JR

Sunday, November 08, 2009

意外に可能な温暖化ガス25%削減

三島由紀夫の「美しい星」という作品がありまして、テーマはズバリ「宇宙人」。両親と2人兄妹でそれぞれ水星人、金星人、火星人、木製人を名乗る不思議な一家の話です。まるで鳩山由紀夫、幸夫妻の出現を予想していたかのような内容は笑えます。三島作品で笑えること自体稀有なことですが^_^;、市谷での割腹自殺で狂気の作家と見られがちな三島由紀夫が、実は村上春樹に通底するポストモダンな感性の持ち主であることもわかります。早く生まれすぎて周囲に理解されなかったのかもしれません。

んで鳩山首相の「宇宙人」ぶりは、13日に予定されるオバマ大統領来日時の首脳会談で扱いが注目された普天間移設問題でも如何なく発揮されてます。既に10年以上店ざらしされている問題に、拙速に答を出すよりも、文字通り対等な日米関係を構築する意味で、日本の占領民意識とアメリカの日米安保タダ乗り論を乗り越えるテコにしようとしているようです。つまり同盟強化が狙いであって、優男の風貌でなかなか肝が据わってます。

実は日本の政権交代で一番慌てたのが中国でして、元々78年に鄧小平が改革開放路線へ転換したときに、手本としたのは、自民党長期政権下で高度経済成長を実現した日本です。つまり共産党1党独裁体制を維持しつつの経済成長委は可能という考え方でした。その意味で昨年の北京五輪や2010年の上海万博は、正しく日本の60年代をトレースする意味があるわけですし、欧米からの民主化圧力も、「欧米とアジアは違う、日本を見よ」という理屈になるわけです。

その日本で政権交代が起こり、民主政治の現実が示されたわけですから、予想外だったわけです。中国流解釈では、日米同盟は「ビンの蓋」、戦前の軍国主義へ回帰しないための安全弁として安心感をもたらすものと見られております。温暖化防止でも、中国が経済発展と共に排出量を増大させて国際的な風圧を受ける流れに対して、日本の前政権の消極姿勢は良い風除けでした。それが鳩山首相の温暖化ガス排出25%削減国連演説で覆されたわけですから、中国にとっては痛し痒しです。

それでいて靖国参拝否定や中国といの一番の首脳会談をセットするなど、親中的な対応を取られているので、公に非難することもままならずです。日本の意欲的な目標の表明は、米オバマ政権でも反対派の説得材料に使われているようですから、アメリカの対応如何では中国のCOP15の枠組み参加もあり得ます。ま、実際はそこまで楽観はできないようですが。

で、現時点で公式の数値が見当たらないのですが、2008年の日本のCO2排出量は、かなり減少したらしいのです。なぜならば、リーマンショックで生産が減少したからで、実際には10-12月期の減少によるわけですが、産業部門で年率換算では90年比20%超という水準に達するようです。つまり財界が主張する「乾いた雑巾」論とは違って、元々海外バブルで高止まりしていた生産水準が元に戻っただけで、25%削減の実現可能性は実は高いということを意味します。

ここで重要なのは、世界規模の経済変動でして、円安と低金利でジャパン老いるマネーを海外投資に誘導し、海外バブルに乗じてモノを売ることは持続可能ではないということです。つまり産業部門はリーマン後の生産水準で利益が出るように、過剰設備の償却と人員整理を行う必要があるわけです。その意味で生産を底上げするエコカー減税や補助金、家電のエコポイントなどの政策は、過剰の解消を遅らせるという意味で不適切な政策です。

温暖化防止に逆行するという意味で、高速道路無料化が遡上に上ることが多いですが、渋滞対策と捉えれば、実は全く異なった意味があります。道路は典型的な公共財で、車が1台増えても、他の車の利用を排除しない性質があります。つまり台数が増えて渋滞するレベルまでは、道路の社会的コストは発生しないわけです(保守費などの軽微な負担は除く)。つまり道路の通行料を課金する場合、渋滞が発生するレベルまでは負担を下げられるということです。加えて渋滞対策としての道路整備費用は、渋滞区間の課金で得られる範囲内に留めることで、社会的コストの最小化が図られることになり、民主党政権が掲げる高速道路無料化は、無駄な道路整備を制限する効果が期待できるわけです。

さらに加えて、特に首都圏などの大都市圏での道路整備は、費用の多くが用地買収費に費やされ、加えて環境アセスメント対策として防音壁や環境側道の整備を求められることで更に負担が増えることになり、必要な道路の整備が進まないという現実もあるわけですが、それで破綻しないのは、鉄道による輸送需要の集約が起きている結果と見ることができます。とすると渋滞対策としての鉄道整備という政策スタンスの可能性も考えられるわけです。

とはいえ大都市部での鉄道整備も用地買収と環境アセスメントの壁は存在するわけで、実際首都圏の通勤ラッシュの解消が進まないことに現れております。加えて国鉄民営化によって鉄道が民間事業者に委ねられている点が、問題を難しくします。

JR東日本ではインフラ整備は最小限として車両の更新と湘南新宿ラインに代表される新サービスの開発で、コストをかけずに需要を喚起しつつ、東北縦貫線のようにインフラはボトルネック部分への集中投資で対応してますが、同時に運賃の将来に亘る据え置きを宣言しており、現行の運賃水準で可能な範囲での混雑緩和しか期待できないわけです。この点は私鉄各社でも同様ですが、特に首都圏のように稠密なネットワークが形成されていると、ある部分に集中投資してボトルネックを解消しても、そのことが需要のシフトとなり結果的に混雑を助長してしまうという悩ましい結果となります。

複々線化に後れを取った小田急線が忌避され、輸送改善著しい田園都市線が首都圏最混雑路線というありがたくないタイトルを得たり、横浜市営地下鉄グリーンラインの開業と実質複々線となる目黒線の整備で、東横線の混雑が助長されたりしております。東急では本業重視で積極的なインフラ整備を行った結果、改善どころか悪化してしまったわけですから、混雑解消が如何に難しいかということですね。ちなみに東急は本業だけ見れば増収増益ですが、度重なる設備投資と関連会社のリストラで疲弊し、自己資本比率を悪化させてます。JALとJASの統合も東急の関連会社リストラ策の中での出来事で、今でも東急はJALの筆頭株主ですから、JAL問題の後ろには東急の支援も隠れているわけです。

話がわき道にそれましたが、設備投資して輸送改善しても、混雑解消に至らないのは、全体として鉄道の過去の投資不足に起因するもので、高度経済成長期のインフレ経済で、鉄道運賃が公共料金としてスケープゴートとされた歴史に由来します。それでも人口が増加している間は、ある程度の輸送力増強投資が行われたものの、人口が減少に転じた現在、事業者の自発的な投資上積みは見込めず、公共部門の関与が必要となります。ただし財政が逼迫する中、それも十分な水準に達する保証はありません。

あとはタブー視されている運賃引き上げぐらいしか手段がないのですが、これとて乗客がマイカーへ流れては元も子もないわけですから、単純な値上げは難しいわけで、あとはJR中電区間のグリーン車や通勤ライナー、私鉄の一部にもある通勤特急などで着席サービスを売りに増収をはかり、それを原資にサービスの底上げを図るぐらいしか方法がありません。それ以前に首都圏をはじめとする大都市圏が今後高齢化が進むことを勘案すると、、通勤需要そのものが減少する可能性もあり、政策的な意思決定の難しさがあります。

もう一方で過疎地の問題も考える必要があります。特に沿線に大都市圏を持たないJR四国では、高速道路無料化の影響を強く受けることになりますので、北海道や九州共々何らかの対策が必要でしょう。とはいえサイドバーのAMAZON鉄道書欄でご紹介した時刻表に見るスイスの鉄道―こんなに違う日本とスイス (交通新聞社新書) (新書) に見るスイスの鉄道事情を見れば、それでもまだまだ打つ手はあると映ります。なにしろ最大の都市チューリッヒの人口規模は36万人程度で、四国の各県庁所在都市と同程度で、比べ物にならないほどのサービスの充実ぶりですから。ただし運賃水準は日本と比べてかなり高いですが。

一つの方法論として、噂されるJR九州の株式上場でネックとなりそうな経営安定基金を本体から切り離し、自治体の資金拠出を仰ぎながら地方版鉄道建設公団に改組して上下分離でインフラ整備を行うことは考えられます。三島会社のうちJR九州以外の2社は、青函トンネルと瀬戸大橋開通でブームとなった88年をピークに輸送量を減らしており、その間に整備された高速道路の影響は明らかです。インフラ投資を促進して競争力を高めることが必要です。

あと貨物に関しては、温暖化対策として国の関与を高めることが考えられます。民営化時の基本ルールであるアボイダブルコスト(機会費用)負担方式の線路使用料をも下回る線路使用料の支払い能力しかなく、並行在来線分離三セクへは国の差額支援を得て高額な使用料を支払っているわけですが、JR旅客会社に対しても、少なくとも列車運行で発生する費用+1%のインセンティブ相当の線路使用料を支払わないと、例えばJR東海による貨物への嫌がらせのようなことを防ぐことはできません。逆に国が関与する以上、あからさまな運行妨害には罰則を設けることも考えられます。

ここまでのパッケージを示せれば、高速道路無料化は温暖化防止に反するという批判は成り立たなくなります。加えて鉄道の競争力強化のためのインフラ整備とメンテで、持続的に雇用を生み出すならば、従来のように輸出産業に雇用を依存しない内需型経済への移行とも整合的です。新政権の交通政策がどうなるか、見ていきたいと思います。鉄道回帰は世界の趨勢でもありますし。

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Sunday, November 01, 2009

JAL問題が影を落とすユニバーサルサービスの新作法

この1週間いろいろあって、記事にまとめようとしてもまとまらない^_^;。特にJAL問題で大きな動きがありましたが、やはり政権の命運を左右する大問題という直感は当たったようです。とはいえ問題はより深刻になったんですが-_-;。

そのJAL問題からメディアチェックです。

国交相、日航再生に支援機構の活用表明 再建案公表せず
日航、支援機構にグループの再生支援を依頼
何かよく意味のわからない報道と感じられますが、要は旧産業再生機構OB等の作業部会(タスクフォース)の再建案が断念され、発足したばかりの企業再生支援機構を活用することになったということです。作業部会案はいわゆる事業再生ADRと呼ばれる私的整理の手法で、銀行に条件付で債権放棄を求めるもので、見返りに人員整理や資産売却などのリストラを迫り、企業自身の手で自主再建するもので、法的整理の1歩手前の私的整理と言われます。

とはいえ当初から銀行団は再建案に否定的で、交渉は難航しました。債権放棄して支援しても、収益モデルが不透明で、今までも再三裏切られただけに、すんなりと呑めないということですが、さりとて会社更生手続きなど法的整理に進めば、既に多額の貸し込みをしている銀行団も返り血を浴びるということで、銀行サイドからは早い段階で政府が関与して公的資金による救済を求めていたもようです。

しからばこの1月の作業部会の活動は無意味だったのかといえば、さにあらず、このやり取りの過程でJALが少なくとも2,500億円の債務超過に陥っていたことが明らかになっております。つまり対策を怠れば、97年11月の北海道拓殖銀行のように突然死していた可能性もあります。その意味では作業部会はギリギリのところでJALを救ったことになります。

とはいうものの、支援機構案件となったことで、作業部会が1月かけて実施した資産査定は支援機構の手で再度実施されるわけで、スピード感が問われる中での足踏みはじれったいところですね。加えて元々地方版産業再生機構として設立された企業再生支援機構は、元々地方の埋もれた優良企業の支援を通じ、融資銀行の資産の健全化を目的とするもので、わざわざ第三セクターを対象から外すことで当時野党だった民主党も賛成したものだけに、JALの救済に支援機構を用いることには、正直違和感を禁じ得ません。

それと気になるのが銀行団の頑なな態度ですが、実はリーマンショック以後の銀行の不良債権比率がジワジワ上昇していて、竹中プラン実行直前の2001年ごろの状況に近づいてきているのです。JAL再建案に厳しい態度を示した銀行に、実は余裕がなくなってきている状況が透けて見えます。となれば自主再建に厳しい態度の一方、法的整理には慎重姿勢だった銀行の態度にも説明が付きます。JALに貸し込んだ債権の行内格付けが下がれば、銀行自身が引当金を積み増さなければならないわけで、それだけ銀行の融資余力が下がり、貸し渋り、貸し剥がしが横行しかねないわけで、JAL再建に政府が強く関与せざるを得ないということになったと読み解くことができます。実はJAL問題の裏に金融危機の芽が隠れていたということです。

この問題はそもそも邦銀の資本政策のまずさが根底にありまして、邦銀が世界へ業容を拡大した80年代、欧米銀に比べて預金量は突出しながら自己資本が薄く、不健全なハイレバレッジ融資と見なされたことが、バーゼル委員会による国際決済銀行(BIS)規制につながったのですが、日本の銀行関係者は欧米による日本封じ込めと認識し、勝手なルールを押し付けられて融資を減らさざるを得なくなった「マネー敗戦」論を振りかざして居直っております。

そもそも銀行にとって預金は負債に当たるわけですから、資本に対して過大な預金を保有していたことが、バブル期の不動産融資などへの貸し出し競争を誘発し、海外へも資金が漏出して米ロックフェラーセンタービル買収や英仏ユーロトンネルプロジェクトへの融資とその焦げ付きなど、痛い目に遭っているはずなのに、銀行本来の融資業務は、主に日銀の窓口規制に頼って融資審査などの本来の情報創造を通じた信用創造能力を持たないままに肥大化した邦銀では、高収益のビジネスモデルを開発して、それが資本市場で評価されて株主資本を強化するということを怠ってきました。それによって預金の一部が株式市場を通じて銀行の自己資本強化につながれば、無理な貸し出し競争でバブルを膨らませることもなかったでしょう。つまり「貯蓄から投資へ」の金融改革に失敗したわけで、後付けで郵貯マネーを政治的に弄るのはまやかしです。

JAL自身の経営問題も複雑ですが、国の航空政策の犠牲となった側面も見逃せません。前述の空港特会による過剰な空港整備に留まらず、整備費用捻出のために着陸料も割高だし、路線数が多ければ需要が分散しますから、個別路線の採算性も下がるなど、何一つ良いことはないのですが、地方のおねだりを止められなかった国の対応に問題がありました。

加えて96年の需給調整規制撤廃で、航空事業への新規参入が可能になったものの、結局採算性の高い一部路線での競争激化にしかならず、JAL,ANA,JASの当時の大手3社による過剰防衛と国の羽田発着枠の硬直的な配分で新規参入社は育たず、90年代に欧米で産声を上げ、アジアにも起業熱をもたらしたローコストキャリア(LCC)と呼ばれる格安航空会社も日本には事実上存在しません。元々大都市の大空港が大手エアラインに押さえられ、着陸料の割安な近郊のサブ空港同士を point to point で結ぶことで低価格を実現していたLCCですが、9.11で大空港がセキュリティチェック強化で機能を落とし、テロの恐怖で航空利用が敬遠されたことで hub and spork 型の大量輸送に特化された大手エアラインが軒並み業績を落とした中で、運行を堅持したLCCが存在感を増し、今や業界地図を塗り替える勢いです。羽田のハブ化なんぞで大騒ぎしている日本の航空行政の周回遅れぶりはお笑いの域です。

またJALを破綻させた場合に、それに代わって役割を引き継ぐ存在がないということでもあります。例えばJALを破綻させてANAに路線網を引き継がせるのは不可能です。というのもANA自身がリーマンショックと新型インフルの影響で苦しんでいますから。あとJR東日本による救済案も一部で言われますが、絶対に有り得ません。というのもJR東日本自身、主に北海道地区の余剰人員受け入れで不当労働行為の汚名を着ながら、小売などの関連事業を育てて軌道に乗せて余剰人員を吸収した経緯があり、JALの複雑な労使関係が修復不能なことを見抜いております。余談ですがJRグループ内で本業以外の関連事業育成で実績を上げているのは東日本と九州の2社で、東海や西日本は本業依存度が高く、リーマンショックや新型インフルの影響も受けやすいわけです。とはいえ九州は経営安定基金でどうにか最終黒字を計上するレベルで、一部で言われる九州新幹線博多開業後に株式上場はほぼ不可能です。旧国鉄債務の一部として国が負担する経営安定基金が株主のものとなるというのは、誰がどう見ても具合が悪いですしね。

思えば2002年のJASとの経営統合は早まったのかもしれません。というよりも、その後のJALは、社内融和を優先し統合効果を出すためのリストラを先送りした結果、赤字路線を多数抱え、旧い非効率な機体を多数保有し、関連事業も含めて多数の重複分野を抱え込み、労組も分立して労使協議が成り立たない機能不全に至ります。このあたりはJALの経営の失敗であると共に、公正取引委員会の審査の甘さも指摘できます。結局形ばかりの規制緩和で、実質的な競争政策は採られず、JALの虚弱体質が温存されたわけです。そしてそんな内情は承知していたはずの銀行団が資金を貸し込んだわけですから、銀行による経営のモニタリングが機能せず、上場企業でもありますから、株式市場での健全な相場形成と株主の圧力による経営の監視も機能しなかったわけで、実は資本主義国としての日本の質が問われている問題でもあります。

前原国交相は地方路線について、何らかの形で支援を表明しました。

日航再建、地方路線の支援検討 国交相「飛ばない空港作らず」
国の直接関与は旧国鉄赤字ローカル線と同じ問題を抱えることになりますので、期限を設け、おそらく自治体の関与を引き出す方向でしょう。ただし空港特会の見直しに言及し、少なくとも整備費用は切り離すということですから、着陸料の値下げは期待して良いかもしれません。

赤字ローカル線といえば、JR東海が名松線の家城―伊勢奥津間の廃止を発表しました。

名松線、一部廃止の意向 JR東海、バスに切り替え
台風18号の被害で土砂流入や盛土流出など39ヵ所あった被害箇所のうち38ヵ所が家城―伊勢奥津間に集中したことから、今回あえて復旧工事を行わず、バス輸送に切り替えようということです。台風被害で廃止といえば高千穂鉄道を連想しますが、JR引継ぎ路線ではJR西日本の越美北線が長期運休を乗り越えて復旧した例はあるものの、被災以前から地元自治体による定期券購入補助が行われていたことが復旧の判断につながったのでしょうから、自治体の対応は重要です。

その意味では名松線の場合、そもそも存続区間は近傍を近鉄線が並行し、通学定期の割引率による逆転現象がなければおそらく利用者は皆無という路線立地ですから、近鉄線の駅に接着するバス網を整備していっそ全線廃止の選択も有り得ましたが、地元との軋轢を回避したいのでしょう。無人車両走行の芽は残ります(苦笑)。

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Sunday, October 04, 2009

尼崎事故調漏洩事件に見る国鉄一家の堕落

ニュースとしては先週の話ですが、メディアとは違った視点で取り上げるという当ブログのコンセプトに従って取り上げます。まずはこの記事から。

尼崎脱線事故調査委、元委員が報告書漏洩 JR西前社長が依頼
JR西日本の歴代トップの責任に言及し、企業体質に問題があったことを認めた山崎前社長ですが、一気に男を下げました。

鉄道事業本部長時代に安全対策を進言し、疎まれて関連会社へ出向させられていた山崎前社長には同情する声もあり、被害者からも評価の声が聞こえただけに、信頼を裏切ったことは重大です。加えて「新型ATSが設置されていれば事故は防げた」とする記述を調査報告書から削除することを求め、それを受けて山口元委員は事故調で発議して否決されたという一連は、事故調の第三者機関としての意味を無力化させるものでもあり、大問題です。

と同時にこの新型ATS問題は神戸地裁に起訴された山崎前社長の公訴事由にもなっているわけですから、それを意識した行動だとすると、更に問題が膨らみます。少なくとも審理以前に心証真っ黒となり、結果墓穴を掘ったことになるかもしれません。

そこまでのことではないとしても、山崎前社は経営者として事故を契機にATS設置基準制定などの規制強化で資金負担が増えることを心配したのかもしれません。鉄道事業の特殊性を考えると無理もないところがあります。というのも、今回の漏洩事件でも当事者は国鉄OBで先輩後輩関係という事情があり、おそらく山崎前社長も山口元委員も当事者意識が希薄だった可能性があります。

以前の記事で国交省の前身の1つである運輸省の問題を取り上げましたが、現業機関としての国鉄が公社として分離され、鉄道事業の国家独占の権限が現業機関である国鉄に帰属した結果、監督官庁であるはずの運輸省は国鉄に対して無力でした。そもそも国鉄による新線建設や改良事業は国鉄自身の意思決定で為され、民間事業者のような免許事業ではなかったんですが、例えばそのことが東海道新幹線が構想段階から反対の大合唱を受けながら実現したこととか、国より格下の東京都による都市計画に定義されない総武快速線の建設や、ローカル線建設に不熱心な国鉄に代わって建設を請負う鉄道建設公団の設立などは、この辺のねじれ現象の結果です。

で、技術面でも鉄道はブラックボックスに喩えられることが多いのですが、日本の場合技術面での国鉄の情報独占といいますか、位置づけはきわめて重かったのです。そのために日本の鉄道車両メーカーは国鉄の下請けを脱し切れず、大手私鉄も部分的ないいとこ取りで「うちのは国鉄より高性能」と言っていたような状況です。気候変動問題で世界で鉄道が見直されるトレンドに乗り切れない原因でもあります。この辺はガラパゴス化と言った方がわかりやすいかも。

その結果鉄道技術は旧国鉄と後身のJR各社が握り、監督官庁である旧運輸省には技術に関する目利きが存在しません。ゆえに福知山線事故のような重大事故が起きると、パニクって規制強化に走るのです。福知山線事故の場合も同様で、当時の北側国交相のコワモテぶりが思い起こされます。そういう意味で山崎前社長が、国交省の規制に影響を及ぼすこと確実な事故調報告の内容を早く知り、できれば規制強化を緩和する方向へ記述を変えて欲しいと考えても無理もないところです。

加えて事故調委員メンバーとして、結局国鉄OBを起用するしかない現状もまた避けられなかったでしょうし、OB同士の気安さが漏洩事件を生んだとすれば、つくづく旧国鉄という存在は罪作りです。明治以来のアンシャンレジュームは一朝一夕には解消しないんですね。

それとそもそも事故調(航空・鉄道事故調査委員会→現運輸安全委員会)の鉄道部会設置が、91年の信楽高原鉄道事故の遺族などでつくる鉄道安全推進会議(TASK)が93年に国に働きかけて発足したもので、信楽の事故でも不起訴ではあったものの、信楽高原鉄道を被告とする公判の審理過程で、滋賀県警が突き止めた亀山CTCセンターの方向優先テコの無届設置と事故後の撤去及び関連マニュアル破棄という重大事実が発覚したことが、専門の第三者機関設置の必要性を認識させたわけで、やはりJR西日本は本来当事者であったわけです。今回の漏洩事件は将にJR西日本の救い難い企業体質をを浮き彫りにしますね。

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Friday, September 25, 2009

高速道1,000円渋滞で鉄道回帰

政権交代が実現し、鳩山首相の外交デビューも順調です。気候変動、核廃絶など、民主党の主張に近い関心が国際社会で広がっていて、丁度国連首脳外交やピッツバーグのG20サミットなどの外交日程が政権交代をアピールするチャンスとなったなど、ラッキーな面はありますが、期待の持てる十分な成果が見られます。

民主党が掲げる内需拡大策の目玉は、何といっても子ども手当と高速道路無料化ですが、まだまだその意義に対する国民的理解は不十分です。とはいえマニフェストに明記され、それを国民が信認して政権を与えた以上、民主党政権はこれを実現する責任があります。実現にあたっては当然生煮えな部分を国会で野党に追及されるわけですから、実現可能性を高めるための修正協議もする必要がありますが、一方で安易な妥協は308議席の与党議員の追求にさらされるわけです。今さらながらマニフェストの重みを思い知らされます。

というわけで興味深いニュースです。

秋の連休、鉄道好調 東海道新幹線、GWより8%増
秋の5連休で渋滞予想から利用者が鉄道へ回帰しているというのです。1,000円高速の影響で減少した利用が戻っただけといえばそれまでですし、JR各社が対抗策で割引キップを出した効果と考えると、ひょっとしたら売上は戻っていない可能性はありますが。

あと航空も同様に利用者が戻っております。春のGWではあの新型インフルエンザ騒動が公共交通利用忌避を招いた部分もありますが、むしろ今、流行が本格化している中で利用が戻っているのですから、この影響は軽微なのかもしれませんが、断定は避けておきます。

一方でオンライン版の記事では省略されてますが、各道路会社によれば高速道路利用はGW時より4%減ということで、明らかに渋滞が忌避されたことが読み取れます。しかし納得がいかない部分もあります。というのは渋滞の発生はむしろ増えた点です。しかも50km超の渋滞が複数個所で発生するなど、見かけ上渋滞はひどくなっているのですが、これは結局利用時間が集中したことの影響のようで、ちょっと時間をずらせば渋滞を回避できたケースも多いようです。ということで、高速道のETC割引による内需喚起という前政権の置き土産で、貴重な社会実験がなされたということになります。

渋滞は利用の集中で起きるわけですから、週末限定のETC割引は、そもそも渋滞を誘発する要因を内包しているわけです。ですから、GWや夏休みの高速道の渋滞を理由に、民主党の言う高速道無料化でもっとひどいことになるということも言われたのですが、その論拠は怪しいわけです。むしろ曜日限定がなくなれば、利用の分散で渋滞は減るという議論も可能です。

あと高速道路無料化は自動車利用を助長しCO2排出を増やすという議論があり、国交省でも他の交通機関からの利用の移転でCO23割増との試算を明らかにしてますが、一方で同じ国交省で並行道路の渋滞緩和でCO2削減効果は4割弱になるという試算もあります。これは計算の前提が違うために起きたミステリーですが、前者は交通機関の選択のみに絞った試算で、後者は渋滞緩和に絞った試算で、他の条件は考慮しておりませんから、実際は両方の効果が相殺されて中立に近い結果となる可能性が高いといえます。

というわけで、マニフェストに明記されていないJAL問題と違って、マニフェストに謳い政権を得た以上、高速道路無料化はやらなければならないことであり、JRや高速バス事業者などから否定的コメントが相次ぐ中、あえて申しあげますが、この程度の競争条件の変化は、経営の責任で対応すべきです。また変化はチャンスでもあるわけで、変化にいち早く対応した者が、多くの果実を得るのがビジネスの世界の鉄則です。各社の奮起を期待します。

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Tuesday, September 22, 2009

グッドJALバッドJAL

やー、前の記事で指摘したように、ホントにJAL問題は新政権の命運を左右する問題になりそうです。

日航の新旧分離要請へ、政投銀など主力行 実質債務超過の恐れ
ソースは明かされておりませんが、おそらく日経の独自取材によるスクープでしょう。元々9月末期限の再建策を見て対応を決めるとしていた日本政策投資銀行他の金融機関ですが、とても追加出資は無理ということで動いたのでしょう。加えて政権交代で、与党族議員などの圧力を受けることなく抜本改革が可能になったという見方もあるのでしょう。前原国交相が24日にJALや金融機関などからヒアリングを予定しているタイミングですから、なんかいきなり生臭い話に発展した感があります。

処理のスキームは米GM支援に似たグッドカンパニーとバッドカンパニーに分離し、前者へ国が支援し、後者は時間をかけて清算処理するというものですが、日本国内の事例としては、国鉄改革で旧国鉄債務を一部を除いて清算事業団によって処理することで、新生JRを身軽な状態で再スタートさせたことに近いといえます。あるいは98年の金融国会で、破綻が心配されていた日本長期信用銀行、日本債権信用銀行の救済策として民主党案を自民政権に丸呑みさせた金融再生法も同様の処理となります。

当時から民主党の政策立案能力に注目していた私としては、時を経て民主党政権が誕生したタイミングでJAL問題に遭遇することの歴史の皮肉を思わざるを得ません。いわゆる民主党の流儀に整合的な処理案であり、金融機関にそれなりの知恵者がいたのかもしれません。とはいえ簡単に進む話でもありません。

というのは、このために特別法を制定する必要があること、当然予算措置も伴いますから、現在政権で進められている補正予算の執行停止を含む見直しで捻出した財源の一部を回さざるを得ないこともあり、政権内でも揉める可能性があります。加えて地方路線の整理を伴いますから、与党議員の造反も予想され、来月の臨時国会は早速大荒れとなりそうです。

結局JAL問題は鳩山首相の帰国を待って判断を仰ぐ話となり、タイムリミットも迫っているだけに、いきなりリーダーシップを試される展開となります。処理を誤れば本当に鳩山新政権が空中分解しかねない話ですし、また外国エアとの出資交渉も事実上ストップせざるを得ません。

2年前のおJALの記事で指摘したとおり、87年に株式公開し、政府全額出資の特殊会社から一般の民間企業になったJALは、同年実施された国鉄改革によるJR発足と関連し、特殊会社でスタートしたJR各社の先行事例としての意味合いもあったわけで、その後小泉構造改革で実施された道路公団民営化、郵政民営化、政府系金融機関改革など一連の民営化策の着地点となるはずだったのですが、その民営化会社が破綻の危機に瀕した場合の先行事例となってしまったわけで、皮肉な話です。同時に郵政見直しを掲げる新政権だけに、おかしな処理をすれば郵政見直しの議論も歪めてしまう可能性があり、本当に取扱い注意の案件になってしまいました。どうなるでしょうか。

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Monday, September 21, 2009

ジャパニーズGM問題、JAL問題を考える

このところJALを巡る報道が数多く露出しております。正直なところ前途不透明、五里霧中といえるこの問題ですが、鳩山新政権の命運を握るほどのインパクトがある問題として考える必要があります。

当ブログでは2年前に既にJAL問題を取り上げておりますが、正直当時からの迷走が未だに続いていることに驚きを禁じえません。今まで一体何をしてきたのでしょうか。

一応さまざまな努力の跡は見られるものの、航空を巡るグローバルな変化に追いつけず、取り残されてしまったさまは、米GMの問題と通底するものがあります。時代はオープンスカイ政策による自由競争の進捗があり、その尖兵だったアメリカでは、既にナショナル・フラッグ・キャリアのパン・アメリカン航空が破綻、時を経て元々国策キャリアの性格が強かったノースウエスト航空も、業界大手のデルタ航空に吸収されて現存しません。欧州でもアリタリアやサベナ・ベルギーなど国策キャリアの経営不振で国境を越えた再編が進む状況で、国策で政府出資の特殊会社としてスタートした日本航空がいかに難しい局面を迎えているかがわかります。

加えて大量輸送を前提に拠点となるハブ空港へ路線を集めて大型機でハブ同士を結ぶ大量輸送前提のビジネスモデルが、米サウスウエストや英バージン、アイルランドのライアン航空など、燃費の良い小型機で着陸料の安い大都市外縁部の空港同士を直行便で結ぶいわゆるローコストキャリアの台頭が、世界中で競争激化をもたらし、かつて二国間協定として航空協定を締結し、運行航空会社を指名する究極の独占市場が消滅したわけですから、今までのやり方を踏襲する限り、危機からの脱却はできない状況です。

その中で世界のエアラインは様変わりしました。歴史を刻んだ大手キャリアは、アライアンスに活路を見い出す方向性を打ち出しました。いわゆるコードシェアや共同運航便の活用で機材と人員の運用を合理化しながら路線網を維持するビジネスモデルへと転換し、特に国内のライバルである全日空では、パンナム破綻後に路線の多くを引き継いだ当時の米最大手ユナイテッドや独ルフトハンザなどをメンバーとするスターアライアンスへの参加をいち早く実行し、自らはその東アジア支部として主に日本対アジアの近距離国際線を充実させることで、国際線航空として後発の不利を逆手に取り、選択と集中を実現しています。その過程で全日空ホテルチェーンの売却など、非中核事業からの撤退も行っており、また羽田第四滑走路完成による24時間化を睨んで整備部門を羽田に集中させ、成田を拠点とするJALを出し抜こうという戦略です。リスクはありますが先を見た経営ができているということです。

それに比べるとJALの対応の周回遅れぶりは目立ちます。ANAのスターアライアンス参加時点から取り沙汰されていたワンワールド(アメリカン、BAなどが参加)への参加を逡巡し、自前運行にこだわり続けて高コスト体質を温存し、経営が怪しくなってから参加して、むしろ顰蹙を買ってしまいました。実は今回のJAL報道の増加のきっかけとなったデルタ航空のアライアンスを超えた出資打診も、ワンワールド内のそんな不協和音に遠因があるかもしれません。

というわけで今回の報道合戦による露出増加の始まりとして、米デルタ航空の出資打診があったわけです。

米デルタ、日航に出資打診 300億~500億円、交渉は流動的
デルタはスカイチームに所属しており、当然出資となればJALのワンワールドからの移行が前提となるわけです。仮に実現すれば、ネットワークの規模で最大のスターアライアンスとスカイチームは肩を並べる存在になり、JALが抜けたワンワールドは弱者連合になりかねないですし、アジア路線が手薄なアメリカン航空にとっては、JALを逃がすわけにはいきません。元々アメリカンとBAが中核で大西洋路線に強みを持つワンワールドですが、世界の成長センターたるアジアへのアクセスで後れを取ることにもなりかねず、かくしてアメリカン航空も出資交渉へと向かいます。
日航出資混沌、アメリカンも交渉へ デルタと綱引き
さらに国内線、国際線の不採算路線からの撤退発表など、JAL自身もリストラ加速を表明し、事態は混沌としております。

とはいえ外国エアラインからの出資打診は300-500億円規模で、年度内に2,000億円規模の資金調達を迫られる状況では焼け石に水の状態です。資金調達のうち1,000億円程度を株式の増資で賄うと考えられますから、その半分相当が外国エアの出資分となれば、他の一般株主への安心感を醸成する効果は期待できますし、銀行サイドの出資態度も軟化することが期待されます。

一方で国交省はデルタとの提携を後押ししている模様です。というのは、元々ノースウエストを併合したデルタの太平洋路線の充実ぶりは凄まじく、JALの路線再編によるリストラ効果がそれだけ高いということがあります。加えてそれによって成田の発着枠が返上されれば、乗り入れ希望が多い成田の発着枠再配分を差配できるという意図も透けて見えます。

そしてこの間に起きた総選挙で実現した政権交代で民主党鳩山政権が誕生したことが、少なからず影響を及ぼしそうです。マニフェストで言及された子ども手当や高速道路無料化は、選挙に勝って政権を得た以上、実現しなければなりませんし、多少の修正の余地はあるにせよ、時間と共に実現に向かうことは間違いありません。ところがJAL問題には直接の言及がなく、今のところ政権としての方針は未定のようです。

マニフェストには航空行政の見直しは盛り込まれており、オープンスカイ政策に舵を切ることが示唆されているものの、羽田、成田の役割分担や発着枠再配分などの具体策には言及がありません。とはいえ羽田、成田共に発着枠の拡大と見直しは確実に行われ、増加分の日米大手への配分はなく、むしろ一部返上さえありうるわけで、その際に最も影響を受けるのが、成田をアジアの拠点空港と位置づけるデルタ航空ということになります。ということで、穿った見方ですが、政権交代がデルタの背中を押した可能性はあります。

一方のJALですが、もう一つの難問として8つの労組が分立し、安全を盾に報酬見直しに後ろ向きな組合問題と、OBの高額年金問題が横たわります。このあたりば米GM問題との相似象といいますか、JALが立ち直るための最大の問題です。

