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Sunday, January 14, 2018

マル生運動の悪夢

アベノミクスも5年目を迎え、輸出大企業を中心に企業業績は上向き、株価も高値更新を続けます。失業率や有効求人倍率などの数値も景気が上向きと取れる動きですが、生活実感が伴わない状況が続きます。当ブログでは世間が言い出す前からアベノミクスの問題点を指摘してきたわけですが、実際その通りの結果で、未だにデフレ脱却できずに成果の乏しい状況が続きます。

そもそもこれだけ労働需給が締まってきたら金融緩和も財政出動も効かないわけで、金融緩和は出口へ向かわざる鵜を得ないし、財政政策はそもそも求人難で事業が滞り予算通り執行できていない状況ですから、むしろ財政再建の好機なんですが、そんな気はサラサラないようです。むしろ成長戦略として規制緩和をぶち上げたり、TPPを口実に農業を補助金漬けにしたり、モリカケスパコンで怪しげな便宜供与をしたりしてますが、今年は働き方改革だそうで、生産性革命をやるとか。まるでマル生運動で労使関係を疲弊させ、解体へ向かった旧国鉄の失敗をなぞるようなこと言い出してます。こりゃ救われんわ。

日本企業の生産性の低さは以前から指摘されてきましたが、長時間労働の解消という美名のもと,働き方改革と称して労基法が改悪されようとしていることは社畜ネタのエントリー希望のエントリーでも取り上げました。わかりやすくまとめると以下の通りです。

1.脱時間給として労働時間でなく成果で評価する高度プロフェッショナル制度(残業なし)
2.裁量労働制の業種の拡大とテレワークによる勤務時間の曖昧化(残業請求は可能だけどやりにくい)
3.労基法条文に残業時間上限を明記しつつ業種や繁忙期の例外扱いも可能に(事実上残業し放題+未払い残業訴訟時の賠償額の上限になる)
これ残業代を圧縮するためで、それが3%賃上げの原資と財界は胸算用してます。政府は必ず通常国会でこれを通すでしょう。野党がまとまらないのが心配ですが、これも以前のエントリーで心配したことが実現するということですね。

これだと長時間労働はステルス化して事実上長時間労働は温存ざれ生産性も上がらないってことになります。そもそも生産性を現場の努力で持ち上げようってのが間違いなんで、本来は設備投資によって資本で労働を代替することや、M&Aなどで事業の見直しをして規模の経済とシナジー効果で生産性を高めるのが王道です。例えばドイツの名門企業シーメンスが鉄道部門を仏アルストムに売却して重電部門に特化したのが典型ですが、中国北車と中国南車を国策で合併させて中国中車としたことで、かつて加ボンバルディアと並ぶ鉄道ビッグ3の地位が脅かされる中での大胆な経営判断です。生産性向上ってこうやるってことです。

日本の場合労働需給が締まってきたことは上記のとおりですが、中身が問題で、就労者数は確かに増えているんですが、総労働時間は横ばいで、つまり非正規の短時間労働者が増えただけってのが実態です。深刻なのはその間GDPもほぼ横ばいですから、労働力の投入量と生産量が変化していない、つまり生産性も横ばいってことです。GDPが横ばいでも総労働時間が減っていれば生産性は上がっていることになるわけで、これなら無理なく労働者の報酬である賃金を上げられますし、労働時間の減少はつまり余暇時間の増加となりますから、その分消費者余剰が拡大して有効需要を生み出します。また人口減少の中で求人難も緩和するわけですから、現在の人口動態に整合的です。てことでこれ貼っときます。

生産性向上 経営者こそ主役   :日本経済新聞
これ企業だけの問題でもないんで、水道事業の民営化を打ち出した東京都の事例が面白いんですが、東京都水道局は23区の水道事業を担う地方公営企業で、基本独立採算制なんですが、多摩地区では各市町が直営事業で手掛けているケースが多く、独自水源として井戸を持っていたりしますが、地域開発で水需要が増えると対応できなくなり、都水道局に水源を依存するケースがあり、加えて小規模な直営事業では合理化も難しいってことで事業委託しているところもあるわけですが、そのために都水道局は増員したくても公務員定員の壁でできないってことで、民営化してそのくびきを外そうってことです。水道のようなインフラ事業は希望の経済が働くわけで、多摩地区に留まらず埼玉県の自治体の受託の需要も取り込めるわけで、伸びしろがあるわけです。

これ営団→メトロに事業領域を侵食されてきた都交通局と大きく異なる事業環境だからこそです。都営交通の民営化はメトロの株式上場絡みで都の保有株式の扱いが問題になるので実現可能性はほぼありません。

こういう観点から国鉄民営化を見直すと、国鉄末期から営業路線の廃止、切り離しが相次いで事業規模を縮小したJR北海道と、元々の規模が小さいJR四国が苦しむのはある意味必然です。むしろ全国1社体制でギリギリ規模を確保したJR貨物が黒字化で上場が検討されるってのも、不思議ではありません。JR貨物の場合旅客会社へ支払う線路使用料問題という爆弾を抱えてはいますが、これ旅客6社と同様地域分割していたらこうはいかなかったでしょう。

てことで30年も経つと変化は避けられないところです。見直しは必要でしょう。おまけ。

除雪車出動に遅れ JR信越線大雪で立ち往生  :日本経済新聞
そもそも異常な積雪でダイヤが乱れに乱れ、運転士が雪かきしながら進路を確保しつつ運行していたものの力尽きたわけで、4両編成に乗客430人という状態で、不安を抱える乗客に乗務員が丁寧に対峙したからパニックにもならずに済んだわけです。もちろん早い段階でも運転抑止の判断もあり得ましたが、時は夕刻ラッシュ時間帯で、帰宅の足にとJRを当てにして駅に乗客が集まっている状況で必死に運行を確保した結果です。首都圏ならば振り替え輸送で他社船へ誘導で済みますが、大雪でバスも動かない中での出来事です。本当に頭が下がります。新幹線の好調にブイブイ言わせながら殿様商売の某JRと大違いですね。

も一つおまけ。そもそもこの冬の寒冷化と大雪は温暖化の影響と見られています。理由は北極の海氷の減少で氷ならば反射される太陽輻射熱を海水が吸収して海水温が上昇し、水蒸気が発生視野sくなっている一方、海水温の変化に伴い偏西風が蛇行し、大陸の寒気が南下したこと。その結果高めの海水温と寒気の温度差で雪雲が発達し以下略。偏西風の蛇行は北米、欧州、東アジアで特に顕著で、いずれも化石燃料の消費が多い地域です。とりわけ日本は低コストを理由に石炭火力への依存が強く孤立気味。電力会社の経営の都合で電車が足止めって考えると怒りが沸いてきます。

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Sunday, December 31, 2017

台車枠の亀裂

今年もあとわずかですが、このニュースはやはり取り上げるべきだろうと思いまして、こんなタイミングでのアップとなります。

亀裂、あと3センチで破断 新幹線のぞみ台車  :日本経済新聞
「あと3センチで断裂」というきわどい重大インシデントとなりました。最初に疑問に思ったのが、異音を確認しながら3時間も運行を続けたことで、実際JR西日本は非難を浴びましたが、その後岡山から添乗したJR西日本社員が東京指令所の司令員に新大阪駅での床下点検を提案したものの、司令員が上司の指示を受けたていたために聞き逃し、運行を継続した経緯が明らかになります。結構ありふれたヒューマンエラーがあったわけです。

とはいえ司令員の責任を問うのは難しいところで、そもそも頑丈に作られていて入念な点検を受けている台車に亀裂が見つからなかったから出庫して運用されたわけで、目視が困難な程度の亀裂で直ちにに断裂することがないように安全マージンを大きくとっています。点検時点で見つからなかった瑕が台車枠の断裂に至るようなことは想像すらできなかったはずです。現時点で原因は不明ですが、専門家の見方はこれです。

新幹線の「亀裂」はなぜ発見できなかったのか | 新幹線 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
記事の著者の見立てでは、側バリの軸箱近傍の溶接部付近で起きた典型的な疲労破壊ということで、突然発生したものではなく、長時間に亀裂が伸長したものということです。ということで、現時点でも入念に行われている検査体制で発見できなかったわけですから、検査体制の見直しは避けられません。

既にJR東海は従来台車枠では行っていなかった超音波探傷(非破壊検査)を検討すると発表しました。わずかの傷でも重大事故につながる車軸では行われていたものの、台車枠ではそこまでは必要ないということで、通常は目視検査で済ませていたようです。それでこれまで特段のトラブルはなかったわけで、このこと自体は問題ではないんですが、逆にめったに見られない台車枠の亀裂を見る機会そのものが少ないと、特に若い検査員は育たないというジレンマもあります。

この辺日産の完成検査問題で若手の見習い工にわざと不具合を仕込んだ個体を検査させて発見できれば一人統制前といった現場ルールを思い起こさせますが、上記記事で「航空機は故障率が高いので、ダイヤ統制部門は整備士の意見を最重視する」そうですが、元々過大な安全マージンを取っている鉄道の場合、指令員の判断も運行継続に傾きやすいということもあるでしょう。加えて岡山で添乗したJR西日本社員と東京指令所のJR東海の指令員という会社跨りの問題もあるわけで、実際新大阪で引継ぎを受けて添乗したJR東海社員の判断で名古屋で運行を打ち切ったわけで、流れでJR西日本の不始末のように見えてしまったということも指摘すべきでしょう。

似たような問題は東急田園都市線で東武鉄道の車両トラブルで架線事故が発生したってのもありました。こちらは新幹線のように車両の仕様が統一されているわけではありませんから、より問題が複雑です。

加えてもっと気になるのが上記記事でも指摘されている溶接後の熱処理が適切に行われているのかという問題と、記事ではあえて触れられておりませんが、神戸製鋼の品質データ改ざん問題で明るみに出た鋼材の品質問題の可能性も視野に入れておく必要があります。特に両者の合わせ技で、あるはずの過大な安全マージンがほとんどなかったってこともあり得ます。実際台車枠に亀裂が絡むこんな事故がありました。

