げたことによる、社会全体への影響の波及を考えると、この程度の損失、しかも売らない限り実現しない損失で済んでいるとも言えるわけです。

一方でこの状況でも多くの企業が配当は続けているし、よほどのことがない限り今後も続ける意向であると発表しております。その結果日銀の利下げや株安による質への逃避による国債金利低下で、結果的に株式の配当利回りが相対的に高まっているので、持ち続けていれば、配当は受け取れるわけです。もちろん今後はどうなるかわかりませんし、一方で派遣切りなど雇用にしわ寄せが及んでいる中で、批判もありますが、株安はむしろ投資家の離反を恐れて企業の配当性向を高めるものと考えられます。

というのも、株安で本当に打撃を蒙ったのは、投資家よりも企業自身であるということです。言うまでもなく株式持合いの影響です。株価半減で減損処理を迫られる新会計基準の下で、多数の企業が保有株式の値下がりに苦しんでおります。そしてその中心に銀行が居る構図は、90年代の金融危機当時と似ています。株安で大手銀行保有株の含み益は800億円程度と推計されてますが、もう一段下げれば含み損となり、国際決済銀行(BIS)規制の自己資本比率を維持できなくなる恐れが出てきました。2007年のサブプライムショック以来、「日本の金融機関は健全」と言われてきたのですが、それが怪しくなっているのです。

そして株価の今後の動向ですが、グローバルオウンゴールで指摘したとおり、昨今の経済成長が世界規模のバブルによるものだったわけですから、その巻き戻しが起きることは避けられず、少なくともバブル以前の2002年レベルまでは戻すと考えるべきでしょう。となると株価は7,000円台ということで、一段の下げがあるということです。

またこの間日本は実質10%ほどの経済成長が見られましたので、それが巻き戻すということは、仮に誰かが言うように「全治3年」としても、3%超のマイナス成長が3年続くということになります。もうちょっとマイルドな2%マイナス成長ならば5年かかるわけで、その間の実体経済の冷え込みを考えると、株価の底割れ懸念は消えません。

結局株安は銀行の健全性を損ない、いわゆる貸し渋りを引き起こしているのですが、2つ経路がありまして、1つは株安の連鎖によるCPなどの社債市場の機能低下で、社債発行で資金調達してきた大手企業が新規発行が難しくなって、銀行に融資を申し込むという構図です。この場合担保余力の高い大企業が大量の資金を需要しますから、その結果中小企業への貸し出しが圧迫されるわけです。もう一つが上記の通り銀行自身の自己資本の毀損による貸し出し資産の圧縮です。そもそも欧米では利益相反が起きるとして銀行の株式保有は原則禁止されていて、BISの自己資本規制での株式含み益の算入は、邦銀に有利なルールとして日本が押し込んだものですが、90年代に続いて同じ過ちを繰り返すならば、日本も欧米並みに銀行の株式保有を原則禁止とすべきでしょう。そうすれば企業間の株式持合いの必要性も薄れ、株式市場が本来の投資家のためのものという性格を強めるはずです。それこそが金融ビッグバンで目指したものではなかったでしょうか。

加えて政府ですが、この緊急事態に緊張感ゼロの対応にめまいがします。税収減による財政赤字は避けられませんし、経済浮揚のための財政出動も求められますが、それは定額給付金のようなバラマキや、億ション購入ぐらいでしかメリットのない住宅ローン減税や、道路予算増額や整備新幹線新規着工などの旧来型公共事業の積み増しでもありません。輸出依存ではない新産業の創出による雇用吸収こそが求められます。

その意味でドサクサ紛れに札幌~長万部間の整備新幹線新規着工なんて話が出てくるんですから驚きです。電力浪費して空気を運ぶつもりかい(怒)。政府のナンピン買いみたいなもんです。

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Tuesday, December 23, 2008

207系900番台でスベった高等戦術

あお色エレジーの続編です。常磐緩行線への投入が予告されながら、未だ姿の見えないE233系2000番台ですが、203系と道連れに追われる207系900番台も取り上げたいと思います。国鉄としては最初にして最後の、そして唯一の営業用VVVF制御電車として、期待された電車でした。

そもそも国鉄では、北陸新幹線用車両用に、VVVF制御の開発を1984年から始めていて、国分寺の技術研究所で101系に試作品を装備してテストを繰り返していたんですが、次の段階として営業用に投入し、量産化のめどをつけることとなり、常磐緩行線への投入が決まったものです。常磐緩行線は地下鉄千代田線との相互直通運転が行われていて、高加速が求められる上に、会計検査院の指摘で営団と国鉄の車両の電力費の差額精算が求められて経緯もあり、省エネ車である必要があったことと、既に電機子チョッパ制御の203系が投入されていたので、比較検討の意味もあってのものです。

車体は203系のアルミボディではなく、205系の軽量ステンレス構造となり、台車も205系と同等のボルスタレス台車としているところから、後述するように新たな標準化の意図があったものと考えられます。この辺が国鉄らしいところではありますが。

国鉄らしいところとしては、何より10連1編成を複数メーカーで分担して製作している点があります。車体は205系と同等の軽量ステンレス製で、205系向けに東急車輛のライセンスを公開させたものですが、当形式では東急車輛と川崎重工が5両ずつ分担し、電装品は東芝、三菱電機、日立、富士電機、東洋電機の5社が分担という呉越同舟ぶりですが、一応日立製の機器に性能を合わせているようです。同一編成で運用する以上仕方ないところですが、5社競作になっていないというところは国鉄的な標準化思想の成せる業でしょうか。

また10連で6M4Tの電動車比率ですから、5社で6両分の電装品を調達するという不一致が出ております。実はこの辺に「高等戦術」が隠れているのです。実際は東芝が2両分の電装品を担当したのですが、量産時のことを考えれば、試作車での1両の割当増自体は、大した意味は持たないでしょう。元々省エネ性能を期待され、特に電機子チョッパ制御よりも粘着性能の高さに期待があったVVVF制御で、5M5Tで高加速をという狙いは伏せたままメーカーへ発注されたわけですから、量産時の見積もりも当然6M4Tが前提となるわけですが、現車で粘着性能を確認した上で、量産時には5M5Tとすれば、それだけ価格を抑えられるわけで、予算不足に泣いた国鉄末期のセコい高等戦術でした^_^;。

しかし現車は空転に悩まされ、なかなか性能が安定しませんでした。結局高等戦術はスベってしまったわけですね^_^;。加えて電装品に使われる素子類の価格も下がらず、製造コストを203系以下に抑えるには4M6Tにしなければ無理ということで、量産を断念されたのでした。201系以来、大量発注の量産効果を狙って失敗を繰り返す構図が続いたわけです。

この「高等戦術」が意図した結果を得たと仮定すると、おそらく通勤型の新標準車の地位を得た可能性があり、そうなれば209系以降の新系列車の登場もなかった可能性はありますが、国鉄が仕様を決めてメーカーへ分散発注する談合体制では、結局意図した性能は実現しなかったでしょう。実際分割民営化後のJR各社はコンペでメーカーを競わせる方向へシフトし、車両面では大きな変化をもたらしたのはご存じの通りです。

番外で、元々北陸新幹線用に計画されたVVVF制御ですが、新幹線用としては東海道山陽新幹線の300系で実現しております。JR東海は300系を短期間で開発しておりますが、それも国鉄時代の蓄積があったからこそであり、見方を変えれば、207系900番台とは異母兄弟といえる存在ということがいえます。

もう一つ、JR西日本の207系0番台1000番台2000番台についてですが、一部趣味誌で常磐線の900番台を試作車、JR西日本の0番台を量産車と紹介されましたが、VVVF制御でステンレス車体という共通点はあるものの、両者は全く無関係な別物です。加えて後者の登場を期に常磐線の207系が0番台から900番台に改番されたという説も流布されているようですが、900番台は登場時から番号は変わっておらず間違いです。活字で公開された誤情報はなかなか訂正されませんが、困ったもんです。ただし両者に番号の重複はありませんが、0番台が空いているというノリで紛らわしい形式名を与えるJR西日本には、国鉄大阪支社時代の東京本社への反骨心が残っているのでしょうか。変なところで国鉄を引きずっているのも困ったもんです。

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Monday, November 24, 2008

苦戦する京阪中之島線

京阪中之島線が苦戦しているようです。

京阪中之島線、乗降客1日3万人
1日3万人というのは、10/19から10月末までの平日の集計ということで、わずか10日間の実績ですから、大げさに考える必要はないのかもしれませんが、いささか拍子抜けでしょうか。実際電車は空いているようです。ただし通勤客主体の利用であれば、定期券の切り替えに時間がかかるのは、大都市の新線では通例でもあります。まだ結論を出すのは早いのでしょう。

にしても開業を伝えるニュース自体が少なく、首都圏在住の身としては、情報不足は否めないところです。また実際メディアの取り上げ方というか、扱いも小さいようで、東京メトロ副都心線のときとは雲泥の差です。そんな中で個人的なトピックが重なります。というのは、11/22発売の月刊ビジネスアスキーのWhat's upというページの中のコラムに、中之島線の開業に関する短い文を書きましてた。ライターデビューですが、新線開業に対する大阪人の期待というか、熱狂に焦点を当てた文で、それを首都圏に居る私が考察したという不思議な成り立ちです。ご笑覧ください。

というわけで、初めての活字メディアですが、ネットと違ってさまざまな制約がある中で、何かを伝えることの難しさを痛感いたしました。同時にコンテンツ自体が編集さんとのやりとりの中で作られるいわば共同作業ですから、当ブログの書き込みほど切れ味がないと言われるかもしれませんが、メディアの性格上の問題です。またプロの編集者の依頼を受けたこと自体は、私の情報発信のスタンスが評価されたものと素直に嬉しいことです。同時に玉石混交のネットの中で、コンテンツの質を担保することの重要性も感じます。と同時にネットをコミュニケーションツールと見れば、むしろ完成度をあまり上げずにあえてツッコミどころを残して、読者の反応を引き出すというのもありなわけで、スキがあるからこそネットは面白いともいえます。ネットと既存メディアのメディアミックスは試行錯誤段階が続きそうです。

本題に戻しますが、1日3万人というのは、新線区間の4駅の乗降人員という意味になります。目標が8万人だったので、半分にも満たないわけです。既存線区間では、京橋の20万人を筆頭に淀屋橋の13万人が続きますから、鉄道ネットワークから孤立している新線の需要を過大評価しているわけでもないようです。前述のように、開業直後の短期間の実績ですから、過大視する必要はありませんが、経済情勢が逆風になる中で、厳しい門出には違いありません。

また中之島線が公的な補助を得て建設されたわけですから、利用の低迷は1民間企業の問題では収まらないこともまた確かです。この償還型上下分離方式は、従来公営交通の分野とされていた大都市内の高速鉄道整備に関して、第三セクターのような公的主体が整備して事業者にリースすることで、そのリース料で事業費を償還する仕組みですが、従来公営交通にしか認められなかったいわゆる地下鉄補助と同等の補助を受けられる点が新しいといえます。川の中州の軟弱地盤を掘り進む難工事ですから、京阪単独では着手できなかったでしょう。

そして中之島線が中之島地区の再開発計画と一体の計画であるからこそ、公益性が認められて国、大阪府、大阪市の予算が認められ、事業化されたのが2001年3月ですから、短期間で実現できたことになります。実はこの短期間という点が重要なんですが、地盤沈下著しい大阪経済の浮揚に対する期待が見え隠れします。

大阪での大規模再開発の目玉は、梅田北地区の貨物駅跡地でしょうけど、大規模ゆえに開発期間が長く、実際に開発利益を回収できるのはかなり先の話になります。その間にも大阪の地盤沈下は進みますし、一方でウオーターフロント開発は五輪招致の失敗やUSJ,WTC,ATCの収支低迷などで負の遺産を膨らませているだけに、限られた地方財政の体力の中で短期間で都市再生の果実を得られる案件として、中之島の再開発が浮上したものです。中心は朝日新聞大阪本社やフェスティバルホールの建て替えで、中之島線の渡辺橋が最寄となります。またここは堂島川を挟んで対岸にはドージマ地下センターが広がり、JR東西線北新地駅も徒歩圏となります。乗客を奪ったライバルの駅勢圏を侵食するわけですね。加えて終点の中之島は阪神福島、JR新福島付近のいわゆる梅田西地区の再開発エリアに近く、これら民間主体で進む再開発を活性化させる期待は大きかったと思われます。

というわけで、事業化のスピードという点、直後に発足した小泉政権で大都市再開発を経済浮揚に活かす姿勢などが相まって、開業にこぎつけたという意味で、やはり副都心線と対を成す事業といえるかもしれません。また開業時には再開発ブームの裏づけとなる不動産ブームが終焉していたことも共通です。もちろん構想自体は以前から存在したものの、1989年の運輸政策審議会の答申に取り上げられたのが最初ですから、やはり実現のスピードの速さは特筆されます。

これはもちろん事業者としての京阪電気鉄道の執念もあるでしょうけど、都市再生を掲げた時の政権の影響は無視できないところです。繰り返しになりますが、再開発のブームは去り、経済は再び下降局面にあります。悪いことに米国発の金融危機が後を追い、実体経済も冷やしてますから、その意味では中之島線は波乱のスタートを切ったわけです。、

とはいえ開業時の記事でも指摘したとおり、元々は複々線の都心側への延伸という性格の路線ですから、京阪自身のダメージはさほどないでしょう。むしろ助成した府や市が魅力的なまちづくりを継続できるかどうかが問われます。

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Tuesday, November 18, 2008

あお色エレジー、千代田線に来ぬ新車

タイトルは千代田線ですが、JRネタです。不動産屋の「千代田線、北小金駅」ではないですが^_^;、一体性の強い常磐緩行線の話題です。JRとメトロ、それぞれの前身である国鉄と営団地下鉄の奇妙な関係の話です。

千代田線は元々1960年の東京都都市計画高速鉄道10路線中の8号線として示された路線で、小田急線喜多見を起点に、原宿、永田町、日比谷、池之端、日暮里を経て松戸方面への路線として計画されました。喜多見は、多摩ニュータウンへの新線を計画する小田急線との相互直通を意識したものと思われますが、62年の運輸政策審議会の答申では、9号線(芦花公園~新宿~上野広小路~両国~浜松町~麻布)と共にキャンセルされ、都計10号線(中村橋~錦糸町)が繰り上がって8号線を名乗りました。おそらく相互直通相手と目された小田急、京王両社が乗り気でなかったのでしょう。

その後64年に喜多見~代々木上原間を小田急線の線増として、松戸方面も西日暮里~町屋~北千住~綾瀬というルートに変更され、国鉄五方面作戦による常磐線複々線化と併せて相互直通する9号線として復活しました。この時点では事業主体も営団で確定し、おそらく水面下での関係者の折衝の結果、復活したのでしょう。

営団も国鉄も、いわゆる公共企業体という組織で、公的な機関だけれども、民間企業に準じたガバナンスの下、独立採算を求められる組織で、それぞれ特別法を根拠に設置された、いわゆる特殊法人です。ただしその中身はかなり違います。

元々鉄道省として国の行政機関の一部だった国鉄は、鉄道省の現業機関として、民営化前の郵政3事業のような存在でした。同時に鉄道省自体は、私鉄、バス、民間船舶、航空など運輸全般を司る監督官庁でもありました。この辺は以前の記事でも触れておりますが、元々鉄道事業は国の事業であり、国家独占の前提があったわけで、その中で民間事業者が参入するうためにはお伺いを立てて免許の交付を受ける必要があったんですね。ゆえに国鉄並行路線の新京阪鉄道のターミナルに制限を加えるような恣意的な対応も見られました。

1940年頃からの戦時体制下の省庁再編で、産業政策を司る商工省と統合、その後現業機関の郵便事業を持つ逓信省に移管され、戦後運輸省として独立するんですが、GHQの命令で現業機関を公社として分離することを求められ、公共企業体としての日本国有鉄道に改組されます。ただし行政機関だった時代の権限の多くを引き継いだために、監督官庁である運輸省よりも強い権限を有するという逆転現象が起きます。つまり国鉄自身による鉄道整備、運営は、国鉄の判断で行えて、運輸省の免許等は不要でした。その結果反対を押し切って東海道新幹線を実現させることができたわけですが、同時に独立採算を盾にローカル線の建設は不熱心でしたので、後に鉄道建設公団が作られ、財政投融資資金を投入して建設された地方交通線及び地方幹線を国鉄が引き受ける制度が作られ、さらにあれほど反対された東海道新幹線の業績が好調になると、今度は全国新幹線網整備法という法律を制定し、新幹線の建設と運営を運輸省の命令で実施するようになりました。この法が民営化後も形を変えて生き残り、現在の整備新幹線問題や中央リニア問題となって今に至ります。純民間資金の事業であるはずの中央リニアが、国の命令によってしか動かないという制度は、メディアの記者たちにもあまり知られていないようで、見当違いな報道が少なからず見られます。

脱線しましたが^_^;、一方の営団は、元々民間の手で地下鉄を開業させた東京地下鉄道と東京高速鉄道を前身としており、戦時統合で東京の地下鉄事業を行う半官半民の組織としてスタートしました。今流に言えば第三セクターといったところで、当初は東急の持分もあったんですが、後に返上させられ、国鉄と都がほぼ半分ずつ出資する形態の組織となり、国鉄分割民営化で国鉄の持分は大蔵省(後の財務省)へ移管され、現在は民営化を前提とした特殊会社の東京地下鉄株式会社となっております。出資比率は国53%、都47%で、国と都の保有株の一括売却による完全民営化の方針が打ち出されておりますが、具体的な進捗がないまま、世界同時株安でそれどころじゃなくなりました。