元々国策キャリアとして歴史を刻み、日本人のおもてなし精神を活かした充実した機内サービスで業界標準を確立したJALですが、その代償として高コスト体質が染み付いてしまったのです。かつて究極の独占市場だった国際線航空を主力としていたから可能だったサービスが、むしろ過剰サービスとして忌避される昨今、元々エリートの乗り物だった航空がそれだけ大衆化した証左でもありますが、同時にコスト削減を厳しく求められるようになった時代の変化に対応できないその姿は、省エネどこ吹く風で利幅の大きい大型車ばかり作り続けたGMなど米ビッグ3とそっくりの構図です。

加えて充実した企業年金でOBへの手厚い年金給付を続けた結果、業績を悪化させたいわゆるレガシーコスト問題もあります。ゆえに民主党内では通常の資金支援での立ち直りは難しいとして法的整理をという過激な意見もありますが、米オバマ政権のGM救済策に見るように、公的な支援に踏み込むならば、債権者も痛みを分かち合うべきというのは筋が通ります。債権者には従業員や企業年金受給者も含まれます。実際6月に日本政策投資銀行と銀行団による80%政府保証つきの1,000億円融資が実行された一方、4-6月期決算で990億円の赤字となりチャラになる体たらくです。果たして新政権は的確な問題解決ができるか、見守りましょう。

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Sunday, August 23, 2009

尼崎脱線事故で企業体質を認めた山崎社長

福知山線尼崎事故で、大きな動きがありました。

尼崎脱線事故、歴代社長の責任明言 JR西、被害者説明会で
事故から既に4年。この時期にJR西日本が被害者説明会を行うというのも異例ですが、歴代トップの責任にまで言及し、企業体質に問題があったことを認めたことは、大きな1歩かと思います。

この問題は前の記事でも指摘したとおり、司法が山崎社長1人の責任しか問わないことが問題なんですが、訴追を受けた山崎氏本人も、さすがにこれではまずいと考えたのでしょう。何しろ起訴の理由が、JR東西線との直通運転のために福知山線上り線の線路付け替え時に鉄道事業本部長だった山崎氏には、事故を予見できたのに新型ATSの設置など必要な措置を怠ったことが、業務上過失致死傷に当たるというのですが、無理スジの話です。

というのは、当時JR西日本幹部間で、どのようなやり取りがあったかはわかりませんが、本業の設備投資計画を経営トップではない1事業本部長の権限で決められるわけはないんで、その点で井出、南谷、垣内の歴代3社長を不起訴として、逆に安全対策をうるさく進言して事故当時系列会社に出向させられていた山崎社長の起訴というのは不満の残る神戸地検の対応でした。

当然山崎氏としては1人で責任を被るつもりはないでしょうし、遺族にとっても不満ということで、検察審議会に歴代社長の起訴を申し立てております。

尼崎脱線事故「歴代3社長起訴を」 遺族、検察審に申し立て
今回の山崎氏の対応は、被害者からの評価されているようです。
尼崎脱線事故、JR西社長の謝罪に評価も 被害者ら
山崎氏のこの決断が、JR西日本を企業として事故に向き合わせることを期待したいと思います。何度も繰り返しますが、起きてしまった事故は取り返せませんが、それと向き合うことで、未来に生かすことはできます。JR西日本がやっとその入り口に立ったものと評価しておきます。

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Friday, August 14, 2009

地震で盛土崩落の東名高速、意外と脆かった物流インフラ

道路ネタ連発で"道路的部落"と化している当ブログですが^_^;ご容赦ください。まずはメディアチェックです。

静岡で震度6弱、6人の負傷者確認
地震が早朝だったこともあり、地震そのものによる直接被害は少なかったようですが、交通への影響が次第に明らかになります。
東海道新幹線が運転見合わせ 東名高速も一部通行止め
新幹線は営業時間前でもあり、ユレダスが作動してき電停止されてますから、マニュアルどおり目視安全点検後再開となり、始発から2時間後の午前8時に運転再開したわけですが、東名高速の方は実は深刻な事態でした。
東名高速「きょう、明日の復旧は難しい」 国交相
お盆の帰省シーズンであり、週末限定のETC割引を特例で13,14両日にも実施することが決まっていたことから、当然それに復旧を間に合わせようということになりました。
東名高速、13日にも通行止め解除 駿河湾震源の地震
しかし被害は予想以上に大きく、復旧はずれ込みました。
東名復旧、13日午後以降にずれ込み 被害予想より大きく
しかし更にずれ込み、復旧を上下線で分離することで当座を凌ぎました。
東名高速下り線、全面開通 上り線も一部通行止め解除
とりあえず下り線は開通し、それを知らずに中央道へ迂回した車も多数あったことから、スムーズな再開とはなりましたが、上り線の復旧はずれ込み、「行きは良い良い帰りは怖い」状態は続きます。
東名全面開通「15日中」
驚いたのは高速道路の盛土の脆弱さです。特に整備時期が古い東名、名神などでは、耐震強度などはほとんど意識されず、事後的な補強もほとんど行われていなかったし、今回の崩落地点も、復旧工事で搬入した重機の足場が崩れるという形で、予想外の結果となったわけです。それと比べると東名高速より古い東海道新幹線では盛土の崩落はなく、マニュアルどおりに復旧できたことが際立ちます。この差はどこから来たのでしょうか。

結論から言えば、減価償却がされていたか、いなかったかの差ということができます。鉄道事業は営利事業である前提で、事業用固定資産の保全による事業の継続性が求められ、東海道新幹線が開業した1964年から国鉄でも、民間並みに資産の減価償却が行われるようになりました。減価償却はちょっとわかりにくいのですが、企業が事業用資産を取得して操業を続けることで、機械などの現物資産ならば経年で劣化して資産価値を減じることになるのを、会計上一定のルールの下に取得価格の一部を費用化して利益から控除する仕組みです。言い換えれば利益の一部を無税で積み立てて内部留保資金とすることになるわけで、現物資産を部分的に現金資産に交換するという表現がわかりやすいかもしれません。

ルールに従って現金化された資産は、基本的に使途自由ですが、通常は事業の継続性を保証するために、老朽設備の大修繕や交換などに充てます。鉄道のように投資規模の大きい場合は、投資資金の多くが借入金で調達されますから、割賦払いの原資として使うこともできます。また災害復旧の費用に充てることもできます。これらの場合その分会社全体では資産は目減りするわけですから、減価償却で得たキャッシュフローをどのように配分するかは、経営上重要な意思決定といえます。

その辺を踏まえれば、地震の被害が経営に重大な影響を及ぼすことが容易に理解される新幹線では、路盤の補強やP波を検知して本震前にき電を停止するユレダスの設置などの対策が取られたことは当然のことといえます。そのように仕向ける仕組みができていたわけです。

一方の高速道路ですが、道路公団の事業として民間の会計基準によらない特殊な基準で対応されておりました。特に通行料は諸経費を控除後に整備費用の債務償還に回さなければならないわけですから、見かけ上の利益を圧迫する減価償却の仕組みを取り入れることは強い抵抗があったわけです。加えて1996年に東京都日野市が、市域を通過する中央自動車道への固定資産税課税を打ち出したように、高速道路自体が法的にあいまいな位置づけにあることが影響しております。この問題に関しては面白いレポートがネット上で公開されておりますのでご参照ください。

日野市の高速道路課税について
~なぜ政策イノベーションは失敗したか~(pdf)
地方分権も重要なテーマですが、ここではこれ以上立ち入りません。それよりも高速道路が料金プール製の下で永久有料化が決まった1995年の決定を受けて、地方自治体からこのような提案がされたことが重要です。

実は高速道路の料金制を維持することの制度上のリスクが明らかになったわけで、だからこそ道路公団民営化が検討されたときにも、道路会社の直接保有ではなく、JR発足時の新幹線保有機構に倣って(独法)高速道路保有・債務返済機構が保有し、道路会社にリースする仕組みとされたのです。道路公団民営化が、いかに矛盾を糊塗するものであったかということです。

ちなみに新幹線鉄道保有機構は1987年にJR各社と共に発足し、国鉄長期債務の一部を引き継いでJR東・海・西各社のリース料で償還する仕組みだったのですが、JR東日本の上場準備の過程で東京証券取引所の事前審査で「収益の柱となる主要な事業用資産を自己保有していないことはリスク要因」とする見解が示され、特に日本の税法ではリース資産の減価償却は行われないので、資産の保全による事業の継続性に疑義が生じることが指摘されたわけです。そこでJR東日本が東海と西日本に呼びかけ、新幹線資産の買取りを国に求め、1991年に実現して新幹線保有機構は解散されました。この伝でいえば、民営化された道路会社の株式上場は同様に難しいということになります。

ところで、ここまで来ると、じゃあ現在行われている東名高速の盛土崩落の復旧工事の費用は誰が負担するのかという素朴な疑問が出てまいります。おそらくは通常の道路保守費用の範囲内で道路会社が負担することになると思われますが、そうすると今度は、今回の崩落現場以外にも危険箇所は存在するでしょうから、その計画的補修、補強はどうなるかという疑問が出てまいります。おそらく財政資金を投入する以外にないと考えられます。

とすると民主党がマニフェストに盛り込んだ高速道路無料化は難しいのかという疑問も沸きます。これに関しては私個人は楽観しております。その前に、詳細が明らかでなかった民主党の高速道路無料化案の細部が一部明らかとなりました。

高速無料化「首都高・阪神除く」 民主幹事長が明言
今まで具体論には踏み込んでいなかったのですが、2012年時点で首都高、阪神高速を除く全国の高速道路が無料化されるということで、私が考えていたよりも範囲が広いですね。実は東名は無料化から除外される可能性が高いと考えていたもので。

というのも、太平洋ベルト地帯を貫き、物流インフラとして存在感の高い東名の無料化は、首都高などと同様渋滞がひどくなると考えていたのですが、東名だけ有料で残せば、おそらく無料化される中央道へシフトしてしまうだけでしょうから、確かにこの方がすっきりします。

更にオンライン上の記事では割愛されておりますが、紙面上では、高速道路関連の債務35兆円は国が引き取り、国債発行でファイナンスし、60年かけて償還するということで、無理のない返済計画であり、道路の保守費用は首都高と阪神高速の料金収入で賄うことも明らかにしております。つまり債務が消えれば料金収入から保守費用を捻出するのは容易ですので、現実的な解といえます。

そして高速道路保有機構が発行する機関債がなくなるわけです。料金収入が消えてリース料がなくなるわけですから、それを担保に発行される機関債は繰り上げ償還されますが、サブプライムショックで破綻の危機に瀕し、政府が救済した米ファニーメイ、フレディマック両社のように、暗黙の政府保証は、経済情勢次第で隠れ借金として財政にのしかかるリスクがありますので、国債で借り替えるのは、隠れ借金の見える化でもあるわけです。加えて残高800兆円を超える財政状況の中で、35兆円の積み増しは大勢に影響なし、むしろ政府試算で7兆円を超えると言われる無料化の経済効果で税収が増えることも忘れてはなりません。

加えて道路会社の判断に委ねられている高速道路の新規着工が止まる効果が重要です。料金収入があるから借金を積み増して、破綻したら暗黙の政府保証で国に助けてもらうということができなくなるわけですから、中長期の財政再建にも寄与します。

ただ、懸念されるのは東名のように元々物流インフラとして重要度の高い路線の場合、当然無料化は交通量の増大を通じてさまざまな影響があるわけですから、もう少し慎重に考えても良いかもしれません。特に温暖化防止との整合性が問われる部分です。

元々利用度の低い地方の高速道路の無料化は、CO2排出増も知れてますが、東名の交通量が増え、かつ渋滞が増えるとなれば無視できません。むしろ「だから第二東名は必要」という声を増強しかねないし、その可能性の芽を摘む無料化は「間違い」と糾弾されるリスクを民主党は自覚しているでしょうか。そのあたりに一抹の不安があります。

私はこう考えます。第二東名、第二名神の完全整備で物流インフラは確かに増強されますが、そのための費用が10兆円ほどと、何とリニアを大阪まで整備した場合と同等の見積もりとなります。その一方で温暖化対策としてトラック輸送の鉄道貨物へのモーダルシフトを前提とすれば、名古屋の南方貨物線や城北線の整備や変電所増強、着発線有効長延長による列車単位の増強と所要電力を賄う変電所増強など一切合切の合計で1,000億円程度と見積もられており、何と1/100で済むのです。この程度ならば国の財政支援で可能ですから、東名を無料化するなら、ここまでセットでぜひ考えてもらいたいところです。

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Saturday, July 18, 2009

高速千円で貨物繁盛ありがとう嗚呼夏休み

気がつけば夏休みシーズン突入ということで、早速1,000円乗り放題の高速道路は大渋滞です。

3連休の高速道路、初日は57キロ渋滞も 行楽地・ふるさとへ車の列
選挙目当ての票欲しさの人気取りがこの事態を招いているのですが、そこまでして必勝を期した総選挙は投票日8/30で今月21日に解散されるということですが、有権者は盆休みで選挙区を離れますから、人のいない選挙区での議員センセイ方の選挙運動は大変です。加えて渋滞でくたくたで帰ってきたらいきなり投票を迫るとなれば、怒りが与党に向くというもの、夏休みで浮動票が選挙区を離れるところで投票の方が、組織票頼みの与党に有利だったろうに。ま、ここまで事態が悪化すれば関係ないか(苦笑)。

忘れられているかもしれませんが、去年の7月は原油価格が1バレル140ドル台のピークをつけたあと下落、ガソリンの店頭価格はほぼ1月遅れでリッター185円をつけて需要が急減速し、夏の行楽シーズンを直撃しました。その反動もあり石油業界や地方の一部の行楽地はウハウハですが、当然CO2排出は拡大、コペンハーゲンのCOP15が思いやられます。

そして1,000円乗り放題は軽、小型、普通自動車限定で、物流を担う大型トラックは対象外な上に渋滞の影響を受けるということで、トラック業界から悲鳴が上がっておりますが、同時に物流を直撃するわけですから、影響は家計にも企業にも及びます。

というわけでJR貨物では、8月の旧盆期間中の平日4日もETC割引が実施されることを受け、この夏は貨物列車を大増発、荷主企業に営業攻勢をかけております。

JR貨物、お盆期間の貨物列車増発 高速道の渋滞予想踏まえ
記事中にもあるように、天候で出荷量が変動するビールや清涼飲料水も、企業に営業社員を貼り付けて大量出荷にも対応するなど、本気モードバリバリです。ある意味トラック業界の窮地を利用する形ですが、従来取り込めていなかった企業を顧客として取り込むチャンスです。

元々貨物列車はアボイダブルコスト(機会費用)方式で列車の実運行に応じた線路使用料を清算する方式ですから、ダイヤ上は不定期列車として設定し、需要に応じて運行することでコストを抑えているわけですから、新たに列車設定するわけではありません。あくまでも余力を利用する形ですから、JR貨物としてはお盆の増発分はそのまま増収となる構図です。

加えて従来取り込めなかった企業へのお試し期間という意味もあります。従来は輸送の弾力性や運賃面で折り合わなかった企業を定常利用に取り込むことができれば、千円高速様々ということになります。アホな思いつきでも役に立つことはありますね(笑)。

逆にGWの実績では惨敗だったJR旅客各社ですから、臨時列車設定を理由に増発を断る理由もなしで、人口減少で需要低下が予想される近未来の鉄道シーンを先取りするような動きです。今は儲かっていなくても、貨物がレゾンデートルとなった東北新幹線の並行在来線のIGRいわて銀河鉄道や青い森鉄道が結局補助金で下駄を履かせた形ながら、貨物の線路使用料収入で辛うじて収支均衡させているように、温暖化防止を睨めば旅客会社にとっての将来の保険となるわけです。貨物イジメに励む某社も括目すべし。

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Wednesday, July 08, 2009

JR福知山線事故で山崎社長を起訴したものの

問題山積の起訴と申し上げておきます。まずは報道チェック。

JR西の山崎社長を在宅起訴 福知山線脱線事故
現職社長の起訴は異例ですが、当の山崎社長は辞任を表明、事故の予見可能性を否定して争う姿勢です。
JR西日本の山崎社長、辞任を表明
検察の起訴事由がATS未設置ということで、事故の予見可能性とそれを踏まえた不作為となるわけですが、事故を矮小化していると言わざるを得ません。より重要なのは、企業の過失責任をどう問うかという視点です。

この辺はあれから2年の福知山線事故で明らかにしたことですが、その視点からすると、事故後に社長に就任し、安全対策に走り回っていた山崎社長だけの訴追はバランスを欠くものと言わざるを得ません。問われているのは法人格を持つ企業の不法行為に対する経営トップの代理処罰ができるかどうかです。この辺は経済活性化のための規制緩和を行う上で、セットで考えるべき部分ですが、事前規制で企業活動を萎縮させるよりも、事後的に強固な処罰をするいわゆる法化社会の議論として考えるべき事がらです。日本の司法は世界標準からは程遠いですね。

あとATS設置は、事故時点では設置義務は法定されていたものの、設置基準は定めがなく、あくまでも事業者の自主的判断によっていたわけで、事故の予見可能性を争うという検察の姿勢ゆえに、山崎氏も争う余地があるんです。皮肉な話ですが、現場のヒヤリハット、事故に至らないインシデントの現場報告が十分に行われていなかったJR西日本においては、経営幹部が危険性の認識を持たないのはある意味当然なんで、組織が機能していなかった場合の経営責任の判断をこそ司法には求めたいところです。

というわけで、参考記事として事故調最終報告書を巡る記事2件を挙げておきます。

速報! JR福知山線事故調最終報告
JR福知山線事故最終報告書続報

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Sunday, May 31, 2009

伝染ルンです乗客減

1月以上のご無沙汰となる久々の更新です。その間、JR東日本E259系E233系2000番台E5系京成新型スカイライナーなどの新車が登場し、過去記事が参照されることで、アクセス数は落ち込まなかったのですが、あえて付け足すことも思いつかず、省エネ運営^_^;を続けてまいりました。

その間に世間ではいろいろな出来事がありましたが、特に新型インフルエンザ騒動に明け暮れた感じがあります。個人的には先週末のさる集まりに参加したのですが、新型インフル警戒で自治体からの中止命令が出る可能性もあっただけに、他人事ではありませんでした。

その集まりで、アメリカから来られた日本人のご婦人のお話しを聞く機会がありまして、オバマ大統領の選挙戦の話が興味深いものでした。アメリカでは既にネット上の選挙活動が解禁され、候補者がさまざまな形で活用しているのですが、オバマ陣営は有権者からさまざまな意見を集め選挙戦を戦ったというのです。具体的にはどこかで演説会をやると告知し、演説内容について有権者の意見を募り、決めていたということで、ネット上で勝手連選挙を展開したものです。それゆえに有権者の参加意識が強く、言ってみれば有権者がオバマをリーダーに押し上げたというところでしょうか。

だからこそ泡沫候補の事前予想を裏切ってのオバマ大統領誕生となったのですが、これはオバマ自身が対話を通じて有権者の意欲を引き出したという見方も可能なんで、既成概念に当てはまらない新しいリーダー像を具現化したものといえます。

この辺はメディアもなかなか把握できていないようで、選挙戦のライバルのヒラリーを国務長官に指名したり、経済危機対応で金融機関やビッグ3への政府支援を迅速に決める一方、金融機関幹部の高額ボーナスを返済させたり、破産法適用を否定し自主再建を促したGMとクライスラーを結局破産法適用で法的整理するなど、一見対応に一貫性が見えないようでいて、関係者の対話の中で結果的に納得性の高い結論を得ているように、ある種対話力のようなものが、オバマの持ち味なんでしょう。

ゆえに一部メディアで「調整型リーダー」の見方もされてますが、日本的な事前根回しによって落としどころへ誘導するタイプとは全く異質ですし、結論を先に打ち出すトップダウン型とも違う新しいリーダーといえます。そしてブッシュ時代にイデオロギーや価値観で国論が二分され国民の連帯感が薄れていたからこそ、このようなリーダーが望まれ、米国民自身が新リーダーを生み出したと見ることが出来ます。

日本でも新自由主義的リーダーとしてトップダウンに近いリーダーシップを発揮した小泉首相の後、3人の首相が登場しては消え、小泉改革の揺り戻しが随所に見えます。かんぽの宿問題で郵政会社が叩かれてますが、そもそもは郵政会社のトップが西川氏を筆頭に旧SMBC人脈と金融庁人脈による進駐軍支配に対する旧郵政官僚の巻き返しを鳩山総務相を通じて行っているもので、郵政改革の愚劣さが表面化しただけのことです。この辺は過去にも繰り返し指摘いたしました。

というわけで、本題は新型インフル騒ぎの影響が鉄道事業にも及んでいるということです。まずはこの記事です。

東海道新幹線、乗客落ち込み震災時上回る 新型インフル響く
更にこんなニュースもあります。
阪急利用全線で25%減、阪神も15%減 新型インフルの影響で
東海道新幹線の落ち込みは景気悪化の影響あるいはETC1,000円割引の影響とも言えますが、阪急阪神の落ち込みは、新型インフル騒動以外に説明がつきません。最近は落ち着いてますが、メディアで連日報道された結果、過剰反応となったのは明らかです。尤もそれ以前に「水際作戦」と称して感染地から到着する航空便の機内検疫を実施した政府の初動に問題があったことは否めません。しかも検疫官の防護服姿も異常でしたが、外側がウイルス汚染されている可能性もある中で、機内検疫の都度消毒されている気配はなく、むしろ感染拡大を助長した可能性もあります。

米オバマ大統領がメキシコ国境の封鎖の可能性を問われて「鳥が飛び出してから納屋の戸を閉めるようなもの」と一蹴したように、検疫で防ごうという発想を退け、感染者の早期発見と感染の封じ込めにマンパワーを割いたのですが、特に欧州ではスペインとイギリスで100人超の感染者が確認された以外は1桁の国ばかりです。一方の日本では既に300人超の感染者が確認され今でも増えているのに、むしろメディアへの露出は減っております。秋以降と言われる二次感染拡大がむしろ不安です。

政府が当てにならない以上、食事睡眠に気をつけてしっかり体調管理して、感染しても重症化しないよう自己防衛するしかなさそうです。つくづくアホな政府は高くつきます。

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Thursday, April 09, 2009

JR東日本仙石線でATACS導入決定

経済危機と高速道路1,000円乗り放題の影響で業績見通しを下げているJR各社ですが、明るいニュースです。

JR東日本、無線による列車制御システム(ATACS)の実用化計画を発表
ATACSに関しましては以前にも記事にしましたが、仙石線あおば通~東塩釜間で2011年春に実用化されます。一応同線同区間では以前から試験は行われていたのですが、一歩を踏み出すこととなりました。JR東日本からの公式発表はこちらです。
無線による列車制御システム(ATACS)の実用化について
重複しますが、ザックリ解説しますと、従来左右のレールを車輪で短絡することで列車の在線を検知し、信号を切り替えたりポイントなどの進路選定の連動関係を取るいわゆる閉そくと呼ばれるシステムを、GPSを利用したデジタル無線通信により、列車間隔や進路選定などをソフト的に制御するもので、従来のATS,ATC,CTC,ATOSなどの運行管理システムを一元的に制御するシステムです。

鉄道の保安装置の基礎となる閉そくですが、前の記事でも指摘したように、メンテナンスが厄介な上に、応答性にも弱点があり、列車間隔を詰めようとすれば先行列車の影響を受けるので、必然的に渋滞が起こり、ラッシュ時の速度低下は日常的に見られるとおりです。また列車間隔を詰めるために固定閉そく長を短くしようとすれば、動力用電力の帰線に使われるレールに脈流である信号電流の絶縁セクションを設けるため、インピーダンスポンドと呼ばれる特殊なコンデンサを用いますが、鉄道信号でしか使われない専用品で高価な上、風雨にさらされ経年劣化もありますので、コスト面で不利なものでもあります。

また高密度輸送を支える保安装置自体も高度化、複雑化の一途を辿り、その分トラブルが起きやすい環境になっているとも言えます。つい先日こんなニュースもありました。

朝の千代田線立ち往生 信号故障で一時7万8000人に影響
原因は、通常は自動制御されるATCを訓練のため手動に切り替えていたときに、係員の誤操作をシステムが異常と認識して停止信号を出したものだったわけで、典型的なヒューマンエラーで、誤操作で停止はシステムが正常な証しですから、安全性に疑義はないのですが、複雑さ故に不具合の発見も簡単ではないわけです。それに比べるとATACSのシステム構成はシンプルです。

あと今の時期にJR東日本がATACSの実用化に舵を切った理由ですが、こんなニュースを見ると見えてきます。

国際鉄道連合に初の日本人会長 JR東の石田氏が就任
JR東日本が鉄道関連の国際機関トップを出したタイミングですので、ひょっとするとJR東日本はATACSで世界標準を取りに行くつもりかもしれません。これ結構重要です。例えば台湾高速鉄道でのドタバタやICカード乗車券でFERICAシステムがISO認証を受けていないことに対する欧州からのクレームなど、日本が誇る鉄道システムも標準化の面で立ち遅れていたことは否めないところですが、まぁつい最近まで日本を代表する産業と目されていた自動車や電機でもそうだったんで、JR東日本がそのことに気づいて標準化に動いたとすれば、日本発の脱ガラパゴス戦略として注目されるところです。

とはいえATACSのようないわゆる移動閉そく(クロージング・イン)システムは、旧国鉄でも混雑激しい中央線への導入を計画していたぐらいで、アイデアは古くからあるにも係わらず、実現できていないように、かなり難易度の高い技術開発ではあります。旧国鉄時代の電気通信技術では、おそらく電算車1両増結して専用の信号線と常時接触などが必要だったかもしれません。当時中央快速線の最混雑時間帯の混雑率は300%超と言われ、東中野東方の神田川橋梁上で混雑でドアが破損し乗客が落下するという事故まで起きており、高加速のモハ90系(後の101系)とクロージング・インで1分間隔運転を実現することが大真面目に検討されておりました。実際は変電所要量不足で計画が頓挫したのは、以前の記事でも指摘いたしました。その意味ではデジタルIT技術の進化が、やっと積年の夢の実現を可能にしたということはできそうですが、課題もまたさまざまあります。安全に係わるだけに、システムとして破綻しないことが求められます。その難易度はおそらくリニアやテポドンにも引けを取らないでしょう。利用価値ははるかに高いですが(笑)。

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Sunday, February 15, 2009

鉄道投資を加速する世界停滞する日本

世界が鉄道投資へと舵を切っております。

鉄道投資、世界で加速 日本企業に商機 18兆円市場
細かい話はいろいろあるんですが、元々鉄道投資に積極的だった欧州では、例えば仏TGV計画の前倒しは、重電メーカー+車両メーカーとしてのアルストム支援の意味がありますし、日立が優先交渉権を得た英高速鉄道計画にしても、英国内への車両工場設置や車両リース会社立ち上げなど、国内の雇用対策の色彩が強く、内需主導で経済を立て直そうとしていることが読み取れます。中国も内需振興のための経済政策で、鉄道投資を重視する姿勢を見せております。
中国鉄道省、インフラ投資を倍増 09年
アメリカでもカリフォルニアの高速鉄道計画着手に必要な90億ドルの起債住民投票で認められました
カリフォルニア州、住民投票で高速鉄道建設にゴーサイン
いずれもキーワードは内需と環境ということで、米オバマ政権が打ち出したグリーンニューディール政策に沿った考え方が共通しております。

しかるに日本はという話になるわけですが、まずはこんなニュースからです。

新幹線建設の負担増を新潟県知事が拒否 他自治体に波及も
さらに並行在来線問題で禁じ手を用いた佐賀県でも同様の対応となりました。昨年の資源高騰による原材料費の上昇分を転嫁しようとして反発されたものですが、国の直轄事業として推進される整備新幹線事業の矛盾が露呈した形です。整備新幹線の問題点は再三指摘しておりますので繰り返しませんが、整備新幹線を含む国の直轄事業としての公共事業が、地方財政の逼迫でブレーキがかかったわけで、野放図な公共事業の積み増しの成れの果てです。

一方で2009年度予算では、またも整備新幹線の新規着工が盛り込まれようとしております。

整備新幹線の未着工区間、9億円を追加要求 国交省
特に問題なのは北海道新幹線の札幌―長万部間です。なぜならば、新青森―新函館間で着工された区間とつながらない区間の先行着工となるわけで、ただでさえ予算がないなかで、直ちに収益を生まない区間の事業着手を先行させたわけですから、正気の沙汰ではありませんね。

既に特別会計である鉄道整備基金の元金(新幹線の本州会社による買取り価格への上乗せにより捻出)が枯渇し、一方で開業に伴なうリース料収入で長期間にわたって償還されるわけですから、特会に資金が戻るのを待ってから事業着手すれば問題は少ないのですが、なし崩しで新規着工を積み増した結果、資金の償還が先へずれることになりますので、償還を待てなくなったわけですから、ある意味自業自得なんです。またリース料を担保に債券発行や銀行借り入れで資金調達する手はありますが、これはリース料を利払いで配当することになりますので、その分資金の償還が遅れ、トータルの利払いは増えるわけで、その負担は国民に付け回しされるだけです。もういい加減こんなことはやめるべきです。

ただでさえJR北海道の事業環境は厳しいわけで、整備新幹線のスキームでは、JRの受益の中身として、並行在来線の切り離しによる部分と、既開業区間の利用積み増しとなる培養効果の部分があるわけです。並行在来線問題では、東北でも噴出しましたが、旅客輸送だけでは赤字必至で、東北のいわて銀河鉄道と青い森鉄道では、JR貨物からの線路使用料収入で黒字化している状況です。しかもコスト負担力のないJR貨物へはJR東日本が支払う新幹線リース料に上乗せして得た財源で、JR貨物に負担増分を補填することで成り立っており、事実上JR東日本の財務余力を頼みとしているわけです。JR北海道に同じことを要求するのは困難です。加えて新青森が会社境界となる北海道新幹線の場合、いわゆる培養効果による根元受益はJR北海道には落ちないわけですから、結局並行在来線のうち、特に長万部―札幌間の山線区間のうち非電化の小樽までは、切捨てられること必至でしょう。この区間は仮に廃止されても、室蘭千歳回りで貨物ルートが形成されますから、結果的に倶知安やニセコなどの地域は見捨てられることになると考えられえます。それでいいのかどうかですね。

世界を見渡せば内需そして環境がキーワードとなって、各国が経済対策を積み上げているときに、日本だけが旧態依然のバラマキ政策しか取れないとすれば、世界で最後まで経済停滞に悩まされる国になるということです。定額給付金なんぞで政治が機能不全になっている場合か(怒)。

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Tuesday, December 23, 2008

207系900番台でスベった高等戦術

あお色エレジーの続編です。常磐緩行線への投入が予告されながら、未だ姿の見えないE233系2000番台ですが、203系と道連れに追われる207系900番台も取り上げたいと思います。国鉄としては最初にして最後の、そして唯一の営業用VVVF制御電車として、期待された電車でした。

そもそも国鉄では、北陸新幹線用車両用に、VVVF制御の開発を1984年から始めていて、国分寺の技術研究所で101系に試作品を装備してテストを繰り返していたんですが、次の段階として営業用に投入し、量産化のめどをつけることとなり、常磐緩行線への投入が決まったものです。常磐緩行線は地下鉄千代田線との相互直通運転が行われていて、高加速が求められる上に、会計検査院の指摘で営団と国鉄の車両の電力費の差額精算が求められて経緯もあり、省エネ車である必要があったことと、既に電機子チョッパ制御の203系が投入されていたので、比較検討の意味もあってのものです。

車体は203系のアルミボディではなく、205系の軽量ステンレス構造となり、台車も205系と同等のボルスタレス台車としているところから、後述するように新たな標準化の意図があったものと考えられます。この辺が国鉄らしいところではありますが。

国鉄らしいところとしては、何より10連1編成を複数メーカーで分担して製作している点があります。車体は205系と同等の軽量ステンレス製で、205系向けに東急車輛のライセンスを公開させたものですが、当形式では東急車輛と川崎重工が5両ずつ分担し、電装品は東芝、三菱電機、日立、富士電機、東洋電機の5社が分担という呉越同舟ぶりですが、一応日立製の機器に性能を合わせているようです。同一編成で運用する以上仕方ないところですが、5社競作になっていないというところは国鉄的な標準化思想の成せる業でしょうか。

また10連で6M4Tの電動車比率ですから、5社で6両分の電装品を調達するという不一致が出ております。実はこの辺に「高等戦術」が隠れているのです。実際は東芝が2両分の電装品を担当したのですが、量産時のことを考えれば、試作車での1両の割当増自体は、大した意味は持たないでしょう。元々省エネ性能を期待され、特に電機子チョッパ制御よりも粘着性能の高さに期待があったVVVF制御で、5M5Tで高加速をという狙いは伏せたままメーカーへ発注されたわけですから、量産時の見積もりも当然6M4Tが前提となるわけですが、現車で粘着性能を確認した上で、量産時には5M5Tとすれば、それだけ価格を抑えられるわけで、予算不足に泣いた国鉄末期のセコい高等戦術でした^_^;。

しかし現車は空転に悩まされ、なかなか性能が安定しませんでした。結局高等戦術はスベってしまったわけですね^_^;。加えて電装品に使われる素子類の価格も下がらず、製造コストを203系以下に抑えるには4M6Tにしなければ無理ということで、量産を断念されたのでした。201系以来、大量発注の量産効果を狙って失敗を繰り返す構図が続いたわけです。

この「高等戦術」が意図した結果を得たと仮定すると、おそらく通勤型の新標準車の地位を得た可能性があり、そうなれば209系以降の新系列車の登場もなかった可能性はありますが、国鉄が仕様を決めてメーカーへ分散発注する談合体制では、結局意図した性能は実現しなかったでしょう。実際分割民営化後のJR各社はコンペでメーカーを競わせる方向へシフトし、車両面では大きな変化をもたらしたのはご存じの通りです。

番外で、元々北陸新幹線用に計画されたVVVF制御ですが、新幹線用としては東海道山陽新幹線の300系で実現しております。JR東海は300系を短期間で開発しておりますが、それも国鉄時代の蓄積があったからこそであり、見方を変えれば、207系900番台とは異母兄弟といえる存在ということがいえます。

もう一つ、JR西日本の207系0番台1000番台2000番台についてですが、一部趣味誌で常磐線の900番台を試作車、JR西日本の0番台を量産車と紹介されましたが、VVVF制御でステンレス車体という共通点はあるものの、両者は全く無関係な別物です。加えて後者の登場を期に常磐線の207系が0番台から900番台に改番されたという説も流布されているようですが、900番台は登場時から番号は変わっておらず間違いです。活字で公開された誤情報はなかなか訂正されませんが、困ったもんです。ただし両者に番号の重複はありませんが、0番台が空いているというノリで紛らわしい形式名を与えるJR西日本には、国鉄大阪支社時代の東京本社への反骨心が残っているのでしょうか。変なところで国鉄を引きずっているのも困ったもんです。

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Tuesday, November 18, 2008

あお色エレジー、千代田線に来ぬ新車

タイトルは千代田線ですが、JRネタです。不動産屋の「千代田線、北小金駅」ではないですが^_^;、一体性の強い常磐緩行線の話題です。JRとメトロ、それぞれの前身である国鉄と営団地下鉄の奇妙な関係の話です。

千代田線は元々1960年の東京都都市計画高速鉄道10路線中の8号線として示された路線で、小田急線喜多見を起点に、原宿、永田町、日比谷、池之端、日暮里を経て松戸方面への路線として計画されました。喜多見は、多摩ニュータウンへの新線を計画する小田急線との相互直通を意識したものと思われますが、62年の運輸政策審議会の答申では、9号線(芦花公園~新宿~上野広小路~両国~浜松町~麻布)と共にキャンセルされ、都計10号線(中村橋~錦糸町)が繰り上がって8号線を名乗りました。おそらく相互直通相手と目された小田急、京王両社が乗り気でなかったのでしょう。

