JR

Sunday, November 08, 2009

意外に可能な温暖化ガス25%削減

三島由紀夫の「美しい星」という作品がありまして、テーマはズバリ「宇宙人」。両親と2人兄妹でそれぞれ水星人、金星人、火星人、木製人を名乗る不思議な一家の話です。まるで鳩山由紀夫、幸夫妻の出現を予想していたかのような内容は笑えます。三島作品で笑えること自体稀有なことですが^_^;、市谷での割腹自殺で狂気の作家と見られがちな三島由紀夫が、実は村上春樹に通底するポストモダンな感性の持ち主であることもわかります。早く生まれすぎて周囲に理解されなかったのかもしれません。

んで鳩山首相の「宇宙人」ぶりは、13日に予定されるオバマ大統領来日時の首脳会談で扱いが注目された普天間移設問題でも如何なく発揮されてます。既に10年以上店ざらしされている問題に、拙速に答を出すよりも、文字通り対等な日米関係を構築する意味で、日本の占領民意識とアメリカの日米安保タダ乗り論を乗り越えるテコにしようとしているようです。つまり同盟強化が狙いであって、優男の風貌でなかなか肝が据わってます。

実は日本の政権交代で一番慌てたのが中国でして、元々78年に鄧小平が改革開放路線へ転換したときに、手本としたのは、自民党長期政権下で高度経済成長を実現した日本です。つまり共産党1党独裁体制を維持しつつの経済成長委は可能という考え方でした。その意味で昨年の北京五輪や2010年の上海万博は、正しく日本の60年代をトレースする意味があるわけですし、欧米からの民主化圧力も、「欧米とアジアは違う、日本を見よ」という理屈になるわけです。

その日本で政権交代が起こり、民主政治の現実が示されたわけですから、予想外だったわけです。中国流解釈では、日米同盟は「ビンの蓋」、戦前の軍国主義へ回帰しないための安全弁として安心感をもたらすものと見られております。温暖化防止でも、中国が経済発展と共に排出量を増大させて国際的な風圧を受ける流れに対して、日本の前政権の消極姿勢は良い風除けでした。それが鳩山首相の温暖化ガス排出25%削減国連演説で覆されたわけですから、中国にとっては痛し痒しです。

それでいて靖国参拝否定や中国といの一番の首脳会談をセットするなど、親中的な対応を取られているので、公に非難することもままならずです。日本の意欲的な目標の表明は、米オバマ政権でも反対派の説得材料に使われているようですから、アメリカの対応如何では中国のCOP15の枠組み参加もあり得ます。ま、実際はそこまで楽観はできないようですが。

で、現時点で公式の数値が見当たらないのですが、2008年の日本のCO2排出量は、かなり減少したらしいのです。なぜならば、リーマンショックで生産が減少したからで、実際には10-12月期の減少によるわけですが、産業部門で年率換算では90年比20%超という水準に達するようです。つまり財界が主張する「乾いた雑巾」論とは違って、元々海外バブルで高止まりしていた生産水準が元に戻っただけで、25%削減の実現可能性は実は高いということを意味します。

ここで重要なのは、世界規模の経済変動でして、円安と低金利でジャパン老いるマネーを海外投資に誘導し、海外バブルに乗じてモノを売ることは持続可能ではないということです。つまり産業部門はリーマン後の生産水準で利益が出るように、過剰設備の償却と人員整理を行う必要があるわけです。その意味で生産を底上げするエコカー減税や補助金、家電のエコポイントなどの政策は、過剰の解消を遅らせるという意味で不適切な政策です。

温暖化防止に逆行するという意味で、高速道路無料化が遡上に上ることが多いですが、渋滞対策と捉えれば、実は全く異なった意味があります。道路は典型的な公共財で、車が1台増えても、他の車の利用を排除しない性質があります。つまり台数が増えて渋滞するレベルまでは、道路の社会的コストは発生しないわけです(保守費などの軽微な負担は除く)。つまり道路の通行料を課金する場合、渋滞が発生するレベルまでは負担を下げられるということです。加えて渋滞対策としての道路整備費用は、渋滞区間の課金で得られる範囲内に留めることで、社会的コストの最小化が図られることになり、民主党政権が掲げる高速道路無料化は、無駄な道路整備を制限する効果が期待できるわけです。

さらに加えて、特に首都圏などの大都市圏での道路整備は、費用の多くが用地買収費に費やされ、加えて環境アセスメント対策として防音壁や環境側道の整備を求められることで更に負担が増えることになり、必要な道路の整備が進まないという現実もあるわけですが、それで破綻しないのは、鉄道による輸送需要の集約が起きている結果と見ることができます。とすると渋滞対策としての鉄道整備という政策スタンスの可能性も考えられるわけです。

とはいえ大都市部での鉄道整備も用地買収と環境アセスメントの壁は存在するわけで、実際首都圏の通勤ラッシュの解消が進まないことに現れております。加えて国鉄民営化によって鉄道が民間事業者に委ねられている点が、問題を難しくします。

JR東日本ではインフラ整備は最小限として車両の更新と湘南新宿ラインに代表される新サービスの開発で、コストをかけずに需要を喚起しつつ、東北縦貫線のようにインフラはボトルネック部分への集中投資で対応してますが、同時に運賃の将来に亘る据え置きを宣言しており、現行の運賃水準で可能な範囲での混雑緩和しか期待できないわけです。この点は私鉄各社でも同様ですが、特に首都圏のように稠密なネットワークが形成されていると、ある部分に集中投資してボトルネックを解消しても、そのことが需要のシフトとなり結果的に混雑を助長してしまうという悩ましい結果となります。

複々線化に後れを取った小田急線が忌避され、輸送改善著しい田園都市線が首都圏最混雑路線というありがたくないタイトルを得たり、横浜市営地下鉄グリーンラインの開業と実質複々線となる目黒線の整備で、東横線の混雑が助長されたりしております。東急では本業重視で積極的なインフラ整備を行った結果、改善どころか悪化してしまったわけですから、混雑解消が如何に難しいかということですね。ちなみに東急は本業だけ見れば増収増益ですが、度重なる設備投資と関連会社のリストラで疲弊し、自己資本比率を悪化させてます。JALとJASの統合も東急の関連会社リストラ策の中での出来事で、今でも東急はJALの筆頭株主ですから、JAL問題の後ろには東急の支援も隠れているわけです。

話がわき道にそれましたが、設備投資して輸送改善しても、混雑解消に至らないのは、全体として鉄道の過去の投資不足に起因するもので、高度経済成長期のインフレ経済で、鉄道運賃が公共料金としてスケープゴートとされた歴史に由来します。それでも人口が増加している間は、ある程度の輸送力増強投資が行われたものの、人口が減少に転じた現在、事業者の自発的な投資上積みは見込めず、公共部門の関与が必要となります。ただし財政が逼迫する中、それも十分な水準に達する保証はありません。

