バス

Sunday, December 03, 2023

遅れるのは万博だけじゃない

田代の水で取り上げた大井川の水問題が前進しました。

リニア新幹線、静岡県の川勝平太知事が「JR田代ダム案」賛意回答へ - 日本経済新聞
川勝静岡県知事も同意しており、一つ問題がクリアされたとは言えます。但しこれで着工とはいきません。南アルプストンネルの湧水量を調べるボーリング調査の結果如何では、湧水量が想定を超える可能性もあり、そうなると田代ダムを管理する東電の同意が微妙になります。故に静岡県は調査の継続をJR東海に求めて釘を刺しております。基本的な方向性が決まってもすんなり着工とはなりません。

加えて静岡工区以外の工事遅れの問題もあります。工事現場のコロナクラスター感染や仲良きことの調布市の外環道トンネル工事の陥没事故の影響で東京や名古屋の大深度地下トンネル区間の工事も止まりましたし、怪運国債市場の蓋のウンコクサイ万博工事と同じ2024年の働き方改革問題もあります。当然事業費の膨張もある訳で、当初名古屋まで5.1兆円大阪まで9.1兆円として見積もった事業費では足りず、大阪延伸前倒しのための財投資金3兆円にも手を付けてる状況です。大井川の水問題で遅れているというメディア報道とは裏腹に見通しの立たない状況に変わりはありません。

加えて東海道新幹線の乗客数がコロナ前の水準に戻らず、こうなるとリニアが本当に必要なのかすら問われます。私は元々人口減少下で将来の需要増は見込めず無駄になるという立場でしたが、コロナ禍で変化が前倒しされた形です。それでも週末の観光利用が好調で採算面の回復はあります。特に京都観光の外国人によるインバウンド需要は旺盛ですが、ジャパンレールパスによるのぞみ乗車を認めなかったことや予約の取り方などの不案内もあって、外国人は安くて空いてるこだま自由席の利用に流れています。ジャパンレールパスの制限は見直されたものの、この傾向は続いているようです。つまりビジネス利用が減ってスピードは必ずしも問われず、寧ろ車窓の変化が売りになる東海道新幹線の方が観光客にはうけるサービスってことです。明かり区間の少ないリニアでは取り込めない需要です。一方でJR東海以外のJR各社のローカル線問題が深刻度を増しており、今年もJR東日本と西日本で線区別乗車密度と営業係数が発表されました。

東北のJR東日本ローカル線、22年度も利用低迷 - 日本経済新聞
JR西日本の中国地方路線、経営依然厳しく 20〜22年度収支 - 日本経済新聞
何れも自治体との協議を模索しており、国も法改正して後押しっしておりますが、廃止ありきを警戒する自治体との協議は進んでおりません。そして国鉄時代のローカル線問題以上に厄介なのはバス事業の苦境です。
バス路線、都市に迫る崩壊の波 失われる「生活の足」 - 日本経済新聞
コロナ禍による乗客減に加えて燃料高やドライバー不足と四面楚歌状態で都市部でも減便が相次ぐ中で、過疎地の鉄道を廃止してバス転換することが困難な状況になっている訳です。特にバスドライバーは大型二種必須と資格条件が厳しい一方、年収ベースで全産業平均の2割安という賃金水準ですから人口減少は核より怖いでも取り上げたように若手が目指さないから新陳代謝が進まず高齢化で先細り確実という状況です。そうなると京都以外の観光地に観光客が行きたくても行けない状況となって地域の衰退を助長することにもなります。

観光の観点からは仮に開業すればリニアの体験乗車である程度需要は稼げるでしょうけど、それだったら現在の山梨実験線で営業すればプラチナチケットとして高く売れるでしょう。つまり現状でもマネタイズは可能となればリニアを完成させる意義はますます曖昧になります。人口減少の現実を踏まえればリニアは本当に必要か?という問いを発せざるを得ません。

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Sunday, November 26, 2023

人口減少は核より怖い

AIの生産性改善効果に疑問を示した勤労感謝にAIは勝つ?い関連したニュースです。

ハリウッド俳優組合、生成AI利用のルールや報酬で合意 - 日本経済新聞
ミッションインポシブルの公開が遅れたことで話題となったハリウッド俳優組合のストが生成AIの活用ルールや報酬に関して合意したというニュースです。AI開発が進むアメリカでは既に労働市場への影響を睨んだ動きが出てきて既に成果が出ている訳ですが、それに引き換え日本ではこうした動きはありません。

主演のトム・クルーズが自らスタント演技までして体を張った映画も、生成AIを使ってサンプル演技から生成してできるなら、配給会社としては劇的なコストダウンになりますし、トム・クルーズのような余人に代えがたい大スターを起用しなくても済むとなれば映画製作費は著しく下げられますが、そんな映画を劇場代を負担してまで見せられる観客もいい面の皮ってことになります。それに一定の歯止めを課した訳です。

一方の日本ではDXにしろAIにしろ人手不足対策として活用が叫ばれますが、元々のハイスキル人材には改善効果が出にくい一方、ロースキル人材ほど改善効果が出る訳ですから、若い人がコストのかかるハイスキル習得のインセンティブを失わせます。つまりまかり間違えば中長期で人材の質的劣化が進むということです。例えば不足が言われるバスドライバーになるために普通免許からステップアップして大型二種を取得する若者が減って補充されなくなれば、現役ドライバーの高齢化が進み引退や離職もあってドライバー不足によるバスの減便が反転する展望がない訳です。

自動運転技術の進捗によってドライバー不足を解消できるかと言えば、開発スピードや制度見直しの難しさもあっておそらく間に合いません。まして大型バスの自動化の難易度の高さは言うまでもありません。唯一可能な対策があるとすればスキル取得のコストに見合った報酬を約束することで経済インセンティブとすることぐらいです。

それに留まらず雇用のミスマッチ解消のためのリスキリングにも影響するでしょうし、そもそもAI開発ができるハイスキル人材が育ちません。オープンAIの騒動が示すハイスキル人材同士の摩擦も日本では起きない訳です。少子化の最大の原因は教育コストの上昇にある訳で、先進国ではほぼ共通しています。教育資金が高騰して子供を持つことが贅沢になっている訳です。それでいて大学まで終了して社会人になっても生産性の低い日本企業で安月給で我慢するしかないとなれば尚更です。かくして人口ゼロの未来へ向かって進むことになります。これある意味核戦争より怖い話です。安全保障面でも戦う兵士がいないという現実がある訳です。そんな日本でこんなニュースです。

北朝鮮衛星、ロシアが技術支援か 通告期間前に発射 - 日本経済新聞
偵察衛星打ち上げを事前通告していましたが、通告期間前の発射で北朝鮮は衛星軌道に乗せたと発表しておりますが、現時点でその真偽は不明です。但し成否にかかわらず米韓を揺さぶる心理戦の材料にはなる訳で、北朝鮮にとってはとりあえずそれで十分でしょう。抑止力は手札を立てて相手に疑心暗鬼を生むポーカーゲームですし。

そして沖縄にJアラートが発出されました。成長しないこどもの日本で触れましたが、元々災害が予想されるときに該当地域住民の避難を促す警報として総務省消防庁所轄のシステムにミサイル警報を乗っけたもので、防衛省から官邸を経て発出の指示が出されますから、タイムラグが発生すると同時に、発出の基準も恣意的になりやすいこともあります。今回も衛星打ち上げと予告されていたのにミサイルとして警報が出された訳ですが、沖縄では逃げ込める地下道などがない訳でただ住民を不安にさせただけです。それが狙いなのかもしれませんが政治的意図を感じます。

そんな中で内需が枯れていくことは避けられず、将来の増収を見込みにくい鉄道各社ですが、実際コロナ明けの増収局面でも利用はコロナ前に戻りません。特にリモートワークの進捗で出張などのビジネス利用が戻らない新幹線で顕著です。故にJR東日本では最初から戻らないことを前提に輸送事業比率を下げて不動産とSuicaを軸とするシステム関連事業拡充を打ち出しております。元々人口減少を視野に入れていたので、計画を前倒しした形ですが、減収に関わらず借入金で投資を前倒しする一方、オフピーク定期券の導入で需要分散を図ってピーク輸送力増強投資を抑制するといった形でメリハリをつけています。また新幹線による荷物輸送サービスを試行して収益化を模索するなどしておりますが、短期的には厳しい現実があります。