その後64年に喜多見~代々木上原間を小田急線の線増として、松戸方面も西日暮里~町屋~北千住~綾瀬というルートに変更され、国鉄五方面作戦による常磐線複々線化と併せて相互直通する9号線として復活しました。この時点では事業主体も営団で確定し、おそらく水面下での関係者の折衝の結果、復活したのでしょう。

営団も国鉄も、いわゆる公共企業体という組織で、公的な機関だけれども、民間企業に準じたガバナンスの下、独立採算を求められる組織で、それぞれ特別法を根拠に設置された、いわゆる特殊法人です。ただしその中身はかなり違います。

元々鉄道省として国の行政機関の一部だった国鉄は、鉄道省の現業機関として、民営化前の郵政3事業のような存在でした。同時に鉄道省自体は、私鉄、バス、民間船舶、航空など運輸全般を司る監督官庁でもありました。この辺は以前の記事でも触れておりますが、元々鉄道事業は国の事業であり、国家独占の前提があったわけで、その中で民間事業者が参入するうためにはお伺いを立てて免許の交付を受ける必要があったんですね。ゆえに国鉄並行路線の新京阪鉄道のターミナルに制限を加えるような恣意的な対応も見られました。

1940年頃からの戦時体制下の省庁再編で、産業政策を司る商工省と統合、その後現業機関の郵便事業を持つ逓信省に移管され、戦後運輸省として独立するんですが、GHQの命令で現業機関を公社として分離することを求められ、公共企業体としての日本国有鉄道に改組されます。ただし行政機関だった時代の権限の多くを引き継いだために、監督官庁である運輸省よりも強い権限を有するという逆転現象が起きます。つまり国鉄自身による鉄道整備、運営は、国鉄の判断で行えて、運輸省の免許等は不要でした。その結果反対を押し切って東海道新幹線を実現させることができたわけですが、同時に独立採算を盾にローカル線の建設は不熱心でしたので、後に鉄道建設公団が作られ、財政投融資資金を投入して建設された地方交通線及び地方幹線を国鉄が引き受ける制度が作られ、さらにあれほど反対された東海道新幹線の業績が好調になると、今度は全国新幹線網整備法という法律を制定し、新幹線の建設と運営を運輸省の命令で実施するようになりました。この法が民営化後も形を変えて生き残り、現在の整備新幹線問題や中央リニア問題となって今に至ります。純民間資金の事業であるはずの中央リニアが、国の命令によってしか動かないという制度は、メディアの記者たちにもあまり知られていないようで、見当違いな報道が少なからず見られます。

脱線しましたが^_^;、一方の営団は、元々民間の手で地下鉄を開業させた東京地下鉄道と東京高速鉄道を前身としており、戦時統合で東京の地下鉄事業を行う半官半民の組織としてスタートしました。今流に言えば第三セクターといったところで、当初は東急の持分もあったんですが、後に返上させられ、国鉄と都がほぼ半分ずつ出資する形態の組織となり、国鉄分割民営化で国鉄の持分は大蔵省(後の財務省)へ移管され、現在は民営化を前提とした特殊会社の東京地下鉄株式会社となっております。出資比率は国53%、都47%で、国と都の保有株の一括売却による完全民営化の方針が打ち出されておりますが、具体的な進捗がないまま、世界同時株安でそれどころじゃなくなりました。

元々大都市の市内交通は公営事業者の領分という意識が強かった中で、東京に関しては、何度も都市計画を発表しながら、多額の建設費を捻出できずに民間事業者に出し抜かれた東京市の自治能力に国は元々疑問を持っていたようで、戦時体制で東京府と東京市を併合して東京都とするなど国家統制を強め、地下鉄事業も出資は認めながら交通局の参入を許さなかったようです。

公営交通についても、日本は特殊な位置づけがありまして、国ではないので民間事業者と同様に事業への参入は国の免許の交付を受ける必要があったんですが、公的主体で営利目的でないということで、例えば運転士の動力車運転免許取得の免除や、固定資産税納付の免除など、民間よりも優位な条件で参入できますが、東京市はそれを活かせず、地下鉄事業で後れを取ったわけです。営団も一応は公営に順ずる組織ということで扱われました。また優位性を活かして収支も良好で、運輸省子飼いの優等生というか、いわゆる運輸省の省益と見られていたようです。

そういった両者ですから、不可思議な関係が幾つか見られます。例えば地下鉄東西線ですが、都市計画5号線として決定された段階では事業主体未定で、国鉄による整備が期待されていたようですが、国の機関だった国鉄が格下と見る東京都の都市計画には従わず、結果的に営団が事業主体となりますが、いわゆる通勤五方面作戦の先駆けとなった中央線中野~三鷹間複々線化事業と並行して整備されました。

その一方で都計10号線→答申8号線として計画された路線では、総武線複々線化の受け皿を意図したと思われますが、無視されて、国鉄単独事業として総武快速線(東京~錦糸町)が整備されました。ただし総武線の混雑は快速線の完成を待ってはくれず、緊急避難として国鉄から営団に地下鉄東西線の西船橋延伸を要請し、営団にとってはエリア外となる千葉県への路線延伸が実現することとなります。このくだりは川崎市営地下鉄の記事でも指摘いたしました。国鉄と営団の特殊な関係が如実です。

で、やっと千代田線ですが^_^;、営団が初の電機子チョッパ制御車で省エネの6000系を用意(初期には東西線5000系にCS-ATCを搭載して投入)したのに対して、国鉄が用意したのが、103系1000番台でした。当時の標準型通勤車の103系に、地下鉄線内での高加速性能を付加するために、電動車比率を高めて限流値を高く取って、つまり抵抗を早く抜いて高加速を実現するという仕様で、床下の抵抗器から強烈な排熱を放出する文字通り走るトースターのような電車でした。そのために営団6000系と比べて電力消費量が多く、その点を会計検査院に指摘されて、以来電力費の差額精算を余儀なくされました。国の特殊法人という国鉄と営団の性格が良く出たエピソードです。

とはいえただでさえ赤字で苦しんでいた当時の国鉄にとって、この電力費差額精算は負担でした。ゆえに高速チョッパ車として201系が開発されると、同じシステムで常磐緩行線用の省エネ車の開発が当然のように浮上します。それが203系だったわけですが、急ごしらえで予算不足が災いし、特に高価なアルミボディの出来が悪く、走る度に窓がバタつくノイジーな電車となりました。そのボロさ加減はやはり粗製乱造車の京王6000系と良い勝負といいますか、地下鉄線内で姿が見えないのに音でわかる情けなさは同じです。

同じチョッパ制御システムを用いた201系が、長寿命設計で車体だけは無駄に丈夫なのと対照的ですが、トラブルの多い201系はE233系による置換えがほぼ終わりを迎える一方、203系の置換え用として登場が予定される2000番台は未だ姿が見えません。当初予定されていなかった京浜東北線用1000番台、近郊型仕様の3000番台、私鉄向けとして小田急4000系(ドア中心間4,820mmの標準寸法で独自電装品)、相鉄11000系(ドア中心間寸法も電装品もJR仕様)と、次々派生車種が登場する中で、後回しとなってしまいました。地上で併走する快速線がE231系とE531系で新車オンリーとなっただけに、みすぼらしさもひとしおです。E233系2000番台については一応2008年度の投入がアナウンスされてますが、年度内に営業運転までこぎつけるなら、年内に第1編成が登場してもよさそうですが、どうなるでしょうか。

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Saturday, October 25, 2008

中央リニア5.1兆円JR東海が自己負担の意味

またしても週末に金融危機です。しかも今回の主役は日本です。

円急騰、欧州市場で一時90円台
2003-2004年の大規模為替介入の結果、日本の外貨準備資金として1兆ドルに及ぶ残高を抱えていることは、コイズミノミクスの反動としてのコイズミジレンマとして既に指摘しました。またそれが輸出企業への輸出補助金として企業を助ける一方、国民生活を窮乏化させるものであること、さらに国の外貨準備の肥大化が、低金利の円を借りて高金利国債券で運用するいわゆる円キャリートレードに暗黙の保証を与えた結果、家計貯蓄をリスクにさらしたことも昨年の記事で指摘しました。また長く続いた日銀の低金利政策が世界規模のクレジットバブルの戦犯であり、巻き戻しの危険性があることも以前に指摘しました。今回はアクション自体は欧州発ですが、それだけ欧州各国で円キャリートレードが盛んだったということで、その巻き戻しが起きてしまったんですね。もはや対岸の火事ではありません。

簡単に言いますと、低金利の円資金を調達して、為替市場で投資先国の通貨に交換してそれぞれの債券等の金融商品に投資するという流れで、特に通貨フォリントが対ユーロで最高値から25%も下落したハンガリーでは、個人の住宅ローンにまで円資金で調達した資金が使われたほか、いわゆるサムライ債が多数の国て発行されていた状況で、金融危機で借り手が手仕舞って資金を返済する動きが出てきたものと考えられます。そのために返済資金の円を買う動きが世界的に広がったわけですから、為替介入で押し戻すことは不可能ですし、国際的にも非難を浴びます。

問題はそうやって買われた円が株式の購入などに回ってくれれば良いんですが、長く輸出企業優遇を続けた結果、円高は輸出企業の輸出減速で実体経済の先行き不安を連想させますから、円資金は単純に返済に回り、市場から消え失せるわけです。内需振興を図らなかったツケがまわったわけですね。

そもそもなぜ内需振興かといえば、高齢化が関係します。簡単に申し上げますと、工業化社会ではすべからく高齢化は進んでおります。ただ日本では高度成長の結果として高齢化のスピードが欧米より急なことが特徴です。逆に欧米の後追いですから、欧米の失敗を教訓にできる立場でもありますし、より重要なのは、韓国や中国を含め、アジア各国の経済成長が日本モデルの後追いとなっていることから、将来的に日本同様の高齢化に直面することは確実なわけで、この面でも日本が一定のお手本を示せるかどうかが問われております。

高齢化世代はいつまでも労働市場に留まらず、ある時点で退場するわけですが、それはとりもなおさず現役時代に蓄積した貯蓄を取り崩す生活への移行となります。厳密には公的年金制度の有無などで違ってくるのですが、議論が煩雑になりますので省きます。高齢化自体は公衆衛生の改善と医療の進化によるものですが、工業化の進捗による経済成長の結果として医療への支出が増やせるのもまた事実でして、結果的に救える命が増え、高齢化へと向かうのは必然です。その結果労働力の供給が不可能な高齢者が増えて、彼らは生産せずに消費だけを行う存在ですから、高齢者が増えるということは、国のマクロレベルでは貯蓄が減って消費が増えることを意味します。言葉を変えれば国内消費が国内生産を上回るということです。

これを人為的に回避しようとする試みは欧米で主に移民政策として実行されましたが、これがどういった結果となったかは、今回のサブプライムショックでわかるでしょう。アメリカは中南米のヒスパニック系移民の受け入れが契機となって住宅バブルを生じたわけですし、欧州でもイギリスやスペインは同様です。遡ってドイツでは主にトルコ系移民を受け入れた結果、非熟練労働市場が移民中心に切り離され、社会不安を起こしておりますし、またトルコ系移民の定住によって、彼らの高齢化の面倒を見る羽目に陥ります。重要なのは自国民も移民も等しく齢をとるのであって、移民政策は高齢化の解決策にはならないのです。

その結果貿易収支は赤字基調となるわけです。この部分が理解しにくいでしょうけど、国内消費が国内生産で賄えなければ必然的にそうなります。いわゆる国際競争力云々とは無関係です。ただ実際の貿易収支は為替変動で相殺されますから、その国が偏りのないマクロ経済政策を実行できていれば、貿易収支(実際はサービス収支を加えた経常収支)は、均衡水準を維持できるはずです。そのためには製造業では資本装備の充実による生産性向上が重要なんですが、実際には賃下げや非正規雇用の拡大による労働分配率の低下で対応し、むしろ設備投資も抑制的でした。結果的に日本企業はキャッシュフルになり、外資から買収を狙われることになったわけですね。

実際の日本の直近の貿易収支を見ると、8月に小赤字、9月に小黒字ということで、80-90年代に政治問題化したような状況とは様変わりしております。何が変わったかといえば、それだけ当時よりグローバル化が進んで、貿易収支や為替水準などが世界の人々の関心事ではなくなってきたということです。2003-2004年の日本の大規模介入も、だからこそできたのでしょう。また当時は世界的に経済は好調だったので、非難されることはなかったのでしょう。同じことを金融危機の今やろうとすれば、袋叩き間違いなしですが^_^;。

というわけで、貿易統計から見て奇妙な均衡状態にある今の日本ですが、ここ暫くの政策運営如何で、均衡状態を維持できるかどうかで変わってくると思われます。具体的には資本効率が低いと言われる日本企業の資本効率を高め、労働者1人当りの資本装備率を高め付加価値を拡大することが重要です。外需頼みで国民窮乏化政策を取るのか、高齢化を睨んだ消費主導型経済に舵を切るのかが問われております。その意味で今回の危機に立ち向かうには、バカ殿様宰相では無理でしょう。早く選挙やってくれ。

というわけでやっとリニアですが^_^;、JR東海はリニアの輸出に意欲を示しているということで、日本車輌を子会社化したわけで、理由としてリニア開発の技術情報の秘密保持を掲げております。どうも本気でリニアを売り込む算段のようですが、経済の客観情勢は上記の通り最悪です。そもそも今後の輸出は外貨稼ぎよりもグローバル化のプロセスとしての意味合いの方が重要です。高齢化が進む日本では、為替市場での円高維持こそが重要なんです。そうすれば資源が安く買えて国内消費市場が活性化されるわけです。

その意味でリニアに未来があるかどうかですが、まず欧米では圧倒的に鉄道ストックの厚みがある中で、部分的な改良や高速新線の建設は行われるものの、基本は既存ストックの活用がメインということで、日本流の新幹線ですら出番なしです。そういった意味で欧州方式の線路に日本製車両という組み合わせとなった台湾高鉄で、日本の新幹線技術を欧米流のデファクトスタンダードに摺り合わせるチャンスだったにも拘らず、途中で放り投げてしまいました。JR東海贔屓と見られる曽根悟教授でさえ、鉄道のグローバル化の意義を認め、相互に技術を理解して良いとこ取りすることを"国際化"と定義しているのです。リニアでいかに高度な技術を実現したとしても、システム全体がブラックボックス化された高価なソリューションになれば買い手は現れません。日本の家電や携帯で言われる"ガラパゴス化"になりかねません。

この辺は今までも散々指摘してきたところではありますが、鉄道ジャーナル12月号の佐藤信之氏の論文でヒントとなる部分がありまして、新たにこの記事を書き起こしました。つまり東京―名古屋間の中央リニアの整備費用と言われる5.1兆円の謎についてです。佐藤氏が指摘するのは、1992年10月にJR本州各社が新幹線保有機構から新幹線施設を買い取ったわけですが、その際にJR東海が支払った買取り代金が5.1兆円で妙な符合があるという点です。

このうち4.5兆円は25.5年、残り0.6兆円は60年の半年賦元利均等払いとなるわけで、4.5兆円分の支払が2017年3月で終了するということが重要です。その分のキャッシュフローが余剰となるわけですから、これをリニア実現に利用しようということのようです。ということで、ザックリ言って5.1兆円で実現可能なリニアから逆算された結果としての東名間最短ルート建設ということであれば、JR東海の意図が見えてきます。

つまり全額自己資金での費用負担の上限を示すことで、長野県から出ている伊那谷経由で駅も増やして欲しいという要望や将来出るであろう大阪延伸の要望などに対して、自己負担の限界を示すことで補助金を引き出そうとしている可能性があります。つまり敢えて政治圧力を利用しようということですね。それを証明するような動きもあります。

JR東海、リニア3ルート併記 経路綱引き本格化
リニア新幹線、直線ルート軸に協議 JR東海が国交省に報告
本来は新幹線整備は法令により国の事業とされるので、手続上は後者の国交省への報告が必要なんですが、それ以前に報告内容を明らかにし、自民党の部会へ説明したりしているのです。政治的意図ありありです。またこのような行動は企業としていささか不謹慎でもあります。というわけで、リニアと長崎の間の記事で指摘しなかった視点ですが、整備新幹線は政治新幹線だと確信する次第です。

ま、狙いとしては、政治圧力を利用するとともに、世論喚起して事業推進の後押しにと考えているのでしょうけど、間違ってもガラパゴス化を来すような企業の投資行動に公的支援なんかしちゃいけませんね。

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Saturday, September 13, 2008

川崎重工イーエフセット開発、日車とは違います

結構ビッグニュースです。

時速350キロの高速鉄道車両、川崎重工が開発着手
世界市場向け350km/h新型高速鉄道車両「efSET」の自社開発について
川崎重工は鉄道車両メーカーとしては珍しく、自らリスクを取って市場開拓を行う姿勢が強いですが、ついに高速車両まで自社開発することとなりました。商社の助けを借りながらの海外展開も熱心で、ニューヨーク市地下鉄の車両更新をほぼ独占受注するなどの実績を重ねておりますが、それだけに海外市場の難しさを知りつつ、国内では為し得ない高収益も可能というのをわかっているのでしょう。

海外向け高速鉄道車両では、日立の英国向けClass395電車が既に納入され、2009年12月予定の高速新線CTRLで営業開始予定です。日立のそれはAtrain技術を応用した廉価版で、IC225の置換え用という位置づけですが、efSETは350km/hという世界最高峰の高速運転を前提としたものということで、基本設計を2010年3月までに終え、設計検証も行うということですから、多分試験車両が作られるものと思います。さて試運転はどこでやるんでしょうか。

世界的に鉄道の復権は進んでおりますが、ひとり日本だけがその波に乗り遅れていた感があります。それが川崎重工のチャレンジで変わるかどうか、楽しみです。世界に目を向ければ、仏アルストムのAGVや独シーメンスのICE3などに留まらず、スペインもAVE350と称するタルゴトレインの改良型を独の協力を得て実現してますし、伊フィアットのペンドリーノやETR500、スウエーデンABBのX2000など百花繚乱です。今後BRICsやその他の新興国、資源国などで鉄道投資が続くのは確実で、既に陣取り合戦は始まっているといえます。

その中で台湾新幹線を投げ出した某社は、リニアを夢見る引きこもり自閉症児がごとき対応ですが、川重の試験車両の試運転には協力しないだろうなあ。伝え聞くところでは、リニアをアメリカに輸出したいらしいという話はありますが、アメリカでは既に貨物鉄道の保有する線路を利用した旅客輸送を行っている地域があり、事故報道で話題のメトロリンクも、カリフォルニア州南部のロスアンジェルス近郊輸送を担う旅客鉄道事業者で、いわゆるモーダルシフト政策で公的支援を得ております。

アメリカは貨物鉄道がインフラを保有し、Amtrakやメトロリンクなどが線路使用料を支払って旅客列車を運行するという日本のネガフィルムのような鉄道事情ですが、貨物鉄道はランドブリッジと称される産業インフラでもあり、船舶やトラックに対して圧倒的な競争力を持っている存在でもあり、新たにインフラ投資する必要は低いでしょう。世界を見ればリニアの入り込む余地はあまりありません。

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Thursday, September 04, 2008

リニアで低炭素社会実現のウソ

何か首相が辞めたらしいんだけど、そのドサクサでこんなニュースが流れてます。

リニア中央新幹線:年内本格調査へ 政府、慎重姿勢を転換
うーん、事態はあんまり変わらんと思うぞ。

そもそも総合経済対策ってのが曲者でして、この言葉は小渕政権以来でしょうか。当時の小渕首相は「私は世界一の借金王」とシニカルに語っていたように、現在に至る財政赤字のかなりの部分を作った政策です。当時山一證券の破綻など金融危機で実体経済が冷え込んでいたことから、下支えのために大規模財政出動が行われたわけですが、効果はありませんでした。そりゃそうです。これだけ大盤振る舞いすれば、後に大増税が待ち受けていると誰しも感じます。それに備えて貯蓄に励むだけですから、消費は低迷し、株価も冴えないということになります。そういえば景気後退を政府も認めたように、状況は似ています。

公明党発案の地域振興券なんてのもありましたが、今回も定額減税が提案されております。しかも規模も財源も決まってなくて、ただやるということと、財源その他は年内に決めるということを決めただけというんですから、ほとんど選挙向けのリップサービスです。そもそも11.7兆円という規模を謳いながら、補正予算を睨んで、いわゆる真水の財政出動規模は1.8兆円、これを赤字国債発行せずにやろうということです。そのためになにやら怪しげなものがゾロゾロと潜んでいて、季節はずれの納涼ミステリーです。

それなら財政出動の1.8兆円だけ言えばいいものですが、総合経済対策と言うからには、景気の良い数字が並んでないとカッコつかないということです。しかも中身は各省庁の作文をホチキスで綴じただけ、例えば中小企業対策で資金繰り支援のための信用保証制度ですが、元々中小企業金融公庫の制度融資としてあるものを、信用保証枠を拡大しただけです。これは実は中小企業の救済にはならない制度でして、銀行が窓口ですから、中小企業が相談に行って、自行では貸せないからと斡旋するケースが多いんです。悪質な場合は斡旋して融資が実行されて手にした資金を自行向け債務の一括返済に回させ、事実上の融資の付け替えをするケースまであります。つまりは銀行の貸し渋り、貸しはがしを助け、リスクを移転して破綻したら税金で補填というとんでもない制度です。それもこれもバーゼルIIの自己資本規制で資産の格付けに応じたリスク度合いで引き当てる制度の弊害でして、景気悪化で融資先の格付け低下で自己資本比率を守らなければならないのですが、このルール自体日本の押し込んだものです

あといわゆる財政出動の真水部分の1.8兆円も、赤字国債には頼らないけど建設国債ならオッケー(与謝野経済財政担当相談)というから呆れます。赤字国債と建設国債の違いって、前者は新規発行を法令によって定めなければならない(ゆえにねじれ国会では実現が難しい)のに対し、公共事業の円滑な執行のための後者はその必要がなく、金利が建設利息として事業費に盛り込まれているということですが、もちろん借金に違いはなく、野放図な発行が財政に負荷を与えるのも同じです。あとは予備費の充当などが考えられているようですが、それだけでは足りず、一部特別会計からの繰り入れも使うようですが、いわゆる霞ヶ関埋蔵金論争に火をつけそうなので、明示できないのでしょう。

あとこれも申し上げておきたいんですが、燃料費高騰に苦しむとされる農業、漁業、運送業への支援が謳われているんですが、運送業への支援を今言うならば、なぜに道路特定財源の暫定税率を強引に復活させたのでしょうか。また高速道路料金の値下げで道路の借金返せるんかい。加えて農業や漁業で使う燃料の軽油引取税は猶予されていることも忘れてはなりません。元々負担を逃れていた者をなぜに政府が助けるのか(怒)。

とまあツッコミどころ満載の官僚作文の中に、リニアが紛れ込んでいたわけです。笑っちゃいますね。ま、報道のように手続きとして一歩前進ではあるんですが、基本計画線である中央新幹線を整備計画線に格上げするための調査について、現時点では地質・地形調査に限定しているものを、全般的な調査を認めるという内容でして、確かに財政出動は必要なく、命令に応じてJR東海が自費で実施するわけですから、財政は痛まないし、低炭素社会実現をアピールできるし、良い事ずくめに見えます。それに飛びついたのが辞めた人だったというオチですね^_^;。

リニアが低炭素社会実現に寄与しないという反論は一応真面目にしておきます。一番重要な点は、既に日本では人口減少が始まっていて、かつグローバル化でかつて日本の得意分野だった工業製品の生産、輸出に新興国が低賃金を武器に参入してきていて、現在の産業構造を維持できない局面にあるわけです。いわゆる工業化の果実の収穫の持続可能性に疑義が生じている状況で、実際、工業集積地の東海道ベルト地帯を貫く東海道新幹線の利用者の実数も長らく横ばいが続く中、新たな固定設備を設けても、需要がそれに追いつかないのは明白です。つまりは中央リニアは東海道新幹線と需要を食い合うだけの存在にしかなりません。

にもかかわらず電力消費量が新幹線の3倍と言われております。つまり電力消費の絶対値は純増する一方、需要が追いつかなければエネルギー効率はそれだけ落ちるわけです。クールアース実現を謳いながらアースヒーターにしかならないわけです。

もう一つ指摘しておきますが、東海道新幹線建設時に、中部電力管内の電力不足解消を目的に建設されたのが浜岡原発です。新幹線の3倍の電力消費を賄うためには、ザックリ浜岡の3倍見当の発電所が新たに必要になるわけです。仮に原子力発電所を建設するとして、東海地震などの警戒地域が被る中央新幹線沿線では難しいでしょう。かといって他地域に建設するとなれば、尚のこと反対に遭う可能性が高くなります。結果的に電力確保を火力に依存せざるを得なくなるとすれば、ほら、CO2増えちゃいました。省エネ逆行ですね。

というわけで、あんまり辞めた人を悪く言うつもりはないけれど、しょせんは思いつきレベルの話です。しょーもなー。ところで辞めたの誰でしたっけ?

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Wednesday, September 03, 2008

ツアーバスに追い込まれるムーンライトながら

1日、衝撃のニュースが流れました。どっかの国の宰相が辞めた方ではなく^_^;、朝日新聞朝刊のこの記事の方です。

夜行「ムーンライトながら」臨時化へ 18きっぷで人気
他紙の追跡取材は今のところありませんので、あくまでも朝日の独自取材記事ということでしょう。気をつけなければならないのは、JR関係者の中身です。運行計画に係わる関係者の話なのか、社内のウワサの類いなのか、記事からは不明です。

そのあたりを留意しつつ、冷静に考えれば、JRからの正式発表がない現状で、検討はされているでしょうけど、決まったわけではないということは言えそうです。青春18シーズン以外の時期の乗車率の悪さは以前から指摘されていたところですから、むしろ特急東海の廃止と運命を共にしなかったことが、この列車の特殊な位置づけを物語ると思います。

簡単に言えば、国鉄時代からある青春18キップですが、意味合いが変わり、現実にはかつて貧乏旅行の経験のある中高年世代を中心に、普通列車限定という縛りの中で、ゲーム感覚で貧乏旅行の疑似体験ができる商品という位置づけになってきてまして、一方地方のローカル線の最大顧客である通学生を失う学休期の余剰輸送力の有効活用という面で、他の伝統的企画商品である各種周遊券などがことごとく見直された中で、青春18は止めるに止められないものになったと考えられます。特に大都市から遠い三島会社にまで効果を波及させるには、ムーンライト××という夜行快速列車はJRにとっても青春18シーズンの必需品となるわけです。逆に言えばそれだけ採算面の厳しいサービス列車でもあるわけで、予定臨格下げは列車の性格からいえば自然です。

記事中にもあるとおり、夜行列車を巡る環境は激変しておりまして、基本的に1列車を仕立てるに足るだけの基礎的需要があるわけではないということはいえます。もう少し具体的に申し上げますと、季節変動などの需要変動要因を加味すれば、ながらのような定員制列車で収益を最大化できる乗車率は7割程度と考えられます。これは需要期に満席で断る乗客の存在を考えれば明らかです。いわゆるチャンスロス(機会損失)が発生する確率を減らし、逆に閑散期の乗客減による売上ロスも少なくするとすれば、この辺の数字jに落ち着くことになります。ながらの場合、需要変動に応じて6~9連に編成を増減してますが、通年固定編成であれば、6割程度の乗車率が収益最大化ゾーンということになりそうです。

夜行バスでは輸送単位の小ささを逆手に、予約の入り込みから予想される適正台数で運行する前提で8割程度の乗車率を狙うことが可能ですから、3列シート29人で23人程度がペイラインというのが目安と考えられます。当然4列シートの青春ドリームや80人乗りのメガドリームではより少ない乗車率でペイラインに乗りますから、収益の上ブレ分を原資とした値下げが可能になるわけです。

さらに昨今増えている格安ツアーバスですが、こちらは旅行会社の主催旅行形式で、ネットによる事前予約による集客というスタイルとなります。夜行高速バスが道路運送法に基づく公共交通であるのに対して、旅行業法に基づく主催旅行で、事前予約が最少催行人数に達しなければ、運行する義務を負わないわけです。加えて規制緩和で新規参入した多くの中小貸切バス事業者から競争入札で運行社を決める形ですから、いわゆる仕入がかなり安く抑えられます。これらの事情でバスの仕入れ価格を上回る水準で最少催行人数を設定する限り、損はないわけですから、リスクを負わない分運賃を安く抑えられます。実はこのツアーバスが問題なんです。

いわゆる規制緩和で、さまざまな変化が生じております。ツアーバスの興隆を「規制緩和の成果」と言ってのける御用学者はおりますが、同じフィールドで異なった準拠法規で争う高速バスとツアーバスの関係は、公正な競争とは程遠いものです。いわば同じピッチ上でサッカーチームとラグビーチームがそれぞれのゲームのルールで戦うようなものですから、こんなものを規制緩和の成果と見ることはできません。本来はツアーバスを乗合類似行為として乗合認可を与え、同等の安全運行義務を課す必要があります。実際はそれには程遠く、実際ツアーバスが絡む事故は増えております。

まぁ無理もないんで、元々レジャーの多様化で団体旅行が下火なところで行われた貸切バス事業の参入自由化ですから、たちまち供給過剰となり、価格競争の叩きあいとなります。元々乗合バス事業者も兼業していて、春秋の団体旅行繁忙期に対して車両が余剰となる夏冬の帰省バスやスキーバスなどで効率よく車両を運用してきた業界秩序が一気に壊れ、歴史ある大手事業者は撤退傾向を強めております。その一方でタクシーやレンタカーなどからの新規参入事業者が増えて価格競争が激しくなり、旅行会社のツアーバスの仕入が安くなりました。その結果車両のメンテナンスや乗務員の労務管理などで無理な運行の請負が横行し、事故を増やしている現実があります。そういった新規参入社に経験豊富なベテランドライバーを雇用する力はなく、経験不足のドライバーが多いのもまた現実です。

この辺は新宿駅南口に高速バスターミナルの記事でも軽く触れましたが、ツアーバスの問題点は声を大にして申し上げたいところです。と同時に、既に輸送量から一定の役割を得ていることもまた事実であり、これはとりもなおさず従来の輸送キャリアのサービスでは掘り起こせなかった利用層でもあるわけで、この辺は各事業者も真剣に考えるべきことがあります。ネット事前予約制は、集客コストを劇的に下げることが可能なわけで、JRのマルスシステムやバス各社の独自システムの高コスト体質を浮き彫りにします。この辺は既存キャリア側に工夫の余地がありますね。

同時に高速バスならば、専用ターミナルやバス停の整備が不可欠ですが、ツアーバスは極端な話駐停車禁止場所での客扱いすらある状況で、この面でも不公正競争となっていると同時に、道路交通の私物化という点で社会正義にも反するものでもあります。こういったことを加味すれば、航空における国際定期便と国際チャーター便の関係のような、包括的なルールの策定が必要です。現状はとても資源の効率配分とかパレート最適とか言えるレベルには程遠いといえます。

あと昨今の燃料費高騰でバスはコスト面が厳しくなっているわけですが、JRバスではそれを逆手に取った値下げに踏み切りました。元々乗合バスの場合は一般路線で人件費が8割と言われるように、燃料費の比率は低く、特にJRバスのような大規模事業者は有利です。加えて中小貸切事業者よりも車齢が若く、整備も良好で燃費も良いわけですから、中小事業者が支えるツアーバスを振り切るチャンスでもあるわけです。こういった観点からすれば、ながらも運行コストの削減に工夫するとして、存続を模索してほしいところです。例えば一時期中央線夜行普通列車を甲府で列車分離して、車両をそのまま駅ホームに据えつけて翌日早朝の一番列車とするなんて奇策が取られたことがありますが、静岡あたりで夜間留置車内開放扱いの2列車に分離して存続させるなどの方法も考えて欲しいところです。

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Sunday, August 17, 2008

JR東海が日本車輌を子会社化

えー、北京五輪で電波ジャック状態の日本ですが、その間に世界が動いております。とりわけグルジア紛争の先行きはキナ臭いのですが、とりあえず当事国の和平文書調印でひと区切りです。

グルジア和平が発効、ロシア大統領署名 撤退は流動的
とはいえ北京五輪を狙ったかのような今回の紛争です。悪しき前例とならないよう欧米の外交攻勢は凄まじいものがあります。日本にとっては遠い国の話かもしれませんが、欧州向けの石油や天然ガスの供給源としてアゼルバイジャンなどカスピ海沿岸地域の比重は重く、グルジアはロシアを経由しないパイプラインの経由地ですから、そこがロシアと対立すると、当然エネルギー市況を悪化させる可能性があります。こういうニュースを見過ごして、事後的に原油が上がったと大騒ぎするんですから、日本も困った国です。アメリカ議会では2014年のロシアのソチ五輪の開催地変更の決議までされて、モスクワ五輪の悪夢再来の予感すらあります。
ソチ冬季五輪の開催地変更を要求 米議員が決議案
あとパキスタンの政情不安など、世界は揺れ動いております。そんなときに五輪フィーバーの日本のメディアのしょーもなさが情けないです。せめて特番の合間の通常の報道ワクぐらいは、五輪の扱いを減らすべきです。その他のニュースを知りたい視聴者の存在を無視してます。

前置きはさておき、鉄道界のビッグニュースです。

JR東海、日本車両を買収 リニア総合体制整える
記事にもあるとおり、現在日車株1.8%を保持するJR東海が、TOB(株式公開買い付け)によって50.1%まで保有比率を上げ、買い付け価格は1株370円ということで、必要資金最大282億円ということで、リニア開発の秘密保持が狙いのようです。このあたりにJR東海らしさが出ています。

鉄道事業者と車輌メーカーの関係でいえば、JR東日本が直営の新津車輌センターを保有し、ほぼ1日1両ベースでロールアウトする量産体制を採り、実は国内メーカー中断トツの実績です。ただし製造技術面では東急車輛の指導下にあって、特許なども共同で取得する体制を築いているなど、緊密な関係にあります。おそらく国鉄時代に職権で特許公開を迫ったことに対する負い目があるのかもしれません。

その一方で同じく川崎重工と日立製作所も有力車輌ベンダーですが、特に川崎重工ではJR化後の205系大量発注を1社で受注するなど、気を吐いておりますが、これもJR東日本の方針で、国鉄時代のように設計まで済ませてメーカーへ発注する形態だと、メーカーは単なる組立屋になってしまい、技術革新にメーカーの力を使えないということで、国鉄時代の慣行を敢えて覆したものです。このようにJR東日本は車輌発注も基本的にオープン化戦略を取っており、敢えてメーカーの育成を行ってビジネスパートナーとする戦略です。

それに対して今回のJR東海の戦略は、少々古臭い垂直統合型戦略といえそうです。日車自身は名門企業で技術力もありますが、メーカー間の力関係は大分変わってしまい、劣勢は否めないところです。そういった意味では日車にとっても今回のTOBは事業の再構築のチャンスではあります。

