JR

Sunday, December 08, 2024

韓流ふてほど

タイトルだけで通じると思いますが^_^;。

韓国の尹錫悦大統領「非常戒厳」宣言、4日未明に解除 軍を撤収 - 日本経済新聞
少数与党の韓国尹錫悦大統領が憲法に基づく非常戒厳を宣言し、6時間後に解除されたということで、韓国人を含めて多くの人には寝て起きてこうなってたというニュースですが、韓国メディアを含む海外メディアがリアルタイムで報じた一方、日本のメディアは音無し。現地記者はSNSなどで個人で配信していたので、現場は動いていたのですが、メディアの編成は動かなかったということです。隣国で交流人口も多い韓国の大事件をスルーというのはいただけません。まるで兵庫県知事選の選挙期間中のようなオールドメディアの不作為が再現されました。不適切にもほどがある!じゃなくて不適切報道な「ふてほど」です。

韓国の政治体制は大統領制プラス一院制で日本の地方自治体と似た二元代表制ですが、元検事総長の尹大統領は日本に譲歩し過ぎと言われて就任後人気を落として4月の総選挙で与党大敗し、300議席の国会で192議席を野党系が占める少数与党となって政権運営に行き詰まった結果の暴走と見られますが、軍事や災害による非常事態ではなく政治対立を理由としたもの。結果的には迅速に動いた与野党議員が国会封鎖に軍隊が派遣された中をかいくぐって190人が議場に入り、その場で憲法に基づく戒厳解除決議をして収拾されましたが、戒厳下でも国会の封鎖は憲法に定めがなく、軍を動員しての国会封鎖を指令した訳ですからクーデター未遂事件といえます。しかも尹大統領は一部を除いて閣僚にも告げずに進めていたことから事後に閣僚の辞任が相次ぎ、政権は死に体になりました。大統領弾劾決議は成立しませんでしたが、政治空白は続く状況です。

で、日本のメディアは早速日韓関係が見通せなくなったと嘆いてますが、そもそも国民の支持を得られない政権トップとの約束が有効と考える日本政府の代弁に勤しむ姿勢には呆れます。権力者の暴走を止めた国会議員や国会周辺に集まった4,000人の一般市民の姿こそ民主政治の証であり、韓国の政治がそれだけ成熟していることを示すものですが、それを報じると森加計さくらレイプ赦免リニア3兆円アベノマスクとやりたい放題の10年間を許したことが際立つから具合が悪いのかもしれませんね。あと日本の憲法議論の緊急事態条項が何をもたらすかを示したとも言えます。

そもそも「日韓の懸案」も徴用工問題でオウンゴールの国自BANG!の化成品輸出ホワイト国認証取消をしたことに端を発する訳で、文字通り日本のオウンゴールが始まりだった訳ですから、韓国側から見れば尹大統領の日本への譲歩が世論の逆風に遭うことは避けられない訳です。勿論北朝鮮と対峙する上で日米間の連携が必要なのは言うまでもありませんが、韓国の司法手続きにイチャモンつける日本政府の対応には問題がある訳です。辞任した閣僚からは尹大統領が4月総選挙を不正選挙とする陰謀論ユーチューバーを評価し閣僚にも視聴を勧めていたことが語られました。何のことはないショート動画に感化された日本のシニア情弱ネトウヨと同じじゃん。そら日本政府にはいい大統領だわ-_-;。

サイドバーで紹介している国家はなぜ衰退するのか 上下2冊 ハヤカワで、国家の繁栄と衰退、格差の拡大の原因を探る研究で今年のノーベル経済学賞を受賞した著者たちの代表的な著作ですが、結局国家の繁栄と衰退の差は制度の包括性(inclusive)と収奪性の違いで説明できるというもので、包括的制度は中央集権的権力が形成された一方で多くの利害関係者の権力アクセスによって分散されることで形成され、法の支配で権利が保護された中でイングランドの産業革命をもたらし世界に広がった一方、その成果の受容には制度の違いが影響するというもの。この観点から言えば日本より韓国の方が今後は繁栄するという推論が成り立ちます。実際ほんの10年前まで1人当たりGDPで日本の半分だった韓国が今は並び、間もなく追い抜きます。

新幹線「のぞみ」の自由席削減、観光需要逃さず 駅の混雑緩和にも - 日本経済新聞
近頃鉄ちゃんが騒ぐネタがあれこれあるんですが、今回はこれ。JR東海は公式には着席乗車の希望が多いからと説明してますが、コロナ明けの需要回復で混雑がコントロール不能になってきているというのが実際です。特に観光シーズンの繁忙期には不慣れな乗客が多いし、インバウンドで外国人利用も増え、不評だったジャパンレールパスののぞみ解禁もあって現場が混乱しているってことですね。戦後の混乱期に国鉄が乗車を断る口実として導入した指定券制度への先祖返りに近いです。制度上航空鵜や高速バスのようなダイナミックプライシングの導入が難しい中での対応ですが、ビジネス客中心で安定していた東海道新幹線も観光客を当てにせざるを得ない環境変化は指摘しておきます。インバウンドで労働集約的な観光業を当てにしても、人口減少が避けられない日本のリーディングインダストリーにはなり得ません。

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Saturday, November 23, 2024

オールドメディアの不作為

兵庫県知事選の結果が世間を騒がせてます。地方首長の選挙であり、現地の事情を知る立場にありませんが、ポリティカル・マーケティングに繋がる選挙の裏が可視化された出来事です。

SNSの功罪映した兵庫県知事選挙 斎藤元彦氏が「主戦場」制す - 日本経済新聞
斎藤元彦知事のパワハラ内部告発に始まった一連の報道で県議会の全員一致で辞職勧告による失職を受けての県知事選という流れは全国でニュースになっていた訳で、内部告発者保護法に反して第三者委による事実確認もせずに告発者を特定し個人情報を晒そうとして内部告発者を自死に至らしめたということは知られていただけに、意外なニュースと受け止められましたが、県議会が立ち上げた100条委員会も継続中で第三者委員会設置の話もあったけれど、ローカルニュースや政見放送に触れることにできない他の地方の人にとっては、何が起きていたかわからない状況で、何故か選挙戦終盤で斎藤前知事の支持が盛り返して当選し、立花N国党党首のアシストがあったことなどは選挙後に知ることになりました。

