バス

Sunday, January 11, 2026

日出る国の衰退一路

新年早々の騒がしさは続きます*1。米ミネソタ州で国境警備局(ICE)捜査官による講義市民への発砲事件で死者が出ました*2。府負傷と報じられてますが夫人は死亡しており動画も拡散されていて、事実上の射殺と見られておりますが、メディアは当局に忖度してか表現を弱めてます。射殺に至らないICEの銃撃事件は他の州でも起きています*3。オレゴン州では州知事が連邦レベルのもみ消しを危惧して、FBIの捜査を拒否して州警察に捜査を命じました。アメリカが壊れています。

他国の国家元首を拘束してアメリカの国内法で裁くのも大概ですが、父ブッシュ時代の1989年のパナマ侵攻で当時のノリエガ将軍を国内法で裁いており*4、前例を盾にトランプ政権は正当化しています。取ってつけたようなコカイン密輸疑惑は前例に倣ったものでしょう。しかし本当の狙いは石油なのは明らかです。設備投資不足で生産がが落ち込んでいるベネズエラの石油が中国へ渡っていることと、石油収入がキューバへの支援に回っていることを問題視していたようですが、それに留まらず別の意図もあるようです。

エクソンのトップがベネズエラへの投資に慎重な一方*5、シェブロンなどのアメリカ国内の古い製油所の活用が示唆されています*6。ベネズエラ産の原油は硫黄分の多いドロドロの重質油で、アメリカ国内の製油所も重質油向けの設備だったものが、シェール革命で生産される原油はガソリン成分の多い軽質油である意味性能の無駄遣いだったことと、昨今の原油安で新規のシェール開発が滞っている結果、国内の製油所の稼働率が低下していることから、ベネズエラ産原油の精製に活用するレガシー活用術ということです。つまり原油をカリブ海を挟んだアメリカ南部に運べばアメリカ国内にお金が落ちる訳です。裏返すとベネズエラは原油を搾り取られるだけで経済的メリットは薄くなりますが、汚職や腐敗がまん延するマドゥロ政権の残党なら賄賂で動かせるって計算ですね。故に反政府運動でアメリカが推してノーベル平和賞を受賞したマチャド氏ではなくロドリゲス暫定大統領との取引を選んだということです。エグい計算高さです。

そしてグリーンランドへの言及も、本音はレアアースなどの資源と考えられます。中国のレアアース輸出規制で懲りたのでしょう。レアアースを止められれば兵器も作れないということで、こんな動きもしてます*7。コンゴ民主共和国はリチウムやコバルトといった希少資源の宝庫で、中国が深く入り込んでますが、そこへアメリカが進出を目論んでます。隣国ルワンダとの紛争解決を仲介したのもそのためですが、やはり腐敗しきった政府機関への対応は困難で、中国を越える利権獲得は難しいと考えられます。また日本の南鳥島周辺の海底泥からのレアアース採取も日本の資金で進めようとしてますが、水深6.000mの海底泥採取も困難だし本土へ輸送して精錬するとコスト面で中国産に対抗できるかどうかも不明。しかも最低10年以上の時間が必要で、現実的に中国依存回避は困難です。

そんな日本に中国は戦狼外交第二弾を繰り出します*8。これ「デュアルユース」がミソで、第三国で加工されて日本に輸出されて軍需品になる可能性のあるものに投網をかけている訳で、個別品目は明示されていません。故に民間事業者や第三国政府が中国当局の顔色を窺いながら対応するしかないので、影響はかなり遅れてジワジワと真綿で締められるように出てくると考えられます。いやこれは民生用自動車向けだという言い訳も通らない可能性があり、回避策は中国国内で民生向けの最終製品に仕上げるしかないことになります。国産メーカーが中国産の輸入車を売る事態もあり得ます。それもこれも高市失言の影響です*9。

第一弾が日本への渡航自粛などで、日本への団体旅行催行中止や中国エアラインの日本路線運休などでしたが、実は羽田便は殆ど運休しておらず、ビジネス利用は減っていません。運休すると羽田の発着枠を失うこともありますが、経済関係はそれほど冷えていないことを示します。逆にLCC中心の関空は中国便大減便で影響をモロに受けており、その結果観光バス需要が消滅する事態が起きています*10。万博効果で事業者は潤っていたとしても、逆に万博対応で過剰な車両を抱えた状態で稼働率を下げることになれば、ドライバーの雇用にも影響します。ノー天気なウヨは中国人が来ないなら日本人で穴埋めすれば良いとお気楽ですが、インバウンドによる外貨獲得を国内消費で代替すればそれが円安要因となってインフレを招きます。インバウンドは国外インフレを国内に持ち込む面もありますから、どっちに転んでも国民経済は苦しくなります。アベノミクスの帰結となる弊害です。羽田便が生きていれば中国の個人観光客は羽田から関西へ移動できますから、東海道新幹線はあまり影響を受けないとしても、インバウンドで盛り上がっていた関西経済の先行きに暗雲が漂います。

そしてさらに日本にとってはマイナスにしかならない残念なニュースです*11。第一報が読売ってことで観測気球の可能性濃厚ですが、党内基盤の弱い高市首相としては内閣支持率が高い裡に解散を打ちたいのが本音でしょう。但し公明党が連立離脱して維新との連立となったものの、参議院での過半数割れは解消せず、予算審議は難航が予想されます。加えて維新のゴリ押しに党内からも批判が上がっている状況ですから、おそらく連立相手を国民民主党に組み替えれば参院過半数も実現できるという計算はあると思います。但し国民民主党の連立与党入りは支持母体の連合の反対がありますから簡単ではありません。

逆に既に国民民主党は所得税の基礎控除引き上げとガソリン暫定税率の廃止を実現したことで、政府予算案に反対する理由が無くなっている訳で、ならば参議院の過半数割れもネックにはならない筈ですが、維新地方議員の国保逃れスキャンダル*12で社会保険改革の機運がしぼむことも避けられないということもあるでしょう。600人も理事がいる事業実態が不明な一般社団法人で定額報酬を得る形で社会保険に加入すれば、議員の高額報酬で課される国民健康保険の高い保険料を減らせるという意味で脱法行為ですが、あくまで維新の公式発表だけで第三者の検証はないので真実は不明です。こんな連中が高額療養費やOTC類似品価格に手をつけようとしている訳です。自身の統一教会関与も疑われている高市首相としては縁を切りたいかも。

しかし現実は冷徹です。このニュースに市場が反応しました*13。そのココロは解散総選挙を経ても自民党過半数割れは解消せず、野党の要求を呑んで財政規律を守れなくなるという読みです。勿論予算成立の遅れもリスクとして意識されていると考えられます。石破おろしの総裁選で国民生活そっちのけで9月を浪費したのに*14、またしても政局に時間を浪費する懲りない面々です。そしてさらに残念なニュース*15。財界きっての中国通として要人人脈も豊富で民間人初の駐中国大使になりながら、尖閣問題で翻弄されながら良好な関係を維持して中国からも惜しまれた丹羽宇一郎氏の訃報です。伊藤忠社長時代に種まきした中国事業は確実に伸びて商社トップに上り詰める礎を築きました。残念ながら今の財界人にはこういう人は見当たりません。

習近平体制で所謂内巻と呼ばれる内需不振を外需で埋めようとしている現代中国ですが、加えて世界の先を行く資源外交も、突き詰めれば一帯一路政策で国外輸送路を整備した結果と言えます。ここは長期停滞で先んじる日本と大きく違う部分で、このままでは国力は開く一方です。一帯一路ならぬ衰退一路の日本です。

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Sunday, December 21, 2025

熊くまクマ

鹿*1じゃなかった今年の漢字*2。クマ被害とパンダ返還が理由という何とも評価しずらい理由の並びですが、鹿のその後を先に*3。オフレコ報道に対する批判もありますが、内容次第で報道すべきとしたメディアの判断に問題はなく、寧ろNPT体制を理解できていない官邸スタッフがいることが問題でアメリカからもクギを刺されてます*4。

で本題ですが、クマ関連の過去エントリーは2件あります。1つは奈良県上北山村の東の川簡易郵便局*5。故人のレールウエイライター氏が広めた旅行貯金というのがありまして、郵便貯金通帳に旅行先で入金して局名の入ったスタンプを捺してもらうというもので、ダム建設関連で移転後残った8世帯の為の簡易郵便局が、当該世帯も移転して無人集落となった後も存続し、クマやイノシシの出没するところで平日5日間の交番勤務でイノチガケで維持されていたというもの。流石に2005年4月1日に廃止されました。