元々系列に車輌メーカーを持つ戦略は、多くの私鉄で取られていたわけで、東急車輛(東急)、近畿車輛(近鉄)、アルナ工機(阪急)、武庫川車輌(阪神)などがありましたし、西武鉄道のように自社工場で車輌製造を手がける例もありました。それらが今は整理淘汰され、国鉄解体でJR各社も競争入札でメーカーを決めるようになり、小規模メーカーはコスト面で太刀打ちできなくなります。既にアルナは路面電車部門をグループ外へ切り出して解散、武庫川車輌も量産メーカーとなって鋼製車に対応できなくなった川崎重工の下請けの組立屋のようなことをしていて、車輌メーカーとしての実態は失われています。JR東日本と関係を深めた東急車輛ですが、一時西武鉄道へ納入したり、日立メインの相鉄をJR東日本と共同で肩代わりしたりして販路を確保してますし、近畿車輛もJR西日本や阪神などへ販路を拡げて私鉄系列色は薄まっている感があります。

時代の流れは明らかにオープン化に傾きつつあるわけで、その流れの中でこのニュースに接すると、何だか時代錯誤の感も拭えないのですが、果たして吉と出るか凶と出るか、推移を見守りたいですね。

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Saturday, July 05, 2008

磁気券IC券二重価格in新横浜

同じような話題を以前も取り上げましたが、他社線を介した通過連絡運輸特例に関するものでした。SuicaとPASMOの共通化で複雑になった運賃判定モジュールでは対応できないというのが、一応の理由ということですが、やはり磁気券とIC券で運賃が異なるという点には違和感があります。

今回取り上げるのは、3/15にTOICA、ICOCAとの共通化に関連するものですが、不可思議なのは3/14以前は同じだった運賃が、3/15を境に違ってしまったという点です。対象は、新横浜、菊名と小田原以西各駅(Suicaエリア)間です。概要は1枚の駅貼りチラシによる告知だけです。それも篠原口では目立つよう位置が工夫されてますが、駅ビル内のメイン改札口では、ちょっと目に付きにくい位置に掲示されていて、JR同士でスタンスの違いが示唆されます。

新幹線をめぐる運賃計算は、新幹線駅を並行する在来線駅と見なして、在来線の営業キロで計算するルールですが、例外として新幹線駅が在来線駅と離れている場合で、その駅発着または乗継の乗車券については、新幹線と在来線を別の線として乗車経路どおりの営業キロで計算することになっております。つまり小田原から新横浜までは、新幹線経由と在来線経由とで運賃が異なるわけです。ここまでは本則による部分です。

問題は小田原~新横浜間の新幹線経由の乗車券が東神奈川経由の乗車券より安くなるのですが、新幹線は東京近郊区間に含まれませんから、本則どおりであれば新幹線経由の乗車券で在来線を経路選択するとこはできません。しかし便宜的措置として新幹線経由の乗車券で在来線の経路選択が認められております。多分国鉄時代から乗客とのトラブルが多発し、グレーゾーンでもあるので、乗客の利益を優先した取扱いが慣例化したものと思われます。そして民営化後もこの取扱いは引き継がれます。ただし同じ新横浜発着でも、品川方面間では、このような取扱いはなく、本則どおりです。

そして2001年のSuica導入時点でも、IC券と磁気券を差別することは行われず、Suica利用でも新幹線経由の運賃が引き落とされていたのです。今年の3/14までは。3/15のTOICAとの共通化を機に見直されたわけですが、不思議なのは、磁気券では従来どおり新幹線経由運賃が適用されるのに、IC券では経路どおりの運賃引き落としとなり、結果的にIC券利用の場合のみ運賃が高くなる二重価格状態となったわけです。元々慣例的な便宜的措置だったんですから、IC券に合わせて磁気券も経路どおりとすれば、規則上すっきりしますし、とりあえず乗車経路で運賃計算されるわけですから、乗客に特段の不利益があるわけではないのですから、あとは的確な説明がなされれば良いだけです。しかい実際は磁気券と取扱いが分かれてしまい、ICカード所持者は券売機で磁気券に交換することで、割安な運賃で利用できるのですが、乗客に無意味な手間を求め、結果的に二重価格状態としてしまったわけです。意地悪な見方をすれば、IC券利用者からこっそりふんだくることができてしまうという意味で問題があります。

しかしなんでこんなけったいなことが起こるんだろうかと思っておりましたら、最近TVCMでやたら流れるEX-ICがどうも原因のようです。つまりSuicaなどのIC乗車券とのダブルタッチで利用できる東海道新幹線限定のチケットレスサービスの導入で、新幹線で実際にIC乗車券が利用できるようになり、その際に会社間の取り決めで妥協の産物としてこうなったということなんでしょう。EX-ICでは事前予約をwebで受け付け、新幹線改札にカードをかざす時に利用券を受け取るという形でチケットレスを実現するのですが、ベースとなるエクスプレス予約のスタイルを踏襲し、特定市区エリア発着特例をなくして値引きされており、その分経路特定を厳格化したものと思われます。ただしこれだけではJR東海の収入に直接食い込むわけではないJR東日本の在来線での新幹線経由の割安運賃を放置しても問題ないはずです。

ところが別のところにヒントがありました。在来線の熱海~函南間がTOICAエリアから外されている問題です。そう、IC券だけで在来線ルートで静岡エリアへ行けないんです。新幹線経由でEX-ICを用いる場合だけ、IC券で継続利用できるんですね。つまりかなりセコい新幹線誘導策ということができそうです。こだましか停車しない三島や掛川で新幹線連絡の名目で在来線列車を長時間停車させてるぐらいですから、あり得る話です。

Suica生みの親の椎橋JR東日本IT-Suica事業本部副本部長の著書に明記されてますが、Suicaの最大の功績は、ライトユーザーを囲い込めたことです。従来鉄道をあまり利用しなかった人たちにとって、着駅までの運賃を調べて券売機に小銭を投入し、乗車券を買い求めること自体が負担と感じられていたのが、チャージさえしていればカードを改札でかざすだけで済むことで、鉄道利用の掘り起こしができたということですね。今後高齢化で運転免許を返上する人も増えるでしょうが、そういった人たちの中には、そもそもキップの買い方がわからないという人がいたりします。人口減少が始まって、右肩上がりの将来を展望できない中で、このことの意味は重要です。

例えばスルッとKANSAI各社が導入したPITAPAが、ポストペイ方式を採用し、利用ごとにポイントを付与することで、同一区間の反復利用の場合の引き落とし上限を定期運賃相当とすることで、定期券や回数券を廃止するという画期的な方法を試みておりますが、発行はクレジットカード同様に煩雑なこともあり、普及度合いはSuicaなどのプリペイド陣営ほどではないようです。PITAPAはヘビーユーザー向けサービスと考えた方が良さそうです。それに対して無記名式ならカード販売機で買えるし、定期券タイプも専用発行機が用意されているSuicaの方が、利用者の広がりは大きいといえます。このことはPASMO品切れでも図らずも明らかになりました。

JR東海のEX-ICは、その意味では新幹線利用客の囲い込みという意味で、ヘビーユーザー向けのサービスといえますが、反面ライトユーザー軽視とも取れるだけに、いささか問題のある対応かと思います。意地悪な言い方をすれば、バレなきゃ高く引き落として構わないということですから、JRを信頼して利用する人が知ったら失望するんじゃないでしょうか。

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Thursday, June 05, 2008

山手線ホームドア設置、安全を阻む混雑

JR東日本から、山手線29駅へのホームドア設置が発表されました。

山手線への可動式ホーム柵の導入について(PDF)
3月に発表された「グループ経営ビジョン2020-挑む-」について(PDF)の中で、「導入に取り組む」とされていた安全対策の具体化です。新聞報道でも日本経済新聞5/12付で記事があります。
山手線全駅にホーム柵、転落防止へ17年までに
混雑線区への導入ゆえ、円滑な工事や運行遅れなどの課題もあります。

とりあえず目黒、恵比寿両駅で先行導入するもので、2008年度からホーム構造改良工事を行い、可動柵の基礎を構築し、その後可動柵を設置し、2010年度から稼動させて3年間の検証期間を経て、13年から本格整備し、17年度までに終わらせる予定ということです。かなり慎重な姿勢ですね。

可動柵自体は既に地下鉄や私鉄の一部線区で導入されておりますが、後付した都営三田線や東京メトロ丸の内線などでは、駅停車時間が伸び気味で、ダイヤ維持に苦労があるようです。開業時からホームドアを採用した東京メトロ南北線も含め、客扱い時間は延びる傾向があるようです。

それゆえ、危険性を指摘されながらホームドアや可動柵の設置は進まなかったのですが、広域に路線のあるJRの場合、人身事故でどこかの線区が止まることが結構頻繁に起きている状況に背中を押されての取組みとなったようです。前記の南北線では、元々混雑の程度が少ないと見積もられていたことが、ホームドア設置を決断させたわけですが、客扱い時間の伸びを踏まえて最高速を他線よりも速い80km/hに設定するなどして、トータルな運行時間を圧縮する努力はされております。その一方で可動柵を後付した三田線や丸の内線では苦労があるわけです。

それでもワンマン運行が可能になり、混雑時に駅員をホームに立たせて安全監視するなどの人海戦術を取っていた部分の省力化にはなるわけですから、ホームの基礎工事や柵の設置で初期投資も決して少なくないながら、メリットもあるわけです。

ただホームドアにせよ可動柵にせよ、車両のドア位置が揃っていることが前提となりますので、定員制優等列車が走ったり、他社線との直通運転が行われていたりする場合、現実的には導入は難しいわけです。そこで他線との直通がない山手線で導入というわけです。しかし田端~田町間の京浜東北線の併走区間では、非常時に京浜東北線の電車が走る可能性があるという理由で、現在7,10号車に組み込まれている6扉車は全て4扉車へ取替えられるということです(目黒、恵比寿駅での検証期間中は該当号車部分の可動柵未設置で対応)。これで自動的に京浜東北製への6扉車導入の目はなくなったわけですね。ただし衝突安全を考慮したE233系先頭車のドア位置のずれにどう対応するのかは不明です。

というわけで、実施計画は発表されたものの、まだまだ課題山積の状況ですが、ホームへの駅員配置による安全監視という人海戦術での安全対策というのも、今後は人員の確保も難しくなりますから、この面でも成果は期待できます。

あとは他線区への波及があるかどうかですが、これは難しそうです。ドア位置が揃っていなければ難しいので、中央快速線や中電各線は難しいでしょう。また山手線は保安装置がATCなので、TASC(定位置停止装置)を付加することで対応可能ですが、一段減速が可能でも、あくまでも運転士の操作のバックアップが目的であるATS-Pで同等の停止位置精度を持たせるのは難しいでしょう。TASCでは±350mm以内の設定ですが、ATS-Pの前提となる運転士のブレーキ操作の場合は±1,000mmとアバウトです。これでも試験合格水準であることは電車の運転―運転士が語る鉄道のしくみ (中公新書 1948)にもあるとおりです。

より簡便な方法としては、転落すると危険な車両の連結部のみをカバーする簡易柵の設置などの方法は考えられます。既に一部私鉄のターミナル駅では実績がありますが、元々過走余裕がなく進入速度が低いから可能なのかもしれません。なかなか決め手は見つかりません。そもそもホームが混雑するから柵などで防護する必要が出てくるのですが、その混雑が安全対策の最大の阻害要因というところに悩みがあるわけですね。

とはいえ安全対策をできない理由を並べても仕方ないわけで、とりあえず可能なところからでも取り組むことは重要です。丁度こんな報道がされました。

福知山線脱線事故、JR西役員ら書類送検へ 業過致死傷容疑
当ブログでは以前からJR西日本幹部を訴追すべきだと申し上げてまいりましたが、捜査当局が一歩を踏み出したことは評価したいと思います。と共に、今後鉄道事業者の安全輸送への圧力は増すものと考えられますので、逃げずに答えを模索して欲しいところです。

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Thursday, March 27, 2008

東北縦貫線と公示地価の不況和音

東北縦貫線の工事日程が発表されました。

宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れ工事の着手について(PDF)
5月に着工し2013年度完成予定ということで、今年6月開業予定の東京メトロ副都心線共々、首都圏の鉄道ネットワークは充実します。それと密接に関連する再開発ブームも、新たな局面が見えてきました。そんな中で発表された公示地価ですが、見てみましょう。
08年の公示地価、2年連続上昇・全国伸び率、1.7%に拡大
違和感を持たれる方が多いと思うんですが、どう考えても、既に8月のサブプライムショックの影響で、明らかに地価は下落へとシフトして潮目が変わっているのですが、公示地価は2年連続上昇、かつ伸び率も高くなっているのです。いわゆる1物6価といわれる地価のフィクション性がかなり出た結果です。

国交省発表の公示地価と、都道府県発表の基準地価は、それぞれ毎年1/1(公示地価)と7/1(基準地価)時点の数値で、計測地点が異なるので、相互補完関係にあります。そしてこれらが、公共事業の用地買収費の基準となるわけです。それが実態を反映していないというのは、今に始まった話ではないんですが、特に都市部の公共事業における用地買収費の比率は高いわけですから、税で集めた資金が土地所有者へ配分される仕組みとして捉えると、実勢価格とのズレの意味は即富の配分を左右することになります。ぶっちゃけ富の東京一極集中が加速し、都内の土地の多くを所有する大企業を利することになります。

こんな観点から地価の推移を長期的に見ると、面白い傾向が見えます。

<図>地価はまだバブル前の水準
グラフは1974年の全国平均の地価水準を100とする指数ですが、商業地に関しては、バブル期はおろか1974年水準にも達していないという事実です。言うまでもなく東京都心などの地価水準は高止まりしているわけですから、それだけ地方の商業地の価格が下がっているということでもあります。シャッター通りの実態の反映ですね。

つまりは一部のブランド地域以外では、土地の収益性の低下に合わせて地価も下落しているわけです。そして大都市でもサブプライムショックで、主に不動産私募ファンドや上場REITに入っていた外資が売りに転じたもので、株と同じ構図です。同じ大企業でも、トヨタ効果が期待された名古屋駅前などは、むしろオフィス空室率が高くなって、早や地価下落傾向が見えております。名古屋浮揚にはリニヤだがや

冗談はさておきまして、土地の収益性が低下すれば地価が下がるのは株と同じで、つまるところ、一部を除いて日本の商業地の収益性がそれだけ下がってきたということでもあるわけです。今後人口減少とともに、この傾向は動かしがたいところです。

一方で住宅地は、商業地に比べれば基準年(1974年)の1.5倍強ですから、商業地ほどには下がっていないことになります。ま、それだけ大都市圏への人口集中が激しく、住宅地の地価を押し上げている側面はあろうかと思いますが、それ以上に、住宅地の場合は、特に日本のように持ち家が推奨される国では、国民の購買力を反映した水準になっているということはいえそうです。実はこの点に、日本経済の浮揚策が見えてきます。

日本の国民は、例えば20坪の土地いっぱいの建売で数千万円の省エネ住宅(ウサギ小屋とも言う^_^;)など相対的に高い住宅を購入しているのですが、その資金が住宅購入から開放されれば、他の分野の消費に回ることが期待できます。そして人口減少によって、将来需要される住宅は減りますから、既存の住宅ストックを活用することで、価格を押し下げることが可能になります。逆に購入する場合には、リセールバリューを意識せざるを得なくなるわけで、中古住宅に値段がついて、住宅ローンの担保割れなんてこともなくなります。住宅が実質資産となるわけで、この面でも消費マインドを高めます。その結果国内商業が活性化すれば、商業地の収益力が回復することになります。

結果的に日本のGDPが押し上げられます。先進国中最も個人消費が弱い日本ですが、ここを掘り起こすことができれば、年率数パーセントの経済成長も十分可能です。ま、そのためには年金や医療などの社会保障が充実して、安心して消費できる環境が必要なんですがね。

あと現状のサブプライムショックは、日本のバブル崩壊後の金融不安と同じように世界で信用収縮が起きているのですが、それによるアメリカの実体経済の減速は避けられないところです。そしてその影響は4月以降に来ると思われます。さらに欧州でもイギリスやスペインなどで土地バブルに崩壊の兆しが見えますので、欧州経済の変調も早ければ年内に始まるでしょう。それでも当面はBRICsなど新興国が牽引することで、急減速は避けられるでしょうが、影響は長期にわたると覚悟した方が良いですね。経済は時間差を以て波及するものです。いわば不況のカノン(輪唱)が始まるということか。

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Sunday, March 23, 2008

似て非なる道路と国鉄

まずはサイドバーでご紹介した国鉄最後のダイヤ改正―JRスタートへのドキュメントについてですが、特に貨物関連の記述が焦眉です。赤字の元凶として国鉄部内からの安楽死説が言われる中で、再建監理委でもまとめきれず、結局国鉄自身で民営化後の適切な事業規模から逆算して、貨物列車のトレインアワーを各地域へ割り振ることで、否応なくヤード系から直行系輸送システムへ移行させたことで、逆に貨物は存続できたわけです。

本州3社+3島会社+全国1社の貨物会社の7社体制という方針は決まっても、具体的な肉付けは国鉄再建監理委の手に余るものでしたので、当時の国鉄幹部による旅客会社の分割境界の設定や直通列車に関する取り決めその他、国鉄自身で決めざるを得なかったのです。また、実際に国鉄が回答を用意しなければ、役人に踏み込まれて現場が掻き回されるという危機感も共有されていたことが読み取れます。つまりは国鉄自身が変わらなければならないという思いを抱いていたわけで、国鉄改革が成果をあげ得たことはこの点に尽きるといえます。

それから20年、私たち国民の前に、道路公団と郵政の民営化の茶番を見せ付けられたのですが、いずれも国鉄改革とはかなり事情が違います。郵政に関しては、過去にも何度も取り上げておりますが、今回は道路問題について考えます。

改革続行の試金石は道路財源で指摘したとおり、道路財源問題は、元々小泉政権、安倍政権時代からの積み残しで、流れとしては、いわゆる道路公団民営化関連で、大赤字の本四公団の債務償還に道路特定財源を充てた結果、2007年度から道路特定財源に約7,000億円の余剰が出るので、それを一般財源化しようという話だったんですが、安倍政権時代に道路計画を積み増して、余剰金額を圧縮した上での形ばかりのものになりました。

その上、そもそも道路公団民営化の仕組みそのものにも、道路特定財源の使途拡大の仕組みが組み込まれております。元々道路公団が手がける高速道路は、料金収入と借入金で整備し、道路特定財源は一般道の整備に使われるものとして、全く別立てだったのですが、道路公団改革で、いわゆる新直轄方式と呼ばれる仕組みが導入されて、高速道路建設に道路特定財源を投入できる制度の道すじができたものです。

簡単に申し上げますと、道路公団改革では、高速道路の資産と負債は、(独法)日本高速道路保有・債務返済機構が管理し、各高速道路会社は、営業権を付与されて高速道路の料金収受やSA・PAのテナント料収入などのフローを得、機構にリース料を支払う存在となっております。つまり資産も負債も持たず、キャッシュフローの管理だけを行う機関を株式会社化したわけで、トップは旧公団や国交省の天下り役人ですから、何のことはありません、実態は高速道路利権の山分け機関に過ぎないのです。また上記の新直轄方式によって、従来は高規格自動車専用国道など、例外的な扱いだった直轄方式とは異なり、機構に道路特定財源を入れることで、高速道路整備を継続できる仕組みとなったわけです。

国鉄改革を見てきた私たちとしては、何か悪い夢を見ているような感じですが、JR発足当初に新幹線を新幹線保有機構が保有し、本州会社各社がリース料を支払って、それを機構が債務返済に充てるという上下分離の仕組みを取り入れたのですが、これは後にJR各社の発議によって、重要な事業用資産として直接管理すべきということで売却され、現在はJRの資産となり、対応する負債もJRへ移されました。その際に資産価格の査定を細工して、非償却部分への上乗せで2兆円ほどの鉄道整備基金の財源を確保し、整備新幹線その他の鉄道整備に国の支出分として拠出し、リース料で償還する仕組みが作られ、国鉄改革で宙に浮いていた整備新幹線の財源が確保されたわけですが、道路公団改革でとられた手法というのは、いわば新幹線の上下分離に別財源で整備新幹線の整備財源を投入できる仕組みとしたことになります。この仕組みを用いれば、道路特定財源を、抑制するはずだった高速道路整備にいくらでも回せるわけで、つまりは道路特定財源に余剰が出ればいくらでも箇所付けできてしまうわけです。

元々道路会社は資産も負債も持たず、料金収入などのフローの管理だけを担当するわけですから、公的な財源投入で作られる新路線はむしろ増収効果があるわけで、反対する理由もないし、また法令上も反対できない仕組みです。ほんとアントキノ猪瀬直樹のインチキぶりに腹が立ちます。かくして全国の知事から暫定税率廃止反対の大合唱となるわけです。

自前の資産で利益をあげて税などで社会へ還元するからこそ、民営化は意味があるわけですし、採算性を度外視した投資は、利益に貢献しない不良資産を抱え込み利益を食い潰すことになるからこそ、無駄な投資の抑制効果があるわけですが、道路公団改革にはそれがないどころか、従来なかった道路財源の投入を可能とすることによって、破滅的に無駄遣いにまい進することになるわけです。というわけで、JRが新幹線の資産買い取りをしたことは、民間企業として健全経営を維持する意味で重要だったこともまた再確認できます。

というわけで、多少の混乱は予想されますが、暫定税率の時間切れ廃止は、民主政治のコストと割り切ることで、国民的には容認できることといえるのではないでしょうか。

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Saturday, February 09, 2008

NEXT N'EX E259系

久々の更新です。これほど更新頻度の低い当ブログですが、毎日コンスタントに500ヒットペースを維持しているのは、私自身驚いております。どうもはてブほかのオンラインブックマークに多数登録されているらしく、古いエントリーも満遍なく読まれているということで、完全保存版品質が要求されているというプレッシャーを感じます。というわけで、更新はなかなか億劫になります。以上言い訳でした^_^;。

というわけで、成田エクスプレス(N'EX)用253系の2009年秋の置換えがJR東日本から公式にリリースされました。当ブログとしては、速報性は追わずに、長期間購読に耐える視点の提供を心がけることにしたいと思います。

そもそも253系が登場した1991年ですが、前年の不動産融資総量規制の影響でバブル景気にかげりが見えていたものの、未だ好調な消費に支えられていた時代といえます。日経トレンディのヒット商品ランキングトップがカルピスウォーターですが、20位にN'EXがランクインしております。先発の京成スカイライナーより割高ながら、ゆったりした室内が好評という評価になっておりますが、JRにとっては国鉄時代を通じて未経験だった空港連絡輸送への参入だったわけで、マーケティングに腐心した跡が見られます。

ここでやや脱線しますが^_^;、連日報道されるいわゆるサブプライム問題ですが、本質は日本のバブル崩壊と同じで、アメリカの場合はNAFTA(北米自由貿易協定)の影響で、主にメキシコからの移民が増加していたわけですが、いわゆるヒスパニック系移民への持ち家推奨のために考え出されたのがサブプライムローンであり、当初は「移民にアメリカンドリームを」というキャッチフレーズで好意的に捉えられていたのですが、その結果として住宅ブームが起き、住宅価格が上昇を続けたのですが、ローンが滞り始めて、逆に担保差押えで主を失った中古住宅が大量に出て不動産市況が悪化し、それがさらに住宅の値下がりを助長し値上がりを想定した無理なローンの延滞を生み出す負のスパイラルになっているので、不動産融資総量規制後の日本とそっくりです。ただし事後の対応の素早さは全く異なります。また拡大EU27カ国で労働力移動規制が撤廃されたことにより、やはりイギリスやスペインで移民向け住宅を中心にバブルが発生しており、遠からずはじけると考えられます。

思えばバブル時代の日本は、ある意味世界のトップランナーだったわけですが、その自覚がないままにバブルを生成しはじけさせ、敗戦処理を先送りし続けた結果の失われた90年代だったのです。そのころアメリカから銀行の不良債権処理や内需拡大の矢の催促に辟易していた日本が、今度はそれ見たことかとばなりに、G7で日本の経験を語るというのですが、間違っちゃいけないのは、日本はバブル経済で世界をリードしながら、処理を誤って貧乏まっしぐらへ向かっているのであって、そんな日本の失敗は、欧米各国は既にわかっています。そしてサブプライムが対岸の火事であるはずの日本で、国内要因で景気後退が現実のものになりそうなのです。

当時のJR東日本にとって、成田空港鉄道アクセスを京成との単線並列によってシェアすることの意味は重かったと考えられます。なにしろ末端のバス連絡はあるものの、京成は成田開港以来の実績があるわけですし、JRにとっては根古屋信号場までの長い単線区間に2本の着発線という物理的制約を課されることでもあるわけですから、列車設定の自由度は遥かに見劣りする状況だったわけです。

その中で、単純に輸送力を考えれば、総武快速線列車の成田空港直通を中心に据える輸送計画が、最もオーソドックスな解だったでしょうし、おそらく国鉄が民営化されていなければ、そうなった可能性は高かったと考えられます。その意味でノンストップ運転の特急列車で尚且つ全車座席指定の完全定員制列車というN'EXのコンセプトは革新的なものでした。

またスカイライナー以上に手強いライバルとして、箱崎のTCATから頻発運転されるリムジンバスの存在もあります。上野起点のスカイライナーに対して、東京都心からのアクセスタイムで優位に立ち、運賃もスカイライナーの運賃料金よりも高額ながら、輸送実績では上回っていたわけですから、そこへ通勤輸送用の113系の快速で参入しても、場違い感があります。

また当時はまだバブルを引きずっていた時期ですし、そもそもバブルの前提として国際化の進捗で東京が国際金融都市になるという期待があったわけですから、国際線空港である成田の鉄道アクセスに求められるものは、国内の送り出しと海外からの入り込み双方共に、エグゼクティブクラスの利用者を想定することができるわけで、量の競争では実績のあるリムジンバスやスカイライナーに譲るとしても、客単価を高めて効率輸送に徹する路はありうるわけです。逆に列車設定に制約があるからこそ、また競合市場で棲み分けが可能であるからこそ、N'EXのような革新的なコンセプトが実現したと考えられますし、253系はそれを具現化したものと捉えることが可能です。

とはいえJRにとっては未知の分野であり、単純な東京と成田空港とのシャトル輸送だけで集客する自信も乏しく、ならばJRの路線網を活かして複数ターミナルからの集客をしようということになったと考えられます。そこで新宿と横浜から来た列車を品川で併合して東京を経て成田空港へ至るという運行形態が考えられ、また需要がつかみきれなかったから、3連単位で増結できるようにして、需要変動に対応しようという考え方をとったのでしょう。これが国鉄時代ならば特急型=ボンネットスタイルの高運転台という既成概念で難しかったと思われますし、当時保安装置にATCを採用していた横総線トンネル区間では、トンネルの規格は山岳トンネル準拠ながら、国鉄時代に自主規制で地下鉄並みの不燃化A-A基準準拠の縛りを課したために、全編成貫通とする必要があり、貫通ホロまで自動化した自動解結装置を装備することと相成りました。実際は鉄道事業法の下では鉄道車両構造規則でそこまでは規制されていなかったのですが、3連単位で多数ユニットの併結という運用の実態からすれば、中間ユニットの非常時の避難路確保の必要性は高かったので、これはこれで意味があったといえます。

で、置換え用のE259系ですが、イメージバースではJR北海道の789系に似ているように見えます。貫通路の有無までは不明ですが、6連基本で2編成併結ならば省略も可能でしょうから、特殊装備の253系に比べてコストダウン要因となります。またE233系のように電気機器や保安装置の二重化するということで、VVVF制御ながら4M2T編成となり、冗長性を持たせたものとなっています。両数も132両で253系111両を置き換えるわけですから、固定編成長の変更はあるものの、現在よりも余裕のある運用が可能になると考えられ、オフピーク時の集中保守作業により盆暮れや春秋連休の海外旅行ピーク時には、予備車まで動員してより広範囲に集客するということも考えられます。

一方退場する253系ですが、かなり特殊な造りの車両ですし、2002年登場の200番台を除けば走行距離も稼いでおり、車体にヤレが目立つこともありますので、このまま廃車となる公算が高いと考えられます。これも好調なN'EXゆえと考えれば、やはり稼いでナンボ、長期低落傾向のレガシー特急(笑)踊り子に普通電車より遅い185系を使い続ける悩みは深いですね。

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Saturday, January 26, 2008

リニアに下げてふり向けば東日本

しばらく株価動向が気になって、更新をサボっておりました^_^;。ま、やっと落ち着いて、ふり返る余裕も出てまいりましたが、個人的には、今まで手が出せなかった値嵩株を仕込むことができて満足しております。早速株価は戻して数パーセントのキャピタルゲインということで、株はやめられません^_^;。

てなこと言うと石が飛んできそうですが、最近の株価報道はどうもパニックを煽っているだけにしか見えません。ま、おかげで安値で拾えたから個人的には良いんですが^_^;、報道する側が意味を理解しているのだろうかという疑問がわきます。そんな中でこんなニュースです。

(1/24)仏銀大手ソシエテが1兆円の損失・不正取引、1人で7600億円
いわゆるサブプライム問題とは直接関係のない、銀行員個人の詐欺事件なんですが、その規模の大きさが目を引きます。当然、内部的に不正を見抜けなかった、あるいは当局も異常に気づかなかったなどの問題もあるんですが、むしろこれだけの損失を計上しながら、銀行がつぶれないことが驚きです。

サブプライム問題で連日さまざまな報道がされていて、特に米金融機関の巨額損失に驚かされますが、シティの2兆円超とかメリルの1兆円超などの損失を出しながら、日本の金融危機時に問題になった、銀行への公的資金注入の議論が聞こえないのはなぜかということを考えさせます。簡単に言ってしまえば、それだけの損失を出しても倒れないだけの資本の厚みがあるからなんですね。そしてそれゆえにバーゼル会議で決められた国際決済銀行(BIS)規制でも、銀行に対して自己資本比率規制を課しているわけです。

欧米銀は国際的な合従連衡の果てに自己資本の厚みを増していて、今回のサブプライムローン問題でも、リスクのある証券への投資ができた理由ですし、また厚い資本に対して十分なリターンを求められる立場でもあるからこそ、邦銀がほとんど手を出さなかったサブプライム関連の金融商品への投資へと向かわせたわけでもあります。つまるところ金融機関の利益の源泉はリスクテイクであるということを地でいっているだけの話です。逆にこの流れに乗れなかった邦銀の方が周回遅れなんですね。

で、実際に損失を確定させて危機を乗り切ろうとする動きが、米銀を中心に起きているわけですが、この課程でアブダビ投資庁やドバイ、シンガポール、ロシア、ノールウエーなどの政府系ファンド、いわゆる国富ファンド(SWF)の存在がクローズアップされました。昨年ハイリゲンダムサミットで懸念を共有されたはずのSWFに助けを求めるというあたりに、米銀のなりふり構わぬ姿勢が見えます。これは、金融機関にとって自己資本はとりもなおさず損失発生のときのバッファであるということが身にしみているからこそ、毀損した資本を早急に回復しようとするわけです。で、この辺に事業に対する覚悟のすごさがにじみ出ておりますね。

で、繰り返しになりますが、銀行にとって生命線ともいえる自己資本に関する国際ルールを、日本は邦銀の都合でたびたび捻じ曲げているのは、これまでも指摘してきたとおりですが、特にバーゼルIIで押し込んだ民間格付け機関による格付けを資産評価に反映させるルールは、国債などの債券保有の多い邦銀にとっては、自己資本を良く見せることができる、言葉を変えればお化粧を施せるルールということなんですが、それでも日本のメガバンクは、国際業務へなかなか復帰できないでいるわけで、当の銀行自身が、自らの実力をわきまえているということなのでしょう。にしてもいつまで膾を吹くつもりかい

で、日本では、銀行に限らず、生保や年金基金などのいわゆる機関投資家まで同じことをしていて、ここ数年株式を売り越して債券を買い越すということをしてきた結果、日本の株価を大きく下げたわけですが、それを救ったのが、海外の機関投資家たちです。いわゆる外国人投資家と呼ばれる彼らは、低リターンの国内債券には目もくれず、国内株式を買い続けてくれたおかげで、日本の株価は下支えされてきたわけですが、そのために奇妙なことが起きてしまったのです。最近の株価トレンドをドルベースで見ると、ニューヨークと東京の株式相場のトレンドがほぼピッタリ一致するのです。彼等はあくまでもドル建てて相場を見ていて、ニューヨークで買えない銘柄(ほとんど全ての日本株が該当)を分散投資の一環で購入していただけということです。ですからサブプライム問題のような信用不安が発生すると、当然のように保有株式を持ち換えるわけで、サブプライム問題にほとんどコミットしていないはずの日本株が揺さぶられる構図となるわけです。

で、奇妙なというのは、マクロに見て、国内投資家が主に内外の債券を保有する一方、海外勢は内外の株式を保有し、特にニューヨークと東京の株価が同じトレンドで動く状況下では、株価が上がれば上がるほど、マクロで見たネットのキャピタルゲインが海外へ流出するわけで、実は東京の株価上昇は国富の喪失でもあるという悩ましい状況にあります。こう考えると、株価が戻ってメデタシという報道はノーテンキです。

といっても、個別銘柄でいえば、こういった国際金融情勢に無関係に上げ下げがあるわけで、基本的には株価は企業業績の先行きを反映したものですから、特に内需関連となる陸運、特に鉄道株はそうなんですが、ここのところ大きく下げている銘柄がありますね。言うまでもなくJR東海です。例のリニア自力整備発表以来下げ止まりません。150万円に届くかという最高値をつけたことがあり、昨年だけでも120万円超あった高値水準も、リニア発表以来下げが続き、100万円を割って、90万円前後で推移するJR東日本に迫られております。元々JR本州各社の株価水準は、各社の収益力を反映しておりましたから、リニア建設に対する投資家の不信任の表れですね。

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Sunday, January 06, 2008

今年はいい年? 悪い年?

