バス

Sunday, March 12, 2023

失敗に学ばない国

1日遅れですが、3.11から12年が経ちました。被災地の現状は未だに復興途上ですが、特に福島では放射能汚染の問題もあって、ハード面の整備は進んだものの未だに3万人以上が避難中で人は戻っておりません。避難先で仕事を得て生活基盤が確立すれば、現実的には戻るに戻れない訳です。12年という時間軸の重みです。

一方40年か課kると言われた福島第一原発の廃炉事業は停滞しており、予定通りならばあと28年で終わる筈ですが、実際は未だに「40年」と言い続けていて具体的には進んでおらず逃げ水の「40年」のお題目となっております。「処理水放出」が進んでいるという報道ですが、これも単に地上に置くタンクのスペースが無くなったからという理由で、トリチウム以外の核種を含む汚染水を再度フィルターに通して海水で希釈して海底トンネル経由で100m沖へ放出するというものです。「科学的に安全」だそうです。希釈しても放出される汚染物質の総量は減らない訳で、こんな基本を無視した「科学」って何ですか?

そもそも汚染水は福一建屋に地下水が流入することで発生している訳で、その元を絶たなきゃ増えるのは当然のこと。故に凍土壁で遮断するとして国費345億円を投じて1,500本の冷却管を建屋周囲に設置して稼働させたものの、効果は限定的で汚染水の発生はその後も続き、年間数十億円の維持費もかかります。最初からコンクリート止水壁を作る方が結果的に安上がりだったのではないかというのは計画段階から指摘されていてその通りになった訳ですし、汚染水の保管も小型タンクを地上に置くのではなく石油タンクのような大型タンクに貯めて100年後に放出ならば半減期から無害化されますが、コスト減を優先した結果の失敗です。

そして殆ど報道されませんが、フィルターに残るスラッジと言われる固形物の保管問題が実は大変なんです。当然放射性核種を含むスラッジは放置できないので専用容器に入れて保管されておりますが、その保管スペースも逼迫しておりますが、今のところ処分方法も不明です。汚染水保管場所が逼迫するから放出しますと言っても、汚染物質は濃縮された形で残ります。つまり既に次の失敗の種がある訳です。行き当たりばったりで事態は複雑化して解決困難になります。

そんな状況で事故後に決まった原発の原則40年最大60年の期限撤廃が決められました。原発は動かしたいけど新設やリプレースには時間がかかるから今ある原発をとにかく動かそうってことですね。やはりコスト減が狙いですが、つまり老朽化が進む老朽原発を動かす訳で、福島の失敗から何を学んだんだ?しかも脱炭素やエネルギー安全保障や電力逼迫といったトピックをまぶして正当化しようとしていますが、何れも嘘八百です。

老朽原発を安全に動かすには補修が必要ですが、鉄とセメントの塊の原子炉の補修は鉄とセメントの投入が避けられずその製造段階で発生するCO2はカウントされていません。つまり原発で脱炭素は嘘ってことです。エネルギー安全保障を言うならば再エネこそ純国産エネルギーなのにそこはスルーしてます。加えて電力逼迫も嘘が含まれます。

電気が足りない訳じゃないで取り上げた大手電力の既得権が問題を起こしているだけで、実際接続拒否で利用されず捨てられている再エネ電力と、大手電力の先発権で実はガラ空きの送電線がある訳で、需給調整の仕組みを整えれば問題は解決可能なんですが、例えば地域間の連携線整備は進まず、原発再稼働が滞る東電管内では原発需給調整用の揚水発電を利用して再エネを受け入れているものの、その一方で原発のバックアップ用に敢えて残した老朽大型火力発電所は高稼働でダウンしたり、出力調整が容易なガス火力も高稼働で保守点検のスケジュールが重なったりという行き当たりばったりの結果としての予備率低下ということで、原発再稼働以外の対応策がない訳ではありません。

実はエネルギー価格上昇に伴う新電力の廃業ドミノの結果、行き場を失った契約者の補償で大手電力の採算が悪化したことで、なりふり構わず原発再稼働に向かっているという構図です。その結果赤字決算オンパレードとなった訳ですが、これもそもそもLNG価格上昇で予備率が低下して大手電力が自家発電を持つ工場などの余剰電力を卸電力取引所(JEPX)へ出す前に買い取った結果、JPEXの相場高騰で採算悪化して新電力の廃業ドミノが起きた訳である意味自業自得です。加えてこんなニュース。

看板倒れの発送電分離 電力大手の情報漏洩、罰則強化も:日本経済新聞
送電線を大手電力の傘下に残したのは、上述の先発権の担保に留まらず再エネ電力の託送料を高額にして自社系列の発電部門を利する利益相反もありますし、新電力と競合関係となる小売り部門でも新電力の契約者情報にアクセス可能だった結果やはり利益相反を生んでいる訳で、そもそも制度設計の失敗です。どうすればよかったか、実は中国に答えがありました。
「結果オーライ」の再エネ振興 中国の産業政策のいま 丸川知雄・東京大学教授 経済教室:日本経済新聞
欧州のFITに対応して太陽光パネルを増産したものの、輸出攻勢でダンピング関税を課され、更にFIT期間終了もあって過剰生産能力を持て余して企業救済のために国内普及を促し、また内陸部に偏在する電源と需要地の沿岸部を結ぶ送電線の増強を行った結果、世界一の再エネ大国になったという結果オーライだったということです。

ある意味行き当たりばったりだったとはいえ、元々原材料のポリシリコンは国内調達だし人件費は安いしで、ダンピング関税は明らかに欧州の自国産業保護でもある訳で、その結果窮地に陥り国立銀行の融資の焦げ付きを防ぐ為に国内へ普及させた訳ですが、ウイグルや内モンゴルなど元々土地が広く日照条件の良かった内陸部で普及したものの、やはり送電線接続拒否問題が起きたのは日本と同じですが、国が主導して送電線増強で対応したところが中国らしいところです。歴史的経緯で大手電力の既得権に切り込めない日本が停滞する訳です。

という具合に昨今民業圧迫が目につく中国ですが、民間企業が力を持つ弊害を抱える日本が優れていると言えない皮肉な現実です。新自由主義的に民営化すればうまくいくというロジックも不具合が目につく昨今ですが、そんな観点から注目したいニュースがあります。

地下鉄運賃下げたら乗客数3割増 神戸の「北神線」おカネ知って納得:日本経済新聞
グローバルコロナショックで取り上げた北神急行電鉄の神戸市買収による市営地下鉄編入の後日談ですが、コロナ禍にありながら乗客3割増しという驚くべき結果です。勿論上記エントリーで指摘した市営バス再編絡みで乗客を集約できたという側面はあると思いますが、運賃が下がったことのインパクトの大きさを示します。粟生線の乗客減に苦しむ神戸電鉄にとっては乗客減の影響はあるかもしれませんが、寧ろ有馬三田地区からの三宮へのアクセス向上は地域活性化に繋がる訳で、粟生線とは事情が異なります。新開地起点でターミナル立地が必ずしも良くない神戸電鉄にとっては寧ろビジネスチャンスかもしれません。「民から公へ」が成功する可能性は注目されます。

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Saturday, February 04, 2023

無視されるシャドーワーク

オーストリアの社会評論家イヴァン・イリイチ氏の造語ですが、子育てを含む家事労働など賃金を伴わない影の労働を名付けたもので、欧州発のベーシックインカムの議論の基盤となっている考え方です。ここから敷衍されるのが、子育てに対する公的支援の在り方です。

絶望の少子化対策怪運国債依存症でも取り上げましたが、生産年齢人口の減少に伴う労働力減少を補う意味では子育て支援は寧ろ逆効果です。15~64歳の生産年齢人口の減少が急速に進行中ですが、現役四大卒で言えば頭の7年は学生で、せいぜいアルバイトで労働参加する程度ですから、労働力として実働する22歳以降から実際のキャリアがスタートする訳ですが、女性の場合は出産年齢が30代半ばまでとして、子育てを含めると20代30代は出産と子育てで手を取られます。これつまりシャドーワークが労働参加後のキャリア初期にバッティングする訳です。

更に大学等の学費高騰で教育費負担が来る40代も厳しいとなります。結果的に女性の多くがキャリアを中断して子育て後の復帰で地位保全されるケースは少なく、パートなどの補助的業務で低賃金を余儀なくされるという流れがあります。つまり女性は端からハンディキャップレースを強いられている訳です。加えて40代半ばからは高齢の両親の介護がのしかかる訳ですから、キャリア後期もシャドーワークを強いられる訳です。

1世代25年として50代で親が後期高齢者になるということですね。これらに対する経済補償としてのベーシックインカムというのが本来の議論です。新自由主義者が言う社会保障の一元化とは全く異なる考え方ですが、その意味で今国会で議論されている児童手当に所得制限を設けないのは当然となる訳です。