東武東上線「脱線事故」は、なぜ起きたのか | 通勤電車 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
東武東上線中板橋付近での脱線事故で、30年選手の10000系初期車の事故ですが、台車の亀裂が確認されてます。尤もこの事故では亀裂が事故原因なのか脱線の結果台車に亀裂が生じたのかは不明ですが、鉄道特有の過大な安全マージンが、検査の形骸化を生んでいた可能性もあるわけで、今回の新幹線事故との比較は必要でしょう。

また神戸製鋼の品質データ改ざん問題に代表される素材メーカーの不祥事も、商慣習として定着しJIS法でも認められている特採が言い訳に使われたように、要求品質自体が安全マージンを過大に見積もっていた可能性もあります。ってことで、台車枠の鋼材で勝手特採やられて且つ溶接後の熱処理が不適切だと、結果的に要求性能は大幅に低下します。何が言いたいかというと、川下の素材メーカーから中間の加工メーカーを経て組み立てメーカーへ納入される一連の中で、各社が独自にコスト削減には減むと会社単位での部分最適が追及されて全体最適を失う合成の誤謬が発生する可能性を否定できないってことです。

これユーザーである鉄道事業者自身も技術革新と品質の向上で検査周期の延長を当局に求めているわけですが、川下側の劣化を見過ごして延長が認可されれば、日本の鉄道が自慢とする安全が砂上の楼閣になる危険性があるわけです。この辺自動車の完成検査問題もそうですけど、規制当局である国土交通省がそこまで目利きできるのかということでもあります。規制改革の難しさは実に奥深いところです。

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Sunday, December 24, 2017

名古屋リニヤ談合だがや

リニア回りが騒がしくなっております。

名古屋市内の工事で不正か リニア建設入札で大林組  :日本経済新聞
この時点では偽計業務妨害容疑でしたが、東京地検特捜部が動いてるんですから、それで終わるはずは無いです。案の定これ。
独禁法違反容疑で大手ゼネコン4社捜索へ リニア工事  :日本経済新聞
てことで本丸は独禁法違反ですが、リニアがJR東海の民間事業だから、入り口として技研業務妨害を利用したわけです。JR東海社員による予定価格漏洩もあるので、構図としてはかつての官製談合と同じです。

若干のおさらいですが、リニア建設は当面名古屋までで、当初5.1兆円の事業費を見込んでいました。これ新幹線買い取り代金のJR東海負担分の5.1兆円と同額で、しかも元利均等半年賦の支払いで2017年に終了します。つまりその分以後の会計年度でキャッシュフローの余剰が出るので、それを建設資金に充てるって構図が見えてきます。実際は駅設置費用を自治体負担から自己負担に付け替えたりして事業費を5.3兆円に膨らませてます。

メディアやネットでは3兆円、9兆円や、中には30兆円なんて数字まで踊って混乱が見られますが、事実に基づいて見ると、まず9兆円は2047年に予定される大阪延伸を含む事業費9.1兆円を指すものです。そして近畿選出の国会議員からの要望があって、大阪延伸を前倒しする目的で、財政投融資資金から3兆円を融資してJR東海の資金繰りを支援するという話になり、JR東海は既に融資申請を済ませておりますが、大阪延伸部分の着工前倒しが実現したわけではありません。当面は名古屋までの建設工事を本格化させることに集中する予定です。

これが実は今回JR東海の躓きの石になった可能性があります。財投資金の投入自体は融資ですが、政府保証付きの財投債を起債して投資家から集めた資金を融資に回す形で、政府保証がついてますから、万が一のデフォルトの際には政府財政負担で投資家へ弁済される形で、間接的ながら財政負担の可能性があり、公的資金と言えるものです。故に民間企業としてのJR東海が事業主体なんですから、随意契約で建設業者を決めても良かったところを、競争入札で形式を整える必要があったと考えられます。

一方で建設業界は空前の人手不足で、震災復興も道半ばなのに五輪特需で人手を取られ、そればかりかセメントや鋼材の値上がりもあり、ゼネコンの収益を圧迫しています。鋼材に関しては中国の過剰生産対策で生産が減ったことに加え、異次元緩和に伴う円安で円建て資源価格の上昇もあり、それらが重くのしかかります。そうすると、上述のような新幹線買い取りローンの終了に伴うキャッシュフローの余剰の範囲でのリニア建設が難しくなるわけで、財投資金融資はその意味で渡りに船だったんでしょうけど、同時にタイトな資金計画を変更することは難しく、JR東海自身が事業費圧縮の音頭を取らざるを得ない中での今回の談合と見ると、よりクリアな構図が見えてきます。

あと言われているのがJR東海名誉会長の葛西敬之氏と安倍首相との親密さでして、モリカケスパコンに続くアベ友大疑獄事件の本命という見方もされていて、東京地検特捜部の標的は政治家とも見られております。そして仮にリニア建設費が膨張しても政府が面倒見るはずだから、最大30兆円の国民負担って憶測も出てくるわけです。事実に基づけばそこまでの構図を現時点で論じるのは無理があります。

寧ろ良かれと思って財投資金融資の助け舟を出したことが災いしたとすると、何とも皮肉ですが、実はこれアベノミクス全般に見られる不整合なんですよね。そもそも各種経済指標は景気拡大を示唆しており、金融緩和も財政出動も必要なのか?という疑問のあるところ。ただでさえ震災復興需要と五輪特需がある中で、人手不足は起きるべくして起きたものです。実際失業率は過去最低、有効求人倍率は上昇の一途です。財政出動による景気刺激はあくまでも失業対策として余剰労働力を吸収するから意味があるわけで、現在の雇用情勢での財政出動は単に人手不足を深刻化させる意味しかないわけです。有体に言えばアベノミクスは逆効果なんです。

そして中央リニア建設計画はまんまとその罠に嵌まったわけです。というわけで、アホとしか言いようがない。おまけですが、名古屋、大林組、談合の三題噺として地下鉄談合の過去エントリーを置いときます。

おまけのおまけ。リニアの工事に関してはJR東海の秘密主義がいろいろ摩擦を生んでます。大きなところでは南アルプストンネル工事に伴う水脈断裂を静岡県が心配しているのに、駅ができない静岡県は自治体協議に加われないとか、大深度地下や長大トンネルから発生する大量の残土の処理が不透明とか、東農地区あるウラン鉱脈との近接工事で万が一放射性残土が出れば工事自体が止まるに留まらず周辺の土地封鎖まであり得ますが、JR東海の秘密主義は問題の発覚を遅らせて被害を生じる可能性があるとかですが、こういう憶測を生むのはJR東海の秘密主義匂うところが大きいわけで、そんな片りんを見せたニュースがこれ。

斜面崩壊はリニア関連工事が原因、発破で地山緩む  :日本経済新聞
無理を重ねていることが窺われます。

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Sunday, October 15, 2017

タダより高いベーシックインカム

希望の党が失速気味です。小池代表の排除発言に世論の反発がある一方、反発する民進党候補者の受け皿として枝野氏による立憲民主党の立ち上げに合流したり無所属で立候補したりという動きが出てきて、それに対する世論の反応はおおむね好意的ということで、野党補票が割れて自公有利の見方がある一方、態度を決めていない無党派層が54%ということで、ますます結果が見通しにくくなりました。

世論の追い風を受けていた希望の党ですが、右派の本音からか踏み絵みたいなことをしたのはわからないところ。自前で候補者を揃えられていなかった希望の党にとって前原氏の提案は渡りに船だった筈。本心は伏せて協力する判断もあったはずですが、そうしなかったのは何故か、正直分かりません。しかしまぁ急ごしらえの新党で若狭氏や細野氏などスタートアップメンバーの実務能力の欠如ぶりを見るにつけ、元々そんな程度の存在だったってことでしょうし、だからこそ逝去後の混乱も含めて選挙向けの乗り物として前原氏にも好都合だったんじゃないでしょうか。前エントリー末尾の希望を捨てないではこの辺を睨んだダブルミーニングではありますが^_^;。

てなわけで、急な選挙で各党急ごしらえの選挙公約を出してきてますが、民主党の09年マニフェストのような練度は望むべくもないですし、特に与党である自民党や公明党が何を打ち出すかと思えば19年の消費税増税分の使途変更で全世代向け社会保障と教育の無償化を打ち出してきました。つまりアジェンダの変更ですが、それなら何故国会を開いてそこで提起しなかったのか?国会論戦で論点を明らかにした上で国民に信を問うとするならば、解散の意義も認められてモリカケ隠しとか敵前逃亡とか言われることはなかったんじゃないでしょうか。

とはいえ所謂三党合意で税収増となる5兆円の使途として4兆円を財政再建に1兆円を社会保障にとした点も、それとは別にアベノミクス第2の矢とやらで財政出動を決めているわけで、このこと自体が財政再建を反故にしているわけですし、もう少し言えば財源の当てもなく法人減税をしているわけです。政府は盛んに「税収は増えている」としていますが、14年の消費税の5%から8%へのアップがあったんですから当然のこと。寧ろ上げ潮路線と称して経済成長で税収増を謳いながら、法人税収は減っています。この辺のゴマカシは言い出すときりがないですが。

それでも希望の党の公約集の発表は、急ごしらえでも有権者の判断材料にはなりますから、それなりに注目する意味はあります。その中でやはりというか、消費税増税凍結を打ち出しています。延期ですからいずれは上げるということですが、その前に消費税制度の矛盾をどうにかすべきです。例えばこれ。