東北のJR東日本ローカル線、22年度も利用低迷 - 日本経済新聞
震災復興も道半ば、原発事故の影響で操業がままならなかった漁業の再開のタイミングでの福島第一原発処理水海洋放出に伴う中国の輸入禁止で打撃を受けたことに留まらず、コロナ明けのインバウンド復活でも外国人客は富士山や京都を目指し東北には向かわないから恩恵は限られ、東北のローカル線事情は厳しさを増しています。陸羽東線や花輪線では一部廃止でミッシングリング化する危機もあります。

地方の過疎化は高齢化と共に進んでますが、逆に言えば高齢化予備軍の世代が少ないからいずれ高齢化は止まります。そうすると逆に地方の社会インフラや古民家が資源として若い世代が活用できる余地が出てきます。その萌芽は四国徳島県の神山村で見られますが、何もない地方にブロードバンド回線を整備して移住者を受け入れた結果、日本版シリコンバレーと言えるような尖った人材が集まってきています。

こうした大都市と地方の逆転現象は、大都市での子育てのコストが嵩むこともあっていずれ他の地方でも起きる可能性があります。人口の多寡にかかわらずハイスキル人材が集まれば高齢化で停滞する大都市をしり目に、高齢者がいなくなった地方の方が地域が成長する余地もあります。ただそれまでに鉄道などのインフラが維持できるかどうかは微妙ですが、鉄道に限らず道路や橋などの社会インフラをどう維持するかは重要ってことです。戦略的に考えるならミサイル買うよりこっちに金回せよ。

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Thursday, November 23, 2023

勤労感謝にAIは勝つ?

「心配ないからね」とはいかないAI開発を示したオープンAIの騒動はこうなりました。

OpenAI、サム・アルトマン氏がCEO復帰 理事会大幅刷新へ - 日本経済新聞
元々汎用AI開発をで人類への貢献をミッションに掲げるNPO法人として発足し、大手ハイテク企業の市場独占や軍事利用、サルとロバの法螺吹き合戦で触れたデマ拡散などのネガティブなものを排除して人類に貢献するというその姿勢に賛同した多くのITエンジニアが集まりました。

当初はその名の通りオープンソースでの開発を目指し、開発過程をオープンにすることで悪意ある開発を排除し、競争環境でハイテク寡占の弊害を除去できるという見通しを示したものの、少数でも悪意あるエンジニアが開発に関与することでミッションが台無しになるというジレンマに気付きます。故にソースを公開しない形の開発にシフトする訳ですが、この点には賛同できないエンジニアもいる訳で、オープンソースでボランティア的に開発することで低コストで開発できるというメリットも失われます。

という訳でNPOが研究開発費を手当てするために営利目的の子会社を設立して営利部門を担わせる形になり、その子会社にマイクロソフトが提携のために出資するという形で関係が築かれ、大規模言語モデルの生成AIとしてGPTを開発しリリースした訳ですが、そうなると開発のスピードが速まって、しかもマイクロソフトという大手IT企業を利する形で事態が進捗することにNPOの理事たちが不安を覚えてブレーキをかけたということのようです。

マイクロソフトとしては折角掴んだ金の卵をやすやすと手放す訳にもいかずNPOの理事たちの説得と共にアルトマン氏を研究員として雇用するなどして動いた訳ですが、そこへオープンAIの従業員からアルトマン氏復帰を求める声が上がり、9割超の署名が集まりました。アルトマン氏はエンジニアの人望が厚かったようです。結果的に理事会が折れて決着し、加えて6人の理事の半数の3人を入れ替え、1人はマイクロソフトから送り込み、ガバナンスを安定させる手当もした訳です。

この一連のニュースで感じたのは、AI開発でアメリカが世界を大きくリードしている現実です。中国に限らず日本でもAI開発でアメリカを追う訳ですが、そこで語られることが例えば日本では人口減少をカバーする生産性向上策だったり、人間は労働から解放されると言われる一方、労働者から労働を奪うと反対されるなどのレベルの議論が中心ですが、アメリカではその先を行っていて、人類に貢献するAI開発というミッションと本気で格闘している人たちがいるということです。おそらく中国も日本もこの領域に達することは困難でしょう。

という訳で、勤労感謝の日だし、AIが労働市場にどんな変化をもたらすかという視点で見ると、AIへの期待は主に人口減少に伴う労働力不足の代替ということになります。経済学で言うところの資本装備率を高めて労働生産性を高める効果が期待される訳ですが、工場労働がロボットで代替されたように頭脳労働がAIに代替される訳ではありません。AIは単なるアルゴリズムですから、それ自体には創造性はなく、創造性が求められる頭脳労働は原則代替できません。

わかりやすい例として進化著しい自動翻訳で見てみると、マニュアルや技術解説書のようなものは自動翻訳の後に人間がチェックすることでほぼ問題ないレベルの翻訳が可能ですが、機微が表現される文学作品などは難しいということになります。故に翻訳家の仕事は無くなりませんが、従来はそれ故にハイスキルを求められていた翻訳家ですが、スキルの低い人が参入できる分野ができることで翻訳家は増えて結果的にハイスキルの翻訳家も含めて競争激化で報酬が下がるということが起きる訳で、AIに労働が奪われることはないとしても賃金は下がるということになります。これ事務仕事でも営業職でも結局ハイスキルの人ほどAIによる労働生産性効果が得られず、ライバルが増えて賃金が減ることを意味します。日本の場合で言えば連合などの労働団体こそAI問題に向き合う必要がありますが、現実はお寒い限りです。

そしてドライバー不足から自動運転への期待も高まりますが、気になる動きがあります。

自動運転事故、刑事責任の基準作成へ 実用化へ懸念払拭 - 日本経済新聞
記事にもあるようにあくまでも企業の参入障壁の緩和に力点がある訳で、ドライバー不足を錦の御旗に緩和を模索する動きです。ドライバー不足問題は働き方改革の例外扱いが2024年で終了することに伴って注目されましたが、それ以前に生産年齢人口の減少と需給調整規制撤廃による参入自由化の影響で賃金が下がり、そもそもなり手が減っていた中で、経過措置として2024年まで猶予され、企業は様々な対策を講じているものの、報酬アップだけはスルーされています。低報酬故に残業でやっと稼げるのに残業の上限が規制されれば収入源となる訳で、そこには手をつけずに対応すしようとするから無理がありますし、当然若者も免許取得のコストに見合わないから担い手は枯れる一方で、ドライバーの高齢派だけは進むという状況です。簡単にはいかない現実があります。

そもそも道路は公共空間な訳で、公共空間の私的利用には当然ながらルールが必要なんですが、オリガルヒの叛乱で取り上げた電動キックボードの解禁もレンタル事業者の便宜を優先した結果ですし、ユニコーンの馬脚で取り上げたライドシェア問題もそうですが、公共空間を利用した営利事業に規制がかかるのは当然のことです。実際ロンドンをはじめ欧州の大都市では営業許可を採取れていなかったり、規制のないアメリカでもライドシェア絡みの事故は多数報告されています。故にドイツの後塵で取り上げたカリフォルニアの自動運転車の事故に関わらずウーバーよりは安全と評価されてたりします。ライドシェアにしろ自動運転にしろ上述の翻訳家の例のように結果的に低報酬化をもたらすものについては、労働団体が問題意識をっ持つことが必要です。

公共空間としての道路という視点ではどうする縦割りで取り上げた宇都宮ライトレール(以下ライトラインと記す)の問題も関わってきます。同エントリーで記したようにライトラインは新設軌道に見える区間も道路扱いで全線併用軌道となっており、故に軌道法の規制で目視運転を前提とする40km/h規制を受けている訳ですが、出かけて試乗してみました。