上北山村はかつて林業が支えでしたが、林業の衰退で観光業が主要産業となっていて、無人地帯の簡易局も簡単に廃止できなかった事情はあるにせよ、過疎地の過酷さを示します。そんな上北山村のアクセスはほぼ国道169号線に限られ、かつては奈良交通熊野線が担っていた公共交通は、今は大淀町・吉野町・川上村・上北山村・下北山村の5町村を結ぶ南部地域連携コミュニティバス(R169ゆうゆうバス)が奈良交通が受託して福神駅(近鉄吉野線:大淀町)~下桑原(下北山村)間を1日1往復でほぼ日帰り不可能と観光立地も劣悪です。大都市圏でも廃止減便が続くバスの過疎地の過酷な現実です。

そんな紀伊半島は面積9,900㎞^2でほとんどが森林ですが、林業が盛んだったことからスギやヒノキなど針葉樹の人工林が多く、クマの生息に適したコナラなどの広葉樹林は僅かです。故にツキノワグマは絶滅危惧種として保護されていて400頭を下回らないことが基準とされていますが、推定個体数が増えて管理にシフトすることが決まりました*5。紀伊半島全域で推定個体数467頭ということで和歌山県と奈良県で保護政策を見直します。上北山村は面積276.22km^2に2025年11月1日現在推定人口376人という過疎地ですが、クマの個体数密度はさらに低い訳で、そもそも遭遇機会は低いものの、被害の酷さは尋常ではありません。童謡の森のくまさんは「お嬢さんお逃げなさい」と促して生息域の外へ誘導する優しさがありますが、現実の猛獣とはエリア分けが必要です。

クマから見れば人間が勝手に山に入って食料の乏しい針葉樹の人工林で林業を営んだ結果、生息域が狭められたということでもありますが、紀伊半島以外でも主に近世の新田開発で平地の少ない日本では森林との境界域の棚田などが開墾され、生産性の低さを補うために山に入り、燃料の薪や肥料の落ち葉、キノコや山菜の採取などが行われて所謂里山を形成することで、クマの生息域は圧迫される一方、ヒトとクマの遭遇もあり、自衛の意味もあって狩猟も行われるようになります。クマの狩猟は鉄砲伝来以降の話ですが、それがクマのヒトへの警戒心をもたらして緩衝地帯を形成する訳です。それが過疎化で耕作放棄地が増えた結果、棚田は樹木が生えて森になり、ヒトも入らないから結果的に生息域を拡大している訳です。故に個体数密度が低く繁殖力の弱いクマでさえ個体数が増える訳です。ヒトとクマの共進化の歴史です。しかも気候変動による気温上昇で冬眠しないクマが現れ、食料が手に入る都市部へ下りる機会も増えます*6。

岩手県盛岡市のホームセンターDCM盛南店ではクマ対策マニュアルがあって、店舗スタッフがそれに従った結果ヒトの被害はありませんでした。そして過去エントリーの2件目でそんなマニュアルがある新幹線駅を取り上げました*7。長野新幹線として開業した安中榛名駅は当時人里離れた山の中でクマ出没に悩まされ、駅員と乗客の安全を図るためのマニュアルが用意され、駅員は指令に通知して列車通過扱いにして駅を閉鎖し、構内のヒトを守るというものでした。クマの生息域に新幹線駅作っちゃったってことですが、そんな立地でも新幹線通勤を想定した宅地造成をして売り出したものの売れず、2区画合筆して農園付き別荘としてやっと売れたという黒歴史があり、結果的にクマの生息域を侵食しました。

紀伊半島など西日本では針葉樹の人工林が多く、元々個体数が少ない上に紀伊半島のように絶滅危惧種として個体数の把握が行われていた一方、東日本はコナラなどの広葉樹林が多く生態系の多様性が維持されていたこともあり、クマの個体数把握は行われていません。故に生息域の拡大で都市部にも出現するようになった訳です。ヒトとクマの共進化も東日本では異なった展開です。故にハンターは趣味で猟銃免許を取得した一般人でクマ相手だと反撃のリスクもあり、猟友会頼みの対策では追い付かなくなっているという風に事情が異なります。秋田や岩手のクマ被害はこうして起きている訳で、地域に応じた対策が必要です。失われた過疎地の里山の復活は難しいですが、例えば境界域の樹木を伐採してソーラーパネルを設置するのも一法です。さらにその電源で地場ビジネスを起こせればヒトが住む緩衝地帯になり得ます*8。ちなみに秋田新幹線こまちもクマ原因の輸送障害が複数回起きています*9。

ということ北海道に話を移すと、こちらにはより大型のヒグマが生息していて生態系も異なりますし、また被害も多岐に亘ります。そんな中で鉄道被害も深刻です*10。シカとの接触と異なり、クマの場合外へ出て排除するのは危険なので、指令を通じて救援が来るまで待機せざるを得ないということで、長時間の運休を余儀なくされます。鉄道貨物の依存度が高い北海道故に深刻です。地域によってクマ対策も一律にはいかない複雑な問題ってことです。政府も外交で揉めてる場合じゃないぞ!

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Saturday, November 01, 2025

株価以外全部沈没

ほとんど前エントリー*1の続編ですが、事態が動いているのでフォローアップせざるを得ない状況です。

まずガソリン減税ですが、今年12月31日からの暫定税率廃止で与野党が合意しました*2。与野党6党合意ですから国会通過もすんなりいくでしょう。軽油も来年4月1日からということですが、インフレ対策なら物流費に影響する軽油を後回しというのは軽油引取税が地方税で地方から反対の声が上がっていますが、同時にガソリンが安くなることの方が国民へのアピールになるということもあるでしょう。AIが壊す社畜エスカレーター*3でも触れましたが、価格が下がって需要を喚起すると原油の輸入が増えて貿易収支が悪化して円安インフレを招くことになります。

また財源は曖昧なままで、当面税収上振れによる剰余金や法人税の特措法減税の見直しなどとされてますが、特に剰余金は繰り越して次年度の国債発行抑制に用いることが法定されてますから、年度をまたいだ単なるトバシでしかありません。具体的に道路予算削るとか自動車関連税例えば重量税の増税とか、揮発油税の負担がないEVを考慮した走行距離税とか燃料税の炭素税への1本化とかには踏み込まずに済まそうとしている訳です。この調子ですから財政規律の緩みを質そうとはしていない訳で三つ子の赤字*4はますます進みます。

そして自動車半導体を巡るオランダと中国の対立がエスカレートしています*5。ネクスペリアは元々オランダの電機大手フィリップスの半導体部門を独立させた企業ですが、中国資本に買収された結果、オランダ政府から製造技術流出の恐れということで冷戦時代に作られた忘れられた法律で規制をかけたものですが、どうも裏でアメリカが動いているようで、怒った中国政府がネクスペリアの中国にある最終製品工場からの海外出荷を制限した結果、ドイツVWや日本のホンダその他の自動車メーカーが巻き添えになっております。自動車用半導体の世界シェア4割を占める同社の製品の8割は中国工場で最終製品に加工されることから、世界中の自動車メーカーがトバッチリを食っている訳です。これ結局日欧などアメリカの同盟国が傷つくだけの不毛な争いですが、今度はオランダ政府がネクスペリアのシリコンウエハーの中国工場への供給を止めて泥仕合になっています。中国資本のオランダ企業というネクスペリアがまた裂き状態になっている訳で、トランプと習近平がにこやかに握手しても事態は解決しません。中国を除く世界の自動車産業のピンチです。

そのせいか最高値を更新する日本株でも自動車関連はパッとしません。主にAI関連半導体関連の値上がりが支えているようで、相場全体が上げ相場という訳ではありません、円安で割安感があっても海外勢は万遍なく買っている訳ではないということです。高市トレードと言われる株高も一皮むけばという感じですが、特に欧州勢の買いが優勢なのは変わりません。インバウンドやタワマン完売などに見られる安いニッポン現象です。

ほぼ500兆円で動かなかった日本の円建てGDP名目値ですが、ドル建てでは5兆~6兆ドルだったものが、インフレで600兆円を超えた円建て名目値がドル建てでは4兆ドルになっているのが現状な訳で、その分日本の購買力が低下している訳で、一番のインフレ対策は日銀の利上げしかない状況ですが*6、またも日銀は動きませんでした*7。ベッセント国務長官は別に親切心で言っているのではなく、日本政府のドル売り介入を牽制する意図でしょう。実際米ドルは円を除く主要通貨に対して下げており、ユーロ・ポンド・スイスフランなどに対して安値となっていて通貨防衛の意図ですが、欧州の主要通貨は既に米FRBに先駆けて利下げに動いていて、スイスフランに至っては日本よりも低金利なのに上昇してます。そしてFRBも今回は動いたものの*8為替は寧ろ円安に動いてドル円153円台が定着しつつあります。その意味では日銀が利上げしても大勢に影響はないのかもしれませんが、金融正常化の姿勢を示す意味はありますし、利上げを遅らせた分だけ正常化が先送りされます。

