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Sunday, April 14, 2019

ガラクタ>ポンコツ

鏡の国の未来の話です。まずこれ。

総人口1億2644万3000人、減少率0.21% 18年10月時点  :日本経済新聞
2008年から日本の総人口は減少に転じてますが、度々指摘してますが、より重要なのは1997年から始まった生産年齢人口の減少の方です。生産年齢人口の減少はつまり雇用者の減少ですから、その分世帯の所得の減少となります。実際GDPの分配面を見れば、雇用者報酬は一貫して減少してます。当然消費が減少しますから、価格抑制の力学が働いて、巷間言われるデフレが生じる訳です。貨幣現象じゃないから金融緩和しても解決しない訳です。

生産年齢人口の減少はかように経済を縮小させるインパクトがある訳ですが、これも度々指摘してますが、高齢化に伴うリタイア人口の増加が原因であって、このタイミングで少子化対策しても、生産年齢人口は増えない訳で、保育の無償化などの少子化対策はやるだけ無駄どころか財政再建に回す筈の消費税の増税分を充てるってことは、事実上国債発行と同じ負担の先送りにしかならず、却って将来の負担を増やします。

結果的に高齢者と女性の労働力率が高まって雇用者人口は増えてますが、少なくとも推計方法変更前の2015年までのGDPは増えてないので、労働力の投入量が増えたにも拘らず付加価値は増えてない訳ですから、その分労働生産性が低下した訳です。詳細に見ると高齢者の嘱託や主婦のパートなど非正規雇用が増えた訳で、雇用の劣化を伴っている訳ですから、毎月勤労統計で誤魔化しても隠しようのない現実です。少子化対策したくても、保育士も不足しますし、保育士を増やせばその分他のセクターの雇用が圧迫されますから、どのみち社会は回らない訳です。これ働き方改革も無駄ってことでもあります。

そうは言っても労働力不足は賃金を押し上げますから、低賃金セクターほど人が集まらず人手不足倒産も有り得るってことで、ヤマト運輸の労使協議で料金値上げと荷受け縮小を決めて、それを原資にして賃上げと労働時間圧縮を図った結果、寧ろ人が集まって荷受けも増やすことが出来てと好循環になりました。働き方改革のためにはホント労組大事。労組潰ししたJR東日本のスットコドッコイの将来が不安です。

で、賃金を上げられない不人気業種では、人手不足倒産が現実問題となる訳で、後は外国人に頼るって流れです。これも外食やコンビニでは既に留学生アルバイト抜きには回らない状況ですが、実はバブル期から兆候はあったものの、バブル崩壊による経済減速に助けられて、不良債権処理の借り手側の過剰債務対策で人件費カットを余儀なくされて新卒採用の手控えが起きて、所謂ロスジェネ問題で一息ついたのが実態でしたが、若年人口の減少で逆に新卒の有効求人倍率が高まった結果、頼みの若いフリーターの補充が効かなくなり、その穴を留学生が埋める流れです。

しかしそれも限界でいよいよ賃金上昇が現実に起きると、外食では営業時間の短縮が始まりますが、24時間営業のコンビニではそうはいかず、遂に見直しを迫られることになりました。ただしコンビニでは既に弁当の3便配送をはじめ、24時間営業を前提とした店舗オペレーションでシステム化されてますので、人が集まらないから営業時間を短縮するという訳にはいかず、とりあえず実験で検証する段階です。高度に効率化されたが故に、無人レジなどのストアオートメーションによる省力化の余地も少なく、寧ろ自社競合によるオーバーストアの地域もあることから、単なる営業時間短縮よりも店舗閉鎖が進む可能性があります。

そしてやはり不人気業種の建設業ですが、元々現場仕事は10年程度の見習い期間が必要で育成に時間がかかるにも拘らず、若手の補充が滞ってますから、平均年齢の上昇著しく、いずれ回らなくなります。ここでは技能実習生が頼みでしたが、仕事教えても3年や5年で帰国されると結局戦力にならないということで、入管法改正による新在留資格を要望することになり、この4月から実現しましたが、狙いは実際に現場にいる実習生を帰国させないためでしかありません。

それなら本人の希望に合わせて永住権や国籍の取得ができる移民制度にすればいいのですが、国内の反対論に配慮して移民じゃないと言い張ってますが問題です。外国人を労働力として受け入れることの落とし穴は、労働者が消費者でもあることを見落としてるんですね。労働力の補充よりも消費者として国内消費市場を支え、税や社会保障の担い手として迎え入れるという視点が必要です。これつまり移民そのものです。そして技能実習生制度の烈悪なバージョンアップでは労組への加入なども考慮されてませんので、長時間労働や賃金ピンハネなどの不正の温床にもなります。差別による治安悪化と隣り合わせですね。

内緒ですけど^_^;、新在留資格でも5-10年の在留期間が終われば帰国する訳ですから、結局建設業の人手不足は解消されません。それ以前に今でも年間50万人規模で生産年齢人口が減っているときに5年で35万人とか算数できないのか?wwwwwそういう中で鏡の国で指摘したように古い利権構造で地元への利益誘導で公共事業引っ張って来るってのは、それだけ建設業にストレスを与えますから、様々な矛盾をもたらします。そんなニュースがこれ。

豊洲市場、くすぶる「民営化」  :日本経済新聞
産地直送やBtoCのEコマースの拡大などで元々築地時代から年々取扱額は減っていましたが、豊洲移転でますますその傾向が強まっております。築地市場の豊洲移転はそもそも築地の施設の老朽化と手狭さが理由とされてましたが、大枚はたいて巨大ハコモノ作ったらそっぽ向かれた形です。そして軟弱地盤や土壌汚染問題でコストもハネ上がっていて赤字確実と言われてた中での低迷ですから、それだけ東京都の財政を圧迫します。

そうなると公設市場法の改正もあって民営化の議論が出かねません。これ東急世田谷線レベルの輸送規模でキロ100億円の地下鉄を作るぐらい頭おかしい話です。老朽インフラと新設インフラの関係で見れば下関北九州道路代とも通底しますが、後先考えず巨大インフラ投資を決めて責任は取らずあとは野となれってことですね。

そしてタイトルの意味ですが、ガラクタもポンコツも役に立たないものという共通の意味がある一方、ポンコツは語源である拳でコツンと殴るが転じてハンマーで叩いて解体するものである一方、ガラクタは見方を変えれば価値が見いだせるものという意味で希望があります。故に不等式でつないだんですが、つまりコンバージョンってことですね。新しいもの作って古いもの壊す繰り返しは結局健在を疲弊させますから、知恵を絞ってガラクタを活かすことこそが、人口減の日本にとっては有益です。

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Sunday, April 07, 2019

鏡の国のアベノミクス

不思議の国の続編はやっぱ鏡の国でしょ。ってことで、あれこれ始めます。

塚田前国交副大臣の発言「でも私は忖度」→「おわびする」  :日本経済新聞
渦中の副大臣が忖度したかどうかは些末なことでして、11年前、福田政権時代に費用対効果が不十分として却下された下関北九州道路の事業が国の直轄事業として調査費が計上されたことの不透明さが本質です。現状R2関門国道トンネルと高速道の関門橋の2ルートがありますが、老朽化で国道トンネルは10年に1度の大修繕による通行止めが毎年行われるようになっていて、国土強靭化による災害対策のための二重化という議論があるのですが、そのために2,000億円をかけることが妥当かどうか冷静な判断が必要です。

ルートの二重化はメンテナンスの負担増を意味します。相応の経済効果があるならば良いのですが、関門橋の通行量も予定の半分の水準で、国道トンネルの通行止めの影響を吸収可能な現状からすれば、大した経済効果は見込めません。そうなるとメンテナンス費用のかかる国道トンネルの閉鎖も視野に入り、唐戸水産市場のある下関市東部の経済的な地盤沈下をもたらす可能性もあります。それでもやるのかってあたりの議論がきちんとされてるようには見えないんですよね。

この手の話は日本中にありまして、東日本大震災の津波被害を受けた地域でも、大規模防潮堤建設の是非が議論になった結果、人の住んでないところばかり工事が進んでしまい、いったい誰を守る防潮堤なのかって現状があります。福島第一原発事故関連でもいい加減な除染作業で復興予算が食いつぶされたり、がれき処理を広域処理と称して持ち出した結果、焼却工場を木質バイオマス発電につなげようという地元の構想が頓挫したりとか、土建屋ベースで物事が進む現状がそこかしこにあります。

国土強靭化の名の下に経済効果が十分検討されない公共事業がそこら中で復活したり新たに立ち上がったりしてますが、そのための予算が赤字国債発行を前提にしているわけで、アベノミクスの第2の矢として機動的な財政出動が謳われてもおりますが、経済効果のない公共事業をやる余裕が日本の政府財政にはありません。90年代の財政出動で赤字を累積していて政府予算の最大費目が国債費でその半分は借換債ですから、過去の赤字の清算ができていないのに赤字を重ねる訳ですね。しかも既にケインズの言う乗数効果も1倍即ち有効需要を生まない水準なのは政府も認めています。

