鉄道

Wednesday, December 16, 2009

成田スカイアクセスの強気

本日、成田空港新アクセス(北総ルート)の運賃が京成電鉄から発表されました。開業は10年7月の予定で、新ルートの愛称を「成田スカイアクセス」とすることも併せて発表されました。

成田新高速、愛称「スカイアクセス」 京成電鉄、運賃も発表
運賃は上野―成田空港間1,200円で、在来線の1,000円より200円高く、スカイライナー料金も、現行920円から1,200円とし、合計2,400円とすることが発表されました。現行スカイライナーの合計1,920円からは480円アップという微妙な価格設定は、何を意味するのでしょうか。

新型スカイライナーの記事では、現行レベルと同等の運賃料金を予想しておりましたが、とりあえずハズレとなりました^_^;。それでもライバルのN'EXやリムジンバスよりは安い水準ですが、ターミナル立地を考えると、結構強気の値付けではないかと思います。

少し言い訳しますと、高砂以東と成田空港の間は、同一改札間となるので、改札分離しなければ異なった運賃設定は難しいと考えました。ですから料金を高めに設定することは予想してしたものの、運賃でも差をつけるとは考えませんでした。

元々成田空港アクセスは、計画倒れとなった成田新幹線計画を踏襲し、先行整備された新幹線駅を活用したものですから、ホーム中央に柵を設けて停止位置をずらすことで改札分離することは、物理的には可能ですが、そのための追加コストを考えると微妙かなと思っていたのですが、別運賃とするということは、追加コストを払っても影響なしと考えたのでしょう。また、競合するJR普通運賃と比べても安い水準ですから、妥当といえば妥当です。

改札分離はコスト上昇要因でもあるわけで、とはいえ新ルートができたから在来線運賃を値上げしますというのも通らない話ですから、苦肉の策とも見ることができます。現状の硬直的な運賃制度の下では、この手の不合理は仕方ないのでしょう。加えて今年10月22日に暫定供用されていたB滑走路の2,500m延伸が実現し、供用時間の拡大などで発着枠拡大が予定される成田空港のアクセス輸送に対する成長性を加味して、多少のコストアップは吸収できると考えたのでしょう。

あとJRのN'EX後継車E259系の登場で、とりあえずJRの手の内が明らかになりました。両数は増えたものの、増発など供給力増加は限定的ですから、成田スカイアクセスで劇的に輸送力を増やす京成にとっては、シェア拡大が見込めるわけですから、強気の値付けには意味があるということでしょう。

とはいえ羽田空港の国際化や日米オープンスカイ協定締結で、とりあえず日米4往復ずつとはいえ日米定期便の就航も決まっており、成田空港の空洞化も心配されます。そんなこともあって羽田―成田直通1時間の高速鉄道整備を神奈川県の松沢知事が言及しました。

成田-羽田間の高速鉄道を 神奈川県知事、国交省・成長戦略会議
同じ会議に出席していた別の委員から「羽田の第5滑走路整備の方が早いのでは?」と突っ込まれました。羽田の国際化は将来に亘って進むと考えた方が良いでしょう。

となると羽田と成田の棲み分けは、例えば着陸料で差をつけるなどの方法で、LCC(格安航空会社)の拠点とする方向性も考えられます。となると料金列車のスカイライナーは思ったより利用されない可能性もあり、将来は結構微妙です。

あとおまけの話題ですが、新型スカイライナーをはじめ、車両のリースバックでオフバランス化を進めている京成電鉄にとっては、IFRS(新国際会計基準)の適用で、リースのオンバランス化が義務化されて重荷になる可能性があります。同様にリースで車両調達を加速する相鉄や阪急も同様ですが、リセールバリューが低下したジャンボ機をリース調達しているJALと同じ悩みです。定員の多い機体の空席を埋めるために格安航空券として出回るために、JALは「世界最大の格安航空会社」との陰口も叩かれてます。成田スカイアクセスがそうならないように祈りましょう。

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Tuesday, December 08, 2009

踏切番、高架不幸か立体化

踏切番は俗称で、踏切警手が正しい呼び方なんでしょうけど、高密度運転を強いられる首都圏の通勤鉄道では重要な役割を担っております。2005年に東武伊勢崎線竹ノ塚の踏切で、警手の判断ミスで横断中に4人が死傷した事故がありましたが、それを機にいわゆる"開かずの踏切"問題が注目され、都内で遮断時間が長く、街を分断している踏切の解消の機運が生まれました。そんな中で先月、京王線代田橋―仙川間の立体化線増事業の都市計画変更素案が住民説明会で明らかにされました。中身に入る前に思い出を語ります。

以前通勤で下高井戸で京王線から世田谷線に乗り継ぐルートを利用していたことがありますが、当時まだ橋上駅舎化されておらず、上り下りの各ホームに独立に改札があったのですが、京王線の上り各停で最後尾車が定位置でした。下高井戸に着くと目の前が改札口で、ダッシュで抜けて直ぐ踏切を渡るんですが、その時点ではまだ各停が客扱い中で後方に急行/通快が信号で抑止されているのが見えます。そして下り列車がないことを警手が確認して遮断機を上げて通行人を通すのですが、その手際よさに感心するとともに、こうでもしないと捌けないラッシュ輸送の現実を目の当たりにしたものでした。

現在は橋上駅舎が完成し、踏切は自動化されて遮断竿が下りる形態になっておりますが、おそらく遮断時間は増えたものと思われます。橋上駅舎が出来たために目の前の世田谷線に乗り換えるのに階段の上り下りを強いられ、以前よりも時間をロスします。加えて大改良で車両が新しくなり、ホーム嵩上げで段差も解消され、保安装置も装備されながら、車両の収容力を減らしスピードダウン、三軒茶屋も乗換動線が延びたというよくわからない"改良"がされた世田谷線では、当時の勤務先に遅刻しそうです^_^;。

それだけに立体化が具体化することは喜ばしいことですが、その一方で一体に進める計画だった線増は、代田橋付近から地下へ潜り、つつじヶ丘で現在線に合流する形となり、その間明大前も含めて駅が背地されない計画素案となっておりますので、当面着手予定のない線増計画を切り離したというのが正しい見方です。その一方で明大前と千歳烏山では副本線を設置して構内4線の待避駅とする計画が素案に盛り込まれております。立体化事業自体は道路の事業で、鉄道事業者の負担は14%となりますが、あくまでも現在線の立体化に係わる部分だけで、副本線設置やホーム延伸・拡幅など鉄道側の設備改善分は全て事業者の負担となります。

この辺は運賃問題も含めて2006年時点で展望した中で最も保守的な想定に沿った内容といえます。その意味では明大前と千歳烏山の改良は踏み込んだものと評価してよいでしょう。具体的な運転計画は不明ながら、両駅ではラッシュ時の2線交互発着で客扱いで生じる遅延を吸収できるようになるので、「よく遅れる」といわれる京王線の朝ラッシュ輸送もいくらか改善されます。ま、これもかつての殺人的ラッシュの時代よりも混雑率が低下し(169%)、駅の改良も進んで駆け込み乗車の余地が生まれたことで却って客扱い時間が延びるという皮肉な事態ですから、やはり抜本的な解決には程遠いものではあります。

今後のスケジュールとしては、都市計画素案を詳細に詰めて行き、環境アセスメント評価などを経て数年かけて都市計画決定し、工事実施計画を策定の後に着工、用地買収などがスムーズに進んだとしてもそれから更に10年程度かかるわけですから、気の長い話ですし、その間は当然線増計画は凍結されるわけです。このあたりの評価は難しいところです。