とりあえずは40㎞/h規制でゆっくり走っており、交差点信号に黄↑赤×の二位式軌道信号が併設され、その他両終端のシーサスクロッシングと平石、グリーンスタジアム前のポイント部に軌道信号がありましたが、閉そく信号に相当する信号は見当たらず、列車間隔を制御するシステムはどうなっているのかはわかりませんでした。また信号に引っかかることもあり、電車優先信号が設置されているようにも見えません。現状では電車の表定運行時分に合わせて交通信号を調整しているだけのように見えます。現状はLRTというより通常のトラムの域を出ておりません。

現状道路上の目視運転で自動車の軌道敷内通行を規制している状況ですが、公共空間として緊急車両の通行帯として軌道敷が利用されることなどを踏まえれば目視運転のままのスピードアップは問題があります。おそらく何らかの対応は取られるのでしょうけど、ならば何故開業時から併用軌道50km/h新設軌道70km/hで開業しなかったのか、その辺の事情が明らかになっておりません。当然ながら専用路を走る鉄道と違って自動運転は簡単ではありません。自動車の自動運転が俎上に上る中でのライトラインの評価には難しさがあります。

また並行バス路線をバッサリ切って宇都宮大学陽東キャンパス、清原地区市民エンター前、芳賀工業団地管理センター前で途中乗り換えとしたことに対する評価は時間がかかるとしても結果的に公共交通利用が増えて渋滞が解消することがゴールということも踏まえておく必要があります。地元のバス事業者の関東自動車は出資と共にバス路線再編でドライバー不足が緩和されたとしてますが、乗換を嫌って乗客が減るようであれば本末転倒なのは言うまでもありません。未だに市民や鉄ちゃんの試し乗りと思しき乗客が見られるのが気がかりです。当然ライトライン自体の運行維持という新たな負担も負う訳です。

という訳でAI時代になっても労働力不足を解消できる訳ではなく、労働から解放されるといった楽観論がいかに非現実的かということは間違いなく言えます。AIもLRTもシステムとして社会にどう実装されるのかが大事ってことです。

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Saturday, November 11, 2023

ユニコーンの馬脚

ちょっとだけ中東のニュース。

米軍、シリアのイラン関連施設を空爆 「自衛目的」 - 日本経済新聞
中東に多数ある米軍施設にイラン系の墓相組織が攻撃を仕掛けたから報復したという公式発表。イスラエルとハマスの紛争中にややこしいことをしますが、あくまでも米国の問題ということです。欧米の対テロ戦争回帰で指摘したようにイスラエルはアメリカの劣化コピー版ですね。自衛権を反撃権に読み替えているとしか思えません。そんな国からミサイル買うぞと意気込む日本ですが、反撃能力のリアルはこれだぞ!
米WeWork破綻 金利上昇の重圧、不振企業の倒産増 - 日本経済新聞
資本主義と民主主義の微妙な関係で取り上げたWeWorkが遂に破綻しました。伝説の一角獣ともてはやされた会社が実はロバだった^_^;。ニューヨークなど大都市のオフィスをシリコンバレーのハイテク企業に倣ってカフェ風のお洒落なレンタルオフィスに改装してビジネスパーソンの交流を促し、イノベーションをもたらすという狙いだったようですが、賃料の高い大都市でド田舎だから可能なシリコンバレーのゆとりあるビジネス環境というのはどう見ても無理があります。所詮低金利カネ余り時代の仇花だったってことですね。

そしてこんな企業をユニコーンと持て囃してソフトバンクが出資して損している訳ですが、追加出資したものの、コロナ禍でリモートワークが拡大して利用者が減り、回復しないまま賃料は上がる一方で、FRBの利上げで借入金の金利上昇で事業継続が困難になり破綻処理となりました。ソフトバンクグループは英半導体企業のアームの上場で潤っており、やっと赤字脱却が見えてきたとはいえ、孫正義氏の目利き力はこんなもんなのかも。

そしてやはりユニコーンと持て囃されたウーバーも日本では食事宅配のウーバーイーツがメインという状況で、コロナ禍による外食規制で寧ろ追い風だったようですが、本業のライドシェアは日本の道路運送事業法に阻まれて事業展開が滞っております。それがここへ来て日本でも地方のタクシードライバー不足問題から規制改革会議で議論されており、政府も前のめりなのは減税くそメガネで記しました。

ポンド飛び出し円の切れ目で取り上げた京丹後市久美浜町のウーバーの事業に関しては地方のタクシードライバー不足を言うならいの一番に参照すべき事例ですが実績が公表されていない一方、国家戦略特区として特認を得た兵庫県養父市の「やぶくる」で河野行革相がこんなこと言ってます。

地域交通「喫緊の課題」 河野デジタル相、兵庫の特区視察 - 日本経済新聞
流石に国家戦略特区の指定事業なので非公表という訳にはいかなかったようで、視察時の記者会見で年間400人の利用があったことが明かされました。1日平均1人強という微妙な数字です。300余の基礎自治体の一定割合が視察したとすると、この程度の数字は行政関係者の視察でかなりの部分を占めると考えられますから、一般利用者の実数はかなり悲惨なものと言えます。過疎化で需要自体が蒸発したとしか言えません。

元々過疎化でバスの撤退が問題化していて、多くの自治体でデマンド交通の取り組みが行われております。ザックリ言えばバスとタクシーに中間的なモードで、会員登録した住民が電話や専用端末やスマホアプリで目的地と希望到着時刻を告げて呼び出し、小型バスやワゴン車が予約状況に最適のルートで利用者を拾い目的地へ届けるというもので、会員制乗合タクシーのような存在です。その中の幾つかは道路運送事業法の自家用車有償運行特例によっております。

ライドシェアは配車ベンダーがシステムを提供するのでシステム負担は減りますが、当然ながら利用が少なければ売り上げが少なく、手数料も稼げません。加えて本当の狙いであるデータ収集も非効率なので、本音は都市部への参入ですが、当然ながら都市部ではタクシーと競合する訳で、反対もありますし、参入規制の緩和で台数規制が緩められてタクシードライバーの収入が減っていた訳で、コロナ禍の利用低迷で離職したドライバーも多数います。その結果都市部でもドライバー不足は進行している訳ですが、逆に現役ドライバーにとっては残存者利益を享受できる状況になっている訳ですから簡単に認める訳にもいきません。そんな中で都市部でも動きが出てきています。

横浜の三和交通、タクシー運転手に副業人材 実証実験 - 日本経済新聞
横浜でタクシー会社と配車アプリベンダーのコラボで二種免許保持者を対象とした副業人材活用の実証実験ですが、ドライバー不足をライドシェア導入の口実にされることを睨んだ動きとも取れます。同時にライドシェアの問題点がタクシーとの競合といった狭い領域の問題ではないことも示唆します。

都市部でライドシェアが解禁されれば、当然ながら本業を持った人のスキマ時間活用に使われます。例えばパパの車使い放題の専業主婦やドラ息子、売れないタレント、大学教員の非正規化で生活苦の若き学者の卵たち、正規雇用でも賃金の少ない人たち、おそらくその中には社用車で営業する剛の者も現れるでしょう。そしてスキマ時間で無理な営業をすれば事故のリスクが高まりますが、ただでさえ事故時の責任の所在があいまいな上にドライバーが車のオーナーではない事例では当て脱げ逃亡の可能性もある訳です。それでも解禁すべきとするならウーバーのような配車ベンダーの利益にしか貢献しません。つまり新たな利権漁りでしかない訳です。加計学園の獣医学部新設に見られるように規制改革会議が利権を誘導したことを忘れてはいけません。

ギグ老いるショックで指摘したようにアメリカでは2016年の大統領選でヒラリー・クリントン候補がギグエコノミー問題として取り上げましたが、アメリカでは事実上ほぼ規制なしです。一方欧州ではロンドン市で問題が多すぎるとして営業許可を取り消してますし、同様に規制緩和に慎重な都市が多数あります。アジアでもほぼ規制なしですが、やはり問題は多数報告されてます。ライドシェアを世界標準のように言うのは間違いです。