加えてここへ来て深刻な人手不足で折角予算が付いた公共工事も人が集まらず未執行となり財政出動不発となる現状があり、2020年の東京オリパラ関連で人手が取られて震災復興も遅れている状況です。五輪関連は元々旧国立競技場の改修をはじめ既存施設を活用し半径8㎞以内で実施という計画だったものが、招致が決まった途端に新競技施設の建設が次々に決まり、加えて築地市場の豊洲移転と環状2号線の整備が強行されました。これも都知事選で争点化した後に迷走し、結局環状2号線は仮設状態でつながったものの、晴海の選手村からの移動がネックになるのは確実です。ここを京成バスが受託した環2BRTが走るらしいですが、混乱は確実です。加えて五輪後の地下鉄計画も。

銀座から臨海部へ都が地下鉄、羽田直結目指す : 国内 : 読売新聞オンライン
これTBSのメトロ都営統合報道を思い出させる観測気球ですね。実態はこれから検討という段階ですが、一方で豊洲移転の遅れで政治路線化したマジ卍な豊住線はメトロが作るのが望ましいとしていますが、1日13万人の利用を見込む豊住線よりこの臨海部地下鉄を都としては優先するってことです。5㎞で1日5万人ってザックリ言って東急世田谷線レベルの輸送規模ですが、それに2,500億円、キロ500億円の事業費を見込むってのは採算性は関係ないって頭おかしいレベルです。

この臨海部地下鉄構想ですが、言い出しっぺは中央区で、当初環2LRTが五輪輸送を睨んだ暫定BRTとして上記のように京成バスの受託に至ったんですが、一方で2020年五輪招致が決まったところで地下鉄構想を唐突に主張し、交通政策審議会の2016年答申に滑り込ませた経緯があります。明らかに五輪絡みの利権漁りの気配があります。

直通運転が示唆されるつくばエクスプレスについては、沿線開発が急過ぎて混雑緩和対策に追われた結果、懸案の東京駅延伸の事業費1,000億円をねん出できない状況ですが、更に銀座まで伸ばすとすれば同じぐらいの事業費が上乗せされますから、ほぼ不可能でしょう。羽田直通はJR東日本によるりんかい線引き受け問題との絡みで、可能性はあると言えばありますが、地下駅の国際展示場駅をジャンクションに改造するのは相当な事業費の上振れの覚悟が要りますので、やはり実現可能性は薄いでしょう。しかも都営地下鉄として整備とは言っていません。つくばエクスプレスかJR東日本に丸投げのつもりでしょう。

政治家にとっては公共事業による利益誘導はわかりやすい有権者へのアピールになるんでしょうけど、それに留まらず土建屋の集票能力への依存の意味なんでしょう。採算性が問われる鉄道事業でさえ採算度外視の計画が動いてしまう危うさは要注意ですが、別の面から言えば、それだけ土建業会は労働集約産業としての性格が強いってことでもあります。そこで気づいたんですが、公共事業の乗数効果の低下はこれが原因じゃないかと思い当たります。

つまり公共事業に依存しなければ存続が難しいゾンビ的な土建業に栄養を与え続ければ、そこへ雇用が張り付いて国全体の生産性を下げてしまうという点です。日本の低生産性は公共事業依存の結果なのかも。しかも人口減少で人手不足は若年労働力の確保が難しくなりますから、外国人を入れないと回らないってことで、入管法改正を急いだわけですね。加えてこのニュース。

ジャパンディスプレイ株が急伸 台中勢傘下で再建進展の期待  :日本経済新聞
政府系ファンドによる国内企業の救済策は死屍累々で外資に売り渡した途端に株価が上がるって、これ公的資金でゾンビ企業を延命させている結果と見れば、公共事業と同じように日本の生産性を低下させる元凶と言えるでしょう。結局ゾンビ退治ができないから生産性が下がって成長できないけれど、それがバレると選挙で勝てないから統計弄って誤魔化すことになります。その結果アベノミクスは迷走しっぱなし。鏡の国の迷宮に迷い込んだアリスの如しです。

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Saturday, March 30, 2019

不思議の国のアベノミクス

アセット・バブル・エコノミクスの頃から指摘している通り、うまくいかないしやめられなくなると言い続けてきたアベノミクスですが、予想通り迷走しております。当初2年で2%のインフレ率達成を目標としたQQEも度々目標達成を先送りして現在に至りますが、出口が見えない中で景気の谷が近づいているのに動けない日銀です。 今囁かれているのがマイナス金利融資という奇策ですが、現在のマイナス金利が日銀当座預金に銀行が追加で預け入れした分に適用されるのですが、その原資は国債の日銀への売却代金ですから、僅かながら利子が付く国債を売って日銀当座預金が増えれば銀行にとっては損失になりますが、逆に融資の形で日銀が銀行に貸し付ければ、銀行がその資金を利の薄い銀行間取引や債券投資に振り向けることで、僅かながら利ザヤが生まれます。つまり体の良い銀行補助金って訳ですが、これなら銀行から批判を浴びた日銀預託分のマイナス金利付利に対し、銀行懐柔に使えるって訳ですね。銀行の中の銀行も地に堕ちたもんです。 元々QQEは金融圧迫にしかならないと言い続けてきました。QQEによる国債爆買いは国債市場を圧迫して市場金利を歪めたことに留まらず、市場で売買される現物が減って銀行が運用難に陥る訳ですが、当初「ポートフォリオ・リバランス」と称して国債投資に偏った銀行のポートフォリオ見直しを示唆しました。これぶっちゃけ外債投資を促したわけですね。というのは日銀が直接外債を買うと為替介入と見做されて国際的に非難を浴びるので、銀行の余剰資金を振り向けさせるという訳です。 その結果外債投資に傾斜した銀行各行ですが、米FRBの緩和縮小と利上げで状況が変わり、保有外債が金利上昇で含み損を抱える状況で持続可能ではなくなりつつあります。ちなみに今季6,800億円の減損処理を発表したみずほ銀行ですが、内1,800億円は外債含み損の減損処理で、他行に先駆けてはおりますが、これで打ち止めという保証はありません。外債投資が無理で行き場を失った資金は国内社債投資にシフトしているようですが、ハイリターンを狙ってハイリスクな劣後債に集中しているようで、景気の谷を迎えるこれからを考えると不安です。 そもそも銀行の一番の収益源となる筈の融資ですが、企業の国内設備投資が冷え込んだままですから融資が伸びない。そんな中で数少ない融資先として不動産融資に傾斜した結果、地価が上昇している訳ですが、これも選別が激しくなり、今や駅近7分以内以外は見向きもされない状況です。バブル崩壊後の地価下落と再開発絡みの容積率緩和で人口の都心回帰が進みましたが、地価上昇でマンションの価格が押し上げられ、売れ行きにブレーキがかかり始め、ここへきて異変が起きてきています。 インバウンド需要の拡大でホテル不足から都心の好立地はホテルに買い負けるようになり、より地価の安い郊外の駅近へ、そして地方都市へという流れで、宇都宮や高崎にまでタワーマンションが建つ状況です。誰が買うんだか。あと交通結節点のマンション人気は強く、武蔵小杉に続いて海老名の人気が高まり、開発が加速しております。そしてこのニュース。

相鉄、悲願の東京都心直結へ 11月末からJRと直通  :日本経済新聞
武蔵小杉のタワマン群のお陰で横須賀線の混雑が助長されていることは限界都市川崎で述べた通りですが、始発で座れる海老名のタワマン族が利用するとすれば、JRと相鉄の直通で列車本数が増えても武蔵小杉に着く前に満員とタワマン族が被る状況もあり得ます。相鉄としてもいずみ野線に残る保有地のマネタイズとバランスの取れた街づくりがしたいところでしょうけど、目論見が外れる可能性があります。 加えて五輪後の不動産市況の変化も見逃せません。東京都心エリアではJR東日本の高輪ゲートウエーの開発進捗があり、また晴海の五輪選手村も改装して分譲マンションとして売り出されますが、その辺のタイミングで東京も人口減少へ転じると予想されております。需要が減って供給が増える訳ですから、値崩れは確実でしょう。ホントアベノミクスいいとこなし。 居や国内はともかく外交特に通商交渉ではTPP11や日欧EPAでをまとめたじゃないかと言われますが、TPPを離脱したアメリカの復帰を狙って農産物で大幅譲歩した結果、異変が起きています。
農産品輸入、米国離れ 牛肉・豚肉のシェア低下  :日本経済新聞
オーストラリアとカナダ産の牛豚肉のシェアが拡大して米国産を圧迫している状況です。これから始まる日米通商交渉はさぞや地獄でしょう。浅はかです。 てな訳で、トランプの兵隊に追い詰められた不思議の国のアリスですが、アベノミクスも同じぢゃん^_^;。

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Sunday, March 17, 2019

思い出されるBrexit

Brexitが迷走しているように見えますが、私はほぼ想定内のプロセスを踏んでいると見ます。そして追い込まれているかに見えるイギリスのメイ政権ですが、強硬離脱反対の下院議決を得たことで、寧ろEU側が追い込まれたと見ています。理由は簡単で、強硬離脱を避けたいのはEUも同じ、対立が解けない英国内世論の中で、強硬離脱だけは避けたいという意思が示された訳ですから、メイ首相はこれを対EUの交渉のカードに利用すると考えられます。

あと国内経済が好調なのも追い風です。これBrexitのゴタゴタでEU圏からの移住者が減って失業率が歴史的低水準にあり、消費が堅調なことによります。EUに加盟しながら移動の自由を保障するシェンゲン協定未加入というイギリスですが、市場統合が進み、特に東欧圏へ拡大した結果、相対的に貧しい東欧圏の住民が流入して労働市場を圧迫してきたことがBrexitの議論の背景にあります。元々移民受け入れに寛容なイギリスで単純な反移民という訳ではありません。その流入が減って経済が上向いたんですからこれゴタゴタのお陰?

