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Sunday, June 08, 2025

TACOの知性とDeepSeek

まずジャパニーズラストベルト*1の話題です。コメが店頭に届かないのは精米能力の制約があり、1日6.000トン程度の精米能力の9割以上の稼働率でほぼ余裕なし*2。それを超える量の備蓄米放出で精米がボトルネックになっている状況です。減反によるコメ価格維持で価格が上がれば消費が減って結果的に値崩れする流れが精米機の投資を滞らせてきた結果ですね。一部メディアで卸の利益率500%増という小泉農相の発言が報じられてますが、1年前のコメの端境期に健在化したコメ不足で精米機の稼働率が落ち込んだ時期を分母にすればこれぐらいの数字が出ても不思議ではない訳で、原因はコメ不足であって、その結果卸や小売りや消費者の購買行動を引き起こしたもので、転売ヤーの暗躍といった俗説を否定する材料は揃っています。そもそも裏付け取材もせずにこうした発言を切り取るメディアはネットフェイクを批判できないです。

さて本題。市場の動きに翻弄されるTACOぶりは外交にも影を落とします。145%対115%の関税合戦に猶予期間を設けたのはアメリカの方が悲鳴を上げた形で、関税協議の本命の中国に翻弄されている訳です*3。結局米トランプ大統領が折れてどうにか閣僚級協議を経て習近平氏とのトップ会談の段取りがついた形ですが、ウクライナ停戦交渉で見せた強い相手に滅法弱いトランプ流のTACO外交では成果は期待薄です。そして来年5月まで任期のあるFRBパウエル議長の後任指名の前倒しを公言しています*4。これ第二次安倍政権で日銀白河総裁に利下げを迫り、更に黒田元財務官の後任指名を示唆して圧をかけたことを模倣したもののようですが、仮にそれでパウエル議長に圧をかけても市場のトリプル安で無力化されるTACO相場になるだけじゃないでしょうか。学習能力にバグがあります。

そもそも蛸は軟体動物一の知性の持ち主で、極めて学習能力が高いのですが*5、TACOの学習能力はかなり残念なもののようです。それでも執着は強いから第一次政権でスタッフに足を引っ張られた記憶からイエスマンで固めて強引に事を成し遂げようとしております。しかしうまくいかずあれほどの蜜月ぶりだったテスラのマスク氏とも仲違いして罵り合うことに。とはいえ並外れたエゴイスト同士ですから驚きはありませんが。そしてマスク氏はEVやAI規制でいいとこ取りを狙っていたようですが、世界で拡がる不買運動でそれどころじゃなくなったってことでしょう*6。そしてバイデン政権でも踏み込まなかったAI規制をトランプ政権で行う可能性はDeepSeekショック*7で高まっています。

DeepSeekに関しては8964とかのセンシティブな問いに答えられなかったのが、答えられるようになったと言われております。DeepSeekがオープンソースで開発されたことで、中国国内のクラウドでは検閲で規制されていたけれど、国外クラウド上で使えば規制されないから学習できたということのようです。つまりDeepSeekはオープンソース故に結構自由な使い方ができて、仮に規制をかけるにしても難しいところがあります。TACOの知性で対策できるかどうか。しかしあの手この手を繰り出す諦めの悪さは相当なものです*8。議会で審議中の内国歳入法899条で米国が不公正と見做す税制の国の企業や個人に課税するというもので、日本の消費税に当たる付加価値税型間接税が対象と考えられます。所謂国境調整としての輸出還付金を不正な補助金と見做すということですね。関税で成果をげられないから次の手ということでTACOなりの学習を重ねてはいます(褒めてませんが^_^;)。

一方の日本もTACOを笑えません。例えばこんなニュース。

縮む建設業、工事さばけず 未完了が15兆円超え過去最大 - 日本経済新聞
これ今までも散々話題にしてきましたが*9、こうなることはわかっていたことです。このことを示唆するニュースとして先月22日の山手線の架線事故*10です。山手線ではE235系の一部編成に架線監視用のカメラを搭載して営業運転中にデータ収集して保守工事のスケジュールを決めたりしている訳ですが、新橋駅付近の外回り線での断線ということで、京浜党y北専との並走区間で特徴的なダブルカテナリー式架線の区間で、しかも補助張架線の断線ということで、カメラの監視対象ではなかったことで発見が遅れ、夜になって不自然な火花を車掌が確認して異常が見つかったものです。

結果的に山手線の50編成のうち21編成でパンタグラフの曲がりが確認され、補修が間に合わず翌23日の始発から半日ほど運休の憂き目となりました。現任は補修時の施工不良で、委託業者が指定した器具を使わずに施工した結果、電気抵抗熱で断線したことが判明しました*11。JR東日本の監理監督責任は免れませんが、ダブルカテナリー式という特殊な架線構造で補助吊架線で大電流を扱う構造が仇となった訳ですが、委託業者側がこうした特殊性を認識していたのかどうか。人手不足で技術継承がうまくいっていない可能性はあります。また首都圏JRの弱点と言えるDC1.5kv饋電の大電流問題も再三取り上げてきました*12。こうしたトラブルを防がないとATACS*13のような自動運転技術も使えません。知性を発揮して解決してほしいところです。

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Sunday, June 01, 2025

DOGEで間抜けなTACOだけど

MAGAを信じて突き進むトランプ政権。その結果米長期金利は上昇し、10年債と30年債の金利差が拡大しイールドカーブの傾きが大きくなっております*1。株高と矛盾した動きですが、トランプ関税を巡る先行きの不透明感をリスクとして市場が織り込み始めたものです。特に海外勢の長期債応札が減っており、ただでさえ価格下落で海外勢の売りを誘ったのは全農の神*2で指摘した通りですが、米議会はトランプ減税を盛り込んだ予算案を通して財政拡大に動き、関税で税収を増やし政府効率化省(DOGE)の歳出カットで均衡させると息巻くものの、債券市場の異変で国別関税は執行を猶予して日和って見せてTACO(Torump is Always Chicken Over=トランプはいつも怖気づいて終わる)と揶揄されて市場に織り込まれています。米国債大量保有する日本政府もヤバいかな?