金密輸、狙われる日本 消費増税で「うまみ」  :日本経済新聞
これインボイスを用いない日本の消費税制度の欠陥をあらわにしてます。そもそも金を商品と捉えて消費税をかけてるのは主要国では日本ぐらい。加えてインボイスがなくても消費税を受け取れますから、密輸して日本国内で売れば8%分丸儲けになるわけですね。これこのエントリーで取り上げてますが、欧州の付加価値税では課税事業者を選択しなければ発行できない税額票(インボイス)がなければそもそも取引に応じてもらえないから、この手の不正が防げるわけです。加えて0%を含む複数税率への対応も容易で、金は金融商品として0%扱いすれば、こんなおかしなことは起きないわけです。二重に消費税制度の矛盾が出ているわけで、税率が上がれば矛盾は拡大するわけですから、まずはインボイス導入してから税率の議論が真っ当です。

希望の党が打ち出した政策ではそのほか企業の内部留保課税とタイトルにあるベーシックインカム(BI)があります。内部留保課税については、二重課税の疑いがあり問題ですが、仮に課税すれば配当と役員報酬に配分されるだけで、狙いとされる賃金や設備投資への配分は起こりません。そこを狙うなら法人税増税が効果的です。そんなことすると日本企業の国際競争力ガーという声が聞こえてきそうですが、法人税減税の目的は新興国や中小国で国内の資本蓄積が不十分な国が外国企業を誘致するための政策であって、莫大な累積経常黒字を抱え込む日本ではあまり意味がありません。

加えて海外事業会社の利益配当の国内送金で立地国の税率が日本より低いと連結納税で差額納税を迫られるというのがあり、そのため企業が海外に資金を滞留させることになるというのがありますが、既に麻生政権当時に益金の国内送金分の課税免除が行われております。後は外国企業の日本進出を本当に望むならば、進出外国企業限定の軽減税率を導入すれば良いんで、国内企業向けの法人減税は必要ありません。実際上述の通り法人税収は減っているのが現実であり、これ以上の法人減税は有害無益です。

で、本丸のBIですが、これ実は一部エコノミストの間では以前から出ていた議論で、年金や失業保険や児童手当や生活保護などの社会保障制度を統合して全員に現金給付をすれば、行政コストが最小となるという議論です。1人月5万円年60万円として80兆円弱でっすが、医療分野を除く社会保障給付の合計が大体この水準ということです。

これ税金の負担分は凡そ半分で、残りは年金や雇用保険の保険料や積立金から拠出されているわけで、見方を変えれば年金保険料として納めたはずのお金がBIの給付に回ることで給付が5万円に減額されるって話ですから、加入者の立場からは簡単に賛成できない話です。加えて被用者保険は労使案分で企業負担分もありますから、使途の変更は企業の同意も必要で、ただでさえ医療を含む社会保険料の値上がりで実質増税と言われる中での使途変更で、これほぼ不可能です。

加えて支給対象に国籍条項が入る可能性も指摘できます。現行制度では国籍に関係なく制度に加入すれば支支給を受けられますが、所謂在日を含む外国人を排除するとすれば問題です。差別問題であると同時に現実は既に外国人就労がなければ必要な人が集められない業種も多数存在しますから、GDPを押し下げる要因になります。

似て非なるのが給付付き税額控除でして、日本の税法では所得控除が中心ですが、これを税額控除に振り替えて、納税額が控除額に満たない場合はその差額を現金で給付するという制度です。例えば現状の基礎控除38万円に給与所得控除や個人事業主の青色申告控除で加算される65万円をプラスして103万円となりますが、計算の都合で1000万円として、標準税率プラス社会保険料負担を3割と見込んで年額30万円を申告納税者に対して税額控除するというもの。要件は申告納税だけですから仕組みがシンプルですし、年金などの社会保険制度との調整が要らないので導入しやすいということになります。加えて基礎控除の無い消費税制度との相性も良いということになります。制度の持続可能性の観点から改革不可避ながら利害調整が難しく時間のかかる年金改革を待たずに実施できるという意味でも現実的です。

おまけで年金改革の議論ですが、少子高齢化で年金の給付制限は不可避とされ、支給開始年齢の引き上げが議論されてますが、これ現役世代の制度参加の意欲を失わせます。守るべきは基礎年金部分なのであって、報酬比例年金はおまけと割り切って、支給上限を定めれば、基礎年金部分の給付水準を維持しながら、同時に世代間扶助の仕組みが入ることで現役世代の負担も軽減できますが、何故かこういう議論は出てきません。

年金に関しては旧国鉄債務追加負担問題でも触れましたしみなし積み立て年金についても取り上げました。制度としての持続可能性は十分ににあります。高額年金の受給制限は富裕層には不満もあるかもしれませんが、個人向け確定拠出年金(iDeCo)も制度化されており、これ拠出金は所得控除となる上、運用益非課税プラス年金型の受け取りの場合公的年金と同じ税優遇が受けられますから、そちらへどうぞで問題ないでしょう。

鉄分薄いですが^_^;希望の党の選挙公約を起点にこうした実質的な政策論争が起こるならばそれはそれで悪くはないですが、それを伝えるメディアが理解できていないところがネックです。しょーもねーなー。

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Sunday, August 27, 2017

ザ・シビル・ウォー

米トランプ政権がバノン上級顧問の更迭を決めた後、流れたニュースがこれ。

アフガン早期撤収否定 米大統領、駐留規模明示せず (写真=ロイター) :日本経済新聞
バージニア州シャーロッツビルの非白人至上主義者とカウンターの衝突に対するトランプ大統領の声明文の中で「すべての立場の人々」という部分が取り上げられて差別容認姿勢としてメディアが一斉に報じて非難する騒ぎになったわけですが、考えてみれば変です。

大統領選当時からヘイトと見られかねないきわどい発言を繰り返し、直近では北朝鮮を挑発するようなツイッター発言など、他にツッコミどころがありそうなものです。公式の声明文だからってのはあるかもしれませんが、仮にそうだとしても公式声明文を綴るコメントライターが不注意だっただけ?ってことじゃないかと。で、待ってましたとばかりにメディアが囃し立てて大炎上。結果としてバノン氏の更迭に至ったわけですが、バノン氏自身は白人至上主義者を「愚かな奴ら」と軽蔑していたと伝えられており、ここがつながりません。経済ナショナリズムを標榜し対中強硬派とされることからの印象で反グローバルの軍事強硬派との印象が持たれてますが、実像とは違います。

でアフガンの早期撤収否定の発表でピンときたんですが、アフガン即時撤退を主張していたのがバノン氏で、娘婿のクシュナー氏が民間軍事会社活用を提案して対立していたわけですが、今回の決定はクシュナー氏の案も退けられて、事実上の米軍増派ですから、トランプ政権のスタンスが明確に変化してます。一方で進まない閣僚などホワイトハウスのスタッフ人事も気が付けば米軍OBが幅を利かせており、政権内部の力関係が変化している可能性があります。で、今回の騒動は軍産複合体にとって目障りなバノン氏の更迭で収拾されており、影のシナリオライターがいるんじゃないかと。状況証拠だけですが。

バノン氏は北朝鮮問題でも「在韓米軍がいるから緊張を高めている」と発言したり、沖縄駐留米軍の削減にも言及しておりますが、日本のメディアではほとんど報じられておりません。むしろアメリカの反差別をほめそやす発言がリベラル陣営から聞こえますが、おめーら辺野古や高江の問題の解決が遠のいた現実をどーすんだよ。こういう似非リベラルどもは信用できません。

てなことはともかく、南北戦争の南軍の将軍像の撤去を巡る争いで、南北戦争自体は奴隷制度の是非を巡る紛争だったわけですが、単純に奴隷解放の正義の戦いという見方は、結局それで人種差別自体が消滅したような錯覚をもたらすものです。事実はその後も人種差別は社会に根付き、流血を伴う事件は発生しております。それだけアメリカの歴史に暗い影を落とす出来事だったわけで、単純化した理解は禁物です。

背景として当時の南部は産業革命で蒸気動力の紡績業で経済成長の只中にあったイギリスへ原材料となる綿花を供給する綿花栽培が主要産業であり、競争力維持のためには格安な奴隷労働力の存在は不可欠でした。加えて輸出を通じた外需遺贈の産業構造だったこともあり、自由貿易主義の立場でした。

一方の北部は米英戦争の影響でイギリスからの工業製品の輸入が細ったために、輸入代替工業が勃興したのですが、封建領主のエンクロージャーで土地付きの農奴が追放されて都市貧困層を形成していたイギリスと異なり、工業生産を支える労働者の確保に苦しんでいました。それ故南部の奴隷を解放 して北部の工業化を担わせることを望んでいましたし、輸入代替工業ですから、日本の戦前の殖産興業や戦後復興のように保護主義的な立場でした。

今流に翻訳すれば奴隷労働前提のグローバリゼーションと工業化のための保護主義の間の紛争だったわけです。仮に南軍が勝利していたら、アメリカは未だに新興国に留まってたかも。工業化の新興国への拡散を伴う現代のグローバリゼーションでは新興国の輸入代替のための工業化であっても、保護主義は許されないとされるので、ある意味昔より過酷な状況とも言えます。そんな中でバノン氏のような立場を表明する人が出るのも当然かもしれません。

更に言えばナポレオン戦争で財政を疲弊させたフランスからルイジアナ植民地を譲り受け、メキシコから独立したテキサスとカリフォルニアの編入もあり、特にカリフォルニアが北部諸州に倣って非奴隷州となったことで力関係が崩れ、南北戦争に至ります。思えばルイ15世に仕えた史上初のリフレ派ジョン・ローの失敗の後始末としてのフランス革命の帰結でもあったわけです。クロダ異次元緩和は世界史に何を残す?