一方EU側はイギリスに厳しい態度を取り続けてきましたが、その狙いはイギリスを離脱撤回に追い込むことです。何しろBrexitのゴタゴタでイギリスを忌避した東欧諸国の労働者がその分大陸諸国に押し寄せてますし、加えてシリア難民の受け入れ問題も重なって大混乱し、移民排斥の機運が高まっている訳です。その結果反EU勢力が支持め加盟国で議席を確保し、無視できない存在になっております。EUとしてはこの面でもイギリスに甘い顔ができない訳で、着地点としてイギリスの離脱撤回がベストシナリオになる訳です。

それがイギリス下院の強制離脱反対決議と翌日の離脱延期決議によって、EUも延期承認の決断が求められることになります。延期については全加盟国の承認が必要ですが、承認されずに強制離脱に追い込まれることは避けたい訳ですから、EU側としては延期承認でまとめるしか選択肢はありません。しかもここへきてユーロ圏の経済が足踏み状態となり、ECBによる緩和縮小も当面見送られる状況ですから、強制離脱でより深傷を負うのはEU側ということになります。

このイギリスの政治的混乱は理解しにくいことも確かです。しかしイギリスがコモンセンスの慣習法の国であり、主要国で唯一成文憲法を持たない国という点から見れば、不思議でも何でもありません。そんな国の議会に付与された立法権というのは、つまるところ時代の変化で不具合が出てきた慣習法の修正に力点が置かれます。故に現実にどんな不具合があるかが出発点になります。

所謂立法事実が問われ、議会で成案を得ればそれがそのまま法律として発効する訳で、成文憲法に照らした違憲立法という概念すらないが故に、文字通り熟議を経て必要な修正を加えて可決成立に至る訳で、某日本国みたいにろくな議論も無しに数の優位で押し切られるのとは違います。Brexit関連では、そもそもキャメロン政権が行った国民投票も、日本ならば憲法改正の要件として国民投票が憲法に明記されてますし(第96条)、辺野古埋立問題で実施された県民投票も法的拘束力はないと説明されてますが、憲法第95条で国会での不利益立法の禁止が定められています。

イギリスの国民投票が取扱注意なのは、例えば結果を無視して政府が離脱撤回したり、あるいは違う結果を得るために国民投票のやり直しをして異なる結果を得た場合などはそれが慣例となってしまうということになります。故に政府としては不都合であれ何であれ、国民投票で示された民意を尊重しつつ議論を重ねるしかない訳です。その辺を踏まえずに直接民主制の弊害やポピュリズムを指摘する議論はインチキってことがわかります。

ある意味イギリスはこういった混乱を重ねながら歴史を刻んでまして、例えばメージャー政権で手掛けた鉄道改革を巡る混乱は政治に翻弄された英国鉄道改革鉄道書評、民営化で誰が得をするのかで取り上げましたが、一方ブレア政権での見直しで高速新線(STRL)High-Speed1が建設されユーロスターのスピードアップとドーバーまでの近郊輸送が劇的に改善しロンドンオリンピック輸送にも貢献したことは近郊型消滅? suburban首都圏品質で取り上げました。当初の混乱が見直しで改善されたことは、Step by Stepで議論を重ねるイギリス流ってことですね。

尚、このHigh-Speed1ですが、ユーロスター単独では採算性に疑問符が付くところ、ロンドンの近郊輸送の改善と抱き合わせたところがミソ。日立製のClass395"Javellin"がMax225km/hで走りドーバーがロンドンの衛星都市になるという変化も生まれてます。これ国鉄の通勤新幹線構想そのままです。この構想は実現しませんでしたが、新幹線網を全国展開する上でネックとなる首都圏のアプローチ区間を通勤新幹線として先行整備して短期的には首都圏の通勤輸送改善を狙った意欲的なものでした。公社時代の国鉄ではこうした柔軟な発想は実現できなかったんですね。

ふと思うのは整備新幹線を巡る我田引鉄ぶりやJR北海道の経営を巡る混乱を見ると、結果的に上下分離とフランチャイズ制による参入障壁の撤廃で活性化された英国鉄道の方が今となっては優れていると言えるかも知れません。逆に成文憲法を持つ日本の場合は、民主党政権で閣議決定されながら震災の影響で断念された交通基本法が、自公政権で交通政策基本法として成立したものの、移動権を憲法の基本的人権に紐付けて国、自治体、事業者の役割を規定した部分が省かれた結果が、国の責任ばかりを言い立てて具体策を出さない北海道庁や関連自治体の態度になっているのではないかと思います。

Brexitに話を戻しますが、北アイルランド問題がネックになっている訳ですが、現実的な落としどころとしては北アイルランドをEU圏に残して1国2制度にするぐらいしかないでしょうけど、それだと英国内に実質的な国境ができることになります。故にメイ首相がEUと取り交わした離脱案では北アイルランドの国境問題の恒久的な解決策が見つかるまでEU圏に残留させるという表現になっておりますが、これが実質EU残留の恒久化につながるとして強硬離脱派からも残留派からも反対されている訳です。

その対立は解けないままですから、離脱延期しても同じことを繰り返すだけで、結局延期を繰り返してゴタゴタが続くことになりますが、ある意味根競べというか、いずれ諦めから政府案に収斂されるってところでしょうか。とはいえ時間をかけることは民間企業に判断の余地を与えるので、それを織り込んだ動きで強制離脱のショックもマイルドになるという面もあります。そんな中でのこのニュース。

ホンダ社長、英での生産終了21年中に トルコでも休止  :日本経済新聞
Brexitは無関係と明言された社長会見ですが、勿論無関係ではありませんが、背景としてホンダの欧州での販売不振があり、スウィンドン工場出荷分の大半は北米向け輸出に回っていて、欧州に生産拠点を置く意味が薄れたので、モデルチェンジのタイミングで生産拠点を見直すのが主眼です。北米では売れているホンダですが、欧州で認められて一流という意識から古くからF1参戦してきたものの、果たせず撤退ってことです。欧州で認められたという意味で日系企業では日産が先行しており、ホンダは及ばなかったってことです。これある意味不振企業の撤退を促している訳で、ゾンビ企業を温存して低迷する日本ンとは大違いです。

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Sunday, February 24, 2019

限界都市川崎

別に川崎に悪意がある訳じゃないんですが^_^;、サイドバーの書籍からお題を頂きました。同じくサイドバーの週刊東洋経済の通勤電車特集から、最強の通勤電車ランキング32路線中32位のワーストに選ばれた横須賀線のE217系の置き換えにE235系投入が発表され、普通車がオールロングシートになることがネット上で話題になりましたが、横須賀線のワーストの理由が混雑率の悪化ってことで、実は武蔵小杉のタワーマンション群に原因があるのでした。

ご存じの通り横須賀線は湘南新宿ラインと線路を共用しており、旧蛇窪信号場の平面交差もあって増発が困難なことが原因なんですが、加えて相鉄都心プロジェクトで今年度下期には相鉄からの乗り入れも始まりますから、その枠も確保しなきゃならない訳です。こちらも埼京線との相互直通ですから、品川東京方面への増発は当面見込めません。となれば当然車両レベルで収容力を高める必要がある訳で、オールロングシートにするしか手がない訳です。

長期的には蛇窪の立体交差化が課題ですが、直ぐには実現できません。とにかく朝ラッシュ時には改札入場待ちの列が伸びて危険ってことで臨時改札を設けたけれど、今度はホームが混雑して危険ということで、ホームの増設を決めましたが、完成は2023年で、未だ建設中のマンソンも多く、当面改善は見込めません。大江戸線勝どき駅の二の舞ですね。加えて若い子育て世代の流入で待機児童は増える一方。タワマンたわわな江東区を再現しています。当然小学校、中学校と順繰りに生徒数の増加に悩まされるわけです。

都市部で依然 待機児童多く  :日本経済新聞
待機児童問題は煎じ詰めると都市部固有の問題で、再開発で同じ世代の人口が急増することで起きる訳ですが、それでも都市再開発の流れは止まらず、寧ろ開発を促すために容積率の緩和が行われる状況です。そして世代の多様性がないから将来はそっくり高齢化して空き家候補になる訳です。将に限界都市まっしぐらです。

