鉄道

Sunday, August 13, 2017

1億総社畜化社会

米朝間で子供の喧嘩みたいな罵り合いが展開されており、市場はリスクオフに振れて株価を下げたりしてますが、こういう時は落ち着きましょう。そもそもホワイトハウスの行政官ポストを埋め切れず身動きが取れていないトランプ政権に戦争準備ができているわけないですし、北朝鮮にしても核実験由来の放射性物質は1回目以外検出されていませんし、ICBM実験も高高度で発射して飛距離のポテンシャルを示してはいるものの、難しい大気圏再突入性能は検証されておりません。もちろんだからと言って核やミサイルの開発が進んでいないとまでは言えませんが、騒ぎ過ぎです。

てなことは置いといて、1年前のエントリーで取り上げた社畜ネタです。今年は例年にも増して高速道路の渋滞が酷いですが、お盆に一斉に実家へ帰るからこうなるんで、時期をずらすとか考えないと、3年後は丁度オリンピック期間とバッティングしますからどうなることやら。猛暑による熱中症問題がやっと認識され始めましたが、新国立競技場をはじめとする関連工事も人手不足出遅れが心配されてますし、その新国立競技場の工事作業員の過労自殺が報じられるなど、本当に大丈夫かいと心配になります。

ロングバケーション当たり前の欧州では、企業が従業員に有給休暇取得時期を割り振って分散しながら長い休暇を楽しむのに、短い盆休みを一斉に取って大移動する日本のビジネスマンの働き方の異常さが世界へ発信されるおぞましい2020年になりそうです。その働き方改革を巡って混乱もあります。

連合、「脱時間給」容認を撤回 政労使合意は見送り  :日本経済新聞
日経の記事は問題だらけなんですが、連合の逢見事務局長が独断で政権とやり取りして進めていた話で、神津会長は長時間労働の歯止めが認められるならば、政労使協議に応じても良いとしたものの、あくまでも年収1,075万円以上の特定職種を対象とした高度プロフェッショナル制度の話であって、脱時間給は関係ありません。

そもそも裁量労働制も成果主義賃金も現行法で違法ではないんですが、要件として募集や採用の時点で説明がされ雇用契約書にも明記されている必要がありますし、そもそもこのような雇用形態は労使間で合意が必要なんですが、御用組合をでっち上げて協定書の書面を作っても、未払い残業代請求訴訟では実体のない名ばかり組合では労働者の代表と認められず会社側が敗訴する事例が重なり、経済界から要件緩和の要求が出ていたもので、労働側から見れば当然認められません。

あと限定職種の高度プロフェッショナルにしても、高給取りで直接雇用が難しいんですから、むしろアウトソースして相対取引で条件を決めれば良いんで、労基法に盛り込む積極的な意味はありません。当然の如く連合の傘下組合から反対の声が上がって連合は撤回に追い込まれ、次期会長含みだった逢見事務局長を副会長に棚上げして神津氏の会長留任を決めて収めたって話です。早い話企業は残業代を払いたくないってのが本音です。

2020年のオリンピックと盆帰省のバッティング問題でも指摘しましたが、欧州企業では仕事の繁閑を有給休暇の分散取得消化で対応しており、そのため使用者側に有給休暇の完全消化の義務と共に取得時期調整の権利が与えられています。国によっては年度初めに従業員の有給休暇取得計画書を当局に提出する義務まで負わせているわけで、残業で繁閑調整をしている日本とは根本の考え方が違います。結局残業が日常化して長時間労働が当たり前になり、過労自殺も後を絶たないし、長時間労働で作業効率も落ちるから労働生産性が高まらず、利益率が低くなるという悪循環です。解決策は簡単で、最繁忙期に合わせて増員して有給休暇を分散取得させることです。

あと人手不足でAIへの期待が高まっておりますが、AIに限らず機械による労働の代替自体は昔から繰り返されてきたこととはいえ、単純な代替を考えているならお門違いです。AIは人間になれませんし、むしろAIが能力を発揮するための仕事の手順や環境を人が整えてやらなければならないですから、AIで人手不足解消は不可能です。これオフィスオートメーションが言われ始めた時代やコンビニのPOSシステム導入のときも言われたんですが、システムの導入に伴って業務の見直しがちゃんとできて初めて、少ない人数で多くの産出高を稼ぐことで労働生産性が向上するんで、その分を賃金に反映させて家計の購買力を底上げして初めて、経済成長につながるんですが、現実はどうも違う方向へ進みそうです。

実はこれを端的に説明するツールはマルクスが提供しておりまして、G-W-G'で表しております。Gは資本、Wは商品を意味します。ここで言う資本はぶっちゃけお金のことで、生産手段としての工場や機械に投資して、従業員を集め原材料を仕入れて生産した商品を市場へ投入して代金G'を得ることになります。このときにG<G'となるように仕組みを整えるわけです。工業化で工業製品が大量に生産され市場投入される産業資本主義過程はこれが繰り返されるわけです。

しかし大量の工業製品が市場へ投入され続けた結果、工業製品の価格は低下しますし、またスマートフォンのような汎用多機能デバイスの登場でむしろ集約が進む結果、G<G'の関係の維持が難しくなります。一方PCやスマホのような汎用デバイスはソフトウエアのバージョンアップで機能強化が進み、思いがけない用途が開発されていきますから、開発に携わるプログラマーやSEなどのIT人材が重要な生産手段となり、その調達囲い込みのために高額報酬が約束されるようになります。結果的にITデジタル技術を軸とした生産手段の組み換えが起きてデジタルブルジョワジーとデジタルプロレタリアートに分離する現実が出現したわけです。伝統的工業の衰退とIT産業の台頭で米トランプ政権誕生の背景でもあります。

困ったことにあらゆる労働がデジタル技術で代替可能なわけではなく、元々低賃金の単純労働はいつまでも機械化されずに残るどころか、かつてはノウハウの塊だった事務職や販売職も作業内容が単純化されていきますから、低賃金の単純労働はむしろ増えるわけです。つまりマルクスがプロレタリアートと命名した時間の切り売りでしか生活の糧を得る手段を持たない階層が新たに出現したと見れば、世界的にみられる格差拡大が容易ならざる事態であることがわかります。この観点からすれば労基法改正で政府が盛り込もうとする高度プロフェッショナルは保護すべき対象ではないわけです。

さらにもっと困ったことに、高給で優遇される高プロ人材の育成は困難だってこともあります。何となれば人に教える暇があるなら自ら働いて稼いだ方が良いし、人に教えてライバルを増やせば自らの市場価値を下げることになります。加えて技術革新のスピードが速くなってますから、市場価値が落ちたところで教える側に回る頃には次の新技術が出現して手持ちのスキルが陳腐化しているわけですから、教えるニーズもなくなるわけで、ある意味旬の内に稼いでセミリタイアというキャリアプランを取らざるを得なくなります。かくして技術の分断が今以上に深刻になるわけです。

また高額報酬の職業ほど資本代替のニーズが強く、高額の研究開発投資に見合うリターンが期待できますから、いずれ稼げる職業は減っていくというディストピアになりかねません。自分で自分の首を絞めることになるわけです。高プロじゃないですが、例えばかつて高給取りだったバスドライバーやトラックドライバーの賃金低下も、運送業の参入規制撤廃で進んだわけですし、タクシーに対するウーバーなどのライドシェアの挑戦も同様の文脈で理解できます。規制緩和は善として拙速に認めるのは問題です。

その先の自動運転も、当面は地域限定の交通システムとしての実現を目指すのが妥当です。トラックドライバー不足を自動運転で凌ぐのも問題です。荷物の積み降ろしや検収、場合によっては代金決済もあるわけで、その部分は自動化できないので、結局ドライバーに運転させる方が労働生産性を高めることになります。寧ろ鉄道や船舶との連携による複合一貫輸送のシステムを構築することが大事です。この辺の誤解はかなり根深いですね。

その鉄道も自動運転車の実用化で変化を迫られます。ただし道路輸送では実現不可能な大量輸送の能力が結局鉄道のレゾンデートルになるという意味で、地方のローカル線の維持はますます困難になります。また線路保守など労働集約産業の側面は残り、JRでさえ外注化で凌いでいる状況ですが、その結果日常の列車運行に支障が出るほど保守レベルが荒廃したJR北海道の問題など、解決すべき問題があります。そんな中で取り上げたいのがこれ。

JR東など、英鉄道運営を落札 12月から運行  :日本経済新聞
英国鉄道のオープンアクセス制にフランチャイズ(運行会社)として参入するというもので、遅延の多いミッドランド鉄道の定時運行率の向上をアピールして落札したということで、結構ハードルは高いと思いますが、例えばJR北海道の問題の解決策として、線路保有の国策会社を設立してフランチャイズを募集するといった事態も考えられますから、国内の鉄道事業へのフィードバックも期待できます。この辺新幹線システムの一括受注しか念頭にないJR東海の連戦連敗に対して、確実に経験値を高めるJR東日本の行き方は賢明です。

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Sunday, July 30, 2017

守ってくれない

いや、ひでーな。南スーダンPKOの日誌問題のすったもんだで、稲田防衛相が辞任だそうです。

稲田氏が辞任表明 PKO日報監察「幹部が隠蔽」  :日本経済新聞
ザックリいって、陸自の判断で日誌の非公開を決め、廃棄を促す指示を出したけど、今年に入ってからデータが残っていることが判明し、黒江次官が非公開の方針を決めたという流れで、稲田防衛相への報告に関しては曖昧という画に描いたような責任逃れです。

岡部陸幕長と黒江次官も辞任ということで、一見痛み分けに見えますが、閣僚を辞めても議員を辞めない稲田氏は失職するわけじゃなし、加えて重大な問題が欠落しています。日誌の非公開を決め廃棄を促した陸自の判断は文民統制に反します。当然事務方を通じて大臣にも報告されている筈ですが、特別監察の結果が正しいとすれば、稲田防衛相は何をしていたんだって話です。現場の判断が原因でも大臣の了承なしにやれば文民統制違反ですから、普通は考えられない。あり得る可能性は報告を受けた稲田防衛相は意味を理解せず言葉が右から左へスルーして生返事、または国会答弁のことだけしか考えず、答弁書作成を丸投げしたってあたりでしょうか。稲田氏の答弁能力の低さを考えると、この辺でしょう。

これはつまり稲田防衛相が組織を掌握できていないことを意味します。つまり戦えない自衛隊ってことです。これで敵国が攻めてきたときに戦えるのか?疑問は尽きません。加えて北朝鮮のミサイル発射がこのタイミングでおきましたが、これ偵察衛星で発射確実という情報が流れていたわけで、このタイミングでの防衛相辞任はそれ自体無責任ですが、メディアの扱いは違うようです。

日本、試された「安保空白」 北朝鮮ICBM発射  :日本経済新聞
別に北朝鮮は日本の隙を狙ったわけじゃないですね。天候不順で深夜の打ち上げになりましたが、北朝鮮にとってはあくまでも予定の行動に過ぎません。こうなると悪質な世論誘導です。そもそも北朝鮮の狙いはアメリカ本土を射程に入れることで、日本が被害を受けるとすれば、米朝間の休戦が終わって戦争状態になったときですが、トランプ大統領が「中国のせいだ!」と他人事ですから、その可能性はほぼありません。アメリカは北朝鮮と取引のある中国企業をターゲットに経済制裁を仕掛けるでしょうけど、国有企業ならば政府の意向で事業を他社に振ることなど造作もないことですから、経済制裁は結局効きません。