元々大都市の市内交通は公営事業者の領分という意識が強かった中で、東京に関しては、何度も都市計画を発表しながら、多額の建設費を捻出できずに民間事業者に出し抜かれた東京市の自治能力に国は元々疑問を持っていたようで、戦時体制で東京府と東京市を併合して東京都とするなど国家統制を強め、地下鉄事業も出資は認めながら交通局の参入を許さなかったようです。

公営交通についても、日本は特殊な位置づけがありまして、国ではないので民間事業者と同様に事業への参入は国の免許の交付を受ける必要があったんですが、公的主体で営利目的でないということで、例えば運転士の動力車運転免許取得の免除や、固定資産税納付の免除など、民間よりも優位な条件で参入できますが、東京市はそれを活かせず、地下鉄事業で後れを取ったわけです。営団も一応は公営に順ずる組織ということで扱われました。また優位性を活かして収支も良好で、運輸省子飼いの優等生というか、いわゆる運輸省の省益と見られていたようです。

そういった両者ですから、不可思議な関係が幾つか見られます。例えば地下鉄東西線ですが、都市計画5号線として決定された段階では事業主体未定で、国鉄による整備が期待されていたようですが、国の機関だった国鉄が格下と見る東京都の都市計画には従わず、結果的に営団が事業主体となりますが、いわゆる通勤五方面作戦の先駆けとなった中央線中野~三鷹間複々線化事業と並行して整備されました。

その一方で都計10号線→答申8号線として計画された路線では、総武線複々線化の受け皿を意図したと思われますが、無視されて、国鉄単独事業として総武快速線(東京~錦糸町)が整備されました。ただし総武線の混雑は快速線の完成を待ってはくれず、緊急避難として国鉄から営団に地下鉄東西線の西船橋延伸を要請し、営団にとってはエリア外となる千葉県への路線延伸が実現することとなります。このくだりは川崎市営地下鉄の記事でも指摘いたしました。国鉄と営団の特殊な関係が如実です。

で、やっと千代田線ですが^_^;、営団が初の電機子チョッパ制御車で省エネの6000系を用意(初期には東西線5000系にCS-ATCを搭載して投入)したのに対して、国鉄が用意したのが、103系1000番台でした。当時の標準型通勤車の103系に、地下鉄線内での高加速性能を付加するために、電動車比率を高めて限流値を高く取って、つまり抵抗を早く抜いて高加速を実現するという仕様で、床下の抵抗器から強烈な排熱を放出する文字通り走るトースターのような電車でした。そのために営団6000系と比べて電力消費量が多く、その点を会計検査院に指摘されて、以来電力費の差額精算を余儀なくされました。国の特殊法人という国鉄と営団の性格が良く出たエピソードです。

とはいえただでさえ赤字で苦しんでいた当時の国鉄にとって、この電力費差額精算は負担でした。ゆえに高速チョッパ車として201系が開発されると、同じシステムで常磐緩行線用の省エネ車の開発が当然のように浮上します。それが203系だったわけですが、急ごしらえで予算不足が災いし、特に高価なアルミボディの出来が悪く、走る度に窓がバタつくノイジーな電車となりました。そのボロさ加減はやはり粗製乱造車の京王6000系と良い勝負といいますか、地下鉄線内で姿が見えないのに音でわかる情けなさは同じです。

同じチョッパ制御システムを用いた201系が、長寿命設計で車体だけは無駄に丈夫なのと対照的ですが、トラブルの多い201系はE233系による置換えがほぼ終わりを迎える一方、203系の置換え用として登場が予定される2000番台は未だ姿が見えません。当初予定されていなかった京浜東北線用1000番台、近郊型仕様の3000番台、私鉄向けとして小田急4000系(ドア中心間4,820mmの標準寸法で独自電装品)、相鉄11000系(ドア中心間寸法も電装品もJR仕様)と、次々派生車種が登場する中で、後回しとなってしまいました。地上で併走する快速線がE231系とE531系で新車オンリーとなっただけに、みすぼらしさもひとしおです。E233系2000番台については一応2008年度の投入がアナウンスされてますが、年度内に営業運転までこぎつけるなら、年内に第1編成が登場してもよさそうですが、どうなるでしょうか。

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Thursday, November 13, 2008

銭トレニャア、ナゴヤはオワリ?

うーん、株価が戻りません。ゆえに買い増しのチャンスという見方を変えた方が良さそうな感じです。原因は複数あって、特に外国人売りの地合いが強いようですが、誤解のないように指摘すれば、主に欧州各国で銀行への公的資金注入が行われた結果、政府主導で国内中小零細企業への貸出増加の圧力がかかり、投資原資として外国資産の処分が行われているもようで、ひと頃言われたジャパンパッシング(日本素通り)とは別の要因です。欧州では社会の装置に過ぎない銀行の救済よりも預金者や融資先の保護に重点が置かれているわけです。

とはいえそれだけで現在の株価が説明できるわけではなく、実際これだけ安くなったのに買いが入らない状況は、プロに言わせればあり得ない話と言われ、実際PER(株価収益率)が5倍とか、PBR(株価資産倍率)が0.5倍といったアンビリーバボーな数値が並びます。後者など会社を廃業して資産を切り売りした方がマシというレベルです。やはり前に指摘した株式持合いの負のスパイラルが原因のようです。悪い予想ばかりが当ります。

で、持合いの中心には銀行が居て、現在の株安を先導している状況をどう見るべきでしょうか。日本では銀行は救っても預金者や融資先は救わないのでしょうか。現在国会審議中の金融機能強化法でも、政府案では公的資金注入に際して経営責任を問わないことになっておりますが、それでいて貸し渋り防止策を謳っているのは矛盾しております。ま、この辺は90年代末の金融危機のときも政府の対応は基本的に変わっていない気がします。担当大臣が外国に「自慢」した公的資金注入にしても、長銀と日債銀の救済策は元々民主党案を丸呑みして実行したもので、こちらは経営陣の更迭と0円評価での全株式取得という形で経営責任と株主責任を問うたものでした。その仕組みを使い回して2002年にりそなへ資金注入したしたことで、政府の関与による金融秩序の回復期待が好感されて7,000円台だった日経平均株価が反転上昇に転じたことで、銀行の保有株が値上がりし、あれほど経済の重石となっていた不良債権問題が嘘のように解消したものでした。いわゆる竹中プランで、大手行に対しては経営責任を強く問いましたが、地方経済への負のインパクトを回避するために、地方銀行の不良債権処理は途半ばとなり、保有株価の上昇で見かけ上の自己資本は回復したわけです。それがリーマンショックの株安連鎖で資本が毀損し、さらに2006年下期以来の不動産不況も重なって、元々建設や不動産関連の融資が多かった地方銀行のバランスシートを傷める結果となっております。つまりは地方銀行に元々隠れていた不良債権問題が顕在化したわけです。

地方銀行でも、破綻すれば影響が大きいと考えられる上位行の足利銀行は、上記のブリッジバンク方式で一時国有化され、再建されて野村グループに転売されたのですが、規模の小さい地銀下位行や第二地銀ではそれは通らない話で、実際不動産不況関連で初めてのペイオフ実施が囁かれてさえいたのですが、世界金融危機に便乗して一転救えという話になりました。いわゆる焼け太りです。同様に流通市場が消滅して値決めできないという実務上の制約から、社債や証券化商品について時価会計を一時凍結しようという気運が欧米で出ると、流通市場が機能していて値決めが可能な株式や国債にまで適用しようと画策する日本政府の姿勢は、むしろ国際的に不信を買います。お願いだから15日の金融サミットでバカなこと言わんでくれ。

そんな中でトヨタショックがあったわけですが、メディアの取り上げ方はかなり一面的です。減収減益の直接的な原因は北米市場の冷え込みですが、メディアの論調としては円高の影響を過大視する傾向があります。既に現地生産比率が高いトヨタですから、為替変動の影響に対しては耐久力があります。実際経常利益7割減とはいっても、去年までの数値がむしろ円安メリットで高めに出ていたと見る必要があります。特にレクサスのように日本で生産して北米で売られる高単価車の寄与が大きかったのであって、その部分が金融バブルと共にしぼんだだけです。そういう意味ではマイナスには違いないですが、元々財務の強いトヨタですから、仮に単年度で赤字転落しても、さらには赤字が数年続いても、存亡の危機にはなりえないので、その辺がビッグ3とは大違いなんです。

とはいえ自動車不況の現実は確実にあるわけで、実体経済への影響は計り知れません。特にトヨタの減益発表のインパクトで怖いのは、納入する部品メーカーへの影響で、既に中部地区では衝撃が走っております。好調時には納入価格を叩かれた上に、不況で減産となれば真っ先に影響を蒙るのは、こういった下請企業群です。トヨタは安泰でも下請け企業は存亡の危機となるわけですが、よくよく考えれば、真に必要なサプライヤーならば、発注元企業が資本を入れれば良いわけですが、そうはせずに公的資金で助けられた銀行の融資や都道府県信用保証協会の保証業務などで延命させると、再度好況に巡り合わせたときに、使える安値受注のサプライヤーを温存できるわけです。つまりトヨタのような親企業だけが富む構図ですね。結果的に国内消費をリードしてきた名古屋景気はしぼみ、中小企業は疲弊する構図です。地域のトヨタ依存が高すぎた反動ですね。

その影響で栄の老舗デパートをなぎ倒したジェイアール名古屋タカシマヤも業績にブレーキ、JR東海の連結業績にも影響しています。さらにこんなところにも変調が。

中部空港、4-9月初の赤字 燃料高痛手に
これ燃料費高騰だけが原因ならば、最近の原油価格の動向でいずれ回復が期待できますが、より構造的な問題として、そもそも国際空港として発着便数を増やせずに、経済の冷え込みでむしろ航空会社の撤退が始まってしまい、空港としての存在感が低下していることが見逃せません。開港当時から航空客より見物客が多いことから、空港付テーマパークとも揶揄されましたが、名古屋景気の冷え込みで見物客の落ち込みも予想されるだけに、業績回復は容易ではないというべきでしょう。

となると気になるのが、空港輸送で息を吹き返した名鉄の動向です。元々クルマ大国の名古屋地区で、それに対抗して登場したパノラマカーが、来年度の全廃が発表され、一時代が終わった感があります。ところがクルマ社会の親分であるトヨタよりも、民営化JRと名古屋市営地下鉄/バスの挟撃という思わぬライバルの出現で乗客を減らした名鉄が、中部国際空港の輸送で得たアドバンスも、先行き不透明です。既に岐阜地区の600V線などローカル区間の撤退も進み、リストラも一巡したところでの地域経済のリセッションは堪えそうです。

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Saturday, October 25, 2008

中央リニア5.1兆円JR東海が自己負担の意味

またしても週末に金融危機です。しかも今回の主役は日本です。

円急騰、欧州市場で一時90円台
2003-2004年の大規模為替介入の結果、日本の外貨準備資金として1兆ドルに及ぶ残高を抱えていることは、コイズミノミクスの反動としてのコイズミジレンマとして既に指摘しました。またそれが輸出企業への輸出補助金として企業を助ける一方、国民生活を窮乏化させるものであること、さらに国の外貨準備の肥大化が、低金利の円を借りて高金利国債券で運用するいわゆる円キャリートレードに暗黙の保証を与えた結果、家計貯蓄をリスクにさらしたことも昨年の記事で指摘しました。また長く続いた日銀の低金利政策が世界規模のクレジットバブルの戦犯であり、巻き戻しの危険性があることも以前に指摘しました。今回はアクション自体は欧州発ですが、それだけ欧州各国で円キャリートレードが盛んだったということで、その巻き戻しが起きてしまったんですね。もはや対岸の火事ではありません。

簡単に言いますと、低金利の円資金を調達して、為替市場で投資先国の通貨に交換してそれぞれの債券等の金融商品に投資するという流れで、特に通貨フォリントが対ユーロで最高値から25%も下落したハンガリーでは、個人の住宅ローンにまで円資金で調達した資金が使われたほか、いわゆるサムライ債が多数の国て発行されていた状況で、金融危機で借り手が手仕舞って資金を返済する動きが出てきたものと考えられます。そのために返済資金の円を買う動きが世界的に広がったわけですから、為替介入で押し戻すことは不可能ですし、国際的にも非難を浴びます。

問題はそうやって買われた円が株式の購入などに回ってくれれば良いんですが、長く輸出企業優遇を続けた結果、円高は輸出企業の輸出減速で実体経済の先行き不安を連想させますから、円資金は単純に返済に回り、市場から消え失せるわけです。内需振興を図らなかったツケがまわったわけですね。

そもそもなぜ内需振興かといえば、高齢化が関係します。簡単に申し上げますと、工業化社会ではすべからく高齢化は進んでおります。ただ日本では高度成長の結果として高齢化のスピードが欧米より急なことが特徴です。逆に欧米の後追いですから、欧米の失敗を教訓にできる立場でもありますし、より重要なのは、韓国や中国を含め、アジア各国の経済成長が日本モデルの後追いとなっていることから、将来的に日本同様の高齢化に直面することは確実なわけで、この面でも日本が一定のお手本を示せるかどうかが問われております。

高齢化世代はいつまでも労働市場に留まらず、ある時点で退場するわけですが、それはとりもなおさず現役時代に蓄積した貯蓄を取り崩す生活への移行となります。厳密には公的年金制度の有無などで違ってくるのですが、議論が煩雑になりますので省きます。高齢化自体は公衆衛生の改善と医療の進化によるものですが、工業化の進捗による経済成長の結果として医療への支出が増やせるのもまた事実でして、結果的に救える命が増え、高齢化へと向かうのは必然です。その結果労働力の供給が不可能な高齢者が増えて、彼らは生産せずに消費だけを行う存在ですから、高齢者が増えるということは、国のマクロレベルでは貯蓄が減って消費が増えることを意味します。言葉を変えれば国内消費が国内生産を上回るということです。

これを人為的に回避しようとする試みは欧米で主に移民政策として実行されましたが、これがどういった結果となったかは、今回のサブプライムショックでわかるでしょう。アメリカは中南米のヒスパニック系移民の受け入れが契機となって住宅バブルを生じたわけですし、欧州でもイギリスやスペインは同様です。遡ってドイツでは主にトルコ系移民を受け入れた結果、非熟練労働市場が移民中心に切り離され、社会不安を起こしておりますし、またトルコ系移民の定住によって、彼らの高齢化の面倒を見る羽目に陥ります。重要なのは自国民も移民も等しく齢をとるのであって、移民政策は高齢化の解決策にはならないのです。

その結果貿易収支は赤字基調となるわけです。この部分が理解しにくいでしょうけど、国内消費が国内生産で賄えなければ必然的にそうなります。いわゆる国際競争力云々とは無関係です。ただ実際の貿易収支は為替変動で相殺されますから、その国が偏りのないマクロ経済政策を実行できていれば、貿易収支(実際はサービス収支を加えた経常収支)は、均衡水準を維持できるはずです。そのためには製造業では資本装備の充実による生産性向上が重要なんですが、実際には賃下げや非正規雇用の拡大による労働分配率の低下で対応し、むしろ設備投資も抑制的でした。結果的に日本企業はキャッシュフルになり、外資から買収を狙われることになったわけですね。

実際の日本の直近の貿易収支を見ると、8月に小赤字、9月に小黒字ということで、80-90年代に政治問題化したような状況とは様変わりしております。何が変わったかといえば、それだけ当時よりグローバル化が進んで、貿易収支や為替水準などが世界の人々の関心事ではなくなってきたということです。2003-2004年の日本の大規模介入も、だからこそできたのでしょう。また当時は世界的に経済は好調だったので、非難されることはなかったのでしょう。同じことを金融危機の今やろうとすれば、袋叩き間違いなしですが^_^;。

というわけで、貿易統計から見て奇妙な均衡状態にある今の日本ですが、ここ暫くの政策運営如何で、均衡状態を維持できるかどうかで変わってくると思われます。具体的には資本効率が低いと言われる日本企業の資本効率を高め、労働者1人当りの資本装備率を高め付加価値を拡大することが重要です。外需頼みで国民窮乏化政策を取るのか、高齢化を睨んだ消費主導型経済に舵を切るのかが問われております。その意味で今回の危機に立ち向かうには、バカ殿様宰相では無理でしょう。早く選挙やってくれ。

というわけでやっとリニアですが^_^;、JR東海はリニアの輸出に意欲を示しているということで、日本車輌を子会社化したわけで、理由としてリニア開発の技術情報の秘密保持を掲げております。どうも本気でリニアを売り込む算段のようですが、経済の客観情勢は上記の通り最悪です。そもそも今後の輸出は外貨稼ぎよりもグローバル化のプロセスとしての意味合いの方が重要です。高齢化が進む日本では、為替市場での円高維持こそが重要なんです。そうすれば資源が安く買えて国内消費市場が活性化されるわけです。

その意味でリニアに未来があるかどうかですが、まず欧米では圧倒的に鉄道ストックの厚みがある中で、部分的な改良や高速新線の建設は行われるものの、基本は既存ストックの活用がメインということで、日本流の新幹線ですら出番なしです。そういった意味で欧州方式の線路に日本製車両という組み合わせとなった台湾高鉄で、日本の新幹線技術を欧米流のデファクトスタンダードに摺り合わせるチャンスだったにも拘らず、途中で放り投げてしまいました。JR東海贔屓と見られる曽根悟教授でさえ、鉄道のグローバル化の意義を認め、相互に技術を理解して良いとこ取りすることを"国際化"と定義しているのです。リニアでいかに高度な技術を実現したとしても、システム全体がブラックボックス化された高価なソリューションになれば買い手は現れません。日本の家電や携帯で言われる"ガラパゴス化"になりかねません。

この辺は今までも散々指摘してきたところではありますが、鉄道ジャーナル12月号の佐藤信之氏の論文でヒントとなる部分がありまして、新たにこの記事を書き起こしました。つまり東京―名古屋間の中央リニアの整備費用と言われる5.1兆円の謎についてです。佐藤氏が指摘するのは、1992年10月にJR本州各社が新幹線保有機構から新幹線施設を買い取ったわけですが、その際にJR東海が支払った買取り代金が5.1兆円で妙な符合があるという点です。