や、年越し論争で新年のごあいさつも未だしですが^_^;、本当は株価が気になって記事どころじゃなかったらしい^_^;。なにしろ新年早々こんなトップニュースですから。

日経平均、終値616円安の1万4691円・昨年来安値に
いや、別に株が下げて損したわけじゃなくて、PER(株価収益率)が16倍を割って、理論上割安といえる水準にある日本株の買い時を探っているんですが、これがなかなか難しいんです。なにしろこんなニュースが続くんですから。
米国発株安、年明け後も日欧市場揺さぶる
週明けに一段の値下げ必至の状況で、いかに理論上割安であっても、買うに買えないというところです。というわけで、私自身は株安には動じておりませんで、買いの好機と見ているんですが、なけなしの資金ですから、ふんぎりがつかないんですね^_^;。

でも、買えない理由はそれだけじゃなくて、為替相場との関連をバーゲンエコノミーで述べましたが、年末にOECD加盟国中1人当たりGDPで日本が18位になったというニュースが流れ、かつて世界一豊かだった日本もいよいよ並みの豊かな国に成り下がったわけで、悲しい予想の的中と相成りました。そんな状況に斉藤東証社長も危機感を募らせます。

「東京市場、魅力失いつつある」・斉藤東証社長が年頭あいさつ
国際競争力を維持するために、賃カツ、リストラ、サービス残業、非正規雇用で凌いでいたはずなのに、ただただ国民をビンボにしただけでした(怒)。購買力を失った国民は節約を心がけりゃ,モノが売れないデフレだと騒ぎ、低金利で国民から利子所得すら奪い、円安と相まって企業はぼろ儲けしていたのに、税金払いたくないから法人税まけろの大合唱、財源確保で消費税増税とは、どこまでも虫の好い日本企業です。

でもだからといって儲けを株主に配当などで還元する気はさらさらなく、ひたすら蓄財に余念がないのでした。今回の株価下落で配当利回りが1.6%と、久々に10年物国債の利回りを上回ったそうですが、日本企業の配当性向の低さは絶句です。そりゃ外国人投資家には魅力がないわQ-o-フッ。というわけで、なかなか買いのタイミングがつかめないのでした。

鉄ちゃん的には、今年は新線開業の当たり年ということで、3月の横浜市営地下鉄グリーンラインと都営新交通日暮里舎人ライナー(ベタなネーミングだ^_^;)、6月の東京メトロ副都心線渋谷開業に東急目黒線日吉延伸と、首都圏だけで4線ということになります。んが、よく考えたらグリーンラインと日暮里舎人ライナーは公営交通だし、東京メトロは株式会社化されたとはいえ、未だ国と東京都が出資する特殊会社で上場もこれからです。唯一民間路線である東急目黒線ですが、東横線の線増扱いとなりますので、営業キロは変化なしというわけで、うーむ、よく考えたら日本経済並みに上げ底だったりして^_^;。

横浜市営地下鉄は民営化されるはずだったのですが、中田市長の選挙違反疑惑などで話が進んでいる形跡はなし、同時に民営化が答申された市営バスは民営化見送りで、路線ごとの切り売りでリストラ進行中。分社化でもめた相鉄のバス部門共々横浜のバス事情は波乱含みですね。そもそも全体の営業規模も大きくない横浜市営地下鉄で、規格の異なる新線というのは、どう考えても愚策です。

むしろ関西のJRおおさか東線と京阪中之島線に期待がかかりますが、いずれも三セク方式の上下分離路線でやっぱ上げ底か^_^;。とケチばかりつけていても仕方ないのですが、大阪のような大都市圏での鉄道整備は公的助成なしには進まないのも現実です。かといって第三セクター方式は問題のある方式であることも次第に明らかになりつつあり、地方版産業再生機構がターゲットにしていると噂されます。困ったときの三セク頼みは通用しなくなります。ま、それでも近鉄の逆上下分離よりはましか。

というわけで、とりとめがなくなってまいりましたが、本年もよろしくお願いいたします。m_ _m

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Monday, December 31, 2007

中国高速鉄道に新幹線型車両

寒い年末を迎え、新しい年が波乱含みの予感で語られることが多いように感じますが、やや遡って、このニュースを取り上げないわけには参りますまい。

高速鉄道車両、中国が新幹線型採用・川重など技術供与
北京―天津間に来年8月開業予定の高速鉄道新線用の車両ということで、全線高架の旅客専用線ですから、限りなく日本の新幹線に近い形態の路線です。

記事中にあるとおり、当初独シーメンス製の車両の投入が予定されていたのですが、車両の落成が遅れているために、上海地区で投入されて実績のある子弾頭^_^;タイプの車両を投入し、シーメンス製と半々の割合になるということですから、記事中にある福田首相訪中の見返りという見方は当たらないでしょう。何しろ中国にとっては"国産"なんですから。

とはいえ日本の技術供与による車両の採用は、日本にとっては重要です。付加価値の高い部品レベルの輸出となりますから、利益レベルは高く、前の記事でも明らかにしたように、日本にとってはおいしい話なんです。一応最高速300km/hで営業運転を行うということで、足回りや電装品は”子弾頭"より強化されており、いわゆる"はやて"型車両としては初の速度域となるわけですから、この面でも注目されます。本家の日本では、東北新幹線新青森開業を待って投入される次世代型車両で320km/hが予告されている状況ですから、それに先駆けての300km/h運転となるわけですね。

ま、それをいえば台湾高速鉄道でも、本家の日本で285km/h運転に留まっていた700系をベースに出力増強型の700T型を導入して300km/h運転を行っており、本家に先行したわけですが、このように技術的に可能であっても国内では試すことのできないことを海外で経験するというのは、実は大変重要なんですが、日本の鉄道関係者の中には、そういった点を評価できない人たちが存在するようで、台湾高鉄では、開業を控えて派遣していた技術者を引揚げるという醜態をさらしました。こんなことしていては、世界の成長センターたるアジアでのビジネスチャンスを失いかねません。

思えばサブプライム問題で揺れた2007年も終わり、震源地のアメリカでは、地価下落や金融不安で先行き不透明ながら、産油国などの国富マネーの流入で株価が持ち直しているのに対し、サブプライムの影響がないはずの日本では、株価が下げ止まりません。この問題も以前に為替レートとの関連で取り上げたことがありますが、円/ドルレートの下げが1割弱に対し、日経平均株価の下落は1割超で、為替の調整幅以上に株価が下がっている状況です。それだけ日本の株式市場に魅力が乏しいことの証左であるわけですが、世界の成長センターであるアジアとの連携で下手撃っている間に、世界は日本を見放しつつあるということですね。

自己資金でリニア建設をうたったJR東海の株価が下げたままなのも、世界の投資家がリニアを魅力ある投資案件と見ていないということです。また非上場をいいことに、並行在来線の赤字負担までして長崎新幹線建設に舵を切るJR九州には上場の目がなくなったわけですが、地場企業が国の補助金を当てにするのと、世界の投資資金をひきつけるのとでは、どちらが地域経済の浮揚に貢献できるか、小学生でもわかる理屈ですね。

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Wednesday, December 26, 2007

リニアと長崎を結ぶ線

まずは余談ですが、昨日、東急新6000系が神武寺から長津田へ発送されました。走ルンですファミリー増殖中ですね^_^;。

で、本題ですが、本日のニュースはこれですね。

JR東海、リニア新幹線を自己負担で建設・総事業費5兆円
取締役会で決定したということですから、企業としての機関決定はされたわけですが、前途多難ではあります。ちなみに株式市場の評価は辛口です。終値ベースで前日比-1000,000円、8.85%の下げという結果です。元々4月に松本社長が記者会見で発表してますので、既定方針どおりですが、今回企業組織として正式に取り組むこととなったわけです。

当ブログでは既にこの時点で取り上げておりまして、改めて付け加えることはないんですが、来年の株主総会が荒れそうですね^_^;。加えて新幹線については国の関与という面倒な問題もあります。というのも、70年代に施行された全国新幹線鉄道整備法によって、新幹線鉄道は国が基本計画を策定し、各種調査の後に整備計画を決定し、建設指示、工事実施計画作成の後に着工という風に手順が決まっております。これは新幹線の事業主体が国の機関である国鉄であることを暗黙の前提としていて、国(運輸省)が国鉄に指示する形で進めるもので、今さらな国鉄時代の遺物的制度です。

で、中央新幹線に関しては、現在基本計画線の段階で民営化を迎え、手続上は宙に浮いた形になっているのですが、JR東海がそれを引き継いで地形・地質調査の指示を受け、リニア新幹線として開業させようとしているわけです。今後需要予測、輸送計画、施設や車両の技術開発、建設費の試算などの指示を経て国(国土交通省)に諮り、整備計画として決定される必要があるのですが、この段階でおそらく国交省から、なぜリニアなのか、東京―名古屋間のみの事業なのかなど、かなり突っ込んだ検証がされるはずです。あるいはこの段階で例えば既存新幹線と直通可能な鉄軌道方式への変更などが指導される可能性もあります。今回JR東海が自己資金で行う事業ですが、国交省は法律手続は必要との立場を崩しておりません。

あと前述のとおり株主の同意はもちろん、資金調達も債券市場で起債により賄われると思いますので、果たして必要な資金が集まるのかどうかも不確定ですし、調達金利も高くなる可能性があります。そもそもルート選定からして不確定要素テンコ盛りで、特に東京側のターミナル計画でJR東日本との調整も全く手付かず状態で、現状ではJR東日本関係者からも「協力できない」という声が聞こえます。当然多数の旅客の乗降をさばく大規模施設となるわけですから、東京都との協議で都市計画に組み込んでもらう必要もありますし、そうなると東北縦貫線でも問題になっている都アセス条例に基づく手続も必要ですから、これらの課題をこなしながら事業を推進することはかなり困難です。

ま、JR東海もそんなことは百も承知でしょうけど、整備新幹線を巡る駆け引きの中で埋没することを嫌ったのではないかと思います。というのは、ここへ来て明らかに現在の整備新幹線建設スキームに綻びが見えてきたために、順番待ちしていては、いつまでたっても事業化できないと考えたのだと思います。それでJR東海単独事業として可能な計画を練ったということでしょう。

というのも、そもそも整備新幹線事業のうちの国の拠出分の原資となっている鉄道整備基金が、毎年度なし崩しで新規着工を重ねた結果、2007年度で枯渇することとなってしまったわけです。長野新幹線や東北新幹線盛岡―八戸間など、開業区間から発生するリース料で償還する前にこれですから、現状では財源がないことになります。もちろんリース料を裏づけに起債する手はありますが、基金の枯渇で資本がない状況での起債は、当然市場で足元を見られますから、不利な条件とならざるを得ず、国交省が言う「安定した財源」には程遠いものとなります。というわけで、道路財源の暫定税率も見直さずに、高速道路料金の夜間値下げのような無意味なバラマキが横行する中で、整備新幹線の新規着工は見送られました。その一方で長崎新幹線では強引な事業着手と相成りました。

前の記事でも触れましたが、長崎新幹線については2005年に既に予算計上されていたのですが、並行在来線沿線市町の反対で事業着手できず、予算執行が滞っていたわけですね。そこへ北海道新幹線札幌延伸と北陸新幹線敦賀延伸の新規着工の話が出てきて、執行できずに宙に浮いている予算を横取りされることを危惧した佐賀県やJR九州首脳の焦りが、今回の強引な赤字負担スキームへとつながったというのが真相のようです。つまりはバラマキ予算の取り合いの果ての話です。となればその延長線上に中央リニアの整備事業が現れるのはほとんど奇跡に近いわけで、このように読み解くと、JR東海にも焦りが見られるというわけで、長崎とリニアがつながりました^_^;。

ま、それでも上場企業であるJR東海に関しては、株価などで直接的に市場の評価が出てきますし、株主総会でブレーキがかかる可能性もあるわけですが、非上場のJR九州ではブレーキが効かない怖さがあります。また地方の格差問題にしても、新幹線、それも2,700億円かけて28分の時間短縮というコストパフォーマンス最悪のプロジェクトを推進することと、地元の有力企業を株式上場させることとどちらが経済的メリットが大きいか、冷静に考えてみましょう。ブレーキの利かない電車には乗りたくはないですよね。

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Sunday, December 23, 2007

E233系バリエーション

中央快速線の201系置換用として登場したE233系ですが、昨日京浜東北線用の1000番台が営業を開始、さらに近郊型仕様でG車組込の3000番台15連1本が国府津車両センターに登場するなど、いろいろ動きがあります。当ブログでも1年前の記事で扱いましたが、実車の登場、営業開始のタイミングで、改めて現状を見ていくことにします。

京浜東北線の1000番台ですが、6M4Tの10連×83本が登場予定で、現行の209系基本番台車を置き換えるとともに、広幅の209系500番台車を京葉線へ玉突き転属させる予定になっております。当初予告されていた6扉車は組み込まれませんでしたが、興味深いのは編成順序でして、中央快速線仕様の10連とは電動車位置が異なり、また6号車と9号車にサハを配置する編成は独特です。現行209系では6号車に6扉車を組み込んでおり、9号車とチェンジできる設計でしたから、それを踏襲していると考えると意味深です。おそらく6扉車組込をぎりぎりまで決めかねていたのではないかと推察されます。また状況によっては事後的な6扉車組込の可能性もあり得るわけで、投入予定の半数に達するまで判断を先送りした可能性はありますね。

1000番台は客用ドアの半自動スイッチが省略されてますが、投入線区に合わせたということですね。またE233系では加速度を2.3km/h/s,2.5km/h/s,3.0km/h/sに切り替える機能があり、0番台では3.0km/h/sに設定されておりますが、1000番台では2.5km/h/sに設定し、209系と揃えております。おそらくATCの設定を変えたくなかったのでしょう。また最近電装品のトラブルが多い209系の代替ですから、負荷の軽減を優先したと見ることもできます。それゆえ置換えにあたって中央線の場合とは違って減車がないわけですね。

毀誉褒貶激しい209系ですが、いわゆる走ルンですブラザースの1番手としてさまざまなチャレンジが盛り込まれておりました。車体の強度不足も指摘されてますが、これも極限まで軽量化を模索した結果といえます。209系狭幅車(りんかい線70-000系と川越線3000番台3100番台を含む)の車体の特徴として、ボギー中心間隔を国鉄新性能電車標準の13,800mmから500mm縮めて13,300mmとしている点に意味があります。ボルスタレス台車を採用する209系では、車体の荷重は台車の枕ばねで全て支持されるわけですが、ボギーセンターを500mm縮めることで、ドア開口部より内側に荷重の支点がくることで、車体の強度剛性上自由度が増します。

これを利用して外板厚を極限まで薄くしたわけで、"重さ半分"の技術的裏付けとなっているわけです。しかしその結果車体両端のオーバーハングが長くなり、曲線部での車体偏倚が大きくなるために、広幅車体の採用を見送ったのです。いわば軽量化のための狭幅車体採用だった点は意外と知られておりません。ですから派生車種として常磐線中電区間用に登場したE501系では、交直流車ということで搭載機器が多く、また高圧対策でアーク防止のための絶縁空間確保の必要もあり、ボギーセンターは13,800mmとされました。当然車体の剛性不足を補うために、外板厚は見直されております。同様に広幅車体のE217系や209系500番台も同様です。実はこの差が209系0番台の置換えに対し、E501系ではトイレ設置その他の改造で、E217系と209系500番台では電装品更新で延命という風に運命を分けたわけですね。

というわけでE217系の電装品更新改造のために予備車の確保が必要となり、既に協力メーカーである東急車輛でも製造ラインをE233系用に切り替えているために、予備車捻出のための増備車はE233系にならざるを得ないわけですね。かくして近郊型仕様の3000番台が登場することとなりました。そういった経緯での登場ですから、当面はE217系と共通運用で東海道線東京―熱海間15連固定の限定運用とされます。というわけで、当面211系の置換えには至らないわけです。ま、将来はわかりませんが、当面はE217系の更新に時間を費やすということですね。

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Monday, December 17, 2007

並行在来線JR線として存続の長崎新幹線

長崎新幹線で動きが出たようです。

新幹線西九州ルート 在来線分離区間JR運行、沿線2県と合意 地元同意不要と解釈
九州新幹線西九州ルート 着工に向け加速 調整案を報告
うーん、これはなかなか牽強付会です。おさらいしますと、九州新幹線西九州ルート(通称長崎新幹線、以下この表記とする)の武雄温泉―諫早間の新規着工問題で、並行在来線としてJRからの切り離しが打診されていた肥前山口―諫早間で、沿線自治体3市町が反対し、佐賀県も沿線自治体の反対を押し切ってまで着工に同意できないという立場だったことは既に取り上げておりますが、しからば並行在来線区間をJR九州から切り離さないスキームをということなんでしょう。結果的に佐賀県と長崎県がJR九州から並行在来線区間の線路を買い取り、JR九州が引き続き運行することで、実質的に県が赤字補填をするということになります。

かなり強引な話ですが、反対の立場にある鹿島市と江北町が反対する理由を取り除くという発想です。そこまでして新幹線が欲しいかという話ですね。しかも当面はスーパー特急方式で在来線とスルーする予定ですから、時間短縮効果は30分程度と投資効率の悪いプロジェクトに拘泥することは滑稽です。とりあえず20年間にわたって7,000億円程度を負担するということですが、そこまで両県の財政が持つのかどうか。またJR九州自身も年間1億円程度の赤字負担を予定しているのですが、これでJR九州の株式上場の目はなくなったと見るべきでしょう。国鉄改革20年目にして改革の趣旨は大きく捻じ曲げられたといえます。

上下分離自体は昨今の流行りですが、政府全株式保有の特殊会社であるJR九州の場合、自治体へ収める固定資産税減免の特例を受けているので、県の線路保有による税負担軽減の意味はなく、あくまでも線路使用料の割引による実質的な補助金となるわけです。全業黒字の民間企業への補助金と考えると、いささか違和感のある対応ですし、それでも1億円の赤字負担を強いられるJR九州は、赤字額そのものは経営を揺るがすレベルではありませんが、上場企業であれば株主利益を損なったということで訴訟を覚悟する必要があります。その意味でこれを認めるようであれば、国交省の対応は改革逆行のそしりを免れません。

長崎新幹線自体は、既に2005年以来10億円の予算が計上されていたものの、並行在来線問題で予算の執行が滞っていたものですから、これで並行在来線問題が解決したと見なされて政治決着されることは間違いないところです。この辺は北陸新幹線の福井県への延伸や北海道新幹線の札幌延伸など、鉄道整備基金の枯渇で財源問題が決着していない新規着工区間とは違う話なので念のため。

しかし国からの補助金を天から降ってくるものとしか考えていないのでしょうけど、その補助金を得るために負担を受け入れるというのは、何ともアホらしい話です。整備新幹線問題でややこしいのは、国の補助金というのが、鉄道整備基金からの融資であって、開業後にJRから線路リース料を取って償還するわけですから、厳密には財政資金から補助されるわけではなく、空港特会や道路特会などと同じ特定財源でして、結局受益者である新幹線利用者の負担で作られるわけです。補助の割合なども厳密にはややこしい計算式があるんですが、簡単に言えば特定財源による国の負担分と同額を地方(県と市町村)が負担し、残りをJRが自己負担するという仕組みです。ですからJRも負担はあるわけで、この辺は誤解されているふしがありますが、JRにしても総事業費を圧縮できれば投資利回りが良くなるわけですから、一定のメリットはあるわけです。加えて非採算部門であるローカル輸送を切り離せるおまけまでつくわけで、というよりもむしろ、この方がJRにとってはおいしい話であります。

で、並行在来線は地元自治体が受け皿となって存続させるしかないわけですから、県も市町村も出資や赤字補填などの負担を強いられるわけで、新幹線の建設でも負担を求められ、開業後の並行在来線維持にも負担を求められるわけですから、結果的には負担は最後は全て地方に来る仕組みです。それでいて元々並行在来線の切り離しが求められるほどに大元の需要が弱い地域ですから、事業費に見合うリターンは期待薄です。経済学て言うところの収益逓減の法則に支配されるわけです。

というわけで、佐賀県と長崎県の皆さんにはバッドニュースというわけです。そうでなくても景況感が悪化しているときに、新たな負担を引き受けるというのは、とても正気の沙汰とは思えませんね。

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Sunday, December 02, 2007

海外輸送で国内も活性化するJR貨物

JR貨物がこのところ好調です。もちろんさまざまな補助を受けながらですが、いよいよ来年から京都議定書が実行段階となり、地球温暖化対策としてのC02削減義務が、メーカーの物流部門にも義務付けられる状況で、主に自動車、電機の両業界で鉄道輸送へのシフトが加速しており、2006年の実績で鉄道コンテナ利用が両業界で3年前の6割増という勢いです。それを象徴するニュースです。

JR貨物、トヨタ専用列車を増便・「愛知―岩手」1日2往復に
トヨタ ロングバス エクスプレスについては、過去にも取り上げておりますので、併せてご参照ください。列車の形態としては、コキに31ftコンテナ2個積みの20連という姿で、丁度スーパーレールカーゴの機関車牽引版のようなスタイルです。1列車でトラック40台分に相当しますから、2往復ということはトラック片道80台、往復で160台相当ということですから、CO2削減効果はかなりのものです。ただし元々は船便だったそうですから、効果を過大評価しないように注意が必要です。

一方で生産の海外シフトという悩ましい事態に対しては、レールのつながらない海外への継送が必要なことから、鉄道貨物の出る幕はなかったのですが、JR貨物は独自に上海ソウルへのルートを拓いております。上海は中国海運大手のPOSCOとの提携でコンテナ船を用い、ソウルへは博多港からのフェリーでJR規格の12ftコンテナを用いるもので、輸送のスタイルはかなり違いますが、電子部品や製品など、電機業界に重用されているようです。それぞれ12ftコンテナ換算で4,000個/年(上海)、600個/年(ソウル)まで成長し、国内貨物拠点駅だった福岡(タ)がコンテナ積み出しの拠点に変わったわけです。

で、非公式ながら、次の海外進出として、シベリア鉄道との提携も視野に入れているようです。というのも、12月にトヨタはサンクトペテルブルクで乗用車工場を稼動するのですが、船便で1月以上かかるところから、名古屋―盛岡間のトヨタ専用列車を日本海側へ延長して、船でウラジオストクへ運び、25日程度で結ぶルートを拓くということです。現時点ではJR貨物の小林社長の口頭での言及に留まり、トヨタが採用するには至っておりませんが、既に実証実験は終えております。さすがにJR規格の12ftコンテナにはならないでしょうが、いずれ名古屋発サンクトペテルブルク行きのコンテナが動き始めるかもしれません。

温暖化防止は待ったなしの状況ですし、原油価格の高騰で物流コストの上昇が避けられない中、鉄道貨物が価格競争力を持ちうる可能性はむしろ拡大したといえます。環境税の導入に慎重だった日本ですが、原油価格が上がって自動車の使用が手控えられる傾向が見え始めており、改めて環境税の効果が確認される状況です。既に省エネの進んだ日本では、努力目標だけでCO2削減が進むと考える方が無理があります。また、トヨタ専用列車でも明らかなように、鉄道貨物の輸送力の大きさにも注目すべきでしょう。結局一般財源化が後退する道路特定財源問題ですが、単線鉄道でも4車線道路に匹敵する輸送力を持たせることが可能なんで、温暖化防止と相まって、道路造るなら鉄道貨物に投資した方が良いことは自明ですね。とりあえず暫定税率の延長をやめて、改めで炭素税の形で課税することで、財源は生み出せますし。

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Tuesday, November 20, 2007

新宿駅南口に高速バスターミナル

えー、巷では、夜行列車廃止報道が話題になっているようです。問題の記事はこちらです。

消えゆく東京駅発ブルトレ 「銀河」来春に引退
当ブログでは、過去にこの問題を夜行列車の生きる道“さくら”散る2005年の春で述べたとおりで、特段のサプライズはありません。付け加えれば、東北縦貫線(東京~上野間列車線)の完成を待って品川客躁や田町電車区などの車両基地跡地開発が予定され、尾久への集約が謳われてますが、神田の新幹線との2層高架部前後の勾配区間で回送とはいえ客車列車の運行は事実上難しいですから、既に命運は決していたといえます。

その一方で夜行高速バスは相変わらず盛況なようですが、実際は旅行会社の主催旅行形態で貸切バスで運行されるツアーバスとの競争にさらされていて、決して楽ではありません。免許上乗合路線バスとして公共交通の一翼を担う高速バスでは、安全運行のためのさまざまな規制があり、また極端に言えば予約ゼロでも運行しなければならない義務を負うのに対し、100%ネットでの事前予約制で、集客状況に応じて運行したりしなかったりの自由度があり、安全管理も請け負う貸切事業者に丸投げできるツアーバスは、そもそもコスト構造が違います。加えて車両も中古車で安く調達したりしてます。この辺はそもそも走行距離を稼ぎすぎる高速バス事業者から車齢の浅い中古車が放出されており、いわば敵に塩を送る状況は痛し痒しです。ま、それだけ安全運行には疑義があるわけで、事実大阪をはじめ、ツアーバスの事故は珍しくない状況になっており、さすがに国交省も監視を強めようとしています。

それでも4列シートで付加サービスを見直した青春ドリーム号や、つくば線から転用した15m級ダブルデッカーのメガライナーを使ったメガドリーム号などで、コストを抑えつつツアーバスに対抗したり、逆に+1,300円で3列独立シートの3.5倍のスペースとプライバシーが確保されるプレミアムシートなど、可能な限りのサービスの多様化も進めております。このあたりはバスならではでして、制約の多い鉄道では太刀打ちは難しいところです。

とまぁ前置きが長くなりましたが、特に東京など大都市圏では、高速バスの発展に対し、明らかにターミナルの容量不足が顕在化してきており、特に新宿駅周辺では、多客時の台数運行でターミナルに収まりきらず、広場に面した臨時バス停に乗客を誘導する光景もしばしば見かけます。そしてライバルのツアーバスの配車場所は、西口広場から西へ向かう街路上だったりしますので、両者の利用客が輻輳し喧騒状態といこともしばしば見られます。ツアーバスに関しては、バス停ではない公道上での客扱いですので、ターミナル負担がないこともまた、コスト低減につながります。

こんな状況ですから、手狭な上に事業者ごとに場所の異なる現行の高速バス乗り場を集約しようという機運は以前からありましたが、事業者の利害調整はなかなか難しいものがありました。しかしターミナルの整備は、公道上で客扱いを行うツアーバスに対するアドバンスにもなるわけで、特に乗客の多くが鉄道利用でターミナルに集まることを考えると、鉄道駅と一体化したバスターミナルというのは、集客上も魅力的です。というわけでこんな記事が出てきます。

新宿南口に「バスの駅」・線路上に人工地盤、16年春メド
記事にもあるとおり、そもそもは老朽化した甲州街道の陸橋の架け替えと耐震補強工事に付随して、JR新宿駅の改良工事が行われており、東口への地下道延伸や新駅ビル建設などと連動し、周辺の回遊性を高める狙いもあります。

地価の高い東京では、大規模なバスターミナルは難しいところですが、鉄道用地の上空を利用することで、スペースを生み出すわけですね。ま、夜行列車廃止は鉄ちゃんにはつらいニュースかもしれませんが、適材適所、そもそもニッチな需要である夜行需要はバスに任せて、ターミナルの集客力をビジネスに活かして鉄道の強みを追求することが理に適っているということは申し上げておきます。

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Wednesday, November 07, 2007

東北新幹線段階的高速化を発表

本題に入る前に、前記事の後日談でメディアが埋め尽くされてますが、どうやら黒子が暗躍したようで、しかもY新聞のW主筆とか(イニシャルトークの意味ないですが^_^;)。報道機関に認められる報道の自由は、国民の知る権利を含んでるわけです。オピニオンとして政治信条を紙面等で露出することは問題ありませんが、あくまでも国民の知る権利を満たす事実報道が前提です。それをメディアが政局に手を突っ込んで、事実を捏造するとは許しがたい暴挙です。権力とメディアの癒着は独裁だぞ(怒)!

てなわけで本題です。JR東日本から6日、東北新幹線新青森開業で、段階的に高速化をはかっていくことが発表されました。

東北新幹線における高速化の実施について
~ 新青森開業後における段階的な高速化 ~
詳細はプレス発表をご覧いただくとして、車両の調達と地上設備の整備を段階的に実行し、2010年の新青森開業時点では最高速300km/hで3時間10分程度の運転時間を実現し、最終的に2013年には現行はやて・こまち全列車の最高速320km/h化と5分程度の時間短縮を行うことになります。

今回注目すべきは、現行最高速240km/hの大宮~宇都宮間を275km/hにスピードアップすることです。となると列車密度の高い区間ですから、E4系+400系の仙台やまびこ・つばさの処遇が問題になります。既に400系はE3系への置き換えが発表されておりますが、仙台やまびこのE4系をどうするかが悩ましいところです。上越新幹線で使うとして12連に組み直してE1系と共通運用とするあたりでしょうか。

あと盛岡以北の整備新幹線区間が高速化の対象とならないのは、(独法)鉄道建設・運輸施設整備支援機構からの賃貸であることと、法令により最高速260km/hとなっていること、整備費用圧縮のために規格外のカーブや勾配があることなどによるものです。というわけで、FASTEC360で目標とされた360km/h運転も、宇都宮~盛岡間が対象でしょうけど、時間短縮効果は読みにくいですね。

そして新青森に関しましては、青森市の都市計画で低層住居地域に指定されているところで、積雪地で除雪予算削減の意味から、青森駅周辺地域に都市機能を集中させて、いわゆるコンパクトシティをめざしており、用途地域の変更は考えられていないようです。つまりは新幹線駅はできても、駅前の整備はおろか、コンビニ1軒作れない場所ということです。ということで、新青森から油川付近を経て、津軽線に沿って青森駅へ至る「青森駅アクセス」なる計画が地元で囁かれております。元々八戸以北はミニ新幹線で整備される予定が、六ヶ所村の核再処理施設受け入れまでして、また北海道へ伸ばすときにミニ新幹線区間があると制約になるなどと理屈をこねくり回したあげくに、地元の都市計画との整合性すら取れないプロジェクトをゴリ押ししたんですから、頭悪さ大爆発です(笑)。そんなんだから衰退するんだよ。

関連記事:

N700系とFASTECH360(E954系)の間
JR東日本新型新幹線車両は時速320km

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Saturday, November 03, 2007

JR北海道MAHV開発の狙いは?

久々の更新は鉄ネタでいきます。タイトルのとおりですが、JR北海道のプレス発表をご参照ください。メカの話に入る前に、試作車がキハ160-1の改造車であることに注目いたします。

キハ160は、いわゆる新潟鉄工製軽気動車(NDC)で、1997年に、日高本線で運用されていたやはりNDCのキハ130の事故廃車の代替車として1両投入されたのですが、キハ130の残りの車両は、12年の減価償却期間を終えたところで、国鉄型のキハ40に置き換えられたために、1形式1両となってしまいました。NDC自体は、南阿蘇鉄道を皮切りに全国の第三セクターローカル鉄道に導入され、ライバルの富士重工LEカー/-DCとともに、国鉄末期に始まった特定地方交通線転換鉄道各社に導入が進み、JRでも西日本のキハ120と北海道のキハ130で採用されましたが、キハ130は短命に終わりました。

元々NDCはバスや建機の汎用部品を多用して、従来の国鉄型よりも軽量高性能でローコストといいことづくめという触れ込みでしたが、鉄道車両としては耐久性に課題があったようです。特に初期車の老朽化は、経営が苦しい三セクローカル鉄道でも、車両更新が課題となっているようです。キハ160については、初期車の実績に基づいて仕様変更されているようですが、キハ130の代替車として本採用されなかったところをみると、やはり北海道で使うには問題があったのでしょう。そういうわけでキハ160-1は取り残されてしまったわけですね。

ここで少し視点を変えますが、鉄道の動力駆動システムは、交流電化、直流電化、ディーゼルの3方式が棲み分けている状況です。電化路線に対して非電化路線ではほぼ世界的にディーゼルが主流ですが、動力の駆動は発電機で電気に変換してモータを回す電気式が主流です。日本とドイツだけがトルクコンバータを用いた液体式駆動が使われていたのですが、ほぼローカル線向けレールバスが中心のドイツに対し、幹線用大型機関車にまで液体式を用いる日本のあり方は、世界的にはかなり突出した存在でした。それでも日本国鉄で用いていたディーゼルエンジンが、船舶用を出自とする低回転ローパワー型だったことで、変速機の直結段を1段で済ませるなど、簡素なシステム構成が可能だったということはいえます。

それが国鉄時代でも新系列といわれるDML30系列の高出力機関が開発されると、直結2段の変速機が開発され、それなりに使われてはおりましたが、やはりメンテナンス面から特定区所への投入に留まり、それに留まらずリミッターで出力を制限したり(キハ66系)、シリンダーを半減したり(キハ40系)していたのが、いわゆる国鉄型の歴史過程です。これには後日談もありまして、JR東日本で機関換装してカミンズなどの高出力機関を採用したものの、変速機の能力を勘案してリミッターで出力制限をかけておりました。

それに対して富士重や新潟鉄工の軽気動車は、汎用品の活用でハイパワーエンジンと複数段変則機の採用で、国鉄型を上回るパワーウエイトレシオを実現し、その意味では大きな技術革新を実現したのではありますが、同時期の電気車の技術革新は凄まじく、三相交流誘導モータとVVVF制御によって、軽量、高出力、高粘着をローコストで実現でき、電気接点を持たないので機器もコンパクトになりメンテナンスフリーを実現し、かつ電力回生ブレーキの活用で省エネまで実現してしまうという優れもので、実績として電力費半減まで実現してしまったのですから、燃費半分とはならないディーゼル車との技術革新の不均衡は明らかです。かつターボ、インタークーラー、コモンレールなどの新技術はメンテナンスはむしろ難しくなりますし、動力駆動装置としての変速機の負担も高くなります。

このことの意味するところは、電化と非電化を分ける境界線が電化側へシフトしたことを意味しますが、一方で電化のためには地上側に多額の設備投資を要求されることに変わりはないわけで、車両レベルでのローコスト化が即電化進捗とはならないわけで、逆に現時点で非電化の鉄道は、存続がますます難しくなるということになるわけです。となれば、車両レベルで凄まじい発展を遂げている電気車の技術を移植し活用しようとするのは自然です。鉄道車両の場合、電気駆動そのものは、手馴れた技術ではあるわけですし。

もう一つの文脈として、電気車両の方の問題もあります。特に直流電気車の回生失効問題です。商用周波数交流をコンバータで直流変換してインバータで三相交流を生成する2段階の電力変換を行う交流電気車の場合、現時点では停止用回生ブレーキはほぼ完成したシステムといえる段階にありますが、架線電圧に制約される直流電気車では、実は回生失効問題は無視できない問題なのです。高速域では高圧電流が自車の機器を損傷するおそれがあるので、保護リレーが働いて回生が失効するし、一定以下の低速域では主回路電圧が架線電圧を下回ってやはり回生失効となるわけです。ですから電力回生ブレーキで省エネとはいっても、元々大電流の制御で苦労している大都市通勤線のピーク電力抑制には役立つにしても、温暖化防止への貢献度は言われるほどは高くない可能性があります。その意味でやはり蓄電という発想が出てくること自体は自然なことです。

というわけで、やっとハイブリッドの話となりますが、JR東日本のキハE200が電車ベースのハイブリッドシステムという特徴があるのに対し、JR北海道のMAハイブリッドシステムでは、変速機に誘導モータを組み込んでトルコンと摩擦クラッチを代替するという、ディーゼル車ベースのシステム構成となっているのが面白いところです。極寒地の北海道では、地上の電路設備のメンテナンスも困難が伴う上に、札幌一極集中で人口密度が低く鉄道に不向きな条件があるわけですから、今後も電化区間が延びる可能性は低く、むしろ車両に熱源があるディーゼル車の走破性の高さは評価されるべきです。その意味でJR東日本とは全く異なるハイブリッドシステムの開発と相成るわけです。

当然着地点も異なり、JR東日本がおそらく将来の燃料電池駆動を視野に入れ、地上側の電化非電化の別に拘束されない車両の出現が示唆されますが、JR北海道のシステムは、あくまでもディーゼル車の範疇での電気車両のいいとこ取りという感じで、ハイブリッドの本来の意味である混血、雑種、合いの子というニュアンスに近い感じです。蓄電への注目という意味では、鉄道総研が提案するバッテリートラムというのも同じ文脈で捉えると明らかですが、動力源として全面的にバッテリーに依存できるとは思えませんが、たとえば郊外の専用軌道区間で集電しながら蓄電し、市街地のトランジットモールでは架線レスでバッテリー走行とか、たとえば現状では技術的必然性の乏しいガイドウエーバスに応用して、ガイドウエー区間では集電しながら蓄電し、道路走行時にはバッテリー駆動とするなどが考えられ、技術的可能性が広がります。いずれにしても現状では電池性能が大きなボトルネックであり、実車レベルではバッテリー交換で省エネ効果もメンテナンスフリー効果も相殺されてしまう状況ですが、電池技術を進化させるには実車走行を行う以外に方法がないわけで、まだまだテスト段階ということです。

その意味でJR北海道がもてあましているキハ160-1を改造して試作車としたことは、懐事情もさることながら^_^;、まだまだ超えるべきハードルを認識しているということでもあります。また電気車とディーゼル車の技術革新の不均衡が生んだあだ花の軽気動車が任用されたという意味でも意味深な出来事ですね。

関連記事:

走ルンです合いの子、キハE200
非電化の星? キハE200

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Saturday, October 13, 2007

首都圏自動改札機ダウン

いやはや、大変な1日となりました。私自身は1日クルマで移動していて、刻々流れるラジオニュースで聴いていたのですが、こんなトラブルはいつか起こるんじゃないかと思っていただけに、現場に立ち会ってみたかったなどと不謹慎なこと考えてました^_^;。

まずは報道チェックです。

首都圏で自動改札トラブル・JRや私鉄、地下鉄も
首都圏で自動改札トラブル、徐々に復旧へ
首都圏の650駅で自動改札トラブル
時系列に沿って3本のニュースを比べると、当初トラブルの全体像が掴みきれていなかったようですが、首都圏650駅に及ぶ大規模なトラブルで、複数社の改札機を使う一部私鉄のトラブルの様態から、日本信号製の改札機のみでトラブルが起きていることなどが明らかとなりました。というわけで、日本信号が謝罪したわけです。
自動改札ダウン、製造元の日本信号が謝罪
セキュリティ確保のためのシャットダウンということですが、少し解説しますと、各駅の自動改札機を管理するコントローラーの起動時に、クレジット機能付カードの無効や紛失をサーバが配信するのですが、個人情報の塊りのデータですから、通信に不具合が発生したときには、コントローラー側がシャットダウンして、データの散逸を防ぐ仕組みだったのですが、それが徒となったようです。ただ、日本信号製の自動改札機に関しては、去年12月にもトラブルがあって、ソフトの手直しをしたということがありまして、今回もプログラムミスがあったらしい、つまりはシステムにバグがあったらしいということのようです。
自動改札ダウン、ソフトに問題か・日本信号
というわけで、今回も適切なバグfixが行われるものと思います。

ま、ただ日本信号だけに責任を被せるのはいかがなものかとも思います。ソフトのバグは付き物なんで、今回も個人情報保護のためのセキュリティシステムが律儀に働いた結果ですから、巨大システム固有のリスクという認識も必要ではないでしょうか。この点で真っ先に思い当たるのが2003年のみずほ銀行の決済システムトラブルや、2005年の東証のシステム障害などが思い出されます。当ブログではみずほ、東証、JR、巨大システムに潜むリスクという記事で取り上げております。また。SuicaとPASMOの共通化でトラフィックが増大したことが背景にあるわけで、システムへの追加投資など、鉄道事業者側も対応を迫られます。

で、JR東日本では、自動改札機を開放して、乗客を素通りさせることで、混乱回避をはかったんですが、1日800万人といわれる首都圏の鉄道利用者のボリュームを考えると、適切な処置であったということができます。ただし問題もあります。そう、入出場記録が対応して初めて運賃が決済されるシステムですから、出場や他線乗継時に処理が必要になり、精算所に長蛇の列となるわけです。

自動改札ダウン、帰宅の足も混乱・ICカード処理、窓口に長蛇の列
というわけで、首都圏の鉄道各社は、1日この問題に翻弄され続けたわけです。加えて日本信号製自動改札機に関しては、カードの無効情報を遮断することで仮復旧したわけで、その間に例えば紛失カードを取得した者による不正使用があった場合の処理などに問題を残しているわけです。特にオートチャージの場合、クレジットカードの請求書が届いて初めて発覚する種類の問題ですから、後処理はかなり面倒です。

そもそも鉄道事業者ごとに異なる運賃制度に、乗継割引や連絡運輸の有無など、複数事業者で錯綜する営業規則の根本をいじらずにシステムを導入したことが、結果的にシステムの負荷を高めているわけで、利害を超えた共通運賃制度などで、利用者に分かりやすく、かつシステム負荷も低減するというような知恵が働かなかったことが、問題の根本にあります。18m3扉の連接バスで前乗り後払いの運賃収受システムを踏襲するために、PASMO導入後も前扉だけで客扱いを行う神奈中Twin‐Linerを笑えないですね^_^;。

関連記事:

鉄道書評、自動改札のひみつ
PASMO品切れの深層
SuicaとPASMO連絡運輸あれこれ
SuicaとPASMO相互利用でどう変わる?