で、中国はと言えば、北朝鮮の狙いはアメリカとの直接交渉なんだから、アメリカが応じるべだと。少なくとも金正恩は中国の言うことを聞かない以上、打つ手はないわけです。むしろ北朝鮮のせいで韓国へのTHAAD配備など余計な緊張を強いられるから、中国としても何とかしたいはずですができないわけです。

対北朝鮮で軍事オプションが可能だとすれば、中国が北朝鮮へ軍事行動を起こし、それに呼応してアメリカが動いて挟み撃ちにするぐらいですが、とてもそれが可能な状況ではありません。そもそも中国は軍事オプションを使いたくない。何故ならば、歴史を紐解けばわかりますが、ソ連との国境紛争にしろカンボジアを巡るベトナムとの紛争にしろ、対外戦連戦連敗の戦えない軍隊という自覚があります。

だからこそ胡錦涛時代から取り組んできた軍隊改革を習近平も踏襲しており、幹部の更迭と装備の近代化で、経済大国となった中国にふさわしい軍事力の刷新に動いているわけですね。だから経済成長と共に軍事費が拡大しているんですが、それは別に他国を侵略するとか、派遣を求めてってことじゃなくて、抗日戦争時代の古い意識のままの人民解放軍を戦える普通の軍隊にすることです。習近平政権で中国が急に強硬になった訳ではないです。もちろんその結果周辺国への軍事圧力が増すことは確かですが、同時に中国は周辺国との善隣外交に力を入れていることも確かで、例えばASEAN諸国との関係も対立と協調の重層構造で、敵味方を単純化したがる日本とは異なります。

加えて国力に見合った国際貢献を重視する姿勢を打ち出しています。ん?聞いたようなフレーズですね。将に日本の自衛隊の海外派遣で語られるロジックと同じです。これ仕掛けたのは結局アメリカです。アメリカだけが世界の警察として強大な軍事力を持つ構図から脱却するには、経済力をつけた国が応分の負担をすべきだってのは、アメリカがずっと言い続けてきたことでもあります。南スーダンPKOが典型ですが、石油利権と宗教対立で内戦の絶えなかったスーダンの紛争解決のために、油田が立地しキリスト教徒の多い南部をアメリカの後ろ盾で独立させれば紛争が収まるというロジックで南スーダンを独立させたのはオバマ政権のときです。そして治安回復のために国連PKOに丸投げ。そこへ資源外交に熱心な中国が乗っかって、PKO部隊の主力になるという構図です。

南スーダンPKOは実際は参加国が交戦権を国連に預ける形のPKFなので、憲法で交戦権を放棄している日本は本来参加できないんですが、道路補修など戦後復興事業への参加でクリアしてるわけです。だから自衛隊の国際法上の身分は軍属の民間人ってことで、仮に戦闘に巻き込まれた場合でも正当防衛以外での武器使用は通常の刑法犯として扱われます。その意味で日報の非開示までして加えた「駆け付け警護」の新任務は全く空疎な議論だったわけです。安倍政権の政策論はこの手があまりにも多く不誠実です。陸自の造反も無理もない。文民統制違反には変わりありませんが。おそらく中国が主力部隊を派遣する南スーダンに国際貢献でアメリカに恩を売るつもりなのでしょう。

同時に日本と中国の軍備増強は両者の対立を誘発しますから、第三国同士を競わせて結果アメリカが軍備を減らした上でライバルを経済的に疲弊させて力をそぐ一石三鳥。これオフショアバランシングという戦略論の基本ですね。日本も中国もまんまと嵌ってますが。つまりアメリカは露ほども恩を感じません。蒸し返しになりますが、首都ジュバでの政府軍の分裂による戦闘が起きた時点で、情勢が変わったんだから撤収するってのが、本来の文民統制の在り方です。現場から離れた場所で引いて見るから的確な判断ができるわけです。

てなことで、情勢変化に対応できていないのは、迷走する東芝なども同じですが、日本人って一度始めたらやめられない病なんだろうか?それを疑わせるこんなニュースです。

長崎新幹線に暗雲 新型車両に国が不具合報告  :日本経済新聞
日本ではフリーゲージトレイン(FGT)と言われる軌間可変車両の開発可能性は無いと以前から申し上げておりましたが、結局コスト面で無理とJR九州が白旗をあげたものです。株式上場したために、株主に説明できない投資はできにくくなるわけで、株式上場の数少ないメリットではあります。しかし既にフル規格で着工した武雄温泉―長崎間をどうするかを巡って議論がまとまりません。

JR九州では全線フル規格化を求め釣ろしており、長崎県も賛同してますが、問題は元々軟弱地盤で事業費の膨張を懸念した佐賀県が反対姿勢ですし、そもそもフル規格での新規着工には財源がなく、北陸新幹線の小浜京都ルートが2030年以降の事業化で進んでいる状況では優先順位は更にその後ですから話が進まない。その間に着工した武雄温泉―長崎間の2022年の竣工が迫っています。当面武雄温泉で乗り換えるリレー方式の開業が見込まれますが、そうすると僅か66㎢の孤立したフル規格路線ができてしまいます。これ最悪の選択です。

66㎞で2駅の整備区間で片道20分程度の運行ですが、毎時1-2本として予備編成も含めて4編成配置するとして、検査体制をどうするかという問題に直面します。そのために要員を配置するのか、毎回陸送で例えば博多車両所へ運ぶのか?どちらにしてもコストがかかります。加えて武雄温泉での乗り換えの解消は現時点で見通せないとなると、大元の計画に戻ってスーパー特急方式とするのがベストでしょう。

最高速160km/hでも整備区間ではほぼ速度制限なしですから、30分程度での運行は可能です。リレー方式で乗り換えに3-5分とすれば、実質5-7分差で乗り換えなしになります。速度差による保守精度の違いと車両の検査体制問題を考慮すれば、ランニングコストはほぼ半分ですから、全線フル規格化は財源から10年以上先の着工でもあり、スーパー特急化に伴う追加コストは楽にカバーできます。状況が変われば柔軟に判断する。それができないのは不幸です。

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Sunday, July 09, 2017

見えざる手の穢れ

いやはや、秋葉原の安倍辞めろ、安倍帰れコールは大変な騒ぎでした。これがなくても都議選での自民党の敗北は自明でしたが、都民ファーストの勝利ってのはちょっと違います。公明党が小池知事側についたことと、築地市場の豊洲移転問題を選挙前に方針を示して争点から外したことで勝負ありです。小池知事には特にシンパシーはありませんが、こんがらがった現状を起点に考える限りはこれしかない落としどころです。

気になるのが投票率の低さで、これだけ注目された選挙なのに、前回は上回ったもののやっと5割の水準です。こうなると組織票頼みの公明党や共産党が有利になる一方、浮動票を都民ファーストの会がさらって、国政レベルの2大政党の自民党と民進党は激減。寧ろ民進の方がダメージが大きく、敢えて言えばフランスの総選挙と似た構図です。既存政治勢力に対する不信感が表面化したわけで、深刻な問題です。

やはり森加計問題がボディブローのように効いている。安倍首相自身は外遊に逃げて意味のない閉会中審査が招集されましたが、ミエミエのアリバイ作り。政権側は成長戦略としての規制緩和で正当な手続きを邪魔する文科省を抵抗勢力に仕立てようとするでしょうけど、森友、加計を導いた見えざる手が穢れていたんじゃないかという疑惑ですから、国家統治の根幹にかかわる問題です。

これアメリカでも一部の経済学者が問題視してますが、所謂レントシーキングと呼ばれるもので、大企業や富裕層や政府高官の縁故者等による利益誘導全般ですが、近頃は例えば法人減税のように各国が競い合って減税するような状況が見られるようになり、主権国家の根幹を侵食する問題と捉えられております。規制緩和や減税など、所謂新自由主義的な政策の帰結として、格差拡大が各国で問題になっておりますが、少数の富裕層や大企業が自分たちに有利な政策を金で買う結果、ますます格差拡大が進むということで、ピケティが示した累進課税の強化ぐらいしか打つ手がない状況です。一部で成長がないから格差が拡大したという風に誤読されてますが、成長が処方箋にはなり得ないのが現実です。

それを端的に示すのが、米FRBの利上げに拘らず物価上昇が鈍い問題ですが、欧州も似たり寄ったりで、いよいよ日本のように成長率がゼロ近くになり、ピケティが謎としてきた日本の低金利が米欧双方で見られるようになっています。正確には欧州では国によりけりですが、ドイツのように長期金利がマイナス圏に沈んでいる国と信用不安が抜けないギリシャやイタリアのように厳しい状況の国が同居してますが、イタリアの大手銀行モンテパスキの国有化で株式や劣後債を保有する個人の保護を欧州委が認めるなど、銀行同盟の進捗を足踏みさせる状況にあります。こんなじゃドイツが慎重姿勢を崩さない財政統合は夢のまた夢。Brexitで結束を呼び掛けてもEUの統合は進まないと見るべきでしょう。

そんな中でイギリスとフランスで行われた総選挙の結果が興味深いところです。イギリスのメイ首相にとっては手痛い敗けですが、経済より移民制限を優先するハードブレグジット路線は修正を迫られます。ただし伸びたのは2大政党の片方の労働党であり、Brexitに反対の中道の自由民主党や地域政党のスコットランド国民党は議席を減らしており、Brexit自体は信任されたと見て良いでしょう。ただし下院の安定多数を握って対EUで交渉力を高める戦略は否定されました。ま、ある意味時間切れ強制離脱ならば究極のハードブレグジットではありますが、だれも望まないですね。

とはいえ投票率が66%と大幅に高くなり、特に若者の投票率が高まってその票が労働党へ流れた結果というのが面白いですね。Brexitを問う去年の国民投票のときには経済が好調だったことで、ある意味国民の大胆な判断ができたんでしょうけど、その後のポンド安による輸入物価上昇が国民生活を圧迫し、特に失業率の高い若年層が、鉄道の再国有化や大学授業料無償化などを訴える労働党コービン党首を支持した結果です。ある意味アメリカのサンダース現象が再現した形ですが、同じ2大政党制でも、エスタブリッシュメントと見做されたクリントンとそれを攻撃するトランプというねじれた構図と異なって、ある意味イギリスの民主主義はバランス感覚を保つ健全さがあるのだなと感心します。

それにひきかえフランスの総選挙は投票率44%と国政選挙では信じられないような低投票率で、マクロン大統領率いるアン・マルシェ(共和国前進)の大勝という都議選に似た結果で、社会党、共和党という2大政党は議席を減らしています。つまり政治不信の結果であり、浮動票が消えた結果新しい政治運動である共和国前進や共産党など組織票を動員した勢力が浮上した構図です。ちなみにマクロン氏と大統領選を争った国民戦線ルペン党首が初めて議席を得ているのもその表れです。

マクロン氏のスタンスはEU統合強化で、そのために規制緩和や労働市場改革をしてドイツに寄り添おうということですが、これサルコジ政権で大失敗した路線なんですよね。で、反動で社会党オランド政権が誕生したわけですが、絶好調のドイツに経済で後れを取り成す術なく停滞し、またリビアやシリアへの軍事介入で成果を得られずむしろテロの標的になるなどしており、このままではフランスがEUのお荷物になりかねない状況でマクロン政権が誕生したわけですが、国民の不信感の払しょくは難しいでしょう。ドイツにしても、EU統合強化を謳うマクロン政権を手放しで歓迎はしないでしょう。

そうなるとBrexitに対して強面で対応してEUの結束を図るということになりますが、これ第1次大戦後のヴェルサイユ条約での対ドイツ強硬姿勢を再現する危険性があります。イギリスに対して強硬姿勢を示すことで、世論の支持を保とうとするんじゃないかと思います。ある意味国民戦線ルペン党首とEUに対するスタンスの違いはあっても、大衆迎合的になる可能性は高いでしょう。となるとBrexitは波高し?

