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Saturday, May 25, 2024

賃金ホントに上がってる?

円安が止まりません。こどもの疲弊で指摘したように、3月の日銀政策決定会合でマイナス金利解除、YCC終了、ETF等の購入終了を決めた後、日銀は政策の現状維持を続けている一方、米FRBも現状維持ですから、金融政策に変わりはないのに、何故か為替は円安に動いています。4月決定会合の後の植田総裁の発言が円安容認と取られたと批判されてますが、米雇用統計の弱い数字で反転しました。その間日本政府の覆面介入があったと言われ、荒い値動きがありましたが、終わってみれば植田発言と米雇用統計という金融政策上のイベントに反応しただけでした。

しかし最近の円安進行でまたドル円157円まで進みました。米雇用統計の弱含みでFRB利下げ前倒しが起き、4月の植田発言を円安インフレの可能性を示唆した植田総裁の修正発言から、日米金利差が縮小して円安反転という展望が言われる中での出来事ですが、日米金利差を名目で見るか実質で見るかという視点で説明できます。指標とされる10年物国債金利で米4.5%に対して日本国債0.75からYCC終了で徐々に上がって1%を超える水準にありますから、名目値は微妙に差が縮まっていますが、ここへ来て米インフレ率の低下で実質金利差が寧ろ拡大しています。

名目値をインフレ補正して実質値が求められますから、米金利は実質プラスに対して日本は実質マイナスで、しかも米インフレも鎮静化が見られる一方、日本のインフレはしぶとく、特に6月に予定される電気料金値下げの補助金も止まって大幅値上げがアナウンスされてますから、実質値の先行きも金利差拡大が予想されます。4月の植田発言を実質金利がマイナス圏にあることから「緩和的」と表現したという意味では正直ではありますが、円安の戦犯扱いは気の毒です。とはいえ「好循環」と言われる賃上げに疑義のある分析も出てきています。

年金データで見る賃金動向 大企業の上昇率、中小に劣後 西村清彦・政策研究大学院大学客員教授、肥後雅博・東京大学教授 - 日本経済新聞
去年の23年春闘で大幅賃上げがアナウンスされてますが、それが公的統計の賃金構造基本統計調査と毎月勤労統計でどう反映されているかを見ると大きなズレがあるばかりか公的統計同士でも異なった動きである点から、同時点での厚生年金標準報酬月額から数値を拾って実態に迫ろうとした結果、思いがけない事実が浮かび上がってきます。

厚生年金の標準報酬月額は厚生年金保険制度の執行上の実数であり、サンプル調査の公的統計と異なる全数でもあり、また業態別や規模別など大企業対象の公的統計では把握できない情報も取れます。その結果「大企業の賃上げをいかに中小に波及させるか」という問いとは逆に、中小ほど人手不足から賃上げを迫られ、大企業ほど当事者発表のベースアップとは裏腹に平均賃金が低下している実態が見えてきます。

考えられるのは大企業ほど女性や高齢者の非正規採用を拡大して結果的に賃金を抑制しているけど、中小ではそもそも非正規では人が集まらないし、元々マンパワーが限られるから女性であれ高齢者であれ適材適所で処遇しないと回らないということもあるようです。加えて今や大企業ではほぼ当たり前になっている役職定年制度の影響もあるでしょう。50歳になったら部長や課長といった役職を外れて役職手当を受け取れなくなるばかりか平社員待遇で年下の役職者の部下になるなど過酷な対応がされてます。加えて賃上げの一方で希望退職募集で正社員を減らすなどもしていたり、非組合員の役職者は手当てはもらえるけどベースアップが抑えられたり、ジョブ型雇用の美名で事実上の固定残業制を呑まされたり、あるいは成果連動給込みだったりといったことが行われていると考えられます。つまりそもそも賃上げがウソだったかも。その一方でこんなニュースもあります。

地方のインフレ、観光・半導体が先導 賃上げ体力に格差 物価を考える 試される持続力(4) - 日本経済新聞
半導体やインバウンドで盛り上がっている地域でも人手不足は深刻で、地元企業の雇用維持のために自治体が補助金を出して雇用維持を図っています。元々若者は少ないから女性や高齢者の雇用機会が増えていると考えられますが、持続可能性はあるか、あるいは他業種の地場賃金相場を押し上げて悪影響はないか、対応できない自治体はどうなるかなど課題はあります。そして定額減税が実施されますがこれどーなの?
定額減税額、6月から給与明細に明記 企業に義務 - 日本経済新聞
3月期決算企業では決算事務や株主総会開催で超多忙な6月に余計なお仕事です。減税額を明細書に明示を義務付けるということが実務上どれだけ負担になるかはお構いなしですね。こんな資料があります。
給与所得の源泉徴収税額表(令和6年分)
国税庁のホームページにある令和6年の源泉徴収月額表です。所得税の源泉徴収を義務付けられている企業の給与計算事務の円滑化のためのツールとして公開されているものですが、1人3万円の国税分の減税額を単月で控除できるのは扶養家族0人で社会保険料控除後503,000円以上からで、そこそこ高所得者ですが、更に扶養家族分だけ3万円の控除が積み増される訳ですから、殆どのサラリーマンでは単月控除は不可能で翌月以降に繰り越されます。給与額が低ければ毎月の控除だけでは間に合わず年間所得確定後の年末調整にまで持ち越されるケースも出てくるでしょう。つまり個人ごとに状況が異なりますが、大企業ほど給与計算が基幹業務システムに組み込まれている可能性が高く、そんなレガシーデジタル資産を抱えて個別対応の難易度は高くなります。加えて6月に限り地方税の控除差し止めも義務化されてますから自治体にも煩雑な事務作業が発生する訳です。こうした現実に無頓着で見た目を取り繕う姿勢では、マイナンバーカードを含めてDXがうまくいく訳がありません。当然人為ミスの発生も出てくるでしょう。当面給与明細をしっかり確認する必要があります。

更に言えば民間や地方には平気で負担を強いる半面、政治資金規正法改正では抜け穴づくりに余念がない訳ですから、政治不信はますますたかまります。減税アピールが寧ろ評判を下げる訳ですが、それ以上に気になるのが経団連や連合の談合で賃上げをアピールして反映される6月に定額減税を開始することで見た目の手取りが増える演出をしながら、一方で異次元の少子化対策の財源として社会保険料が値上げされるのも6月からですから単なる目晦ましですね。それが見え見えなのにそこを突っ込まないメディアも問題です。まるで戦前です。

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Saturday, May 18, 2024

裏金のウラ

裏金のウラでこどもの疲弊は高まりそうです。

離婚後も父母で育児 共同親権、「子の幸せ」双方に責任 - 日本経済新聞
結局ろくな国会論戦を経ずに成立した共同親権を認める民法改正ですが、意味不明です。親権は子供を育てる義務を負う権利ですが、子持ち世帯で離婚が発生した場合、経済力のない妻側が親権を取り。経済力のある夫側が養育費を支払うことで離婚を成立させるケースが多い訳ですが、養育費はしばしば支払われないとか、夫の父親としての面会権は法的に担保されているのに誤魔化してそれを梃子に進めたりしてます。加えて既に離婚したカップルにも遡及されるというのも法の非遡及原則に反します。

DV夫の問題などは言われますが、子供のパスポートの取得や受験、手術などに共同親権者の同意が必要になり手続きも煩雑ですし、悪用されれば養育費不払いの口実や児童手当の折半や最悪「イッパツやらせろ」もあり得ます。加えて子連れ再婚も難しくなるし、既に子連れ再婚している場合も生みの親の権利として割り込んでくるとか、寧ろ子育てのコストを高めます。これのどこが子育て支援であり少子化対策なのか?寧ろ婚外子を含むひとり親世帯の子育てを直接支援する方が少子化対策になるのではないでしょうか。

これ以外にも採らぬ狸の戦争の配当で触れたセキュリティクリアランス法や戦争は経営でできているの農業基本法改正などのトンデモ立法が国会をスイスイ通過している現状があります。にも拘らずニュースでは政治資金規正法改正の話題ばかりで、更にNTT法改正や緊急事態対応で政府が地方に命令できる地方自治法改正などのトンデモ立法予備軍が目白押しです。裏金問題が目晦ましになっている訳です。とはいえ裏金問題はこれはこれで無視できない問題だけに、政治が機能せずに政府の暴走が止まらないということでもあります。これ繰り返し述べてますが、戦前の政治不信の果てに戦争へ進んだ歴史に酷似します。

この辺は帝都電鉄物語でも論じてますが、政治不信が行政の統制強化を誘い戦争へといざなった歴史を繰り返すことは避けなければなりません。といった堅い話とは別に、このエントリーで示した戦前のマネーゲームの異常さはこんなことでも見えてきます。