このうち4.5兆円は25.5年、残り0.6兆円は60年の半年賦元利均等払いとなるわけで、4.5兆円分の支払が2017年3月で終了するということが重要です。その分のキャッシュフローが余剰となるわけですから、これをリニア実現に利用しようということのようです。ということで、ザックリ言って5.1兆円で実現可能なリニアから逆算された結果としての東名間最短ルート建設ということであれば、JR東海の意図が見えてきます。

つまり全額自己資金での費用負担の上限を示すことで、長野県から出ている伊那谷経由で駅も増やして欲しいという要望や将来出るであろう大阪延伸の要望などに対して、自己負担の限界を示すことで補助金を引き出そうとしている可能性があります。つまり敢えて政治圧力を利用しようということですね。それを証明するような動きもあります。

JR東海、リニア3ルート併記 経路綱引き本格化
リニア新幹線、直線ルート軸に協議 JR東海が国交省に報告
本来は新幹線整備は法令により国の事業とされるので、手続上は後者の国交省への報告が必要なんですが、それ以前に報告内容を明らかにし、自民党の部会へ説明したりしているのです。政治的意図ありありです。またこのような行動は企業としていささか不謹慎でもあります。というわけで、リニアと長崎の間の記事で指摘しなかった視点ですが、整備新幹線は政治新幹線だと確信する次第です。

ま、狙いとしては、政治圧力を利用するとともに、世論喚起して事業推進の後押しにと考えているのでしょうけど、間違ってもガラパゴス化を来すような企業の投資行動に公的支援なんかしちゃいけませんね。

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Sunday, October 19, 2008

資本主義の聖地を目指す京阪電車

金融危機に揺れる2008年秋ですが、大阪の中之島に鉄道が乗り入れます。厳密には4本もの地下鉄が通過する大阪中之島ですが、軟弱地盤に阻まれて駅の設置はできませんでした。意外な鉄道空白地帯ゆえに今回の京阪中之島線の開業は、大阪にとって大きなニュースといえます。

前の記事で中途半端に取り上げましたが、中之島といえば江戸時代の廻船問屋の集積地であり、主にコメの取引で財を成したのですが、江戸時代のコメは各藩が集めた年貢の一部を幕府に上納、幕府も藩も家臣にコメを禄として配分していたわけで、国家財政を司る貨幣の役割もありました。

武家は禄として受け取ったコメを廻船問屋に売却し、金子を得て家を維持していたわけですが、間抜けなのは、そうして収穫期にはまとまった売り物がでますから買い叩かれ、得た金子で日常食用のコメを買っていたわけで、わざわざ商人に儲けさせていたわけです。儲けの分だけ搾取されていたわけですから、武家は常に火の車、加えて幕府から普請(土木工事)の命令を受けて散財させられていたのですからたまりません。国の公共事業に付合わされて財政を悪化させる地方自治体の如しです^_^;。

言うまでもなく諸藩の謀反を恐れた幕府の統治政策ゆえですが、こうして藩に普請を押し付けていた徳川幕府はさぞかし裕福だったと思いきや、藩からの上納米は役人への報奨で消えて、財政難にあえいでおりました。それゆえ度々コメ相場で財を成した廻船問屋などの商人から借金をしていたわけですが、当然付加価値を生まない近世の統治システムでは返す当てがあろう筈はなく、かくして度々小判の改鋳(通貨切り下げに相当)が行われ、必然的に悪性インフレに悩まされておりました。その結果財政はむしろ悪化して、最後はデフォルト(債務不履行)で切り抜けるということが繰り返されました。いわゆる徳政令です。ま、不定期の法人税と捉えれば、それなりに制度インフラと見なすことも可能ですが。うーん、何か日本の統治機構って、当時とあんまし変わらんなぁ。

これを商人の側から見れば、ある種政治的なデフォルトリスクと見なせます。また当時の農業は基本的に封建的制度下での地縁的労働集約に依存して維持されていたわけですから、働き手の必要な農家は基本的に多産で、過剰人口を抱えていたのですが、当然年貢米を召し上げられている状況で、十分な食糧確保は難しかったわけです。また農業技術も未熟で、風水害などで当てにしていた収穫が不足することも度々あったわけで、そうなれば年貢米の取立てが圧迫され、藩や幕府から借金の申し出も増えるわけで、貸すのはいいけど貸出が増えれば当然デフォルトリスクも高まるわけで、かくして毎年の各地の作付け状況や生育状況、風水害の有無などの情報を頼りに、リスクヘッジの必要性が高いコメ取引の先物市場が形成されます。世界初のデリバティブ取引と言われます。

かように金融先進国だったはずの日本ですが、1940年ごろからのいわゆる戦時体制で伝統をかなぐり捨て、中央官僚による規制と計画経済の体制へ移行、戦後も続きます。特に銀行の護送船団方式方式は改正日銀法が施行される98年まで続いた窓口規制で、民間の商業銀行といえども、日銀の指導に従って融資先を選別すればよい仕組みでしたので、金融機関に求められるリスクテイク能力が失われ、バブル崩壊後の長期にわたる経済停滞を招きました。今回の金融危機でも、直接金融中心で債券での運用が主体の欧米銀で、疑心暗鬼で市場機能が毀損した現状に対する緊急避難策として時価会計の凍結措置がとられたのですが、融資が中心で債券よりも株式保有が多い邦銀の間から歓迎の声が漏れるのが情けないですね。融資や株式は凍結対象ではありませんし、そもそも邦銀の財務は健全ではないのかい。さすが現役閣僚が90年代の日本の不始末を自慢する国だけのことはあります(笑)。

というように工業化以前の近世にまで遡る日本の資本主義ですが、中之島はその中心だったわけです。現在も日銀大阪支店や造幣局を中心に銀行が多数店舗を構える金融街です。当然多数の通勤者がいるはずですが、従来は近隣駅からの徒歩通勤とならざるを得なかったわけです。そこへ直接乗り入れる新線ですから、注目度は高いわけですね。

今年開業の新線の中では、東京メトロ副都心線との対比が適切でしょうか。こちらも従来はJR山手線で結ばれていた東京西側の池袋、新宿、渋谷の3つのターミナルを結ぶ路線という意味で従来とは毛色の違う路線ですが、こちらはどちらかといえば再開発ブームに乗った大江戸線現象のコンテクストで見ることが可能ですが、軟弱地盤で既に金融街が形成され、一方東京の副都心ほど商業エリアとしての意味は薄い中之島は、見方によっては阪神福島などで進む再開発事業との関連性もあるのかもしれませんが、ややニュアンスが異なります。路線立地からいって、開業日の19日は本来の利用者が見込めない日曜日でもありますし、開業後何ヶ月かしてからの平日の状況で判断する必要があります。

同時に京阪にとっては、寝屋川信号所までの複々線が天満橋で途切れていて、複々線の輸送力を活用し切れていなかった状況の打開という意味があり、潜在的な需要は期待できるわけです。従来、京橋でJRへ流出していた利用者を梅田至近の新設4駅に運ぶと考えれば、ターミナル容量拡大による需要掘り起こしは期待できます。その意味で大阪市営地下鉄千日前線と競合する阪神なんば線よりも有望と考えられます。

元々京阪はインターアーバンを目指していたのですが、日本の大都市では市内交通の市営主義が強く、20世紀初頭にアメリカで爆発したインターアーバン(都市間電車)が、都市中心部へ直接乗り入れていたのに対し、京阪でいえば天満橋での市電との連絡で我慢せざるを得なかった歴史があります。戦前にも梅田進出を画策して果たせず、子会社の新京阪鉄道も、国鉄との競合を理由に鉄道省から京阪本体とターミナルの分離が求められて大阪天神橋(*)と京都大宮というやや中途半端なターミナル立地に甘んじていたのですが、これが阪急との戦時統合後、戦後分離時に路線がつながっていないことを理由に阪急に召し上げられてしまうという不幸な歴史を重ねた京阪です。

*= かつての天神橋駅は、駅ビルを要する2面2線のコンパクトなターミナルでしたが、駅ビル正面ファサード部は壁が抜ける構造になっていて、都心方向への延伸の意思が認められます。
というわけで、興味深い新線の開業ですが、今後に注目したいところです。

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Saturday, October 11, 2008

気がつけば半値、株安が止まらない

最近、母が保有する株を売却したんですが、そのときの話から始めます。母は自ら株を買うような人ではなく、保有株も父が生前に名義変更で母に持たせたものだったのです。高齢で要介護の母にとっては、株で持っていても意味がないわけで、年金暮らしで急な出費に備える意味から、現金化するということで、私の証券口座で売却したんですが、これが面倒な手続きオンパレードで、結局2ヶ月もかかってやっと終わったのです。

四半世紀前に購入した株ですから、まずは履歴を調べて、取得日の終値を取得価格と見なすことで特定口座へ入庫、名義変更も売却目的ということで、母の株主履歴を引き継ぐことで、贈与税を免除されます。このときの証券窓口でのやりとりで、見なし取得価格が使える一般口座を利用すれば、手続きも簡単だし、見なし取得価格が高めに設定されているので、納付税額も少なくて済むと言われたんですが、ホント証券窓口の尾根遺産^H^H^H^Hお姉さんはわかってないです^_^;。

確定申告して申告納税すれば、確かに国税は安くなりますが、確定申告自体の手間もありますし、確定申告すると、申告内容が地方にも共有されて事後的に住民税が課されたり、年金天引きの介護保険や高齢者医療保険が増額されるわけですから、その方が困るわけです。源泉分離課税を選択する方が合理的なんですが、目先の金額の大小しか見ていないんですね。

日本の金融関係者にはこの手の話は多数ありまして、フローとストックは別物という常識が通用しないことにめまいを覚えました。四半世紀前に取得した株式は、価格はおおむね4倍相当になっておりまして、確かに納付税額は決して小さい額ではないんですが、現行軽減税率で10%(本則20%)が売却益から天引きされて処理が終わる特定口座取引の方が、手続上もメリットがありますし、通常の貯蓄と比べても、配当を受け取りながら期間中の物価上昇率を超えるキャピタルゲインが得られているのですから、多少の現金の目減りは問題ではありませんし、むしろ生活の糧となっているフローとしての年金受給額の手取りが減少する方が痛手です。この辺の当たり前の感覚を投資家と共有できない金融マンが多すぎます。むしろ投資家のはやる気持ちを抑えつつ、喜ばれる結果を得ることの方が重要ではないでしょうか。、ま、現実は上から言われたノルマに追われているんでしょうけど。

元々個人の株式保有の理由は、貯蓄の代替であるわけで、いくら株式を持っていても、またいくら保有株式が値上がりしても、それで直接食べ物や衣料が買えるわけではありません。売って現金に換えて初めて使えるのであって、今回の株安でも、お金が消えたかの如く言う人がいますが誤りです。株、債券、不動産などの資産は、貨幣の価値の貯蔵の側面を代替するのが本来の姿です。

しかし上場大企業同士ならば相互の信用情報が既知であるという前提で、相対で保有する資産を直接交換することも可能ですし、実際に例えば株式市場に無用な圧力を与えない目的で市場外取引は結構頻繁に行われます。つまりは価値の交換手段としての貨幣の機能を一部代替しているわけですね。米国発金融危機というのは、ザックリ言ってこの企業間の信用に基づく相対取引が、相手の信用情報に不信が芽生え機能不全に陥ったということです。中央銀行がいくら資金供給しても追いつかないほど非正規の信用創造がされていたわけです。

そんな中で流れた株式全面安のニュースですが、今回はパニックになっているようですね。米金融危機の連鎖ではあるんですが、今回の日本では大和生命の破綻のニュースが不安心理をかきたてた結果と考えられます。前日には上場REIT(不動産投資信託)の投資法人破綻がありましたし、不安材料は確かにあるんですが、それぞれ個別問題であって、連鎖の可能性はほとんどありません。

というわけで、今回も株の仕込みのチャンスかもしれません。特に相対的に高値で掴んだ金融株の買い増しを狙っておりますが、これは同時に平均購入価格を下げる意味もありますので、相場の状況を見極めたいところです。

ただし日本株の注意事項は、持ち合い株問題があるということです。安定株主対策の美名のもと、事業会社同士が株式を持ち合うことで、市場に出回る株式数が制限されれば、受給がタイトになって株価が下支えされますし、昨今は買収防衛策としても持ち合いがされているのですが、そもそも買収を仕掛けられる企業は、キャッシュフルだったり資本効率が低くて利益率が低かったり、場合によっては保有資産額を下回る時価総額しかなかったりで、経営の不在にこそ理由があるんですが、お構いなしに持ち合いを増やしてきた現実があります。

今回の株安はその結果企業の株式含み損を拡大することとなり、株価半減ならば減損処理で損失を確定させなければなりませんから、当然決算予想の下方修正を迫られ、それがさらに株安を助長するという負のスパイラルに陥る可能性があります。今回の株安もそれで助長された側面があると考えられます。持ち合いに使うお金があったら、自社の将来に備えた投資をすべきなのに、そういう意識が希薄なのは困った問題です。

今月は京阪中之島線が19日に開業します。中之島といえば、江戸時代は廻船問屋の集積地だったところです。廻船問屋というのは、船会社と商社を合わせたような業態ですが、主にコメの売買で収益をあげておりました。このあたりはフラット化する日本の黄金律という記事で取り上げましたが、コメの流通を通じて実現した資本蓄積が、日本の近代に多大な貢献をしたものです。今、地盤沈下がいわれる大阪経済浮揚の起爆剤になるかどうかは定かではありませんが、大都市圏の交通ネットワーク強化という意味で、副都心線や来春の阪神なんば線などと共通点があります。

ただし従来鉄道駅のなかった中之島ですから、既存線との連絡は渡辺橋駅と地下鉄四つ橋線肥後橋駅との地下連絡通路接続のみですから、直接的なネットワーク強化にはなっていないのですが、JR東西線北新地も徒歩圏ですし、中野島駅もJRと阪神の福島駅と徒歩範囲という微妙な位置関係ですから、特に駅勢圏の競合するJR片町線との間で乗客の転移が起こる可能性はあります。開業後どのような変化があるか見ものです。

将来構想として西九条延伸さらに新桜島から北興テクノポート線構想に沿ってWTC延伸などが取り沙汰されておりますが、現時点ではもちろん何も決まっておりません。WTC(ワールドトレードセンター)といえば赤字三セク全国ワースト1の大阪市のお荷物ですが、先日橋下知事が県庁新築計画を凍結してWTCへ入居という注目すべき発言をしております。実現すれば、既存施設の活用で大阪府、大阪市双方の懸案が解決することになりますし、オリンピック招致がコケて開発が滞っているウォーターフロント開発が活性化する可能性もあります。

というわけで金融危機のさなかではありますが、将来の新たな予感を含む京阪中之島線は、楽しみな存在といえそうです。

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Monday, September 15, 2008

ロス列車事故は対岸の火事?

えーと、どうにも悲惨な事故ですが、情報が錯綜しております。

通勤列車側が信号見落とし 米衝突事故、死者25人に
信号無視原因か ロス列車衝突
米列車衝突、原因は通勤列車の信号見落とし…死者25人に
運転士、信号見落としか=事故1分前にメール送信-米加州
おそらくニュースソースは海外通信社の配信記事で同じなんでしょうけど、メディアごとに取り上げ方が微妙に違います。現場はU字カーブで見通し悪く、手前に行違い信号場があったそうで、鉄道を知っていれば、これだけで通勤列車側が何らかの理由で停止信号を冒進して貨物列車と正面衝突した事故とわかります。現場の見通しの悪さは直接的には事故には関係しません。

また事故1分前に携帯メールを送っていたことが証言されてますが、このことと信号見落としの関連性については、現時点では断定は避けるべきでしょう。それよりもATSが未設置だったことで、安全対策の不備が疑われます。またそこには同じ線路を複数の事業者が共同使用する米国の鉄道事情もあります。加えて日本の鉄道事業法では、設置基準こそ尼崎事故以後ですが、ATS設置が義務付けられておりましたから、鉄道事業に対する政府の関与の度合いに違いがあります。当局は30年前から設置を推奨しながら、コスト負担を嫌った事業者の不作為で放置されていたわけです。

日本でも先日JR西日本山崎社長をはじめとする関係者10人が兵庫県警から書類送検され、検察が起訴するかどうかが注目されてますが、米国での事故の責任の取り方には興味があります。

JR西社長ら書類送検 尼崎脱線事故、業過致死傷容疑で10人
と同時に、この事故を契機にATS設置基準が定められ、私鉄各社は速度照査機能を持たせた保安装置の更新計画を発表し準備にかかっておりますし、従来予防安全重視の立場から、軽視されがちだった衝突安全についても、JR東日本E233系のクラッシャブルゾーン設定やJR西日本の223系でも今年7月落成分から車体強度向上仕様となるなどの変化が出ておりますが、他社への波及はこれからでしょうか。ただし元々衝突安全を重視していたアメリカの構造規則で作られたメトロリンクの客車が、外観は維持しながら機関車が食い込んで中身がグチャグチャになったように、車体強度強化の効果は過大評価できないこともまた抑えておくべきでしょう。

あとロス通勤列車の運転士が下請会社社員だった件ですが、いかにもアメリカらしい労働市場の流動性の産物と見ることも可能ですが、むしろ斜陽産業だった鉄道事業ゆえの問題とも見れます。鉄道事業従事者とりわけ運転要員については、専門性が高く育成に長い時間と費用がかかる点はどこの国でも同じです。年功序列が崩壊したと言われる昨今の日本でも、こと鉄道に関しては徒弟制度が健在です。新入社員は現場に配属されると、その現場のベテラン社員を師匠としてみっちり基礎を仕込まれた上で、本人の希望と能力に応じて、地上職から列車乗務職へ、車掌から運転士へとキャリアアップする仕組みで、その中で必要なスキルを身につけるわけです。