その間斎藤氏や立花氏はSNSの動画投稿でパワハラは捏造という根拠のない情報を垂れ流し、それに多くの有権者が反応した結果らしいということすが、斎藤氏のネット戦略を担当した民間企業トップが自慢げにブログ投降して公職選挙法で禁止されている買収に当たると指摘されて炎上中ということで、都知事選の時よりも裏方が表へ出たという意味でも注目の選挙となりました。

斎藤知事支持者と見られる人たちはウソばかりのオールドメディアに真実を突き付けたネットメディアの勝利と湧いてますが、寧ろ公職選挙法や放送法で謳われる公正中立を狭く解釈して自主規制したオールドメディアの不作為による不戦敗と言えます。少なくとも裏付けのないネットメディアの情報拡散をファクトチェックで検証するとか、刑事事件の可能性があるパワハラ疑惑を事件報道として取り上げるなど、やれることは多数あったし、ネット上ではそうした投稿も見られたけれど、ネット社会とはいえ社会的な影響力はマスメディアが勝る訳で、今後の検証報道をきちんとやってほしいところです。

米大統領選のトランプ現象とパラレルに語られる部分もありますが、元々マスメディアが旗幟鮮明にしているアメリカと、事なかれ主義で踏み込んだ報道ができない日本とではメディア事情はかなり異なります。アメリカでも民主党系メディアほど大接戦と報じてましたから、トランプ支持者の実態に対する見落としはあったと思われますが、メディアの独立性はずっと強いので同一視できません。トランプ支持でも同床異夢の部分はあり、今後それが米国内政局を動かすことになるでしょう。そもそも他所の国の民主主義の危機を心配するよりも足元の日本の選挙のお寒い事情を心配すべきだろ!

てことで心配なニュース2件。

東京・町田の民家で水と気泡、リニア工事中断 JR東海 - 日本経済新聞
大井川の水問題だけじゃないリニアの不都合な真実。岐阜県瑞浪市の地下水枯渇に続いて東京都町田市小野路地区で水と気泡が地上へ出てリニア工事の影響が疑われて工事中断中ということで、掘れば出てくるトラブル多数。また残土処理もめどが立っていないなど、見Kり発車で問題抱えてます。
JR北海道、約220踏切でレール再検証 貨物列車脱線受け - 日本経済新聞
今月16日に起きた函館本線森~石倉間の貨物列車打線事故で、レール腹部の腐食による破断が原因らしいということで、緊急点検となりました。超音波探傷で強度を弱める表面のキズは超音波探傷で確認できますが、腹部の腐食は盲点ということで、鉄道総研の享禄を得て対応するということです。考えられるののは梅雨がない謂われる北海道でも夏の雨量が増えていることで、踏切部の履工で湿潤状態のまま冬の土壌凍結で水分が保持されて春に溶けてもまた雨といった気候変動の影響があるかもしれません。加えて重量のある貨物列車の運行で傷んだ線路の目視や打音点検や補修が人手不足で追いついていないといった事情も考えられます。ともあれ貨物幹線の維持が困難となれば北海道経済には打撃です。

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Saturday, November 16, 2024

高圧経済のワナ

インフレ下の政治混乱は続きます。

ドイツのショルツ連立政権が瓦解、景気不安が導火線 早期総選挙へ - 日本経済新聞
ドイツのシュルツ首相が自由民主党(FDP)党首のリントナー財務相を解任したことでFDPが連立を離脱して一転少数与党となったことで、来年2月の総選挙と総選挙前のショルツ首相の信任投票が行われる運びとなりました。ウクライナ戦争で安価なロシア産天然ガスが利用できなくなったこと、アメリカが消極的なウクライナへの兵器支援、中国の内需失速による自動車メーカーの販売不振、加えて中国EVメーカーの欧州攻勢でEU域内販売も不振と悪条件が重なる中で、財政による経済の下支えをしたいシュルツ首相と健全財政の減速を譲らないリントナー財務省の対立の結果ですが、一時10%を超えたインフレによる国民の不満が背景にあります。
アメリカ、下院も共和党が多数派 トランプ新政権「トリプルレッド」に - 日本経済新聞
元々伯仲していた上院の逆転は予想されていましたが、下院も共和党が多数派となりトリプルレッドとなりました。とはいえ議会共和党はトランプ派一辺倒ではないので、移行後の政権運営の追い風となるかどうかはわかりませんが、インフレで国民の怒りを買った民主党は完全な敗戦です。イエレン財務長官がFRB議長時代からの持論だった高圧経済論がインフレを助長したことは間違いありませんから、共和党のネガキャンのせいとは一概に言えないところがあります。具体的にはインフラ投資法やインフレ抑制法(IRA法)の撤廃までは難しいとしても予算の圧迫は避けられないところ。三つ子の赤字でテキサス新幹線の連邦政府の調査費がついたものの真っ先にキャンセルされそうです。JR東海の北米事業は今のところ成果なしとなりそうです。高圧経済のワナに嵌った訳です。

但しトランプ氏の関税強化や富裕層減税はインフレをもたらしますから、結局米国民は引き続きインフレに苦しめられますから、2年後の中間選挙で逆転の可能性はあります。となると米FRBはインフレ抑止のために再利上げに追い込まれますし、財政負担が増すことで長期金利も上昇しますから、金利差で円安が進むことになります。今週の円安はその辺を先取りした動きですし、北米市場依存の強い日本の自動車メーカーも高関税の逆風を受けます。そうなると円安だから儲かるという図式が変わってきます。ドイツなど欧州勢もこの点は同じですが。

という訳で、大統領選前からトランプトレードということで株が上がったりしてますが、日本株はこれまでのような連れ高とはいかのいようです。逆に円安で割安感の出た日本企業はM&Aやアクティビストの標的になりやすいということもあります。例えば西武そごうの売却を巡って労組と対立してストまで打たれたセブン’アンドアイHDですが、経営の迷走が続いてアクティビストに狙われるの留まらず、同業のカナダ社アリマンタシオン・クシュタール(ACT)から買収提案を受けるに至りました。国内最大手の小売りグループが海外企業から買収提案を受けるのは円安の影響といえます。セブンは対応策として祖業のイトーヨーカドーなどスーパー事業を中間持ち株会社化して外部資本を入れて上場させるとしていましたが、親子上場復活は悪手ですし、ACTはスーパー込みでの買収提案ですから対抗策としては弱いということで、創業家等の資金によるMBOで非上場化というところまで追い込まれました。とはいえ資金が集まる可能性は低いと思いますが。

