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Saturday, September 12, 2020

愛なき成長戦略

愛ある成長戦略の秋元司議員が保釈中に偽証依頼で再逮捕されました。呆れてものが言えませんが、秋元議員は二階派所属ですが、時期総理と目される菅義偉官房長官が進めていたIRでの汚職ということで注目されます。

そのIRですが、中心となるカジノは元々クラスター効果で集積を創る効果が期待されていた訳ですが、コロナ禍で見直しは避けられません。実際日本進出を狙っていた米カジノ事業者は本国の事業失速でそれどころじゃなくなり撤退を表明しています。一方で無観客開催が続くJRAの競馬は勝ち馬投票券の売上が過去最高となっています。場外馬券売り場の再開とネット投票の増加が寄与したものですが、これ他のプロスポーツでも参考になります。

カジノを誘致するぐらいなら、ブックメーカーを公認する方がリモートの時代にはふさわしいし、現実的に欧州ブックメーカーのサイトを利用する日本人ユーザーが少なからず存在する現実を見れば、国内ブックメーカーの存在は資金流出を抑止する効果もありますし、逆に海外ユーザーの取り込みも期待できます。だけど新政権はカジノを捨てないだろうなあ。

また管氏はアベノミクスの継承を公言してますが、前エントリーの続きですが、三本の矢の三本目の成長戦略を今度こそと期待する向きもありますが、それは不可能です。一本目と二本目の矢で日本の潜在成長力はむしろ低下してますし、止めを刺せば下手に成長軌道に乗れば資金需要の逼迫で金利が跳ね上がり、それを呼び水にハイパーインフレを呼び込む可能性もありますし、それ以前に利払いの増加で政府財政が急速に悪化すます。ギリシャショックと同じ構図です。

日本の場合国内の貯蓄過剰がありますから、やや事情は違いますが、金利上昇を強引に抑え込む日銀の異次元緩和を続けざるを得ませんから、結局それが成長の足を引っ張り低成長に甘んじることになります。加えて日本の大企業がこぞって銀行の融資枠を設定してもらったり、社債発行が相次いでいるように、低金利故に可能な資金繰りが金利上昇で一転阿鼻叫喚地獄になる訳で、過剰債務は銀行にとっては不良債権になる訳ですから、バブル崩壊後の金融危機に逆戻りです。意地悪い見方をすればバブル崩壊当時はまだ日本の成長力は健在だったからバブル崩壊につながったとも言えます。アベノミクスの一本目二本目の矢も低成長だったから可能だったとも言えます。

管氏の発言からは成長戦略へのコミットを強める姿勢が見えますが、そのために官僚への締め付けは強まるでしょうし、秋元議員に留まらず河合夫妻の疑惑解明も進まないと見るべきでしょう。検察や司法がどこまで迫れるかは未知数ですが、河合夫妻の事件では収賄側の地方議員等100名ほどが全員不起訴となっています。ゴーン事件同様司法取引を悪用した可能性があり、がさ入れまでした自民党本部も訴追されず、河合夫妻だけを断罪する構図は違和感を拭えません。

てことでDXを中心に生産性向上を図るってのが中心になりそうですが、早速冷水を浴びせる事件が発覚しました。

ドコモ口座、全35行で新規登録停止 異業種連携に穴:日本経済新聞
これセブンペイの不正と同じ構図で、消費増税を機にキャッシュレス決済を普及させようと政府が旗振りした結果、セキュリティがガバガバなシステムが出来上がった訳です。しかも既に同じ手口でりそな銀行の不正引き出しが発覚していたにも関わらずNTTドコモはシステムを見直さず、本人確認が緩いまま被害を拡大しました。

今回の不正は更に複数の銀行で過去に口座情報が漏洩していた点も問題です。口座名と名義人がわかれば4桁のキャッシュカード暗証番号を解明することで本人に成りすますことができます。実際今回被害に遭った人はドコモユーザーは少なかった訳で、逆にだから発覚が遅れたとも言えます。こんなんでフィンテックのオープンAPIなんて無茶な話です。貧テック鈍テックな低成長国家に甘んじる現実が見えてしまいました。

それと気になるのが高給取りと言われる銀行マンもご多分に漏れず非正規化が進んでいて、非正規行員には待遇への不満も蓄積していると見られます。加えて見なし正社員ルールを盾に雇用期間も細切れとなれば、不満を理由に銀行の口座情報を外部へ漏らす退職者が現れても不思議ではありません。ただでさえ低金利にあえいでいる銀行で、行員のモラルが低下すればどうなるかということですね。これアルバイトのバカッター騒ぎや東京女子医大病院のボーナス不支給を巡る看護師の大量退職騒動などと同様、人件費を削るとろくなことが起きないってことでもあります。

その観点から言えば、JR北海道やJR四国の置かれている状況も似ています。特に厳寒で路盤を支える土壌も弱いJR北海道の場合、幹線でも線路等級が低く軌道負担力が弱いため、例えば大型蒸機C62の北海道転属の時にボイラー交換して軸重を下げたなんてことまでしてます。有名なスワローエンジェル©622号機もオリジナルではない訳です。

そんな調子ですから、北海道の鉄道マンの苦労は大変なもので、それでも長年の熟練で何とか対応してきたものの、国鉄分割民営化以前にローカル線の廃止も進みJR北海道へ継承された路線は規模を縮小し、熟練社員の多くは余剰人員として国鉄を去った一方、残った社員も高齢化で退職し、一方補充の若手は少なく、技術の継承が困難になりました。その結果保守が行き届かず度重なるトラブルにつながった訳です。

更に言えば国鉄からの資産継承時に資産価格を低く査定した結果、減価償却費の減少で利益は出やすくなりますが、設備更新は進まず脆弱な線路を振り子式高速ディーゼル車が走って線路を痛め、更にJR貨物のDF200型投入も線路を痛める原因になっている訳で、早晩行き詰ることは避けられなかった訳です。なるほどJR北海道自身が北海道新幹線に熱心だったのは、並行在来線切り離しで負担が減ることへの期待もあったのでしょう。

新幹線札幌延伸まで10年 並行在来線に3つのポイント:日本経済新聞
JR北海道にとっては整備新幹線のスキームで国と地方の資金を得ながら設備更新して重荷となる並行在来線を切り離せますから、効率追求の建前からも北海道新幹線は必須だったのでしょう。しかし切り離される並行在来線の厳しい現実も明らかになりました。函館―長万部間は道南いさり火鉄道を受け皿に議論が進んでますが、これはJR貨物の免許区間でJR貨物調整金が当てにできることが前提にあります。

この調整金は東北新幹線盛岡以北でJR貨物の指摘で問題になったJR貨物の格安な線路使用料の維持と並行在来線引き受け三セクの費用負担のギャップを鉄道・運輸機構\が差額補助するもので、原資は整備新幹線の貸付料に上乗せしてJR旅客会社が負担するものですが、逆に言えばそれぐらいしか並行在来線三セクを支える原資は無いってことです。一方の長万部―小樽間は貨物調整金が無く沿線人口も少ないことから、鉄道としての維持は困難と見られます。加えて言えば青函トンネル区間の速度制限解除のために貨物の船便シフトの計画が国交省で練られてますが、実現すれば函館―長万部間の鉄道維持も困難になる訳で、実現は困難です。

しかし心配なのが新政権で効率優先を旗印に政府が干渉する可能性があり、地元の調整を頭越しに無視する可能性も指摘できます。そうった強権主義の片鱗は例えば地方銀行の数が多すぎると合併促進に言及したりする姿勢にも見えます。加えて鉄道維持にビタ1銭出し惜しみをする北海道庁の姿勢もあり、愛なき決着の可能性を高めています。油断できませんね。

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Saturday, September 05, 2020

アベノミクスは終わらない

終わらせろと書いといて何ですが^_^:、より正確に言えば終われないんですよね。てのは効果のない無意味なアベノミクスを続けた結果、身動きが取れなくなっているのが実際だからです。だから誰が後継総理になっても、あるいは極端に言えば与野党で政権交代が起きても、打てる手は限られてしまうという地獄のような現状だからです。

始まる前からのアベノミクス批判に留まらず、不思議の国鏡の国でも指摘したように、効果がないばかりか副作用ばかりで、結果的にウソノミクス統計135°のように統計数字を誤魔化すし、森加計問題のように公文書の改ざんも平気ということで、後継者と目される管官房長官のスガノミクスが注目されたりしてますが、結局アベノミクス継承で国民を騙し続けるってことです。

余談ですが、不思議の国の相鉄JR直通列車は利用が伸びず、結果的に武蔵小杉民の乗車機会を拡大しているのが皮肉です。おそらく東急との直通で品川東京方面へシフトが考えられますが、そうなるとグリーン車組み込み15連で付属4連羽沢落としG車込み11連で相鉄へということも考えられます。延伸不能な田浦駅対策で横須賀線の基本編成は1両ドアカット機能がありますから不可能ではありません。ついでにグリー料金のおまけも。相鉄12000系はATACS搭載を活かして朝に新宿以北へ送り込んで埼京線で終日運用して夜帰還する運用で車両走行キロ調整に供するってところでしょうか。