あとはタブー視されている運賃引き上げぐらいしか手段がないのですが、これとて乗客がマイカーへ流れては元も子もないわけですから、単純な値上げは難しいわけで、あとはJR中電区間のグリーン車や通勤ライナー、私鉄の一部にもある通勤特急などで着席サービスを売りに増収をはかり、それを原資にサービスの底上げを図るぐらいしか方法がありません。それ以前に首都圏をはじめとする大都市圏が今後高齢化が進むことを勘案すると、、通勤需要そのものが減少する可能性もあり、政策的な意思決定の難しさがあります。

もう一方で過疎地の問題も考える必要があります。特に沿線に大都市圏を持たないJR四国では、高速道路無料化の影響を強く受けることになりますので、北海道や九州共々何らかの対策が必要でしょう。とはいえサイドバーのAMAZON鉄道書欄でご紹介した時刻表に見るスイスの鉄道―こんなに違う日本とスイス (交通新聞社新書) (新書) に見るスイスの鉄道事情を見れば、それでもまだまだ打つ手はあると映ります。なにしろ最大の都市チューリッヒの人口規模は36万人程度で、四国の各県庁所在都市と同程度で、比べ物にならないほどのサービスの充実ぶりですから。ただし運賃水準は日本と比べてかなり高いですが。

一つの方法論として、噂されるJR九州の株式上場でネックとなりそうな経営安定基金を本体から切り離し、自治体の資金拠出を仰ぎながら地方版鉄道建設公団に改組して上下分離でインフラ整備を行うことは考えられます。三島会社のうちJR九州以外の2社は、青函トンネルと瀬戸大橋開通でブームとなった88年をピークに輸送量を減らしており、その間に整備された高速道路の影響は明らかです。インフラ投資を促進して競争力を高めることが必要です。

あと貨物に関しては、温暖化対策として国の関与を高めることが考えられます。民営化時の基本ルールであるアボイダブルコスト(機会費用)負担方式の線路使用料をも下回る線路使用料の支払い能力しかなく、並行在来線分離三セクへは国の差額支援を得て高額な使用料を支払っているわけですが、JR旅客会社に対しても、少なくとも列車運行で発生する費用+1%のインセンティブ相当の線路使用料を支払わないと、例えばJR東海による貨物への嫌がらせのようなことを防ぐことはできません。逆に国が関与する以上、あからさまな運行妨害には罰則を設けることも考えられます。

ここまでのパッケージを示せれば、高速道路無料化は温暖化防止に反するという批判は成り立たなくなります。加えて鉄道の競争力強化のためのインフラ整備とメンテで、持続的に雇用を生み出すならば、従来のように輸出産業に雇用を依存しない内需型経済への移行とも整合的です。新政権の交通政策がどうなるか、見ていきたいと思います。鉄道回帰は世界の趨勢でもありますし。

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Sunday, November 01, 2009

JAL問題が影を落とすユニバーサルサービスの新作法

この1週間いろいろあって、記事にまとめようとしてもまとまらない^_^;。特にJAL問題で大きな動きがありましたが、やはり政権の命運を左右する大問題という直感は当たったようです。とはいえ問題はより深刻になったんですが-_-;。

そのJAL問題からメディアチェックです。

国交相、日航再生に支援機構の活用表明 再建案公表せず
日航、支援機構にグループの再生支援を依頼
何かよく意味のわからない報道と感じられますが、要は旧産業再生機構OB等の作業部会(タスクフォース)の再建案が断念され、発足したばかりの企業再生支援機構を活用することになったということです。作業部会案はいわゆる事業再生ADRと呼ばれる私的整理の手法で、銀行に条件付で債権放棄を求めるもので、見返りに人員整理や資産売却などのリストラを迫り、企業自身の手で自主再建するもので、法的整理の1歩手前の私的整理と言われます。

とはいえ当初から銀行団は再建案に否定的で、交渉は難航しました。債権放棄して支援しても、収益モデルが不透明で、今までも再三裏切られただけに、すんなりと呑めないということですが、さりとて会社更生手続きなど法的整理に進めば、既に多額の貸し込みをしている銀行団も返り血を浴びるということで、銀行サイドからは早い段階で政府が関与して公的資金による救済を求めていたもようです。

しからばこの1月の作業部会の活動は無意味だったのかといえば、さにあらず、このやり取りの過程でJALが少なくとも2,500億円の債務超過に陥っていたことが明らかになっております。つまり対策を怠れば、97年11月の北海道拓殖銀行のように突然死していた可能性もあります。その意味では作業部会はギリギリのところでJALを救ったことになります。

とはいうものの、支援機構案件となったことで、作業部会が1月かけて実施した資産査定は支援機構の手で再度実施されるわけで、スピード感が問われる中での足踏みはじれったいところですね。加えて元々地方版産業再生機構として設立された企業再生支援機構は、元々地方の埋もれた優良企業の支援を通じ、融資銀行の資産の健全化を目的とするもので、わざわざ第三セクターを対象から外すことで当時野党だった民主党も賛成したものだけに、JALの救済に支援機構を用いることには、正直違和感を禁じ得ません。

それと気になるのが銀行団の頑なな態度ですが、実はリーマンショック以後の銀行の不良債権比率がジワジワ上昇していて、竹中プラン実行直前の2001年ごろの状況に近づいてきているのです。JAL再建案に厳しい態度を示した銀行に、実は余裕がなくなってきている状況が透けて見えます。となれば自主再建に厳しい態度の一方、法的整理には慎重姿勢だった銀行の態度にも説明が付きます。JALに貸し込んだ債権の行内格付けが下がれば、銀行自身が引当金を積み増さなければならないわけで、それだけ銀行の融資余力が下がり、貸し渋り、貸し剥がしが横行しかねないわけで、JAL再建に政府が強く関与せざるを得ないということになったと読み解くことができます。実はJAL問題の裏に金融危機の芽が隠れていたということです。

この問題はそもそも邦銀の資本政策のまずさが根底にありまして、邦銀が世界へ業容を拡大した80年代、欧米銀に比べて預金量は突出しながら自己資本が薄く、不健全なハイレバレッジ融資と見なされたことが、バーゼル委員会による国際決済銀行(BIS)規制につながったのですが、日本の銀行関係者は欧米による日本封じ込めと認識し、勝手なルールを押し付けられて融資を減らさざるを得なくなった「マネー敗戦」論を振りかざして居直っております。