前の記事でも指摘したように、2050年までは高齢化の進捗による人口減が続くわけですから、線増のような大規模投資に慎重になるのは私企業として当然のことで、仮に実施する場合、相応の公的支援が得られるということでもない限り、難しいところです。ただ京王に関しては運賃水準の低さが、追加投資の余地を生む原資になりうるし、また私鉄随一の自己資本の厚み(30%超)もあり、投資余力は京王自身も自覚しているようです。とはいえ日常的に利用する沿線住民の理解を得るのは容易ではないところです。ましてラッシュの輸送改善ですから、朝のピークタイム以外の時間帯には過剰設備となって生産性を下げるものでもありますから、高齢化でラッシュ利用の機会が減る沿線住民の理解を得るのはますます困難になります。

方法があるとすれば、クレジット機能付PASMOでポイント還元を前提に、普通運賃を値上げした上で、カード所持者にピーク外の時間帯と土休日に追加ポイントを付与するなどで事実上のピークロード運賃を制度化することでしょうか。ラッシュ時間帯は定期券利用者が多いですから、被用者の場合定期代は雇用主負担となるケースが多いですから、ラッシュの解消に企業の支援を得る形にもなります。そろそろそういったことを検討しても良いのではないでしょうか。

元々大都市部のインフラ整備は地価の上昇が阻害要因となって進まないものです。それを踏まえた都市計画がされなかったのが残念です。例えば首都高のような都市高速道路は日本では普通ですが、都市景観にうるさい欧州では見られません。その分環状道路が充実していて、通過車両を減らすことで渋滞対策としております。仮に東京でも首都高の整備に先立って外環道や圏央道整備に着手していれば、当時の土地利用状況からとっくに完成していて機能していたでしょう。それを首都高整備を先行させてそれが渋滞するから今から環状道路をというのは、順序が逆です。インフラ整備は時間がかかるだけに将来を見据えて実行しなければならないものです。

鉄道に話題を戻しますと、12/6に中央線三鷹―国分寺間が高架化され、13ヶ所の踏切が除去されました。こちらも難産でしたし、線増線を地下とする計画も京王線とそっくりです。中央線の場合混雑率は京王よりも高く、改善の要請は強いわけですが、JR東日本は踏み込みませんでした。やはり現状では輸送力増強のインセンティブは働かないのです。それどころか高架化工事で上り線が仮線移設されたために、踏切を渡りきれずに列車にはねられるという痛ましい事故まで起こるという皮肉な出来事まで起こります。

この地下急行線というアイデアは、西武新宿線の新宿―上石神井間の輸送力増強策として出されたもので、上乗せ運賃積立ての特特法事業として認定されながら、実現しませんでした。公式には人口の都心回帰で混雑が緩和したため、事業の必要性を見直した結果とされてますが、素直に飲み込めない話です。

西武鉄道は踏切立体化は道路の事業として冷淡な態度を取り続けてきたため、環八井荻踏切のような重要踏切放置されていた一方で、地下急行線で線増を計画するというある意味身勝手な対応に、行政側が快く思わなかったふしがあります。具体的には1列車1,000~3,000人乗車の複数列車がトンネル内を走行するのに、計画では避難路や通風孔となる竪坑が少ないという指摘を受け、計画を断念したようです。竪坑を設けるには地上に用地を確保しなければなりませんので、経済的とは言えなくなってしまいます。ちなみに地下鉄では平均1km~1.5km毎に駅があり、駅間に列車風対策の排気ダクトがありますので、0.5km~0.75km毎に竪坑がある形になり、問題なしとなるわけです。この観点からすると大深度地下利用を想定する中央リニアも実現は難しいことになります。

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Wednesday, November 25, 2009

京急油壺延長は波高し

京急久里浜線の油壺延長が、2005年に事業廃止届提出で免許返上となり、見直しされることになったことは以前の記事で取り上げましたが、地元の方からコメントをいただき、動きがあるようなので、現地を見てきました。前回記事時点では、何か驚くべき新しい開発計画を打ち出すのではないかと期待をこめておりましたが、どうも逆の意味で驚くべき計画になりそうです。というのは、かなり陳腐な宅地開発計画になりそうなのです。しかも無理スジです。波静かな油壺とは真逆のようです。

現地の状況は
航空写真"でご覧ください。場所的には三崎口駅から1km程度の距離で、深い谷戸の地形で、底は湿地になっているようです(既に囲いがあって中には入れません)。計画ではここを発生土処分場として湿地を埋め立て、7年半後に土地区画整理事業を行うという計画になっているそうです。以下寄せられたコメントから明らかなことをまとめますと、

1.39年前の計画時点より地価は半減し三浦市の人口も減少が予想される中新駅設置で商業地への指定がえで付加価値をつける必要がある。
2.そもそもこの地域は第一種低層住宅専用地域であり、本来は発生土処理施設など作れる場所ではない。
3.元々1995年に県と市と京急で1駅延進して駅周辺を商業地域に指定換えすることが合意されていた。
4.しかし2005年に京急が事業免許を返上してしまった。
5.ゆえに商業地域にすることはできず宅地開発の前提となる発生土処分場はできない。
6.そうすると宅地開発と一体の鉄道延伸のための事業認可再申請はできない。
とまぁ堂々巡りになってしまうわけです。とはいえ発生土処理は始まっており、鉄道延伸への道すじがついているのかどうか、現時点では不明ですが、単なる既成事実の積み上げであるならば、あまりにも馬鹿馬鹿しい話です。つまり宅地開発も鉄道延伸も実現せず、環境破壊だけが行われるという愚かな可能性があるわけですね。

航空地図のスケールで確認していただければ明らかですが、場所は三崎口駅から1km程度で、徒歩でも10-20分程度の距離です。おそらく戸建て住宅中心でしょうから、完売されたとしても1,000戸程度、人口4,000人規模といったところでしょうか。都心からの距離を考えるとこれでもかなり高いハードルだと思いますが。常識的にはバスで十分、そこへ鉄道を通して駅を作るというんですから、まともに考えたら事業認可の可能性は限りなくゼロに近いと思うのですが、京急のこの行動は謎です。

2005年の免許返上も、国の強力な指導によるらしいのですが、詳細は不明です。既に工事実施計画まで認可され、着工されていた事業ですが、用地買収難と環境保護を求める反対運動で工事が進まず、三崎口から先は着手されておりませんでした。

その間に1999年の鉄道事業法改正があり、需給調整規制が撤廃され、従来の免許制度が認可制度に緩和されたのですが、旧制度で未着手のまま期間延長を続けていた油壺延長線を国が整理しようとしたのだと思います。というのは、そもそも免許制度は鉄道事業の国家独占を根拠とし、民間や自治体など国以外の主体が事業に参入するのに、国による当面の整備計画がない路線、区間で、国が求めたときには買収に応じるなどの条件を基に、事業の独占権を与える性格のものですから、権利制、財産制があると見られるわけです。ですから実現しなくても延長手続きを繰り返す限りは、免許路線、区間への他社の参入はないわけです。いわゆる免許維持というやつですが、おそらく国としては旧法による免許で未実現のものがある限り、事務手続きの窓口は残さなければなからないわけですから、京急1社のためにそんなことはできないという判断があったのかもしれません。

とはいえ免許廃止を願い出た事業で再度認可を得るハードルは高いと思うのですが、京急はそうは考えず、規制緩和で事業の採算性だけで判断されるならば、一旦取り下げて再申請した方が手っ取り早いと考えたのだと思います。とはいえ開発規模からいえば採算性にも疑問符がつきます。鉄道事業全体で採算が合えばよいのかもしれませんが、その辺の国の判断基準は必ずしも明確ではありません。