鏡の国の公共事業が実はゾンビ企業温存にしかならない点は指摘しましたが、加えてGoTo トラブルで示した恒等式GDP=消費+投資+政府支出+輸出-輸入
を思い出していただきたいんですが、これ生産の指標であるGDPを所得の面から見たもので、所得=消費+貯蓄と同義です。つまりGDPの式の右辺の第2項以降の合計が貯蓄とイコールなんです。てことで橋本政権の金融ビッグバン以来の「貯蓄から投資へ」というキャッチフレーズは無意味なんですね。経路はいろいろあるけど、所得から消費を引いた残余が貯蓄で、投資と政府支出と輸出から輸入を引いた純輸出に振り向けられるって意味です。貯蓄と投資は裏表の関係でしかない訳です。

ただし貯蓄=投資ではない訳で、政府支出のファイナンスと余剰生産品の輸出で調整される訳です。てことは、政府の財政赤字と輸出依存が続く限り投資に資金が向かわない訳で、これアベノミクスの第一の矢は為替の円安シフトで輸出を促し、第2の矢は財政出動でいずれもGDPを押し上げはするけれど、経済成長に欠かせない企業の投資行動を抑制することになる訳ですね。

また両者は本来政府財政の悪化に伴い上昇する筈の市場金利を異次元緩和で抑え込んでいて、特に銀行の融資による利ザヤが圧縮されますから、信用創造の基本である銀行融資の拡大が見込めず、銀行は余剰資金を株や債券で運用せざるを得ません。株式は5%の保有制限がありますから、勢い債券運用に偏りますが、そうなると安全資産とされる国債運用に偏ります。

それが日銀の異次元緩和で爆買いされている訳ですから、社債や外債へシフトせざるを得ません。特に後者はポーt-フォリオリバランスと称して日銀が意図的に民間資金を外債投資に振り向ける結果、為替相場が動いて円安になるって理屈です。しかし米FRBもゼロ金利に復帰したように世界の主要国中銀が金融緩和で足並みを揃えてくると、結果的にどこへ投資しても金利を生まないから、結果的に為替も膠着して動かなくなりますし、信用力の劣るジャンク債への投資も増えます。

あとコロナ禍もあって劣後債の起債が増えてますが、これ債券ながら元本返済の義務が無く、その分高めの金利を払い続けることで会計上資本勘定に算入できるということで、言ってみれば議決権のない株式に近いですが、ややこしいのは優先株のような種類株ではないんですね。優先株はあくまで株式で、議決権を返上する代わりに優先配当の権利を得るもので、金融危機の時の銀行の公的資金注入で使われた手法ですが、優先株は期限を切って普通株に転換する条件が設定されていたりして、期限内に注入された資金を活用して不良債権処理を進め正常化したら買い取って消却するという前提で発行されたものですから、微妙に異なります。

あと株高の意味も考える必要があります。日経平均に限らずTOPIXも上がって取引高も増えているという点でアベノミクスを成功と評する向きもありますが、今や東京株式市場の主要プレイヤーは外国人投資家であって、外国人が買えば上がり売れば下がる状況です。外国人投資家は東京市場をドル建てで見ていて、為替が円安になれば買い円高になれば売る訳です。しかも資金は日本国内で調達しますから、日本の過剰流動性を利用してほぼ為替フリーで投資できる訳で、国民が積み上げた厚い貯蓄を利用して利ザヤを稼いでいる訳です。そして株価上昇は株式市場への資金流入の結果ですから、国民の貯蓄が空回りしているとも言える訳です。

そして株価が高止まりすると時価で見た配当利回りは低下しますから、株価が上がれば上がるほど、長期投資の資金を遠ざけることになり、この面からも債券投資への傾斜が起きる訳です。そうしてジャンク債や劣後債のブーム?って珍事になる訳です。つまりほぼ金利負担なしに資金調達できるけれど、リターンが見込める投資先が見当たらない訳です。その点からすると一時のユニコーンブームや昨今のGAFA等ハイテク企業一人勝ち状態のアメリカでは、ベンチャーキャピタルなどを通じて企業のアニマルスピリットが発現している訳ですが、そのアメリカも財政赤字が深刻化しており、日本化の可能性はあります。

てことでいいとこなしのアベノミクスですが、だからといっていきなり利上げしたり財政を圧縮したりできる訳じゃないところが悩みどころです。財政規律を取り戻すにしても時間をかけて徐々にしかできませんし、過剰流動性相場だからと株価を冷やすことの副作用もある訳で、アベノミクスの失敗は明らかでも出口対策は実は難しい。結局目先の数字を整えるためにこれからの経済政策の選択肢を事実上失わせたことが、アベノミクス最大の副作用って訳ですね。

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Sunday, August 30, 2020

アベノミクスを終わらせろ

健康上の理由による突然の辞任ですが、腑に落ちないのが代理を立てて直ちに静養しないことです。来月の自民党総裁選で後継者が決まるまで執務を続けるのは、責任の取り方としておかしいです。当然国会召集も新総裁に丸投げとなる訳です。自分の任期中に後継者を競わせることで、影響力を維持したいってことでしょうけど。

それはそれとして、アベノミクスの総括がどうなるのかが興味深いところです。成果として株価の上昇と雇用環境の改善が取り上げられますが、いずれもアベノミクスの成果ではありません。株価といっても日経平均株価ばかりが取り上げられますが、これ225の優良銘柄の平均値ですから、上がらない方がおかしいんです。ま、バブル崩壊で実際下がった訳で、38,000円台を付けた最高値に未だに届いていない訳です。

この225銘柄は定期的に入れ替えられますし、合併や上場廃止などで銘柄数が減れば補充されます。謂わば日本のチャンピオン企業を集めた指標ですから、上がらないってことは日本経済の成長力の劣化を意味する訳ですし、実際バブル崩壊以来下がりっぱなしだった訳で、下がった水準から少し戻したことを以て成果とするのはおかしい訳です。

あと雇用に関しては、完全失業率の低下や有効求人倍率の改善が言われますが、非正規雇用が4割を占める質の劣化は問題です。これも90年代後半から生産年齢人口の減少が始まり、2007年以降には団塊世代の大量退職もあった訳ですから雇用情勢が売り手市場になるのは必然ですが、一方で企業の求人難に対しては非正規雇用の拡大で穴埋めされた訳で、その結果高齢者と女性の労働力率は高まりましたが、見方を変えれば、その間GDPはほとんど伸びていない訳で、労働生産性が低いまま労働力の投入量を増やしてGDPを維持したというのが実際です。

これ前エントリーで指摘したように政府の成長戦略で経済成長する訳じゃなくて、企業の成長力が結局経済成長をもたらすという当たり前のことを申し上げておきます。その意味で示唆に富むのがこれ。

角栄メモは今も問う ポスト安倍の金融センター構想は 本社コメンテーター 梶原誠:日本経済新聞
コラムでは今度こそ東京をアジアの金乳センターにすべしという希望的観測が語られてますが、1974年に東証理事長に就任した谷村裕氏に当時の田中首相がメモを渡して株式市場の抜本改革を求めたことが、国際金融都市東京の出発点ということです。

その「角栄メモ」の中身は「エクイティファイナンスは利払いがなく低コスト」とする日本企業のあり方を根本的に見直すべきことが綴られていたそうで、株主価値の向上と株主還元に重きを置くものだったということです。所謂コーポレートガバナンス問題ですが、株式持ち合いで安定株主対策を取りながら、株主に煩わされることなく意思決定していた日本企業の姿がその後どう変わったかは問われます。

リーマンショックで株主資本主義の弊害が指摘されましたが、それ以前に株主という外部の目を排除して独善的に意思決定してきたことが、バブル期に財テクと称して土地や株へ投資資金を振り向け、次の成長に繋がる投資を怠った結果、バブル崩壊で競争力を失った訳で、基本的に日本経済は当時の失敗を乗り越えられていない訳です。

かつて電子立国と言われ世界の半導体市場を席巻した日本の電機産業が典型的です。バブルに踊りIT革命の波に乗り損なった間に、ムーアの法則に則って大規模投資を継続した米インテルや、後発ながら積極投資でグローバルプレイヤーに成長した韓国サムスンやLGの後塵を拝する結果となった訳です。

余談ですが日韓事変の後日談ですが、日本の化成品輸入が滞った結果、サムスンもLGも製造工程を見直し、例えばディプレイパネルなど精度を要求されない工程で韓国産化成品を使う一方、日本の化成品メーカーが現地進出することで、同等品の入手も可能になり、今後製造技術の移転で韓国メーカーもキャッチアップが期待されるという状況になり、財閥企業と中小企業のギャップ解消が進んだことで、韓国から「安倍さんありがとう」の声が上がってます。これをアベノミクスの成果と呼ぶかどうかは微妙ですが^_^;。

バブル崩壊で沈んだ日本の電機産業ですが、コロナ禍で沈むとすれば自動車産業でしょうか。自動車メーカー本体は何とか持ちこたえるとしても、部品メーカーから悲鳴が上がっています。1台3万点と言われる自動車部品の供給がコロナショックで止まり、感染防止の観点からも国内メーカーの操業停止が相次ぎ、結果的に国内部品メーカーも操業を止めざるを得なくなりました。その結果資金繰りが悪化しており、いずれ廃業も出てくるでしょう。そうすると結果的に国内サプライチェーンが弱体化し、生産再開が早かった中国依存が短期的には強まる可能性があります。そうなると危機対応で国内回帰が叫ばれるのと逆の動きとなって、国内サプライチェーンが立ち枯れていく可能性があります。

元受けの大手メーカーが資本を入れるとかすれば何とかなるかもしれませんが、CASEなど100年に一度の変革期を迎える自動車産業で、在来型のガソリン車の部品供給が滞ればEVシフトが進む可能性も視野に入れる必要があります。逆に大手メーカーにはある意味チャンスかもしれませんが、それは多数のサプライヤーを犠牲にしての生き残りということになる訳で、そこまで腹の座った経営者が果たして現れるかどうか?