この辺の歴史の綾の微妙さは味わい深いんですが、そもそもイギリスの産業革命が単純な技術革新ではなく、前述のように封建領主の農地囲い込み(エンクロージャー)による生産手段の独占が起こり、それによって蓄財した王侯貴族が最初の資本家層を形成する一方、英東インド会社が輸入するインドの物産の消費が盛んになり、対インドで貿易赤字を拡大します。茶葉やキャラコなどのインドの薄物綿織物の輸入拡大があり、特に後者は欧州や奴隷貿易の供給元である西アフリカ地域の支配層にも支持されたこともあり、輸入代替できればイギリスの慢性的な貿易赤字の解消になるわけですが、そこへワットの蒸気機関の改良があり、国内産の石炭を使って安定した動力を得られるようになり、機械紡績での綿織物生産が始まります。

その原材料である綿花の供給元はアメリカ南部で、綿花の輸入代金は奴隷貿易で取り戻すという形でバランスされました。イギリスが産業革命で先行した事情はこうしてエンクロージャーによる資本蓄積と農奴追放による都市貧困層の出現によって労働者予備軍となり、投資先としての機械工業の出現につながるわけです。単純な技術革新ではない社会経済現象だったわけです。そうして繁栄を貪るイギリスを後追いしたい北部諸州にとっては打破したい現実でもあったわけです。

ちなみに当時の中国は清王朝の時代で、イギリスへは茶葉、陶磁器、絹織物などの輸出が盛んで、やはりイギリスの貿易赤字が常態化しておりました。それを解消すべくイギリスが清に持ち込んだのがインド産のアヘンでして以下略。1854年の黒船来航、総領事ハリスと徳川幕府の勘で交わした日米修好通商条約締結が1856年ですが、ハリスはイギリスのアヘン戦争を批判しながらアメリカとの条約締結を迫ったのですが、これがとんでもない不平等条約だったわけですね。

こんな状況の中で1861年に南北戦争が始まり1865年に北軍勝利で終結し、奴隷解放に至りますが、両軍で50万人近くの戦死者を出しながら、南部諸州では人種差別を合法化する州法を成立させたり有名なKKKなどの白人至上主義団体が活発に活動するなど社会的亀裂を深めます。そんな状況でイギリスなどに伍して日本の明治政府にしっかり食い込んだ底力は大したもんです。

このように国を二分する内戦は日本で言えば1868年―1859年の戊辰戦争ですかね。鳥羽伏見に始まり官軍が幕府軍を掃討した戦いですが、その後の薩長閥による政治支配は続き、ある意味安倍政権もその末裔でしょう。西南戦争は新政府内部の抗争による内乱と言うべきでしょう。こうして南北戦争と比べてみると明治維新の過剰評価は要注意ですね。

あと欧米と比べて日本の工業化は、ちょっと遅かっただけでそれほどの差はないことも意外な感じです。エンクロージャーと自由貿易が産業革命へ導いたイギリス、奴隷解放と保護貿易で後を追ったアメリカ、王政復古を旗印とした宮廷革命の日本と、それぞれの歴史の違いが面白いですが、後の時代への影響もそれぞれで複雑です。

そんな日本の高速鉄道がイギリスとアメリカへ売り込みがかけられているってのは面白いところ。イギリスはCTRL-HighSpeed1のClass395ジャベリンと都市間高速列車Class800ヴァージンあづまが日立製車両で営業してますが、更にJR東日本が英ミッドランド鉄道の営業権を取得したのは既報の通りですが、更にロンドン―エジンバラ間のHighSpeed2と呼ばれる最高速400km/hの高速鉄道新線計画があり、ひょっとするとJR東日本は参入を狙っているかもしれませんね。実際傘下の鉄道コンサルタント会社は関わってます。ただし事業費が膨らんで200㎞弱の新線に15兆円ということで、財政負担の面でスムーズにはいかないかも。

一方JR東海はテキサス高速鉄道に新幹線方式の高速新線計画を売り込んでおり、実現可能性ありと言われておりますが、度々指摘してますが、既存の鉄道インフラと断絶した独自規格の事業はハードルが高いところです。ただしこちらは一応純民間事業ということで、財政面の問題よりも資金集めがうまくいくのかというハードルがあります。自動車社会のアメリカで鉄道建設への理解が得られるかどうか。

てなわけで、歴史的に関わりの深い英米日ですが、高速鉄道を巡る意外な接点がいかなる未来を築くのでしょうか。いずれの国も工業国としては成熟段階にあり、高速鉄道の需要誘発効果に頼るのも難しいですが、JR東日本も東海も世界へ出ることで成長を模索しています。

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Sunday, August 13, 2017

1億総社畜化社会

米朝間で子供の喧嘩みたいな罵り合いが展開されており、市場はリスクオフに振れて株価を下げたりしてますが、こういう時は落ち着きましょう。そもそもホワイトハウスの行政官ポストを埋め切れず身動きが取れていないトランプ政権に戦争準備ができているわけないですし、北朝鮮にしても核実験由来の放射性物質は1回目以外検出されていませんし、ICBM実験も高高度で発射して飛距離のポテンシャルを示してはいるものの、難しい大気圏再突入性能は検証されておりません。もちろんだからと言って核やミサイルの開発が進んでいないとまでは言えませんが、騒ぎ過ぎです。

てなことは置いといて、1年前のエントリーで取り上げた社畜ネタです。今年は例年にも増して高速道路の渋滞が酷いですが、お盆に一斉に実家へ帰るからこうなるんで、時期をずらすとか考えないと、3年後は丁度オリンピック期間とバッティングしますからどうなることやら。猛暑による熱中症問題がやっと認識され始めましたが、新国立競技場をはじめとする関連工事も人手不足出遅れが心配されてますし、その新国立競技場の工事作業員の過労自殺が報じられるなど、本当に大丈夫かいと心配になります。

ロングバケーション当たり前の欧州では、企業が従業員に有給休暇取得時期を割り振って分散しながら長い休暇を楽しむのに、短い盆休みを一斉に取って大移動する日本のビジネスマンの働き方の異常さが世界へ発信されるおぞましい2020年になりそうです。その働き方改革を巡って混乱もあります。

連合、「脱時間給」容認を撤回 政労使合意は見送り  :日本経済新聞
日経の記事は問題だらけなんですが、連合の逢見事務局長が独断で政権とやり取りして進めていた話で、神津会長は長時間労働の歯止めが認められるならば、政労使協議に応じても良いとしたものの、あくまでも年収1,075万円以上の特定職種を対象とした高度プロフェッショナル制度の話であって、脱時間給は関係ありません。

そもそも裁量労働制も成果主義賃金も現行法で違法ではないんですが、要件として募集や採用の時点で説明がされ雇用契約書にも明記されている必要がありますし、そもそもこのような雇用形態は労使間で合意が必要なんですが、御用組合をでっち上げて協定書の書面を作っても、未払い残業代請求訴訟では実体のない名ばかり組合では労働者の代表と認められず会社側が敗訴する事例が重なり、経済界から要件緩和の要求が出ていたもので、労働側から見れば当然認められません。

あと限定職種の高度プロフェッショナルにしても、高給取りで直接雇用が難しいんですから、むしろアウトソースして相対取引で条件を決めれば良いんで、労基法に盛り込む積極的な意味はありません。当然の如く連合の傘下組合から反対の声が上がって連合は撤回に追い込まれ、次期会長含みだった逢見事務局長を副会長に棚上げして神津氏の会長留任を決めて収めたって話です。早い話企業は残業代を払いたくないってのが本音です。

2020年のオリンピックと盆帰省のバッティング問題でも指摘しましたが、欧州企業では仕事の繁閑を有給休暇の分散取得消化で対応しており、そのため使用者側に有給休暇の完全消化の義務と共に取得時期調整の権利が与えられています。国によっては年度初めに従業員の有給休暇取得計画書を当局に提出する義務まで負わせているわけで、残業で繁閑調整をしている日本とは根本の考え方が違います。結局残業が日常化して長時間労働が当たり前になり、過労自殺も後を絶たないし、長時間労働で作業効率も落ちるから労働生産性が高まらず、利益率が低くなるという悪循環です。解決策は簡単で、最繁忙期に合わせて増員して有給休暇を分散取得させることです。

あと人手不足でAIへの期待が高まっておりますが、AIに限らず機械による労働の代替自体は昔から繰り返されてきたこととはいえ、単純な代替を考えているならお門違いです。AIは人間になれませんし、むしろAIが能力を発揮するための仕事の手順や環境を人が整えてやらなければならないですから、AIで人手不足解消は不可能です。これオフィスオートメーションが言われ始めた時代やコンビニのPOSシステム導入のときも言われたんですが、システムの導入に伴って業務の見直しがちゃんとできて初めて、少ない人数で多くの産出高を稼ぐことで労働生産性が向上するんで、その分を賃金に反映させて家計の購買力を底上げして初めて、経済成長につながるんですが、現実はどうも違う方向へ進みそうです。

実はこれを端的に説明するツールはマルクスが提供しておりまして、G--W--G'で表しております。Gは資本、Wは商品を意味します。ここで言う資本はぶっちゃけお金のことで、生産手段としての工場や機械に投資して、従業員を集め原材料を仕入れて生産した商品を市場へ投入して代金G'を得ることになります。このときにG<G'となるように仕組みを整えるわけです。工業化で工業製品が大量に生産され市場投入される産業資本主義過程はこれが繰り返されるわけです。

しかし大量の工業製品が市場へ投入され続けた結果、工業製品の価格は低下しますし、またスマートフォンのような汎用多機能デバイスの登場でむしろ集約が進む結果、G<G'の関係の維持が難しくなります。一方PCやスマホのような汎用デバイスはソフトウエアのバージョンアップで機能強化が進み、思いがけない用途が開発されていきますから、開発に携わるプログラマーやSEなどのIT人材が重要な生産手段となり、その調達囲い込みのために高額報酬が約束されるようになります。結果的にITデジタル技術を軸とした生産手段の組み換えが起きてデジタルブルジョワジーとデジタルプロレタリアートに分離する現実が出現したわけです。伝統的工業の衰退とIT産業の台頭で米トランプ政権誕生の背景でもあります。