但し経済的に補償されれば済む話かと言えばそうではない訳で、シャドーワークの賃労働とのバッティングという問題は付きまとう訳です。加えて少子化対策としては殆ど無意味ということは重ねて指摘しておきます。育児に希少化する労働力が割かれる訳ですから、当面の労働力居不足は寧ろ深刻化します。これは保育園などの育児支援サービスも人手不足は避けられませんから、結局子育ての負担は増すことに変わりはありません。故に少子化対策としての効果は見込めません。故に「異次元の少子化対策」はあり得ません。

「育休中のリスキリング」発言 野党が岸田首相を批判:日本経済新聞
という訳で岸田首相の発言が炎上した訳ですが、シャドーワークとしての育児という実態を知らないということは、子育て支援の本気度もその程度ってことですし、寧ろ少子化対策にならないなら予算を削ろうという話にもなりかねません。子育て支援はシャドーワークに対する補償であるべきです。加えてリスキリングは学びなおしによるキャリアの乗り換えですが、当然コストもかかりますし、労働参加の空白にもなります。それを与党議員のおそらくやらせ質問で答えてしまうということは、原稿は官僚が作ったとして政府も与党議員もその程度の認識しかないということです。
少子化対策「N分N乗」案 茂木氏が紹介、維国導入訴え 子ども多いほど税軽減:日本経済新聞
フランスなどで採用されているという触れ込みですが、これも愚策。フランスの場合受け入れた移民が主たる受益者で、公式には移民政策を採っていない日本には当てはまりませんし、効果は知れており、出生率も人口増加ラインの2.07に遠く及びません。移民を引き付けて労働力不足を補う効果はありますが。

という訳で労働力不足は結局資本装備による労働代替が必要なのは繰り返し述べてますが、注意が必要なのは資本の質が問われるということです。例えばデジタル投資ですが、アメリカでもGAFAMの人員削減が止まらない状況ですが、巨大ハイテク企業の収益性は例えばアマゾンで言えばユーザーが勝手にポチってくれるから店舗無しでコストをかけずに高収益を得ている訳ですが、その結果ユーザーにシャドーワークを強いているとも言える訳です。グーグルやフェイスブックなども広告をスキップする手間をユーザーに強いているという意味では企業がユーザーにシャドーワークを移転してコスト負担を免れているという側面んもあります。

企業のみならず例えばコロナ対策で立ち上げたHERSYSという通知システムは入力項目が多すぎて医療現場に負担を強いており、それが医療逼迫をもたらすという本末転倒が起きていますし、マイナンバー付与で済むはずのマイナンバー制度が下手に高機能なマイナンバーカードを作ってセキュリティ問題を抱えたりということも同様ですが、申請手続きが煩雑な上、セキュリティのために二重パスワードが要求されたり紛失時の再発行に時間がかかったりで、国民視点でメリットは皆無です。

バスの細道で取り上げた京急ポニー号のデマンド運行見直しによるコストの引き算での値下げという視点も必要です。というのは資本装備は維持費がかかるということで、減耗する固定資本に沈む夕陽で示したように、資本装備を増やせば済む問題じゃない訳です。例えば新国立競技場のように低稼働で赤字となる施設を作っちゃったことは反省点です。その意味で取り上げたいのがリニア問題ですが、週刊ダイヤモンドでJR東海の迷走ぶりが特集されてます。その中の記事です。

JR東海「上から目線」でリニア沿線住民から総スカン、葛西イズムと国益至上主義の無神経:ダイヤモンドオンライン
オンライン記事は会員限定なので、全文は図書館で読んでほしいですが、川勝知事の前任の石川知事時代からの確執を川勝知事が引き継いだもので、故人となった葛西名誉会長の「上から目線」の無神経発言が発火元ということで、残されたJR東海幹部も対応のしようがないのが現実です。そしてこれ。
JR、鉄道回復8割の壁 本州3社の収入コロナ前戻らず:日本経済新聞
これつまり東海道新幹線の需要逼迫というリニア建設の必要性が消えたということです。加えて言えば元々厳しいリニア開業後の収支見通しも赤字必至ということでもあります。加えて地上コイルや車上の超電導コイルのメンテナンスなど未知のコスト負担もありますから、今からでも遅くはないんで、見直しすべきでしょう。とはいえ「皇帝」と言われ異論を述べると干されてイエスマンばかりとなったJR東海の今後は茨の道です。

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Saturday, January 21, 2023

バスの細道

鉄道以上にコロナ禍による乗客減に加えてドライバー不足も深刻なバス事業ですが、ホリデーイールドマネジメントで取り上げた関越道ツアーバス事故から10年の節目の年です。当時は旅行会社がツアー募集の形で毎日運行する乗合類似行為として、公共交通である高速乗合バスに寄せる形で競争政策として新規参入を認めつつ、安全対策は乗合バス並みの厳格さを求め、抜き打ち監査などを実施して事業者のレベルアップが図られた筈ですが、実態は事業者毎に問題を抱えているケースがあることはドルは我々の通貨だがで取り上げた2件のバス事故で問題が顕在化しています。あおい交通は乗合新免事業者として空港連絡バスを運行中の事故で、以前から運転が粗いと言われていましたし、実際事故後の監査で不備が見つかっています。

クラブツーリズムは乗合バスではなくツアーバスですが、7年前の碓氷峠スキーバス事故と類似の不慣れなドライバーによる事故という意味で、教訓が生かされておりません。ツアーのスケジュールがタイトすぎる点が指摘されており、旅行会社の添乗員が若いドライバーに急ぐようプレッシャーをかけていたということです。しかも有料の富士スバルラインを避けたコース設定でもあり、その面でも疑問を禁じ得ません。最近のバスのシフトレバーの標準でもあるフィンガーコントロールは高速ではロックされてシフトチェンジできず、この事故では下り坂でニュートラルのまま暴走してフットブレーキ多用でフェード現象を起こしたということですから、ツアー会社の責任は重大です。

そんな中で首都圏のバスのドライバー不足で減便が相次いでますし、コロナ禍の乗客減で高速バス事業から大手事業者が撤退する流れから、相対的に安全性に疑念のある新免事業者の比重が増しているのは困った問題です。いずれ鉄道同様に運賃値上げもあり得る状況でしょう。実際空港連絡バスの運賃は値上げ改定が相次いでいます。

そんな中で逆に値下げされた事例があります。京急バスの船50大船駅桔梗山線で、ポニー号の愛称で呼ばれ、デマンド運行区間を有する特徴的な路線でしたが、デマンド区間を通常運行に切り替え、関連設備を撤去して割増運賃を無くしたもので、初乗り200円が180円に値下げされております。デマンド関連設備自体は国の補助金を得て設置されたものですが、経年による設備更新を省いたものと考えられます。しかしそれ以上に割増運賃時代と様変わりした乗客の少なさが見て取れます。コロナ禍による利用減が値下げをもたらした可能性はあります。

乗合バス事業者はそれでも例えば環境定期券のような柔軟なサービスで需要の掘り起こしを続けており、また国際興業を皮切りに導入された金額式IC定期券のようなサービスもあります。これは購入すると手持ちのSuicaやPASMOなどに情報を書き込んで金額区間内で繰り返し乗車でき、金額オーバーの場合は差額を引き落とすというもので、都区内などはプラス100円の一律となるというサービスですが、定期券制度を活用したサブスクリプションサービスという見方も可能であり、鉄道の定期券制度より柔軟な運用となっております。この辺は鉄道も見習ってほしいところです。

一方で空港連絡バスなど取れるところでは取る姿勢もあり、メリハリが効いています。この辺はJR西日本のAシート拡充やJR東日本の在来線特急強化と同じ流れですが、JR東日本の場合、湘南ライナーを廃止して特急湘南に置き換えるという実質値上げが乗客の支持を得たという判断のようです。

JR東日本の場合、座席予約システムと連動したLED表示を利用して車内改札を省略するなどしており、相応の資本装備をして実現している点は怪運国債依存症で示した資本装備増強に当たります。京急ぴにー号の値下げで設備撤去でコストダウンを狙ったのとは逆ですが、鉄道にしろバスにしろまだまだ打つ手はある訳です。

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Sunday, November 06, 2022

インフレの不都合な真実

世界的なインフレで、アメリカでリベラル派が飛びついた現代貨幣理論(MMT)は一瞬にして否定されました。逆に現在のインフレが過度な財政出動による財政インフレではないかという議論が保守派を中心に言われ始めました。注意が必要なのは今月の中間選挙向けの政権へのネガティブキャンペーンの要素もあるのですが、トランプ政権からバイデン政権にかけて財政を拡大したことは確かな訳で、頭から否定することも難しいと言えます。