そしてEVシフトはある意味自動車メーカーの強みを失うことにもつながります。内燃機関をコントロールしてて適切に動力を取り出し駆動する技術はアナログなチューニングの塊であり、それが参入障壁にもなっていた訳ですが、その強みが失われれば、新規参入者との競争を覚悟しなければなりません。

生産台数では劣るテスラがトヨタを時価総額で上回るってのはそれなんですね。部品メーカーとのしがらみのないテスラは、オンラインでバージョンアップしながら性能を高めるというスマホのような繋がるクルマを実現してますが、これが既存メーカーには高いバリアなんです。自動車の世界も電子化自体は進んでますが、それは主にロッドやワイヤーを電子回路に置き換えることが中心で、機能的にひと塊のユニットを組み立てるモジュール化とも関連します。個々のモジュールに制御用のプロセッサーが組み込まれており、独自OSで動いている訳で、モジュールに不具合があればモジュール単位で交換するという形でブラックボックス化しており、これがコネクテッドカーへの進化を阻んでいる訳です。

てことで、心配なのが政府による自動車産業への介入なんですが、実際窮地にある日産をホンダに救済合併させようとして双方から断られたなんて話もあります。仮に構造変化でつぶれる自動車メーカーが出るとしても、それは市場の正常な作用であって、政府が手を突っ込むような問題ではありません。

逆に気になるのが密を避けるという意味で公共交通忌避に乗じて自動車を売ろうという方向へ進む可能性もあります。公共交通の独立採算原則の下では放っといても公共交通は立ち枯れるから車を売るチャンスという訳ですね。国民の移動の権利が規定されていない交通政策基本法の下ではそうなります。

同じ公共交通でも、鉄道やバスは換気に配慮して対応してますが、それが出来ないのが航空でして、空気の薄い成層圏を飛ぶ以上、気密性も保持が優先されます。実際航空機の前後の席での感染が報告されてますし、航空産業にとっては逆風は続きます。ある意味フリュグスカム(飛び恥)実現のチャンスでもある訳ですが、恐らく政府は航空の救済に向かうでしょう。

あと気になる動きとしてはJR東日本が時間帯別運賃の導入を検討するというにゅーすですが、これ運賃制度へのダイナミックプライシング導入が意図されています。その問題点はデジタル経済はビッグブラザーの夢を見る? で指摘した消費者余剰の搾取を意味します。届け出制の特急料金やグリーン料金では既に繁忙期と閑散期あるいは事前購入か車内購入かで格差をつけてますが、これわかりやすく言えば客の足元を見て高く取れるところから取るという話であり値上げの口実です。つまりSuica甘いかエントリーで指摘したように、仮に消費税減税が実現しても交通運賃の値下げは無いってことです。

書きたいことはまだありますが、長くなりましたので一旦終わります。アベノミクスには終わってほしいけど。

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Sunday, August 23, 2020

コロナの後遺症

covid-19の感染拡大が続いていますが、日本の場合検査が少なすぎて、感染拡大の実態が見えないまま、国民の疑心暗鬼ばかりが拡大します。故に大学ラグビー部の寮でクラスター感染が確認されたら。ラグビー部と無関係の教育実習生受け入れが断られたりという差別的なことが起きてしまいます。相変わらず保健所の窓口能力がボトルネックになっていて改善は見られません。

東京都や大阪府の知事がメディア露出で政治利用している実態もあり、国民に寄り添う政治姿勢は見られません。一方で世界中からコロナ感染者が回復後も心臓や肺に延焼が見られるなど後遺症が指摘されており、とてもじゃないけど普通の風邪レベルの話じゃありませんし、感染力の強いウイルスの生存戦略としての弱毒化も見られません。確実に長引くコロナ禍の中で、出来ることを積み重ねるしかありません。

そしてまともなコロナ対策を打ち出せない政府の無能に批判が集まるようになりました。アベノミクスが始まる前から批判していた身としては、ここへ来ての内閣支持率低下に今更感しかありませんが、歴代政権の実質GDP成長率の比較を見ても、大規模財政出動で経済を下支えした小渕・橋本政権で1.0%、規制緩和中心に新自由主義的な構造改革路線の小泉政権で1.0%、何だかよくわからなかった民主党政権で1.6%、大規模金融緩和の2019年までの安倍政権で1.2%です。しかも安倍政権にはオマケがついてます。

日米欧GDP戦後最悪、4~6月 日本はデジタル化カギ:日本経済新聞
統計不正などのインチキで数字を作ってきた安倍政権ですが、コロナで吹っ飛びました。しかも19年10-12月期、20年1-3月期に続く3期連続の下落ですから、ザックリ元の水準から1割減ってところです。しかもコロナ禍が長引くから回復には3-4年程度あるいはそれ以上の相当の時間がかかると見るべきでしょう。安倍政権下の成長率はさらに下がる訳です。

歴代政権の比較で何だかよくわからなかった民主党政権時代が最も高いってのは意外ですが、これ東日本大震災の復興による部分もありますから、やや下駄を履いた数字ではあります。しかし大災害に対して汗かいて国民に寄り添って努力したことは認めて良いと思います。つまり成長戦略ぶち上げて景気の良い話を煽った自民党系政権に対して、目先の課題に取り組んだ結果、経済が反発した訳です。ここ重要です。

てことでまともなコロナ対策も打ち出せずに国会も開かずに逃げている限り、安倍政権の評価は下がらざるを得ない訳です。そもそも財政政策や金融政策を成長戦略とするのは疑問です。マクロ経済政策を理論化したケインズが、報道記者に成長理論を問われて「アニマルスピリット」と答えた逸話が有名です。ケインズの理論は経済成長過程で生じる景気変動を平準化する理論であって、実際の成長は企業家のアニマルスピリットに依存するという意味です。つまり自らの経済理論に成長理論は無いと認めた訳です。

政府が打ち出す成長戦略は当てにならない訳です。結局企業がリスクを取って投資することが成長に繋がる訳で、その意味で成長できないのは政府のせいだという新自由主義者の主張も要注意です。例えば民主党政権で実現した高速乗合バスの規制緩和も、ツアーバス事業者からすれば規制強化なんですが、規制をクリアして乗合免許を取得した所謂新免事業者が輸送市場の活性化に寄与したように、ルールの変更は重要ですが、岩盤規制があるから成長できないなんてほざく経営者は、無能を晒しているに等しい訳です。運輸省や郵政省と戦ったヤマト運輸の事例を挙げるだけで十分でしょう。

ただ悲観すべきではないのは、GDPは付加価値の合計であって、例えば外出自粛や飲食店の営業自粛で必然的に自宅で食事をとる機会が増える訳ですが、飲食店の原価率が3割程度で元々付加価値が高かった一方、スーパーで食材を買って自宅で調理すれば、飲食店が生み出す付加価値は消える訳ですから、生存には問題がない訳です。付加価値って選択的消費の結果生じる訳ですから、早くコロナ感染を封じ込めて、手間のかかる自宅調理より外食を楽しめる環境を作ることが大事ってことです。

心配なのは雇用でして、既に多くの企業が来年度の新規採用を見直していて、JALやANAは既に採用停止を打ち出しておりますし、JR西日本も新規採用抑制を打ち出しております。JR各社は国鉄末期の採用停止で空白の世代があり、今後国鉄OBの社員の大量退職が見込まれるため、計画的に新規採用を拡大してきたのですが、コロナ禍による運輸収入の減少でそれどころじゃなくなりつつあります。

一方でネット通販の利用拡大で宅配便のドライバーは増えてますが、急激な拡大には正社員主義のヤマト運輸も追いつかず、利益を減らすとして減少傾向にあった外部委託に頼らざるを得ないですし、更に外食の宅配でウーバーイーツなどの拡大が見られますが、これも飲食店の営業自粛でアルバイト先を失った学生、フリーター、外国人留学生などが更に不安定なギグワーカーに転落したとも取れる訳で、雇用の劣化は止まりません。ただでさえ低下著しい日本の労働分配率はさらに低下し消費を冷やすことは間違いありません。

そして新卒の正規雇用減少はいつか来た道ですね。90年代後半のロズジェネ世代の再現となり、多くの若者が社会人としてのキャリアの始まりで躓く訳です。とはいえベンチャーキャピタルの弱い日本では起業もままならずですし、コロナ禍が収まるまでは海外渡航もリスクがあります。ある意味ロスジェネ世代より過酷な現実に直面しているとも言えます。