困ったことにあらゆる労働がデジタル技術で代替可能なわけではなく、元々低賃金の単純労働はいつまでも機械化されずに残るどころか、かつてはノウハウの塊だった事務職や販売職も作業内容が単純化されていきますから、低賃金の単純労働はむしろ増えるわけです。つまりマルクスがプロレタリアートと命名した時間の切り売りでしか生活の糧を得る手段を持たない階層が新たに出現したと見れば、世界的にみられる格差拡大が容易ならざる事態であることがわかります。この観点からすれば労基法改正で政府が盛り込もうとする高度プロフェッショナルは保護すべき対象ではないわけです。

さらにもっと困ったことに、高給で優遇される高プロ人材の育成は困難だってこともあります。何となれば人に教える暇があるなら自ら働いて稼いだ方が良いし、人に教えてライバルを増やせば自らの市場価値を下げることになります。加えて技術革新のスピードが速くなってますから、市場価値が落ちたところで教える側に回る頃には次の新技術が出現して手持ちのスキルが陳腐化しているわけですから、教えるニーズもなくなるわけで、ある意味旬の内に稼いでセミリタイアというキャリアプランを取らざるを得なくなります。かくして技術の分断が今以上に深刻になるわけです。

また高額報酬の職業ほど資本代替のニーズが強く、高額の研究開発投資に見合うリターンが期待できますから、いずれ稼げる職業は減っていくというディストピアになりかねません。自分で自分の首を絞めることになるわけです。高プロじゃないですが、例えばかつて高給取りだったバスドライバーやトラックドライバーの賃金低下も、運送業の参入規制撤廃で進んだわけですし、タクシーに対するウーバーなどのライドシェアの挑戦も同様の文脈で理解できます。規制緩和は善として拙速に認めるのは問題です。

その先の自動運転も、当面は地域限定の交通システムとしての実現を目指すのが妥当です。トラックドライバー不足を自動運転で凌ぐのも問題です。荷物の積み降ろしや検収、場合によっては代金決済もあるわけで、その部分は自動化できないので、結局ドライバーに運転させる方が労働生産性を高めることになります。寧ろ鉄道や船舶との連携による複合一貫輸送のシステムを構築することが大事です。この辺の誤解はかなり根深いですね。

その鉄道も自動運転車の実用化で変化を迫られます。ただし道路輸送では実現不可能な大量輸送の能力が結局鉄道のレゾンデートルになるという意味で、地方のローカル線の維持はますます困難になります。また線路保守など労働集約産業の側面は残り、JRでさえ外注化で凌いでいる状況ですが、その結果日常の列車運行に支障が出るほど保守レベルが荒廃したJR北海道の問題など、解決すべき問題があります。そんな中で取り上げたいのがこれ。

JR東など、英鉄道運営を落札 12月から運行  :日本経済新聞
英国鉄道のオープンアクセス制にフランチャイズ(運行会社)として参入するというもので、遅延の多いミッドランド鉄道の定時運行率の向上をアピールして落札したということで、結構ハードルは高いと思いますが、例えばJR北海道の問題の解決策として、線路保有の国策会社を設立してフランチャイズを募集するといった事態も考えられますから、国内の鉄道事業へのフィードバックも期待できます。この辺新幹線システムの一括受注しか念頭にないJR東海の連戦連敗に対して、確実に経験値を高めるJR東日本の行き方は賢明です。

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Sunday, July 30, 2017

守ってくれない

いや、ひでーな。南スーダンPKOの日誌問題のすったもんだで、稲田防衛相が辞任だそうです。

稲田氏が辞任表明 PKO日報監察「幹部が隠蔽」  :日本経済新聞
ザックリいって、陸自の判断で日誌の非公開を決め、廃棄を促す指示を出したけど、今年に入ってからデータが残っていることが判明し、黒江次官が非公開の方針を決めたという流れで、稲田防衛相への報告に関しては曖昧という画に描いたような責任逃れです。

岡部陸幕長と黒江次官も辞任ということで、一見痛み分けに見えますが、閣僚を辞めても議員を辞めない稲田氏は失職するわけじゃなし、加えて重大な問題が欠落しています。日誌の非公開を決め廃棄を促した陸自の判断は文民統制に反します。当然事務方を通じて大臣にも報告されている筈ですが、特別監察の結果が正しいとすれば、稲田防衛相は何をしていたんだって話です。現場の判断が原因でも大臣の了承なしにやれば文民統制違反ですから、普通は考えられない。あり得る可能性は報告を受けた稲田防衛相は意味を理解せず言葉が右から左へスルーして生返事、または国会答弁のことだけしか考えず、答弁書作成を丸投げしたってあたりでしょうか。稲田氏の答弁能力の低さを考えると、この辺でしょう。

これはつまり稲田防衛相が組織を掌握できていないことを意味します。つまり戦えない自衛隊ってことです。これで敵国が攻めてきたときに戦えるのか?疑問は尽きません。加えて北朝鮮のミサイル発射がこのタイミングでおきましたが、これ偵察衛星で発射確実という情報が流れていたわけで、このタイミングでの防衛相辞任はそれ自体無責任ですが、メディアの扱いは違うようです。

日本、試された「安保空白」 北朝鮮ICBM発射  :日本経済新聞
別に北朝鮮は日本の隙を狙ったわけじゃないですね。天候不順で深夜の打ち上げになりましたが、北朝鮮にとってはあくまでも予定の行動に過ぎません。こうなると悪質な世論誘導です。そもそも北朝鮮の狙いはアメリカ本土を射程に入れることで、日本が被害を受けるとすれば、米朝間の休戦が終わって戦争状態になったときですが、トランプ大統領が「中国のせいだ!」と他人事ですから、その可能性はほぼありません。アメリカは北朝鮮と取引のある中国企業をターゲットに経済制裁を仕掛けるでしょうけど、国有企業ならば政府の意向で事業を他社に振ることなど造作もないことですから、経済制裁は結局効きません。

で、中国はと言えば、北朝鮮の狙いはアメリカとの直接交渉なんだから、アメリカが応じるべだと。少なくとも金正恩は中国の言うことを聞かない以上、打つ手はないわけです。むしろ北朝鮮のせいで韓国へのTHAAD配備など余計な緊張を強いられるから、中国としても何とかしたいはずですができないわけです。

対北朝鮮で軍事オプションが可能だとすれば、中国が北朝鮮へ軍事行動を起こし、それに呼応してアメリカが動いて挟み撃ちにするぐらいですが、とてもそれが可能な状況ではありません。そもそも中国は軍事オプションを使いたくない。何故ならば、歴史を紐解けばわかりますが、ソ連との国境紛争にしろカンボジアを巡るベトナムとの紛争にしろ、対外戦連戦連敗の戦えない軍隊という自覚があります。

だからこそ胡錦涛時代から取り組んできた軍隊改革を習近平も踏襲しており、幹部の更迭と装備の近代化で、経済大国となった中国にふさわしい軍事力の刷新に動いているわけですね。だから経済成長と共に軍事費が拡大しているんですが、それは別に他国を侵略するとか、派遣を求めてってことじゃなくて、抗日戦争時代の古い意識のままの人民解放軍を戦える普通の軍隊にすることです。習近平政権で中国が急に強硬になった訳ではないです。もちろんその結果周辺国への軍事圧力が増すことは確かですが、同時に中国は周辺国との善隣外交に力を入れていることも確かで、例えばASEAN諸国との関係も対立と協調の重層構造で、敵味方を単純化したがる日本とは異なります。

加えて国力に見合った国際貢献を重視する姿勢を打ち出しています。ん?聞いたようなフレーズですね。将に日本の自衛隊の海外派遣で語られるロジックと同じです。これ仕掛けたのは結局アメリカです。アメリカだけが世界の警察として強大な軍事力を持つ構図から脱却するには、経済力をつけた国が応分の負担をすべきだってのは、アメリカがずっと言い続けてきたことでもあります。南スーダンPKOが典型ですが、石油利権と宗教対立で内戦の絶えなかったスーダンの紛争解決のために、油田が立地しキリスト教徒の多い南部をアメリカの後ろ盾で独立させれば紛争が収まるというロジックで南スーダンを独立させたのはオバマ政権のときです。そして治安回復のために国連PKOに丸投げ。そこへ資源外交に熱心な中国が乗っかって、PKO部隊の主力になるという構図です。

南スーダンPKOは実際は参加国が交戦権を国連に預ける形のPKFなので、憲法で交戦権を放棄している日本は本来参加できないんですが、道路補修など戦後復興事業への参加でクリアしてるわけです。だから自衛隊の国際法上の身分は軍属の民間人ってことで、仮に戦闘に巻き込まれた場合でも正当防衛以外での武器使用は通常の刑法犯として扱われます。その意味で日報の非開示までして加えた「駆け付け警護」の新任務は全く空疎な議論だったわけです。安倍政権の政策論はこの手があまりにも多く不誠実です。陸自の造反も無理もない。文民統制違反には変わりありませんが。おそらく中国が主力部隊を派遣する南スーダンに国際貢献でアメリカに恩を売るつもりなのでしょう。

同時に日本と中国の軍備増強は両者の対立を誘発しますから、第三国同士を競わせて結果アメリカが軍備を減らした上でライバルを経済的に疲弊させて力をそぐ一石三鳥。これオフショアバランシングという戦略論の基本ですね。日本も中国もまんまと嵌ってますが。つまりアメリカは露ほども恩を感じません。蒸し返しになりますが、首都ジュバでの政府軍の分裂による戦闘が起きた時点で、情勢が変わったんだから撤収するってのが、本来の文民統制の在り方です。現場から離れた場所で引いて見るから的確な判断ができるわけです。