中間持ち株会社といえば小田急電鉄が箱根地区の事業を統括する小田急箱根HDを立ち上げて箱根塗材鉄道、箱根登山バス、箱根ロープウエー、箱根観光船他の事業会社を子会社とする形で実現してますし、やはりアクティビストにオリエンタルランド株売却を迫られて新京成電鉄の子会社化と傘下バス事業者を京成電鉄バスHDという中間持ち株会社傘下で再編したり、関東鉄道を子会社化して京成電鉄茨木HDとして事業会社としての関東鉄道と関鉄バスその他のバス事業再編に進んでいます。規模を膨らませて外資のアタックを避けようってことですね。

で、インフレ下の政治混乱の自粛解禁wwwで東京メトロを取り上げますが、売り出し価格1,200円に対して1,630円をつけ、その後も買い優勢で一時時価層が置く1兆円越えという幸先の良いスタートとなったものの、その後の足踏みが続いています。立地条件の良さから鉄道企業としては収益性抜群で、高配当や株主優待の期待があって個人中心に幅広く買われ、新NISA後初の大型上場でもあり、買われた理由ははっきりしてますが、成長戦略が見えないは指摘しておきます。有楽町北進線や南北線品川延伸で運輸収入が増える要素はありますが、関連事業で成長を目指すという成長戦略は具体性がありません。

通常の鉄道会社なら郊外の開発で開発利益を生む田園都市線方式や国鉄分割民営化で誕生したJRなら高輪ゲートシティのように鉄道用地の余剰を活用した再開発事業を自ら手掛ける余地がありますし、JR東日本では開発後にファンドへ売却して得た資金を次の不動産開発に充てる形で事業を成長させるというビジネスモデルが可能ですが、鉄道用地の余剰が殆どない地下鉄では同じ手は使えません。保有物件は主に地上出口や通風口などと若干の保守ヤードぐらいで、単独での開発事業の余地はほぼ無く、大手デベロッパーとの協業か相互直通社の沿線開発など限られております。

東日本大震災の復興資金にするとされた株式売却益も東京都の意向で国と都の保有比率を維持した形で50%だけの売り出しですから、国庫に入った資金は半分になった訳ですし、国と都が支配株主として残る形で一般株主は個人中心となるとまともなコーポレートガバナンスが働かない可能性があります。上場後のの新線建設は将にそれで、恩恵を受けるのは地権者とデベロッパーばかりで東京メトロのメリットは見えません。そして今少数株主となる一般株主は高配当と株主優待で満足しろという形になる訳です。そしてアクティビストも手を出しにくい訳ですが、その辺を睨むと今の株価水準はあまり上がり目がないということになります。

東京メトロでは都市鉄道の運営受託の事業化も考えているようですが、日本の鉄道事業者の高品質だけど高コストで参入は簡単ではありません。但し円安は若干プラスかもしれませんが、海外事業に熱心なJR東日本でも成長分野というには至っておりません。都市鉄道分野では香港地下鉄が東京メトロ以外では唯一の民間事業者で同様の事業を展開してますが、実績のない中での後追いはかなりしんどい道のりと覚悟すべきです。

あと株式売却益の東京都分が何に使われるかが不透明です。単年度黒字を実現したものの累積債務返済に喘ぐ都営地下鉄の債務償還に使うなら、将来の地下鉄統合へ向けた前向きな話になりますが、東京都は東京-有明間の湾岸地下鉄の実現に回す可能性があります。その為に事業主体とされる東京臨海高速鉄道の増資に回すということか?そうするとJR東日本が希望するりんかい線編入が微妙になる訳で簡単ではありません。いずれにしてもこれらの事業は開発主体となる三井不動産などの民間デベロッパーにいいとこ取りされる訳で、三井不動産は小池知事や都議会自民党議員や萩生田光一議員などのパーティ券購入で助けている訳で、神宮外苑再開発に見られるように都民から見れば明らかな利益相反です。裏金議員を許しちゃいけない理由はこういうところです。

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Saturday, November 02, 2024

年収の壁のウソ

もう一つの高齢化問題で世代間対立を煽る国民民主党の姿勢を指摘しましたが、今度は103万円の壁を持ち出して与党に飲ませようとしております。「選挙中から手取りを増やす」という公約を掲げていたことからきているのでしょうけど、重大なウソがあります。

年収の壁問題はブルシットジョブ型雇用の国で解説しましたが、103万円の壁は事実上存在しません。法改正されて現状は基礎控除48万円+給与所得控除55万円で合計103万円ですが、年収103万円を超えると所得税が課税されることは確かですが、最低税率の5%が課されるだけで超過1万円毎に500円というレベルです。つまり働いた分手取りは増える訳ですが、社会保険料負担が生じる106万円または130万円の壁ではいきなり保険料負担が来て具体的に手取りが減りますから、103万円の壁とは状況が異なる訳です。

社会保険料は負担の一方で給付と紐付けされている訳で、厚生年金に加入すれば老後の年金受給額が増えたり妊娠出産一時金などもあります。この辺の説明が不十分ではありますが、国民民主党が言うような給与調整という意味では、寧ろ社保加入で雇い主の負担が増えることの方が勤務時間短縮に影響している方が大きいと思います。高齢者の尊厳死を持ち出してまで「手取りを増やす」から社会保険料も見直せと言っている訳ですが、それなら事実上制度にただ乗りしている第3号被保険者制度の見直しが先です。

元々第3号被保険者制度の始まりは1985年の基礎年金制度で導入されたものですが、戦前に始まった厚生年金が世帯単位の加入なのに対して、国民年金は主に農家を含む個人事業主向けで個人加入と異なるスタイルの制度ですが、高度経済成長期の工業化の進捗で農家の余剰労働力を吸収してきた一方、所謂脱サラで商売始める人も少数いてザックリ言えば個人事業主は雇用の調整弁の役割だった訳です。故に赤字3Kの掟?で指摘したように赤字体質だった訳で、1985年の年金改革で基礎年金制度として加入者が増えていて余裕のある厚生年金や共済年金からの会計間扶助を狙い「国民皆年金達成」を謳った訳です。第3号被保険者制度はこのときに始まったものです。