川崎というと工業都市のイメージが強いのですが、新興財閥の浅野財閥による川崎鶴見の埋立地開発に遡ります。元々多摩川の砂利輸送を意図した南武鉄道と奥多摩地区の石灰石採掘から派生した青梅鉄道(後に青梅電気鉄道)、五日市鉄道が立川で繋がったことで、京浜運河沿いの埋立地に浅野セメントが工場を作り、奥多摩からセメント工場への一気通貫の輸送体系を形作ります。加えて隣接する鶴見の埋立地が造成され工場が建ち、原材料や製品の輸送を担う鶴見臨港鉄道が開業し、当初貨物専業でしたが、工場が増えて従業員輸送の要請から旅客営業を始めます。何れも戦時買収で国鉄に編入され青梅線、五日市線、南武線、鶴見線になります。東京や横浜の港湾は政府の手によるものですが、埋立から民間資本で形成されたのが京浜工業地帯の特徴です。

蛇足ですが、南武鉄道のバス部門が小田急グループの立川バス、青梅電気鉄道のバス部門は奥多摩振興から京王グループの西東京バスへ併合、鶴見臨港鉄道は川崎鶴見臨港バスとなり京急グループに属します。歴史にIFは禁物ですが、戦時買収が無ければ大東急の一員となって小田急、京王、京急に分割されたか、相模鉄道のように東急に経営委託しながら独立を維持したかなど興味をそそられます。

加えて戦時体制で南武線沿線には通信機器などの軍需工場が立地し発展しました。大師参拝輸送からインターアーバンに進化した京浜電気鉄道や省電時代のスター京浜線は目いっぱい恩恵を受けた訳です。特に省電京浜線は東京本社の幹部による工場視察の便宜を図って二等車(現グリーン車に相当)が連結されていました。モータリゼーション夜明け前の当時、二等車は社用車の役割を担っておりました。

しかしそれ故に環境悪化で住宅地としては不人気でしたが、グローバル化で工場の海外移転や競争激化による撤退もあり、広大な工場跡地が残されます。これが種地となって再開発が進み、特に横須賀線武蔵小杉駅の開業で利便性を高めた武蔵小杉は人気エリアとしてタワマンが多数つくられて人口急増した訳です。

これは川崎市にとってもJR東日本にとっても計算外だったと思われますが、東京の大江戸線沿線やAGTの新堀舎人ライナー沿線など、交通インフラの整備に伴って開発が過熱して需要が想定を上回る事態が続きます。しかも多様な業務都市が画一的な住宅都市へ変貌することで矛盾を抱え込んでしまうことになります。この観点から二荒山神社の隣にタワマンが建って景観を損なうなど物議を醸す宇都宮市ですが、LRTで沿線開発が誘発されると、寧ろ都市のスプロール化か進み限界都市化という懸念があることは指摘しておきます。一方明るい話題もあります。

横浜地下鉄の延伸予定区間を歩く 住宅地に募る期待  :日本経済新聞
同じ川崎市でも多摩丘陵の住宅地に地下鉄ができるって話です。横浜市営地下鉄ブルーラインの新百合ヶ丘延伸ですが、自前の地下鉄に拘り事業認可まで受けながら、財政事情から断念した川崎市が、横浜市と協定を結んで実現したところが新しいところです。

公営地下鉄の越境自体は都営新宿線の本八幡(千葉県市川市)、大阪市営御堂筋線の江坂(吹田市)となかもず(堺市)の例がありますが、政令市同士の協定というのは前例がありません。尚、御堂筋線のなかもず延伸は1987年で堺市の政令指定都市化は2006年ですし、堺市は中百舌鳥堺線の構想はあったものの具体化はされず寧ろ阪堺電軌を軸とした公共交通活性化に取り組むなどしていて、川崎市とは事情が異なります。

川崎市内のルートが未定で、駅設置と絡んで3ルートが提案されてますが、最も新百合ヶ丘から距離があり、周辺バスの本数や乗車率の高い東ルートのヨネッティ王禅寺案が有力です。ヨネッティ王禅寺はゴミ焼却工場に併設された市営スポーツ施設で市民の人気スポットであると共に、近くに田園調布学園のキャンパスがあり通学需要も見込めます。そしておそらく自前の地下鉄構想が尻手黒川道路ルートだったことから、断念された地下鉄計画でも駅設置が考えられていたと考えられます。

そして横浜市内の剣山は戸建て中心の住宅地に付随する商業集積があり、すすきのはすすきの団地最寄りで隣接する川崎市域の虹ヶ丘団地も駅勢圏で、既に成熟した街で開発余地はあまりありませんが、その方が武蔵小杉のような想定外の事態を招くこともなさそうです。

川崎市の地下鉄構想は元々武蔵野南線の旅客化とセットで構想され、川崎―武蔵小杉間と梶ケ谷貨物ターミナル―新百合ヶ丘間を建設するというものだったのですが、武蔵野南線の旅客化は具体化せず、尻手黒川道路ルートで自前建設を目指し、横須賀線武蔵小杉駅開業で武蔵小杉経由に変更して事業認可を受けて断念という経過を辿るんですが、川崎市でもう一つ具体化した京急大師線の地下化による連続立体化事業が大いに振り回されました。川崎駅で地下鉄と大師線は繋がる形の構想が描かれてましたが、この辺が曖昧で、一方新百合ヶ丘で小田急線との乗り入れも検討されという具合に軸が定まっていなかったので、結局実現は無理だったでしょう。

京急大師線の地下化は市役所通り地下を東へ進み(仮)宮前を経て川崎競馬場地下でS字カーブしてR409に合流する地点に港町駅を設置して川崎大師駅で現在線ルートに合流し産業道路東側で地上へ出て地上駅の小島新田に至るというルートですが、地下鉄との関係が詰められないから工事が度々延期される一方、アクアラインの開通で浮島へ向かうルートを支障する産業道路の踏切は解消されず、また旧いすゞ自動車工場跡地を中心に羽田空港へ渡る橋とセットで先端企業誘致の再開発となる殿町プロジェクトの具体化もあって仕方なく東門前―小島新田間を先行着手することになりました。尚、京急川崎―川崎大師間の地上線は回送線として残りますが、地下鉄計画がなくなった結果、地下化に伴うルート変更の意味も問われます。

川崎市は例えば神奈川臨海鉄道浮島線の旅客化や南武支線の川崎駅連絡線や東海道貨物線を利用した羽田空港アクセスなどいろいろ構想を思い付きのように発信しておりますが、実現に向かって具体化はしておりません。産業構造の変化に翻弄される苦しさはありますが、もう少ししっかりしたビジョンを持つべきでしょう。自前の地下鉄を断念したんですから、次はJR東日本と協定を結んで区画整理事業と連動した南武線の立体化や長編成化など、現実的な都市開発を模索する方が良いように思います。以上非住民の外野のたわごとかもしれませんが。

 

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Sunday, February 17, 2019

鈍器法定

統計不正問題がいよいよ森加計問題と酷似してきました。これ統計法違反という明らかな違法行為なんですが、捜査当局は動く気配なし。そして関与した上級官吏は口をそろえてゴマカシや答弁拒否。一方実行部隊の下級官吏からはリーク続々。アベノミクスの成果を良く見せる改編が行われたと考えてほぼ間違いありませんが、ウソノミクス統計135°でさわりは明らかにしてますので、ここでは踏み込まず別の話題。

大林組、増収増益  :日本経済新聞
「受注企業JR東海が差配」 大成と鹿島、無罪を主張 リニア談合初公判 他2社と認否真っ二つ :日本経済新聞
元々大林組が公取委に申告して発覚したものですが、談合を認め処分を軽減した大林組、清水建設に対して、争う姿勢を見せる大成建設、鹿島建設という構図で公判も分離されてますが、主張は真っ向対立してます。

既に分離公判で有罪が確定している大林組ですが、120日間の民間土木工事中止の処分も受けてますが、実は増収増益。つまりリニアは儲からないから逃げ出したってことですね。加えて2025年の大阪万博開催が決まり、関西地盤の大林組は竹中工務店と共に受注が増えることが見込まれます。つまり大手ゼネコンが仕事を選ぶようになったってことです。

これJR東海にとっては痛い話です。というのは、そもそもリニア建設着手は国鉄民営化時に新幹線保有機構からリースする形で、リース料に旧国鉄債務の一部を乗っけたスキームから、JR東日本の上場審査の過程で主たる収益資産が自己保有でないことのリスクを指摘され、同じ立場のJR東海、JR西日本と共に国に譲渡を申し入れたことで、譲渡代金のローンが始まり、それが2017年にほぼ完済されたことから生じる資金余剰があってこその自前整備ですから、逆に言えば予算上限は厳しく管理する必要があります。

それでも当初名古屋まで5.1兆円と言っていた事業費が膨らみ5.4兆円となっているように、ジワジワと膨張しているわけです。当然利益を削られるゼネコンにとっては旨味が少ないのですが、それでも五輪後を睨めば無下にできない訳で、特に五輪関連や豊洲市場など東京都が絡む事業に深く食い込んでいる大成建設や鉄道会社との関係を気にする鹿島建設は断れない。そしてこうなるってことですね。これだけなら民間同士の話ですから、談合事件で公取委が動くことにはならないのですが。