そもそも鉄道の独占性は道路整備その他、交通機関の多様な発展によって事実上失われております。だから資本費負担が大きくリスクの高い鉄道事業への新規参入は難しいわけで、それを補うために整備新幹線や京阪中之島線、阪神なんば線などで採用された償還型上下分離方式などで、公的な支援が制度化されたわけですが、この場合は国交大臣の事業認定が必要です。ただし実績として大都市中心部の鉄道整備など、公共性が明らかで整備費用が民間の負担に耐えられない水準にある事業でしか認められる可能性はないでしょうから、油壺延長線への適用は考えにくいところです。

日本の人口は2005年にピークアウトしたことは知られておりますが、その先の人口が底を打って増加に転じるのが何時になるかはあまり意識されていないように思います。結論から言えば、現在の人口減少は高齢化によって死亡年齢に達する人が増えたことによりますから、今後も高齢化の進捗と共に人口減少は続くわけです。

しかも出産年齢の女性人口も年々減少してますから、多少出生率が上向いても誤差範囲でしかなく、人口減少は相当長期間続くことになります。ザックリ言って人口の多い団塊ジュニア世代が死亡年齢に達する2050年ごろまではこの傾向は続きます。当面の出生率はその後の回復スピードに多少影響する程度ということで、実は少子化対策はほとんど無意味なんです。

加えて人口減少で労働力不足を心配し、移民を受け入れるべきという議論もありますが、人口統計に影響するレベルということで、仮に20代若者に限り1,000万人単位で移民を受け入れたとして、40年後には高齢者にプラスされるので、高齢化のピークアウトを遅らせ、人口減の底打ちを遅らせるだけです。一方その1,000万人に日本語、文化、法制度など社会生活に必要な最低限の教育が必要ですが、そのコストを誰が負担するのでしょうか。所詮安い労働力を欲しがる企業の我が儘です。

というわけで、都心から離れた三浦市で鉄道と一体で整備されるような大規模ニュータウンを開発したところで、誰が住むのかというところです。金をドブに捨てるようなものですから、仮に事業認可の目途があるとしてもやるべきじゃないですね。無理をすればおJALへの道^_^;へ迷い込みます。

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Saturday, November 14, 2009

メトロポリタン・アンダーグラウンド

タイトルで地下鉄問題と直感した方、正解です。東京地下鉄株式会社(通称東京メトロ)の中間決算発表会見のニュースで、メディアによってこんなに違います。

東京メトロ、都営地下鉄と統合協議 メトロ社長が言及
東京メトロ社長「09年度中の上場は困難」
東京メトロと都営地下鉄、経営統合で協議
同じ日の同じ会見で、メディアのよってこんなに着眼点が違うことに注目してください。ニュースソースは同じはずなのに全く異なった印象を受けます。

事実関係としては、11日に中間決算発表の会見を開き、その席で09年度中の株式上場が難しいこと、都営地下鉄との経営統合問題を課題として都と協議はしていることを明らかにしたというだけの話です。東京の地下鉄一元化の協議は、営団時代から行われていたことで、特に目新しいことでもありませんし、当時から営団と都の職員の待遇の違いや、都営地下鉄の巨額の累積債務問題が障害となり、協議は前進しませんでした。

そして営団は政府の民営化方針に従って政府と東京都が株式を保有する形態の特殊会社へと改組され、政府は保有株を売却して完全民営化に舵を切ろうとしているのですが、東京都が邪魔しているのは既に述べましたし、メトロ株を狙う法人企業の話もしました。付け加えるならば、三菱地所、三井不動産他の不動産大手や、銀行など、メトロ株に色気を出している法人企業は多数あると考えた方がよいでしょう。

というわけで、上場が難しい理由として、リーマンショック後の株式市場の低迷と主幹事証券の選定遅れを挙げておりますが、公式見解でしかありません。リーマン前の株価水準がグローバルバブルで下駄を履いていただけですから、内需関連で実力勝負できるはずのメトロ株の売却が困難とは考えられません。あと主幹事問題ですが、記憶違いでなければ、営団時代に発行していた地下鉄債券では日興証券が主幹事だったと思いますが、法人部門の日興コーディアル証券の三井住友FGによる買収もあり、主幹事の座をめぐる大手証券の争奪戦があったのかもしれません。この部分はとばっちりといえるかもしれませんが。

いずれにしても、メトロと都営地下鉄の統合は五里霧中と考えるのが正しい見方でしょう。メトロの社長会見では本音は言えないでしょうけど、東京都の株式保有継続の意向が、株式上場の最大の障害であることは明らかです。実際こんなニュースもあります。

石原知事、東京メトロ株「都は売らない」
政権交代でどうなるかと思いきや、前原国交相は株式売却を都に働きかけているということで、予算編成で財源探しに苦労している民主党政権としては、株式売却益は喉から手が出るほど欲しいところでしょう。とはいえ都が株式を持ち続け、経営に影響力を行使する姿勢を見せている限り、話は進みません。

完全民営化されたはずのJALでさえ、政府、与党議員、自治体の圧力に屈して現在の惨状になっているのですから、メトロに都の影響力を残す選択肢はあり得ません。それよりも東京都自身が株式売却益で都営地下鉄の累積債務を繰り上げ償還することを考える方が正解です。そうすれば地下鉄統合の障害の一つが消えますし、運賃をメトロと同水準に下げることも可能でしょう。その上で都が職員の新規採用を停止し、段階的にメトロに業務委託していく形が、おそらく考えられる地下鉄統合の唯一現実的な解です。都営バスでは既に一部民間委託は行われていて、都も出資するはとバスの派遣乗務員が一部路線で乗務しています。これがホントの派都バスなんちゃって<^o^;>。

あと地下鉄統合がなぜ必要かも考えてみましょう。よく言われるのが、乗り継ぎの場合の初乗り運賃二重払い問題で、旧運輸省時代から国の指導もあって、乗り継ぎ割引が制度化されていて、現在は打ち切り合算した運賃から70円引きが乗り継ぎ1回限り適用されるようになっておりますが、特に1駅同士の乗り継ぎなど短距離で割高となります。

実は運賃制度の問題は、経営統合しなくても解決可能なんです。そもそも初乗り運賃が距離比例でない割高水準になっている理由ですが、駅で乗車券を発行し、改札、集札でチェックするために、駅には人を配置し、設備を整えないといけないので、その部分の固定費という考え方です。現在はさらに自動改札やICカード乗車券など営業設備面で初期投資額が大きくなっているので、この傾向は増しています。一方で閑散路線の無人駅はどうなるというご指摘もあるでしょうけど、これは合理化の結果ですし、そもそも運賃取りっぱぐれのリスクがありますから、そのための上乗せとも解釈できますが、後付け感は否めません。

ですが、例えばJRの会社間またがり利用の場合は、運賃が通算されるのはご存じの通りです。三島会社のように賃率の異なる場合には、擬制キロまたは上乗せ運賃で対応し、運賃通算自体は維持されてます。乗車距離の違いや利用者数の違いなどはもちろんありますが、JR同士で可能なことが、首都圏など大都市圏の事業者同士でできない道理はないわけで、その意味で運賃通算のための地下鉄統合という理由付けは、必ずしも妥当とはいえません。

例えばPASMO導入時に改札分離したJR/メトロ西船橋駅の事例など、事業者の都合が優先されましたが、その結果固定費を増やしているとすれば、何のための打ち切り合算、初乗り二重払いなのか疑問です。適切な事業者間の運賃分配が可能ならば、これでもかとばかりの物々しい自動改札ゲートを減らせるわけで、その分コストダウンできますから、運賃を下げて乗客に還元することも考えて欲しいところです。