そして現役世代の賃金低下は年金や医療保険など社会保障にストレスを与えます。年金給付の減額や診療の自己負担増で対応すれば、寧ろ老後不安から現役世代の貯蓄性向を高めますから、これも消費を冷やします。そしてロスジェネ再現以上に問題なのが、学校教育の遅れです。学校の閉鎖でカリキュラムの消化が遅れていて、夏休みを極端に短縮しながら密を避けで授業を行う教育現場のストレスは相当高いですが、問題は小中高大と幅広い世代に影響が及んでいることで、将来「ゆとり世代」ならぬ「コロナ世代」が長期に亘って経済にマイナスインパクトを与えかねません。安直に学校閉鎖を決めたツケが重くのしかかります。

てことできりがないのでこの辺にしておきますが、この状況で公共交通の逆風をどう乗り切るかは重大です。おそらく独立採算原則を見直さない限り、立ち枯れていく未来が見えますが、民主党世間が提案した交通基本法を自公政権で交通権部分を省いた交通政策基本法として成立させたことがネックになりそうです。憲法に紐付けされた交通権を盾にしないと、結局自治体は金を出し渋り事業者は撤退せざるを得なくなることになりかねません。

また欧州で見られる交通税のようなものを導入する手はありますが、これも恐らく課税対処になる沿線住民や企業の反対で潰されるのがオチになりそうです。あるいは揮発油税など燃料税を事業者への補助金に使うとか、国税レベルで炭素税のような新税を導入して補助財源にするとか、公的サポートを考えないと持続可能性を損なうことになります。

てことで経済社会にも深刻な後遺症を残しそうなコロナ禍です。国会召集早よ!

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Sunday, August 16, 2020

コロナで変わるパワーシフト

人口減少にあえぐ日本と欧州ですが、人口増加でパワーシフトが起きると言われていた日本を除くアジアに異変が見られます。

中国新幹線、2035年に総延長2倍 投資額70兆円か:日本経済新聞
これ田中角栄の日本列島魁皇論の中国版ですが、都市域の広い中国の50万都市って日本の感覚で言えばさして密集度が高くないので、ほぼ広大な大陸中国の津々浦々を高速鉄道でカバーするという狂気じみた計画です。

風邪は寝て直せで取り上げましたが、そもそも最初にcovid-19の感染拡大が見られた武漢市が交通の要衝で人の移動が活発だったことが、中国全土及び世界への感染拡大をもたらしたことを忘れてはいけません。covid-19はグローバル化がもたらした新しいタイプの感染症であり、高速移動の条件が整えばそれだけ脅威も拡大するし、今後も未知の感染症の蔓延を助けることになるということも考慮すべきです。これ日本でもアフターコロナでリニア作れという議論がありますが、同じ種類の誤謬です。

中国では香港やウイグルの人権侵害問題は取り上げられますが、実はもっと深刻な農民問題が影を落としています。中国の農業人口は7億人程度で人口のほぼ半分ですが、農村出身者は都市住民になれない制度上の制約もあり、都市で就業しても農民工として扱われ、差別的な待遇に甘んじていますが、経済成長と共に都市在住者が豊かになる一方、低賃金労働に甘んじていて、昨今待遇改善のためのストライキが頻発しています。農民工には漢族以外の少数民族も多く、不満がたまっています。

更に法改正で地方政府の土地利用権限の拡大が行われた結果、農村に留まる農民も、分散する農家を集合住宅に移住させて開発用地を生み出すということが各地で行われ、農地に隣接した農家が取り上げられ、集合住宅から農地へ通勤という笑えない事態になっております。経済成長のために地方政府の開発事業は基本的に奨励されておりますが、不正の温床にもなりやすく、習近平政権の不正撲滅運動で少なからぬ地方政府幹部が失脚してもおります。中央集権の建前と裏腹に、地方政府の暴走を手綱を締めて操る現状は、実は中央と地方の緊張感を生みます。故に地方が潤う経済対策を打って不満を和らげる必要もある訳です。

こんな状況ですから、香港だけを特別扱いできませんし、経済成長のエサを撒いて不満を封じ込める必要がある訳です。という訳で、習近平政権の経済重視は変わっておりませんし、ある意味香港市民は金儲けには熱心でも政治的にはノンポリでデモ鎮圧は支持されるという見立てをしていたと考えられます。元々香港は英国統治時代から植民地型の統治システムだった訳で、行政庁と立法会は独立していたものの、裁判官は裁判の都度行政庁長官が指名するという形で、司法の独立は確立していませんでした。それでも英国流コモンローで48時間で公判前保釈が普通に行われるのは、長期勾留当たり前の日本より遥かにマシですが。

だから習近平政権の性格はどちらかと言えば日本の田中角栄政権に近いと言えそうです。田中政権で懸案の日米繊維交渉が妥結した一方、アメリカを出し抜いてイラン原油確保に走るなど、独自外交を展開したことでアメリカに睨まれてロッキード事件で失脚することになったという見立てもありますが、米中摩擦で引かない外交姿勢などもそうですね。中国がアメリカに変わって覇権を求めているというのは当たりません。中国から見ればアメリカの言いがかりに対応しているだけってことですね。

付け加えると高速鉄道整備で資産規模を拡大した中国鉄路集団ですが、当然負債も拡大しており、このまま高速鉄道整備を続ければ早晩日本の国鉄のように経営破綻を免れません。よく見れば日本の歩んだ道をトレースしていることがうかがえます。となればいずれ日本のように低成長に陥りアジア全体の足を引っ張るようになる。中国版失われた20年に突入します。日本の場合は中国の台頭でカバーされましたが、中国の規模の経済大国が低成長になったときの成長をカバーできる国は恐らく現れません。

1897年ペスト禍の香港に派遣されてペスト菌を発見した北里柴三郎博士は、ペスト菌がネズミに寄生するノミを媒介してヒトへ感染する感染経路まで明らかにして、ネズミ駆除のためにネコを飼うことを推奨し、日本でも飼いネコブームが起きたとか。夏目漱石が雑誌ホトトギスに「吾輩は猫である」を掲載し好評を博したのが1905年という時系列ですが、北里博士は脚気菌の存在を否定して東大教授緒方正規博士と対立した一方、勤めていた国立伝染病研究所が突然内務省から文部省に移管されて東大の下部機関になる形で地位を追われます。この辺PCR検査を巡るゴタゴタに通じるものがありますね。

PCR検査自体は採取した検体に含まれる特定の塩基配列を増殖して調べる検査で、抗体検査や抗原検査など他の検査方法と比べて簡単で精度も高いのですが、それでも擬陽性や偽陰性があるから信用できないという謎理論や、医療崩壊につながるという反対論で検査拡充が進みません。後者は検査を医療から切り離して体制整備すれば済むことで、確かに鼻や喉からの検体採取は感染リスクを伴いますし、相応のスキルも必要でしょう。だから大学や民間検査機関まで動員し、必要な検査キットや防護服などの医療用品を国が手当てすれば済むことですが、今に至っても出来ていません。

その結果自粛解除で案の定感染拡大が見られますし、3月4月時点では院内感染も含めてクラスター感染が中心でしたから、クラスターを発見して対応すれば済みましたが、今や感染経路不明が半数を超え、東京や大阪など大都市の感染拡大に留まらず、地方での感染拡大が見られます。医療リソースの限られる地方の感染拡大は深刻な問題です。故に帰省自粛は賢明な対応ですが、おかげでJRや航空会社などは稼ぎ時を逃している訳で、すし、当然Go Toどころじゃありませんね。感染封じ込めこそが最大の刑事政策です。

実際新幹線や在来線特急の乗車率は悲惨な状況で、こんなに空いているのは見たことがない状況です。一方在来線の普通列車はそこそこ乗ってます。勿論生活動線に組み込まれていて日常利用が一定水準存在するってことでしょうけど、拠点駅で終着列車から接続の始発列車に乗り継ぐ青春18キッパーと思しき集団は見かけます。やっぱり鉄ちゃんは自粛なんかしてないな。

面白いのは車内換気のためにドア半自動扱い区間でも各駅で全ドア開閉していることですが、E531系5連ワンマン運行の東北本線黒磯―新白河間では半自動扱いのままでした。輸送量に対して過剰な5連だから敢えて社内換気は不要ってことですかね。で、運転士は運転業務のみで、乗車券発券回収や運賃収受は行いません。故に事前の乗車券購入または乗車駅証明書による降車駅精算の案内放送が繰り返し流れます。

まるで欧州式信用乗車システムですが、一方で新白河で受ける701系2連では席がさらりと埋まり立客チラホラですから、全駅ドア開閉で社内換気は必要なんでしょう。逆に言えば、黒磯新白河方式は案外汎用性があるかも。必要ならば拠点駅の改札分離で不正乗車を防ぐという方法も考えられます。アフターコロナの芽はこんなところにありそうです。

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Sunday, August 09, 2020

帰らざる社畜

お盆に家に帰るのはご先祖様と社畜で、家から居なくなるのがアニオタと鉄ちゃんと書いた社畜人ヤプーから4年。コロナ禍で様変わりしました。バーチャルなご先祖様はコロナ禍に無縁ですが、感染拡大の心配から帰省を自粛する社畜たちは、せめてネット動画で孫の姿を両親に見せるリモート帰省がせいぜいです。お盆に限りませんが、両親の介助と妊婦の安心感から選択される帰省出産もままならず、少子化は促進されるでしょう。もはや日本では消費をリードする中間層の再生産が成り立たなくなりつつあります。

コミケの中止はやむを得ないとしても、コロナ禍が無くてもオリパラで東京ビッグサイトが使えないから、アニオタは巣篭りしてネット動画チェックで本来のオタク道に回帰するから家から居なくならないけど、鉄ちゃんは相変わらず全国に散っています。帰省ラッシュ消滅でラッキーですらあります。臨時快速ムーンライトは走らないけど。

てことでご先祖様と鉄ちゃんは変わらないってことで、共に尊い?(笑) 社畜とアニオタは共に巣篭りだけど前者は強制後者は自発と中身は大違いで、ニューノーマル(新常態)での社畜人ヤプーの幸福はいずこ?