公共交通で寧ろ今問題になっているのは通信のようなユニバーサルサービスが欠如していることで、例えば北海道新幹線の並行在来線問題のようにバス転換も困難ですし、上述のデマンド交通も極限的な効率を追求しながら採算性は悲惨で自治体の持ち出しで維持されてます。国や自治体がどのように関与すべきかといった枠組みを考えて実現することが必要です。

NTT問題ともオーバーラップしますが、通信のユニバーサルサービスは持ち株会社のNTTとNTT東西が負っていますが、政府保有株放出となればNTT東西を公的保有とするなどして担保する必要があります。そうでなければデータ通信や無線通信もNTT東西が持つ光回線に各通信事業者が依存している現状の通信事情でNTTグループに便宜が図られれば公正な競争環境が損なわれます。まあこれは防衛費倍増の為の株式放出なんですから、ミサイル買うのやめれば済む話でもありますが。通信も交通も加えて防衛も、大元の議論がそもそも欠如しております。

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Saturday, November 04, 2023

笑う鬼退治

鬼が笑う2024年で取り上げたインボイス問題のニュースです。

インボイス導入1カ月「想定以上に負担」 混乱続く企業:日本経済新聞
サラリーマンの経費精算でインボイスの有無の確認作業で現場負担があることは国税庁も認識していて1万円以下の取引でインボイスが省略できる経過措置を決めたりしましたが、ネット取引での登録ナンバー確認など次々に面倒な問題が湧いて出てますし、ドライバー不足なのに運送大手が委託先の多重下請けが仇となって委託先の登録の有無を把握しきれないなどの問題も起きています。独禁法違反が疑われる委託切りも見られるなど混乱しています。

これらはインボイス自体の問題というよりも説明不足や日本的な商慣習故の問題だったりしますが、ただでさえ働き方改革の2024年問題でドライバー不足が言われる中で、タイミングが悪かったとは言えますが、欧州付加価値税制度では機能している制度が日本ではこうなってしまうというのは、日本社会が抱える問題と見るべきでしょう。欧州でも当てない民主政治で損くらってますで取り上げたギリシャショックのようにヤミ営業でインボイス発行しない脱税が横行していたなんて例もありますから、明示された法令も社会の受容次第で機能を失うことは同じではありますが。

ギリシャショックは同時に財政破綻のリアルを示しており世界最悪の日本財政の反省材料にもなります。長期金利が7%になると財政が持続可能でなくなることを明らかにしました。今の日本の減税議論に違和感しかありません。それも所得減税に拘ったために実現は来年6月という役に立たないものですし、1年限りなら後に増税が待っている訳で、リカードの中立定理が働く故に減税くそメガネになります。減税うそメガネとも言われているようですが^_^;。だからといって恒久減税は論外ですが。

別の視点ですが今回の減税は税収の上振れ分の還元を謳っている訳ですが、その根拠となるのが22年度の10兆円超の税収上振れでして、円安による企業業績の上昇による法人税収とインフレによる消費税収が主なもので、7:3の割合です。昨年円相場が激しく動いた結果ですが、今年は150円前後で膠着しており、去年のような上振れが起きるとは言えませんし、インフレは税収増をもたらすと同時に政府支出も増やします。今年度の予算は当然インフレを踏まえて連動する社会保障費は拡大しますし、人件費や資材費の上昇は公共事業費も上振れさせますから、年度をまたいだ歳出増で消化されます。故に減税財源にはならない訳です。

日銀、長期金利1%超容認 植田総裁「大幅に上回らず」:日本経済新聞
日銀がYCC見直しに動きましたが、1%変動枠に長期金利が近づいて維持困難と判断して限度からめどへと表現を変え1%超の金利を容認する姿勢を見せました。但し急激な変動は抑えるということで緩和継続を謳っておりますが、実態は市場の圧力に押されての判断ということですね。それでも不十分ということで為替は円安に振れて150円のバリアを突破しており円安傾向は続きます。

とはいえ変動幅は小さいですから、上述のように法人税収の上振れ効果は限られます。但しインフレ要因ですから消費税収の上振れはある程度発生しますが、政府支出増を上回る水準になるかどうかは微妙です。ということは税収上振れを見込んだ減税は財源的には微妙ってことです。増税メガネと悪口言われたから減税を打ち出すとか、思いつきで政治をやるなということですね。

岸田政権の打ち出す政策は。例えば少子化対策と称して児童手当の拡充を打ち出し高校生も対象に加えてますが、一方で自民税調で高校生の扶養控除圧縮が議論されているという具合に目先を誤魔化す姿勢が見られます。基本的に国民をなめているとしか思えません。手当拡充よりより高校無償化の方が効果的ですし予算も少なくて済みます。という具合に目につくところをやったフリで乗り切って選挙の票稼ぎというあざとい姿勢は国民に見透かされてます。桃太郎よろしく鬼退治しても宝は得られません。桃太郎は岡山だけど。

2024年の働き方改革で人手不足が言われている中で少子化対策でバラまくというのは本当の問題解決にはならないばかりか、仮に出生率が上がって子供が増えたところで家庭内のケア労働を増やして特に女性の就労を圧迫しますから、人手不足は悪化します。持続可能な賃上げを打ち出して法人減税をしても法人税を払っていない赤字企業は蚊帳の外ですし、仮に賃上げが定着しても企業の人件費上昇は価格転嫁に繋がりますから賃金インフレで結局実質賃金は伸びないですし、新NISAで家計貯蓄を資産運用へという画を描いても、今の市場環境では国内株式に資金が回る保証はありません。日銀のETF購入で下駄を履かせた官製市場の現在の株価では個人投資家が得られる利益は限られます。一方でそれでも株価が上がらない日本企業はアクティビストの草刈り場です。

京成電鉄、ディズニーでゆがむPBR 実態は「1倍割れ」 - 日本経済新聞
お業績好調なオリエンタルランド株の保有分の時価が1.6兆円と自信の時価総額を上回る水準にあり、OLC株を除いた本体のPBRは0.5倍程度と見積もられ、英アクティビストファンドから一部売却を迫られております。京成電鉄の場合コロナ禍で空港輸送が大打撃を受けた不運はありますが、逆に空港輸送の1本足打法の脆弱性が露呈した訳で、オリエンタルランドのような優良企業を連結対象にしていることがリスク要因となっている訳です。

京成電鉄には新京成電鉄という優良企業をグループ内に抱えており地域輸送に特化した事業環境もあってコロナ禍の影響も軽微だった訳ですが、その結果コロナに勝てない国で取り上げたように完全子会社化して元々の保有分の含み益由来の負ののれんで益出しするなどしてきましたが、そんな一過性のことでは事態は改善せず次のステップを踏みます。

京成電鉄が傘下・新京成を吸収合併へ 25年4月 - 日本経済新聞
継続的に利益を計上して株価を上げるには、経営統合して運営面で規模の経済を狙うしかない訳ですが、悩ましいのは運賃の共通化問題です。共通化して運賃通算すると初乗り運賃の二重取りが無くなり乗客にはメリットがありますが、運賃収入の減少は避けられず寧ろネガティブな評価になりかねません。故に当面現行運賃を維持するということになりました。

別運賃自体は現行制度で禁止されておりませんし、京成自身もちはら線と成田空港線(スカイアクセス)は別運賃です。それぞれ歴史的事情があって、ちはら線は元々小湊鉄道が東京直通を狙って京成千葉(現千葉中央)―海土有木間の地方鉄道免許を申請して交付されたことに始まります。京成線を通じて東京進出を図った訳ですが、4ft8in1/2(1,435㎜)電化の京成と3ft6in(1,067㎜)非電化の小湊では直通はできない訳で、長らく免許更新を続けながら棚ざらしになっておりました。京成との合弁で千葉急行電鉄を設立して事業化を模索したものの進まず、沿線予定地の宅地開発が具体化して途中の千原台(仮)までの事業化が動き出し実現しました。しかしバブル期の仇花で宅地分譲は遅々として進まず、業績が上がらずに京成が救済合併して京成ちはら線となりましたが別運賃は維持されました。故に対都心でJRに乗り換える場合には千葉中央と京成千葉の間の京成線運賃の合算が重荷になりますが、赤字路線を引き受けた京成としては簡単に運賃を弄れないわけです。