しかし大阪への早期延伸を望む声が与党議員から出てきて財投債で9兆円の融資を決めたことで、公共性ありと判断されて事件化されるんですから、何がどう転ぶかわかりません。それでも談合事件の立件は難しいところ。大林組の申告が渡りに船だったのでしょう。政府が関与するといろいろ不都合が生じるのは森加計問題や統計不正問題ばかりではありません。

JR東日本の整備新幹線区間への追加投資に絡んで、整備新幹線の法定速度って話題がネットに出てきて「法定速度を超えると線路使用料が上がる」などの妄言も見られますが、これ根拠法の全国新幹線鉄道整備法で定義されている設計最高速度が法定速度と誤って理解されているのが実際です。そもそも東海道新幹線の設計最高速度は210km/hですが285km/hで営業運転されてます。東海道新幹線の建設時には整備法は無かったので超法規的に独自規格で作られたもの。その結果を踏まえて全国新幹線網整備に当たって将来の技術革新によるスピードアップを先取りする形で定められた基準がそのまま見直されずに来たというのが実際です。

そもそも新幹線の事業主体は国であり、国の鉄道事業を体現する国鉄がその任に当たるという前提で作られた法律ですから、国の事業である以上恣意的な解釈で骨抜きにすることは許されないということから、設計最高速度やそれに付帯する最急勾配や最小回転半径などの基準が定められたのが実際。それが国鉄分割民営化で事業主体が消滅すると当時の与党議員が騒いで事業主体となる国のところを各旅客会社に読み替えることで延命させた結果です。

しかも財源がないからあの手この手で財源をひねり出すために、並行在来線の切り離しなどでJRに負担をかけないことや、受益者となる地方の負担も定めるなどされたものです。結局整備計画の延命のために恣意的解釈をした訳ですが。尚、最急勾配は九州新幹線や北陸新幹線では事業費圧縮の要請から一部基準を超える急勾配があり、将来のスピードアップの可能性を狭めています。

JR東海も当初は中央リニアを整備新幹線の枠組みで考えていたようですが、現実に存在しないリニア新幹線は基準に適合しないってことで当時の運輸省はほぼ門前払いに近い扱いをしていたようです。当時は所謂整備5線(東北新幹線延伸部、北海道新幹線、北陸新幹線、九州新幹線鹿児島ルート、同長崎ルート)の扱いすら決まっていない状態で、そちらを優先しないと地元選出議員からクレームがつく状態でしたから、中央リニアの整備新幹線化は実現可能性が無かったと言えます。

それが新幹線譲渡に絡んで譲渡代金の産出に時価法の一種である再取得価格法が適用されました。これは現在時点で同等の資産を新たに取得する場合に想定される価格ってことで、地価や建設費などの相場を反映したものですが、仮定の置き方で数値は変わり得るものでもあります。当時の運輸省はこれを利用して資産の非償却部分となる土地やトンネルなどのインフラ部分の数値を嵩上げし、嵩上げ分を新設の鉄道整備基金に持たせて整備新幹線の財源に利用することで財源論に道筋をつけました。数値を操作して財源をねん出した訳で、こういったことがあるから統計不正にリアリティが出てきます。

その結果JR本州3社はローン負担を負う訳ですが、同時に整備新幹線事業の推進力を得ることとなりました。加えて新幹線が自社保有となり、膨大な減価償却費が発生し無税で利益控除できますから、これで得たキャッシュフローで設備投資に弾みを付けます。その結果JR東海は品川新駅開業によるのぞみ中心のダイヤ編成で増収を図り、自己資本による東名間先行の整備計画をぶち上げることになる訳です。

で、JR東海をリニア建設に向かわせた新幹線譲渡代金ローンの終了はJR東日本やJR西日本も同様で、規模の違いはありますが、それぞれ異なった動きを見せています。ウソノミクスでも触れたように一つは東北新幹線盛岡以北の高速化に向けた設備増強ですが、もう一つ大きなプロジェクトも動き出しました。

JR東 都心と羽田空港結ぶ新線、29年度にも開業  :日本経済新聞
羽田空港の国際化と発着枠拡大で今後とも利用Y差は増えると見込んでいる訳ですが、同時に成田スカイアクセスとローコストリムジンバスに食われて劣勢の成田空港輸送の挽回の意図もありそうです。

整備区間の北半分は休止中で遊休化している東海道貨物線の浜松町―東京貨物ターミナル間の線路を活用し、東海道線に合流させて上野東京ラインで埼玉や北関東のアクセスを図るというもの。加えてりんかい線経由で山手西ルートから中央線や埼京線方面、と京葉線や武蔵野線方面の3方向の列車設定を想定しています。千葉県や千葉市が要求する京葉線から総武線への連絡線が実現すれば、羽田空港と成田空港を直結することもあのうになりますから、将来的には成田空港輸送のてこ入れにもなるという訳です。

既存施設を活用するプロジェクトですから、資金手当てが見通せれば実現可能性は高いですが、一つネックとなるのがりんかい線の扱いでしょうか。東京都はJR東日本に東京臨海高速鉄道の引き受けを以前から打診してますが、これが動く可能性はあります。都市興津に関わる新線計画ですから、国と地方に応分の負担を求めることになると思いますが、東京都の負担分を東京臨海高速鉄道の株式で行い、事実上のりんかい線引き受けにつなげる可能性はあります。ただしJR東日本の営業規則上、東京近郊区間に組み込まれることになれば、現在の認可運賃から大幅減額となりますから、それによる減収の評価をどうするか。株式評価を下げて都が実質補償するか、あるいは東京近郊区間から外して現行認可運賃を存続させる形にするか、交渉次第でしょうけど注目されます。

おまけ。リニアで散財するJR東海と対照的に経営基盤強化に資するプロジェクトに選択的に投資するJR東日本ですが、JR西日本はといえば、尼崎事故以後の安全投資優先の影響もあって遅れている老朽車両の更新に回るものと見られます。だから広島に錆びない電車が登場し、大阪環状線もリニューアルされると。

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Saturday, January 19, 2019

ウソノミクス発覚

ひでーなー。政府統計のウソが発覚しました。

勤労統計調査ミス、長期放置か 復元加工は昨年分のみ  :日本経済新聞
厚労省の毎月勤労統計で、5~499人の事業所は無作為抽出によるサンプル調査ですが、500人以上の事業所では全数調査するところを、2004年以降東京都分の500人以上の1,400余りの事業所の内500事業所しか調査していなかったことが発覚したものです。

一般論として大規模事業所の方が賃金水準が高く、特に東京都は他地域より賃金水準が高い訳ですから、結果的に高賃金事業所が調査対象から外れて統計数値が過少に計上されていた訳です。同統計は雇用保険の失業給付の基準となるので、2004年以降の給付対象者延べ約2,000万人で530億円の過少給付となっていて、その修正のために閣議決定済みの19年度予算案を組み直す異例の事態となりました。

閑話休題。499人以下の事業所が無作為抽出によるサンプル調査なのは、数が多いことと数値のバラツキが多く異常値が混入する可能性があることと、統計調査への回答を行う事務処理能力が欠けるケースもあり、全数調査よりサンプル調査が適当です。逆に大規模事業所は事務処理能力の余裕もあり、毎月定例の調査ですから、ルーティン化できるし回答スキルも上がって正確な数値が期待できます。全数調査をしない理由は見当たらない訳です。

加えて同統計は政府のGDP算出や景気判断にも使われていた訳ですし、日銀の金融政策や民間企業も参照する重要な基幹統計だったからさあ大変。加えてOECDやILOへの報告にも使われますから、日本政府の国際的信用にも関わるものと、その影響範囲は甚大です。もう中国のこととやかく言えませんね。

しかも発覚の経緯が酷くて、数値を実態に近づけるために東京都分を3倍にする復元加工をした結果、18年度の賃金が不自然にハネ上がっておかしいと突っ込まれてバレたっていうんですからもう滅茶苦茶。厚労省といえば労基法改正でも裁量労働制の方が労働時間が短いとするウソのデータを国会に提出して大炎上したことが思い出されます。加えてこのエントリーで取り上げたこの記事も見てみましょう。

(真相深層)政府統計、信頼に揺らぎ GDPなど、日銀が精度に不信感 :日本経済新聞
ここでも毎日勤労統計への疑義が指摘されてますが、他にも指摘された統計データのおかしさがあります。厚労省叩いて済む問題じゃなく、他の統計も見直す必要があり、まだまだ影響は拡大すると予想されます。