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Sunday, August 26, 2007

もう一つの九州新幹線

これはあくまでも未確認情報でして、裏を取ったわけではありませんので、そのつもりでお読みください。DJ誌の最新号でも整備の進捗が取り上げられている九州新幹線ですが、ここに至るまでに紆余曲折があったのは、ご存じの方も多いと思います。

そもそも総延長260kmほどの新線建設を、起点側でなく終点側の新八代~西鹿児島(→鹿児島中央)から着手したことに、ある種の政治的意図があったのだと思います。諸説ありますが、需要のある博多~熊本間を先行させると、採算性に劣る以遠の区間の整備が着手されない可能性があるということがまことしやかに言われたりもしますが、真偽のほどは不明です。また整備新幹線建設スキームに"スーパー特急方式"が取り上げられたことも、当該区間の建設を念頭に置かれたものという見方もあります。ま、いずれにしても整備新幹線自体が、国鉄分割民営化で計画の中断を恐れた複数の政治家の押し込みによるものであることは既に指摘したとおりです。

本来は根拠となっている全国新幹線整備促進法で想定されていなかった事態ですので、計画そのものをゼロベースで見直すべきだったのですが、そのような議論は為されませんでした。「新幹線は票になる」というだけの理由で、苦し紛れの整備促進に向かったのです。それ故に、気がつけば次々と新規着工が進み、スーパー特急やミニ新幹線で計画された区間も、いつのまにかフル規格に化けるということを繰り返し、JR東海を激怒させた既存新幹線買い取り代金への上乗せで無理矢理捻出した鉄道整備基金も2007年で枯渇することとなり、財源の当てもなく漂流する整備新幹線問題は、実にさまざまな問題を抱えながら進められることとなります。

そんな中で、九州新幹線鹿児島ルートに関しては、未確認ながら興味深い情報があります。スーパー特急方式で終点側から整備が始まったことで、西日本鉄道が、整備新幹線事業への参入をほのめかしたことがあるようです。詳細は不明ですが、考えられるところとしては、第二期の船小屋温泉~新八代間の計画を一部変更して大牟田で西鉄大牟田線(→現天神大牟田線)につなげて、鹿児島までの都市間輸送に参入することは考えられます。鹿児島中央までの建設キロは200km程度で、仮に最高速度160km/h、表定速度130km/h程度とすれば、大牟田~鹿児島中央間1時間半程度ですので、福岡(天神)~鹿児島中央間2時間半ということで、十分競争力を発揮できます。となればJR九州にとっては手強いライバルとなるわけで、このことでJR九州は整備新幹線事業に前のめりにならざるを得ない状況になったのではないかと考えられます。ある意味スーパー特急方式の裏をかいた話ではあります。

ま、この辺は無理して延命させた整備計画の隙を突く行動ということになりますが、元々整備新幹線の事業主体となるはずだった国鉄は解体されたわけですから、整備新幹線の事業主体に関しては、元々あいまいなところがあったわけです。一応並行在来線の切り離しを条件づける形で、在来線を管轄する事業者が事業主体となることが想定されていたんでしょうけど、無理して延命させた計画だけに、あいまいさが残ったわけですね。思えば北陸新幹線長野~上越間の着工時に、当時のJR東日本松田社長が、金沢までの一括着工に言及して物議を醸しましたが、その結果北陸新幹線の整備に消極的だったJR西日本の背中を押す形になったことと似ています。

今となっては真相は藪の中、あるいは九州選出の政治家が西鉄に騙らせただけなのかもしれませんが、実は真相はどうあれ、JR九州の立地条件のよさを感じます。西鉄という手強いライバルがいることが、JR九州にとっては重要なんです。元々九州は、北九州と福岡という2つの政令指定都市を抱え、かつ50万クラスの熊本、鹿児島から大中小さまざまな規模の都市が適度の分散していて、鉄道事業にとっては好立地ではあります。その点では札幌一極集中で、必然的に末端の過疎化が進行する北海道や、そもそも大都市が存在しない四国と比べれな、遥かに恵まれた立地ではあります。

が、このことは同時にライバルの存在が不可避であるということでもあります。条件の悪い北海道や四国でJRに挑戦する者が現れる可能性は低いですが、九州では昔から輸送市場が競争的でして、西鉄の前身の九州電気軌道(→北九州線)からして、阪神に倣ってインターアーバン(都市間電車)を目指し、1日数本の汽車ダイヤに、頻繁運転の電車で挑み乗客を奪い繁栄した会社です。また九軌系列の九州鉄道(2代目→天神大牟田線)も、同様に複線電化の高速鉄道に電車を頻発運転し、久留米までの乗客を奪い取った歴史があります。

そういった競争的DNAを持つ西鉄ですが、高速バス事業でも攻勢をかけ、福北ラインの3系統合計10分ヘッドをはじめ、とにかく運行頻度の高さが西鉄流で、スピードで勝る鉄道から客を奪っている状況があります。それゆえにJR九州は競争市場で経営に緊張感を持たざるを得ないわけです。

逆に福岡都市圏輸送では、筑豊本線と篠栗線の電化で福北ゆたか線と称して輸送改善したり、天神大牟田線との並行区間に新駅を作って西鉄の営業基盤を切り崩すような動きもあります。両者切磋琢磨して輸送の質を高めることが、結果的に乗客の利便性を高めているとも言えるわけです。そういう意味では、台湾鉄道当局が関与しなかったためにライバル関係となった台湾高速鉄道の事例に似ています。ま、台湾では高速バスも航空も全てライバルですから、コンペティター(競争者)が増えたところで大勢に影響ないのかもしれませんが。

鉄道事業は地域独占であるといわれますが、現実にはマイカーの普及で完全独占は不可能な状況です。それでも市場占有率が一定以上あれば、独占性が発揮できるんです。一般論では市場占有率40%を超えると独占事業といえるようです。その意味で例えば新幹線の開業と引き換えに航空が撤退するような区間では、本来新幹線の必要性自体に疑問があります。新幹線の対航空の優位性は1にも2にもその卓越した輸送力にあって、航空では代替不能なんですが、逆に航空のような需要に応じた柔軟な輸送サービスは苦手であるわけで、元々需要が旺盛な東名阪を結ぶルートで鉄道と航空が並存しているのは、その結果として乗客のトータルな利便性は高まるんです。そのことを忘れて航空を市場から締め出すためにリニアを建設すべしというのはスジが違うわけです。多様性こそ市場経済の特徴であり尊重されるべき視点です。

とはいえJR九州の経営はけっして楽ではない状況で、立地のよさと3島会社に渡された経営安定基金の存在を根拠に、九州新幹線全通のあかつきには、株式上場を果たして本州会社を凌ぐ優良銘柄になると期待する向きもあるようですが、既に3島会社の株式上場は財務省サイドで諦めているようです。整備新幹線では事業者であるJRの受益のほとんどは、線路使用料として鉄道建設・運輸施設整備支援機構に徴収されてしまうので、新幹線単体での利益貢献の度合いは低いということを押さえておく必要はあります。

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Tuesday, August 14, 2007

鉄道書評、線路にバスを走らせろ

夏休みシーズンで、鉄道関連ブログにも訪問記や旅行記が多数アップされている中で、当ブログ管理人はPC熱と闘いながら(笑)、書斎派鉄の道をまい進しております(苦笑)。

線路にバスを走らせろ 「北の車両屋」奮闘記(朝日新書 56) (朝日新書 56)
国鉄末期からの地方交通線転換によって、多くの営業路線を失い、事業規模を縮小した北海道の鉄道ですが、それでも残った路線の状況は厳しく、営業キロ2,500km中6割はローカル線という状況です。当然存廃が問われる路線も多く、JR北海道発足後にも、池北線の三セク転換と深名線のバス転換が実施されました。赤字路線の分離は、それ自身は経営面で必要なことには違いないのですが、同時に事業規模の縮小を余儀なくされるわけですから、JR北海道にとっては痛し痒しの部分です。

また90年代の金融危機のときに、北海道拓殖銀行が突然の経営破たんに見舞われたように、北海道では地場産業の衰退に直面している実情もあり、鉄道事業の撤退は、地域の衰退に拍車をかけることにもなります。また元々鉄道と共に開拓が進んだ北海道では、鉄道事業そのものもが産業集積として地域雇用を支えていた現実もあります。先日20年越しで和解、決着した旧国鉄職員のJR各社への採用を巡る労使対立も、元をただせば北海道の鉄道事業縮小に伴なう余剰人員の北海道以外の各社への受け入れを巡って、人選に所属労組による差別があったかどうかが争われたものです。

それやこれやで問題を抱えるJR北海道ですが、同時にリゾート列車や高速振り子列車などなど、実に多くの技術開発を行って、鉄道の活性化に取り組んでいるのは、あとがない崖っぷちゆえでしょうけど、ある意味地域分割のプラス面とも評価できます。最果ての大地で鉄路を維持することの意義を考えさせます。

以前、北海道旅行で、日高から襟裳岬を通って十勝へ抜けるルートを取ったときに、札幌からの鉄路乗継は飽きそうだから(笑)、道南バスの直通高速バスで浦河へ向かったのですが、浦河ターミナルで降りて最寄の東町駅へ行って驚いたのは、列車の少なさでした。襟裳岬方面へはどのみち様似でバスに乗り継ぐわけですが、並行する国道のJRバスのバス停を見ると、ほぼ1時間に1本のバスが走っているのですが、「学休日運休」の注意書きがあります。つまりは事実上の通学バスと化しているのですが、そうすると列車は何のために走っているのだろうかと疑問が出てきました。そう、線路がある以上、列車を走らせるしかないのです。

一応襟裳岬へ向かう観光周遊ルートには組み込まれており、様似から襟裳岬方面へのバスは。列車に接続をとっているわけですから、両者が棲み分けているわけです。しかし同じJR北海道同士で、両者の連携がないのは、ただでさえ少ない旅客を分けあう分、収支面では不利になります。北海道には鉄路と並行する整備された道路という似たロケーションのところは多数あります。DMVはそんな北海道では割と自然な発想の産物なのかもしれません。

そういった背景で、DMV開発に着手したわけですが、歴史を紐解けば、同様の発想で何度もトライされ、死屍累々の失敗を積み重ねてきたキワモノでもあるわけです。それを幼稚園の送迎用園児バスを見て「そのまま線路に乗せられそうだ」と発想するところが見事です。しかも軽量で線路を傷めないし、GPSなどの位置情報システムを利用すれば軌道回路を用いた閉そく信号も省略できるとか、行き違いも片方が線路を外れればよいとか、必要に応じて線路から外れた集落などへ運行できるとか、万が一の災害のときにも、線路と道路の復旧している部分を自在に行き来して運行を確保できるなどなど、発想が広がります。そう、DMVは最果てのLRTと考えれば理解が深まりますね。

基本的に引き算による技術革新ということです。鉄道は「金を失う道」といわれるように、線路を設置し維持するのに多額の費用がかかるわけで、需要が見込めないところで成立させるのは難しいわけですが、容赦のない過疎化の進行で乗客が減り続ける最果ての鉄路を残すには、現状に何かを付け足すのではなく、要らないものを削ぎ落として本体を維持するという発想なんですね。JR西日本の富山港線が富山ライトレールとして再生されたのに似ています。整備新幹線事業の着手に関連した富山市の都市計画で富山駅周辺の高架化事業が行われるときに、ローカル線である富山港線を新しい高架駅へ乗り入れさせるには多額に費用が発生するわけですが、アプローチ部分を都市計画道路上の併用軌道とすることで、ローカル線を都市交通に取り込んだわけです。足し算ではなく引き算で成功した事例ですね。そう、ヘビーレールから余分なものを割り引いてライトレールにするのであって、例えば元々低規格で放置されていた東急世田谷線が、軌道回路を用いた閉そく信号機と、連動する旧国鉄ATS-B相当の車内警報装置や列車無線を装備し、冷房付の新車に置き換え、ホーム嵩上げでバリアフリー化するなど、多額の費用をかけて列車定員を減少させ駅での客扱い時間を伸ばしスピードダウンした現実を見ると、技術革新の方向性が誤っていると言わざるを得ません。

大量輸送こそ鉄道の使命ですが、一方で過疎化の進捗で公共交通の維持が難しい地域も多数あり、居住放棄につながる限界集落が増えていると言われます。このままでは国土が荒れ果て、経済的パフォーマンスを低下させる要因にもなりかねない中で、公共交通を維持するソリューションの必要性は高いといいえます。その意味で身の丈にあったイノベーションとして、DMVの行く末を見ていきたいと思います。

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Wednesday, August 08, 2007

鉄道書評、民営化で誰が得をするのか

今年は国鉄民営化20年の節目の年ということで、国鉄民営化の総括のようなことをずっと考えていたのですが、テーマが大きすぎてなかなか書けずにいたところ、この本に出会いました。

民営化で誰が得をするのか―国際比較で考える (平凡社新書 384)
鉄道書というわけではないんですが、いわゆる「民営化」の国際比較という視点は、なかなかユニークです。タイトルでわかりますが、筆者はやや民営化に懐疑的な立場ですが、英国のサッチャー改革の意義などの理解はありますので、そのそもサッチャー改革と小泉改革の違いすら理解できない日本の多くの論客よりはましです。

ただし新書版のボリュームでは、十分に語り尽くせないせいか、やや誤解を招くような表現が見られるのは要注意です。例えば英国の国鉄改革については、比較的あっさりとしか触れてませんが、線路保有会社と多数の列車運行会社間のコミュニケーション不足といった表現に留まっております。以前サイドバーでご紹介した鉄道改革の国際比較に、詳しい経緯が書かれておりますので、そちらもご参照ください。英国の鉄道改革は、ひとことでいえばサッチャー改革の正当な後継者をアピールしたい当時のメージャー首相によって推進されたのですが、実際は運輸相に丸投げしていて、運輸相は運輸相で原理主義的に制度をいじくり回し、列車運行の入札に応札が殺到するなど、混乱の極致でことが進み、当の運輸相がスキャンダルを暴かれて辞任するに至り、当面国営で残す筈だった線路保有会社のレールトラック社をいきなり民間に払い下げて、しかも初年度から黒字化を意識づけて改革成功をアピールしようと功を焦った結果、必要な保守作業が手抜きされたものでした。結果的に選挙で大敗を喫するんですが、この辺、小泉改革の正当な後継者をアピールしながら、閣僚のスキャンダルと年金問題で墓穴を掘った安倍政権に似てますね^_^;。

ひとことで民営化といっても、目的や手法はさまざまで、上場による政府保有株式の放出にしても、公募して抽選とした日本のJR,JT,NTTのケースと、一部従業員に有利な条件で売却したサッチャー政権下での国有企業民営化のケースとでは、かなり趣きを異にします。これはひとつには労組の反対に対する切り崩しという側面もありますが、いわゆる大衆資本主義という観点から、株式が一部富裕層が集中保有して富を独占することへの国民感情の配慮と、個人株主を増やして国内株式市場の厚みを増すという目的もあったようです。この辺は新規上場時に公募価格を吊り上げて、結果的に1年以内に値崩れして国民を損させたNTTの場合と彼我の差は大きいですね。

それと最近日本でも多く見られるようになったPFI(Private Finance Initiative)やPPP(Pubric Private Partnership)なども、民営化の文脈で整理されており、最近では英国をはじめむしろこちらの方が主流となりつつあるようですが、日本でPFIといえば、中部国際空港のようなインフラ整備に偏っている印象があります。本来は整備に留まらず、期限を切って運営も民間に委託し、整備費用を償還後国へ返還するなど、ソフト面を重視した仕組みです。PPPに関しても、行政とNPOの共同事業という形態をとるケースが多いのですが、日本では行政側がNPOを安い下請け程度にしか認識していないケースが多く、問題をはらんでいます。例えばこんなニュースがあります。

湊鉄道線存続へ住民出資の「第4セクター化」検討
現地の詳しい事情はわかりませんが、第四セクターなどという造語までして、要するに自治体が受け皿三セクへの出資を渋っているので、代わりに市民から寄付を募ろうということです。心配なのは、地縁的NPOが往々にして寄付金強要機関となる可能性があることでして、NPOの運営がどれぐらい透明に行われるのかが問われます。これなどいわゆるPPPに分類される事例ということになるでしょうけど、自治体が増税して得た資金を出資するという方が、地方議会の監視が効くという意味で、本来は望ましい形です。NPOでなければならない理由は問われます。

あと日本の三公社をはじめ、日本航空や電源開発など、政府出資の特別会社の株式放出で政府が得た売却代金の行方なんですが、本来は赤字国債の償還に使われるはずですが、今のところ公式発表はなく、日本経済新聞に'05.9.3付でおそらく独自取材の結果と思われる図表を掲載しているに留まります。しかも国債償還の推定値は31.3兆円ということで、国債発行残高からすれば微々たる数字です。そういえば大阪のJR東西線(建設線名片福連絡線)の整備主体となる三セク大阪高速鉄道の政府出資分を「NTT株売却益活用事業」とうたっていたことが思い出されますが、全部ではないまでも、一部官僚のタンス預金になっている疑惑はあります。これを餌に利権政治屋を手なづけているとすれば、本来財政再建が目的だった筈の民営化が食い物にされたということにもなります。このあたりは参院で与野党逆転となったのですから、国政調査権を活用して切り込んでほしいところです。

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Monday, July 30, 2007

JR東日本新型新幹線車両は時速320km

東海道山陽新幹線のN700系が7/1に営業運転を始めましたが、JR東日本の新幹線にも新型車両が登場します。

JR東日本、世界最速320キロ車両導入へ
JR東日本のプレスリリースはこちらです。
新幹線高速化について
リリースにあるように、2005年から高速試験電車「FASTECH360」で行ってきた走行試験の成果を踏まえ、2010年の新幹線青森開業時に営業投入を予定しており、具体的な速度や列車本数は未定ということですから、320km/hの最高速は、当面の目標ということで、試験車で想定した360km/hへの挑戦は続けるようです。ゆえに例の空力ブレーキは今回採用されず、将来へ温存ということのようです。

アクティブサスペンションと車体傾斜装置を搭載ということで、N700系と似ていますが、アクティブサス自体はJR西500系で初採用されたものですし、車体傾斜装置に至っては、JR北海道が線路の弱い在来線向けに開発したものですから、別にJR東がN700系を真似たわけではありません。むしろJR東海はそれらの成果を取り入れてN700系を開発したことは、新幹線500系の功績でもご指摘申し上げたとおりで、それどころかアクティブサスはよほど気に入ったようで、313系5000番台でも採用されました。在来線の汎用車としては贅沢なメカですが、高速走行時の左右動を減衰させて軌道狂いを抑制する狙いでしょうか。線路保守量は減らせますが、車両側の保守作業量は増えますから、どちらが有利かは長期的に見なければわかりません。

JR東の新型車の場合、力行性能だけならE2系で既に320km/h対応はされているようですから、FASTECH360の志しが後退したように見えますが、一段の高速化に含みを残しているところが、JR東日本らしいといいますか、民間企業らしさを感じます。同じように政府保有株完全放出で完全民営化された本州会社ですが、経営のスタンスの違いが鮮明ですね。

といいますのも、北海道新幹線の新青森~新函館間が既に着工され、現時点では確定しておりませんが、札幌延長の構想もあるだけに、その際の対応を織り込んだ技術開発に狙いがあるということです。この辺は整備新幹線の政治性とでも言いますか、元々オイルショック時の総需要抑制策で東北、上越、成田の3新幹線が建設凍結されたあおりで、着工の目途が立たなかった整備計画区間を、国鉄分割民営化で空文化することを恐れた運輸族議員による整備スキームの押し込みで生き残った新幹線計画ですから、JRにとっては、都市間輸送インフラとしての幹線鉄道の公費によるグレードアップと合法的に在来線を切り離して、非採算のローカル輸送と貨物鉄道への線路賃貸から撤退できるという有利な条件が与えられたわけで、その結果青森(正確には新青森)までの整備は願ってもないところである一方、会社が変わる新青森から先については、本来無関係なんですが、根元受益とやらを持ち出して、JR東日本からも増収分を召し上げようという議論がされてます。ああ社会主義ニッポン-_-;。

とはいえJR東日本としても、新青森から先へ伸びるならば直通列車を走らせて増収に結び付けたいわけで、旺盛な需要を背景にJR西の山陽新幹線を介した九州新幹線への直通など端から考えないJR東海の東海道新幹線とは事情が違います。そういった意味で、北海道新幹線の開業は、JR東にとっては政治的なリスク要因ということになります。政府にリニアに金出せなどとたわごと言ってる余裕はないのです。

ついでながら、JR北海道にとっても、北海道新幹線はリスク要因でして、とりあえず着工された新函館までの区間については、青函トンネル区間が貨物と共用の3線軌となることで、前後区間も含めて並行在来線として切り離しできる区間が存在しないため、経営上のメリットは薄いのですが、地元の期待を前に事業を引き受けるしか選択肢がない状況です。加えて青函トンネルの維持管理費問題という、JR北海道にとってはきつい負担が待ち受けており、旅客輸送だけで比較すると青函航路時代を下回る実績しかない津軽海峡線のてこ入れに舵を切らざるを得ない事情があります。正式発表はされておりませんが、江差線末端区間の木古内~江差間の廃止は噂されており、あるいはDMVの導入線区となる可能性もありそうです。一方で車体傾斜装置と制御付振り子の併用で140km/h営業運転を目指す新型特急車で函館~札幌間2時間台という意欲的な目標を掲げておりますが、都市計画の検討段階で新幹線駅予定地と目されていた土地にタワービルを建てたことと相まって、新幹線の札幌延長はまず不可能とJR北自身は考えているのでしょう。

というわけで、民営化のトップランナーと目されるJR東と、存亡の危機感漂う殿のJR北が共に民間らしさを見せる一方、他社の現状はいろいろ問題ありですね。

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Sunday, July 22, 2007

鉄道書評、自動改札のひみつ

最近更新が滞っておりますが、書評なんぞで新境地を拓いてみますか。

というわけで、まずは自動改札のひみつです。今や首都圏でも当たり前になった自動改札ですが、実は民営化直後のJR東日本による駅業務の近代化、機械化の取組みがきっかけで普及に弾みがついたものです。既に関西地区では1970年の大阪万博で試験導入された後、主に私鉄と地下鉄で広まっていたのですが、当時の技術では首都圏のラッシュへの対応に難点があったために広まらず、旧国鉄の武蔵野線や、営団地下鉄、東急電鉄などで部分的に導入されたに留まり、磁気券比率が低いために省力化効果はほとんどなかったようです。

JR東日本では1990年の山手線での導入を皮切りに、首都圏エリアで急速に普及させたんですが、ラッシュ対策とともに、関西のシステムの単純な移植ではなく、旅客サービスの向上も含めたコンセプトが模索されました。その一つがSFカードのIOカードであり、ICカード乗車券として発展型のSuicaであるわけです。

あと意外だったのは、自動改札は省力化システムではあるけれど、例えば小児その他の割引運賃の適用旅客かどうかや、定期券の持参人と名義人が同一かどうかなどは判定できないわけで、基本的に人による監視を前提としており、不具合によるドア閉鎖のリセットを人が行うわけですが、これが頻発すると省力化効果を削いでしまうわけです。ゆえに当初入場記録を書き込むフェアライドシステムが導入されなかったのも、チェックを厳格化して省力化効果が失われることについての見極めがつかなかったんですね。厳格化には自ずと限界があるわけです。

またハンドラーと称する磁気券を読み書きするメカが、高度なメンテナンスを要するため、ICカード乗車券の導入は即メンテナンスコストの圧縮につながりますし、磁気券が減れば券売機の台数も減らせるので、省力化の波及効果は大きいですし、駅ナカビジネスの店舗スペースを生み出せるなどのメリットがあるのですが、私鉄とバスのPASMO導入に関しては、その辺のメリットが十分認識されていなかったようです。よく言われる「SuicaとPASMOが共通利用できることが周知されていなかった」点ですが、後付けの言い訳でしょう。共通利用に関しても報道などでかなり広報されてましたし、「Suicaで私鉄・バスに乗れる」という広告も流れていたのですから、殺到した購入者の多くは、承知の上での行動と考えられます。むしろマーケティング的にはSuica所持者にまで買わせることができたのですから大成功だったわけです。カードの在庫切れは、一気に普及させることで利用度が上がる電子マネー機能を宝の持ち腐れにしかねず、事実後発のnanacoが7-11の加盟店1万店を背景に利用度トップに躍り出たことからも、PASMOの躓きは交通カード陣営には痛い失点です。

それとSuicaとPASMO連絡運輸あれこれで取り上げたのですが、PASMO導入にあたっての乗継割引など、乗客側に分かりやすいメリットを訴求することができれば、更に普及させることも可能だったでしょうけど、全て後の祭りです。設備近代化でPFIで民間とコラボレートしたロンドン地下鉄が3月にICカード乗車券普及を狙って初乗り運賃を4£(直近の外為相場で1,000円相当)に値上げして、ICカード利用の優位性を演出してますが、私鉄中心のPASMOでそのような戦略性が発揮されないのは残念です。一応都営バスでは1回目の乗車から90分以内に再度都営バスに乗車した場合に100円の割引運賃を適用する"90分ルール"を採用してますが、公営交通の方がよほど戦略的ですね。

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Sunday, July 01, 2007

越美北線と高千穂鉄道の間

日本の原風景を代表する中山間地の2つの鉄道で明暗を分けたニュースです。

JR越美北線が全線開通・3年ぶり
宮崎県の第3セクター高千穂鉄道、全線廃止へ
越美北線は2004年7月の越前豪雨で被災、高千穂鉄道は2005年9月の台風14号による被害です。路線立地の似た両線の明暗を分けたのは、特定地方交通線廃止に揺れた国鉄末期、国鉄に残ってJRへ移行した線区と第三セクター鉄道に転換された線区の明暗という整理は可能です。鉄道事業はスケールメリットがものをいうのは確かです。

しかし決定的に異なるのは、やはり行政の対応でしょうか。過疎化の進む越美北線沿線ですが、その中で沿線の大野市が、以前から住民の定期券購入者に補助金を支給してきたことが効いているのではないかと思います。これもそもそもは、かつて大野市へ達していた京福電気鉄道(現えちぜん鉄道)越前本線の勝山―大野間廃止の苦い経験からきているものです。

大野市はかつて県都福井市へ2本の鉄道が通じていたわけで、地方都市としては破格の好条件でした。私鉄である京福の方が、運転頻度も高く、利便性に勝っていたのが、沿線の過疎化とモータリゼーションとともに経営が苦しくなり、度重なる運賃改定で高くなる一方、国鉄時代の全国一律運賃制度のもと、低廉な運賃が維持された越美北線に、沿線利用者が流れるようになります。結局京福は、生き残りのために勝山から先の区間を廃止して、残る区間の運行に経営資源を集中させる選択をします。私企業としては当然の選択です。

これによって越美北線が唯一の鉄道となった大野市では、特定地方交通線問題で結果的に国鉄に残った越美北線の廃止問題に危機感を持つようになります。で、単なる陳情では廃止は阻止できないという判断があったのでしょう。前記の定期券購入補助を行って、利用者を補助する形で支えていきました。そのことがあったからこそ、越美北線の復旧費用40億円の一部を県が負担することに道がひらけたのでしょう。実際被災当初は県は負担を嫌ってJR単独復旧に言及しておりましたが、結果的に一部負担することになりました。

その間に県レベルでもいろいろありまして、1992年に京福電気鉄道が福井支社管内の鉄道線全廃を打ち出したのに対し、97年に県と沿線市町村で対策協議会を発足させ、行政支援を含む活性化の模索があ始まります。このとき既に京福の廃止表明から5年経過しており、当時の行政の危機感の希薄さが読み取れます。と同時に、需給調整規制撤廃を盛り込んだ改正鉄道事業法の施行で、廃止に際して地元との協議で不調でも1年後に廃止できるいわゆる見切り発車条項が盛り込まれたことで、自治体側が対応せざるを得なくなったというのが本当のところでしょう。

京福も見切り発車に踏み込まず、地元との協議を続けたわけですが、これには整備新幹線の北陸新幹線計画が絡む福井駅付近の連続立体化事業事業をめぐる問題がさらに絡んできたものと思われます。JR北陸本線の高架化にあわせて、京福も高架で福井駅へ乗り入れる形で福井市で都市計画決定されていたこで、路線の存廃が都市計画を不確定にしてしまうという珍しい現象が起きたんですね。またいつになるかわからないけれど、新幹線が福井へくれば、フィーダー輸送で京福の鉄道線が息を吹き返す可能性もあるだけに、特に自治体側が粘ったのでしょう。けれど事態は意外な展開となります。

2000年12月17日に越前本線志比境―東古市間で列車正面衝突、さらに2001年6月24日に保田―発坂間で再度の列車正面衝突事故と、半時に2回の重大事故で全面運休に追い込まれ、復旧のめどがたたない中で、2002年に第三セクターのえちぜん鉄道を発足させて、翌年2月に京福から鉄道資産を譲り受け、同年8月に三国芦原線。10月に越前本線改め永平寺勝山線が営業運転を始めます。福井県は地域として公共交通の危機に直面し、それとともに議論も活発化、福井駅高架化に対しても、既に名鉄から岐阜市内線の中古車を導入してLRT化を指向する福井鉄道との直結を踏まえた高架駅乗り入れ中止へと舵を切ることとなります。

えちぜん鉄道、一部LRT化・福井県が計画変更へ
かくして福井では、公共交通の廃止議論が地域の危機感を強め、鉄道の存続に行政が大きくコミットすることとなりました。ただし越美北線は一部運休の影響もあるでしょうけど、徐々に利用者を減らしている現実があるわけで、とりあえずの復旧、存続ではあります。

高千穂鉄道については、まずは行政が全く腰が引けている状況ですから、存続はそもそも無理筋ではありました。それでもとりあえず観光鉄道としての復旧をめざし、神話高千穂トロッコ鉄道という新会社を発足させ、寄付を募ってきたわけですが、寄付金は予定額を大きく下回り、新会社への資産継承のために休止扱いを続けてきた高千穂鉄道がいつまでも会社清算ができないということで、鉄道資産は新会社に継承されることなく廃止されたわけです。これでほぼ復活の可能性は絶たれました。

善意の寄付による鉄道存続といえば、関東の銚子電鉄の事例が直近で話題となりましたが、首都圏に立地し、関連事業のぬれ煎餅のネット直販サイトがアクセス急増で急遽受付中止となるなどが話題となって、メディアへ露出したことが大きかったですね。こういったことがなければ、善意の寄付だけで必要な資金を集めようというのは、自ずと限界があります。福井でも決して当初から行政は積極的だったわけではなく、地域の存亡にかかわる事態から危機感が生まれ、行政や住民に共有された結果でもあります。悲しいかな目に見えるシンボリックな出来事にしか人々は反応しないわけです。

関連記事:

高千穂鉄道復旧は成るか?
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高千穂鉄道復旧実質断念、地域経済の袋小路
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Saturday, June 30, 2007

JR福知山線事故最終報告書続報

えー、前の記事は大急ぎでまとめたので、報告書の内容までは立ち入っておりませんが、なにしろA4版275ページの分量ですから、読むだけでも時間がかかります^_^;。興味のある方は、航空・鉄道事故調査委員会のwebページからダウンロードでしてご覧ください。

ま、とにかく読むだけでも大変な代物ですが、かなりの部分を用語解説などに費やしておりますので、大まかなストーリーとしては、速度オーバーによる転覆脱線事故で、高見運転士の操作ミスによるブレーキ遅れが原因と、至ってシンプルなストーリーとなっております。そしてそうした運転士の異常行動を誘発したのが、JR西日本の企業体質ということで、それを説明するために、実に細部にわたって記述されております。