成田空港線は元々三セクの北総開発鉄道(現北総鉄道)の路線を利用していて、小室以東は千葉県営鉄道由来の宅地開発公団線として別運賃だったこともあり、高運賃で利用が低迷しました。宅開公団は小泉改革の特殊法人改革で統廃合や名称変更の結果、鉄道事業を切り離すことになって京成が引き受け第三種事業者の千葉ニュータウン鉄道となり北総が第二種事業者となって一体化されたものの高運賃は改善されず、住民訴訟にまで発展しました。結果的には成田新幹線ルートを利用した北総ルート(成田スカイアクセス)が整備され北総線の運賃の見直しをすることで和解しましたが、それ故に北総線と共通化された成田空港線運賃も安易に動かせない政治性を帯びた訳で、やはり解消は困難です。

という訳で、新鎌ヶ谷で接続する新京成線と成田空港線の運賃統合はやはり無理となると、京成津田沼での京成本線・千葉線との運賃通算に限られる訳ですが、これも新京成線が新津田沼でJRと乗換可能で船橋乗換からシフトすることになると京成にとっては減収要因になります。船橋乗換の場合も東京メトロ東西線に向かう場合はJR線を挟んで初乗り運賃の重複負担となりますが、東京メトロの低運賃に助けられています。京成西船に優等列車を停めないのはJRに気を遣っているのかも^_^;。

ということで、当面車両の共通化や乗務員も含めた運営の柔軟化などで地道に益出ししたり、それぞれが抱えるバス事業の再編などで合理化を進めるぐらいしか打つ手はない訳で、アクティビストの納得を得るハードルは高いといえます。こうした問題を抱えて身動きが取れない日本企業は数多くあり、海外投資家を通じた国富の流出を助けるだけです。鬼たちも大爆笑-_-;。

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Saturday, October 14, 2023

欧米の対テロ戦争回帰

ハマスの攻撃に対するイスラエルの軍事作戦が実行されようとする中で、民主主義対権威主義では見えない本音が露呈しました。

ハマスのイスラエル攻撃「断固非難」 G7が共同声明:日本経済新聞
気分は9.11後の対テロ戦争に回帰したかのような状況です。ハマスのテロ行為を肯定はできませんが、200万人以上が住むガザ地区は高いフェンスで覆われ、物資の出入りもイスラエル政府に管理されて最低限のものしか供給されず貧困の極みにある状況は放置されてきた訳で、重大な人権侵害が日常化していたことは指摘しておきます。

特にバイデン大統領の親イスラエルの姿勢には違和感を禁じ得ません。9.11後のアメリカの対テロ戦争でテロの主犯とされたアルカイダのリーダーのウサマ・ビンラディンを匿ったという理由でタリバン政権下のアフガニスタンにNATO軍で開戦して20年後の撤退戦という苦い経験を忘れたかのような対応です。アフガン地震でタリバン政権は国際社会に支援を求めておりますが、女性の権利侵害などを理由に経済制裁が科されていて、現時点で応じた国はありません。人権外交どこへやらです。

尤も今回はイスラエルが当事者ですから、アメリカはあくまでも支援する立場ですが、ウクライナとの二正面作戦を余儀なくされて対中国を睨んだ米軍のアジアシフトはますます遅れます。特にアメリカの仲介でイスラエルとの国交樹立を模索していたサウジアラビアの態度が微妙になり、バイデン大統領としては外交で大きな失点となりました。ウォール街のユダヤ人脈への忖度もあるでしょう。

色々な見方が錯綜してますが、ある意味イスラエルはアメリカと似た背景の国ではあります。ローマ時代から迫害され続けた欧州ユダヤ人によって建国されたイスラエルは、ある意味イギリスで宗教上の理由から迫害された清教徒の新大陸植民から独立に至ったアメリカとは相似相と言える建国の経緯があります。共にネイティブな住民を排除して建国された点も似ています。そしてイスラエル国内にも多数のアラブ系住民がいて主に低賃金のエッセンシャルワークを支えている点もネイティブアメリカンやアフリカ系などの有色人種の労働力に依存するアメリカと似ています。そして軍事大国でもあります。

ガザ地区を囲む高いフェンスもアメリカの保守派がメキシコ国境に作れといっている柵を先取りしたようなものとも見えます。実際イスラエルはネタニヤフ政権下でイスラエルの世論も保守化していますが、一方でネタニヤフ政権下での汚職事件や進められていた司法制度改悪に反対する運動も盛んです。イスラエルも一枚岩という訳ではありません。同時にネタニヤフ首相にとっては戦時のリーダーとして統治の強化を図れるチャンスでもある訳で、その為に失われるパレスチナ人の命は考慮されていません。これをジェノサイドと呼ばずに何と呼ぶべきか-_-;。

パレスチナ問題は深刻ですが、一方で日本国内でも深刻な事態が進んでいます。

ローカル線、運転士不足で減便相次ぐ 福井鉄道は2割減:日本経済新聞
アメリカやイスラエルがエッセンシャルワーカーを他民族に頼っている一方、公称単一民族国家の日本では、人口減少下エッセンシャルワーカーの確保が難しくなっていることはエッセンシャルワーカーが足りないで取り上げたバスやトラックのドライバー不足と同じ問題がローカル私鉄でも顕在化しているのですが、数の上では多い大型二種免許保持者と比べても鉄軌道事業の動力車運転免許保持者は圧倒的に少なく、実務経験などの資格要件も厳格な上国家試験が年2回で育成のボトルネックにもなっています。加えて大手事業者のような好待遇を出せないローカル私鉄の厳しさは尚のこと。

取り上げられた福井鉄道の場合は鉄道と軌道に跨る路線構成で、前者向けの第一種免許を保持するJR退職者も後者向けの第二種免許を取得するまで乗務できず、徹軌道分界点に駅がないことから乗務員交代の対応も取れないという特殊事情もあります。どうする縦割りで取り上げた鉄道事業法と軌道法の縦割りの弊害が作用している訳です。

政府はトラックやバスのドライバーを外国人解禁(特定技能職種に追加)で対応しようとしてますが、円安で稼げない日本にわざわざ来て大型二種免許取得というコストを負担してまで来てくれると考えるのは甘いでしょう。エッセンシャルワーカーの枯渇は先進国共通の課題ですが、日本の急速な人口減少はそれだけ危機的ですが、政府は有効な対策を打てておりません。国民の窮乏化が作用している現状で取ってつけた少子化対策は無意味だし財源ねん出過程で国民負担の増加や行政サービスの低下を伴うことも確実です。当然有事に戦う兵士もいないということでもあります。外国人兵士も解禁するのか?当然ながらそんな日本は世界平和を希求し平和の配当を受け取る以外に道はないんですけどね。

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Sunday, October 01, 2023

インフレは続くよどこまでも

有り難くないタイトルですが、中国バブル崩壊の次はアメリカの話題です。米国債金利の上昇で円安が進む昨今、米連邦政府閉鎖の危機が今度ばかりは避けられない情勢でしたが、ギリギリのタイミングで回避されることになりました。

米下院、超党派のつなぎ予算案可決 政府閉鎖回避へ前進:日本経済新聞
10/1から始まる新年度の予算執行のためのつなぎ予算が下院で否決されたことに端を発する騒動ですが、下院多数派の共和党の強硬姿勢で民主党案が否決された後、マッカーシー下院議長の修正案が提案されたものの、民主党のみならず共和党からも反対が出て否決となり、絶望的な状況ということで、バイデン台帳量も政府閉鎖準備を指示せざるを得ない状況となりました。結果的にはマッカーシー議長案の修正で下院を通過したものです。

ここまで揉めたのは米国内の分断の深刻さを示すものです。元々新年度予算は民主、共和両党で合意済みですが、下院多数派の共和党が執行段階でブレーキをかけた格好です。共和党が嫌うリベラル的政策の予算を削り、不法移民対策としてのメキシコ国境のフェンス建設に予算を回せというのがザックリした主張ですが、既に合意済みの予算を削れというのは無理筋です。但し今回のつなぎ予算も45日間ですから、同じような騒動は繰り返されると見ておくべきでしょう。