2004年と言えば小泉政権で社会保障改革と称して年金保険料の毎年度のアップと給付制限の為のマクロ経済スライドの導入及び積立金の一部取り崩しを決めた年です。小泉政権では膨張する社会保障支出をプラス2,200億円以内に抑える歳出キャップをかけていて、失業給付に連動する毎月勤労統計を過少算出する動機は存在します。加えて派遣労働解禁に舵を切り、失業が増え非正規労働者が増えた時期とも符合しますから、失業給付の減額はその面からも求められます。そしてアベノミクスの成果を示したいと賃金の伸びが弱いことを突かれて復元加工とすれば、始まりも終わりも政治圧力の結果と見ることができます。将にアベノミクスならぬウソノミクスです。今月始まる通常国会はいきなり政局です。

かように日本の官僚機構は政治圧力に弱い存在で、よく「日本の官僚は優秀だ」と言われますが、どうもメッキが剥がれてきたようです。それが見えなかったのは単に公文書を残さないで情報を秘匿していたからというのが実際のようです。そして公文書管理の杜撰さ故にどうもろくな引継ぎが行われず、チグハグな対応になってしまうということですね。そしてそこへ付け込んで与党が政治圧力をかけて、ツケは国民へっていい加減にして欲しい(怒)。例えば整備新幹線。この仕組みも国鉄民営化で宙に浮く新幹線整備法を与党の圧力で延命させたものですが、それ故の矛盾も。例えばこのニュース。

東北新幹線、盛岡以北の高速化検討 JR東が騒音対策  :日本経済新聞
最高速320km/hのE5系が盛岡以北の整備新幹線区間で260km/hで運行していることに対して、国の線路使用料増額がネックなどといった議論がある訳ですが、変節黒田節で取り上げたように、整備新幹線が自社保有ではないことがネックであることは間違いありませんが、今回JR東日本が自前で投資するって話です。これの資金手当てですが、一つ心当たりがありまして、株式上場に備えてJR東日本が発議した新幹線譲渡代金のローンが17年3月に終わるってことです。

これJR東海が5.1兆円の負担を終えて余剰資金をリニアに注ぎ込むのと同じスキームですね。JR東日本の所謂1号債務は凡そ2,1兆円で、91年10月以来年1,000億円規模の債務償還が続いてきたんですが、18年3月でなくなる訳で、この部分のキャッシュフローが充当できるってことですね。これ大宮以南の最高速130km/h化や秋田新幹線の大規模改良などで投資を充実させていることとも符合します。

そして背景としてE5系の走行データが蓄積されてきたってこともあります。最高速260km/hとされる整備新幹線区間でも騒音対策を強化すればとりあえず320km/hまでは何とかなりそうという判断なんでしょう。減価償却されないインフラ部分は触らず、追加設備は自前で減価償却すれば、資金を回転させて継続的な設備改良に道が開けます。但し法的な所有者である国(鉄道・運輸機構)の同意は必要ですが、新幹線の財源探しに鵜の目鷹の目の与党政治家たちが横槍入れて線路使用料増額をねじ込む危険性はあります。北陸新幹線の大阪延伸や長崎新幹線のフル規格化などで財源探しに躍起となってますから。

そしてこのキャッシュフローの余剰を利益計上せずに設備投資に振り向けたJR東日本の判断は評価できます。利益を増やして法人税が増えるなら、投資へ回そうってのは民間企業として真っ当な判断です。やや蛇足ですが距離が長くスピ度アップ効果が見込める東北新幹線へは追加投資を厭わない一方、上越新幹線は最高速240km/hのままと選択と集中もされてます。この観点から言えば法人税減税が設備投資を促すって大ウソだってわかりますよね。ここにもウソノミクスです。ホント腹立つ!

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Sunday, January 06, 2019

林檎が落ちると

世界が混乱します。少なくとも短期的には。そんな波乱の新年をいかがお過ごしでしょうか。発端は2日のアップル社の売上高下方修正ですが、中国でのiPhone販売不振が理由ですから、アップルショックというよりは実質チャイナショックです。中国の経済減速がはっきり見えてきたってことですね。

加えてiPhoneが拓いたスマホ市場の飽和が背景にあります。アップルはハイエンド化による高価格政策で対応している訳ですkが、ローエンド品も性能が上がれば差別化が難しくなるから、結局ハイエンド化による高価格戦略は長続きしない訳です。これ悉く縮小均衡に陥った日本の家電メーカーと同じ袋小路に入ったってことですね。

一方でFRBの金融政策への批判も相次ぎました。先月のFOMCで年4回目の利上げを決めて、更に引き締め継続を示唆したことで、市場関係者の批判を浴び、トランプ大統領もパウエル議長解任を示唆するなどゴタゴタしました。そうした中で4日にパウエル議長が講演で利上げ一時停止を示唆したことが好感され、4日のNY市場は反発しました。「FRBプット健在」と好感された訳です。ただし3-5年物の国債金利が短期物より低いイールドカーブの矛盾はそのままです。これ投資家の質への逃避の心理を反映したもので、リスクオフ相場の特徴鮮明です。これによって為替は円高に振れますから、週明けの東京市場は期待しない方が良いでしょう。

よく言われる「長期停滞で財政赤字が大きい日本がなぜ買われるのか?」という疑問ですが、350兆円と言われる累積経常黒字がある限り、買われるのは当然。むしろ実体はそれだけの余剰資金があるから、リスク投資を手仕舞いすると自動的に円が買われるので、不思議でも何でもありません。これつまり国内の貯蓄過剰が海外投資へ向かっていたからで、海外投資へ向かう過程で売られた円が買い戻されるってことです。所謂貯蓄投資バランス問題なんですが、解決策は内需拡大により貯蓄過剰を解消することですが、これに失敗し続けて長期停滞から抜け出せないのが現在の日本です。

その日本を後追いしてきたのがアジア諸国ですが、その中で最大の国が中国です。その中国は日本の長期停滞を研究して回避策を探ってきたのですが、結果的にはリーマンショック対策で地方政府を中心に過剰な開発投資を重ねた結果、日本のバブル崩壊の教訓を生かせず、水面下で債務超過を拡大して身動きが取れなくなっています。そこへ米中貿易摩擦が加わり、問題を大きくしています。つまり中国は日本の轍を踏んじゃった訳です。この辺は前々エントリー
もご参照ください。

しかし中国の経済的ウエートは大きい上、日本のバブル崩壊後の停滞を埋めるように90年代以降の中国の台頭があった訳ですが、中国の停滞を埋める例えばインドの台頭は未だ力不足なので、当面の経済停滞はかなり深刻なものにならざるを得ません。世界は長いトンネルに入ります。ただしそれだけ石油など資源価格へのストレスは低下しますから、円高と相まって交易条件が改善しますから、日本経済にとっては悪いことばかりではありません。これを機に内需を深掘りして過剰貯蓄が国内投資に向かうようになれば、とりあえず目先の様々な問題には解決の糸口となります。

例えば高齢化自体は解決できないんですが、かつて若年人口の多かった日本で貯蓄性向が高かったのが、高齢化でリタイアが増えれば過去の貯蓄が取り崩されますから、自然に過剰貯蓄は解消に向かうのに、人手不足を理由に高齢者の労働力化を進めるのは、過剰貯蓄を増やす上に労働市場を圧迫して低賃金化を促しますから、寧ろ若年層の負担増となって逆効果となります。年金制度を安定させて安心してリタイアできる環境を整えることが重要です。

その意味で消費税増税問題ですが、野田政権当時の三党合意で消費税を社会保障目的税にするという約束を反故にする大盤振る舞いは問題です。社会保障に使われるならということで消費税増税を渋々認めた国民を欺くことです。選挙で思い知らせてやりましょう。

という訳で、2019年という年は明るい展望が描きにくいのですが、過去に遡れば1997年の消費税3%から5%へアップしたときとよく似た局面です。この年アジア経済危機と山一證券、拓銀などの破綻に端を発する金融危機があった年で、日本経済は大きく足踏みしました。これを全て消費税増税の栄養と捉えるのは間違いです。僅か2%英率アップで、所得効果はマイナス1.9%です。しかし同時に社会保障改革と称して年金保険料が値上げされており、それを加味した所得効果はマイナス3%を超えます。加えて企業の採用手控えもあって所謂ロスジェネ問題でより負担感が強まったことも指摘できます。

結論としては97年の足踏みは果たして消費税増税のせいなのか?ってことには大いに疑問があります。元々の経済ファンダメンタルズの弱体化に加えて年金保険料アップを含む公的負担増が重なった結果と見るべきでしょう。その意味では経済の停滞の中での増税という意味で97年の再現となる可能性はかなり高いと言えます。

但し違いもあります。1つは労働市場の現状ですが、企業の採用手控えこそないものの、高プロ導入や入管難民法改正による外国人労働者の導入拡大などで労働市場に圧力がかかる制度改正がありますから、制度の運用次第では97年よりひどい状況もあり得ます。加えて年金の支給減額や後期高齢者医療保険の負担増など実質的な公的負担の増加は消費税に留まりません。こうした中で一時的なバラマキで乗り切ろうとしている政府の姿勢では、結局単なる問題先送りに留まらず、需要の先食いを助長して却って混乱します。