つまり最初から厚生年金等の被用者年金に寄生する形の制度だった訳で、現役世代の手取りを問題視するなら真っ先に見直すべきです。今年も行われた年金会計検証でもスルーされた一方、国民年金加入期間の5年延長や支給開始年齢の繰り下げなどは毎回検討課題に挙げられるなどしており、今の現役世代にとっては負担は増えて給付は遠くなるという話です。加えて言えば被用者年金が世帯単位の加入であるために、所得代替率の算出も正社員の夫と専業主婦に子ども2人の標準世帯の試算としていますが、現実はそれでは家計が賄えないから共働きが増えている訳ですが、夫婦とも正社員の場合の世帯所得が標準世帯と同等の場合は単身世帯2人分として年金支給額は標準世帯と同じになるよう調整されてます。つまり第3号被保険者は完全にタダ乗り状態です。年収の壁は専業主婦がパートなどで家計補助する場合に問題になる訳ですが、第3号被保険者制度がなく専業主婦が国民年金に加入していれば保険料負担はある訳で、社会保険加入で国民年金保険料負担が無くなることで実質的に年収の壁が無効になるというのがすっきりした解決策ですが、そこへ踏み込まない国民民主党は不誠実です。

選挙期間が短く上記のような説明は伝わりにくいからキャッチ―なスローガンで有権者にアピールして票を集めるというのは選挙戦術としてはあり得ますが、選挙後に取って付けたような103万円の壁を持ち出す時点で有権者を騙したに等しいと言えます。28名と議席を4倍増して20代30代の指示が多かったと分析されてますが、これポリティカル・マーケティングの都知事選の石丸現象の再現ですね。難しいこと言わずにキャッチ―なフレーズで自らをキャラ立ちさせれば票が取れるということです。どうも石丸氏と同じ選挙参謀が裏にいるようです。

東京メトロ上場、時価総額1兆円に 個人活況で売買首位 - 日本経済新聞
長くなりましたので、東京都繋がりでこのニュースを取り上げます。売り出し価格1,200円に対して初値1,630円がついて現状も1,600円台半ばあたりで割と安定した推移でまずまずのスタートですが、課題もいろいろあります。東京都の対応が国を振り回した結果、完全民営化は見送られました。それを含めて今の株価水準は正直割高と見ております。詳しくは別に機械に譲ります。

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Sunday, October 27, 2024

もう一つの高齢化問題

高齢化社会と言われて久しく、人口に占める高齢者の比率も高まる一方で、それを支える現役世代の負担増問題は深刻ですが、それをネタに「高齢者は早く死んでくれ」と言わんばかりに尊厳死に言及する国民民主党玉木代表のような議論も出てきますが、当然ながら論外です。国民民主党は選挙公約で「手取りを増やす」として社会保険料減額や年収の壁対策を訴えています。20代30代の支持層が多いことの反映でしょうけど、世代間対立を煽るだけで寧ろ解決を困難にします。

よく言われる年金の世代間扶助は元々賦課方式年金では形式上そうなる訳ですが、高齢者の増加の一方で現役世代の人口減少で負担が増すことに対してはマクロ経済スライドなどの対策で対応中ですが、誤解の多い所得代替率は年金支給開始時点での現役世代の所得が基準であって、本人の現役時代の所得が基準ではないという点です。つまり現役世代の所得が高ければその分年金支給額は増える訳で、支える現役世代の所得を増やせれば問題は解決します。真の問題はその現役世代の所得を増やす展望が開けない点にあるということです。

保健医療に関しても、高齢者の医療費を現役世代が負担するのは不公平と言われますが、高齢化の進捗と共に高齢者医療比が増えること自体は避けられませんが、この裏には高齢者医療のボリュームが増えることから、それを当て込んだ新薬や医療技術の開発が活発になり、その結果膨らんだ開発費を価格転嫁した高額医療が増えていることが影響している訳で、簡単な解決策はありませんが、基本的にはウェルビーイングで健康寿命を延ばし高齢者を元気にすることが大事です。その意味では薬やサプリメントの過剰摂取による腸内環境の劣化が指摘されるように、そもそも現状が過剰医療である可能性があり、その辺の意識改革に解決の糸口を見出すことが大事です。

てことで本題。減耗する固定資本に沈む夕陽の続編です。

道路陥没、3週間で3回も 老いるインフラ「保全技術」課題 - 日本経済新聞
水戸市の市道で3週間に3度の道路陥没が起きました。地価の老朽化した下水道管の破損が原因ということで、通行止めにして補修工事を実施したのですが、公共インフラの老朽化は全国的な問題で、しかも自治体財政の逼迫と人手不足で補修や更新が追い付いていない現実があります。つまり公共インフラの維持管理という悩ましい問題が顕在化している訳です。

固定資本減耗というのはマクロ経済で言うところの資本の維持費で、GDPの三面合一の分配面から見た恒等式「GDP=雇用者報酬+固定資本減耗+営業余剰」で表されます。上記エントリーでも触れましたが、GDPの名目値がほぼ変わらなかったゼロ年代で見るとほぼ107兆円程度の水準で推移しており、一方雇用者報酬は減り営業余剰が増えています。

雇用者報酬は企業会計で言うところの人件費に相当し、固定資本減耗は減価償却費に相当し、残余が営業余剰となり、これが投資資金、役員報酬、株主還元、納税の原資となります。そして固定資本減耗は過去の投資資金の回収の意味合いがありますから、通常は投資によって増えていく筈ですが、変わらないということは過去の投資回収分を超える投資が行われなかったことを意味します。そりゃ長期停滞する筈だわ。

その一方で公共投資はバブル後の90年代以来増え続けてゼロ年代で停滞したことは確かですが、アベノミクスで増やされ、財政を圧迫する訳ですが、一方で人手不足で公共事業の執行段階での入札不調の影響で停滞したこともあり、上記エントリーで危惧した公共インフラの固定資本減耗の膨張は制限された面はありますが、一方で補修や更新も滞るということになった訳です。

地震で盛土崩落の東名高速でも指摘しましたが、元々単年度主義の公会計では減価償却は考慮されず、それに準じた高速道路通行料でも減価償却費は計上されていなかったから、東名の地震による盛土崩落や中央道笹子トンネルの天井板落下のようなことが起きる訳で、流石にまずいということで補修費の計上が増やされるようになりましたが、作業員を確保0できなければ補修工事も進まない訳です。そしてこれらの費用は税金で賄われる訳ですから、リタイヤした高齢者ではなく現役世代の負担となる訳です。社会保障費で世代間対立を煽るのがバカバカしくなりませんか?