これにはいろいろな背景があるんですが、共和党地盤の南部諸州にとって不法移民問題が重荷になっていることは確かな一方、東部エスタブリッシュメントや西海岸のハイテク地帯に強い民主党の移民に甘い姿勢は許せないという感情が前に出る訳です。その一方でヒスパニック系移民の増加で人口が増えており、移民の出生率の高さから人口の低年齢化も進んでいて、それが南部の生産年齢人口の厚みとなって工業化が進んだ面もあります。加えて共和党ステートの労働規制のユルユルさもあり、組合運動を認めないテスラの工場などが立地しております。それが別の問題を引き起こしていることも見ておきます。

米自動車スト拡大 新たに7000人、GMとフォード工場で:日本経済新聞
全米自動車労連(UAW)のストでGM、フォード、ストランティス(クライスラー)のビッグ3の工場がスト突入で生産が滞っております。UAWの主張はエンジン車からEVへのシフトは避けられず、自動車関連の労働者の数が減ることを睨んで、EV用バッテリーなどの製造工場の労働者もUAWに加盟させて保護を受けられるようにすべきだという主張です。産業構造の転換を理由に労働者が不利益を被ることは避けるべきということです。

ややこしいのはバイデン大統領が集会に参加して連帯を表明したことで、組合側が勢いづいていることで、結果的に火に油を注いだ形になってしまったことです。2016年大統領選で組合票がトランプ氏に流れたこともあり、組合票の囲い込みに動いた形です。不法移民が雇用を圧迫して産業が停滞したというトランプ流ナラティブの否定と共に、暗に南部諸州の労働規制の緩さを批判している訳です。同時に政権のEV政策も関わります。

トランプ時代のバイアメリカン法に触らずにインフレ抑制法(IRA法)を成立させた結果、米国内で販売されるEVは基本北米地域で生産されることを条件とされてしまいます。その結果EVシフトを進める欧州メーカーからWTO違反ではないかと言われごたついています。狙いとしてはバッテリー製造で世界をリードする中国への牽制なんですが、欧州やアジアのメーカーも引っかかる訳で、故に韓国現代なども米国内にEV製造拠点を設置を表明し、SKハイニックスなどバッテリーメーカーも追随しております。

当然欧州メーカーにも同様の動きがある訳ですが、製造拠点が置かれるのは労働規制の緩い南部諸州だったりメキシコだったりすると、結果的にビッグ3中心のUAWにとっては放置できない問題でもあり、出来れば連邦法で規制して欲しいというのが本音です。IRA法の狙いは気候変動対策と共に経済安全保障という面もあり、気候変動を重視するなら地産地消で可能な限り国内で生産して販売するのが正しいし、化石燃料依存の低減は経済安全保障の側面も持ちますが、同時に中国リスクも意識されており、中国産バッテリーの排除の狙いもあります。WTO提訴は現状上級委員の指名をアメリカが拒否していて機能していないですが、トランプ時代のそれを引き継いでいるのは、やはり提訴されたくないのでしょう。

という訳で政府閉鎖とストというリスクを抱えたアメリカで国債金利が上昇するのは当然となる訳です。分断による政治リスクが解消される見通しは立たず、また労組の強化は賃金を押し上げることにもなりますから、今後もインフレは収まらずFRBの追加利上げも現実味を増す訳です。となると低金利政策から抜け出せずにいる日本円の減価は避けられず、円安は進みますから、輸入物価上昇に伴う消費者物価上昇は今後も続くってことです。日銀の政策見直しが無ければ更にこの傾向は続きます。

経済安保は日本も取り組んでいる訳ですが、2020年の外為法改正の結果、妙なことが起きています。NHKスペシャルで取り上げられた大川原化工機の起訴取消事件の顛末のお粗末さが示す寒い現実です。

起訴取り消し事件「捏造」 訴訟出廷の警部補が発言:日本経済新聞
捜査官が捏造を認めたことも驚きですが、大川原化工機が輸出したのは液体噴霧乾燥機で、液体を噴霧して乾燥させることで粉末化する機械で、インスタントコーヒーや粉ミルクの製造装置になる訳ですが、警視庁公安部は生物兵器転用可能として無許可輸出を違法として刑事訴追した訳ですが、根拠となる証拠を捏造して会社幹部3名を長期間収監して1人はガンが進行して死亡するというとんでもない事件です。

警視庁公安部が動いた理由は推測ですが、法改正で実刑が定義されたことを受けて、捜査の指針となる判例を確定させたかったのでしょう。その為には抵抗力のある大企業よりも中小企業を追い込んで立件すれば手っ取り早いってことですね。狙い撃ちされた大川原化工機にとってはただただ迷惑な話ですが、特に経済安全保障絡みの政治性の強い法律故に、判例を確立させて捜査に睨みを利かせる所謂一罰百戒を狙ったと考えられます。それが今回のような人質司法の冤罪事件を生む訳です。現れ方の違いはありますが、政治が絡むとろくなことにならないのは日本も同様です。

JR北海道の札幌圏赤字急減、「黄線区」は拡大 4〜6月:日本経済新聞
コロナ禍前の水準に戻ってきたというニュースですが、記事中延慶損益を見ると、北海道新幹線並行在来線区間の函館―長万部間の赤字額が長万部―小樽間の赤字額の3倍以上あり、営業キロの違いがありますが、貨物列車運行の重荷を感じさせます。ま、それ言えば絶対額では北海道新幹線が絶対額では断トツで、青函トンネル区間という特殊区間ではありますが、札幌延伸後の収支改善も厳しさを匂わせます。

札幌都市圏以外は収支均衡は絶望的と言えます。その中で並行在来線協議を進める訳ですから厳しい現実ですが、加えて余市―小樽間で並行路線を持つ北海道中央バスがドライバー不足からバス転換を渋っていますし、それどころか事前に何の相談もなくバス転換を打ち出した北海道に対する不信感もあるようです。

鈴木知事が夕張市長だった時代に夕張支線の廃止に道筋をつけたことが成功体験となっているのでしょうけど、地元事業者の夕張鉄道が引受に動いたことでまとまったものの、ドライバー不足からバス便の維持は困難を極めており、鉄道時代を受け継ぐ伝統の長距離路線の新札幌夕張線の運行停止など満身創痍です。バス転換が選択肢にならない時代に直面しているってことです。

アメリカでペンセントラル鉄道が破綻したときの連邦政府の素早い対応と比べると、本当に危機感がないですね。ペンセントラル鉄道の場合は、結局連邦政府が線路保有機構としてコンレールを立ち上げて上下分離で運行継続を図りました。東方回廊とシカゴをエリアに持つペンセントラル鉄道が運行停止されると大量の貨物の滞留が起きるということでの緊急避難だったんですが、結果的に経営の苦しい他の民間鉄道も合流して鉄道ネットワーク維持に寄与しました。

コンレールはその後民間入札でサザンパシフィック鉄道に売却されて所謂北米5大ネットワークの一角を占めますが、それぐらい鉄道貨物の重要性が高いってことでっすね。結果的に旅客部門は都市圏毎の交通営団が引き受け、長距離列車はアムトラックが引き受ける形で現状となります。線路保有が貨物会社で旅客会社が線路を借りるという日本と逆の形になりました。この形態が基本ですから、なるほど日本の新幹線のような高速鉄道の整備のハードルは高い訳で、鉄道好きと言われるバイデン大統領がIインフラ整備法で約束したものの、財政支出を巡る共和党との綱引きで進んでおりません。政治はリスクの時代と自覚するしかないのかな。

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Saturday, August 05, 2023

BSJストラクチャー

巷で話題のビッグモーターですが、ありがちな企業のコンプライアンス問題で見るよりブルシットジョブ型雇用の国の視点で捉えるとわかりやすい構造化されたブルシットジョブ(以下BSJと略す)ということです。過剰な修理ノルマが達成できないと降格されるからクルマに傷をつけるとか、落ち葉1枚で降格されるから除草剤撒いて街路樹を枯れさせるとか、典型的なBSJですが、これらによってお金が動いてGDPだの成長率だのといった経済統計に反映されていることは指摘しておきます。