特に地下鉄統合で見落とされがちな議論ですが、経営統合と運賃共通化を切り離せば、JRや私鉄との運賃共通化のような、世界の大都市では当たり前になりつつある方向へ向かうことも考えられます。具体的には運賃収入を都や事業者が出資する精算機関に集め、SuicaやPASMOの乗車履歴の集合から推定される乗車実績比率で事業者へ分配するなどの方法が考えられますが、事業者の自主性に任せても実現は難しいだけに、行政機関である東京都がイニシアチブをとって行動する必要があります。

というわけで、東京都は完全に立場というか役割を間違っています。ひょっとしたら事業仕分けが必要なのは東京都かもしれません。とはいえ銀行税問題で二審まで敗訴し、銀行に多額の和解金を支払ったり、公金を投入しながら乱脈融資でどぶに捨てたり、意義が不明確なままオリンピック招致に失敗したりしている石頭都知事じゃ無理か-_-;。

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Sunday, November 08, 2009

意外に可能な温暖化ガス25%削減

三島由紀夫の「美しい星」という作品がありまして、テーマはズバリ「宇宙人」。両親と2人兄妹でそれぞれ水星人、金星人、火星人、木製人を名乗る不思議な一家の話です。まるで鳩山由紀夫、幸夫妻の出現を予想していたかのような内容は笑えます。三島作品で笑えること自体稀有なことですが^_^;、市谷での割腹自殺で狂気の作家と見られがちな三島由紀夫が、実は村上春樹に通底するポストモダンな感性の持ち主であることもわかります。早く生まれすぎて周囲に理解されなかったのかもしれません。

んで鳩山首相の「宇宙人」ぶりは、13日に予定されるオバマ大統領来日時の首脳会談で扱いが注目された普天間移設問題でも如何なく発揮されてます。既に10年以上店ざらしされている問題に、拙速に答を出すよりも、文字通り対等な日米関係を構築する意味で、日本の占領民意識とアメリカの日米安保タダ乗り論を乗り越えるテコにしようとしているようです。つまり同盟強化が狙いであって、優男の風貌でなかなか肝が据わってます。

実は日本の政権交代で一番慌てたのが中国でして、元々78年に鄧小平が改革開放路線へ転換したときに、手本としたのは、自民党長期政権下で高度経済成長を実現した日本です。つまり共産党1党独裁体制を維持しつつの経済成長委は可能という考え方でした。その意味で昨年の北京五輪や2010年の上海万博は、正しく日本の60年代をトレースする意味があるわけですし、欧米からの民主化圧力も、「欧米とアジアは違う、日本を見よ」という理屈になるわけです。

その日本で政権交代が起こり、民主政治の現実が示されたわけですから、予想外だったわけです。中国流解釈では、日米同盟は「ビンの蓋」、戦前の軍国主義へ回帰しないための安全弁として安心感をもたらすものと見られております。温暖化防止でも、中国が経済発展と共に排出量を増大させて国際的な風圧を受ける流れに対して、日本の前政権の消極姿勢は良い風除けでした。それが鳩山首相の温暖化ガス排出25%削減国連演説で覆されたわけですから、中国にとっては痛し痒しです。

それでいて靖国参拝否定や中国といの一番の首脳会談をセットするなど、親中的な対応を取られているので、公に非難することもままならずです。日本の意欲的な目標の表明は、米オバマ政権でも反対派の説得材料に使われているようですから、アメリカの対応如何では中国のCOP15の枠組み参加もあり得ます。ま、実際はそこまで楽観はできないようですが。

で、現時点で公式の数値が見当たらないのですが、2008年の日本のCO2排出量は、かなり減少したらしいのです。なぜならば、リーマンショックで生産が減少したからで、実際には10-12月期の減少によるわけですが、産業部門で年率換算では90年比20%超という水準に達するようです。つまり財界が主張する「乾いた雑巾」論とは違って、元々海外バブルで高止まりしていた生産水準が元に戻っただけで、25%削減の実現可能性は実は高いということを意味します。

ここで重要なのは、世界規模の経済変動でして、円安と低金利でジャパン老いるマネーを海外投資に誘導し、海外バブルに乗じてモノを売ることは持続可能ではないということです。つまり産業部門はリーマン後の生産水準で利益が出るように、過剰設備の償却と人員整理を行う必要があるわけです。その意味で生産を底上げするエコカー減税や補助金、家電のエコポイントなどの政策は、過剰の解消を遅らせるという意味で不適切な政策です。

温暖化防止に逆行するという意味で、高速道路無料化が遡上に上ることが多いですが、渋滞対策と捉えれば、実は全く異なった意味があります。道路は典型的な公共財で、車が1台増えても、他の車の利用を排除しない性質があります。つまり台数が増えて渋滞するレベルまでは、道路の社会的コストは発生しないわけです(保守費などの軽微な負担は除く)。つまり道路の通行料を課金する場合、渋滞が発生するレベルまでは負担を下げられるということです。加えて渋滞対策としての道路整備費用は、渋滞区間の課金で得られる範囲内に留めることで、社会的コストの最小化が図られることになり、民主党政権が掲げる高速道路無料化は、無駄な道路整備を制限する効果が期待できるわけです。

さらに加えて、特に首都圏などの大都市圏での道路整備は、費用の多くが用地買収費に費やされ、加えて環境アセスメント対策として防音壁や環境側道の整備を求められることで更に負担が増えることになり、必要な道路の整備が進まないという現実もあるわけですが、それで破綻しないのは、鉄道による輸送需要の集約が起きている結果と見ることができます。とすると渋滞対策としての鉄道整備という政策スタンスの可能性も考えられるわけです。

とはいえ大都市部での鉄道整備も用地買収と環境アセスメントの壁は存在するわけで、実際首都圏の通勤ラッシュの解消が進まないことに現れております。加えて国鉄民営化によって鉄道が民間事業者に委ねられている点が、問題を難しくします。

JR東日本ではインフラ整備は最小限として車両の更新と湘南新宿ラインに代表される新サービスの開発で、コストをかけずに需要を喚起しつつ、東北縦貫線のようにインフラはボトルネック部分への集中投資で対応してますが、同時に運賃の将来に亘る据え置きを宣言しており、現行の運賃水準で可能な範囲での混雑緩和しか期待できないわけです。この点は私鉄各社でも同様ですが、特に首都圏のように稠密なネットワークが形成されていると、ある部分に集中投資してボトルネックを解消しても、そのことが需要のシフトとなり結果的に混雑を助長してしまうという悩ましい結果となります。

複々線化に後れを取った小田急線が忌避され、輸送改善著しい田園都市線が首都圏最混雑路線というありがたくないタイトルを得たり、横浜市営地下鉄グリーンラインの開業と実質複々線となる目黒線の整備で、東横線の混雑が助長されたりしております。東急では本業重視で積極的なインフラ整備を行った結果、改善どころか悪化してしまったわけですから、混雑解消が如何に難しいかということですね。ちなみに東急は本業だけ見れば増収増益ですが、度重なる設備投資と関連会社のリストラで疲弊し、自己資本比率を悪化させてます。JALとJASの統合も東急の関連会社リストラ策の中での出来事で、今でも東急はJALの筆頭株主ですから、JAL問題の後ろには東急の支援も隠れているわけです。

話がわき道にそれましたが、設備投資して輸送改善しても、混雑解消に至らないのは、全体として鉄道の過去の投資不足に起因するもので、高度経済成長期のインフレ経済で、鉄道運賃が公共料金としてスケープゴートとされた歴史に由来します。それでも人口が増加している間は、ある程度の輸送力増強投資が行われたものの、人口が減少に転じた現在、事業者の自発的な投資上積みは見込めず、公共部門の関与が必要となります。ただし財政が逼迫する中、それも十分な水準に達する保証はありません。