こうした現状は災害復旧にも影を落とします。阪神大震災や東日本大震災と比べて能登半島の復旧遅れは深刻ですが、東日本と比べても人手不足は深刻になっている訳で、災害復旧に時間がかかるようになっている構造問題もあります。鉄道関連でも球磨川氾濫で長期運休中の肥薩線が未だに復旧工事に着手できていません。国が道路予算や河川予算を使った支援策を打ち出してもJR九州が渋っている現実がある訳で、復旧しても大赤字でそこへ社員を張り付けるのも難しいということで、JRのローカル線問題が単なる赤字問題ではくくれなくなっていることを示します。同様の問題は芸備線、米坂線などにもありますが、ハードの復旧費を手当てするだけでは済まない問題です。

加えて言えば今後はインフラの補修や更新が課題となり、財政を圧迫することは確実です。そうした状況での新規のインフラ投資は慎重であるべきです。少なくとも費用便益比(B/C比)が相当高い案件に絞るべきです。その観点からB/C比ではっきり差が出ている北陸新幹線の延伸ルートは小浜京都ルートではなく米原ルートを選ぶのが合理的です。

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Saturday, October 19, 2024

Suica甘いか消費税のインプレゾンビ

ウヨ曲説がインプレゾンビに進化(退化?)して、総選挙で立憲民主党を除く野党の消費税減税公約に釘を刺しておきたいと思います。ウヨ曲説エントリーで示した鉄道運賃の事例がわかりやすいと思いますが、消費税が下がったからといって事業者が国から認可を受けた上限運賃は変わりません。同様に一般商品も総額表示の場合は税率が下がって消費税額が減るだけで、その分事業者の取り分が増えるだけです。つまりインフレ対策としてはほとんど意味がない訳です。

何故そうなるかといえば、間接税は担税者と納税義務者が分離していて、納税義務者である事業者は裁量の範囲で値決めできるのが原則ですから、消費税減税で物価が下がる余地はほぼ無く、単に税収が減るだけとなる訳です。そしてそれは社会保障財源を棄損して社会保障の圧縮や社会保険料値上げの口実にされるだけで国民には何もメリットはありません。また国債発行など財政赤字でファイナンスすると三つ子の赤字 の影響でインフレがますます進みます。

その意味では国民民主党が主張するガソリン税の暫定税率を免除するトリガー条項にも同様の問題はありますが、少し異なるのは納税義務者は川上の石油元売りで、トリガー条項発動で卸値を下げることはありますが、販売店であるガソリンスタンドには高く仕入れた在庫がある訳で、トリガー条項発動しても直ちに値下げできる訳ではありません。店舗の競争環境次第では仕入れの値下がりを先取りする形で値下げするGSはあるでしょうけど、結局将来の値上げ圧力を緩和する程度の効果しかありません。

但し納税義務者である石油元売りにインフレ対策として値下げ補助金を支出している訳ですから話は微妙になります。トリガー条項を発動してもGSへ卸す卸値を下げる義務はない訳ですが、補助金も同様です。実際元売り各社は補助金を製油所の統廃合などのリストラ資金に流用していて、値下げまではタイムラグがありました。政府がトリガー条項を発動すると価格が乱高下して混乱すると説明してますが、補助金すら流用される現実を見れば大ウソってことですね。筋から言えば元売りに補助金を出すお金があるならトリガー条項でも問題なかった筈です。また補助金であれ減税であれその財源が国債なら結局財政インフレの形で国民生活に跳ね返ってきます。一旦インフレが始まると価格転嫁の連鎖でスパイラルが生じて止まらなくなります。インフレがいつまでも収まらないインフレゾンビ?^_^;

てことで裏金問題で与党にお灸を据えたいからといって、消費税減税を公約にするような野党への投票は考えものです。但し選挙区事情がありますから、各自しっかり考えて投票してください。そういえば来週日曜日が投票日なのにまだ投票券も選挙公報も届いてないけど総選挙ホントにやるんだよな?

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Saturday, October 12, 2024

三つ子の赤字

この話題から入ります。

【ノーベル平和賞2024に日本被団協】「核廃絶に弾み」被爆者ら喜びの声 - 日本経済新聞
核拡散防止条約(NPT)体制では結局赫々酸を阻止できず、宣言こそしていないものの、イスラエルとイランは事実上の核保有国と見做せますが、両国が今一触即発の状態にあります。反撃に慎重だったイランがミサイル攻撃を仕掛けたことで情勢が混とんとしてますが、イランはあくまでもイスラエルの軍事資質を標的にした弾道ミサイル攻撃で、国際法に則った行動ですが、寧ろイスラエルはヒズボラ掃討を口実にレバノンへの攻撃を続け、遂に国連平和維持軍まで攻撃するという無茶苦茶な事やってます。そのイスラエルをアメリカは擁護し武器供与もしている訳で、対ロシアとのダブルスタンダードで国際世論を敵に回してます。そんな中で日本の被爆者団体のノーベル平和賞受賞がもたらすメッセージは明白で、核の抑止力での平和維持はきっかえさえあればエスカレーションを止められないってことです。集団抑止とか言っている某国も自覚しろってことです。この話題はここまで。
ドイツ、2年連続でマイナス成長へ 「欧州の病人」再び - 日本経済新聞
ドイツ経済の不調ですが、原因はいろいろあります。ロシアのウクライナ侵攻で安価なロシア産原油や天然ガスが利用できなくなったことと、中国の国内景気の悪化が主な理由ですが、前者は中国やインドなどがロシア産原油の買い手となることで、原油や天然ガスの価格は落ち着いてきたので、影響は軽微と見られますが、中国の変調はドイツを直撃します。

EVを戦略分野と知る中国の政策で中国産EVは急成長を遂げましたが、人口が多く経済成長で資本蓄積が進んだ結果、参入企業多数で過当競争となり、政府の補助金支給が止まった途端に国内市場の販売不振となり、輸出シフトがかかった結果、中国産の安価なEVが欧州に大量に流入し、EVシフトを進める欧州メーカーを追い込んでいます。VWが国内工場閉鎖を発表して揉めてますが、それに留まらず世界の完成車メーカーを顧客とするボッシュやコンチネンタルといったメガサプライヤーも劣勢です、このままいくと産業空洞化に至る可能性もあります。

80年代のアメリカ、2000年以降の日本に続いて先進工業国の宿命かもしれません。他国に先駆けて工業化して安価で高品質な工業製品を世界に売って外需で経済を潤してきたものの、新興工業国の台頭で次第に優越的な地位を失う訳ですが、80年代のアメリカでは国内産業の空洞化で輸入が増える一方、主に産油国のオイルダラー還流で金融所得を増やしてきました。加えてレーガノミクスに代表される減税中心の財政出動もあって貿易と財政の双子の赤字で旺盛な国内消費を支えた訳で、供給能力を超えた消費が続いた訳です。