細部には立ち入りませんが、過剰修理で修理代金は保険料から支払われるから確実ですし、保険料を支払った保険会社も、事後に契約者の等級を変えて保険料を値上げして回収しますから、自らの懐は痛まない訳で、特に損保ジャパンとの関係が密だったといわれておりますが、保険会社がどこまで意識的にコミットしたかは不明です。加えて未公開の同族企業ですから、オーナーの役職退任で雇われ新社長が矢面に立つだけで実質的にガバナンスは変わりません。BSJで成長に下駄を履かせることは可能ですが、国民経済的にはマイナスなのは言うまでもありません。てことでこのニュースを取り上げます。

マイナ証明書誤交付、裏に「富士通のスパゲティコード」 混乱マイナンバー(3):日本経済新聞
こちらも話題のマイナンバーカードですが、システムベンダーの富士通が作ったシステムが典型的なスパゲティコードであることが指摘されてます。麺のように絡み合って複雑なプログラムを指す言葉ですが、原因はITに疎いお偉いさんの思いつきによる口出し。本来厳格な要件定義に従って行われるシステム開発がグチャグチャになって本来の機能を発揮できなくなるというもので、度々指摘してきたようにシステムがポンコツだから直しようがないってことです。

これITあるあるなんですが、システム開発の失敗には必ずこうした問題が隠れていて、しかもIT土方と言われる多重下請け構造の中で現場のエンジニアがどれだけ涙したかは計り知れません。こんなですからDXがうまくいかない訳です。マイナンバーカードは言ってみれば導入をしくじった住基カードののシステムを下敷きにして政治サイドから数々の注文が付けられたという開発環境で、まともなものが出来る訳がありません。当然エンジニアの待遇も劣悪で、気の利いた人は海外企業に転職し、ストックオプションを含む高額報酬で活躍します。

故に米カリフォルニア州で起きたのが、シリコンバレーの企業が従業員送迎バスドライバーを高額報酬で募集した結果、公共の乗合バスドライバーが転職して減便を余儀なくされました。日本でもドライバー不足による減便は都市部でも進行してますが、公共事業や都市再開発でダンプドライバーが大量募集された結果、バスやトラックのドライバーが転職しました。結果は似ていてもBSJストラクチャーは国によって異なった構造があります。公共事業は最早民間事業を圧迫しているとも言えますし、また民間資本で行われる再開発事業も問題だらけです。

民需なき「官製再開発」広がる 3割で自治体が施設購入 ゆがむ官製都市 NIKKEI Investigation:日本経済新聞
民間事業者の参入が必要な再開発事業ですが、民間誘致のために国や自治体が補助金を付けて誘致することも行われ、そうしてできた再開発ビルにテナントが集まらず、自治体が一部床面を買い取って辻褄を合わせるといったことが起きていて、誘致の補助金と事後の床面買い取り費用で二重負担になっているケースが出てきています。

小泉構造改革の目玉として民間資本による都市再開発の活性化を狙い、容積率緩和などの促進策を採り、公共事業依存の強い建設業の民需シフトを狙った訳ですが、その結果談合が横行した公共事業と違ってコストにシビアな民間事業では入札で叩かれて価格下落に見舞われます。地価との連動性が高かった建設費は地価下落の影響も受けました。加えての日銀の低金利政策で再開発は盛んになりました。鉄道ではつくばエクスプレスが建設費が少なく済んだことで開業後の好業績を支えてますし、一方で沿線開発が急で開業後の追加投資に追われ、懸案の東京駅延伸は地価の上昇と建設費、資材費の高騰で困難になっているというジレンマを抱えています。そして低金利政策の検証を宣言した植田日銀が3回目の政策決定会合で動きました。

日銀、金利操作を修正 長期金利0.5%超え容認:日本経済新聞
タイミングとしては米FOMCの0.25%利上げを発表した直後ですから、ここで動かなければ日銀の政策検証の本気度も問われかねないところでやっと動いた訳ですが、その後の動きを見ると遅きに失した感があります。日銀発表では緩和継続のニュアンスが強く出ており、YCCは見直されたものの停止には至らず、単に変動幅越え容認に留まっていていかにも中途半端です。故に見直しの根拠としての円安阻止の効果は薄く、やはり欧米に比べて緩和姿勢が維持されていて円安の地合いは変わらずということになりました。

寧ろフィッチによる米交差格下げの影響もあって米長期金利が上昇して効果を相殺してしまいました。ただ米国債の格下げは新興国にとっては資本逃避の抑制になりますし、インフレ率の低下もあって利下げにシフトし始めたことで、寧ろ欧米の高金利が際立つ状況になり鶴あります。しかも高金利下での再エネ投資やEV投資という経済的に負荷のかかることをやっている訳で、今のところリーマンショック後の緩和マネーが残っているからやり繰り出来ている訳ですが、大変なやせ我慢ではあります。ある意味緩和マネーでバブルを膨らませるよりはマシなあり方ではあります。本気の気候変動対策は社会的有用労働の度合いを増してBSJストラクチャーを縮小させる効果は期待できます。

例えば怪運国債市場の蓋で取り上げて今になって「間に合わない」と騒ぎ始めた大阪万博のドタバタや、あるいは東京五輪の落とし物に見るBSJストラクチャーの深刻さ。よく考えたら東京都がやっていることは街路樹枯らしたビッグモーターと何が違うんだって話です。てことで鉄分はつくばエクスプレスのみですが^_^;。

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Saturday, July 22, 2023

エッセンシャルワーカーが足りない

ブルシットジョブ型雇用の国で進行しているのはタイトルのようにエッセンシャルワーカーの不足です。つまり社会的に有用な価値を生み出す働き手が不足している訳で、忖度ばかりのブルシットジョブが増えてエッセンシャルワーカーの本来の報酬を横取りしている結果、低賃金で人が集まらないし、過労死レベルの超過勤務を前提にしないと仕事は回らないし、働き手も満足な報酬を得られない訳です。故に異次元とやらの少子化対策を焦ってますが、見当違いも甚だしいです。

雇用保険「流用」、給付対象の拡大どこまで?:日本経済新聞
7/21朝刊1面の解説ですが、コロナ対応の雇用調整助成金や前エントリーの年収の壁対策や子育て支援の各種手当など、本来失業給付に使うべき雇用保険が流用されあるいは検討されています。その結果積立金が不足するからと保険料値上げも検討されている訳ですが、こうした財源の流用で結果的に国民負担は増える訳で、それなら必要な政策の為の増税を打ち出せば良いのですが、その場合政策の必要性を含めてより強いツッコミを受けるから回避している訳です。

そもそも少子化対策が必要な理由は何かと言えば労働力不足で経済が停滞することを恐れてでしょうけど、労働力は資本によって一部代替可能であり、資本装備によって労働生産性を高めることは可能です。但し全ての労働が資本によって代替可能な訳ではなく、社会的有用労働としてのエッセンシャルワークは無くなりません。故にエッセンシャルワークを支えるワーカーへの報酬は手厚くする必要がありますが、現実にはそうなっていない訳です。

様々な要因がありますが、例えばトラックドライバーやバスドライバーはかつて高給取りだったのですが、団塊ジュニアの後半に就職難で社会人デビューで躓いた所謂ロスジェネ世代が、国の参入規制緩和と業務委託解禁で流入した結果、ドライバーの報酬がほぼ半減して現在に至る訳で、制度がもたらした問題です。逆に言えば制度の見直しと共に労働生産性を高める資本装備への投資によって解決可能な問題でもある訳で、無理して少子化対策を打つ必要もないし、子供が増えれば寧ろ依存人口が増えて国民負担は増すことになります。

つまり少子化対策は経済成長に寄与するものではなく、故に与党内の積極財政派が言うように成長で税収増は無理な訳です。ましてやドライバー不足確実な2024年問題は確実に成長を押し下げます。鬼が笑う2024年で取り上げた北海道新幹線並行在来線問題で揺れる新函館北斗―長万部間の存廃問題で動きがありました。