日勤教育に代表される精神論的ペナルティが、運転士にペナルティの回避行動を取らせた結果、伊丹駅でのオーバーランの指令への過少申告を車掌に依頼し、それを確かめるための無線交信の傍受を行うことに気をとられた結果という認識を示したわけで、改めにやりきれないものを感じます。

そのことに対する傍証として、実にさまざまな問題点を現場社員からのヒアリングなどで集めておりますが、事故地点での速度超過は過去にも起きていて、しかも指令への報告がされていなかったなどが明らかにされております。またATS-Pの設定速度の誤り速度計の誤差など、安全対策を無力化しかねないミスも発覚しており、安全管理に大いなる疑問をつきつけております。これらを根つめて読むと、JR西日本を利用したくなくなります。

また以前の速度超過事故でも見られるようにいわゆる事故に至らないヒヤリハット(インシデント)が報告されないことはかなり日常的に見られるということで、現場のフィードバックなしにいかなる安全対策が可能なのでしょうか。日勤教育に代表される精神論的ペナルティの弊害以外のなにものでもありません。事故当日、高見運転士は車掌に「まけてくれへんか?」とオーバーランの過少申告を依頼したことに通じます。

というわけで、限りなくJR西日本をクロに近いと認定しているのですが、当ブログで主張しております経営トップの刑事訴追に至るかどうかという点では、これは日本の司法が抱える問題のほうがネックになりそうで心配です。

朝鮮総連本部問題で、当初総連の資産差押え逃れの緊急避難と報道された名義変更が、総連を被害者とする緒方元公安庁超過の詐欺事件にすりかわったのですが、一説によれば総連の代理人の土屋弁護士の扱った事件で敗訴して煮え湯を飲まされた東京地検の意趣返しと言われております。また緒方元長官も、法務省OBでもあるわけで、法務省内部の権力闘争との見方もあります。この手の話は情報が偏って伝えられるので、真実はわかりませんが、こういった検察のストーリーに易々と乗ってしまう独立性に疑問符がつく司法で裁けるのかどうか疑問です。

思えば信楽高原鉄道事故では、早い段階で不起訴処分が決まり、その後信楽高原鉄道を被告とする公判の過程で亀山CTCセンターの方向優先テコの存在が明らかになり、かつ事故後速やかに撤去されマニュアルも破棄されたなど、明らかな証拠隠滅に走ったJR西日本ですが、今回もぎりぎり逃げ切るつもりなんでしょうか。今回こそ裁きが届かなければ、この国では法の支配は有名無実ということになってしまいます。下手すると中国以下かもしれない^_^;。

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Thursday, June 28, 2007

速報! JR福知山線事故調最終報告

というわけで、JR福知山線尼崎事故の事故調最終報告が出され、国交大臣へ提出されました。ただし国交省のwebページではまだ公表さえれておらず、一般公開は少し後になるのでしょう。

(6/28)JR福知山線脱線事故、事故調が最終報告
事故原因は速度超過による転覆脱線事故ということで、運転士のブレーキ遅れというシンプルなものなのですが、JR西日本のいわゆる日勤教育に見られる懲罰的な体質を批判するなど、基本的なところは押さえられているようです。ただし事故の再発防止については、株主総会の顛末などから判断して、少なくとも経営陣には声が届いていないように感じます。

そもそも120km/hから70km/hへの減速というのは、運転士にはかなり緊張を強いられるものかと思いますが、高見運転士は自らの伊丹駅のオーバーランを報告する車掌と指令の無線交信を傍受していたなど、やや緊張感に欠けるところが疑問です。その結果のブレーキ遅れということで、高見運転士の異常行動は別に異常心理によるものではないわけで、それがわかったことで、実は深刻な問題なんですね。

というのも、事故直後にJR西日本はR300mの転覆限界の速度を133km/hと発表し、事故列車の速度では転覆しないと言っていたわけです。これは当時事故直後に鉄道総研に問い合わせて弾き出した数字で、無風、乗客0、横振動0という仮定の計算値だったことが後でばれてしまいます。実はこの点が示唆に富むのですが、経営トップのこのぬるい認識が、現場社員にも共有されていたとすると、高見運転士の緊張感のない運転態度の説明がついてしまうという点で恐ろしいのです。つまりは事故原因はブレーキ操作の遅れではなく、伊丹駅のオーバーランによる遅れを取り返そうとする心理が働いた可能性があるということですね。だとすればJR西日本という会社は、かくも安全に関する認識が甘かったのかと愕然とします。

事故車両の207系についても、事故後、重心高やボルスタレス台車の安全性についての指摘などもありましたが、多分限界性能で見ればボルスタレス台車はボルスタ付台車よりも転覆しやすいのかもしれませんが、そもそも日常の営業運転で曲線部で速度超過を試すようなことをすることが異常なんで、これらの議論は事故原因とは直接結びつきませんでした。

ま、確かにボルスタ付台車の方が、ボルスタ(揺れ枕)と台車枠を枕ばねで支えてボルスタアンカー(揺れ枕吊り)で吊る構造なので、このボルスタアンカーの吊り構造が曲線部で遠心力を打ち消す働きをしますが、ボルスタレス台車では遠心力による枕ばねの偏倚で遠心力を増長しますし、そもそもボルスタの有無で台車質量が異なりますから、転覆に対する限界性能は前者が高いはずです。だからといって乗客を乗せた営業運転で、限界を試すなどは論外です。実際の制限速度は乗り心地を阻害しない横方向の重力加速度の限界値(0.08Gといわれます)で決まりますので、ボルスタレス台車犯人説は当初から胡散臭いものだったといえます。で、この辺は鉄道関係者にとっては常識に属する話だと思うんですが、その意味で事故直後にJR西日本の転覆限界133km/hの発表があったときに、大いに違和感を感じたわけです。営業運転で限界を試すのかい(怒)。

というわけで、やはり再発防止のためには経営トップの刑事訴追は避けて通れないところかと思います。

関連記事:

迷走するJR西日本、阪急阪神乗客減少でも強気のわけ
あれから2年の福知山線事故

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Sunday, June 24, 2007

JR東日本東北線架線事故、過密輸送の果て

ンまぁ大変な事故でした。

通勤の足、大混乱・JR東北線で架線切れ停電
原因は信号停止の際にパンタグラフがエアーセクションにかかって大電流が流れて溶融したものということです。
JR停電事故、禁止区間での停車が原因
というわけで、明らかな人災ですが、運悪くというか、事故当日はJR東日本の株主総会の日だったこともあり、総会は荒れました。
JR東日本の株主総会、過去最長の4時間32分
ま、これも巡り会わせか^_^;。JR東日本に対しては、国交省から警告が出されました。
国交省、停電事故でJR東日本に警告
というわけで、朝の通勤時間帯の事故だっただけに、影響は大きかったわけです。

ま、事故自体は人災といえますし、お粗末ではあります。運転士はベテランだったようですが、エアーセクション関連の停止禁止は承知していたはずですし、万が一停止してしまった場合の脱出措置もわかっていたはずなので、なぜにこのような不注意ミスを犯したのかはわかりませんが、ラッシュで先行列車がつっかえていて、停止信号に頻繁に引っかかる状況で、ATS-Pなどの保安装置のバックアップがあるだけに、安全監視の緊張感が維持できなかった可能性はあります。つまりは高度な安全対策の積み重ねも、必ずしも万全とは言い切れないのが現実というわけですね。特に死傷事故につながらないこの手の事故では、不注意ミスの発生そのものを防ぐのは難しいところがあります。

逆にラッシュで高密度輸送の渦中で、かつただでさえ雨天時には遅延が起きやすい中で、乗務員の緊張感は高いはずですが、同時に先行列車の遅れで発進停止を繰り返す渋滞というかダンゴ運転の状態では、ハンドル操作の反復が惰性化して緊張が緩むことは、自動車で渋滞にはまった場合などにも感じるところです。となると有効な再発防止策は難しいかもしれません。

となれば事故が起きた場合の復旧の迅速化や代替輸送路の確保など、緊急時の危機対応力の強化が重要なんですが、この点もJRだけを責められないところがあります。報道によれば停電で駅間に停止した列車は6本あり、うち5本の乗客を線路上を最寄り駅へ徒歩で誘導したそうですが、朝ラッシュう真っ盛りですから、少なく見積もっても1列車当り2,000人以上の乗客がいたはずで、合計1万人以上の乗客を線路上を徒歩誘導したわけですから、その部分でかなりの時間ロスが発生しているはずです。まして雨天でしたし。そして事後に線路上の安全確認を行って、やっと運転再開となるわけで、復旧に5時間もかかったことが非難されてますが、これは致し方ないでしょう。架線の張替えと再通電に要した時間は2時間程度ですから、ハードの復旧は意外と早かったのです。

つまるところ東京一極集中で、特に首都圏の路線網では都心直通ルートがあるJRへ集中する傾向があるだけに、JR単独では事態の回避可能性は低かったと言わざるを得ません。この辺は並行私鉄がピッタリ寄り添って少ない乗客を奪い合っている近畿圏や中京圏とは感覚的に大きな違いがあります。混雑の原因である東京一極集中を放置して、JR東日本だけに解を求めても、問題は解決しないということですね。再開発で潤うデベロッパーや融資する銀行は、リスクを負わずに利益だけを得ている状況ですが、開発利益課税でも考える必要がありそうです。

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Sunday, June 10, 2007

迷走するJR西日本、阪急阪神乗客減少でも強気のわけ

本題に入る前に、サイドバーで取り上げました

JR福知山線事故の本質―企業の社会的責任を科学から捉える
をご紹介しておきます。メモでも書きましたが、現時点で事故の本質に最も迫れたのではないかと思う内容です。特に転覆限界に関する「国枝理論」からの解明は実に見事で、JR西日本の刑事訴追のネックとなりそうな予見可能性に関するアリバイが崩れたと個人的には思っております。ぜひご一読を。

阪急阪神の経営統合後初の決算がありまして、乗客減少に歯止めがかからない中で、増収増益の好業績となりました。

阪急阪神の前期連結最終益366億円――前々期は253億円の黒字
これが統合効果によるものかというと、必ずしもそうではなく、好業績の中身は不動産事業に依存しているもので、どちらかといえば地価の反転上昇の恩恵によるところだろうと思います。もちろん地価の動きも、統合により梅田地区の再開発でシナジー効果を期待するものかもしれませんが、むしろ東名阪ビジネスゾーンのオフィス需要増大の影響と見るのが妥当でしょう。

運が良かったと言ってしまえばそれまでですが、運を味方につけるのも大事なことではあります。そうなると「聞いちゃった」ことで刑事被告人となった村上さんが虎の尾を踏んでくれたことに感謝すべきでしょうか^_^;。少なくとも阪急の強気にはわけがあったというのが、今回のメインテーマです。

国鉄分割民営化によるJR発足以降、最も大きな変化があったのは関西圏であるというのは確かなところですが、JR西日本は京阪神圏アーバンネットワークの強化を経営の柱に、国鉄から引き継いだインフラを有効活用しながら、私鉄王国関西で、ひとり勝ちを演じてまいりました。その結果、京阪神圏に路線網を持つ阪急が特に侵食され、またバブル期の不動産開発事業への傾斜でとりわけ有利子負債を膨らませた阪急は、反撃しようにも後手を踏まざるを得ませんでした。また阪神大震災でも大きな痛手を受け、さらに復興でJR西日本が先行したこともあって、競合路線で乗客が逸走し、輸送シェア低下に苦しみました。

そんな苦境のなか、阪急が取った対策はなかなかユニークなものでした。手始めに地銀の池田銀行と組んで金融業へ進出、特に消費者ローンで審査時間を20分程度として、かつ駅構内の端末で申し込んで別の駅の端末で受け取るシステムを構築することで、消費者ローンに新風を巻き込みました。つまりは梅田で融資申し込みをして、電車で移動している間に審査を終了し、京都、神戸、宝塚などの着駅で現金を受け取ることができるわけで、鉄道事業者の特徴を巧みに利用した新しいビジネスモデルを立ち上げました。

思えば小林一三の時代から、沿線での住宅分譲というのは、当時としては画期的な新しいビジネスモデルであったわけで、苦境に立たされたことでチャレンジ精神のDNAが復活して先祖帰りしたのかもしれません。以後の阪急は次々と新しいビジネスを立ち上げます。その一つが共通乗車券カードのスルッとKANSAIですが、元々自動改札機導入が進んでいた関西では、阪急のラガールカードをはじめ、プリペイド型ストアードフェア乗車券カードが各社で導入されつつあった中で、対JR戦略として各社のSF乗車券カードの共通化されたもので、阪急主導で進んだことは知られております。

またレバレッジドリースによる車両調達に先鞭をつけ、これは関東の相鉄や京成をはじめ、遂には東急にまで波及して業界の新しいスタンダードになりつつあります。

そしてSF乗車券カードもICカード化しますが、ここでもJR東日本のSuicaなどでプリペイド型でスタートしてますが、阪急はポストペイド(後払い)方式を導入し、その後スルッとKANSAIのICカード版である共通カードPITAPAで標準となるなど、完全に主導権を握っております。そのPITAPA関連でこんなニュースがあります。

三井住友カード、マンション鍵として使える一体型カード
記事には触れられておりませんが、マンション購入者に1年間無料で乗れるサービスも盛り込まれるということで、マンション開発と連動した新たな囲い込み戦略として注目されます。まさに大攻勢をかけているという状況です。

とはいえ有利子負債1兆円超の阪急阪神HDですから、決して経営的には安泰ではないですが、かくも攻勢に出られる理由として考えられるのが、福知山線事故以来のJR西日本の迷走ぶりにあるのではないかと思います。ヒントは2006年3月期決算にあるんですが、事故後の復旧が遅れたことと、JRの企業体質に疑問符がつけられて利用が忌避されたことが相まって、阪急はそれまでの乗客減少基調が増加へと転じたわけです。まぁ何かしら他人の不幸につけ込むようでなんですが、JR西日本の攻勢にさらされて追い込まれた阪急だけに、逆に乗客はJRから取り返せるということにある種確信的なものがあったのではないかと思います。とすれば阪急の経営再建は、なかなか挑戦的でかつ手強いものといえるかと思います。

翻ってJR西日本ですが、噂はありましたが前掲本でも指摘されている頭の高い補償交渉に終始し、現場の改善要求が通らないなどの問題も指摘される中、阪急阪神の大攻勢に太刀打ちするためにも、事故の教訓を活かして乗り越えていってほしいと切に願うところです。でなければ未来はおJALと心配になってしまいます。

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Thursday, June 07, 2007

年金と国鉄の意外な関係

巷では、年金記録漏れ問題で揺れております。その一方で政府は明らかな論点はずしに奔走しておりまして、新たに1,430万件の入力漏れが発覚するなど、泥沼の様相となっております。

一方でメディアはまた本質を理解しないままの的外れな報道が散見され、JR尼崎事故や耐震強度偽装事件のような空騒ぎに終わりそうな気配が見えるのが気がかりです。特に「年金返せ」という論調が一部メディアに見られるのですが、制度を理解していないとしか思えません。

当ブログでは、社会保険庁の年金保険料免除の偽装に関連してこんな記事をアップしてますが、そこで日本の公的年金制度は、積み立て方式というよりは賦課方式に近いことを指摘すると共に、当面の高齢化の進捗による給付の増大に積立金を計画的に取り崩すことで対応し、完全賦課方式に移行することがベターという論を展開いたしました。

そう、そもそも公的年金で積立金は不要なんです。個人のライフサイクルでみて、現役時代に保険料を納付して、リタイア後に年金として受け取るのに、時間差を利用した政府の信用創造で機能は果たせるわけです。それを現役時代に積み立てた保険料を年金の形で取り崩す制度とすれば、確かに少子化など人口変動の影響を受けることはなくなりますが、それはつまるところ政府による強制貯蓄ということになるわけで、果たして公的年金として意味があるのかという点が指摘できます。別に預けるのは民間金融機関でかまわないはずです。それをあえて国に預けて積み立てることの意味が問われます。

実は厚生年金に関しましては、これこそが制度発足の最大の理由だったのです。戦火拡大する1942年、戦費調達目的で、公務員の恩給制度に似せてつくられたのが、厚生年金なんですね。これは同時に、とかく高収入を求めて会社を渡り歩く当時のサラリーマンに転職が不利に働く制度として、給与上昇圧力を抑制する目的もありました。そう、信じられない話ですが、戦前のサラリーマンというのは、一種事務の専門家、民間テクノクラートという性格が強く、コピーのない時代に謄本作成には原本の下にカーボン紙と白紙を敷いて文鎮で固定し、鉄筆でカリカリやっていた時代ですから、事務職の能力如何が会社の事業推進能力を決定するものだっただけに、高給取りだったのですが、戦時の国家総動員体制で1つの会社への忠誠を求められることになったのです。終身雇用制はこの時代から始まったと見られます。

というわけで、こんなニュースも意外性はないんですね。

(6/6)年金記録、最大1430万件の「未統合」・新たに発覚
当時の政府にとっては、戦費調達とサラリーマンの社畜化が同時にできる一石二鳥の妙案だったわけです。だから脱退して5年以上の年金記録は無視して当然という感覚はあったのでしょう。

ですから年金積立金の流用に関しても、元々戦費調達目的だったわけですから、罪悪感なしにできたでしょうし、実際年度を重ねて積立金が積み上がってくると、政府予算と違って裁量的に投資ができる資金として流用され、一部は旧大蔵省資金運用部資金すなわち財政投融資資金として、旧国鉄ほか多数の特殊法人に注入され、相当部分が焦げ付いたものと思われますが、JRに引き継がれなかった旧国鉄累積債務など一部を除き実態は不明です。

加えて年金保険料の算出に使われる割引率(将来給付に必要な積立金を金利で割り引いて現在価値に直すので、収める保険料は想定される給付額より少なくなるが、そのときに用いる割引金利のこと)を4%程度で固定しているのですが、長期にわたる低金利時代にも見直しはされませんでしたから、運用実績が4%に達していた可能性はかなり低いといえます。というわけで、年金を積み立て方式とするならば、現時点で明らかに多額の積み立て不足が生じているわけで、ある試算では800兆円にものぼると見られており、不足分の追加拠出は非現実的です。ということは、現時点で年金会計を清算して加入者に一時金として返済するとすれば、加入者たる国民は相当な損失を確定させることになります。というわけで「金返せ」は解決策たり得ません。

ちなみに公務員の恩給制度は、戦後共済年金として民間向けの厚生年金と外形的な整合性が取られたわけですが、同じく政府が保険者として管掌する被用者年金である厚生年金とは別立ての制度となりました。その結果年金積立金の運用も別立てで、特に国家公務員共済に関しては、法令で定員が定められており、株式などのリスク資産への投資もないこともあって、積立金は痛んでいないと言われております。つまりは腹立たしいことに公務員の勝ち逃げになるだけなんですね。

で、国鉄なんですが、戦後国の機関から公共企業体へと改組され公社となったときに、国家公務員共済から外れて国鉄共済となったのですが、これにもからくりがありまして、戦後大陸からの引揚者の雇用対策として国鉄が国策に乗って大量採用したのですが、その結果年齢構成のいびつな組織となったわけですから、将来の年金給付が膨らむのは目に見えていたので切り離したという穿った見方が可能です。そして実際、戦後大量採用世代の退職期にあたる80年代後半に急速に国鉄の経営が悪化し、国鉄分割民営化へと進むこととなります。

もちろん国鉄改革の理由はそれだけではありませんが、巷間いわれる赤字ローカル線問題というのは、それほど大きな要素ではなかったことは断言できます。そして郵貯、簡保、年金を財源とする財投資金が大量に注入された国鉄は解体され、債務の一部はJRへ資産売却代金の形で移転され、残りのほとんどは国鉄清算事業団によって一元管理されたものの、バブル崩壊で遊休不動産の再開発が滞ったこともあって償還が進まず、むしろバブル期の高金利の長期借り入れだったためにむしろ債務総額を拡大する失態となります。これが90年代中盤に旧国鉄債務問題として政治問題化し、業績好調なJRへの追加負担の議論にすり替えられたのは、記憶に新しいところです。

ここで政府は奇策を弄しまして、JR本州会社在勤の旧国鉄職員の共済年金から厚生年金への移行に伴なって発生する債務の負担を打ち出したんですね。当初発足する新会社の負担を軽減して早く収支改善をはかるのが妥当と判断されたのですが、予想以上に好調な本州会社の収支をみて、現役社員の年金という反対しにくい部分を狙い撃ちしたもので、かなり狡猾なやり方です。しかし当然JR各社から反発を受け、労使協調の反対運動が展開される事態となりました。それを見かねて収拾に動いたのが、社民党の土井党首で、政府とJR労組をとりなして半額負担でまとめ上げたのですが、正直いって足して2で割るグレーな解決といわざるを得ません。これ以来私は社民党嫌いになりました(笑)。

ま、てなことがありまして、実は郵政民営化でも年金問題は結構大きなハードルですし、いわゆる公務員法改正問題で天下り防止策がいわれますが、優遇された公務員年金の現実を見るにつけ、官僚の抵抗が大きい分野ですが、現行制度で進む限り、さまざまなトラブルはまだまだ続きそうです。百年安心なんて言ったの誰でしたっけ?

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Wednesday, May 30, 2007

飛んで飛んでまわってまわって国有化でおJAL

当ブログのリニア論争のコメントの応酬で少し触れましたが、日本航空(JAL)の前途が不透明です。

日航、資本支援を要請・主力行に2000億-4000億円
JALでは一応否定しているようですが、日本政策投資銀行とメガバンク3行(三菱UFJ,みずほコーポ,三井住友)へ資本支援を要請しているもようです。いわゆるデッドエクイティスワップ(DES)と呼ばれる手法で、JALが議決権のない優先株を発行し銀行が引き受け、それを当該銀行の債務返済に充てるもので、債務の株式化とも言われる手法です。

正直なところ、JALがここまで追い詰められていたのが驚きですが、更にDESによる資本支援の規模が2,000億~4,000億円という金額も驚きです。特に政府系金融機関である日本政策投資銀行の債務残高が3,000億円で、第2位のみずほコーポレート銀行が400億円ぐらいですから、何のことはありません、郵貯、簡保、年金などのいわゆる財投資金が大量に投入されていたのですね。

政策投資銀の資金自体は、JR各社や私鉄、地下鉄の新線工事などにも投入されていますし、政府系金融機関改革で、民営化方針も出されているわけではありますが、やはり債務残高が突出している点で異様です。実際に民間銀行ではJALから資金を引揚げる動きも見られ、中央三井信託銀行は60億円程度あった債務を投資ファンドへ売却したようですし、りそな銀行や地銀各行も追随しそうです。元々民間銀行の多くは、政策投資銀の融資につきあっていたふしがありますが、JALの経営改善がさっぱり進まず、金融庁の銀行への検査で、JAL向け債権の格付けを破綻懸念先へ変更するよう指導されたことで、追加融資が事実上不可能になったと考えてよいでしょう。加えて政策投資銀も民営化に先行して金融庁の検査を受けることになっていますので、事実上銀行融資なしに資金繰りをしなければならない状況ということになります。そこで事実上DESしか選択肢がない状況となったわけですね。

一応民営化予定とはいえ、政策投資銀がDESに応じて債務を株式化した場合、議決権こそありませんが、事実上の半国有化ということになるわけで、87年の完全民営化から20年の節目の急旋回は皮肉です。もっとも政策投資銀を仲介して財投資金が注入されていたと見れば、民営化自体が虚妄だったという見方もまた可能ではあります。JALは難局を乗り切るには、リストラを強化して銀行の資本支援に向けてのアピールが必要となり、かくして関連事業の整理に向かうことになったようです。

日航、JALカード株売却へ・追加リストラ着手
記事にもありますが、JALカードは非上場ながら時価総額1,000億円規模と見られ、特に会員に富裕層が多いということで、早速カード各社の争奪戦が始まっているようです。JALカードはSuica提携カードも発行しており、JR東日本も動くかもしれませんね。

元々政府出資の特殊会社だったJALの民営化20年は、ある意味JRの先行事例という意味合いもあったわけで、旅客6社貨物1社の特殊会社でスタートし、10年をめどに株式上場、政府保有株放出で完全民営化のシナリオを、JALは先取りしていたわけです。

ただし航空事業を取り巻く状況は様変わりでして、JALの不振も変化に対応できなかったということができます。87年当時は、いわゆる航空憲法による3社体制が健在で、JALが国際線と国内幹線、全日空(ANA)が国内幹線と国内ローカル線、東亜国内航空(TDA,後の日本エアシステム(JAS))が国内ローカル線で、幹線以外ではダブルトラックもなく、ほぼ完全に棲み分けがされておりました。

JALは国内線ではANAと競合してはいたものの、85年のプラザ合意以来の円高にも拘らず、国内販売の航空券はそれ以前の250円/ドル程度の固定相場で発行され、内外価格差による為替差益を得ておりましたので、国内線は赤字でも構わなかったのです。そういう意味で完全民営化とはいえ、民間企業としての自覚がどの程度あったかは疑問が残ります。

加えて航空事業は安全保障と直結するということで、国際線に関しては、二国間の政府間交渉で運行する航空会社まで決めるという国際ルールがあり、運賃も方面別の協定運賃ですから、国際線は完全な独占市場だったわけです。

このことは同時に政治の干渉を受けやすい企業体質でもあったわけで、国内線初のジェット機のコンベア880以来、歴代の機種選定にも政治の影が付きまといますし、就航予定のない機材を買わされてテキサスの砂漠の中の格納庫に放置したりもしてます。

あとHSSTの開発もJALが突然始めたのですが、成田や千歳などの都心から遠い空港の機能向上を謳い文句としながら、なぜJALが手がけるのかは明らかではありません。結局50億円以上の開発費を投入し、その一部は独シーメンスのトランスラピートのライセンス使用料としてかなり高額の支払がされていたりで、この辺は国会でも問題視されたことがありますが、あげくに中部エイチエスエスティ開発に1.5億円で叩き売ったんですからあきれます。そして技術はリニモに結実し、飛んでまわって空気を運ぶ-_-;。JR東海にとってはリニアのライバルに塩を送ったわけで、ただでさえ航空を目の敵の同社は何を思うでしょうか^_^;。

この辺の政治力のなさを裏付ける最近のニュースにこんなのがあります。

日本航空、松本―札幌線を存続
記事中にもあるように、リストラの一環として不採算路線10路線の休止を決めたのですが、疑惑の復活と相成りました。ホントJALはいいようにむしり取られ続けたわけです。20年前と違って格安航空会社がアジア太平洋地域でも興隆している現在、国際線の方が競争激化しており、今はむしろ国内線の方が独占領域となっている中で、不採算路線からの撤退でANAに後れをとる余裕はないはずです。一般の事業会社ならば外資ファンドの餌食になるところでしょうけど、航空業法で議決権30%を上限とする外資規制がむしろ邪魔をして、再建の道すじは全く五里霧中です。

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Saturday, May 26, 2007

非電化の星? キハE200

以前の記事でも取り上げましたキハE200形の実車が登場し、今夏から小海線で営業運転が始まります。既に趣味誌でも紹介記事が出ておりますので、分かりにくかった詳細が明らかになりました。ひとことで申し上げてなかなかの意欲作といえるかと思います。

ハイブリッドシステムについても明らかになりましたが、都合8つの走行モードを切り替えるもので、鉄道車両用ハイブリッドシステムとしては、なかなか良く考えられている感じです。走行モードは以下のとおりです。

1.駅出発時:バッテリー→モーター(ディーゼル特有の起動時騒音をなくす)
2.力行時:バッテリー/ディーゼル発電機→モーター(ディーゼルエンジン効率運転+バッテリー電力で補完)
3.上り坂走行時:バッテリー/ディーゼル発電機→モーター(ディーゼルエンジン全出力)
4.上り坂走行時:ディーゼル発電機→モーター(ディーゼルエンジン全出力)
5.下り坂走行時:モーター→バッテリー/ディーゼル発電機(バッテリー充電+エンジン排気ブレーキ)
6.下り坂走行時:モーター→ディーゼル発電機(エンジン排気ブレーキ)
7.ブレーキ時:モーター→バッテリー(回生ブレーキでバッテリー充電)
8.駅停車時モーター→ディーゼル発電機(エンジン排気ブレーキ)
鉄道車両としての基本性能を満たしつつ、省エネを実現するものとして、よく考えられています。

やはり駅発車時には電車のようにモーター音やインバータ転動音はするものの、エンジン音なしにスタートするわけで、また一歩電車に近づいた感じです。力行時のディーゼル発電機にバッテリー電力を補完させて短時間の過負荷運転を容認するあたりは、E233系の記事でご紹介した走ルンですコンセプトが生きていますね。力行時と上り坂走行時のエンジン出力の使い分けも興味深いところですが、勾配区間で運用することを考えると、納得できるところです。

逆に下り坂走行時に回生電力のバッテリー充電とディーゼル発電機のエンジン排気ブレーキの併用は、連続下り勾配での抑速制動を意図したものですね。駅停車時にエンジン排気ブレーキを使うのは、動力ブレーキとして低速域で不安定になる回生ブレーキよりも確実性を優先させたものといえます。ひょっとすると駅発車時よりもノイジーな感じかもしれませんね^_^;。

当面はキハ110系との混用となるわけですが、110系が基本的な動力システムこそ旧来型の液体式ディーゼル車ながら、制御回路を電車に準拠させて、方向固定、全電気指令式ブレーキとしたものだったわけで、この辺は電車との部品共用によるメンテナンスコスト削減に狙いがあったものと思われますが、キハE200ではさらに進化して^_^;電車に近づいています。実はディーゼル車を使う非電化路線の弱点を現しているものでもあるのです。

元々トルクコンバーター(以下トルコンと略す)を用いた液体式駆動は、トルコンの特性を利用して、発車時に大きなトルクを必要とする鉄道車両では、車軸の負荷で推進軸と車軸の回転数に差が出ることでトルクを発生させてスムーズに発車させるわけですが、30km/h程度以上になると負荷が減少して車軸と推進軸の回転差がなくなり、動力伝達上はむしろ非効率になるので、この時点で車軸と推進軸を直結して以後はディーゼルエンジンのトルク特性を利用した加速となるわけです。元々船舶用エンジンからスタートした国鉄標準型のDMH17系エンジンでは、トルクカーブがフラットで扱いやすい反面、回転数があがらない特性でした。ある意味トルコン向きだったとはいえます。

一方で80年代の国鉄特定地方交通線転換第三セクター鉄道を中心に、新潟鉄工(→新潟トランシス)や富士重工業(鉄道車両製造から撤退)が、従来の国鉄型より高性能なエンジンと軽量車体を組み合わせた高性能な軽快気動車を売り込みました。エンジンもトラックバス用や重機用その他高性能な汎用品が用いられるようになりますと、直結後の速度制御を円滑にするために、ギアを切り替えて2段3段の変速を行う必要が生じました。それ以前にも国鉄が開発したDML30系列の高性能エンジン搭載車は、直結2段でエンジン性能を引き出していたのですが、一般型への波及という意味では、地交線向け軽快気動車を取り上げておいた方が良いでしょう。実際民営化を睨んだ国鉄末期の各形式でも考え方が踏襲され、JR化後に登場した各社のローカル線向け車両も基本的なメカニズムは同じです。JR東日本のキハ100系110系も走行メカニズム自体は軽快気動車のそれと変わりません。

液体式ディーゼル車の場合、トルコンにクラッチ、変速ギア、逆転機などなど、電車と比べて動力伝達装置が複雑になり、これが保守上の弱点となるわけです。それで液体式駆動は日本とドイツ以外ではあまり用いられず、主にディーゼルエンジンで発電してモーターで駆動する電気式が主流でした。加えて三相かご型誘導モーターを用いたVVVFインバーター制御が実現すると、電気式の弱点だった電力の抵抗ロスや、起動時のショックによる空転も防ぎやすいということで、大量の液体式ディーゼル車を使い続けているのはほぼ日本だけという状況になりつつあります。その意味ではキハE200は大きな世界の潮流に乗ったものと見ることも可能です。

そう考えると、方向固定など無意味と登場時に批判された電車の制御システムの導入の意味合いが変わってきます。実際電気指令ブレーキの採用で加圧空気管のような保守の厄介なパーツは激減し、電車と部品の共用も可能になります。さらに進んで駆動装置も電車と共用できれば、メンテナンスコストの削減効果はかなり大きいといえます。加えてハイブリッドシステムの採用で燃費が改善されれば、直接的な動力費の削減となるわけです。

加えてハイブリッドシステムの試験車だったキハE991は、その後燃料電池試験車へと新たな使命を得たように、ディーゼル電気ハイブリッドシステムは、燃料電池駆動への移行が比較的容易という点も見逃せません。水素供給システムに課題はありますが、こうなると車両面での非電化路線の弱点はかなりの程度克服されることとなります。

当ブログでも地方ローカル線の話題はたびたび取り上げておりますが、高性能を売り物とした軽快気動車群ですが、汎用部品が多用されたこともあって、鉄道車両としても耐久性に問題があり、導入した三セクローカル私鉄に車両更新の課題を突きつけている現状があります。こうなると非電化のローカル線向けに在来型の液体式ディーゼル車を使い続ける意味合いを考え直す必要があるかもしれません。かといって非電化路線を電化するというのは、小浜線のようによほど地域が原発成金にでもならないと無理ですから、それも含めてJR東日本の示した方向性の意味は大きいのではないでしょうか。

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Sunday, May 13, 2007

JR北海道秩父別駅積み残し事件

えー、リニア問題に揺れた当ブログですが(笑)、全く無関係の話題で久々の更新です^_^;。まずはメディアチェックです。

秩父別駅 客26人乗れぬまま発車 JR運転士「奥に詰めて」 デッキの高校生ら動かず(05/09 14:09)
JRなど乗車指導 秩父別駅 生徒は「車両増やして」(05/10 14:06)
マナー問題なし、列車混雑のため 秩父別乗り遅れ JRに反論の声(05/10 09:24)
JRと当事者の高校生や指導にあたった高校教師との間で、見解が割れていますが、地方ローカル線の現状を如実に現した事件ですね。

国鉄時代から指摘されていたことですが、過疎地のローカル線の乗客は、高校生を中心とした通学生が中心で、始業時間に間に合う列車は限られますから、該当する通学列車は混雑するのですが、赤字体質の国鉄では、輸送改善の対応は取りようがありませんでした。また忘れてならないのが、通学定期券の問題でして、国の機関だった国鉄ゆえに、教育支援の国策に沿って、高率の割引率が適用されていた通学定期券が、ただでさえ劣悪な収支状況をより悪化させる役割も果たしていたわけで、JRも基本的に運賃制度を国鉄から引き継いでいて、運賃改定はあったものの、基本的にこの構図は継承されております。

この辺は、3島会社だけの問題というわけではないんですが、分割民営化で鉄道ネットワークの末端を受け持つことになった3島会社ほど強く傾向が出る問題であるとともに、内部補助の原資の少なさゆえに、支えきれなくなる可能性はより高いわけです。

さらに昨今の少子化で、通学生そのものが減少している中、列車の運行を支えるJR各社としても、合理化待ったなしですから、ワンマン化などを行わざるを得ないわけです。かくして今回の事件となったわけですが、以上の問題点を踏まえれば、マナー問題に矮小化してよい話ではないというのは自明ではないでしょうか。