一応お断りしておきますが、私はBrexitショックの株安で、欲しかったけど高くて買えなかった株を拾うことができたんで、イギリスに対して見方が甘くなっている可能性は否定しませんが^_^;、基本的にBrexitはまあうまくいくんじゃないかと思っております。総選挙で示された国民の意思も明確ですし、変えるべきを変え守るべきを守る本来の保守主義が機能していると見ているんで、元々EU内で特権的な地位にあったイギリスにとっては、EUの統合強化にどこまで付き合うかは、いずれ問題になるところです。

加えてEUの強面に対してはいくつかの強力なカードがあります。その1つが英領ジブラルタルの帰属問題でして、仮にスペインへの返還を持ち出せば、EUの態度を変えさせることは可能でしょう。それどころか紛争を抱えるキプロス問題も解決できず、旧ユーゴの和平交渉の失敗でNATO軍の軍事介入に頼らざるを得なかったなど、EUの紛争解決能力の低さから言って、イギリスとの決定的な対立は結局プラスにならないということで軟化する可能性は一定に存在します。ましてトランプ政権でアメリカが当てにできないしウクライナを巡るロシアとの対立もあるしということで、どっかの時点でイギリスとEUは和解するしかないでしょう。

てなこと言ってる間に北朝鮮のICBM発射実験成功の発表があり、レッドラインを超えたとするアメリカの軍事オプションに関心が集まりましたが、トランプ大統領の他人事ツイートで軍事オプションは早々に消えました。冷静に考えて、アメリカが軍事オプションを行使できる状況は、中国が中朝国境で軍事行動を起こし、それに呼応してアメリカが動くというシナリオでしょう。ただしそれをやるには韓国の同意は当然として、ロシアの黙認も取り付ける必要があります。北に融和的な文ジェイン政権誕生の韓国の同意もロシアゲート問題を抱える中でのロシアの同意もハードルが高いでしょう。せめてということで、北朝鮮と取引のある中国企業を制裁対象にして揺さぶりますが、習近平主席は動じない。そもそも中国の制裁が甘いというのは、勝手な思い込みでもあります。

実は北朝鮮は経済成長しているんじゃないかという見方がアメリカなどで出ており、ニューヨークタイムズによれば1-5%程度の経済成長の可能性を報じています。一応2008年時点でのGDPが米ドルベースで262億ドルで人口が2,500万人ですから、1人当りGDPは1,000ドル程度でベトナムbなどと同じぐらいですが、北朝鮮は石炭やレアアースなどの鉱物資源の豊富な資源国でもあります。そして2008年といえばリーマンショックの年で先進国がこぞって打撃を受けた一方、中国が大胆な財政出動で経済を浮揚させて所謂デカップリングで世界経済の失速を踏みとどまらせたのですが、その結果原油など資源価格が高騰した時期でもあります。中国の電力需要拡大や鉄鋼生産の拡大で石炭需要が増したわけですから、北朝鮮がその恩恵を得ても不思議ではありません。仮に5%成長が続いたとすれば、凡そ1.5倍強の400億ドル程度になっていても不思議ではありません。つまり昨今のミサイル実験の繰り返しは、金回りが良くなった結果であり、その原因を作ったのは他でもないアメリカだってことです。

てなわけで北朝鮮問題は決め手がないまま推移すると思いますが、その中国経済が明らかに成長鈍化しており、皮肉ですがそれが北朝鮮にとっては一番のとばっちりになるでしょう。尤も中国の経済減速は世界も返り血を浴びることになりますが。

てな状況で例えば東芝メモリーの売却先を巡って技術流出を心配する政府のバカさ加減に呆れます。毎年3,000億円から4,000億円を投資して技術の陳腐化を防がなきゃならない半導体で技術流出を心配するってほとんど冗談みたいな話です。そんな風だから日本や欧州の技術を導入して世界最大の高速鉄道網を構築した中国を「パクリだ!」とかdisってる暇があったら、整備新幹線の中途半端なハードの見直しを真剣に考えるべきです。そんな中でこのニュース。

時速360キロの新型新幹線 JR東日本、30年度投入へ  :日本経済新聞
FASTECH360(E954系)で目指した速度を再度新しい試験車で目指すわけですが、E954系の成果として320㎢/hのE5系とE6系が登場したわけですが、320km/h運転区間は宇都宮―盛岡間に留まり、宇都宮以南240km/h、大宮以南110km/h、盛岡以北260kom/h、青函トンネル内140km/hの速度制限を受けています。2030年の札幌k開業を睨んでと言っても、ほぼ全区間で360km/h運転ができなければ、東京―札幌間で4時間の壁は切れないわけで、対航空で優位に立つことはできません。それもこれも財源ねん出を優先して中途半端なハードを作ったツケでして、相当な追加投資が必要ですが、JR東日本単独では難しいし、パートナーのJR北海道には頼れないしということで、試験車で速度制限区間のスピードアップがどこまで可能なのかは未知数です。特に大宮以南と青函トンネル内の制限解除は殆ど不可能と言ってよいでしょう。経営面の不透明さも指摘される中国高速鉄道ですが、今更ながら差をつけられてしまいました。一方こんなニュースも。
JR東、英国の鉄道営業権を応札へ 事前審査通過  :日本経済新聞
イギリスのフランチャイズ制に基づく鉄道営業権を取得しようということで、これが記事にあるように成長エンジンになるかどうかは微妙ですが、いつまでも内弁慶のドメスティック企業ではだめだということで世界へ出ることは良いことです。この経験を活かして国内にフィードバックして、新しい公設民営鉄道の在り方を提案できれば面白いかなと思っております。

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Sunday, June 18, 2017

空飛ぶクルマ

共謀罪が成立しました。国会論戦で一般人には適用されないとされてますが、問題なのは乱用の歯止めがないこと。前エントリーでも指摘したように、前文科省次官の前川氏に対する個人攻撃のように、政権に不都合な人物を狙い撃ちすることができてしまうわけです。この点は戦前の治安維持法と変わりません。ちなみに治安維持法の逮捕者第1号は仲間内でヨタ飛ばし合ってた大学生達で、冤罪だったけど取り調べ中に拷問死だそうで、これリベラル陣営から見れば逮捕上等、逮捕は名誉と考えるべきでしょう。歴史に名を遺すチャンスです^_^;。てことで共謀したいんだけど、1人じゃできない。仲間がいない。

******急募!一緒に共謀する仲間!******
価値観を逆転させれば怖くはありません。ヤクザかい!てことでヨタ飛ばし続けます^_^;。

先週末愛知県の東名高速で事故がありました。

バスに車衝突、45人けが 運転の男性死亡 愛知の東名高速  :日本経済新聞
北朝鮮の脅威が言われ、各地でミサイル防空訓練が行われたというニュースと並べると、現実的には空飛ぶクルマの方が怖いよなと。そもそもミサイル飛んできたは数分のうちに着弾してしまうから意味ねー。続報では反対車線を走っていた乗用車が左側ガードレールに接触してコントロールを失い、右へ寄って中央分離帯の法面に乗り上げてジャンプしたそうですが、時速100㎞程度ということで、道路構造の欠陥も指摘されてます。

一方ぶつけられた観光バスの方は、バスドライバーが咄嗟に左に避けてエンジンブレーキで減速しながら左側のガードレールや側壁に接触させて安全に停止させ、その冷静な対応に賞賛が寄せられています。また観光バス事業者の東神観光バスは安全性の高い新車を導入しており、軽井沢のツアーバス事故では車体強度に問題のある中古バスだったこともあって、この面でも賞賛されてますが、いや待て、そもそも空飛ぶクルマのガードレール接触が事故原因だったわけで、同じガードレール接触で車の挙動がここまで違うってことは指摘しておきます。

種明かしすれば車両重量の問題でして、乗員1名の乗用車の重量は1t前後に対して、フル装備の大型観光バスで定員乗車なら20t近くになります。これだけ重量が違えば運動エネルギーの量も大違い、大型観光バスを安全に停止できる側方ガードレールも乗用車には強すぎて弾みでコントロールを失うことはあり得るということですね。もちろん入射角の問題や乗用車のドライバーの心身喪失の可能性など、報道ではわからない問題もありますが、道路構造に注目すれば、問題点は見えてきます。1t未満の軽から40tの大型トレーラーまで同じ道路を通行するわけですから、安全対策に根源的な不可能性があるわけです。

中央分離帯や側方ガードレールの設計は大型車の重量を受け止めて衝撃を分散しなが安全に停止させることを狙っているわけで、乗用車にとっての最適設計ではないことは確かです。中央分離帯も大型車が突破できないようにタイトな法面を採用すれば、軽量な乗用車にとってはジャンプ台になりかねないわけです。道路の混合交通故の矛盾ですが、そもそも高速道路は大型車を想定した作りであって、乗用車で利用するときにはドライバーがリスクを意識して自衛するぐらいしか対策はなさそうです。余談ですが、都内の高速道路整備で東名より先に中央道が着手され、しかも分岐線である富士五湖線が優先されたのは、治安対策で山梨の陸自基地から戦車を速やかに都内へ向かわせるためとか。時あたかも新左翼運動が盛んな60年代後半でした。

大型車と小型車をゾーニングで棲み分けられない限りついて回る問題ですが、首都高で湾岸線の大型車ETC割引で利用を誘導しているぐらいです。外環道や圏央道が整備されたときに、大型車の環状ルートへの誘導策は考えられますが、厳格な分離は困難です。

てなタイミングで日経ビジネスが「「空飛ぶクルマ」の衝撃」という特集組んだのが何というか^_^;、道路を走る限り渋滞を避けられない中で、「空を飛ぶ」という発想そのものは突飛とは言い切れないにしても、クルマの未来に見えるある種のカオスを感じます。中身は玉石混交で、さまざまなアプローチがありますが、プレイヤーがアマゾンやウーバーのようなIT企業にトヨタ自動車、航空機のエアバスまであり、ドローンの大型版や1-2人乗りのパーソナルプレーンなど、方向性も定まっていません。