そもそも銀行にとって預金は負債に当たるわけですから、資本に対して過大な預金を保有していたことが、バブル期の不動産融資などへの貸し出し競争を誘発し、海外へも資金が漏出して米ロックフェラーセンタービル買収や英仏ユーロトンネルプロジェクトへの融資とその焦げ付きなど、痛い目に遭っているはずなのに、銀行本来の融資業務は、主に日銀の窓口規制に頼って融資審査などの本来の情報創造を通じた信用創造能力を持たないままに肥大化した邦銀では、高収益のビジネスモデルを開発して、それが資本市場で評価されて株主資本を強化するということを怠ってきました。それによって預金の一部が株式市場を通じて銀行の自己資本強化につながれば、無理な貸し出し競争でバブルを膨らませることもなかったでしょう。つまり「貯蓄から投資へ」の金融改革に失敗したわけで、後付けで郵貯マネーを政治的に弄るのはまやかしです。

JAL自身の経営問題も複雑ですが、国の航空政策の犠牲となった側面も見逃せません。前述の空港特会による過剰な空港整備に留まらず、整備費用捻出のために着陸料も割高だし、路線数が多ければ需要が分散しますから、個別路線の採算性も下がるなど、何一つ良いことはないのですが、地方のおねだりを止められなかった国の対応に問題がありました。

加えて96年の需給調整規制撤廃で、航空事業への新規参入が可能になったものの、結局採算性の高い一部路線での競争激化にしかならず、JAL,ANA,JASの当時の大手3社による過剰防衛と国の羽田発着枠の硬直的な配分で新規参入社は育たず、90年代に欧米で産声を上げ、アジアにも起業熱をもたらしたローコストキャリア(LCC)と呼ばれる格安航空会社も日本には事実上存在しません。元々大都市の大空港が大手エアラインに押さえられ、着陸料の割安な近郊のサブ空港同士を point to point で結ぶことで低価格を実現していたLCCですが、9.11で大空港がセキュリティチェック強化で機能を落とし、テロの恐怖で航空利用が敬遠されたことで hub and spork 型の大量輸送に特化された大手エアラインが軒並み業績を落とした中で、運行を堅持したLCCが存在感を増し、今や業界地図を塗り替える勢いです。羽田のハブ化なんぞで大騒ぎしている日本の航空行政の周回遅れぶりはお笑いの域です。

またJALを破綻させた場合に、それに代わって役割を引き継ぐ存在がないということでもあります。例えばJALを破綻させてANAに路線網を引き継がせるのは不可能です。というのもANA自身がリーマンショックと新型インフルの影響で苦しんでいますから。あとJR東日本による救済案も一部で言われますが、絶対に有り得ません。というのもJR東日本自身、主に北海道地区の余剰人員受け入れで不当労働行為の汚名を着ながら、小売などの関連事業を育てて軌道に乗せて余剰人員を吸収した経緯があり、JALの複雑な労使関係が修復不能なことを見抜いております。余談ですがJRグループ内で本業以外の関連事業育成で実績を上げているのは東日本と九州の2社で、東海や西日本は本業依存度が高く、リーマンショックや新型インフルの影響も受けやすいわけです。とはいえ九州は経営安定基金でどうにか最終黒字を計上するレベルで、一部で言われる九州新幹線博多開業後に株式上場はほぼ不可能です。旧国鉄債務の一部として国が負担する経営安定基金が株主のものとなるというのは、誰がどう見ても具合が悪いですしね。

思えば2002年のJASとの経営統合は早まったのかもしれません。というよりも、その後のJALは、社内融和を優先し統合効果を出すためのリストラを先送りした結果、赤字路線を多数抱え、旧い非効率な機体を多数保有し、関連事業も含めて多数の重複分野を抱え込み、労組も分立して労使協議が成り立たない機能不全に至ります。このあたりはJALの経営の失敗であると共に、公正取引委員会の審査の甘さも指摘できます。結局形ばかりの規制緩和で、実質的な競争政策は採られず、JALの虚弱体質が温存されたわけです。そしてそんな内情は承知していたはずの銀行団が資金を貸し込んだわけですから、銀行による経営のモニタリングが機能せず、上場企業でもありますから、株式市場での健全な相場形成と株主の圧力による経営の監視も機能しなかったわけで、実は資本主義国としての日本の質が問われている問題でもあります。

前原国交相は地方路線について、何らかの形で支援を表明しました。

日航再建、地方路線の支援検討 国交相「飛ばない空港作らず」
国の直接関与は旧国鉄赤字ローカル線と同じ問題を抱えることになりますので、期限を設け、おそらく自治体の関与を引き出す方向でしょう。ただし空港特会の見直しに言及し、少なくとも整備費用は切り離すということですから、着陸料の値下げは期待して良いかもしれません。

赤字ローカル線といえば、JR東海が名松線の家城―伊勢奥津間の廃止を発表しました。

名松線、一部廃止の意向 JR東海、バスに切り替え
台風18号の被害で土砂流入や盛土流出など39ヵ所あった被害箇所のうち38ヵ所が家城―伊勢奥津間に集中したことから、今回あえて復旧工事を行わず、バス輸送に切り替えようということです。台風被害で廃止といえば高千穂鉄道を連想しますが、JR引継ぎ路線ではJR西日本の越美北線が長期運休を乗り越えて復旧した例はあるものの、被災以前から地元自治体による定期券購入補助が行われていたことが復旧の判断につながったのでしょうから、自治体の対応は重要です。

その意味では名松線の場合、そもそも存続区間は近傍を近鉄線が並行し、通学定期の割引率による逆転現象がなければおそらく利用者は皆無という路線立地ですから、近鉄線の駅に接着するバス網を整備していっそ全線廃止の選択も有り得ましたが、地元との軋轢を回避したいのでしょう。無人車両走行の芽は残ります(苦笑)。

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Sunday, October 04, 2009

尼崎事故調漏洩事件に見る国鉄一家の堕落

ニュースとしては先週の話ですが、メディアとは違った視点で取り上げるという当ブログのコンセプトに従って取り上げます。まずはこの記事から。

尼崎脱線事故調査委、元委員が報告書漏洩 JR西前社長が依頼
JR西日本の歴代トップの責任に言及し、企業体質に問題があったことを認めた山崎前社長ですが、一気に男を下げました。

鉄道事業本部長時代に安全対策を進言し、疎まれて関連会社へ出向させられていた山崎前社長には同情する声もあり、被害者からも評価の声が聞こえただけに、信頼を裏切ったことは重大です。加えて「新型ATSが設置されていれば事故は防げた」とする記述を調査報告書から削除することを求め、それを受けて山口元委員は事故調で発議して否決されたという一連は、事故調の第三者機関としての意味を無力化させるものでもあり、大問題です。

と同時にこの新型ATS問題は神戸地裁に起訴された山崎前社長の公訴事由にもなっているわけですから、それを意識した行動だとすると、更に問題が膨らみます。少なくとも審理以前に心証真っ黒となり、結果墓穴を掘ったことになるかもしれません。