その「全農の神」ですが、米国債売りは外債投資で大穴開けて年度末に向けて損切りしたから米政府からも睨まれたんですが、売却は年度末に終えていて米国債下落時には売っていなかったので濡れ衣ではありますが、損切りで自己資本を棄損した結果、全国の農協に追加出資を仰ぐ羽目になりました。しかしそもそも経済事業でカツカツの農協にそんな余裕あるのか?という疑問も去年の夏の令和のコメ騒動*3でコメ価格が急騰した結果、コメ集荷業者としての農協は大儲けできている訳です。しかしその儲けは農家にはあまり還元されず農林中金の外債投資で溶かした穴埋めに使われる訳で、コメ価格の上昇がコメ増産に繋がらない現実になっている訳です。

そしてやっと重い腰を上げて備蓄米放出を決めた日本政府ですが、買い戻し条件付きの入札で、事実上農協以外は手を出しにくい状況で9割が農協が落札しており、減反政策の結果農協ルートのサプライチェーンはさび付いて小売店に届かない*4。そして買い戻し条件撤廃などで備蓄米放出は続くものの「もらったコメが売るほどある」農水大臣が更迭されて小泉新農相の下で備蓄米放出の方法が変わって古いコメを安値で早く届くよう方針転換で謂わば安い指値の随意契約で集荷業者や卸を通さずに放出したのが今回です*5。

尚、精米のネックは相変わらずで問屋の精米機は取り合い状態で、農協ルートに流れた備蓄米の流通が滞る一方、今回の随意契約米は早くも店頭に並び始め、しかも安値で高値入札した農協は既存の卸ルート以外のルートを開拓しても店頭にはなかなか届かず、結局農協ルートのさび付いた現実を垣間見せました*6。故に故意の買占めや売り惜しみが鋼管謂われますが、実はもっと深刻なコメ産業の衰退の現実があります。謂わばジャパニーズラストベルト。

で、今回の随意契約ではネット通販事業者に門戸が開かれましたがJR東日本も応募しています*7。新幹線の「はこピュン」で運び6月中旬には東京駅と上野駅で販売会を開催予定ということで、コロナ前の95%止まりの運輸業収入を新事業で支える一環ではありますが、果たして成果や如何に?

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Saturday, May 24, 2025

ア・イ・シ・テ・ルのサイン

時事ネタは売るほどある*1けど今回はスルーします。おコメを買ったことはありますが*2。

最近気づいたんですが、ポンピングブレーキしてるクルマを見かけなくなった気がします。私の年代だと教習所で口すっぱで言われたポンピングブレーキですが、最近は教えているのでしょうか。ポンピングブレーキとは減速や停止のときのブレーキ操作でブレーキペダルをリズミカルに数回に分けて踏むことで、ブレーキが車輪のドラムやディスクにブレーキシューを押し付けて車輪の回転の運動エネルギーを摩擦で熱に変換して待機中に熱を放散することで制動力を得る仕組みですが、多用すると熱放散が間に合わずに過熱して制動力が低下する所謂フェード現象を回避する意味があります。加えて過熱によるブレーキオイルが気化して油圧伝達ができなくなるべーハーロック現象になればほぼノーブレーキ状態になる危険もあり、実際それらが疑われる事故は今も起きています*3。

とはいえクルマのブレーキ性能も昔に比べて改善されていることも確かで、大型バス/トラックでは元々エンジンブレーキの強力なディーゼルエンジンですし、真空ブレーキが下り勾配の抑速ブレーキ的な使い方もできますし、さらに強力なリターダなどの補助ブレーキ装置を搭載したものもあります。また大型車ではエアブレーキが主流でべーハーロックも無縁です。そして乗用車でも電動車は回生ブレーキが使えるので摩擦ブレーキの負担は減っているとは言えます。故にフェード現象の心配は減ったとも言えますが、ポンピングブレーキの効用はそれに留まらないものがあります。

一段ブレーキで強いブレーキをかけるとスリップの可能性があり、路面状況やタイヤの摩耗度によっては危険なケースもありますが、ポンピングだと断続的に強めのブレーキをかけることでスリップを回避する所謂再粘着を図ることでトータルの制動距離を縮めることも可能です。通常ブレーキ時でもソフトタッチの断続で徐々に減速することで乗員や積み荷へのストレスを減らせ、ブレーキシューの摩耗も減らせます。他にも意外な効用があります。

最近気づいたのは、後ろから煽られたときに、チョンチョンと軽くブレーキングすると高い確率で後続車が車間を空けます。先行車のブレーキランプに反応してブレーキを踏むのでしょう。西成活裕教授の名著*4で解明した自然渋滞のメカニズムは、先行車のブレーキランプに反応して後続車がブレーキを踏み、それが後ろへ伝搬する連鎖反応で団子状態になるということですね。歌の文句じゃないけれど「ア・イ・シ・テ・ルのサイン」が後方へ情報として伝わる訳です。回避策は先行車のブレーキに反応しなくて済むバッファとしての車間を取ること(40m)も示されています。これ鉄道のクロージングイン(移動閉そく)の原理じゃないかと^_^;。てことで広く共有したい興味深い記事があります。

「これが日本の鉄道技術か…」海外も注目するJR東日本の「信号機不要」の制御システムとは | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン
ATACSについては過去のも取り上げてますが*5、JR東日本が地道な開発を続けた結果、ほぼ開発目標をクリアでき、試験を続けていた仙石線への導入を皮切りに首都圏の埼京線への導入に続いていよいよ山手線と京浜東北線への導入を決めました。山手線向けはさらに高度化されたドライバレスシステムを目指してます。またコストダウンの観点から携帯電話の公衆回線を用いた簡易システムも開発の視野に入っているようで、地方線区への展開もあり得ます。地方線区ではJR九州の香椎線で既にATACSではない別のシステムが実装されてますが、JR東日本が狙うのは日本発の世界標準ということで、Felicaシステムを利用したSuicaが挫折気味なだけに、JR東日本にとっては捲土重来になるかもしれません。楽しみです。

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Tuesday, May 06, 2025

雷都の晴れ間のライトライン

GW真っ只中ながら人出の多い観光地(地元がそうですが)へ行く気にもなれず、それならばライトラインの現状を見てみるかと久々に宇都宮へ出かけました。いろいろ発見がありましたが、その前に前エントリー*1関連ニュース。

説明しない厚労省 SNS炎上、年金底上げ策の削除招く - 日本経済新聞
消費税減税を巡る立憲民主党の迷走*2に似た状況ですが、このままでは氷河期世代の基礎年金実質30%減額となることから見直しが検討されたものの、制度を理解しない非難によるSNS炎上で自民党内からの批判もあり撤回ということで、同世代を1700万票の票数でしか見ていない政治が不作為を生じさせています。

で、本題。昨年3月にスピードアップされたライトラインで併用軌道区間50km/h専用軌道*3区間70km/hと謳われておりましたが、乗車時の体感では70km/hは出ていない感じで、また列車間隔を制御する閉そく信号機も見当たらないところから、流石に目視運転では70㎞/hは無理ということでしょう。HU300形の走行安定性の問題もあるかもしれません。そして開業直後の訪問時には気づきませんでしたが、副本線のある平石とグリーンスタジアム前で軌道に地上子が設置されていて、おそらく後付けなのでしょう。推測ですがおそらく快速運転に備えた列車選別装置で、先行の各停の通過を検知して副本線側に進路設定し、副本線の地上子で入線を検知して本線側に進路設定して快速を通すのでしょう。快速出発後、後続の各停はフランジ割出しで進路を作形成し、一定時間後に自動復帰するように設定されているとして、最小限の設備追加で快速運転が可能です。目視運転を基本としつつ朝の2本だけの快速運転ですから、鉄道並みの保安装置設置よりもリーズナブルな対応と言えます。