空は飛ばないまでも自動運転は実用化を射程に入れており、未来の自動車産業の激変を示唆するのですが、上記のような現実の事故を目の当たりにして、ここに自動運転車が加わることに関してどう考えるべきか、今のうちに考えておくべき問題があります。既に自動運転車としてレベル2と定義される高速道路で車線キープと車間距離を保った自動追尾は市販車レベルで実用化されてますし、これに車間通信を組み合わせて衝突を回避しながら車間を保って運行する技術なども実用化目前ながら、いずれもドライバーが乗って緊急時の危険回避を行う仕様で、今回のような事故を防げるのかというと、むしろヒューマンエラーを誘発する可能性もあり問題を複雑にします。

その先の完全自動運転は事故時の責任分担の問題が絡み、現状では不可能となります。実際大型車に偏った日本の高速道路の安全対策を前提とすれば、事実上完全自動運転は無理です。本気で実用化を考えるならば、エリアを限定して速度を抑制した形で交通システムとして導入するというアプローチになると考えられます。実際グーグル改めアルファベットの自動運転車開発会社ウェイモが2座の小型自動運転車を米カリフォルニア州フェニックスで実証実験してますが、日本でもウーバーのシステムで自家用車有償運行を行う京丹後市など、まずは公共交通が維持困難な地方の特定エリアで試験導入が現実的でしょう。

京丹後市では道路運送法78条の自家用自動車の有償運行の特例で認可されたんですが、そのために営業車に準じた事故補償を求められてボランティアのドライバーに高額の保険加入が義務付けられており、元が取れる状況にないこともあり、ドライバーのなり手の確保が難しい現実があります。未来志向で特区制度を活用するというならば、ウェイモのシステムを導入した方が良かったんじゃないでしょうか。加えて鉄道貨物の強化で高速道路の大型車を減らしすということも考えて、貨物鉄道と競合するルートを小型車向けにゾーニングというアプローチも考えられます。

第2次安倍政権の成長戦略の目玉とされる国家戦略特区ですが、今治の加計学園獣医学科問題にとどまらず、どこに未来志向があるのか疑問です。仮に獣医師が足りないとしても、既存の獣医学科の定員増で対応できれば初期投資分の負担が軽減されるわけで、敢えて新設の大学で行う理由は明らかではありません。しかも獣医学科新設に意欲を見せた京都産業大学は却下したうえで、空白地帯に限るという事実上再申請を封じる決定までされているわけですから、加計学園への便宜供与が疑われても仕方ありません。

てなわけで、共謀しようぜwwwwwwww。

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Sunday, June 04, 2017

ハケンからシュケンへ

トランプ大統領のパリ協定離脱が波紋を呼んでいます。

パリ協定離脱を正式表明「米国に不利益」  :日本経済新聞
離脱といっても手続き上は4年間は離脱できない仕組みですが、パリ協定自体が参加国が自主目標を持ち寄って相互検証などの国際ルールを決めるっていうユルユルな枠組みですから、実質的にはオバマ大統領時代に約束した緑の気候基金への30億ドル拠出の中止と国際会議への不参加ってことで、TPPと違ってパリ協定自体が漂流することはなさそうです。

この辺過去エントリーで繰り返し述べてきたことですが、トランプ大統領の政策は、ザックリ言えばアメリカが覇権国家から降りて強い主権国家になるというコンテクストの話であって、この観点から見れば、何の意外性もないニュースです。資金の拠出や国際会議への参加などの法的義務は負わないということですね。加えて大統領選当時から反オバマ政権の主張を繰り返して当選したわけですから、オバマ大統領のレガシーの否定に意図的に舵を切ったという意味でもあります。どのみち予想されたことです。

ただ日本にとってはちょっと痛いところがあります。京都議定書でも子ブッシュ大統領の離脱があって、危機感を抱いた欧州が、それまでとかく対立しがちだった日本に譲歩して森林のCO2吸収を認め、森林認証の仕組みなどを決めたことです。ある意味日本は漁夫の利を得て実際2008-2013年の実績でマイナス6%の目標を達成しています。それでもポスト京都の枠組みが決まらず期間延長が濃厚になると、震災による原発停止を口実に離脱した訳で、その結果ロシアなどの追随もあり、欧州主導で機能していた排出権売買市場を枯らしてしまうなどして不信を買いました。

パリ協定でも米中両国の積極姿勢と裏腹に様子見を決め込んで出遅れた上に、今回の米離脱宣言で、石炭火力と原子力に頼る日本のエネルギー政策をアメリカが援護射撃する構図は見込めなくなりました。加えて今回はBrexitの影響で揺れる欧州で、ドイツのメルケル首相が敢えて米英を頼れないという発言でEUの求心力を高める意図を明らかにしております。中国インドその他途上国も含めた枠組みですから、仮に日本が抜けても大勢に影響なし。日本のプレゼンスは下がりっぱなしです。

アメリカにしてみればシェール革命で資源国の側面が強くなっており、自国第一で考えれば敢えて国際協調は必要ないって点も見逃せません。トランプ流最強の主権国家の枠組みってことですね。シリアや北朝鮮の問題も、シリアにトマホークを打ち込んだのは直積反撃する能力がないからで、北朝鮮への圧力も意図してはいますが、反撃能力があるかもしれない、少なくともそれを目指してミサイル開発を続ける北朝鮮への直接攻撃は避けたわけです。トランプ大統領自身「同盟国への重大な脅威」とコメントし、対北朝鮮では戦争当時国なのに当事者意識は皆無。寧ろ日本政府が焚きつけた面もあります。

中東でも似た構図があって、G7へ向かう中で立ち寄った中東ではサウジアラビアと急接近して反イランの立場を鮮明にしています。おそらく米国内のシェール産業との協調がこれから始まるでしょう。技術革新でコスト競争力をつけたシェールオイルですが、ここへきて米国内の雇用がタイトになってコストアップに転じてきているので、原油価格上昇を狙ってOPECとの協調はリアルに可能性があります。その文脈で言えばロシアとの和解は既定路線ってことになりますが。自由貿易を標榜してきたアメリカが石油カルテルに参加って、時代は変わったな。アメリカが消費国から資源国へシフトってことは、消費国である日本のアメリカ追随は国益的にはマイナスです。

そんな四面楚歌の中、国内では森加計問題がくすぶっています。世界史的な地政学的大変動期にあって、日本政府の絶望的な頭の悪さには眩暈がします。てなわけで、この話題。

「今回はプロセスに問題」 前川前次官インタビュー  :日本経済新聞
規制緩和は結構なんですが、意思決定のプロセスの透明性が問題です。前川氏が言うように、獣医学科の新設を必要とする農水省のデータは示されず、首相案件として進められた実態が語られてます。そもそも獣医学科は設置校でも定員60名が最大で、全国合計でも1,000名程度のところに、160名定員の獣医学科新設の申請ですから、需要面の根拠が示されないままの申請はあり得ません。

これ法の支配を標榜して法曹人口を増やすという名目で始まった法科大学院と構図が似ています。結果どうなったかと言えば、法科大学院新設の申請が殺到し、実際始まってみれば力量のある教員の確保がままならず、対応する新司法試験で合格率が低迷し、合格ラインを下げるという議論に対して各地の弁護士会から反丹が相次ぎました。そりゃそうです。数を充足させるために質を担保しないというのは本末転倒です。結局華々しくスタートした法科大学院も学生が集まらず廃止が相次ぐ事態となりました。

その意味でj地場で畜産が盛んなわけでもない今治に160名定員の獣医学科設置は普通に考えて無理です。大学誘致を望んでいる今治市にしても、卒業生が地元に留まらない学科の新設は定住人口の増加にもつながりません。加えて獣医師は医師のように大病院の勤務医でとりあえず実務に就けるわけでもなく、個人で開業もハードルが高いなど、受け皿もない。一応輸出競争力のある畜産のためというお題目のようですが、実際日本では畜産業は廃業オンパレードで規模の縮小が続いている状況で、関税の縮小撤廃で劣勢にあるのが現実です。少なくとも獣医師が足りないから輸出競争力が高まらないってのは、論理的につながらないですよね。

また特区制度の問題もいろいろあるんですが、元々小泉政権で始まった構造改革特区の精度は、地域の特徴を引き出して地方の自立を促す意味で、全国一律の規制が邪魔になるなら、地域限定で規制緩和しましょうという制度で、狙いとしては地域限定の一国二制度状況を作って規制改革につなげようということだったようですが、そのための検証を厳格に行えば、規制が原因で成長できないという事例はさほど多くないので、結局規制改革につながる事例は殆どないのが現実です。

てことで、政府主導でトップダウンの形で進める国家戦略特区制度が第2次安倍政権で始まったんですが、実は加計学園の獣医学科新設問題は構造改革特区時代に何度も申請され、検討段階で却下が続いた案件でした。それが安倍政権になって急転直下前進したわけですから、これを正当とするなら、よほど納得感のある説明が必要ですが、政府からはむしろ内部通報者となった前川前文科省次官の個人攻撃を公然とやってます。文科省天下り斡旋問題での引責辞任だったこともあり、私怨による仕返しと取ったようです。

また出会い系バー通いが読売新聞と週刊新潮で報道されましたが、前川氏に助けられたという女性の証言が週刊文集に載るなどしています。読売や新潮の報道はおそらく官邸のリークでしょうけど、それを裏も取らずに貴人してしまうメディアの無節操ぶりに呆れます。加えて個人的なことが報道される怖さというか、官僚の弱みを握るための身体検査の結果でしょうけど、共謀罪が成立すれば対象は一般国民に拡大します。頭悪い癖に悪知恵だけは長けているわけです。

規制と経済成長との関係は単純ではないってのは度々取り上げておりますが、こんな過去エントリーが参考になります。

特区の昔の24時間
百鬼夜行の公共性
ミザリーハロウイン
これ政府の規制改革会議で公共交通の終夜運行が提案され、それを受けて当時の猪瀬都知事が渋谷駅―六本木間で終夜運行を開始したものの、都知事選のときに徳洲会から5,000億円の資金供与を受けて政治資金収支報告主へ記載しなかったという疑惑で辞任し、後任の舛添都知事によって都営バスの終夜運行が止められました。公選の行政長が前任者を否定したがるのはトランプ大統領と共通です。

皮肉なことに運行最終日はハロウインで仮装した一般客が殺到して時ならぬ混雑になりました。これつまりスタートは政府の規制改革会議だったわけですが、別に日本の法律で終夜運行は規制されているわけではなく、単純に収支に合うだけの需要がなかったってのが結論です。もちろん多少の赤字ならアジェンダ実現のためのコストと割り切ることは可能ですが、その際に問われる公共性の説明ができていなかったから、都知事の交代であっさり葬り去られたわけです。

この辺既視感ありますが、例えば川崎市の市営地下鉄構想と、それに連動した京急大師線の地下化が市長の後退でとん挫したのですが、旧いすゞ自動車工場跡地を中心に先端産業集積地として再開発が進む殿町プロジェクトとの関連で、産業道路の踏切解消のために末端区間だけの地下化工事が進捗してます。加えて一旦沙汰止みになった羽田空港神奈川口計画の橋建設工事が始まっていて、環八から国際線ターミナルへの分岐付近に接着する予定ですが、アジェンダが曖昧なために時間を浪費した事例です。宇都宮市のLRT計画にも同じ匂いがするのは気のせいかな?