その一方で相変わらずMMT信者が多い日本の現状には眩暈がします。曰く「税収は財源ではない」そうですが、国家の課税に対して国家が受け取ることを約することが所謂法定通貨の定義であり、紙切れが価値を持つ最大の理由です。つまり課税が無ければ貨幣流通に伴う信用創造が働かない訳で、こんな初歩の初歩の原理を無視した議論が大手を振ってまかり通るのは異常です。

という訳でそもそもMMTの議論でも「インフレになったら財政を引き締めらば良い」と言われている筈なのにそれは無視して30兆円規模の総合経済対策とやらが閣議決定されました。イギリスでは財源の裏付けを欠く財政種痘同を打ち出したトラス政権が債券市場を混乱させてイングランド銀行(BOE)が英国債を緊急買い付けし、混乱の責任を取って1か月半で退陣し、後任のスナク首相が財政規律重視を抱えて市場も落ち着きました。

「欧米と違って日本は不況だから利上げはできない」という珍説が開陳されてますが、Brexitの失敗で経済ガタガタのイギリスでBOEは0.75%の利上げを決めて政策金利は3%を越えました。中銀にはインフレ退治して通貨の信任を守るというミッションがある訳で、BOEはそれに忠実です。インフレは貨幣価値の低下を意味しますから信認を維持する必要がある訳です。一方でインフレは通貨への課税の意味もあり、財政赤字を抱える政府にはインフレで政府債務を建言するインセンティブが働きます。

円安の不都合な真実で指摘した日本企業の海外売上げが国内送金されていないことを指摘しましたが、この部分は国内で流通しない訳ですからGDPには反映されません。しかし元大蔵官僚の某教授によれば円安で企業収益が改善してGDPが上向き法人税収も増えているというあからさまなウソを公然と述べてます。しかしそれも現実が否定しています。

トヨタが2年ぶり減益、今後の見通しは?:日本経済新聞
ついにトヨタも減益です。インフレによる原材料高の影響を円安メリットでカバーしきれなかった訳で、仕入れから加工工程を経てロールアウトして販売に結びつくまでの時間差で説明がつきます。トヨタだからこの程度で済んでいる可能性もありますが、鉄鋼大手の日鉄が増益の一方JFEは減益とか、企業によって濃淡はありますが、円安が続けば企業業績にマイナスに働くことは避けられないでしょう。あと上記エントリーで指摘した円安による地価上昇も先が見え始めています。
オフィス賃料下期、東京11年ぶり下落幅 在宅勤務が定着:日本経済新聞
記事では八重洲ミッドタウンのオフィステナント募集が停滞していることを取り上げております。コロナで在宅勤務が定着したことから、地価の高い都心のオフィスを縮小したり撤退したりする企業が増えて、思うようにテナントが集まらないということです。

来年3月のグランドオープンまでには埋めると三井不動産は強気ですが、先行開業した地下の八重洲バスターミナルと飲食テナントは好調で好立地を示しますが、オフィス需要の減速は在宅勤務のみならず生産年齢人口の減少で今後も続くと見込まれる一方、都内各地に再開発で多数のオフィスビルが計画されており、オフィスは増えこそすれ減ることはないとすると、早晩需要が頭打ちになると見込まれます。また地価上昇はマンション価格の上昇もあり、また在宅勤務を前提とした郊外の戸建て需要も旺盛ですが、それもそろそろ終わるかもしれません。

住宅ローン膨張220兆円 金利上昇にリスク チャートは語る:日本経済新聞
既に住宅は空き家3割と言われるほど余剰なのに、低金利と住宅ローン減税の影響で強気の販売が続き、加えて英米のような中古市場の不備もあって新築住宅が増えている訳ですが、ここへ来て長期金利の上昇を抑えきれず、変動金利の契約が多いこともあって家計の破綻が現実味を帯びてきています。これも人口減少で住宅が余る現実を無視した政策の失敗です。

ということは、鉄道事業で軒並み赤字のJR各社による不動産事業への傾斜も、先行きはあまり明るくない可能性があります。ま、こういう事情なので日銀が簡単に金融緩和に舵を切れないということはありますが、そうなると住宅ローン債権を抱える銀行も困る訳で、住宅ローン発の金融危機もあり得ます。余剰な住宅を担保差し押さえしても債権回収は困難を極めるでしょう。異次元緩和の重大な副作用です。

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Saturday, October 22, 2022

ドルは我々の通貨だが

1971年の米ドルの金交換停止、つまり米ドルが金の裏付けを失うニクソンショックの混乱で世界から批判を浴びたニクソン政権のコナリー財務長官がタイトルのような返答をしたと言われています。米ドルはアメリカの通貨だからどうしようが勝手、それで影響を受けるというのはその国の経済政策に問題がるからだ、ということですね。

昨今のドル高に対する批判を受けて、バイデン大統領や政府高官の発言が、ドル高容認、問題はその国の経済政策と異口同音に発せられており、ドル安の起点となったニクソンショックとは逆の局面で同じニュアンスなのが何とも。という訳で円安の不都合な真実を逆の視点で見てみようということです。

「多くの通貨、大きく変動」 G20財務相会議が議長総括:日本経済新聞
12~13日にワシントンで開かれたG20財務相会議で議長国のインドネシアが名指しは避けつつも、ドル高の影響が世界に拡散していることに言及したものです。というのも97年のアジア通貨危機の記憶があるからですね。

当時工業化で投資が活発だったアジア各国はドル建て債務を膨らましていた中で、クリントン政権のルービン財務長官の進言で強いドルは国益とするドル高政策が採られた結果、債務膨張して返済に窮した経緯があります。このときの経験から日本主導で外貨準備を融通し合うチェンマイイニシアティブという通貨スワップ協定が作られますが、アメリカに振り回された記憶は生々しく残っている訳です。ジャカルタ―バンドン間の高速鉄道プロジェクトが中国勢が落札し日本勢が敗れたなんてこともありましたが、日本勢がドル建ての資金計画を提案していたとすればそれが嫌われた可能性はあります。大国に振り回された歴史故に大国間のバランスを重視する姿勢なのかもしれません。

中国に関しては一帯一路の債務のわなが言われ、スリランカがz財政破綻に追い込まれたことがr取り上げられてますが、実際は債務に占める中国のシェアは10%程で、元々放漫な財政運営だったってこともありますし、元々一帯一路は国内消費が低調な中国で現高による余剰資金の活用策としての海外投資という側面が強かったので、新興国にとっては元高が債務を重くした側面もあります。そう考えると今のドル高とどう違うのかは微妙です。

加えて今回のドル高は資源高と連動しているので、資源輸入国には特に過酷ということもできます。原油価格こそ下がりましたが、石炭や天然ガスは高止まりしており、コバルト、ニッケルなどのレアメタルや肥料原料のリンなども値上がりしています。70年代の2度の石油ショックでは米ドルの下落がバッファとなっていたこととは様変わりです。特にウクライナ紛争のあおりで欧州のガス価格が急騰しており、逆にアジアは中国がロシア産LNGの輸入でアジア市場の需給は緩和してますから、欧州により過酷ということも言えます。ドル高放置はアジア危機以上の経済ショックを引き起こす可能性がある訳です。そんなアメリカに不満も言えない日本はといえばステルス介入のようです。

政府・日銀が円買い介入 7円急騰、151円台から144円に:日本経済新聞
前回と異なり今回は予告なしですが、政府としては投機の動きをけん制したいということでしょう。限られた外貨準備の中ではできることも限られますが、前回同様元に戻るのか確実ですから、逆に投機筋は介入の逆張りで円売りドル買いを仕掛ければ確実に儲かります。介入は寧ろ投機筋を呼び込むことになります。加えて介入資金として米財務省債を売れば米長期金利の上昇で日米の金利差が開きますから円安を助長します。
貿易赤字、4~9月過去最大の11兆円 資源高・円安響く:日本経済新聞
資源高をきっかけに貿易赤字転落ですが、その結果の円安が貿易収支をさらに悪化させ、9月の貿易赤字2兆円は所得収支黒字を相殺する水準で経常収支赤字まであと一歩の水準です。つまり実需に基づくファンダメンタルズを反映した円安ですから、介入は無意味です。打つ手があるとすれば日本企業の海外法人が抱える海外内部留保を国内送金して円買いを促すぐらいでしょうか。その為には国内で成長の種を見つける必要がありますが、栗鼠殺し?で指摘した行政DXのデタラメぶりを見ると無理かなと^_^;。