バスとの結節の実態も知りたいところで、休日は参考にならないかもしれませんが、芳賀工業団地管理センター前で降りたところ、もう1人降りてバス乗り場へ向かう人がいて、横断歩道を2度渡るためタイムラグはあるものの、その人はバス乗り場に併設された待合室へ入りました。バスポールの時刻表を確認しつつ電停へ戻るときにも電停からバス乗り場へ向かう人がいて、それなりに結節点として機能していることはわかります。時刻表で確認した限りでは、本数は少ないものの茂木方面へ向かうバスもあり、真岡鉄道とセットで行程を組むのも一興です。同様の結節点は清原地区市民センター前と宇都宮大学陽東キャンパス(ベルモール前)が案内されてますが、それぞれバスの本数の少なさはあるものの実態はどうなのか、興味は尽きません。ちなみに駅へ戻るときに数少ない並行路線のバスが並走してパッと見席が埋まる程度の乗車が確認できました。関東自動車の旧年式車でしたが、駅直通便の需要も根強いのでしょう。

休日ということもあり、IC乗車券を持たない乗客も多数いて、降車の多い停留所では最前部ドアで現金支払いに時間がかかっていました。この辺は定時運行を妨げるほどではないようですが、交通信号に引っかかる機会が増えてしまうことは避けられないようで、実際そういう場面も見られました。とはいえ乗客が定着したことは間違いないようで、GW中ということもあり、家族連れの利用が目立ちましたが、家族そろって現金払いとかも見られました。ともかく盛業であることは間違いありません。

また渋滞解消という政策目標の実現も実証データが示されました*4。宇都宮大学などの調査結果では車利用が70%から62%へ8%減で、率の話ですがザックリ実数でも1割程度は減ったと見られます。交通量の1割減は大抵の渋滞が解消できる水準ですから効果はあったということです。但しだからLRT整備は大成功と結論付けるのはどうでしょうか。着手後の見直しや工事の遅れで事業費が膨らんで費用便益比(B/C比)が悪化したこともありますし、同等の渋滞解消策としての道路拡幅やバイパス整備の場合との比較でどうだったかこそ問われるべき問題です。また渋滞を嫌ったり、時刻を確認しないと利用しづらいバス利用と比べてほぼ定時で頻繁運行される都市型公共交通による需要誘発効果もありますので、それが母数を増やして車利用率を下げた要素もあります。これは宇大等の調査でも言及されているようですが、単純な数値比較では見えない部分があるということは言えます。但し外出の誘発は消費に繋がりますし、ウェルビーイングの観点からも望ましいことでもあります。単純な数値比較に陥りやすいB/C比の議論の戒めとしたいところです*5。そして懸案の西側延伸も動き出しました。

宇都宮LRT、大通り1車線は自動車乗り入れ禁止への布石 - 日本経済新聞
地域限定記事且つ会員限定記事ですが、全文を読むことをお勧めします。キモは現状3車線の大通りの1車線化で、その為に南北の並行道路の拡幅による迂回路整備で一般車を迂回させることにあります。3車線の1車線化は批判を呼ぶことになりますが、工事のために前倒しで実施して、中央車線を軌道にして左側車線はバス停や貨物車荷捌きレーンに充てて1車線化して工事スペースを生みつつ一般ドライバーを慣れさせる狙いもあります。大通り区間は混雑対策で軌道中央の島式ホームでホーム幅を確保して車いすやベビーカー利用にも配慮します。これは東側で問題になった混雑時のホームの手狭さの反省と共に、圧倒的に集積度が高い西側では、停留所間隔も短くして分散を図ると共に乗客の安全確保にもなるということですね。そしてその先には国内では前例のないトランジットモールの実装の先駆けという狙いもあります。そしてほぼ全区間道路併設の併用軌道で東側の鬼怒川橋梁前後の専用軌道区間のような用地買収も不要で土木工事上のネックもほぼ無い*6ことから、今年度に決めて26年着工で30年開業はほぼ可能という展望です。しかし課題はあります。

詳細は省きますがまず西口停留所の混雑対策が不十分*7で見直しが避けられないことがあります。計画見直しの結果事業費が上振れしたり手続きが遅れたりすれば東側の鬼怒川前後区間の轍を踏む可能性があります。また資材費や人件費の高騰による建設費の上振れもあり、400億円とされた見積りが600億円超と1.5倍以上になる可能性もあります*8。西口混雑対策とも絡んで手続き上西側分断整備の可能性も示唆されています。但しその場合新潟トランシス製HU300形の弱点とされる高価な車両価格や混雑対策の困難さや走行安定性の不安*9などから国産車両の導入が検討されているとか*10。そして大通りトランジットモールによる中心市街地活性化の一方で抱える中心市街地のレガシー東武百貨店の扱いと東武宇都宮線*11。

というわけで、帰路は西口バスターミナルから東武駅前までバス移動して東武宇都宮線ワンマン列車で南栗橋からスカイツリーラインのルートを辿りました。駅西側は東武鉄道のバス事業撤退があり東野交通の関東自動車への経営統合とライトライン開業に絡むJRバス関東の実質的撤退で事実上駅西側は関東自動車の独占エリアですが、関東自動車の新旧カラーにEV専用カラーに旧東野交通カラーとカラフル。また前後扉のツーステップ車から最新ノンステップ車やEVまでとバリエーション豊富でバスファンにもお勧めです。西側延伸で大通りのバス3割減が求められる一方、東側同様バス結節点の整備も構想されており、今後の変化も大きいという意味でも注目されます。

東武駅前から東武宇都宮駅までは100mほど離れており、ターミナルデパートの東武百貨店もお世辞にも活気あると言えず、売り場も典型的地方百貨店のような冴えないもので、仮に大通りトランジットモールが実現してもタイムスリップしたような一画として温存される公算大です。西側には小規模ながらバスターミナルがありますが、発着便は少なく人気のない空間になっています。ライトラインと東武宇都宮線の相互直通も示唆されますが、その場合大通りと東武宇都宮駅を繋ぐ軌道の整備と共に東武百貨店の建て替えは必至ですし、盛土上の東武宇都宮線との接続も課題ですし、架線電圧がDC1.5kvで750vのライトラインとの直通には複電圧車が必要になりますが、HU300形での対応は難しいところですし、まして走行安定性に不安を抱えるから尚更です。日比谷線直通車転用の20000系ワンマン列車に揺られながらつらつら思うGWでした。