消える新京成電鉄の社名 歴史が生んだ「くねくね路線」 ググっと首都圏 - 日本経済新聞
映画「戦場にかける橋」で有名な泰緬鉄道の建設にも関わった旧陸軍鉄道連隊の演習線跡地の払い下げで誕生した新京成電鉄ですが、軍事施設故にGHQに摂取された旧鉄道連隊跡地を巡っては西武鉄道も動いていたと言われます。裏でどのような動きがあったかは定かではありませんが、当時高田馬場馬起点だった西武線の新宿延伸と引き替えに京成への払い下げが決まったと言われております。戦後早々の利権漁りはGHQから始まりました。

当時は無人の原野だった北総台地ですが、東京に近い立地の良さに加えて地盤が安定していたこともあり、松戸市の常盤平団地を皮切りに、沿線で大規模な宅地開発が続き、輸送力増強に追われながらも親会社の京成電鉄の旧型車の支援もあって経営は好調で、子会社ながら株式上場して投資家から資金を集める独自経営が可能になります。地域的に京成との棲み分けも可能だったこともありますし、都営地下鉄との相互直通運転対応で4ft6in(1,372mm)から4ft8ub1/2(1,435mm)への改軌や1号線規格の新車増備などで資金面で厳しかった京成にとっては子会社上場で身軽になるし、用途廃止の旧型車の引受先としても重宝だったという面もあります。

ところがバブル崩壊後の株式持ち合いが問題視され、親子上場は特に狙い撃ちされやすいということもあります。同時にそれは三井不動産との合弁事業としてスタートしたオリエンタルランドの好業績も狙い撃ちされることになります。そこへコロナ禍で空港輸送激減で京成本体が直撃され、オリエンタルランド(OLC)も不振ですが、地域輸送に特化した新京成は好業績を維持しました。そしてコロナ明けで京成本体とOLCが業績回復すると、投資家からのアタックが強まります。

京成電鉄はOLCの好業績高配当のお陰で利益水準が下駄を履いた状況だった訳ですが、それが無ければ株価収益率(PBR)0.5という資本効率の低さは笑う鬼退治でも指摘しました。京成のOLC保有株の時価が京成自身の時価総額の1.6倍にもなり、一部売却でも大きな資金を手にすることが可能ですが、京成自身は空港輸送というもう一方の金の生る木を抱えていて新たな投資案件が見当たらないということもあり、自社株買いによる株主還元の原資にせよという圧力とも見えます。

それに対して京成が示した回答が新京成電鉄の子会社化による上場廃止と経営統合によるシナジー効果獲得ということで、既にOLC株売却で500億円の営業外収益を得ており、新京成の経営統合の資金に充てるという画を描いた訳です。鉄道事業だけを見れば例えば運賃の一元化は成田空港線運賃やちはら線運賃までは無理だし、京成線と新京成線だけの一元化はさほど意味がないので、寧ろ独自に展開された両社のバス事業や不動産事業の統合に狙いがあると見られます。投資家に迫られて追い込まれてという点は戦前の帝都電鉄に似てますが、統治の透明性が求められる時代故に変なことはできないという訳ですね。ピンクの電車もいずれ過去帳入りするかもしれません。それにつけてもで出口の目見えない裏金問題です。

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Saturday, May 11, 2024

いちご白書をもう一度

バンバンのヒットソングでは、学生運動華やかなりし青春時代を回顧するものですが、歌詞の映画は60年代ニューシネマとして日本で大人気だったもので、元々は米コロンビア大学の学生によるベトナム反戦運動を巡る実話を下敷きにしたフィクションです。故に映画では架空の大学を舞台に、キャンパスにキャンプと称する拠点を設けて籠城するというスタイルで、当時全米の大学で拡がった運動でした。

いちご白書とは当時のコロンビア大学の学部長ハーバード・A・ディーンの「学生の意見なんかいちごが好きだというぐらい無意味」と発言したことに由来するアイロニーですが、映画でも「俺もいちごは好きだけど?」といったやり取りがでてきます。ボート部所属の主人公はもともと政治的にはノンポリだったけど、好奇心からキャンプを覗いて美少女と出会い、お近づきになりたい一心で運動に加わります。動機は不順ですが大学当局の対話を拒む姿勢やベトナム反戦の街頭デモでの警官隊の理不尽な暴力に直面して目覚めていくという流れで、最後は大学の要請で警察がキャンパスに入り強制排除され、ほぼコロンビア大学で起きた出来事をなぞっています。

バンバンの歌でも彼女と見た映画の思い出として歌われていますが、当時は運動に関わっていると女子学生も関心を持って話を聞きに来るということは普通にありました。故にもてたい一心で学生運動やってたやつはたぶんいたでしょう。実際確かに話を聞きに来る女の子は少なからずいましたが、別にもててたわけじゃありません。しかしそれを横目にひがんでた連中が反左翼反リベラルに傾いて、ネットに触発されてネトウヨになっても不思議ではありません。いつの時代にもリテラシーの低いやつはいます。そしてアメリカでは今そんないちご白書をリアルにもう一度再現しています。

アメリカのコロンビア大学に警官隊突入 ガザ反戦学生デモを排除 - 日本経済新聞
映画いちご白書のラストシーンを再現するようなニュースです。学生たちはイスラエルのガザ侵攻に対して大学のイスラエルの軍需企業との関係を問い、見直しを求めているもので、街頭の市民デモとは意味合いが違います。故に大学が対話に応じて学生の言い分を聞けば済むことなのに、警察による排除を行った訳で、いちご白書の舞台の1968年当時を再現してしまいました。

更に言えば1968年は今年と同様に大統領選の年であり、民主党ジョンソン大統領が政権の座にありました。但しベトナム戦争はアメリカが当事者でジョンソン大統領の判断で進められた経緯から強硬策に出たものの、世論の反発を買い大統領選不出馬に追い込まれます。バイデン大統領はイスラエル寄りの姿勢を見せながら、イスラエルの人権無視といえる軍事侵攻で揺れる世論から徐々に態度を変えつつありますが、それでも若者の支持離れを見ながら煮え切らない対応をしています。市民や学生の声が無視できなくなっているのは確かです。

話を日本に戻しますと、衆議院3補選で立憲民主党が全て勝利して与野党の議席数が変わった結果、政治倫理審査会の野党委員が1人増えて裏金議員49人の出席を求めることが決まりました。もちろんこれで解決ではありませんが、政権はぬらりくらりから追い込まれている訳です。些細な変化でも結構大きな意味があるってことです。あきらめちゃいけません。そして取り上げたいのはこのニュースです。

JR東日本、みどりの窓口縮小を凍結 デジタル化進まず - 日本経済新聞
コロナ自粛で業績を悪化させた結果、省力化にまい進するJR各社ですが、みどりの窓口の集約化で窓口の混雑が常態化して乗客から見て明らかに利便性を損なっており、特に多客期にその傾向が強く出ていますが、GWの窓口混乱でJR東日本はとりあえず現状維持を決め、すでに廃止された駅でも多客期には臨時窓口を置いて現場の混乱を防ぐとしたものですが、JR西日本やJR九州と違って余力があるということはあるでしょうけど、乗客や現場の声を反映して方針変更に柔軟な姿勢を見せました。

みどりの窓口の縮小方針自体は撤回した訳ではありませんが、方向性としてSuicaのエリア拡大やモバイルSuicaで新幹線や特急に乗れるとか、えきねっと予約とか指定席券売機とか様々なメニューで利用客を誘導して対応しようとした訳ですが、何れも必ずしもうまくいっていない現実があります。加えて磁気券に代わるQRコード乗車券の試験もしてチケットレス化を進めて窓口縮小をカバーする目論見ですが、正直言ってユーザーインターフェイス(UI)が使いにくいし、通信に時間がかかって操作性を阻害していたりして、そうした問題もあって窓口利用が減りません。

一つ言えるのは元々国鉄時代の複雑な運賃料金制度を前提に開発されたマルスシステムの問題があります。乗車券、回数券、定期券、グリーン券、特急券、指定券と券種が多く、適用条件も複雑ですからそれに適合したシステムで、窓口業務は職人芸とも言える高度なスキルを求められています。その一方で技を極めた名人が退職年齢に達し、補充された若手のスキルが追い付いていないため、窓口自体の処理能力も落ちていると考えられます。声を上げることの重要性も示しています。

加えてモバイルSuicaにしろえきねっとにしろ指定券券売機にしろ、素人である乗客にUIを通じてマルスを叩かせている訳で、UIも複雑だしネット経由のモバイルSuicaやえきねっとでは通信の遅延による誤操作や誤動作も誘発します。そして結果的に窓口フォローを余儀なくされて窓口混雑を助長します。通信の遅延は通信キャリアのコスト削減策で4G基地局をソフトでエミュレートしたなんちゃって5Gで遅延が解決できないなどJRの責任外の問題も絡んでますが、それも含めてとりあえずの現状維持は的確な判断です。