そこまでのことではないとしても、山崎前社は経営者として事故を契機にATS設置基準制定などの規制強化で資金負担が増えることを心配したのかもしれません。鉄道事業の特殊性を考えると無理もないところがあります。というのも、今回の漏洩事件でも当事者は国鉄OBで先輩後輩関係という事情があり、おそらく山崎前社長も山口元委員も当事者意識が希薄だった可能性があります。

以前の記事で国交省の前身の1つである運輸省の問題を取り上げましたが、現業機関としての国鉄が公社として分離され、鉄道事業の国家独占の権限が現業機関である国鉄に帰属した結果、監督官庁であるはずの運輸省は国鉄に対して無力でした。そもそも国鉄による新線建設や改良事業は国鉄自身の意思決定で為され、民間事業者のような免許事業ではなかったんですが、例えばそのことが東海道新幹線が構想段階から反対の大合唱を受けながら実現したこととか、国より格下の東京都による都市計画に定義されない総武快速線の建設や、ローカル線建設に不熱心な国鉄に代わって建設を請負う鉄道建設公団の設立などは、この辺のねじれ現象の結果です。

で、技術面でも鉄道はブラックボックスに喩えられることが多いのですが、日本の場合技術面での国鉄の情報独占といいますか、位置づけはきわめて重かったのです。そのために日本の鉄道車両メーカーは国鉄の下請けを脱し切れず、大手私鉄も部分的ないいとこ取りで「うちのは国鉄より高性能」と言っていたような状況です。気候変動問題で世界で鉄道が見直されるトレンドに乗り切れない原因でもあります。この辺はガラパゴス化と言った方がわかりやすいかも。

その結果鉄道技術は旧国鉄と後身のJR各社が握り、監督官庁である旧運輸省には技術に関する目利きが存在しません。ゆえに福知山線事故のような重大事故が起きると、パニクって規制強化に走るのです。福知山線事故の場合も同様で、当時の北側国交相のコワモテぶりが思い起こされます。そういう意味で山崎前社長が、国交省の規制に影響を及ぼすこと確実な事故調報告の内容を早く知り、できれば規制強化を緩和する方向へ記述を変えて欲しいと考えても無理もないところです。

加えて事故調委員メンバーとして、結局国鉄OBを起用するしかない現状もまた避けられなかったでしょうし、OB同士の気安さが漏洩事件を生んだとすれば、つくづく旧国鉄という存在は罪作りです。明治以来のアンシャンレジュームは一朝一夕には解消しないんですね。

それとそもそも事故調(航空・鉄道事故調査委員会→現運輸安全委員会)の鉄道部会設置が、91年の信楽高原鉄道事故の遺族などでつくる鉄道安全推進会議(TASK)が93年に国に働きかけて発足したもので、信楽の事故でも不起訴ではあったものの、信楽高原鉄道を被告とする公判の審理過程で、滋賀県警が突き止めた亀山CTCセンターの方向優先テコの無届設置と事故後の撤去及び関連マニュアル破棄という重大事実が発覚したことが、専門の第三者機関設置の必要性を認識させたわけで、やはりJR西日本は本来当事者であったわけです。今回の漏洩事件は将にJR西日本の救い難い企業体質をを浮き彫りにしますね。

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Friday, September 25, 2009

高速道1,000円渋滞で鉄道回帰

政権交代が実現し、鳩山首相の外交デビューも順調です。気候変動、核廃絶など、民主党の主張に近い関心が国際社会で広がっていて、丁度国連首脳外交やピッツバーグのG20サミットなどの外交日程が政権交代をアピールするチャンスとなったなど、ラッキーな面はありますが、期待の持てる十分な成果が見られます。

民主党が掲げる内需拡大策の目玉は、何といっても子ども手当と高速道路無料化ですが、まだまだその意義に対する国民的理解は不十分です。とはいえマニフェストに明記され、それを国民が信認して政権を与えた以上、民主党政権はこれを実現する責任があります。実現にあたっては当然生煮えな部分を国会で野党に追及されるわけですから、実現可能性を高めるための修正協議もする必要がありますが、一方で安易な妥協は308議席の与党議員の追求にさらされるわけです。今さらながらマニフェストの重みを思い知らされます。

というわけで興味深いニュースです。

秋の連休、鉄道好調 東海道新幹線、GWより8%増
秋の5連休で渋滞予想から利用者が鉄道へ回帰しているというのです。1,000円高速の影響で減少した利用が戻っただけといえばそれまでですし、JR各社が対抗策で割引キップを出した効果と考えると、ひょっとしたら売上は戻っていない可能性はありますが。

あと航空も同様に利用者が戻っております。春のGWではあの新型インフルエンザ騒動が公共交通利用忌避を招いた部分もありますが、むしろ今、流行が本格化している中で利用が戻っているのですから、この影響は軽微なのかもしれませんが、断定は避けておきます。

一方でオンライン版の記事では省略されてますが、各道路会社によれば高速道路利用はGW時より4%減ということで、明らかに渋滞が忌避されたことが読み取れます。しかし納得がいかない部分もあります。というのは渋滞の発生はむしろ増えた点です。しかも50km超の渋滞が複数個所で発生するなど、見かけ上渋滞はひどくなっているのですが、これは結局利用時間が集中したことの影響のようで、ちょっと時間をずらせば渋滞を回避できたケースも多いようです。ということで、高速道のETC割引による内需喚起という前政権の置き土産で、貴重な社会実験がなされたということになります。

渋滞は利用の集中で起きるわけですから、週末限定のETC割引は、そもそも渋滞を誘発する要因を内包しているわけです。ですから、GWや夏休みの高速道の渋滞を理由に、民主党の言う高速道無料化でもっとひどいことになるということも言われたのですが、その論拠は怪しいわけです。むしろ曜日限定がなくなれば、利用の分散で渋滞は減るという議論も可能です。

あと高速道路無料化は自動車利用を助長しCO2排出を増やすという議論があり、国交省でも他の交通機関からの利用の移転でCO23割増との試算を明らかにしてますが、一方で同じ国交省で並行道路の渋滞緩和でCO2削減効果は4割弱になるという試算もあります。これは計算の前提が違うために起きたミステリーですが、前者は交通機関の選択のみに絞った試算で、後者は渋滞緩和に絞った試算で、他の条件は考慮しておりませんから、実際は両方の効果が相殺されて中立に近い結果となる可能性が高いといえます。

というわけで、マニフェストに明記されていないJAL問題と違って、マニフェストに謳い政権を得た以上、高速道路無料化はやらなければならないことであり、JRや高速バス事業者などから否定的コメントが相次ぐ中、あえて申しあげますが、この程度の競争条件の変化は、経営の責任で対応すべきです。また変化はチャンスでもあるわけで、変化にいち早く対応した者が、多くの果実を得るのがビジネスの世界の鉄則です。各社の奮起を期待します。