あとはタブー視されている運賃引き上げぐらいしか手段がないのですが、これとて乗客がマイカーへ流れては元も子もないわけですから、単純な値上げは難しいわけで、あとはJR中電区間のグリーン車や通勤ライナー、私鉄の一部にもある通勤特急などで着席サービスを売りに増収をはかり、それを原資にサービスの底上げを図るぐらいしか方法がありません。それ以前に首都圏をはじめとする大都市圏が今後高齢化が進むことを勘案すると、、通勤需要そのものが減少する可能性もあり、政策的な意思決定の難しさがあります。

もう一方で過疎地の問題も考える必要があります。特に沿線に大都市圏を持たないJR四国では、高速道路無料化の影響を強く受けることになりますので、北海道や九州共々何らかの対策が必要でしょう。とはいえサイドバーのAMAZON鉄道書欄でご紹介した時刻表に見るスイスの鉄道―こんなに違う日本とスイス (交通新聞社新書) (新書) に見るスイスの鉄道事情を見れば、それでもまだまだ打つ手はあると映ります。なにしろ最大の都市チューリッヒの人口規模は36万人程度で、四国の各県庁所在都市と同程度で、比べ物にならないほどのサービスの充実ぶりですから。ただし運賃水準は日本と比べてかなり高いですが。

一つの方法論として、噂されるJR九州の株式上場でネックとなりそうな経営安定基金を本体から切り離し、自治体の資金拠出を仰ぎながら地方版鉄道建設公団に改組して上下分離でインフラ整備を行うことは考えられます。三島会社のうちJR九州以外の2社は、青函トンネルと瀬戸大橋開通でブームとなった88年をピークに輸送量を減らしており、その間に整備された高速道路の影響は明らかです。インフラ投資を促進して競争力を高めることが必要です。

あと貨物に関しては、温暖化対策として国の関与を高めることが考えられます。民営化時の基本ルールであるアボイダブルコスト(機会費用)負担方式の線路使用料をも下回る線路使用料の支払い能力しかなく、並行在来線分離三セクへは国の差額支援を得て高額な使用料を支払っているわけですが、JR旅客会社に対しても、少なくとも列車運行で発生する費用+1%のインセンティブ相当の線路使用料を支払わないと、例えばJR東海による貨物への嫌がらせのようなことを防ぐことはできません。逆に国が関与する以上、あからさまな運行妨害には罰則を設けることも考えられます。

ここまでのパッケージを示せれば、高速道路無料化は温暖化防止に反するという批判は成り立たなくなります。加えて鉄道の競争力強化のためのインフラ整備とメンテで、持続的に雇用を生み出すならば、従来のように輸出産業に雇用を依存しない内需型経済への移行とも整合的です。新政権の交通政策がどうなるか、見ていきたいと思います。鉄道回帰は世界の趨勢でもありますし。

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Sunday, November 01, 2009

JAL問題が影を落とすユニバーサルサービスの新作法

この1週間いろいろあって、記事にまとめようとしてもまとまらない^_^;。特にJAL問題で大きな動きがありましたが、やはり政権の命運を左右する大問題という直感は当たったようです。とはいえ問題はより深刻になったんですが-_-;。

そのJAL問題からメディアチェックです。

国交相、日航再生に支援機構の活用表明 再建案公表せず
日航、支援機構にグループの再生支援を依頼
何かよく意味のわからない報道と感じられますが、要は旧産業再生機構OB等の作業部会(タスクフォース)の再建案が断念され、発足したばかりの企業再生支援機構を活用することになったということです。作業部会案はいわゆる事業再生ADRと呼ばれる私的整理の手法で、銀行に条件付で債権放棄を求めるもので、見返りに人員整理や資産売却などのリストラを迫り、企業自身の手で自主再建するもので、法的整理の1歩手前の私的整理と言われます。

とはいえ当初から銀行団は再建案に否定的で、交渉は難航しました。債権放棄して支援しても、収益モデルが不透明で、今までも再三裏切られただけに、すんなりと呑めないということですが、さりとて会社更生手続きなど法的整理に進めば、既に多額の貸し込みをしている銀行団も返り血を浴びるということで、銀行サイドからは早い段階で政府が関与して公的資金による救済を求めていたもようです。

しからばこの1月の作業部会の活動は無意味だったのかといえば、さにあらず、このやり取りの過程でJALが少なくとも2,500億円の債務超過に陥っていたことが明らかになっております。つまり対策を怠れば、97年11月の北海道拓殖銀行のように突然死していた可能性もあります。その意味では作業部会はギリギリのところでJALを救ったことになります。

とはいうものの、支援機構案件となったことで、作業部会が1月かけて実施した資産査定は支援機構の手で再度実施されるわけで、スピード感が問われる中での足踏みはじれったいところですね。加えて元々地方版産業再生機構として設立された企業再生支援機構は、元々地方の埋もれた優良企業の支援を通じ、融資銀行の資産の健全化を目的とするもので、わざわざ第三セクターを対象から外すことで当時野党だった民主党も賛成したものだけに、JALの救済に支援機構を用いることには、正直違和感を禁じ得ません。

それと気になるのが銀行団の頑なな態度ですが、実はリーマンショック以後の銀行の不良債権比率がジワジワ上昇していて、竹中プラン実行直前の2001年ごろの状況に近づいてきているのです。JAL再建案に厳しい態度を示した銀行に、実は余裕がなくなってきている状況が透けて見えます。となれば自主再建に厳しい態度の一方、法的整理には慎重姿勢だった銀行の態度にも説明が付きます。JALに貸し込んだ債権の行内格付けが下がれば、銀行自身が引当金を積み増さなければならないわけで、それだけ銀行の融資余力が下がり、貸し渋り、貸し剥がしが横行しかねないわけで、JAL再建に政府が強く関与せざるを得ないということになったと読み解くことができます。実はJAL問題の裏に金融危機の芽が隠れていたということです。

この問題はそもそも邦銀の資本政策のまずさが根底にありまして、邦銀が世界へ業容を拡大した80年代、欧米銀に比べて預金量は突出しながら自己資本が薄く、不健全なハイレバレッジ融資と見なされたことが、バーゼル委員会による国際決済銀行(BIS)規制につながったのですが、日本の銀行関係者は欧米による日本封じ込めと認識し、勝手なルールを押し付けられて融資を減らさざるを得なくなった「マネー敗戦」論を振りかざして居直っております。

そもそも銀行にとって預金は負債に当たるわけですから、資本に対して過大な預金を保有していたことが、バブル期の不動産融資などへの貸し出し競争を誘発し、海外へも資金が漏出して米ロックフェラーセンタービル買収や英仏ユーロトンネルプロジェクトへの融資とその焦げ付きなど、痛い目に遭っているはずなのに、銀行本来の融資業務は、主に日銀の窓口規制に頼って融資審査などの本来の情報創造を通じた信用創造能力を持たないままに肥大化した邦銀では、高収益のビジネスモデルを開発して、それが資本市場で評価されて株主資本を強化するということを怠ってきました。それによって預金の一部が株式市場を通じて銀行の自己資本強化につながれば、無理な貸し出し競争でバブルを膨らませることもなかったでしょう。つまり「貯蓄から投資へ」の金融改革に失敗したわけで、後付けで郵貯マネーを政治的に弄るのはまやかしです。

JAL自身の経営問題も複雑ですが、国の航空政策の犠牲となった側面も見逃せません。前述の空港特会による過剰な空港整備に留まらず、整備費用捻出のために着陸料も割高だし、路線数が多ければ需要が分散しますから、個別路線の採算性も下がるなど、何一つ良いことはないのですが、地方のおねだりを止められなかった国の対応に問題がありました。