この仕組みは、若い社員にコストをかけて育成するわけですから、鉄道事業者の負担は重いわけですから、人口増で右肩上がりの需要増を見込めるうちは良いとして、需要増を見込めない成熟段階になると、即戦力の中途社員や定年後の嘱託社員を多用することで、当面の負担の軽減に走りたくなるわけです。実際国鉄改革の前後で新規採用が手控えられたJR各社では、30代40代の中堅社員が手薄で、定年間近の高齢社員と経験不足の若手社員で技術継承に齟齬を来す状況が見られました。思い出して欲しいんですが、JR尼崎事故の高見運転士の若さが事故を引き起こす要因の一つであったことです。

あとあまり知られておりませんが、2005年春に阪急電鉄などから運転士などの労働者派遣法の規制緩和要求が出されていたんですが、尼崎事故後に国土交通省が門前払いをしたことで沙汰止みになりました。もし認めらていれば、日本でも派遣運転士が登場したかもしれないですが、認めるべきではありません。人材育成は企業の責任です。鉄道事業のような公共性の高い事業の場合、人材育成は事業継続のための投資でもあるわけで、これを外部に依存すれば、むしろ事業の継続性を阻害します。会計規則上従業員の技能などはバランスシートに反映されないのですが、事業は人の格言は、1分前メール送信でわかるモチベーションの低さから、ロス列車事故でも明らかでしょう。

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Saturday, September 13, 2008

川崎重工イーエフセット開発、日車とは違います

結構ビッグニュースです。

時速350キロの高速鉄道車両、川崎重工が開発着手
世界市場向け350km/h新型高速鉄道車両「efSET」の自社開発について
川崎重工は鉄道車両メーカーとしては珍しく、自らリスクを取って市場開拓を行う姿勢が強いですが、ついに高速車両まで自社開発することとなりました。商社の助けを借りながらの海外展開も熱心で、ニューヨーク市地下鉄の車両更新をほぼ独占受注するなどの実績を重ねておりますが、それだけに海外市場の難しさを知りつつ、国内では為し得ない高収益も可能というのをわかっているのでしょう。

海外向け高速鉄道車両では、日立の英国向けClass395電車が既に納入され、2009年12月予定の高速新線CTRLで営業開始予定です。日立のそれはAtrain技術を応用した廉価版で、IC225の置換え用という位置づけですが、efSETは350km/hという世界最高峰の高速運転を前提としたものということで、基本設計を2010年3月までに終え、設計検証も行うということですから、多分試験車両が作られるものと思います。さて試運転はどこでやるんでしょうか。

世界的に鉄道の復権は進んでおりますが、ひとり日本だけがその波に乗り遅れていた感があります。それが川崎重工のチャレンジで変わるかどうか、楽しみです。世界に目を向ければ、仏アルストムのAGVや独シーメンスのICE3などに留まらず、スペインもAVE350と称するタルゴトレインの改良型を独の協力を得て実現してますし、伊フィアットのペンドリーノやETR500、スウエーデンABBのX2000など百花繚乱です。今後BRICsやその他の新興国、資源国などで鉄道投資が続くのは確実で、既に陣取り合戦は始まっているといえます。

その中で台湾新幹線を投げ出した某社は、リニアを夢見る引きこもり自閉症児がごとき対応ですが、川重の試験車両の試運転には協力しないだろうなあ。伝え聞くところでは、リニアをアメリカに輸出したいらしいという話はありますが、アメリカでは既に貨物鉄道の保有する線路を利用した旅客輸送を行っている地域があり、事故報道で話題のメトロリンクも、カリフォルニア州南部のロスアンジェルス近郊輸送を担う旅客鉄道事業者で、いわゆるモーダルシフト政策で公的支援を得ております。

アメリカは貨物鉄道がインフラを保有し、Amtrakやメトロリンクなどが線路使用料を支払って旅客列車を運行するという日本のネガフィルムのような鉄道事情ですが、貨物鉄道はランドブリッジと称される産業インフラでもあり、船舶やトラックに対して圧倒的な競争力を持っている存在でもあり、新たにインフラ投資する必要は低いでしょう。世界を見ればリニアの入り込む余地はあまりありません。

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Friday, September 12, 2008

バスで取り過ぎ昨年春から

前の記事の続報です。

パスモの過徴収、07年春に把握
ちょっとひどいですね。PASMOサービスが始まってすぐの4月に乗客の苦情で発覚、バス共通ICカード協会(以下「協会」と記す)は大きな問題と思わず公表せず、5月にICカードで決済未了時に取り消し処理をしないよう通達し、12月にはエラー音を他のものと区別できるようにしたが、「運転士のミス」はなくならず、今年7月まで放置したといいますから、ひどすぎます。

こうなると何のためのPASMO導入だったのかを問いたくなります。少なからぬ初期投資をしながら、「運転士のミス」を増やすだけなら、むしろやらない方が良かったとさえ言えます。そもそもバス事業は人件費で売上の8割を占める労働集約型産業です。鉄道など他の交通事業と比べても、人件費比率が飛び抜けて高いのです。これは人口減少社会では、持続可能性が極めて厳しいという意味でもあります。

人口減少下では乗客減も心配ですが、当面の高齢化は運転免許返上などでむしろ追い風になります。それよりも運転士や整備士などの確保が難しくなることの方が問題です。解決策があるとすれば、運転士に高給取りになってもらうほかありません。そのためにはより大勢をより速くより遠くへ運ぶということになります。1人当り乗車人キロで表現可能です。この観点から、単位時間あたりの走行キロを稼ぐ高速バスの収益性の高さがわかります。

その一方で一般道を走る一般路線バスの収益性は低く、大都市圏では表定速度10km/h台も珍しくありません。とはいえ一般路線から撤退するわけにもいきません。むしろ都市交通の一部として鉄道駅を起点とするフィーダー輸送には一定に需要があり、1台のバスで何往復もするシャトル運行であれば、効率性は高まります。実際駅と団地を結ぶ路線などで、そのような路線は少なからずあります。

また鉄道では乗換が発生するとか、大回りしなければならない区間で直通や短絡ルートを構成する場合なども、一般に利用度が高い傾向があります。許認可事業である路線バスで、認可路線を維持するために漫然と運行している路線は、実は結構多かったりします。ICカード乗車券は、そんな現状を変えるインパクトを持つツールであるわけで、その意義が事業者に理解されていなかったというのが残念です。協会は単なる調整機関に過ぎないのでしょうけど、バス事業者の意識の低さは残念です。

せっかく多額の初期投資をして資本装備を積み上げても、労働投入と代替的でなければ生産性の向上にはつながらないわけで、結果的に運転士の賃金も抑制せざるを得なくなる、とすると苦労が多くて稼げない業種ということで、運転士の確保が難しくなる道理です。そこから脱却することが、バス事業の大きな課題であるはずですが、現状で事業者にその意識はなく、システムを追加して「運転士のミス」を増やしているのですから、バス事業の将来を悲観したくなります。

システムは改良すれば済むわけですが、事業者の意識は簡単には変わらないと思います。鉄道を補完するバスの役割はけっして小さくはないので、今回のことを教訓にしてほしいところです。

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Thursday, September 11, 2008

バスでPASMO二重引き落とし

PASMO導入でイオカードどパスネットと共通バスカードが一つになってから1年半、元々鉄道系が乗車券に対してバスは回数券と違いがあったわけですが、これは盲点でした。

バス運賃、パスモで取り過ぎ1100万円
これはPASMOやSuicaをカードリーダーにタッチするときに、中途半端だったり、複数カードの二重読み取りなどでエラーとなったときに、再度タッチして正常処理とすべきところ、運転士が取り消し処理をしてしまうと、運賃が引き落とされてしまうため、再タッチで二重取りとなってしまうわけです。

記事では運転士のミスとなってますが、共通バスカードではエラー処理で取り消し処理をして一旦カードを排出してから再度リーダーに通す仕様ですから、これをミスと言うのは酷でしょう。マン=マシンインターフェースの設計ミスです。バス各社はシステム改修を行うことにしています。

私事ですが、最近うっかりバスカードの残高不足で追加支払をSuicaでと申し出たところ、運転士がかなり焦ってタッチを制してテンキーを操作したことを思い出します。運賃箱のディスプレーでも、SuicaやPASMOでタッチしたときの画面は、現金やバスカードのときと全く異なるものになっていて、処理系が別であるようです。システムの仕様上やむをえないのかもしれませんが、ミスを誘発する可能性はありそうだと思い、PASMO対応のバスでもバスカードで利用するように気をつけておりましたが、案の定でした。

報道によれば7月に乗客からの照会で発覚したそうで、PASMO導入事業者全社で起きていたそうです。この辺はシステム設計の難しさなんでしょうけど、疑問なのは処理系が異なるならばあえて既存の運賃箱システムと切り離して対応できなかったのだろうかということです。日本のバスの運賃箱は元々ハイテクの塊りで、バラ銭を投入しても即座に運賃が表示されるなど乗務員支援の観点からは優れものには違いないのですが、そこへ鉄道から移植されたICカードシステムを後付けしたことで、基本思想の異なる処理系を並存させなければならなかったことが、今回の事態を招いているのではないでしょうか。何でも一緒にすればよいとは限らないわけですね。

これはバス会社の責任なのかどうかは微妙ですが、そもそも運転士が1人1人運賃収受することを前提としたパッセンジャーフローの仕組みは、運転士に過度のストレスを与えるものでもあるわけで、欧州を中心に乗客のセルフチェックを前提とした信用乗車システムが定着していれば、かくもハイテクな運賃箱は必要ないわけです。また運行管理上も停留所での客扱い時間を考慮した運行ダイヤにせざるを得ませんから、道路交通の流れを無視した低速運行が見られるなど、生産性を高められない状況にあります。その結果バス運賃は割高にならざるを得ず、運転士に負担に見合う賃金を支払うことも難しくなっているわけです。これは同時に乗客にとっても、本来はもっと低価格で高サービスが受けられる可能性をみすみす逃しているのかもしれません。

lこのあたりを考えると、そもそもPASMOで鉄道とカードの共通化をはかる意味は何だったのかを考えざるを得ません。カードは共通化されても、乗継割引があるわけではなく、それぞれの独自の閉じた運賃体系の中で、決済だけを共通化したに過ぎないんで、現状では乗客側のメリットがはっきりしません。

一応バスカードの割引部分相当のバスポイント(*1)やバスチケット(*2)という制度は導入されているものの、乗客に理解されているものかどうかわかりません。

*1 =毎月1~末日の間で、バス利用金額10円につき10ポイント付与される。
*2 =バスポイント1000ポイント毎に100~450円相当のバスチケットが付与される(10年間有効)。バスチケットはバス乗車時に優先的に引き落とされ、バスポイントは付与されない。別表参照。










バスポイント バスチケット
1000 100
2000 100
3000 100
4000 100
5000 450
6000 170
7000 170
8000 170
9000 170
10000 170


正直申し上げまして、使い勝手はバスカードよりも後退してます。バスポイントが1月単位でクリアされてしまうことや、バスチケットが付与されると、乗車時に優先的に引き落とされるので、5000円相当の乗車ではバスポイントは4600ポイントにしかなりませんので、かなりの頻度で利用しないと、バスカードと同等の割引を受けられません。現時点ではバスカードは期間指定がありませんので、乗客の立場としてはPASMO/Suicaへ全面移行することを躊躇させます。折角多大な初期投資をして、乗客に定着しなければ、結局高くつくのではないでしょうか。

また対鉄道や、バス同士の乗継割引などで、積極的に需要を掘り起こすことをやってほしいですね。結果的にかなり詳細な個人レベルのパーソントリップが捕捉可能ですから、地点間のOD表(発着地マップ)を作成して輸送計画に反映させるなど、攻めのマーケティングにデータを活かしてほしいと願います。

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Thursday, September 04, 2008

リニアで低炭素社会実現のウソ

何か首相が辞めたらしいんだけど、そのドサクサでこんなニュースが流れてます。

リニア中央新幹線:年内本格調査へ 政府、慎重姿勢を転換
うーん、事態はあんまり変わらんと思うぞ。

そもそも総合経済対策ってのが曲者でして、この言葉は小渕政権以来でしょうか。当時の小渕首相は「私は世界一の借金王」とシニカルに語っていたように、現在に至る財政赤字のかなりの部分を作った政策です。当時山一證券の破綻など金融危機で実体経済が冷え込んでいたことから、下支えのために大規模財政出動が行われたわけですが、効果はありませんでした。そりゃそうです。これだけ大盤振る舞いすれば、後に大増税が待ち受けていると誰しも感じます。それに備えて貯蓄に励むだけですから、消費は低迷し、株価も冴えないということになります。そういえば景気後退を政府も認めたように、状況は似ています。

公明党発案の地域振興券なんてのもありましたが、今回も定額減税が提案されております。しかも規模も財源も決まってなくて、ただやるということと、財源その他は年内に決めるということを決めただけというんですから、ほとんど選挙向けのリップサービスです。そもそも11.7兆円という規模を謳いながら、補正予算を睨んで、いわゆる真水の財政出動規模は1.8兆円、これを赤字国債発行せずにやろうということです。そのためになにやら怪しげなものがゾロゾロと潜んでいて、季節はずれの納涼ミステリーです。

それなら財政出動の1.8兆円だけ言えばいいものですが、総合経済対策と言うからには、景気の良い数字が並んでないとカッコつかないということです。しかも中身は各省庁の作文をホチキスで綴じただけ、例えば中小企業対策で資金繰り支援のための信用保証制度ですが、元々中小企業金融公庫の制度融資としてあるものを、信用保証枠を拡大しただけです。これは実は中小企業の救済にはならない制度でして、銀行が窓口ですから、中小企業が相談に行って、自行では貸せないからと斡旋するケースが多いんです。悪質な場合は斡旋して融資が実行されて手にした資金を自行向け債務の一括返済に回させ、事実上の融資の付け替えをするケースまであります。つまりは銀行の貸し渋り、貸しはがしを助け、リスクを移転して破綻したら税金で補填というとんでもない制度です。それもこれもバーゼルIIの自己資本規制で資産の格付けに応じたリスク度合いで引き当てる制度の弊害でして、景気悪化で融資先の格付け低下で自己資本比率を守らなければならないのですが、このルール自体日本の押し込んだものです

あといわゆる財政出動の真水部分の1.8兆円も、赤字国債には頼らないけど建設国債ならオッケー(与謝野経済財政担当相談)というから呆れます。赤字国債と建設国債の違いって、前者は新規発行を法令によって定めなければならない(ゆえにねじれ国会では実現が難しい)のに対し、公共事業の円滑な執行のための後者はその必要がなく、金利が建設利息として事業費に盛り込まれているということですが、もちろん借金に違いはなく、野放図な発行が財政に負荷を与えるのも同じです。あとは予備費の充当などが考えられているようですが、それだけでは足りず、一部特別会計からの繰り入れも使うようですが、いわゆる霞ヶ関埋蔵金論争に火をつけそうなので、明示できないのでしょう。

あとこれも申し上げておきたいんですが、燃料費高騰に苦しむとされる農業、漁業、運送業への支援が謳われているんですが、運送業への支援を今言うならば、なぜに道路特定財源の暫定税率を強引に復活させたのでしょうか。また高速道路料金の値下げで道路の借金返せるんかい。加えて農業や漁業で使う燃料の軽油引取税は猶予されていることも忘れてはなりません。元々負担を逃れていた者をなぜに政府が助けるのか(怒)。

とまあツッコミどころ満載の官僚作文の中に、リニアが紛れ込んでいたわけです。笑っちゃいますね。ま、報道のように手続きとして一歩前進ではあるんですが、基本計画線である中央新幹線を整備計画線に格上げするための調査について、現時点では地質・地形調査に限定しているものを、全般的な調査を認めるという内容でして、確かに財政出動は必要なく、命令に応じてJR東海が自費で実施するわけですから、財政は痛まないし、低炭素社会実現をアピールできるし、良い事ずくめに見えます。それに飛びついたのが辞めた人だったというオチですね^_^;。

リニアが低炭素社会実現に寄与しないという反論は一応真面目にしておきます。一番重要な点は、既に日本では人口減少が始まっていて、かつグローバル化でかつて日本の得意分野だった工業製品の生産、輸出に新興国が低賃金を武器に参入してきていて、現在の産業構造を維持できない局面にあるわけです。いわゆる工業化の果実の収穫の持続可能性に疑義が生じている状況で、実際、工業集積地の東海道ベルト地帯を貫く東海道新幹線の利用者の実数も長らく横ばいが続く中、新たな固定設備を設けても、需要がそれに追いつかないのは明白です。つまりは中央リニアは東海道新幹線と需要を食い合うだけの存在にしかなりません。

にもかかわらず電力消費量が新幹線の3倍と言われております。つまり電力消費の絶対値は純増する一方、需要が追いつかなければエネルギー効率はそれだけ落ちるわけです。クールアース実現を謳いながらアースヒーターにしかならないわけです。

もう一つ指摘しておきますが、東海道新幹線建設時に、中部電力管内の電力不足解消を目的に建設されたのが浜岡原発です。新幹線の3倍の電力消費を賄うためには、ザックリ浜岡の3倍見当の発電所が新たに必要になるわけです。仮に原子力発電所を建設するとして、東海地震などの警戒地域が被る中央新幹線沿線では難しいでしょう。かといって他地域に建設するとなれば、尚のこと反対に遭う可能性が高くなります。結果的に電力確保を火力に依存せざるを得なくなるとすれば、ほら、CO2増えちゃいました。省エネ逆行ですね。

というわけで、あんまり辞めた人を悪く言うつもりはないけれど、しょせんは思いつきレベルの話です。しょーもなー。ところで辞めたの誰でしたっけ?