てことでインフレ下で株式の高値更新はある程度持続すると思いますが、銘柄ごとに動きはバラバラで、下げている銘柄もあります。例えばリニア事業費倍増で嫌気されたJR東海です*9。財務の健全性は複雑系エントリー*10で指摘した通りですし、財投の3兆円も30年据え置きという破格条件で現状ほぼ無利子ですから利払いの負担はなく、現状のインフレが続くなら負担にならないかもしれませんが、それ故に居心地の良い現状を抜けられなくなっているとも言えます。東海道新幹線のぞみ増強とインバウンド需要で既にライバルの国内航空便に対しても優位な状況ですから、仮にリニアが開業しても航空からの移転はほぼ見込めないとも言えます。逆に東海道新幹線の好調でキャッシュを稼ぎ過ぎると自社株買いや配当などの株主還元を求められるから現状煩いアクティビストに狙われることもないということも言えます。この辺は伝統的日本企業的なスタンスで、既に赤字ローカル線の名松線に至るまで線路も車両も更新されこれ以上の投資先が見当たらない贅沢な悩みでもあります。何ならJR西日本が渋っている北陸新幹線米原ルートを整備スキーム無視で自前整備するとか。まあやらないでしょうけど。

一方でインバウンド対応は京阪が始めたプレミアムカーが阪急やJR西日本でも取り入れられ、老舗の近鉄特急も差別化された豪華特急のラインナップを整備してます。そんな中で京阪は更にプレミアムカー2両体制と攻めてます*11。上限運賃が決められていて航空鵜のようなダイナミックプライシングが難しい中でJR東日本の中央線グリーン車や私鉄各社の着席サービスが次々に登場してますが、京阪の場合沿線開発が終わって沿線の高齢化や松下・サンヨーといった大手電機産業の撤退やJR西日本との競争激化もあって乗客が減少する中での増収策ですが、当然一般車の乗車定員を削っている訳で、それに対する批判もありますが、背に腹は代えられないということですね。

同様の動きは関東でもありまして、1つは京成電鉄の空港連絡有料特急の増強計画です*12。成田空港第三滑走路供用と3つのターミナルビル統合を成田空港会社が打ち出し、末端が単線のJRと京成の成田空港線の増強を視野に入れてスカイライナーに加えて押上発着の有料特急を2027にも導入ということで、押上が観光名所でもある東京スカイツリー最寄りで浅草にも近いからインバウンド需要の取り込みが見込めるということですね。アクティビストから将来への追加投資を迫られていた京成が動きを見せた訳ですが、同時に都営浅草線への直通も視野に入っていると考えられます。そしてそれを裏付けるような動きが出ました*13。具体策はこれからですが、JR東日本のN'EXの牙城に切り込む可能性もあります。

両社ともにアクティビストの標的にされており、投資をせがまれてしないなら株主還元を求められているという点で共通しています。加えて都営浅草線を通じて関係も深く保安装置も同じ1号線型ATSの上位互換のC-ATS*14でハードは共通で運用が異なるだけなので擦り合わせは容易です。具体的にダイヤに落とし込むときに現状のインフラの貧弱さがネックになる可能性はありますが、インバウンド対応というところは引っ掛かるものの、とりあえず投資に向かうことは評価できます。殆どシナジーのない新京成電鉄の子会社化と統合とか、系列バス会社の再編とかで守りを固める一方だった京成と、やはり沿線の高齢化と立地企業の撤退で京阪と似た苦境にある京急がアクティビストに促されて動いたということですね。日本の現状は明らかに国内の民間投資が不十分だった結果と言えますから。

その意味で日本政府が合意文書を交わした5500億ドルの対米直接投資はヤバいです*15。というのも同様に対米投資を迫られた韓国のこのニュースです*16。長くなりましたのでさわりだけですが、韓国は外貨準備の80%超に及ぶ3500億ドルの直接投資でウォン安によるインフレ昂進を懸念して抵抗していたもので、それ故自動車関税交渉が遅れたのですが、日本のように自動車関税緩和を優先してやはり確実に円安を招く巨大投資を受け入れたことは、国民生活を犠牲にして大企業を救ったということでもあります。とりあえず今回はここまでにしておきますが追って深掘りします。

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Sunday, September 14, 2025

案外シンプルに終わりそうな複雑系経済学

90年代に日本でブームになった複雑系経済学ですが、米サンタフェ研究所を中心に科学分野のパラダイムシフトとしての複雑系の科学から、元々多様なパラメータで非線形的な変化が見られることから経済学への援用が試みられ、多数の試みがなされましたが、ゲーム理論のような定着した理論に昇華されることなく、最近ではあまり顧みられておりません。そんな中でここではスタンフォード大のブライアン・アーサー教授が提唱した収益逓増のJ経済学に注目します。

同教授は性能の優れたアップルのマッキントッシュよりも性能の劣るIBM-PCのMS-DOSが優位に立ち、GUI実装版のWindowsで駆逐された現象に注目し、コピーが容易なデジタル分野では主流派経済学の常識とされる収益逓減の法則が成り立たず、逆に収益逓増が見られることで、所謂ロックインと呼ばれる経路依存現象として注目されました。簡単に言えば収益逓減は例えば農地は広い平地で土壌が肥沃で市場へのアクセスが容易なところから農地になりますが、徐々に条件の悪いエリアに拡大することで投資収益が低下するという現象で、デジタル世界ではロックインによる経路依存で逆にに収益が拡大逓増するというもので、本来の複雑系の科学の視点からはシンプル過ぎるきらいはあります。しかし勃興するデジタル経済の説明に好都合ということでブームになった訳です。そしてこれが株式市場にも影響し、多くのIT企業が競い合って株式上場して資金を集め、アイデアを競い合ったものの、その多くは赤字決算で期待だけで株価を押し上げていて、2000年代のITバブル崩壊へつながる訳です。

前エントリー*1の続きになりますが、現在のAIブームが相似相のフラクタル現象*2に見えてしまいます。その帰結はバブル崩壊ってことですが。先週の米株式市場でも相変わらずAI関連株が買われています。しかもその中身がエヌビディアやアルファベットなどのテック大手に限らず、例えば需要増が見込める通信や電力などのインフラ関連株まで買われるようになっています。

但しこれらのレガシー企業の投資マインドはかなり異なります。そもそも時間軸からして投資から回収までの期間が長いし、リスクも大きいから必然的に保守的な投資スタンスとなります。テック企業が競争環境の中で先んじて投資を加速するのとは異なったスタンスになる訳です。故にAI投資として行われるデータセンター投資が加速する一方、その電力需要増に備えた電源や送電網の投資はなかなか着手されない結果、ミスマッチが起きてAI投資にブレーキとなる可能性はあります。これ日本でも同様の問題があって、例えば関西電力の美浜原発敷地内への次世代革新炉建設の実現可能性の疑義が指摘されてます*3。反原発派ではない中立的な論者の指摘だけにリアリティがあります。

そしてもう1つ指摘したいのは経路依存による収益逓増が持てはやされた理由として、グローバル化の進捗による国境を越えた水平分業の拡大を後押しした面もあります。特に半導体やソフトウエアのように物理的に軽い一方付加価値の高い財が国境を越えt流通した結果、ハードウエアなどのレガシーな製造部門を外注して付加価値率を高める動きを後押ししました。その結果垂直統合の権化のようなアップルでさえ製造部門を切り離してファブレス企業となり高収益化するという動きを見せます。所謂アセットライト経営です。

所謂選択と集中で自社のコアコンピタンスをOSやアプリなどのソフトウエア及びそのプラットフォームとなるハードウエアのアーキテクチャの開発に置いて再定義した訳です。これでWindows陣営に対する競争力を回復するに留まらず、iPodから始まる携帯デバイスと音楽配信を進化させiPhoneに結実させるなどして世界をリードします。更に開発キットを公開して社外の開発者が開発したアプリをAppStoreで販売するというビジネスモデルで飛躍します。

それに対してGAFAMと呼ばれるテック大手はアップル以外はAI向けのデータセンター投資に余念がないのですが、アセットライト経営という意味ではマイクロソフト、フェイスブック、グーグル共に製造部門を持たないアセットライト経営だった訳で、その各社が自前のデータセンターを建設しエヌビディアのGPUを大量購入している訳で、インフラ企業化しています。つまり過大な資産を抱えることになる一方、AIの競争環境の中でレッドオーシャン化して収益逓減に直面する訳です。当然ながらどこかで淘汰の嵐が起きることになります。インフラ企業の宿命を背負う訳です。