それが90年代になると冷戦終結によるグローバリゼーションによって中国を含む新興国の工業化への資金提供で金融所得を拡大する一方、パソコンとインターネットの融合によるIT部門で世界をリードした結果、貿易も財政も慢性赤字なのに経済成長を維持しました。日本の場合は97年の金融危機の影響で企業の投資が委縮した一方、金融自由化で海外投資に傾斜した結果、国内の産業空洞化を進めてしまい、投資不足の結果貿易収支は悪化し続け、貿易赤字も珍しくない状況になり、コロナとウクライナ紛争の影響もあって貿易赤字は慢性化します。加えて金融危機後の景気対策として財政出動が慢性化した結果、80年代のアメリカ同様双子の赤字状態になりました。

さらに元々赤字基調だったサービス収支にも変化があり、インバウンドで旅行収支が黒字化した一方、ライセンス料やクラウドサービスなどのデジタル収支赤字が帳消しにしています。インフレでも利上げできない金融政策の歪みもあって金融サービス収支も赤字ですから、トータルのサービス収支は赤字ですし、観光公害が言われ人手不足で受け入れ拡大も難しいことから―サービス収支が改善する見込みはありません。つまり今の日本は80年代のアメリカを凌ぐ三つ子の赤字を抱えている訳です。

そこへドイツが仲間入りですが、ドイツの事情はまた異なります。1つは共通通貨ユーロの存在がドイツを助けている点です。とりあえずユーロ圏内への輸出では優位に働きますから、そういうバッファのない日本よりは幾らかマイルドです。加えてIoTや様々なライセンス収入があります。円安でつくばとねり的ライトなリスク で指摘したように、新潟トランシスのGTシリーズや広電グリーンムーバMAXの駆動装置のライセンス料は支払われています。日本で海外からライセンス料が取れる技術は果たしてあるかどうか。これもプラスになるかどうか。

米テキサス新幹線、連邦政府が調査費 鉄道公社も協力 - 日本経済新聞
現地事業会社の資金調達が進杏遅れに遅れたテキサス新幹線にJR東海が日立などの日本企業と共同で出資し、バイデン政権のインフラ投資法事業として調査費がついたというニュースですが、大統領選次第でお蔵入りもあり得ますし、既存技術の積み重ねで且つアメリカの保安基準をロビー活動で変えさせるという形で資金を使っていて今更撤退できないってことでしょうけど、新幹線技術自体にはライセンス料をとれる要素は少なく、結局開業後の営業成績次第ですから、投資案件としては不確実です。JR東海は北東回廊リニアを狙ってリニア技術を無償提供していることもあり、北米事業が利益を生むかどうかは不確実です。国鉄時代のメーカーライセンス開示強制の影響もあり、日本の鉄道技術でライセンス料を稼ぐのは難しいのが現実です。ドル建て名目値とはいえ経済不振のドイツに抜かれるのも無理はないです。

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Saturday, October 05, 2024

地方は創生できない

いしばしをたたいてわたるライブ実演中。

金融政策、揺れる石破首相発言 「火消し」にも市場反応 - 日本経済新聞
総裁選後の為替変動や週明けの株価下落を一部で「石破ショック」と呼んでいるようですが、為替は逆に円安になり一時149円をつけましたし、株価もやや戻しました。乱高下しやすい市場環境のなせる業で、日本の首相選びが影響した訳ではないということは申し上げておきます。

市場の波乱要因としては寧ろイスラエルのヒズボラ掃討軍事行動やイランによる報復としてのミサイル攻撃など、中東情勢の悪化による地政学リスクでエネルギー価格が上昇したり、米港湾ストもあってサプライチェーンの攪乱といったリスクオフ要因に反応したものでしょうし、日本株に関しては一時的な円高の影響と新NISAで資金流入した結果の過剰流動性相場と見ればほぼ説明がつきます。ただインフレ基調なので株価はインフレをヘッジして値上がりするトレンドはありますから、時間はかかるかもしれませんがいずれ回復します。

それよりも本人の発言がブレブレで、修正発言に対しても市場が反応するということで、結局経済政策に大きな変更はないことが明らかになり、いずれ落ち着きでしょう。それよりも地方重視の目玉が地方創生交付金の倍増というのですから呆れます。結局中央の大手コンサルの助言で要らない事業がなされ、コンサルにさや抜きされただけ。地方に必要なのは自治に必要な財源と権限です。つまり地方創生ではなく地方分権こそが必要なんですが、与党国会議員が裏金で地方議員を操って与党の地位を維持する体制が崩れるからできない訳です。その結果が能登半島の惨状や再稼働で揺れる原発立地自治体です。これ返礼品競争でコンサルやまとめサイトにさや取りされたふるさと納税に似てません?企業版ふるさと納税ではこんなことまで起きてます。

福島県国見町にみる「企業版ふるさと納税」の課題 日経グローカル 地方自治を考える - 日本経済新聞
人口減少で救急搬送体制維持が困難な地方で、近隣自治体への救急車派遣事業を資金提供を約束したコンサルの提案で着手し、事業者の入札をしたけど入札は1件だけで、しかもコンサルの関連会社だったということが同町議会の100条委員会で明らかになりました。入札条件が多岐に亘り、事実上コンサル関連会社しか参加できないものだったことや、入札前に救急車の製造に着手されていた事実まで明らかになっています。事業はとん挫し、コンサルが提供した資金で関連会社に金を落とす形で自治愛を食い物にした悪質な事例です。

元を質せば現在日本郵政社長の増田達也氏が「消滅可能性自治体」をリストアップして自治体の危機案を煽ったことが始まりで、ふるさと農政制度も都市部に偏在する税源を地方へ振り向ける目的だった筈ですが、あっという間にコンサルの悪知恵で返礼品競争になり,返礼品手配やまとめサイト掲載などのパッケージ提供の見返りに多額の手数料がさや抜きされていて、実際には寄付額の半分も自治体に入らない現実があります。元々寄付税制で寄付額kから2,000円を引いた額の50%(国税40%地方税10%)が税額控除されていたので、その活用を告知するだけでよかった筈ですし、自治体クラウドファンディングとして国が無償掲載できるサイトを立ち上げるとかすればよかった筈です。ふるさと納税も地方創生も地方が民間に食い物にされる手垢のついた愚策です。話題を変えます。