事業会社としてのJRの立場としては、赤字を続けながらの列車運行はいつまでも可能なわけがないので、いずれ事業の撤退も視野に入れざるを得ないわけですが、公共性の呪縛で簡単ではないわけです。鉄道事業法の改正で、需給調整規制が撤廃され、鉄道事業でも基本的には参入退出は自由化されたわけですが、公共性にかんがみて、地元自治体と協議して同意を得る必要があります。それでも地元協議が難航した場合に、1年後には同意なしに廃止できる、いわゆる「見切り発車」条項が設けられて事実上自由化され、実際にローカル路線の廃止は相次いでいるわけです。話題のDMVも、どちらかといえばここまでやっても鉄道を維持できないことを地元に説明するために開発されているという側面が強いのです。

JRに関しては、地元協議のハードルを高くして、安易に廃止を強行できないようにはなっておりますが、最終的に見切り発車は可能でして、JR西日本可部線の可部以北が廃止されたのは周知のとおりです。とはいえ鉄道事業の比重の高いJR各社にとっては、路線の廃止は即事業規模の縮小を意味するわけですから、何とか維持したいのもまた確かでして、それ故に例えば旧国鉄時代の周遊券その他の企画商品の見直しが行われる中で、どう見ても持ち出し必至の大盤振る舞い商品の青春18キップが期間を学休期に限定して継続販売されている理由も、実は学休期の通学列車の運行維持に狙いがあることがわかります。

仮に運休したとすると、車両の集中保守などで運行経費を圧縮することは可能でしょうけど、同時に毎日運行で決まった時間に列車に乗れることからくる信頼性という公共交通としての自己否定でもあるわけで、過疎地ゆえに存在感を失う恐れがあり踏み込めない部分です。逆に首都圏では、中央線の連続立体化に伴なう線路切り替えなどで計画運休しても、休日で代替ルートがあるという条件で、大きな問題にならないのと事情が違うわけですね。

で、この通学定期券の割引率問題に焦点を当てると、教育のための家計への補助を営利企業が行っている構図となるわけで、こうなると毎年300億円規模の赤字を計上し、経営安定基金の運用益で穴埋めしている状況のJR北海道ですから、赤字路線の廃止・縮小局面で必ず問題視される部分となります。

本来は家計への教育補助は自治体の役割なんですが、自治体財政の逼迫で、現実的には難しいわけですが、さりとて放置すれば鉄道が廃止され、代替バスも過疎地では走り続ける保証はないですから、いずれ自治体でスクールバスを走らせるなどの対応が迫られ、最後には通学生を抱えた世帯の他地域への移転によって、無人地帯になる可能性まで視野に入れる必要があります。かくして第二第三の夕張がそこかしこに-_-;。

地域間格差がいわれ、夏の参院選でまたぞろ公共事業のバラマキ話が沸き起こると思うんですが、このような地域に新しい道路を作っても、財政悪化に拍車をかけるだけなんですね。なぜ既存の鉄道があるならば、それを存続させて有効活用しないのかですね。通学生向けの営利を無視したディスカウントは今すぐ止めるべきですし、それによって負担を増す家計に対しては、自治体が補助してやればよいはずです。少なくともJRは民営化20年で経過措置も終わって固定資産税を満額支払っているわけですから、沿線自治体はその部分で税収増を実現しているはずなんです。それを住民への補助を通じてJRへ還元して地域の基盤を維持することの方が重要なはずです。

あと通学定期券というのは、利用者を限定した事実上のIDカードです。地方ローカル線では所持者を個人レベルで特定できるはずですね。SuicaやPASMOのようなICカード化は無理としても、例えば学校が発行する学生証に定期券機能を付加して事務手続きを簡略化するとか、また乗車時にもいちいち提示を求めるのではなく、例えばシリアルナンバーをバーコード化してリーダーにかざすことでチェックするなどの方法もあるわけで、特に2扉キハの後扉締切扱いで前扉だけで客扱いして、奥へ詰めてくれないから乗れなかったというもの感心しませんね。欧州流のセルフ方式がある意味やりやすい環境でもあるはずです。それも無理なら通学列車の時間帯限定で自治体か学校の職員を駅に立たせるでも良いかもしれませんね。いずれにしても、これぐらい考えないと、3島会社の鉄道事業は厳しいと思うんですが。

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Saturday, April 28, 2007

名古屋リニヤだがや

当ブログで名古屋ネタといえば辛口です^_^;。今回も乞うご期待(笑)。まずはメディアチェックです。

リニア、2025年に開業・JR東海が目標
今回の発表はあくまでもJR東海が目標として宣言したものであって、中央リニアの整備計画がオーソライズされたわけではありません。その意味で実現に向けて前進したという話ではないんですが、建設区間を東京-名古屋間に絞り込んで、より具体的な検討に入ろうという意図のようです。

実際、東海道山陽新幹線の利用は、西へ行くほど少なくなるわけですから、東名間がボトルネックではあるわけで、だからこそ2003年の品川駅開業で、東京側のターミナル強化を打ち出したわけですが、同時に増発余力を得ながら、それを活用することなく、輸送シェアを落としている現実もあるわけで、既に人口減少局面に入った日本において、今以上の輸送力増強が必要なのかどうか、また現行の東海道新幹線でも、例えば一部区間のショートカットや軌道強化してダブルデッカーを投入するなど、打つ手がないわけではないことを考えると、リニアでなければならない理由はないですね。

そもそも東海道新幹線の競争力を冷静に見れば、1列車でジャンボ機3機分の座席数を有する新幹線の桁外れの輸送力こそが重要であることに気づきます。例えばのぞみだけの代替であっても、東京‐大阪間3分ヘッドでフライトしなければならないという物理的に不可能な領域の輸送を担っているわけでして、このことこそが東海道新幹線の競争力の源泉です。

かつて東海道線で東京‐大阪間6時間半の特急こだまが走り始めた頃、全車指定席で1週間前の売り出しと同時に満席の盛況ぶりで、東京から大阪まで1週間かかる(笑)といわれたものですが、この時点で在来線では増発余力がなく、航空輸送にシェアを侵食されることが明らかな状況で東海道新幹線の建設が意思決定されたのですが、どう見ても当時と今とでは状況が異なります。今は新幹線ならば曲がりなりにも、思い立って駅まで出向けば、とりあえず乗車して大阪へ向かうことは可能な状況ですから、東海道新幹線の輸送能力が限界に近づいている事実はありません。

おそらく前の記事で指摘しました「東名阪一体化論」の「阪」を切り捨てて実現性を高めようというのが意図するところかと思います。そしてJR東海がそう思いたくなる状況が現実に存在します。トヨタの好調に支えられて、中京圏の有効求人倍率高止まり現象が起きており、その結果若年人口の近畿圏から中京圏シフトが起きているわけです。この傾向が続くならば、地方で深刻な高齢化の進行が、大都市圏では近畿圏で先行することを意味します。ならば近畿圏に将来はないから、リニアも名古屋まででええだがやということですね^_^;。実際、トヨタ首脳の最近の発言がリニアに積極的で、「東京‐名古屋間40分で両都市圏が双方の通勤圏になる」ということを盛んに発言しているのですが、おそらく中部国際空港の建設で一肌脱いだものの、羽田便の飛ばない空港では便数を増やすことが難しく、航空客より見物客の多い空港になってしまったことを悔いているのではないかと思います。ならばリニアで東京と直結しようと考えたとしても不思議ではありません。

ま、発言の真意はともかくとして、JR東海にとっては追い風として活かせる話と見たのでしょう。財界活動にも積極的で、日本経団連の政治献金斡旋再開などで政治的な影響力行使にまで踏み込んでいる最近のトヨタを味方につけておけば、政府を動かして公的助成の突破口を開けるかもしれないし、それが無理でも、リニア建設を大義名分とした増資には応じてくれる可能性は高いという読みなんでしょう。ま、トヨタにしてみれば、お膝元の愛知で求人難では、人件費アップは避けられないところですから、近畿圏の若年人口を吸引した流れが首都圏へも拡大すれば天下を取れると目論んで協力してくれるかもしれませんね。かくしてみゃーが標準語になる日が来るか(笑)。

あとリニアつながりの小噺をひとつ。愛知高速交通東部丘陵線(リニモ)の赤字が止まりません。無理もないのですが、元々愛知万博会場跡地の宅地開発を目論んで建設された同線ですが、海上の森の里山保全で反対運動にあい、環境万博に衣替えした経緯から、今さら宅地開発はできないわけで、ゆえに乗客は増えないわけです。沿線には複数の学校が立地してますが、学休期には空気を運ぶ車のない火の車と化しております。万博の内覧会輸送で荷重制限で止まったように、イベント輸送に不向きな上、沿線開発もままならず朽ち果てる先には、桃花台新交通(ピーチライナー)の二の舞を心配する声が地元で囁かれます。営業用磁気浮上リニア初の廃線となるか、上海のトランスラピートと競うことになりそうです^_^;。

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Wednesday, April 25, 2007

あれから2年の福知山線事故

今日は朝からテレビで尼崎のJR福知山線事故の慰霊式典のライブ中継がありまして、そういえば2年経ったことを実感しております。その間に航空鉄道事故調査委員会(以下[事故調」と記す)の中間報告が出され、事故原因の解明も進んではおります。問題は再発防止できるかどうかなんですが、どうもJR西日本ではその後もトラブルが多くて、被害者との補償交渉も滞っているなど、まだまだ課題山積のようです

。(2007/4/25)尼崎市で追悼慰霊式典、JR福知山線脱線事故から2年
事故時の状況に関しては、事故調によってかなり解明されており、事故直前に伊丹駅でのオーバーランをめぐって運転士と車掌が車内電話で交信し、運転士が「(オーバーランの距離を)まけてもらえないか」という会話をして、注意散漫なままブレーキのタイミングを逸したということのようです。というわけで高見運転士の業務上過失致死傷罪は成立しますが、問題は運転士以外の者の罪状です。特に企業としてのJR西日本と当時の経営トップの訴追が為されるかどうかが注目点です。

正直なところ会社や経営トップの訴追は、日本の法体系では難しいところがあります。実際横浜市瀬谷区で起きたトレーラーの脱輪事故で、メーカーの三菱自動車のリコール隠しが原因として当時の河添社長が訴追されましたが、一審で無罪となっております。因果関係はかなり濃厚であるにもかかわらず、企業や経営トップの関与に関しては、予見可能性や回避措置を怠った不作為が立証される必要があるのですが、素人である警察や検察といった捜査当局には困難な作業といえます。

しかし特にJR西日本のような巨大企業の起こした事故ですから、きちんと訴追され罰を受けることこそが、再発防止にとって重要な意味を持ちます。なぜならば、株式会社という組織形態が持つ有限責任原則がバリアとなって、会社が痛みを感じることなく、事故の風化、世論の沈静化とともに安全への誓いを忘れてしまうことが危惧されるからです。

少し解説しますが、法律によって法人格が付与される株式会社という存在は、自然人と同等の私的権利を認められ、契約や商取引の主体として行動できるわけですが、株式を交付することで投資家から資金を集めることで、投資家に出資分以上の債務履行を免除する仕組みに特徴があります。それによって個人ではリスクを負いきれない大規模投資が可能となり、結果のリターンを配当して投資家に報いるのが基本的なあり方です。これが大規模投資を要求される工業化社会を支える仕組みとして機能してきたことは言をまたないのですが、同時に悪用すれば投資家から資金を掠め取る仕組みにもなりえますし、事業の結果の事故や環境汚染や他者への権利侵害などの外部不経済に対してのコスト負担の回避によって社会正義を害する存在にもなりえます。

そして厄介なのが、そのような企業の反社会的行動に対して、自然人ではない法人たる企業を訴追しても、当然のことながら実刑は受けないわけです。また扱う資金量からいって、個人であれば負担を感じる金額の罰金や科料であっても、大企業ほど負担感がないという点に問題があります。つまり刑事罰を受けることによる反社会的行為の抑止効果が期待できないわけです。その意味では会社経営の執行に責任を有する経営トップへの実刑というのが意味を持つわけですが、残念ながら上記の予見可能性や不作為の立証が壁となって、推定無罪の壁を超えられない可能性が高いのです。このことは法の下の平等をうたう法治国家の原則に照らしても問題ですし、事故の再発防止をお題目に終わらせないためにも、経営トップに痛みを感じさせることが重要なのです。

JR西日本の山崎社長は再発防止を誓い、安全対策の進捗を訴えてはおりますが、実際にはトラブルが続いている状況ですし、安全優先を訴えても社員の意識がなかなか変わらないといって社員に責任転嫁してますが、現場で積み上げるべき安全対策が意見として幹部に届かず対策が遅れているのが実態で、意識を変えるべきは経営幹部の方であるといえる状況です。信楽高原鉄道事故でも訴追を免れたJR西日本ですが、同社の将来のためにも、厳しいようですが、きちんと罰を受けることが重要と考えます。なお、こちらも併せてご参照ください。

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Sunday, February 18, 2007

電車の渋滞は駆け込み乗車から

というのをテレビ東京系列WBS土曜版の特集でやっておりました。かつての殺人的ラッシュの時代には、ホームも通路も人また人で、改札制限も日常茶飯事でしたから、物理的に駆け込み乗車は困難だったのですが、輸送力増強で列車本数が増え、長編成化され、ホームや通路も広くなった結果、物理的に余裕ができて乗客のランダム行動を助長したわけで、それが昨今の電車の遅れの最大原因ということですから考えさせられます。

取り上げられたトピックスは

JR東日本の山手線外回りでデジタルATC導入で可能となったピークタイムに1本増発して25本/hとすること
東急田園都市線で朝の急行を二子玉川~渋谷間各駅停車の準急として棒線駅の渋谷での急行と各停で現状10~20秒差あって遅れの原因となっている点の改善をはかるとともに、大井町線の急行運転で都心ルートの分散をはかること
JR東日本で故障に強いE233系の開発と投入
の3つです。E233系に関しては当ブログでも取り上げましたが、機器の二重系化で故障に強い車ということで、ドアエンジンの個別制御を取り上げておりました。ドアごとに独立したコントローラーを置き、ドア挿み時の再開閉を個別に制御して客扱い時間の延伸を防ぐとともに、故障時には隣接ドアのコントローラーがバックアップすることで、正常運行を支援するものですが、細かいところまでよく考えられたものですね。

ただ鉄道事業者としてできるのはここまでで、駆け込み乗車そのものは防ぐ手段はありませんし、あと番組では取り上げられませんでしたが、直通運転の増加でトラブルの波及範囲が広がったことや、システムが複雑化してトラブル時には全体をストップせざるを得ないことや、中途半端な復旧で乗客が殺到することの危険性からあえて抑止する場合もあるわけで、民間企業で対応できるレベルを超えているといえます。

特に再開発ブームで都心回帰が顕著となり、既に経済合理性では説明がつかないレベルまで集積度を高めている東京の現状を見ると、鉄道に過重な負担がかかっていると言わざるを得ません。再開発による開発利益は主としてデベロッパーが独占するわけですから、鉄道事業者と乗客がリスクを負う不条理が見えますね。

というわけで、人口減少に向かう現在の日本でも、快適通勤は遠いですね。非正規雇用の拡大、正規雇用でもホワイトカラーエグゼンプションで残業カットと、どこまでも勤労者に冷たい現実です。女性は産む機械、男性は稼ぐ機械、子供はその仕掛り品かい(怒)。

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Sunday, February 11, 2007

SuicaとPASMO連絡運輸あれこれ

というわけで、PASMOのスタートとSuicaとの共通化開始が3/18から始まりますが、連絡運輸に関して、ややわかりにくい事例を中心に述べます。

大雑把に言って、従来のパスネットのルールが適用されることとなり、ノーラッチ連絡運輸で最大4社局までカバーし、複数ルートがある場合は最安値ルートが適用されるというのも、パスネットの扱いに準じることとなりました。

わかりにくいのが、他社線をはさむルートの場合でして、国鉄時代から続く通貨連絡運輸の扱いが、タッチセンサーだけでは対応できないということで、JR線経運賃の適用となり、連絡運輸の最安値原則の例外扱いとなります。具体的には以下の他社線の前後のJR線区間指定駅相互間です。

中野-<東京メトロ東西線>-西船橋
西日暮里-<東京メトロ千代田線>-北千住
新宿-<小田急小田原線>-登戸
渋谷-<東急東横線>-武蔵小杉
通過連絡運輸というのは、全国に路線網を展開していた国鉄独特の制度で、他社線、バス路線、鉄道連絡船を挟む前後区間の鉄道線乗車区間のキロ数を通算して運賃計算するものですが、タッチセンサーでは対応不能ということで、磁気券の連絡乗車券で利用する場合と運賃が異なるということで、JR東日本では冊子を配布して注意喚起しております。

ちょっとわかりにくいのですが、JR東日本配布の冊子では、以下の3つの場合を例示しております。

ケース1 改札口を通らないで乗り継ぐ場合

三鷹-中野=西船橋-津田沼
Suicaの場合  全区間JR線利用運賃             =780円
磁気券の場合 JR線通算運賃290円+東京メトロ運賃300円=590円

ケース2 改札口を通って乗り継ぐ場合(1)

田端-西日暮里=北千住-金町
Suicaの場合  JR線合算運賃130円+160円-100円+東京メトロ運賃160円=350円
磁気券の場合 JR線通算運賃160円+東京メトロ運賃160円         =320円

ケース3 改札口を通って乗り継ぐ場合(2)

目白-新宿=登戸-矢野口
Suicaの場合  JR線合算運賃150円+150円+小田急線運賃240円=540円
磁気券の場合 JR線通算運賃160円+小田急線運賃240円     =400円

というわけで、JRとメトロが積極的に推奨するケース2の西日暮里乗り継ぎルートで新たな割引制度が導入されたものの、処理上前後のJR区間の通算運賃の算出をタッチセンサーによる限られた時間内で行うことはできないようです。

気になるのは、ICカード乗車券システムの導入によって、駅業務の省力化や券売機の削減で駅ナカショップのスペースを捻出したり、電子マネービジネスへ進出したりと、鉄道事業者に多くのメリットをもたらすものであることを考えると、国鉄時代の通過連絡運輸制度に引きずられるのではなく、もう少しわかりやすい運賃制度への移行(ゾーン制など)や、連絡運輸全般に対する割引拡大なども考えてほしかったと思います。特に意識せずに利用すると高い運賃が適用されるというのは、システム上やむを得ないとしても、イメージ低下につながる恐れがあります。特に券売機の操作に不慣れな高齢者に負担が集中する可能性があるだけに、考えて欲しいところです。この辺の問題は以前の記事でも取り上げましたが、わかっていた問題だけに残念です。

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Monday, January 29, 2007

中国子弾頭とは物騒な^_^;

日本のメディアには中国新幹線として露出した話題です。

(1/28)中国で「新幹線」運行開始・「はやて」型、上海から
ま、見出しの「新幹線」がかぎかっこ付で、記事中に説明があるので、一応合格点かもしれませんが、その日経からして
主要メディアが「国産」「自主技術」を強調しているため、日本からの技術導入を知らない人もいた。
という取り上げ方で、逆に日本国内向けにバイアスをかけているのはいただけません。

ま、日本の新幹線方式の導入については、中国の国内世論の葛藤があって、当局としては苦しい対応なんでしょう。一方で日本の新幹線方式の優位性を理解するグループも存在しております。また今回は上海中心の在来線の高速化事業であって、本命の北京~上海間高速鉄道とは一応別のプロジェクトですし、欧州勢との共同受注ということもあり、技術のいいとこ取りをされるのではと危惧する向きもありますが、それよりも日本の鉄道技術の優秀さの証左として見ておきましょう。

台湾高速鉄道の場合は、東海道山陽新幹線700系タイプの車両を日本で製造して輸出したほか、自主開発のATCを含む運行管理の技術指導などで日本の鉄道関係者が関わったのに対し、今回は東北新幹線E2系1000番台タイプで一部完成車両を輸出したほかは、技術指導に基づく現地生産による車両調達となっており、台湾の場合とは異なった展開です。

また台湾高鉄では、純民間資本による事業であり、欧州の鉄道コンサルの存在もあって、開業に至るまでの混乱が度々報じられ、開業を前に日本の技術者が引き揚げる事態もあって、混乱しましたが、今回の「子弾頭」は、大きな混乱もなく静かなスタートを切りました。ただし当面は在来列車並みの最高速160km/h運転ということで、予定される200~250km/h速度域での営業運転は4月までおあずけです。にしても在来線での新幹線車両の運用という低くはないハードルを難なくこなすのですから、欧州基準の軌道に日本基準の新幹線車両を走らせて、線路込みの一括受注じゃなかったからトラブったという言い訳が色褪せます^_^;。

と書くと、車両の現地生産とは製造業の空洞化ではないかという議論もあるのですが、これは全くの杞憂であると申し上げておきます。車両のシステム構成上の基幹デバイスはもちろん日本からの輸出ですし、設計図面や組立工程の技術指導など、エンジニアリングで日本の技術を頼んでいるわけですから、最も労働集約的で、かつ注文生産なので受動的にしか生産ラインを動かせない非効率な最終組立工程をアウトソーシングしたと考えれば、むしろ日本国内の付加価値率は高まっているわけです。かつここで得られる人的つながりは、中国の財政と乗客の運賃負担で国内では得られない経験のフィードバック回路を構成するわけですから、仮に多少の技術漏洩のリスクがあっても、得るものも大きいわけです。

加えて基幹デバイスの量産効果は、車両メーカーの国内向けの出荷分の最終組立マージンを増やすことで、間接的にですが国内出荷分の価格低下効果も得られるわけですね。つまりパソコンの水平分業モデルに近づくわけで、このような積み重ねが"値段半分"への途であることは、パソコンと同様です。というわけで、スピードアップ後のようすも興味深いところですね。

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Sunday, January 21, 2007

リニアフリーライダーの醒めない夢

これを書くと、またぞろJR東海批判になってしまうので、少し迷ったのですが、重要な論点ですので、忘れないように書いておきます。まずはメディアチェックです。

【深層真相】中央リニアの現実性、事業費捻出がカギ(産経)
うーむ、何かイケイケの雰囲気ですが^_^;、もちろんウソが散りばめられた話です。例えば
都市の在り方を変えるほどの経済効果や文化交流をもたらすと期待されている。
のですが、意味するところは、東名阪一体化論でして、日本の3大都市圏を通勤圏レベルにして、経済を活性化させようということで、つまるところ大都市圏に立地する大企業の利便性を高めようという話です。

前の発言で大都市圏の地価上昇を取り上げましたが、地価上昇が再開発された一部の地域に限定されていて、それ以外の地域の地価下落は続いていることを指摘いたしました。そして80年代後半のバブル期に見られた大都市から地方へという地価上昇トレンドの波及がニューヨークやロンドンなどの海外へ向かっていることと共に、国内では3大都市圏プラス札幌、福岡の一部地域へ波及していることが観察されます。つまるところ、これらの地価上昇トレンドを東名阪の一部地域へ押し留めることで、いわばそれ以外の地域を切り捨てる形で、心地よい不動産バブルの恩恵を長引かせようというのが東名阪一体化論の正体です。そのためには中央リニアエクスプレスが必要という議論ですね。

ま、10兆円にのぼる整備費用をJR東海単独で賄えるはずもなく、全国新幹線網整備計画の中では基本計画が承認されただけの中央新幹線に事業化の目途が立っているわけでもなく、現行の整備新幹線の事業スキームが既に2007年半ばで鉄道整備基金の枯渇で、以後の新規着工には財源問題の手当てが必要という状況ですから、順番待ちをしていればチャンスが巡ってくる状況にはないわけです。

あと東名阪の都心アクセスで大深度地下利用を想定しているのですが、こちらは技術的に確立した話ではなく、実際にリニアの高速走行を地下の閉鎖空間で行うわけですから、かなり広大なトンネル断面が必要ですし、都市内地下鉄でも問題になっている列車風対策として、例えば強力な排気ダクトでトンネル内の気圧を減圧するとすれば、それに伴うダクトスペースや排気装置の駆動でのエネルギーロスなど、未知の問題が山積しております。そもそも上に高層ビルなどが乗っかっている場所にかような広大な地下空間を作ることの影響は未知数です。現行新幹線の地震対策で必要と言いながら、何とも矛盾した話ですね。

あと技術的にも、地表で500km/hという速度域の走行は空気抵抗との戦いとなりまして、物理法則へのチャレンジになるのですが、空気の壁を突破するには、現行新幹線の3倍の電力消費が言われております。鉄道の場合、中間抵抗と言いまして、車や航空機と違って長編成の列車の側面の空気との摩擦抵抗が大きくなるため、原理的にエネルギー効率が悪くなるのです。鉄軌道式高速鉄道で350~360km/h程度が実用上の限界と言われるのは、それ以上の速度域では空気抵抗が増して鉄軌道の転がり抵抗の少なさという利点が活かせないからとも言われます。多少の技術革新でそれが2.8倍に収まったとしても、経済性が劇的に改善するわけではないのは自明ですね。当然環境にやさしいはウソになります。

結局のところ、バブルで高止まりした大都市圏の地価を後付するように再開発で高層ビルが増えたことの延長線上に、中央リニアを必要とする利益集団が生まれてきたわけで、ある種現代のバベルの塔とも言うべきでしょうか。フリーライダー(ただ乗り)を許すだけのプロジェクトに、間違っても国費投入などすべきではないですね。

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Saturday, January 06, 2007

台湾高速鉄道開業の視点

巷では、台湾新幹線開業と報じられておりますが、台湾高速鉄道が正式名称ですので、当ブログではこちらを採用いたします。まずはメディアチェックです。

台湾新幹線、1月5日開業(日経)
台湾新幹線が開業 日本の技術初輸出、欧式と混合(朝日)
台湾新幹線が始動、日本のシステム採用で(読売)
ま、いずれも表層的な報道ですが、細かく見ると台湾高速鉄道の特殊事情が解説されている部分はあるものの、日本の新幹線システム初の海外プロジェクトという取り上げ方に終始しております。元々欧州連合が受注したプロジェクトに商社を窓口とする日本メーカーが切り込んで逆転受注したのですが、日本が受注したのは車両だけに留まることや、それに至った事情などはあまり報じられておりません。

台湾高速鉄道構想の過去の推移については、ウィキペディアが詳しいので詳述を避けますが、1993年の立法院で建設案が通過したものの、建設のための政府予算は削減され、民間資本による建設となりました。以後の混乱ぶりはかなりのもので、結果的に欧州連合のコンサルティング契約が解除されないままに、日本の700系ベースの新幹線車両を導入することが1999年に決まり、フランスTGV様式の単線並列配線にドイツ式分岐器、無線はフランス式という日欧合作のものとなったわけです。そして保安装置の中心であるATCは、単線並列配線向けに独自開発された台湾式デジタルATCということで、ツギハギだらけになっております。それゆえに安全面を不安視する見方や、技術流出を懸念する見方などがありますが、いずれもさしたる根拠があるわけではありません。

むしろ注目すべきは民間資本によって実現したという部分でして、日本では整備新幹線問題が無駄な公共事業の槍玉にあがるように、新幹線建設は当然のように公共事業として見られているのに対し、純民間資本で高速鉄道プロジェクトが推進されたことの意味は侮れません。実際に建設費は日本の新幹線のほぼ半分の水準でして、これはまぁ地価水準の違いなどがありますので、単純比較はできませんが、財源問題を抱える日本の整備新幹線にとっても、台湾での経験は貴重なものといえるのではないでしょうか。日本でも中部国際空港が純民間資本で整備されたように、社会資本インフラの民間資金での整備というのは、大きなテーマになりうる話なんですが、そういった観点からの報道がほとんど見られないのは、いつもながら日本のメディアのダメさ加減を思い知らされます。

またそれ故に、台湾高鉄プロジェクトは台湾の鉄道当局すら関与できない仕組みの中で進められ、高鉄開業後に役割の変更を迫られる在来線との連携もないままに開業に至るというあたりに、民間丸投げを疑わせる要素があるなど、民間資金による社会資本整備の課題も見え隠れしております。またこのことが当プロジェクトに鉄道専門家の関与を極端に不足させることとなり、欧州連合のコンサル契約を盾にした横槍などを防げなかった可能性は高いといえます。また乗務員育成が間に合わず、ドライバーはフランス人という奇妙な事態を招いたのも、鉄道専門家の関与が弱かったゆえと考えられます。

とはいえ日本の鉄道関連企業にとっては、よい経験だったのではないかと思います。例えば乗務員室の車掌スイッチで一括開閉が当たり前のドアエンジンですが、各車両の客室掛が個別開閉する仕様とされ、そのための仕様変更に多大な打ち合わせを強いられたようです。とかくいいモノは売れるぐらいしか意識しない日本の企業関係者にとって、現地化というのが実はプロジェクトの売り込みにとって重要なマーケティングプロセスであるということを思い知らせることになったようです。例えば優秀な機体だったのに売れなかった国産旅客機YS-11がマーケティング不足で市場から退場せざるを得なかったことに通底します。

21世紀は環境の世紀といわれ、温暖化防止のためのCO2削減待ったなしの状況で、途上国の工業化、近代化は鉄道技術の移植なしには実現しないのですが、欧米ではいち早くそれに対応した車両メーカーの合従連衡が起きて、既にBig3が確定していると言われております。仏アルストーム、独シーメンス、加ボンバルディアですが、そのほかにもスウエーデンASEAとスイスのブラウンボベリーが統合してABBとなるなどして、国際市場で売り込み合戦を展開しております。それに比べて日本の鉄道車両メーカーの後進性は惨憺たるものです。モノが良ければ売れる時代ではありません。トータルなマーケティング力が問われる時代、鉄道大国の日本で国内市場でそこそこ商売できるぬるま湯に浸かるうちに、置き去りにされていることを自覚すべきでしょう。

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Friday, December 29, 2006

E233系営業運転開始で見える未来

12/26から営業運転を始めたE233系ですが、いよいよ201系の置き換えスタートということで、関心を集めております。当ブログで以前アップした記事が突然参照数を伸ばしたことからも、関心の高さがうかがい知れます。

で、とても実車に乗りに行くほど暇でもないし、当面は乗務員のハンドル訓練の途上でしょうから、限定運用にならざるを得ないですし、もう少し運用が増えてから、改めて乗車を考えております。ですから実車に接することなくアップした記事であることを最初にお断り申し上げます。

関心の高さは鉄道ファンに留まらず、メディアでも取り上げられていることからも推察されます。

銀に輝く中央線、27年ぶり新型車両デビュー(日経)
JR中央快速線、新車両デビュー 鉄道ファン詰めかける(朝日)
いずれもシステムの二重化により故障に強い車両という紹介のされ方で、つまるところ最近電車がよく遅れることを反映したものということができそうです。

遅れの原因はさまざまで、車両の信頼性が高まれば遅延がなくなるわけではないんですが、メンテナンスに課題を抱える201系からの置き換えですから、信頼性は高まることは間違いありません。とにかく固定閉そく長が短い中央快速線では、加減速もそれだけ頻繁で機器類にも負荷のかかる状況ですから、故障に強い車両の必要性は高かったわけです。

外観では前面形状が常磐線E531系に似た丸みのある立体造形になり、銀のボディに赤(オレンジ)帯のいでたちは、高級金魚のランチュウを連想させます。というわけで、

命名、走ルンですキンギョ(笑)
発表時点で話題になった近郊型仕様の乗務員室も、尼崎事故を受けての安全対策強化ということで、確かに線路際に高層マンションが建つ場所も少なからずあるだけに、車両側での対応が必要なのでしょう。でも東京の地価の高さの反映でもあるわけで、せせこましい路線立地を与件としなければならない鉄道事業者の悩みは尽きません。

で、おさらいですが、今回の車両置き換えは、武蔵小金井区と豊田区在籍の201系のうち、青梅線「四季彩」編成4両を除いた710両をE233系688両で置き換えるものですが、201系には大月事故の保留車として豊田区に留置されていたクハ2両を含みますので、実質708両が置き換え対象となり、実質20両の減車となります。これは豊田区で中央快速線と青梅五日市線の運用を分けているものを、共通化することにより予備車の削減が可能になることと対応していると考えられます。そのために6+4の分割編成は青梅五日市線車に合わせて東京寄りに6連を配する編成に変更されております。また10連貫通編成も分割編成とモハの位置を合わせ、中間クハをサハに置き換えた編成形態となっているのが新傾向です。

ということで、とりあえず2008年の置き換え終了まではこのままとして、その後の車両置き換えがどういう風に進むかが考えどころです。前の記事でも取り上げましたが、豊田区に残るスカ色115系42両の処遇問題が浮上します。おそらく車齢の高さや状態の悪さ、両数の少なさから考えられることは、E233系の追加投入により実質通電区間の大月までの延長ではないかと考えられます。つまり大月以東の115系運用を朝夕の立川折り返しに限定するなどして、松本区の115系1000番台でカバーするというあたりでしょうか。少なくとも211系の投入はないと見ております。

211系で考慮すべきことがらとして、MT比2:3で113系115系と同等の走行性能で使われている現状では、東海道線も東北・高崎線もE231系の性能を活かせないわけですし、特に整備が決まった東京駅連絡線(東京~上野間の列車線)で、神田駅を東北新幹線の上空を利用した二重高架とするために、35パーミル程度の勾配が出現することになりますので、使い続けるのが辛い状況となります。早晩置き換えが求められます。

というわけでE233系近郊型タイプの登場も噂されておりますが、転用先が決まらなければどうにもならない話です。おそらくは房総地区が候補となると思いますが、G車を組み込んだ編成の扱いが問題になります。G車はダブルデッカーは編成から外して使い回すことも考えられますが、なかなかすっきりした展望は開けません。あと国府津区の211系は暖地仕様で半自動ドアスイッチがなく、このまま新前橋車との混用は混乱を招くおそれがあります。

あと中央快速線に続いて京浜東北線へのE233系の投入が発表され、走ルンです第一世代の209系が置き換えられることになっておりますが、一方でE217系と209系500番台の電装品の交換がアナウンスされ、両形式は使い続けられるようです。となるとE217系のE231系との併結が可能になるかどうかが興味です。仮に併結可能になると、国府津区で東京~熱海間限定15連固定で運用されている湘南カラーのE217系の運用の自由度が増すこととなり、場合によっては横総線を含めたシャッフルがあるかもしれません。つまりE217系がワイルドカードになるわけで、なかなか将来を読みきれないところです。

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Monday, December 18, 2006

改正中心市街地活性化法認定、富山と青森が名乗り

改正まちづくり3法の1つである中心市街地活性化法の認定1号として、富山市と青森市が名乗りをあげたそうです。

富山市と青森市、認定第1号に・地方都市の中心市街活性化
1万m^2を超える商業施設の立地に自治体が独自に網をかけるもので、中心市街地として自治体が指定した地域以外への大型商業施設や病院などの立地が規制されるとともに、中心市街地活性化の名目で補助金も出るということで、改革とは名ばかりのバラマキ行政、大店法の復活などなどとも言われる困ったものです。

当ブログでもたびたび取り上げてまいりましたが、そもそも郊外への集客施設の流出は、自治体自身が仕掛けてきたことでもあります。最初は工業団地の造成などで企業誘致をはかるために郊外が開発されたのですが、グローバル化の流れで以前のように企業が来てくれないどころか、進出企業の製造拠点見直しによって工場閉鎖さえ起こるようになるなどで、その尻拭いに病院や公共施設、場合によっては役所自体も移転するなどしたり、積極的にイオンなどのSCを誘致したりしてきたのは、自治体自身です。そういう意味でいえば、とりあえず新法の認定に名乗りをあげた2市は、どちらかといえばそういった流れとは距離を置いてきたグループに属しますが、それぞれに問題を抱えております。

富山市については、道路整備の結果として空洞化が進んだ総曲輪などの中心街の空洞化に歯止めをかけたいということで、LRTの路線整備などの意欲的な計画を持っており、注目されております。それに先立ってJR富山港線のLRT化事業が行われ、富山ライトレールの名で運行開始した結果、従