てことで伝統的インフラ企業の鉄道においても、JR東日本の2代目社長の故山之内秀一郎氏がJR東日本のコアコンピタンスとして首都圏を中心とした高速大量輸送の技術とオペレーションを掲げていたことが思い出されます。その流れで東北の50系客車の後継にオールロングシートの701系を投入して鉄ちゃんに悪口言われましたが、首都圏の大量輸送を基準にすればこうなる訳です。勿論乗客の反応が良くなかったこともあり、E731系では国鉄以来の伝統的な3扉セミクロスシートになりました。また電車化でスピードアップが実現したことはあまり評価されなかったようです。しかしIGR銀河鉄道や青い森鉄道でも701系が使われているように、結局ローカル需要を前提に低コストで実現可能な輸送サービスとしては意味があるとは言えます。

最近ではコロナ禍をきっかけとした大都市輸送の低迷で内部補助に頼れなくなった赤字ローカル線問題が顕在化しており、幾つかの動きが出てますが、1つは電化区間の電化設備撤去でありもう1つはBRT化です*4。非電化化では磐越西線会津若松~喜多方間と奥羽本線新庄~院内間で実施されましたが、特に後者は9か月かかった災害復旧で非電化になったもの。JR東日本の説明では災害復旧の迅速化が謳われてます。これも一種のアセットライト経営と言えますが、BRTなら更に迅速化できますし、一般道迂回で見做し復旧も可能という意味で、地方線区の災害復旧や存続のメニューとして上下分離や並行在来線のような三セク鉄道化と並び自治体へ提案できるというものです。元々需要が先細りの中で、現実的な選択肢を増やす取り組みということはできます。JR西日本でも美祢線の災害復旧で地元協議会でBRT方式が有力になっています*5。

その意味では整備新幹線も整備費用を国と地方が公金を負担する一方で受益の範囲のリース資産として負債計上するという意味ではアセットライト経営の一形態という見方もできます。しかし西九州と北陸のミッシングリンクのようにスキーム自体が機能しなくなってくると見直しは避けられません。その意味では石破首相の国会答弁で示され、経済財政諮問会議の「骨太の方針」にも明記された中速鉄道構想はまじめに考えてみる余地はあります*6。

例えばJR東日本が改良を表明した山形新幹線福島~米沢間で県境を峠トンネルで越える大掛かりな改良工事が予定されてますが、可能な限りの曲線緩和と踏切除去で現行130km/hを160~200km/h程度にスピードアップする事業を整備新幹線と同等のスキームで実現するあたりが初めの1歩になりそうです。フル規格と比べれば低コスト且つ短時間で可能です。また例えば踏切のないJR西日本湖西線でサンダーバードの160㎞/h化のようなつなぎの対策にも使えます。財政規律を考えればこの辺が妥当なやり方ではないかと思います。

最後にJR東海は赤字ローカル線問題どこ吹く風で東海道新幹線の収益をリニア工事で溶かしまくってますが、財投の3兆円を負債計上して資産圧縮していて財務の健全性を見せていますが、開業が見通せず投資額が膨らんでいる中で名古屋まで開業して完成引き渡しされた時点で地獄に落ちます。だから現状のダラダラと資金を溶かす状況はある意味居心地は良いんですが、将来を展望することか困難です。それでも経営が傾かないのは立地条件が良く戦前の弾丸列車計画で取得した用地を利用できたことによるもので、山陽以降の新幹線が東海道新幹線と比べれば収益は1/3という明らかな収益逓減法則が働いていることは付記しておきます。

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Sunday, August 10, 2025

外国人問題は社畜の怨念?

雨で凌ぎやすくはなりましたが、お熱うございます。社畜の帰省シーズン*1ですが、コロナ禍での帰らざる社畜2*の変化で様変わりしました。バーチャルなご先祖様はは変わらず帰って来るけれど、居なくなるアニオタはコミケの復活で元に戻り、寧ろ推し活や聖地巡礼で活性化されており鉄ちゃん顔負けです。一方鉄ちゃんは青春18きっぷアップデート*3で様子が変わり、売上3割減だそうで、使い勝手の良かった旧青春18きっぷユーザーは一部離れたようです。

とはいえJR東日本の来春の値上げ*4に見るようにコロナ禍の減収がリモートワーク普及で戻らない一方、インフレによる調達価格上昇もあり、これまで維持してきた国鉄末期の運賃体系で発生していた超過利潤が減少し、割引の原資が細った結果、割引きっぷの見直しも避けられないところですし、上記エントリーで指摘したように青春18きっぱーの増加で現場の負担が増えたこと、地方の過疎化でそもそも通学列車も減っていて企画きっぷ発売の趣旨も薄れてきてますし、また旅客6社の売上配分が利用者アンケートの結果に基づく推計値による案分というアナログな方法でこれも負担になっていたと考えられますから、自動改札の入出場記録に基づく実数値で配分できる分バックオフィスの負担も減ります。

てことですっかり様変わりしたお盆の風景ですが、もう1つ変わったのが円安を背景としたインバウンドの外国人観光客の増加です。特に社畜の帰省とは需要がバッティングします。加えてインバウンド客の大きな荷物が座席や通路を塞いでトラブルが頻発しており、観光地のオーバーツーリズムと相まって課題が明らかになってきてます。それなのにJR東海は定員減を嫌って荷物スペースを増やすといった対応を取っていませんし、予約荷物スペースが予約外の荷物で埋まったりしています。外国人観光客が荷物スペースの予約ができることをJR東海がどれだけ告知しているかが問われるところですが、一見さんの観光客にとって使いにくいシステムになっていないかといったところも問われます。

これJR東日本のえきねっとや指定席券売機の使いにくいユーザーインターフェース(くそUU)の問題*5とか、JR東海のスマートEXと別建てだったり、折角全国で使えるようにしたIC乗車券も敢えて仕様を変えて共通仕様から離脱したり*6、合理化でみどりの窓口縮小したら行列ができたり*7、クレジットカードのタッチ決済やQRコード決済の取り組みもバラバラ*8。先に検討していたJR東日本を出し抜いた格好です。混雑を前提に動作の確実性を求められる首都圏に対して、IC乗車券でも先行するSuica/PASMO陣営に対して仲間を増やす横展開で優位にあるICOCA*9と似た構図です。Suica経済圏危うし。JR東日本はみどりの窓口改革としてAI導入を打ち大sていますが*10、AIはあくまで道具で使い方次第です*11。

要注意なのはAIの電力消費の大きさで、単純に社畜の代替を目指すと人口減少下の高エネルギー消費で知恵熱地獄*12になるし、ろくなことになりません。あとマクドナルドのハッピーセット問題*13ですが、ちいかわでも起きたことの反省や対策も無しにポケモンカードのようなプレミアム性のあるキャラクターグッズを景品として配布して客を吊る企業姿勢にこそ問題があり、外国人のみならず日本人もいると思われる転売ヤーのせいにするというのはいただけません。「悪いのは外国人」というのは間違っています。

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Sunday, August 03, 2025

温暖化の加速

辞めない石破首相の続投の理由の一つが南海トラフ地震などの天然災害の発生の可能誌で政治空白を作るべきでないと。そしたらカムチャツカ半島東岸の海溝型地震と広範囲の津波警報/注意報が起きました*1。石破さん、あんた預言者かい?旧約聖書のノアの箱舟やモーゼの出エジプト記など天然災害のメタファーと見られる記述があり、神の試練と預言者の救済という共通したモチーフがあります。

新約聖書の福音書でマタイ伝だったと思いますが、ゴルゴタの丘に連行されたイエス・キリストと同時に処刑される筈の大盗賊の2人の内1人を赦免するとしたらどちらか?とローマ市民に対して役人が問い、市民は盗賊の罷免を求めました。何人も殺した物獲りの盗賊の所業は市民の日常感覚を拡張して理解可能なのに対して、訳の分からん戯言を述べる預言者は理解不能だったということです。裏金議員の方が理解しやすいのか?そんな盗賊の視点でキリストの復活劇を描いたのがスウェーデンのノーベル賞作家ラーゲルクビストの小説「バラバ」で岩波書店から邦訳が出ていましたが、今手に入るかどうかはわかりません。刑を逃れたものの何か空疎な感覚に支配された主人公の心象風景が描かれています。

それはさておき津波警報で東海道線など鉄道やバスの運休や海水浴場の閉鎖などで行き場を失った人が多数出て、鎌倉市では市役所や市会議場を避難者に開放するなどの対応を取りました*2。鎌倉市では市役所の深沢地区(旧国鉄大船工場跡地)への移転計画が市議会の反対でとん挫しましたが、移転して解体し再開発工事してたら対応できなかった訳で、多くの人を助けました。