マイナンバーカードの問題点で言えば、マイナンバーを公的部門が管理する個人データへアクセスする為のキーとして紐付けすれば、各省庁や自治体などの個々のシステム自体はスタンドアローンで良い訳で、その方が特定個人のデータを不正に集める手間が増えてそれがセキュリティを高めます。それを本人が手元で管理することで、いちいち同意を得る手間が省けますし、仮に紛失してもマイナンバーの紐付けを停止して新たに発行したカード番号に紐付ければよい訳です。子供や高齢者も携帯するとすれば、これぐらいシンプルなシステムの方が使い易いしランニングコストも低い訳です。こういうシンプルな発想が出来ずに下手に高機能を狙って淘汰された国産携帯電話などなどこの手の話は枚挙に暇がありません。

どうすれば日本人の賃金は上がるのか (日経プレミアシリーズ)で著者の野口教授は日本ではイノベーションが起きず生産性が上がらないから経済成長できず、結果的に賃金が上がらないと容赦がありません。その原因の多くは制度に由来する市場機能の祖語にあるということです。ひょとしたら日本企業自身がそれを知っていて海外収益を国内投資に回せないという判断をしているとすれば、円安をもたらすファンダメンタルズの改善は絶望的に困難ってことですね。

思い当たるのは例えば東芝ですが、国内事業で利益が出ないから原発輸出で巻き返そうとしてウエスティングハウスを買収したら財務ボロボロだったとか、三菱電機や日野自動車の検査不正のようにコストセンターの検査部門に圧をかけて利益確保に動いたとか、まだいろいろありますが、国内事業で行き詰っていたことは間違いないでしょう。海外展開する製造業大手でこれですから、内需関連企業はさらに苦しいのかと思えば、実は電力、ガス、通信などの参入障壁のある規制業種の特に男性正社員の平均賃金が高いという分析があります。

これ交通事業もかつては地域独占を保証されておりましたが、鉄道は自動車や航空との競争環境で独占が崩れております。それでも動力車運転士のような免許業種では高賃金ですが、整備や保線などは必ずしも当てはまらず、それが例えばJR北海道や富山地方鉄道のような事故を繰り返す事業者を生み出すことに繋がるのでしょう。ちなみに富山地方鉄道は鉄道営業キロ100km余でほぼ東急と同等です。

段階的に参入規制が緩められたバス事業では90年代半ばからバスドライバーの賃金が顕著に低下しております。その結果ドライバー不足を助長し、大都市部を含めて減便や廃止が相次いでいます。また新免事業者の中には運行管理に問題を抱える事業者も見られます。そんな現状を示すニュース2つです。

長時間労働認める、処分へ 愛知の炎上バス運行会社:日本経済新聞
静岡バス横転、ブレーキ多用で過熱か 急勾配の「難所」:日本経済新聞
三位一体で原罪侵攻系で取り上げた名古屋のあおい交通の炎上事故で、長時間勤務を認め、運行管理に問題があったとして処分必至の状況となりました。クラブツーリズムの下請けの美杉観光の事故ではフットブレーキ多用によるフェード現象が原因ではないかと言われています。ドライバーが26歳と若く、このコースの乗務は初めてということで、経験不足が言われています。

下り勾配でのフットブレーキ多用の危険性はドライバーとして常識に属しますし。大型ディーゼルバスですからエンジンブレーキも強力ですし、補助ブレーキ装置として排気リターダも装備されている筈ですが、不慣れで活用できなかった可能性があります。需給調整規制の緩和で競争環境が生まれたことは悪いことではありませんが、そのしわ寄せがこういう形で起きるとすれば、交通事業の規制緩和は慎重であるべきでしょう。同時にMaaSなどで自動運転に期待がかかりますが、安全を担保するハードルは高いと言えます。世界的には交通事業への公的支援は半ば常識でもあり、独立採算の見直しも視野に入れる必要があります。

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Saturday, October 15, 2022

栗鼠殺し?

三浦半島全域に生息域を広げた外来種のタイワンリスを得付け禁止から害獣として駆除にシフトするという話ではなくて、最近「リスキリング」という単語が新聞の見出しに目立ちます。ということでタイトルのような連想をしてしまいます^_^;。

再教育の意味だそうですが技術革新で労働者のスキルと企業が求めるスキルにズレが生じており、所謂雇用のミスマッチを解消しようということで、特に日本ではITエンジニアやデータサイエンティストが手薄ということもあり、ミスマッチ解消で生産性を高めて賃金アップに繋げたいとい「あたらしい資本主義」の最優先課題として人材投資が叫ばれているという文脈ですが、誰が誰に何を教えてどんな成果を期待しているのかは不明です。

70年代に資本金1億円以下の中小企業で社会人キャリアをスタートさせた私自身は文系に属しますが、数学は得意科目でしたし、また会社のオフィスオートメーションの取り組みで社外の有料プログラミング講座をを受講させてもらったり、それ以外にも外部講師を招いての社内講習や職場内教育(OJT)もありました。大手企業に比べて知名度や待遇面で社員の定着率が低い中小企業故に社員教育は大事だったのでしょう。プログラミングは実務で役立つことはありませんでしたが、システム思考を理解できたという意味で感謝しています。後の大手流通企業での営業現場でPOSシステムの導入を経験しましたが、現場レベルでのシステムへの理解の重要性を体験しています。

文系理系の壁は日本だけの現象とは言い難いものがありまして、アメリカでもザックリ言えば官僚や企業経営者といったテクノクラートと技術者(エンジニア))の双方を効率的に育成する教育システムが機能してきたことに変わりはありません。変化はIT革命によってもたらされました。ごく大雑把に言えば文系テクノクラートも金融工学などで理系的な知識が求められるようになる一方、多くの事務仕事がIT化でスキルが陳腐化し、他方特にITスキルへの需要が増した結果、希少なITエンジニアの争奪戦となっており、テクノクラートとエンジニアの立場が逆転した訳ですが、そんな世界の趨勢とかけ離れた国があります。日本ていうんですけど。

保険証、24年秋にマイナンバーカードと一体化 政府発表:日本経済新聞
マスク、マスク、マスクで軽く触れましたが、そもそもマイナンバーカードとは何者か?が十分説明されておりません。

70年代にグリーンカードという制度の導入が閣議決定されました。アメリカの社会保障カードに倣ったもので当時の大蔵省は「総合課税に必要」というロジックで当時の野党第一党の社会党を巻き込みましたが、国民の拒否感が強く結局見送られました。マイナンバーも制度としては野田政権時代に税と社会保障の一体改革を自民公明の賛成を取り付けて実現した流れで、制度としては導入されましたが、マイナンバーカードは保有を推奨するけど任意という扱いでした。

米社会保障カードの機能を持たせるだけなら、行政機関が保有する個人データへの物理的アクセスキーとしてのカードであればバーコード付きプラ板で必要かつ十分な筈ですが、NFCチップを搭載した多機能カードとしたことで、住基カードと同じ袋小路に舞い込みます。NFCチップを搭載することでセキュリティ問題が起きる訳です。

スキミングの危険性がありますから常時携帯には適しません。しかもNFC周りを含むシステム開発も複雑化し、カード発行には二重パスワードで厳重になりますから、初期設定に時間も費用もかかります。故に汚破損や紛失に伴う再発行も簡単には行えず、現時点で申請から発行まで2か月のタイムラグが存在します。この辺は住基カードでも問題視されてシステム自体が頓死状態になっています。同じ過ちを繰り返した訳です。リスキングが必要なのは政治家や官僚では?

一応カードを持たなくても保険診療を受けられる代替策は検討されるようで。何らかの証明書のようなものが発行されるらしいですが、保険証を廃止してまでやる意味があるのかどうか?しかも医療現場にNFCリーダーと連動したシステムを導入しなければなりませんから、その費用負担もあります。自然災害やコロナ禍で縦割りの壁が言われ、省庁別にシステムが統一されていないことから「横櫛を入れる」という議論もありますが、アクセスキーが共通化されていればデータアクセス自体はは可能なんで、省庁別のシステムの違いは問題になりません。省庁間の相互参照は特別な場合のみに限定されるべきであることは言うまでもなく、寧ろ法令で厳格に規制すべきです。別のニュースです。

厚生労働省、10年備えた感染把握システム採用せず:日本経済新聞
コロナ以前から厚労省ではFFHSという感染症対策システムを開発し、テストを重ねて完成度を高めていたんですが、事務方トップにも政治家にも情報は上げられず、HER-SYSという俄か作りのシステムを立ち上げましたが、このHER-SYSが入力が面倒な上に不具合の手直しに追われてデータ活用にも至らず散々な結果だった訳です。FFHSだと疑い例を含めて入力は1分で終わり、データ活用も可能だったと言われており、詳細は不明ですが意思決定の闇を感じます。