てなことで、情勢変化に対応できていないのは、迷走する東芝なども同じですが、日本人って一度始めたらやめられない病なんだろうか?それを疑わせるこんなニュースです。

長崎新幹線に暗雲 新型車両に国が不具合報告  :日本経済新聞
日本ではフリーゲージトレイン(FGT)と言われる軌間可変車両の開発可能性は無いと以前から申し上げておりましたが、結局コスト面で無理とJR九州が白旗をあげたものです。株式上場したために、株主に説明できない投資はできにくくなるわけで、株式上場の数少ないメリットではあります。しかし既にフル規格で着工した武雄温泉―長崎間をどうするかを巡って議論がまとまりません。

JR九州では全線フル規格化を求め釣ろしており、長崎県も賛同してますが、問題は元々軟弱地盤で事業費の膨張を懸念した佐賀県が反対姿勢ですし、そもそもフル規格での新規着工には財源がなく、北陸新幹線の小浜京都ルートが2030年以降の事業化で進んでいる状況では優先順位は更にその後ですから話が進まない。その間に着工した武雄温泉―長崎間の2022年の竣工が迫っています。当面武雄温泉で乗り換えるリレー方式の開業が見込まれますが、そうすると僅か66㎢の孤立したフル規格路線ができてしまいます。これ最悪の選択です。

66㎞で2駅の整備区間で片道20分程度の運行ですが、毎時1-2本として予備編成も含めて4編成配置するとして、検査体制をどうするかという問題に直面します。そのために要員を配置するのか、毎回陸送で例えば博多車両所へ運ぶのか?どちらにしてもコストがかかります。加えて武雄温泉での乗り換えの解消は現時点で見通せないとなると、大元の計画に戻ってスーパー特急方式とするのがベストでしょう。

最高速160km/hでも整備区間ではほぼ速度制限なしですから、30分程度での運行は可能です。リレー方式で乗り換えに3-5分とすれば、実質5-7分差で乗り換えなしになります。速度差による保守精度の違いと車両の検査体制問題を考慮すれば、ランニングコストはほぼ半分ですから、全線フル規格化は財源から10年以上先の着工でもあり、スーパー特急化に伴う追加コストは楽にカバーできます。状況が変われば柔軟に判断する。それができないのは不幸です。

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Sunday, July 09, 2017

見えざる手の穢れ

いやはや、秋葉原の安倍辞めろ、安倍帰れコールは大変な騒ぎでした。これがなくても都議選での自民党の敗北は自明でしたが、都民ファーストの勝利ってのはちょっと違います。公明党が小池知事側についたことと、築地市場の豊洲移転問題を選挙前に方針を示して争点から外したことで勝負ありです。小池知事には特にシンパシーはありませんが、こんがらがった現状を起点に考える限りはこれしかない落としどころです。

気になるのが投票率の低さで、これだけ注目された選挙なのに、前回は上回ったもののやっと5割の水準です。こうなると組織票頼みの公明党や共産党が有利になる一方、浮動票を都民ファーストの会がさらって、国政レベルの2大政党の自民党と民進党は激減。寧ろ民進の方がダメージが大きく、敢えて言えばフランスの総選挙と似た構図です。既存政治勢力に対する不信感が表面化したわけで、深刻な問題です。

やはり森加計問題がボディブローのように効いている。安倍首相自身は外遊に逃げて意味のない閉会中審査が招集されましたが、ミエミエのアリバイ作り。政権側は成長戦略としての規制緩和で正当な手続きを邪魔する文科省を抵抗勢力に仕立てようとするでしょうけど、森友、加計を導いた見えざる手が穢れていたんじゃないかという疑惑ですから、国家統治の根幹にかかわる問題です。

これアメリカでも一部の経済学者が問題視してますが、所謂レントシーキングと呼ばれるもので、大企業や富裕層や政府高官の縁故者等による利益誘導全般ですが、近頃は例えば法人減税のように各国が競い合って減税するような状況が見られるようになり、主権国家の根幹を侵食する問題と捉えられております。規制緩和や減税など、所謂新自由主義的な政策の帰結として、格差拡大が各国で問題になっておりますが、少数の富裕層や大企業が自分たちに有利な政策を金で買う結果、ますます格差拡大が進むということで、ピケティが示した累進課税の強化ぐらいしか打つ手がない状況です。一部で成長がないから格差が拡大したという風に誤読されてますが、成長が処方箋にはなり得ないのが現実です。

それを端的に示すのが、米FRBの利上げに拘らず物価上昇が鈍い問題ですが、欧州も似たり寄ったりで、いよいよ日本のように成長率がゼロ近くになり、ピケティが謎としてきた日本の低金利が米欧双方で見られるようになっています。正確には欧州では国によりけりですが、ドイツのように長期金利がマイナス圏に沈んでいる国と信用不安が抜けないギリシャやイタリアのように厳しい状況の国が同居してますが、イタリアの大手銀行モンテパスキの国有化で株式や劣後債を保有する個人の保護を欧州委が認めるなど、銀行同盟の進捗を足踏みさせる状況にあります。こんなじゃドイツが慎重姿勢を崩さない財政統合は夢のまた夢。Brexitで結束を呼び掛けてもEUの統合は進まないと見るべきでしょう。

そんな中でイギリスとフランスで行われた総選挙の結果が興味深いところです。イギリスのメイ首相にとっては手痛い敗けですが、経済より移民制限を優先するハードブレグジット路線は修正を迫られます。ただし伸びたのは2大政党の片方の労働党であり、Brexitに反対の中道の自由民主党や地域政党のスコットランド国民党は議席を減らしており、Brexit自体は信任されたと見て良いでしょう。ただし下院の安定多数を握って対EUで交渉力を高める戦略は否定されました。ま、ある意味時間切れ強制離脱ならば究極のハードブレグジットではありますが、だれも望まないですね。

とはいえ投票率が66%と大幅に高くなり、特に若者の投票率が高まってその票が労働党へ流れた結果というのが面白いですね。Brexitを問う去年の国民投票のときには経済が好調だったことで、ある意味国民の大胆な判断ができたんでしょうけど、その後のポンド安による輸入物価上昇が国民生活を圧迫し、特に失業率の高い若年層が、鉄道の再国有化や大学授業料無償化などを訴える労働党コービン党首を支持した結果です。ある意味アメリカのサンダース現象が再現した形ですが、同じ2大政党制でも、エスタブリッシュメントと見做されたクリントンとそれを攻撃するトランプというねじれた構図と異なって、ある意味イギリスの民主主義はバランス感覚を保つ健全さがあるのだなと感心します。

それにひきかえフランスの総選挙は投票率44%と国政選挙では信じられないような低投票率で、マクロン大統領率いるアン・マルシェ(共和国前進)の大勝という都議選に似た結果で、社会党、共和党という2大政党は議席を減らしています。つまり政治不信の結果であり、浮動票が消えた結果新しい政治運動である共和国前進や共産党など組織票を動員した勢力が浮上した構図です。ちなみにマクロン氏と大統領選を争った国民戦線ルペン党首が初めて議席を得ているのもその表れです。

マクロン氏のスタンスはEU統合強化で、そのために規制緩和や労働市場改革をしてドイツに寄り添おうということですが、これサルコジ政権で大失敗した路線なんですよね。で、反動で社会党オランド政権が誕生したわけですが、絶好調のドイツに経済で後れを取り成す術なく停滞し、またリビアやシリアへの軍事介入で成果を得られずむしろテロの標的になるなどしており、このままではフランスがEUのお荷物になりかねない状況でマクロン政権が誕生したわけですが、国民の不信感の払しょくは難しいでしょう。ドイツにしても、EU統合強化を謳うマクロン政権を手放しで歓迎はしないでしょう。

そうなるとBrexitに対して強面で対応してEUの結束を図るということになりますが、これ第1次大戦後のヴェルサイユ条約での対ドイツ強硬姿勢を再現する危険性があります。イギリスに対して強硬姿勢を示すことで、世論の支持を保とうとするんじゃないかと思います。ある意味国民戦線ルペン党首とEUに対するスタンスの違いはあっても、大衆迎合的になる可能性は高いでしょう。となるとBrexitは波高し?

一応お断りしておきますが、私はBrexitショックの株安で、欲しかったけど高くて買えなかった株を拾うことができたんで、イギリスに対して見方が甘くなっている可能性は否定しませんが^_^;、基本的にBrexitはまあうまくいくんじゃないかと思っております。総選挙で示された国民の意思も明確ですし、変えるべきを変え守るべきを守る本来の保守主義が機能していると見ているんで、元々EU内で特権的な地位にあったイギリスにとっては、EUの統合強化にどこまで付き合うかは、いずれ問題になるところです。

加えてEUの強面に対してはいくつかの強力なカードがあります。その1つが英領ジブラルタルの帰属問題でして、仮にスペインへの返還を持ち出せば、EUの態度を変えさせることは可能でしょう。それどころか紛争を抱えるキプロス問題も解決できず、旧ユーゴの和平交渉の失敗でNATO軍の軍事介入に頼らざるを得なかったなど、EUの紛争解決能力の低さから言って、イギリスとの決定的な対立は結局プラスにならないということで軟化する可能性は一定に存在します。ましてトランプ政権でアメリカが当てにできないしウクライナを巡るロシアとの対立もあるしということで、どっかの時点でイギリスとEUは和解するしかないでしょう。

てなこと言ってる間に北朝鮮のICBM発射実験成功の発表があり、レッドラインを超えたとするアメリカの軍事オプションに関心が集まりましたが、トランプ大統領の他人事ツイートで軍事オプションは早々に消えました。冷静に考えて、アメリカが軍事オプションを行使できる状況は、中国が中朝国境で軍事行動を起こし、それに呼応してアメリカが動くというシナリオでしょう。ただしそれをやるには韓国の同意は当然として、ロシアの黙認も取り付ける必要があります。北に融和的な文ジェイン政権誕生の韓国の同意もロシアゲート問題を抱える中でのロシアの同意もハードルが高いでしょう。せめてということで、北朝鮮と取引のある中国企業を制裁対象にして揺さぶりますが、習近平主席は動じない。そもそも中国の制裁が甘いというのは、勝手な思い込みでもあります。