北海道・函館―長万部、鉄道貨物維持の方向 有識者で詰め:日本経済新聞
記事によると年間100億円程度の赤字の補填の負担をどうするという議論に矮小化されているようで、トラック輸送改善のための資本装備という視点での議論がないのが残念です。

東北新幹線や北陸新幹線の整備区間では、線路を保有する三セク等にフルコスト基準の線路使用料を支払う一方、JR貨物に対してはアボイダブルコスト負担の線路使用料との差額を支給して調整するもので、財源はJR旅客会社が鉄道・運輸機構に支払うリース料に上乗せして徴収し、結果的に三セク鉄道の収支を支えています。しかし収支が厳しい北海道新幹線ではこの手が使えず、財源をどうするかで国と北海道が角突き合わせている現状を追認した議論で果たして結論を得られるのか?という疑問は拭えません。経済運営上必要なインフラとして例えば道路予算を使うことも考えるべきです。

あとドライバーだけじゃない2024年問題として怪運国債市場の蓋で指摘した大阪万博をピンチに追いやる建設労働者不足問題もあります。大阪万博に関してはそれに留まらずパビリオンの入札不調や会場の夢洲の地盤沈下問題とか、五輪汚職で電通が指名停止されてプロセス管理が機能していないとか、大阪メトロ中央線も難工事で、ほぼ予定通りの開催は不可能な状況です。いっそ五輪に倣って無観客開催したら?知らんけど^_^;。

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Sunday, June 25, 2023

鬼が笑う2024年

今年10月からのインボイス制度を巡り、声優やクリエーターなどフリーランスからの反対の声が出ています。売上1,000万円未満の非課税事業者の所謂益税問題も解消が狙いですが、それ自体は消費税導入時からの制度上の積み残しですから、見直しはいずれ必要なことではあります。加えて食料品等の軽減税率導入で、経理処理が複雑になったこともあり、やっと制度見直しとなった訳ですが、問題は別のところにあります。

1つはフリーランスと呼ばれる零細個人事業主の問題ですが、場合によっては契約書も交わさず報酬も曖昧だったりという弱い立場にあることがあり、インボイス制度導入で課税事業者を選択しなければ取引から排除される可能性があります。勿論インボイス制度自体の狙いが非課税事業者の排除にある訳ですが、問題は課税義務を負うにはあまりに弱い経済主体であることで、課税義務が生じたからといって取引先に報酬の増額を要求しにくいことがあります。

この辺欧州の付加価値税でうまくいっているからということで正当化できない問題でして、何故ならば欧州では強固な産業別、職業別組合があり、中小零細企業に加えて個人事業主も加盟していて、中央労使交渉の結果の順守が求められますから、制度的に保護されている訳で、日本で同じことをやってもフリーランスを保護する仕組みがないから泣き寝入りの現実がある訳です。

加えて電帳法対応を求められ、仮に課税事業者を選択して税額を明示した適格請求書を発行しても、その控えを電子帳簿として7年間保管する義務を負います。また仕入れや経費で受け取ったインボイスもスキャナーで電子化して同様に7年保管を求められますが、当然ながらそれに伴うIT機器の購入やセキュリティ対策も求められ、それらがコスト増要因となる訳です。つまり納税するためにコスト負担が生じる訳です。

大企業ならばクラウドサービスで対応可能な事でも零細企業や個人事業主ではハードルが高い訳です。これもやはり紙で保管が可能な欧州とは事情が異なります。真面目に納税しようとすると壁に突き当たるって冗談みたいな状況です。まるでデジ足らん国のデジタルジャック(DX)を地で行く話です。来年秋の紙の保険証廃止に通じる愚策です。

一方で東京都が打ち出した新築家屋の太陽光発電設置義務では、当然一般住宅からの電力調達が起きる訳ですが、住宅所有者が課税事業者登録するとは思えませんが、そこは再エネ支援金として電気料金に上乗せされますから、電力会社は無傷で契約者に価格転嫁できてしまいます。再エネ活用は大事ですが、こうした運用面で大企業ほど優遇される仕組みは問題です。

来年の2024年はいろいろな意味でこの国の進路に重大な障害が生じるという意味で、覚悟しといた方がよさそうです。まずはインフレですが、3%を超えるインフレが依然として続いてますが、日銀が政策を見直す気配はありません。少なくともYCCの停止は最低限必要です。というのはYCCが続く限り日米金利差による円安が続き、輸入物価を押し上げますから、インフレは止まりません。

例えば海外勢の日本国債購入が増えてますが、円安で買いやすくなっていて、為替予約でリスクヘッジすることで、実質円資金を借りたのと同じことになり、日本国債を担保に外貨をちょつあつして運用すれば、実質的に金利差をさや取り出来てしまう訳で、キャリートレードと同じです。長期金利を低いまま放置すればこうして簡単に稼げる訳で、その結果日本の富が海外に染み出す訳です。

その一方で実需の貿易決済では円安で輸入物価が上昇し、日本企業は価格転嫁を進めてますから、結果的にインフレは止まらない訳です。そしてインフレは見かけ上の売上を増やしますし、便乗値上げも含めて価格転嫁することで企業は儲けられる一方、インフレ率に届かないベースアップで実質賃金は下がる一方です。売り上げや企業利益だけ見ていると一見景気が良いように見えますが、国民の窮乏化は進む訳です。

そして物流2024年問題が控えます。トラックドライバーなど働き方改革で例外とされた物流や建設などの猶予期間が終了する結果、今でも深刻なドライバー不足が助長されると言われています。しかしこれ変なのは時短によるドライバーの収入を補償する話は出てこないんですよね。建設も同じですが、多重下請けで安値受注が横行している結果、長時間働かないと稼げないというドライバーの置かれた状況を悪化させますから、時短によって廃業するドライバーも多数出ると考えられます。つまりトラック依存の物流システムが維持できなくなるということです。トラック業界の様々な問題を解決することなしにはどうにもなりません。そんなときに起きた事故のニュースです。

バスとトラック正面衝突、乗客ら5人死亡 北海道・八雲:日本経済新聞
事故原因の解明はこれからですが、中央線オーバーのトラック側の重過失は間違いないところで、今後の捜査でドライバーの勤務状況などが明らかになると思います。加えてこの区間は長い直線路で速度超過しやすく、風景が単調で睡眠を誘いやすいという事故多発地帯とも報じられており、特段の対策は取られていなかったということです。尚、バスを運行する北都交通(札幌市)は空港リムジンバスや都市間高速バスを長年手掛けており、信頼できる事業者です。

例えばハンプと呼ばれる舗装面のコブを設置するとか、センサーで速度超過を感知して警報を鳴らすとか、敢えてクランクカーブを設けて注意喚起するとか、道路側の対策は必要でしょう。しかしここは北海道新幹線の並行在来線区間として存廃が協議されている区間でもあります。仮に鉄道貨物輸送が存続できなければ道路交通うの負荷が高まりトラック便で吸収することは不可能です。故に鉄道貨物存続が必要不可欠ですが、一方で戦艦トンネル区間の新幹線の速度制限問題から貨物廃止も言われます。

こうしたことから国として何らかの対策を打ち出す必要がありますが、整備新幹線は地元とJRの問題として国は対応に消極的です。確かに地域が整備新幹線を欲しがらなければ起きなかった問題ではありますが、ことここに及んでそんなお題目を唱えて鉄道貨物を衰退させて北海道経済に打撃を与え、またトラックの増加で道路交通をマヒさせる可能性、更にトラックのヤミ残業で過労運転が横行し事故多発など、リスク要因は挙げればきりがありません。加えて北海道庁もこの問題では動きが鈍いということもあります。

ちなみに貨物列車1列車の輸送能力は10tトラック40台相当ですから、鉄道貨物を止めた時のトラック輸送にかかる負荷は大きくなります。逆に言えば鉄道貨物に集約できればトラック輸送の負荷を大きく減らせるということでもあります。ということで、来年に限らない先の話ですが、鬼が笑うぞ!

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