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Tuesday, September 22, 2009

グッドJALバッドJAL

やー、前の記事で指摘したように、ホントにJAL問題は新政権の命運を左右する問題になりそうです。

日航の新旧分離要請へ、政投銀など主力行 実質債務超過の恐れ
ソースは明かされておりませんが、おそらく日経の独自取材によるスクープでしょう。元々9月末期限の再建策を見て対応を決めるとしていた日本政策投資銀行他の金融機関ですが、とても追加出資は無理ということで動いたのでしょう。加えて政権交代で、与党族議員などの圧力を受けることなく抜本改革が可能になったという見方もあるのでしょう。前原国交相が24日にJALや金融機関などからヒアリングを予定しているタイミングですから、なんかいきなり生臭い話に発展した感があります。

処理のスキームは米GM支援に似たグッドカンパニーとバッドカンパニーに分離し、前者へ国が支援し、後者は時間をかけて清算処理するというものですが、日本国内の事例としては、国鉄改革で旧国鉄債務を一部を除いて清算事業団によって処理することで、新生JRを身軽な状態で再スタートさせたことに近いといえます。あるいは98年の金融国会で、破綻が心配されていた日本長期信用銀行、日本債権信用銀行の救済策として民主党案を自民政権に丸呑みさせた金融再生法も同様の処理となります。

当時から民主党の政策立案能力に注目していた私としては、時を経て民主党政権が誕生したタイミングでJAL問題に遭遇することの歴史の皮肉を思わざるを得ません。いわゆる民主党の流儀に整合的な処理案であり、金融機関にそれなりの知恵者がいたのかもしれません。とはいえ簡単に進む話でもありません。

というのは、このために特別法を制定する必要があること、当然予算措置も伴いますから、現在政権で進められている補正予算の執行停止を含む見直しで捻出した財源の一部を回さざるを得ないこともあり、政権内でも揉める可能性があります。加えて地方路線の整理を伴いますから、与党議員の造反も予想され、来月の臨時国会は早速大荒れとなりそうです。

結局JAL問題は鳩山首相の帰国を待って判断を仰ぐ話となり、タイムリミットも迫っているだけに、いきなりリーダーシップを試される展開となります。処理を誤れば本当に鳩山新政権が空中分解しかねない話ですし、また外国エアとの出資交渉も事実上ストップせざるを得ません。

2年前のおJALの記事で指摘したとおり、87年に株式公開し、政府全額出資の特殊会社から一般の民間企業になったJALは、同年実施された国鉄改革によるJR発足と関連し、特殊会社でスタートしたJR各社の先行事例としての意味合いもあったわけで、その後小泉構造改革で実施された道路公団民営化、郵政民営化、政府系金融機関改革など一連の民営化策の着地点となるはずだったのですが、その民営化会社が破綻の危機に瀕した場合の先行事例となってしまったわけで、皮肉な話です。同時に郵政見直しを掲げる新政権だけに、おかしな処理をすれば郵政見直しの議論も歪めてしまう可能性があり、本当に取扱い注意の案件になってしまいました。どうなるでしょうか。

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Monday, September 21, 2009

ジャパニーズGM問題、JAL問題を考える

このところJALを巡る報道が数多く露出しております。正直なところ前途不透明、五里霧中といえるこの問題ですが、鳩山新政権の命運を握るほどのインパクトがある問題として考える必要があります。

当ブログでは2年前に既にJAL問題を取り上げておりますが、正直当時からの迷走が未だに続いていることに驚きを禁じえません。今まで一体何をしてきたのでしょうか。

一応さまざまな努力の跡は見られるものの、航空を巡るグローバルな変化に追いつけず、取り残されてしまったさまは、米GMの問題と通底するものがあります。時代はオープンスカイ政策による自由競争の進捗があり、その尖兵だったアメリカでは、既にナショナル・フラッグ・キャリアのパン・アメリカン航空が破綻、時を経て元々国策キャリアの性格が強かったノースウエスト航空も、業界大手のデルタ航空に吸収されて現存しません。欧州でもアリタリアやサベナ・ベルギーなど国策キャリアの経営不振で国境を越えた再編が進む状況で、国策で政府出資の特殊会社としてスタートした日本航空がいかに難しい局面を迎えているかがわかります。

加えて大量輸送を前提に拠点となるハブ空港へ路線を集めて大型機でハブ同士を結ぶ大量輸送前提のビジネスモデルが、米サウスウエストや英バージン、アイルランドのライアン航空など、燃費の良い小型機で着陸料の安い大都市外縁部の空港同士を直行便で結ぶいわゆるローコストキャリアの台頭が、世界中で競争激化をもたらし、かつて二国間協定として航空協定を締結し、運行航空会社を指名する究極の独占市場が消滅したわけですから、今までのやり方を踏襲する限り、危機からの脱却はできない状況です。

その中で世界のエアラインは様変わりしました。歴史を刻んだ大手キャリアは、アライアンスに活路を見い出す方向性を打ち出しました。いわゆるコードシェアや共同運航便の活用で機材と人員の運用を合理化しながら路線網を維持するビジネスモデルへと転換し、特に国内のライバルである全日空では、パンナム破綻後に路線の多くを引き継いだ当時の米最大手ユナイテッドや独ルフトハンザなどをメンバーとするスターアライアンスへの参加をいち早く実行し、自らはその東アジア支部として主に日本対アジアの近距離国際線を充実させることで、国際線航空として後発の不利を逆手に取り、選択と集中を実現しています。その過程で全日空ホテルチェーンの売却など、非中核事業からの撤退も行っており、また羽田第四滑走路完成による24時間化を睨んで整備部門を羽田に集中させ、成田を拠点とするJALを出し抜こうという戦略です。リスクはありますが先を見た経営ができているということです。

それに比べるとJALの対応の周回遅れぶりは目立ちます。ANAのスターアライアンス参加時点から取り沙汰されていたワンワールド(アメリカン、BAなどが参加)への参加を逡巡し、自前運行にこだわり続けて高コスト体質を温存し、経営が怪しくなってから参加して、むしろ顰蹙を買ってしまいました。実は今回のJAL報道の増加のきっかけとなったデルタ航空のアライアンスを超えた出資打診も、ワンワールド内のそんな不協和音に遠因があるかもしれません。

というわけで今回の報道合戦による露出増加の始まりとして、米デルタ航空の出資打診があったわけです。

米デルタ、日航に出資打診 300億~500億円、交渉は流動的
デルタはスカイチームに所属しており、当然出資となればJALのワンワールドからの移行が前提となるわけです。仮に実現すれば、ネットワークの規模で最大のスターアライアンスとスカイチームは肩を並べる存在になり、JALが抜けたワンワールドは弱者連合になりかねないですし、アジア路線が手薄なアメリカン航空にとっては、JALを逃がすわけにはいきません。元々アメリカンとBAが中核で大西洋路線に強みを持つワンワールドですが、世界の成長センターたるアジアへのアクセスで後れを取ることにもなりかねず、かくしてアメリカン航空も出資交渉へと向かいます。
日航出資混沌、アメリカンも交渉へ デルタと綱引き
さらに国内線、国際線の不採算路線からの撤退発表など、JAL自身もリストラ加速を表明し、事態は混沌としております。