同時にこれは日本でDXがうまくいかない理由も示しています。まあこの問題は根が深いので、改めて別の機会に取り上げたいと思います。

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Sunday, May 05, 2024

こどもの疲弊

本題の前に為替の話題です。

NY円相場、続伸 1ドル=152円90銭〜153円00銭 予想下回る米雇用統計受け - 日本経済新聞
インフレ定着が意味するところの時点で158円だったドル円相場が152~3円と下がりましたが、これを介入の効果と見るのは早計です。元々日銀政策決定会合で金融政策維持が決まったことで円安に動き、米雇用統計が予想を下回ったことで円高に動いただけで、何れも金融関連のイベントに反応しただけの結果です。29日や2日の乱高下は日本の祝日や早朝という薄商いで相場が動きやすい状況だったタイミングでの介入でブレが大きくなっただけです。故に円安インフレの終息が見通せる状況とは程遠いってことです。

一部に円安を阻止した神田財務官は植田日銀総裁より優秀じゃないかと言われたり、FXトレーダーだったら大儲けじゃないかといった声がありますが、いずれのタイミングによるたまたまですし、第一神田財務官はFXトレーダーじゃないし、国家は憲法でできている で指摘したように為替差益は実現しません。これもう少し説明すると、外貨準備として政府が保有するドルは日銀の預託されている訳ですから、その一部を引き出した形になり口座残高が減るだけです。それがドル売り円買い介入の実態です。当然政府はFXトレーダーなら手にする為替差益を得ることはできない訳です。信用創造の逆が起きる訳です。

そんな中で防衛費と共に財源確保が難題の子育て支援の財源問題ですが、これもデタラメです。「異次元の少子化対策」を謳ってますが、少子化自体は先進国共通の問題ですし、最近は新興国でも工業化の進展と共に少子化が進んでますから、少子化自体を政策的に止めることはできないと見るべきでしょう。但し子育て環境によって少子化のスピードを遅らせることは可能ですから、子育て支援が無意味とは言いませんが、どう転んでも子育て中の現役世代の負担増になるということは踏まえて制度設計しないと、結局負担感は増す一方で効果は見えないということになります。

それに対して高齢者ばかり優遇されるという議論がありますが、これも高齢化と共に避けられない負担な訳で、簡単には減らせません。ということは高齢化による負担増と子育て支援の負担がダブルで現役世代にのしかかることを意味します。これを回避し現役世代の過重負担を抑制するとすれば消費税を財源にすることで、避けられない負担を社会全体でシェアする形しか広範な合意を得ることは困難です。

それに対して政府は不人気な消費税増税を封印して社会保険改革で財源を生み出すということを言っている訳です。具体的には国保、協会健保、組合健保、後期高齢者健保といった健保勘定の保険料に子育て支援金を上乗せする形ですが、現役世代中心で年齢層が低く資金も潤沢な組合健保の負担が多くなることは避けられませんから、結局現役世代の負担を増やすことにしかなりません。加えて後期高齢者の自己負担増などで給付を減らすというのが「社会保険改革」ってことで、目先のゴマカシです。これじゃ寧ろ少子化を加速します。

そして現金給付で対応しようとしていることも問題です。少子化の原因が経済要因なのはそのとおりなんですが、現金配れば解決するかといえばそうではなく、主に教育費負担がネックになっています。にも拘らず政府は文教予算を削ってばかりで、国公立大学の独立行政法人化や「選択と集中」と称する科研費の減額などでG7はおろかOECD加盟国中で見ても教育の公的負担は最低レベルで,その分家計が負担している訳です。そして教育内容も複雑化しており、今や小学生から塾通いが当たり前という状況です。これじゃ子どもを持ちたくても持てません。

逆に言えばこの部分の公的負担を増やせば効果は期待できます。例えば給食費や教材費の無償化や高等教育の無償化といったことですが、これらは消費税にして2%程度の負担で実現可能ですし、少子化による労働人口の減少を補う意味での生産性向上を目指すならば、結果的に将来のリターンが見込めますから負担が軽くなるということですね。現金給付だけならそれが教育資金に回るとは限りませんし、共同親権問題とも絡みますが、給付欲しさに離婚カップルの親権争いという醜い現実をもたらすことは避けられないでしょう。子どもの為には教育という現物給付が望ましいということです。

あと負担の公平性を考えるなら金融所得課税も必要ですし、その意味で新NISAは負担の公平性に逆行します。特に若い人に申し上げたいのですが、資産形成をまじめに考えるならば、無理のない範囲でのコツコツ形の積立投資で福利効果を狙って時間を味方につけることをお勧めします。その意味で積立NISAならば検討の余地はありますが、元々分離課税で税負担の軽い金融所得課税をケチるよりもiDeCoを先に考えた方が良いです。被雇用者でも加入が可能になってますから、月々の余剰資金をiDeCoで運用して、拠出限度額を超える資金があるならその超えた分を積立NISAに回すという形にしましょう。

iDeCoの良いところは積立金が公的年金に準じた税法上の扱いになり所得控除が可能になりますから所得税減税になります。所得税は超過累進課税ですから、所得額の税区分が下方に移行すればより大きな減税効果がありNISAにはできない芸当です。また勤め先の企業年金が確定拠出型年金](DC)の場合、転職や退職時に手続きすれば積み立て分をiDeCoに移行できますし、フリーランスでも続けられますから無駄になりません。

但し払い戻しは満60歳まで出来ず、死亡や中途解約の場合は払い戻し放棄となりますので老後資金には向きますが、子供の教育資金やマイホーム資金などには不向きです。それでも払い戻し時には一時金あるいは年金として受け取り方法を選べ、年金方式の場合公的年金との合算で税優遇が受けられます。政府は盛んに新NISAを勧めますが、自分に適したプランは冷静に考えましょう。

しかし子供たちの置かれた状況の過酷さは本当に頭の痛い問題で、中学生時代に学習塾の塾長を怒らせてクビになった^_^;私なんぞ、今に生まれてれば落ちこぼれ間違いなしですね。また離婚が増えている現状でひとり親世帯が増えている現状では、家庭の事情で進学を諦めるるといったリアルがある訳で、こうした家庭で育つと自衛隊に入るかブラックバイトで凶悪犯罪の実行犯になるかといった未来が待っているということになりかねません。加えて気候変動で自然災害が増えたり農産物の収量が不安定になったりしているのに大人の事情で脱炭素は進まないし。当然紛争が増えることになります。子どもたちにこんな未来しか約束できない大人たちの不作為が原因です。

その一方で公金バラまいて原発再稼働やリプレースに前のめりだったり日の丸半導体復権に補助金出したりはしている訳で、財源がないってのは嘘だってことです。特に半導体の復権は台湾TSMCの熊本工場にしろIBMライセンスの先端半導体メーカーに名乗りを上げたラピダスにしろ、外資の下請けに甘んじて半導体の復権もないもんです。しかもラピダスにはこんな障害も。

ラピダスの物流に落とし穴 ガスが青函トンネル通れない - 日本経済新聞
半導体生産に欠かせないエッチング剤や洗浄剤には確かに危険物がありますし、青函トンネルのような長大トンネル通過は問題です。2024年問題によるドライバー不足で鉄道輸送に頼りたいところです。さてどうすべきか。

もしトラよりもしドラでも取り上げましたが、物流問題は明らかに日本のアキレス腱になりつつあります。本当は新幹線やリニアより緊急性が高く優先順位を上げるべきですが、そうした議論は見られません。しかも北海道新幹線は工事が遅れて30年度末開業の延期が決まりました。これも元々33年度開業を与党議員が強引に前倒しさせたものの、トンネル残土からヒ素やカドミウムといった有害物質が検出されて残土処理が滞っているということで足踏みしているのですから、今後の展開は見通せません。

その一方で北海道新幹線の函館駅乗り入れが新市長の選挙公約として実現を探ってますが、JJR北海道は取り合いません。現実的には新函館北斗からスイッチバックして函館駅に至るという計画は実現可能性は低いと言えます。唯一可能性があるとすればは在来線特急で4時間以上かかる函館―札幌間のミニ新幹線というところですが、安心してくださいのつばさオーバーラン問題を考えると解決策といえるのか微妙です。かくして自己保身と思いつきの果てにグチャグチャな現在と未来を子どもたちに残すとするとため息しか出ません。

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Friday, May 03, 2024

国家は憲法でできている

本題に入る前にインフレ定着の続きです。

【ドル円相場】円再び下落、介入観測後も157円台後半 強い米物価警戒 - 日本経済新聞
先月29日の乱高下で日本政府の覆面介入があったと見られます。更に今月2日早朝にも同様の介入と見られる動きがあり、29日に5兆円、2日に3兆円規模の介入と見られています。なんでそんなことがわかるかといえば、日銀当座預金の残高が相当額減少したからです。

政府の為替介入の原資は円売りドル買いの場合は日銀が米NY連銀に持つ口座を利用してドル買いする訳で、円の供給量が増えるので事後的に政府短期証券と呼ばれる短期国債を発行して民間から資金を集めて戻して日銀の金融政策への影響を相殺するという手順となりますが、ドル売り円買いの場合は外貨準備のドルを取り崩して円を買いますから、日銀が買い取った円は消滅し、その分当座預金残高が減る訳です。