人口減少下での消費拡大は主にサービス部門の拡大になりますから、モノは売れない訳で、工業セクターの生産性改善では解決できません。逆にサービスは生産と消費が同時に起こる特徴があり、在庫が効かない訳ですが、ITによるマッチング機能の進化で生産性改善の可能性が見えてきています。

具体的にはこのエントリーで取り上げたMaaSが典型ですが、移動のサービス化で複数の交通機関をスマホアプリでシームレスに利用できて決済まで可能となる方向性が見えています。これ必ずしも自動運転の実現などを待たずとも、需給のマッチングで従来不可能とされてきたサービス部門の労働生産性向上が可能になります。その意味で時代錯誤なこのニュース。

2019年 展望 時速360キロで試運転、輸出も JR東海社長 金子慎氏 :日本経済新聞
鉄道にとってのスピードアップは、単位時間当たりの輸送人キロを拡大しますから重要なんですが、人口減少下では顕在化している需要だけを見ていても先細りにしかならない訳で、潜在需要の掘り起こしという点でMaaSの可能性は大きい訳で、こういうマッチョなスピード至上主義は必ずしも正解とは言えません。まして東海道新幹線のスピードアップよりも技術的優位を示して輸出を狙うってのがもうダメ。外需依存ではなく内需の深掘りで過剰貯蓄を消費に結びつけて且つ国内投資に向かわせることで、長期停滞の原因と言える過剰貯蓄が解消されるんですが、全く逆行してます。ヤレヤレ。

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Sunday, December 16, 2018

COCOMしてますか?

華為技術(Huawei)を巡るニュースが連日報じられてますが、1987年の東芝機械COCOM規制違反事件と似ています。時あたかも日米貿易摩擦真っ盛りですし、安全保障問題を梃子にしている点も似ています。

東芝子会社の東芝機械がノルウェー企業と組んでソビエト向けに輸出した工作機械と制御ソフトが、冷戦期の対共産圏輸出規制委員会(COCOM)の規制に違反したとして問題になった事件です。規制品目は軍需品、高度工業製品、原子力関連品などとされ、東芝機械のこの取引が原因でソビエトの原子力潜水艦のスクリュー音が静かになり、アメリカの脅威が増したとされ、政治家による東芝製TVやラジカセのハンマー打ち壊しなどのパフォーマンスが大々的に行われました。

COCOM自体は正式な条約ではなく法的拘束力はありませんが、加盟各国は国内法で輸出規制の根拠法を制定し対応しており、日本では外国為替管理法で規制されてました。そのためアメリカの指摘を受けて日本で外為法違反で訴追され有罪判決を受け、親会社の東芝の会長と社長のトップ2人も辞任します。また議会へのロビー活動を活発に行いどうにか収集しましたが、肝心のソビエト原潜の静粛化に関する証拠開示は行われず、当時の日米貿易摩擦のネタにされたのではないかとの見方も根強くあり真相は藪の中です。

日本がCOCOMに加盟したのは1952年ですが、この年都営トロリーバス101系統今井線(上野公園―今井)が開業しました。開業時に登場した50型が実は中国天津市向けの輸出品がCOCOM規制により差し止められた結果、注文流れで東京都交通局が買うことになります。右側通行の中国向けを左側通行の国内向けに改造するという荒業ですが、朝鮮戦争の勃発もあり、何らかの政治力学が働いたのでしょう。

Huaweiに関してはいろいろと噂されてますが、少なくとも中国製だからセキュリティに問題があるということはありません。ネットや携帯やスマホにバックドアが仕掛けられていることは、スノーデン氏のリークで明らかにされてますが、あくまでもアメリカ政府の話。だから中国も同じこと考えるってことでしょうし、実際その可能性は否定しませんが、これらはソフトのバグを利用したハッキングが中心で、どこの国の製品であれ多かれ少なかれバグはありますから、敢えて言えば中国企業製品はアメリカ製品とはハッキングの勝手が違うってことはあるでしょう。それ以上でも以下でもない。つまり殆ど言いがかりです。ハッキング合戦となればマンパワーの投入量の違いがものを言う訳で、人口大国中国をアメリカが脅威と感じる訳です。

この辺のロジックは例えば中距離核戦力(INF)撤廃条約を巡るロシアの違反を理由としたアメリカの脱退にも見えますが、ロシアは核装備の近代化の一環で言いがかりと反論してます。これも実は中国や北朝鮮の中距離ミサイルが実戦配備されている現状から、ロシアの違反を口実に中国をターゲットにしていると見ることができます。延長線上には日本国内への核ミサイル配備もあり得ます。その時「事前協議」で日本が拒否権を発動できるでしょうか?アメリカに一言「COCOMしてますか?」www

ただHuaweiが対イラン経済制裁をすり抜けて通信機器を提供してきたことは子ブッシュ政権当時から指摘されていましたから、制裁を科したアメリカの国内法には抵触するということで、司法当局が動きましたが、トランプ政権の政治介入の動きに対しては牽制されました。こういうところは腐ってもアメリカです。

つまり一皮めくれば現在進行中の米中貿易摩擦は80年代の日中貿易摩擦とさほど変わらない訳で、当時の日本が唯唯諾諾譲歩したのに対し、中国政府は対決姿勢を見せてますが、いずれ折れないとアメリカの強硬姿勢は変わらないでしょう。中国にとっては痛手ですが、人口大国であることによるネットワーク効果が国内だけでも働くということを考えると、寧ろ中国が力を付けるきっかけになる可能性は否定できません。ただし日の出の勢いだった高度成長は終わり、日本と同様の長期停滞に陥る可能性は高いですが。

アメリカは冷戦でソビエトに勝利し、日米摩擦で日本を停滞させという風に、これまでのところ戦略は成功しており、その成功体験があるから対中国の強硬姿勢も続くと考えられます。しかも今回は軍事面で同盟国の負担増を要請しながら、Huawei排除では同盟国の協力を呼びかけるというご都合主義してるわけで、逆に言えばアメリカと言えども中国を追い込むには単独では難しいってことなんですね。で、中国の停滞の影響はアメリカよりも元々関係の深い日本やEUが被る訳で、日本にとっては損なディールです。矛先が中国に向いてるうちは日本は安泰なんて浅はかです。日本の長期停滞は続きます。

喧伝される中国異質論ですが、これも早い話80年代の日本異質論の焼き直しです。相手が異形の大国であれば、アメリカはあらゆる選択肢を否定しないというスタンスになるわけです。中国の陰で日本が相手にされないのは、日本のプレゼンスが低下したからってことですね。てことで、日本としては本当は鬼の居ぬ間の洗濯のチャンスなんですが、政府はどっち向いてんだか。

いつまでも対米輸出で経済成長を目指そうとするから大変なんで、もっと国内の再分配を進めて個人消費拡大を通じた内需拡大策へシフトするべき局面です。そうせずに消費税を10%に上げようとするから、所得効果でマイナス1.8%の消費縮小がある訳で、一時的なバラマキで平準化は無意味です。逆にたったマイナス1.8%なんです。その分の賃上げ、所得向上が見通せれば消費は増えるのにそうしないからまたデフレへ逆戻りになる訳です。

基本的な考え方は2005年元旦のエントリーから変わっておりません。もう少し解説すると、国際収支の黒字は国内貯蓄によるものです。生産されて消費されなかった分が国外で消費されて国際収支の黒字になる訳ですから、国内に貯蓄過剰を抱える訳です。貯蓄過剰状態ではいくら金融緩和しても消費も投資も伸びない訳です。

ゼロ年代以降のベアゼロ春闘や小泉改革で拡大された非正規雇用によって所得格差が拡大してますが、高所得層ほど貯蓄性向が高く消費しないので、格差拡大が貯蓄過剰をもたらしているわけです。所得再分配で消費性向の高い低所得層へ所得移転することが、消費拡大には必要になります。まして生産年齢人口が減少過程にある訳ですから、年金など社会保障の削減は高齢富裕層の貯蓄性向を助長する一方、低所得者も消費抑制を余儀なくされますから、貯蓄過剰を助長します。故に税金の使い道は所得再分配重視で公共投資は既存ストックを活用した投資効率の高いものに絞る必要がある訳です。で、上記過去エントリーで取り上げた相鉄都心プロジェクトに動きが出ました。

相鉄・東急接続路線「新横浜線」に  :日本経済新聞
相鉄、東急双方共に「新横浜線」の線区名で統一したのは、案内上の問題もありますが、東急が目黒線の延長と位置付けていないことも意味があります。直通は東横線と目黒線の両睨みってことですね。相鉄が直通車20000系を10連で登場させたことも、東横線直通を想定したものですし、加えて保安装置をソフトで読み替えてメトロ、東武、西武にも対応するものになっており、秩父や森林公園まで走れる訳です。

ただ困ったことに2018年のJRとの直通開始時点では相鉄新横浜線は新横浜には行かないので、案内上混乱が予想されます。おそらくJRと共通の路線系統愛称をつけると思われますが、E電以来ネーミング地獄のJR東日本うからねえwwwwwwww。「相鉄新宿ライン」かな?