警報発出時に外出していましたが、一山越えた安全な場所にいたこともあり、スーパーで買い物して自宅へ戻ろうとしたら待てど暮らせどバスは来ない。そのうちバス停に人が集まり収集がつかない中で、ウェブのバスナビで確認したら東海道線以南の路線は全面運休ということで、仕方なく炎天下徒歩で帰宅しましたが、途中のバス停でバスを待つ人がいたのでバスが動いていないことを話し、また鎌倉駅方面は現状がわからないから急いで戻らない方が良いといった話をしながら、暑さを凌ぐ木陰を辿りながら歩きました。緑の多い自宅周辺の環境に助けられました。警報が出ていてもパニックにならなかったのは東日本大震災などの経験が活きたとも言えます。逆に忘れた頃の天災は恐ろしいという裏腹な関係は意識すべきです。

炎天下の避難で熱中症で倒れた人も出ていて、避難の難しさも同時に意識せざるを得ないなど課題もあります。そして今年の夏の暑さは異常というレベルでもあります。体温を越えた気温と共に、特に日本近海の海水温の上昇で湿度が高い状況が続いています*3。つまり大気中の水蒸気量が増えている訳ですが、水蒸気はCO2以上の温室効果ガスです。但し上昇気流に乗って断熱膨張で放射冷却すれば結露して雲になり太陽の輻射熱を遮りますし、雨になれば地面も冷やすから通常ならば温室効果は限定的ですが、太平洋高気圧とチベット高気圧の2つの高気圧の影響で上昇気流は起きにくく、ただ暑く湿った状態が維持される訳です。そして湿度が高いと発汗による体温調整も働きにくくなりますから、原発や半導体やバッテリーと同様*4人間の能力も低下します。つまり生産性が低下する訳です。社会人も夏休みが必要ですね。暑さは農業などにもマイナスです*5。

そしてもう一つ不都合なのは、脱炭素の切り札とされる水素発電やFCVは水蒸気を発生させますから、湿度を高めて温室効果を助長します。グリーン水素の調達コストも高く、水素社会は当てにしない方が良いでしょう。同様につなぎとしてのアンモニア発電もコスト面で壁にぶち当たってますし、炭素固定(CCS)というやはりコストに課題のある技術とセットで推進されてます。当面はコストのこなれてきた太陽光を中心に再エネ活用を探る方が良さそうです。霞が関の官僚たちも考え改めてほしいですが、地下鉄霞ヶ関駅がサウナ状態という悲報です*6。日本の未来は絶望か?

その一方で神宮外苑その他の再開発で樹木の伐採が進んでいて*7、涼をとれる木陰が減っています。加えて東京都は路面温度を下げる遮熱舗装事業を行ってますが、これが逆に照り返しで気温を上げていることが報告されてます*8。翌年にズレた2020東京五輪の暑さ対策でマラソン協議を札幌で開催することになったものの、サッポロも猛暑の予報があり、マラソンコースを遮熱舗装したのですが、その時のデータを解析したら、確かに路面温度は下がったものの、照り返しによる気温の上昇が認められ、熱中症対策としてはむしろ逆効果というエビデンスです。当然子供やペットの犬への影響は大きいし、最近男性も使う日傘も無意味というものなんですが、何故か東京都は遮熱舗装を推進しています。本当は都市緑地や街路樹の整備による木陰の創出こそが求められるのですが、都民を殺しにかかってる?

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Sunday, July 20, 2025

折れたつばさ

参院選投票日当日ですが、ひどいTIXY選挙*1でした。政策よりも目先のアテンションで有権者アピールしてまともな政策論争もないまま過ぎました。それでも選挙報道姿勢を問われたオールドメディアは不十分ながらファクトチェックで姿勢を変えております。従来選挙運動を隠れ蓑に酷いヘイト発言し放題だったことに比べればマシにはなってますが、ヘイト発言に喝采する有権者はそもそもオールドメディアはウソだらけと信じ込んでますから響かない。故に従来投票したことがないような無関心層を動員して議席を得れば解散のない参院で6年の任期を得て少数与党に恩を売りながらうまい汁吸うことができちゃう訳です。

とはいえ政権選択選挙ではない参院選後には原則首班指名選挙は行われませんから、仮に与党が参院で少数転落しても、石破氏が自ら辞めない限り政局にはならないです。そして日米関税交渉の膠着が、アメリカ政府から見れば協議を重ねてきた石破政権が交代すると一からやり直しになるから、選挙が終わるまでは石破政権にマイナスにならないよう配慮してます。そして選挙後の赤沢経財相の8度目の訪米がアナウンスされています*2。つまり石破さん辞める気さらさらなしです。関税協議が政権延命の鍵という倒錯^_^;。とはいえ既に連邦歳入で法人税に次ぐ規模となった関税で税収が調達されている状況*3では交渉の余地は殆どありません。

それに背中を押されたのか日産が追浜、湘南の2工場の閉鎖を決めました*4。ブランド力の弱い日産としては関税の価格転嫁もままならず*5米国内工場を温存して他社製品の受託生産で量を確保する一方、国内工場は縮小せざるを得ない状況に追い込まれた訳です。財務状況が悪い日産としては関税分の値引きの原資がもたない訳です。立地から高く売れる可能性のある工場の閉鎖はそれだけ追い込まれているということです。そしておそらく高く売りたいから、工場ごと居ぬきで買える相手となると鴻海が有力候補になりそうです*6。鴻海はEV事業への本格参入を狙っており、乗用車に留まらずEVバスへの参入もアナウンスしております。国産EVバスはいすゞエルガEVのみで、BYDやヒュンデなど中国や韓国の輸入車頼み故に勝算ありと見たのでしょう。

そして前エントリー*7でも指摘しましたが、通貨当局が動けない中で日米両国のインフレ率の差が為替を動かすことを指摘しました。その結果為替はこう動きました*8。与野党のバラマキ合戦の影響もありますが、自動車を始め関税分を価格転嫁できていないことがアメリカのインフレ率を抑えている可能性も指摘できます。いずれ関税分の価格転嫁が進んで日米のインフレ率が逆転する可能性もあります。実際日本のインフレ率はコメの備蓄米放出やガソリン補助金で抑えられておりますが、それでも日本のインフレ率が高い結果です。今後も微妙な展開が予想されますが、政策的な価格抑制は財政の拡大で結局インフレを呼び込みます。この点はアメリカも似たり寄ったりなので、予想を難しくしています。まあ製造業での経済成長の可能性は日米共に殆どありませんが。

そんな折れたつばさを共有する両国ですが、それでも金融とITで稼げるアメリカに対して、自動車も袋小路でどうするということで半導体に注目が集まりますが、TSMC熊本工場で生産された半導体は殆どエヌビディアやアップルが買い手という現実が影を落とします。2ナノの試作品製造に成功した北海道千歳市のラピダスも同様の問題を抱えており、仮に先端品の営業出荷が可能になっても国内に買い手がいないという現実が待ち受けます*9。SuicaなどのIC乗車券や電子マネーに欠かせないFelicaシステムも今やソニーも見捨てたレガシー技術というぐらいイノベーションの周期が早い半導体のエコシステム構築は技術を磨くだけでは果たせず、寧ろアメリカのバイデン政権のスモールヤードハイフェンス政策で先端半導体が手に入らない現実を受け入れてレガシー技術を磨いて先端品と同等の性能を実現した中国の手堅さが、国内需要に押された結果という点は示唆に富みます。歩留まりが悪く採算が難しい先端品に拘る日本の在り方は、結局熊本の渋滞激化や豊肥本線混雑率ワースト*10という負のインパクトを地域にもたらしています。

そして半導体関連で山形新幹線つばさE8系のトラブルは原因究明が進まず、東京直通を止めて福島乗換で対応が続きます*11。報道では補助ん電源装置の半導体の不具合ということですが、思い出されるのが国鉄時代の中央快速線201系のサイリスタ日照り*12です。おさらいすると国鉄が中央快速線向けに開発した201系が、走行中に度々主回路がブラックアウトするトラブルに見舞われ、原因はサイリスタ素子の過熱と突き止められました。地下鉄では制御器の抵抗熱対策でサイリスタチョッパ制御が導入された一方、回生ブレーキ対策が必要な地上の鉄道では導入が進まない中で、国鉄一の高密度輸送輸送線区の中央快速線で回生電力の有効利用と量産効果によるサイリスタ素子の価格低減を狙ったものの、制御器は海側という抵抗制御時代の慣例で配置を決めた結果、東西に延びる中央線では日中直射日光を浴びて輻射熱の影響でサイリスタ素子が機能を失うことと、中野以西のベタ停車で加減速が頻繁で走行風による冷却効果も限られた結果でした。対策として制御器箱を白く塗って輻射熱を反射させるなどして安定させたものの、他線区への導入のブレーキになりました。例外は京阪神緩行線で駅間が長く高速走行で冷却効果があって同様のトラブルはありませんでした。