とはいえ外国エアラインからの出資打診は300-500億円規模で、年度内に2,000億円規模の資金調達を迫られる状況では焼け石に水の状態です。資金調達のうち1,000億円程度を株式の増資で賄うと考えられますから、その半分相当が外国エアの出資分となれば、他の一般株主への安心感を醸成する効果は期待できますし、銀行サイドの出資態度も軟化することが期待されます。

一方で国交省はデルタとの提携を後押ししている模様です。というのは、元々ノースウエストを併合したデルタの太平洋路線の充実ぶりは凄まじく、JALの路線再編によるリストラ効果がそれだけ高いということがあります。加えてそれによって成田の発着枠が返上されれば、乗り入れ希望が多い成田の発着枠再配分を差配できるという意図も透けて見えます。

そしてこの間に起きた総選挙で実現した政権交代で民主党鳩山政権が誕生したことが、少なからず影響を及ぼしそうです。マニフェストで言及された子ども手当や高速道路無料化は、選挙に勝って政権を得た以上、実現しなければなりませんし、多少の修正の余地はあるにせよ、時間と共に実現に向かうことは間違いありません。ところがJAL問題には直接の言及がなく、今のところ政権としての方針は未定のようです。

マニフェストには航空行政の見直しは盛り込まれており、オープンスカイ政策に舵を切ることが示唆されているものの、羽田、成田の役割分担や発着枠再配分などの具体策には言及がありません。とはいえ羽田、成田共に発着枠の拡大と見直しは確実に行われ、増加分の日米大手への配分はなく、むしろ一部返上さえありうるわけで、その際に最も影響を受けるのが、成田をアジアの拠点空港と位置づけるデルタ航空ということになります。ということで、穿った見方ですが、政権交代がデルタの背中を押した可能性はあります。

一方のJALですが、もう一つの難問として8つの労組が分立し、安全を盾に報酬見直しに後ろ向きな組合問題と、OBの高額年金問題が横たわります。このあたりば米GM問題との相似象といいますか、JALが立ち直るための最大の問題です。

元々国策キャリアとして歴史を刻み、日本人のおもてなし精神を活かした充実した機内サービスで業界標準を確立したJALですが、その代償として高コスト体質が染み付いてしまったのです。かつて究極の独占市場だった国際線航空を主力としていたから可能だったサービスが、むしろ過剰サービスとして忌避される昨今、元々エリートの乗り物だった航空がそれだけ大衆化した証左でもありますが、同時にコスト削減を厳しく求められるようになった時代の変化に対応できないその姿は、省エネどこ吹く風で利幅の大きい大型車ばかり作り続けたGMなど米ビッグ3とそっくりの構図です。

加えて充実した企業年金でOBへの手厚い年金給付を続けた結果、業績を悪化させたいわゆるレガシーコスト問題もあります。ゆえに民主党内では通常の資金支援での立ち直りは難しいとして法的整理をという過激な意見もありますが、米オバマ政権のGM救済策に見るように、公的な支援に踏み込むならば、債権者も痛みを分かち合うべきというのは筋が通ります。債権者には従業員や企業年金受給者も含まれます。実際6月に日本政策投資銀行と銀行団による80%政府保証つきの1,000億円融資が実行された一方、4-6月期決算で990億円の赤字となりチャラになる体たらくです。果たして新政権は的確な問題解決ができるか、見守りましょう。

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Sunday, August 23, 2009

尼崎脱線事故で企業体質を認めた山崎社長

福知山線尼崎事故で、大きな動きがありました。

尼崎脱線事故、歴代社長の責任明言 JR西、被害者説明会で
事故から既に4年。この時期にJR西日本が被害者説明会を行うというのも異例ですが、歴代トップの責任にまで言及し、企業体質に問題があったことを認めたことは、大きな1歩かと思います。

この問題は前の記事でも指摘したとおり、司法が山崎社長1人の責任しか問わないことが問題なんですが、訴追を受けた山崎氏本人も、さすがにこれではまずいと考えたのでしょう。何しろ起訴の理由が、JR東西線との直通運転のために福知山線上り線の線路付け替え時に鉄道事業本部長だった山崎氏には、事故を予見できたのに新型ATSの設置など必要な措置を怠ったことが、業務上過失致死傷に当たるというのですが、無理スジの話です。

というのは、当時JR西日本幹部間で、どのようなやり取りがあったかはわかりませんが、本業の設備投資計画を経営トップではない1事業本部長の権限で決められるわけはないんで、その点で井出、南谷、垣内の歴代3社長を不起訴として、逆に安全対策をうるさく進言して事故当時系列会社に出向させられていた山崎社長の起訴というのは不満の残る神戸地検の対応でした。

当然山崎氏としては1人で責任を被るつもりはないでしょうし、遺族にとっても不満ということで、検察審議会に歴代社長の起訴を申し立てております。

尼崎脱線事故「歴代3社長起訴を」 遺族、検察審に申し立て
今回の山崎氏の対応は、被害者からの評価されているようです。
尼崎脱線事故、JR西社長の謝罪に評価も 被害者ら
山崎氏のこの決断が、JR西日本を企業として事故に向き合わせることを期待したいと思います。何度も繰り返しますが、起きてしまった事故は取り返せませんが、それと向き合うことで、未来に生かすことはできます。JR西日本がやっとその入り口に立ったものと評価しておきます。

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Friday, August 14, 2009

地震で盛土崩落の東名高速、意外と脆かった物流インフラ

道路ネタ連発で"道路的部落"と化している当ブログですが^_^;ご容赦ください。まずはメディアチェックです。

静岡で震度6弱、6人の負傷者確認
地震が早朝だったこともあり、地震そのものによる直接被害は少なかったようですが、交通への影響が次第に明らかになります。
東海道新幹線が運転見合わせ 東名高速も一部通行止め
新幹線は営業時間前でもあり、ユレダスが作動してき電停止されてますから、マニュアルどおり目視安全点検後再開となり、始発から2時間後の午前8時に運転再開したわけですが、東名高速の方は実は深刻な事態でした。
東名高速「きょう、明日の復旧は難しい」 国交相
お盆の帰省シーズンであり、週末限定のETC割引を特例で13,14両日にも実施することが決まっていたことから、当然それに復旧を間に合わせようということになりました。
東名高速、13日にも通行止め解除 駿河湾震源の地震
しかし被害は予想以上に大きく、復旧はずれ込みました。
東名復旧、13日午後以降にずれ込み 被害予想より大きく
しかし更にずれ込み、復旧を上下線で分離することで当座を凌ぎました。
東名高速下り線、全面開通 上り線も一部通行止め解除
とりあえず下り線は開通し、それを知らずに中央道へ迂回した車も多数あったことから、スムーズな再開とはなりましたが、上り線の復旧はずれ込み、「行きは良い良い帰りは怖い」状態は続きます。
東名全面開通「15日中」
驚いたのは高速道路の盛土の脆弱さです。特に整備時期が古い東名、名神などでは、耐震強度などはほとんど意識されず、事後的な補強もほとんど行われていなかったし、今回の崩落地点も、復旧工事で搬入した重機の足場が崩れるという形で、予想外の結果となったわけです。それと比べると東名高速より古い東海道新幹線では盛土の崩落はなく、マニュアルどおりに復旧できたことが際立ちます。この差はどこから来たのでしょうか。