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Saturday, May 06, 2017

こどもの日本

北朝鮮のミサイル発射で始まった今年のゴールデンウイークですが、東京メトロの運行見合わせが議論を呼んでいます。報道によれば北朝鮮情勢の緊迫化で4月中旬にミサイル発射の情報があった場合に運行を止めると決めたばかりで、当日テレビニュースを受けて全列車に最寄り駅で運行停止を指令し、その後着弾の事実がないということで運行再開し10分ほどの運行停止でした。そのほかメトロからの連絡で東武鉄道も同様に運行停止したほか、JR西日本が北陸新幹線で一部列車を止めたものの、JR東日本やJR東海は特段の対応はとらなかったということで判断が分かれました。

結果的に過剰反応だったわけで、東京メトロでは、以後Jアラート受信の場合のみの対応とすることを決めています。東京メトロにしてみれば、ミサイル着弾で地上の人が地下鉄駅へ避難すればパニックもあって危険ということで危険回避のためではあるのですが、テレビニュースでの判断は早計だったことを認めた形です。それ以前に冷戦時代に核戦争を想定して地下深くにトンネルを掘り、広い地下空間を確保している東側諸国の地下鉄と日本の地下鉄や地下街とは設計思想が別物なんで、ミサイル飛んできたら地下へ逃げろとか危機感を煽った日本政府が悪いんですけどね。

余談ですが2回続けての北朝鮮のミサイル発射失敗には、2通りの解釈がありまして、1つはアメリカの情報当局が既に北朝鮮のミサイルシステムにマルウエアを仕込んで遠隔操作で失敗させたというもので、もう1つは韓国配備のTHAADなどのミサイル迎撃システムの穴探しのために北朝鮮側がわざと失敗させたというもの。いずれにしても直接日本を狙ったものではないわけで、日本政府の過剰反応は異常です。THAADに関してはコスト負担を巡って米韓で摩擦がある一方、中国を刺激して対韓経済制裁で韓国経済を圧迫していることもあり、北朝鮮を刺激するアメリカに物言える大統領をということで、革新派の文氏支持が拡大している状況で、日本より遥かに冷静です。

別に東京メトロの肩を持つ気はありませんが、首都圏という人口ボリュームゾーンの事業者故の判断という意味では、混乱回避のバイアスはやむを得ないところかもしれません。何しろ東京の満員電車は世界的に知られていて訪日外国人の体験乗車で混雑は飛んで来る状況なんですから^_^;。

5月1日にはJR東日本の豪華クルーズ列車トランスイート四季島の一番列車が上野駅13番線から出発しましたが、13番線は乗客と報道関係者以外は立ち入り禁止で所謂撮り鉄がネットで不満を言えば撮り鉄が悪いの大合唱。クルーズ列車自体はJR九州のななつぼしの成功でJR東日本とJR西日本が追随したとされますが、JR東日本は定期運行を廃止したカシオペアによるツアーや寝台特急あけぼののリバイバル運行などである程度実績があります。

またこの手のクルーズ列車運行はななつぼしもそうですけど。自社沿線の観光活性化が一番の狙いで、観光業の活性化策として富裕層の掘り起こしによるシャワー効果というのはセオリー通りではあります。大人の富裕層がリピーターとなることで一般客が憧れるという構図です。その意味で憧れを拡散するギャラリーの存在は重要なんですが、九州フランチャイズのななつぼしと違って人口ボリュームゾーンの首都圏では、ギャラリーの数が多すぎるから規制せざるを得ないというわけで、クルーズ列車のビジネスモデルはJR東日本にとって最適解だったのだろうかという疑問もあります。例えば若桜鉄道のSL運行のように、過疎地のローカル線で撮り鉄向けのお立ち台を有料提供するアイデアは、首都圏を抱えるJR東日本では難しいわけで、鉄道事業者は立地条件を選べない以上、所与の立地条件の中でビジネスを最適化させるしかないということは言えます。

とはいえ鉄道屋にとっては豪華クルーズ列車ってのは夢でもあるでしょう。トランスイート四季島は10連のEDCで交直流しかも青函区間のAC25kv対応プラス非電化区間用に発電用ディーゼルエンジンまで搭載し、保安装置もATS-P、ATS-Sn、青函ATCまで搭載している一方、寝台やヒノキ風呂などの車内設備も乗っかるわけですから、E5系より重い軸重16tという代物で、一点ものの豪華クルーズトレインでなければあり得ないスペックでもあります。この辺ローカル線向けのリゾートトレインがハイブリッド化されてその技術が仙石東北ラインのHB-E210系に活かされるといったことにはならないわけで、ある意味採算度外視だからできるチャレンジでもあります。JR東日本の規模から言えば許容範囲の道楽という側面も。

その意味ではJR東日本のレゾンデートルと言える次世代通勤車のE235系がやっと量産開始となりましたが、ここに至るまでトラブル続きで、慎重なテストランを繰り返してやっと量産にこぎつけたわけですが、JR東日本のコアコンピタンスとしての大量輸送だからこそ、小さなトラブルも潰しておく必要があります。四季島のような道楽は許されないわけですね。E235系のトラブルも、物見高い首都圏の鉄ちゃんがダメ出ししたとも言えますが^_^;。

てなわけで、生産年齢人口の減少が止まらない日本ですが、だからといって少子化対策ってのは短絡的です。なぜならば万が一出生率が上がって子どもが増えても、労働力化するには凡そ20年のタイムラグがあり、従属人口が増えて現役世代の負担を増すだけだからです。そのせいか急激に教育無償化の機運が高まっているようで、憲法の議論にも飛び火しています。

憲法施行から70年(4)維新、教育テコに首相に加勢 自民と水面下で連携着々 :日本経済新聞
そもそも憲法で教育無償化は禁止事項ではありませんから、憲法改正は無意味です。実際民主党政権で高校無償化は実現しましたが、第2次安倍政権で廃止されました。制約条件は憲法より財源なんですが、財源については建設国債に準じた教育国債の発行が言われておりますが、これ教育を受けた世代が現役世代になってから返済するって意味ですから、現在の現役世代の負担を将来世代にトバすだけの意味しかありません。

一部で相続税の強化も言われてますが、既に民主党政権で強化された結果、大都市圏の親の住宅が評価額から相続税対象となり、改正前はほぼ富裕層限定だった相続税が実質庶民税になった現実がありますが、これがさらに課税強化されれば、遺産相続そのものがほぼ不可能になる一方、富裕層は法人登記して会社を作って資産を委譲し、代表者を世襲することで負担を逃れることができます。結局庶民を食い物にするだけです。政治資金も相続税の対象外ですから、政治家の懐も痛みません。

加えて小泉進次郎議員を中心に自民党若手で議論されている子ども保険ですが、介護保険同様の社会保険制度を作って年金受給者を含む国民全員で広く薄く負担ということですが、待ってほしい。扶養控除の廃止で財源をねん出してスタートした子ども手当が、民主から自公への政権移行のドサクサで減額された上に所得制限付きの児童手当となり、これだけでも実質増税ですが、それに加えて保険料負担ですから、上乗せの増税負担でしかありません。結局負担は国民付け回す子ども騙しです。寧ろ逆進性のある社会保険料負担の緩和のために給付t気税額控除の導入の方が現役世代の負担緩和には効果的です。

安倍政権はこの手のレトリックを多用してあからさまに国民を騙そうとしているわけですが、騙しの手口は経済でも同様です。

日本経済、5期連続プラス成長へ アジア輸出けん引  :日本経済新聞
これ2015年度末の今年1-3月期からGDPの推計方法が変更されて、従来費用に計上されていた研究開発費を投資に計上するようになり、統計の連続性を担保するために遡って数値が改訂されたんですが、その結果改定前はゼロ前後でデコボコだったGDPの数値が、趨勢的に増え続けている研究開発費が乗っかって書き換えられた結果、数値上は5期連続のプラス成長になったわけで、経済実態は変わっていません。経済専門紙である日経は百も承知でこんな記事を載せるんですから、確信犯の政権広報紙ですね。てことで、こどもの日に思う、大人になろうぜ。

p.s.教育無償化の憲法改正はひょっとしたら教育への政治介入の口実になると考えているかもしれません。つまり日本全国みんな森友学園とか。とすれば森友問題をいい加減に終わらせるとまずいですね。

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Sunday, April 23, 2017

忖度弄すと引く大人かい!

世の中不思議いっぱいなんですが、そもそもシリアにアメリカがトマホーク59発も打ち込んだのに、ロシアがシリアに供与したとされる対空ミサイルシステムが働いた気配なし。トラブル?元々ザル?それとも事前通告を受けたロシアが敢えて止めた?

不思議はまだいっぱい。シリア攻撃は北朝鮮への警告と米ペンス副大統領も認めて、シンガポールにいる空母カール・ビンソンを朝鮮半島近海へ派遣もなぜかインド洋へ。北朝鮮のミサイル発射は失敗。北朝鮮核実験場でバレーボール。一方日本の安倍首相は北朝鮮ミサイルにサリン搭載など危機を煽って韓国から不快感。そりゃそうだ。今韓国は大統領選真っ只中。誰が選ばれるかで北朝鮮に対するスタンスも変わるって時に日本国内向けの人気取りは不謹慎。しかも欧米メディアは変な憶測を働かせるし。逆に北朝鮮も大統領選が終わるまでは下手に挑発して敵対的な政権ができたら藪蛇だし。

でもトランプ大統領は喜んでます。なぜならば危機感煽ればリスクオフで円高ドル安になるわけだし。自らの口先介入を安倍首相が補強してくれたんだから感謝っておい!そもそも福一事故で米国民にいち早く退避勧告をした米政府が未だ韓国国内に軍属、非軍属含めて10万人はいる米国民に退避勧告出さずに軍事行動はあり得ません。シリアは直接反撃できないからミサイル打ち込んだけど、同じこと流石に北朝鮮には無理ってもの。トランプ大統領って素人的な危なっかしさはあるけれど、ある種の勘の良さはありそうです。計算通り?まさかね。

北朝鮮危機を煽る安倍首相ですが、森友問題は未だ決着せず。これぐらいのスキャンダルで政権が吹っ飛ばない今の日本の異常さ。森友学園が9億の国有地を8億値引きだけど、加計学園は36億円の土地を無償で入手しかも国家戦略特区を悪用して正規には認められない獣医学科新設というルール破りの権力私物化ですからね。

日米経済対話が始まったけど、日本側の意図に反して貿易問題が前面に出て事実上の日米FTA交渉に。そうならないように根回ししたはずが裏目に。こうなるとアメリカの要求は自動車と農業を中心としたTPP以上の譲歩とTPPでは盛り込まれなかった為替条項。ドル高是正のルール化が必ずテーマになります。

その一方で米中間ではドル高を是正したいアメリカと元安による資金流出を抑えたい中国の思惑が一致しており、両国間で為替協定を結ばれたら日本は手も足も出ないまま円高を受け入れることになります。原油価格も上昇基調にあり日本にとって円高は歓迎すべきなんですがね。G20財務省会合でも金融政策はデフレなど国内問題の解決のためのもので、為替誘導ではないと敢えて強弁しなきゃならないところに日本政府の苦しさが滲みます。