日本の外貨準備は凡そ1.3兆ドル、円換算で200兆円程度で日銀に預託されていてほとんどはアメリカ国債で運用されています。介入資金は国債以外のドル建て現預金を用い、その規模は円換算で50兆円程度と見られ、今回その一部が使われた形です。故に介入資金はまだあり、今後も介入の可能性はありますが、結局事後的に相場は戻してしまいます。故に無駄なことしてる訳ですが、円安対策としてやったフリはできる訳です。

尚、巷間謂われる円安による外貨準備の含み益は上述のように日銀が円を買えば消滅する訳ですから、含み益は実現せずそれを防衛費などの財源にという議論は成り立ちません。確かに外貨準備でアメリカ国債などで運用された分についての利子分の歳入はあり年度ごとの決算で剰余金として計上されますが、法律により一部は外貨準備に繰り入れられた上で一般財源に拠出されますが、円安による含み益はその時点で発生するもので、その規模も防衛費を賄うレベルには遠く及びません。「含み益を財源にしろ」という経済専門家は無知か噓つきかのどちらかです。

一方で投機筋は安心してくださいで指摘した3重の下駄ばき状態でたっぷり含み益を抱えてますから、一時的な相場の乱高下でも慌てる必要はなくあまり動揺していません。そもそも投機筋の動員する資金は政府の介入資金の2桁上で勝負になりません。勝てない戦を仕掛けて抜けられないってアレ?先の大戦と同じじゃん。

という訳で憲法記念日恒例の護憲改憲論争ですが、議論は全く深まりません。何故かといえば議論がとっ散らかっているからで、例えば9条の見直しで安倍政権時代に自衛隊明記の方針を打ち出した訳ですが、これが議論を複雑にしています。主権国家に備わる自衛権の為の実力組織である自衛隊は軍隊じゃないとして戦力放棄に抵触しないというのがこれまでの標準的な憲法解釈だったのですが、憲法に敢えて自衛隊を明記するとすれば自衛権に関わる条文も足さないと整合性が取れません。そしてその場合自衛権の範囲を自国の領土と国民の防衛に限定する個別的自衛権とするのか、同盟国の防衛も含めた集団的自衛権とするのかという点が問題になります。

そうすると厄介なのは現行憲法の解釈変更で集団的自衛権を限定的に容認した安保法制との整合性も問われることになります。憲法で個別的自衛権に限定されれば安保法制は違憲立法として無効になりますし、憲法で集団的自衛権を認めたとしても、国会が発議して国民投票に問うと安保法制込みの国民投票となる訳で、国民の賛同は得にくくなりますし、万が一否決されれば安保法制の在り方が再度議論になり与党にとっては都合が悪いことになります。つまり安倍元首相の憲法理解が浅すぎて議論を混乱させているのが現状ってことです。改憲議論に地雷が埋まってしまった訳です。

遡ればそもそも明治政府が憲法制定に汗かいたのは、幕末の混乱の中で列強から押し付けられた不平等条約の解消の為だった訳で、故に天皇を頂く立憲君主国として自国を定義する狙いでしたが、所謂皇道派の横やりで天皇親政的な解釈に幅を持たせた妥協の産物でもありました。こんなだから昭和の政治不信と改革官僚や軍部の専横で国を戦争に追い込んでしまった訳です。その流れで敗戦後の新憲法制定も自主的にできずGHQ原案が押し込まれた訳ですが、そのことから押し付け憲法論で改憲が必要という理路となる訳ですが、その結果中身の議論がお粗末になってしまった訳です。この辺をクリアにした改憲議論は長い人生で一度も見たことがありません。

よく言われる条文が少なく具体性がないとか理念ばかりで実効性がないとかも、そもそも国の基本法である憲法は最低限の国の在り方を定義したもので、具体性や実効性は個別具体法で定義するってのが立憲主義憲法なんですから、この手の批判も的外れです。そして具体性や実効性を伴う法律を作るのが立法府であり「国権の最高機関」たる国会です。その国会議員の憲法改正議論がこの体たらくですから日本国憲法は100年経っても変わらないでしょう。憲法改正よりちゃんとした法律作れ!

例えば全国新幹線整備法という法律がありまして、新幹線は万能ではないでも取り上げましたが、元々新幹線鉄道は国の事業とされていて、制定当時は公社化された国鉄という実体があり、しかも独立採算制故に国の財政資金を使わないで国土開発に資する目的が定義されていました。その前提が崩れたのが国鉄分割民営化です。

本来ならばこの時点で見直して法改正すればよかったのですが、そうせずに法解釈で対応しました。それが一定の条件の下で条文の「国」を分割後の各旅客会社に読み替えるというもので、民営化された旅客会社に過重な負担をさせないために並行在来線を旅客会社から切り離すことと、それを踏まえた地元の合意が得られることと、国の事業としての広域国土開発に資することという形でJR、地方、国の3者が合意することが求められました。加えて資金の手当てで92年のJR本州3社による買い取り代金の査定額に上乗せして拠出した鉄道整備基金で整備し、JRが受益の範囲で30年リースで負担した残りについて国と地方が2:1の割合で分担するという整備新幹線スキームが作られました。国の事業と言いながら財政資金が投入されない事業故に整備資金スキームを苦労してひねり出した訳です。

この辺も法改正して財政資金投入ではなく事業ごとに毎年度の必要額を査定して予算請求するスタイルなので潤沢な資金がある訳ではなく、結局JRと地方の合意を待って予算化されるということになります。そんな予算のやり繰りがあるので費用便益(B/C)比を重視して高い経済効果のある事業への優先傾斜配分という運用がされていて、第1号事業は長野五輪対応もあってJR東日本を事業者とする北陸新幹線高崎―長野間とされた訳です。

但しB/Cの算出は簡単ではなく幾つもの仮定を置きますから正確無比とも言えず、ある種恣意性が入り込む余地はあります。その結果例えば当初フーパ―特急方式で整備が予定されていた九州新幹線鹿児島ルートでは、実績のない狭軌200km/h営業運転での経済効果を謳って優先順位を上げてましたし、当初沼宮内―八戸間フル規格で間をミニ新幹線でつなぐ計画だった東北新幹線延伸部も全区間フル規格でスピードアップ効果を評価してB/C比を高く見せ、更に当時事業化されていなかった北海道新幹線が事業化された場合の培養効果とか、鉛筆ナメナメ数字を作ってなし崩しでフル規格化が進んだりとデタラメな運用がされてきました。

その結果何が起きたかと言えば佐賀と滋賀で「詐欺だ!」でありやもめのジョナサン でありということですね。そして北陸新幹線敦賀開業での新在乗継レース^_^;という乗客無視に等しい失敗が起きている訳です。にも拘らず敦賀から新大阪までのルートは五里霧中です。上記整備新幹線スキームに従えばB/C比2倍で事業費も少なくて済む米原ルートが選択される筈なんですが、与党PTの横やりで小浜京都ルートという実現可能性の低いルートが地元合意を経ずに調査費が計上されるという脱法的な手続きが行われております。法改正どころか運用ルールも守れない与党議員とは醜悪です。

更に整備新幹線スキームに属さない中央リニア事業も全幹法に基づく国の事業ですが、JR東海の自己資金事業ということで地元合意もなく進められ、3兆円の財投資金投入で政府が支援というのは法的には説明のつかないところです。憲法以前に法律を守れない裏金議員の好き勝手は許すべきではありません。憲法改正以前に立憲主義憲法が空洞化していることこそ問題であって憲法改正があっても無くても問題は何も解決できないということです。

という具合に個別具体法の適時改正もできない与党に改憲発議ができるとは思えません。一説によれば岸田政権は改憲発議を急いでそれを争点に会期末解散を狙っていると言われます。壺や裏金で支持率ガタガタの起死回生の憲法改正だとすると動機が不純すぎますね。

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Saturday, April 20, 2024

戦争は経営でできている

サイドバーの世界は経営でできている (講談社現代新書)はお勧めです。というか、中東で起きている戦争が、将に有限な価値の奪い合いという意味で「経営の失敗」を体現していると見ることができます。というわけで採らぬ狸の続編です。

中東情勢で対話路線の日本、米欧はイラン追加制裁探る G7外相 - 日本経済新聞
そもそもシリアのダマスカスのイラン大使館を攻撃したのはイスラエルであり、今回のイランのイスラエル攻撃はその報復として事前通告して自衛権の範囲を主張し軍事施設限定の攻撃で、しかもミサイルや自爆ドローンを多数使ったもののイスラエルの鉄壁な防空システムで99%迎撃されて実害無しなのにG7各国はイランへの追加制裁を協議するっておかしな流れです。日本が簡単に乗れない話です。