加えて96年の需給調整規制撤廃で、航空事業への新規参入が可能になったものの、結局採算性の高い一部路線での競争激化にしかならず、JAL,ANA,JASの当時の大手3社による過剰防衛と国の羽田発着枠の硬直的な配分で新規参入社は育たず、90年代に欧米で産声を上げ、アジアにも起業熱をもたらしたローコストキャリア(LCC)と呼ばれる格安航空会社も日本には事実上存在しません。元々大都市の大空港が大手エアラインに押さえられ、着陸料の割安な近郊のサブ空港同士を point to point で結ぶことで低価格を実現していたLCCですが、9.11で大空港がセキュリティチェック強化で機能を落とし、テロの恐怖で航空利用が敬遠されたことで hub and spork 型の大量輸送に特化された大手エアラインが軒並み業績を落とした中で、運行を堅持したLCCが存在感を増し、今や業界地図を塗り替える勢いです。羽田のハブ化なんぞで大騒ぎしている日本の航空行政の周回遅れぶりはお笑いの域です。

またJALを破綻させた場合に、それに代わって役割を引き継ぐ存在がないということでもあります。例えばJALを破綻させてANAに路線網を引き継がせるのは不可能です。というのもANA自身がリーマンショックと新型インフルの影響で苦しんでいますから。あとJR東日本による救済案も一部で言われますが、絶対に有り得ません。というのもJR東日本自身、主に北海道地区の余剰人員受け入れで不当労働行為の汚名を着ながら、小売などの関連事業を育てて軌道に乗せて余剰人員を吸収した経緯があり、JALの複雑な労使関係が修復不能なことを見抜いております。余談ですがJRグループ内で本業以外の関連事業育成で実績を上げているのは東日本と九州の2社で、東海や西日本は本業依存度が高く、リーマンショックや新型インフルの影響も受けやすいわけです。とはいえ九州は経営安定基金でどうにか最終黒字を計上するレベルで、一部で言われる九州新幹線博多開業後に株式上場はほぼ不可能です。旧国鉄債務の一部として国が負担する経営安定基金が株主のものとなるというのは、誰がどう見ても具合が悪いですしね。

思えば2002年のJASとの経営統合は早まったのかもしれません。というよりも、その後のJALは、社内融和を優先し統合効果を出すためのリストラを先送りした結果、赤字路線を多数抱え、旧い非効率な機体を多数保有し、関連事業も含めて多数の重複分野を抱え込み、労組も分立して労使協議が成り立たない機能不全に至ります。このあたりはJALの経営の失敗であると共に、公正取引委員会の審査の甘さも指摘できます。結局形ばかりの規制緩和で、実質的な競争政策は採られず、JALの虚弱体質が温存されたわけです。そしてそんな内情は承知していたはずの銀行団が資金を貸し込んだわけですから、銀行による経営のモニタリングが機能せず、上場企業でもありますから、株式市場での健全な相場形成と株主の圧力による経営の監視も機能しなかったわけで、実は資本主義国としての日本の質が問われている問題でもあります。

前原国交相は地方路線について、何らかの形で支援を表明しました。

日航再建、地方路線の支援検討 国交相「飛ばない空港作らず」
国の直接関与は旧国鉄赤字ローカル線と同じ問題を抱えることになりますので、期限を設け、おそらく自治体の関与を引き出す方向でしょう。ただし空港特会の見直しに言及し、少なくとも整備費用は切り離すということですから、着陸料の値下げは期待して良いかもしれません。

赤字ローカル線といえば、JR東海が名松線の家城―伊勢奥津間の廃止を発表しました。

名松線、一部廃止の意向 JR東海、バスに切り替え
台風18号の被害で土砂流入や盛土流出など39ヵ所あった被害箇所のうち38ヵ所が家城―伊勢奥津間に集中したことから、今回あえて復旧工事を行わず、バス輸送に切り替えようということです。台風被害で廃止といえば高千穂鉄道を連想しますが、JR引継ぎ路線ではJR西日本の越美北線が長期運休を乗り越えて復旧した例はあるものの、被災以前から地元自治体による定期券購入補助が行われていたことが復旧の判断につながったのでしょうから、自治体の対応は重要です。

その意味では名松線の場合、そもそも存続区間は近傍を近鉄線が並行し、通学定期の割引率による逆転現象がなければおそらく利用者は皆無という路線立地ですから、近鉄線の駅に接着するバス網を整備していっそ全線廃止の選択も有り得ましたが、地元との軋轢を回避したいのでしょう。無人車両走行の芽は残ります(苦笑)。

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Sunday, October 04, 2009

尼崎事故調漏洩事件に見る国鉄一家の堕落

ニュースとしては先週の話ですが、メディアとは違った視点で取り上げるという当ブログのコンセプトに従って取り上げます。まずはこの記事から。

尼崎脱線事故調査委、元委員が報告書漏洩 JR西前社長が依頼
JR西日本の歴代トップの責任に言及し、企業体質に問題があったことを認めた山崎前社長ですが、一気に男を下げました。

鉄道事業本部長時代に安全対策を進言し、疎まれて関連会社へ出向させられていた山崎前社長には同情する声もあり、被害者からも評価の声が聞こえただけに、信頼を裏切ったことは重大です。加えて「新型ATSが設置されていれば事故は防げた」とする記述を調査報告書から削除することを求め、それを受けて山口元委員は事故調で発議して否決されたという一連は、事故調の第三者機関としての意味を無力化させるものでもあり、大問題です。

と同時にこの新型ATS問題は神戸地裁に起訴された山崎前社長の公訴事由にもなっているわけですから、それを意識した行動だとすると、更に問題が膨らみます。少なくとも審理以前に心証真っ黒となり、結果墓穴を掘ったことになるかもしれません。

そこまでのことではないとしても、山崎前社は経営者として事故を契機にATS設置基準制定などの規制強化で資金負担が増えることを心配したのかもしれません。鉄道事業の特殊性を考えると無理もないところがあります。というのも、今回の漏洩事件でも当事者は国鉄OBで先輩後輩関係という事情があり、おそらく山崎前社長も山口元委員も当事者意識が希薄だった可能性があります。

以前の記事で国交省の前身の1つである運輸省の問題を取り上げましたが、現業機関としての国鉄が公社として分離され、鉄道事業の国家独占の権限が現業機関である国鉄に帰属した結果、監督官庁であるはずの運輸省は国鉄に対して無力でした。そもそも国鉄による新線建設や改良事業は国鉄自身の意思決定で為され、民間事業者のような免許事業ではなかったんですが、例えばそのことが東海道新幹線が構想段階から反対の大合唱を受けながら実現したこととか、国より格下の東京都による都市計画に定義されない総武快速線の建設や、ローカル線建設に不熱心な国鉄に代わって建設を請負う鉄道建設公団の設立などは、この辺のねじれ現象の結果です。

で、技術面でも鉄道はブラックボックスに喩えられることが多いのですが、日本の場合技術面での国鉄の情報独占といいますか、位置づけはきわめて重かったのです。そのために日本の鉄道車両メーカーは国鉄の下請けを脱し切れず、大手私鉄も部分的ないいとこ取りで「うちのは国鉄より高性能」と言っていたような状況です。気候変動問題で世界で鉄道が見直されるトレンドに乗り切れない原因でもあります。この辺はガラパゴス化と言った方がわかりやすいかも。

その結果鉄道技術は旧国鉄と後身のJR各社が握り、監督官庁である旧運輸省には技術に関する目利きが存在しません。ゆえに福知山線事故のような重大事故が起きると、パニクって規制強化に走るのです。福知山線事故の場合も同様で、当時の北側国交相のコワモテぶりが思い起こされます。そういう意味で山崎前社長が、国交省の規制に影響を及ぼすこと確実な事故調報告の内容を早く知り、できれば規制強化を緩和する方向へ記述を変えて欲しいと考えても無理もないところです。