その一方で事実上とん挫したTPPは11カ国で新たな協定として発効させる方向性を打ち出したものの、アメリカを説得して迎え入れるという殆ど不可能なたわごとを言い始めました。アメリカ抜きなら日本に有利な交渉ができるとでも思っているようですが、12カ国の交渉でアメリカの立場を代弁するような対応を取った日本はむしろ警戒されていると見るべきです。農業分野でライバルのアメリカが抜けたことで、オーストラリアやニュージーランドは寧ろ攻勢を強めさえするでしょう。結果11カ国TPPでも農業分野は攻め込まれます。日米二国間と併せて日本は得るものなしです。

この日本政府の無能さですが、地方や民間企業も同じかも。地方でいえば存続の危機にあるJR北海道問題で北海道庁の対応のまずさ。最近やや柔軟化したようで、バス化も含めて協議に応じる姿勢は見せるものの、上下分離には否定的で、運賃値上げには理解を示すものの、JR貨物の線路使用料値上げや青函トンネル保守費用の低減を国に求めるということで、結局国と乗客に負担を求め、自らは負担しないって話です。虫が良すぎます。

民間はといえば東芝の迷走が相変わらずですが、実は買収した海外子会社の不祥事や損失で本体も傷ついたのは東芝に限らず、中国子会社の不正で損失を被ったLIXIL、人口減少で国内じり貧だからと買収したブラジル企業で躓いたキリンとか、成長分野を海外事業に求めてシナジーを得られなかった日本郵政とか。共通しているのは高値掴みしてのれん代償却が重荷になる一方、それっをカバーするシナジー効果は得られていないという同じ構図。日本の企業経営者はよほど無能なんだ。

同じ原発事業を抱える三菱重工と日立製作所ですが、海外案件がことごとく中止になって受注分のコスト上振れも低負担で切り抜けられたという意味で、ある意味運が良かったと。こうなればWHの破たん処理で原発事業から事実上撤退する東芝のおかげで国内の廃炉事業で出番が増える漁夫の利。実質国有化された東電の福一事故賠償を国が面倒を見る現在のスキームではコストの上振れは国が面倒見てくれるし電力料金への転嫁で国民につけ回しできるしで、ハイリスクの海外案件は無理に手出しする必要なし。国有企業をコントロールして構造改革を主導する手法は中国と同じです。いやむしろ習近平の反腐敗政策があれば森友や加計のような問題は起きないか^_^;。中国なら安倍晋三も問題閣僚も死刑かも。それはそれで問題だが。

てなことはいろいろあるんですが、こんなニュースに引っかかりました。

。ロボットと仕事競えますか 日本は5割代替、主要国最大  :日本経済新聞
これそもそも前提がおかしい。経済学では労働力の資本による代替を進めると資本収益力が逓減するという命題があります。実際求人難で賃金が高止まりしていたバブル期に、海外市場を睨んだ強気の判断もあって日本企業はこぞって設備投資に走り、過剰投資で資本収益力を低下させて、90年代半ばからは供給過剰の是正を雇用調整で行って益々資本収益力はじり貧になり、一方過剰設備投資のツケで設備の更新投資が滞り、外資の力を借りて最新設備を手に入れた新興国の台頭に伴い競争力を失ったわけです。

そこへもってきての人口減少です。生産年齢人口自体は90年代半ばから減少に転じたんですが、丁度日本企業が雇用調整を始めたタイミングと重なったこともあり、人手不足が顕在化するまでに凡そ20年かかったわけですが、今後人手不足は深刻化の一途をたどります。JR北海道問題に即していえば、そもそも地域の人口げ減っている中で、鉄路を維持するための要員が確保できないわけで、それを回避するためには、電化や軌道強化などの設備更新でメンテナンス負担を減らし、各種センサーを活用したインテリジェント化など相当な設備投資が必要なんで、その資金を地元で負担できないなら、鉄道廃止止む無しです。これ民間企業も同様なんですが、ロボットやAIはあくまでも労働生産性を高めるためのツールとして活用して、資本と労働の投入バランスを是正することで、付加価値創出力を高める必要があるわけです。

この観点から言えば政府が進める働き方改革も全く見当違いで、そもそも仕事の繁閑を残業で調整しようとするから無理が生じるんでAIを活用して短時間で成果が出る仕組みを作ることが必要なんで、その意味では現状の残業規制は緩すぎて企業に投資インセンティブをもたらさないと言えます。

折しもヤマト運輸のドライバー不足問題やセブンイレブンなどコンビニの人件費負担増などの問題が顕在化して、対策として無人自動運転の解禁が言われますが、実現するまで人手不足は待ってくれません。ヤマト運輸では運賃値上げや時間帯サービスの縮小や宅配ボックスの設置などを進める考えを示してますが、そういうことなんですね。単純衣労働力を資本であるロボットやAIに置き換えるんではなくて、新しいテクノロジーを取り入れながら、顧客から受け入れられるサービスの在り方を模索していく以外に出口はありません。良い子にプレゼントを運ぶサンタさんもそりを引くトナカイがいなけりゃ成り立ちません。てなわけで迂遠ながら季節外れのダジャレ完成^_^;。

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Sunday, April 09, 2017

トランプ・クリティーク

柄谷行人氏の著書に似せたわけぢゃないんですが^_^;。トランス・クリティークは名著です。

シリア情勢が大きく動きました。4日にシリア政府軍の空爆後に、サリンに似た中毒症状が見られたことで、化学兵器の使用が疑われたことを受けての懲罰ってことのようですが、疑惑段階での軍事行動は問題です。子ブッシュ大統領がイラクが大量破壊兵器を開発中という嘘の情報で開戦したことを思い起こさせます。当時は独仏両国が反対に回ったのに対し、今回西側諸国はこれを歓迎したわけですが、いち早く支持を表明した日本の立場は微妙です。

米中首脳会談が行われている中でのミサイル攻撃ということで、北朝鮮問題に対する警告の意味を指摘されてますが、その割にロシアなどへ行われた事前通告が日本には為されなかったわけで、日本政府の希望的観測の域を出ません。むしろ国連安保理でロシアと連携することが多い中国が口出ししにくい米中首脳会談のタイミングを利用したってのが実際でしょう。実はここにトランプ政権の性格を示す鍵があります。

レーガン大統領に比較されることが多いトランプ大統領ですが、就任後の政権運営を見ると、むしろニクソン大統領に近いと言えます。今回のシリアへのミサイル攻撃で言えば、ジョンソン大統領時代に泥沼化したベトナム戦争を終結させる過程で北爆を強行したりカンボジアへ戦線を拡大したりした迷走あたりと似た対応です。

実際は欧州諸国が主張するアサド政権排除とは一線を画し、深入りを避けています。どうもアサド政権の化学兵器使用に関する官僚のプレゼンに義憤を感じたということのようです。そしてホワイトハウスの政治任用ポストのなり手が見つからず、議会承認も遅れていて空席が多いことが影響してるようです。だから逆にトランプ大統領の脊髄反応的な対応が表へ出たってことのようです。

日本としてはむしろシリア情勢を他山の石として、朝鮮半島有事で米軍の北朝鮮攻撃が起きた時の混乱をシミュレーションする機会でもあります。おそらく韓国国内の反応で賛否が分かれ、日米韓一枚岩の対応は無理でしょう。当然在日米軍基地への北朝鮮からの報復攻撃も起こりますから、日本国内も混乱して収拾がつかなくなることになります。軍事オプションは慎重であるべきですし、対北朝鮮でアメリカが強硬策に出ることは止めないといけません。

思い起こせば大統領選勝利宣言の場でTPP永久離脱を表明したのも、オバマ大統領の任期中に批准できなかったことで、NAFTA再交渉よりもハードルが低いですし、大統領就任後の大統領令連発も、大統領令は問題があれば議会が無効法案を成立させて無効化したり司法が差し止めたりできるので、実効性よりも有権者へのアピールの性格が強いと見ることができます。それが証拠にオバマケア修正法案に関しては議会との調整の果てに撤回しておりますが、これも単純にオバマケアを葬り去りたいのであれば、廃止法案ならば議会多数派の共和党の賛成ですんなり通っただろうに、、修正法案としたために、共和党保守派の賛同が得られず撤回に追い込まれたんですが、その結果、オバマケア継続が決まり、歳出が確定したことで、予算審議はむしろやりやすくなってます。トランプ大統領ってホントは隠れリベラル?

この辺はビジネスマンらしく難易度を意識したリアリズムなんでしょう。同時に従来の保守とリベラルの対立構図の中で経路依存的な議論しかできない政治家たちを戸惑わせているとも見ることができます。ニクソン大統領が米ドルの金交換停止や頭越しの電撃訪中で、オイルショックに始まる産油国カルテルをオイルダラー還流の枠組みで実効支配し、中ソ対立に乗じて一つの中国政策でソビエトとの分断を進め、現在に通じる地政学のフレームを作ったわけですね。日本にとっても沖縄返還交渉関連の密約で深く関わりますし、アメリカ側が沖縄返還のバーターと考えていた日米繊維交渉の約束を破った日本への不信感が、その後80年代以降のジャパンバッシングへとつながったとすれば、当時の佐藤政権の不始末でもあり、その意味で従来の対米追従路線を離れられない日本の安倍政権のしょーもなさにはため息しか出ません。

改革の本丸と目される税制改革ですが、これイギリスのシンクタンクが提案する法人税の仕向け地課税制度が踏襲されると見られますが、これに関してあまり正しく認識されていないようです。法人税の課税方法には大きく分けて居住地課税と源泉地価税の2つがあり、前者は企業の本社所在地での一括課税でアメリカはこれですが、多くの国は付加価値を生み出した地域で課税する後者となります。問題は違う制度が併存する中で企業の多国籍化が進んでいることで、居住地課税国の企業が源泉地価税国に生産拠点を置いて本国へ逆輸入するケースでは二重課税になりますし、逆のケースでは課税逃れにもなり得ます。そこで国境調整として、前者であれば源泉地価税分を控除した差額が居住地で課税されるという形になります。後者に関して源泉地国企業が居住地国に現地法人を置くことで課税逃れを防ぐ必要があります。

更に問題をややこしくしているのが各国の課税ベースの違いと税率の違いで、これらを組み合わせることで、パナマ文書で問題となったタックスヘイブン問題が生じるわけです。タックスヘイブンの場合は付加価値を生み出さない金融取引を利用して低税率国や地域へ富を退避させるわけで、一方で新興国やEUの周縁国などで外資誘致のために法人税減税が競争的に起きていることもあって、各国の税収の空洞化が進んでいます。その結果米企業に生産拠点の海外移転のインセンティブを与える結果となりますし、残る企業も課税特例による政策減税をロビーイングして税の軽減を画策するという複数ルートで税の空洞化が進み、税の所得再配分機能が失われていく現実があります。

それを変え得る課税方法として、仕向け地課税が提案されていて、米共和党で実現の模索がされているものです。WTOルールでEUの付加価値税や日本の消費税など間接税に例外的に認められている税の国境調整の仕組みを法人税に盛り込み、グローバル化に対応して輸出に対しては税の還付を、輸入に対しては公助抜きの課税とすることで国境調整を図る税制で、少なくとも国内で製造可能な製品の海外移転不利にします。加えてキャッシュフロー課税とすることで、形式上直接税となりWTOルール違反の可能性があるという提訴に対して利益課税でなく間接税だと主張できるという目論見です。