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Wednesday, September 03, 2008

ツアーバスに追い込まれるムーンライトながら

1日、衝撃のニュースが流れました。どっかの国の宰相が辞めた方ではなく^_^;、朝日新聞朝刊のこの記事の方です。

夜行「ムーンライトながら」臨時化へ 18きっぷで人気
他紙の追跡取材は今のところありませんので、あくまでも朝日の独自取材記事ということでしょう。気をつけなければならないのは、JR関係者の中身です。運行計画に係わる関係者の話なのか、社内のウワサの類いなのか、記事からは不明です。

そのあたりを留意しつつ、冷静に考えれば、JRからの正式発表がない現状で、検討はされているでしょうけど、決まったわけではないということは言えそうです。青春18シーズン以外の時期の乗車率の悪さは以前から指摘されていたところですから、むしろ特急東海の廃止と運命を共にしなかったことが、この列車の特殊な位置づけを物語ると思います。

簡単に言えば、国鉄時代からある青春18キップですが、意味合いが変わり、現実にはかつて貧乏旅行の経験のある中高年世代を中心に、普通列車限定という縛りの中で、ゲーム感覚で貧乏旅行の疑似体験ができる商品という位置づけになってきてまして、一方地方のローカル線の最大顧客である通学生を失う学休期の余剰輸送力の有効活用という面で、他の伝統的企画商品である各種周遊券などがことごとく見直された中で、青春18は止めるに止められないものになったと考えられます。特に大都市から遠い三島会社にまで効果を波及させるには、ムーンライト××という夜行快速列車はJRにとっても青春18シーズンの必需品となるわけです。逆に言えばそれだけ採算面の厳しいサービス列車でもあるわけで、予定臨格下げは列車の性格からいえば自然です。

記事中にもあるとおり、夜行列車を巡る環境は激変しておりまして、基本的に1列車を仕立てるに足るだけの基礎的需要があるわけではないということはいえます。もう少し具体的に申し上げますと、季節変動などの需要変動要因を加味すれば、ながらのような定員制列車で収益を最大化できる乗車率は7割程度と考えられます。これは需要期に満席で断る乗客の存在を考えれば明らかです。いわゆるチャンスロス(機会損失)が発生する確率を減らし、逆に閑散期の乗客減による売上ロスも少なくするとすれば、この辺の数字jに落ち着くことになります。ながらの場合、需要変動に応じて6~9連に編成を増減してますが、通年固定編成であれば、6割程度の乗車率が収益最大化ゾーンということになりそうです。

夜行バスでは輸送単位の小ささを逆手に、予約の入り込みから予想される適正台数で運行する前提で8割程度の乗車率を狙うことが可能ですから、3列シート29人で23人程度がペイラインというのが目安と考えられます。当然4列シートの青春ドリームや80人乗りのメガドリームではより少ない乗車率でペイラインに乗りますから、収益の上ブレ分を原資とした値下げが可能になるわけです。

さらに昨今増えている格安ツアーバスですが、こちらは旅行会社の主催旅行形式で、ネットによる事前予約による集客というスタイルとなります。夜行高速バスが道路運送法に基づく公共交通であるのに対して、旅行業法に基づく主催旅行で、事前予約が最少催行人数に達しなければ、運行する義務を負わないわけです。加えて規制緩和で新規参入した多くの中小貸切バス事業者から競争入札で運行社を決める形ですから、いわゆる仕入がかなり安く抑えられます。これらの事情でバスの仕入れ価格を上回る水準で最少催行人数を設定する限り、損はないわけですから、リスクを負わない分運賃を安く抑えられます。実はこのツアーバスが問題なんです。

いわゆる規制緩和で、さまざまな変化が生じております。ツアーバスの興隆を「規制緩和の成果」と言ってのける御用学者はおりますが、同じフィールドで異なった準拠法規で争う高速バスとツアーバスの関係は、公正な競争とは程遠いものです。いわば同じピッチ上でサッカーチームとラグビーチームがそれぞれのゲームのルールで戦うようなものですから、こんなものを規制緩和の成果と見ることはできません。本来はツアーバスを乗合類似行為として乗合認可を与え、同等の安全運行義務を課す必要があります。実際はそれには程遠く、実際ツアーバスが絡む事故は増えております。

まぁ無理もないんで、元々レジャーの多様化で団体旅行が下火なところで行われた貸切バス事業の参入自由化ですから、たちまち供給過剰となり、価格競争の叩きあいとなります。元々乗合バス事業者も兼業していて、春秋の団体旅行繁忙期に対して車両が余剰となる夏冬の帰省バスやスキーバスなどで効率よく車両を運用してきた業界秩序が一気に壊れ、歴史ある大手事業者は撤退傾向を強めております。その一方でタクシーやレンタカーなどからの新規参入事業者が増えて価格競争が激しくなり、旅行会社のツアーバスの仕入が安くなりました。その結果車両のメンテナンスや乗務員の労務管理などで無理な運行の請負が横行し、事故を増やしている現実があります。そういった新規参入社に経験豊富なベテランドライバーを雇用する力はなく、経験不足のドライバーが多いのもまた現実です。

この辺は新宿駅南口に高速バスターミナルの記事でも軽く触れましたが、ツアーバスの問題点は声を大にして申し上げたいところです。と同時に、既に輸送量から一定の役割を得ていることもまた事実であり、これはとりもなおさず従来の輸送キャリアのサービスでは掘り起こせなかった利用層でもあるわけで、この辺は各事業者も真剣に考えるべきことがあります。ネット事前予約制は、集客コストを劇的に下げることが可能なわけで、JRのマルスシステムやバス各社の独自システムの高コスト体質を浮き彫りにします。この辺は既存キャリア側に工夫の余地がありますね。

同時に高速バスならば、専用ターミナルやバス停の整備が不可欠ですが、ツアーバスは極端な話駐停車禁止場所での客扱いすらある状況で、この面でも不公正競争となっていると同時に、道路交通の私物化という点で社会正義にも反するものでもあります。こういったことを加味すれば、航空における国際定期便と国際チャーター便の関係のような、包括的なルールの策定が必要です。現状はとても資源の効率配分とかパレート最適とか言えるレベルには程遠いといえます。

あと昨今の燃料費高騰でバスはコスト面が厳しくなっているわけですが、JRバスではそれを逆手に取った値下げに踏み切りました。元々乗合バスの場合は一般路線で人件費が8割と言われるように、燃料費の比率は低く、特にJRバスのような大規模事業者は有利です。加えて中小貸切事業者よりも車齢が若く、整備も良好で燃費も良いわけですから、中小事業者が支えるツアーバスを振り切るチャンスでもあるわけです。こういった観点からすれば、ながらも運行コストの削減に工夫するとして、存続を模索してほしいところです。例えば一時期中央線夜行普通列車を甲府で列車分離して、車両をそのまま駅ホームに据えつけて翌日早朝の一番列車とするなんて奇策が取られたことがありますが、静岡あたりで夜間留置車内開放扱いの2列車に分離して存続させるなどの方法も考えて欲しいところです。

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Tuesday, August 26, 2008

北神急行電鉄経営支援の不思議

公共料金と見なされる鉄道運賃ですが、いろいろと不思議なことがあります。今回はそんな話です。まずは報道チェックです。

兵庫県など3者、北神急行支援継続 路線存続に危機感
この北神急行電鉄という会社は、かなり変わった会社でして、新神戸で神戸市営地下鉄山手線と接続し相互直通していて、第三セクターのような雰囲気ですが、実は純民間企業で、阪急電鉄と神戸電鉄が出資、その後神鉄が2007年に不動産評価損発生で支援停止し、阪急阪神ホールディングスの連結子会社となっております。

とはいえ経営は苦しく、特に高運賃ゆえに利用者が伸びないことが悩みでした。とにかく営業キロ7.5kmで430円という高運賃で、且つ三宮へは市営地下鉄運賃が合算されるので、割高感はかなりあります。そこで1999年に県と市による年間5.4億円の支援を得て運賃を80円値下げし、350円としました。それでも割高ではありますが。

さらに2002年、トンネルを含む鉄道施設を神戸高速鉄道に譲渡し、自らは第ニ種鉄道事業者となることで、資産圧縮を行いました。第三セクターである神戸高速鉄道が第三種事業者として線路保有することで、固定資産税が減免されますから、この面でも支援策の性格があります。

記事にもありますように、1999年からの財政支援は10年間の予定だったわけですが、北神が3億円の経常利益を計上していることもあり、県は09年以降は支援しないと断言して協議会が休止していたものが、ここへ来て復活したわけです。支援がなくなって運賃再値上げとなれば、路線の存続も危ぶまれるということでの歩み寄りのようです。

そもそも北神線は計画段階から不思議テンコ盛りの路線でして、布引(新神戸)から東へ向かって市バス石屋川車庫付近の原田(阪急王子公園駅付近)までの地下鉄計画だったものが、なぜか北へ向きを変えて六甲山へ向かったのです。ゆえに市営地下鉄新神戸駅自体も、当初は新幹線と並行に東西方向に駅ができるはずだったのですが、南北方向に変更され、しかも新幹線下部の施工には旧国鉄から厳しい条件までつけられています。それでも建設され、1988年に開業しました。何らかの政治力学が働いた可能性はありそうです。

阪急と言えば、1970年大阪万博関連で、北大阪急行電鉄でひと山当ててます。北急は一応第三セクターですが、阪急グループが過半数の株式を保有する民間主導の会社で、江坂~千里中央~万国博中央口間のうち、千里中央~万国博中央口間は、計画中の中国自動車道の本線車道予定地に線路を設置し、万博終了後に線路を撤去する計画でした。車両も大阪市営30系の同型車を導入し、万博終了後に大阪市に車両を買い取ってもらう計画でした。それによって固定費負担の嵩む開業直後に特需で投資を回収し、車両売却で資産圧縮してますから、運賃を低廉に抑え、市営地下鉄と合算となる直通客にも負担の少ない運賃水準を維持しています。

この辺は大阪市の市営モンロー主義を逆手に取った感があります。江坂以北は吹田市域に属しますから、市の資産を市外で持つことに対する議会筋への説明が必要です。加えて万博輸送と千里ニュータウン開発関連輸送で、千里線を延伸して箕面線とつないで環状線とする構想を持っていた阪急にとっては、市営地下鉄の北進は自社エリアの侵食と映っていたようです。結果的に第三セクター設立で譲歩したものの、大阪市の株式保有割合を抑え込んで主導権を握ります。

あくまでも推測ですが、この成功体験が阪急を北神線建設に駆り立てたのではないかと思います。既に自動車道の新神戸トンネルが1976年に開通し、市営バスが三宮と箕谷地区を結んでいた状況を、関係が深まっていた神鉄沿線への侵食と映っていたかもしれません。加えて地下鉄の原田延伸は神戸線の並行路線となるわけですから、これを阻止した上で新神戸トンネルのバスに対抗することを考えたのではないでしょうか。加えてウッディータウンなど神戸市北部から三田市にかけての開発計画で発生する輸送需要を、神鉄だけでは捌ききれない可能性があるということで、神鉄谷上駅と三宮を直結する構想が浮上したものと思われます。ニュータウン開発が絡みますので、鉄道建設公団P線工事の指定を受け、利子補給を受けて建設が進みました。

しかし中間駅なしでトンネルだけの鉄道ですから、沿線開発の余地はなく、ひたすら神鉄沿線から発生する利用客を吸収するしかありません。乗客の獲得はあくまでも乗客自身によるルート選択の問題となります。となると7.5kmで430円という高運賃が大きなネックとなるわけです。

こういったケースでは、常磐快速線と緩行線の選択や東急新玉川線開業時のルート選定などで、運賃が高くても速くて利便性に優れたルートが選択される傾向がありましたが、北神線の運賃水準はおそらくそれを突き抜けたレベルだったのでしょう。利便性に優れていても高運賃の北神線ルートは選択されませんでした。さらに神鉄沿線からだと新神戸の市営地下鉄との運賃合算に神鉄運賃の合算が加わりますので、割高感が増すことになります。三田からだと、JRで大阪へ出て三宮へ向かった方が速くて安いなんてことにもなります。かくして県と市による運賃値下げのための財政支援という異例の事態となったわけです。

とはいえ劇的に安くなったわけではありませんので焼け石に水、それでも経常利益を出すまでにはなりましたが、累積債務が300億円以上ある中では、存続がやっとというのが実際です。その間に兵庫県では三セク鉄道の三木鉄道の廃止があり、県が支援を打ち出せないまま廃止を公約した市長が選ばれて廃止が実行されたわけですから、とりあえず利益を出している純民間企業への支援は、県としては納税者への説明がつきにくい状況です。

思えば神戸三田地区の開発計画は、バブルの時代の徒花だったかもしれません。気がつけば国際貿易港としての神戸の地位は低下し、近畿圏の中心都市である大阪市の求心力も長期低落傾向が否めない中で、東京の地価上昇が遅れて地方へ波及した結果、ある種の周回遅れ現象が起きているわけです。20年経ってもバブルの後遺症はなくならないのですから、地方の浮揚は道険しです。

それと東急新玉川線のケースを根拠に、鉄道運賃は価格弾力性が低いから、運賃を上げて線増などのインフラ投資を行うべきという議論が一部にありますが、北神線のケースで見る限り、かなりあやしい話となります。実際には乗客が感じる価格差の程度で、価格弾力性が出たり出なかったりするに過ぎないと見る方がよさそうです。そして価格弾力性が出ない水準でのインフラ投資による輸送改善では、改善による乗客の選択が混雑を助長する可能性すらあります。例えば東急田園都市線が段階的に輸送改善を重ねた結果、首都圏私鉄の最混雑路線になったというありがたくない結果が生じております。

大都市圏以外の地域では、実質的にクルマ社会となっておりますので、鉄道運賃よりもガソリン価格の方が影響が大きいかもしれませんが、最近明らかに値下がりしております。お盆シーズンの需要の落ち込みがよほど激しかったものと思いますが、結果的に小売在庫が拡大して値下げを余儀なくされたようです。その一方で軽油は下がっておりませんから、価格差が縮まっております。日本では乗用車はガソリン、トラックなど商用車はディーゼルという棲み分けがされてますので、マイカーの利用が手控えられた一方、手控えが効かない商用車向けの軽油は下がらないということでしょう。ここにも価格弾力性の差が見られます。乗客の選択でしか利用を増やせない北神の運賃補助がやめられない理由が透けて見えますね。

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Sunday, August 17, 2008

JR東海が日本車輌を子会社化

えー、北京五輪で電波ジャック状態の日本ですが、その間に世界が動いております。とりわけグルジア紛争の先行きはキナ臭いのですが、とりあえず当事国の和平文書調印でひと区切りです。

グルジア和平が発効、ロシア大統領署名 撤退は流動的
とはいえ北京五輪を狙ったかのような今回の紛争です。悪しき前例とならないよう欧米の外交攻勢は凄まじいものがあります。日本にとっては遠い国の話かもしれませんが、欧州向けの石油や天然ガスの供給源としてアゼルバイジャンなどカスピ海沿岸地域の比重は重く、グルジアはロシアを経由しないパイプラインの経由地ですから、そこがロシアと対立すると、当然エネルギー市況を悪化させる可能性があります。こういうニュースを見過ごして、事後的に原油が上がったと大騒ぎするんですから、日本も困った国です。アメリカ議会では2014年のロシアのソチ五輪の開催地変更の決議までされて、モスクワ五輪の悪夢再来の予感すらあります。
ソチ冬季五輪の開催地変更を要求 米議員が決議案
あとパキスタンの政情不安など、世界は揺れ動いております。そんなときに五輪フィーバーの日本のメディアのしょーもなさが情けないです。せめて特番の合間の通常の報道ワクぐらいは、五輪の扱いを減らすべきです。その他のニュースを知りたい視聴者の存在を無視してます。

前置きはさておき、鉄道界のビッグニュースです。

JR東海、日本車両を買収 リニア総合体制整える
記事にもあるとおり、現在日車株1.8%を保持するJR東海が、TOB(株式公開買い付け)によって50.1%まで保有比率を上げ、買い付け価格は1株370円ということで、必要資金最大282億円ということで、リニア開発の秘密保持が狙いのようです。このあたりにJR東海らしさが出ています。

鉄道事業者と車輌メーカーの関係でいえば、JR東日本が直営の新津車輌センターを保有し、ほぼ1日1両ベースでロールアウトする量産体制を採り、実は国内メーカー中断トツの実績です。ただし製造技術面では東急車輛の指導下にあって、特許なども共同で取得する体制を築いているなど、緊密な関係にあります。おそらく国鉄時代に職権で特許公開を迫ったことに対する負い目があるのかもしれません。

その一方で同じく川崎重工と日立製作所も有力車輌ベンダーですが、特に川崎重工ではJR化後の205系大量発注を1社で受注するなど、気を吐いておりますが、これもJR東日本の方針で、国鉄時代のように設計まで済ませてメーカーへ発注する形態だと、メーカーは単なる組立屋になってしまい、技術革新にメーカーの力を使えないということで、国鉄時代の慣行を敢えて覆したものです。このようにJR東日本は車輌発注も基本的にオープン化戦略を取っており、敢えてメーカーの育成を行ってビジネスパートナーとする戦略です。

それに対して今回のJR東海の戦略は、少々古臭い垂直統合型戦略といえそうです。日車自身は名門企業で技術力もありますが、メーカー間の力関係は大分変わってしまい、劣勢は否めないところです。そういった意味では日車にとっても今回のTOBは事業の再構築のチャンスではあります。

元々系列に車輌メーカーを持つ戦略は、多くの私鉄で取られていたわけで、東急車輛(東急)、近畿車輛(近鉄)、アルナ工機(阪急)、武庫川車輌(阪神)などがありましたし、西武鉄道のように自社工場で車輌製造を手がける例もありました。それらが今は整理淘汰され、国鉄解体でJR各社も競争入札でメーカーを決めるようになり、小規模メーカーはコスト面で太刀打ちできなくなります。既にアルナは路面電車部門をグループ外へ切り出して解散、武庫川車輌も量産メーカーとなって鋼製車に対応できなくなった川崎重工の下請けの組立屋のようなことをしていて、車輌メーカーとしての実態は失われています。JR東日本と関係を深めた東急車輛ですが、一時西武鉄道へ納入したり、日立メインの相鉄をJR東日本と共同で肩代わりしたりして販路を確保してますし、近畿車輛もJR西日本や阪神などへ販路を拡げて私鉄系列色は薄まっている感があります。

時代の流れは明らかにオープン化に傾きつつあるわけで、その流れの中でこのニュースに接すると、何だか時代錯誤の感も拭えないのですが、果たして吉と出るか凶と出るか、推移を見守りたいですね。

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Saturday, August 02, 2008

副都心線現象?