結果的にイスラエルもささやかな報復攻撃をして体面を保ち、これで形として手打ちになりそうです。イランもイスラエルも交戦を望まない形の落としどころを探ったってことです。この出来事からいろいろなことが見えてきますが、欧米はイスラエル寄りに偏っています。ウクライナの戦況が悪化する中でもイスラエルへの兵器支援は継続するアメリカと、その結果天然ガス供給不安からガザ沖ガス田を横目にイスラエルに強く出られない欧州という構図が見えます。

蛇足ですが、イランの報復攻撃はイスラエルの防空システムを可視化したという意味でイラン側にも成果はあったし、寧ろそれだけの情報収集能力があることを見せつけたという側面もあります。主権国家間の戦争という意味では、現代の戦争は情報戦であり心理戦なのだというリアルが明らかになった訳で、まともな情報収集能力も持たずトマホーク配備でドヤ顔の日本の安全保障議論の底の浅さにため息が出ます。

加えて軍事力のある大国同士は戦わないけど、国家ではなく自衛権の無いガザには容赦なくジェノサイドレベルの攻撃さえしてしまうという非対称な現実がある訳です。これ台湾有事に多くの示唆を与えます。国家承認されていない台湾に対しては集団的自衛権は行使できないから国際法上は台湾はガザと同じ立場ってことです。もちろん台北政府の実効支配下でアメリカの支援もあって軍備を整えていますから直ちにガザのようになることはないとしても、1つの中国の原則から内戦扱いとなる中台の紛争への介入は国際法違反となります。

安保理、パレスチナの国連正式加盟を否決 米国が拒否権 - 日本経済新聞
日本やフランスを含む圧倒的多数が賛成しながらアメリカが時期尚早として拒否権を発動するというお約束の展開ですが、パレスチナが国連加盟して名実共に独立国となった場合、ハマスの軍事部門はパレスチナ国軍の地位を得る訳で、テロ組織として制圧できない存在になる訳ですし、今回のイランとイスラエルのせめぎ会いのように腹の探り合いしなきゃならないイスラエル側から見れば厄介な存在になるということです。

てことで中東情勢がきな臭くなると当然ながら原油価格の上昇で日欧は苦しくなりますが、今や原油生産大国となったアメリカは寧ろ追い風で、ドル高も手伝って大儲けのアメリカに対して、輸入依存に加えて通貨安で二重苦の日欧はインフレに苦しみます。当然株価も下がります。にも拘らず防衛費調達のためにNTT法を改正して外国人の株式保有を認めるというトチ狂ったことに留まらず、こんな法律まで強引に賭してしまいました。

農業基本法改正案が衆院通過 与党・維新など賛成 - 日本経済新聞
食料安保を謳いながら平時の食糧自給率を高めるのではなく、有事に農家に作付けの変更を国が命令できるって戦時中に花き農家にイモの作付けを命令した愚を繰り返すってのは呆れてものが言えません。個別所得補償で農家にインセンティブを与えて自給率を高めるのではなく、非常事態を口実に国の統制を強めるというのは的外れもいいとこです。まして地域地域で土壌の性質も異なりますから、国が統制しても増産効果が得られる保証はありません。

民主主義対権威主義で指摘したように岸田政権は戦前の近衛文麿政権とそっくりのことをやって日本を戦争にいざなっています。それもこれも首相の指導力の欠如と政治の混乱で官僚がやりたい放題ってところがそっくりです。だからNTT法も農業基本法も官僚好みの統制的な内容になる訳で、政治における経営の失敗と見ることもできます。加えてこんなことも報じられております。

<独自>リニア新幹線全線開業「最速令和19年」と骨太の方針に明記へ 政府、目標時期を堅持
多分官僚のリーク記事でしょうけど、川勝静岡県知事の辞任でリニア工事が進むことを期待して、骨太方針で敢えて2037年の開業目標を明記するということなのでしょう。但し元々2037年は努力目標であって義務ではない訳で、狙いがわかりにくいんですが、JR東海へのプレッシャーを期待しているんでしょうか。今のところ他紙の後追い報道は見られませんし、名古屋開業も見通せない中で大阪延伸着工を早められる訳でもなく、ニュースバリューに疑問が湧きます。

但し奇しくもリニアが戦前の弾丸列車計画をなぞる相似相が見えてきています。国が弾丸列車計画へ傾斜したのは満州事変後に満州国が独立を宣言し日本国内との移動や輸送が増えたことで、東海道山陽線の輸送逼迫があり、輸送力増強の必要から南満州鉄道規格の新線を作って関釜連絡船を介して朝鮮統監府鉄道から満州の首都とされた新京まで直通させて輸送改善を図ることが意図されたのですが、盧溝橋事件を発端とする日華事変勃発で軍の補給も都なり、政府も前のめりとなります。それに留まらず大東亜共栄圏構想に沿って中国からインド中東を経て欧州に至る大陸横断超特急構想なんて妄想を膨らまし、シベリア鉄道に代わる輸送路確保まで考えられていましたが、敗戦でパアです。

とはいえ前線への補給のために軍が積極的に動き、用地の強制接取が行われ、その多くの部分が東海道新幹線の建設用地として転用され、また一部は名神高速道や第二神明、加古川バイパスなどの用地に転用されています。静岡県の日本坂トンネルは弾丸列車規格で作られて一時的に在来線が使用した後、東海道新幹線に再転用されてますし、新丹奈トンネルも工事は進んでいました。ある意味戦後の新幹線計画は弾丸列車計画のお陰で実現したとも言えます。

リニアに関しては民間事業なのに全幹法により国の関与がありますが、自己資金整備を打ち出したJR東海に安倍政権時代に3兆円の財投資金投入が決まったものの、開業時期はあくまでも最速の場合の努力目標で、それも名古屋開業後の着工という前提ですから、その名古屋開業が最速2034年ですから、どう逆立ちしても2037年大阪開業は無理なんですが、岸田政権お得意のやってるふりにはなるということなんでしょう。それよりももっと手前に問題山積ですが目立った動きはありません。

物流の弱点、人手不足以外にも 鉄道も海運も老い鮮明 物流クライシス㊦ - 日本経済新聞
ドライバー不足が言われますが、例えば高速道路の老朽化に伴う工事の増加で輸送時間が読みにくく、それに伴う人件費増加は運賃に転嫁しにくいということもあります。そしてインフラ維持の作業員確保も困難になっており、輸送インフラを単純い増やすだけでは解決しません。そして鉄道や海運へのモーダルシフトも、既に鉄道船舶共に輸送力が逼迫しており、新たな需要の受け入れは困難ですし、鉄道に関しては夜間保守間合いの増加による減便すらあり得るとなると、新たな対応を考えないといずれ破綻します。

その意味ではリニアの物流インフラとしての活用は選択肢になり得ます。40/1,000勾配がネックで貨物鉄道への転用は難しいかもしれませんが、リニモのような低速リニアでコンテナを運ぶぐらいはできそうです。貨物専用なら長大トンネルでの安全対策も軽減できますし、着工済みの工事が無駄になることもないです。例えば開業の見込みが立たないリニアを財投3兆円の借金のかたに国が接取する形でJR東海から切り離せば東海道新幹線のもうけを溶かさなくて済むから、JR東海にとってもメリットがあります。そのJR東海にでこんな動きがあります。

東海道新幹線「N700S」に完全個室席 2026年度に導入、1編成2室 - 日本経済新聞
これまでビジネス利用最優先でひたすら輸送力増強を続け、食堂車や個室も廃止したJR東海ですが、コロナ禍でビジネス客が戻りきらず、寧ろ週末や連休盆暮れの行楽や帰省利用のウエートが高まる一方、普通車の一部で3列シートのB列を潰してパーテーションで仕切ったビジネス席のようなことも始めており、これらのサービスはスペースに余裕のある鉄道ならではのサービスとして対航空との競争優位になり得るという気づきがあったのでしょう。当面は車内販売廃止で空いた業務用スペースの転用で需要を見極めるということでしょうが、いずれJR東日本のグランクラスのような3等級制移行も視野に入れて増収を図る方向性が見えてくるかもしれません。

もう一つオマケで北陸新幹線米原ルートを受け入れて東京対北陸の輸送に参入してJR東日本と競い合うという選択肢もあり得ます。その場合公費が投入され線路使用料で償還される、つまり儲からない整備新幹線区間はJR西日本が担当しますが、東名阪の3大都市圏アクセスを握っている訳ですから、整備区間から発生する需要の受け皿となる根元受益による増収効果もあります。リニアに拘らなければいろいろなビジネス展開が拓けます。JR東海も経営を取り戻せ。

能登半島地震から4か月以上経過して、未だに水道も復旧できないし。倒壊家屋やがれきの撤去も進まず、最近は報道すらされなくなっています。そしてボランティアが足りないと嘆く一方でボランティアを受け入れる宿泊施設は観光優先でそもそもボランティアの受け入れ態勢ができていないし、またボランティア加藤堂に対するバッシングもあって大っぴらにボランティア活動がやりにくく、地元の被災者もボランティアの援助を公言できないし、そもそもボランティアを集めるのは行政の仕事の筈なのに動きが鈍いしという状況です。