それでも国鉄がユーザーとしてメーカーを育てようとした結果の失敗ですから、その後のパワーエレクトロニクスの成長には貢献できたとは言えます。同様に常磐緩行線の207系900番台*13のセコい失敗もありますが^_^;、最強ユーザーとしての国鉄の存在感は大きなものでした。民営化後のJR各社は半導体も汎用品でコストダウンに励む方向へシフトしてメーカーとの結びつきが弱まったきらいがあります。例えば209系のVVVF制御器がトラブル続きで継続使用を断念して「寿命半分」が実現してしまうといったことですが、その流れでE8系のトラブルを見ると、トラブル発生日の気温が高かったことから、半導体が熱にやられた可能性はあると思います。厄介なのはかつてのパワー半導体と比べても回路構成が複雑化しており、チップ上に電流安定のためのセラミックコンデンサが組み込まれたりしていて、どこに不具合があるかが見えにくくなっていることはあります。また半導体製造のサプライチェーンは長く、その各段階に不具合が混入する機会は増えているということもあります。巨大化した米IT大手のようにサプライチェーンへの影響力を行使する力は弱まっていると考えられます。てことで原因究明は困難を極め、折れたつばさは当分続くと覚悟する必要があります。

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Sunday, June 15, 2025

火照るカリフォルニアの迷宮

氷河期世代が社会保障弱者*1という現実と共に、在日外国人も同様の問題がありますが、政府が見直しに動きます。

外国人の国民健康保険滞納防止 在留審査に納付状況反映、27年度にも - 日本経済新聞
在留審査強化に繋がるだけに制度設計に注意が必要ですが、自治体のシステム改修を国が助けて漏れを防ぐことと共に、記事の末尾に重要情報が記されてます。
国保の総医療費や高額医療費支給額に占める外国人比率はいずれも1%台で被保険者に占める割合より低い。
オンライン記事は有料会員向けで全文を読むにはハードルがありますが、近くの図書館で紙面の記事で確認できます。「外国人が日本の健康医療保険にただ乗りしている」という外国人排斥の言説が間違っていることを示す事実です。冷静に考えれば高齢化が進む日本人よりも国内で働く外国人の方が平均年齢は低く、医療アクセスの必要性は低いから当然なんですが、外国人に保険料負担をしてもらうことで、現役世代の負担を軽減できる余地があるなら、外国人を排斥するのではなく共に社会を支える仲間として包摂することは結局国民を利することになります。

この点は移民問題で揺れる欧米が移民排斥に揺れている現状を見れば尚更、社会的摩擦の軽減を真剣に考えることは重要です。そしてそんな移民問題で揺れる米カリフォルニア州は、全米50州でも移民に寛容な州として知られています。元々農業が盛んな土地柄で広い耕作地を耕すのに必要な労働力需要が強かったってこともありますが、スペインの植民地から独立した第一メキシコ帝国が共和国となり、一方アメリカ入植者によるカリフォルニア共和国独立宣言がきっかけで米墨戦争となり、メキシコがアメリカに割譲する形で31番目の州となるという歴史過程もあり、元々ヒスパニック系住民が多かった土地柄です。そしてその結果全米50州のうち人口1位(約4000万人)で且つ国のGDPに相当する域内総生産規模も最大で、国に喩えればドイツ*2に次ぐ世界第4位*3に位置します。人口2/3のドイツに続き人口1/3のカリフォルニアにも抜かれる日本。

カリフォルニアはシリコンバレーに代表されるハイテク企業の集積地でもあり、米国産スマホや米国内クラウドサービスその他で生じるデジタル赤字の相手側でもあり、日本のお陰です^_^;。同時に世界から優秀な人材が集まる移民に寛容で、大学を中心に東海岸とは異なるカウンターカルチャ—がインターネット時代にフィットしたこともあります。意外な一面としては鉄道王国だった過去でしょう。特に Pacific Electric Railways という大手事業者が州内に路線網を巡らいせていました。同社はトラムから発展したインターアーバンで電気鉄道だったこともアメリカでは特異な存在でした。

インターアーバン自体は一種のブームで他州にも波及しましたし、日本も影響を受けてます。京成、京王、京急、名鉄、近鉄、京阪、阪急、阪神の大手各社は軌道で開業したインターアーバンの歴史を踏んでますし、地方でも九州電軌(西鉄北九州線)、豊州電気鉄道(大分交通別大線)、兵庫電気軌道(山陽電気鉄道)、越中鉄道(富山地鉄井水線、万葉線)、複武電気鉄道(福井鉄道)など多数の追随者が現れました。

その存在故にクルマが売れないと一計を案じたGMが同社を買収し、減便また減便のダイヤ改悪で客離れが起きて廃止に追い込まれ、その代替輸送を担うバスを売り、農家向けのピックアップトラックを売り、日常の足としての乗用車を売り、全米屈指に自動車社会となりました。その結果ロスアンジェルス都市圏の交通渋滞は深刻で、それが通勤時の相乗りで自動車税を割り引く制度が早くから導入され、また排ガスによる大気汚染対策で厳しい排ガス規制を全米に先駆けて導入し、後の連邦マスキー法へと繋がります。同法を最初にクリアしたのがCVCCという排ガス浄化システムを実装したホンダ1300で四輪車シフトを成功させ、米ビッグ3の没落に繋がったのですから皮肉です。

また所謂ゼロエミっションビークル(ZEV)規制もカリフォルニアで始まり、今でも専任のボードメンバーが時代とともに規制内容を見直し、新車販売時のZEV比率を徐々に上げ、上回った分の権利の売買でEV専業のテスラが大金を手にして他社を突き放す原資を得ました。一方ビッグ3は権利を買えばとりあえず目先はクリアできるからEV開発に本腰が入らず取り残された訳です。

加えてロスアンジェルスの相乗り減税制度は結果的に通勤ラッシュの緩和策として機能し、多くのオーナードライバーが家族でもない他人を乗せて走ることが定着したことで、ウーバーなどのライドシェアが受け入れられる土壌があったと言えます。それがない日本にライドシェアを移植することは簡単ではない訳です。一方でタクシーの配車サービスは定着しており、利用増と迎車料金上乗せで流しのタクシーが捕まえにくくなり、所謂タクシー不足から補完ずる形での導入となっています。

そんなカリフォルニアで大変なことが起きています。6月5日にロスで移民・捜査局(ICE)が不法移民摘発を始め、市民の抗議デモと対立しICEと衝突し7日にトランプ大統領が州兵派遣を表明*4します。ICEの捜査や摘発が強引で、街中で移民と思しき市民を捕まえるという強引さに市民が反発したもので,、その強引さ故にデモ参加者の一部が暴徒化したもので、当局の挑発が疑われます。そして事態はエスカレートしトランプ大統領は海兵隊覇権まで踏み込みます*5。

当局の強引な移民摘発に対する市民の抗議デモにロス市警の対応が甘いと見たのでしょうけど、州兵派遣は日本で言えばいきなり自衛隊の治安出動に相当するものですし、第一州兵は州所属で連邦政府に指揮権がある訳じゃありません。連邦軍の下請けを担う場合でも連邦議会の承認などの手続きが必要で健保以上の疑義があります。更に海外で敵を攻撃する海兵隊の派遣は反乱の事実がなければできないことで、当然カリフォルニアのニューサム知事は連邦地裁に差し止めの提訴をしてロス連邦地裁は12日それを認めます。連邦政府は即日控訴して控訴審は差し止めの効力を停止した上で審理を続けることになり、対立は続きます*6。

既視感のある展開ですが、これ韓国の尹大統領のクーデター未遂事件に似ています*7。韓国では市民と議員が迅速に動いて未遂で阻止した上に紆余曲折ああったものの大統領弾劾手続きが完了し、大統領選で李在明新大統領が選出されましたが、元々議会は野党が多数派だったけど、米連邦議会で大統領弾劾が実現する可能性はほぼ無いし、関税外交がTACO常態の中で移民摘発で有権者にアピールして支持を繋ぎ止めるから、結局この状態は続くしかない訳です。まるでイーグルスの楽曲のように*8。そして14日に予定されるワシントンの軍事パレードの反対運動とも連動し、全米各地で抗議デモが続きます。アメリカはここまで壊れました。元には戻らないでしょう。

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Tuesday, May 06, 2025

雷都の晴れ間のライトライン

GW真っ只中ながら人出の多い観光地(地元がそうですが)へ行く気にもなれず、それならばライトラインの現状を見てみるかと久々に宇都宮へ出かけました。いろいろ発見がありましたが、その前に前エントリー*1関連ニュース。