デタラメトランスフォーメーションなCOCOA騒動もありましたが、流れから言うとITベンダーに仕事を流す意図が感じられます。もっと言えばETCカードもそうですが、諸外国では本線車道の門型ゲートを通過した車のバーコードを読んで後日請求というシステムが主流なのに、やはり日本だけの無線通信規格カードを作ってます。新車にはほぼETCついてますから、諸費用の中にセットアップ料金が含まれてます。利権の臭いがしますね。

正確に言えばNFCが問題なのではなく、NFCを搭載したために生じるエトセトラが問題なんですが、例えばVISAなどの国際カードにはNFCは当たり前のように搭載されてます。国内カードの場合は交通系ICカードで普及したFelicaが主流ですが、カード会社では不正使用が疑われる場合は決済を止めますし、利用者に損害が生じた場合の補償もします。つまり決済に伴う信用を補完する仕組みがある訳ですが、国が管理する個人情報で同様の仕組みはありません。例えば特定個人のデータを調べて犯罪の濡れ衣を着せるようなことも可能な訳です。その部分について「国を信用しろ」だけでは国民としてh納得できない訳ですね。

てことでここまで鉄分ゼロですが、最後にオープンループの話題です。

オープンループ乗車システムはSuicaの地位を塗り替えるのか?:Impress Watch
元々ロンドン市交通局が交通系カードの Oister のコスト負担に悲鳴を上げて導入されVISAのクレジットカードやデビットカード決済で乗客の利便性を維持することを意図して導入されたもので、現在はニューヨークやシンガポールなど世界450事業者に拡大しています。機能としてはカードに搭載されたNFCで決済するもので、日本でも複数事業者で試験を含む導入が始まっております。国際カード保有の外国人旅行者にとっては便利なサービスです。またSuicaなどのFelica系交通ICカードも導入や運営のコストが高いことがネックで地方に拡がりません。

但し課題もありまして、あくまでもVISAのサービスであってそれ以外のカードは使えないですし、日本限定ですがNFCカードリーダーの設置が必要なのでコスト面の優位性は一部スポイルされます。またデータ読み書きのスピード重視のFelica系カードに比べると読み書きが遅く、混雑する大都市の都市交通には導入しにくいということもあります。またSuicaを開発したJR東日本は全く関心を示しておりませんので、特に東日本の事業者にとってはメリットを見出しにくい状況です。但し外国人利用が多い空港連絡バスやタクシーなどではメリットもありますので、部分的な共存の可能性はあるでしょう。

JR東日本は寧ろ磁気乗車券に代わるQRコード乗車券の導入を目指しており、自動改札の搬送ベルトのメンテナンスを省略することを狙っています。こちらもクラウド環境で迅速な処理が可能なのかどうかは開発途上で、こちらに注力すればオープンループ派の関与は薄まらざるを得ないというところでしょう。今後は見通しにくいですが、気が付けばFelicaシステムがガラパゴス化の可能性もあります。

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Sunday, September 11, 2022

衰退途上国の在り方

NISAホイサッサの迷走ぶりは、確定拠出型年金でも同様です。

「放置年金」5年で7割増2400億円 運用機会111万人逃す 転職時手続き忘れ、現金で管理
企業向け確定拠出年金(DC)は鳴り物入りで導入されたものでアメリカの制度に倣った「日本版401k」とも呼ばれました。確定給付型企業年金が厚生年金の受託分を含めて企業の自主運用で従業員に給付額を約束するのに対して、DCは拠出額が決まっていてその範囲内で従業員が自ら選んだ投資商品で運用する仕組みで、アメリカでは定着した仕組みで、転職しても転職先で続けられる可搬性のある個人主体の制度として期待されましたが、採用企業は限られ、転職先がDC不採用だったり、早期リタイアで自営若しくは未就業となった場合は、個人向け確定拠出年金(iDeCo)へ変更するか解約して現金化する必要がありますが、それが放置されているケースが多く月額52円の事務手数料が引き落とされてしまうというもの。やはり制度が理解されず迷走している訳です。

こういうことが日本では多いと感じます。政府の統治システムの劣化を感じさせます。コロナ問題でも分科会での専門家の意見集約もないままに、全数検査を無くし陽性者の待期期間の短縮を打ち出すなどしてますが、何れも実務上の調整項目が多く、政治判断だけで出来る話じゃありません。実際専門家からは懸念の声が出ていますし、実際感染者数も減っているとはいえ高水準ですし、何より志望者数が多い点は問題です。それも自宅療養中の重症化とか、明らかに医療の包摂が出来ていない中で起きている点は重大です。

国民の命を軽視しる一方、国葬はやるという姿勢を崩しません。これも正確には国葬儀であって戦前の国葬とは別物と説明されてますが、それならなぜ国会に諮らなかったのか、司法の見解を確認しなかったのかが問題です。国会で多数派なんですから、最終的には実施する方向で採決できるし、司法が待ったをかける可能性も低いのに、内閣府設置法を根拠に国事行為を閣議決定で決められるとしたところが問題なんです。法的根拠のない国事行為を内閣が勝手にやるということですね。

実際世論調査では反対が多数派ですし、特に旧統一教会問題で安倍元首相がキーマンと見られていることで、このまま知らぬ存ぜぬで押し切ろうというのですから無責任です。他人の死を利用しようという意図が見えます。そしたら英エリザベス女王の死去のニュース。こちらは慣習法の国の国家元首の話ですから当然のように国葬が行われます。エリザベス女王の時代はイギリスの衰退の歴史を刻んだ訳ですが、逆にアベノミクスでインチキ成長戦略の安倍元首相の国葬儀が霞みます。「悼む人がいるんだから反対するな」というのも、おかしい訳で、政府が国費を投じて行う儀式である以上、反対派を説得する責任があります。

日本の失われた30年ですが、90年代半ば以降の生産年齢人口の減少による潜在成長率の低下が構造問題としてある訳で、それに対して適切な資本装備の強化ではなく非正規雇用の拡大で賃金抑制を図った結果、国民の購買力を低下させた結果が現在な訳で、小泉改革からの一連で事態は悪化の一途を辿っています。ドル円も140円を突破して輸入物価上昇が明らかに消費にブレーキをかけているのに日銀は動けないという形でアベノミクスの負のレガシーに苦しめられている訳です。

人口動態の変化は現役世代にとっては雇用面でメリットの筈ですが、実際は非正規雇用の拡大で労働市場が分断された結果、正規雇用者の賃金抑制も起きている訳ですが、とりあえず新卒の就職難がないことで若者の現状維持の心理からか保守化しているという現状です。アメリカではオキュパイ・ウォールストリート運動のように若者ほどリベラルな傾向があり、保守層は中高年白人男性とヒスパニック系反共主義者が中心という状況です。これはこれで深刻な分断ではありますが、日本では分断というよりも統治機構の劣化の影響の方が大きい気がします。

だから役に立たない成長戦略で空回りしていて、NISAもDCも外国の制度を参考にするの悪くはありませんが、それで不具合があれば見直してブラッシュアップしていくことが必要なのに、省庁の壁や政治家の身勝手でおかしくなっている訳です。そんな中で、来週には飛べないジョナサンが走ります。長崎は狭軌だけだった時点で軌間可変車両の開発は挫折すると予想しておりましたが、その通りになりました。結果的にスーパー特急からフル規格に変更した武雄温泉以西の整備区間が孤立状態で開業することになりました。特急かもめリレー号で武雄温泉でホームツーホームの乗換とはなりますが、乗換なしの九州急行バスがほくそ笑んでいるでしょう。新鳥栖—武雄温泉間のフル規格事業化は佐賀県の反対と財源問題で当面見込めません。

幸いなのは並行在来線となる長崎本線肥前山口―諫早間は、当面上下分離で」JRが運航継続となっておりますが、肥前鹿島までは博多からの特急列車運行のために電化路線が残りますが、一方肥前鹿島以西は電化設備を撤去してキハ40系のローカル列車だけとなります。九州新幹線の並行在来線の肥薩オレンジ鉄道ではJR貨物が出資することで電化設備を維持しましたが、貨物は既にJR貨物がトラック輸送に切り替えたため問題になりませんでしたが、事業の見直しが出来ないままの泥縄対応です。

そして並行在来線問題では北海道新幹線の並行在来線となる函館本線新函館北斗―長万部間の存続問題がネットを賑わせています。現時点で地元自治体は引受を表明せず、北海道庁も動いておりませんが、引受のハードルは高く、年30応円程度の赤字必至ですから、何らかの公的助成なしには実現できません。東北や北陸では貨物調整金と称する引受三セクが受け取る金額とJR貨物が負担する金額との差額を新幹線リース料に上乗せする形で対応しましたが、その結果北陸ではサンダーバードの金沢打切りと新幹線つるぎの運行という落としどころとなりました。