副都心線開業から1月半、度々列車遅延が生じたり、利用者が想定を下回ったりと、開業前の期待がやや後退した感のある副都心線ですが、真価を発揮するのは、2012年に予定される東急東横線との相互直通運転開始以降でしょうから、今はまだ助走期間と見ておきましょう。

副都心線自体は、都市計画13号線として以前から計画されていた路線ですが、それ以前の都市計画で8号線の一部と位置づけられていたこともあって、都計8号線を具体化した有楽町線の一部として小竹向原~営団成増(現地下鉄成増)間が最初の開業区間となります(1987年8月)。この時点で池袋~小竹向原間は上下2層の地下トンネルが構築されていて、既に13号線の準備がされていたわけですが、混雑緩和対策として西武との相互直通が本格化する1998年3月の練馬駅高架化に先駆けて、1994年12月に有楽町新線として開業、途中駅の要町と千川は通過とされました。新線池袋駅が既存各駅から離れていたこともあり、新線はいつも空いていて、帰宅時の着席乗車狙いの裏技に利用されていたようです。副都心線開業でそれがなくなったわけですから、東武鉄道がTJライナーで定員制着席サービスを開始したことは、理に適っているといえます^_^;。

ただ、実際に13号線渋谷延伸が都市計画決定されたのは、2001年5月、翌6月には着工という時系列の動きが特異な印象です。94年に有楽町新線として開業した時点で、渋谷延伸まで見通せていたというと、疑問が残ります。というのも、当時の帝都高速度交通営団(以下営団と記す)自身が、旧国鉄に倣って民営化される予定があったため、微妙な時期であったことを指摘しておきます。

当時、2000年に南北線全通と東急目黒線との相互直通運転、半蔵門線押上延伸と東武伊勢崎線との相互直通化工事がたけなわの頃であり、民営化を睨めば東京の地下鉄新線に打ち止め感が漂っておりました。それ故に87年時点からトンネルや駅の構造物は完成しながら、利用されていなかった13号線施設の有効利用は、追加費用をかけずにできる混雑緩和策という性格のものといえます。

さて、13号線延伸が都市計画決定されスピード着工された2001年時点ですが、前年に南北線が全通し東急目黒線との相互直通を開始し、半蔵門線押上延伸が継続されていたわけですから、営団時代の建設線2線の原則に照らせば、13号線の新規着工はその延長線上とも取れますが、既に営団の民営化方針が具体化しており、実際半蔵門線開業後の2004年に民営化され、東京地下鉄株式会社(通称東京メトロ)がスタートしたわけですから、13号線着工は不自然な感があります。

よく考えて見れば、その直前の2001年4月、小泉政権が発足し、「官から民へ」のキャッチフレーズで小気味よさをアピールしていたわけです。とするとますます13号線着工は逆行イメージですが、同時に「都市再生」もよく使われたフレーズです。そう、従来の公共工事で国の資金を地方へばら撒くのではなく、民間資金による都市活性化もまた小泉政権の政策の目玉だったわけです。つまり民営化されればとても自前で新線建設なんて無理な営団に、地下鉄建設補助が使えるうちに新線を作らせて、沿線の再開発の呼び水にしようという思惑があったものと思われます。実際、2000年全通の南北線や都営大江戸線沿線では、大規模な再開発ラッシュが起きていたわけですから、その効果を持続させることは考えられたと思います。そう考えると、地方のローカル線同様の政治路線と言えなくもないですね。この辺は以前の記事でも取り上げました。

もちろんその経済効果に疑問のある地方の赤字ローカル線に比べれば、遥かに経済効果は多きいわけですが、同時に行われた容積率緩和などの一連の規制緩和策と相まって、民間デベロッパーへの補助金的性格もあるわけです。その結果、民間設備投資が活発化して景気回復が演出されたわけですから、政治家としての人気取り効果は抜群でした。実際2005年の郵政選挙では、元々民主党が強かった都市部の選挙区ほど雪崩を打って与党が大勝したわけです。

とはいえ以前から指摘しておりますように、再開発ブームも一巡すれば終わるわけで、その後の展望があるわけではありません。特に住宅に関しては、団塊ジュニア世代の購買が一巡すれば、それ以後の就職氷河期世代にはそもそも購買力がありませんし、また過去の持ち家政策の結果として、質を問わなければ大量の住宅ストックが積み上がっている状況で、いわゆる分譲マンションでも個別区分所有者による賃貸が常態化していて、マンション管理組合にも隠れ切支丹ならぬ隠れ賃貸住民の意向が反映される傾向もあります。ま、その方が住民目線での管理の質は向上しますから、結果的に区分所有者にもプラスなんですが。

というわけで、副都心線の開業後のトラブルも、少し違った見方が可能です。営団改め東京メトロにとっては、民営化前の駆け込みであっても、従来の地下鉄建設補助を枠組みが利用できることで、民営化後の自社の資産価値を高められますし、特にネットワークの外部性が働くという点で、他の大手私鉄とは立場の違いがあるわけです。また目の前にはJR東日本というお手本があるわけで、たとえ民営化前の駆け込みであっても、継承資産の強化は大都市圏の事業者として優位に立てるわけです。問題はその有効利用であって、これこそ民営化後の新会社の特徴を打ち出せる部分と考えたわけです。

実際に湘南新宿ラインで既存鉄道ストックの有効利用のお手本を見せられたメトロにとって、東武東上線、西武池袋線とともに、東急東横線の相互直通希望は渡りに船だったはずです。渋谷から先につながることで、メトロのネットワーク強化は、他社線を培養路線とすることで、ある意味広域路線を維持しなければならないJR東日本より優位ですらあるということですね。

ま、その辺のもろもろで、営団時代に民営化を睨んだ布石として、副都心線のあり方が決定されたと考えられます。それがホームドア設置とワンマン運転、東新宿に待避線を設けての急行運転など、営団時代には考えられなかったチャレンジへと向かわせたのでしょう。その結果はスタートから躓くことになりますが。

東京メトロ副都心線でまた遅れ
路線の成り立ちから木に竹を接ぐが如し直通運転で、メトロと乗入各社は新線向けの新車で揃えることが適わず、在来車の改造で対応した結果、例えば定位置停止装置(TASC)の精度調整などで未消化の問題を抱えていたのでしょう。この辺はライバルの山手線のホームドア設置にも教訓を残しました。

それと、後から建設される地下鉄新線の常として、トンネルが深い位置になり、駅へのアクセス性が悪化することは避けられないところです。

副都心線渋谷駅公開・地下5階乗り換え大変?・JRから距離
この辺は実際に利用して見ると顕著です。JRをはじめ既存各線との乗換が不便です。東横線とは12年の相互直通開始で解消されますが、東急としては渋谷へ買い物客の取り込みという点で、現状はあまりプラスになっておりません。また東急文化会館跡地の高層ビルへの東急デパート入居が予定されておりますが、皮肉なことに、東横線との相互直通開始は、池袋のデパートが直面する素通りの危機をなぞる恐れがあります。加えて東横店撤退後予定される駅ビル計画の進捗如何では、例えばルミネなどJR系列の商業施設の進出も考えられますので、渋谷の再開発に対する東急の期待は裏切られる可能性もあります。加えて再開発の全体計画が終了するまでに20年以上を要することから、常に工事が行われる状況で集客しなければならないわけですから、下手すれば東急の失速の懸念も無しとはいえません。

というわけで、東京一極集中もほぼ限界でしょうか。

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Saturday, July 05, 2008

磁気券IC券二重価格in新横浜

同じような話題を以前も取り上げましたが、他社線を介した通過連絡運輸特例に関するものでした。SuicaとPASMOの共通化で複雑になった運賃判定モジュールでは対応できないというのが、一応の理由ということですが、やはり磁気券とIC券で運賃が異なるという点には違和感があります。

今回取り上げるのは、3/15にTOICA、ICOCAとの共通化に関連するものですが、不可思議なのは3/14以前は同じだった運賃が、3/15を境に違ってしまったという点です。対象は、新横浜、菊名と小田原以西各駅(Suicaエリア)間です。概要は1枚の駅貼りチラシによる告知だけです。それも篠原口では目立つよう位置が工夫されてますが、駅ビル内のメイン改札口では、ちょっと目に付きにくい位置に掲示されていて、JR同士でスタンスの違いが示唆されます。

新幹線をめぐる運賃計算は、新幹線駅を並行する在来線駅と見なして、在来線の営業キロで計算するルールですが、例外として新幹線駅が在来線駅と離れている場合で、その駅発着または乗継の乗車券については、新幹線と在来線を別の線として乗車経路どおりの営業キロで計算することになっております。つまり小田原から新横浜までは、新幹線経由と在来線経由とで運賃が異なるわけです。ここまでは本則による部分です。

問題は小田原~新横浜間の新幹線経由の乗車券が東神奈川経由の乗車券より安くなるのですが、新幹線は東京近郊区間に含まれませんから、本則どおりであれば新幹線経由の乗車券で在来線を経路選択するとこはできません。しかし便宜的措置として新幹線経由の乗車券で在来線の経路選択が認められております。多分国鉄時代から乗客とのトラブルが多発し、グレーゾーンでもあるので、乗客の利益を優先した取扱いが慣例化したものと思われます。そして民営化後もこの取扱いは引き継がれます。ただし同じ新横浜発着でも、品川方面間では、このような取扱いはなく、本則どおりです。

そして2001年のSuica導入時点でも、IC券と磁気券を差別することは行われず、Suica利用でも新幹線経由の運賃が引き落とされていたのです。今年の3/14までは。3/15のTOICAとの共通化を機に見直されたわけですが、不思議なのは、磁気券では従来どおり新幹線経由運賃が適用されるのに、IC券では経路どおりの運賃引き落としとなり、結果的にIC券利用の場合のみ運賃が高くなる二重価格状態となったわけです。元々慣例的な便宜的措置だったんですから、IC券に合わせて磁気券も経路どおりとすれば、規則上すっきりしますし、とりあえず乗車経路で運賃計算されるわけですから、乗客に特段の不利益があるわけではないのですから、あとは的確な説明がなされれば良いだけです。しかい実際は磁気券と取扱いが分かれてしまい、ICカード所持者は券売機で磁気券に交換することで、割安な運賃で利用できるのですが、乗客に無意味な手間を求め、結果的に二重価格状態としてしまったわけです。意地悪な見方をすれば、IC券利用者からこっそりふんだくることができてしまうという意味で問題があります。

しかしなんでこんなけったいなことが起こるんだろうかと思っておりましたら、最近TVCMでやたら流れるEX-ICがどうも原因のようです。つまりSuicaなどのIC乗車券とのダブルタッチで利用できる東海道新幹線限定のチケットレスサービスの導入で、新幹線で実際にIC乗車券が利用できるようになり、その際に会社間の取り決めで妥協の産物としてこうなったということなんでしょう。EX-ICでは事前予約をwebで受け付け、新幹線改札にカードをかざす時に利用券を受け取るという形でチケットレスを実現するのですが、ベースとなるエクスプレス予約のスタイルを踏襲し、特定市区エリア発着特例をなくして値引きされており、その分経路特定を厳格化したものと思われます。ただしこれだけではJR東海の収入に直接食い込むわけではないJR東日本の在来線での新幹線経由の割安運賃を放置しても問題ないはずです。

ところが別のところにヒントがありました。在来線の熱海~函南間がTOICAエリアから外されている問題です。そう、IC券だけで在来線ルートで静岡エリアへ行けないんです。新幹線経由でEX-ICを用いる場合だけ、IC券で継続利用できるんですね。つまりかなりセコい新幹線誘導策ということができそうです。こだましか停車しない三島や掛川で新幹線連絡の名目で在来線列車を長時間停車させてるぐらいですから、あり得る話です。

Suica生みの親の椎橋JR東日本IT-Suica事業本部副本部長の著書に明記されてますが、Suicaの最大の功績は、ライトユーザーを囲い込めたことです。従来鉄道をあまり利用しなかった人たちにとって、着駅までの運賃を調べて券売機に小銭を投入し、乗車券を買い求めること自体が負担と感じられていたのが、チャージさえしていればカードを改札でかざすだけで済むことで、鉄道利用の掘り起こしができたということですね。今後高齢化で運転免許を返上する人も増えるでしょうが、そういった人たちの中には、そもそもキップの買い方がわからないという人がいたりします。人口減少が始まって、右肩上がりの将来を展望できない中で、このことの意味は重要です。

例えばスルッとKANSAI各社が導入したPITAPAが、ポストペイ方式を採用し、利用ごとにポイントを付与することで、同一区間の反復利用の場合の引き落とし上限を定期運賃相当とすることで、定期券や回数券を廃止するという画期的な方法を試みておりますが、発行はクレジットカード同様に煩雑なこともあり、普及度合いはSuicaなどのプリペイド陣営ほどではないようです。PITAPAはヘビーユーザー向けサービスと考えた方が良さそうです。それに対して無記名式ならカード販売機で買えるし、定期券タイプも専用発行機が用意されているSuicaの方が、利用者の広がりは大きいといえます。このことはPASMO品切れでも図らずも明らかになりました。

JR東海のEX-ICは、その意味では新幹線利用客の囲い込みという意味で、ヘビーユーザー向けのサービスといえますが、反面ライトユーザー軽視とも取れるだけに、いささか問題のある対応かと思います。意地悪な言い方をすれば、バレなきゃ高く引き落として構わないということですから、JRを信頼して利用する人が知ったら失望するんじゃないでしょうか。

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Sunday, June 29, 2008

自動車メーカーの脱クルマ戦略

前の記事に関連しますが、国内自動車市場の縮小に直面する自動車メーカーの話題です。

20世紀はザックリ言って自動車の世紀という言い方が可能でしょう。自動車は工業化社会の象徴ですし、特に20世紀初頭、T型フォードのオートメーション生産がもたらしたイノベーションは、以後の100年を規定するほどの大きな意味がありました。

それまで自動車は町工場で馬車職人の手作りという形で作られていたもので、馬の代わりに内燃機関で動力を得て走らせるということで、馬車の構造を引きずっておりました。オーナーは馬車のキャビンに似た屋根付後部座席に乗車し、御者代わりのドライバー席は屋根なしの雨ざらしということで、オーナードライバー中心の現在のクルマ社会とは違います。それがT型フォードの生産と市場投入で変わったわけです。

気難しい職人に仕事をしてもらうには、報酬を弾むしかないですから、そもそも専属ドライバーを雇える富裕層しか自動車は変えなかったわけですが、それをオートメーション生産で、複数の単能工によるライン生産に切り替えた結果、生産性を高めて価格を劇的に下げる価格革命が可能になったわけです。加えて工場で働く単能工には、いわゆる単純労働ながら相場より高めの賃金を渡すことで、フォードは自社の商品の最初の購買者を育てることにも成功します。実はこれこそが大衆消費社会を切り拓く端緒となったのです。

それを横目に、この仕組みをより効率化しようという動きが現れました。アルフレッド・スローン率いるゼネラルモーターズ(GM)の革新的ビジネスモデルが登場します。町工場中心の前期工業化社会では、所詮家内工業の域を出なかったのですが、生産と管理を分離し、事業に必要な資金調達、売れる商品を生み出すマーケティング、工場の工程管理など、直接生産に携わらない多くの専門家を組織して、多数の傘下工場を稼動させ、規模の経済を追及するというものです。その結果、馬車スタイルが抜け切らない無骨やT型フォードと一線を画す、薄板をプレス加工してフェンダー一体型の滑らかなボディを与えたスタイリッシュな自動車を次々と生み出し、自動車を大衆消費財にしたのでした。

巧みなのは、古くなった工場の生産設備の交換に合わせて、ボディスタイルを見直し、旧モデルを陳腐に見せて買い替えを促す、いわゆるモデルチェンジを行って業績を高め、かくして世界一の自動車メーカーの地保を固め、以後世界に君臨しました。

こうして、常に大衆受けする新しい車が生み出され、市場が刺激され、自動車がリーディングインダストリーとなってアメリカは繁栄し、そればかりか、その見かけ上の豊かさは、世界に憧れをばら撒きました。大衆消費財としての自動車は、頻繁な買い替えが前提ですから、必ずしも高品質である必要はなく、適度に壊れてくれた方が、結果的に買い替えが促進されますし、買い手のユーザーはオーナードライバーであることにステイタスを感じてますから、故障などのトラブルはむしろ地位にあるものの悩みとして受け入れてくれます。かくして最強のビジネスモデルが完成することとなります。