加えて事故調委員メンバーとして、結局国鉄OBを起用するしかない現状もまた避けられなかったでしょうし、OB同士の気安さが漏洩事件を生んだとすれば、つくづく旧国鉄という存在は罪作りです。明治以来のアンシャンレジュームは一朝一夕には解消しないんですね。

それとそもそも事故調(航空・鉄道事故調査委員会→現運輸安全委員会)の鉄道部会設置が、91年の信楽高原鉄道事故の遺族などでつくる鉄道安全推進会議(TASK)が93年に国に働きかけて発足したもので、信楽の事故でも不起訴ではあったものの、信楽高原鉄道を被告とする公判の審理過程で、滋賀県警が突き止めた亀山CTCセンターの方向優先テコの無届設置と事故後の撤去及び関連マニュアル破棄という重大事実が発覚したことが、専門の第三者機関設置の必要性を認識させたわけで、やはりJR西日本は本来当事者であったわけです。今回の漏洩事件は将にJR西日本の救い難い企業体質をを浮き彫りにしますね。

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Friday, September 25, 2009

高速道1,000円渋滞で鉄道回帰

政権交代が実現し、鳩山首相の外交デビューも順調です。気候変動、核廃絶など、民主党の主張に近い関心が国際社会で広がっていて、丁度国連首脳外交やピッツバーグのG20サミットなどの外交日程が政権交代をアピールするチャンスとなったなど、ラッキーな面はありますが、期待の持てる十分な成果が見られます。

民主党が掲げる内需拡大策の目玉は、何といっても子ども手当と高速道路無料化ですが、まだまだその意義に対する国民的理解は不十分です。とはいえマニフェストに明記され、それを国民が信認して政権を与えた以上、民主党政権はこれを実現する責任があります。実現にあたっては当然生煮えな部分を国会で野党に追及されるわけですから、実現可能性を高めるための修正協議もする必要がありますが、一方で安易な妥協は308議席の与党議員の追求にさらされるわけです。今さらながらマニフェストの重みを思い知らされます。

というわけで興味深いニュースです。

秋の連休、鉄道好調 東海道新幹線、GWより8%増
秋の5連休で渋滞予想から利用者が鉄道へ回帰しているというのです。1,000円高速の影響で減少した利用が戻っただけといえばそれまでですし、JR各社が対抗策で割引キップを出した効果と考えると、ひょっとしたら売上は戻っていない可能性はありますが。

あと航空も同様に利用者が戻っております。春のGWではあの新型インフルエンザ騒動が公共交通利用忌避を招いた部分もありますが、むしろ今、流行が本格化している中で利用が戻っているのですから、この影響は軽微なのかもしれませんが、断定は避けておきます。

一方でオンライン版の記事では省略されてますが、各道路会社によれば高速道路利用はGW時より4%減ということで、明らかに渋滞が忌避されたことが読み取れます。しかし納得がいかない部分もあります。というのは渋滞の発生はむしろ増えた点です。しかも50km超の渋滞が複数個所で発生するなど、見かけ上渋滞はひどくなっているのですが、これは結局利用時間が集中したことの影響のようで、ちょっと時間をずらせば渋滞を回避できたケースも多いようです。ということで、高速道のETC割引による内需喚起という前政権の置き土産で、貴重な社会実験がなされたということになります。

渋滞は利用の集中で起きるわけですから、週末限定のETC割引は、そもそも渋滞を誘発する要因を内包しているわけです。ですから、GWや夏休みの高速道の渋滞を理由に、民主党の言う高速道無料化でもっとひどいことになるということも言われたのですが、その論拠は怪しいわけです。むしろ曜日限定がなくなれば、利用の分散で渋滞は減るという議論も可能です。

あと高速道路無料化は自動車利用を助長しCO2排出を増やすという議論があり、国交省でも他の交通機関からの利用の移転でCO23割増との試算を明らかにしてますが、一方で同じ国交省で並行道路の渋滞緩和でCO2削減効果は4割弱になるという試算もあります。これは計算の前提が違うために起きたミステリーですが、前者は交通機関の選択のみに絞った試算で、後者は渋滞緩和に絞った試算で、他の条件は考慮しておりませんから、実際は両方の効果が相殺されて中立に近い結果となる可能性が高いといえます。

というわけで、マニフェストに明記されていないJAL問題と違って、マニフェストに謳い政権を得た以上、高速道路無料化はやらなければならないことであり、JRや高速バス事業者などから否定的コメントが相次ぐ中、あえて申しあげますが、この程度の競争条件の変化は、経営の責任で対応すべきです。また変化はチャンスでもあるわけで、変化にいち早く対応した者が、多くの果実を得るのがビジネスの世界の鉄則です。各社の奮起を期待します。

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Tuesday, September 22, 2009

グッドJALバッドJAL

やー、前の記事で指摘したように、ホントにJAL問題は新政権の命運を左右する問題になりそうです。

日航の新旧分離要請へ、政投銀など主力行 実質債務超過の恐れ
ソースは明かされておりませんが、おそらく日経の独自取材によるスクープでしょう。元々9月末期限の再建策を見て対応を決めるとしていた日本政策投資銀行他の金融機関ですが、とても追加出資は無理ということで動いたのでしょう。加えて政権交代で、与党族議員などの圧力を受けることなく抜本改革が可能になったという見方もあるのでしょう。前原国交相が24日にJALや金融機関などからヒアリングを予定しているタイミングですから、なんかいきなり生臭い話に発展した感があります。

処理のスキームは米GM支援に似たグッドカンパニーとバッドカンパニーに分離し、前者へ国が支援し、後者は時間をかけて清算処理するというものですが、日本国内の事例としては、国鉄改革で旧国鉄債務を一部を除いて清算事業団によって処理することで、新生JRを身軽な状態で再スタートさせたことに近いといえます。あるいは98年の金融国会で、破綻が心配されていた日本長期信用銀行、日本債権信用銀行の救済策として民主党案を自民政権に丸呑みさせた金融再生法も同様の処理となります。

当時から民主党の政策立案能力に注目していた私としては、時を経て民主党政権が誕生したタイミングでJAL問題に遭遇することの歴史の皮肉を思わざるを得ません。いわゆる民主党の流儀に整合的な処理案であり、金融機関にそれなりの知恵者がいたのかもしれません。とはいえ簡単に進む話でもありません。

というのは、このために特別法を制定する必要があること、当然予算措置も伴いますから、現在政権で進められている補正予算の執行停止を含む見直しで捻出した財源の一部を回さざるを得ないこともあり、政権内でも揉める可能性があります。加えて地方路線の整理を伴いますから、与党議員の造反も予想され、来月の臨時国会は早速大荒れとなりそうです。

結局JAL問題は鳩山首相の帰国を待って判断を仰ぐ話となり、タイムリミットも迫っているだけに、いきなりリーダーシップを試される展開となります。処理を誤れば本当に鳩山新政権が空中分解しかねない話ですし、また外国エアとの出資交渉も事実上ストップせざるを得ません。

2年前のおJALの記事で指摘したとおり、87年に株式公開し、政府全額出資の特殊会社から一般の民間企業になったJALは、同年実施された国鉄改革によるJR発足と関連し、特殊会社でスタートしたJR各社の先行事例としての意味合いもあったわけで、その後小泉構造改革で実施された道路公団民営化、郵政民営化、政府系金融機関改革など一連の民営化策の着地点となるはずだったのですが、その民営化会社が破綻の危機に瀕した場合の先行事例となってしまったわけで、皮肉な話です。同時に郵政見直しを掲げる新政権だけに、おかしな処理をすれば郵政見直しの議論も歪めてしまう可能性があり、本当に取扱い注意の案件になってしまいました。どうなるでしょうか。