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Sunday, December 09, 2018

CASE by MaaS

前エントリーの続きですが、フランスのマクロン政権がデモの影響で燃料税増税を断念しました。東名ルノー日産問題でフランス政府の干渉は防げそうですが、日産には別の問題が持ち上がっています。

自動車産業の激変が予想される中、日産の検査不正が新たに発覚しました。今回はブレーキなど安全に関わる部分の不正という重大なもので、ゴーン氏の報酬チョロマカシよりもガバナンス上の問題は大きいですし、ゴーン体制に責任を負わせるわけにはいきません。

完成検査の無視覚検査は、法令違反とは言え悪質性の程度は低かったし、そもそも制度自体が曖昧で非関税障壁の疑いもあるものでしたが、今回は国交省の業務改善命令を受けて現場調査する中で発覚したもので、検査不正は相当広範囲に行われていた模様です。ルノーとのアライアンスで海外製造拠点への投資が優先された事情から、その分国内製造拠点への投資や人員配置が手薄になったのは否めませんが、こうした製造現場の実態を把握できていなかった日産経営陣の責任は重大です。

検査不正の背景に。検査場の狭さとか検査員の不足といった事情があったようで、その中で増産体制が組まれた結果、検査部門がボトルネックとなり、検査で引っかかるとたちまち検査品で検査場が埋め尽くされてしまうため、右から左に流すしかなかったというような事情があったようです。それに対してスペースや人員の拡充を求める現場の声は経営陣に届かず放置された結果ということで、役員報酬を巡る金商法違反などより重大なガバナンスの欠如と言えます。必要な投資が行われなかったという意味で、経営陣の責任は重大です。

それはさておき、自動車産業を巡る変化予想でCASEというキーワードが語られます。繋がる(Connected)、自動化(Autonomy)、共有化(Shareing)、電動化(Electrical)です。これ相互に関連があって、車をスマホのようにネットにつなぐことで、付加的なサービスや機能が提供されるに留まらず、自動運転との関連で車間通信で衝突回避しますし、自動運転が実現すれば、稼働率の低いマイカーという保有形態が見直され、必要な時だけスマホで呼び出して使うことが可能になりますし、電動化は自動運転との相性が良く、また部品点数も減って特にエンジンのような作り込みも要らないから価格低下が予想され、自動車メーカーの優位性がなくなると言われます。

そのため自動車各社は優位性を維持するための投資を求められますが、例えば自動運転に関してはグーグル系列のウェイモが先行していて後追いになっている現状があります。電動化に関してもトヨタがハイブリッドシステムで世界をリードしたものの、特許で囲い込んだために追随するメーカーが現れず、米カリフォルニア州のZEV規制からも外されて焦っております。トヨタとしては究極のエコカーとして燃料電池車(FCV)を想定し、ハイブリッド車はつなぎという位置づけだったのですが、本命のFCVも水素供給網の整備が進まず、他方バッテリーEV向けの急速充電器の設置は進んでおり、またVWのディーゼル不正問題もあって自動車各社のEVシフトが鮮明になる中、トヨタは梯子を外された格好です。

EVに関しては日産が先行してますが、ビジネス的には大成功には至らず、新興企業の米テスラモーターズの先行を許しています。テスラモーターズ自体は典型的なガレージメーカーからスタートしたもので、ZEV規制が示すように環境意識の高いカリフォルニアでマイカーを電動化するガレージメーカーは多数存在しましたが、その中でイギリスのライトウエートスポーツ車のロータスエリートのプラットフォームを利用して、ノートPC用のリチウムイオン電池など汎用部品を使って世界初の量産EVとなるロードスターを世に問い成功を収めます。

バッテリーの搭載量で性能が規定されるEVです。とはいえ重量の嵩むバッテリーを大量に搭載すれば良いとはいきません。その意味で実用的なセダンではなく2シーターのロードスターならばパッケージしやすいし、趣味性故に高く売れるわけですね。こうして投資資金を上手に回収しながら技術を磨き、高級セダンのタイプSやクロスオーバーSUVのタイプXへと展開した戦略は見事です。加えてソーラー発電や家庭用バッテリーなどの事業化でシナジーを追求してEVのバリューを高めます。日本でも日産リーフが同様の訴求をしてますが、普及には至っておりません。

そして量産型セダンのタイプ3では製造ラインの自動化でコスト圧縮に挑みます。これは必ずしもうまくいかなかったのですが、マスク氏は製造現場との徹底した対話で解決策を見出し軌道に乗せます。この辺は日産幹部にとっては耳の痛い話でしょう。同時に自動車産業の雇用創出力という観点からは、従来通りとはいかない厳しい現実を示してもいるわけです。

とはいえテスラの成功はあくまでも所得水準の高い先進国の話でして、新興国への波及はむしろシェアリングが中心になると考えられます。そのときのキーワードがMaaSです。Mobility as a Serviceの略で、クラウド上のソフトウエアを利用するSoftware as a Serviceのもじりでもあります。言い換えれば移動(mobility)のサービス化でもあります。これ喩えればPCからスマホへの変化に相当します。これつまりハードとしての自動車のコモディティ化を意味します。

ただしMaaS技術的ハードルは決して低くはないので、先進国で先行して新興国へ波及する流れもスマホと同じと考えられます。そうすると自動車メーカーはまず利益の取れる先進国市場の劣化を余儀なくされるわけで、先進国にとっては雇用の縮小と共に格差拡大を覚悟しなきゃならないってことでもあります。

逆に言えば輸送サービスを提供する運送業にとっては劇的な生産性向上のチャンスでもあり、生産性格差で人手不足を余儀なくされる現状を良い方向へ転換できるチャンスではあります。但しあくまでもチャンスであって、AI自動運転で人手不足が解消するという発想では未来は開けません。

例えば自動運転が実現すれば移動中に仕事するとか就寝中に移動するとかが可能になるわけで、これある意味交通機関に求めらR3エルスピードの概念が変わることを意味します。朝の懐疑に間に合わせるために早起きして始発に乗るとか、前泊するとかが必要なくなるわけですから、この観点から言えばスピードを訴求するリニアは無用の長物になる可能性があります。公共交通にも変化をもたらす訳です。

そんな中で京浜急行が富岡地区の住宅地でゴルフ用電動カートを用いた興味深い社会実験を行いました。

「電動カート」は郊外住宅地の新交通になるか | ローカル線・公共交通 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
ゴルフ場用の電動カートを用いた輸送サービスの実験です。京急沿線には丘陵地帯を切り開いた住宅地が多数存在しますが、道路が狭く勾配も急ということで、バス路線の設定が難しく、高齢化で居住を諦めたり相続放棄で放置されたりして空き家が増えている訳ですが、20km/h以下の低速ながら勾配に強い電動カートを用いて最寄りのバス停やスーパーまでの輸送サービスを行ったものです。

面白いのはスマホアプリの京急バスナビに連動させることで、モードの異なる交通システムをシームレスにつないだ点で、システム開発には横浜国大やベンチャー企業も関与する形で、謂わばオープン化が実現している点です。住宅地内のラストマイルの交通手段ですが、MaaSの要素が揃っています。京急にとっては高齢化が進む沿線住宅地のてこ入れではありますが、鉄道がラストマイルの戸口輸送にアプローチする流れは東急田園都市線や江ノ島電鉄などでも無人運転バスの実証実験の事例があり今後活発化すると見られます。

この観点から注目なのがJR東日本の品川新駅です。先日「高縄ゲートウェイ」の駅名決定を発表しネット上ではいろいろ言われてますが、これかつて東海道上にあった高輪大木戸と呼ばれる簡易関所に因んだ名前だそうです。そうなら駅名は「高縄大木戸」にして英語名をTakanawaGatewayと案内すれば特に外国人の混乱するカタカナ駅名を避けられたし、地域の歴史文化を踏まえた新しい街づくりとしての重厚感も演出できたはず。JR東日本のネーミングセンスはホント酷いです。

これE電騒動以来繰り返されてますが、もう少し何とかならなかったかと思います。ただしゲートウェイに込めた玄関口の意味は分かります。先進的な職住近接開発を目論んでいる訳ですが、新駅を起点にしたMaaSを考えているとすれば、JR東日本の思い入れが偲ばれます。そこは理解できるけど、ネーミングセンスは残念過ぎます。

MaaSと直接関係はありませんが、東武鉄道のTJライナーやリバティ、西武鉄道のSトレイン、京王電鉄のけ京王ライナー、意外性の東急Qシートと有料続いています。JR東日本は元々グリーン車や通勤ライナーのサービスを行っていましたが、これ首都圏だけの話ではなく、京阪電気鉄道のプレミアムカーのように関西でも見られます。

京阪の合インバウンドで特急列車の混雑が常態化しており、着席サービスの導入を求める声があったようですが、この辺大量輸送を得意としながら過去の投資不足もあって混雑解消が進まない中で、公共交通と言えども将来安泰とは言えない時代を迎えるということで、選択的優良着席サービスは輸送の質を求めるユーザーを取りこぼさず増収機会も得られ、駅から先のラストマイル輸送との一貫性を持たせる意味も考えられます。そう見ると興味深い動きではあります。

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