実は北朝鮮は経済成長しているんじゃないかという見方がアメリカなどで出ており、ニューヨークタイムズによれば1-5%程度の経済成長の可能性を報じています。一応2008年時点でのGDPが米ドルベースで262億ドルで人口が2,500万人ですから、1人当りGDPは1,000ドル程度でベトナムbなどと同じぐらいですが、北朝鮮は石炭やレアアースなどの鉱物資源の豊富な資源国でもあります。そして2008年といえばリーマンショックの年で先進国がこぞって打撃を受けた一方、中国が大胆な財政出動で経済を浮揚させて所謂デカップリングで世界経済の失速を踏みとどまらせたのですが、その結果原油など資源価格が高騰した時期でもあります。中国の電力需要拡大や鉄鋼生産の拡大で石炭需要が増したわけですから、北朝鮮がその恩恵を得ても不思議ではありません。仮に5%成長が続いたとすれば、凡そ1.5倍強の400億ドル程度になっていても不思議ではありません。つまり昨今のミサイル実験の繰り返しは、金回りが良くなった結果であり、その原因を作ったのは他でもないアメリカだってことです。

てなわけで北朝鮮問題は決め手がないまま推移すると思いますが、その中国経済が明らかに成長鈍化しており、皮肉ですがそれが北朝鮮にとっては一番のとばっちりになるでしょう。尤も中国の経済減速は世界も返り血を浴びることになりますが。

てな状況で例えば東芝メモリーの売却先を巡って技術流出を心配する政府のバカさ加減に呆れます。毎年3,000億円から4,000億円を投資して技術の陳腐化を防がなきゃならない半導体で技術流出を心配するってほとんど冗談みたいな話です。そんな風だから日本や欧州の技術を導入して世界最大の高速鉄道網を構築した中国を「パクリだ!」とかdisってる暇があったら、整備新幹線の中途半端なハードの見直しを真剣に考えるべきです。そんな中でこのニュース。

時速360キロの新型新幹線 JR東日本、30年度投入へ  :日本経済新聞
FASTECH360(E954系)で目指した速度を再度新しい試験車で目指すわけですが、E954系の成果として320㎢/hのE5系とE6系が登場したわけですが、320km/h運転区間は宇都宮―盛岡間に留まり、宇都宮以南240km/h、大宮以南110km/h、盛岡以北260kom/h、青函トンネル内140km/hの速度制限を受けています。2030年の札幌k開業を睨んでと言っても、ほぼ全区間で360km/h運転ができなければ、東京―札幌間で4時間の壁は切れないわけで、対航空で優位に立つことはできません。それもこれも財源ねん出を優先して中途半端なハードを作ったツケでして、相当な追加投資が必要ですが、JR東日本単独では難しいし、パートナーのJR北海道には頼れないしということで、試験車で速度制限区間のスピードアップがどこまで可能なのかは未知数です。特に大宮以南と青函トンネル内の制限解除は殆ど不可能と言ってよいでしょう。経営面の不透明さも指摘される中国高速鉄道ですが、今更ながら差をつけられてしまいました。一方こんなニュースも。
JR東、英国の鉄道営業権を応札へ 事前審査通過  :日本経済新聞
イギリスのフランチャイズ制に基づく鉄道営業権を取得しようということで、これが記事にあるように成長エンジンになるかどうかは微妙ですが、いつまでも内弁慶のドメスティック企業ではだめだということで世界へ出ることは良いことです。この経験を活かして国内にフィードバックして、新しい公設民営鉄道の在り方を提案できれば面白いかなと思っております。

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Saturday, May 06, 2017

こどもの日本

北朝鮮のミサイル発射で始まった今年のゴールデンウイークですが、東京メトロの運行見合わせが議論を呼んでいます。報道によれば北朝鮮情勢の緊迫化で4月中旬にミサイル発射の情報があった場合に運行を止めると決めたばかりで、当日テレビニュースを受けて全列車に最寄り駅で運行停止を指令し、その後着弾の事実がないということで運行再開し10分ほどの運行停止でした。そのほかメトロからの連絡で東武鉄道も同様に運行停止したほか、JR西日本が北陸新幹線で一部列車を止めたものの、JR東日本やJR東海は特段の対応はとらなかったということで判断が分かれました。

結果的に過剰反応だったわけで、東京メトロでは、以後Jアラート受信の場合のみの対応とすることを決めています。東京メトロにしてみれば、ミサイル着弾で地上の人が地下鉄駅へ避難すればパニックもあって危険ということで危険回避のためではあるのですが、テレビニュースでの判断は早計だったことを認めた形です。それ以前に冷戦時代に核戦争を想定して地下深くにトンネルを掘り、広い地下空間を確保している東側諸国の地下鉄と日本の地下鉄や地下街とは設計思想が別物なんで、ミサイル飛んできたら地下へ逃げろとか危機感を煽った日本政府が悪いんですけどね。

余談ですが2回続けての北朝鮮のミサイル発射失敗には、2通りの解釈がありまして、1つはアメリカの情報当局が既に北朝鮮のミサイルシステムにマルウエアを仕込んで遠隔操作で失敗させたというもので、もう1つは韓国配備のTHAADなどのミサイル迎撃システムの穴探しのために北朝鮮側がわざと失敗させたというもの。いずれにしても直接日本を狙ったものではないわけで、日本政府の過剰反応は異常です。THAADに関してはコスト負担を巡って米韓で摩擦がある一方、中国を刺激して対韓経済制裁で韓国経済を圧迫していることもあり、北朝鮮を刺激するアメリカに物言える大統領をということで、革新派の文氏支持が拡大している状況で、日本より遥かに冷静です。

別に東京メトロの肩を持つ気はありませんが、首都圏という人口ボリュームゾーンの事業者故の判断という意味では、混乱回避のバイアスはやむを得ないところかもしれません。何しろ東京の満員電車は世界的に知られていて訪日外国人の体験乗車で混雑は飛んで来る状況なんですから^_^;。

5月1日にはJR東日本の豪華クルーズ列車トランスイート四季島の一番列車が上野駅13番線から出発しましたが、13番線は乗客と報道関係者以外は立ち入り禁止で所謂撮り鉄がネットで不満を言えば撮り鉄が悪いの大合唱。クルーズ列車自体はJR九州のななつぼしの成功でJR東日本とJR西日本が追随したとされますが、JR東日本は定期運行を廃止したカシオペアによるツアーや寝台特急あけぼののリバイバル運行などである程度実績があります。

またこの手のクルーズ列車運行はななつぼしもそうですけど。自社沿線の観光活性化が一番の狙いで、観光業の活性化策として富裕層の掘り起こしによるシャワー効果というのはセオリー通りではあります。大人の富裕層がリピーターとなることで一般客が憧れるという構図です。その意味で憧れを拡散するギャラリーの存在は重要なんですが、九州フランチャイズのななつぼしと違って人口ボリュームゾーンの首都圏では、ギャラリーの数が多すぎるから規制せざるを得ないというわけで、クルーズ列車のビジネスモデルはJR東日本にとって最適解だったのだろうかという疑問もあります。例えば若桜鉄道のSL運行のように、過疎地のローカル線で撮り鉄向けのお立ち台を有料提供するアイデアは、首都圏を抱えるJR東日本では難しいわけで、鉄道事業者は立地条件を選べない以上、所与の立地条件の中でビジネスを最適化させるしかないということは言えます。

とはいえ鉄道屋にとっては豪華クルーズ列車ってのは夢でもあるでしょう。トランスイート四季島は10連のEDCで交直流しかも青函区間のAC25kv対応プラス非電化区間用に発電用ディーゼルエンジンまで搭載し、保安装置もATS-P、ATS-Sn、青函ATCまで搭載している一方、寝台やヒノキ風呂などの車内設備も乗っかるわけですから、E5系より重い軸重16tという代物で、一点ものの豪華クルーズトレインでなければあり得ないスペックでもあります。この辺ローカル線向けのリゾートトレインがハイブリッド化されてその技術が仙石東北ラインのHB-E210系に活かされるといったことにはならないわけで、ある意味採算度外視だからできるチャレンジでもあります。JR東日本の規模から言えば許容範囲の道楽という側面も。

その意味ではJR東日本のレゾンデートルと言える次世代通勤車のE235系がやっと量産開始となりましたが、ここに至るまでトラブル続きで、慎重なテストランを繰り返してやっと量産にこぎつけたわけですが、JR東日本のコアコンピタンスとしての大量輸送だからこそ、小さなトラブルも潰しておく必要があります。四季島のような道楽は許されないわけですね。E235系のトラブルも、物見高い首都圏の鉄ちゃんがダメ出ししたとも言えますが^_^;。

てなわけで、生産年齢人口の減少が止まらない日本ですが、だからといって少子化対策ってのは短絡的です。なぜならば万が一出生率が上がって子どもが増えても、労働力化するには凡そ20年のタイムラグがあり、従属人口が増えて現役世代の負担を増すだけだからです。そのせいか急激に教育無償化の機運が高まっているようで、憲法の議論にも飛び火しています。

憲法施行から70年(4)維新、教育テコに首相に加勢 自民と水面下で連携着々 :日本経済新聞
そもそも憲法で教育無償化は禁止事項ではありませんから、憲法改正は無意味です。実際民主党政権で高校無償化は実現しましたが、第2次安倍政権で廃止されました。制約条件は憲法より財源なんですが、財源については建設国債に準じた教育国債の発行が言われておりますが、これ教育を受けた世代が現役世代になってから返済するって意味ですから、現在の現役世代の負担を将来世代にトバすだけの意味しかありません。

一部で相続税の強化も言われてますが、既に民主党政権で強化された結果、大都市圏の親の住宅が評価額から相続税対象となり、改正前はほぼ富裕層限定だった相続税が実質庶民税になった現実がありますが、これがさらに課税強化されれば、遺産相続そのものがほぼ不可能になる一方、富裕層は法人登記して会社を作って資産を委譲し、代表者を世襲することで負担を逃れることができます。結局庶民を食い物にするだけです。政治資金も相続税の対象外ですから、政治家の懐も痛みません。