そして豊後水道のM6.6地震まで起きてやはり道路やインフラの弱さで支援が滞っております。そして四国電力伊方原発3号機で、地震後異常なしが素早く報じられた一方で細かなトラブルが後から明らかになるなどの原子力ムラ作法-_-;。最近の地震の多さから言えば、台湾有事より驚異の筈ですが、伊方3号機で深刻なのは稼働中でしかも地震による緊急停止が働かず、事後的に冷却電源が非常用に切り替わっていたことが明らかになるというなかなか深刻な状況です。大事に至らなかったとはいえ重大インシデントでは?経営の失敗は至る所で見られます。

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Saturday, April 06, 2024

アベノミクスの後始末

安心してくださいで取り上げた日銀の政策変更が先月19日に決定しました。事前に市場に織り込まれていたので大きな混乱もなく推移したのも予想通りです。但しYYCは終わっても国債購入は続けるとしており、異次元緩和は終わっても量的緩和は続けます。長期金利を市場に委ねるけど財政への影響から急変動は避けたい結果としてこうなった訳です。

その一方で政策金利のマイナス金利解除は予想より踏み込んでまして、日銀当座預金が基礎残高、マクロ加算残高、政策金利残高の3層構造になっていて、それぞれ+0.1%、0%、-0.1%の付利がされていました。つまりマイナス金利自体は日銀当座預金の一部に課されていただけでしたが、マイナス金利解除で1層化されました。元々の準備預金も含めた1層化ですから銀行サイドから見れば大サービスとなる訳ですが、おそらくマイナス金利政策で縮小して市場機能が低下した短期資金市場では金利の乱高下が起こりやすく日銀の短期資金オペが難しいという判断で金利誘導を当座預金の付利でという判断なのでしょう。長短金利ともに激変緩和を意図した訳ですね。それだけ金利のある世界への誘導は本気という訳です。アベノミクスの後始末の本気度が見えます。

アベノミクスの3本の矢を思い出していただきたいのですが、大規模な金融緩和は第1の矢でした。第2の矢は機動的な財政出動、第3の矢は規制緩和による成長戦略でしたが、実現したのは1本目の大規模金融緩和だけで、その結果円安が進み輸出企業の利益を押し上げましたが、その結果産業構造の改革は停滞し、財政出動も人手不足で公共事業の執行が遅れたり無駄な補助金バラマキで効果が出ず、補助金頼み規制緩和頼みで企業マインドを歪めてしまいました。そんな影響を感じさせるニュースです。

プベルル酸とは 小林製薬の「紅麹サプリ」から検出、抗菌作用も毒性強く - 日本経済新聞
現時点では不明な点が多く、断定は避けますが、このニュースで思い出されるのが70年代の紅茶キノコブームです。紅茶キノコというのは東モンゴルからシベリアにかけての地域で飲用されている発酵飲料で、紅茶または緑茶に砂糖を加え、培地で培養された細菌コロニーを加えて2週間程度発酵させた健康食品ですが、当時薬事法の縛りで効能を謳えなかったことから「紅茶キノコ健康法」という書籍に件の細菌コロニーを容器に入れてオマケにつけて売って普及させるという脱法的な売り方で普及させ、コロニーの成長で株分けして知人におすそ分けしたりして大ブームとなりましたが、青カビが発生して健康被害が出てブームはしぼみました。

紅茶キノコ自体は欧州やオーストラリアにも伝わって何故か「コンブチャ」と呼ばれて定着しており、それ自体が問題だった訳ではありませんが、個人間で株分けしたりというところに衛生管理の穴があった訳です。特定保健用食品(トクホ)の制度がなく健康食品も薬事法で対応していた当時の日本故の出来事ですが、法の網を潜って脱法的に普及させた結果、素人の個人に衛生管理を委ねた結果の起こるべくして起きた必然とは言えます。

小林製薬の紅麹サプリはトクホではなく機能性表示食品ですが、薬事法より緩いトクホでも健康成分の有効性をメーカーが示して消費者庁の許可を得て効能を謳えるのに対して、機能性表示食品では効能を示すデータをメーカーが保持することを条件に届け出だけで効能を謳えるという形に更に規制緩和された訳ですが、そのデータというのが公開論文の引用でも構わないなど緩いものです。紅麴自体は昔からある色素成分で毒性はないですが、コレステロール値を下げる効能があるという研究結果が出てサプリ化された訳ですが、効能を高める為か発酵期間を長く取っていたそうで、発酵期間を長くすると雑菌の侵入のリスクが高まり衛生管理が難しくなることは指摘されてます。

つまり規制をかいくぐっての脱法行為と制度的な規制緩和の違いはありますが、規制を緩めることで時に人命にかかわることは肝に銘ずるべきでしょう。加えて生産現場の対応が衛生管理上問題がなかったかの検証は必要ですが、健康被害が報告された製造ロットは閉鎖された大阪工場製で閉鎖後和歌山工場で生産が続いているという状況で、健康被害の原因が特定できるかどうかは微妙です。というわけでアベノミクスの後始末は混迷を深めます。続いてこのニュース。

川勝平太・静岡県知事「リニア、大きな区切り」 - 日本経済新聞
川勝知事は以前から舌禍騒動を度々引き起こしており、今回も県庁の新人入庁式での発言が差別発言として問題視されました。「県庁はシンクタンクで野菜売ったり薄育てたりモノ作ったりする人とは違う」といった発言ですが、これ典型的な職業差別発言でしょう。しかもそれを無自覚に発言していて指摘されても気付かないという典型的な差別主義者の振舞いです。とはいえ故石原慎太郎氏や麻生太郎氏の失言は石原節、阿王節とメディアもスルーしている一方でリニア静0置か工区着工を阻止してリベラルな立ち位置と見られている川勝知事の扱いはずいぶん違うと感じます。故石原氏や麻生氏と共通なのは目の前の徴収、川勝氏の場合は県庁の新人相手にリップサービスのつもりだったのでしょう。だからこそ本音が出たとも言えます。この手のヘイト発言は第二次安倍政権以降増えております。川勝知事がリベラル?というところには異論がありますが。

元々川勝氏は故安倍元首相や故葛西JR東海名誉会長と旧知の仲で、学者としても反唯物史観的でどちらかと言えば右寄りです。それ故にJR東海側に勘違いと油断があったと考えられます。駅設置予定のない静岡県の知事に旧知の川勝氏が就任すれば話は早いと考えて甘く見たということで。逆に大井川の水問題や県アセスメント条例の要件を満たさないと南アルプストンネルの工事用道路や作業ヤードの工事を止めたりするとは考えていなかったのでしょう。何れも広告主の立場を利用してメディアに圧力をかけたりして逆に静岡県民の不信を買うことになり、行政官としての川勝知事を怒らせた結果の拗れです。故に知事選では問題の多い川勝知事を県民は選んだ訳で、その意味では県民の民意に沿った行動だったとは言えます。だからといって差別発言が許される訳ではありませんが、川勝氏辞任後に選ばれる新知事もリニアに反対姿勢を示す方が選ばれやすい状況です。

とはいえここでたびたび指摘してますが、静岡工区の着工遅れ以外にも各地で工事は遅れており、例えばアルプスの盛土ハイキで取り上げた長野工区の地元での軋轢もあります。特にJR飯田駅併設を希望した長野県駅の予定地となった高森町座光寺地区では強引な住民の移転で問題を起こす一方、活性化を期待した飯田市商工会は不満たらたらとか。同様の問題は橋本駅併設の神奈川県駅でも起きていて、市街地故に立ち退きが進んでいない一方、支障する京王相模原線は塩本駅の移転問題とかいろいろゴタゴタしています。

元々東海道新幹線買い取りローンの終了に伴うフリーキャッシュフローで名古屋までなら自前整備可能としていたJR東海ですが、リニアの技術的な問題以上に資金計画がタイトすぎることで無理だろうと見ておりましたが、現実はその通りとなりました。結局故安倍元首相の提案で財投資金3兆円の投入が決まりましたが、これも上述のように異次元金融緩和はしたもののさっぱり成果の出ない成長戦略の目玉としてリニアに財投敷き3兆円投入を決めたものです。地方創生を謳いながら大都市集中をもたらす真逆のことやってますが、アベノミクスの成果が見えないことを気にしていたのでしょう。その結果のぞみ増発で好調な東海道新幹線の稼ぎでは足りず財投資金にも手を付けて溶かしているのが現状です。そして誰も止められないという大戦末期の様相を呈しているという訳ですね。アベノミクスの後始末は長引きそうです。

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Sunday, March 31, 2024

もしトラよりもしドラ、鬼さんこちら

米大統領選でトランプが勝ったら?という要らぬ心配から、もしトラだのほぼトラだのと言われてますが、詳細は省きますが、2016年当時よりもトランプの勝つ確率は低いと見られます。もちろん当選の可能性はゼロとまでは言えませんが。それより日本が直面するもしもドライバーがいなくなったら?を心配した方が良いでしょう。