説明しない厚労省 SNS炎上、年金底上げ策の削除招く - 日本経済新聞
消費税減税を巡る立憲民主党の迷走*2に似た状況ですが、このままでは氷河期世代の基礎年金実質30%減額となることから見直しが検討されたものの、制度を理解しない非難によるSNS炎上で自民党内からの批判もあり撤回ということで、同世代を1700万票の票数でしか見ていない政治が不作為を生じさせています。

で、本題。昨年3月にスピードアップされたライトラインで併用軌道区間50km/h専用軌道*3区間70km/hと謳われておりましたが、乗車時の体感では70km/hは出ていない感じで、また列車間隔を制御する閉そく信号機も見当たらないところから、流石に目視運転では70㎞/hは無理ということでしょう。HU300形の走行安定性の問題もあるかもしれません。そして開業直後の訪問時には気づきませんでしたが、副本線のある平石とグリーンスタジアム前で軌道に地上子が設置されていて、おそらく後付けなのでしょう。推測ですがおそらく快速運転に備えた列車選別装置で、先行の各停の通過を検知して副本線側に進路設定し、副本線の地上子で入線を検知して本線側に進路設定して快速を通すのでしょう。快速出発後、後続の各停はフランジ割出しで進路を作形成し、一定時間後に自動復帰するように設定されているとして、最小限の設備追加で快速運転が可能です。目視運転を基本としつつ朝の2本だけの快速運転ですから、鉄道並みの保安装置設置よりもリーズナブルな対応と言えます。

バスとの結節の実態も知りたいところで、休日は参考にならないかもしれませんが、芳賀工業団地管理センター前で降りたところ、もう1人降りてバス乗り場へ向かう人がいて、横断歩道を2度渡るためタイムラグはあるものの、その人はバス乗り場に併設された待合室へ入りました。バスポールの時刻表を確認しつつ電停へ戻るときにも電停からバス乗り場へ向かう人がいて、それなりに結節点として機能していることはわかります。時刻表で確認した限りでは、本数は少ないものの茂木方面へ向かうバスもあり、真岡鉄道とセットで行程を組むのも一興です。同様の結節点は清原地区市民センター前と宇都宮大学陽東キャンパス(ベルモール前)が案内されてますが、それぞれバスの本数の少なさはあるものの実態はどうなのか、興味は尽きません。ちなみに駅へ戻るときに数少ない並行路線のバスが並走してパッと見席が埋まる程度の乗車が確認できました。関東自動車の旧年式車でしたが、駅直通便の需要も根強いのでしょう。

休日ということもあり、IC乗車券を持たない乗客も多数いて、降車の多い停留所では最前部ドアで現金支払いに時間がかかっていました。この辺は定時運行を妨げるほどではないようですが、交通信号に引っかかる機会が増えてしまうことは避けられないようで、実際そういう場面も見られました。とはいえ乗客が定着したことは間違いないようで、GW中ということもあり、家族連れの利用が目立ちましたが、家族そろって現金払いとかも見られました。ともかく盛業であることは間違いありません。

また渋滞解消という政策目標の実現も実証データが示されました*4。宇都宮大学などの調査結果では車利用が70%から62%へ8%減で、率の話ですがザックリ実数でも1割程度は減ったと見られます。交通量の1割減は大抵の渋滞が解消できる水準ですから効果はあったということです。但しだからLRT整備は大成功と結論付けるのはどうでしょうか。着手後の見直しや工事の遅れで事業費が膨らんで費用便益比(B/C比)が悪化したこともありますし、同等の渋滞解消策としての道路拡幅やバイパス整備の場合との比較でどうだったかこそ問われるべき問題です。また渋滞を嫌ったり、時刻を確認しないと利用しづらいバス利用と比べてほぼ定時で頻繁運行される都市型公共交通による需要誘発効果もありますので、それが母数を増やして車利用率を下げた要素もあります。これは宇大等の調査でも言及されているようですが、単純な数値比較では見えない部分があるということは言えます。但し外出の誘発は消費に繋がりますし、ウェルビーイングの観点からも望ましいことでもあります。単純な数値比較に陥りやすいB/C比の議論の戒めとしたいところです*5。そして懸案の西側延伸も動き出しました。

宇都宮LRT、大通り1車線は自動車乗り入れ禁止への布石 - 日本経済新聞
地域限定記事且つ会員限定記事ですが、全文を読むことをお勧めします。キモは現状3車線の大通りの1車線化で、その為に南北の並行道路の拡幅による迂回路整備で一般車を迂回させることにあります。3車線の1車線化は批判を呼ぶことになりますが、工事のために前倒しで実施して、中央車線を軌道にして左側車線はバス停や貨物車荷捌きレーンに充てて1車線化して工事スペースを生みつつ一般ドライバーを慣れさせる狙いもあります。大通り区間は混雑対策で軌道中央の島式ホームでホーム幅を確保して車いすやベビーカー利用にも配慮します。これは東側で問題になった混雑時のホームの手狭さの反省と共に、圧倒的に集積度が高い西側では、停留所間隔も短くして分散を図ると共に乗客の安全確保にもなるということですね。そしてその先には国内では前例のないトランジットモールの実装の先駆けという狙いもあります。そしてほぼ全区間道路併設の併用軌道で東側の鬼怒川橋梁前後の専用軌道区間のような用地買収も不要で土木工事上のネックもほぼ無い*6ことから、今年度に決めて26年着工で30年開業はほぼ可能という展望です。しかし課題はあります。

詳細は省きますがまず西口停留所の混雑対策が不十分*7で見直しが避けられないことがあります。計画見直しの結果事業費が上振れしたり手続きが遅れたりすれば東側の鬼怒川前後区間の轍を踏む可能性があります。また資材費や人件費の高騰による建設費の上振れもあり、400億円とされた見積りが600億円超と1.5倍以上になる可能性もあります*8。西口混雑対策とも絡んで手続き上西側分断整備の可能性も示唆されています。但しその場合新潟トランシス製HU300形の弱点とされる高価な車両価格や混雑対策の困難さや走行安定性の不安*9などから国産車両の導入が検討されているとか*10。そして大通りトランジットモールによる中心市街地活性化の一方で抱える中心市街地のレガシー東武百貨店の扱いと東武宇都宮線*11。

というわけで、帰路は西口バスターミナルから東武駅前までバス移動して東武宇都宮線ワンマン列車で南栗橋からスカイツリーラインのルートを辿りました。駅西側は東武鉄道のバス事業撤退があり東野交通の関東自動車への経営統合とライトライン開業に絡むJRバス関東の実質的撤退で事実上駅西側は関東自動車の独占エリアですが、関東自動車の新旧カラーにEV専用カラーに旧東野交通カラーとカラフル。また前後扉のツーステップ車から最新ノンステップ車やEVまでとバリエーション豊富でバスファンにもお勧めです。西側延伸で大通りのバス3割減が求められる一方、東側同様バス結節点の整備も構想されており、今後の変化も大きいという意味でも注目されます。

東武駅前から東武宇都宮駅までは100mほど離れており、ターミナルデパートの東武百貨店もお世辞にも活気あると言えず、売り場も典型的地方百貨店のような冴えないもので、仮に大通りトランジットモールが実現してもタイムスリップしたような一画として温存される公算大です。西側には小規模ながらバスターミナルがありますが、発着便は少なく人気のない空間になっています。ライトラインと東武宇都宮線の相互直通も示唆されますが、その場合大通りと東武宇都宮駅を繋ぐ軌道の整備と共に東武百貨店の建て替えは必至ですし、盛土上の東武宇都宮線との接続も課題ですし、架線電圧がDC1.5kvで750vのライトラインとの直通には複電圧車が必要になりますが、HU300形での対応は難しいところですし、まして走行安定性に不安を抱えるから尚更です。日比谷線直通車転用の20000系ワンマン列車に揺られながらつらつら思うGWでした。