キャッシュフロー課税はそれに留まらず、複数年に分けて焼却される減価償却の一括償却と同じ意味になりますし、有形資産に留まらず知財やのれんなどの無形資産も同様ですから、投資全般を阻害しないという意味もあります。加えて人件費も控除対象で、この点が付加価値税と大きく違う点で、つまり低賃金国への生産移転は不利になるという意味で、国内雇用も守るという大統領選の公約と整合性があります。

また国境調整の結果仮にWTO提訴や報復課税がされたとしても、結局有効な報復手段は同じ仕向け地課税を導入するぐらいしかないわけで、それはむしろ望むところ。移転税制で税収確保に苦しむ多くの主権国家にとって問題解決の道になるというわけですね。EUにしろNAFTAにしろ主権国家の上位組織を置くという意味では主権制限の要素があるわけですし、各国の税の空洞化問題も含めて、ある意味クリティカル共同体としての主権国家の復権ということになりますから、反グローバル化という批判も当たりません。

加えてアップルやスターバックスで問題になった税逃れに関しても、未来分は新法人税で捕捉される一方、過去分を10%の軽減税率でみなし課税するリバトリエーション税を課す法案を用意しており、新法人税の前座として議会に諮って成立を目指してます。こちらはオバマケア修正法案で反対に回った共和党保守派も賛成に回ると見られており、トランプ税制改革の成否を占うことになりそうです。

問題はこうして相当額の税収増が見込めるわけですが、それを原資に減税やインフラ投資の財源とする目論見ですが、大統領選で訴えた法人税15%までは届きそうにないということ。共和党案の20%も苦しく、25%程度がせいぜいではないかと言われております。加えてリバトリエーション税で利益の海外留保が無意味化しますから、米企業が一斉に留保資金を本国送金すると、為替がドル高に振れてしまうという点ですが、むしろ新税制で輸入物価にかかる上昇圧力を緩和するとすれば、国民生活的には問題ないということになりそうです。

それと3月に利上げし、年内3回の利上げを示唆して緩和の出口を探るFRBの動き如何では、ドル高が進む可能背もありますが、その根拠となる米景気の回復基調にやや異変が。

米市場の変調、自動車業績に重荷 販売減速・膨らむ奨励金  :日本経済新聞
以前から指摘されていた問題ですが、サブプライム自動車ローンと販売奨励金で新車販売に下駄を履かせた状態が続いた結果、中古市場に車が溢れて値崩れして、元々リセールバリュー頼みのローン利用者にとっては、転売、買い替えのサイクルが停滞するわけですから、それが新車販売に跳ね返っている状態で、丁度不動産サブプライムローンと同じ構図です。ただ規模は小さく、金融危機には至らないと見られていますが、新車販売の停滞は生産の縮小を通じて米景気後退のトリガーにはなり得るわけです。ただしそうなればFRBの利上げスタンスは見直されるでしょうし、むしろ低すぎる失業率でインフラ投資が滞ると言われる中、景気後退は悪い面ばかりではありません。

そうなるとテキサス新幹線や北東回廊リニアの建設を目指すJR東海にチャンス到来?とはいかないのが現実です。トランプ税制では結局建設でも車両製造や保守でも現地調達を基本にしなければなりませんが、高速鉄道の建設や運営をこなせるサプライチェーンを立ち上げるのは困難を伴います。実質貨物鉄道で欧州以上に衝突安全の基準が厳しいアメリカですが、逆に言えば日本式の繊細な構造の高速鉄道の建設は未体験ゾーンとなるわけで、日本のリソースを使うと課税される新税制では不利になるわけです。インフラ輸出に前のめりな日本ですが、そうそううまい話は転がってはいないわけです。東芝が買収したWHの誤算もスリーマイル事故で原発建設が停止した結果、サプライチェーンが崩壊してコストを膨らませたことにあります。無理しても同じ運命が待っているだけでしょう。

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Sunday, April 02, 2017

JR30周年で国鉄は遠く

JR30周年となったわけですが、つまり国鉄を知らない世代が既に社会人になっているというわけで、そもそも国鉄改革とは何だったのかを知らない人が増えているということでもあります。しかもその30年はスタートがバブル期に重なって好調だった一方、バブル崩壊後の経済停滞で社会はすっかり様変わりしておりますが、上場を果たした本州3社とJR九州に対して、JR北海道は存続の危機とも言える状況に直面しており、JR四国も時間の問題という現状です。

その一方でJR貨物の黒字化で上場が視野に入るという、なんともわかりにくい状況ですが、JR発足以後の日本経済の激変を考えれば、これまでの30年の延長上に未来は描けないのはある意味自明です。加えて言えばバブル期以降の日本を特徴づけるのは低金利ってことです。これ上場して資金調達力を増した本州3社にとっては追い風の一方、経営安定基金の運用益で赤字穴埋めという枠組みの三島会社にとっては逆風になるわけで、その中でJR九州だけが上場にこぎつけた最大の理由は、JR発足後に完成し引き渡された青函トンネルと瀬戸大橋を抱えるJR北海道とJR四国に対して、追加的な負債が発生しなかったってこともあります。

リース料負担のある整備新幹線としての九州新幹線も、経営安定基金取り崩しで一括支払いしており、短期的な負担が北海道や四国より軽いことが指摘できます。ただし長崎ルートは需要面からもお荷物になる可能性があります。加えて経営安定基金の残りで上場前の減損処理で資産圧縮してますから、今後の鉄道事業の設備投資の原資は細くなっており、人口減少でJR北海道と同じ問題はJR九州でも起こり得ます。

本州3社についてもそれぞれリスクを抱えています。業績好調でリニア建設に入れ込むJR東海は、そのリニアがリスク要因です。過去にも何度の指摘しておりますが、リニア単体では赤字の投資であり、しかも人口減少で人手不足が顕在化する中で、労働需給による事業費の上振れは避けられないところですし、加えて南アルプスを青函トンネルより長い長大トンネルで抜ける難工事です。トンネル工事で地下水脈にぶち当たれば国鉄時代の上越新幹線中山トンネルや福岡市営地下鉄七隈線のような水没事故も起こりかねません。

JR東日本や西日本にとっても人口減少による地方線区の維持の困難さは今後も拡大するでしょう。JR東日本では仙石線や常磐線のほか、水害で橋梁が流された只見線や土砂崩れの山田線など災害復旧で課題を抱えています。JR東海の名松線の復旧とJR可部線の廃止区間の一部復活などはありますが、前者は三重県と津市の治山治水事業の進捗に合わせての復活ですし、後者は市街化が進んでいたものの、廃止時点で非電化だったために、電化工事までして残す選択肢は事実上なかったわけで、住民運動が広島市を動かし、それに呼応して鉄道用地の原状回復や売却を留まったJR西日本の間で建設的な対話が実現したことによります。その意味で窮地に立つJR北海道に対する道庁や関連自治体の対応はちょっと残念です。

それでもJR北海道に関しては、JR九州が先鞭をつけた経営安定9基金取り崩しという奥の手は残っています。ただし使途は重要で、要員不足で保守が困難な状況を脱するには、省力化投資が欠かせませんが、JR北海道の経営力強化の意味で、現状の鉄路をそっくり残すことはあきらめるしかないでしょう。具体的には保守負担の大きいディーゼル車を減らすための電化と、保守負担を減らすための軌道強化などですが、JR北海道が自前で残す区間に限定すべきでしょう。そうすれば経営安定基金を取り崩しても償却資産が増える分、キャッシュフローの改善につながりますから、JR九州の新幹線リース料一括支払いより筋の良い取り崩し方になります。JR九州で認めた以上認めないわけにはいきますまい。とすれば石勝線・根室本線の南千歳―帯広間が電化されて、保守が容易な電気車両への置き換えが進むことになります。そしてこの手は将来JR四国の経営が行き詰ったときにも使える手でもあります。

で、残りの区間に関しては自治体出資で線路保有を肩代わりするか、受け皿三セクへの譲渡とするか、あるいは地元バス事業者を巻き込んだバス転換かといった対策を路線や区間毎に自治体と話し合って決めていくしかないでしょう。受け皿三セクに関しては、輸送量次第で肥薩オレンジ鉄道のようにJR貨物の出資もあり得ます。宗谷本線に関してはロシア政府が興味を持つかもwwwww。いずれにしても自治体の対応次第です。名松線も可部線も自治体が動いて復活を果たしたわけですから。逆に自治体との協議を重ね社会実験までして廃止止む無しとなった三江線の例も珍しいものとは言えなくなるでしょう。

ま、いずれにしても人口減少の影響は今は好調な本州3社も安泰ではないわけで、北陸新幹線に入れ込むJR西日本は正直大丈夫か?とも思います。この点は」JR東日本が絡む整備新幹線計画がほぼ完成し、JR東日本のとっては成長分野となったのとは異なります。元々JR東日本も整備新幹線区間単体よりも、既存区間である根本部分の需要増が狙いだったわけで、わざわざ線路を曲げてまで小浜、京田辺経由で新幹線を作るのは意味不明です。加えてJR西日本には新たなリスクの種も。

なにわ筋線30年開通 JR・南海運行、新駅以北は阪急交え協議  :日本経済新聞
なにわ筋線に関しては、大阪維新の目玉政策としての関西空港重視の文脈で、関西財界も乗り気なようですが、今回は阪急も事業参加を申し出て、よくわからない状況になっております。

元々阪急はなにわ筋連絡線構想として十三―梅田北新駅間の路線構想を持っておりましたし、古くから新大阪連絡線として淡路―新大阪―十三間と新大阪―神崎川間の免許を取得し、新大阪駅隣接地に駅用地としてとちをしゅとくしていて、高速バスターミナルや路線バス操車場として使ってたわけですが、紆余曲折を経て十三―新大阪間を除いて免許失効しており、十三―新大阪間も、四つ橋線の十三延伸線と相互直通が計画されていましたが、大阪市営地下鉄の民営化が決まって民営化後に負担となる追加投資が頓挫したことが影響しているようです。てことで大阪部、。大阪市、JR西日本、南海電気鉄道に加えて阪急電鉄も加わる五者協議が始まるそうですが、元々JRと南海の呉越同舟に加えて唯我独尊の阪急が加わるとなると、協議がすんなり進むとは考えにくいところです。

なにわ筋線に関しては、中之島で連絡する京阪電気鉄道も期待しているようです。肝心の大阪維新ですが森友学園問題でもちぐはぐな対応が見られますし、四つ橋線延伸計画を反故にするなど本気度には疑問符が付きます。とはいえJR西日本の単独事業とするには投資額が大きいわけで、新幹線のみならず、コアコンピタンスと見做せる関西アーバンネットワークでの私鉄との相乗りは、JR西日本の難しい立ち位置を示しているとも言えます。