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Friday, May 02, 2025

氷河期世代をネタにする票餓鬼政治

一応政府が2022年以来続けている就職氷河期世代支援の続きってことらしいけど、6月の骨太の方針に盛り込むということで参院選を睨んだ動きと見ることができます。

氷河期世代支援、就労・老後対策など3本柱 首相議長の会議新設 - 日本経済新聞
重点政策としてリスキリング支援、農業・建設業、
物流業の就労拡大、公務員や教師の採用拡大が打ち出されたということですが、就労拡大の3業種は人手不足業種だし、公務員や教師も志望者が減っているということで、人手不足分野へのマッチングが意識されています。

1973~82年生まれで新卒でバブル崩壊や金融危機による企業の採用手控えの影響を受けた世代で1700万人いるとされており、加えて小泉改革による非正規雇用拡大や正規雇用者も日経連のベアゼロ春闘方針で定期昇給以外の賃上げはなく、2004年の100年安心の年金改革で保険料の天引きが増え、企業の重荷だった団塊世代のリタイアで浮いた資金も少子化による新卒採用の売り手市場化で初任給が引き上げられ、それでも足りずに勤続年数による賃金カーブのフラット化、つまり定期昇給率の悪化に加えて後期高齢者医療保険制度で健康保険料の値上げ、更に大量採用されたバブル世代対策として企業が採用した役職定年制度は氷河期世代の正規雇用者にも適用されます。そして賃金が上がらないから報酬比例の保険料も少なく、受給時の低年金問題にも直面します。そして昨年の年金財政検証を受けた年金改革案でおかしなことが起きています。

年金なき氷河期世代の支援は形骸だ 老後の理不尽こそ対策を - 日本経済新聞
年金制度はいろいろ複雑なので細かい説明は端折りますが、2004年の年金改革でマクロ経済スライドと称する年金給付調整の制度が導入され「100年安心」が謳われましたが、実態は支給減額を認めなかったため低インフレで調整が進まず足踏みし、制度見直しで減額され、更にインフレに転じてやっと調整が進んだものの、基礎年金部分と報酬比例部分で調整の進み方の違いが出て、報酬比例部分は非正規雇用者の加入拡大で改善が進んだ一方、合法違法を問わず未納率が高い基礎年金部分では進まず、その解決策として報酬比例部分から基礎年金部分への会計補助をする案が厚労省で検討されましたが、企業や現役世代の反対で盛り込まれなくなりました。選挙を意識した結果と見られます。

誤解があるのは厚生年金や共済年金なども含めて基礎年金部分には支給額に国の財政資金による補助がある点で、基礎年金の強化は報酬比例部分の支給調整を経ても支給総額を増やすことになり、その恩恵はこれから支給年齢を迎える現役世代にあり、支給調整は既受給世代が負うということです。つまり氷河期世代の低年金問題に一定の歯止めをかけられる訳です。同様のロジックで言えば現在保険料負担のない第3号被保険者制度廃止による保険料徴収も効果がありますし、この場合は保険料自体が増えますから更に効果が大きいのですが、何れも年金改革案から外されてます。そして新NISAに若者が関心を示すのも老後不安からと言われますから、年金制度の安定は安心感を高めて若者の消費拡大に繋がります。これ老後2000万円問題を指摘して批判を浴びて撤回された金融庁レポートから続く問題です。

制度の複雑さが政治を通して歪められているという意味では前エントリー*1に通じる問題ですが、野党も氷河期世代対策を打ち出していますが、大事なのは世代論ではないということです。上記のようにこの世代に矛盾が集積してますが、年金問題に限らず非正規雇用問題、新卒高賃金の傍ら上がらない賃金、正規雇用でも保証されない未来、高額療養費支援制度*2で露呈した医療保険制度の矛盾、介護不安など、何れも全世代に関わる問題なのに、世代論に絡めとられると対立を助長してしまいます。

個人的な体験ですが、両親が同時に寝たきりになって追い詰められました。父母共に入院し、父は長期入院後そのまま死亡し、母は要介護状態で退院し、自宅で介護サービスを受けながら暫く過ごしたのち、脳梗塞で再入院して死亡という経過でした。その間の家族介護が仕事の制約要因にはなりましたが、父が高額年金を受給し、母も父の死後の寡婦年金ででそこそこの額を受給していたので、医療費や介護サービス利用で資金的な持ち出し無しにできて助かりました。年金は単純な現役世代から高齢世代への贈与ではなく現役世代の高齢者扶養の回避になりますし、医療にしろ介護にしろ、制度が整っていたから利用することで負担を軽減できました。社会保障はこうした包摂性こそが重要です。

安倍政権時代に全世代型社会保障と称して少子化対策として子育て世帯への支援をしたり、石破政権でも維新の高校無償化案を呑んで予算通したりしてますが、何れも限られた予算を特定の利害関係者に配るだけで寧ろ包摂性を損なっています。減税ドミノとも関連しますが、財源が示されない減税が寧ろ国民を苦しめますが、所得税の累進性強化や法人税強化が言われており、何れにしても法改正を経なければ実現しませんから来年度以降の話です。特に義務的経費である社会保障財源は安定財源である必要があります。一つ可能性がるのが金融所得課税強化です。富裕層ほど金融資産を多く保有し、源泉分離課税で21.5%の税率で恩恵を受けていますが、これを25~30%程度に上げることは検討されてよいですし、実際岸田氏も石破氏も総裁選では主張しながら政権に就いたら引っ込めてますが、新NISAで非課税枠が拡充されているし総合課税を選択することもできるので、中間層への影響も軽減できます*3。

氷河期世代問題は国鉄改革絡みで国鉄末期の採用手控えの影響がJR化後の世代分布のアンバランスから技術継承を支障して事故やトラブルに繋がったり、労働組合運動の連続性を阻害したりという弊害*4を生みましたが、これを他山の石としなかった日本の政府や企業の不作為が氷河期世代をもたらしたとも言えます。年金問題でも国鉄時代の共済年金から民営化後の厚生年金への移行に伴う職域加算の企業年金への移行に伴う国鉄時代の積立不足をJR負担にすることで揉めました*5。これらも含めて行き当たりばったりで問題先送りで窮地にといういつまでも改まらないこの国の病弊は直さなければなりません。