加えて小泉進次郎議員を中心に自民党若手で議論されている子ども保険ですが、介護保険同様の社会保険制度を作って年金受給者を含む国民全員で広く薄く負担ということですが、待ってほしい。扶養控除の廃止で財源をねん出してスタートした子ども手当が、民主から自公への政権移行のドサクサで減額された上に所得制限付きの児童手当となり、これだけでも実質増税ですが、それに加えて保険料負担ですから、上乗せの増税負担でしかありません。結局負担は国民付け回す子ども騙しです。寧ろ逆進性のある社会保険料負担の緩和のために給付t気税額控除の導入の方が現役世代の負担緩和には効果的です。

安倍政権はこの手のレトリックを多用してあからさまに国民を騙そうとしているわけですが、騙しの手口は経済でも同様です。

日本経済、5期連続プラス成長へ アジア輸出けん引  :日本経済新聞
これ2015年度末の今年1-3月期からGDPの推計方法が変更されて、従来費用に計上されていた研究開発費を投資に計上するようになり、統計の連続性を担保するために遡って数値が改訂されたんですが、その結果改定前はゼロ前後でデコボコだったGDPの数値が、趨勢的に増え続けている研究開発費が乗っかって書き換えられた結果、数値上は5期連続のプラス成長になったわけで、経済実態は変わっていません。経済専門紙である日経は百も承知でこんな記事を載せるんですから、確信犯の政権広報紙ですね。てことで、こどもの日に思う、大人になろうぜ。

p.s.教育無償化の憲法改正はひょっとしたら教育への政治介入の口実になると考えているかもしれません。つまり日本全国みんな森友学園とか。とすれば森友問題をいい加減に終わらせるとまずいですね。

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Sunday, April 23, 2017

忖度弄すと引く大人かい!

世の中不思議いっぱいなんですが、そもそもシリアにアメリカがトマホーク59発も打ち込んだのに、ロシアがシリアに供与したとされる対空ミサイルシステムが働いた気配なし。トラブル?元々ザル?それとも事前通告を受けたロシアが敢えて止めた?

不思議はまだいっぱい。シリア攻撃は北朝鮮への警告と米ペンス副大統領も認めて、シンガポールにいる空母カール・ビンソンを朝鮮半島近海へ派遣もなぜかインド洋へ。北朝鮮のミサイル発射は失敗。北朝鮮核実験場でバレーボール。一方日本の安倍首相は北朝鮮ミサイルにサリン搭載など危機を煽って韓国から不快感。そりゃそうだ。今韓国は大統領選真っ只中。誰が選ばれるかで北朝鮮に対するスタンスも変わるって時に日本国内向けの人気取りは不謹慎。しかも欧米メディアは変な憶測を働かせるし。逆に北朝鮮も大統領選が終わるまでは下手に挑発して敵対的な政権ができたら藪蛇だし。

でもトランプ大統領は喜んでます。なぜならば危機感煽ればリスクオフで円高ドル安になるわけだし。自らの口先介入を安倍首相が補強してくれたんだから感謝っておい!そもそも福一事故で米国民にいち早く退避勧告をした米政府が未だ韓国国内に軍属、非軍属含めて10万人はいる米国民に退避勧告出さずに軍事行動はあり得ません。シリアは直接反撃できないからミサイル打ち込んだけど、同じこと流石に北朝鮮には無理ってもの。トランプ大統領って素人的な危なっかしさはあるけれど、ある種の勘の良さはありそうです。計算通り?まさかね。

北朝鮮危機を煽る安倍首相ですが、森友問題は未だ決着せず。これぐらいのスキャンダルで政権が吹っ飛ばない今の日本の異常さ。森友学園が9億の国有地を8億値引きだけど、加計学園は36億円の土地を無償で入手しかも国家戦略特区を悪用して正規には認められない獣医学科新設というルール破りの権力私物化ですからね。

日米経済対話が始まったけど、日本側の意図に反して貿易問題が前面に出て事実上の日米FTA交渉に。そうならないように根回ししたはずが裏目に。こうなるとアメリカの要求は自動車と農業を中心としたTPP以上の譲歩とTPPでは盛り込まれなかった為替条項。ドル高是正のルール化が必ずテーマになります。

その一方で米中間ではドル高を是正したいアメリカと元安による資金流出を抑えたい中国の思惑が一致しており、両国間で為替協定を結ばれたら日本は手も足も出ないまま円高を受け入れることになります。原油価格も上昇基調にあり日本にとって円高は歓迎すべきなんですがね。G20財務省会合でも金融政策はデフレなど国内問題の解決のためのもので、為替誘導ではないと敢えて強弁しなきゃならないところに日本政府の苦しさが滲みます。

その一方で事実上とん挫したTPPは11カ国で新たな協定として発効させる方向性を打ち出したものの、アメリカを説得して迎え入れるという殆ど不可能なたわごとを言い始めました。アメリカ抜きなら日本に有利な交渉ができるとでも思っているようですが、12カ国の交渉でアメリカの立場を代弁するような対応を取った日本はむしろ警戒されていると見るべきです。農業分野でライバルのアメリカが抜けたことで、オーストラリアやニュージーランドは寧ろ攻勢を強めさえするでしょう。結果11カ国TPPでも農業分野は攻め込まれます。日米二国間と併せて日本は得るものなしです。

この日本政府の無能さですが、地方や民間企業も同じかも。地方でいえば存続の危機にあるJR北海道問題で北海道庁の対応のまずさ。最近やや柔軟化したようで、バス化も含めて協議に応じる姿勢は見せるものの、上下分離には否定的で、運賃値上げには理解を示すものの、JR貨物の線路使用料値上げや青函トンネル保守費用の低減を国に求めるということで、結局国と乗客に負担を求め、自らは負担しないって話です。虫が良すぎます。

民間はといえば東芝の迷走が相変わらずですが、実は買収した海外子会社の不祥事や損失で本体も傷ついたのは東芝に限らず、中国子会社の不正で損失を被ったLIXIL、人口減少で国内じり貧だからと買収したブラジル企業で躓いたキリンとか、成長分野を海外事業に求めてシナジーを得られなかった日本郵政とか。共通しているのは高値掴みしてのれん代償却が重荷になる一方、それっをカバーするシナジー効果は得られていないという同じ構図。日本の企業経営者はよほど無能なんだ。

同じ原発事業を抱える三菱重工と日立製作所ですが、海外案件がことごとく中止になって受注分のコスト上振れも低負担で切り抜けられたという意味で、ある意味運が良かったと。こうなればWHの破たん処理で原発事業から事実上撤退する東芝のおかげで国内の廃炉事業で出番が増える漁夫の利。実質国有化された東電の福一事故賠償を国が面倒を見る現在のスキームではコストの上振れは国が面倒見てくれるし電力料金への転嫁で国民につけ回しできるしで、ハイリスクの海外案件は無理に手出しする必要なし。国有企業をコントロールして構造改革を主導する手法は中国と同じです。いやむしろ習近平の反腐敗政策があれば森友や加計のような問題は起きないか^_^;。中国なら安倍晋三も問題閣僚も死刑かも。それはそれで問題だが。

てなことはいろいろあるんですが、こんなニュースに引っかかりました。

。ロボットと仕事競えますか 日本は5割代替、主要国最大  :日本経済新聞
これそもそも前提がおかしい。経済学では労働力の資本による代替を進めると資本収益力が逓減するという命題があります。実際求人難で賃金が高止まりしていたバブル期に、海外市場を睨んだ強気の判断もあって日本企業はこぞって設備投資に走り、過剰投資で資本収益力を低下させて、90年代半ばからは供給過剰の是正を雇用調整で行って益々資本収益力はじり貧になり、一方過剰設備投資のツケで設備の更新投資が滞り、外資の力を借りて最新設備を手に入れた新興国の台頭に伴い競争力を失ったわけです。

そこへもってきての人口減少です。生産年齢人口自体は90年代半ばから減少に転じたんですが、丁度日本企業が雇用調整を始めたタイミングと重なったこともあり、人手不足が顕在化するまでに凡そ20年かかったわけですが、今後人手不足は深刻化の一途をたどります。JR北海道問題に即していえば、そもそも地域の人口げ減っている中で、鉄路を維持するための要員が確保できないわけで、それを回避するためには、電化や軌道強化などの設備更新でメンテナンス負担を減らし、各種センサーを活用したインテリジェント化など相当な設備投資が必要なんで、その資金を地元で負担できないなら、鉄道廃止止む無しです。これ民間企業も同様なんですが、ロボットやAIはあくまでも労働生産性を高めるためのツールとして活用して、資本と労働の投入バランスを是正することで、付加価値創出力を高める必要があるわけです。

この観点から言えば政府が進める働き方改革も全く見当違いで、そもそも仕事の繁閑を残業で調整しようとするから無理が生じるんでAIを活用して短時間で成果が出る仕組みを作ることが必要なんで、その意味では現状の残業規制は緩すぎて企業に投資インセンティブをもたらさないと言えます。

折しもヤマト運輸のドライバー不足問題やセブンイレブンなどコンビニの人件費負担増などの問題が顕在化して、対策として無人自動運転の解禁が言われますが、実現するまで人手不足は待ってくれません。ヤマト運輸では運賃値上げや時間帯サービスの縮小や宅配ボックスの設置などを進める考えを示してますが、そういうことなんですね。単純衣労働力を資本であるロボットやAIに置き換えるんではなくて、新しいテクノロジーを取り入れながら、顧客から受け入れられるサービスの在り方を模索していく以外に出口はありません。良い子にプレゼントを運ぶサンタさんもそりを引くトナカイがいなけりゃ成り立ちません。てなわけで迂遠ながら季節外れのダジャレ完成^_^;。

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