しかしこのビジネスモデルは、石油や鉄などの資源を際限なく浪費することになりますので、アメリカ1国だけであれば成り立つかもしれませんが、他の地域へ拡大すれば、たちどころに資源制約が世界を襲うことになります。70年代のオイルショックは、石油輸出国による価格カルテルの試みだったのですが、日本などで省エネの取組みを誘発し、結果的には不発に終わります。しかし同時に、日本や欧州で資源浪費的でトラブルの多い自動車の燃費改善と品質向上の取組みが始まり、メーカー間の競争環境もあって、自動車は燃費性能を改善し、品質も向上し、故障の確率は劇的に下がりました。そしてアメリカのメーカーはその流れに乗れず、手っ取り早く利益を稼げる車しか作らなくなります。

フォードマスタングは、売れ行きの悪かったコンパクトカー「ファルコン」のシャーシにスポーティなボディを与えただけのチープな車でしたが、若者が飛びつき大ヒットしました。これに味を占めた米自動車メーカーは、その後もライトトラックのシャーシにオフロードカーに似せたボディを与えたSUV、同じくトラックシャーシに大柄のバンボディを与えて、大勢乗れる、たくさん積めるミニバンを開発し、大いに稼いだのです。しかし好事魔多し、すぐさま日欧メーカーの後追いに遭います。

トヨタセリカ、日産シルビア、ホンダプレリュードなどのスペシャルティカーが、量販車のコンポーネントで作られ、同じくSUVも量販車ベースでオフロードカーに似せたなんちゃってオフローダーに、量販車ベースで大柄なバンボディを与えたなんちゃってミニバンなど、ベースが乗用車だけに、トラックベースの米メーカー車とは素性が違いますから、ユーザーは日欧メーカー車に群がります。と同時に日欧メーカーも実は袋小路にはまります。

ユーザーを飽きさせないための新しいクルマの提案が相次いだ結果、かえってユーザーを飽きさせてしまったフシがあります。加えて昨今の原油価格上昇、鉄鋼価格上昇で、メーカーも値上げせざるを得ない状況で消費マインドを冷やします。また皮肉なことに品質向上が極限に達し、故障しなくなったことで、買い替えにブレーキがかかります。

さらに90年代から始まった非正規雇用の拡大、2002年春闘のベアゼロで正規社員も収入が伸びず、ユーザーの購買力を奪います。国内市場は冷え込むばかりです。おそらく簡単には抜け出せないでしょう。しかしこういった逆境こそ、逆転の発想で乗り切るチャンスでもあります。そんな中でのこんなニュースです。

JR北海道のDMV開発、トヨタ・日野が参加
青森県内レンタカー6社、新青森駅に共同基地 新幹線開業時に
まずはDMVからですが、以前の記事でも取り上げました。ベース車は日産シビリアンなんですが、この車、主要コンポーネントをいすゞから調達し、日産車体で組み立てて、日産系、いすゞ系ディーラーへシビリアン/ジャーニーとして供給されているという成り立ちです。特徴としてラダーフレームにキャブオーバーのボデイを架装したフロントエンジン・リアドライブ(FR)レイアウトで、構造単純で軽量、堅牢であるがゆえに、重量物である鉄車輪を装備してレール上を走行可能になります。

しかし昨今のディーゼル排ガス規制や安全装備などで重量が増え、そのためにDMV試作車では乗車定員を減らして総重量を道路運送法の規制値に収める必要があります。それに対してJR北海道は日産に共同開発を申し入れますが、成り立ちの特異性もあり、数が売れる保証もないDMVの開発には慎重姿勢でした。

それに対してトヨタが日野と共同で開発に協力することになったのです。トヨタは世界一の量販バスであるコースターをラインナップしているものの、小型バスでは珍しいモノコック構造で、そのままでは鉄車輪の装備は不可能です。そこで日野のトラックシャーシの活用を考えたものと思いますが、数が読めないニッチな市場へアプローチするトヨタの苦悩が見えます。軽量化で25人以上の乗車定員確保が開発目標となりますが、開発段階で相当数のバックオーダーを得なければ難しいだけに、トヨタの取組みは注目されます。

東北新幹線新青森駅にレンタカー基地というのも、なかなか興味深いニュースです。なにしろ新青森駅は市街地から3km以上離れた郊外の低層住居地域で、市街地とのアクセスに課題がある上、駅前の開発にも制約があるわけですから、そこへレンタカー基地を設けることで、利便性を確保しようということです。同時にやはり、メーカーのニッチ市場攻略という側面もあります。

というわけで、ここまでしないとクルマが売れない日本のメーカーの苦悩は続きます。

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趣味的脱クルマ社会論

更新が滞っておりますが、いまいちノレなかったことを白状いたします。夏風邪で体調不良だったこともありますが、何より6/14の2つのニュースに諸行無常を感じてしまいました。言うまでもなく、1つは副都心線開業であり、もう1つは岩手・宮城内陸地震です。

前者では新線開業で鉄道ファンが集まったようすがニュース映像で流される一方、後者の被害の悲惨さは対照的です。何しろ山が形を変えるほど大きな地すべり等が起きたのですから凄いんですが、それ以上にショックなのは、過疎地だから意外にも人的被害は多くないということです。また公的に把握された被害総額も少ないということで、激甚災害指定されなかったというのも驚きです。ま、被害が少なかったのは良いことではあるんですが、それで済ませられない問題があります。

前置きが長くなりましたが、駒の湯温泉で岸由一郎氏が亡くなられたことにショックを受けております。直接面識はないんですが、鉄道趣味界期待の若手ということで注目しておりました。ご冥福をお祈り申し上げます。

報道によれば、廃止されたくりはら田園鉄道の遺構を利用した地域興しイベントの打ち合わせで現地を訪れ、駒の湯温泉に投宿中に被災したそうで、無念です。またイベントに期待を寄せた地元の人たちも、イベントどころじゃなくなってしまいました。激甚災害指定もなく、国の支援も限られる中で、復興しなければならないのですから、運命を恨みたくもなるところです。国のスタンスは中山間地を切り捨てるに等しいわけです。

日本では直下型地震はどこでも起こり得ることを図らずも示してしまいました。緊急地震速報が流れたとはいえ、震源の浅い直下型地震では、P波とS波の伝播速度の違いを利用し、P波を検知して速報を流す仕組み自体に限界を抱えております。また雨期で地盤が水分を多く含んでいたことが、大規模な地すべりにつながったとの見方もあります。林業の衰退で山林が荒れていたことも影響している可能性があります。つまるところ、かつて生産の場であった中山間地が、産業構造の変化の中で見捨てられた結果、被害を大きくした可能性はあります。その意味で大都市の地下鉄新線開業のニュースの対極にある場所の災害といえます。というわけで、モヤモヤした気分が抜けなかったわけです。

都市への集積自体は、経済合理性に基づくことですが、東京のような大都市になると、むしろ集積の不経済が目に付きます。例えばヒートアイランド現象ですが、熱源が増えることで局地的に大気の対流による熱交換がうまくいかなくなるのですが、屋上緑地化や開発事業者への緑化義務を課すなどしておりますが、問題は集積による熱源の集中ですから、付け焼刃の対策では解決しません。工場など製造拠点が多いわけではない東京の熱源というのは、電力消費に由来するものです。高校物理で習う熱力学第1法則(エネルギー保存の法則)で明らかですが、電力の消費は電気エネルギーを熱エネルギーに変換する過程と整理できます。また人工的に秩序付けられたエネルギー(電力)を無秩序なエネルギー(熱)に変換するわけですから、熱力学第2法則(エントロピー増大法則)でも説明できます。大気の対流で可能な排熱水準を超えた熱を放出しているわけです。解決するには開発の抑制が必要です。

厄介なのは、このこと自体はいわゆる地球温暖化とは別のメカニズムなんですが、局地的な熱の蓄積は空調で熱交換を行っても、排出された熱は循環せずに地域に留まりますから、空調を運転した分だけ電力消費が増える、イコール熱量が増加するということで、変化を順方向へ加速させるポジティブフィードバックが働いてしまいます。その結果電力消費が増大すれば、化石燃料消費を通じてCO2を排出し、温暖化を進めることにもなります。

ほかにも地価の上昇や道路の渋滞などの弊害も指摘されます。前者は土地の利用度が高まった結果でもあるわけですが、そのために絶えず再開発して高層化を進めるとなると、常に重機、建機が動いている状況となるわけです。重機や建機もCO2を排出しており、しかも都市としての定常的なエネルギー消費と別枠ですから、開発行為が盛んであるということは、それだけ温暖化を進めてしまうということにもなります。クールビズで可能な温暖化防止なんて知れてます。

ガソリン税暫定税率問題で注目された道路特定財源ですが、東京のような大都市の場合、地価の上昇で道路建設単価も高騰しますから、渋滞していても直ちに道路整備ができないわけですが、それでも都は道路整備を進めようとしています。なぜならば都市計画法や建築基準法などの法令で、開発用地の接道義務が課されていることによります。道路に接しない土地は開発行為ができません。また道路幅員によって容積率が決まり、日陰規制などその他の規制にも影響しますから、低層建築の多い地域ほど道路を通さないと再開発できないということで道路整備が止まらないのですが、それで高層建築がされると集積度が高まって道路に車が増えるという悪循環から抜けられず、気がつけば開発業者だけが潤っているという状況をどう考えるか、このあたりを真剣に考えるべきときなんでしょう。オリンピックなんてやってる場合じゃないんです。

それでは道路をやめて鉄道へシフトすればよいかというと、例えば副都心線ですが、明治通りの拡幅が困難な中、混雑緩和への期待がされますが、東京のように稠密な鉄道ネットワークが形成されたところで、そのネットワークが強化されると、その分集積度が高まって人口集中が起きてしまうので、結局混雑をいくらか緩和はするけれど、解消には至らないということになります。単純なモーダルシフト論には落とし穴があるわけです。

結局のところ大都市圏以外の場所は次第に過疎化が進み、防災上必要な山林の手入れすらできなくなるというわけです。本当はこういった地域へてこ入れが重要なんですが、それには無力かもしれないけれど、廃止された鉄道を地域興しの核に据えようとすることには意味があります。というのも、趣味の世界に変化が見られるからです。

以前西武鉄道の名義株問題が発覚し、オーナーの堤義明会長が逮捕され、会長を辞任、西武グループ自体も上場廃止から再編され、再上場を目指しているところですが、堤義明が鉄ちゃんだったらといような記事を書いたことがあります。ま、たわ言ですが^_^;、堤家の使用人意識が抜けない社員の啓発と団結を狙ってスマイルトレインプロジェクトが実行され、事務職の女子社員まで動員されて30000系で結実しました。後藤社長の狙いは、社員の自立ということで、鉄道事業者として天の声を待つのではなく自前の判断で事業を進められることを重視したものです。成果は定かではありませんが、間違いなく社員のモチベーションを高める効果は期待できます。

ある意味仕事が趣味的になってきたともいえるわけですが、元々社会インフラである鉄道を趣味対象とするのは、欧米では普通に見られますし、鉄道発祥国イギリスでは、貴族が気前良く寄付金を出し、ボランティアメンバーが運営する公共保存鉄道が存在するなど、文化と称して良いレベルにあります。日本はというと、つい最近まで「鉄ヲタ=暗い、ウザい、ダサい」といった印象が強かったのですが、最近は若い女性が新線初乗りやレア物追っかけすることも珍しくなくなり、社会的には定着した感があります。元々社会インフラである鉄道は、個人では所有できず、自由に操作することも叶わないわけですから、どんなに高くてもお金出せば買えるクルマとは違うわけで、そんなものを趣味の対称にするというのは相当な変わり者と見られていたわけです。それが変わってきているわけですね。

といううわけで、副都心線に鉄ちゃんが群がるのは、趣味として社会的に認知された証しと見れば、冒頭のモヤモヤした気分もいくらか晴れる気がします。

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Thursday, June 05, 2008

山手線ホームドア設置、安全を阻む混雑

JR東日本から、山手線29駅へのホームドア設置が発表されました。

山手線への可動式ホーム柵の導入について(PDF)
3月に発表された「グループ経営ビジョン2020-挑む-」について(PDF)の中で、「導入に取り組む」とされていた安全対策の具体化です。新聞報道でも日本経済新聞5/12付で記事があります。
山手線全駅にホーム柵、転落防止へ17年までに
混雑線区への導入ゆえ、円滑な工事や運行遅れなどの課題もあります。

とりあえず目黒、恵比寿両駅で先行導入するもので、2008年度からホーム構造改良工事を行い、可動柵の基礎を構築し、その後可動柵を設置し、2010年度から稼動させて3年間の検証期間を経て、13年から本格整備し、17年度までに終わらせる予定ということです。かなり慎重な姿勢ですね。

可動柵自体は既に地下鉄や私鉄の一部線区で導入されておりますが、後付した都営三田線や東京メトロ丸の内線などでは、駅停車時間が伸び気味で、ダイヤ維持に苦労があるようです。開業時からホームドアを採用した東京メトロ南北線も含め、客扱い時間は延びる傾向があるようです。

それゆえ、危険性を指摘されながらホームドアや可動柵の設置は進まなかったのですが、広域に路線のあるJRの場合、人身事故でどこかの線区が止まることが結構頻繁に起きている状況に背中を押されての取組みとなったようです。前記の南北線では、元々混雑の程度が少ないと見積もられていたことが、ホームドア設置を決断させたわけですが、客扱い時間の伸びを踏まえて最高速を他線よりも速い80km/hに設定するなどして、トータルな運行時間を圧縮する努力はされております。その一方で可動柵を後付した三田線や丸の内線では苦労があるわけです。

それでもワンマン運行が可能になり、混雑時に駅員をホームに立たせて安全監視するなどの人海戦術を取っていた部分の省力化にはなるわけですから、ホームの基礎工事や柵の設置で初期投資も決して少なくないながら、メリットもあるわけです。

ただホームドアにせよ可動柵にせよ、車両のドア位置が揃っていることが前提となりますので、定員制優等列車が走ったり、他社線との直通運転が行われていたりする場合、現実的には導入は難しいわけです。そこで他線との直通がない山手線で導入というわけです。しかし田端~田町間の京浜東北線の併走区間では、非常時に京浜東北線の電車が走る可能性があるという理由で、現在7,10号車に組み込まれている6扉車は全て4扉車へ取替えられるということです(目黒、恵比寿駅での検証期間中は該当号車部分の可動柵未設置で対応)。これで自動的に京浜東北製への6扉車導入の目はなくなったわけですね。ただし衝突安全を考慮したE233系先頭車のドア位置のずれにどう対応するのかは不明です。

というわけで、実施計画は発表されたものの、まだまだ課題山積の状況ですが、ホームへの駅員配置による安全監視という人海戦術での安全対策というのも、今後は人員の確保も難しくなりますから、この面でも成果は期待できます。

あとは他線区への波及があるかどうかですが、これは難しそうです。ドア位置が揃っていなければ難しいので、中央快速線や中電各線は難しいでしょう。また山手線は保安装置がATCなので、TASC(定位置停止装置)を付加することで対応可能ですが、一段減速が可能でも、あくまでも運転士の操作のバックアップが目的であるATS-Pで同等の停止位置精度を持たせるのは難しいでしょう。TASCでは±350mm以内の設定ですが、ATS-Pの前提となる運転士のブレーキ操作の場合は±1,000mmとアバウトです。これでも試験合格水準であることは電車の運転―運転士が語る鉄道のしくみ (中公新書 1948)にもあるとおりです。

より簡便な方法としては、転落すると危険な車両の連結部のみをカバーする簡易柵の設置などの方法は考えられます。既に一部私鉄のターミナル駅では実績がありますが、元々過走余裕がなく進入速度が低いから可能なのかもしれません。なかなか決め手は見つかりません。そもそもホームが混雑するから柵などで防護する必要が出てくるのですが、その混雑が安全対策の最大の阻害要因というところに悩みがあるわけですね。

とはいえ安全対策をできない理由を並べても仕方ないわけで、とりあえず可能なところからでも取り組むことは重要です。丁度こんな報道がされました。

福知山線脱線事故、JR西役員ら書類送検へ 業過致死傷容疑
当ブログでは以前からJR西日本幹部を訴追すべきだと申し上げてまいりましたが、捜査当局が一歩を踏み出したことは評価したいと思います。と共に、今後鉄道事業者の安全輸送への圧力は増すものと考えられますので、逃げずに答えを模索して欲しいところです。

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Sunday, May 11, 2008

設備投資を加速させる京王電鉄

京王電鉄の2008年度経営計画が発表されました。

オフィシャルサイトのプレスリリース(PDF)
冒頭の基本方針に
「住んでもらえる、選んでもらえる沿線」を目指し、
「鉄道事業の安全性の向上」と「沿線価値向上への取組み」に
注力してまいります。
とあります。鉄道事業への投資額549億円(対前年20%増)、うち安全性向上には433億円(対前年14%増)ということで、これは2010年に予告されている調布市内連続立体化事業にあわせてATC導入と所属車両省エネ化(VVVF化)を加速させるものです。

具体的には相模原線のATC地上設備の設置を完了させ、車両改造を進めるほか、京王線60両井の頭線25両の車両代替と在来車改造を含めて117両のVVVFインバータ制御車を登場させることになります。そのほか地下駅の火災対策強化や駅のバリアフリー対応工事を進めるとしております。

車両面では85両の新造というのが目立ちます。京王線の60両は9000系30番台10連6本と考えられ、これで10連14本が揃いますので、都営線直通運用を9000系だけで賄える数がそろいます。当然6000系は代替廃車が進むことになります。5扉車や2連など、一部残る可能性はありますが、JR常磐緩行線203系と双璧の窓のバタつく電車の過去帳入りは近いですね。そういえばJR東日本も本年からE233系2000番台による置換えが始まりますね。