所定外給与24.6%減 6月、過去2番目の下げ幅:日本経済新聞
これ正規雇用者の残業の減少とボーナスの削減が原因ですが、非正規雇用者の雇い止めやアルバイト・パートの時間短縮を反映しておりませんから、消費へのマイナスインパクトはより大きい訳です。そんな中でのGo To トラベル強行はそもそも消費喚起効果が限られます。正規雇用者の残業減少も、不況による調整の意味に留まらず在宅ワークによる残業代ゴマカシも含まれますし、通信費や水道光熱費の負担増による消費のマイナスも考慮する必要があります。

結局旅行業界のロビーイングの成果なんでしょう。JTB、HIS、KNT、日旅の旅行業大手4社の5月の取扱高前年比が軒並み1-3%という惨憺たる状況です。これ前年比ですからね。しかも旅行業者は旅客と運輸、宿泊その他の事業者との仲介で手数料率は10%程度ですから、もはや社員の給料の支払いさえ覚束ない逆風です。

旅行業界では所謂団体扱いってのがありまして、国鉄→JRをはじめ運輸、宿泊、その他施設でも団体利用の割引料金が存在します。実際に日本人の旅行形態は戦後長らく団体旅行が主流でしたし、個人旅行のニーズ自体は60年代後半にやっと顕在化するといったレベルでした。しかも個人旅行の発生手配は手間ばかりで僅かなマージンしか得られないから旅行会社には歓迎されないものです。

ただ旅行業法で旅行会社は主催旅行を催行できることから、団体扱いで運輸や宿泊を割引料金で仕入れて、それを組み合わせて個人向けに販売するパック旅行という旅行商品を企画販売できます。しかも大手ほどバイイングパワーを駆使して相対取引で値下げを要求できますから、仕入れを安くして利益を乗せて個人向けには個別手配と同等若しくはやや割安程度でもワンストップで申し込めて旅客側の手間が省けますし、加えて一部の史跡や施設で団体のみの見学客受け入れというところを組み込めれば、付加価値としてアピールできます。

勘の良い人はお気づきでしょうけど、ツアーバスの仕組みがこれなんですね。旅行会社が団体旅行のオフシーズンに当たる盆暮れに貸切バスを割引価格で仕入れて、主催旅行として個人客を募集し運行する形です。しかも旅行業法で最少催行人数以下の場合は催行中止が出来ますからノーリスクな訳で、乗合免許で旅客の有無に関わらず運行する義務を負う高速乗合バス事業者から不公正と是正を求められ、関越道の事故で注目を集めました。

本題に戻しますが、加えて旅行会社は旅客から前払いで代金を収受し、乗車券や航空券など大手キャリア向けの仕入れに一部使いますが、宿泊などは事後精算となりますから、国の支援を梃子にパックツアーが売れるなら、資金繰りの助けにはなります。Go To トラベルの場合、個人で支援条件を見極めて個別手配するのは手間がかかりますが、条件を踏まえた旅行商品を組むのは旅行会社にとってはお手のものですから、結局旅行会社のパックツアー利用に誘導されます。ワンストップが活かせるわけです。

その一方で宿泊を提供する旅館やホテルは感染防止策が求められ、館内消毒や従業員の手指消毒に留まらず、大部屋での食事提供やバイキングとはいかず、個室配膳となると手間が増えますしで、追加費用も発生します。いくら国が支援するとはいえ、儲けにつながるかは微妙で、実際Go To 便乗値上げのような動きも見られます。

てことで旅行会社にはメリットがあるかもしれませんが、そもそも消費の前提となる雇用者報酬が縮んでいるんだから効果は知れてますし、運輸や宿泊に留まらず裾野が広いから経済効果が大きいとのたまう経済学者がいますが、現場を知らないにも程があります。

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Sunday, August 02, 2020

北へ届かなかったひかり

両親ともに見送った身ですが、父は誤嚥性肺炎による心肺停止、母は老衰による多臓器不全で、ともに天寿を全うしたとは言えますが、最後は苦しそうで、眠るように安らかとはいかない現実を見てきました。特に母は食物の経口摂取が困難な状況で、医師から胃ろうを勧められたのですが、当時あまりに不自然な延命処置としか思えず断りました。

冷静に考えれば既に食べる行為そのものが本人にとっては苦痛だったかもしれず、緩和ケアとして捉えられなかったのではないか?これって健常者の発想でしかなかったのではないか?という疑問が残ります。既に後の祭りですが、その想いを生き残った者として抱いていくしかありません。生きる苦しみは終末期の高齢者や難病患者だけの問題ではありませんが、せめて近親者が気持ちに寄り添うしかありません。本人が「死にたい」と漏らすのはそんな過酷な生の現実こそが問題なんであって、QOL問題と整理できます。「死にたいなら楽に死なせてあげましょう」は解決策ではない訳です。

医師による嘱託殺人事件の問題は、死後の本人に「死んでよかったか」を問うことができない不可逆性にある訳で、故に倫理にもとることなんです。それを「これをきっかけに安楽死、尊厳死の議論を深めよう」という政治家が現れる不快な現実があります。こんな奴ら次の選挙で落としましょう。生きることにこそひかりが届くことが大事です。リモートよで触れたスウェーデンの社会的トリアージと言える高齢者への医療制限は広範な社会的合意の産物であって、安楽死や尊厳死乗り\議論とは別物ですので念のため。

てな重いテーマは置いといて、東京駅新幹線ホームの内、東海道新幹線用の第7ホームが東北新幹線に寄り添うように北へ向かってカーブしていることから始めます。第7ホームは元々東海道線の長距離列車の発車ホームとして新幹線開業前の特急、急行の乗客が大きな鞄を持って乗車待ちしていたところですが、新幹線開業後も残った急行列車や夜行ブルートレインが使い続けていて、独特の雰囲気がありました。

一方、全国新幹線鉄道整備法に基づく東北、上越、成田の3新幹線が1971年に基本計画線として公示され翌年整備計画線に昇格し、東北新幹線は国鉄が、上越、成田新幹線は鉄道建設公団が建設を担当することになり、整備計画が策定されますが、当初計画では起点は東京駅、終点は盛岡駅で既存駅併設とされ、東京駅に関しては首都圏五方面作戦で横須賀線横須賀線分離で空く6番ホームと新幹線の利用拡大でいずれ不要となる7番ホームを新幹線用に転用することが計画されました。

結果的に東海道新幹線に2面4線、東北新幹線に2面4線を割り当てると同時に、南側は東海道新幹線に繋いで4面8線中5線を東海道と東北を直通できる構造として新大阪のようにスルー運転する計画でした。直通客を当てにするというよりは、折り返し運転で避けられないホーム在線時間の短縮が狙いということで、故にAC25kv50hzの東北新幹線ですが、東京駅北方にデッドセクションを設けて東海道新幹線の60hzと電源切替するとして、車両側も2電源対応とする計画でした。実際200系は2電源でした。

早速事業着手した国鉄の当時のキャッチフレーズは「ひかりは北へ」でした。また当初東京の次の駅は大宮で、上野は駅設置を計画されていませんでした。また大宮以南は新宿起点とされた上越新幹線の大宮以南の事業化を先送りすることで、当面大宮以南は東北と上越の共用とされました。つまり山陽新幹線と同様に東海道新幹線の延長線として計画された訳です。

おそらく山陽区間のwひかり、Aひかり、Bひかりのように、主にひかりを延長するイメージだったようです。Wひかり相当の速達列車はNひかりだったかも。故に速達列車が必ず停まる仙台、盛岡と上越の新潟を除く各駅は通過線を持っていました。Nひかり(仮)の停車駅は東北は仙台のみ、上越はノンストップで、Aひかりは東北が大宮、宇都宮、郡山、仙台以遠各駅、上越が大宮、高崎、越後湯沢、長岡、燕三条、Bひかりは全駅停車として東北は仙台止まりとして段落としで輸送力調整というところでしょうか。

ところが誤算だらけで、73年のオイルショックによる不況で総需要抑制策による工事自粛による遅れと、所謂狂乱物価と呼ばれた物価上昇で事業費の膨張という逆風を受けます。加えて東海道新幹線名古屋騒音訴訟問題で新幹線の騒音問題が意識され、東北新幹線沿線各地で反対運動が展開されます。故に人口密集地の荒川北岸から大宮駅までは地下トンネルで計画されたものの、軟弱地盤で地盤沈下の恐れありと反対され、別ルートの高架案で通勤新線併設として埼玉県に提案しますが、埼玉県は認めず、工事の遅れが膨らみます。