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Saturday, April 19, 2025

大転け・完敗万博

大阪・関西万博が始まりましたが、予想通りというか、泥縄が露呈しています。

大阪万博、地下鉄は何度も入場規制 バスは予約優先 - 日本経済新聞
万博会場の夢洲はごみ埋め立て地の人工島で、アクセス手段が限られており、不安視されていました。地下鉄中央線夢洲駅と東ゲートが直結されており、メインルートとなるほか、JR桜島線桜島駅から路線バスタイプのシャトルバスで向かうサブルートの他、主要駅からの観光バスタイプのシャトルバスや指定駐車場からのシャトルバスで向かうパークアンドライドなど多様なアクセス手段を用意していましたが、実際は地下鉄中央線に見学客が集中し、JR大阪環状線乗換駅の弁天町の地下鉄駅で混雑から改札が入場規制されるなどで見学客の遅延が生じ、また東ゲートの入場ゲートのセキュリテイィチェックが手間取り、携帯基地局のキャパオーバーでチケットのQRコードがスマホに表示されないトラブルもあり、完全予約制で混雑のない万博を標榜したことが、2時間遅れで予約時間に間に合わないとか、帰宅時間の夢洲駅の混雑で行列で1時間待ちで「入るには入れず帰るに帰れない」と不満。加えて悪天候で雨宿りする場所がない、巨大リンクの大屋根も風雨の吹き込みでびしょ濡れ。バスアクセス中心の西ゲートではシャトルバスを予約制にしたのに、万博チケットと別の交通系サイトの目立たないメニュー表示でそもそも辿り着く人も少なく予約はガラ空きなのに、帰宅希望の予約外客が殺到して予約客優先のオペレーションで大混乱助長といった具合です。そして道路アクセスも橋と海底トンネルの2ルートだけで、しかもシャトルバスの優先運行故に事実上タクシーが使えない。地場のタクシー業界から改善を求められているのに対応せずという具合です。

アクセス交通の混乱は、実は4月6日のテストランでも見られたことで、交通アクセスの弱点は明らかでした*1。テストランでは予約より早く来た人が多く、ゲートの混雑による一時滞留で夢洲駅の混雑が課題とされましたが、テストラン参加が5万人の一方初日13日の入場者数13万人で倍以上とはいえ、半年の期間中2800万人の入場者数を達成しなければ赤字確定で、1日平均15万人の入場が必要ですが、当然日のよって変動がありますから、少なくとも倍の30万人の入場も視野に入れなければならない訳です。初日の入場ゲートの混乱の解消から言えばかなりハードルは高いと言えます。初日の弁天町駅の入場制限のように思わぬ場所に混乱が生じる可能性もありますし、地下鉄中央線が事故等で運休した場合の混乱もあり得ます。そして初日の大雨のような悪天候もありますし、これから暑くなるシーズンで会場に日よけが乏しく熱中症対策が難しいこと*2もまた問題です。そしてトイレのトラブルやメタンガス問題などまかり間違えば大惨事になりかねない問題*3を抱え、始まったばかりなのにすでに終わっている-_-;。そもそも夢洲開発はカジノ構想ありき*3でタイムスケジュールから2025年の大阪万博開催というタイトなスケジュール*4になった訳です。大量の公費投入でカジノ企業を誘致する大阪維新の姿勢はレントシーキングのカモフラージュでもあります。

比較される1970年の大阪万博と何が違うのかですが、時代背景と会場の立地と交通アクセスの違いがかなりあります。70年万博の会場となった千里丘陵は大阪の市街地にほど近い山林地帯で未利用の土地が多かったし、広さもあったから、白紙に近い状態で開発が計画されました。御堂筋を北へ延ばした新御堂筋と大阪郊外の環状道路の中央環状線の整備に伴い、新御堂筋に付帯する地下鉄1号線(御堂筋線)の延伸が同時施工で整備が計画されましたが、市営故に大阪市境をちょっと超えた吹田市江坂までが都市計画に盛り込まれたものの、その先は大阪府による千里ニュータウン計画ということで、府市の管轄の壁があったことは確かですが、同時に京阪神急行電鉄(現阪急電鉄)の営業エリアで阪急バスが京都線や千里線などの鉄道駅へのフィーダー輸送を担っていました。そこへ新御堂筋が通り、地下鉄が伸びてくるとなると穏やかではいられません。そこで阪急は大阪府や関連自治他の出資を仰いで北大阪急行電鉄(北急)を立ち上げ、御堂筋線と直通する鉄道の権益を得た訳です。所謂第三セクターの走りですが、自治体の出資は従であり阪急グループ色の強い企業です。

一方で大阪市内の交通を巡る熾烈な争いがあって、京阪電気鉄道がターミナルの天満橋から淀屋橋へ延伸して都心乗入れの先鞭をつけましたが、大阪市内の鉄道事業は大阪市が地下鉄網を整備して私鉄の進出を抑えようとする一方、在阪各社は都心進出の機会を窺っていました。近鉄は上本町から難波への延伸、阪神は戦前の急行線複々線化構想の落とし子の伝法線を難波へ延伸して近鉄との直通を模索し、千鳥橋、西九条と小刻みに開業させて西大阪線に改称という動きをしました。阪急は新京阪線のターミナルだった天神橋から堺筋を南下する構想を持っていましたが、大阪市の地下鉄6号線(堺筋線)、南海電気鉄道も堺筋を北上する構想を持っていて競願状態で当時の運輸省鉄道局は3社局で協議して結論を得るまで免許交付しないという立場を取り、協議の結果天神橋ー動物園前間を大阪市が整備し、阪急と南海が相互直通するということでまとまり、とりあえず万博関連事業として万博会場近傍を通る阪急千里線との相互直通を優先して軌間4ft8in・1/2(1,435㎜)の阪急に合わせて整備されることになりました。そして北急を中央環状線に併設される中国自動車道を対面通行2車線の暫定開通として4車線化の用地を利用して線路を敷いて万国博中央口までの期間限定の会場線に利用し、会場西ゲート近くを通る阪急千里線に臨時駅の万国博西口駅を設置することになり、鉄道2路線でアクセスが確保されていたことで、混雑を分散できた訳です。結果的に万博輸送を阪急は独占したことになります。そして大阪のミナミに対するキタの比較優位が確立します。

また新御堂筋と中央環状線の整備でシャトルバスによる広域アクセスが可能になり、特に国鉄茨木駅・阪急茨木市駅からの中央環状線のシャトルバスはバス事業で阪急より優勢な京阪バスや当時直営の近鉄バスが参入し、独占エリアとはいえ阪急単独でのシャトルバス運行は無理だったけれど、万博関連で協業ができた訳です。今回の大阪・関西万博では市営バス改め大阪バスと京阪バスが特に力を入れているようですが、ドライバー不足のご時世で交野市の京阪バス撤退という事態もあり、関西でも批判を浴びています。公費を投入したイベントで不便になることは許容されることではありません。

70年万博関連では近鉄難波線と鳥羽線の開業、三重電気鉄道由来の志摩線の改軌と万博輸送に直接関わらなかった近鉄が集中投資で経営基盤を強化しました。並行する地下鉄5号線(千日前線)とは同時施工で並行して整備されましたが、万博に伴う外国人観光客来阪対策で通りました。一方そうした流れに乗れなかった阪神西大阪線の延伸は地下鉄5号線との競合故に進まずなんば線として結実するのに長時間を要しましたし、南海は中央環状線アクセスの阪神高速松原線と同時整備された地下鉄2号線(谷町線)の南進に伴って大阪軌道線の平野線が廃止され、堺筋線の天下茶屋延伸で天王寺支援が廃止、更に地下鉄御堂筋線のなかもず越境延伸とエリアを侵食されています。70年万博の経済効果は均等ではなかったのです。その意味で今回の大阪・関西万博の経済効果3兆円は鵜呑みにできません。また関西のGDPシェアは70年万博の100.78%をピークに低下しており、イベント依存の限界でもあります*5。