鬼が笑う2024年笑う鬼退治もうすぐ笑わなくなる鬼その他のエントリーで取り上げた2024年問題がいよいよ明日から本番です。さまざまな変化が既に出てきていますが、一番身近な変化はバスの減便でしょう。サイドバーで紹介した週刊東洋経済 2024年3/2号(ドライバーが消える日)[雑誌] 雑誌 – 2024/2/26の特集に詳しいのですが、トラック、バス、タクシー何れもドライバー不足は変わらないのですが、それぞれ事情は異なります。

トラックは荷主に対しての立場の弱さから運賃値上げがままならないことに留まらず、荷主側の都合で発地着地双方で待機時間が求められたり荷役時間に制限があったり、それでいて機械荷役のできない手積みを求められたりとか、とかく注文が多く無理難題オンパレードだったりします。その結果公道上での待機が発生して交通の障害になったりもします。それでも勤務時間に占める荷役時間は少なく、最大は運転時間ですが、待機時間が多数を占め、生産性を低下させています。

それ故残業時間が長くなるのですが、逆に残業手当があるから低賃金でもそこそこ稼げたりする訳です。この点はバスドライバーと共通ですが、結局残業代が生活給に組み込まれている訳で、そこへ働き方改革で残業時間に上限が設けられると手取りが減って生活できなくなるということになり、それが離職を促すという悪循環が予想されます。故に諸人こぞりて苦しむイブで取り上げた高速道のトラック速度規制を80km/hから90km/hに緩和しても待機時間が減らなければ焼け石に水ですし、事故の多発に繋がりかねません。ドライバーの賃上げを含む待遇改善が必要です。当然運賃値上げが必要になりますし、拘束時間の長くなる長距離輸送が困難になります。

そして運賃値上げはトラック輸送の優位性を損なうことになります。実はここに大きなヒントがあるんですが、海運や鉄道によるモーダルシフトの余地があるということでもあります。特に鉄道貨物は高速道の整備に伴うトラックによる長距離輸送の拡大の影響を受けてきて700㎞以上でないと競争力を発揮できないと言われてきましたが、これが500㎞程度まで下がれば鉄道貨物のシェア拡大が可能になります。つまり需要規模の大きい首都圏と近畿圏の輸送需要を取り込める可能性がある訳です。

震災でわかったJR貨物の実力で取り上げた被災地へのガソリン輸送で磐越西線に臨時貨物列車を走らせて対応したのがこれに当たりますが、非電化区間がある磐越西線でDD51重連で500t列車で効果があった訳ですから1,300t列車が設定できる東海道線の輸送力を活用すれば有効なドライバー不足対策は可能です。但しそのためにはJR貨物にひときわ厳しい態度のJR東海の壁を何とかする必要がありますが。

バスの場合は需給調整規制の緩和で新規参入が増えた結果、底辺への競争でドライバーの賃金が削られて、公務員の身分故にその流れに乗れなかった公営バスが次々に撤退を余儀なくされ、特に収益性の高い高速バスや貸切バスへの新規参入増で大手事業者ほど収支が厳しくなる一方、ドライバーの拘束時間の長くなる長距離の高速バスほど維持が困難になって一般路線維持のために収益部門を縮小するという悪循環に陥っています。故に賃上げも困難でトラックと比べても低賃金レベルにあります。大都市圏でも大阪府富田林市に本社のある金剛自動車の事業撤退など維持困難になっております。

加えてトラックとも共通ですが、待機時間の縮小で実働時間に対して長めの拘束時間を設定して営業所で待機させて、状況に応じた臨時便運行や事故や病欠の代理乗務なども制約されることから、通勤通学時間帯のラッシュ輸送にフォーカスして人を配置する都合から、早朝深夜の運行を見直さざるを得なくなり特に終車の繰り上げが繰り返されていて、都区内でも22時台、近郊では21時台だったり土休日は20時台とどんどん使いにくくなっております。

実はこうしたバスの苦境はタクシーにとってはビジネスチャンスでもあります。タクシードライバーは基本フルコミッションの給与体系ですから、需給調整規制の緩和で都市部の増車が認められた結果手取りが減っていた訳ですが、コロナ禍で外出規制が課されるといよいよ稼げなくなって離職者が増えた結果、クルマはあるのにドライバーがいないという状況に陥っていました。それがコロナ5類化で利用が戻った結果、タクシーが捕まらないという状況を生み出した訳ですが、バスの減便や運行時間帯の短縮で寧ろ稼げる職業となりつつあり、離れたドライバーが都市部では徐々に戻りつつあるのが現状です。そうした中でのライドシェア解禁はタクシー業界にとっては寝耳に水だった訳です。ですからライドシェア推進派が言う既得権益の主張というのとはちょっと違います。

元々規制だらけのタクシー業界では、例えば首都圏では白タクは普通に存在していて規制の抜け穴は元からあった訳ですが、捕まるのは大抵通報によるもので特段の取り締まりは行われていませんでした。特にバブル期の終電後の駅ではあからさまな客引きまでしていました。当時は企業も官庁も残業で終電後の帰宅揉めず粗しくなかったし、その場合の帰りのタクシー代も気前よく経費精算されました。故に稼ぎたいタクシードライバーは深夜を狙って営業してましたし、運よく長距離客を乗せればその日の稼ぎが一発でということもあり、この時代の企業タクシードライバーは厚生年金の標準報酬月額の膨張で手厚い老後資金を得て悠々自適してます。白タクはそのおこぼれを得ていた訳で、ある意味共存していたとも言えます。コロナ禍で痛めつけられた今のタクシー業過にとっては当面は損を取り返すのが精一杯の現状です。

特に二種免許の問題は寧ろタクシー業界から要件緩和の要求が以前からあって、故にライドシェア解禁の見返りとして認められたということになります。加えて当面は地域と時間帯を限定してタクシー事業者がドライバーの指導とクルマのメンテナンスと保険に責任を負う形での解禁となりました。但しこれらは都市部での話で、地方の過疎地では以前から自家用自動車の有償運行で最後の足を確保することは行われておりました。それを日本版ライドシェアと呼ぶかどうかは別として、地方ごとの特殊事情から現行制度下での工夫の積み重ねは既に行われております。という具合にタクシーを巡る事情は地域ごとに特殊で、ライドシェアの完全解禁に問題があることは明らかです。

地方ではバスの減便や廃止は以前から進み、オンデマンドバスや乗合タクシーなどの形でバスとタクシーの境界が曖昧になっている現状があります。但しこうしたささやかな取り組みも自治体の補助金で維持されているのが実態ですが、都市部のバス減便はタクシーの出番を増やすことになり、地方で起きているバスとタクシーの境界の曖昧化が波及する可能性はあります。そうするとタクシー主導のライドシェア解禁はバス事業の圧迫という別の問題を引き起こす可能性も含んでいることは指摘しておきます。こうしたことをちゃんと議論せずに拙速に導入して本当に大丈夫なのか?

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Saturday, March 23, 2024

インボイス始めました

確定申告が終わって一息つきました。やはりというか、物価上昇の影響で経費が膨張して課税所得は激減です。インフレが憎い-_-;。また昨年10月1日付で適格請求書発行事業者に登録されて消費税の納税義務も負いましたから、所得税と消費税の2回の確定申告となりました。消費税に関しては1-9月の非課税事業者期間と10-12月の課税事業者期間があって区分経理で仕分けがメンド臭かったけれど、インボイスの電子帳票保存などは経過措置で紙で良いということになりましたので、当面紙で対応して電帳対応はゆっくりやればよいということで助かってます。

とはいえインボイス対応は零細企業や個人事業主の事務負担を高めたことも確かで、自民党の裏金問題に厳しい目を向けられるのはタイミングですね。昨年末の発覚時は安倍派中心でその影響力を受ける岸田政権にとってはチャンスでもあったのですが、他派へ波及し、特に岸田派の会計責任者の訴追で捨て身の派閥解散でサプライズを演出するも、世論の逆風が収まらなかったのは確定申告の時期に当たったこともあるでしょう。好事魔多しですね。

米ドジャースの大谷選手の専属通訳水原氏の事件は意外でしたが、野球も賭博対象となるアメリカでプロ選手が違法賭博に関わったってのは、本人の関与の有無に関わらず重大事件になります。ドジャース移籍でプロアスリート世界最高年俸を得て結婚し、公私にわたって絶好調だっただけに痛いところです。日本の国税庁にあたる内国歳入庁(IRS)とFBIが捜査に動き、MLBも本人から聴取するということで最悪身柄拘束もあり得ます。

てなことに関係なく円安株高は続きます。日銀政策決定会合の後で米FOMCで利下げ示唆があって米国株が値上がりした流れで日本株も上げてますが、日銀はマイナス金利解除でも緩和的と言いFRBは利下げするけどまだ先と言い、結局枠組みは変わらないということで安心してくださいで指摘した通りの展開です。但し日本株はともかく米株はバブルの水準ですから、この相場がいつまでも持続する訳ではありません。外国人相場の日本株もいつ資金が引き上げられるかはわかりません。円安相場では利益確定の売り逃げで終わると見るべきでしょう。