名車の誉れ高い5000系の後継車でありながら、京王新線の呪縛でコストダウンを余儀なくされた粗製乱造車の6000系ですが、それだけに時代を映す車だったといえます。この苦境があればこそ、バブルに踊らず線増ではなく長編成化で混雑緩和に取り組み、大手私鉄随一の財務体質を獲得したわけですから、感慨深いものがあります。かつて冷房化に抵抗し続けた^_^;2010系などの"グリーン車"と蔑称された旧型車の途をなぞるようですが、"アイボリー車"とでも呼べばよいでしょうか。

一方の井の頭線でも1000系の久々の増備となりますが、これでやはり昼間に関しては完全に1000系で統一でき、3000系はラッシュ専用となりそうです。ここでも"グリーン車"現象^_^;が進みます。同時に3000系でも増備の都度改良が重ねられてきた歴史に倣えば、どんな仕様で登場するかも注目です。京王線9000系が日車ブロック工法で小田急3000系京成新3000系と一派を築いていますが、1000系のすそ絞りスタイルは対応できない可能性があります。となると小田急の千代田線直通車に倣って東急車輛製のツーシート工法へのシフトも考えられ、"走ルンです京王"^_^;が登場するかもしれませんね。注目です。

あと関連事業では、京王電鉄の新たな沿線活性化策で取り上げましたが、移住・住みかえ支援機構(JTI)を活用した、沿線の高齢者を都心の賃貸マンションに誘導し、持ち家を子育て若年世代へ賃貸することで、沿線の若年人口増加への取組みを進めるほか、学生マンションや企業向け独身寮事業などで、一味違った沿線活性化策が謳われております。計画書にはありませんが、高幡不動駅前の子育て支援マンションの成果も興味深いですね。

人口減少で、鉄道事業を核として沿線開発で不動産部門で利益を得る従来型の私鉄経営のビジネスモデルが行き詰まりを見せる中、いち早く次の時代を睨んだ事業を展開しているわけで、その成果が注目されます。

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Sunday, May 04, 2008

走ルンdeおフランス、AGV

姥捨ての次はおフランスざんす^_^;。AGVがプレス発表されたのは、今年2月のことですが、日本では報道が少なくて、いったいいつ営業運転を始めるのか、どこの路線に投入されるのかなども知られておりません。実はAGVはアルストム社が開発主体となった次世代高速鉄道車両で、AGVのAはアルストムのイニシャルとまで説明されています。

フランス国鉄(SNCF)とアルストムとの関係は、日本の国鉄と鉄道車両メーカーの関係と似ていて、発注者であるSNCFが設計に関与してアルストムに製造を請け負わせるものでした。高速列車のTGVにしても同様で、あくまでも開発主体はSNCFだったわけですが、ここへきて事情が変わってきています。

仏アルストムは、今でこそ独シーメンス、加ボンバルディアと並ぶ鉄道車両メーカーのビッグ3の一角を占めますが、SNCF以外への売り込みは、必ずしも熱心だったわけではなく、近隣のベルギー、オランダ、ポルトガルなどには納入されていましたが、シーメンスやボンバルディア(元々は独アドトランツなどダイムラーベンツの鉄道部門をはじめ、複数の欧州系鉄道メーカーを買収)に比べれば、外国への売り込みは熱心ではありませんでした。というよりは、伊フィアットやスウェーデンABBにさえ後れを取っていたという方が正しいかもしれません。

一方で欧州の鉄道政策により、オープンアクセスで活性化が図られ、ペンドリーノやX2000が廉価な高速車両として売り込まれている状況に対して、SNCF絡みのユーロスターやTARIS、一括受注のスペインAVEや在来線バージョンのユーロメッドなどで受注に成功はしたものの、スペインはペンドリーノも買っているし、独自技術でTARGOの300km/hバージョンを開発するなどしていて、油断できません。

一方で重電部門でABBから譲り受けた発電用大型ガスタービンで欠陥が発生したり、鉄道部門でもイギリスでの取引で採算割れを起こし、果ては財政難で銀行融資を断られるなど追い込まれ、03年~05年の3年間赤字決算を余儀なくされました。そういえば仏TGVに日本製車両なんて話題もありましたが、アルストムが危機を脱した後のタイミングですから意味深です。アルストムの経営危機のときには、本当に日本から車両を買うことも考えられていた可能性はあります。またそのことがAGV開発のバネになったのかもしれませんね。

それを救ったのが当時財務大臣だったニコラ・サルコジでした。1民間企業であるアルストムへの資本支援や4年間の支払延期などの了解を欧州委員会から取り付け、文字通り獅子奮迅ぶりを見せた結果、アルストムは立ち直り、車両メーカーとして自前で高速車両を開発できるまでに実力を蓄えたのでした。特定民間企業への支援ですから、当然反対もあったでしょうし、政治家としてはリスキーな行動だったはずです。しかしサルコジはそれをやり遂げたわけですから、なかなか侮れないリーダーシップの持ち主といえます。ただの毛深い絶倫オヤジではなかったんですね^_^;。

政治家は結果責任を問われるわけで、彼の国ではそれなりに覚悟のいる職業なんでしょう。ガソリンが上がっても、老人が悲鳴を上げても、どこか他人事で、あまつさえ「苦渋の決断」を演出するあざとささえ見せるどこかの国の宰相とは大違いですね。

で、最高速360km/hというAGVのスペックは、くしくもJR東日本がFASTECH360で開発目標とした速度と同じですが、FASTECH360が東北新幹線延伸を睨んだ高速化という具体的な想定があるのに対して、AGVは投入線区を特に明示しておりません。日本の鉄道関係者には信じ難いところでしょうけど、アルストムはAGVを大真面目に世界中に売り込もうとしているのです。

とりあえず発表されたところでは、納入先は伊NGV社という会社です。2010年により深度化する欧州のオープンアクセス政策の下、大陸で初の高速鉄道運行事業者となる会社で、11連25編成(10編成の追加オプション付)を30年の保守契約込みで受注しており、とりあえずイタリアでまず走ります。当面最高速は300km/hということです。360km/hで走るためには、線路側の改良を待つ必要はあるのでしょう。

しかし伊ディレティッシマ線(高速新線)を皮切りに、仏TGV新線、独ICE新線などの高速輸送インフラを着実に整備している欧州のことですから、いずれ360km/hの営業運転が始まる可能性はあります。その最初の候補は、仏国内で整備が進んだTGV新線でしょう。高速車両は傷みが早いですから、TGVの車両更新は喫緊の課題となるはずです。SNCFから自立したとはいえ、アルストムもそこに照準を合わせてAGVを開発しているはずです。SNCFからの大口受注、さらにEU域内の鉄道から、中国などアジアまで睨んで、商機をうかがっていると考えられます。

何かこれJR東日本の新系列通勤車が旧国鉄型車両を淘汰する課程の再現に見えなくもないですね。JR東の新系列も同型車が私鉄に納入されるなどしている点にも共通性があります。

話はそこに留まらず、360km/hの性能を発揮できる線区では、表定速度300km/h超となるわけですから、ざっと1,000kmの距離を3時間程度で結べるわけで、パリ起点でアムステルダムやバルセロナが射程に入り、航空需要を侵食するはずです。となると在来技術の延長線上で燃費改善してもCO2削減が難しい航空から鉄道へのシフトが鮮明となり、温暖化防止を経済のテコにしようとする欧州の環境戦略にも合致します。

翻って日本に当てはめれば、360km/hは東京起点で博多、札幌が射程権に入る速度ということがいえますので、FASTECH360が開発目標としてこの速度を選んだ理由も明白です。後ろ向きの某社はどう見るか。

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Wednesday, April 30, 2008

道路は続くよ何処までも

道路特定財源の暫定税率復活がが衆議院の再可決で決まりました。政府与党としては予定通りなんでしょうけど、直前の衆院山口補選での大敗北もなんのその、政権にしがみつく執念だけは凄まじいですね。この問題は度々取り上げてまいりましたし、国鉄改革との比較でも取り上げました。いわゆる道路公団改革の結果として、それまで料金収入と借入金だけしか財源のなかった高速道路の整備に道路特定財源が投入できるようになったいわゆる焼け太り問題も指摘させていただきました。ことほど左様に改革を標榜しながらその実内容はむしろ後退しているケースは、郵政民営化と軌を一にします。

ガソリン値下げはうたかたの夢に終わったわけですが、昨今の行動経済学の実証研究で、人は同額の利益と損失を蒙ったときに、損失の方が利益より2~2.5倍大きく感じるというのがあります。いわゆる損失回避バイアスと呼ばれるものですが、ガソリン税が元に戻ったことで2.6兆円の税収を取り戻したと政府が考えるならば、とんでもないことです。国内消費で5兆円超のマイナスインパクトを受けたのと同じということです。当然経済は停滞し、税収も不足します。ま、そもそも20兆円に及ぶ赤字国債の発行が決まっているなかで、2.6兆円の未来への付回しをするなというのは、どう見てもブラックジョークです。

ま、元々私はこれ以上道路は造るなと申し上げてきたわけです。実際洞爺湖サミットで地球温暖化問題をテーマとしたい意向があるようですが、道路を作って必要以上に生活空間を間延びさせることの弊害を真剣に考えるべきですね。昨今欧州から始まった鉄道復権の動きは、まさに温暖化防止に対する欧州の真剣さの表われなのですが、鉄道の通らない洞爺湖町でサミットという時点で、日本の本気度が疑われます。ちなみに、以前から鉄道ネタが多い週刊東洋経済の4/19号で鉄道革命が特集されてます。鉄道の今をコンパクトにまとめられており、おススメです。購入はこちらから。

実際には人口密度の低い欧州での鉄道復権は、平坦な途ではなく、公的助成なしには成り立たないのが鉄道事業の常識でした。しかし欧州の鉄道政策は、オープンアクセスを原則とする過激なもので、鉄道線路保有者に列車運行を希望する事業者の参入を妨げてはならないというもので、いわゆる上下分離原則なんですが、これによって各国鉄道が国境を越えた列車設定を行ったり、独カールスルーエのように都市交通事業者へ線路を開放するとか、ドイツ鉄道(DB)がとりわけ熱心な国際貨物列車などにより活性化されてます。そして人口密度の高いアジアへの売り込みも熱心ですが、国内事業の厳しさゆえに国外での事業機会を求め、規模の利益を追求しているわけです。台湾新幹線をフルターンキー(一括受注)ではないからやだ、と投げ出した某社の空気の読めてなさ加減が知れます。


翻って日本ですが、鉄道活性化は事業者ベースでの取り組みに留まり、整備新幹線のように将来展望の定かでない事業に拘泥するなど、欧州に後れを取っていることを認めざるを得ません。アジアが今後の鉄道プロジェクトの中心となりそうですが、事業規模からいってフルターンキーでの受注は難しく、本来台湾での欧州システムとのすり合わせの経験は貴重なものの筈ですが、あっさり捨ててしまいました。あれこれあった台湾高速鉄道ですが、ベトナムやインドなどアジア地域の先行事例としてコンサルタントとして台湾高鉄が名乗りをあげようという気運もあるようです。

あと税収不足で予算を執行できないと騒いだ自治体ですが、当ブログで地方独自課税にも言及しましたが、それと同等のことを発言したのは東京都の石原知事だけという体たらくです。地方の首長の本気度はこんなもんです。

後期高齢者医療問題もあって、当分解散もできない福田政権ですが、つまるところ政治の空白だけは今後とも続くわけで,JAPAiN(日本の苦痛)ならぬJAPAM(日本のジャンクメール)と言われかねない状況は続きます。

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Sunday, April 13, 2008

未来へ翔る新型スカイライナー

N'EXの車両更新を取り上げた以上、こちらも取り上げないとバランスが悪いですね。E259系がが2009年登場ですから、ある意味2010年の成田空港新アクセス完成によるニュースカイライナーを迎え撃つためということも言えます。両者は現状でも棲み分けられてはいるのですが、スカイライナーのてこ入れで、勢力図が変わる可能性は十分あります。

まずは現状ですが、JR東の253系は、3連及び6連合計111両で30分ヘッド、スカイライナーはAE100形8連7本でピーク時30分ヘッドですから、JRは新宿や横浜など広域に運行して集客しているのに対し、京成スカイライナーはひたすら上野、日暮里と成田空港を往復するだけですので、半分以下の車両数で対応できているわけです。編成定員も400名超でその意味で意外と生産性は高いかもしれません。ただしターミナル立地の劣勢は拭えず、JRやリムジンバスの後塵を拝する結果となっています。

一方で京成グループとしては、ちはら線を直営化した後、北総線が悩みの種でした。千葉ニュータウン計画自体、北総線のほか、千葉県営鉄道北千葉線(仮称)、成田新幹線を通し、それをテコに大規模開発を目論んでいたのですが、北千葉線については結局県営鉄道としては実現せず、北総と重複しない小室以東の区間が紆余曲折を経て京成の子会社である千葉ニュータウン鉄道を第三種事業者とする北総鉄道の第二種事業区間として現在に至ります。またオイルショックを契機とする政府の総需要抑制策によって、建設が内示されていた成田新幹線は凍結され、2度と復活することはありませんでした。

千葉ニュータウンについては、誇大と思われる開発計画から逆算されたのでしょうけど、北総鉄道は初期投資が過大となり、それが運賃へ跳ね返って首都圏通勤鉄道の常識を超える高運賃ゆえに、沿線開発は一向に進まず、累積赤字を垂れ流す結果となりました。昨今ようやく沿線に大規模商業施設がオープンするなど、開発が徐々に進み、単年度で黒字を出すには至ったものの、累損一掃には程遠い状況です。一方で成田新幹線ですが、構想線は土屋(信)~成田空港間が成田空港高速鉄道としてJR成田線と京成線が乗り入れる形で実現し、東京~西船橋間は京葉線都心ルートとして実現しているのですが、千葉ニュータウンを通過する区間は当然実現しておりません。ですが都心から遠い成田空港の鉄道アクセスに利用しようという構想は度々浮かんでは消えしました。中には京葉線都心ルートで実現した区間と、着工の目途が立たない有楽町分岐線(亀有ルート)とをつなぎ、押上から京成線、高砂から北総線を通り、印旛松虫(仮称、現印旛日本医大)から成田新幹線ルートを通って成田空港へ至るものなどもありました。当然、京葉線都心ルートと成田空港高速鉄道が実現して、構想は消えたわけですが。

その意味で成田新幹線ルートを用いた成田空港アクセス鉄道のアイデア自体には、それほど新しい要素はないのですが、今回の北総ルート活用では、山手線上のターミナル(日暮里)から30分台という具体的な目標を掲げて練られた計画であるという点に新しさがあります。併せて北総線のてこ入れ策でもあるという点も見逃せません。
詳しくは新型スカイライナーwebサイトをご参照ください。またニュースリリース(PDF)もご参照ください。

現状と比べ、15分の時間短縮とピーク時20分ヘッド運行がアナウンスされてます。つまりは時間短縮と折り返し間合いの見直しで、現行の最大運用数で対応できるわけで、ここがキモです。つまり成田新幹線の落とし児である北総ルートを活用することで、生産性を劇的に高められるわけです。スピードアップによる集客増とともに、おそらく現行と同等の運賃料金でサービスレベルを高められるわけですね。加えて同じ北総ルートで一般車両によるアクセス列車を20分ヘッドで設定でき、既存の京成線ルートからも20分ヘッドで併せて1時間最大9本の列車設定が可能になるわけです。あと裏技ですが、第1.第2ターミナルの中間に位置する東成田駅を活用すれば、さらに上乗せが可能なわけですから、盆暮れ春秋連休などの需要期への対応力も高まるわけで、京成としては力が入りますね。実際新型スカイライナーは8連8本を投入予定ということで、おそらく高速運転で走行距離を稼いでしまうことから、検査予備を余分に見込んでいるものと思われます。

となると、あとの興味として一般車両によるアクセス列車がどういったものになるかですが、いわゆるエアポート快特が京成線内快速に格下げされ、佐倉止まりになるなど、成田―羽田連絡の実態を失っている状況ですが、北総ルートによる復活があるかどうか、興味は尽きません。ただし一般車両使用ですと、最高速160km/hというわけにはいかないでしょうから、成田―羽田間、直通1時間には程遠いといえます。それでもダイヤ上の制約は減ります。

いわゆるインフラ投資で、前の記事でも指摘しましたが、新線効果が長続きしない状況にあるわけですが、人口減少が始まっている以上、避けられない問題です。その一方で成田空港新アクセスのような事業では、既存ストックに付加価値をつけることができるわけで、今後のインフラ整備のあり方を示すものといえましょう。元々成田闘争という負の歴史を背負っている千葉県ですが、高度成長が去った今、改めて身近な資源を有効活用していく知恵が求められます。

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Saturday, April 05, 2008

つくばみらい市の憂鬱、新線効果の限界

東京圏の住宅地の下落率上位市区町村

(単位 : %)


1 2 3 4 5
市区町村 茨城県
利根町
茨城県
龍ヶ崎市
埼玉県
五霞町
茨城県
つくばみらい市
茨城県
境町
△5.9 △4.7 △3.8 △3.5 △3.2

国土交通省の公示地価に関する発表の中から、こんな表を発見いたしました。東京圏の住宅地の下落率上位市町村ワースト5中4つまでが茨城県という結果です。ま、外縁部から下落が始まるのは仕方ないところでしょうけど、その中で異彩を放つのが4位のつくばみらい市です。言うまでもなくつくばエクスプレス沿線です。

つくばエクスプレス沿線の他の自治体については、おおむね上昇しているようなので、つくばみらい市の数値は目立ちます。ま、前の記事でも指摘しましたが、そもそも公示地価そのものがフィクション性を含んでいるので、他の自治体でも下落が始まっている可能性は留保する必要があるかもしれませんが、断定は控えておきます。

しかし計測された標準地のワースト10ランキングを見ると、1~4,6,8位につくばみらい市の標準地がランクインしており、下落率の高さはそれ以前の地価水準が高かった可能性があります。つまり新線開業効果を織り込んで形成された相場が腰折れした可能性が高く、