一方JR貨物の依頼で貨物廃止の場合の経済損失はみずほ総研の試算で1,453億円と弾き脱されており、特に北海道産農産品の天候ん左右されない市場アクセスインフラとして重要です。ザックリ2%強の負担で経済損失を回避できるんですから経済合理性はありますが、協議が進む気配はありません。対案として国交省で検討されたのが船舶輸送への置換えですが、そうすると天候に左右されますし、室蘭港にしろ苫小牧港にしろキャパシティに余裕はなく、また輸送時間も伸びると予想され断念されます。道内から積み出し港までのトラック輸送もドライバー不足で難しくなっておりますし。

あと民間で構想として検討されているのが第二青函トンネルですが、多額の公費投入が不可避なだけに、費用便益分析のよるB/C比がどうなるか不明です。ということで、当面は何らかの公的助成で並行在来線を残すのが最も現実的な解になる訳です。それと東北新幹線の並行在来線IGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道も減収となります。とはいえ貨物のために地元負担を求めるのは難しい訳で、おそらく国交省では落としどころを考えていると思います。

あくまでも予想ですが、当該区間の鉄道・運輸機構によるJR北海道からの買い取りで貨物専用線として存続させることは考えていると思います。一応2025年までに結論を出すことになっておりますので、ギリギリのタイミングで官邸へ上げて政治判断を引き出すということになると思います。これはこれで泥縄ですが、経済合理性から考えてこれしかないでしょう。その場合三セクによる旅客輸送は無くなります。」

その上でJR北海道への売却代金の財源として機構がJR北海道へ融資している債権の棒引きで対応すれば敢えてこのための予算もいりません。似たようなことは債務の株式化(デッド・エクイティ・スワップ)の形でJR北海道株式の引受は行われております。JR北海道は売却代金を新千歳空港新ターミナル乗り入れに伴う線路付け替えなどの事業費に充てることで経営基盤を強化して、あわよくば株式上場ということになるでしょうか。その際JR九州のように経営安定基金の取り崩しを行って減価償却前倒しと言ったシナリオを考えている可能性はあります。そうすれば株式化された債権の元もとれますし。

こううまくいくかどうかはともかく、経済合理性を無視した貨物廃止は考えにくいところです。尤も経済合理性を無視してフル規格化した西球種新幹線や北陸新幹線の小浜京都ルートのような経済合理性無視がたびたび起きていることもまた事実ですが、こうして経済活性化どころか衰退を早めるとすれば国民として不幸なことです。統治の劣化が進む現状から言えばあり得ない話じゃないことが怖いですが。衰退途上国として賢く縮むことは重要です。

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Sunday, August 28, 2022

三位一体で原罪侵攻系

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は一神教という共通点があります。考え方として人知を超えた超越的な存在としての神を定義することで、人間としての在り方を定義するという意味では共通ですが、その原点は原罪にあります。蛇にそそのかされて知恵の実を食べて神の怒りを買いエデンの園を追われたアダムとイブ(エバ)から人類の試練は始まり、神は様々な試練を与えますが、同時に救いの道を用意して人類を導き、導きに応じた者だけが生き残り、神を忘れた不届き者を一掃するということがこれでもかとばかりに繰り返されるのは聖書に記述された通りです。

しかしよく考えたら、困難に直面しても必ず救いの道はあるということになりますから、メンタルがタフになり逆境を跳ね返す力にもなる訳で、そうしたポジティブな評価が可能な一方、神に選ばれし民という選民意識、差別意識にもつながります。ある意味他民族の反感を買ってユダヤ人の迫害の歴史に繋がったという見方も可能です。

キリスト教とイスラム教はそうしたユダヤ教の教えを踏まえた上で、新たな物語を紡いだわけですが、キリスト教が神の子としてのイエス・キリストと精霊が三位一体の神の在り方という独自の見方を示します。故に神の子を処刑したことで原罪が重ねられ、試練は続きますが、精霊が生きている人に降臨して救いの道を示すことで導かれるという風に物語は展開します。歴史に名を遺す聖人はこの類という訳です。

しかし困ったことに精霊の降臨を示す証拠は示しようがない訳で、騙りの余地を生みます。統一教会開祖の文鮮明氏は言うに及ばず、中国の太平天国の洪秀全のように自らをキリストと同列の神の子とさえ名乗っていた事例もあります。余談ですが、太平天国はキリスト教の宣教師たちから異端扱いされて支えを失い清朝に滅ぼされますが、農民蜂起の闘争や移動しながら意表を突く戦いぶりなどが後の孫文の辛亥革命や毛沢東の長征などのロールモデルとなっています。

そうしたキリスト教の曖昧さはユダヤ教やイスラム教からは多神教的で堕落しているという批判もあり、クルアーンにも記述されてます。イスラム教では普通の人であるムハンマドが神託を受けてクルアーンを書き上げたとされており、神はアッラーだけという一神教の原点回帰をしています。故にムハンマドは神託を受けた神の代理人に過ぎず、死後は弟子たちの中から指導者を選びイスラム神学的な正しさを指針に指導するというイスラム帝国の体制が整備されます。スンニ派ではカリフという宗教指導者がスルターン(皇帝)を指名するということも初期には行われました。シーア派でもイマームと称する指導者を置きます。

そうしたキリスト教の多神教的曖昧さは、元々多神教の欧州では受け入れられやすかったということは言えます。ローマはオオカミの子孫を名乗る一族が建国した国で、国の発展と共に周辺の耕作地を拡大し、遊牧民の生息域を圧迫します。イソップの「オオカミが来た」という嘘つき少年の寓話はオオカミをローマの暗喩と読めば別の物語になる訳です。

そしてゲルマン民族大移動の混乱で国を立て直すためにキリスト教を認めた結果、侵略者のゲルマン人までキリスト教化された訳です。そうした融通無碍なところがキリスト教の特徴ですが、日本には大航海時代にスペインとポルトガルの宣教師が到達して布教をします。宗教改革で新教徒が勢力拡大する中、新大陸やアジアに布教先を求めた結果ですが、王を教化すれば国丸ごと布教できるということで抵抗したフィリピンは武力で支配下に置くなど強引なこともしていた訳ですが、幸か不幸か戦国時代に日本に辿り着いて王が誰かもわからないし長い戦乱で洗練された武力を持つ数多の戦国大名に武力で対抗も難しく、南蛮交易に興味を示す織田信長の保護を受けて布教を認められました。

元々寺社領を持ち力を蓄えていた仏教系各宗派に対するけん制の意味もあったと思いますが、そのあまりに強引な布教の姿勢故に秀吉の治世では一転布教を禁じられます。但し大名が帰依した所謂キリシタン大名の領地は例外で黙認されていました。そして以下略で明治維新で禁止が説かれ再度布教が始まる訳ですが、江戸時代に武家の統治思想としての朱子学に対抗して国学が興った流れで、天皇中心の統治へシフトする過程で、国家神道が形成されます。天皇は元々神話で神の子孫とされており、キリスト教の神の子という概念を借りて男系男子の万世一系の神の国の現人神という概念が作られます。これってカルト宗教と変わりませんね^_^;。

余談ですが、アジアの儒教文明という西洋から見たアジア観所謂オリエンタリズムですが、日本は例外で南宋儒教という革新的儒教としての朱子学の導入は徳川幕府による武家の統治思想というもので、長幼の序を重んじる古代の儒教とは異なり、西欧の啓蒙主義哲学思想家たちから「神なき秩序」として注目され参考にされました。しかし科学的知見の進む西欧では、結局変化の遅い儒教は時代遅れの思想として棄却されます。その一方で儒教圏の台湾でおそらくアジア一の民主主義が実現しているように、儒教のモダナイズで民主化の可能性はある訳で、中国の新儒教の思想もこの流れですが、大陸中国の民主化は足踏みしています。

そして原罪の知恵の実を食べたアダムとイブの物語ですが、蛇にそそのかされて先に林檎をかじったのがイブということで、実はミソジニーの思想も隠れている訳です。それは封建的な女性蔑視の風潮が残っていた明治時代ですから、国家神道にも反映されて女性の従属的地位が固定化される訳ですが、キリスト教圏の統一教会の開祖文鮮明も三位一体のキリスト教の教義から作られた宗教指導者ですが、こうした類似性が日本への浸透を助けたでしょう。つまり日本の保守思想に根付くミソジニーと統一教会の教義はシンクロしている訳です。故に支持率ダダ下がりでも統一教会と簡単に縁を切れない自民党がある訳です。