南海に関しては関西空港連絡輸送で外国人見学客の渡航需要を受けられるとはいえ、直接的なメリットはあまりなく、やはり万博には縁が無いのか?なにわ筋線が開業していれば南海も恩恵があったかもしれませんが、やっと事業着手の段階ですから間に合う筈もありません。なにわ筋線の建設には実は南海も関わってまして、大阪市の市営地下鉄民営化構想に連動して大阪府出資の第三セクターの大阪府都市開発(OTK)の持ち分売却を行いOTKの事業部門だった泉北高速鉄道の売却で揉めて最後は南海電気鉄道に売却されました*6。そしてその売却益はなにわ筋線の整備主体となる関西高速鉄道の資本増強に回すことになっていたので、間に合っていれば南海の泉北線買い取りの資金回収が早まったことになります。これ70年万博で北急が万博輸送対応で大量発注した大阪市営地下鉄規格の電車を、万博終了後に大阪市に売却して元を取って資本費負担を軽減した結果低運賃を維持して最大限メリットを享受したことと対照的です。またなにわ筋線絡みでは京阪中之島線がなにわ筋線開業を睨んだ事業ですし、阪急のなにわ筋連絡線(大阪~十三)と新大阪連絡線(十三~新大阪)構想もありますが*7、後者は南海との直通運転を構想しながら具体的な協議が行われておらず、仮に梯子を外されれば堺筋線の二の舞になります。という訳で欲得絡みの関西鉄道業界事情は比較的摩擦の少ない首都圏の業界事情と大きく異なります。中之島線にしろなにわ筋線にしろ鉄道整備にも公費が投入される中で、公正さが担保されているか?維新絡みではいろいろあり過ぎて疑問を禁じ得ません。

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Saturday, April 05, 2025

MAGAのリアル

MAGA不思議なアメリカが本格始動しました。

アメリカ公表の「相互関税」全リスト 日本24%、中国34% - 日本経済新聞
とりあえず各国一律10%関税が始まり。国別の上乗せは9日からとしてますが、その間の各国の反応を見る為です。早速中国とカナダは報復関税を課すし、EUも米国内投資の停止指令を出して対抗する姿勢を示す一方、メキシコは様子見と国毎に対応が分かれます。日本はと言えば除外を懇願するという対応ですが、これ一番まずい対応です。理由を以下に述べます。

そもそも相互関税というのは二国間で協調して相互に関税を下げる場合の用語法ですが、今回はアメリカが一方的に関税を課す訳ですから相互関税と呼ぶのは誤りです。しかも各国の関税率は10%の最低ラインを前提に各国の対米貿易状況を「貿易赤字高÷輸入高×100÷2」という雑な数式で導き出しているものです。つまり輸入に占める貿易赤字の百分率の半分ということで、輸入超過分はアメリカが搾取されたものと見做しつつ、半分にまけてやるという意味です。つまり二国間交渉の土俵をアメリカが用意している訳で、それに乗れば確実に負けます。

また米中対立でチャイナプラスワンとして投資が集中し漁夫の利を得た東南アジアのベトナムやカンボジアの関税率が高い訳です。関税回避の為のサプライチェーン見直しを迂回貿易と捉えている訳で、大ぐくりで言えばターゲットは中国ということになります。しかし日本企業の多くが中国の拠点を東南アジアに移しつつある中で出口を塞がれたということでもあります。仮に日本だけ除外してもらっても日本企業は救えません。報道によると日産が関税回避で国内生産の米国内移管を検討というニュースもあり、存亡の危機の日産には言い訳が立ち神風かも^_^;。とはいえ株は大変なことに。

NYダウ急落、2231ドル安 関税応酬で史上3番目下げ幅 - 日本経済新聞
新聞の株式欄がストップ安で真っ黒という見慣れない椿事ですが、冗談抜きに経済のブロック化で国際貿易縮小し大恐慌へ発展し、各国の対立激化で果ては世界大戦ということも心配した方が良さそうです。防衛費3%と言われなくて良かったとか、逆にディールのカードとして米製兵器買いますとか言っちゃまずいってことです。特にハイテク株の下げが目立ちますがDeepSeekショックで指摘したようにAI開発に資金突っ込み過ぎた結果のバブルが今回の関税騒動で剥落したとすれば、相場が戻る可能性は低いと言えます。

てことでMAGA勢の動きを止めるとすれば皮肉にも市場の圧力ということになりそうですが、トランプ政権の高官が「デドックス」と表現するようにMAGA勢はバイデン政権の政策の否定をテーマにしていて、政権移行初期の今なら不都合なことは全て前政権のせいにすることも可能と見ている訳です。安倍政権が「悪夢の民主党政権」と言ってデタラメやったことを見倣っている訳です。つまりアメリカは今後衰退する道に入る可能性が高い訳で、関税まけて欲しさに安易な譲歩はすべきではない訳です。同時に今回の関税問題は反対派を混乱させる情報戦の意味もあります。

そして株式以外の市場もいろいろ動いておりまして、株式市場との裁定で債券市場は上昇し金利低下しており、日米金利差も縮まって円高に振れました。所謂リスクオフ相場で高リスクの株式から低リスクの債券に式がシフトしてリスクオフの円高となっておりますが、この動きは早晩止まると見られます。米FRBにとっては関税はインフレを呼ぶことになりますから利下げが止まり、寧ろ利上げシフトすらあり得る一方、日銀は先行きの不透明感から利上げに動きにくくなります。加えて日銀ETFの含み損で財務が傷つき、踏み込んだ利上げがやりにくくなります。故に日米金利差は寧ろ拡大に向かうと考えられます。オマケですが年金運用のGPIFも含み損が発生してますから、去年の年金財政検証はやり直すべきです。

一方で原油価格は値下がりしており、これは関税発動前の駆け込みでOPEK+が増産した結果の値下がりで、輸入に頼る日本にとっては助かります。逆に値崩れでシェール増産が難しくなるアメリカにとっては誤算ですが、原油の値崩れは戦費調達をエネルギー輸出に頼るロシアを苦しめます。これでウクライナ停戦が実現するなら瓢箪から駒ですが、資源権益とバーターとなるウクライナの苦しみは続きます。それを間近に見るグリーンランド住民の反発は当然ながら、最大の在外米軍基地がグリーンランドにある以上、アメリカはNATOから抜けられないし、資源権益も欲しいから諦めないでしょう.故に米欧の対立は長期化する可能性があります。こう考えると日米同盟を前面に立てる日本政府の対応は危ういと言えます。