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Monday, September 21, 2009

ジャパニーズGM問題、JAL問題を考える

このところJALを巡る報道が数多く露出しております。正直なところ前途不透明、五里霧中といえるこの問題ですが、鳩山新政権の命運を握るほどのインパクトがある問題として考える必要があります。

当ブログでは2年前に既にJAL問題を取り上げておりますが、正直当時からの迷走が未だに続いていることに驚きを禁じえません。今まで一体何をしてきたのでしょうか。

一応さまざまな努力の跡は見られるものの、航空を巡るグローバルな変化に追いつけず、取り残されてしまったさまは、米GMの問題と通底するものがあります。時代はオープンスカイ政策による自由競争の進捗があり、その尖兵だったアメリカでは、既にナショナル・フラッグ・キャリアのパン・アメリカン航空が破綻、時を経て元々国策キャリアの性格が強かったノースウエスト航空も、業界大手のデルタ航空に吸収されて現存しません。欧州でもアリタリアやサベナ・ベルギーなど国策キャリアの経営不振で国境を越えた再編が進む状況で、国策で政府出資の特殊会社としてスタートした日本航空がいかに難しい局面を迎えているかがわかります。

加えて大量輸送を前提に拠点となるハブ空港へ路線を集めて大型機でハブ同士を結ぶ大量輸送前提のビジネスモデルが、米サウスウエストや英バージン、アイルランドのライアン航空など、燃費の良い小型機で着陸料の安い大都市外縁部の空港同士を直行便で結ぶいわゆるローコストキャリアの台頭が、世界中で競争激化をもたらし、かつて二国間協定として航空協定を締結し、運行航空会社を指名する究極の独占市場が消滅したわけですから、今までのやり方を踏襲する限り、危機からの脱却はできない状況です。

その中で世界のエアラインは様変わりしました。歴史を刻んだ大手キャリアは、アライアンスに活路を見い出す方向性を打ち出しました。いわゆるコードシェアや共同運航便の活用で機材と人員の運用を合理化しながら路線網を維持するビジネスモデルへと転換し、特に国内のライバルである全日空では、パンナム破綻後に路線の多くを引き継いだ当時の米最大手ユナイテッドや独ルフトハンザなどをメンバーとするスターアライアンスへの参加をいち早く実行し、自らはその東アジア支部として主に日本対アジアの近距離国際線を充実させることで、国際線航空として後発の不利を逆手に取り、選択と集中を実現しています。その過程で全日空ホテルチェーンの売却など、非中核事業からの撤退も行っており、また羽田第四滑走路完成による24時間化を睨んで整備部門を羽田に集中させ、成田を拠点とするJALを出し抜こうという戦略です。リスクはありますが先を見た経営ができているということです。

それに比べるとJALの対応の周回遅れぶりは目立ちます。ANAのスターアライアンス参加時点から取り沙汰されていたワンワールド(アメリカン、BAなどが参加)への参加を逡巡し、自前運行にこだわり続けて高コスト体質を温存し、経営が怪しくなってから参加して、むしろ顰蹙を買ってしまいました。実は今回のJAL報道の増加のきっかけとなったデルタ航空のアライアンスを超えた出資打診も、ワンワールド内のそんな不協和音に遠因があるかもしれません。

というわけで今回の報道合戦による露出増加の始まりとして、米デルタ航空の出資打診があったわけです。

米デルタ、日航に出資打診 300億~500億円、交渉は流動的
デルタはスカイチームに所属しており、当然出資となればJALのワンワールドからの移行が前提となるわけです。仮に実現すれば、ネットワークの規模で最大のスターアライアンスとスカイチームは肩を並べる存在になり、JALが抜けたワンワールドは弱者連合になりかねないですし、アジア路線が手薄なアメリカン航空にとっては、JALを逃がすわけにはいきません。元々アメリカンとBAが中核で大西洋路線に強みを持つワンワールドですが、世界の成長センターたるアジアへのアクセスで後れを取ることにもなりかねず、かくしてアメリカン航空も出資交渉へと向かいます。
日航出資混沌、アメリカンも交渉へ デルタと綱引き
さらに国内線、国際線の不採算路線からの撤退発表など、JAL自身もリストラ加速を表明し、事態は混沌としております。

とはいえ外国エアラインからの出資打診は300-500億円規模で、年度内に2,000億円規模の資金調達を迫られる状況では焼け石に水の状態です。資金調達のうち1,000億円程度を株式の増資で賄うと考えられますから、その半分相当が外国エアの出資分となれば、他の一般株主への安心感を醸成する効果は期待できますし、銀行サイドの出資態度も軟化することが期待されます。

一方で国交省はデルタとの提携を後押ししている模様です。というのは、元々ノースウエストを併合したデルタの太平洋路線の充実ぶりは凄まじく、JALの路線再編によるリストラ効果がそれだけ高いということがあります。加えてそれによって成田の発着枠が返上されれば、乗り入れ希望が多い成田の発着枠再配分を差配できるという意図も透けて見えます。

そしてこの間に起きた総選挙で実現した政権交代で民主党鳩山政権が誕生したことが、少なからず影響を及ぼしそうです。マニフェストで言及された子ども手当や高速道路無料化は、選挙に勝って政権を得た以上、実現しなければなりませんし、多少の修正の余地はあるにせよ、時間と共に実現に向かうことは間違いありません。ところがJAL問題には直接の言及がなく、今のところ政権としての方針は未定のようです。

マニフェストには航空行政の見直しは盛り込まれており、オープンスカイ政策に舵を切ることが示唆されているものの、羽田、成田の役割分担や発着枠再配分などの具体策には言及がありません。とはいえ羽田、成田共に発着枠の拡大と見直しは確実に行われ、増加分の日米大手への配分はなく、むしろ一部返上さえありうるわけで、その際に最も影響を受けるのが、成田をアジアの拠点空港と位置づけるデルタ航空ということになります。ということで、穿った見方ですが、政権交代がデルタの背中を押した可能性はあります。

一方のJALですが、もう一つの難問として8つの労組が分立し、安全を盾に報酬見直しに後ろ向きな組合問題と、OBの高額年金問題が横たわります。このあたりば米GM問題との相似象といいますか、JALが立ち直るための最大の問題です。

元々国策キャリアとして歴史を刻み、日本人のおもてなし精神を活かした充実した機内サービスで業界標準を確立したJALですが、その代償として高コスト体質が染み付いてしまったのです。かつて究極の独占市場だった国際線航空を主力としていたから可能だったサービスが、むしろ過剰サービスとして忌避される昨今、元々エリートの乗り物だった航空がそれだけ大衆化した証左でもありますが、同時にコスト削減を厳しく求められるようになった時代の変化に対応できないその姿は、省エネどこ吹く風で利幅の大きい大型車ばかり作り続けたGMなど米ビッグ3とそっくりの構図です。

加えて充実した企業年金でOBへの手厚い年金給付を続けた結果、業績を悪化させたいわゆるレガシーコスト問題もあります。ゆえに民主党内では通常の資金支援での立ち直りは難しいとして法的整理をという過激な意見もありますが、米オバマ政権のGM救済策に見るように、公的な支援に踏み込むならば、債権者も痛みを分かち合うべきというのは筋が通ります。債権者には従業員や企業年金受給者も含まれます。実際6月に日本政策投資銀行と銀行団による80%政府保証つきの1,000億円融資が実行された一方、4-6月期決算で990億円の赤字となりチャラになる体たらくです。果たして新政権は的確な問題解決ができるか、見守りましょう。

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