てことで、めでたいようなめでたくないようなJR30周年ではあります。

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Sunday, March 19, 2017

曲がり角の整備新幹線

森友問題が予想以上に盛り上がっております。どうせメディアが動かないだろうと思っていたら、籠池理事長夫妻のキャラの立ちっぷりや安倍昭恵夫人のノー天気な行動力と随行する官僚の公務か否かとか、総理夫人を私人と閣議決定とか、なんば花月かい!草生えるわ。

てことで数字が取れるとメディアが動いた結果、23日に鍵池理事長の国会証人喚問が決まりましたが、問題の本質は国有地払い下げを巡る値引き問題と教育基本法違反が疑われる私立小学校の認可を巡る大阪府の規制緩和を含む便宜供与問題の2つ。国会に呼ぶべきは当時理財局長だった迫田国税庁長官と松井大阪府知事です。

第一次安倍政権当時の姉歯事件が、永田議員偽メール事件でとん挫して、改ざんを許した大臣認証構造計算ソフト問題、民間検査機関による検査業務とそれに関連して不自然に米国基準を接ぎ木した規制改革などはスルーされ、1建築士の犯罪に矮小化され検査の厳格化だけに終わった轍を踏む可能性があります。籠池氏の証人喚問に何かの仕込みがあるか要警戒です。多分贈収賄事件というよりは、官僚による政権への忖度だろうとは思いますが、だから許されるって話ではありませんね。

この手の忖度は歴史を紐解けば結構あります。古くは東海道新幹線の岐阜羽島駅を巡る問題で、岐阜県選出の大野伴穆代議士の関与が噂されましたが、当時新幹線建設に懐疑的な世論もあり、政治家の関心は高くなかったのですが、反対されると面倒ということで、国鉄側が忖度したものです。

元々東海道新幹線は最高速250km/hで東京―大阪2時間半という目標を掲げて計画がスタートしてます。当時既に民間航空の台頭とモータリゼーションの進捗で挟み撃ちに逢っていた鉄道は、世界的には斜陽産業と見做され、フランス国鉄で331km/hの記録を出しており、枯れた既存技術で200km/h-250km/h程度の営業運転は可能と見られてはいましたが、そのための追加投資に及び腰で、当時の高速列車は最高速160km/h止まりでした。

日本でも民間航空とモータリゼーションは欧米に遅れながら進んでいたのですが、その一方で戦後復興が軌道に乗って旺盛な需要拡大で、特に東海道本線は早晩輸送力増強が必要な状況でしたが、航空とクルマに対して鉄道のシェアを維持するために、世界最高峰の高速鉄道の建設を意思決定します。戦前の弾丸列車計画である程度用地が確保されていたことも背中を押したのでしょう。

そのため可能な限り直線的なルートで計画され、名古屋から米原へは、当初鈴鹿山地をトンネルで抜けて直行するルートで検討されましたが、当時の土木技術水準では長大トンネルは建設費を増大させるということで、計画が具体化する中で、現在の関ヶ原ルートに落ち着きますが、そうなると岐阜県をかすめることになり、駅を造らないで反対されるリスクを回避するため、岐阜羽島駅の設置が決まった経緯があります。余談ですが鈴鹿山地ルートならば関ヶ原の雪に悩まされずに済んだ可能性はあります。

これだけが原因ではありませんが、計画を具体化する過程で妥協を迫られた結果、最高速は巡航速度200km/hプラス10km/hの210km/hとなり、東京―大阪3時間へ。そして京都駅への速達列車停車で3時間10分となります。加えて盛土の安定のために開業時は盛土区間の徐行で4時間となり、1年1か月後に徐行解除という対応が採られました。枯れた技術の集大成とはいえ、世界初の速度域の営業運転ということで、慎重を期したわけです。

結果的に東海道新幹線は沿線の人口と産業の集積を進め、事業としても大成功だったわけですが、一方で会計規則の変更で民間企業並みに減価償却を義務付けられたこともあり、皮肉なことに国鉄は新幹線開業年の1964年から赤字転落し、以後累積赤字を重ねて解体、分割民営化へ進むことになります。東海道新幹線単体で見れば職客後も大幅黒字ですが、電化、ディーゼル化による動力近代化と需要が旺盛な幹線ルートの複線化に、首都圏通勤五方面作戦もあって、償却資産を増やし続けたことで、赤字は拡大の一途をたどります。巷間言われる赤字ローカル線問題はむしろ無償貸与または譲渡で減価償却が発生しませんので、経営への重荷という意味では主たる原因とは言い難いところです。

この頃の国鉄幹部の経営能力はかなり低かったようで、赤字解消のために生産性を上げようとして所謂マル生運動を仕掛けて労組と破局的な対立をしたり、東海道新幹線の好調ぶりに「新幹線なら何とかなるかも」と全国新幹線網を構想して、整備法が国会で成立するのを受けて、とりあえず輸送力が逼迫しつつあった山陽本線の救済名目で山陽新幹線を着工し、岡山開業、博多開業の2段階で事業を進めましたが、この頃には大型機の就航もあって長距離では航空のシェアを切り崩すには至りませんでした。

その一方、整備法の縛りもあって新規着工の新幹線は最高速260km/hで最小曲線半径も東海道の2,500mから4,000mに、軌道中心間隔4.2mから4.3mとグレードアップされましたし、加えて高度経済成長期の年率5%に及ぶインフレもあって、東海道新幹線より減価償却費の負担が重くのしかかる一方、輸送量は東海道の凡そ1/3に留まり、単体で辛うじて黒字も、並行する在来線の赤字転落もあって、国鉄全体の収支改善にはほとんど寄与しませんでした。寧ろ減価償却費の増大はフリーキャッシュフローを生み出しますから、会計上赤字でも現金は潤沢で、身の丈に合わない過剰投資は加速し収支悪化が止まらないわけです。

こうして国鉄解体、分割民営化へと進むわけですが、民営化でJR各社が軒並み収支改善された秘密の1つは、JR各社の国鉄継承資産の圧縮記帳です。旧国鉄勘定で資産の減損処理をして、新会社へは例えば貨物コンテナ1個1円とかで継承し、バランスシートが身軽な状態でスタートしたことによります。ただし本州3社に継承された新幹線だけは例外で、営業権こそJR各社に帰属しますが、資産としては新幹線保有機構という特殊法人に継承させて、JR各社から線路使用料を徴収する形にして、旧国鉄債務の一部として負担させたわけです。しかしこれは見直されます。

対航空で競争力を高めたいJR東海は300系で270㎢/h運転を実現しますが、稼ぎ頭の東海道新幹線でリース料の負担が重い一方、減価償却費が得られず投資の停滞を余儀なくされます。また他社に先駆けて株式上場を目指すJR東日本は、東京証券取引所の助言で、主たる事業資産である新幹線が自己保有ではない状況では、減価償却費による継続投資ができないから、事業継続に疑義があり上場は難しいと指摘されたことを受け、国に新幹線買い取りを提案。東海と西日本も同意して買い取りが決まります。

この時の価格査定で時価法の1種である再取得価格法によります。簡単に言えば同等の資産を現時点で再取得する際にかかる費用ですが、非償却部分の地価部分が膨張しているわけですから、車両更新を進めて対航空の競争力を高めたいJR東海にとっては不満の残る査定となりました。そして後にこれでは東海道新幹線の設備更新が滞ると国に不満をぶつけて、のぞみ料金の上乗せ部分を非課税積み立てして設備更新に備える新幹線版特特法のような仕組みを勝ち取ります。その後工法の見直しで設備更新費用は圧縮され、JR東海は舌出してます。JR東海がリニアに傾斜するのは、それだけ余剰資金が潤沢だということでもありますが、そのリニアでも大阪開業前倒しで利子補給を取り付けるなど、国を騙して利益を得るその手法は、ある意味森友学園よりも悪辣かも。

一方国鉄が事業主体となる前提の新幹線網整備法も有名無実化する可能性があったわけですが、分割民営化時点で既に基本計画から整備計画へ昇格していた5路線の整備スキームが検討され、現在の所謂整備新幹線スキームになるわけです。元々国鉄の存在を前提とした法律を民営化JRに担わせるために、国と地方が2:1の比率で助成し、JRの負担も30年リースで償還するというもので、事業費圧縮のためにフル規格の他にミニ新幹線とスーパー特急という3メニューを用意して、国、地方、JRの3者の合意に基づいて着工という手順が決まりました。その際並行在来線はJRの経営から分離することと、分離に伴う貨物やローカル輸送由来の赤字負担がなくなる部分も加えたJRの受益分がリース料の算定基準とされました。

これJR東日本の上場時の東証の助言から言えば、九州新幹線を抱えるJR九州の上場はやや違和感があるわけですが、JR九州の場合不動産や流通など関連事業の好調で鉄道事業の比率がJR各社中最低の49%ということもありますが、鉄道事業でも経営安定基金を取り崩して新幹線リース料の一括支払いとその他の鉄道資産の減損処理を上場前に済ませて、上場後の負担を軽くしたわけで、JR発足時の圧縮記帳を繰り返したわけで、ルール上はかなりきわどいことをやってます。

一方赤字圧縮のために大幅な路線廃止を打ち出したJR北海道にとっての北海道新幹線は、貨物との共用の制約もあって共用区間の最高速140km/hで並行在来線切り離しは函館本線函館―新函館北斗と江差線五稜郭―木古内で受益が少ない上、函館本線に関しては電化して新車まで入れて三セクに渡すという追加費用も発生してますし、共用区間は並行在来線ではないので、JR貨物の割安な線路使用料はそのままということで、実態として経営改善にはほとんど寄与していないですし、むしろ青函トンネル自体の老朽化もあって保守費用の負担は今後も増えると見込まれます。上場どころか事業継続の危機ともいうべき状況です。

JR北海道は北海道新幹線の札幌延伸に期待を繋いでいるようですが、東京から5時間超では上記の4時間の壁問題で航空からの移転は期待できません。それでも並行在来線切り離しの受益は見込めますが、人口の希薄な北海道では北陸新幹線つるぎのような近距離利用も期待薄です。整備新幹線自体がリース資産で減価償却がありませんから、スピードアップのための追加投資の原資が得られないわけで、この点は一括支払いを済ませた九州新幹線にも当てはまります。こうして見ると整備新幹線は未来のない中途半端な存在ということができます。加えて政治性が機能の低下を後押しします。

北陸新幹線の全ルート確定 敦賀以西31年着工  :日本経済新聞
小浜―京都ルートも驚きですが、京田辺市(学園都市線松井山手付近)経由の南回りルートとこちらもう回路です。京阪間で料金不要の新快速よりも遅いわけで、何のための新幹線なんでしょうか。小浜―京都ルートに関しては、京都と若狭地区の繋がりの深さを指摘する向きもありますが、そういうローカルな需要はバスの若江線(近江今津―上中)の在来線鉄道建設で満たせるはずで、新幹線である必要はありません。事業性を考えたら米原ルート一択だった筈。しかも北海道新幹線札幌延伸後の2031年まで財源なしですし、そもそも並行在来線をどうするのか。まさか湖西線を切り離すじゃ受益のない滋賀県が同意するはずもないですし。政治に忖度して岐阜羽島駅を作った東海道新幹線のツケがこういう形で跳ね返るとは。つくづく日本の統治システムの醜怪さに眩暈がします。

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