結論から言えば、減価償却がされていたか、いなかったかの差ということができます。鉄道事業は営利事業である前提で、事業用固定資産の保全による事業の継続性が求められ、東海道新幹線が開業した1964年から国鉄でも、民間並みに資産の減価償却が行われるようになりました。減価償却はちょっとわかりにくいのですが、企業が事業用資産を取得して操業を続けることで、機械などの現物資産ならば経年で劣化して資産価値を減じることになるのを、会計上一定のルールの下に取得価格の一部を費用化して利益から控除する仕組みです。言い換えれば利益の一部を無税で積み立てて内部留保資金とすることになるわけで、現物資産を部分的に現金資産に交換するという表現がわかりやすいかもしれません。

ルールに従って現金化された資産は、基本的に使途自由ですが、通常は事業の継続性を保証するために、老朽設備の大修繕や交換などに充てます。鉄道のように投資規模の大きい場合は、投資資金の多くが借入金で調達されますから、割賦払いの原資として使うこともできます。また災害復旧の費用に充てることもできます。これらの場合その分会社全体では資産は目減りするわけですから、減価償却で得たキャッシュフローをどのように配分するかは、経営上重要な意思決定といえます。

その辺を踏まえれば、地震の被害が経営に重大な影響を及ぼすことが容易に理解される新幹線では、路盤の補強やP波を検知して本震前にき電を停止するユレダスの設置などの対策が取られたことは当然のことといえます。そのように仕向ける仕組みができていたわけです。

一方の高速道路ですが、道路公団の事業として民間の会計基準によらない特殊な基準で対応されておりました。特に通行料は諸経費を控除後に整備費用の債務償還に回さなければならないわけですから、見かけ上の利益を圧迫する減価償却の仕組みを取り入れることは強い抵抗があったわけです。加えて1996年に東京都日野市が、市域を通過する中央自動車道への固定資産税課税を打ち出したように、高速道路自体が法的にあいまいな位置づけにあることが影響しております。この問題に関しては面白いレポートがネット上で公開されておりますのでご参照ください。

日野市の高速道路課税について
~なぜ政策イノベーションは失敗したか~(pdf)
地方分権も重要なテーマですが、ここではこれ以上立ち入りません。それよりも高速道路が料金プール製の下で永久有料化が決まった1995年の決定を受けて、地方自治体からこのような提案がされたことが重要です。

実は高速道路の料金制を維持することの制度上のリスクが明らかになったわけで、だからこそ道路公団民営化が検討されたときにも、道路会社の直接保有ではなく、JR発足時の新幹線保有機構に倣って(独法)高速道路保有・債務返済機構が保有し、道路会社にリースする仕組みとされたのです。道路公団民営化が、いかに矛盾を糊塗するものであったかということです。

ちなみに新幹線鉄道保有機構は1987年にJR各社と共に発足し、国鉄長期債務の一部を引き継いでJR東・海・西各社のリース料で償還する仕組みだったのですが、JR東日本の上場準備の過程で東京証券取引所の事前審査で「収益の柱となる主要な事業用資産を自己保有していないことはリスク要因」とする見解が示され、特に日本の税法ではリース資産の減価償却は行われないので、資産の保全による事業の継続性に疑義が生じることが指摘されたわけです。そこでJR東日本が東海と西日本に呼びかけ、新幹線資産の買取りを国に求め、1991年に実現して新幹線保有機構は解散されました。この伝でいえば、民営化された道路会社の株式上場は同様に難しいということになります。

ところで、ここまで来ると、じゃあ現在行われている東名高速の盛土崩落の復旧工事の費用は誰が負担するのかという素朴な疑問が出てまいります。おそらくは通常の道路保守費用の範囲内で道路会社が負担することになると思われますが、そうすると今度は、今回の崩落現場以外にも危険箇所は存在するでしょうから、その計画的補修、補強はどうなるかという疑問が出てまいります。おそらく財政資金を投入する以外にないと考えられます。

とすると民主党がマニフェストに盛り込んだ高速道路無料化は難しいのかという疑問も沸きます。これに関しては私個人は楽観しております。その前に、詳細が明らかでなかった民主党の高速道路無料化案の細部が一部明らかとなりました。

高速無料化「首都高・阪神除く」 民主幹事長が明言
今まで具体論には踏み込んでいなかったのですが、2012年時点で首都高、阪神高速を除く全国の高速道路が無料化されるということで、私が考えていたよりも範囲が広いですね。実は東名は無料化から除外される可能性が高いと考えていたもので。

というのも、太平洋ベルト地帯を貫き、物流インフラとして存在感の高い東名の無料化は、首都高などと同様渋滞がひどくなると考えていたのですが、東名だけ有料で残せば、おそらく無料化される中央道へシフトしてしまうだけでしょうから、確かにこの方がすっきりします。

更にオンライン上の記事では割愛されておりますが、紙面上では、高速道路関連の債務35兆円は国が引き取り、国債発行でファイナンスし、60年かけて償還するということで、無理のない返済計画であり、道路の保守費用は首都高と阪神高速の料金収入で賄うことも明らかにしております。つまり債務が消えれば料金収入から保守費用を捻出するのは容易ですので、現実的な解といえます。

そして高速道路保有機構が発行する機関債がなくなるわけです。料金収入が消えてリース料がなくなるわけですから、それを担保に発行される機関債は繰り上げ償還されますが、サブプライムショックで破綻の危機に瀕し、政府が救済した米ファニーメイ、フレディマック両社のように、暗黙の政府保証は、経済情勢次第で隠れ借金として財政にのしかかるリスクがありますので、国債で借り替えるのは、隠れ借金の見える化でもあるわけです。加えて残高800兆円を超える財政状況の中で、35兆円の積み増しは大勢に影響なし、むしろ政府試算で7兆円を超えると言われる無料化の経済効果で税収が増えることも忘れてはなりません。