話は変わりますが、バスで重大事故が起きました。

名古屋高速でバス横転・炎上 2人死亡、7人けが:日本経済新聞
報道では手前から左右にふらついて不安定走行していたバスが中央分離帯に乗り上げて左に横転した単独事故で、前部オーバーハングの燃料タンクの燃料漏れが原因と思われる出火で炎上したもの。2人死亡7人ケガという事故ですが、明らかにドライバーが運転を継続できない異常事態が起きたと推測されます。

バスは名古屋市内から県営名古屋飛行場へ向かう乗合バスで、運行事業者はあおい交通という規制緩和後の新免事業者です。あおい交通に関しては地元では運転が荒っぽく急ハンドル急ブレーキや無理な割込みなどマナーも悪いと言われておりますが、それでも国交省の監査は通っております。当然ながら中小規模の新免事業者への監査はより念入りに行われると考えられますし。

そして4日後の26日未明には新東名下り線長篠設楽原PAで夜行高速バスがトラックに追突する事故が起きました。こちらもグレース観光という新免事業者ですが、乗り合いバス事業への参入規制緩和は民主党政権時代に実現しました。当時は所謂ツアーバス問題が取り沙汰されており、貸切バスによるツアー募集の形の乗合類似行為が問題視され。ホリデーイールドマネジメントで取り上げられた関越道のツアーバス事故もあって、安全管理を公共交通としての高速乗合バスに寄せる一方、貸切バス事業者への乗合免許付与を緩和した訳で、それ自体は時代の要請によるものでした。

ですから規制緩和が問題だった訳ではなく、実際新免事業者も含めて乗合バス事業者への国交省の監査は度々行われ、安全管理に問題がないか目を光らせてはいた訳です。しかし当時とはバス事業を巡る状況に大きな変化が見られます。元々既存乗合事業者にとっては短時間に距離を稼げる高速バス事業は採算性に優れていて、既に過疎化などの影響で一般路線の収益が悪化していたし、都市部の事業者も2年毎に排ガス規制が強化されるしバリアフリーでノンステップバスへの置き換えにも追われ、採算がとりにくい状況の中で採算部門の高速バス事業への参入は一般路線維持のための内部補助の原資確保の意味もありました。

故に乗合バス事業の参入規制緩和は既存事業者にとっては必ずしも歓迎されることではありませんでしたが、ツアーバスに営業基盤を侵食されるよりはマシな状況ではあります。また同じ土俵に乗れば運行面、営業面も含めて既存事業者には一日の長がある訳で、健全な競争環境の中で競い合うことは歓迎されました。

しかし地方の過疎化は止まらず、また少子化の影響でバスドライバーの確保が難しくなると、地方路線の減便や撤退が相次ぎバスの無い自治体も増える一方、大都市部でもドライバーの確保が難しいために減便を強いられるケースも出てきています。また高速バスも新規参入による競争激化で採算性が低下して撤退を迫られる路線もありますし、またコロナ禍で長距離移動需要が蒸発して多くの路線が休止に追い込まれ、京急など大手事業者の撤退表明もあり、休止路線の復活も微妙です。

そんな状況ですから相対的に小規模事業者が多い新免事業者ほど経営が苦しい状況は容易に想像できますし、ドライバー確保も綱渡りで過重労働を強いられている事例もあり得ます。その意味で新免事業者の事故が続いたことは偶然で片付けられない問題をはらみます。サイドバーで紹介した週刊エコノミスト2022年8月30日号の鉄道特集で面白い記述がありますが、日本一のバス会社^_^;西日本鉄道では鉄道の黒字復帰の一方、バス事業は赤字となっております。加えて西鉄は阪急阪神HDと並んで航空貨物フォワーダー事業で巣篭り需要のコロナ特需で潤った鉄道業界では珍しい存在でもあります。

一方国鉄のローカル線問題では自治体の硬直的な姿勢が目立ちますが、同時に国鉄時代の基準より厳しい乗車密度1,000人未満の路線のバス転換が現状のバス業界の状況を見る限り難しい現実もNationalRail幻想で指摘した通りです。実は鉄道よりバスの方が痛んでいる現実の中で、公共交通をいかに維持発展させていくのか、その見識が問われます。国葬なんかやってる場合かい!

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Sunday, August 14, 2022

コロナは万病の素らしい

社畜人ヤプーで帰省とコミケと青春18キッパーを取り上げましたが、コロナの自粛モードが、行動制限のない今年はかなり戻っているようです。それでもJR各社の指定席予約はコロナ前の6割水準ということで、戻りは限られます。コミケは台風直撃、豪雨や台風で足止めされた18キッパー死屍累々。

第7波渦中ですから無理もないところで、オミクロン派生のBA.5が猛威を振るう中、感染者の若年層への拡大と感染者の急増で「祖父母のために帰って来るな」と言われたケースもあるようです。実際ワクチン接種が進まない若年層の児童生徒が学校から持ち帰ったウイルスで一家全滅とか、エッセンシャルワーカーの職場内クラスター感染などで、例えば小田急バスの大減便とか宅配便の遅配とか、もっと深刻なのは只でさえコロナ禍で逼迫する医療現場の人手不足など、ウィズコロナを模索する政府の対応を難しくしています。

根拠薄れた感染対策、見直し急務 ウィズコロナへ岐路 岸田改造内閣の課題②:日本経済新聞
岸田首相は第7波終了後の見直しに言及してますが、第7波渦中の現在、既に医療逼迫が起きており、検査キットの不足もあって綱渡りの現実があります。実際行動制限は求められていなくても、帰省を断念した人も少なからずいた訳で、感染拡大のアナウンス効果によると思われます。その意味で全数検査を無くすことは歯止めが無くなるという意味で時期尚早です。そもそも全数検査と言っても陽性率が3割とか5割とかの水準では検査件数が過小と評価せざるを得ません。つまり公称の感染者数は実数に満たないと考えられます。

そもそもコロナで日本が世界に誇る医療の皆保険制度がマイナスに働いた今回のコロナ禍ですが、その見直しの議論は停滞し、感染症に有効なオンライン診療の解禁も進まず、またイギリスの家庭医に相当する制度もなく、小規模な医療機関が乱立した中でのフリーアクセス制では発熱外来設置は風評になると尻込みされたり、指定を受けても非公開だったりで、実際の感染者を早期発見早期治療する体制は確立されず、見なし陽性とか自主隔離とか医療放棄ともとれる現実がある訳です。

イギリスの家庭医制度は日常的な健康相談など日本の保健所の機能を家庭医が担い、不具合が見つかれば専門医へ紹介するという制度ですから、電子化されていなくてもカルテが共有され、患者側から見れば最適な医療が受けられる体制です。それでも財政再建のために予算が削られたことから、コロナ対策は後手に回り多くに犠牲者を出しました。その意味でジョンソン首相が当初打ち出した集団免疫作戦は背に腹は代えられなかった結果とも言えます。

それでもカルテの共有で多くの疫学データが抽出され、各国のコロナ対策にプラスになりました。特にワクチンの効果を巡る問題では、mRNAワクチンの有効性の高さやオミクロン株で見られたブレークスルー感染でも重症化回避の効果があることなど、多くの知見を得られました。それに引き換え混乱し機能しなかった日本のコロナ対策ではデータ活用すらお寒い状況です。イギリスの家庭医に倣ったかかりつけ医を医師会は推奨してますが、法的位置づけが曖昧ですし、そもそも初期医療のための専門教育を受けていない一般診療所の医師では役割を果たせず、結局専門医へ直接診療できるフリーアクセス制を見直すことはできません。

あと日本ではあまり議論されておりませんが、コロナ後遺症の問題はほぼ手付かずです。コロナ感染し重症化して死亡するケースでも、肺炎が死因となるケースは半数ほどで、他は心筋症や血栓症など別の死因です。また回復後の味覚障害やコロナ鬱と言われる神経疾患も報告されておりますし、回復後の帯状疱疹の発症が有意に増えていて、且つ若年化しているという報告もあります。帯状疱疹自体は水痘の原因ウィルスとされるヘルペスウィルスが回復後も体内に潜伏し、高齢化による免疫力の低下など何らかのきっかけで発症すると言われる疾病ですが、コロナ感染がトリガーになる可能性が示唆されます。

このようにまだよくわかっていないところですが、コロナ感染がトリガーとなって他の疾病を誘発する可能性はそれなりにあると見るべきでしょう。特にオミクロン株では喉など上気道での感染が見られ、それが若年者の感染拡大をもたらしている可能性もあります。生育途上で免疫力も相対的に弱い子供への感染は、例えばサイトカインストームのような免疫の暴走で他の疾病を呼び込む可能性もあり、実際若年層の重症化自体は増えています。将に万病の素ですね。