以下鉄ちゃん的蛇足。ストップ安で真っ黒な中で内需株、特に関税の影響を受けない鉄道株は寧ろ買われています。こういう点からも外需依存を減らして内需関連に投資をシフトすることで難局を回避することはもっと考えられた良いと言えます。但し生産年齢人口の減少下ですから、投資案件の選択は重要です。例えばこれはどうでしょう。

新空港線「蒲蒲線」、国が東急の構想認定 今夏にも具体案 - 日本経済新聞
蒲蒲線と呼ばれる新空港線事業を国が認可したもので、とりあえず第一期区間の矢口渡―京急蒲田間の1.7㎞の事業区間で。蒲田と京急蒲田の800mのミッシングリンク解消となりますが、事業費1000億円で京急蒲田駅地下の乗入れる形で当面乗換対応となります。故に北陸新幹線敦賀問題のような高低差乗換が発生することになります。

しかも空港利用客がガラガラ引いて乗換ですから相当なストレスとなります。とはいえ大鳥居までの第二期の事業化は、軌間や車両サイズや保安装置の違いがある上、そもそも京急は乗り気ではなくめどは立っておらず、この点も北陸新幹線に似ます。米原ルートの東海道新幹線乗り入れより厄介かも。加えて現状で羽田空港連絡輸送は需給面で余裕がある一方、JR東日本の羽田空港アクセス線も事業化されており、供給過剰が心配されます。そもそも羽田空港発着枠にも限りがありますし、成田空港も第三滑走路整備と共用時間帯の拡大で発着便数を増やすとされており、関連して京成電鉄が相互車庫拡張で空港連絡輸送強化を打ち出すなど、高度成長期さながらの需要追随型投資を競っていますが、果たして必要な投資なのか?

あと敦賀の乗換は未体験ですが、東京で追体験できそうなところとしては東京駅京葉線ホームや下北沢駅の小田急線急行ホームと京王井の頭線ホームとの乗換、東京メトロ日比谷線と都営大江戸線六本木駅といったところでしょうか。京急蒲田駅はどうなる?

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Saturday, March 22, 2025

答え合わせあれこれ part2

答え合わせあれこれの続編です。

関税がアメリカの農家直撃、綿花4年ぶり安値 トランプ氏「我慢を」 - 日本経済新聞
カナダ次期首相カーニー氏 トランプ氏に挑む「危機の男」 - 日本経済新聞
トランプ関税を巡る対決姿勢を中国とカナダが見せていることですが、トランプ大統領が単純に対米黒字の多い国を標的にした結果、敵対国のみならず同盟国も敵に回しました。そしてともに対決姿勢です。元々制裁関税が課されている中国の場合は追加関税なのでより負担が大きいし、問答無用で適用されるのに対して、同盟国のカナダには猶予期間を与えて交渉余地を残してはいますが、相応の見返りを求めてきます。それに対するカナダ政府の対応は英イングランド銀行総裁を務めた実務家のカーニー氏を首相に指名して報復関税も辞さずの姿勢を見せています。

EUと日本はそこまでの姿勢は見せていませんが、EUの場合はウクライナ問題が絡みますし、中国の輸出攻勢で域内産業が窮地にある点はアメリカと同じということもあり曖昧な対応ですが、バイデン時代の非課税枠を持ち出して例外扱いを狙う日本の姿勢は大甘です。とはいえ中国の米農最物報復関税では米農家が損失を受けると反発し、自動車や鉄鋼アルミの一律関税はテスラを含む米自動車メーカーも損失を被りますが、トランプ大統領は意に介さずです。

堅調米景気、関税で暗雲 トランプ氏「過渡期」発言波紋 - 日本経済新聞
トランプ関税で不利益を被るのは過度期の一時的な現象で我慢しろということですが、これで株価が下がったことも確かです。しかも従来米株価と連動していた欧州や日本の株価が逆に上がったりしています。明らかに黒字国から還流していたドル資金の動きが変化しています。またDeepSeekショックの後、低コストの蒸留方式の生成AIも先端半導体との組み合わせでパフォーマンスを高められるなら米国優位は揺るがないというロジックで買い戻されたエヌビディアなどの米テック株もここへきて変調、更にDOGEトップでやりたい放題のマスク氏への反発からテスラ車のボイコットによる販売不振や販売店への放火事件でテスラ株ダダ下がり。その結果がこのニュース。
テスラのマスク氏、放火や不買運動は「理不尽で異常」 - 日本経済新聞
放火などのテロ行為は問題ですが、それだけ恨みを買っていた結果です。しかし発言の趣旨は株を持っている従業員や投資家に向けた「株を売るな」という謂わば口先介入。part1 の「トランププット」が図らずも実現した形です。同時に米経済を痛めて何がやりたいのかという疑問も湧きます。まるでアリババの金融部門のアントの上場停止を命じ、ゼロコロナ政策で国内経済を困窮させた中国習近平政権と同じです。違いがあるとすれば中国は国有企業優先で民間企業を圧迫する一方、今のアメリカは民間の巨大企業が政府を乗っ取った形ですが、その結果民間経済を強権で圧迫しているのは同じです。世界を荒野に変えてそれでも俺らがチャンピオンと威張るつもりでしょうか。
北海道新幹線延伸遅れ JR北海道へ膨らむ政府支援、自立遠く - 日本経済新聞
最後に国内鉄ネタですが、JR北海道が掲げていた2031年度の単年度黒字転換の再建計画が北海道新幹線の工事遅れで狂いが生じています。在来線の存続困難路線と新幹線の並行在来線切り離しで身軽になって出直す筈が、並行在来線の切り離しが遅れる訳で、それを前提とした車両置き換え計画が見直しを余儀なくされますから、事実上仕切り直しを迫られますし、それを前提とした国の支援策も狂います。金利上昇で政府財政も厳しくなる一方、経営安定基金の運用益は増えることが期待できますが、それでどうにかなる問題でもありません。課題の並行在来線貨物問題も解決先送りは可能になりますが、人口減少が続く中で現状維持すら困難な中での再建計画見直しです。、民間任せでは解決困難な問題をどうするか。トランプ騒動を対岸の火事と見ずに他山の石として政府の役割を見直す機会です。

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Saturday, March 15, 2025

いしばしをたたいてわらう

いしばしをたたいてわたれのあとですが、大草原を期待してくださいwwwww^_^;。

東北新幹線、連結運転14日再開へ こまち号に電気異常か - 日本経済新聞
「わたれ」で取り上げたJR東日本はやぶさ/こまちの列車分離事故で、E6系の連結器解放テコを動かす電磁弁に走行中謎の不規則電流が見られ、それが原因ではないかということで、とりあえず固定金具でテコが動かないよう暫定対策を講じて連結運転を再開しました。3月15日のダイヤ改正前日というきわどいタイミングです。