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Saturday, April 19, 2025

大転け・完敗万博

大阪・関西万博が始まりましたが、予想通りというか、泥縄が露呈しています。

大阪万博、地下鉄は何度も入場規制 バスは予約優先 - 日本経済新聞
万博会場の夢洲はごみ埋め立て地の人工島で、アクセス手段が限られており、不安視されていました。地下鉄中央線夢洲駅と東ゲートが直結されており、メインルートとなるほか、JR桜島線桜島駅から路線バスタイプのシャトルバスで向かうサブルートの他、主要駅からの観光バスタイプのシャトルバスや指定駐車場からのシャトルバスで向かうパークアンドライドなど多様なアクセス手段を用意していましたが、実際は地下鉄中央線に見学客が集中し、JR大阪環状線乗換駅の弁天町の地下鉄駅で混雑から改札が入場規制されるなどで見学客の遅延が生じ、また東ゲートの入場ゲートのセキュリテイィチェックが手間取り、携帯基地局のキャパオーバーでチケットのQRコードがスマホに表示されないトラブルもあり、完全予約制で混雑のない万博を標榜したことが、2時間遅れで予約時間に間に合わないとか、帰宅時間の夢洲駅の混雑で行列で1時間待ちで「入るには入れず帰るに帰れない」と不満。加えて悪天候で雨宿りする場所がない、巨大リンクの大屋根も風雨の吹き込みでびしょ濡れ。バスアクセス中心の西ゲートではシャトルバスを予約制にしたのに、万博チケットと別の交通系サイトの目立たないメニュー表示でそもそも辿り着く人も少なく予約はガラ空きなのに、帰宅希望の予約外客が殺到して予約客優先のオペレーションで大混乱助長といった具合です。そして道路アクセスも橋と海底トンネルの2ルートだけで、しかもシャトルバスの優先運行故に事実上タクシーが使えない。地場のタクシー業界から改善を求められているのに対応せずという具合です。

アクセス交通の混乱は、実は4月6日のテストランでも見られたことで、交通アクセスの弱点は明らかでした*1。テストランでは予約より早く来た人が多く、ゲートの混雑による一時滞留で夢洲駅の混雑が課題とされましたが、テストラン参加が5万人の一方初日13日の入場者数13万人で倍以上とはいえ、半年の期間中2800万人の入場者数を達成しなければ赤字確定で、1日平均15万人の入場が必要ですが、当然日のよって変動がありますから、少なくとも倍の30万人の入場も視野に入れなければならない訳です。初日の入場ゲートの混乱の解消から言えばかなりハードルは高いと言えます。初日の弁天町駅の入場制限のように思わぬ場所に混乱が生じる可能性もありますし、地下鉄中央線が事故等で運休した場合の混乱もあり得ます。そして初日の大雨のような悪天候もありますし、これから暑くなるシーズンで会場に日よけが乏しく熱中症対策が難しいこと*2もまた問題です。そしてトイレのトラブルやメタンガス問題などまかり間違えば大惨事になりかねない問題*3を抱え、始まったばかりなのにすでに終わっている-_-;。そもそも夢洲開発はカジノ構想ありき*3でタイムスケジュールから2025年の大阪万博開催というタイトなスケジュール*4になった訳です。大量の公費投入でカジノ企業を誘致する大阪維新の姿勢はレントシーキングのカモフラージュでもあります。

比較される1970年の大阪万博と何が違うのかですが、時代背景と会場の立地と交通アクセスの違いがかなりあります。70年万博の会場となった千里丘陵は大阪の市街地にほど近い山林地帯で未利用の土地が多かったし、広さもあったから、白紙に近い状態で開発が計画されました。御堂筋を北へ延ばした新御堂筋と大阪郊外の環状道路の中央環状線の整備に伴い、新御堂筋に付帯する地下鉄1号線(御堂筋線)の延伸が同時施工で整備が計画されましたが、市営故に大阪市境をちょっと超えた吹田市江坂までが都市計画に盛り込まれたものの、その先は大阪府による千里ニュータウン計画ということで、府市の管轄の壁があったことは確かですが、同時に京阪神急行電鉄(現阪急電鉄)の営業エリアで阪急バスが京都線や千里線などの鉄道駅へのフィーダー輸送を担っていました。そこへ新御堂筋が通り、地下鉄が伸びてくるとなると穏やかではいられません。そこで阪急は大阪府や関連自治体の出資を仰いで北大阪急行電鉄(北急)を立ち上げ、御堂筋線と直通する鉄道の権益を得た訳です。所謂第三セクターの走りですが、自治体の出資は従であり阪急グループ色の強い企業です。

一方で大阪市内の交通を巡る熾烈な争いがあって、京阪電気鉄道がターミナルの天満橋から淀屋橋へ延伸して都心乗入れの先鞭をつけましたが、大阪市内の鉄道事業は大阪市が地下鉄網を整備して私鉄の進出を抑えようとする一方、在阪各社は都心進出の機会を窺っていました。近鉄は上本町から難波への延伸、阪神は戦前の急行線複々線化構想の落とし子の伝法線を難波へ延伸して近鉄との直通を模索し、千鳥橋、西九条と小刻みに開業させて西大阪線に改称という動きをしました。阪急は新京阪線のターミナルだった天神橋から堺筋を南下する構想を持っていましたが、大阪市の地下鉄6号線(堺筋線)、南海電気鉄道も堺筋を北上する構想を持っていて競願状態で当時の運輸省鉄道局は3社局で協議して結論を得るまで免許交付しないという立場を取り、協議の結果天神橋ー動物園前間を大阪市が整備し、阪急と南海が相互直通するということでまとまり、とりあえず万博関連事業として万博会場近傍を通る阪急千里線との相互直通を優先して軌間4ft8in・1/2(1,435㎜)の阪急に合わせて整備されることになりました。そして北急を中央環状線に併設される中国自動車道を対面通行2車線の暫定開通として4車線化の用地を利用して線路を敷いて万国博中央口までの期間限定の会場線に利用し、会場西ゲート近くを通る阪急千里線に臨時駅の万国博西口駅を設置することになり、鉄道2路線でアクセスが確保されていたことで、混雑を分散できた訳です。結果的に万博輸送を阪急は独占したことになります。そして大阪のミナミに対するキタの比較優位が確立します。

また新御堂筋と中央環状線の整備でシャトルバスによる広域アクセスが可能になり、特に国鉄茨木駅・阪急茨木市駅からの中央環状線のシャトルバスはバス事業で阪急より優勢な京阪バスや当時直営の近鉄バスが参入し、独占エリアとはいえ阪急単独でのシャトルバス運行は無理だったけれど、万博関連で協業ができた訳です。今回の大阪・関西万博では市営バス改め大阪バスと京阪バスが特に力を入れているようですが、ドライバー不足のご時世で交野市の京阪バス撤退という事態もあり、関西でも批判を浴びています。公費を投入したイベントで不便になることは許容されることではありません。

70年万博関連では近鉄難波線と鳥羽線の開業、三重電気鉄道由来の志摩線の改軌と万博輸送に直接関わらなかった近鉄が集中投資で経営基盤を強化しました。並行する地下鉄5号線(千日前線)とは同時施工で並行して整備されましたが、万博に伴う外国人観光客来阪対策で通りました。一方そうした流れに乗れなかった阪神西大阪線の延伸は地下鉄5号線との競合故に進まずなんば線として結実するのに長時間を要しましたし、南海は中央環状線アクセスの阪神高速松原線と同時整備された地下鉄2号線(谷町線)の南進に伴って大阪軌道線の平野線が廃止され、堺筋線の天下茶屋延伸で天王寺支援が廃止、更に地下鉄御堂筋線のなかもず越境延伸とエリアを侵食されています。70年万博の経済効果は均等ではなかったのです。その意味で今回の大阪・関西万博の経済効果3兆円は鵜呑みにできません。また関西のGDPシェアは70年万博の100.78%をピークに低下しており、イベント依存の限界でもあります*5。

南海に関しては関西空港連絡輸送で外国人見学客の渡航需要を受けられるとはいえ、直接的なメリットはあまりなく、やはり万博には縁が無いのか?なにわ筋線が開業していれば南海も恩恵があったかもしれませんが、やっと事業着手の段階ですから間に合う筈もありません。なにわ筋線の建設には実は南海も関わってまして、大阪市の市営地下鉄民営化構想に連動して大阪府出資の第三セクターの大阪府都市開発(OTK)の持ち分売却を行いOTKの事業部門だった泉北高速鉄道の売却で揉めて最後は南海電気鉄道に売却されました*6。そしてその売却益はなにわ筋線の整備主体となる関西高速鉄道の資本増強に回すことになっていたので、間に合っていれば南海の泉北線買い取りの資金回収が早まったことになります。これ70年万博で北急が万博輸送対応で大量発注した大阪市営地下鉄規格の電車を、万博終了後に大阪市に売却して元を取って資本費負担を軽減した結果低運賃を維持して最大限メリットを享受したことと対照的です。またなにわ筋線絡みでは京阪中之島線がなにわ筋線開業を睨んだ事業ですし、阪急のなにわ筋連絡線(大阪~十三)と新大阪連絡線(十三~新大阪)構想もありますが*7、後者は南海との直通運転を構想しながら具体的な協議が行われておらず、仮に梯子を外されれば堺筋線の二の舞になります。という訳で欲得絡みの関西鉄道業界事情は比較的摩擦の少ない首都圏の業界事情と大きく異なります。中之島線にしろなにわ筋線にしろ鉄道整備にも公費が投入される中で、公正さが担保されているか?維新絡みではいろいろあり過ぎて疑問を禁じ得ません。

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