鉄道輪軸データ改ざん、50事業者の車両で確認 国交省 - 日本経済新聞
JRの掟?の続報ですが、国交省の調査では鉄道事業者50事業者でデータ改ざんが確認され、全て総合車両製作所(JREC)か京王重機整備(以下京王重機)に輪軸組立を委託していたもので、結局データ改ざんはJTRECと京王重機で実施されていたということです。JTRECは東急車輛製造時代からだと思いますが、京王重機共々関東を中心に他社の輪軸組立を請負ってきた訳です。つまり輪軸組立という鉄道独自の保守作業ですが、規模の大きいJRはともかく各社が自前で設備と人員を保有するよりも、外注してアセットライトな経営で資本コストを下げたい誘因はある訳で、逆に受託側は規模の経済で効率性を高められますから、受託手数料を取っても委託側から見れば安上がりということになります。まるで国見町の救急車肺炎事業のような構図ですが、民間同士ならば契約に基づいて行うだけでそれ自体は問題にはなりません。

但しそもそも輪軸組立時のデータの上限値と下限値はJIS規格で定められているようですが、元々現場の経験や勘に支えられてきた職人芸的なスキルを継承する若手が減ってきている一方、報道で見る限り、調査した輪軸の中にはデータのないものも多数あり、つまりデータ保存が始まったのは結構最近のことで、おそらくベテラン職人は経験的な属人的スキルで対応してきたものの、若手の育成にはデータの活用が欠かせないとなり、データを取ってみると外れ値が意外と多いけど、ベテランの経験則でスルーしても安全と見ることができるグレーゾーンが存在しているということでしょう。その一方で収益化されることで歩留まりを高めないと利益が出ないという別の問題もある訳で、安全に問題ないレベルの外れ値は改ざんでクリアすることが行われるようになったと推測されます。とするとかなり根深い問題です。

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Saturday, September 28, 2024

いしばしをたたいてわたる

海外からは殆ど注目されない日本の選挙、しかも自民党総裁選という党内のリーダー選びですが、今回は珍しく注目されました。

自民党新総裁に石破茂氏 1回目と決選投票の結果詳報 自民党総裁選2024 投開票速報 - 日本経済新聞
1回目投票で高市氏トップが報じられると、アベノミクス継承で金融緩和と積極財政ということで為替が円安に振れた一方、決選投票で石破氏当選が報じられると円高に揺り戻すという形で市場が反応しました。日本の選挙ではほぼ見られなかったことですが、主に海外勢による経済政策変更の有無に反応したと見られております。加えて今回は米金融筋の資産運用立国政策が継承されるのかとか、岸田政権で進んだ日米同盟強化がどうなるかで米政府高官の発言があったりしています。正直言いますと高市氏にしろ石破氏にしろ先行き不透明という本音が漏れたということでしょう。

市場の反応に関しては新NISAの影響とみています。新NISAで日本の家計貯蓄2,000兆円の一部が株式市場に流れ込み、オールカントリー(略称オルカン)と呼ばれるパッシブ型株式投信に流入した結果、日米ともに株式市場が好調ながら、逆にパッシブ投信故に相場の僅かな変化を拾って過剰反応してしまうということですね。8月相場はそれですし、9月も変動幅こそ小さくなりましたが、上げ下げが続く落ち着かない相場になっています。加えて日米ともに国債金利が上昇傾向にあります。利上げした日本に留まらず積極財政の続くアメリカでも長期金利は上昇しており、市場金利は日米ともに上昇傾向ですから、一部の投資家は株式から債券に乗り換えるという動きもあり、こうした資金シフトも株価を不安定にします。

そして普通なら個人的には無視する政局ですが、流石に石破氏の当選は意外感があり、不人気な森首相の辞任を受けた後継に小泉純一郎氏が選ばれたことが言われてますが、今回その役割は小泉進次郎氏に託されていた筈で、元々が解散総選挙を睨んだポスター映えのする総裁を選びたかったけど、巧みにプロデュースされていながらボロを出して「進次郎じゃだめだ」となって保守層に人気のある高市氏が票を集めたけれど、流石に右派過ぎて推せないことと、裏金議員が推してるしインフレに苦しむ国民にもアベノミクスの副作用の認識が広がったといったことも影響したと見られます。何より有権者は変化を求めている訳で、高市氏では戦えないというのが本音でしょう。その意味ではロッキード事件で逮捕され失職した田中角栄氏の後継に三木武夫氏が指名されたことの方が類似性がtあるといえます。変化を見せる自民党流疑似政権交代の演出という目晦ましです。

例えば裏金議員の公認問題という踏み絵が待ち受けます。厳しくすれば党内から不満が出て三木おろしならぬ石破おろしが動きますし、甘くすれば野党から突っ込まれます。どっちに転んでも叩かれる訳です。加えてインフレ対策や能登半島豪雨の復旧などの課題が待ち受けますが、石破氏自身がインフレ対策で補正予算を組むと述べる一方、能登南東豪雨関連は予備費で対応としています。言い分としては補正予算を組むより素早く動けるそうですが、1月の能登半島地震の復旧が進まなかったのは、予備費なら閣議決定だけで支出を決められるとしておりますが、その結果個別に財務省の査定で削られて道路も堤防も仮復旧で震災瓦礫も片付かない状態で豪雨で二次被害を出している訳です。

ちなみに内閣の方針で予算の使い残しや税収上振れによる次年度繰越金の一部を防衛費に充てることが法律で定められ、25年度プライマリーバランス黒字化も堅持する方針が示されている以上、財務省が予備費の使い残しを増やそうとするのは当然のことですから財務省悪玉論は見当違いです。予算化することで各省庁の執行権限が確定する訳ですから、財源は予備費でも補正予算組んで動きやすくすることは重要です。被災者よりもアメリカ製の旧式兵器を買うことを優先した内閣の方針の犠牲ということです。一方で選挙を睨んだ経済政策は党内バランスでバラマキ色が強く実効性が乏しい傾向があります。こんなところに選挙管理内閣の限界がある訳です。という訳で川柳。

石破氏を叩いて渡る自民党
お粗末www。
東北新幹線はやぶさ・こまちの車両分離、金属片でスイッチ誤作動と推定 - 日本経済新聞
赤字3Kの掟?の東北新幹線列車分離事故の続報です。調査の結果こまち編成E3系の運転台にある連結器開放スイッチの接点部分に金属片が張り付いていて、回路短絡でスイッチが作動したらしいと推定います。スイッチは連結がうまくいかなかったときの為の開放スイッチで、通常は使わないバックアップシステムですが、他の編成も緊急点検した結果、同様の金属片が複数の編成から見つかったことも報告されてます。

メーカーのヒアリングで金属片は製造時の金属クズ由来ではないかと言われ、同システムの使用を停止してバックアップは手動対応とするということですが、バックアップシステムを含む自動化の難しさでもあります。人手不足で省力化は避けられませんが、非常時には人勧製術を取らざるを得ないとすると、トラブルの回復に時間がかかることを意味します。悩ましいところですが、フェイルセーフ原則順守の鉄道としては石橋を叩いて渡る対応をとらざるを得ないことは忘れてほしくないところです。

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Saturday, September 21, 2024

赤字3Kの掟?