加えて道路会社の判断に委ねられている高速道路の新規着工が止まる効果が重要です。料金収入があるから借金を積み増して、破綻したら暗黙の政府保証で国に助けてもらうということができなくなるわけですから、中長期の財政再建にも寄与します。

ただ、懸念されるのは東名のように元々物流インフラとして重要度の高い路線の場合、当然無料化は交通量の増大を通じてさまざまな影響があるわけですから、もう少し慎重に考えても良いかもしれません。特に温暖化防止との整合性が問われる部分です。

元々利用度の低い地方の高速道路の無料化は、CO2排出増も知れてますが、東名の交通量が増え、かつ渋滞が増えるとなれば無視できません。むしろ「だから第二東名は必要」という声を増強しかねないし、その可能性の芽を摘む無料化は「間違い」と糾弾されるリスクを民主党は自覚しているでしょうか。そのあたりに一抹の不安があります。

私はこう考えます。第二東名、第二名神の完全整備で物流インフラは確かに増強されますが、そのための費用が10兆円ほどと、何とリニアを大阪まで整備した場合と同等の見積もりとなります。その一方で温暖化対策としてトラック輸送の鉄道貨物へのモーダルシフトを前提とすれば、名古屋の南方貨物線や城北線の整備や変電所増強、着発線有効長延長による列車単位の増強と所要電力を賄う変電所増強など一切合切の合計で1,000億円程度と見積もられており、何と1/100で済むのです。この程度ならば国の財政支援で可能ですから、東名を無料化するなら、ここまでセットでぜひ考えてもらいたいところです。

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Saturday, July 18, 2009

高速千円で貨物繁盛ありがとう嗚呼夏休み

気がつけば夏休みシーズン突入ということで、早速1,000円乗り放題の高速道路は大渋滞です。

3連休の高速道路、初日は57キロ渋滞も 行楽地・ふるさとへ車の列
選挙目当ての票欲しさの人気取りがこの事態を招いているのですが、そこまでして必勝を期した総選挙は投票日8/30で今月21日に解散されるということですが、有権者は盆休みで選挙区を離れますから、人のいない選挙区での議員センセイ方の選挙運動は大変です。加えて渋滞でくたくたで帰ってきたらいきなり投票を迫るとなれば、怒りが与党に向くというもの、夏休みで浮動票が選挙区を離れるところで投票の方が、組織票頼みの与党に有利だったろうに。ま、ここまで事態が悪化すれば関係ないか(苦笑)。

忘れられているかもしれませんが、去年の7月は原油価格が1バレル140ドル台のピークをつけたあと下落、ガソリンの店頭価格はほぼ1月遅れでリッター185円をつけて需要が急減速し、夏の行楽シーズンを直撃しました。その反動もあり石油業界や地方の一部の行楽地はウハウハですが、当然CO2排出は拡大、コペンハーゲンのCOP15が思いやられます。

そして1,000円乗り放題は軽、小型、普通自動車限定で、物流を担う大型トラックは対象外な上に渋滞の影響を受けるということで、トラック業界から悲鳴が上がっておりますが、同時に物流を直撃するわけですから、影響は家計にも企業にも及びます。

というわけでJR貨物では、8月の旧盆期間中の平日4日もETC割引が実施されることを受け、この夏は貨物列車を大増発、荷主企業に営業攻勢をかけております。

JR貨物、お盆期間の貨物列車増発 高速道の渋滞予想踏まえ
記事中にもあるように、天候で出荷量が変動するビールや清涼飲料水も、企業に営業社員を貼り付けて大量出荷にも対応するなど、本気モードバリバリです。ある意味トラック業界の窮地を利用する形ですが、従来取り込めていなかった企業を顧客として取り込むチャンスです。

元々貨物列車はアボイダブルコスト(機会費用)方式で列車の実運行に応じた線路使用料を清算する方式ですから、ダイヤ上は不定期列車として設定し、需要に応じて運行することでコストを抑えているわけですから、新たに列車設定するわけではありません。あくまでも余力を利用する形ですから、JR貨物としてはお盆の増発分はそのまま増収となる構図です。

加えて従来取り込めなかった企業へのお試し期間という意味もあります。従来は輸送の弾力性や運賃面で折り合わなかった企業を定常利用に取り込むことができれば、千円高速様々ということになります。アホな思いつきでも役に立つことはありますね(笑)。

逆にGWの実績では惨敗だったJR旅客各社ですから、臨時列車設定を理由に増発を断る理由もなしで、人口減少で需要低下が予想される近未来の鉄道シーンを先取りするような動きです。今は儲かっていなくても、貨物がレゾンデートルとなった東北新幹線の並行在来線のIGRいわて銀河鉄道や青い森鉄道が結局補助金で下駄を履かせた形ながら、貨物の線路使用料収入で辛うじて収支均衡させているように、温暖化防止を睨めば旅客会社にとっての将来の保険となるわけです。貨物イジメに励む某社も括目すべし。

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Wednesday, July 08, 2009

JR福知山線事故で山崎社長を起訴したものの

問題山積の起訴と申し上げておきます。まずは報道チェック。

JR西の山崎社長を在宅起訴 福知山線脱線事故
現職社長の起訴は異例ですが、当の山崎社長は辞任を表明、事故の予見可能性を否定して争う姿勢です。
JR西日本の山崎社長、辞任を表明
検察の起訴事由がATS未設置ということで、事故の予見可能性とそれを踏まえた不作為となるわけですが、事故を矮小化していると言わざるを得ません。より重要なのは、企業の過失責任をどう問うかという視点です。

この辺はあれから2年の福知山線事故で明らかにしたことですが、その視点からすると、事故後に社長に就任し、安全対策に走り回っていた山崎社長だけの訴追はバランスを欠くものと言わざるを得ません。問われているのは法人格を持つ企業の不法行為に対する経営トップの代理処罰ができるかどうかです。この辺は経済活性化のための規制緩和を行う上で、セットで考えるべき部分ですが、事前規制で企業活動を萎縮させるよりも、事後的に強固な処罰をするいわゆる法化社会の議論として考えるべき事がらです。日本の司法は世界標準からは程遠いですね。

あとATS設置は、事故時点では設置義務は法定されていたものの、設置基準は定めがなく、あくまでも事業者の自主的判断によっていたわけで、事故の予見可能性を争うという検察の姿勢ゆえに、山崎氏も争う余地があるんです。皮肉な話ですが、現場のヒヤリハット、事故に至らないインシデントの現場報告が十分に行われていなかったJR西日本においては、経営幹部が危険性の認識を持たないのはある意味当然なんで、組織が機能していなかった場合の経営責任の判断をこそ司法には求めたいところです。

というわけで、参考記事として事故調最終報告書を巡る記事2件を挙げておきます。

速報! JR福知山線事故調最終報告
JR福知山線事故最終報告書続報

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