てことで特に新NISA出で株始めた人は要注意。損切りで売却損が出た場合、普通口座や特定口座なら確定申告で配当所得との損益通算ができますし、本業が低所得なら総合課税を選ぶことで配当控除が使えます。非課税のNISA口座ではできません。また配当所得は年20万円以下は課税免除となります。故に非課税だからといった理由ではなく、自分に合った投資スタイルを見つけることが大事です。基本的に資金力の乏しい個人投資家は株を長く持って配当を受け取ったり株主優待を受けたりしてメリットを得るといった狙いで良いでしょう。その意味では明らかに高値の現状で株を仕込むのは悪手でお勧めできません。

あと蛇足的ニュース。

国際機関の拠出金、当初予算で未確保 円安が外交に影 - 日本経済新聞
当初予算の想定為替レートを超える円安で拠出額が不足してしまい、補正予算でカバーすることが検討されています。つまり税金の一部が海外へ流出することになる訳で、その分政府支出を圧迫し行政サービスを低下させる訳ですね。こうなるとただでさえ遅れが指摘される能登半島の復興が進まなくなるでしょう。それでいて武器購入や五厘や万博には景気良く税金を投入するのですから救われません。特に自衛隊の出動を怒らせたりボランティアの現地入り自粛を求めたりと疑問だらけの対応ばかりで政府によるプッシュ型支援打ち切りとかひどいことばかりです。

そんな中で被害の大きかったのと鉄道の能登中島―穴水間が4月6日に復旧し全線運行されるのは朗報です。ボランティアの現地入りもやり易くなります。但し未だに宿泊場所がないから、例えば金沢などからの通いで対応となり移動時間分だけ作業時間が圧迫される訳です。当然ながら観光客を受け入れる余裕はありません。その一方で北陸新幹線敦賀延伸開業で観光客を呼び込もうとしているなど、政府や県の対応はチグハグです。そもそも自衛隊の災害復旧というのは前線補給のロジスティクス能力の活用な訳で、それがうまくいっていないのは実際の戦闘能力に疑義があるってことでもあります。これで国を守れるのか?

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Saturday, March 16, 2024

安心してください、ゲタ履いてますよ

パンツは知らんけど^_^;。漂流する世界と日本で展望した日銀の3月マイナス金利解除が現実になりそうです。

日銀、マイナス金利解除へ 賃上げ拡大で17年ぶり利上げ - 日本経済新聞
決定会合前のリーク記事の是非は横に置きますが、既に日銀自身のオペレーションで市場に織り込まれています。政策金利の指標とされる1日ものの銀行間市場金利はマイナス圏ながらほぼゼロ近傍に誘導されていて、実際は日銀当座預金の一部に課されたマイナス金利をなくすだけですから、市場に大きなショックは起きない訳です。加えて今週の東京株式市場の4日続落でもETF購入に動かず、異次元緩和からの正常化を進める姿勢を見せております。加えて春闘集中回答日の満額回答目白押しですから、既に既定路線といえます。その日銀保有ETFにも動きがあります。
日銀ETFの含み益34兆円 株高で過去最大、活用策を議論 - 日本経済新聞
簿価で36兆円が株高で70兆円の評価額となり34兆円の含み益となっていますがここからが難問です。市場で売れば株価を下げることになるため、とりあえず配当収入を金利上昇による保有国債の含み損対策の引当金にすることを財務省と折衝中ですが、色良いい返事はないようです。日銀は当面の緩和的な政策を維持するとしていますが、国債評価損の引当金を積めば逆に国債売却に踏み込む可能性もありますから財務省は警戒しているのでしょう。日銀としては更に踏み込んで初期に購入した低簿価のETFを少数売って益出ししたい筈ですが、そうなると株式市場への影響もある訳で認めにくい訳です。逆に言えば償還期限のない株式ETFの処分の難しさは課題として残ることになりますが。異次元緩和の暗愚な破壊力は尾を引きます。

為替がやや円高に動いて、これを日銀の政策変更と結びつける議論がありますが、150円台から147円程度になっただけで輸出企業の想定為替レートが130円台が主流ですから企業業績への影響は軽微ですし、米FRBの利下げ観測が後退して日米金利差もあまり動かずで海外勢の買い越し姿勢もあまり変化はないし、寧ろ米商業用不動産ローンの不良債権化で米地銀の経営への影響が心配されてNY株も調整されて寧ろ日本株の割安感が注目される地合いですし、何より日銀がETFを簡単に処分できないことが、日本株の下支え要因として歓迎されてさえいます。為替や金利差と共に海外勢から見れば三重に下駄を履いたおいしい状況です。これはまた人件費を削って配当や自社株買いで株主に報いる姿勢の日本企業から富が海外へ流出することをも意味します。国民が貧しくなる訳です。鉄道業界でも気になる動きがあります。

東北新幹線が一時運転見合わせ オーバーラン影響で - 日本経済新聞
昨今不祥事が目立つ日本企業ですが、ビッグモーターのような新興企業はいざ知らず、日野自動車、ダイハツ工業、豊田自動織機などのトヨタ系列各社や、遡れば東芝や三菱電機などの老舗企業の名が目白押しです。疑問なのは老舗企業で組合が一定の役割を持つはずなのに、何をやっていたのか?ってことです。

結果から言えばバブル後の日本企業は過剰投資で債務を抱えて銀行の不良債権処理で融資を絞られたことから、新規の設備投資を抑制した訳です。それがはっきり表れているのがゼロ年代で、GDPの名目値もほとんど変化しなかった時代ですが、この期間の固定資本減耗が凡そ107兆円でほぼ変化しなかった一方、給与や社会保険料で構成される雇用者報酬は減ってその分株主と経営者の取り分となる営業余剰が増えています。日本企業は投資を抑制しつつ株主の取り分を増やし続けたってことです。

民間企業の減価償却費に当たる資本の維持費の固定資本減耗は成長経済では徐々に増えて資本装備を増やして生産性を高めて経済成長に繋がる訳ですが、それを怠って人件費に相当する雇用者報酬を削って株主に帰属する営業余剰を増やすということを続けた訳です。失われた30年は謂わば必然です。それに対して組合は既存の組合員の雇用維持を重視して組織率の低い若手を派遣労働者など非正規雇用で受け入れることを認めました。その結果現場の規律が維持できなくなった可能性があります。

そして過剰な内部留保を抱えてそれを海外に投資した訳ですが、裏を返せば国内に投資するよりリターンが見込めるからそうした訳で、その結果国内生産は細り貿易赤字が常態化する一方、それを埋めて余りある第1次所得収支を得ているというのが日本の現状ですが、鉄道事業者など内需関連企業はその流れには乗れない訳です。

その中でJR東日本は少子化による人手不足を先取りした省力化投資や安全投資に積極的でした。その背後にはJR総連系のJR東労組の存在があったことは以前にも指摘しましたが、気になるのはストでスベってスットコドッコイ疑惑の感電事故で指摘した組合潰しとトップ交代の影響ではないかと心配しています。昨今トラブルが多いことは確かです。

記事では単独運転のつばさ号の郡山駅での500mのオーバーラン事故後の点検が長引いて東北新幹線東京―盛岡間が運転見合わせされたものですが、現存のE3系は1000番台以降の山形新幹線向け編成ですが、同様に事故は過去にもあってやはりつばさ単独運転列車の事故だったということで、JR東日本は急遽E2系やまびこ編成を回送扱いで併結して対応しています。以下は推論を含みますがおつきあいください。

E3系つばさ編成は1999年~2007年にかけて製造されていてザックリ20年選手ですが、新幹線車両はおおむね20年程度で取り換えと言われますから、晩年期ではあります。しかしE2系やまびこ編成とほぼ同じ経年でE3系単独運行列車でトラブルが重なったのはおそらくE3系特有の事情があると考えられます。特にATCのブレーキ指令で所定位置の範囲内に停止できる筈ができなかった点から、何らかの制動力不足が生じたということになります。

考えられるのは1両あたり400系より2t軽量化されており、軽量化によってレールと車輪の粘着性脳に微妙な低下があったとすれば、当時積雪の影響もあって滑りやすい状況下でのATCによる常用最大ブレーキが空走をもたらして、停まりきれずにオーバーランというのはあり得ます。あるいは在来線走行向けにE2系より小ぶりなE3系の台車構造が車輪とブレーキシューの間の雪詰まりを起こしやすいとか、あるいはモーターの架装空間や駆動装置の雪詰まりとかですが、故にE2系との併結運転では生じなかったという説明は可能でしょう。

気になるのがこのトラブルに関するJR東日本の情報開示の姿勢が不十分に感じられることもあり、組合員保護の立場から注文が多かった組合を潰した結果だとすれば、残念ながら今後もトラブルは続く可能性があります。そうでないことを祈りつつ「安心してください」と言ってほしいですね。

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