JRの掟?の続きのニュース。

東北新幹線、走行中に連結外れる 国交省が原因究明指示 - 日本経済新聞
300km/h超で総胸中の列車分離という重大事故です。連結器には損傷がなく、システムj上5km/k以下でしか作動しない筈の連結器開放テコが動いたとしか考えられない事故です。新幹線でも通常の電連付き密着連結器が使用されていて、開放テコは運転席からの遠隔操作で自動化されてますが、走行中はロックされている訳で誤操作の可能性もほぼ無い訳ですが、1974年9月12日の新幹線品川事故で当時の品川運転所部機器部でATC建屋内に車両洗浄機用のトランスが置かれていて、電磁誘導で信号電流類似の異常電流が流れて信号が乱れたもので、言ってみれば偶然発生したノイズ電流がキャンセルされずにシステムが信号電流と認識した事故が思い出されます。

列車分離後は非常ブレーキで停止してけが人は出なかったのですが、JR東日本によると分離した編成の非常ブレーキの方が強く作動するようになっていて、300m離れて停止したということで、フェイルセーフが働いたとは言えます。災害の備えと憂いの東海道新幹線の保守車両事故のところで説明した自動ブレーキというのは、圧搾空気を封入した加圧管を編成全体に引き通し、列車分離すると圧力が下がってブレーキシリンダ―が動いて停止するという仕組みですが、電気指令式になっても同様の仕組みは組み込まれております。しかし高速走行中であり、誤作動の可能性があることが分かった訳ですから、原因究明が大事なのは言うまでもありません。そして輪軸組立でも新展開です。

京王電鉄系「京王重機整備」、車軸1786本の数値改ざん 京王・都営で使用 - 日本経済新聞
JR貨物で発覚した輪軸組立工程のデータ改ざん問題が私鉄にも飛び火してます。東京メトロで傘下企業の不正が発表され、東京都からも都営地下鉄で発表がありましたが、都営地下鉄の輪軸組立は京王電鉄系列の京王重機整備に委託していて、更に関東を中心に多くの中小私鉄からも委託されていて大ごとになってきています。そして京王重機は特装車の製造や戦車を含む自衛隊車両のメンテナンスなども請け負っており、東京特殊車体名義のオーダーメードバスではとバスなどの事業者に納入されております。

鉄道のメンテナンス部門は言うまでもなくコストセンターで、固定費の重い鉄道事業にとってはコスト削減が重要なのですが、規模の小さい中小私鉄にとっては重荷ですが、大手私鉄でも中規模の京王電鉄でもやはり重荷です。そこで他社のメンテナンスや車両改造、後進修理などを請負って規模を確保した上で委託事業者から受け取る委託料も入るという訳で、京王グループにとっては欠かせない事業ですが、それ故にコスト削減圧力も強かった可能性があります。加えて言えば輪軸組立の圧力データの関するルールも曖昧なところがあって、基準値を超えても超音波探傷などの非破壊検査で不具合は確認できるということでスルーされやすいというか、結果オーライで済ます傾向はあるかもしれません。民間事業では赤字は悪という意識は強いですし。

一方で公共部門でかつて赤字3Kと呼ばれた事業があります。国鉄、健保、国民年金の頭文字Kをとって呼ばれたものですが、国鉄はそれを理由に分割民営化されてJRになり、健保、正確には中小零細企業対象の政府管掌健保ですが、47都道府県の広域連合としての健康保険協会を立ち上げて保険者が政府から協会へシフトして、謂わば体よく地方に押し付け、国民年金は今も制度としては存続してますが、1985年の年金改革で基礎年金が制度化され、財政規模が大きく余裕のある厚生年金からの会計間扶助で悪名高い第3号被保険者制度が作られ、今に至るもそのままです。以後5年ごとの財政検証が行われ、2004年には100年安心プランが打ち出され、現在に至ります。今年も財政検証が行われましたが、詳細は別の機会に取り上げます。

国鉄の赤字は赤字ローカル線のせいだということで、国鉄時代に赤字83線区廃止が打ち出され実行されたものの国鉄の赤字は解消するどころか累積し、次いで特定地方交通線切り離しでバス転換、私鉄、三セク鉄道引き受けなどが進められ、民営化後も続きました。そしてJR北海道と四国の慢性的赤字やJR東海を除くJR旅客会社の線区別営業係数公表などで地方ローカル線の存続問題が出てきていますが、厄介なのは特に上場3社の場合は全行黒字故に公的支援を受けられないことです。地方中小私鉄や地法交通線転換三セクは公的補助を受けやすいし、JR北海道や四国も鉄道・運輸機構への預託による利子補給や基盤整備補助などで事実上の公的補助を受けています。それでも出口の見えない厳しい状況は続きます。

JR北海道の4〜6月、札幌圏が黒字転換 新幹線は赤字縮小 - 日本経済新聞
唯一黒字転換の可能性のある札幌圏の黒字転換と北海道新幹線を含む赤字縮小で全体的には収支が改善したものの、札幌圏の内部補助で全体を支えることは不可能です。北海道新幹線の札幌延伸も遅れているし収支完全効果もどの程度か?並行在来線の切り離しで改善はするでしょうけど、鉄道ネットワークを維持するには至らないでしょう。加えて老朽車両取り換えで新車を多数投入してますが、その減価償却費が重荷となります。公共部門の赤字を理由とした民営化の限界は確実に見えています。

一方でかつての食糧管理制度の赤字は問題視されることなく、減反に伴う添削補助金や資料米その他の食用米との差額補助はされてコメ不足でも備蓄米は出さずと、国民生活をないがしろにしながら国民生活を支える公的な赤字は許さない、そんな政府は変えたいですね。

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