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Saturday, August 06, 2022

インフレなんだよ愚か者

米下院ペロシ議長の台湾電撃訪問が波紋を呼んでいます。米政府はペロシ議長に米国の台湾政策を丁寧にレクチャーしていたそうで、おそらく自発的に撤回して欲しかったと思いますが、対中強硬派のペロシ議長を翻意することには至らず、寧ろ秋の中間選挙で劣勢が予想され、下手打てばトランプ復権になりかねない危機感から、わかりやすい国民向けアピールを意識したのでしょう。実際政府は訪台自体を止めてはいないようです。

結果は中国による台湾周辺での大規模演習ですが、ペロシ氏が台湾を離れた4日からということで、事前通告されてましたし、規模の大きさは異常ですが、一応国際法上の手順を踏んで直接衝突を望まない姿勢を見せております。中国の本音はトランプ政権時代の中国ハイテク企業制裁や制裁関税など一連の中国敵対政策の緩和っを探ることですし、それ故にロシアのウクライナ侵攻の支援にも慎重です。またアメリカ自身も中国との全面禁輸を望んでいないし、実際2021年の貿易額は増えています。ウクライナ問題で手一杯のアメリカにとって、いま中国を刺激することは不利益でしかないのが現実です。

バイデン政権にとっても中間選挙で民主党が議会多数派の地位を失えば身動きが取れなくなり、ひいてはトランプ復権に至ることは避けたい訳ですが、コロナ問題で成果を上げても評価されず、寧ろ9%を超えるインフレで国民の不満が高まっている状況があります。インフレ退治はFRBの役割ですが、政府としてはガソリン税免除や対中制裁関税の解除ぐらいしか打つ手はない訳で、特に後者は国民世論を逆なでしかねないので手を付けられず手詰まりという状況です。

中国もアメリカ製半導体の供給制限で国内製造業が足踏みしている状況を抜け出したい訳で、更にセロコロナ政策で経済が停滞し、不動産バブル崩壊で内需を牽引してきた不動産業に暗雲という中で、アメリカとの対立は避けたいけど、流石に三権の長の台湾訪問は面子丸つぶれで国内世論が沸騰してますし、装備の増強が進む一方で協力案トップに頭抑えられている軍関係者のストレスもあり、ガス抜きせざるを得ない事情があります。故に今回のことが軍事衝突につながる可能性は低いですが、米中どちらも国内しか見ていない危うさはあります。

てことでEEZにミサイル落ちたと騒ぐ日本は自重した方が良いし、どちらも外せない経済的パートナーなんだし本来米中の中に入って取り持つことが必要なのにアメリカべったりの姿勢を見せている点を危惧します。中国からは挑発にしか見えないですからね。一方でロシアに見下りは突き付けられたサハリン2には未練たらたらですが、ロシア産原油が中国やインドに流れてその分国際石油市場の需給が緩んだことから原油価格が下がっているように、仮にサハリン2の天然ガスが中国に流れたとしても、その分中国が最大の輸入国となったアジアのLNG市場の需給が緩和する訳ですから、寧ろ別の調達先を探した方が現実的です。それより国内に問題だらけなのを何とかしてほしいところです。

KDDIが開けたネットワーク社会の「パンドラの箱」:日本経済新聞
ちょっと前のニュースですが、重大な問題を含んでいます。通信トラブル自体はソフトバンクもドコモもやらかしてますが、KDDIの場合自動車メーカーとの関係が深いこともあり、カーナビなど携帯以外の端末も多数接続しているということでIoT関連での問題が意識されましたが、ルーター交換という半ば日常業務的なメンテナンスでのトラブルであり、当初音声通話の15分の遮断で復帰させる為に旧ルーターに戻したところ、遮断中の接続リクエストが集中して回線の輻輳が起きて音声以外のデータ通信にまで波及したと説明されてます。

こうした異常事態は起こり得る訳で、その為に欧州では他社回線に迂回するローミングが実現している訳ですが、日本では出来ていなかった訳です。一応検討は行われたようですが、119番などの緊急通報で回線が切れた場合にコールバックが困難ということで見送られたそうです。つまり他社回線を使うと緊急通報した端末を特定できないということです。これつまり通信事業者間で契約者情報が共有されていないということです。政府が事業者間の競争を促すあまり事業者の契約者囲い込みが影響していると見られます。携帯料金下げてドヤ顔の管さんあたりに責任あるんじゃないの。

それ以上に無線通信の脆弱性を明らかにした点が問題です。つまり日本にサイバー攻撃仕掛けるなら携帯基地局狙えば良いということを明らかにしてしまった訳ですから。企業ユーザーの中にはJALやJR貨物のように複数キャリアの回線を確保して対応したところもありますが,例えば自動運転など全てのユーザーが同様の対策を採れる訳でもありませんし、今後5Gの普及で工場の機械や建機など多数の端末が接続するようになればなるほどリスクは増します。

洋上風車欧州大手が日本工場建設保留 納入先の公募落選で【イブニングスクープ】:日本経済新聞
有望とされる洋上風力発電の1回目入札で三菱商事グループが安値受注で案件を独占したことから、急遽入札ルールが見直され、三菱商事排除の気配が漂いますが、その結果入札条件が厳しすぎるとしてデンマークの風力大手べスタスが日本国内の製造拠点建設を保留し、当面独シーメンスの代理店としての活動に留まることになりました。巨大風車や発電機は輸送コストが高くつくので現地生産が基本であり、欧州大手の進出はその意味で遅れている日本の洋上風力発電の推進役と期待されていたところを実績の乏しい国内勢のさや当てで潰す愚という意味で通信ローミング問題と通底します。
EVバス世界で快走、中国製席巻 日本は水素重視で出遅れ:日本経済新聞
中国のEVバスが世界で走っています、日本でも導入例が増えておりますが、水素重視で出遅れは嘘です。日本独自のホイールモーター方式の電気バス開発は早くから行われておりましたが、政府もメーカーもガン無視でいつしか立ち消えとなりましたし、トヨタのSORAより10年以上前から欧州産の水素fバスは走っておりました。欧州では水素=再エネ電力由来のグリーン水素ということで、化石燃料由来の日本の水素戦略とは別物で、細々とながらジワジワ普及しています。ある意味中国は欧州とすみ分けて市場を取りに行っている訳で、日本に足りないものが良くわかる話です。
火力・原子力「夏バテ」懸念 猛暑や水不足で出力減:日本経済新聞
気候変動で風が弱くなって風力発電の出力不足が言われて再エネは頼りにならないとか言われましたが、欧州の熱波で渇水による停止や水温上昇による出力低下で火力も原子力も役に立たないのが現実です。水の豊富な日本では考えにくいですが、化石燃料依存による経済社会の破壊は底知れません。日本でも線状降水帯による水害で大変なことになってます。安定の再エネ電源の筈の水力発電もいつまで頼れるか。

そういう意味で欧州の脱炭素は本気度が違います。再エネ中心のエネルギー自給にいま取り組まなければ未来はないぐらいの認識がある訳です。その意味でエネルギー価格の上昇は苦しいけれどパラダイムシフトのチャンスととらえてもいる訳です。勿論各国で温度差はありますが、一方でユニークな政策も打ち出されております。

車社会ドイツ、電車乗り放題券 インフレ対策で脱炭素も:日本経済新聞
ガソリンなど燃油高によるインフレ対策と脱炭素を組み合わせた政策としてドイツ国内の鉄度やバスなどの公共交通乗り放題定期券を9ユーロで売り出したもの。日本円換算で1,200円程度ですから青春18きっぷよりも安い上、連邦政府の財政支援で実現したところがミソ。つまり典型的なワイズスペンディング出あり、JR各社の割引サービスでは実現できないレベルの割引ですね。

NationalRail幻想で指摘した公金によるサービスの購入をやっている訳です。同時にイギリス以外の欧州も8%台の高インフレに悩まされており、インフレをカバーする賃上げ要求でストが頻発して経済に支障が出ている状況です。とはいえ賃上げはインフレを昂進させるスパイラルに陥る可能性もありますし、給付金なども需要を押し上げてインフレ圧力を高める訳ですから、政府によるインフレ抑止は難しい訳ですが、コロナ禍で利用が減った公共交通支援を兼ねてガソリン価格に負荷をかけず国民の福利を高めつつ脱炭素も実現するというんのは、流石緑の党が与党に入っているが故のアイデアでしょうけど、日本ではこういう議論はほぼ皆無です。英ジョンソン首相もインフレで職を失った訳ですし、インフレ対策は各国政府にとっては鬼門でしょうけど、アメリカでもコロナ禍で利用が激減したニューヨーク地下鉄で運賃値下げを行ったりしている訳で、打つ手がない訳ではありません。

てことで1992年の米大統領選に勝利したクリントン陣営のフレーズに倣って言えば It's the inflation, stupid. 「インフレなんだよ愚か者」

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