謎の不規則電流というと赤字3Kで取り上げた1974年9月の新幹線品川事故の原因とされた意図せざる誘導電流の悪戯の可能性はあります。交流電気車の新幹線車両は当然トランスを積んでますし、モーターの磁場も強力ですし、その他多数の電子機器も搭載されてますし、ミニ新幹線規格のE6系故にタイトなぎ装など、誘導電流を起こす可能性はありますし、特定も困難が予想されますから、これで原因究明と対策が済んだことにはなりません。逆に金具で固定するという作業を現場に課すことになりますから、自動化が仇になったとも言えます。

気になるのが人口減少を先取りして省力化を睨んだ設備投資を前倒ししてますが、コロナ後の利用客が戻らない中で有利子負債を拡大している点で経営上の課題があります。DXがうまくいかない日本の行政や企業にも似てますし、有利子負債の拡大で利払いに窮した旧国鉄にも似ます。コロナ後の新幹線絶好調なJR東海がリニアで資金を溶かしているけど、JR東日本もちとヤバい局面です。てな答え合わせの後に本題です。

石破茂首相、自民党衆院1期生に商品券10万円 「政治資金規正法に抵触せず」 - 日本経済新聞
石破首相が3日に公邸で1年生議員と会食したときに10万円の商品券を配ったことが13日の朝日新聞のスクープで明らかになり、石破首相が夜の緊急会見に臨んだものですが、何とも気持ち悪いニュースです。明らかに与党内からのリークであり、石破おろしが始まったということですが、京都選出の西田参議院議員が総裁交代を迫ったり、ヘイト発言で物議を醸す杉田水脈前議員を参議院比例代表候補に選んだりといった動きがあり、所謂保守派と言われる裏金壺議員が裏で動いていることを思わせるニュースが先駆けて流れてますし、会見での石破首相の受け答えも記者に逆質問してまで合法であることを強調するということで、期待していた国民をがっかりさせてます。ちなみに西田議員は北陸新幹線の小浜京都ルートを手続きを無視して強行したり、事故が多い電動キックボードの解禁をしたりと、ろくでもないことばかりしています。

一方野党は石破首相は予算修正その他野党の主張を受け入れるなど与しやすいので、追及は主に都議選や参院選で劣勢が言われる与党サイドが強いという逆転現象も起きており、政局が一気に流動化しています。てことで、国民サイドから見れば醜い権力闘争が見られるレアな状況ですから、石破首相にはぜひ粘って与党保守派と争ってほしいところです。与党保守派からすれ棚ぼたの石破氏叩きの炎上作戦で笑いたいところでしょうけど、本当に最後に笑うのは国民かも。政局ドラマを楽しみましょう^_^;。

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Saturday, March 08, 2025

いしばしをたたいてわたれ

赤字3Kの掟?で分割民営化というドラスティックな改革が行われたJRですが、課題は尽きません。

東北新幹線でまた分離トラブル JR東日本、連結は当面取りやめ - 日本経済新聞
上記エントリーで取り上げたはやぶさ・こまちの列車分離が、半年弱で再発しました。いしばしをたたいてわたるで原因として走行中はロックされている筈の連結解放装置のスイッチ部に製造時に発生したと見られる金属片が付着していてそれが原因ではないかということで、加えて通常は使わないバックアップシステムとしての開放スイッチの使用を停止することで対応しましたが、同様の事故が再発したことで、原因がわからなくなりました。故に深刻で重大インシデントとして国の事故調査委員会が招集されて検討されることになりました。またJR東日本は原因究明と対策が済むまで連結運転を中止し、つばさは福島で、こまちは盛岡で打ち切って東北新幹線に乗り換える形で対応する方針を示しています。つまり新在直通を止めた訳です。

当然輸送力は落ちますし、乗客に負担をかけることになりますが、安全優先のためやむを得ないところです。また線路容量の問題もあるので連結せずに続行運転というのも無理ですし、安心してくださいのつばさE3系単独運転でのオーバーラン事故もあり、慎重を期したものと思われます。JR東日本ではこまち用E6系の電気系統に問題があると見ているようですが、原因究明には時間がかかる可能性もあります。しかし安全第一です。いしばしをたたいてわたれ

3Kの2つは社会保障関連ですが、政府管掌健保は47都道府県の広域連合組織の健保協会に丸投げ、国民年金は基礎年金制度で専業主婦を第3号被保険者とすることで、余裕のある厚生年金、共済年金からの会計補助で誤魔化すという形で根源的な改革を避けてきたものの、人口動態の変化で高齢化が進む一方、支える現役世代は減る一方というJ構造問題は放置できないところです。但し注意が必要なのは世代間扶助そのものが問題なのではなく、世代間対立を煽ることは、寧ろ解決を困難にします。それを踏まえてこのニュース。

高額療養費、引き上げ実施見送り 石破茂首相が表明 - 日本経済新聞
高額療養費制度は一般にはなじみが薄いかもしれませんが、ガンその他の難病の治療薬や治療法は高額なものが多く、必要でも患者の負担が大きいと治療を諦めることにもなりかねず、また医師としても患者に勧めにくいということも起きます。当事者には命に係わる問題なのに、例えば国民民主玉木代表が外国人に利用されるとかデマを飛ばしてましたが、そうした事実は確認されてません。

また高額療養費は高齢者ほど恩恵を受けるというのも間違いで、寧ろ若年性ガンのように現役世代ほど進行の早い疾病で、よく効くけれど高額な薬を使うことで治癒して社会復帰を助けるとすれば、現役世代こそ救われるし、高齢の両親を扶養している場合はやはり現役世代に負担がある訳で、こうした問題を高齢者排除や外国人排除を口実に叩くことは問題です。

高齢者ほどガンの進行も遅く、余命から高額な薬を使う動機も少ないし、寧ろ生活習慣病予防や苦痛を和らげる終末期医療などウェルビーイング重視の方向性で見れば高齢化による負担はある程度和らげられます。勿論それでも人口の多さから負担が増えるのは仕方がないところですが、そもそも現役世代の労働分配率の低下が問題の根本であって、産業構造の転換や税制による所得再分配などで解決すべき問題です。故に恒久減税を伴う基礎控除の見直しは寧ろ政策の幅を縮めてしまいますし、自公維で合意した高校無償化も寧ろ富裕層にメリットが偏るという意味で問題です。

高額療養費問題も患者団体が声を上げ野党や世論が反応して政府に見直しを迫りましたが、石破首相は一部見直しの上8月から実施の方針を崩さず、患者団体との面談も避けていたのですが、抗しきれずに見直しを決めました。但し夏の参議院選挙の与党改選議員から「闘えない」の声が出たことで面談に踏み切り見直しを約束した訳ですから、選挙が終わればしれっと見直されることも視野に入れておくべきでしょう。故に夏の参院選では与党を勝たせない方が良い訳です。故に敢えて申し上げます。

国民はいしばしをたたいてわたれ^_^;、

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