一方で東海道新幹線の需要が堅調で東京駅の処理能力が限界に達したため、東北新幹線用に考えられていた7番ホームの東海道新幹線転用により、東北新幹線の受け入れ余地が狭まります。そのため国鉄は計画を変更して上野に2面4線の地下駅を設置してサブターミナルとするための工事実施計画変更が1977年に行われます。大宮以南の計画が大きく変わった訳です。

他方首都圏五方面作戦の誤算もあり、反対運動で遅れた東海道貨物線の建設による横須賀線の分離運転は1980年にやっと実現しますが、東北方面は大宮以南の客貨分離と電車線列車線分離は実現したものの、大宮以北の中電区間の開発が活発な一方、東北、高崎両瀬が合流する大宮以南の線路容量の限界で混雑が年々激化し、1973年3月に上尾事件が起きるなど深刻化しておりました。

その中で一旦県が却下した東北新幹線併設の通勤新線に期待が集まり、新幹線の騒音振動対策の強化と引き換えに高架案を県が認めるに至ります。但しルートは人口密集地を避けるため600Rなどの曲線が連続し、元々110km.h制限がかかる上、線路沿いに緩衝帯を設けたり防音壁を設置したりとコストのかかる構造になりましたが、逆にだから通勤新線の併設も容易ではありました。

後に埼京線として開業する通勤新線ですが、当初上尾事件の影響もあって高崎線宮原まで建設し高崎線の都心ルートとする構想で、武蔵浦和付近に車両基地を建設する計画が、用地買収難で断念され、代わって都市近郊の非電化線で残っていて開発余地が大きいと見なされた川越線の電化とセットで同線南古谷駅に車両基地が作られました。結果的に宮原延長は断念され、埼京線は川越線と直通することになった訳です。中電の都心ルートとしては貨物線を利用した赤羽折り返し列車の設定に始まり湘南新宿ラインとして実現することになります。

こうして大宮以南の工事は特に遅れた訳ですが、大宮以北の工事進捗で1982年に大宮起点で暫定開業し、上野―大宮間に185系200番台の新幹線リレー号で繋ぐというツギハギだらけのスタートでした。上野開業は1985年で埼京線っも同時開業しましたが、103系が轟音を轟かせていて新幹線の騒音対策の筈が新幹線より五月蠅いという笑えないオチも。

この状態で1987年の国鉄分割民営化を迎えますが、新たな問題の出現でもあります。開業済みの各新幹線は新幹線鉄道保有機構に移管され、東海道をJR東海、山陽をJR西日本、東北、上越をJR東日本にリースし、リース料に旧国鉄債務を一部乗っけて債務圧縮を図ることになりました。この時点で工事中だった東北新幹線の東京延長は機構に継承されて継続されたものの、上記の東京駅の利用区分問題が浮上します。

JR東日本としては当初計画に則って6番ホームの新幹線移転と同時に、東海道新幹線で使われていた7番ホームの移管を主張したものの、JR東海はこれを拒否します。また両新幹線の直通運転もJR東海の反対で実現せず、現状のように双方が折り返し乗客が乗り換えるという利便性を損なうものになりました。同時に折り返しによる在線時間の長さは地価の高いターミナル駅の有効利用の観点からも問題ですが、両社の主張は平行線のまま、別々の道を歩むことになります。ひかりは北へ届かなかった訳です。

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Saturday, July 25, 2020

五方面作戦の闇

やや大げさですが水に流せない過去で触れたJRの国鉄体質の復活の懸念を感じております。場合によっては国鉄改革の成果を台無しにしかねない問題です。

国鉄の前身は鉄道省という行政機関だった訳で、現業としての鉄道事業と鉄道を含む民間交通事業者に対する監督官庁という後の運輸省の役割を併せ持つ存在でした。理屈としては鉄道事業の国家独占の考え方で、国が鉄道を建設し運営する分には権限の行使だけど、民間事業者が参入する場合は国に申請して免許の交付を受けることが義務付けられるとともに、国の判断で買収を要請された場合には拒否できないという法体系でした。

故にその権限は強大でしたし、またそれ故に政治の介入を受けやすい存在でした。戦前期の立憲政友会と民政党の疑似二大政党制時代に両党が競い合うように選挙区の地方路線の建設を押し付け、広軌論や電化推進などの幹線の改良を潰してきました。根拠法として鉄道施設法が制定され、基本計画線、整備計画線、工事線を示す別表が添付され、その内容は毎年のように更新されておりました。

その後国家総動員法の施行で戦時体制に突入すると、中央省庁も大規模な改変がされて鉄道省も商工省を経て運輸逓信省となり、郵便事業も管轄する大組織となりましたが、戦後GHQの命令で郵政の分離と共に、鉄道と付帯する自動車や船舶事業などの現業部門を公社として分離し、独立採算制で経営自主権を持たせることになり、公社としての日本国有鉄道が発足します。しかし鉄道の国家独占原則はそのままで、国鉄は国に免許申請することなく事業展開できる存在になった訳です。

そのことは東海道新幹線の実現には貢献したものの、鉄道施設法は存続していて、相変わらず政治家の圧力で地方路線の建設を強要されましたが、独立採算制が盾になっていたというと意外感がありそうですね。故に1964年に鉄道建設公団を発足させ、主に地方線区の建設し、完成後国鉄に無償貸与若しくは無償譲渡するという形で切り離されました。またそれ故に鉄道施設法の別表の更新も続いた訳です。あとお気づきかと思いますが、全国新幹線鉄道整備法に基づく新幹線建設も、基本計画線、整備計画線、工事線を示す別表が添付されており、戦前からの古いスタイルを踏襲しています。

この辺は東京都交通局などの地方公営交通や帝都高速度交通営団のような特殊法人と国鉄の違いとして重要です。都交にしろ営団にしろ法的には民間に準じた事業者として国に申請して免許の交付を受けなければ事業ができない存在です。それ故空飛ぶ都営交通で取り上げた都市交通審議会1号答申で都の都市計画高速鉄道5路線の内1-4号線までは事業者名まで明示していましたが、5号線は未定としていました。混雑が激しい中央快速線の混雑緩和を狙ったバイパス線という性格から、国鉄による事業化の可能性があったから触れなかった訳です。

実際は首都圏五方面作戦の走りとなる中央線複々線化事業との関連で営団が地下鉄として整備し、国鉄の線増線と相互直通とされました。それと共に都の都市計画高速鉄道も改訂され10路線が新たに制定され、5号分岐線は6号線として分離され1号線西馬込系統と統合され西馬込―志村(仮)間となりました。同時に7号線(目黒―岩渕町、ルート変更の上営団南北線として実現)、8号線(喜多見―日暮里、一旦キャンセル後区間、ルート見直し後9号線として復活、営団千代田線として実現)、9号線(芦花公園―麻布、キャンセル)、10号線(中村橋―両国、8,9号線キャンセルで8号線に繰り上がるもキャンセル)が答申されました。

当時まだ首都圏五方面作戦とは言われておりませんでしたが、東京一極州通で混雑が激しくなる一方で、国鉄としても線増を進めて輸送力増強を図ることが避けられない状況でした。その時に国家機関としての権限を保持していた国鉄は、都を格下と見て都市計画は無視する一方、出資者として営団とは良好な関係を持っていました。

都市計画で追加された路線は結局キャンセルが多く、実現した路線もルートや区間が変更されていますが、これには国鉄が微妙に絡んでおります。8号線は喜多見で小田急線との相互直通し小田急は喜多見分岐の多摩ニュータウン新線を計画していました。一方日暮里では国鉄常磐線の複々線化を睨んで相互直通を意図しておりました。

8号線に反応して営団は喜多見駅北方の野川河川敷に広大な土地を先買いして車両基地用地を確保しましたが、小田急が都区内区間で並行する8号線計画に難色を示します。一方1964年から赤字転落した国鉄ですが、幹線区間の電化や複線化に加えて首都圏五方面作戦で大規模投資目白押し状態でした。特に総武線の複々線化で快速線を東海道と分離後の横須賀線とつないで直通する構想を進めた結果、常磐線に予算が回らなくなり、特に下町の密集地帯で用地賠償が難しい上、墨田川と荒川に橋をかけなければならないことから、事業費圧縮のために接続点をできるだけ都心から離れたところにしたいということから消極姿勢でした。

恐らくそれらを忖度して小田急に対しては代々木上原接続で喜多見までの小田急線複々線化工事を都市計画に取り込み。喜多見の土地は経堂電車区の移転先として小田急に譲渡し、代わりに綾瀬に車両基地を建設するということで荒川の鉄橋を営団が作り,国鉄は綾瀬以遠に複々線化区間を圧縮するという調整を経て9号線として都市計画路線に組み込んだ結果、千代田線として実現したと見ることができます。国鉄も営団の言い分は聞く訳です。

一方米軍グランドハイツ返還後の跡地開発で西武豊島線の延伸を想定した都は10号線→8号線で西武との相互直通を想定し、他方両国では総武線複々線化による線増線との相互直通を想定していましたが、都の働きかけに対して西武は動かず、加えて国鉄は都の都市計画を無視するように総武快速線の事業に着手します。8号線→9号線と違って放置プレーでキャンセルに追い込まれた訳です。

そして総武快速線の事業は都心の地下トンネル工事という国鉄にとっても未知の事業であり、地上構造物の基礎の仮受や地下埋葬物との競合回避などで事業費は膨らみ遅れもあり、総武線の混雑は酷くなる一方だったことから、東西線の東陽町―西船橋間の延伸を営団に要請し、営団もそれに応じます。関連して東武野田線方面への延伸も示唆され、新船橋接続が検討されましたが、実現しませんでした。営団としても総武快速線完成までのつなぎと分かっていたので、その後を意識していた訳です。

千代田線の相互直通で営団6000系と国鉄103系1000番台都の電力消費量の差額を会計検査院に指摘され、国鉄と営団で差額精算が行われるようになったことも、国鉄と営団の特殊な関係を語るときに忘れることはできません。これは小田急9000系にも適用されトバッチリを受けた訳ですが、それ故に国鉄は203系を開発し投入したものの、予算制約から剛性不足の柔なアルミ車体が災いして轟音を振りまくノイジーな電車になりました。また小田急がVVVF制御車1000系の開発を急ぎ、用途を失った9000系は早期に引退しました。

常磐線に関しては複々線化で新駅が2つ誕生しています。北柏と天王台ですが、それぞれに経緯があります。北柏は緩行線にしかホームがありませんが、快速線にも折り返し線があって取手発着の中電の折り返しに使われてますが、元々は貨物駅でした。松戸―我孫子間の複々線化では各駅の貨物扱いを集約して用地を確保しましたが、そのために貨物駅として北柏が作られ、後に緩行線に旅客ホームを追加して旅客扱いを始めた一方、車扱い貨物の廃止で北柏の貨物扱いが無くなった結果が現状です。旅客駅化は地元対策だった模様です。

天王台は松戸電車区の支所として快速線用の電留線が作られましたが、用地取得のために駅設置を約束したと言われております。この辺北柏と共に地元の不利益を打ち消す思惑が見られます。同様に線増工事関連で貨物線と貨物駅が作られることになった横浜羽沢では住民の強硬な反対に遭って大幅に遅れ、横須賀線の分離が遅れたことが知られております。相鉄の都心プロジェクトで羽沢横浜国大駅が旅客駅として開業しましたが、当時は旅客液化など想定もされてなかった訳で、歴史の綾を感じますね。同時にリニア静岡工区を巡るJR東海と静岡県の対立を見るにつけ、国鉄時代のこうした独善性とバーター主義が垣間見えます。

てことで、h現時点では杞憂かもしれませんが、国鉄を出自とするJR上場4社の株式持ち合いは国鉄体質の復活おw警戒する必要があります。特にコロナ禍で売り上げを落とし、株価も下がった各社が株式持ち合いでもたれあいする可能性は高いと思います。一方鉄道業界では西武と京急、小田急と相鉄、京成と小湊などで伝統的に株式持ち合いが続いていますが、民間事業者同士として問題を引き起こす可能性は低い訳です。JRの持ち合いとは意味が違います。

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Saturday, July 11, 2020

水に流せない過去

豪雨被害で大変なことになっておりますが、おそらく出てくるんじゃないかと予想していた川辺川ダムお化けが現れました。特にSuica甘いかの最後に登場した京大教授氏曰く「7割出来てた川辺川ダム中止したから人が死んだ。人殺し!」とかもう狂ってるとしか言いようがないですね。

巨大ダム建設は順調に進んでも50年はかかると言われます。水没エリアに集落があると集落ごとの移転が必要ですし、営農地であれば耕作地の移転先も必要になります。移転先は表土の厚みのある肥沃な土地で且つ道路アクセスと水利も備えなければなりませんから、なかなか困難です。加えて集落内の学校などの公共施設の移転も必要ですから、相当時間をかけて準備しなければなりません。当然費用もかかります。

そして道路の付け替えや作業用道路、作業ヤード、宿舎などを準備してやっと本体工事です。当然工事の進捗に合わせて作業員の確保やセメントその他の資材の調達なども絡みますから、長い時間と費用が掛かる訳ですが、出来ているとされる7割の根拠は不明です。時間軸で捉えて7割なのか予算の消化率が7割なのか、モノサシを示さない議論は学者としてどうなのか?ですね。仮に時間軸で7割なら中止が決まった2012年時点からあと15年かかりますから、今回の豪雨には間に合わない訳ですね。

八ッ場ダムでも問題になりましたが、元々水資開発を目論んだ事業が時の経過で低成長期になり水需要が増えないということで利水から治水へ看板をかけ替えて事業を継続というありがちなパターンです。加えて補償金弾んで反対意見を封じ込めるから、それが地元住民の分断を生み禍根を残すという地域にとって不幸な展開が見られます。その中で当時の熊本県民の意思として川辺川ダムへの反対が大勢を占めていて、それを踏まえて蒲島知事が国に中止を申し入れ、当時の前原国交相が中止を決断した訳です。

当時の熊本県民は球磨川の自然保護と共に、堤防や調整池整備、河床の掘り下げなどの流域対策で対応すべきという声が多かった訳ですが、当時はまだ線状降水帯なんて言葉もなかった時代で、今のような異常な気象現象は見られませんでした。加えて流域対策に国はろくに予算をつけてこななかった訳で、そういった経緯から言えば「ダムを止めた人殺し」発言は政治的意図の有無に関わらず暴言です。またダム治水は運用次第なのは昨年の台風19号豪雨での肱川ダムの事例で明らかですし、肱川の場合上流にダムがあることを理由に市街地の堤防整備が進まなかったという倒錯した事情もありました。

線状降水帯は海水温の上昇による水蒸気の発生の増加と大氣温の上昇で水蒸気の飽和点が上昇した結果、水蒸気濃度が高くなった一方、地形や梅雨前線に沿って水蒸気を含んだ大気が上昇気流に乗って放射冷却で雲を発生させるメカニズムが連続的に起こることの結果ですから、温暖化の影響と考えて間違いありません。その意味では低コストだからと石炭火力依存を続ける大手電力会社こそ「人殺し」にふさわしいと言えましょう。

という具合に時間がかかる大規模土木工事は一旦始まると止めるのが困難なんですが、ダムじゃありませんが、やはり時間がかかる山岳トンネルも、準備工事に多大な時間と費用がかかります。てことでリニア静岡工区の続報です。

リニア準備工事、再開容認を 国交省が静岡県に要請:日本経済新聞
これ唖然とさせるニュースですが、そもそもJR東海と静岡県の対立は、静岡県条例で開発面積5ha以上は県自然環境保護条例に定められた自然環境保護協定が必要というのが県の言い分です。既に許可された宿舎工事は申請の開発面積4.9haだから許可したけれど、宿舎に付帯する作業ヤードは17haあり県条例の求める協定締結が必要として許可を保留している訳です。

そして協定にはJR東海が採るべき環境保全措置を記載した計画書の添付が必要だけど、県専門部会で決定していないから協定を結べないし、本体工事に関わる国の有識者会議の検討を経て問題点をクリアにしなければ手続きが進まないというのが静岡県の言い分ですが、それがまったく顧みられずJR東海の言い分をなぞっただけの調停案ですから、案の定10日の知事と国交次官の面会で川勝知事に否定されました。

結局JR東海は7年前から大井川の水源遮断問題にまともに答えず、準備工事だから認めてくれという主張を繰り返すばかりで、実質的な対策を取ってこなかった訳です。宿舎工事の開発面積4.9haというのは、JR東海自身が県条例を承知していたことを物語りますし、それに付帯する準備工事であって本体工事ではないという理屈で押すことしかしてこなかった結果です。まあ駅のできる他県ならば魚心あれば水心で不問に付されたかもしれませんが、駅のない静岡県ではそれが通じない訳です。さりとて奥大井の山岳地帯のトンネル部分に駅を作るって言っても相手にはされないでしょうけど。

これ結局JR東海の国鉄体質なんですね。元々国の機関として強大な権限を有していた国鉄は、全体的な事業計画や予算及び決算報告を国会に対して行うことが義務付けられてはいるものの、個別事業は国鉄の裁量で実施されてきた訳で、それ故に往々にして国の機関として自治体を下に見る傾向がありその意識が抜けないのかもしれません。若い人にはわかりにくいでしょうけど、例えば首都圏五方面作戦でも表に出にくい黒歴史がありまして、特に常磐線にはいろいろなエピソードが集中しておりますが、別の機会に譲ります。

てことで国交省は役に立たない調停案を示してその無能ぶりを明らかにしてしまいました。前身の運輸省も国鉄は許認可対象ではなかったので対国鉄の権限は限定的でしたし、整備新幹線でもJRの意向が重視されますし、まして国費投入のないリニアに関してはものが言えないってのが正直なところなのでしょう。その意味で風邪ひかない人たちで取り上げたJR上場4社の株式持ち合いに危惧を抱きます。

例えば今回の豪雨で肥薩線と久大本線が被災したJR九州ですが、株式上場時に経営安定基金を取り崩して資産の減損処理をして7減価償却費を圧縮して益出しした訳ですが、新幹線リース料の繰り上げ支払いと違って資産の減損処理はあくまでも帳簿上の評価替えでキャッシュアウトを伴いませんから、その分キャッシュリッチになっている訳です。故にアクティビストファンドに目を付けられ、720億円の自社株買いを迫られた訳です。

幸い株主提案による自社株買いは株主総会で否決され回避できましたが、結局アクティビストの圧力に屈して100億円の自社株買いを実施してます。その一方で18年の西日本豪雨で被災した日田彦山線は廃止された訳で、上場したがためにファンドに金を毟られる一方、交通政策基本法に則り災害復旧に自治体の関与が条件づけられた訳です。故に事業の継続よりも投資家に還元することが優先される体制ですが、国鉄OBの経営陣にとっては地元の反発よりも株主への対応が大事で、プライドも高い。故に株式持ち合いでアクティビストに対抗という構図が見えてきます。肥薩線や久大本線はどうなるでしょうか?

プライドの高さはまた別の問題にもつながります。

「富岳」使いやすさ探求 国産スパコン、世界一に返り咲き 「京」の反省生かし互換性高く:日本経済新聞
「2位じゃダメないですか?」の蓮舫氏の問いでお馴染みのスパコン「京」の後継機の「富岳」がスパコン世界一になったニュースですが、世界一を目指した「京」が純国産に拘って汎用性のない独自アーキテクチャーで使えるソフトが少なかったために活用されなかった反省に立ち、世界から汎用性の高いプロセッサーなどの部品を調達し、多くのソフトを走らせる使いやすさに拘った結果、図らずも世界一になったって話です。元々蓮舫氏の質問も世界一に拘って迷走することを危惧したものですが、結果的にそうなった訳です。

翻ってリニアですが、世界一に拘って汎用性の乏しいシステムにすることを考え直すべきだと思います。東海道新幹線は世界初の高速鉄道ですが、斜陽産業と言われ、ある意味技術的には枯れた鉄道技術に拘ることで、汎用性のあるシステムとして世界に提案できた訳で、仏TGVや独ICEをはじめ鉄道の復権に貢献できた訳ですが、汎用性に疑問のあるリニアに拘るのは何故なのか?世界一を目指すプライドの問題ならばくだらないからやめろって話です。

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Saturday, July 04, 2020

リモートよ

マイクロオフィスで取り上げた香港国家安全維持法の成立し施行され、早速大量の逮捕者が出ています。これに対して国際社会は有効な対抗策を出せずにいます。それどころか例えば英ジョンソン首相は香港市民に市民権付与を示唆してますが、あくまでも金融やITなどの優秀な人材獲得が目当てで、希望者をすべて受け入れる訳ではありません。同様の議論は日本でもあって、それどころかこれを機に東京を香港に変わる国際金融都市にしようという不謹慎な議論すらあります。

バブル期から繰り返し唱えられてきた東京の国際金融都市構想が他人の不幸に乗じて出てくるのは論外ですが、そもそも何故東京が国際金融都市になれないかというと、元々金融は規制業種で国毎に違いがありますし、金融界の慣例やバーゼルの国際決済銀行(BIS)規制や国際条約など様々な法源によって規定されている訳です。

そんな中でニューヨークやロンドンの金融街が特別な地位を得ている理由がそれぞれある訳で、ニューヨークは米ドルが基軸通貨として貿易決済に使われることに由来しますし、ロンドンは女王陛下と言えども事前に許可を得なければ入れない程の自治権があって、国の干渉を受けにくいことからオフショア市場が形成しやすい訳で、所謂比較優位で金融業が集積している訳です。翻って東京には特段の比較優位はありません。

香港に関してはロンドン同様の強固な自治権の存在は指摘できますが、同時に以前から西側からの中国アクセスの窓口の機能があり、その中国が目覚ましい経済成長を遂げた今も、香港経由の国際取引は大きなウエートを持っている訳で、中国は恐らく前者が棄損しても後者の機能で香港の国際金融都市としての機能は損なわれないと考えたと思います。いずれにしても東京の出る幕はない訳ですが。

それよりも気になる東京の感染拡大のニュースですが、検査数が増えて特に夜の館加害の重点化で増えていると説明されてます。恐らく都知事選絡みの小池知事のメディア戦略なんだと思いますが、感染者の増加に留まらず感染経路不明が多いことが問題なんで、東京に限っては自粛解除が早かった可能性は指摘できます。とはいえ再度の自粛要請は抵抗感も強く補償の財源も当てがないから難しいところです。

確かに自粛で経済を窒息させるのも問題ですが、早すぎる解除は寧ろ感染拡大で経済を棄損します。アメリカが今まさにそんな状況ですし、100年前のスペイン風邪のときに厳しい規制をかけた州ほど終息後の経済回復が早かったという実証研究もあります。経済回復をアピールしたい政治的判断で前のめりになると寧ろ逆効果ってことですね。

その意味でロックダウンも学校閉鎖もしなかったスウェーデンが注目されますが、老人介護施設で感染拡大が見られ死亡者が増えたという問題は起きました。しかし政権の支持率は寧ろ上がっているというのが不思議ですが、実はスウェーデンはデジタルトランスフォーメーション(DX)が進んでいて、リモートワーク可能な雇用者は全体の44%いて、政府の自粛要請を受けて可能な人はリモートワークで外出自粛した結果、市中感染の拡大は防げましたが、濃厚接触が必要な介護などのケアサービス部門でクラスター感染が起きた結果、高齢者の死亡が増えた訳です。

それでも元々医療制度で高齢者の受け入れが制限されていて、日本のような院内感染は起きていません。これは有限な医療リソースを未来ある若者に割り当てるというスウェーデン独自の考え方が反映されていることによりますから、日本では反発されるかもしれませんが、社会保障費の膨張に悩む先進的な福祉国家故に国民的合意ができたんでしょうけど、高齢化の進む日本でもこういった議論は必要でしょう。

にしても切ないのはスウェーデンがDX先進国だから、国民は負担を感じずに自粛生活にシフトできたってところですね。コロナ禍を機にリモートという泥縄の日本では、自粛解除した途端にリモートやめて出社という企業が多く、以前よりはましとはいえ密になる通勤ラッシュが復活してます。こういうのを周回遅れと言います。コロナ後のDXが如何にのんきな話かですね。

あと企業の本気度が疑われる事例があることは指摘しておきます。例えばこれです。

「ジョブ型」に労働規制の壁 コロナ下の改革機運に水:日本経済新聞
これ記事遺体が労働規制緩和の必要性に結び付けれれていてミスリードですが、PCやスマホのタイムスタンプで労働時間管理するから、就業時間をちょっと超えたためにメールも送れないってのは、寧ろその会社のリモート環境がおかしいです。リモートでの在宅勤務で何故フレックスタイム制を併用しないのか?アホとしか言いようがありません。フレックスタイム制ならば自己申告となりますが、残業が発生すれば残業代の支払いも発生します。雇用がジョブ型じゃないから在宅ワークがうまくいかないってことはない訳です。あとこれね。
マイナンバー 普及へ試練 「10万円」給付で混乱:日本経済新聞
企業というよりも、日本では企業組織のロールモデルとして参照されてきた公共部門の混乱です。例の特別給付金を巡る自治体の混乱ですが、マイナポータル経由の電子申請でも住民基本台帳との突合が必要だから紙に出力して手作業で突合した結果ってことです。

ただでさえ財政規律を求められギリギリの人数しかいない自治体の行政事務のDXが進んでいなかったというオチですが、自治体に限らず日本の公共部門の多くは、NTTデータ、日本IBM、NEC、富士通といった大手ITベンダーに個別に発注していて統一が取れていないばかりか、一旦導入したシステムを後生大事に修正して使ってきた結果、パッチワークだらけの複雑怪奇なシステムとなり効率も悪いし新たなシステムの導入を阻む壁にもなっています。

加えてセキュリティ上デリケートな個人情報の扱いから、マイナンバーカードのシステムは例えば住基ネットなど他の公的なネットワークとの相互接続が敢えて取られていないから、結局手作業の確認が必要になる訳です。はっきり言いますが、国や自治体がこのレベルでは、民間企業のDXが進む訳がありません。あとこれ。

リニア工事「対話遅れ、JR東海に責任」 静岡副知事:日本経済新聞
前エントリーのリニアの続報ですが、副知事会見で明らかにされたのは、小規模な宿舎蛍雪を認められているから、付帯工事として17haの作業ヤードも認めてくれってのがJR東海の言い分らしいですが、これ副知事の言い分が正しければ、大規模な開発行為を細切れにして環境影響が小さいとするレトリックですね。行政手続きとして認める訳にはいかないですよね。

しかし気になるのが、そもそもDXでリモート会議が手軽にできるならば、例えば名古屋本社の東京勤務の人が会議を理由にいちいち名古屋まで出かけなくてよくなる訳です。そう考えると、開業してもどれだけ利用されるのかはわかりません。それとも将来にわたって日本のDXは進まないという展望を持っているのかな?別の意味でヤバいと思うが。

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